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技術 自己心拍再開後の予後を改善するための医薬組成物

出願人 学校法人慶應義塾大陽日酸株式会社
発明者 鈴木昌林田敬多村知剛佐野元昭西脇良樹
出願日 2016年7月27日 (4年3ヶ月経過) 出願番号 2016-147419
公開日 2017年7月6日 (3年4ヶ月経過) 公開番号 2017-119667
状態 特許登録済
技術分野 化合物または医薬の治療活性 他の有機化合物及び無機化合物含有医薬
主要キーワード 大型貯槽 潜水病 低温管理 リキット 水素吸入 吸入マスク 救急搬送 救急外来
関連する未来課題
重要な関連分野

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課題

本発明は、自己心拍再開後に相当の期間が経過した後であっても、自己心拍再開後の予後を改善することができる医薬組成物を提供することを目的とする。

解決手段

少なくとも10分間の心肺停止後に続く自己心拍再開後30分以上経過したヒト対象における、自己心拍再開後の予後を改善するための気体状医薬組成物が提供される。本発明の医薬組成物は、水素ガスを含み、前記医薬組成物が投与されたヒト患者群において、前記医薬組成物を投与されていないヒト患者群と比べ、自己心拍再開後の予後が改善されることを特徴とする。

概要

背景

院外心停止蘇生患者は、例え救命できたとしても脳や心臓重篤後遺症を残して、社会復帰率は低く、生命予後は極めて不良である。2012年に行った院外心停止患者の多施設観察研究(関東地方の58病院)において、自己心拍再開後に入院した蘇生後患者920人中、1ヵ月生存率は21.6%、1ヵ月意識回復率は13.3%であった。蘇生後患者の臓器保護に対して低体温療法は有効性が認められる唯一治療であるが、装置が大掛かりの上、その管理に多くの医療従事者関与する必要があるため、大学病院など一部の施設でしか行われていない。したがって、蘇生後患者の予後改善のためには低体温療法にかわ新規治療法の開発が急務である。

心停止蘇生後の脳や心臓等の臓器障害は、心停止後症候群PCAS)とも称され、自己心拍再開後に発生する活性酸素またはフリーラジカルが関与していると考えられている。水素ガスは、悪玉活性酸素であるヒドロキシラジカルのみを消去する選択的ラジカルスキャベンジャーであり、分子量が小さく優れた拡散能を有するため、血流に関係なく細胞膜を通過し細胞小器官に到達できる、という極めて特徴的な性質をもっている(非特許文献1)。また、水素ガス(49%)の吸入はヒトの潜水病予防に用いられており、健常人が吸入しても副作用を認めないことが知られている(非特許文献2)。

このような背景のもと、本発明者らは、ラットにおいて、選択的ラジカルスキャベンジャーとして働く水素の吸入によって、心肺停止蘇生後の脳および心機能ならびに生命予後を改善できることを見出している(非特許文献3および非特許文献4)。

概要

本発明は、自己心拍再開後に相当の期間が経過した後であっても、自己心拍再開後の予後を改善することができる医薬組成物を提供することを目的とする。少なくとも10分間の心肺停止後に続く自己心拍再開後30分以上経過したヒト対象における、自己心拍再開後の予後を改善するための気体状医薬組成物が提供される。本発明の医薬組成物は、水素ガスを含み、前記医薬組成物が投与されたヒト患者群において、前記医薬組成物を投与されていないヒト患者群と比べ、自己心拍再開後の予後が改善されることを特徴とする。なし

目的

本発明は、自己心拍再開後に相当の期間が経過した後であっても、自己心拍再開後の予後を改善することができる医薬組成物を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

明細書に記載の発明。

技術分野

0001

本発明は、心肺停止後に続く自己心拍再開後の予後を改善するための医薬組成物に関する。

背景技術

0002

院外心停止蘇生患者は、例え救命できたとしても脳や心臓重篤後遺症を残して、社会復帰率は低く、生命予後は極めて不良である。2012年に行った院外心停止患者の多施設観察研究(関東地方の58病院)において、自己心拍再開後に入院した蘇生後患者920人中、1ヵ月生存率は21.6%、1ヵ月意識回復率は13.3%であった。蘇生後患者の臓器保護に対して低体温療法は有効性が認められる唯一治療であるが、装置が大掛かりの上、その管理に多くの医療従事者関与する必要があるため、大学病院など一部の施設でしか行われていない。したがって、蘇生後患者の予後改善のためには低体温療法にかわ新規治療法の開発が急務である。

0003

心停止蘇生後の脳や心臓等の臓器障害は、心停止後症候群PCAS)とも称され、自己心拍再開後に発生する活性酸素またはフリーラジカルが関与していると考えられている。水素ガスは、悪玉活性酸素であるヒドロキシラジカルのみを消去する選択的ラジカルスキャベンジャーであり、分子量が小さく優れた拡散能を有するため、血流に関係なく細胞膜を通過し細胞小器官に到達できる、という極めて特徴的な性質をもっている(非特許文献1)。また、水素ガス(49%)の吸入はヒトの潜水病予防に用いられており、健常人が吸入しても副作用を認めないことが知られている(非特許文献2)。

0004

このような背景のもと、本発明者らは、ラットにおいて、選択的ラジカルスキャベンジャーとして働く水素の吸入によって、心肺停止蘇生後の脳および心機能ならびに生命予後を改善できることを見出している(非特許文献3および非特許文献4)。

先行技術

0005

Nat Med.2007 Jun;13(6):688−94
Journal of Applied Physiology March 1,1994 vol.76 no.3 1113−1118
Hayashida K,Sano M,Hori S,et al.Journal of the American Heart Association 2012;doi:10.1161/JAHA.112.003459
Circulation.2014 Dec 9;130(24):2173−80

発明が解決しようとする課題

0006

ラットによる実験結果は、自己心拍再開前から自己心拍再開直後における水素の吸入が、選択的ラジカルスキャベンジャーとして良好に機能し、自己心拍再開後の活性酸素による障害が軽減されたことを示唆するものである一方、ヒトでの安全性または有効性は依然として不明なままである。

0007

さらに、現在のところ、ヒトへの水素ガスの投与に際しては、患者本人またはその親族その他の関係者同意が必要であることから、これまでラットで実施されてきたように、自己心拍再開前から自己心拍再開直後にヒトで水素吸入を実施することは非常に困難である。すなわち、自己心拍再開前から自己心拍再開直後の期間に患者本人から同意を得ることはほとんど不可能であり、また、患者の関係者から水素吸入の同意を得る場合にもある程度の時間を要するのが一般的である。血流再開部位における活性酸素の発生は、自己心拍再開後数分で生じると考えられていることから(Circulation.(2002)105:2332−2336;およびProc.Natl.Acad.Sci.USA Vol.86,pp4695−4699(June 1989))、ヒトでの水素吸入は、体内の活性酸素が発生してから相当の期間が経過した後に開始されることがほとんどである。このような場合、活性酸素による臓器障害が既に進行していることから、これまでにマウスで確認されたものと同様の効果は期待することができない。

0008

そこで、本発明は、自己心拍再開後に相当の期間が経過した後であっても、自己心拍再開後の予後を改善することができる医薬組成物を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0009

本発明者らは、院外心停止蘇生後患者に対する水素吸入の安全性および有効性を検討する過程で、全く意外にも、心肺停止に続く心拍再開後に相当の期間が経過したヒト患者においても、水素吸入が自己心拍再開後の予後を顕著に改善できることを見出した。既述のとおり、活性酸素による臓器障害が既に進行している患者においてさえ、自己心拍再開後の予後を改善できることは、水素ガスの選択的ラジカルスキャベンジャーとしての効果では説明できないものであることから、驚くべき知見である。

0010

本発明は、上記の知見に基づくものであり、以下の特徴を包含する。
[1]少なくとも10分間の心肺停止後に続く自己心拍再開後30分以上経過したヒト対象における、自己心拍再開後の予後を改善するための気体状医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、水素ガスを含み、
前記医薬組成物が投与されたヒト患者群において、前記医薬組成物を投与されていないヒト患者群と比べ、自己心拍再開後の予後が改善される
ことを特徴とする、
医薬組成物。

0011

[2][1]に記載の医薬組成物であって、
前記予後の改善が、脳機能の改善である
ことを特徴とする、
医薬組成物。

0012

[3][1]または[2]に記載の医薬組成物であって、
前記ヒト対象は、グラスゴー・コーマスケールGCS)8点以下の対象である、
ことを特徴とする、
医薬組成物。

0013

[4][1]〜[3]のいずれかに記載の医薬組成物であって、
前記「自己心拍再開後の予後の改善」が、少なくとも自己心拍再開後90日経過後における改善である
ことを特徴とする、
医薬組成物。

0014

[5][1]〜[4]のいずれかに記載の医薬組成物であって、
前記「自己心拍再開後の予後の改善」が、脳機能カテゴリー(CPC)スコアによって判定される
ことを特徴とする、
医薬組成物。

0015

[6][1]〜[5]のいずれかに記載の医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、投与開始から少なくとも18時間継続して投与される
ことを特徴とする、
医薬組成物。

0016

[7][1]〜[6]のいずれかに記載の医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、酸素ガスをさらに含む
ことを特徴とする、
医薬組成物。

0017

[8][1]〜[7]のいずれかに記載の医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、不活性ガスをさらに含む
ことを特徴とする、
医薬組成物。

0018

[9][1]〜[8]のいずれかに記載の医薬組成物であって、
前記医薬組成物における前記水素濃度が0.1%〜4.0%である
ことを特徴とする、
医薬組成物。

0019

[10][9]に記載の医薬組成物であって、
前記医薬組成物における前記水素濃度が1.0%〜2.0%である
ことを特徴とする、
医薬組成物。

0020

[11][1]〜[10]のいずれかに記載の医薬組成物であって、
前記心肺停止が、急性心筋梗塞心筋症または高カリウム血症を原因とする
ことを特徴とする、
医薬組成物。

0021

上記に挙げた本発明の態様の一または複数を任意に組み合わせた発明も、本発明の範囲に含まれる。

発明の効果

0022

本発明によれば、自己心拍再開後に相当の期間が経過した後であっても、自己心拍再開後の予後を改善することができる医薬組成物が提供される。

0023

以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。

0024

本発明は、自己心拍再開後の予後を改善するための医薬組成物に関する。本発明の医薬組成物は、心肺停止後に続く自己心拍再開を経験した任意のヒト患者に対して有効であり得る。一方、本発明者らは、心肺停止後に続く自己心拍再開後に相当の期間が経過し、フリーラジカルによる臓器障害を経験したヒト患者においても、水素ガスによって自己心拍再開後の予後を改善できることを新たに見出していることから、本発明の医薬組成物は、特に、所与の心肺停止時間およびそれに続く自己心拍再開後に相当の期間を経たヒト患者を投与対象とすることができる。

0025

したがって、本発明の医薬組成物は、心肺停止後に続く自己心拍再開に起因して障害性の活性酸素またはフリーラジカルを生じさせるのに十分な時間にわたる心肺停止を経験したヒト患者を投与対象とすることができる。本発明において、そのような時間は、典型的には、少なくとも10分である。一方、心肺停止時間の上限は、蘇生後の社会復帰が見込める限り、特に制限されない。なお、現在のところ、心肺停止から35分が蘇生を中止する1つの目安とされている。

0026

また、本発明の医薬組成物は、心肺停止後に続く自己心拍再開後に、障害性の活性酸素またはフリーラジカルが生じるのに十分な時間経過したヒト患者を投与対象とすることができる。そのような時間は、少なくとも30分、好ましくは少なくとも1時間、少なくとも2時間、または少なくとも3時間であり得る。一方、自己心拍再開後から投与開始までの時間の上限は、特に制限されない。下記実施例に記載されるとおり、本発明者らにより、水素ガスが自己心拍再開後のヒト患者に投与される場合に、必ずしも選択的ラジカルスキャベンジャーとしての効果のみを発揮しているわけではないことが初めて示唆されている。したがって、本発明の医薬組成物の投与は、自己心拍再開後の活性酸素またはフリーラジカルの産生が収束した後でもよい。

0027

本発明において、心肺停止の原因は特に制限されず、心原性の疾患であっても非心原性の疾患であってもよい。本発明において、心原性の疾患としては、これに限定されるものではないが、例えば急性冠症候群ST上昇心筋梗塞、ST非上昇型心筋梗塞、不安定狭心症など)、心筋症(肥大型、拡張型、拘束型不整脈原性右室心筋症、または分類不能型)、心筋炎遺伝性後天性不整脈疾患(QT延長症候群、ブルガダ症候群など)、早期興奮症候群、洞不全症候群などを挙げることができる。
本発明において、非心原性の疾患としては、これに限定されるものではないが、例えば大動脈解離心タンポナーデ肺塞栓症敗血症アシドーシス低酸素血症、高二酸化炭素血症窒息溺水、脳卒中、外傷大量出血緊張性気胸低体温症低血糖中毒三環系抗うつ薬オピオイドβ遮断薬カルシウム受容体拮抗薬ジギタリス副交感神経興奮薬アデノシンアデノシン三リン酸など)、電解質異常(高カリウム血症などなどを挙げることができる。

0028

本発明において、「予後の改善」とは、心肺蘇生後に患者が社会復帰するために必要な任意の症状の改善をいう。そのような症状として、これに限定されるものではないが、例えば生存率、脳機能、心機能などが挙げられる。また、この関連で、「医薬組成物を投与されていないヒト患者群と比べ、自己心拍再開後の予後が改善される」には、自己心拍再開後のある時点における前記任意の症状の程度が、本発明の医薬組成物が投与されていないヒト患者群に比較して改善されること、および、前記任意の症状における所与のレベルの改善が達成されるまで期間が、本発明の医薬組成物が投与されていないヒト患者群に比較して短縮されること、が含まれる。

0029

本発明の一実施形態において、「予後の改善」は、脳機能の改善である。脳機能は、典型的には、脳機能カテゴリー(CPC)スコアによって判定することができる。CPCスコアは、当業者に周知の指標であり、各スコアは下記表1のとおりである。

0030

本発明の医薬組成物は、水素ガスを含む気体状の医薬組成物であることを特徴とする。また、本発明の医薬組成物は、気体状の医薬組成物であることから、ヒト患者に対して一定の時間にわたって継続投与されるものであることを特徴とする。本発明において、水素原子は、その全ての同位体、すなわちプロチウム(Pまたは1H)、ジュウテリウム(Dまたは2H)、およびトリチウム(Tまたは3H)、のいずれであってもよい。したがって、分子状水素として、P2、PD、PT、DT、D2およびT2が含まれうる。本発明の好ましい態様において、本発明の医薬組成物に含まれる水素ガスの99%以上は天然の分子状水素であるP2である。

0031

本発明の医薬組成物は、酸素ガスをさらに含むことができる。酸素ガスは、水素ガスと予め混合されて、混合ガスの形態で存在してもよいし、対象への投与直前にまたは投与時に、水素ガスと混合されてもよい。

0032

本発明の医薬組成物は、不活性ガスをさらに含むことができる。不活性ガスは、水素ガスまたは酸素ガスの防爆及び濃度調整を目的として使用され、したがって、水素ガスおよび/または酸素ガスとの混合ガスの形態で存在し得る。本発明の医薬組成物に使用できる不活性ガスとしては、これに限定されるものではないが、窒素ガスヘリウムガスアルゴンガスなどを使用することができる。本発明の一実施形態では、不活性ガスとして安価な窒素ガスが使用される。

0033

本発明の医薬組成物において、水素ガスの濃度範囲は、これに限定されるものではないが、例えば0.1〜4.0%(v/v)の間の任意の濃度とすることができる。水素ガス濃度の下限値は、自己心拍再開後の予後を改善する効果を発揮できる濃度の下限値として設定されるものである。したがって、患者の重症度、心肺停止時間、自己心拍再開から投与開始までの時間、心拍停止の原因となった疾患の種類、性別年齢などに応じて、自己心拍再開後の予後を改善することができる最小濃度を適宜設定することができる。一実施形態において、水素ガスの下限値は、0.1〜1.0%の間、例えば0.5%を選択することができる。一方、水素ガス濃度の上限値は、空気中における水素の爆発限界が4%であるため、安全性の観点から設定されるものである。したがって、水素ガスの上限値は、安全性が担保される限り、4%以下の任意の濃度、例えば3.0%、2.5%または2.0%などを選択することができる。

0034

本発明の医薬組成物において、酸素ガスの濃度は、水素ガス濃度が0.1〜4.0%(v/v)の前提のとき、21%〜99.9%(v/v)の範囲とすることができる。

0035

本発明の医薬組成物において、不活性ガスの濃度は、水素ガスおよび/または酸素ガスの濃度を適切に維持し、かつ、これらのガスの防爆効果が得られる範囲で設定される。したがって、不活性ガスの濃度は、使用される水素ガスおよび/または酸素ガスの濃度に応じて、当業者は適宜適切な濃度を設定することができる。そのような不活性ガスの濃度は、例えば不活性ガスが窒素ガスの場合、例えば、0〜78.9%(v/v)の範囲で任意にとり得る。

0036

なお、本明細書を通じて使用されるガスの濃度は、20℃、101.3kPaでの含有率を示すものとする。

0037

本発明の医薬組成物において、水素ガスによる本発明の効果を損なわない限り、二酸化炭素などの他の大気中のガス、空気、または麻酔ガスなどをさらに含んでもよい。

0038

本発明の医薬組成物は、例えば吸入手段を用いた吸入により、対象に投与することができる。そのような吸入手段としては、これに限定されるものではないが、例えば吸入マスクを挙げることができる。吸入マスクは、対象への適切な濃度での投与が実現されるように、対象の口およびを同時に覆うものであることが好ましい。

0039

本発明の一実施形態において、本発明の医薬組成物は、対象にそのまま投与し得る形態で提供される。例えば一例として、この実施形態では、本発明の医薬組成物は、水素ガスおよび不活性ガスのほか、呼吸のための酸素ガス、およびその他任意のガスを、適切な濃度で予め混合することによって調製された、混合ガスの形態で提供される。

0040

本発明の別の態様において、本発明の医薬組成物は、対象への投与直前または投与時に調製される形態で提供される。例えば一例として、この実施形態では、本発明の医薬組成物は、水素ガスと不活性ガスとの混合ガスを収容した容器と、酸素ガスを収容した容器とが、配管を介して吸入マスクに接続され、対象への投与に適切な濃度となるような流量で患者に送り込まれることによって、提供される。本発明の一態様では、前記容器は、持ち運び可能なガスボンベのほか、例えば屋外に設置された大型貯槽の形態であってもよい。また、前記ガスは、圧縮された圧縮ガスの形態で容器に収容されてもよいし、液化形態でリキットガスコンテナー(LGC)に収容されてもよい。また、本発明における別の例として、前記水素ガス、前記酸素ガス、前記窒素ガス等の不活性ガスは、それぞれ、ガス発生装置から供給されてもよい。そのような発生装置として、これに限定されるものではないが、例えば酸素ガス用の酸素濃縮装置水素ガス用水電解による水素発生装置などが挙げられる。

0041

本発明の別の態様において、本発明の医薬組成物は、ガスの濃度が一定に維持されるように、密閉小室に水素ガスを供給することによって提供される。例えば一例として、この実施形態では、本発明の医薬組成物は、対象が存在する密閉小室に、前記密閉小室中の水素濃度が適切な濃度に維持されるような流量で、水素ガスと不活性ガスとからなる混合ガスを供給することによって提供される。

0042

本発明の医薬組成物は、ガスを収容する1個または複数個の容器の形態、またはガスを収容する複数の容器と、ガスを吸入するための吸入手段と、前記複数の容器とガス吸入手段とを接続する配管とを含む、ガス吸入用デバイスの形態で提供され得る。本発明の一実施形態において、ガス吸入用デバイスは、ガスを収容する各容器からのガス吸入手段へのガスの流量を制御する制御機構を備えることが好ましい。

0043

本発明の医薬組成物の投与時間は、本発明の医薬組成物による予後の改善効果を発揮できる時間であれば、特に制限されず、患者の重症度、心肺停止時間、自己心拍再開から投与開始までの時間、心拍停止の原因となった疾患の種類、性別、年齢等に応じて、当業者が適宜適切な時間を設定することができる。そのような時間は、これに限定されるものではないが、例えば、少なくとも1時間、少なくとも3時間、少なくとも6時間、少なくとも9時間、少なくとも12時間、少なくとも15時間、少なくとも18時間、少なくとも21時間、少なくとも24時間、少なくとも2日、少なくとも5日、少なくとも10日、少なくとも15日、少なくとも20日、少なくとも25日、または少なくとも30日であり得る。

0044

また、本発明の医薬組成物の投与回数は制限されず、複数回投与することができる。本発明の医薬組成物の投与間隔および投与回数は、患者の症状に応じて、適宜適切な投与間隔および投与回数を設定することができる。

0045

本発明の医薬組成物は、自己心拍再開後の予後の改善に有効な他の治療と併用してもよい。そのような治療として、これに限定されるものではないが、例えば低温管理療法などを挙げることができる。

0046

本発明の医薬組成物によれば、心肺停止後に続く自己心拍再開後に相当の期間が経過したヒト患者であっても、自己心拍再開後の予後を顕著に改善することができる。例えば、下記実施例に示されるように、本発明の医薬組成物は、グラスゴー・コーマ・スケール(GCS;意識障害の重症度の15点評価方法として当業者に周知である)のスコアが8点以下の昏睡状態にある全ての生存ヒト患者において、自己心拍再開後90日経過後にはCPC1(脳機能良好)まで脳機能が改善している。したがって、本発明の医薬組成物は、自己心拍再開後の投与時の意識レベルが相当に低いヒト患者でさえ、極めて良好に予後を改善することができることを示している。

0047

本明細書において用いられる用語は、特定の実施態様を説明するために用いられるのであり、発明を限定する意図ではない。

0048

また、本明細書において用いられる「含む」との用語は、文脈上明らかに異なる理解をすべき場合を除き、記載された事項(部材、ステップ、要素または数字等)が存在することを意図するものであり、それ以外の事項(部材、ステップ、要素または数字等)が存在することを排除しない。

0049

明細書中引用される文献は、それらのすべての開示が、本明細書中に援用されているとみなされるべきであって、当業者は、本明細書の文脈に従って、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、それらの先行技術文献における関連する開示内容を、本明細書の一部として援用することができる。

0050

以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。

0051

心停止後症候群(PCAS)の対象に対する水素吸入試験
1.被験者
本試験では、院外心停止により救急搬送され、救急搬送中または救急外来で自己心拍が再開した蘇生後患者であって、特に年齢が20以上80歳以下であり、吸入開始時の意識レベルがGCS8点以下の昏睡にある等、特定の基準を満たす患者を選択対象とした。

0052

本臨床試験における自己心拍再開後の患者は昏睡であり、本人からの同意取得は不可能であったため、上記基準を満たす患者のうち、当該患者の配偶者成人の子、親または成人の兄弟姉妹の同意が得られた5例の患者を被験者として水素添加酸素の吸入を行った。表2は、当該5例の被験者の詳細を示す。



HOCM:肥大形心筋症
MI:急性心筋梗塞

0053

2.試験薬
本試験では、既存の人工呼吸器吸気側に水素混合窒素(4%水素、96%窒素)を混入し、酸素とともに被験者の水素ガス吸入を行った(すなわち、水素添加酸素の組成は以下のとおりであった:H2:2%、O2:50%、N2:48%)。ヒトへの水素ガス吸入はこれまでに報告が無く、その安全性に十分な配慮を行うため、今回本発明者等は、人工呼吸器の側管からの水素ガス投与法についての安全性及び必要なガス供給量を検証し、ヒトに対して安全に施行可能であることを確認した。

0054

3.投与
被験者の配偶者、成人の子、親または成人の兄弟姉妹の同意を得たのち、一般集中治療室入室後に、体温管理療法下で、可及的速やかに水素添加酸素の投与を開始し、18時間後まで医師監督下で投与を継続した。
自己心拍再開から水素添加酸素までの時間は下記表3のとおりであった。

0055

4.評価項目
水素ガス吸入の有効性は、第90病日における生存、およびグラスゴー・ピッツバーグ脳機能カテゴリー(CPC)に従う脳機能良好(CPC1)の割合によって評価した。

0056

5.結果
表4は、第90病日の時点における被験体(水素吸入群)の生存率およびCPC1の割合を示す。また、表5には、水素吸入群および対照平均年齢を示す。なお、対照は、上記1.に従って選別された患者のうち、水素添加酸素を吸入しなかった患者を指す。

0057

消防庁公表した心肺停止傷病者の救命率等に関する報告によれば、心原性の心肺機能停止の症例における1カ月生存率は、問わず、年齢とともに低下傾向にあり、70歳以降ではその低下は顕著であることが報告されている(http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/houdou/h21/2101/210122-1houdou_h.pdf、別紙1−2)。同様に、心原性の心肺機能停止の症例における1カ月後社会復帰率は、男女問わず、年齢とともに低下傾向にあり、60歳以降ではその低下は顕著であることが報告されている。

0058

第90病日における患者の生存率は、水素を吸入させなかった対照が83%であったのに対し、水素吸入群では80%であり、ほぼ同等の結果が得られた。また、CPC1の割合については、水素吸入群の方が高い割合(80%vs50%)を示した。患者の平均年齢が、対照に比較して水素吸入群で20歳以上高く、また、水素吸入群の平均年齢が65歳であることに鑑みれば、水素吸入による生存率および脳機能の改善に関する上記の結果は、水素吸入による顕著な効果を示している。

実施例

0059

また、上記の結果が、被験者の自己心拍再開後少なくとも3時間経過後の水素吸入による結果であることは、さらに驚くべきことである。既述のとおり、多臓器障害の原因となる活性酸素は、自己心拍再開後数分で発生するものと考えられているため、このように自己心拍再開後に相当期間経過している場合には、活性酸素による多臓器障害が進行した後であり、水素ガスによる活性酸素の除去による効果は期待できないと考えられるからである。したがって、上記の結果は、現在の技術常識では説明できない顕著なものであり、水素ガスによる活性酸素の除去とは別の作用が存在することが示唆された。

0060

本発明の医薬組成物によれば、自己心拍再開後に相当の期間が経過した後であっても、自己心拍再開後の予後を改善することができる。

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