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技術 電磁鋼板

出願人 日本製鉄株式会社
発明者 屋鋪裕義名取義顕竹田和年高橋克
出願日 2016年1月26日 (4年10ヶ月経過) 出願番号 2016-012684
公開日 2017年8月3日 (3年4ヶ月経過) 公開番号 2017-133057
状態 特許登録済
技術分野 軟質磁性材料
主要キーワード 熱アルカリ溶液 コンプレッサーモータ 打抜き加工後 打抜き金型 モータ鉄心 上降伏点 機械強度特性 磁化力
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年8月3日)のものです。
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図面 (2)

課題

磁気特性機械特性及び打抜き加工時の寸法精度に優れた電磁鋼板を提供する。

解決手段

質量%で、C:0.005%以下、Si:3.0%以上4.0%以下、Mn:3.0%以下、P:0.03%以上0.15%以下、S:0.004%以下、sol.Al:0.1%以上1.5%以下、Sn:0.06%未満、Sb:0.005%未満を含有し、かつ3.5%≦Si+sol.Al+0.5×Mn≦5.0%であり、残部がFe及び不純物からなり、降伏強度が400MPa以上であり、有機物を含む絶縁被膜の片面当たりの塗布量が0.1g/m2以上1.0g/m2以下である、電磁鋼板。

概要

背景

近年、地球温暖化問題、環境汚染問題、およびエネルギー問題が益々大きな関心を集めている。これらの諸問題の解決に向けて、電気機器に多数使用されるモータおよび発電機の効率向上が重要な課題となっている。具体的には、モータおよび発電機の鉄心材料である電磁鋼板磁気特性改善が求められている。

また、パワーエレクトロニクス進展により、モータおよび発電機の駆動周波数を従来の商用周波域を超える高周波域まで活用するものが増加している。このため、鉄心材料である電磁鋼板において、低周波域のみならず高周波域での鉄損が低い製品に対する要望が高まっている。特に、エアコンおよび冷蔵庫コンプレッサーモータ、またはハイブリッド車HEV)および電気自動車EV)の駆動モータまたは発電機では、高周波域での鉄損が低く、かつ高磁束密度である電磁鋼板が望まれている。更に、高周波駆動時高速回転に耐えうる電磁鋼板の材料強度に対する要求も、厳しさを増している。

鉄損(特に、高周波鉄損)を低減するためには、例えば、電磁鋼板の高合金化による固有抵抗の増加によって、渦電流損を低下させることが有効である。また、高合金化による固溶強化は、電磁鋼板の強度上昇にも寄与する。しかし、電磁鋼板の合金量の増加は、磁束密度を低下させるため、低鉄損および高強度と、高磁束密度とを両立させることは困難であった。

以上のような問題を解決するために、例えば、以下の特許文献1では、質量%で、Si:2.5〜4.5%と、Mn:0.005〜1.0%とを含み、かつAlの含有量が200ppm以下、S、N、およびOの含有量がそれぞれ30ppm以下であり、残部が実質的にFeである電磁鋼板であって、平均結晶粒径が0.05〜0.50mmであり、かつ{110}<001>方位からの方位差が20°以内である結晶粒面積率が25%〜75%であり、さらに引張強度が400MPa以上であることを特徴とする高周波磁気特性および機械強度特性に優れたモータ鉄心用の電磁鋼板が提案されている。

また、特許文献1では、上記の特徴に加えて、質量%で、P:0.005〜0.20%、Ni:0.01〜3.50%、Sn:0.01〜0.20%、Sb:0.005〜0.50%、Cu:0.01〜0.50%、およびCr:0.01〜1.50%のうちから選択された少なくともいずれか1つ以上の元素をさらに含有する電磁鋼板も提案されている。

また、以下の特許文献2では、質量%で、Si:0.8〜2.5%、Mn:0.1〜2.5%、およびsol.Al:1.5%以下を含有し、P:0.005〜0.30%、またはNi:0.05〜1.5%の少なくともいずれか1つ以上をさらに含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなり、Feの質量分率と鋼の密度との積が7.35以上、磁束密度がB50で1.70T以上、降伏強度が300MPa以上、かつ、厚さが0.15mm以上0.40mm以下であることを特徴とする無方向性電磁鋼板が提案されている。

概要

磁気特性、機械特性及び打抜き加工時の寸法精度に優れた電磁鋼板を提供する。質量%で、C:0.005%以下、Si:3.0%以上4.0%以下、Mn:3.0%以下、P:0.03%以上0.15%以下、S:0.004%以下、sol.Al:0.1%以上1.5%以下、Sn:0.06%未満、Sb:0.005%未満を含有し、かつ3.5%≦Si+sol.Al+0.5×Mn≦5.0%であり、残部がFe及び不純物からなり、降伏強度が400MPa以上であり、有機物を含む絶縁被膜の片面当たりの塗布量が0.1g/m2以上1.0g/m2以下である、電磁鋼板。

目的

特に、エアコンおよび冷蔵庫のコンプレッサーモータ、またはハイブリッド車(HEV)および電気自動車(EV)の駆動モータまたは発電機では、高周波域での鉄損が低く、かつ高磁束密度である電磁鋼板が望まれている

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

質量%で、C:0.005%以下、Si:3.0%以上4.0%以下、Mn:3.0%以下、P:0.03%以上0.15%以下、S:0.004%以下、sol.Al:0.1%以上1.5%以下、Sn:0.06%未満、Sb:0.005%未満を含有し、かつ3.5%≦Si+sol.Al+0.5×Mn≦5.0%であり、残部がFe及び不純物からなり、降伏強度が400MPa以上であり、有機物を含む絶縁被膜の片面当たりの塗布量が0.1g/m2以上1.0g/m2以下である、電磁鋼板

技術分野

0001

本発明は、モータ発電機等の回転機の性能向上に有効な電磁鋼板に関する。

背景技術

0002

近年、地球温暖化問題、環境汚染問題、およびエネルギー問題が益々大きな関心を集めている。これらの諸問題の解決に向けて、電気機器に多数使用されるモータおよび発電機の効率向上が重要な課題となっている。具体的には、モータおよび発電機の鉄心材料である電磁鋼板の磁気特性改善が求められている。

0003

また、パワーエレクトロニクス進展により、モータおよび発電機の駆動周波数を従来の商用周波域を超える高周波域まで活用するものが増加している。このため、鉄心材料である電磁鋼板において、低周波域のみならず高周波域での鉄損が低い製品に対する要望が高まっている。特に、エアコンおよび冷蔵庫コンプレッサーモータ、またはハイブリッド車HEV)および電気自動車EV)の駆動モータまたは発電機では、高周波域での鉄損が低く、かつ高磁束密度である電磁鋼板が望まれている。更に、高周波駆動時高速回転に耐えうる電磁鋼板の材料強度に対する要求も、厳しさを増している。

0004

鉄損(特に、高周波鉄損)を低減するためには、例えば、電磁鋼板の高合金化による固有抵抗の増加によって、渦電流損を低下させることが有効である。また、高合金化による固溶強化は、電磁鋼板の強度上昇にも寄与する。しかし、電磁鋼板の合金量の増加は、磁束密度を低下させるため、低鉄損および高強度と、高磁束密度とを両立させることは困難であった。

0005

以上のような問題を解決するために、例えば、以下の特許文献1では、質量%で、Si:2.5〜4.5%と、Mn:0.005〜1.0%とを含み、かつAlの含有量が200ppm以下、S、N、およびOの含有量がそれぞれ30ppm以下であり、残部が実質的にFeである電磁鋼板であって、平均結晶粒径が0.05〜0.50mmであり、かつ{110}<001>方位からの方位差が20°以内である結晶粒面積率が25%〜75%であり、さらに引張強度が400MPa以上であることを特徴とする高周波磁気特性および機械強度特性に優れたモータ鉄心用の電磁鋼板が提案されている。

0006

また、特許文献1では、上記の特徴に加えて、質量%で、P:0.005〜0.20%、Ni:0.01〜3.50%、Sn:0.01〜0.20%、Sb:0.005〜0.50%、Cu:0.01〜0.50%、およびCr:0.01〜1.50%のうちから選択された少なくともいずれか1つ以上の元素をさらに含有する電磁鋼板も提案されている。

0007

また、以下の特許文献2では、質量%で、Si:0.8〜2.5%、Mn:0.1〜2.5%、およびsol.Al:1.5%以下を含有し、P:0.005〜0.30%、またはNi:0.05〜1.5%の少なくともいずれか1つ以上をさらに含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなり、Feの質量分率と鋼の密度との積が7.35以上、磁束密度がB50で1.70T以上、降伏強度が300MPa以上、かつ、厚さが0.15mm以上0.40mm以下であることを特徴とする無方向性電磁鋼板が提案されている。

先行技術

0008

特開2002−146491号公報
特開2002−371340号公報

発明が解決しようとする課題

0009

しかし、上記特許文献1に開示された電磁鋼板は、Al含有量が少ないため、磁気特性のばらつきが大きかった。また、電磁鋼板の強度が高くなった場合、打抜き加工時の寸法精度が満足できる水準にならなかった。

0010

また、上記特許文献2に開示された電磁鋼板では、Si含有量が少ないため、高周波鉄損と機械特性との両立が満足できる水準にならなかった。また、電磁鋼板の強度が高くなった場合、打抜き加工時の寸法精度も満足できる水準にならなかった。

0011

そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、高周波鉄損が低く、高磁束密度かつ高強度であり、打抜き加工時の寸法精度にも優れた電磁鋼板を提供することにある。

課題を解決するための手段

0012

本発明者らは、電気抵抗の増加による鉄損低減効果と、固溶強化能とが高いSiを3.0質量%以上4.0質量%以下で添加したうえで、3.5質量%≦Si+sol.Al+0.5×Mn≦5.0質量%の高合金材とすることで、磁束密度の低減を抑えつつ、高周波鉄損の改善と高強度化とを達成する電磁鋼板が実現できることを把握した。

0013

しかし、降伏強度が400MPa以上の高強度な電磁鋼板では、打抜き加工時の寸法精度が劣ることが判明したため、打抜き加工時の寸法精度への対応も含めてさらに検討した。その結果、Pの適量添加と、SnおよびSbの含有量制限とを行い、かつ有機物を含む絶縁被膜の片面当たりの塗布量を0.1g/m2以上1.0g/m2以下に制御することにより、打抜き加工時の寸法精度の改善に目処が得られることを見出した。これらの知見を参照することにより、本発明者らは、磁気特性、機械特性及び寸法精度に優れた電磁鋼板が得られることを見出した。

0014

上記知見に基づき完成された本発明の要旨は、以下の通りである。

0015

(1)質量%で、C:0.005%以下、Si:3.0%以上4.0%以下、Mn:3.0%以下、P:0.03%以上0.15%以下、S:0.004%以下、sol.Al:0.1%以上1.5%以下、Sn:0.06%未満、Sb:0.005%未満を含有し、かつ3.5%≦Si+sol.Al+0.5×Mn≦5.0%であり、残部がFe及び不純物からなり、降伏強度が400MPa以上であり、有機物を含む絶縁被膜の片面当たりの塗布量が0.1g/m2以上1.0g/m2以下である、電磁鋼板。

発明の効果

0016

以上説明したように本発明によれば、磁束密度が高く、高周波鉄損が低く、かつ高強度であり、打抜き加工時の寸法精度も良好な、電磁鋼板を提供することが可能である。

図面の簡単な説明

0017

打抜き加工時の寸法精度に対する降伏強度、および絶縁被膜の塗布量の影響を示すグラフ図である。

0018

以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。

0019

本発明者らは、電磁鋼板の化学組成と、絶縁被膜との組み合わせを抜本的に見直すことにより、磁気特性、機械特性および加工性が共に優れた電磁鋼板を得ることに成功した。

0020

本発明の一実施形態に係る電磁鋼板は、質量%で、C:0.005%以下、Si:3.0%以上4.0%以下、Mn:3.0%以下、P:0.03%以上0.15%以下、S:0.004%以下、sol.Al:0.1%以上1.5%以下、Sn:0.06%未満、Sb:0.005%未満を含有し、かつ3.5%≦Si+sol.Al+0.5×Mn≦5.0%であり、残部がFe及び不純物からなり、降伏強度が400MPa以上であり、有機物を含む絶縁被膜の片面当たりの塗布量が0.1g/m2以上1.0g/m2以下である、電磁鋼板である。なお、本実施形態に係る電磁鋼板は、具体的には、上記の特徴を有する無方向性電磁鋼板である。

0021

(1)鋼の化学組成について
以下では、まず、本実施形態に係る電磁鋼板の鋼の化学組成について、詳細に説明する。なお、以下では特に断りのない限り、「%」との表記は「質量%」を表わすものとする。

0022

[C:0.005%以下]
C(炭素)は、鉄損劣化を引き起こす元素である。そこで、本実施形態に係る電磁鋼板では、Cの含有量の上限を0.005%とする。Cの含有量が0.005%超過となる場合、電磁鋼板において鉄損劣化が生じ、良好な磁気特性を得ることができないため、好ましくない。Cの含有量は、望ましくは0.004%以下であり、更に望ましくは0.003%以下である。なお、Cの含有量は、少ないほどよく、Cの含有量の下限値は特に限定されないが、例えば、0.0001%である。

0023

[Si:3.0%以上4.0%以下]
Si(ケイ素)は、鋼の電気抵抗を上昇させて渦電流損を低減させ、高周波鉄損を改善する元素である。また、Siは、固溶強化能が大きいため、電磁鋼板の高強度化にも有効な元素である。これらの効果を十分に発揮させるためには、3.0%以上のSiを含有させることが必要である。ただし、Siの含有量が4.0%超過となる場合、電磁鋼板の加工性が著しく劣化し、電磁鋼板の冷間圧延が困難になる。そのため、Siの含有量の上限は、4.0%とする。Siの含有量は、望ましくは、3.1%以上3.8%以下であり、更に望ましくは3.2%以上3.6%以下である。

0024

[Mn:3.0%以下]
Mn(マンガン)は、鋼の電気抵抗を上昇させて渦電流損を低減し、高周波鉄損を改善するために有効な元素である。ただし、Mnの含有量が3.0%超過となる場合、磁束密度の低下が顕著となるため、Mnの含有量の上限は、3.0%とする。Mnの含有量は、望ましくは2.6%以下であり、更に望ましくは2.2%以下である。なお、Mnの含有量が少ない場合でも、Siおよびsol.Alの含有量を高めて電気抵抗を高めれば、電磁鋼板の高周波鉄損を低減することができるので、Mnの含有量の下限値は特に限定されないが、例えば、0.01%である。

0025

[P:0.03%以上0.15%以下]
P(リン)は、固溶強化能が大きく、加えて磁気特性の向上に有利な{100}集合組織を増加させる効果も有するため、高強度と高磁束密度とを両立するうえで極めて有効な元素である。更に、{100}集合組織の増加は、電磁鋼板の板面内における機械特性の異方性を低減することにも寄与するため、Pは電磁鋼板の打抜き加工時の寸法精度を改善する効果も有する。このような強度、磁気特性、および寸法精度を改善する効果を得るためには、電磁鋼板にPを0.03%以上含有させることが必要である。ただし、Pの含有量が0.15%超過となる場合、電磁鋼板の延性が著しく低下するため、Pの含有量の上限は、0.15%である。Pの含有量は、望ましくは、0.04%以上0.14%以下であり、更に望ましくは0.05%以上0.13%以下である。

0026

[S:0.004%以下]
S(硫黄)は、MnSを形成することで、電磁鋼板の磁気特性を劣化させる元素である。そのため、Sの含有量は、0.004%以下とする。Sの含有量は、望ましくは0.003%以下であり、更に望ましくは0.002%以下である。Sの含有量は、少なければ少ないほど良く、Sの含有量の下限値は、特に限定されないが、例えば、0.0001%である。

0027

[sol.Al(酸可溶性Al):0.1%以上1.5%以下]
Al(アルミニウム)は、電磁鋼板の電気抵抗を上昇させることで渦電流損を低減し、高周波鉄損を改善するために有効な元素である。sol.Al(単に、Alとも称する)の含有量が0.1%未満である場合、電気抵抗上昇の効果が小さく、また、AlNが電磁鋼板中に微細析出するため、結晶粒が微細となることで鉄損低減に悪影響を及ぼす。そのため、Alの含有量の下限値は、0.1%とする。一方、Alの含有量が1.5%超過となる場合、電磁鋼板の磁束密度の低下が著しい。従って、Alの含有量は、0.1%以上1.5%以下とした。Alの含有量は、望ましくは0.2%以上1.4%以下であり、更に望ましくは0.3%以上1.3%以下である。

0028

[Sn:0.06%未満、Sb:0.005%未満]
Sn(スズ)およびSb(アンチモン)は、電磁鋼板の機械特性の異方性を増加させる{110}集合組織の形成を促進する元素である。電磁鋼板の機械特性の異方性が増加した場合、打抜き加工時の寸法精度が劣化してしまう。このような影響は、Snに関しては0.06%以上、Sbに関しては0.005%以上含有させた場合に顕著となるため、Snの含有量は0.06%未満とし、Sbの含有量は0.005%未満とする。Snの含有量は、望ましくは0.05%未満、更に望ましくは0.04%未満である。また、Sbの含有量は、望ましくは0.004%未満、更に望ましくは0.003%未満である。なお、本実施形態に係る電磁鋼板において、SnおよびSbは、含有されていなくともよい。但し、Sn、およびSbは、鋼板表層部の窒化および酸化を抑制する効果を有しているため、本発明の範囲内であれば鋼板中に含有されていてもよい。

0029

[Si+Al+0.5×Mn:3.5%以上5.0%以下]
鉄損(特に、高周波鉄損)を低減するためには、合金元素(Si、AlおよびMn)を添加して電気抵抗を高めることが有効である。そのため、本実施形態に係る電磁鋼板では、合金元素(Si、AlおよびMn)の含有量の和を上記範囲とすることが重要である。なお、Mnの含有量当たりの電気抵抗の上昇量は、SiおよびAlに比べて約半分であるので、Si+Al+0.5×Mnを合金含有量の指標とした。Si+Al+0.5×Mnが3.5%未満となる場合、十分な電気抵抗が得られないため、電磁鋼板は、満足できるような高周波鉄損を実現することが困難になる。一方、Si+Al+0.5×Mnが5.0%超過となる場合、合金元素が多すぎるため、磁束密度の低下が著しくなる。従って、Si+Al+0.5×Mnは、3.5%以上5.0%以下とする。Si+Al+0.5×Mnは、望ましくは、3.6%以上4.9%以下であり、更に望ましくは、3.7%以上4.8%以下である。

0030

なお、本実施形態に係る電磁鋼板において、上述した元素以外のNi(ニッケル)、Cr(クロム)、Cu(銅)、およびMo(モリブデン)等の元素の含有量に関しては、特に規定されない。本実施形態に係る電磁鋼板では、これらの元素を0.3%以下で含有しても、本発明の効果に特に影響はない。また、電磁鋼板の仕上焼鈍時の結晶粒成長を促進するために、Ca(カルシウム)を30ppm以下の範囲で含有しても、本発明の効果に特に影響はなく、希土類元素(Rare Earth Metal:REM)を100ppm以下の範囲で含有しても、本発明の効果に特に影響はない。

0031

(2)降伏強度について
次に、本実施形態に係る電磁鋼板の降伏強度について説明する。

0032

[降伏強度:400MPa以上]
近年、モータの小型化および高出力化のために、モータの回転数はますます増加する傾向にある。高速回転するロータ鉄心には、大きな遠心力と、繰り返し応力とが付加されるため、ロータ鉄心の変形および疲労破壊の可能性が増大していた。

0033

このようなロータ鉄心の変形および疲労破壊を抑制するために、本実施形態に係る電磁鋼板の降伏強度は、400MPa以上とする。本実施形態に係る電磁鋼板の降伏強度は、望ましくは410MPa以上であり、更に望ましくは420MPa以上である。なお、鉄心の変形および疲労破壊をさらに抑制する観点から、電磁鋼板の降伏強度の上限は特に限定されない。ただし、800MPaを超える降伏強度は、電磁鋼板の製造コストが高くなるため、望ましくない。

0034

電磁鋼板の降伏強度を高め、本発明の範囲とするためには、例えば、SiまたはPなどの固溶強化能が高い元素の含有量を増加させること、および電磁鋼板の結晶粒径を微細化することなどを用いればよい。ただし、結晶粒径を過度に微細化した場合、鉄損が劣化するため、結晶粒径は、強度と鉄損とが両立される適正な粒径に制御される必要がある。

0035

なお、電磁鋼板の降伏強度は、例えば、JIS Z 2241に記載された方法を用いることで測定することができる。例えば、電磁鋼板の上降伏点または0.2%の永久伸びを起こすときの耐力である0.2%耐力を求めて、その値を用いればよい。

0036

(3)絶縁被膜の塗布量について
続いて、本実施形態に係る電磁鋼板の絶縁被膜の塗布量について説明する。

0037

[絶縁被膜の塗布量:0.1g/m2以上1.0g/m2以下]
無方向性電磁鋼板には、無機物主体とし、さらに有機物を含んだ複合絶縁被膜鋼板の両面に塗布されることが一般的である。ここで、複合絶縁被膜とは、例えば、リン酸金属塩またはコロイダルシリカを主体とし、微細な有機樹脂粒子が分散した絶縁被膜である。

0038

本発明者らは、本実施形態に係る電磁鋼板の絶縁被膜の塗布量について鋭意検討したところ、塗布量を上記範囲とすることが重要であることが判明した。

0039

具体的には、質量%で、C:0.002%、Si:3.12%、Mn:0.26%、P:0.078%、S:0.001%、sol.Al:0.65%、およびSn:0.004%を含有し、残部がFe及び不純物からなる0.30mm厚の電磁鋼板と、質量%で、C:0.002%、Si:3.10%、Mn:0.24%、P:0.012%、S:0.001%、sol.Al:0.66%、およびSn:0.004%を含有し、残部がFe及び不純物からなる0.30mm厚の電磁鋼板とを打抜き加工して、打抜き加工後のロータ鉄心の寸法精度を調査した。なお、前者の電磁鋼板の降伏強度は、430MPaであり、後者の電磁鋼板の降伏強度は、390MPaである。それぞれの電磁鋼板にて、仕上焼鈍後の絶縁被膜の塗布量を変化させて、絶縁被膜の塗布量と、打抜き加工後のロータ鉄心の寸法精度との関係を調査した。なお、本明細書において、絶縁被膜の塗布量は、いずれも電磁鋼板の片面当たりの塗布量を示す。

0040

その結果を図1に示す。図1は、打抜き加工時の寸法精度に対する降伏強度、および絶縁被膜の塗布量の影響を示すグラフ図である。

0041

図1に示すように、430MPaの電磁鋼板では、絶縁被膜の塗布量が1.0g/m2を超える場合、打抜き加工後のロータ鉄心の寸法ばらつきが大きくなることがわかった。一方、390MPaの電磁鋼板では、絶縁被膜の塗布量による寸法ばらつきに大きな差は認められなかった。その理由は十分には解明できていないが、強度が高い電磁鋼板では、打抜き加工時の荷重が増大するため、潤滑効果のある有機物を含む絶縁被膜が厚くなった場合、電磁鋼板の機械特性の異方性が影響し、寸法変化が大きくなった可能性があると推測される。

0042

そこで、本発明では、有機物を含む絶縁被膜の塗布量の上限を片面当たり1.0g/m2とする。絶縁被膜の塗布量は、望ましくは片面当たり0.9g/m2以下であり、更に望ましくは片面当たり0.8g/m2以下である。また、絶縁被膜の塗布量は、絶縁被膜を均一塗布する観点から0.1g/m2以上とした。絶縁被膜の塗布量は、望ましくは0.2g/m2以上であり、更に望ましくは0.3g/m2以上である。

0043

絶縁被膜の塗布量は、絶縁被膜を塗布した電磁鋼板を熱アルカリ溶液に浸漬することで絶縁被膜のみを除去し、絶縁被膜の除去前後の質量差から算出することが可能である。前述の実験では、例えば、100mm角の電磁鋼板の供試材を80℃の20%NaOH水溶液に10分間浸漬し、浸漬前後での供試材の質量差から片面当たりの絶縁被膜の塗布量を算出した。

0044

なお、ロータ鉄心の打抜き加工の条件は、以下の通りである。打抜かれるロータ鉄心の形状は、8極の永久磁石埋め込み型モータのロータ鉄心の形状とし、外径160mmの円盤状とした。また、打抜き金型クリアランスは、打抜く電磁鋼板の板厚の8%とした。打抜き加工後、打抜いたロータ鉄心の外径寸法を測定し、狙いの外径寸法160mmと、測定された外径寸法との差の最大値をロータ鉄心の外径バラツキとして、寸法精度の指標とした。

0045

以上、本実施形態に係る電磁鋼板について、詳細に説明した。

0046

なお、本実施形態に係る電磁鋼板の製造方法については、特に限定されるものではなく、一般的な電磁鋼板の製造プロセスを適用することが可能である。すなわち、上記の(1)にて説明した組成を有する鋼スラブ熱間圧延し、熱間圧延したままの熱延板、または熱間圧延した後、熱延板焼鈍した熱延板を冷間圧延(一回の冷延圧延ではなく、中間焼鈍を挟んだ二回の冷間圧延でもよい)し、仕上焼鈍を行った後、絶縁被膜の塗布を行うことにより、本実施形態に係る電磁鋼板を製造することができる。

0047

以下に、実験例を示しながら、本発明の一実施形態に係る電磁鋼板について、より具体的に説明する。なお、以下に示す実験例は、本実施形態に係る電磁鋼板のあくまでも一例に過ぎず、本実施形態に係る電磁鋼板が以下に示す実験例に限定されるものではない。

0048

ここで、以下で示す磁束密度B50、および鉄損W10/800といった磁気特性の測定方法については、特に限定されるものではなく、例えば、JIS C 2550に規定されているエプスタイン試験に基づく方法、またはJIS C 2556に規定されている単板磁気特性試験法(Single Sheet Tester:SST)など、公知の方法を用いることが可能である。なお、磁束密度B50は、5000A/mの磁化力での磁束密度であり、鉄損W10/800は、1.0T、800Hzの高周波での鉄損である。

0049

以下の実験例では、55mm角に打抜いた電磁鋼板の試験片を用いた単板磁気測定(SST)によって、電磁鋼板の磁気特性(磁束密度および鉄損)を評価した。具体的には、鋼板板面の色々な方向に磁束が流れるモータ鉄心での磁気特性を評価するために、鋼板の圧延方向に対して、0°、22.5°、45°、67.5°、および90°の5方向の磁気特性を測定し、以下の式で全周平均の磁気特性を算出した。すなわち、以下の式で表される磁気特性が良好なほど、無方向性電磁鋼板として好適であることを示す。

0050

磁気特性=(0°特性+2×22.5°特性+2×45°特性+2×67.5°特性+90°特性)/8

0051

(実験例1)
以下の表1に示す組成を含有し、残部がFeおよび不純物からなる鋼スラブを、1150℃に加熱した後、熱間圧延にて2.0mm厚に圧延した。続いて、熱延板を1000℃で40秒の熱延板焼鈍した後、冷間圧延で0.25mm厚として、1000℃で15秒の仕上焼鈍を行い、更にリン酸金属塩を主体とし、アクリル樹脂エマルジョンを含む溶液を鋼板の両面に塗布および焼き付けし、複合絶縁被膜を形成することで電磁鋼板を製造した。

0052

0053

なお、表1において、「Tr.」とは、該当する元素を意図して添加していないことを表す。

0054

その後、製造した電磁鋼板を55mm角に打ち抜き、単板磁気測定(SST)により磁束密度B50および鉄損W10/800を評価した。

0055

また、寸法精度の評価に関しては、製造した電磁鋼板を前述した外径160mmのロータ鉄心の形状に打抜き、打抜いたロータ鉄心の外径寸法と、狙いの外径寸法である160mmとの差の最大値をロータ鉄心の外径バラツキとした。なお、打抜き金型のクリアランスは、打抜く電磁鋼板の板厚の8%に設定した。外径バラツキが32μm以下である場合を寸法精度が良好(○)であると評価し、外径バラツキが32μmを超える場合を寸法精度が不良(×)と評価した。得られた結果を、以下の表2に示す。

0056

0057

表2に示すように、鋼板の化学組成、絶縁被膜の塗布量、および降伏強度が本発明の範囲である試験番号1、3、6、7、10および11は、鉄損および磁束密度がともに優れ、打抜き加工時の寸法精度が良好であることがわかった。一方、鋼板の化学組成が本発明の範囲であっても、絶縁被膜の塗布量が本発明の範囲から高めに外れた試験番号2、4は、磁気特性に優れるものの、打抜き加工時の寸法精度が劣っていることがわかった。また、鋼板のSiの含有量と、Si+Al+0.5×Mnの含有量とが本発明の範囲より低く、降伏強度が本発明の範囲を下回る試験番号5は、鉄損も劣っていることがわかった。また、鋼板のPの含有量が本発明の範囲よりも低めに外れた試験番号8は、機械特性や磁気特性は優れるものの寸法精度が劣っていることがわかった。さらに、鋼板のSbの含有量が本発明の範囲よりも高めに外れた試験番号9は、機械特性や磁気特性は優れるものの寸法精度が劣っていることがわかった。

0058

(実験例2)
以下の表3に示す組成を含有し、残部がFeおよび不純物からなる鋼スラブを、1100℃に加熱した後、熱間圧延にて1.8mm厚に圧延した。次に、熱延板を975℃で40秒の熱延板焼鈍した後、冷間圧延で0.20mm厚として、1000℃で15秒の仕上焼鈍を行い、更にリン酸金属塩を主体とし、アクリル樹脂のエマルジョンを含む溶液を鋼板の両面に塗布および焼き付けし、複合絶縁被膜を形成することで電磁鋼板を製造した。

0059

なお、実験例2は、実験例1よりも電磁鋼板の板厚が薄く、渦電流損が小さいため、鉄損がより小さい場合の実験例である。実験例2を参照すると、本発明の一実施形態に係る電磁鋼板は、板厚に関係なく、磁気特性、機械強度および打抜き加工時の寸法精度を改善可能であることがわかる。

0060

0061

なお、表3において、「Tr.」とは、該当する元素を意図して添加していないことを表す。

0062

その後、製造した電磁鋼板を55mm角に打ち抜き、実験例1と同様の方法で単板磁気測定(SST)により磁束密度B50および鉄損W10/800を評価した。また、実験例1と同様の方法で電磁鋼板を打抜き加工し、寸法精度の評価を行った。得られた結果を以下の表4に示す。

0063

0064

表4に示すように、鋼板の化学組成、絶縁被膜の塗布量、および降伏強度が本発明の範囲である試験番号13、14、および15は、鉄損および磁束密度がともに優れ、打抜き加工時の寸法精度が良好であることがわかった。一方、鋼板のSi+Al+0.5×Mnの含有量が本発明の範囲から低めに外れた試験番号12は、鉄損が劣っていることがわかった。

実施例

0065

以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

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