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技術 連続鋳造用モールドパウダー

出願人 日本製鉄株式会社
発明者 三島和晃塚口友一
出願日 2015年12月28日 (4年11ヶ月経過) 出願番号 2015-256748
公開日 2017年7月6日 (3年5ヶ月経過) 公開番号 2017-119286
状態 特許登録済
技術分野 連続鋳造
主要キーワード 溶融凝固後 ガラス組織 注入流 球状介在物 品質欠陥 ブレークアウト予知 パウダー中 溶融金属表面
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課題

高速鋳造においてもパウダー巻き込みが発生せず、パウダーフィルム潤滑性を保持することができ、スケール剥離性の良好な連続鋳造用モールドパウダーを提供する。

解決手段

主成分としてCaO,SrO,SiO2を含有し、モル比率としての(CaO+SrO)/SiO2で表される塩基度Aが1.3〜4.0であり、かつSrO濃度が15〜40質量%であり、かつB2O3を1〜8質量%含有し、かつ1300℃における粘度が0.05〜0.5Pa・sであることを特徴とする連続鋳造用モールドパウダー。塩基度Aを1.3以上の高塩基度とすることで高速鋳造時のパウダー巻き込みを抑制するとともにスケール剥離性を確保し、SrOとB2O3を含有することで溶融凝固後ガラス組織比率を増大してパウダーの潤滑性を保持することができる。

概要

背景

溶融金属連続鋳造において、鋳型内の溶融金属表面被覆するように連続鋳造用モールドパウダーが供給される。以下単に「モールドパウダー」という。鋳型内に供給されたモールドパウダーは、溶融金属からの加熱によって溶融金属表面に溶融層を形成し、溶融したモールドパウダーはメニスカス部から鋳型内壁に沿って凝固シェルとの間隙へ流入し、フィルムを形成する。

モールドパウダーは、溶融金属の連続鋳造において以下のような特性を具備することが要求される。第1に、溶鋼湯面上にてモールドパウダーが溶融して形成された溶融パウダー層およびその上の未溶融のモールドパウダー層が溶鋼湯面を被覆することにより、空気との接触を遮断することで、溶鋼の再酸化を防止し、保温する。第2に、溶融したモールドパウダーは、鋳型と凝固シェルとの間に流入して潤滑剤として働く必要があるため、モールドパウダーが常に適当量供給され、パウダー消費速度に合わせて、適正量の溶融モールドパウダープール厚となる溶融速度を有している。第3に、溶融モールドパウダー層が溶鋼中を浮上してきた非金属介在物を吸収し、その物性(粘度、溶融温度凝固温度など)の変化が小さいことが要求される。第4に、溶融したモールドパウダーが鋳型と凝固シェルとの間に流れ込み、均一なパウダーフィルムを形成して、パウダーフィルムが鋳型と凝固シェルの間で潤滑作用を有するとともに、鋳造する鋼の特性によっては凝固シェルの緩冷却化特性が要求されることもある。第5に、溶融したモールドパウダーが適度な粘度、界面張力を持ち、溶融したモールドパウダーが溶鋼中へ巻き込まれないことが必要である。

連続鋳造操業においては、局所的な湯面変動や鋳型内に注入された溶鋼の注入流によって形成される溶鋼流動がモールドパウダーと溶鋼の界面を擾乱することによって、溶融したモールドパウダーが溶鋼中に巻き込まれる場合がある(パウダー巻き込み)。溶鋼中に巻き込まれた溶融パウダーの大部分は再浮上するが、その一部が凝固シェルに捕捉されて鋳片に残留する場合がある。鋼中の表層に残留したモールドパウダーは、製品表面のスリバー疵となる。また、内部に残留したモールドパウダーは、プレス割れ発生原因となる。パウダー巻き込みは、特に鋳造速度高速化した高速鋳造時に発生する。中・低速鋳造時でもブリキ材、自動車用鋼板等の品質要求厳格な鋼に対し、パウダー巻き込みが問題となることが多い。

また、モールドパウダーによる品質欠陥には、鋳造後に鋳片表面に生成される酸化鉄皮膜(以下、スケールと称す)とともにモールドパウダーが鋳片表面から剥離せず付着し続ける場合がある。

モールドパウダーが溶鋼中に巻き込まれる現象を抑制するには、モールドパウダーが溶鋼湯面上で溶けて溶融パウダーとなった状態において、溶鋼と溶融パウダー間の界面の張力(界面張力)を高く保つことが有効である。CaOとSiO2を主成分とする一般的なモールドパウダーの場合は、CaO/SiO2で表される塩基度を高めることによって、溶鋼との界面張力を高めることができることから、溶鋼中に巻き込まれにくいモールドパウダーは、高塩基度であることが求められる(非特許文献1参照)。塩基度が高いモールドパウダーは鋼との反応が抑制され、鋳片表面への付着も起きにくくなる。

一方、モールドパウダーの塩基度が高くなるとモールドパウダーは鋳型内壁と凝固シェルの間で結晶化が進行しやすくなる。鋳型内の潤滑は、溶鋼湯面上でモールドパウダーが溶融して生成したスラグが鋳型と鋳片との間隙に流れ込んで形成するフィルムが担っている。モールドパウダーが過度に結晶化すると液相が欠乏するため、鋳型内の潤滑性が損なわれる。特に本発明のように、パウダー巻き込みが問題となるような高速鋳造を指向する場合には、パウダーフィルムの結晶化によるパウダーの潤滑特性の低下は、鋳造トラブルや鋳片欠陥を生成させる原因となるので好ましくない。そこで、パウダー巻き込み防止による品質向上と潤滑性を両立するためには、高塩基度のモールドパウダーの過度な結晶化を抑制しガラス状の組織を維持することが重要である。

特許文献1では、Al、Tiを含有する溶鋼の連続鋳造において、塩基度を1.0以上とすることで溶鋼とパウダーの反応を抑制してパウダー巻き込みを抑制し、モールドパウダーにNa2OやB2O3を配合することで高融点結晶の生成を抑制し、パウダー巻き込み防止と潤滑性を同時に実現するモールドパウダーが提案されている。同文献の実施例では、鋳造速度1.8m/minで連続鋳造を行い、良好な品質を実現している。

概要

高速鋳造においてもパウダー巻き込みが発生せず、パウダーフィルムの潤滑性を保持することができ、スケール剥離性の良好な連続鋳造用モールドパウダーを提供する。主成分としてCaO,SrO,SiO2を含有し、モル比率としての(CaO+SrO)/SiO2で表される塩基度Aが1.3〜4.0であり、かつSrO濃度が15〜40質量%であり、かつB2O3を1〜8質量%含有し、かつ1300℃における粘度が0.05〜0.5Pa・sであることを特徴とする連続鋳造用モールドパウダー。塩基度Aを1.3以上の高塩基度とすることで高速鋳造時のパウダー巻き込みを抑制するとともにスケール剥離性を確保し、SrOとB2O3を含有することで溶融凝固後ガラス組織比率を増大してパウダーの潤滑性を保持することができる。なし

目的

本発明は、溶融パウダーと溶鋼の間の界面張力を高い値に保持するとともに、溶融パウダーが凝固したときのガラス組織の比率を高い値に保持することにより、より一層の高速鋳造においてもパウダー巻き込みが発生せず、パウダーフィルムの潤滑性を保持することのできる、連続鋳造用モールドパウダーを提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

主成分としてCaO,SrO,SiO2を含有し、モル比率としての(CaO+SrO)/SiO2で表される塩基度Aが1.3〜4.0であり、かつSrO濃度が15〜40質量%であり、かつB2O3を1〜8質量%含有し、かつ1300℃における粘度が0.05〜0.5Pa・sであることを特徴とする連続鋳造用モールドパウダー

請求項2

請求項1に記載の連続鋳造用モールドパウダーであって、一旦溶融した後に冷却速度2℃/minで冷却された際の凝固試料断面積中のガラス組織比率が30%以上である連続鋳造用モールドパウダー。

技術分野

0001

本発明は、溶鋼等の溶融金属連続鋳造する際に使用する連続鋳造用モールドパウダーに関するものである。

背景技術

0002

溶融金属の連続鋳造において、鋳型内の溶融金属表面被覆するように連続鋳造用モールドパウダーが供給される。以下単に「モールドパウダー」という。鋳型内に供給されたモールドパウダーは、溶融金属からの加熱によって溶融金属表面に溶融層を形成し、溶融したモールドパウダーはメニスカス部から鋳型内壁に沿って凝固シェルとの間隙へ流入し、フィルムを形成する。

0003

モールドパウダーは、溶融金属の連続鋳造において以下のような特性を具備することが要求される。第1に、溶鋼湯面上にてモールドパウダーが溶融して形成された溶融パウダー層およびその上の未溶融のモールドパウダー層が溶鋼湯面を被覆することにより、空気との接触を遮断することで、溶鋼の再酸化を防止し、保温する。第2に、溶融したモールドパウダーは、鋳型と凝固シェルとの間に流入して潤滑剤として働く必要があるため、モールドパウダーが常に適当量供給され、パウダー消費速度に合わせて、適正量の溶融モールドパウダープール厚となる溶融速度を有している。第3に、溶融モールドパウダー層が溶鋼中を浮上してきた非金属介在物を吸収し、その物性(粘度、溶融温度凝固温度など)の変化が小さいことが要求される。第4に、溶融したモールドパウダーが鋳型と凝固シェルとの間に流れ込み、均一なパウダーフィルムを形成して、パウダーフィルムが鋳型と凝固シェルの間で潤滑作用を有するとともに、鋳造する鋼の特性によっては凝固シェルの緩冷却化特性が要求されることもある。第5に、溶融したモールドパウダーが適度な粘度、界面張力を持ち、溶融したモールドパウダーが溶鋼中へ巻き込まれないことが必要である。

0004

連続鋳造操業においては、局所的な湯面変動や鋳型内に注入された溶鋼の注入流によって形成される溶鋼流動がモールドパウダーと溶鋼の界面を擾乱することによって、溶融したモールドパウダーが溶鋼中に巻き込まれる場合がある(パウダー巻き込み)。溶鋼中に巻き込まれた溶融パウダーの大部分は再浮上するが、その一部が凝固シェルに捕捉されて鋳片に残留する場合がある。鋼中の表層に残留したモールドパウダーは、製品表面のスリバー疵となる。また、内部に残留したモールドパウダーは、プレス割れ発生原因となる。パウダー巻き込みは、特に鋳造速度高速化した高速鋳造時に発生する。中・低速鋳造時でもブリキ材、自動車用鋼板等の品質要求厳格な鋼に対し、パウダー巻き込みが問題となることが多い。

0005

また、モールドパウダーによる品質欠陥には、鋳造後に鋳片表面に生成される酸化鉄皮膜(以下、スケールと称す)とともにモールドパウダーが鋳片表面から剥離せず付着し続ける場合がある。

0006

モールドパウダーが溶鋼中に巻き込まれる現象を抑制するには、モールドパウダーが溶鋼湯面上で溶けて溶融パウダーとなった状態において、溶鋼と溶融パウダー間の界面の張力(界面張力)を高く保つことが有効である。CaOとSiO2を主成分とする一般的なモールドパウダーの場合は、CaO/SiO2で表される塩基度を高めることによって、溶鋼との界面張力を高めることができることから、溶鋼中に巻き込まれにくいモールドパウダーは、高塩基度であることが求められる(非特許文献1参照)。塩基度が高いモールドパウダーは鋼との反応が抑制され、鋳片表面への付着も起きにくくなる。

0007

一方、モールドパウダーの塩基度が高くなるとモールドパウダーは鋳型内壁と凝固シェルの間で結晶化が進行しやすくなる。鋳型内の潤滑は、溶鋼湯面上でモールドパウダーが溶融して生成したスラグが鋳型と鋳片との間隙に流れ込んで形成するフィルムが担っている。モールドパウダーが過度に結晶化すると液相が欠乏するため、鋳型内の潤滑性が損なわれる。特に本発明のように、パウダー巻き込みが問題となるような高速鋳造を指向する場合には、パウダーフィルムの結晶化によるパウダーの潤滑特性の低下は、鋳造トラブルや鋳片欠陥を生成させる原因となるので好ましくない。そこで、パウダー巻き込み防止による品質向上と潤滑性を両立するためには、高塩基度のモールドパウダーの過度な結晶化を抑制しガラス状の組織を維持することが重要である。

0008

特許文献1では、Al、Tiを含有する溶鋼の連続鋳造において、塩基度を1.0以上とすることで溶鋼とパウダーの反応を抑制してパウダー巻き込みを抑制し、モールドパウダーにNa2OやB2O3を配合することで高融点結晶の生成を抑制し、パウダー巻き込み防止と潤滑性を同時に実現するモールドパウダーが提案されている。同文献の実施例では、鋳造速度1.8m/minで連続鋳造を行い、良好な品質を実現している。

0009

国際公開WO2011/090218号

先行技術

0010

鉄と鋼 Vol.93 (2007) No.5 pp22 - 26

発明が解決しようとする課題

0011

特許文献1に記載の発明により、鋳造速度1.8m/min程度の高速鋳造において、パウダー巻き込みの防止と潤滑性の確保の両立を実現している。一方、鋳造速度をさらに高速化し、2.0m/min前後の鋳造速度においては、パウダー巻き込みの防止と潤滑性の確保の両立に至っていない。また特許文献1では鋳片表面からの剥離性については考慮されておらず、モールドパウダーによる品質欠陥を防止する方法としては不十分である。

0012

本発明は、溶融パウダーと溶鋼の間の界面張力を高い値に保持するとともに、溶融パウダーが凝固したときのガラス組織比率を高い値に保持することにより、より一層の高速鋳造においてもパウダー巻き込みが発生せず、パウダーフィルムの潤滑性を保持することのできる、連続鋳造用モールドパウダーを提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0013

本発明に係るモールドパウダーは、以下に詳述するように、CaOの一部をSrOに置き換えていることを特徴する。以下、塩基度についても、SrOを考慮し、モル比率としての(CaO+SrO)/SiO2を塩基度Aと称し、塩基度の定義として用いることとする。SrOを含有しない場合は、通常用いられるとおり、モル比率としてのCaO/SiO2が塩基度となるが、SrOを含む本発明の塩基度Aと区別するため、「塩基度*」と呼ぶことがある。また、本発明において、モールドパウダー中に含まれるCa分がすべてCaOであるとしてCaO含有量を算出している。

0014

本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
(1)主成分としてCaO,SrO,SiO2を含有し、モル比率としての(CaO+SrO)/SiO2で表される塩基度Aが1.3〜4.0であり、かつSrO濃度が15〜40質量%であり、かつB2O3を1〜8質量%含有し、かつ1300℃における粘度が0.05〜0.5Pa・sであることを特徴とする連続鋳造用モールドパウダー。
(2)上記(1)に記載の連続鋳造用モールドパウダーであって、一旦溶融した後に冷却速度2℃/minで冷却された際の凝固後試料断面積中のガラス組織の比率が30%以上である連続鋳造用モールドパウダー。

発明の効果

0015

本発明の連続鋳造用モールドパウダーは、モル比率としての(CaO+SrO)/SiO2で表される塩基度Aを1.3〜4.0と高塩基度にすることによって鋳造時のパウダー巻き込みを低減し、SrO濃度が15〜40質量%、かつB2O3を1〜8質量%含有することにより、スラグ冷却時のガラス組織の比率を高めてパウダーの潤滑性向上を実現できる。さらに、鋳片からのスケール剥離性も向上することができる。

0016

前述のとおり、モールドパウダーが溶鋼中に巻き込まれる現象を抑制するには、モールドパウダーが溶鋼湯面上で溶けて溶融パウダーとなった状態において、溶鋼と溶融パウダー間の界面の張力(界面張力)を高く保つことが有効である。CaOとSiO2を主成分とする一般的なモールドパウダーの場合は、CaO/SiO2で表される塩基度*を高めることによって、溶鋼との界面張力を高めることができることから、溶鋼中に巻き込まれにくいモールドパウダーは、塩基度*が高いことが求められている。

0017

一方、モールドパウダーの塩基度が高くなるとモールドパウダーは鋳型内壁と凝固シェルの間で結晶化が進行しやすくなり、結晶化が進行するとフィルム中の液相が欠乏するため、鋳型内の潤滑性が損なわれる。一般的なモールドパウダーは物性調整成分としてFを含有しており、Fを含有し、塩基度*が1.0以上の高塩基度モールドパウダーの場合、一旦溶融した後に冷却された際に晶出または析出(以下、晶析出という。)する主たる結晶は、カスピダイン(Cuspidine:3CaO・2SiO2・CaF2)であることが一般的である。

0018

カスピダインは、平衡状態図上、その初晶域を外れている組成モールドフラックスであっても、主たる結晶として晶析出する場合が多いことが知られている。すなわち、高塩基度なモールドフラックスでは、カスピダインの結晶化が進行しやすく、鋳型と鋳片の間隙にあるフィルムのガラス層が不十分となる結果、潤滑性が損なわれるのである。

0019

本発明では、モールドパウダーの主成分の一つとしてSrOを含有させたとき、SrOが溶鋼と溶融パウダーとの界面張力に及ぼす影響、及びSrOがカスピダインの晶析出に及ぼす影響について評価を行った。そして前述のように、塩基度についても、SrOを考慮し、モル比率としての(CaO+SrO)/SiO2を塩基度Aと定義する。

0020

その結果、SrはCaと同族元素であるので、モールドフラックス中のCaの一部をSrに置き換えても溶鋼との界面張力に対する影響は小さい。そして、モールドパウダー中にSrを含有させ、モル比率としての(CaO+SrO)/SiO2(塩基度A)を1.3以上とすることにより、高速鋳造を行ってもパウダー巻き込みを起こさせない程度に十分な界面張力を確保できることがわかった。塩基度Aを同一に保持するとき、SrO含有量を増やすほど、CaO含有量を低減することができる。

0021

一方、SrOがカスピダインの結晶化に及ぼす影響を調査したところ、SrOはカスピダインのCaOに置き換わらないことが明らかとなった。従って、塩基度Aを1.3以上に保持しつつSrOを添加すると、それに応じてCaO含有量が低下するので、カスピダインの析出が阻まれることとなる。換言すると、SrOはカスピダインの結晶化を抑制する。そのため、SrOを含有する本発明のパウダーは、Fを配合したモールドパウダーにおいて、カスピダインが析出することによる潤滑性不良の発生を防止することができる。具体的には、モールドパウダー中のSrO濃度を15質量%以上とすることにより、カスピダインの晶析出を十分に抑えることができる。

0022

すなわち、本発明では、塩基度Aを1.3以上とした高塩基度モールドフラックスにおいて、SrO濃度を15質量%以上としてCaの一部をSrに置き換えることによって、溶鋼との界面張力を高く保ってパウダー巻き込みを防止しつつ、カスピダインの結晶化を抑制し、鋳型内の潤滑性を改善することができる。また、本発明では塩基度Aが4.0を超えると結晶の析出により潤滑性が損なわれるので、塩基度Aの上限を4.0とする。塩基度Aのより好ましい範囲は1.4〜2.5である。さらに、SrOが40質量%を超えるとモールドパウダーの製造コストが高くなるため工業的に利用することが難しくなるので、SrO濃度の上限を40質量%とする。

0023

また、本発明においては、カスピダイン等の結晶の晶析出を抑制して溶融冷却後のガラス組織比率を増大する観点からは、他の組成比率の規定を満たした上で、モル比率としてのCaO/SiO2(塩基度*)が1.2以下であるとさらに好ましい。より好ましくは、塩基度*が1.0以下である。

0024

次に、モールドパウダー中に、SrOに加えてB2O3を含有させることによる効果について評価を行った。その結果、SrOとB2O3をともに含有するモールドパウダーを用いた場合、パウダーフィルムの結晶化を大幅に抑制し、一旦溶融した後に冷却速度2℃/minで冷却された際の凝固後試料の断面積中のガラス組織の比率を大幅に向上できることがわかった。具体的には、B2O3を1質量%以上含有することにより、ガラス組織の比率を大幅に向上することができ、潤滑性を向上させる効果が得られる。一方、B2O3含有量が8質量%を超えると溶鋼との界面張力が低下し、溶鋼中への巻き込みが防止できなくなるので、B2O3含有量の上限を8質量%とする。B2O3のより好ましい範囲は2〜6質量%である。

0025

ここで、ガラス組織の比率を測定するに際し、500g〜2000gの試料を、Ar雰囲気中で1350〜1450℃に30分〜90分保って完全に溶融させた後、2℃/minの冷却速度を保って800℃以下まで冷やすことと本発明では定義する。ガラス組織の比率(面積率)は、SEM/EDXにより凝固後試料を観察した画像から算出できる。冷却速度が0.5〜3℃/minの範囲であれば、2℃/minの場合と同じ結果を得ることができる。

0026

「主成分としてCaO,SrO,SiO2を含有」するとは、CaO,SrO,SiO2の合計含有量が50質量%以上をいう。70質量%以上がより好ましい。

0027

パウダーの成分含有量(質量%)から、本発明のモル比率としての(CaO+SrO)/SiO2を算出するには、以下の算出式を用いることができる。
(CaO+SrO)/SiO2(モル比率)
=(質量%CaO/56.1+質量%SrO/103.6)/(質量%SiO2/60.1)

0028

本発明は、モールドパウダーの1300℃における粘度を0.05〜0.5Pa・sと規定する。粘度が0.05Pa・s以上であれば溶鋼中への巻き込みを防止することができる。一方、0.5Pa・sを超えると潤滑性が損なわれるので、上限を0.5Pa・sとした。モールドパウダーの塩基度A、SrO濃度とB2O3含有量を本発明範囲とした上で、モールドパウダー中に副次的に含有するNa2O濃度とF濃度を調整することにより、上記本発明の粘度範囲を有するパウダーを実現することができる。

0029

本発明に係るモールドパウダーは一旦溶融した後に冷却速度2℃/minで冷却された際の凝固後試料の断面積中のガラス組織の比率が好ましくは30%以上である。ガラス組織の比率を30%以上とすることにより、モールドパウダーを用いたときの潤滑性を十分に発揮することができる。ガラス組織の比率を50%以上とするとより好ましい。塩基度Aが1.3〜4.0であり、かつSrO濃度が15〜40質量%であり、かつB2O3を1〜8質量%含有することにより、ガラス組織の比率を50%以上とすることができる。

0030

また、本発明に係るモールドパウダーにおける前記作用の確実性を高めるためには、凝固温度を1200℃以下とすることがより望ましい。凝固温度を1200℃以下とするのは、モールドパウダーの結晶化を抑制して潤滑性が向上するからである。凝固温度の下限は特に指定しないが、実質的な下限値は900℃程度である。凝固温度のより好ましい範囲は1170℃以下である。凝固温度は、モールドパウダーを1400℃で一旦溶融した後、2℃/分の冷却速度で冷却した際に振動片粘度計により測定した粘度が急上昇する温度として定義することができる。

0031

さらに、モールドパウダー中のAl2O3濃度を10質量%以下とすると好ましい。Al2O3濃度を10質量%以下とすることにより、モールドパウダーの1300℃における粘度を0.5Pa・s以下に保つことができるからである。Al2O3濃度の下限値は特に指定しないが、原料に含まれる不純分である0.3〜1質量%が実質的な下限値である。

0032

以下、本発明の効果を確認するために行った実施結果について説明する。本発明の実施例と比較例で用いたパウダーの成分と品質特性を下記の表1に示す。表1には、塩基度A(モル比率としての(CaO+SrO)/SiO2)に加え、塩基度*(モル比率としてのCaO/SiO2)の値も参考として記載している。表1において、本発明範囲から外れる数値アンダーラインを付している。

0033

凝固温度は、モールドパウダーを1400℃で一旦溶融した後、2℃/分の冷却速度で冷却した際に振動片式粘度計により測定した粘度が急上昇する温度である。

0034

1300℃における粘度は、上記粘度測定において連続的に測定された粘度のうち、1300℃における値である。

0035

ガラス組織の比率は、同じくモールドパウダーを1400℃で一旦溶融した後、2℃/分の冷却速度を保って800℃以下まで冷却し、SEM/EDXにより凝固後試料を観察した画像から算出した。

0036

0037

表中のA〜Gは、本発明の実施例である。実施例A〜Gはいずれも塩基度Aが1.3〜4.0であり、またB2O3が本発明範囲内であり、またSrOが本発明範囲内であり、また粘度が本発明範囲内にあることから、溶鋼中への巻き込みの防止とスケールの剥離性、また潤滑性を兼ね備えている。

0038

一方、表中のH〜Kは、本発明の要件を満たさない比較例である。
比較例HはSrOおよびB2O3が本発明の下限を外れており、ガラス組織の比率が低い。比較例IはSrOおよびB2O3が本発明の下限を外れており、ガラス組織の比率を高めるために塩基度Aを本発明の下限未満としている。比較JはB2O3が本発明の下限を外れており、ガラス組織の比率が低い。比較例KはSrOが本発明の下限を外れており、ガラス組織の比率が低い。

0039

次に、実施例A、C、比較例H、I、Jのモールドパウダーを用いて、垂直曲げ型連続鋳造機において鋳造速度2.0m/minで極低炭素鋼を鋳造し、潤滑性、スケール剥離性、パウダー巻き込み状況について評価を行った。

0040

潤滑性については、鋳造後の鋳片の拘束疵の有無によって評価した。パウダーフィルムの潤滑性に問題がある場合、鋳型内のメニスカス近傍鋳型壁と凝固シェルとが焼き付きを起こして拘束が生じることがある。ブレークアウト予知装置によって拘束発生を察知し、拘束性ブレークアウト発生を予防することができ、鋳造した鋳片には拘束疵が発生することになる。この拘束疵の有無を評価し、潤滑性の指標とした。

0041

スケール剥離性については、鋳造後に自然剥離したスケールを取り除き、鋳片上面のうちスケールが残存している面積の割合を測定することで評価した。残存した面積が20%以下で良好、80%以下で中程度、それ以上が悪いとした。

0042

鋳片へのパウダー巻き込み状況については、実施例A、C、比較例Iについて、酸溶解抽出法により確認した。鋳片中央部、表面から30mmの位置において直径120μm以上の大きさを持つ球状介在物の量(個/10kg)を調べた。球状介在物個数が50個/10kg以下であれば良好とした。
結果を表2に示す。

0043

0044

本発明例である実施例A、Cについては、潤滑性、スケールの剥離性、パウダー巻き込みによる球状介在物のいずれについても、良好な結果を得ることができた。

0045

比較例Hは、SrOとB2O3のいずれもパウダー中に含有しておらず、鋳片に拘束疵が見られて潤滑性が不良であり、スケール剥離性も不良であった。なお球状介在物評価は行っていない。

0046

比較例Iは、SrOとB2O3のいずれもパウダー中に含有しておらず、塩基度Aが本発明の下限を外れているため、パウダー巻き込みが多く、球状介在物個数が多発する結果となった。スケール剥離性も不良であった。一方、塩基度Aが低いためにガラス組織の比率は高い値となっており、潤滑性は良好であった。

0047

比較例Jは、パウダーの塩基度AとSrO含有量は本発明範囲内であるがB2O3を含有しておらず、ガラス組織の比率が低い値であって鋳片に拘束疵が見られ、潤滑性が不良であった。スケール剥離性は中程度であった。

0048

以上のように、本発明に係るモールドパウダーは、潤滑性を損なわずに溶鋼中への巻き込みを防止するとともにスケールの剥離性を向上させ、品質が高い鋳片を鋳造する際に有用である。パウダー中のCaO含有量が低くても、SrOを含有して塩基度Aを1.3以上としさえすれば、鋳造速度2.0m/minの高速鋳造で十分にパウダー巻き込みを抑制できることがわかる。また、パウダー中にSrOとB2O3をともに本発明範囲内で含有することにより、溶融スラグ冷却時のガラス組織比率を大幅に向上し、パウダーの潤滑性能を向上できることがわかる。

実施例

0049

本発明は上記の例に限らず、各請求項に記載された技術的思想範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。

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新着 最近 公開された関連が強い技術

  • 品川リフラクトリーズ株式会社の「 モールドパウダー」が 公開されました。( 2020/10/29)

    【課題】 高品質な鋳片の連続鋳造の安定操業に資するべく、スラグに求められる3要件が高度に調和されたモールドパウダーを提供すること。(要件1)凝固シェルとモールドの間の潤滑を保つこと(要件2)粘度と界... 詳細

  • ポスコの「 ノズル」が 公開されました。( 2020/10/29)

    【課題・解決手段】本発明に係るノズルは、溶鋼が通過可能な通路、及び下端に、前記溶鋼が外部に吐き出される吐出し口が設けられた胴体部と、前記胴体部を中心として前記胴体部の外側の幅方向に延設されるように、前... 詳細

  • 日本製鉄株式会社の「 冷却ロール、双ロール式連続鋳造装置、薄肉鋳片の鋳造方法、及び、冷却ロールの製造方法」が 公開されました。( 2020/10/29)

    【課題】均一で粗大な結晶組織を有する薄肉鋳片を、安定して製造することが可能な冷却ロールを提供する。【解決手段】双ロール式連続鋳造装置に用いられる冷却ロールであって、ロール本体と、このロール本体の外周面... 詳細

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