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技術 含水型耐熱性チョコレートの製造方法

出願人 日清オイリオグループ株式会社大東カカオ株式会社
発明者 中川翔郷俊祐長谷川勉
出願日 2016年5月11日 (4年6ヶ月経過) 出願番号 2016-095002
公開日 2017年7月13日 (3年4ヶ月経過) 公開番号 2017-121228
状態 特許登録済
技術分野 菓子
主要キーワード 装置係数 暑熱環境 押し込み器 主原材料 赤道付近 センチポワズ シーディング剤 保温処理
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年7月13日)のものです。
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課題

従来の方法よりも簡便な方法で、粘度の上昇を起こさず、流動性のあるペースト状が維持された、含水チョコレート生地が調製できる、含水耐熱性チョコレートの製造方法を提供することである。

解決手段

チョコレート生地に対し水分を添加するに際して、水分を段階的に添加する。具体的には、一定の速度で滴下することにより水分を添加する、若しくは、添加する水分の全体量を複数回に分けて添加する。前記水分の滴下速度は、チョコレート生地1000gに対して、10g/分〜700g/分であることが好ましい。前記複数回は2〜10回であることが好ましい。

概要

背景

チョコレートを食する文化は、冷涼な気候ヨーロッパにおいて発展し、今や世界中のあらゆる国及び地域に広がっている。しかし、一般的なチョコレートである、カカオ豆に含まれるココアバターのみを油脂分として含むチョコレートは、ココアバターの耐熱温度が31℃程度であるため、暑熱環境下では溶け品質を損なう。従って、赤道付近等の暑い地域においては、耐熱性を備えるチョコレート(以下、「耐熱性チョコレート」という)に対するニーズがある。

チョコレートに耐熱性を付与する方法としては、例えば、チョコレートに融点の高い油脂を配合する方法や、チョコレートの固形分を高める(油脂分を減らす)方法、あるいは、チョコレート生地に少量の水分を混ぜて砂糖骨格を形成する方法がある(以下、「含水型耐熱性チョコレート」という)。しかし、融点の高い油脂の配合は、チョコレートの口どけを著しく悪くする。また、チョコレートの固形分の増加は、チョコレートの口あたりを損なう。他方、チョコレート内部での砂糖骨格の形成は、口どけや口あたりを損なわずに、チョコレートに耐熱性を付与できる有力な方法である。しかしながら、チョコレート生地への少量の水分の混合は、粘度の上昇を引き起こし、成型その他の生産性を著しく低下させるという問題があった。

そこで、従来技術では、このような問題を解決するために、乳化剤を使用して粘度上昇遅延させる方法、卵白メレンゲを使用して粘度上昇を遅延させる方法(特許文献1参照)、水分の添加によって粘度が上昇したチョコレート生地を加圧押し込み器強制的に成形する方法(特許文献2参照)等、各種の方法が提案されている。さらに、成型前の流動性のある含水チョコレート生地を長時間、製造に適した粘度レベルに維持するため、32〜40℃で、特定のシーディング剤及び水分の添加を行う方法(特許文献3参照)も提案されている。しかしながら、これら従来の方法は、相応の手間がかかるものであり、より簡便な方法で、誰でも簡単に行える、含水型耐熱性チョコレートの製造方法が求められていた。

概要

従来の方法よりも簡便な方法で、粘度の上昇を起こさず、流動性のあるペースト状が維持された、含水チョコレート生地が調製できる、含水型耐熱性チョコレートの製造方法を提供することである。チョコレート生地に対し水分を添加するに際して、水分を段階的に添加する。具体的には、一定の速度で滴下することにより水分を添加する、若しくは、添加する水分の全体量を複数回に分けて添加する。前記水分の滴下速度は、チョコレート生地1000gに対して、10g/分〜700g/分であることが好ましい。前記複数回は2〜10回であることが好ましい。なし

目的

本発明が解決しようとする課題は、従来の方法よりも簡便な方法で、粘度の上昇を起こさず、流動性のあるペースト状が維持された、含水チョコレート生地が調製できる、含水型耐熱性チョコレートの製造方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

チョコレート生地に対して水分を段階的に添加して含水チョコレート生地を調製する工程を含む、含水耐熱性チョコレートの製造方法。

請求項2

前記工程において、一定の速度で滴下することにより水分を添加する、請求項1に記載の含水型耐熱性チョコレートの製造方法。

請求項3

前記水分の滴下速度が、チョコレート生地1000gに対して、10g/分〜700g/分である、請求項2に記載の含水型耐熱性チョコレートの製造方法。

請求項4

前記工程において、添加する水分の全体量を複数回に分けて添加する、請求項1に記載の含水型耐熱性チョコレートの製造方法。

請求項5

前記添加する水分の全体量を2〜10回に分けて添加する、請求項4に記載の含水型耐熱性チョコレートの製造方法。

請求項6

前記チョコレート生地を100質量%とした場合、添加する水分の全体量が、正味の水の添加量として0.1〜5.0質量%に相当する量である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の含水型耐熱性チョコレートの製造方法。

請求項7

前記含水チョコレート生地の粘度が、24000センチポワズ(cp)以下に抑制されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載された含水型耐熱性チョコレートの製造方法。

請求項8

前記チョコレート生地に対して水分を添加するときの該生地の温度が、32〜50℃に調整されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載された含水型耐熱性チョコレートの製造方法。

請求項9

前記水分が液糖又はタンパク液である、請求項1〜8のいずれか1項に記載された含水型耐熱性チョコレートの製造方法。

請求項10

チョコレート生地に対して水分を段階的に添加する工程を含む、含水チョコレート生地の粘度を抑制する方法。

請求項11

前記工程において、一定の速度で滴下することにより水分を添加する、請求項10に記載の含水チョコレート生地の粘度を抑制する方法。

請求項12

前記水分の滴下速度が、チョコレート生地1000gに対して、10g/分〜700g/分である、請求項11に記載の含水チョコレート生地の粘度を抑制する方法。

請求項13

前記工程において、添加する水分の全体量を複数回に分けて添加する、請求項10に記載の含水チョコレート生地の粘度を抑制する方法。

請求項14

前記添加する水分の全体量を2〜10回に分けて添加する、請求項13に記載の含水チョコレート生地の粘度を抑制する方法。

技術分野

0001

本発明は、含水耐熱性チョコレートの製造方法および含水チョコレート生地粘度上昇を抑制する方法に関する。より詳細には、水分を加えて糖骨格を形成する含水型耐熱性チョコレートの製造方法であっても、粘度の上昇を起こさず、流動性のあるペースト状が維持された、含水チョコレート生地が調製できる、含水型耐熱性チョコレートの製造方法および含水チョコレート生地の粘度上昇を抑制する方法に関する。

背景技術

0002

チョコレートを食する文化は、冷涼な気候ヨーロッパにおいて発展し、今や世界中のあらゆる国及び地域に広がっている。しかし、一般的なチョコレートである、カカオ豆に含まれるココアバターのみを油脂分として含むチョコレートは、ココアバターの耐熱温度が31℃程度であるため、暑熱環境下では溶け品質を損なう。従って、赤道付近等の暑い地域においては、耐熱性を備えるチョコレート(以下、「耐熱性チョコレート」という)に対するニーズがある。

0003

チョコレートに耐熱性を付与する方法としては、例えば、チョコレートに融点の高い油脂を配合する方法や、チョコレートの固形分を高める(油脂分を減らす)方法、あるいは、チョコレート生地に少量の水分を混ぜて砂糖骨格を形成する方法がある(以下、「含水型耐熱性チョコレート」という)。しかし、融点の高い油脂の配合は、チョコレートの口どけを著しく悪くする。また、チョコレートの固形分の増加は、チョコレートの口あたりを損なう。他方、チョコレート内部での砂糖骨格の形成は、口どけや口あたりを損なわずに、チョコレートに耐熱性を付与できる有力な方法である。しかしながら、チョコレート生地への少量の水分の混合は、粘度の上昇を引き起こし、成型その他の生産性を著しく低下させるという問題があった。

0004

そこで、従来技術では、このような問題を解決するために、乳化剤を使用して粘度上昇を遅延させる方法、卵白メレンゲを使用して粘度上昇を遅延させる方法(特許文献1参照)、水分の添加によって粘度が上昇したチョコレート生地を加圧押し込み器強制的に成形する方法(特許文献2参照)等、各種の方法が提案されている。さらに、成型前の流動性のある含水チョコレート生地を長時間、製造に適した粘度レベルに維持するため、32〜40℃で、特定のシーディング剤及び水分の添加を行う方法(特許文献3参照)も提案されている。しかしながら、これら従来の方法は、相応の手間がかかるものであり、より簡便な方法で、誰でも簡単に行える、含水型耐熱性チョコレートの製造方法が求められていた。

先行技術

0005

欧州特許出願公開第0297054号明細書
国際公開第2013/083641号パンフレット
国際公開第2015/098932号パンフレット

発明が解決しようとする課題

0006

本発明が解決しようとする課題は、従来の方法よりも簡便な方法で、粘度の上昇を起こさず、流動性のあるペースト状が維持された、含水チョコレート生地が調製できる、含水型耐熱性チョコレートの製造方法を提供することである。

課題を解決するための手段

0007

本発明は、チョコレート生地に対する水分の添加条件について鋭意検討を行った結果、段階的に水分を添加していくことで、意外にも、チョコレート生地が粘度の上昇を起こさず、流動性のあるペースト状が維持されることを見出し、本発明を完成させた。

0008

すなわち本発明の一態様によれば、チョコレート生地に対して水分を段階的に添加して含水チョコレート生地を調製する工程を含む、含水型耐熱性チョコレートの製造方法を提供することができる。
本発明の好ましい一態様によれば、上記工程において、一定の速度で滴下することにより水分を添加する、含水型耐熱性チョコレートの製造方法を提供することができる。
本発明の好ましい一態様によれば、上記水分の滴下速度が、チョコレート生地1000gに対して、10g/分〜700g/分である、含水型耐熱性チョコレートの製造方法を提供することができる。
本発明の好ましい一態様によれば、上記工程において、添加する水分の全体量を複数回に分けて添加する、含水型耐熱性チョコレートの製造方法を提供することができる。
本発明の好ましい一態様によれば、上記添加する水分の全体量を2〜10回に分けて添加する、含水型耐熱性チョコレートの製造方法を提供することができる。
本発明の好ましい一態様によれば、上記チョコレート生地を100質量%とした場合、添加する水分の全体量が、正味の水の添加量として0.1〜5.0質量%に相当する量である、含水型耐熱性チョコレートの製造方法を提供することができる。
本発明の好ましい一態様によれば、上記含水チョコレート生地の粘度が、24000センチポワズ(cp)以下に抑制されている、含水型耐熱性チョコレートの製造方法を提供することができる。
本発明の好ましい一態様によれば、上記チョコレート生地に対して水分を添加するときの該生地の温度が、32〜50℃に調整されている、含水型耐熱性チョコレートの製造方法を提供することができる。
本発明の好ましい一態様によれば、上記水分が液糖又はタンパク液である、含水型耐熱性チョコレートの製造方法を提供することができる。
また、本発明の別の一態様によれば、チョコレート生地に対して水分を段階的に添加する工程を含む、含水チョコレート生地の粘度を抑制する方法を提供することができる。
本発明の好ましい一態様によれば、上記工程において、一定の速度で滴下することにより水分を添加する、含水チョコレート生地の粘度を抑制する方法を提供することができる。
本発明の好ましい一態様によれば、上記水分の滴下速度が、チョコレート生地1000gに対して、10g/分〜700g/分である、含水チョコレート生地の粘度を抑制する方法を提供することができる。
本発明の好ましい一態様によれば、上記工程において、添加する水分の全体量を複数回に分けて添加する、含水チョコレート生地の粘度を抑制する方法を提供することができる。
本発明の好ましい一態様によれば、上記添加する水分の全体量を2〜10回に分けて添加する、含水チョコレート生地の粘度を抑制する方法を提供することができる。

発明の効果

0009

本発明によれば、従来よりも簡便な方法で、粘度の上昇を起こさず、流動性のあるペースト状が維持された、含水チョコレート生地が調製できる、含水型耐熱性チョコレートの製造方法を提供することができる。このような製造方法は、従来の方法よりも簡便なものであるため、製造コストを削減することができ、工業的な大量生産に適している。また、本発明によれば、含水チョコレート生地の粘度を抑制する方法も併せて提供される。これにより、生産性を向上させ、安価に耐熱性チョコレートを製造することができる。

0010

以下、本発明の「含水型耐熱性チョコレートの製造方法」を詳細に説明する。

0011

<チョコレート>
本発明において「チョコレート」とは、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」(全国チョコレート業公正取引協議会)又は法規上の規定等により限定されるものではなく、食用油脂、糖類を主原料とし、必要によりカカオ成分カカオマスココアパウダー等)、乳製品香料、乳化剤等を加え、チョコレート製造の工程(混合工程、微粒化工程、精練工程、調温工程、成形工程、冷却工程等)の一部又は全部を経て製造されたものを指す。また、本発明におけるチョコレートは、ミルクチョコレートのほか、ホワイトチョコレートカラーチョコレート等も含む。なお、本発明のチョコレートは、テンパータイプであっても、非テンパータイプであってもどちらでもよい。

0012

本発明のチョコレートは、油脂を28〜44質量%含有する。ここで油脂とは、ココアバター等の油脂のみだけではなく、カカオマス、ココアパウダー、全脂粉乳等のチョコレートの原料中に含まれる油脂も全て合計したものである。例えば、一般的に、カカオマスの油脂(ココアバター)含有量は55質量%(含油率0.55)であり、ココアパウダーの油脂(ココアバター)含有量は11質量%(含油率0.11)であり、全脂粉乳の油脂(乳脂)含有量は25質量%(含油率0.25)であるから、チョコレート中油脂含量は、各原料のチョコレート中の配合量(質量%)に含油率を掛け合わせたものを合計した値となる。本発明のチョコレートは、作業性や風味の点から油脂含有量は30〜40質量%であることが好ましく、31〜39質量%であることがより好ましく、32〜38質量%であることがさらに好ましい。

0013

チョコレートは連続相が油脂なので、チョコレートの油脂含有量は、粘度に大きな影響を与える。油脂含有量が多いほど、粘度は低くなり、水の添加によって生じる粘度上昇の影響を軽減できる。しかし、油脂含有量が多くなると糖の比率が低下して糖骨格構造がもろくなり、得られるチョコレートの耐熱性が低下する可能性がある。他方、油脂分を30質量%以下にすると、チョコレートの粘度が高くなり、水分添加による粘度上昇の影響も大きくなるので、チョコレート製造時のハンドリング性を低下させる可能性がある。ただし、このようなハンドリング性の低下は、減粘作用のある乳化剤(レシチンポリグリセリン縮合リシノール酸エステルPGPR)等)をチョコレートに配合して、粘度を適宜調整することで抑制することができる。減粘作用のある乳化剤の含有量は、チョコレート中に0.2〜1質量%であることが好ましく、特に、レシチンとPGPRとを併用することが好ましい。

0014

本発明のチョコレートは、糖類の1つとしてショ糖を30〜58質量%含有する。本発明においてチョコレート中のショ糖は、糖骨格を形成する重要な成分の1つである。ショ糖としては、実質的にショ糖の結晶であるグラニュー糖を粉にした粉糖を使用するのが適当である。本発明のチョコレートのショ糖含有量は、32〜54質量%であることが好ましく、34〜50質量%であることがより好ましい。チョコレートのショ糖含有量が上記範囲程度であると、チョコレート中に糖骨格が形成され易いので好ましい。

0015

本発明のチョコレートは、粉乳を4〜32質量%含有する。本発明に使用する粉乳としては、乳由来粉末であれば特に制限はなく、例として、全脂粉乳、脱脂粉乳ホエイパウダークリームパウダーバターミルクパウダーが挙げられる。粉乳は1種または2種以上を選択して使用できるが、特に、全脂粉乳、脱脂粉乳、ホエイパウダーが含まれることが好ましく、全脂粉乳、脱脂粉乳が含まれることがより好ましい。本発明のチョコレートに使用される粉乳は、また、スプレードライヤー等の噴霧乾燥により、製造されたものが好ましい。本発明のチョコレートの粉乳含有量は、8〜28質量%であることが好ましく、12〜24質量%であることがより好ましい。チョコレートの粉乳含有量が上記範囲程度であると、チョコレートの風味と保形性が良好であり好ましい。

0016

本発明のチョコレートは、本発明の特徴を損なわない限り、上記成分(油脂、ショ糖及び粉乳)のほかに、通常チョコレートに使用されるカカオマス、ココアパウダー、糖類、乳製品(乳固形類等)、乳化剤、香料、色素等のほか、澱粉類ガム類熱凝固性タンパク、いちご粉末や抹茶粉末等の各種粉末類等の、各種食材や各種改質材が含まれていてもよい。

0017

<チョコレート生地の製造方法>
本発明における「チョコレート生地」とは、常法に従い、上記チョコレートの原材料である、油脂、ショ糖及び粉乳等の混合、ロールリファイニング等による微粒化、必要に応じてコンチング処理等を行って製造する溶融融液)状態のチョコレートを意味する。コンチング処理を行う場合、コンチング処理における加熱は、チョコレートの風味を損なわないように、40〜60℃で行うことが好ましい。なお、本発明の製造方法において、工程と処理とは、同じ意味として使用している。

0018

本発明の含水型耐熱性チョコレートの製造方法においては、融液状態にある上記チョコレート生地に、水分を添加分散させる工程(水分添加工程)が含まれる。ここで、融液状態とは、チョコレート生地中の油脂が融解された状態を指す。チョコレート生地が融液状態であるかどうかは、テンパータイプのチョコレートの場合、冷却固化した後の、チョコレート生地の型抜けを確認することで判断できる。冷却固化されたチョコレート生地が成形型から型抜けしない場合(具体的には、成形型からのチョコレート生地の離型率が70%未満である場合)、チョコレート生地が融液状態であると判断する。

0019

[水分添加工程]
水分添加工程における融液状態にあるチョコレート生地の温度は、30〜70℃であることが好ましく、35〜60℃であることがより好ましく、32〜50℃であることが更に好ましい。水分添加工程において添加される水分の量(以下、「添加する水分の全体量」ということもある)は、通常の含水型耐熱性チョコレートにおいて使用される量でよく、特に限定されないが、融液状態のチョコレート生地に対して、正味の水の添加量として0.1〜5.0質量%に相当する量であることが好ましい。水分の添加量が融液状態のチョコレート生地に対して、正味の水の添加量として0.1質量%相当以上であると、糖骨格が十分に形成され、耐熱性に優れたチョコレートが得られる。他方、水分の添加量が融液状態のチョコレート生地に対して、正味の水の添加量として5.0質量%相当以下であると、微生物汚染リスクを抑制できる。水分の添加量は、融液状態のチョコレート生地に対して、正味の水の添加量として0.3〜3.0質量%相当であってもよく、さらに0.5〜2.5質量%相当であってもよい。添加される水分の量は、チョコレート生地の粘度に多大な影響を与えるため、正味の水の添加量として1.0〜1.5質量%相当の量であることが殊更好ましい。本発明において、「添加する水分の全体量」とは、前述のような範囲となるために必要な水分の量の総計であり、例えば、100gのチョコレート生地に対して、1質量%となるように水を添加する場合、「添加する水分の全体量」は1gと計算される。なお、本発明において、水分が添加された前記チョコレート生地のことを「含水チョコレート生地」という。

0020

水分添加工程において添加される水分は、水のみであってもよいが、水と共に水以外の成分を含む組成物(以下、このような組成物を「含水材」という)であってもよい。水分添加工程において添加する水分は、正味の水の添加量が同じであっても、水と共に添加する成分によって、融液状態のチョコレートの粘度上昇速度が変化し得る。具体的には、水のみ、又は、水の含有量の高い含水材(果汁牛乳等)を添加すると、チョコレートの粘度は急激に上昇しやすい。他方、液糖やタンパク液等の含水材を添加すると、比較的緩やかに粘度が上昇する傾向にある。急激に粘度が上昇すると、水分を、融液状態のチョコレート中に十分に分散できない可能性があるため、水分添加工程における水分は、含水材、特に液糖又はタンパク液であることが好ましい。

0021

液糖としては、果糖ブドウ糖蔗糖麦芽糖オリゴ糖等の糖と水とを含む、還元水飴や果糖ブドウ糖液ソルビトール液等の溶液が挙げられる。また、タンパク液としては、卵白メレンゲ、濃縮乳生クリーム等のタンパク質と水とを含む溶液が挙げられる。液糖やタンパク液に含まれる水の含有量は、溶液全体に対して10〜90質量%であってもよく、10〜50質量%であってもよい。水分添加工程において、水分を含水材の形態で添加する場合は、その添加量は、融液状態のチョコレートに対する正味の水の量が上記の範囲となるように添加すればよい。例えば、水の含有量が25質量%の液糖を用いて、100gのチョコレート生地に対して正味の水の添加量が1質量%となるように水分を添加する場合、必要な「添加する水分(液糖)の全体量」は4gと計算される。

0022

本発明の水分添加工程では、水分(水又は含水材)は段階的に添加される。この点が本発明における重要な特徴である。本発明において、水分を「段階的に添加する」とは、耐熱性を得るのに必要な量の水分をチョコレート生地に対して徐々に添加していくことを意味し、具体的には、水分を一定の速度で滴下するか、もしくは、水分を数回に分け待機時間を置いて添加することが挙げられる。
ここで、一定の速度で滴下する場合は、添加速度が遅くければ遅いほど粘度上昇を抑制できるので、添加速度はできるだけ遅い方が好ましいが、あまりに遅すぎると水分添加工程が終了するまでの時間が長くなり、添加条件のコントロールも難しくなる。そこで、水分添加工程の効率性を考慮すると、チョコレート生地1000g(グラム)に対して、水分を10〜700g(グラム)/分でチョコレート生地に添加することが好ましく、30〜600g/分で添加することがより好ましく、50〜500g/分で添加することがさらに好ましく、100〜400g/分で添加することが殊更好ましい。なお、一定の速度で滴下するには、定量ポンプ絞り袋等の通常公知である滴下装置及び道具を用いることができる。
また、複数回に分け待機時間を置いて添加する場合は、できるだけ多くの回数に分けて添加する方が粘度上昇を抑制できるので好ましいが、あまりに多くの回数に分けて添加すると水分添加工程が終了するまでの時間が長くなり、添加条件のコントロールも難しくなる。そこで、水分添加工程の効率性を考慮すると、2〜10回に分けて添加することが好ましく、3〜8回に分けて添加することはより好ましく、3〜5回に分けて添加することがさらに好ましい。待機時間は任意に設定できるが、添加した水分がチョコレート生地に十分均一に分散するのに必要な時間が好ましく、チョコレート生地の撹拌速度並びにチョコレート生地の量等にも依存するが、例えば、待機時間は1〜30分であることが好ましく、3〜20分であることがより好ましく、5〜15分であることがさらに好ましい。複数回に分けて添加する方法は通常、作業者手作業等で行うことができる。なお、チョコレート生地の撹拌速度は100〜300rpmが好ましく、120〜200rpmがより好ましく、130〜180rpmであることがさらに好ましい。
水分添加工程におけるチョコレート生地の温度は、後述する「保持工程」における温度範囲を考慮して、32〜50℃に設定しておくことが好ましい。34〜48℃に設定することがより好ましく、35〜45℃に設定することがさらに好ましい。このような温度範囲に設定することで、チョコレート生地中に分散した水の温度を高め、チョコレート生地中に分散するショ糖や乳糖等への水の親和性を高めて糖骨格の形成を促進することができる。

0023

テンパリングシーティング処理]
本発明の含水型耐熱性チョコレートの製造方法において、上記水分添加工程の前後のどちらかで、テンパリング処理もしくはシーディング処理を行ってもよい。

0024

上記テンパリング処理は、融液状態にあるチョコレートに安定結晶の結晶核を生じさせる操作である。具体的には、例えば、40〜50℃で融解しているチョコレートを、品温を27〜28℃程度まで下げた後に、再度29〜31℃程度まで加温する操作として知られる。テンパリング処理は、水分添加工程の前に行うことが好ましい。

0025

上記シーディング処理は、テンパリング処理の替りに、安定結晶の結晶核として機能するシーディング剤を使用して、融液状態にあるチョコレート中に安定結晶の結晶核を生じさせる処理であり、テンパリング処理と同様に、チョコレート中の油脂をV型の安定結晶として固化させるために行う処理である。

0026

本発明の含水型耐熱性チョコレートの製造方法において、シーディング処理を行う場合は、また、シーディング処理及び水分添加工程を含むが、その順序はいずれが先であってもよい。また、シーディング剤添加及び水分添加工程を同時に行ってもよい(つまり、シーディング剤及び水分を融液状態のチョコレートに同時に添加してもよい)。

0027

[保持工程]
本発明におけるチョコレート生地は、上記水分添加工程後、融液状態のチョコレート生地を10分以上、生地温度を32〜40℃、好ましくは34〜39℃、さらに好ましくは35〜39℃、最も好ましくは37〜39℃に保持してもよい。これにより、チョコレート生地中に分散した水の温度を高め、チョコレート生地中に分散する砂糖や乳糖等への水の親和性を高めて糖骨格の形成を促進できるので、チョコレート生地の粘度の上昇を効果的に抑制しつつ、チョコレートの保形性を向上させることができる。

0028

保持工程における、32〜40℃に保持する時間は、0.25〜24時間であることが好ましく、0.5〜12時間であることがより好ましく、1〜8時間であることが最も好ましい。保持時間が上記の範囲内にあると、水分添加効果を維持した状態で、水分添加工程後の生地粘度を、両工程完了時の生地粘度の1.10倍以下(より好ましくは1.15倍以下)に維持できるので、エンローバー等を使用してチョコレート生地を食品被覆等する際に、チョコレート生地の取り扱いが容易となる。なお、シーディング剤添加工程及び水分添加工程後の生地粘度と、保持工程における生地粘度とは、同一の温度条件で測定して比較する。

0029

本発明におけるチョコレート生地の粘度は、例えば、回転型粘度計であるBM型粘度計を用いて、測定温度にてNo.4のローターを12rpmで回転させ、3回転後の読み取り数値装置係数を乗じて求める塑性粘度として計測できる。

0030

[冷却固化工程]
水分添加工程を経た融液状態のチョコレート生地は、冷却固化してもよく、この工程により、融液状態から固形の成型されたチョコレートを効率的に製造できる。

0031

冷却固化の方法は特に限定されないが、モールド成形や食品への被覆といったチョコレート製品の特性に応じて、例えば、冷却トンネルクーリングトンネル)等での冷風吹付冷却プレートとの接触等により冷却固化することができる(例えば、「製菓用油脂ハンドブック」(蜂屋巖訳、2010年発行、株式会社幸書房)を参照)。

0032

冷却固化の条件は、融液状態のチョコレートが固化する限り特に限定されないが、0〜20℃(好ましくは0〜10℃)で5〜90分間(好ましくは10〜60分間)分間行ってもよい。

0033

保温工程]
本発明の製造方法においては、上記冷却固化後のチョコレートを、さらに保温処理する、保温工程を設けることが好ましい。保温処理とは、冷却固化後のチョコレートを、好ましくは24〜36℃、より好ましくは26℃〜34℃、さらに好ましくは28〜32℃において、好ましくは1時間〜14日間、より好ましくは6時間〜10日間、さらに好ましくは6時間〜8日間、最も好ましくは12時間〜4日間保温する処理である。保温処理により、チョコレート中に形成された糖骨格をより強固なものとすることができる。また、保温処理される対象である、冷却固化後のチョコレートは、冷却固化後、保温処理前に、好ましくは16〜24℃、より好ましくは18〜22℃において、好ましくは6時間〜14日間、より好ましくは6時間〜10日間、さらに好ましくは12時間〜4日間エージング処理されたものであってもよい。

0034

得られた含水型耐熱性チョコレートの耐熱性は、例えば、40℃〜50℃の恒温槽で2〜6時間静置してから、その形状、硬さ、粘調性等に基づいて評価される。すなわち、40℃〜50℃の恒温槽で2〜6時間静置すると、通常のチョコレートであれば、溶融してその形状等を維持することは難しいが、耐熱性があるチョコレートであれば、溶融せずにその形状等を維持しているため、耐熱性を評価することができる。本発明における「耐熱性チョコレート」とは、40℃〜50℃の恒温槽で2〜6時間静置しても、その形状において変化がないチョコレートをいう。
また、得られた含水型耐熱性チョコレートに糖骨格が形成されているかどうかは、n−ヘキサンへの浸漬テストを行い、少なくとも20分間、チョコレートの形状が保たれていることを確認することで特定できる。n−ヘキサンの浸漬テストにおいて、本発明のチョコレートは好ましくは2時間以上、より好ましくは12時間以上、さらに好ましくは24時間以上形状が保たれている。なお、n−ヘキサンへの浸漬テストについては、特許文献3に詳しく記載されている。

0035

以下、本発明の「含水チョコレート生地の粘度上昇を抑制する方法」についても詳細に説明する。

0036

本発明は、含水チョコレート生地の粘度上昇を抑制する方法にも関する。「含水チョコレート生地」は上記で定義したとおりである。上述のとおり、含水チョコレート生地は水分の添加量が増えるにつれて粘度が上昇するが、水分を段階的に添加することで粘度上昇を有意に抑制することができる。ここで、「段階的に添加する」とは、上述で定義したとおりである。「粘度上昇を抑制する」とは、流動性のあるペースト状を維持できていることを意味し、具体的には、例えば40℃において、粘度が24000センチポワズ(cp)以下に抑制されることを意味する。ここで、前記粘度は、22000センチポワズ(cp)以下に抑制されることがより好ましく、21000センチポワズ(cp)以下に抑制することがさらに好ましい。このように含水チョコレート生地の粘度が抑制されることにより、ハンドリング性が向上し、成型その他の工程における生産性が向上する。

0037

以下に、実施例を提示することにより、本発明をさらに具体的に説明する。

0038

[チョコレートの原材料]
チョコレートの主原材料として、以下のものを使用した。
・全粉乳(よつ葉乳業株式会社、商品名:全脂粉乳)
・ショ糖(株式会社徳製、商品名:POWDERSUGAR)
・ココアバター(大東カカオ株式会社製、商品名:TCココアバター)
・香料(小川香料株式会社製、商品名:バニラ香料
・レシチン(日清オイリグループ株式会社製、商品名:レシチンDX)
・PGPR(ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、太陽化学株式会社製)

0039

[含水材]
含水材として、以下のものを使用した。
・液糖(水分25質量%、昭和産業株式会社製果糖ブドウ糖液)

0040

[粘度の測定]
含水チョコレート生地の粘度は、40℃に設定した、BM型粘度計(東機産業株式会社製)を用いて測定した。

0041

官能評価
含水チョコレート生地の状態を熟練した技術者により官能評価により評価した。溶融状態にある当該生地をスプーン攪拌する等して、チョコレートの状態を肉眼及び手への感触で、以下の基準により評価した。
○:流動性のあるペースト状になっている
△:やや流動性のあるペースト状になっている
×:流動性のない状態(ボテボテ)になっている

0042

(実施例1〜3、比較例1)
以下表1の配合に従って、原材料を混合した後、常法に従って、ロールリファイニング、コンチングを行い、融液状態にあるチョコレート生地(油脂含量37.02質量%)を調製した。このチョコレート生地100質量%に対して液糖(水含有量25質量%)を3.6質量%(正味の水としては対チョコレート生地0.9質量%)になるように添加し、撹拌分散させた。その際、チョコレート生地1000gに対して、一定の速度(10g/分、280g/分、320g/分、720g/分)で液糖を滴下させた。なお、絞り袋を用いて液糖を滴下中、チョコレート生地は公知の攪拌機を用いて160rpmで攪拌した。また、液糖を添加してから1時間後の含水チョコレート生地の粘度を測定した。さらに、液糖を添加したときの該生地の温度を測定し、該生地の状態を官能評価した。以上の結果を表2にまとめた。

0043

0044

0045

上記表2の結果から明らかであるように、液糖の添加速度は遅いほど、添加1時間後の粘度は概ね低くなり、水分の添加による含水チョコレート生地の粘度上昇が抑制されていることがわかった。また、このことは官能評価でも同様に、液糖の添加速度は遅いほど、流動性のあるペースト状が保たれていることが確認できた。しかし、液糖の添加速度が720g/分以上であると、粘度は24000cpを超え、かつ、官能評価でも流動性のないボテボテの状態となることがわかった。この添加速度720g/分とは、必要な量の液糖(全体量)を1回(3秒で行ったと仮定)で投入したときの速度である。
このように、液糖の添加速度を一定速度以下に抑制し、液糖を段階的に徐々に加えて行けば、含水チョコレート生地の粘度上昇を効率よく抑制でき、誰でも簡便に含水型耐熱性チョコレートを製造することができることがわかった。

0046

(実施例4、比較例1)
実施例1〜3と同じ方法でチョコレート生地を準備した。このチョコレート生地100質量%に対して3.6質量%(正味の水としては対チョコレート生地0.9質量%)になるように液糖(水含有量25質量%)を添加し、撹拌分散させた。その際、必要な量の液糖(全体量)を3回に分けて液糖を投入した(1/3量を1回毎10分間の待機時間を置いて3回に分けて添加)。なお、1回の投入には3秒の時間を要したと仮定して、チョコレート生地1000gに対する液糖の添加速度は計算した。チョコレート生地は公知の攪拌機を用いて160rpmで攪拌した。また、液糖を添加してから1時間後の含水チョコレート生地の粘度を測定した。さらに、液糖を添加したときの該生地の温度を測定し、該生地の状態を官能評価した。以上の結果を表3にまとめた。

0047

実施例

0048

上記表3の結果から明らかであるように、液糖の添加に際しては、滴下方法を採用しなくても、3回に分けて添加すれば、同様の効果、すなわち、含水チョコレート生地の粘度上昇を抑制できることがわかった。3回に分けて添加した場合、添加1時間後の粘度は、滴下方法を採用した場合よりも低くなる可能性が見出された。このため、複数回に分けて添加する方法も本発明において好適に採用できることがわかった。

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