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技術 低温用H形鋼及びその製造方法

出願人 日本製鉄株式会社
発明者 伊藤栄利市川和利
出願日 2015年12月24日 (5年0ヶ月経過) 出願番号 2015-251117
公開日 2017年6月29日 (3年6ヶ月経過) 公開番号 2017-115200
状態 特許登録済
技術分野 圧延機に特に連結された素材の表面処理装置 金属圧延一般 鋼の加工熱処理
主要キーワード 一次圧延 フランジ外側 平滑試験片 板厚比 造形性 二次圧延 関連設備 大角粒界
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年6月29日)のものです。
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図面 (7)

課題

母材だけでなく、溶接熱影響部の低温靭性をも向上させた、低温用H形鋼及びその製造方法を提供する。

解決手段

Nb:0.005〜0.060質量%を含有し、CEV(=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15)が0.40以下、フランジ板厚の外側から1/4の位置かつフランジ幅の外側から1/6の位置でのフェライトベイナイトの一方又は両方の面積率の合計が90%以上、硬質相の面積率が10%以下、有効結晶粒径が20μm以下、硬質相の粒径が10μm以下、フランジの板厚が12〜50mmである低温用H形鋼。熱間圧延を、(Ar3−30)℃以上900℃以下の範囲内で終了し、そのまま、フランジの内外面に、冷却速度が10℃/s超である加速冷却を施し、復熱による最高到達温度が350〜700℃になるように加速冷却を停止する製造方法。

概要

背景

H形鋼は、従来から建築構造物などに使用されており、靭性に優れたH形鋼が提案されている(例えば、特許文献1、参照)。H形鋼の靱性を高めるには、金属組織微細化が有利であり、熱間圧延後に加速冷却を施す方法が提案されている(例えば、特許文献2、3、参照)。一般的な建築構造物で要求される靭性は、0℃か、−10℃程度でのシャルピー吸収エネルギーである。

一方、近年、寒冷地における資源開発に伴う関連設備建造が増加している。このような寒冷地に建造される構造物には、低温靭性に優れたH形鋼を使用する必要があり、−40℃でのシャルピー吸収エネルギーが27J以上のH形鋼が提案されている(例えば、特許文献4、参照)。特許文献4では、Nb、Vなどを添加せず、C量や、鋼中に固溶する窒素量(固溶N量)を低減し、加速冷却を適用してH形鋼の低温靭性を向上させている。

概要

母材だけでなく、溶接熱影響部の低温靭性をも向上させた、低温用H形鋼及びその製造方法を提供する。Nb:0.005〜0.060質量%を含有し、CEV(=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15)が0.40以下、フランジ板厚の外側から1/4の位置かつフランジ幅の外側から1/6の位置でのフェライトベイナイトの一方又は両方の面積率の合計が90%以上、硬質相の面積率が10%以下、有効結晶粒径が20μm以下、硬質相の粒径が10μm以下、フランジの板厚が12〜50mmである低温用H形鋼。熱間圧延を、(Ar3−30)℃以上900℃以下の範囲内で終了し、そのまま、フランジの内外面に、冷却速度が10℃/s超である加速冷却を施し、復熱による最高到達温度が350〜700℃になるように加速冷却を停止する製造方法。

目的

本発明は、このような実情に鑑み、母材だけでなく、溶接熱影響部の低温靭性をも向上させた、低温用H形鋼及びその製造方法の提供を課題とする

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

質量%で、C:0.03〜0.13%、Mn:0.80〜2.00%、Nb:0.005〜0.060%を含有し、Si:0.50%以下、Ti:0.025%以下、Al:0.060%以下、N:0.0120%以下、O:0.0035%以下に制限し、残部がFe及び不可避不純物からなり、下記式(1)によって求められるCEVが0.40以下であり、フランジ板厚の外側から1/4の位置かつフランジ幅の外側から1/6の位置でのフェライトベイナイトの一方又は両方の面積率の合計が90%以上、硬質相の面積率が10%以下であり、有効結晶粒径が20μm以下、かつ、硬質相の粒径が10μm以下であり、フランジの板厚が12〜50mmであることを特徴とする低温用H形鋼。CEV=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15・・・(1)ここで、C、Mn、Cr、Mo、V、Ni、Cuは、各元素含有量[質量%]である。

請求項2

更に、質量%でV:0.08%以下、Cu:0.40%以下、Ni:0.70%以下、Mo:0.10%以下、Cr:0.20%以下の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の低温用H形鋼。

請求項3

更に、質量%で、REM:0.010%以下、Ca:0.0050%以下の一方又は両方を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の低温用H形鋼。

請求項4

請求項1〜3の何れか1項に記載の低温用H形鋼の製造方法であって、請求項1〜3の何れか1項に記載の成分からなる鋼片を1100〜1350℃に加熱して熱間圧延を施し、(Ar3−30)℃以上900℃以下の範囲内で前記熱間圧延を終了し、そのまま、フランジの内外面に、冷却速度が10℃/s超である加速冷却を施し、復熱による、フランジ幅の外側から1/6の位置での表面の最高到達温度が350〜700℃になるように前記加速冷却を停止することを特徴とする低温用H形鋼の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、低温環境で使用される建造物構造部材などに用いられる、低温用H形鋼及びその製造方法に関するものである。

背景技術

0002

H形鋼は、従来から建築構造物などに使用されており、靭性に優れたH形鋼が提案されている(例えば、特許文献1、参照)。H形鋼の靱性を高めるには、金属組織微細化が有利であり、熱間圧延後に加速冷却を施す方法が提案されている(例えば、特許文献2、3、参照)。一般的な建築構造物で要求される靭性は、0℃か、−10℃程度でのシャルピー吸収エネルギーである。

0003

一方、近年、寒冷地における資源開発に伴う関連設備建造が増加している。このような寒冷地に建造される構造物には、低温靭性に優れたH形鋼を使用する必要があり、−40℃でのシャルピー吸収エネルギーが27J以上のH形鋼が提案されている(例えば、特許文献4、参照)。特許文献4では、Nb、Vなどを添加せず、C量や、鋼中に固溶する窒素量(固溶N量)を低減し、加速冷却を適用してH形鋼の低温靭性を向上させている。

先行技術

0004

特開平10−68016号公報
特開平10−147834号公報
特開平10−147835号公報
特開2006−249475号公報

発明が解決しようとする課題

0005

特許文献4では、TiによってNを固定し、TiNを生成させて、固溶N量を低減させている。しかし、通常、H形鋼には溶接が施されるため、溶接によって1400℃以上に加熱されると、TiNは鋼中に固溶してしまう。したがって、TiNを形成させて固溶N量を低減させた場合は、溶接熱影響部の低温靭性の低下が懸念される。本発明は、このような実情に鑑み、母材だけでなく、溶接熱影響部の低温靭性をも向上させた、低温用H形鋼及びその製造方法の提供を課題とするものである。

課題を解決するための手段

0006

Nbは、炭化物や窒化物などの析出物を生成する元素であり、特許文献4では含有が制限されているように、一般には靱性に悪影響を及ぼす元素である。しかし、Nbは再結晶を抑制して、結晶粒の微細化に寄与し、強度の上昇にも有用な元素である。そこで、本発明者らは、Nbを含有させ、加速冷却を適用し、H形鋼の強度及び靱性の確保を試みた。

0007

そして、本発明者らの検討の結果、Nbを含有させた場合、加速冷却の冷却速度を高めて組織の微細化を促進させると、低温靱性を確保できるという知見が得られた。また、加速冷却によって、焼入れ性を高める合金元素含有量を低減することが可能になり、硬質相の生成が抑制され、母材だけでなく溶接熱影響部の低温靭性をも確保できることがわかった。

0008

本発明はこのような知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。

0009

[1] 質量%で、
C:0.03〜0.13%、
Mn:0.80〜2.00%、
Nb:0.005〜0.060%
を含有し、
Si:0.50%以下、
Ti:0.025%以下、
Al:0.060%以下、
N:0.0120%以下、
O:0.0035%以下
に制限し、残部がFe及び不可避不純物からなり、
下記式(1)によって求められるCEVが0.40以下であり、
フランジ板厚の外側から1/4の位置かつフランジ幅の外側から1/6の位置でのフェライトベイナイトの一方又は両方の面積率の合計が90%以上、硬質相の面積率が10%以下であり、
有効結晶粒径が20μm以下、かつ、硬質相の粒径が10μm以下であり、
フランジの板厚が12〜50mmである
ことを特徴とする低温用H形鋼。
CEV=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15 ・・・(1)
ここで、C、Mn、Cr、Mo、V、Ni、Cuは、各元素の含有量[質量%]である。
[2] 更に、質量%で
V:0.08%以下、
Cu:0.40%以下、
Ni:0.70%以下、
Mo:0.10%以下、
Cr:0.20%以下
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記[1]に記載の低温用H形鋼。
[3] 更に、質量%で、
REM:0.010%以下、
Ca:0.0050%以下
の一方又は両方を含有することを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の低温用H形鋼。
[4] 上記[1]〜[3]の何れか1項に記載の低温用H形鋼の製造方法であって、上記[1]〜[3]の何れか1項に記載の成分からなる鋼片を1100〜1350℃に加熱して熱間圧延を施し、(Ar3−30)℃以上900℃以下の範囲内で前記熱間圧延を終了し、そのまま、フランジの内外面に、冷却速度が10℃/s超である加速冷却を施し、復熱による、フランジ幅の外側から1/6の位置での表面の最高到達温度が350〜700℃になるように前記加速冷却を停止することを特徴とする低温用H形鋼の製造方法。

発明の効果

0010

本発明によれば、高価な元素を多量に添加することなく、−40℃以下という低温における母材及び溶接熱影響部の靱性に優れたH形鋼を得ることが可能になる。したがって、本発明によれば、経済性を損なうことなく、寒冷地に建造される建造物等の信頼性が向上するなど、本発明は、産業上の貢献が極めて顕著である。

図面の簡単な説明

0011

圧延後の冷却装置を示す図である。
復熱温度とH形鋼のシャルピー吸収エネルギーとの関係を説明する図である。
H形鋼の試験片採取位置を説明する図である。
H形鋼の製造工程の一例を説明する図である。
溶接部シャルピー衝撃試験片採取する際のノッチ位置を説明する図である。
溶接部のCTOD試験片を採取する際のノッチ位置を説明する図である。

0012

本発明者らは、熱間圧延後、図1に示す冷却装置により、H形鋼のフランジに冷却速度が10℃/s超の加速冷却を施し、組織の微細化を図ることで、0.010%以上のNbを含有させても、低温靭性を確保できるという知見を得た。また、C量、Si量の制限による硬質相の低減は、母材だけでなく、溶接熱影響部の低温靭性の確保にも重要であることがわかった。そして、C量、Si量を低減させた場合、Nbの含有は強度の確保にも有効であるという知見も得られた。

0013

また、加速冷却の冷却速度を10℃/s超にした場合、加速冷却の停止後、復熱によって到達する最高温度(復熱温度)が低温靱性に影響を及ぼすことがわかった。図2は、本発明者らの検討の結果の一例を示すものである。図2に示すように、加速冷却後の復熱温度が350〜700℃の間でH形鋼(母材)の低温靭性が向上しており、目標である60J以上になる。これは、加速冷却後の復熱温度が700℃を超えると有効結晶粒径の粗大化や硬質相の生成、350℃未満になると硬質相の生成や強度の上昇によって靱性が低下するためであると考えられる。

0014

以下、本発明について説明する。

0015

まず、本発明のH形鋼の成分組成について説明する。

0016

(C:0.03〜0.13%)
Cは、鋼の強化に有効な元素であり、C量の下限値を0.03%以上とする。C含有量は、0.04%以上であることが好ましく、より好ましくは0.05%以上とする。一方、C量が0.13%を超えると硬質相である島状マルテンサイト(MA)や疑似パーライトが増加し、母材や溶接熱影響部の靱性が低下する。したがって、C量の上限を0.13%以下とする。好ましくはC量を0.10%以下、より好ましくは0.08%未満とする。

0017

(Si:0.50%以下)
Siは、脱酸元素であり、強度の向上にも寄与するが、Cと同様、硬質相を生成させる元素である。Si量が0.50%を超えると、硬質相の生成によって母材及び溶接熱影響部の靭性が低下するため、上限を0.50%とする。Si量は、0.30%以下が好ましく、より好ましくは0.20%以下、更に好ましくは0.10%以下とする。Si量の下限は規定せず、0%でもよいが、Siは有用な脱酸元素であり、0.01%以上であってもよい。

0018

(Mn:0.80〜2.00%)
Mnは、強度を確保し、有効結晶粒径を微細化させるために、0.80%以上を添加する。Mn量は好ましくは、1.00%以上、より好ましくは1.20%以上、更に好ましくは、1.30%以上とする。一方、2.00%を超えるMnを添加すると、介在物の増加等によって、母材及び溶接熱影響部の靱性を損なう。したがって、Mn量の上限を2.00%以下とする。Mn量は好ましくは、1.80%以下とする。

0019

(Nb:0.005〜0.060%)
Nbはフェライトを微細化させ、強度及び靭性を向上させる元素であり、0.005%以上を添加する。Nb含有量は好ましくは0.010%以上を添加する。一方、0.060%を超えるNbを添加すると、焼入れ性の向上に伴い硬質相の増加、硬さの上昇を引き起こし、特に靭性を低下させる。したがって、Nb量の上限を0.060%とする。より好ましくは0.050%以下とする。

0020

(Ti:0.025%以下)
Tiは、TiNを形成する元素であり、Ti量が0.025%を超えるとTiNが粗大化し、脆性破壊の起点となるため、上限を0.025%に制限する。好ましくはTi量を0.020%以下とする。Ti量の下限は0%でもよいが、微細なTiNは組織の微細化に寄与するため、0.005%以上であってもよい。

0021

(Al:0.060%以下)
Alは、脱酸元素であるが、Al量が0.060%を超えると、介在物によって母材及び溶接熱影響部の靭性が低下するため、上限を0.060%とする。Al量は、0.050%以下が好ましく、より好ましくは0.040%以下、更に好ましくは0.030%以下とする。Al量の下限は規定せず、0%でもよいが、Alは有用な脱酸元素であり、0.010%以上であってもよい。

0022

(N:0.0120%以下)
Nは、母材及び溶接熱影響部の靭性を低下させる元素である。N量が0.0120%を超えると、固溶Nや粗大な析出物の形成によって低温靭性を損なうため、上限を0.0120%以下とする。N量は好ましくは0.0100%以下、より好ましくは0.0070%以下とする。一方、N量を0.0020%未満に低減しようとすると製鋼コストが高くなるため、N量の下限は0.0020%以上であってもよい。コストの観点からN量は0.0030%以上であってもよい。

0023

(O:0.0035%以下)
Oは、不純物であり、酸化物の生成を抑制して靭性を確保するため、O量の上限を0.0035%以下に制限する。好ましくはO量を0.0030%以下とし、より好ましくは、HAZ靭性を向上させるために0.0025%以下とする。O量を0.0005%未満にしようとすると、製造コストが高くなるため、O量は0.0005%以上であってもよい。

0024

(CEV:0.40以下)
CEVは、焼入れ性の指標であり、強度を確保するために高めることが好ましい。しかし、CEVが0.40を超えると、特に溶接部の靱性が低下するため、0.40以下とする。一方、低減させると焼入れ性が低下し、組織が粗大化するため、0.20以上とすることが好ましい。CEVは、下記式(1)で求めることができる。下記式(1)において、C、Mn、Cr、Mo、V、Ni、Cuは、各元素の含有量[質量%]であり、選択的に添加されるCr、Moを含有しない場合は、これらの含有量を0としてCEVを求める。

0025

CEV=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15 ・・・(1)

0026

更に、強度及び靱性の向上を目的として、V、Cu、Ni、Mo、Crのうちの1種又は2種以上を含有させてもよい。

0027

(V:0.08%以下)
Vは、窒化物(VN)を形成する元素であり、母材の強度を高めるために0.01%以上を含有させてもよい。好ましくはV量を0.02%以上、より好ましくは0.03%以上とする。一方、Vは高価な元素であるため、V量の上限は0.08%が好ましい。

0028

(Cu:0.40%以下)
Cuは、強度の向上に寄与する元素である。しかし、Cu量が0.40%を超えると強度が過剰に上昇し、低温靭性が低下するため、上限を0.40%以下とする。Cu量は好ましくは0.30%以下とし、より好ましくは0.20%以下とする。Cu量の下限は0.01%以上が好ましく、より好ましくは0.10%以上とする。

0029

(Ni:0.70%以下)
Niは、強度及び靭性を高めるために、極めて有効な元素である。しかし、Niは高価な元素であり、合金コストの上昇を抑制するため、Ni量の上限を0.70%以下とする。Ni量は好ましくは0.50%以下とする。Ni量の下限は0.01%以上が好ましく、より好ましくは0.10%以上、更に好ましくは0.20%以上とする。

0030

(Mo:0.10%以下)
Moは、強度の向上に寄与する元素である。しかし、0.10%を超えてMoを添加すると、Mo炭化物(Mo2C)の析出や硬質相の生成を促進し、特に溶接熱影響部の靱性を劣化させることがあるため、0.10%以下に制限することが好ましい。Mo量の上限は、0.05%以下がより好ましい。Mo量の下限は、0.01%以上が好ましい。

0031

(Cr:0.20%以下)
Crも強度の向上に寄与する元素である。しかし、0.20%を超えてCrを添加すると炭化物を生成し、靭性を損なうことがあるため、Cr量の上限を0.20%以下に制限することが好ましい。Cr量の好ましい上限は0.10%以下である。Cr量の下限は0.01%以上が好ましい。

0032

更に、介在物の形態の制御を目的として、REM、Caのうちの1種又は2種を含有させてもよい。

0033

(REM:0.010%以下、Ca:0.0050%以下)
REM及びCaは、脱酸元素であり、硫化物の形態の制御にも寄与するため、添加してもよい。しかし、REM、Caの酸化物は溶鋼中で容易に浮上するため、鋼中に含有されるREMの上限は0.010%以下、Caの上限は0.0050%以下である。好ましくは、REM及びCaの含有量の下限は、それぞれ0.0005%以上とする。

0034

(P、S)
不可避不純物として含有するP、Sについては、含有量を特に限定しない。なお、P、Sは、凝固偏析による溶接割れ靱性低下の原因となるので、極力低減すべきである。P量は0.02%以下に制限することが好ましく、更に好ましい上限は0.002%以下である。また、S量の含有量は、0.002%以下に制限することが好ましい。

0035

次に、本発明の低温用H形鋼の金属組織、フランジの板厚(フランジ及びウェブの厚みを板厚と称する。)及び特性について説明する。

0036

本発明のH形鋼の場合、フランジの特性が重要である。このため、H形鋼の金属組織の観察及び機械特性(強度及びシャルピー吸収エネルギー)の測定は、図3に示すH形鋼の幅方向断面におけるフランジの板厚(tf)の外側から1/4の位置((1/4)tf)かつフランジ幅(F)の外側から1/6の位置((1/6)F)から、試料片を採取して行う。(3/4)tfかつ(1/6)Fの組織及び機械特性は、(1/4)tfかつ(1/6)Fと同等である。

0037

図3の(1/4)tfかつ(1/6)Fの位置は、熱間圧延時に温度が低下し易いフランジの端部と、温度が低下し難い中央部との中間である。したがって、温度分布から、図3の(1/4)tfかつ(1/6)Fの位置は、H形鋼の平均的な機械特性を示すと考えられる。

0038

低温用H形鋼の金属組織の評価は、H形鋼の幅方向断面の図3に示す(1/4)tf、かつ、(1/6)Fの位置から試料を採取し、光学顕微鏡及び電子線後方散乱回折法(EBSD)によって行う。光学顕微鏡によって、500μm(長手方向)×400μm(フランジ厚方向)の長方形内の領域を観察し、フェライト、ベイナイトの一方又は両方の面積率の合計、硬質相の面積率を測定する。このとき、硬質相の粒径の測定も行う。また、有効結晶粒径は、EBSDによって、15°以上の方位差からなる大角粒界で囲まれる領域を有効結晶粒とし、円相当径として求める。

0039

(フェライト、ベイナイトの一方又は両方の面積率の合計:90%以上)
(硬質相の面積率:10%以下)
本発明の低温用H形鋼の金属組織は、フェライト、ベイナイトの一方又は両方の面積率の合計が90%以上である。上限は特に制限せず、100%でもよい。一方、低温靭性を低下させるMA、疑似パーライトの一方又は両方からなる硬質相の面積率は10%以下に制限する。下限は特に制限せず、0%でもよい。フェライト、ベイナイト、硬質相の残部として、パーライトが含まれる場合がある。硬質相のうち、疑似パーライトは、ラメラ状セメンタイト分断されていたり、板状のセメンタイトの長手方向が粒内で揃っていない相である。疑似パーライトは、パーライトに比べて硬質であるため、低温靭性を低下させる。

0040

(有効結晶粒径:20μm以下)
(硬質相の粒径:10μm以下)
有効結晶粒径は、フェライト、ベイナイト、擬似パーライト、MA、パーライトなどが混在する金属組織の靱性と相関があり、靱性を確保するために、有効結晶粒径を20μm以下とする。有効結晶粒径は、15°以上の方位差からなる大角粒界で囲まれる領域の円相当径である。有効結晶粒径は、フェライト、ベイナイト、硬質相(擬似パーライト、MA)、残部(パーライト)を判別せず、EBSDによって測定する。更に破壊の起点となる硬質相は、有効結晶粒径よりも微細にすることが必要であり、硬質相の粒径を10μm以下とする。硬質相は、光学顕微鏡によってフェライト、ベイナイト、パーライトと判別して粒径を測定する。

0041

(フランジの板厚:12〜50mm)
本発明のH形鋼のフランジの板厚は、12〜50mmとする。これは、低温用構造物に用いられるH形鋼には、板厚が12〜50mmのサイズのH形鋼が多用されるためである。低温用構造物に用いられるH形鋼のフランジの板厚は、16mm以上であることが好ましい。また、フランジの板厚が50mmを超えると、圧下量不足するために組織が粗大化し、脆性破壊を引き起こす可能性がある。フランジの板厚は、40mm以下であることが好ましい。

0042

なお、ウェブの板厚は、一般的にフランジの板厚より薄くなるため、8〜40mmとすることが好ましい。フランジ/ウェブの板厚比に関してはH形鋼を熱間圧延で製造する場合を想定して、0.5〜2.5とすることが好ましい。フランジ/ウェブの板厚比が2.5を超えると、ウェブが波打ち状の形状に変形することがある。一方、フランジ/ウェブの板厚比が0.5未満の場合は、フランジが波打ち状の形状に変形することがある。

0043

H形鋼の強度の目標値は、常温降伏点(YP)又は0.2%耐力が335MPa以上、引張強度(TS)が460MPa以上である。また、母材及び溶接熱影響部の−40℃及び−60℃でのシャルピー吸収エネルギーの目標値は60J以上である。母材の−40℃及び−60℃でのシャルピー吸収エネルギーは、好ましくは100J以上である。更に、母材及び溶接熱影響部の−10℃における限界CTOD値き裂先端開口量)の目標値は0.4mm以上であり、pop−inなどの脆性破壊が生じないことがより好ましい。溶接熱影響部の靱性は、最も高温に加熱され、粗粒になる溶融線(FL)をノッチ位置として評価する。

0044

次に、本発明のH形鋼の製造方法について説明する。本実施形態では、図4に示す工程で、鋼片を加熱し、粗圧延中間圧延、仕上圧延からなる熱間圧延を行い、水冷装置によって加速冷却を行い、H形鋼を製造する。熱間圧延のうち、粗圧延は、必要に応じて行えばよい。

0045

製鋼工程(図示しない)では、上述のように、溶鋼の化学成分を調整した後、鋳造し、鋼片を得る。鋳造は、生産性の観点から、連続鋳造が好ましい。また、鋼片の厚みは、生産性の観点から、200mm以上とすることが好ましく、偏析の低減や、熱間圧延における加熱温度均質性などを考慮すると、350mm以下が好ましい。

0046

次に、加熱炉を用いて鋼片を加熱し、熱間圧延を行う。続いて、粗圧延機を用いて粗圧延を行う。粗圧延は、中間圧延機を用いる中間圧延の前に、必要に応じて行う工程であり、鋼片の厚みと製品の厚みに応じて行う。その後、中間ユニバーサル圧延機(中間圧延機)と水冷装置(図示しない)とを用いて中間圧延を行ってもよい。続いて、仕上圧延機を用いて仕上げ圧延を行って熱間圧延を終了し、水冷装置によりフランジの外面及び内面を冷却する。このとき、必要に応じて、ウェブの下面を水冷してもよい。

0047

(鋼片の加熱温度:1100〜1350℃)
鋼片の加熱温度は、1100〜1350℃とする。加熱温度が低いと変形抵抗が高くなるので、熱間圧延における造形性を確保するために1100℃以上とする。一方、鋼片の加熱温度が1350℃を超えると、素材である鋼片の表面の酸化物が溶融して加熱炉内が損傷することがある。Nbなど、析出物を形成する元素を十分に固溶させるためには、鋼片の加熱温度の下限を1150℃以上とすることが好ましい。特に、製品の板厚が薄い場合は、累積圧下率が大きくなるため、鋼片の加熱温度を1200℃以上にすることが好ましい。組織を微細にするためには、鋼片の加熱温度の上限を1300℃以下にすることが好ましい。

0048

熱間圧延の中間圧延では、制御圧延を行ってもよい。制御圧延は、圧延温度及び圧下率を制御する製造方法である。熱間圧延の中間圧延では、パス間水冷圧延加工を1パス以上施すことが好ましい。パス間水冷圧延加工では、圧延パス間で水冷を行うことにより、フランジの表層部と内部とに温度差を付与し、圧延する。パス間水冷圧延加工は、例えば、圧延パス間における水冷により、700℃以下にフランジ表面温度を水冷した後、復熱過程で圧延する製造方法である。

0049

パス間水冷圧延加工を行う場合、中間ユニバーサル圧延機の前後に設けた水冷装置(図示しない)を用いて、圧延パス間の水冷を行うことが好ましく、水冷装置によるフランジ外側面のスプレー冷却リバース圧延とを繰り返し行うことが好ましい。パス間水冷圧延加工では、圧下率が小さい場合でも、板厚の内部まで加工歪みを導入することができる。また、水冷により圧延温度を短時間で低下させることによって、生産性も向上する。

0050

(熱間圧延の仕上温度:(Ar3−30)℃以上900℃以下)
熱間圧延の仕上温度は(Ar3−30)℃以上900℃以下とする。仕上温度が900℃を超えると圧延後に粗大なオーステナイトが残存し、冷却によってベイナイトに変態すると脆性破壊の起点となり、靱性が低下する。好ましくは850℃以下とする。熱間圧延の仕上温度は、H形鋼の形状精度等を考慮して、フェライト変態開始温度である(Ar3−30)℃以上とする。Ar3は、下記式(2)によって求めることができる。下記式(2)おいて、C、Si、Mn、Ni、Cu、Cr、Moは、各元素の含有量[質量%]であり、選択的に添加されるNi、Cu、Cr、Moを含有しない場合は、これらの含有量を0としてAr3を求める。

0051

Ar3=868−396C+24.6Si−68.1Mn−36.1Ni
−20.7Cu−24.8Cr+29.6Mo ・・・ (2)

0052

また、熱間圧延として、鋼片を1100〜1350℃に加熱して熱間圧延(一次圧延)し、500℃以下に冷却した後、再度、1100〜1350℃に加熱し、熱間圧延(二次圧延)を行う製造プロセス、いわゆる2ヒート圧延を採用してもよい。2ヒート圧延では、熱間圧延での塑性変形量が少なく、圧延工程での温度の低下も小さくなるため、加熱温度を低めにすることができる。

0053

熱間圧延の終了後は、そのまま、仕上圧延機の出側に設けた水冷装置によって、フランジの内面及び外面に加速冷却を施す。仕上圧延機から全断面水冷装置までの間は空冷されるが、加速冷却の開始温度は熱間圧延の仕上温度と同等であるか、やや低下することがあっても、特性にはほとんど影響しない。また、フランジの内面及び外面に加速冷却を施すことにより、フランジの内外面の冷却速度が均一になり、材質及び形状精度を向上させることができる。ウェブの上面はフランジの内面に噴射した冷却水によって、上面側が冷却される。ウェブの反りを抑制するため、ウェブの下面から冷却してもよい。

0054

(加速冷却の冷却速度:10℃/s超)
加速冷却は、例えば、図1に示す水冷装置によって、フランジの外面、内面ともに、スプレー冷却によって行う。加速冷却の冷却速度は、有効結晶粒径の粗大化や、疑似パーライト、MAからなる硬質相の生成を抑制して靭性を向上させ、焼入れの効果によって強度を高めるため、10℃/s超とする。加速冷却の冷却速度は、好ましくは11℃/s以上、より好ましくは15℃/s以上とする。加速冷却の冷却速度の上限は限定しないが、形状精度を考慮すると、50℃/s以下が好ましい。

0055

(復熱による最高到達温度:350〜700℃)
H形鋼の表面の温度は、加速冷却によって内部の温度に比べて低下するが、加速冷却を停止した後、内部からの熱伝導によって上昇する。本発明では、このような復熱によって到達する最高温度を一定の範囲内に制御するように加速冷却を停止する。復熱によるフランジ幅の外側から1/6の位置での表面の最高到達温度は、350〜700℃とする。復熱による最高到達温度が700℃を超えると、有効結晶粒径の粗大化や硬質相(主に疑似パーライト)の増加によって靱性が低下する。一方、最高到達温度が350℃未満になると強度の上昇や硬質相(主にMA)の増加によって低温靭性が低下する。

0056

また、加速冷却の停止後、強度及び靭性を調整するために熱処理を施すことができる。この熱処理は、オーステナイトへの変態が開始する温度(Ac1)以下で行えばよいが、100〜700℃の範囲で行うことが好ましい。より好ましくは、下限を300℃、上限を650℃とする。更に好ましくは、下限を400℃、上限を600℃とする。

0057

表1及び2に示す成分組成を有する鋼を溶製し、連続鋳造により、厚みが240〜300mmの鋼片を製造した。鋼の溶製は転炉で行い、一次脱酸し、合金を添加して成分を調整し、必要に応じて、真空脱ガス処理を行った。得られた鋼片を表3及び4に示す加熱温度に加熱し、熱間圧延を行い、加速冷却を施した。表3及び4の復熱温度は、加速冷却停止後の復熱による最高到達温度を意味する。熱間圧延では、粗圧延に続いて、中間ユニバーサル圧延機と、その前後に設けた水冷装置とを用いて、フランジ外側面のスプレー冷却とリバース圧延を行った。表1及び2に示した成分は、製造後のH形鋼から採取した試料を化学分析して求めた。

0058

0059

0060

0061

0062

図3に示すように、H形鋼の幅方向断面におけるフランジの板厚(tf)の外側から1/4の位置((1/4)tf)かつフランジ幅(F)の外側から1/6の位置((1/6)F)から、圧延方向を長さ方向とする試験片を採取し、機械特性を測定した。機械特性として、降伏点(YP)、引張強度(TS)、−40℃及び60℃でのシャルピー吸収エネルギー(それぞれvE-40℃、vE-60℃)を測定した。引張試験は、JIS Z 2241に準拠して行い、シャルピー衝撃試験は、JIS Z 2242に準拠して−40℃及び60℃で行った。

0063

また、これらの機械特性の測定に用いた試験片を採取した位置から試料を採取し、500μm(長手方向)×400μm(フランジ厚方向)の長方形内の領域について、光学顕微鏡で金属組織の観察を行って、フェライト、ベイナイトの一方又は両方の面積率の合計、硬質相の面積率及び粒径を測定した。なお、金属組織の観察により、残部がパーライトであることも確認した。有効結晶粒径はEBSDによって測定した。

0064

次に、CTOD試験片を作製し、H形鋼(母材)の−10℃における限界CTOD値(き裂先端開口量)を測定した。CTOD試験片は、フランジ部分全厚切り出して平滑試験片を作製し、元のウェブ表面延長線上をノッチ位置として作製した。試験方法はBS7448に従った。

0065

また、以下の方法により、溶接熱影響部のCTOD値及びシャルピー吸収エネルギーを測定した。試験片の採取位置はEN10225に従った。まず、H形鋼(母材)のフランジ部を切り出し、レ型開先を施し、溶接入熱35kJ/cmにて、サブマージアーク溶接を行った。そして、開先の垂直側のボンド部において、図5(a)に示すFLをノッチ位置とする試験片を採取し、シャルピー衝撃試験を行った。CTOD試験はノッチ位置が図5(b)に示すFLとなるように試験片を採取して行った。そして、母材の試験と同様にして、溶接熱影響部の−40℃及び60℃でのシャルピー吸収エネルギーと−10℃における限界CTOD値(き裂先端開口量)とを測定した。このように、最も高温に加熱されるFLをノッチ位置として、溶接熱影響による粗粒域の靱性を評価した。

0066

結果を表5及び6に示す。H形鋼の各特性の目標値は、常温の降伏点(YP)又は0.2%耐力が335MPa以上、引張強度(TS)が460〜620MPa、−40℃及び−60℃のシャルピー吸収エネルギーが何れも60J以上であり、−10℃におけるCTOD値は0.4mm以上である。溶接熱影響部のシャルピー吸収エネルギー及びCTOD値の目標値は、母材と同じである。

0067

0068

0069

表5に示すように、本発明のNo.1〜19は、常温の0.2%耐力(YP)が高く、引張強度(TS)目標値の範囲内であり、かつ、シャルピー吸収エネルギー及び限界CTOD値も、母材、溶接熱影響部ともに目標を十分に満たしている。

0070

一方、表6に示すように、No.21はC量が少ないため強度が不足している。No.22はC量が多く、No.23はSi量が多く、硬質相の増加及び粗大化によって靱性が低下している。No.24はMn量が少なく、No.26はNb量が少ないため、有効結晶粒径が大きくなり、強度及び靱性が低下している。No.25、27、28、29及び30は、それぞれ、Mn量、Nb量、Ti量、O量及びN量が多く、介在物に起因して靱性が低下している。

実施例

0071

No.31は加速冷却の停止温度が高く、No.32は冷却速度が遅いため、有効結晶粒径が大きくなり、強度及び靱性が低下している。No.33は仕上温度が高い例であり、靭性が低下している。No.34は加速冷却の停止温度が低い例であり、硬質相が増加して靭性が低下している。

0072

本発明のH形鋼は、例えば、FPSO(Floating Production,Storage and Offloading System:浮体海洋石油ガス生産貯蔵積出設備)、即ち洋上で、石油・ガスを生産し、製品を設備内のタンクに貯蔵し、直接、輸送タンカへの積出しを行う設備等に好適である。

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