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課題
解決手段
概要
背景
一般に、製品の品質に影響を与える要因を分析するために、その製品を製造するプロセスにおいて観測の対象となる要素の観測データを分析することが行われる。このような分析手法として、製品の品質に関わる要素の観測データと相関性の高い観測データを統計分析によって抽出し、抽出した観測データの要素を、製品の品質に影響を与える要因とみなす技術が知られている。
例えば、特許文献1に記載された関連技術は、プロセスの各工程における製造条件値や計測値を製造因子データとして収集する。また、この関連技術は、製造された製品について品質指標データを算出する。そして、この関連技術は、PLS(Partial Least Square)回帰分析を用いて、品質指標データに対して相関が高い製造因子データを抽出し、その調整内容を決定する。
また、例えば、特許文献2に記載された関連技術は、製品の品質を、製品条件のうち変更可能な条件を表す操作可能変数および変更不可能な条件を表す外乱変数の和として、線形回帰式により定義する。そして、この関連技術は、品質の実績データおよび製造条件の実績データに基づいて、線形回帰式における係数を算出する。そして、この関連技術は、線形回帰式の係数および製造条件の実績データを用いて、製造条件の目標値を算出し、算出した目標値に基づいて、製造条件を変更する。
また、例えば、特許文献3に記載された関連技術は、製品の検査結果とプロセスにおける特徴量との相関関係を分析する。このとき、この関連技術は、複数種類の解析処理を用いて、説明変数を絞り込む処理を実行する。
このように、これらの関連技術は、製品を製造するプロセスにおける特徴量のうち、製品の検査結果に対して高い相関関係を示す特徴量を、品質の低下や異常の発生の要因として抽出する。そして、これらの関連技術は、製品の品質を正常な値に復帰させるために、抽出した特徴量の値を操作する。
概要
製品の品質に影響を与える真の要因をより精度よく抽出する技術を提供すること。製品を製造するプロセスにおいて観測の対象となる各種の要素について観測データを取得する観測データ取得部11と、製品の品質に関わる要素の観測データに対して関係性を有する他の観測データの要素を抽出する第1抽出部12と、抽出された要素が、製品の品質に影響を与える要因として有効であるか否かを判断する有効性判断部13と、有効でないと判断された要素の観測データに対して関係性を有する他の観測データの要素を抽出する第2抽出部14と、有効であると判断された要素に関する情報を、要因として出力する要因出力部15と、を備える。
目的
本発明は、製品の品質に影響を与える真の要因をより精度よく抽出する技術を提供する
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 1件
- 牽制数
- 0件
この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
請求項1
製品を製造するプロセスにおいて観測の対象となる各種の要素について観測データを取得する観測データ取得部と、前記観測データのうち、前記製品の品質に関わる要素の観測データに対して関係性を有する観測データの要素を抽出する第1抽出部と、抽出された前記要素が、前記製品の品質に影響を与える要因として有効であるか否かを判断する有効性判断部と、前記有効性判断部により有効でないと判断された要素の観測データに対して関係性を有する他の観測データの要素を抽出する第2抽出部と、前記有効性判断部により有効であると判断された要素に関する情報を、前記要因として出力する要因出力部と、を備えた要因分析装置。
請求項2
前記第2抽出部は、前記有効性判断部により有効であると判断される要素が得られるまで、有効でないと判断された要素の観測データに対して関係性を有する他の観測データの要素の抽出を繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の要因分析装置。
請求項3
前記有効性判断部は、前記要素がその観測データを操作可能であるか否かを表す情報に基づいて、有効であるか否かを判断することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の要因分析装置。
請求項4
前記有効性判断部は、前記要素が前記製品の品質に影響を与える真の要因となり得ると判断可能であるか否かに基づいて、有効であるか否かを判断することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の要因分析装置。
請求項5
請求項6
前記第1抽出部または前記第2抽出部は、前記関係性を分析する手法として、インバリアントな関係性を分析する手法を用いることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の要因分析装置。
請求項7
前記第2抽出部は、前記関係性を分析する手法として、前記第1抽出部が前記関係性を分析するために用いる手法とは異なる手法を用いることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の要因分析装置。
請求項8
コンピュータ装置が、製品を製造するプロセスにおいて観測の対象となる各種の要素について観測データを取得し、前記観測データのうち、前記製品の品質に関わる要素の観測データに対して関係性を有する観測データの要素を抽出し、抽出した要素が、前記製品の品質に影響を与える要因として有効であるか否かを判断し、有効でないと判断した要素の観測データに対して関係性を有する他の観測データの要素を抽出し、有効であると判断した要素に関する情報を、前記要因として出力する方法。
請求項9
技術分野
背景技術
0002
一般に、製品の品質に影響を与える要因を分析するために、その製品を製造するプロセスにおいて観測の対象となる要素の観測データを分析することが行われる。このような分析手法として、製品の品質に関わる要素の観測データと相関性の高い観測データを統計分析によって抽出し、抽出した観測データの要素を、製品の品質に影響を与える要因とみなす技術が知られている。
0003
例えば、特許文献1に記載された関連技術は、プロセスの各工程における製造条件値や計測値を製造因子データとして収集する。また、この関連技術は、製造された製品について品質指標データを算出する。そして、この関連技術は、PLS(Partial Least Square)回帰分析を用いて、品質指標データに対して相関が高い製造因子データを抽出し、その調整内容を決定する。
0004
また、例えば、特許文献2に記載された関連技術は、製品の品質を、製品条件のうち変更可能な条件を表す操作可能変数および変更不可能な条件を表す外乱変数の和として、線形回帰式により定義する。そして、この関連技術は、品質の実績データおよび製造条件の実績データに基づいて、線形回帰式における係数を算出する。そして、この関連技術は、線形回帰式の係数および製造条件の実績データを用いて、製造条件の目標値を算出し、算出した目標値に基づいて、製造条件を変更する。
0005
また、例えば、特許文献3に記載された関連技術は、製品の検査結果とプロセスにおける特徴量との相関関係を分析する。このとき、この関連技術は、複数種類の解析処理を用いて、説明変数を絞り込む処理を実行する。
0006
このように、これらの関連技術は、製品を製造するプロセスにおける特徴量のうち、製品の検査結果に対して高い相関関係を示す特徴量を、品質の低下や異常の発生の要因として抽出する。そして、これらの関連技術は、製品の品質を正常な値に復帰させるために、抽出した特徴量の値を操作する。
先行技術
0007
特許第5229631号公報
特開2009−64054号公報
特開2007−250647号公報
発明が解決しようとする課題
0008
しかしながら、上述の関連技術には、以下の課題がある。
0009
実際には、製品の検査結果の変化に対して相関性が高い特徴量が、製品の品質に影響を与える主要因でないケースがある。つまり、製品の検査結果に対して相関性が高い特徴量は、必ずしも真の要因であるとは限らない。したがって、これらの関連技術を用いても、製品の検査結果に対して相関性が高い特徴量を調整するだけでは、品質の改善につながらないことがある。このように、これらの関連技術は、製品の品質に影響を与える真の要因を精度よく抽出することができなかった。
0010
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明は、製品の品質に影響を与える真の要因をより精度よく抽出する技術を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
0011
本発明の要因分析装置は、製品を製造するプロセスにおいて観測の対象となる各種の要素について観測データを取得する観測データ取得部と、前記観測データのうち、前記製品の品質に関わる要素の観測データに対して関係性を有する観測データの要素を抽出する第1抽出部と、抽出された前記要素が、前記製品の品質に影響を与える要因として有効であるか否かを判断する有効性判断部と、前記有効性判断部により有効でないと判断された要素の観測データに対して関係性を有する他の観測データの要素を抽出する第2抽出部と、前記有効性判断部により有効であると判断された要素に関する情報を、前記要因として出力する要因出力部と、を備える。
0012
また、本発明の方法は、コンピュータ装置が、製品を製造するプロセスにおいて観測の対象となる各種の要素について観測データを取得し、前記観測データのうち、前記製品の品質に関わる要素の観測データに対して関係性を有する観測データの要素を抽出し、抽出した要素が、前記製品の品質に影響を与える要因として有効であるか否かを判断し、有効でないと判断した要素の観測データに対して関係性を有する他の観測データの要素を抽出し、有効であると判断した要素に関する情報を、前記要因として出力する。
0013
また、本発明のプログラムは、製品を製造するプロセスにおいて観測の対象となる各種の要素について観測データを取得する観測データ取得ステップと、前記観測データのうち、前記製品の品質に関わる要素の観測データに対して関係性を有する観測データの要素を抽出する第1抽出ステップと、抽出された要素が、前記製品の品質に影響を与える要因として有効であるか否かを判断する有効性判断ステップと、有効でないと判断された要素の観測データに対して関係性を有する他の観測データの要素を抽出する第2抽出ステップと、有効であると判断された要素に関する情報を前記要因として出力する要因出力ステップと、をコンピュータ装置に実行させる。
発明の効果
0014
本発明は、製品の品質に影響を与える真の要因をより精度よく抽出する技術を提供することができる。
図面の簡単な説明
0015
本発明の第1の実施の形態としての要因分析装置の構成を示すブロック図である。
本発明の第1の実施の形態としての要因分析装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
本発明の第1の実施の形態としての要因分析装置の動作を説明するフローチャートである。
本発明の第2の実施の形態としての要因分析装置の構成を示すブロック図である。
本発明の第2の実施の形態としての要因分析装置の動作を説明するフローチャートである。
実施例
0016
以下、本発明の各実施の形態としての要因分析装置について、図面を参照して詳細に説明する。
0017
なお、以下の説明において、要因分析装置は、製品を製造するプロセスにおいて観測の対象となる要素のうち、製品の品質に影響を与える要因となる要素を抽出する装置である。要因分析装置が対象とするプロセスの具体例としては、例えば、半導体、食品または薬品等を製造するプロセスが挙げられる。ただし、要因分析装置が対象とするプロセスは、これらに限定されない。各実施の形態の要因分析装置は、各種の要素について観測データが取得可能なその他の製造プロセスを対象とすることが可能である。
0018
また、以下に説明する各実施の形態において、製品を製造するプロセスにおいて観測の対象となる要素としては、圧力、流量、弁開度、大気圧、外気温、水温、または、天候等が挙げられる。これらの要素の観測データは、圧力センサ、流量センサ、温度センサ等といったように、その要素の観測に適切な各種のセンサによって取得されるものであってもよい。また、観測の対象となる要素には、製品の品質に関わる要素が含まれる。そのような要素の観測データとしては、例えば、コンピュータ装置に対する入力に基づく値や、1つ以上の観測データに基づき算出される値が取得されてもよい。ただし、要因分析装置が対象とするプロセスにおいて観測の対象となる要素は、これらに限定されない。
0019
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態としての要因分析装置1の機能ブロック構成を図1に示す。図1において、要因分析装置1は、観測データ取得部11と、第1抽出部12と、有効性判断部13と、第2抽出部14と、要因出力部15とを備える。
0020
ここで、要因分析装置1は、図2に示すようなハードウェア要素によって構成可能である。図2において、要因分析装置1は、CPU(Central Processing Unit)1001、メモリ1002、出力装置1003、入力装置1004、および、ネットワークインタフェース1005を含む。メモリ1002は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、補助記憶装置(ハードディスク等)等によって構成される。出力装置1003は、ディスプレイ装置やプリンタ等のように、情報を出力する装置によって構成される。入力装置1004は、キーボードやマウス等のように、ユーザ操作の入力を受け付ける装置によって構成される。ネットワークインタフェース1005は、ネットワークに接続するインタフェースである。この場合、要因分析装置1の各機能ブロックは、メモリ1002に格納されるプログラムを読み込んで実行するとともに出力装置1003、入力装置1004、ネットワークインタフェース1005等の各部を制御するCPU1001によって構成される。なお、要因分析装置1およびその各機能ブロックのハードウェア構成は、上述の構成に限定されない。
0021
観測データ取得部11は、製品を製造するプロセスにおいて観測の対象となる各種の要素について観測データを取得する。前述のように、観測の対象となる要素には、製品の品質に関わる要素が含まれる。
0022
例えば、観測データ取得部11は、ネットワークインタフェース1005を介して、製品を製造する装置から観測データを収集してもよい。あるいは、観測データ取得部11は、メモリ1002に格納されている観測データを取得してもよい。あるいは、観測データ取得部11は、可搬型記憶媒体に格納されている観測データを取得してもよい。観測データは、例えば、要素ごとに観測されるデータの時系列によって構成される。
0023
第1抽出部12は、取得された観測データのうち、製品の品質に関わる要素の観測データに対して関係性を有する観測データの要素を抽出する。具体的には、第1抽出部12は、製品の品質に関わる要素の観測データと、他の要素の観測データとの間の関係性を分析することにより、関係性の強さを表す情報を得る。そして、第1抽出部12は、関係性の強さが所定条件を満たす場合に、当該他の要素を抽出してもよい。なお、第1抽出部12は、観測データ間の関係性の分析に、各種の公知の技術を採用可能である。
0024
有効性判断部13は、抽出された要素が、製品の品質に影響を与える要因として有効であるか否かを判断する。ここで、有効性判断部13が判断の対象とする要素は、前述の第1抽出部12により抽出された要素または後述の第2抽出部14により抽出された要素である。例えば、有効性判断部13は、各要素について事前に与えられている知識に基づいて、その要素が有効であるか否かを判断してもよい。また、有効性判断部13は、出力装置1003に判断対象の要素を出力し、出力した要素について入力装置1004を介して入力される情報に基づいて、その要素が有効であるか否かを判断してもよい。
0025
第2抽出部14は、第1抽出部12により抽出された要素について有効でないと判断された場合に機能する。この場合、第2抽出部14は、有効でないと判断された要素の観測データに対して関係性を有する他の観測データの要素を抽出する。具体的には、第2抽出部14は、第1抽出部12によって抽出された要素であって、有効性判断部13によって有効でないと判断された要素の観測データを使用する。そして、第2抽出部14は、有効でないと判断された観測データと、第1抽出部12によって抽出されなかった要素の観測データとの間の関係性を分析することにより、関係性の強さを表す情報を得る。そして、第2抽出部14は、関係性の強さが所定条件を見たす場合に、第1抽出部12によって抽出されなかった方の要素を抽出してもよい。なお、第2抽出部14は、観測データ間の関係性の分析に、各種の公知の技術を採用可能である。
0026
要因出力部15は、第1抽出部12または第2抽出部14により抽出された要素のうち、有効性判断部13により有効であると判断された要素に関する情報を、要因として出力する。要素に関する情報には、例えば、その要素を特定する情報と、その観測データとが含まれていてもよい。出力先は、例えば、出力装置1003であってもよいし、メモリ1002であってもよい。
0027
以上のように構成された要因分析装置1の動作について、図3を参照して説明する。
0028
図3では、まず、観測データ取得部11は、製品を製造するプロセスにおいて観測の対象となる各種の要素に関する観測データを取得する(ステップS1)。
0029
次に、第1抽出部12は、取得された観測データのうち、製品の品質に関わる要素の観測データに対して関係性を有する観測データの要素を抽出する(ステップS2)。
0030
次に、有効性判断部13は、抽出された要素が、製品の品質に影響を与える要因として有効であるか否かを判断する(ステップS3)。
0031
ここで、抽出された要素が有効でないと判断された場合、第2抽出部14は、有効でないと判断された要素の観測データに対して関係性を有する他の観測データの要素を抽出する(ステップS4)。
0032
そして、要因分析装置1は、ステップS3からの動作を繰り返す。つまり、ステップS4の後に実行されるステップS3では、第2抽出部14によって抽出された要素に対して、有効であるか否かを判断する処理が実行される。
0033
一方、ステップS3において、抽出された要素が有効であると判断された場合、要因出力部15は、その要素に関する情報を、要因として出力する(ステップS5)。出力先は、例えば、出力装置1003であってもよいし、メモリ1002であってもよい。もし、ステップS3において、複数の要素が有効であると判断された場合、要因出力部15は、それらの要素それぞれに関する情報を、要因として出力すればよい。
0034
以上で、要因分析装置1は、動作を終了する。
0035
なお、上述の動作において、第1抽出部12および第2抽出部14は、一方の要素の観測データに対して関係性を有する他方の観測データの要素として、1つの要素を抽出してもよいし、複数の要素を抽出してもよい。
0036
例えば、ステップS2で、第1抽出部12が、複数の要素を抽出したとする。この場合、ステップS3で、有効性判断部13は、抽出された各要素について、有効であるか否かを判断する。そして、有効であると判断された少なくとも1つの要素があれば、要因分析装置1の動作はステップS5に進み、該当する各要素に関する情報を出力する。
0037
一方、この場合、いずれの要素も有効でないと判断された場合、ステップS4で、第2抽出部14は、有効でないと判断された要素のそれぞれについて、その要素の観測データに対して関係性を有する他の観測データの要素を抽出する。このとき、第2抽出部14は、有効でないと判断された1つの要素の観測データに対して、関係性を有する他の観測データの要素として、1つの要素を抽出してもよいし、複数の要素を抽出してもよい。
0038
もし、ステップS4で、第2抽出部14が、複数の要素を抽出したとする。この場合、ステップS3で、有効性判断部13は、抽出された各要素について、有効であるか否かを判断する。そして、以降、要因分析装置1は、有効であると判断された要素が少なくとも1つ得られるまで、ステップS3〜S4の動作を繰り返せばよい。
0039
次に、本発明の第1の実施の形態の効果について述べる。
0040
本発明の第1の実施の形態としての要因分析装置は、製品の品質に影響を与える真の要因をより精度よく抽出することができる。
0041
その理由について説明する。本実施の形態では、観測データ取得部が、製品を製造するプロセスにおいて観測の対象となる各種の要素について観測データを取得する。また、第1抽出部が、取得された観測データのうち、製品の品質に関わる要素の観測データに対して関係性を有する観測データの要素を抽出する。すると、有効性判断部が、抽出された要素が、製品の品質に影響を与える要因として有効であるか否かを判断する。そして、抽出された要素が有効でないと判断された場合、第2抽出部が、有効でないと判断された要素の観測データに対して関係性を有する他の観測データの要素を抽出する。すると、有効性判断部が、抽出された要素が、製品の品質に影響を与える要因として有効であるか否かを判断する。そして、要因出力部が、第1抽出部または第2抽出部により抽出された要素のうち、有効性判断部により有効であると判断された要素に関する情報を要因として出力するからである。
0042
このように、本実施の形態は、製品の品質に関わる観測データに対して関係性を有する観測データの要素が、製品の品質に影響を与える要因として適切でない場合には、その観測データと関係性を有する他の観測データの要素を新たに抽出する。したがって、新たに抽出された要素は、製品の品質に影響を与える真の要因としてより適切である可能性が高くなる。
0043
例えば、製品の品質に関わる要素の観測データは、良・不良等といった2値データであったり、製品の品質に関わらない要素よりも観測の間隔が大きかったりするケースがある。このようなケースでは、製品の品質に関わる要素の観測データに対して関係性を有する他の観測データの要素が、必ずしも要因として有効でないことも多い。そのような場合に、本実施の形態は、製品の品質に関わる要素の観測データとの関係性を有する他の観測データに対して、関係性を有するさらに他の観測データを抽出することで、要因としてより有効な要素を抽出する可能性を高めている。
0044
さらに、本実施の形態では、第2抽出部が、有効であると判断される要素が得られるまで、有効でないと判断された要素の観測データに対して関係性を有する他の観測データの要素の抽出を繰り返す。その結果、本実施の形態は、製品の品質に影響を与える真の要因としてより適切な要素を、より確実に抽出することができる。
0045
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施の形態の説明において参照する各図面において、本発明の第1の実施の形態と同一の構成および同様に動作するステップには同一の符号を付して本実施の形態における詳細な説明を省略する。
0046
まず、本発明の第2の実施の形態としての要因分析装置2の構成を図4に示す。図4において、要因分析装置2は、本発明の第1の実施の形態としての要因分析装置1に対して、第1抽出部12に替えて第1抽出部22と、第2抽出部14に替えて第2抽出部24とを備える点が異なる。さらに、要因分析装置2は、要因分析装置1に対して、観測データ取得部11に替えて観測データ取得部21と、有効性判断部13に替えて有効性判断部23とを備える点が異なる。また、要因分析装置2は、要因分析装置1に対して、観測データ蓄積部26と、事前知識記憶部27とをさらに備える点が異なる。
0047
なお、要因分析装置2およびその機能ブロックは、図2を参照して説明した本発明の第1の実施の形態と同様のハードウェア要素によって構成可能である。ただし、要因分析装置2およびその機能ブロックのハードウェア構成は、上述の構成に限定されない。
0048
観測データ蓄積部26は、目的変数領域と、説明変数領域とからなる。
0049
観測データ取得部21は、製品を製造する装置から、各種の要素に関する観測データを観測される度に取得する。そして、観測データ取得部21は、観測データを取得すると、その観測データの要素が品質に関わる要素であれば、観測データ蓄積部26の目的変数領域に、その要素を表す情報に関連付けて蓄積する。また、観測データ取得部21は、観測データを取得すると、その観測データの要素が品質に関わる要素以外であれば、観測データ蓄積部26の説明変数領域に、その要素を表す情報に関連付けて蓄積する。各要素について蓄積される観測データは、時系列データとなる。以降、目的変数領域に蓄積された要素の観測データを、その要素の目的時系列データとも記載する。また、説明変数領域に蓄積された要素の観測データを、その要素の説明時系列データとも記載する。
0050
第1抽出部22は、目的時系列データと説明時系列データとの間について、相関分析により相関係数を算出する。具体的には、第1抽出部22は、観測データ蓄積部26に記憶された目的時系列データおよび説明時系列データの各組み合わせについて、相関分析を行えばよい。そして、第1抽出部22は、ある目的時系列データに対する相関係数が閾値以上となった説明時系列データについて、その要素を抽出する。
0051
事前知識記憶部27は、観測の対象となる各要素について、その観測データが操作可能であるか否かを表す情報を記憶する。例えば、前述した圧力、流量、弁開度、大気圧、外気温、水温、または、天候等の要素のうち、圧力、流量、弁解度は、その観測データが操作可能である場合が多い。一方、大気圧、外気温、水温、または、天候等は、その観測データは操作不可能である場合が多い。また、事前知識記憶部27は、各要素について、各種の情報を記憶する。各要素について記憶される情報は、その要素が、製品の品質に影響を与える真の要因となり得るか否かに関連する情報であることが望ましい。
0052
有効性判断部23は、事前知識記憶部27に記憶された情報に基づいて、第1抽出部22または第2抽出部24によって抽出された要素が有効であるか否かを判断する。
0053
具体的には、有効性判断部23は、該当する要素が、その観測データを操作可能な要素であれば、有効であると判断し、そうでない場合には、有効でないと判断してもよい。また、有効性判断部23は、該当する要素が、製品の品質に影響を与える真の要因となり得ると判断可能である場合には、有効であると判断し、そうでない場合には、有効でないと判断してもよい。
0054
例えば、有効性判断部23は、該当する要素について事前知識記憶部27に記憶された操作可能であるか否かを表す情報に基づいて、その要素が操作可能であるか否かを判断可能である。また、例えば、有効性判断部23は、該当する要素について事前知識記憶部27に記憶された各種情報に基づいて、その要素が製品の品質に影響を与える真の要因となり得るか否かを判断可能である。また、例えば、有効性判断部23は、その要素に関する各種情報を出力装置1003に出力し、出力に応じて入力装置1004から入力される情報に基づいて、その要素が製品の品質に影響を与える真の要因となり得るか否かを判断してもよい。
0055
第2抽出部24は、第1抽出部22により抽出された要素について有効でないと判断された場合に機能する。この場合、第2抽出部24は、有効でないと判断された要素の説明時系列データに対して、インバリアントな関係性を有する他の説明時系列データの要素を抽出する。例えば、第2抽出部24は、インバリアントな関係性を分析する手法として、ARX(Auto Regressive eXogenous)モデルに基づく手法を採用してもよい。
0056
ここで、インバリアントな関係性について説明する。ある事象において観測により得られる時系列データのうち、第1の時系列データについて、その予測値が、第2の時系列データを用いた予測式により求められるとする。このとき、予測式によって得られた第1の時系列データの予測値と、第1の時系列データの観測値との間には、予測誤差が存在する。予測式を含むモデルが事象を正しく表し、事象に異常が発生していない場合、この予測誤差は小さく、所定の閾値以下に収まる。ここでは、このような予測誤差が閾値以下に収まる場合、第1の時系列データおよび第2の時系列データは、インバリアントな関係性を有するという。
0057
また、第2抽出部24によって抽出された要素は、第1抽出部22によって抽出された要素と同様に、有効性判断部23によって有効であるか否かが判断される。そして、第2抽出部24は、有効であると判断される要素が得られるまで、有効でないと判断された要素の説明時系列データに対してインバリアントな関係性を有する他の説明時系列データの要素を、さらに抽出する処理を繰り返す。
0058
以上のように構成された要因分析装置2の動作について、図5を参照して説明する。
0059
図5では、まず、観測データ取得部21は、製品を製造する装置から、観測の対象となる各種の要素について、製造のプロセスにおいて観測される観測データを取得する(ステップS11)。
0060
次に、観測データ取得部21は、取得した観測データが、品質に関わる要素の観測データであるか、そうでない要素の観測データであるかを判断する(ステップS12)。
0061
ここで、この観測データが、品質に関わる要素の観測データである場合、観測データ取得部21は、この観測データをこの要素に関連付けて、観測データ蓄積部26の目的変数領域に保存する(ステップS13)。
0062
前述のように、目的変数領域に保存された観測データは、関連付けられた要素ごとの目的時系列データを構成する。
0063
一方、この観測データが、品質に関わる要素以外の要素の観測データである場合、観測データ取得部21は、この観測データをこの要素に関連付けて、観測データ蓄積部26の説明変数領域に保存する(ステップS14)。
0064
前述のように、説明変数領域に保存された観測データは、関連付けられた要素ごとの説明時系列データを構成する。
0065
そして、観測データの収集が完了していなければ(ステップS15でNo)、観測データ取得部21は、ステップS11からの処理を繰り返す。
0066
また、観測データの収集が完了すると(ステップS15でYes)、第1抽出部22は、観測データ蓄積部26に蓄積されている目的時系列データおよび説明時系列データの組み合わせを1つ読み出す(ステップS16)。
0068
そして、観測データ蓄積部26に記憶されている目的時系列データおよび説明時系列データの全ての組み合わせについて、相関分析を完了していなければ(ステップS18でNo)、第1抽出部22は、ステップS16からの処理を繰り返す。
0069
また、目的時系列データおよび説明時系列データの全ての組み合わせについて、相関分析を完了すると(ステップS18でYes)、第1抽出部22は、相関係数が所定条件を満たす説明時系列データの要素を抽出する(ステップS19)。このとき、第1抽出部22は、該当する複数の要素があれば、複数の要素を抽出してもよい。
0070
次に、有効性判断部23は、抽出された要素について、事前知識記憶部27に記憶された情報に基づいて、有効であるか否かを判断する(ステップS20)。
0071
具体的には、有効性判断部23は、前述のように、該当する要素が、その観測データが操作可能な要素であるか、または、製品の品質に影響を与える真の要因となり得ると判断可能である場合に、有効であると判断してもよい。
0072
もし、複数の要素が抽出されていれば、有効性判断部23は、抽出された各要素について有効であるか否かを判断する。そして、有効性判断部23は、少なくとも1つの要素が有効であるか否かを判断すればよい。
0073
ここで、抽出された要素がいずれも有効でないと判断された場合について説明する。この場合、第2抽出部24は、有効でないと判断された要素の説明時系列データに対して、インバリアントな関係性を有する他の説明時系列データの要素を、観測データ蓄積部26に記憶されている他の説明時系列データの中から抽出する(ステップS21)。
0074
例えば、前述のように、第2抽出部24は、そのような他の要素を、ARXモデルを用いた分析手法によって抽出してもよい。もし、有効でないと判断された複数の要素がある場合、第2抽出部24は、それらの要素のそれぞれについて、その要素の説明時系列データに対して、インバリアントな関係性を有する他の説明時系列データの要素を抽出すればよい。また、第2抽出部24は、有効でないと判断された1つの要素に対して、インバリアントな関係性を有する他の説明時系列データが複数あれば、複数の要素を抽出してもよい。
0075
そして、要因分析装置2は、抽出された要素が有効であると判断されるまで、ステップS20〜S21の処理を繰り返す。なお、ステップS21の後にステップS20を実行する場合、有効性判断部23は、ステップS21で第2抽出部24によって抽出された要素について、有効であるか否かを判断する。
0076
そして、ステップS20において、第2抽出部24によって抽出された要素が有効であると判断された場合、要因出力部15は、本発明の第1の実施の形態と同様にステップS5を実行する。すなわち、要因出力部15は、有効であると判断された要素について、該当する要素の説明時系列データを含む情報を、要因として出力する。
0077
以上で、要因分析装置2は、動作を終了する。
0078
次に、本発明の第2の実施の形態の効果について述べる。
0079
本発明の第2の実施の形態としての要因分析装置は、製品の品質に影響を与える要因を、さらに精度よく抽出することができる。
0080
その理由について説明する。本実施の形態では、第1抽出部が、観測データ取得部によって取得された観測データのうち、品質に関わる要素の目的時系列データに対して、相関性を有する説明時系列データの要素を抽出する。そして、有効性判断部が、抽出された要素を、事前知識記憶部の情報に基づいて有効であるか否かを判断する。そして、第2抽出部が、有効でないと判断された要素の説明時系列データに対してインバリアントな関係性を有する他の説明時系列データの要素を抽出する。そして、第2抽出部は、抽出した要素が有効であると判断されるまで、有効でないと判断された要素の説明時系列データに対してインバリアントな関係性を有する他の説明時系列データの要素を抽出することを繰り返す。そして、要因出力部が、有効であると判断された要素の説明時系列データを含む情報を、要因として出力するからである。
0081
このように、本実施の形態では、目的時系列データに対して関係性を有する説明時系列データの要素を抽出する分析の手法と、有効でない要素の説明時系列データに対して関係性を有する他の説明時系列データを抽出する分析の手法とが異なるように構成されている。このため、本実施の形態では、第1の抽出部では抽出できなかった要素を相補的に抽出できる可能性があり、精度の向上が期待できる。
0082
また、本実施の形態では、事前知識記憶部が、各要素が操作可能であるか否かを表す情報と、各要素に関する各種情報とを記憶している。そして、有効性判断部は、第1抽出部または第2抽出部によって抽出された要素について、事前知識記憶部の情報に基づいて、操作可能な要素である場合に有効であると判断する。また、有効性判断部は、第1抽出部または第2抽出部によって抽出された要素について、事前知識記憶部の情報に基づいて、製品の品質に影響を与える真の要因となり得ると判断可能な場合に、有効であると判断する。
0083
その結果、本実施の形態は、製品の品質に影響を与える要因として、その観測データを操作可能な要素を選択的に抽出することができ、製品の品質改善に寄与する。また、本実施の形態は、製品の品質に影響を与える要因として、真の要因となる要素を抽出することができ、製品の品質改善にさらに寄与する。
0084
なお、本実施の形態において、第1抽出部が相関分析を用い、第2抽出部がインバリアントな関係性を分析するため外因性の自己回帰モデルを用いる例について説明したが、第1抽出部および第2抽出部が観測データ間の関係性の分析に用いる手法は、限定されない。
0085
例えば、上述した各実施の形態において、観測の対象となる要素が事前にグループ分けされていることを想定する。この場合、第1抽出部または第2抽出部は、ある観測データの要素と同じグループに属する他の要素を、関係性を有する観測データの要素として抽出してもよい。そのような要素のグループ分け情報は、例えば、その要素の振る舞いに基づく線形識別等により、事前に生成されたものであってもよい。
0086
また、上述した各実施の形態において、第1抽出部によって用いられる関係性を分析する手法を、第2抽出部に適用することが可能である。また、第2抽出部によって用いられる関係性を分析する手法を、第1抽出部に適用することが可能である。ただし、第1抽出部および第2抽出部は、関係性を分析する手法として、互いに異なる手法を用いることが望ましい。第1抽出部および第2抽出部が互いに異なる分析の手法を用いることによって、各実施の形態は、第1抽出部によって抽出された要素が複数ある場合に、第2抽出部によって抽出される要素が第1抽出部によって抽出された要素と重複する可能性を低くできる。ただし、第1抽出部および第2抽出部が用いる関係性を分析する手法は、必ずしも異なっていなくてもよく、同一であってもよい。
0087
また、上述した各実施の形態において、第2抽出部が、有効であると判断される要素が得られるまで、他の要素の抽出を繰り返す例について説明した。ただし、第2抽出部は、必ずしも、有効であると判断される要素が得られるまで他の要素の抽出を繰り返さなくてもよい。例えば、第2抽出部は、有効であると判断された要素が得られていなくても、他の要素の抽出を所定の回数または所定の経過時間まで繰り返した時点で、抽出を終了してもよい。また、第2抽出部は、有効であると判断された要素が得られていなくても、他の要素の抽出を、所定条件が満たされた時点で、抽出を終了してもよい。その場合、要因出力部は、要因が特定できなかったことを表す情報を出力してもよい。
0088
また、上述した各実施の形態において、第2抽出部は、有効性の判断の対象となる要素のいずれも有効でないと判断された場合に機能する例について説明した。これに限らず、第2抽出部は、有効性の判断の対象となる要素のうち有効でないと判断された要素について機能するよう構成されてもよい。この場合、要因抽出部は、第1抽出部によって抽出された1つ以上の要素のうち有効であると判断された要素と、第2抽出部によって抽出された1つ以上の要素のうち有効であると判断された要素とを出力するようにしてもよい。
0089
また、上述した各実施の形態において、観測データが、要素ごとの時系列データである例を中心に説明した。ただし、観測データは、要素ごとに観測されるデータであれば、必ずしも時系列データでなくてもよい。
0090
また、上述した本発明の各実施の形態において、要因分析装置の各機能ブロックが、メモリに記憶されたコンピュータ・プログラムを実行するCPUによって実現される例を中心に説明した。これに限らず、各機能ブロックの一部、全部、または、それらの組み合わせは、専用のハードウェアにより実現されていてもよい。
0091
また、上述した本発明の各実施の形態において、要因分析装置の機能ブロックは、複数の装置に分散されて実現されてもよい。
0092
また、上述した本発明の各実施の形態において、各フローチャートを参照して説明した要因分析装置の動作を、本発明のコンピュータ・プログラムとしてコンピュータ装置の記憶装置(記憶媒体)に格納しておく。そして、係るコンピュータ・プログラムを当該CPUが読み出して実行するようにしてもよい。そして、このような場合において、本発明は、係るコンピュータ・プログラムのコードあるいは記憶媒体によって構成される。
0093
また、上述した各実施の形態は、適宜組み合わせて実施されることが可能である。
0094
また、本発明は、上述した各実施の形態に限定されず、様々な態様で実施されることが可能である。
0095
1、2要因分析装置
11、21観測データ取得部
12、22 第1抽出部
13、23 有効性判断部
14、24 第2抽出部
15要因出力部
26 観測データ蓄積部
27事前知識記憶部
1001 CPU
1002メモリ
1003出力装置
1004入力装置
1005 ネットワークインタフェース