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技術 溶融亜鉛浴設備

出願人 日本製鉄株式会社
発明者 伊藤実加藤謙治斎藤直樹児玉正行田巻耐楠隆岡山豊田中睦人
出願日 2017年3月10日 (3年9ヶ月経過) 出願番号 2017-046818
公開日 2017年7月13日 (3年5ヶ月経過) 公開番号 2017-122280
状態 特許登録済
技術分野 鋼の加工熱処理
主要キーワード 空冷条件 亜鉛線 不可避的元素 断面割れ 溶接試験片 表面直下 亜鉛合金層 総圧延率
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (3)

課題

溶融亜鉛浴設備を提供する。

解決手段

質量%でC:0.10〜0.30%、Si:0.05%以下、Mn:0.20〜2.0%を含有し、P:0.015%以下、S:0.030%以下、Al:0.070%以下に制限し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、圧延方向に平行、且つ、板面に垂直な板厚断面において、板厚(t)方向で板面からt/4部までの表層金属組織が、フェライト相および、パーライト相からなる混合組織であり、且つ、フェライト相の結晶粒平均アスペクト比が2以上である鋼板を用いて構成される溶融亜鉛浴設備。

概要

背景

従来より、鉄鋼材料に施す経済的な防錆処理方法として、一般に溶融亜鉛めっき法が広く用いられている。このような溶融亜鉛めっき法は、溶融亜鉛が入れられた鋼製浴槽に、めっきを施す鋼材を浸漬して行なわれる。

上述のような鋼製の浴槽は、溶融亜鉛と接触する界面において、溶融亜鉛と浴槽の鉄とが反応し、鉄−亜鉛合金層を形成するため、腐食が進行してしまう。この際の腐食速度は、溶融亜鉛の温度が500℃近傍である場合に非常に大きくなるので、浴槽の温度管理が適切でないと、短期間で減肉による破損が生じたり、穴あきが生じたりすることにより、浴槽が使用できなくなるという問題がある。

上述のような腐食の問題に対し、浴槽をなす鋼の化学成分組成において、Cの含有量を高め、且つ、Si及びPの含有量を抑えることにより、溶融亜鉛の温度が500℃近傍である場合の腐食速度を低減させた鋼材が提案されている(例えば、特許文献1〜4を参照)。特許文献1〜4に記載の鋼材によれば、鋼成分を上記組成とすることにより、溶融亜鉛による腐食作用に対して優れた耐食性を有し、浴槽の減肉や穴あき等を抑制することが可能となる。

概要

溶融亜鉛浴設備を提供する。質量%でC:0.10〜0.30%、Si:0.05%以下、Mn:0.20〜2.0%を含有し、P:0.015%以下、S:0.030%以下、Al:0.070%以下に制限し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、圧延方向に平行、且つ、板面に垂直な板厚断面において、板厚(t)方向で板面からt/4部までの表層金属組織が、フェライト相および、パーライト相からなる混合組織であり、且つ、フェライト相の結晶粒平均アスペクト比が2以上である鋼板を用いて構成される溶融亜鉛浴設備。

目的

本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、溶融亜鉛浴設備を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

質量%でC:0.10〜0.30%、Si:0.05%以下、Mn:0.2〜2.0%を含有し、P:0.015%以下、S:0.030%以下、Al:0.070%以下に制限し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、圧延方向に平行、且つ、板面に垂直な板厚断面において、板厚(t)方向で板面からt/4部までの表層金属組織が、フェライト相および、パーライト相からなる混合組織であり、且つ、前記フェライト相の結晶粒平均アスペクト比が2以上である鋼板を用いて構成される溶融亜鉛浴設備

請求項2

前記鋼板が、さらに、質量%で、Nb:0.003〜0.050%、V:0.01〜0.10%、Ti:0.005〜0.050%のうちの1種または2種以上を含有する請求項1に記載の溶融亜鉛浴設備。

請求項3

前記鋼板が、さらに、質量%で、Cu:0.1〜0.5%、Ni:0.1〜2.0%、Cr:0.1〜2.0%、Mo:0.02〜1.0%のうちの1種または2種以上を含有する請求項1または請求項2に記載の溶融亜鉛浴設備。

請求項4

前記鋼板が、さらに、質量%で、Ca:0.0002〜0.0030%、Mg:0.0002〜0.0030%、REM:0.0002〜0.0030%のうちの1種または2種以上を含有する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の溶融亜鉛浴設備。

請求項5

前記鋼板が、さらに、質量%で、B:0.0002〜0.0010%を含有する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の溶融亜鉛浴設備。

技術分野

0001

本発明は、溶融亜鉛浴設備に関するものである。

背景技術

0002

従来より、鉄鋼材料に施す経済的な防錆処理方法として、一般に溶融亜鉛めっき法が広く用いられている。このような溶融亜鉛めっき法は、溶融亜鉛が入れられた鋼製浴槽に、めっきを施す鋼材を浸漬して行なわれる。

0003

上述のような鋼製の浴槽は、溶融亜鉛と接触する界面において、溶融亜鉛と浴槽の鉄とが反応し、鉄−亜鉛合金層を形成するため、腐食が進行してしまう。この際の腐食速度は、溶融亜鉛の温度が500℃近傍である場合に非常に大きくなるので、浴槽の温度管理が適切でないと、短期間で減肉による破損が生じたり、穴あきが生じたりすることにより、浴槽が使用できなくなるという問題がある。

0004

上述のような腐食の問題に対し、浴槽をなす鋼の化学成分組成において、Cの含有量を高め、且つ、Si及びPの含有量を抑えることにより、溶融亜鉛の温度が500℃近傍である場合の腐食速度を低減させた鋼材が提案されている(例えば、特許文献1〜4を参照)。特許文献1〜4に記載の鋼材によれば、鋼成分を上記組成とすることにより、溶融亜鉛による腐食作用に対して優れた耐食性を有し、浴槽の減肉や穴あき等を抑制することが可能となる。

先行技術

0005

特開昭49−130310号公報
特開昭53−8314号公報
特開昭54−99031号公報
特開2002−241888号公報

発明が解決しようとする課題

0006

しかしながら、特許文献1〜4に記載の鋼材では、浴槽の減肉や穴あき等を抑制できる一方で、亜鉛の作用による割れが生じ、浴槽の寿命が短くなる場合があった。本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、溶融亜鉛浴設備を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0007

本発明者等は、溶融亜鉛腐食性に優れる化学成分の鋼を用いて、亜鉛割れ性に及ぼす金属組織の影響について鋭意検討を行なった。その結果、金属組織中におけるフェライト粒平均アスペクト比を2以上にすることにより、耐溶融亜鉛腐食性のみならず、耐亜鉛割れ性にも優れた鋼材が得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものであり、その要旨とするところは以下の通りである。

0008

[1] 質量%でC:0.10〜0.30%、Si:0.05%以下、Mn:0.20〜2.0%を含有し、P:0.015%以下、S:0.030%以下、Al:0.070%以下に制限し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、圧延方向に平行、且つ、板面に垂直な板厚断面において、板厚(t)方向で板面からt/4部までの表層の金属組織が、フェライト相および、パーライト相からなる混合組織であり、且つ、前記フェライト相の結晶粒の平均アスペクト比が2以上である鋼板を用いて構成される溶融亜鉛浴設備。
[2] 前記鋼板が、さらに、質量%で、Nb:0.003〜0.050%、V:0.01〜0.10%、Ti:0.005〜0.050%のうちの1種または2種以上を含有する上記[1]に記載の溶融亜鉛浴設備。
[3] 前記鋼板が、さらに、質量%で、Cu:0.1〜0.5%、Ni:0.1〜2.0%、Cr:0.1〜2.0%、Mo:0.02〜1.0%のうちの1種または2種以上を含有する上記[1]または[2]に記載の溶融亜鉛浴設備。
[4] 前記鋼板が、さらに、質量%で、Ca:0.0002〜0.0030%、Mg:0.0002〜0.0030%、REM:0.0002〜0.0030%のうちの1種または2種以上を含有する上記[1]から[3]のいずれか一項に記載の溶融亜鉛浴設備。
[5] 前記鋼板が、さらに、質量%で、B:0.0002〜0.0010%を含有する上記[1]から[4]のいずれか一項に記載の溶融亜鉛浴設備。

発明の効果

0009

本発明の耐溶融亜鉛腐食性および耐亜鉛割れ性に優れた溶融亜鉛浴設備用鋼板を用いて溶融亜鉛浴用(浴槽)を構成することにより、腐食や割れ等が生じにくく、長寿命の溶融亜鉛浴用釜が得られるので、産業上の効果は極めて大きく、また、構造物の安全性の観点から社会に対する貢献も計り知れない。

図面の簡単な説明

0010

本発明に係る溶融亜鉛浴設備用鋼板の一例を模式的に説明するための図であり、金属組織におけるフェライト結晶粒アスペクト比と溶融亜鉛腐食速度(腐食量)との関係を示すグラフである。
本発明に係る溶融亜鉛浴設備用鋼板の一例を模式的に説明するための図であり、金属組織におけるフェライト結晶粒のアスペクト比とSLM−400値との関係を示すグラフである。

0011

以下、本発明の耐溶融亜鉛腐食性および耐亜鉛割れ性に優れた溶融亜鉛浴設備用鋼板(以下、単に溶融亜鉛浴設備用鋼板と略称することがある)とその製造方法の実施の形態について、図面を適宜参照しながら説明する。
なお、この実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために詳細に説明するものであるから、特に指定の無い限り、本発明を限定するものではない。
また、以下の説明において、化学成分組成における各成分の含有量を示す「%」は、特に指定の無い限り「質量%」を示す。

0012

[溶融亜鉛浴設備用鋼板]
本発明の耐溶融亜鉛腐食性および耐亜鉛割れ性に優れた溶融亜鉛浴設備用鋼板は、質量%でC:0.10〜0.30%、Si:0.05%以下、Mn:0.20〜2.0%を含有し、P:0.015%以下、S:0.030%以下、Al:0.070%以下に制限し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、圧延方向に平行、且つ、板面に垂直な板厚断面において、板厚(t)方向で板面からt/4部までの表層の金属組織が、フェライト相および、パーライト相からなる混合組織であり、且つ、フェライト相の結晶粒の平均アスペクト比が2以上とされ、概略構成される。

0013

<化学成分組成>
本発明の溶融亜鉛浴設備用鋼板は、C:0.10〜0.30%、Si:0.05%以下、Mn:0.20〜2.0%、P:0.015%以下、S:0.030%以下、Al:0.070%以下の各成分を必須元素(あるいは不可避的元素)として含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。
また、本発明の溶融亜鉛浴設備用鋼板では、さらに、質量%で、Nb:0.003〜0.050%、V:0.01〜0.10%、Ti:0.005〜0.050%、Cu:0.1〜0.5%、Ni:0.1〜2.0%、Cr:0.1〜2.0%、Mo:0.02〜1.0%、Ca:0.0002〜0.0030%、Mg:0.0002〜0.0030%、REM:0.0002〜0.0030%、B:0.0002〜0.0010%のうちの1種または2種以上を、適宜選択して含有する構成とすることができる。
以下に、本発明における鋼材の化学成分組成の限定理由を説明する。

0014

「C:炭素」0.10〜0.30質量%
Cは、鋼板の強度向上のために重要な元素である。Cの含有量が0.10質量%未満になると、鋼板の耐溶融亜鉛腐食性が大きく低下することから、0.10質量%以上のCを添加する必要があるが、詳細を後述する目標の金属組織を得るためには、0.12質量%超の添加がより好ましい。但し、Cを0.30質量%以上添加すると、鋼板の溶接性劣化するため、0.30質量%を上限とした。

0015

「Si:ケイ素」0.05質量%以下
Siは、脱酸作用を有するが、強力な脱酸元素であるAlが充分に添加されている場合には不要である。Siは、母材強化する作用もあるが、他の元素に比べるとその効果は相対的に小さい。また、Siは、耐溶融亜鉛腐食性を大きく低下させることから、その含有量が少ない方が好ましく、操業上安定して低減可能な0.05質量%を上限とする。また、製鋼上の制限もあるが、Siの含有量を0.02質量%以下とすることがより好ましい。

0016

「Mn:マンガン」0.20〜2.0質量%
Mnは、母材強度を確保する観点から添加する元素であり、母材強度に寄与するためには0.20質量%以上の添加が必要である。また、同時に添加するCの添加量が0.12質量%以下と低い場合には、目標となる組織を安定的に得るため、Mnを0.5質量%超で添加することが好ましい。但し、2.0質量%以上のMnの添加は、溶接性を大きく劣化させることから、Mnの添加範囲を0.20〜2.0質量%とした。

0017

「P:リン」0.015質量%以下
Pは、不純物元素であり、不可避的に鋼板中に含有されるが、Siと同様に耐溶融亜鉛腐食性を大きく低下させ、溶接性にも悪影響を及ぼすことから、その含有量は少ない方が好ましく、操業上安定して低減可能な0.015質量%を上限とした。また、製鋼上の制限もあるが、Pの含有量は0.008質量%以下とすることがより好ましい。

0018

「S:硫黄」0.030質量%以下
Sも、上記Pと同様、鋼板中に不可避的に含有される元素であるが、Sは母材靭性や溶接性を低下させるため、少ない方が好ましいことから、操業上安定して低減可能な0.030質量%を上限とした。

0019

「Al:アルミニウム」0.070質量%以下
Alは、脱酸に用いられる元素であり、その脱酸効果を得るためには0.015質量%以上の添加が好ましい。しかしながら、0.070質量%以上のAlの添加は、鋼中に粗大な介在物を多く存在させ、靭性を低下させることから、その上限を0.070質量%とした。

0020

「Nb:ニオブ」0.003〜0.050質量%
「V:バナジウム」0.01〜0.10質量%
「Ti:チタン」0.005〜0.050質量%
Nb、V、Tiは、本発明における選択的元素であり、母材強度を確保させるために必要に応じて添加するが、ともに多く添加すると母材靭性や溶接性を劣化させることから、Nbを0.003〜0.050質量%、Vを0.01〜0.10質量%、Tiを0.005〜0.050質量%の添加量とした。また、これらの各元素は、母材強度確保の観点から、それぞれ単独で添加しても、複合添加しても良い。

0021

「Cu:銅」0.1〜0.5質量%
「Ni:ニッケル」0.1〜2.0質量%
「Cr:クロム」0.1〜2.0質量%
「Mo:モリブデン」0.02〜1.0質量%
Cu、Ni、Cr、Moも、本発明における選択的元素であり、上述したNb、V、Tiと同様に、母材強度を確保させるために必要に応じて添加するが、ともに多く添加すると母材靭性や溶接性を劣化させることから、Cuを0.1〜0.5質量%、Niを0.1〜2.0質量%、Crを0.1〜2.0質量%、Moを0.02〜1.0質量%の添加量とした。また、これらの各元素は、母材強度確保の観点から、それぞれ単独で添加しても、複合添加しても良い。

0022

「Ca:カルシウム」0.0002〜0.0030質量%
「Mg:マグネシウム」0.0002〜0.0030質量%
「REM:希土類元素ランタノイド系元素)」0.0002〜0.0030質量%
Ca、Mg、REMも、本発明における選択的元素であり、大入熱溶接熱影響部の靭性を確保するために必要に応じて添加するが、大量に添加すると鋼中に粗大介在物が残留して母材や溶接熱影響部の靭性を低下させることから、Caを0.0002〜0.0030質量%、Mgを0.0002〜0.0030質量%、REMを0.0002〜0.0030質量%の添加量とした。また、これらの各元素は、母材強度確保の観点から、それぞれ単独で添加しても、複合添加しても良い。

0023

「B:ボロンホウ素)」0.0002〜0.0010質量%
Bも、本発明における選択的元素であり、鋼板の母材強度を確保するために必要に応じて添加する。その母材強度効果は、Bの0.0002%以上の添加から発現するが、大量に添加すると母材靭性や溶接性を劣化させることがあることから、0.0002〜0.0010質量%の添加量とした。

0024

<金属組織>
本発明の溶融亜鉛浴設備用鋼板は、圧延方向に平行、且つ、板面に垂直な板厚断面において、板厚(t)方向で板面からt/4部までの表層の金属組織が、フェライト相および、パーライト相からなる混合組織であり、且つ、フェライト相の結晶粒の平均アスペクト比が2以上として構成されている。

0025

ここで、本実施形態では、フェライト相の結晶粒の前記平均スペクト比は、圧延方向に平行、且つ、板面に垂直な板断面の光学顕微鏡観察試料を作製し、表面直下25μm、板面からt/8部、板面からt/4部から板面側に25μmの位置を視野中心においた、50μm×50μm範囲の100倍の光学顕微鏡視野を、各3視野ずつ計9視野を光学顕微鏡観察し、画像処理により、各視野ごとにフェライト相の結晶粒の平均アスペクト比を測定した後、その9視野の視野ごとの平均アスペクト比を総加算した後、9で割って求めた。

0026

上述のような化学成分組成を有する鋼は、例えば、上記鋼成分とされた鋼塊真空溶解炉で溶製することによって得られる。また、金属組織は、詳細を後述する製造方法において、鋼塊から鋼板を製造する際、鋼塊を種々の温度で加熱した後、仕上げ圧延温度を変え、空冷することで調整することができる。これにより、鋼板の金属組織をフェライト相、パーライト相および不可避的析出相の混合組織とし、且つ、フェライト相の結晶粒のアスペクト比を調整して鋼板を製造することが可能となる。
ここで、本発明で説明するフェライト相の結晶粒のアスペクト比とは、結晶粒の長軸短軸との比である。

0027

本発明者等は、上記組成とされた溶融亜鉛浴設備用鋼板を用いて、溶融亜鉛腐食と亜鉛割れ試験を行い、この結果を図1及び図2のグラフに示した。ここで、溶融亜鉛腐食は、鋼板から採取した試験片溶融した純亜鉛に浸漬し、単位面積当たりの重量の変化で耐溶融亜鉛腐食性を評価する試験である。また、亜鉛割れ試験は、切欠付き丸棒引張り試験の切欠きに溶融亜鉛を付着させ、高温荷重負荷する試験である。
図1は、板厚(t)方向で板面からt/4部までの表層におけるフェライト相の結晶粒のアスペクト比と、温度500℃に設定した溶融亜鉛中における腐食速度(腐食量)との関係を示すグラフである。図1のグラフに示すように、上記アスペクト比の違いによる腐食速度の変化は認められなかった。
図2は、板厚(t)方向で板面からt/4部までの表層におけるフェライト相の結晶粒のアスペクト比と、SLM−400値(%)との関係を示すグラフである。SLM−400値は溶融亜鉛割れ性の指標で、SLMとは、試験片に溶融亜鉛めっきを施した場合の破断強度を、めっきを施さない場合の破断強度で除した値であり、SLM−400値は、破断時間が400秒の際のSLMを表し、この数値が大きいほど耐亜鉛割れ性が高いことを示す。

0028

本発明者等は、図2のグラフに示すように、鋼板の耐亜鉛割れ性は、板厚(t)方向で板面からt/4部までの表層の金属組織において、フェライト相の結晶粒のアスペクト比が高くなるほど向上することを見出した。また、鋼板の耐亜鉛割れ性は、表層の金属組織におけるフェライト相の結晶粒のアスペクト比が2以上となることで改善され、さらに、上記アスペクト比が3以上となることでより大きく改善されることを見出した。本発明の溶融亜鉛浴設備用鋼板は、上述のような知見に基づいてなされたものであり、非常に優れた耐溶融亜鉛腐食性および耐亜鉛割れ性を同時に実現できるものである。

0029

以上説明したように、本発明の耐溶融亜鉛腐食性および耐亜鉛割れ性に優れた溶融亜鉛浴設備用鋼板を用いて溶融亜鉛浴用釜(浴槽)を構成することにより、腐食や割れ等が生じにくく、長寿命の溶融亜鉛浴用釜が得られるので、産業上の効果は極めて大きく、また、構造物の安全性の観点から社会に対する貢献も計り知れない。

0030

[溶融亜鉛浴設備用鋼板の製造方法]
本発明の耐溶融亜鉛腐食性および耐亜鉛割れ性に優れた溶融亜鉛浴設備用鋼板の製造方法は、上述した化学成分組成を有する鋼を鋳造してスラブとし、該スラブをそのままか、あるいは、冷片とした後、950℃以上に加熱し鋼板表面温度が、Ar3点未満、且つ、Ar3点−150℃以上の温度域で最終の仕上げ圧延を行い、その後、空冷する方法である。ここで、Ar3点は下記(1)式で規定される。
Ar3(℃)=910−310C−80Mn−20Cu−15Cr−55Ni−80Mo−0.35(t−8) ・・・・・ (1)
但し、上記(1)式において、tは仕上げ圧延後の板厚(mm)であり、各成分は質量%である。
以下に、本発明の溶融亜鉛浴設備用鋼板の製造方法における限定理由について説明する。

0031

「圧延前の鋳片の加熱温度
本発明の製造方法においては、圧延前の鋳片の加熱温度を950℃以上とする。本発明では、規定の化学成分組成を有した鋼を鋳造して鋳片(スラブ)とした後、この鋳片をそのままか、あるいは冷片とした後、950℃以上に加熱し、圧延前の鋳片全体が950℃以上となるように、炉内に保持する。
このような圧延前の鋳片の加熱温度が低くなり過ぎると、鋳片の圧延時に、圧延機にかかる負荷が大きくなることから、下限温度を950℃とした。この加熱温度は、好ましくは1000℃以上、より好ましくは1100℃以上とする。なお、加熱温度の上限は、特に制限しないが、生産性を考慮すると、1250℃が好ましい。また、金属組織の粗大化を抑制するために、より好ましくは加熱温度の上限を1150℃とする。

0032

「仕上げ圧延温度」
本発明の製造方法においては、上述したように、最終の仕上げ圧延温度について、圧延後の鋼板の板厚をtとした際の、鋼板の板厚(t)方向で板面からt/4部までの表層におけるAr3点の温度を、次式{Ar3(℃)=910−310C−80Mn−20Cu−15Cr−55Ni−80Mo−0.35(t−8)}で規定したうえで、Ar3点未満、且つ、Ar3点−150℃以上の温度域としている。最終の仕上げ圧延を行なう際の温度域をこの範囲とすることで、鋼板の表層、つまり、板面からt/4部までの層域における金属組織を、フェライト相、パーライト相および不可避的析出相の混合組織とし、且つ、フェライト相の結晶粒の平均アスペクト比を2以上とすることが可能となる。

0033

本発明の製造方法では、鋼板表層の金属組織において、圧延中にフェライトを生成させてフェライト粒を扁平させ、板面からt/4部までの層域におけるフェライト粒の平均アスペクト比を2以上にするため、最終の仕上げ圧延温度をAr3点未満とした。また、仕上げ圧延温度が低くなり過ぎると、圧延機にかかる負荷が大きくなることから、下限をAr3点−150℃とした。
なお、Ar3点を求めるための上記(1)式としては、参考文献{「制御圧延制御冷却小指夫著、地人書(1997)}p.26に記載の式(2−3)を用いた。
また、鋼板の表層で、フェライト粒の平均アスペクト比を2以上にするためには、Ar3点未満で1パス以上の圧延を行えばよいが、さらに、Ar3点未満の圧下率二相域圧下率)を、5%以上にすることが好ましい。この二相域圧下率は、鋼板の温度がAr3点未満に低下し、且つ、圧延前の板厚と仕上げ圧延後の板厚の差から求めることができる。二相域圧下率の上限は特に制限しないが、生産性の観点から、30%以下が好ましい。

0034

また、仕上げ圧延後の板厚は、鋼板を溶融亜鉛浴用釜に用いる場合、通常、例えば、6mm〜70mm程度の板厚とすることができ、また、この際の総圧延率は、80〜98%程度とすれば、鋼板特性を損なうことなく、且つ、高い生産性で溶融亜鉛浴設備用鋼板を製造することが可能となる。

0035

空冷条件
本発明の製造方法においては、上記温度領域において最終の仕上げ圧延を行なった後、鋼板を空冷手段によって冷却することが好ましい。

0036

以下、本発明に係る耐溶融亜鉛腐食性および耐亜鉛割れ性に優れた溶融亜鉛浴設備用鋼板およびその製造方法の実施例を挙げ、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、もとより下記実施例に限定されるものではなく、前、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。

0037

サンプルの製造]
製鋼工程において溶鋼の脱酸・脱硫と化学成分を制御し、連続鋳造によって下記表1に示す化学成分のスラブを製造した。この際、加熱温度は、下記表2に示す温度とした。次いで、下記表2及び表3に示す製造条件で前記スラブを再加熱(仕上げ圧延温度)し、仕上げ圧延することで板厚32〜70mmに仕上げた後、空冷による加速冷却を行い、溶融亜鉛浴設備用鋼板を製造した。ここで、表2に示す仕上げ圧延温度が、表3に示すAr3よりも低い温度である例は、Ar3点未満で1パス以上の圧延を行っている例である。

0038

評価試験
上記方法によって製造した溶融亜鉛浴設備用鋼板について、以下のような評価試験を行った。
金属組織の評価である、フェライト相の結晶粒の平均アスペクト比は、圧延方向に平行、且つ、板面に垂直な板断面の光学顕微鏡観察試料を作製し、表面直下25μm、板面からt/8部、板面からt/4部から板面側に25μmの位置を視野中心においた、50μm×50μm範囲の100倍の光学顕微鏡視野を、各3視野ずつ計9視野を光学顕微鏡観察し、画像処理により、各視野ごとにフェライト相の結晶粒の平均アスペクト比を測定した後、その9視野の視野ごとの平均アスペクト比を総加算した後、9で割って求めた。表3に、アスペクト比が3以上のものを「◎」、2以上3未満のものを「○」とし、アスペクト比が2未満のものを「×」として評価した。

0039

また、耐溶融亜鉛腐食性の評価については、鋼板の表層から採取した40mm×25mm×4mmの試験片を、温度が500℃とされた純度99.99%の亜鉛中に24時間浸漬させた。そして、24時間浸漬後の腐食が150mg/cm2以下であるものを「◎」、150mg/cm2超、200mg/cm2以下であるものを「○」とし、200mg/cm2超であるものを「×」として評価した。
また、耐亜鉛割れ性の評価については、NBT試験(切欠付き丸棒引張り試験)で評価した(新日鉄技報348号、1993年、p.63−70を参照)。そして、試験片の切欠に亜鉛線材を巻き付けて加熱し、溶融亜鉛を付着させ、試験温度を500℃として、破断時間400秒におけるSLM値(SLM−400値)が80%以上であるものを「○」とし、80%未満のものを「×」として評価した。

0040

また、溶接性(耐溶接割れ性)の試験として、y型溶接割れ試験(JIS Z3158)により、面割れの発生の有無で評価した。すなわち、それぞれの最終板厚のもので、ルート間隔1.0mmとして開先を用意し、溶接材料としてYGW15(JIS Z3312)規格ソリッドワイヤ材を用いて、入熱量30〜36kJ/cmで、MAG溶接による多層盛溶接を行ってy型溶接試験片を作製し、y型溶接部の各5断面の鏡研磨面において、断面割れの有無を肉眼で確認した。そして、各5断面で断面割れが肉眼で全く観察されなかったものを「○」とし、1断面以上で断面割れが肉眼で確認されたものは「×」として評価した。

0041

本実施例における鋼板(本発明鋼および比較鋼)の化学成分組成の一覧を下記表1に示すとともに、仕上げ圧延前の加熱温度及び仕上げ圧延温度の圧延条件一覧を下記表2に示す。また、下記表1に示す化学成分組成を有する鋼の各々と製造条件の組み合わせの一覧、及び、各評価結果の一覧を下記表3に示す。

0042

0043

0044

0045

[評価結果]
表1〜表3に示すように、本発明で規定する化学成分組成を有し、本発明で規定する製造条件によって作製した溶融亜鉛浴設備用鋼板(本発明鋼)は、鋼板表層の金属組織におけるフェライト結晶粒の平均アスペクト比が2以上であり、金属組織が「○」または「◎」の評価となった。また、本発明鋼からなる溶融亜鉛浴設備用鋼板は、耐溶融亜鉛腐食性および耐亜鉛割れ性の評価が何れも「○」または「◎」であり、耐溶融亜鉛腐食性および耐亜鉛割れ性に優れていることが明らかとなった。

0046

これに対し、比較鋼である鋼板記号C1およびC2はC量が少なく、C3およびC10はSi量が多いため、耐溶融亜鉛腐食性が劣っている。C4はP量が多いため、耐溶融亜鉛腐食性および溶接性(耐溶接割れ性)が劣っている。また、C9はC量が多く、C11はMn量が多いため、溶接性が劣っている。
また、比較鋼である鋼板記号C6、C6−2、C7、C8は、化学成分組成は本発明で規定する範囲に含まれているものの、仕上げ圧延温度が何れもAc3点を超える温度であり、製造条件が本発明で規定する範囲に含まれていないため、鋼板表層の金属組織におけるフェライト結晶粒のアスペクト比が2未満となり、耐溶融亜鉛腐食性は良好であるものの、耐亜鉛割れ性が劣っている。

実施例

0047

以上説明した実施例の結果より、本発明の耐溶融亜鉛腐食性および耐亜鉛割れ性に優れた溶融亜鉛浴設備用鋼板が、溶融亜鉛による腐食に対して優れた耐食性を有し、且つ、溶融亜鉛に起因した割れが生じにくく、優れた鋼板特性を有していることが明らかである。

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