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技術 自動車用アルミニウム合金鍛造材

出願人 株式会社神戸製鋼所
発明者 堀雅是
出願日 2015年12月14日 (4年3ヶ月経過) 出願番号 2015-243652
公開日 2017年6月22日 (2年9ヶ月経過) 公開番号 2017-110245
状態 特許登録済
技術分野 非鉄金属または合金の熱処理
主要キーワード 針状析出物 陸上構造物 基準未満 Si系合金材 鍛造処理 等厚干渉 トリム加工 アルミニウム合金鍛造材
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年6月22日)のものです。
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図面 (8)

課題

高い強度を有する自動車用アルミニウム合金鍛造材を提供する。

解決手段

本発明に係る自動車用アルミニウム合金鍛造材は、Mg:0.70〜1.50質量%、Si:0.60〜1.50質量%、Cu:0.20〜0.70質量%、Ti:0.001〜0.100質量%含有すると共に、Mn:0.01〜0.80質量%、Cr:0.10〜0.30質量%及びZr:0.05〜0.25質量%のうちの二種以上を含有し、残部がAl及び不可避的不純物であり、円相当径が2〜10nmである針状析出物1の数密度が30000個/μm3以上としている。

概要

背景

JISに規定されている6000系アルミニウム(Al)合金は、強度及び耐食性が良好なため、船舶、車両、陸上構造物建築ガードレール家電製品バスバー電線機械自動車部品などといった構造体用の材料として好適に用いられている。

近年、車両や自動車部品といった自動車用のAl合金鍛造材(自動車用Al合金鍛造材)については、車重を軽くして燃費向上を図るなどの理由から、軽量化が強く望まれている。自動車用Al合金鍛造材の軽量化のためには高強度化が必要であり、そのような素材の開発が強く望まれていた。このような要望応え得る技術が、例えば、特許文献1〜3に開示されている。

特許文献1には、一段目予備時効処理を185〜200℃で20〜80分間、二段目の最終時効処理を205〜220℃で5〜30分間行うAl−Mg−Si系Al合金の人工時効処理方法が記載されている。
特許文献1には、この発明により、Al−Mg−Si系Al合金の人工時効処理方法において、既存の設備を用いて熱処理条件の組み合わせにより、人工時効処理時間を短縮することができると記載されている。また、特許文献1には、この発明により、十分な機械的強度や色調を有する製品を得ることができるので、生産性の向上を図ることができると記載されている。
なお、特許文献1に記載されているAl合金は機械的性質として、耐力が184〜190MPa、引張強さが214〜217MPaであることが示されている。

また、特許文献2には、Al−Mg−Si系Al合金押出材人工時効硬化処理(T5処理)する際に、160〜180℃で0.5〜1.5時間の第1段予備時効処理を施し、次いで195〜220℃で1.5〜8.0時間の第2段時効処理を施すAl−Mg−Si系Al合金の熱処理方法が記載されている。
特許文献2には、この発明により、従来の熱処理方法に比べて合金の強度を短時間に高めることができると記載されている。また、特許文献2には、エネルギー費削減によるコストダウン及び生産性向上を図ることができ、経済的に大きな効果が望めると記載されている。
なお、特許文献2に記載されているAl合金は機械的性質として、耐力が約196〜206MPa(約20〜21kg/mm2)、引張強さが約221〜230MPa(約22.5〜23.5kg/mm2)であることが示されている。

さらに、特許文献3には、Mg:0.30〜0.70質量%及びSi:0.15〜0.70質量%を含有し、残部Al及び不可避不純物からなるAl−Mg−Si系合金材に対し、190℃以上で6時間以上の加熱保持を1回以上行い、過時効領域で人工時効処理を施すAl−Mg−Si系合金材の耐力値制御方法が記載されている。
特許文献3には、この発明により、人工時効処理条件の変動、その前段階の自然時効処理条件の変動による耐力値のばらつきを低減することができると記載されている。さらに、特許文献3には、その後の合金材加工精度を向上させることができ、また、耐力値のばらつきが小さいことから、目標の耐力値を得るための人工時効処理条件の選定や最適化が容易になると記載されている。
なお、特許文献3に記載されているAl合金は人工時効処理を2回行ったものの0.2%耐力値が131〜145MPaとなることが示されている。

概要

高い強度を有する自動車用アルミニウム合金鍛造材を提供する。本発明に係る自動車用アルミニウム合金鍛造材は、Mg:0.70〜1.50質量%、Si:0.60〜1.50質量%、Cu:0.20〜0.70質量%、Ti:0.001〜0.100質量%含有すると共に、Mn:0.01〜0.80質量%、Cr:0.10〜0.30質量%及びZr:0.05〜0.25質量%のうちの二種以上を含有し、残部がAl及び不可避的不純物であり、円相当径が2〜10nmである針状析出物1の数密度が30000個/μm3以上としている。

目的

本発明は前記状況に鑑みてなされたものであり、高い強度を有する自動車用アルミニウム合金鍛造材を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

Mg:0.70〜1.50質量%、Si:0.60〜1.50質量%、Cu:0.20〜0.70質量%、Ti:0.001〜0.100質量%含有すると共に、Mn:0.01〜0.80質量%、Cr:0.10〜0.30質量%及びZr:0.05〜0.25質量%のうちの二種以上を含有し、残部がAl及び不可避的不純物であり、円相当径が2〜10nmである針状析出物の数密度が30000個/μm3以上であることを特徴とする自動車用アルミニウム合金鍛造材

技術分野

0001

本発明は、自動車用アルミニウム合金鍛造材に関する。

背景技術

0002

JISに規定されている6000系アルミニウム(Al)合金は、強度及び耐食性が良好なため、船舶、車両、陸上構造物建築ガードレール家電製品バスバー電線機械自動車部品などといった構造体用の材料として好適に用いられている。

0003

近年、車両や自動車部品といった自動車用のAl合金鍛造材(自動車用Al合金鍛造材)については、車重を軽くして燃費向上を図るなどの理由から、軽量化が強く望まれている。自動車用Al合金鍛造材の軽量化のためには高強度化が必要であり、そのような素材の開発が強く望まれていた。このような要望応え得る技術が、例えば、特許文献1〜3に開示されている。

0004

特許文献1には、一段目予備時効処理を185〜200℃で20〜80分間、二段目の最終時効処理を205〜220℃で5〜30分間行うAl−Mg−Si系Al合金の人工時効処理方法が記載されている。
特許文献1には、この発明により、Al−Mg−Si系Al合金の人工時効処理方法において、既存の設備を用いて熱処理条件の組み合わせにより、人工時効処理時間を短縮することができると記載されている。また、特許文献1には、この発明により、十分な機械的強度や色調を有する製品を得ることができるので、生産性の向上を図ることができると記載されている。
なお、特許文献1に記載されているAl合金は機械的性質として、耐力が184〜190MPa、引張強さが214〜217MPaであることが示されている。

0005

また、特許文献2には、Al−Mg−Si系Al合金押出材人工時効硬化処理(T5処理)する際に、160〜180℃で0.5〜1.5時間の第1段予備時効処理を施し、次いで195〜220℃で1.5〜8.0時間の第2段時効処理を施すAl−Mg−Si系Al合金の熱処理方法が記載されている。
特許文献2には、この発明により、従来の熱処理方法に比べて合金の強度を短時間に高めることができると記載されている。また、特許文献2には、エネルギー費削減によるコストダウン及び生産性向上を図ることができ、経済的に大きな効果が望めると記載されている。
なお、特許文献2に記載されているAl合金は機械的性質として、耐力が約196〜206MPa(約20〜21kg/mm2)、引張強さが約221〜230MPa(約22.5〜23.5kg/mm2)であることが示されている。

0006

さらに、特許文献3には、Mg:0.30〜0.70質量%及びSi:0.15〜0.70質量%を含有し、残部Al及び不可避不純物からなるAl−Mg−Si系合金材に対し、190℃以上で6時間以上の加熱保持を1回以上行い、過時効領域で人工時効処理を施すAl−Mg−Si系合金材の耐力値制御方法が記載されている。
特許文献3には、この発明により、人工時効処理条件の変動、その前段階の自然時効処理条件の変動による耐力値のばらつきを低減することができると記載されている。さらに、特許文献3には、その後の合金材加工精度を向上させることができ、また、耐力値のばらつきが小さいことから、目標の耐力値を得るための人工時効処理条件の選定や最適化が容易になると記載されている。
なお、特許文献3に記載されているAl合金は人工時効処理を2回行ったものの0.2%耐力値が131〜145MPaとなることが示されている。

先行技術

0007

特開平11−71663号公報
特開平9−67659号公報
特開2000−282198号公報

発明が解決しようとする課題

0008

特許文献1〜3に記載の発明によれば、人工時効処理を2回行っているので針状析出物(β″相)を大きく成長させることができ、これによってそれぞれの発明が提案される前の従来材に対して、高強度化が図られている。

0009

しかしながら、特許文献1〜3に記載の発明は、建築用アルミサッシなどの薄肉な構造体に関するものであり、製造条件等が自動車用Al合金鍛造材としては適していないためか、自動車用Al合金鍛造材としてみれば、十分な強度を有しているとは言えないものであった。
なお、特許文献1〜3に記載の発明はいずれも一段目の人工時効処理及び二段目の人工時効処理を行うものであるが、それぞれの文献中に、一段目の人工時効処理の後に冷却処理を行っているか否か記載がない。冷却処理を行っているのであればその旨が記載されているはずなので、いずれも冷却処理を行っていないと推察される。

0010

本発明は前記状況に鑑みてなされたものであり、高い強度を有する自動車用アルミニウム合金鍛造材を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0011

本発明に係る自動車用アルミニウム合金鍛造材は、Mg:0.70〜1.50質量%、Si:0.60〜1.50質量%、Cu:0.20〜0.70質量%、Ti:0.001〜0.100質量%含有すると共に、Mn:0.01〜0.80質量%、Cr:0.10〜0.30質量%及びZr:0.05〜0.25質量%のうちの二種以上を含有し、残部がAl及び不可避的不純物であり、円相当径が2〜10nmである針状析出物の数密度が30000個/μm3以上としている。

0012

このように、本発明に係る自動車用アルミニウム合金鍛造材は、針状析出物を析出させ易いMg、Si、Cuをそれぞれ所定量含有しているので、針状析出物の数密度を多くすることができ、Tiを所定量含有しているので結晶粒微細化することができる。本発明に係る自動車用アルミニウム合金鍛造材はこれらの効果によって高強度化することができる。また、本発明に係る自動車用アルミニウム合金鍛造材は、Mn、Cr及びZrのうちの二種以上をそれぞれ所定量含有しているので針状析出物のサイズを所定の範囲とすることができる。そして、本発明に係る自動車用アルミニウム合金鍛造材は、円相当径が2〜10nmである針状析出物の数密度を30000個/μm3以上としているので、当該針状析出物によって高強度化することができる。

発明の効果

0013

本発明に係る自動車用アルミニウム合金鍛造材は高い強度を有すると共に、耐食性に優れている。

図面の簡単な説明

0014

鍛造材の断面のTEM像である。同図中のスケールバーは50nmを示す。
図1のTEM像を元にして、鍛造材に析出した針状析出物の様子を分かり易く図示した説明図である。
本発明に係る鍛造材の好ましい製造方法における温度の推移を図示した説明図である。同図中の横軸は時間を表し、縦軸は温度を表す。
一段目の人工時効処理及び冷却処理を行った場合における針状析出物の析出状態を説明する説明図である。
二段目の人工時効処理を行って針状析出物が成長した状態を説明する説明図である。
一般的に行われる鍛造材の製造方法における溶体化熱処理焼入れ処理、人工時効処理の温度の推移を図示した説明図である。同図中の横軸は時間を表し、縦軸は温度を表す。
一般的に行われる鍛造材の製造方法により、人工時効処理を1回だけ行い、針状析出物を析出させた状態を説明する説明図である。

0015

[自動車用アルミニウム合金鍛造材]
以下、本発明に係る自動車用アルミニウム合金鍛造材(以下、単に「鍛造材」と呼称することがある)を実施するための形態について詳細に説明する。
本発明に係る鍛造材は、Mg:0.70〜1.50質量%、Si:0.60〜1.50質量%、Cu:0.20〜0.70質量%、Ti:0.001〜0.100質量%含有している。また、本発明に係る鍛造材は、Mn:0.01〜0.80質量%、Cr:0.10〜0.30質量%及びZr:0.05〜0.25質量%のうちの二種以上を含有している。本発明に係る鍛造材の残部はAl及び不可避的不純物である。
そして、本発明に係る鍛造材は、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)の観察面(TEM像)において、円相当径が2〜10nmである針状析出物の数密度を30000個/μm3以上としている。
以下、これらの構成要素について以下詳細に説明する。

0016

(Mg、Si、Cu)
Mg、Si、Cuはいずれも針状析出物を析出させ易くする。本発明においては、Mgを0.70〜1.50質量%、Siを0.60〜1.50質量%、及びCuを0.20〜0.70質量%含有することによって針状析出物の数密度を高くすることができ、鍛造材の高強度化を図ることができる。
Mg、Si及びCuのうちいずれか一つでも前記下限値未満となると、針状析出物の数密度が不十分となり、鍛造材の強度が不足する。
その一方で、Mg及びSiのうちいずれか一つでも前記上限値を超えると、人工時効処理によって伸びが低くなる。また、Cuが前記上限値を超えると、耐食性が低下する。
より高強度化を図る観点から、Mgは0.80質量%以上とするのが好ましく、0.85質量%以上とするのがより好ましい。同様の観点から、Siは0.90質量%以上とするのが好ましく、1.00質量%以上とするのがより好ましい。また、同様の観点から、Cuは0.35質量%以上とするのが好ましく、0.40質量%以上とするのがより好ましい。
さらに、伸びを高くする観点から、Mgは1.40質量%以下とするのが好ましく、1.30質量%以下とするのがより好ましい。同様の観点から、Siは1.30質量%以下とするのが好ましく、1.20質量%以下とするのがより好ましい。また、耐食性を高くする観点から、Cuは0.60質量%以下とするのが好ましく、0.50質量%以下とするのがより好ましい。

0017

(Ti)
Tiは鋳造後の結晶粒を微細化する。本発明においては、Tiを0.001〜0.100質量%含有することで結晶粒微細化による鍛造材の高強度化を図ることができる。
Tiが前記下限値未満となると、結晶粒を微細化する効果が十分得られず、鍛造材を高強度化することができない。
その一方で、Tiが前記上限値を超えると、鋳造時に粗大な晶出物金属間化合物)が生じて伸びが低下するおそれがある。
より高強度化を図る観点から、Tiは0.010質量%以上とするのが好ましく、0.020質量%以上とするのがより好ましい。
伸びを高くする観点から、Tiは0.050質量%以下とするのが好ましく、0.040質量%以下とするのがより好ましい。

0018

(Mn、Cr、Zr)
Mn、Cr、及びZrは、針状析出物のサイズを所定の範囲に調整すると共に、鍛造材の結晶粒を微細化し、高強度化する。本発明においては、高強度化のため、Mnを0.01〜0.80質量%、Crを0.10〜0.30質量%及びZrを0.05〜0.25質量%のうちの二種以上を含有する必要がある。
Mn、Cr、及びZrをいずれも含有していない場合、Mn、Cr、及びZrのうちの二種以上を含有してはいるが、いずれも前記下限値未満の場合、及び前記範囲で含有してはいるが、いずれか一つしか含有していない場合は、いずれも前記効果を十分に得ることができず、高強度化することができない。
その一方で、Mn、Cr、Zrのうちの二種以上を含有している場合であっても、含有している元素含有量が一つでも前記上限値を超えていると、鋳造時に粗大な晶出物(金属間化合物)が生じて伸びが低くなるおそれがある。
より高強度化を図る観点から、Mnは0.10質量%以上とするのが好ましく、0.30質量%以上とするのがより好ましい。同様の観点から、Crは0.12質量%以上とするのが好ましく、0.15質量%以上とするのがより好ましい。また、同様の観点から、Zrは0.07質量%以上とするのが好ましく、0.10質量%以上とするのがより好ましい。
さらに、伸びを高くする観点から、Mnは0.70質量%以下とするのが好ましく、0.60質量%以下とするのがより好ましい。同様の観点から、Crは0.20質量%以下とするのが好ましい。また、同様の観点から、Zrは0.20質量%以下とするのが好ましく、0.15質量%以下とするのがより好ましい。
また、より高強度化を図る観点から、Mn、Cr、及びZrの合計量は0.25質量%以上とするのが好ましく、0.30質量%以上とするのがより好ましい。
他方、より伸びを高くする観点から、Mn、Cr、及びZrの合計量は1.00質量%以下とするのが好ましく、0.90質量%以下とするのがより好ましい。

0019

(残部)
本発明に係る鍛造材の残部はAl及び不可避的不純物である。不可避的不純物は、溶解時などにおいて不可避的に混入する不純物である。本発明における不可避的不純物としては、例えば、Zn、Fe、Ni、V、Naなどを挙げることができる。本発明においては、鍛造材の諸特性を害さない範囲でこれらの不可避的不純物を含有させることができる(許容される)。不可避的不純物として許容される含有量は、Znであれば0.25質量%未満、Feであれば0.3質量%以下、Niであれば0.05質量%以下、Vであれば0.05質量%以下、Naであれば0.05質量%以下である。なお、本発明においては、本発明に係る鍛造材の効果に悪影響を与えない範囲で、これらの不可避的不純物に加えて、さらに他の元素が例えば0.05%を上限に含有されていてもよい。

0020

以上に説明した化学成分を有する合金としては、JIS規定の6000系Al合金を挙げることができる。具体的には、本発明に係る鍛造材は、JIS規定の6061合金又は6N01合金である。

0021

(針状析出物の数密度)
針状析出物の数密度は鍛造材の強度に影響を与える。一定サイズ以上の針状析出物の数密度が高いほど鍛造材の強度が高くなる。ここで、図1及び図2を参照して鍛造材に析出した針状析出物について説明する。図1は、鍛造材の断面のTEM像である。図2は、図1のTEM像を元にして、鍛造材に析出した析出物の様子を分かり易く図示した説明図である。

0022

鍛造材の針状析出物の向きは三方向に固定されているため、鍛造材の断面をTEMで観察すると、図1に示すように、黒い円形状(点状)に見える針状析出物と、薄い灰色から黒色を呈した直線形状に見える針状析出物と、がそれぞれ複数形成していることが確認できる。この黒い円形状に見える針状析出物は、図1紙面に対して垂直な方向、つまり、紙面奥側から紙面の手前側に向かう方向に形成されたものである。また、薄い灰色から黒色を呈した直線形状に見える針状析出物は、図1の紙面と平行乃至紙面に対して若干傾斜した角度で形成されたものである。なお、図2では、理解を容易とするため、黒い点状に見える針状析出物を符号1で示し、それ以外の針状析出物を符号2で示した。つまり、図2では、図1において薄い灰色から黒色を呈した直線形状に見える針状析出物を針状析出物2として明瞭に図示している。

0023

図1に示されているいずれの針状析出物も、形成されている方向が相違しているだけで同じものであり、各方向に向いている針状析出物の数密度もほぼ同じである。ただし、前記したように、図1に示されている黒い点状に見える針状析出物以外の析出物は、TEM像であってもその形状(外縁)を明確に捉えることができないことがある。そのため、黒い点状に見える針状析出物以外の析出物はTEM像であっても数密度計数するのが困難である。

0024

しかしながら、前記したように、各方向に向いている針状析出物1及び針状析出物2の数密度はほぼ同じであるから、黒い点状に見える針状析出物1の単位体積当たりの数密度(個/μm3)を計数し、三方向分乗じる(3倍にする)ことによって、三方向の針状析出物に関する単位体積当たりの数密度(個/μm3)とみなすことができる。従って、前記したように、黒い点状に見える針状析出物1の単位体積当たりの数密度を計数することによって、容易に鍛造材中の析出物の析出状態、つまり、三つの方向の針状析出物の数密度を把握することができる。

0025

本発明においては、黒い点状に見える針状析出物1を計数するため、つまり、針状析出物2を計数対象から除くため、アスペクト比(針状析出物の長径短径の比)が1〜2であるものを計数対象とするのが好ましい。そして、計数対象となる、アスペクト比が1〜2である針状析出物1の円相当径を2〜10nmとしている。アスペクト比が1〜2であり、円相当径が2〜10nmである針状析出物1は、長手方向のサイズが50nm以上となる。なお、アスペクト比が1〜2であり、円相当径が2nm未満である針状析出物は、析出されていても硬度向上に影響しないので計数対象から除外している。また、アスペクト比が1〜2であり、円相当径が10nmを超える針状析出物はそもそも殆ど生成されることがないので計測対象から除外している。

0026

本発明においては、上記のようにして把握される針状析出物の数密度を30000個/μm3以上としているので、鍛造材の高強度化を図ることができる。針状析出物の数密度が高いほど鍛造材が高強度化する。従って、針状析出物の数密度は高ければ高いほど好ましい。

0027

以上に説明したように、本発明に係る鍛造材は、Mg、Si、Cu、Tiをそれぞれ所定量含有すると共に、Mn、Cr及びZrのうちの二種以上をそれぞれ所定量含有し、さらに、所定の針状析出物の数密度を30000個/μm3以上としているので、高い強度を有したものとなる。

0028

(針状析出物のサイズ測定と数密度の計数方法
鍛造材から採取した薄膜試料を用い、過塩素酸エタノール=1:9の溶液と、硝酸メタノール=1:3の溶液と、を用いた電解研磨法によって電解研磨し、透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察することで、針状析出物のサイズ測定と数密度の計数を行うことができる。TEMはどのようなものも用いることができるが、例えば、日本電子製のJEM−2100を使用するのが好ましい。TEM像の撮影は、120kVの加速電圧で薄膜試料の母相に対して電子ビームを<001>方向から入射し、観察面を(200)として5視野観察するのが好ましい。観察の倍率は50万倍とするのが好ましい。観察箇所は、等厚干渉から観察部の厚さを測定し、厚さが1μm以下となる箇所のみとするのが好ましい。
針状析出物のサイズ測定と数密度の計数は、画像解析ソフトwinroof(三谷商事、バージョン6.3)を用いて行うのが好ましい。針状析出物のサイズは、点状に見える針状析出物(つまり、アスペクト比が1〜2であり、円相当径が2〜10nmである針状析出物)の円相当径で算出するのが好ましい。
また、TEM観察にて等厚干渉縞から観察部の厚さを測定しておき、測定範囲面積掛けることでTEM観察領域の表面で観察された体積を算出すると共に、針状析出物の数は点状に見える針状析出物の数を全てカウントして3倍したものを針状析出物の個数とする。そして、この個数を単位体積あたりに換算することで析出物の数密度(個/μm3)として求めることができる。

0029

(製造方法の一例)
以上に説明した本発明に係る鍛造材の製造方法は特定のものに限定されず、種々の態様が考えられるが、好ましい製造方法の一例を説明すると、以下のようなものとなる。なお、本発明に係る鍛造材は、鍛造材の製造が行われる一般的な製造設備で製造することができる。

0030

本発明に係る鍛造材の好ましい製造方法の一例としては、例えば、材料を溶解して鋳塊を得る鋳造、鋳塊を均質化する均質化熱処理、所定の温度まで加熱し、塑性加工を行い、鍛造材を得る鍛造などをこの順で行うことができる。なお、鍛造で得られた鍛造材の余分なバリなどを取り除くトリム加工処理などを必要に応じて行うことができる。ここまでの各処理は鍛造材を製造するにあたって通常行われる条件で行うことができる。例えば、均質化熱処理は500℃×7hrで行うことができ、鍛造は油圧鍛造プレスにて開始温度500℃、終了温度370℃という条件で行うことができる。

0031

そして、本発明に係る鍛造材の好ましい製造方法は、前記した鍛造処理又はトリム加工処理に次いで、溶体化熱処理、焼入れ処理、一段目の人工時効処理、冷却処理、二段目の人工時効処理を順次行うことが挙げられる。これらの処理の条件については後記する。なお、図3は、本発明に係る鍛造材の好ましい製造方法における温度の推移(溶体化熱処理から二段目の人工時効処理まで)を図示した説明図である。

0032

図3に示すように、本発明に係る鍛造材の好ましい製造方法では、溶体化熱処理及び焼入れ処理を行った後に一段目の人工時効処理を行う。例えば、溶体化熱処理は550℃×4hrという条件で行うことができ、焼入れ処理は40℃の水に入れることで行うことができる。

0033

そして、一段目の人工時効処理を終えた後、一旦、冷却処理を行い、その後に二段目の人工時効処理を行う。二段目の人工時効処理は、一段目の人工時効処理よりも高い温度で行うのが好ましい。二段目の人工時効処理は一段目の人工時効処理よりも短くすることができる。具体的には、一段目の人工時効処理は150〜180℃×5〜24hrという条件で行うのが好ましく、冷却処理は室温から100℃程度になるまで行うのが好ましい。また、二段目の人工時効処理は175〜210℃×1.5〜8hrという条件で行うのが好ましい。

0034

一段目の人工時効処理による低温での熱処理と冷却処理とを行うと、図4Aに示す如く、微細な針状析出物を高密度に析出させることができる。
そして、この状態で二段目の人工時効処理を高温で行うと、図4Bに示す如く、高密度に析出させた針状析出物を高強度化に寄与するサイズまで成長させることができる。つまり、円相当径が2〜10nmである針状析出物の数密度を30000個/μm3以上形成することができる。

0035

これに対し、人工時効処理を1回しか行わない場合や、二段目の人工時効処理を行う場合であっても、一段目の人工時効処理との間に冷却処理を行わない場合、一段目及び二段目の人工時効処理が上記条件を満たさない場合は、いずれも針状析出物の数密度を十分に得ることができないおそれがある。
なお、図5は、一般的に行われる鍛造材の製造方法における溶体化熱処理、焼入れ処理、人工時効処理の温度の推移を図示した説明図である。図5に示すように、人工時効処理を1回だけ行って高強度化を図る場合、人工時効処理を200℃前後で数時間(例えば、175℃×8hr)行うことが多い。しかし、このようにすると、図6に示すように、針状析出物は高強度化に寄与できるサイズまで大きく成長するものの、その数密度は低いものとなってしまうため、鍛造材の強度が不足する。二段目の人工時効処理を行う場合であっても、一段目の人工時効処理との間に冷却処理を行わない場合、一段目及び二段目の人工時効処理が上記条件を満たさない場合もこれと同様の理由で鍛造材の強度が不足する。

0036

次に、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、以下に示した実施例に限定されるものではない。

0037

表1のNo.1〜24に示す化学成分のAl合金を鋳造して鋳塊(連鋳棒)を作製し、500×7hrの均質化熱処理を行った。次いで、表1の鍛造加工の欄の開始温度まで加熱して鍛造加工を行い、鍛造材を作製した。なお、鍛造加工の終了温度は表1に示すとおりである。鍛造加工は、油圧鍛造プレス(表1において「油圧鍛造」と記載)又はメカニカル鍛造プレス(表1において「メカニカル鍛造」と記載)で行った。次いで、この鍛造材に対して550℃×4hrという条件で溶体化熱処理を行い、次いで、40℃の水に入れて焼入れ処理を行った。
そして、焼入れ処理を行った鍛造材に対し、一段目の人工時効処理と、冷却処理と、二段目の人工時効処理と、を表1に示す条件で行い、No.1〜24に係る試験材を製造した。

0038

製造したNo.1〜24に係る試験材に対して、以下のようにしてTEM観察を行い、点状に見える針状析出物のサイズ(円相当径)の測定、及び針状析出物の数密度の計数を行った。その結果をNo.1〜24に係る試験材の化学成分(質量%)と共に表1に示す。

0039

(針状析出物のサイズ測定と数密度の計数)
No.1〜24に係る試験材から薄膜試料を採取し、過塩素酸:エタノール=1:9の溶液と、硝酸:メタノール=1:3の溶液と、を用いた電解研磨法によって電解研磨し、TEM観察を行った。TEMは日本電子製のJEM−2100を使用した。TEM像の撮影は、120kVの加速電圧で薄膜試料の母相に対して電子ビームを<001>方向から入射し、観察面を(200)として5視野観察した。観察の倍率は50万倍とした。観察箇所は、等厚干渉縞から観察部の厚さを測定し、厚さが1μm以下となる箇所のみとした。

0040

針状析出物のサイズ測定と数密度の計数は、画像解析ソフトwinroof(三谷商事、バージョン6.3)を用いて行った。針状析出物のサイズは、点状に見える針状析出物(つまり、アスペクト比が1〜2であり、円相当径が2〜10nmである針状析出物)の円相当径で算出した。
また、TEM観察にて等厚干渉縞から観察部の厚さを測定しておき、測定範囲の面積と掛けることで体積を算出すると共に、針状析出物の数は点状に見える針状析出物の数を全てカウントして3倍したものを針状析出物の個数とした。そして、この個数を単位体積あたりに換算することで針状析出物の数密度(個/μm3)を求めた。

0041

(強度)
また、No.1〜24に係る試験材からJIS Z 2241:2011に準拠して試験片を作製し、金属材料引張試験を行うことにより、引張強度(MPa)、耐力(MPa)、伸び(%)を求めた。引張強度が420MPa以上であり、耐力が390MPa以上であり、伸びが9%以上であるものを高強度である(合格)と評価し、引張強度、耐力及び伸びのうちのいずれか一方でも前記基準未満となったものを高強度ではない(不合格)と評価した。これらの試験結果を表3に示す。

0042

(耐食性)
さらに、No.1〜24に係る試験材の耐食性を以下のようにして評価した。
耐食性は、JIS H 8711:2000に準拠して応力腐食割れ試験(SCC試験)を行うことで評価した。具体的には、No.1〜24に係る試験材からJIS H 8711:2000に規定されているC−リング試験片を作製し、交互浸漬法(塩水交互浸漬20日)にて評価した。負荷応力200MPaにて5個中5個割れが発生しなかったものを耐食性が好ましい(○)と評価し、1個でも割れたものを耐食性が好ましくない(×)と評価した。耐食性の評価結果を表3に示す。

0043

なお、表1及び表3中の下線は本発明の要件を満たしていないことを示している。

0044

0045

0046

0047

表1〜3に示すように、No.1〜9に係る試験材は、本発明の要件を満たしていたので、引張強度、耐力及び伸びが合格となり、高い強度を有していることが確認された(実施例)。

0048

これに対し、No.10〜24に係る試験材は、本発明の要件を満たしていなかったので、引張強度、耐力及び伸びのうちの少なくとも1つが不合格となったり、耐食性が好ましくない結果となったりした(比較例)。

0049

具体的には、No.10に係る試験材は、MgとCuが少なかったので、針状析出物の数密度が低くなった。そのため、No.10に係る試験材は高い強度を得ることができなかった。
No.11に係る試験材は、Siが少なかったので、針状析出物の数密度が低くなった。そのため、No.11に係る試験材は高い強度を得ることができなかった。
No.12に係る試験材は、Cuが少なかったので、針状析出物の数密度が低くなった。そのため、No.12に係る試験材は高い強度を得ることができなかった。
No.13に係る試験材は高い強度を有していたものの、Cuが多かったため耐食性に劣っていた。

0050

No.14〜17に係る試験材は、Mn、Cr及びZrを適切に含有していなかったので、結晶粒を微細化することができなかった。そのため、No.14〜17に係る試験材は高い強度を得ることができなかった。
No.18に係る試験材はMnが多く、No.19に係る試験材はCrが多く、そして、No.20に係る試験材はZrが多かったので、それぞれ粗大な晶出物が生じた。また、No.20は針状析出物の数密度が低かった。そのため、No.18〜20に係る試験材はいずれも高い強度を得ることができなかった。
No.21に係る試験材は、Tiが多かったので、粗大な晶出物が生じた。そのため、No.21に係る試験材は高い強度を得ることができなかった。

0051

No.22〜24に係る試験材は、一段目の人工時効処理、冷却処理、及び二段目の人工時効処理の内の少なくとも一つが適切でなかった。そのため、No.22〜24に係る試験材はいずれも針状析出物の数密度が低くなり、高い強度を得ることができなかった。

実施例

0052

以上、本発明に係る自動車用アルミニウム合金鍛造材について、実施形態及び実施例により具体的に説明したが、本発明の主旨はこれらに限定されるものではない。

0053

1、2 針状析出物

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