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技術 伸びフランジ性の評価方法

出願人 日新製鋼株式会社
発明者 野口恵太須釜淳史
出願日 2015年12月17日 (4年11ヶ月経過) 出願番号 2015-246360
公開日 2017年6月22日 (3年4ヶ月経過) 公開番号 2017-109227
状態 特許登録済
技術分野 機械的応力負荷による材料の強さの調査 型打ち,へら絞り,深絞り
主要キーワード 圧縮割れ 変形量測定 字成形 凹部断面 ダイス角 垂直歪 縦軸座標 板厚変化率
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (20)

課題

2次プレス成形における伸びフランジ性について、簡便かつ効率よく評価できる評価方法を提供する。

解決手段

本発明は、特定構造を備えるプレス加工性評価装置により、前記対象材料を1次プレス成形し、フランジ部を有する1次プレス成形体を形成する工程であって、予変形量が異なる複数の前記1次プレス成形体を得る1次プレス成形工程と、前記1次プレス成形体から一部の領域を取り除く加工を施し、フランジ領域を含む変形1次プレス成形体を得る変形1次プレス成形工程と、前記プレス加工性評価装置を用いて、前記変形1次プレス成形体の前記フランジ領域をフランジアップさせる2次プレス成形を施し、複数の2次プレス成形体を得る2次プレス成形工程と、前記2次プレス成形体において伸びフランジ領域に相当する部位の板厚変化量を測定する変形量測定工程を含む、伸びフランジ性の評価方法である。

概要

背景

鋼材又は非鉄材を使用したプレス成形品は、各部位に所定の塑性変形を生じることで所望の形状となる。

プレス成形の塑性変形の加工要素は、最大主歪及び最小主歪を用いて、引張り方向の変形、圧縮方向の変形、変形無しの各組合せにより、大きく4種類に分類される。変形後も直交を保つような3つの直交軸を歪の主軸といい、その主軸方向垂直歪が主歪であって、そのうちの最大値最小値が最大主歪、最小主歪と呼ばれている。図8は、それらの加工要素を図示したものである。最大主歪をε1、最小主歪をε2、そして最大主歪ε1と最小主歪ε2のどちらとも直交する板厚方向歪をεtと表記している。最大主歪ε1が引張り変形であって、最小主歪ε2が変形なしである加工要素を平面歪引張変形(図8のA)、最大主歪ε1と最小主歪ε2がいずれも引張り変形である加工要素を二軸引張変形(図8のC)、最大主歪ε1が引張り変形であって、最小主歪ε2が圧縮変形である加工要素を縮みフランジ変形(図8のD)、最大主歪ε1が引張り変形、最小主歪ε2が圧縮変形であり、圧縮が引張りの1/2相当の歪量である加工要素を単軸引張変形又は伸びフランジ変形と称している(図8のB)。

鋼材または非鉄材のプレス成形により自動車部品を製造する場合の成形不良として、伸びフランジ割れがある。伸びフランジ割れは、プレス成型品フランジ部の縁が単軸引張変形の一態様である伸びフランジ変形を受けることで、破断を生じる成形不良である。
鋼材又は非鉄材の加工性を評価する方法は、多数存在する。しかし、その多くは、加工要素が一つである単一成形による評価方法である。例えば、穴広げ試験鞍型試験のような単一成形による加工性の評価方法が使用されている。また、金属板伸びフランジ成形性を評価する手法として、パンチダイス及びパッドを用いて、V字状に切断したコーナーを有する金属製のブランクをプレス成形し、金属板の伸びフランジ成形性を評価する試験方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。

ところで、実部品のプレス成形は、対象材をプレス成形する1次プレス成形だけでは完結しない。プレス成形を繰り返し行うことにより、所望の形状が得られる。本明細書では、1次プレス成形後に施されるプレス成形を「2次プレス成形」という。また、2次プレス成形以前に対象材に付与された変形を「予変形」という。

予変形が付与された物品における伸びフランジ性に係る評価結果は、予変形が付与されていない原材の伸びフランジ性に係る評価結果と必ずしも一致しない。また、予変形量の違いによっても、伸びフランジ性の評価結果に差異が生じるのが普通である。

実部品のプレス成形工程を設計する際は、伸びフランジ割れを生じない最適な成形工程選定される。そのため、2次プレス成形時の伸びフランジ性を把握する必要がある。そこで、予変形量が伸びフランジ性に及ぼす影響を正確について正確に把握できる評価試験方法及び評価結果が要望されていた。

従来、予変形量が2次プレス成形性に及ぼす影響を把握するための評価試験としては、予変形が付与された板状の対象材を用いた穴広げ試験が知られている(例えば、非特許文献1を参照)。この穴広げ試験においては、まず、板状材に種々の単一変形による予変形が付与される。例えば、エキスパンダーを用いて1軸引張り変形が付加される、あるいは、平底パンチを用いて2軸引張り変形が付加される。その後、この予変形が付与された対象材に対し、円錐ポンチや平底ポンチを用いて、2次プレス成形による穴広げ試験が行われる。穴広がりの程度を評価することにより、2次プレス成形における伸びフランジ性を評価することを可能としている。

概要

2次プレス成形における伸びフランジ性について、簡便かつ効率よく評価できる評価方法を提供する。本発明は、特定構造を備えるプレス加工性評価装置により、前記対象材料を1次プレス成形し、フランジ部を有する1次プレス成形体を形成する工程であって、予変形量が異なる複数の前記1次プレス成形体を得る1次プレス成形工程と、前記1次プレス成形体から一部の領域を取り除く加工を施し、フランジ領域を含む変形1次プレス成形体を得る変形1次プレス成形工程と、前記プレス加工性評価装置を用いて、前記変形1次プレス成形体の前記フランジ領域をフランジアップさせる2次プレス成形を施し、複数の2次プレス成形体を得る2次プレス成形工程と、前記2次プレス成形体において伸びフランジ領域に相当する部位の板厚変化量を測定する変形量測定工程を含む、伸びフランジ性の評価方法である。

目的

本発明の目的は、複合成形された1次プレス成形体を用いた2次プレス成形に関して、2次プレス成形における伸びフランジ性の評価を行うに当たって、簡便かつ効率よく評価できる評価方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

枝形状の凸部を有するパンチと、前記凸部と嵌合可能な凹部及び平面部を有するダイスと、前記平面部との間でプレス成形の対象となる対象材料押え板押えとを備えるプレス加工性評価装置により、前記対象材料を1次プレス成形し、フランジ部を有する1次プレス成形体を形成する工程であって、予変形量が異なる複数の前記1次プレス成形体を得る1次プレス成形工程と、前記1次プレス成形体から一部の領域を取り除く加工を施し、フランジ領域を含む変形1次プレス成形体を得る変形1次プレス成形工程と、前記プレス加工性評価装置を用いて、前記変形1次プレス成形体の前記フランジ領域をフランジアップさせる2次プレス成形を施し、複数の2次プレス成形体を得る2次プレス成形工程と、前記2次プレス成形体において伸びフランジ領域に相当する部位の板厚変化量を測定する変形量測定工程を含む、伸びフランジ性評価方法

請求項2

前記変形1次成形工程は、前記1次プレス成形体における多枝形状領域、又は前記多枝形状領域と異なる他の領域のうち少なくとも一方を、所定の幅を有する前記フランジ領域を残して取り除く加工を施す、請求項1に記載の伸びフランジ性の評価方法。

請求項3

前記2次プレス成形工程における前記フランジアップは、前記1次プレス成形体のフランジ高さと、前記変形1次プレス成形体のフランジ領域の幅との総和にほぼ等しいフランジ高さを形成するように加工する、請求項1又は2に記載の伸びフランジ性の評価方法。

請求項4

前記プレス加工性評価装置は、3以上の枝を含む多枝形状の凸部を有するパンチと、前記凸部と嵌合可能な3以上の枝を含む凹部、及び前記凹部を囲むダイス側平面部を有するダイスと、前記ダイス側平面部と略平行な板押え側平面部を有し、前記対象材料を前記ダイス側平面部及び前記板押え側平面部で挟み込み可能な板押えとを備える、請求項1〜3に記載の伸びフランジ性の評価方法。

請求項5

前記多枝形状の枝同士がなす角は、枝が3つである場合には互いに鈍角であり、枝が4つである場合には略直角であり、枝が5つ以上である場合には互いに鋭角である、請求項1〜4のいずれかに記載の伸びフランジ性の評価方法。

請求項6

前記多枝形状の枝が4つであって、前記凸部及び前記凹部が略十字形状である、請求項1〜5のいずれかに記載の伸びフランジ性の評価方法。

請求項7

前記ダイスを平面視する場合、前記凹部の角部は曲線をなしており、前記ダイスの前記枝の幅をWdとし、前記ダイスの前記枝の角部における曲率半径をRcとするとき、前記Wdの前記Rcに対する比Wd/Rcは、2以上15未満であり、前記パンチを正面視する場合、前記凸部の頂部における肩部は、曲線をなしており、前記肩部における曲率半径をRpとし、前記凸部の厚さをHpとし、さらに、前記ダイスを断面視する場合、前記凹部の底部は曲線をなしており、前記底部の曲率半径をRdとするとき、Hp≧(Rp+Rd)/2である、請求項1〜6のいずれかに記載の伸びフランジ性の評価方法。

請求項8

前記対象材料は、四角形状、八角形状楕円形状、又は円形状であるブランクを用いる、請求項1〜7のいずれかに記載の伸びフランジ性の評価方法。

技術分野

0001

本発明は、金属薄板等の成形材における伸びフランジ性評価方法に関する。

背景技術

0002

鋼材又は非鉄材を使用したプレス成形品は、各部位に所定の塑性変形を生じることで所望の形状となる。

0003

プレス成形の塑性変形の加工要素は、最大主歪及び最小主歪を用いて、引張り方向の変形、圧縮方向の変形、変形無しの各組合せにより、大きく4種類に分類される。変形後も直交を保つような3つの直交軸を歪の主軸といい、その主軸方向垂直歪が主歪であって、そのうちの最大値最小値が最大主歪、最小主歪と呼ばれている。図8は、それらの加工要素を図示したものである。最大主歪をε1、最小主歪をε2、そして最大主歪ε1と最小主歪ε2のどちらとも直交する板厚方向歪をεtと表記している。最大主歪ε1が引張り変形であって、最小主歪ε2が変形なしである加工要素を平面歪引張変形(図8のA)、最大主歪ε1と最小主歪ε2がいずれも引張り変形である加工要素を二軸引張変形(図8のC)、最大主歪ε1が引張り変形であって、最小主歪ε2が圧縮変形である加工要素を縮みフランジ変形図8のD)、最大主歪ε1が引張り変形、最小主歪ε2が圧縮変形であり、圧縮が引張りの1/2相当の歪量である加工要素を単軸引張変形又は伸びフランジ変形と称している(図8のB)。

0004

鋼材または非鉄材のプレス成形により自動車部品を製造する場合の成形不良として、伸びフランジ割れがある。伸びフランジ割れは、プレス成型品フランジ部の縁が単軸引張変形の一態様である伸びフランジ変形を受けることで、破断を生じる成形不良である。
鋼材又は非鉄材の加工性を評価する方法は、多数存在する。しかし、その多くは、加工要素が一つである単一成形による評価方法である。例えば、穴広げ試験鞍型試験のような単一成形による加工性の評価方法が使用されている。また、金属板伸びフランジ成形性を評価する手法として、パンチダイス及びパッドを用いて、V字状に切断したコーナーを有する金属製のブランクをプレス成形し、金属板の伸びフランジ成形性を評価する試験方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。

0005

ところで、実部品のプレス成形は、対象材をプレス成形する1次プレス成形だけでは完結しない。プレス成形を繰り返し行うことにより、所望の形状が得られる。本明細書では、1次プレス成形後に施されるプレス成形を「2次プレス成形」という。また、2次プレス成形以前に対象材に付与された変形を「予変形」という。

0006

予変形が付与された物品における伸びフランジ性に係る評価結果は、予変形が付与されていない原材の伸びフランジ性に係る評価結果と必ずしも一致しない。また、予変形量の違いによっても、伸びフランジ性の評価結果に差異が生じるのが普通である。

0007

実部品のプレス成形工程を設計する際は、伸びフランジ割れを生じない最適な成形工程選定される。そのため、2次プレス成形時の伸びフランジ性を把握する必要がある。そこで、予変形量が伸びフランジ性に及ぼす影響を正確について正確に把握できる評価試験方法及び評価結果が要望されていた。

0008

従来、予変形量が2次プレス成形性に及ぼす影響を把握するための評価試験としては、予変形が付与された板状の対象材を用いた穴広げ試験が知られている(例えば、非特許文献1を参照)。この穴広げ試験においては、まず、板状材に種々の単一変形による予変形が付与される。例えば、エキスパンダーを用いて1軸引張り変形が付加される、あるいは、平底パンチを用いて2軸引張り変形が付加される。その後、この予変形が付与された対象材に対し、円錐ポンチや平底ポンチを用いて、2次プレス成形による穴広げ試験が行われる。穴広がりの程度を評価することにより、2次プレス成形における伸びフランジ性を評価することを可能としている。

0009

特開2008−264829号公報

先行技術

0010

田道夫、中川威雄、吉田清太著、「予変形を受けた冷延薄鋼板の穴拡げ試験」、理化学研究所報告、第46巻第1号、1970年1月

発明が解決しようとする課題

0011

しかしながら、実際のプレス加工では、1つの成形品の中に複数の加工要素を含む複合成形により加工されることが多い。例えば、図19に示すように、管が1本から複数本分岐する構造を有するプレス成形部品は、対象材料に対し、上記した代表的な4つの加工要素(平面歪引張変形、二軸引張変形、縮みフランジ変形及び単軸引張変形)をいずれも含む1次プレス成形を行うことによって得られる。さらに、図19に示すプレス成形部品は、1次プレス成形品において、所定の幅のフランジ領域を残して、多枝形状領域の一部または平面領域の一部を取り除いた後、当該フランジ領域に対し、単軸引張り変形の一態様である伸びフランジ変形を含む2次プレス成形が行われることがある。

0012

このように、上記の複合成形が含まれる場合、加工性に関する安定度(以下、「加工安定度」ともいう。)に関する評価を行うには、各種の加工要素を付与できる1次プレス成形により種々の予変形を加えた複数の1次プレス成形体を用意し、その後、当該1次プレス成形体に対し、2次プレス成形を行い、伸びフランジ性について評価する必要がある。

0013

しかしながら、従来の伸びフランジ性の評価方法は、非特許文献1に示されるような単一成形により、対象材に種々の予歪が付与されていた。複合成形は、1つの成形品において隣り合う別々の加工要素の影響を多分に受けることから、単一変形による予変形を付与した1次プレス成形品に対し、2次プレス成形を付加した場合の評価結果と、実部品のプレス成形結果との間に齟齬を生じることがあった。そのため、実部品をプレス成形する工程の設計には、従来の評価試験による評価結果は、伸びフランジ割れを生じない最適な工程を選定するための評価結果としては不十分であった。

0014

また、1次プレス成形品に複合成形を付与する方法としては、所望の形状を有する金型を用いて成形することが考えられる。しかし、成形による変形の態様は、プレス成形部品の種類によって異なるので、プレス成形部品ごとにそれぞれ異なる金型(ダイス、パンチ)を用意することは、作業が非常に煩雑となり、費用も要する。

0015

本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものである。本発明の目的は、複合成形された1次プレス成形体を用いた2次プレス成形に関して、2次プレス成形における伸びフランジ性の評価を行うに当たって、簡便かつ効率よく評価できる評価方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0016

本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、特定構造のパンチ及びダイスを備える装置を用いることで、上記の課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。

0017

(1) 本発明は、多枝形状の凸部を有するパンチと、前記凸部と嵌合可能な凹部及び平面部を有するダイスと、前記平面部との間でプレス成形の対象となる対象材料を押え板押えとを備えるプレス加工性評価装置により、前記対象材料を1次プレス成形し、フランジ部を有する1次プレス成形体を形成する工程であって、予変形量が異なる複数の前記1次プレス成形体を得る1次プレス成形工程と、前記1次プレス成形体から一部の領域を取り除く加工を施し、フランジ領域を含む変形1次プレス成形体を得る変形1次プレス成形工程と、前記プレス加工性評価装置を用いて、前記変形1次プレス成形体の前記フランジ領域をフランジアップさせる2次プレス成形を施し、複数の2次プレス成形体を得る2次プレス成形工程と、前記2次プレス成形体において伸びフランジ領域に相当する部位の板厚変化量を測定する変形量測定工程を含む、伸びフランジ性の評価方法である。

0018

(2) 本発明は、前記変形1次成形工程は、前記1次プレス成形体における多枝形状領域、又は前記多枝形状領域と異なる他の領域のうち少なくとも一方を、所定の幅を有する前記フランジ領域を残して取り除く加工を施す、上記(1)に記載の伸びフランジ性の評価方法である。

0019

(3) 本発明は、前記2次プレス成形工程における前記フランジアップは、前記1次プレス成形体のフランジ高さと、前記変形1次プレス成形体のフランジ領域の幅との総和にほぼ等しいフランジ高さを形成するように加工する、上記(1)又は(2)に記載の伸びフランジ性の評価方法である。

0020

(4) 本発明は、前記プレス加工性評価装置は、3以上の枝を含む多枝形状の凸部を有するパンチと、前記凸部と嵌合可能な3以上の枝を含む凹部、及び前記凹部を囲むダイス側平面部を有するダイスと、前記ダイス側平面部と略平行な板押え側平面部を有し、前記対象材料を前記ダイス側平面部及び前記板押え側平面部で挟み込み可能な板押えとを備える、上記(1)〜(3)に記載の伸びフランジ性の評価方法である。

0021

(5) 本発明は、前記多枝形状の枝同士がなす角は、枝が3つである場合には互いに鈍角であり、枝が4つである場合には略直角であり、枝が5つ以上である場合には互いに鋭角である、請求項1〜4のいずれかに記載の伸びフランジ性の評価方法である。

0022

(6) 本発明は、前記多枝形状の枝が4つであって、前記凸部及び前記凹部が略十字形状である、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の伸びフランジ性の評価方法である。

0023

(7) 本発明は、前記ダイスを平面視する場合、前記凹部の角部は曲線をなしており、前記ダイスの前記枝の幅をWdとし、前記ダイスの前記枝の角部における曲率半径をRcとするとき、前記Wdの前記Rcに対する比Wd/Rcは、2以上15未満であり、
前記パンチを正面視する場合、前記凸部の頂部における肩部は、曲線をなしており、前記肩部における曲率半径をRpとし、前記凸部の厚さをHpとし、さらに、前記ダイスを断面視する場合、前記凹部の底部は曲線をなしており、前記底部の曲率半径をRdとするとき、Hp≧(Rp+Rd)/2である、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の伸びフランジ性の評価方法である。

0024

(8) 本発明は、前記対象材料は、四角形状、八角形状楕円形状、又は円形状であるブランクを用いる、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の伸びフランジ性の評価方法である。

発明の効果

0025

本発明によれば、特定のプレス加工性評価装置を用いて、プレス成形対象材料に対し種々の条件で1次プレス成形を行うことより、予変形量が異なる複数の1次プレス成形体が得られる。そのため、複数の金型を作製しなくても、簡便に効率よく、様々な予変形量を有する複数の1次プレス成形体を作製することが可能である。

0026

それぞれの前記1次プレス成形体にトリミング加工を施して変形1次プレス成形体を作製した後、前記プレス加工性評価装置によって、前記変形1次プレス成形体のフランジ領域をフランジアップさせる2次プレス成形を行うことにより、複数の2次プレス成形体が得られる。これらの2次プレス成形体における上記フランジアップされた領域(伸びフランジ領域)の板厚変化量を測定することにより、2次プレス成形体の加工性を評価することができる。

0027

2次プレス成形工程のフランジアップ条件を調整し、ほぼ同一形状の複数の2次プレス成形体を作製すれば、板厚変化量を測定することにより、1次プレス成形体に付与された複数の予変形量に関する影響を対比して評価することもできる。そのため、プレス成形条件成形対象材料等による加工性に関する影響を簡便に予測することができる。

0028

例えば、各2次プレス成形体の伸びフランジ領域において、板厚変化率の最大値を対比することにより、各2次プレス成形体の加工安定度に関する優劣を評価できる。

0029

本発明は、複合成形からなる1次プレス成形によって予変形量の異なる複数の1次プレス成形体が得られる場合、さらに2次プレス成形を行うときの伸びフランジ性に関して簡便に評価する方法を提供できる。

図面の簡単な説明

0030

本発明に係る伸びフランジ性の評価方法を使用するのに好適なプレス加工性評価装置1を説明するための概略断面図である。
一実施形態に係るパンチ13を説明するための図である。(a)は、パンチ13の一例を示す概略斜視図であり、(b)は、パンチ13の平面図であり、(c)は、パンチ13の正面図である。
他の実施形態に係るパンチ13を説明するための図である。(a)は、多枝形状の枝が3つであるパンチ13’の一例を示す平面図であり、(b)は、多枝形状の枝が5つであるパンチ13’’の一例を示す平面図である。
ダイス23を説明するための図である。(a)は、ダイス23の一例を示す概略斜視図であり、(b)は、ダイス23の平面図であり、(c)は、(a)のX−X線における断面図である。
板押え32を説明するための図である。
1次プレス成形工程によって得られる1次プレス成形体40の一例を示す概略説明図である。(a)は、画像で示したもの、(b)は、(a)の形状を模式的に示した斜視図であり、(c)は、平面図を、(d)は、(c)にZと記した方向からの正面図をそれぞれ示したものである。
プレス成形工程の一例を示す概略説明図である。
プレス成形の塑性変形の加工要素を説明するための図である。
上記の各加工要素における最小主歪と最大主歪との関係を示す図である。
試験例において使用したダイス及びパンチの寸法を示す図である。(a)は、使用したダイス23の平面図を示したものであり、(b)は、当該ダイス23のY−Y線での断面図を示したものであり、(c)は、使用したパンチ13の正面図を示したものである。
試験例1及び3において、1次プレス成形した後の変形1次プレス成形体を説明するための図である。
試験例2及び4において、1次プレス成形した後の変形1次プレス成形体を説明するための図である。
試験例1〜4において、2次プレス成形した後の2次プレス成形体を説明するための図である。
図16における歪状態分布測定箇所を示す図である。
試験例1及び2に係る2次プレス成形体の歪み状態を示す図である。
試験例1〜4に関する2次プレス成形体の板厚変化率を示す図である。
十字試作品及び実プレス試作品における板厚変化率の測定位置を説明するための図である。
図18の測定位置における板厚変化率を示す図である。
管が1本から複数本へ分岐する構造を有するプレス成形部品の一例を示す図である。
ダイス23における枝の幅Wdと角部の曲率半径Rcとの比Wd/Rcに関してプレス成形体の状態を説明するための図である。
試験例1及び2に係る1次プレス成形体及び2次プレス成形体の加工前後での歪分布を示す図である。
試験例2に係る1次プレス成形体及び2次プレス成形体の歪み状態を示す図である。
図22図21のa〜dを重ね合わせた図である。

0031

以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。

0032

<伸びフランジ性の評価方法>
本発明に係る伸びフランジ性の評価方法は、特定のプレス加工性評価装置により、プレス成形の対象となる対象材料(以下、「プレス成形対象材料」と略称することもある。)を1次プレス成形し、フランジ部を有する1次プレス成形体を形成する工程であって、予変形量が異なる複数の前記1次プレス成形体を得る1次プレス成形工程と、前記1次プレス成形体から一部の領域を取り除く加工を施し、フランジ領域を含む変形1次プレス成形体を得る変形1次プレス成形工程と、前記プレス加工性評価装置を用いて、前記変形1次プレス成形体の前記フランジ領域をフランジアップさせる2次プレス成形を施し、複数の2次プレス成形体を得る2次プレス成形工程と、前記2次プレス成形体において伸びフランジ領域に相当する部位の板厚変化量を測定する変形量測定工程を含む。

0033

[1次プレス成形工程]
1次プレス成形工程は、特定のプレス加工性評価装置1を用いてプレス成形対象材料を1次プレス成形し、予変形量の異なる複数の1次プレス成形体40を得る工程である。

0034

[プレス加工性評価装置1]
図1は、プレス加工性評価装置1を説明するための模式図である。プレス加工性評価装置1は、パンチ部10と、このパンチ部10と嵌合可能なダイス部20と、パンチ部10及びダイス部20の両側に設けられるガイド部30A、30Bとを備える。

0035

パンチ部10は、底板11と、この底板11の表面に設けられたパンチホルダー12と、このパンチホルダーの表面で支持されるパンチ13と有する。ダイス部20は、上板21と、この上板の底面に設けられたダイスホルダー22と、このダイスホルダー22の底面で支持されるダイス23とを有する。ガイド部30A、30Bは、ダイス部20の両側に設けられ、ダイス部20の移動方向を定めるガイドピン31A、31Bと、パンチ部10の両側に設けられ、プレス成形対象材料をダイス部20とともに挟み込み可能な板押え32A、32Bと、板押え32A、32Bの底部に設けられ、板押え32A、32Bを支えクッションピン33A、33Bとを有する。

0036

図1には、プレス成形対象材料の板材50をパンチ10とダイス23との間に配置した態様が示されている。当該板材50は、プレス加工中にパンチ13とダイス23との間に引き込まれて、その外周が収縮するため、板材50の幅は、パンチ13の幅よりも十分に大きなものが使用される。

0037

[パンチ13]
図2の(a)は、パンチ13の一例を示す概略斜視図であり、多枝形状の枝が4つである場合の一例である。パンチ13は、凸部132を有する。凸部132は、4つの凸部132A、132B、132C、132Dからなる多枝形状を呈している。

0038

図2の(b)は、パンチ13の平面図であり、図2の(c)は、パンチ13の正面図である。

0039

凸部132は、3以上の枝132A,132B,132C,132Dからなる多枝形状で構成される。パンチ13の凸部132は、多枝形状で構成されていないと、プレス成形したときに、プレス成形体の隣り合う枝同士が交差する交差部を形成することができず、プレス成形体の平面歪引張変形を好適に測定できないため、好ましくない。

0040

枝の数は、特に限定されるものでない。プレス成形体の形状が比較的単純であり、プレス成形体の平面歪引張変形、単軸引張変形、二軸引張変形及び縮みフランジ変形の中から少なくとも二種以上の変形量を比較的容易に付与することができる点で、枝の数は、3以上8以下であることが好ましく、3以上5以下であることがより好ましい。また、枝先端又は枝交差部における材料の圧延方向の影響を検討するに際し、一般的な引張試験において行われる、プレス成形の対象材料の圧延方向に対して、0°、45°、90°の各方向における正確な歪み量のデータを採取するためには、枝の数は、4であることが特に好ましい。

0041

隣り合う枝同士がなす好ましい角度は、多枝形状の枝の数によって異なる。多枝形状の枝が3つである場合、隣り合う枝同士がなす角は互いに鈍角であることが好ましい。多枝形状の枝が4つである場合、隣り合う枝同士がなす角は略直角であることが好ましい。また、多枝形状の枝が5つ以上である場合、隣り合う枝同士がなす角は互いに鋭角であることが好ましい。なお、隣り合う枝同士がなす角は、鈍角と鋭角との両方を含むようにすることもできる。

0042

図3の(a)は、多枝形状の枝が3つであるパンチ13’の一例を示す平面図であり、図3の(b)は、多枝形状の枝が5つであるパンチ13’’の一例を示す平面図である。各種加工要素(平面歪引張変形、二軸引張変形、縮みフランジ変形及び単軸引張変形)の変形状態をより正確に付与することができるようにするため、図2及び図3に示すとおり、隣り合う枝同士がなす好ましい角度は、互いに略等しいことがより好ましい。すなわち、隣り合う枝同士がなす角は、(枝の数)/360°程度であることがより好ましい。具体的には、多枝形状の枝が3つである場合、隣り合う枝同士がなす角は、互いに略120°であり、凸部12が略三ツ矢状に形成されていることが好ましい。多枝形状の枝が3つである場合、隣り合う枝同士がなす角は、互いに略直角であり、凸部12が略十字状に形成されていることが好ましい。また、多枝形状の枝が5つである場合、隣り合う枝同士がなす角は、略72°であり、互いに略星状であることが好ましい。

0043

パンチ13は、図2(b)に示すように、パンチの凸部132を平面視する場合、凸部132のパンチ角部e1は、パンチ13の径方向内側に湾曲しており、凸部132の隅部f1は、パンチ13の径方向外側に湾曲している。本明細書において、凸部132の角部e1とは、凸部132の周縁エッジ)のうち、枝が周囲に突出して凸方向に形成された部分をいい、凸部132の隅部f1とは、凸部132の周縁(エッジ)のうち、隣り合う枝同士がなす凹方向に形成された部分をいう。

0044

また、図2の(c)に示すとおり、パンチの凸部132を正面視する場合、凸部132の周縁(エッジ)のうち、枝132A、132B、132C、132Dの頂部におけるパンチ肩部g1は、パンチ13の径方向内側に曲率半径Rpで湾曲させるR(曲線)をなしており、パンチ肩部g1から凸部132の基部に向かう外形は、ほぼ縦方向に延びる形状をなしている。本明細書において、凸部132の頂部とは、凸部132におけるプレス成形対象材料と当接する側をいい、凸部132の基部とは、凸部132おけるパンチホルダー12の上に配設される側をいう。

0045

加えて、パンチの凸部132の頂部から基部までの厚さをHpとするとき、Hp≧(Rp+Rd)/2であることが好ましい。Hpが(Rp+Rd)/2以上であることにより、プレス成形対象材料をプレス成形して得られるプレス成形体の平面歪引張変形及び単軸引張変形を好適に測定できる。

0046

[ダイス23]
図4の(a)は、ダイス23の一例を示す概略斜視図であり、4つの枝を有するパンチ13と組み合わせて使用されるダイス例である。図4の(b)は、ダイス23の平面図であり、図4の(c)は、図4の(a)のX−X線における断面図である。

0047

図4の(a)に示すように、ダイス23は、パンチ13と嵌合可能に形成される。ダイス23は、凸部132と嵌合可能な4つの凹部231、及びこの凹部231を囲むダイス側平面部232を有する。

0048

図4の(b)に示すように、ダイス23は、凹部231を平面視する場合、凹部231の枝231A、231B、231C、231Dのダイス角部e2は、ダイス23の径方向内側に曲率半径Rcで湾曲させるR(曲線)をなしており、凹部132の枝231A、231B、231C、231Dのダイス隅部f2は、ダイス23の径方向外側に曲率半径Rcで湾曲させるR(曲線)をなしている。本明細書において、凹部231の枝231A、231B、231C、231Dのダイス角部e2とは、凹部231の周縁(エッジ)のうち、凸方向に形成された部分をいい、凹部231の枝231A、231B、231C、231Dのダイス隅部f2とは、凹部231の周縁(エッジ)のうち、凹方向に形成された部分をいう。

0049

また、図4の(c)に示すように、ダイスの凹部231を凹部断面図4(a)のX−X面)で断面視する場合、凹部231のプレス成形対象材料に当接する側における底部h2は、ダイス23の径方向外側に曲率半径Rdで湾曲させるR(曲線)をなしている。ダイス底部h2から凹部231の基部に向かう外形は、ほぼ縦方向に延びる形状をなしている。本明細書において、凹部231の基部とは、凹部231におけるダイスホルダー22に配設される側をいう。

0050

対象材料をプレス成形して得られるプレス成形体の二軸引張及び縮みフランジを好適に付与することができるようにするため、ダイス凹部231の枝231A、231B、231C、231Dの幅をWdとし、枝231A、231B、231C、231Dのダイス角部e2における曲率半径をRcとするとき、WdのRcに対する比Wd/Rcは、2以上15未満であることが好ましく、3以上12未満であることがより好ましい。

0051

図20の(a)に示すとおり、Wd/Rcが小さすぎると(Rcが大きすぎると)、プレス成形体において、枝の角部e3の境界応力が局部的に集中し、プレス成形体の割れを生じ得る。図20の(b)に示すとおり、Wd/Rcが大きすぎると(Rcが小さすぎると)、プレス成形体において、枝の角部e3の周方向塑性歪域が縮小し、角部e3で割れが発生し得るため、好ましくない。なお、本明細書において、曲率半径は、輪郭形状測定器(型式:ContracerCV−2000、株式会社ミツトヨ製)によって求めた値をいうものとする。

0052

[板押え32]
図5は、板押え32を説明するための図である。板押え32は、ダイス側平面部232と略平行な板押え側平面部321を有し、プレス成形の対象となる対象材料をダイス側平面部232及び板押え側平面部321で挟み込み可能に構成される。プレス加工性評価装置1が板押え32を備えていない場合、プレス成形の対象となる対象材料をプレス成形したときに、プレス成形体の多枝形状領域を囲む略平面領域を形成できず、プレス成形体の縮みフランジ変形を好適に付与することができないため、好ましくない。

0053

(変形例)
なお、図1図5では、パンチ13が凸状の多枝形状を有し、ダイス23が凹状の多枝形状を有するものとして説明しているが、これに限るものではない。パンチ13が凹状の多枝形状を有し、ダイス23が凸状の多枝形状を有する場合であっても、同様の効果を奏する。

0054

具体的には、プレス加工性評価装置は、3以上の枝からなる多枝形状の凹部を先端に有するパンチと、上記凹部と嵌合可能な3以上の枝からなる多枝形状の凸部、及びこの凸部を囲むダイス側平面部を有するダイスと、上記ダイス側平面部と略平行な板押え側平面部を有し、プレス成形の対象となる対象材料を上記ダイス側平面部及び上記板押え側平面部で挟み込み可能な板押えとを備えるものであってもよい。

0055

なお、この変形例に係るプレス加工性評価装置であっても、パンチとダイスの凹凸交換すれば、隣り合う枝同士がなす角、上記Wd、Rc、Hp、Rp、Rd等のパラメータの好適な範囲は、上述と同じであるといえる。

0056

[1次プレス成形体40]
図6は、プレス加工性評価装置1を用いて、プレス成形の対象となる対象材料を1次プレス成形することによって得られる複数の1次プレス成形体40の一例を示す斜視図である。図6の(a)は、画像で示したもの、図6の(b)は、(a)の形状を模式的に示した斜視図であり、図6の(c)は、その平面図を、図6の(d)は、図6の(c)にZと記した方向からの正面図をそれぞれ示したものである。1次プレス成形体40は、凸部41と、この凸部41を囲む略平面な平面部42とを有する。また、凸部41は、枝43A、43B、43C、43Dからなる多枝形状を呈している。

0057

プレス成形対象材料は、パンチ13の枝132とダイス23の凹部231との間で加工されて変形するので、プレス成形体40の凸部41(枝43A、43B等)は、パンチ132A、132B等の形状及びダイス23の231A、231B等の形状に対応した凸形状となるように成形され、平面部42は、ダイス23の頂部側の上面及び板押さえ32の平面に対応した形状となるように成形される。すなわち、プレス成形体の凸部41は、図2(b)、(c)に示すようなパンチ13のパンチ角部e1、パンチ隅部f1、パンチ肩部g1に対応する形状と、図4(a)〜(c)に示すようなダイス23のダイス角部e2、ダイス隅部f2、ダイス底部h2に対応する形状として、角部e3、隅部f3、肩部g3、底部h3のような部位を備えている。

0058

[変形1次プレス成形工程]
変形1次プレス成形工程について説明する。変形1次プレス成形工程は、1次プレス成形体40から一部の領域を取り除く加工を施し、フランジ領域を含む変形1次プレス成形体60を得る工程である。1次プレス成形体40は、フランジ部を有している。1次プレス成形体40から一部の領域を取り除くときは、当該フランジ部を含む領域が残存するようにトリミング加工される。本明細書では、上記のフランジ部を含む領域を「フランジ領域」という。1次プレス成形体における多枝形状領域(例えば、フランジ部)、又は前記多枝形状領域と異なる他の領域(例えば、フランジ部周辺の平面部)のうち少なくとも一方を、所定の幅を有するフランジ領域を残して取り除く形態で実施することが好ましい。

0059

[2次プレス成形工程]
2次プレス成形工程について説明する。2次プレス成形工程は、プレス加工性評価装置1を用いて、変形1次プレス成形体60のフランジ領域をフランジアップさせる2次プレス成形を行い、複数の2次プレス成形体70を得る工程である。

0060

2次プレス成形工程におけるフランジアップは、1次プレス成形体のフランジ高さと、変形1次プレス成形体のフランジ領域の幅との総和にほぼ等しいフランジ高さを形成するように加工すると、ほぼ同じ形状の2次プレス成形体が得られるので、好ましい。

0061

図7は、1次プレス成形、変形1次プレス成形、2次プレス成形に関するそれぞれの具体的態様を説明するための図である。図7の(a)、(b)は、具体的な加工形態として、2種類の加工形態1、2を例示している。図7(a)の加工形態1及び図7(b)の加工形態2は、プレス加工性評価装置により十字状に成形される1次プレス成形(図では「十字成形」と略称する。)を施して1次プレス成形体を得た後、当該1次プレス成形体にトリミング加工を施して変形1次プレス成形体を得る。その後、当該変形1次プレス成形体に2次プレス成形を行う。図7の「1次プレス成形」は、トリミング前の形状を示しており、「変形1次プレス成形」は、トリミング後の形状におけるy−y´線での概略断面図を示している。図7に記載した「トリム部」は、トリミングした部分を示し、「フランジアップ部」は、2次プレス成形によりフランジアップさせる領域を示している。

0062

第1の具体的態様は、図7(a)の加工形態1に示すように、1次プレス成形工程の後、1次プレス成形体40における凸部41(多枝形状領域)の中央部から、所定幅のフランジ領域を残して、トリム部を取り除き、変形1次プレス成形体を得る。その後、2次プレス成形工程において、プレス加工性評価装置1を用いて、当該変形1次プレス成形体のフランジ領域をフランジアップすることにより、2次プレス成形体が得られる。この態様は、図7の加工形態1の「想定形状」に示すような、1次プレス成形では、二軸引張変形の一態様である張出し加工を行い、2次プレス成形では、単軸引張変形の一態様である伸びフランジ変形を行う場合に対応する。

0063

第2の具体的態様は、図7(b)の加工形態2に示すように、1次変形量測定工程の後、2次プレス成形工程の前に、1次プレス成形体40における平面部42(多枝形状領域と異なる他の領域)から、所定の幅のフランジ領域を残して、トリム部を取り除き、変形1次プレス成形体を得る。その後、2次プレス成形工程において、プレス加工性評価装置1を用いて、当該変形1次プレス成形体のフランジ領域をフランジアップすることにより、2次プレス成形体が得られる。この態様は、図7(b)の「想定形状」に示すような、1次プレス成形では、平面歪引張変形及び単軸引張変形を含む複合成形を行い、2次プレス成形では、単軸引張変形の一態様である伸びフランジ変形を行う場合に対応する。

0064

[変形量測定工程]
続いて、変形量測定工程について説明する。変形量測定工程は、各2次プレス成形体の伸びフランジ領域の内で最大の板厚減少率を測定する工程である。

0065

板厚変化量を測定する手法として、超音波厚み計(型式:38DL−PLUS、オリンパス株式会社製)を用いる法が挙げられる。

0066

[割れ予測工程]
さらに、本発明は、2次プレス成形体の最大主歪及び最大主歪を測定することにより、2次プレス成形体の伸びフランジ割れ位置を予測する工程を含むことが好ましい。
複数の印により最大主歪及び最小主歪の関係をプロットし、このプロットの結果から2次プレス成形体の割れを予測することができる。このプロットは、例えば、成形線図として作成することができる。

0067

最大主歪及び最小主歪を測定する手法として、非接触歪測定装置ARGUS(GOM社製/コベルコ科研)を用い、以下の(1)〜(3)の手順を経ることが挙げられる。
(1)プレス成形対象材料(供試材)の表面に、複数の印として、φ0.8mmドットマーク(1.5mm間隔)を電解転写して形成する。
(2)形成されたドットマークを、加工前後でCCDカメラを用いて多方向から撮影する。
(3)撮影されたドットマークに基づいて加工前後のドット間距離を測定し、その変化量から最大主歪及び最小主歪を算出する。

0068

最大主歪及び最小主歪を算出することにより、伸びフランジ性を評価することができる。ここで、図8を参照しながら、プレス成形の塑性変形の加工要素について説明する。

0069

塑性変形の加工要素は、最大主歪及び最小主歪を用いて、引張方向の変形、圧縮方向の変形、変形なしの各組合せにより、大きく4種類に分類される。図8は、その加工要素を図示したものであり、最大主歪をε1、最小主歪をε2、そして最大主歪ε1と最小主歪ε2のどちらとも直交する板厚方向歪をεtと記載している。

0070

最大主歪ε1が引張変形であり、最小主歪ε2が変形なしである加工要素を平面歪引張変形(図8のA)と称される。最大主歪ε1と最小主歪ε2がいずれも引張変形である加工要素を二軸引張変形(図8のC)と称される。最大主歪ε1が引張変形であって、最小主歪ε2が圧縮変形である加工要素を縮みフランジ変形(図8のD)と称される。最大主歪ε1が引張り変形、最小主歪ε2が圧縮変形であり、圧縮が引張の1/2相当の歪量である加工要素を単軸引張変形又は伸びフランジ変形と称される(図8のB)。

0071

次に、上記の各加工要素の変形が付与される領域について、説明する。
平面歪引張変形は、最大主歪ε1が引張変形であり、最小主歪ε2が変形なしの加工要素であるから、プレス成形品において、その加工要素に近接した歪状態を有する領域は、平面歪引張変形を強く受けて加工された領域であると判断できる。本実施形態では、図2に示すパンチ13と図4に示すダイス23により加工されて、図6に示すようなプレス成形体40が成形される。プレス成形体40の凸部41の周縁には、パンチ13のパンチ隅部f1に対応し、ダイス23のダイス隅部f2に対応した形状を有する隅部f3に隣接して、領域Cが形成される。当該領域Cは、ダイス23のダイス底部h2の曲率半径Rdに対応して形成された曲線形状を有する底部h3を含むものである。当該領域Cは、最大主歪ε1が大きく、最小主歪ε2が0に近い歪量で測定されることから、平面歪引張変形を強く受けている領域である。領域Cにおいて、最大主歪ε1が最も大きく、最小主歪ε2が略変形なしである箇所のプレス前後の変形量を、平面歪引張変形が主体関与する量とする。

0072

単軸引張変形は、最大主歪ε1が引張り変形、最小主歪ε2が圧縮変形であり、圧縮による歪量が引張による歪量の1/2相当の加工要素である。本実施形態では、図6に示すプレス成形体40の枝43A、43B、43C、43Dの長さ方向の側面には、領域Sが形成される。当該領域Sは、パンチ基部からパンチ肩部g1に向けて略縦方向に延びる形状に対応し、ダイス基部からダイス底部h2に向けて略縦方向に延びる形状に対応して形成された領域を含むものである。当該領域Sは、最大主歪ε1が大きく、最小主歪ε2が圧縮変形として測定されることから、単軸引張変形を強く受けている領域である。領域Sにおいて、最大主歪ε1が最も大きく、最小主歪ε2が圧縮変形である箇所のプレス前後の変形量を、単軸引張変形が主体で関与する量とする。

0073

二軸引張変形は、最大主歪ε1と最小主歪ε2がいずれも引張変形である加工要素である。本実施形態では、図6に示すプレス成形体40の凸部41の角部であり、かつ、肩部である領域Tを形成する。当該領域Tは、パンチ13のパンチ角部e1とパンチ肩部g1及びダイス23のダイス角部e2とダイス底部h2の形状に対応して形成された領域を含むものである。当該領域Tは、最大主歪ε1と最小主歪ε2が大きな引張歪として測定されることから、二軸引張変形を強く受けている領域である。領域Tにおいて、最大主歪ε1が最も大きく、最小主歪ε2が引張変形である箇所のプレス前後の変形量を、二軸引張変形が主体で関与する量とする。

0074

縮みフランジ変形は、最大主歪ε1が引張変形であって、最小主歪ε2が圧縮変形である加工要素である。本実施形態では、図6に示すプレス成形体40の平面部42において、例えば凸部の角部の周囲等の領域Fは、ダイス23の頂部側の上面及び板押さえ32の平面に対応して形成された領域を含むものである。当該領域Fは、最大主歪ε1が大きな引張歪として、また、最小主歪ε2が大きな圧縮歪として測定されることから、縮みフランジ変形を強く受けている領域である。領域Fにおいて、最大主歪ε1が最も大きく、最小主歪ε2が最も小さい箇所のプレス前後の変形量を、縮みフランジ変形が主体で関与する量とする。

0075

次に、図9を参照しながら、割れ予測工程について説明する。図9において、縦軸は、最大主歪ε1の大きさを示し、横軸は、最小主歪ε2の大きさを示す。平面歪引張変形の場合、最大主歪ε1が引張変形であり、最小主歪ε2が変形なしであることから、図9の縦軸にあたる直線L1(ε2=0)方向の変形形態が、平面歪引張変形に相当する。

0076

二軸引張変形の場合、最大主歪ε1と最小主歪ε2がいずれも引張変形であることから、図9の直線L3(ε1=ε2)方向の変形形態が、二軸引張変形に相当する。

0077

縮みフランジ変形の場合、最大主歪ε1が引張変形であり、最小主歪ε2が圧縮変形であることから、図9の直線L4(ε1=−ε2)方向の変形形態が、縮みフランジ変形に相当する。

0078

単軸引張変形(伸びフランジ変形)の場合、圧縮による歪量が引張りによる歪量の1/2相当であるから、図9の直線L2(ε1=−2ε2)方向の変形形態が、単軸引張変形に相当する。

0079

プレス加工時の歪量が過大になると、加工割れを生じやすくなる。図9に示すように、最大主歪ε1と最小主歪ε2が増加するほど、引張り割れを発生しやすくなる。一方、最大主歪ε1が低減し、最小主歪ε2が圧縮する方向(マイナス側)に移行すると、引張り割れの発生が抑制される。

0080

また、L1〜L4で示された加工要素は、それぞれの歪み状態に応じて、板厚変化が減少又は増加し、この板厚変化量が過大になると、加工割れの発生に至り、板厚変化に応じて引張割れ又は圧縮割れを生じやすくなる。このうち、L1〜L3に近接した変形形態では、引張変形の割合が大きく、板厚が減少する方向にあるので、引張割れの発生が予測される。L4に近接した変形形態は、圧縮変形の割合が大きく、板厚が増加する方向にあるので、圧縮割れの発生が予測される。

0081

このような予測のもとで、プレス加工された後の歪状態(歪分布)を測定し、L1〜L4の加工要素を強く受けている箇所の歪状態に基づいて、加工割れの可能性を予測することができ、また、原板のプレス加工性について評価することができる。具体的には、プレス加工された変形領域において歪状態(歪分布)を測定し、成形線図のようにプロットし、プロットした結果から、最大主歪及び最小主歪が大きい箇所を特定し、この特定箇所の歪状態に基づいて板厚減少率を算出し、加工割れの成否を予測することができる。

0082

本発明によると、複合成形からなる1次プレス成形によって得られる、予歪量の異なる各1次プレス成形体により、さらに2次プレス成形を行うときの伸びフランジ性を評価することができる。

0083

以下、実施例により本発明を具体的に説明する。本発明は、これらに限定されるものではない。

0084

[試験例1]
板厚が1.5mmである第1のSUS430改良鋼(高加工用フェライト系ステンレス鋼)を供試材とし、一辺が300mmである略正方形カットしたプレス成形対象材料の板材を用いた。当該供試材の組成は、質量%で、C:0.009%、Si:0.27%、Mn:0.97%、Cr:18.12%、Cu:0.18%、Mo:1.93%、N:0.010%、残部Fe及び不可避的不純物である。

0085

当該板材に対して、上記プレス加工性評価装置により下記に示す1次プレス条件でプレス成形を行い、1次加工高さが25mmの1次プレス成形体を得た。

0086

図10の(a)は、使用したダイス23の平面図を示したものであり、図10の(b)は、当該ダイス23のY−Y線での断面図を示したものである。図10の(c)は、使用したパンチ13の正面図を示したものである。

0087

(1次プレス条件)
装置 :2000kNサーボプレス
ダイス、パンチ:図10に示すとおり(パンチ13の凸部厚さHp:25mm)
板押え力:9.5トン
速度 :5spm
潤滑条件加工用表面保護フィルムPV3633(日東電工社製)
対象材料方向:圧延方向が金型の前後方向と平行
加工高さ :25mm

0088

続いて、図11に示すように、1次プレス成形体40における平面部(多枝形状領域とは異なる他の領域に相当)から、幅7mmのフランジ領域(フランジ残り部62)を残してトリム部61を取り除き、変形1次プレス成形体60を得た。

0089

その後、上記プレス加工性評価装置を用いて、当該変形1次プレス成形体60を対して、下記に示す2次プレス条件でプレス成形を行い、上記変形1次プレス成形体60のフランジ残り部62をフランジアップさせて、図14に示すような2次プレス成形体70を得た。2次プレス成形体70の縁部は、フランジ残り部62に相当する平坦な領域を実質的に有しない形状を呈している。

0090

(2次プレス条件)
装置 :2000kNサーボプレス
ダイス、パンチ:図10に示すとおり
板押え力:9.5トン
速度 :5spm
潤滑条件:加工用表面保護フィルムSPV3633(日東電工社製)
対象材料方向:圧延方向が金型の前後方向と平行
加工高さ :32mm

0091

[試験例2]
図12に示すように、1次プレス成形時の1次加工高さ、及びパンチ13の凸部厚さHpがそれぞれ30mmであること、1次プレス成形体40における平面部において幅2mmのフランジ領域(フランジ残り部62)を残すように取り除くこと以外は、試験例1と同じ手法にて、2次プレス成形体60を得た。

0092

図11は、試験例1においてトリムされた後の変形1次プレス成形体60の形状を示す。図12は、試験例2においてトリムされた後の変形1次プレス成形体60の形状を示す。図13は、試験例1、2における2次プレス成形体70の形状を示す。

0093

上記のように、試験例1、2は、変形量の異なる2種の1次プレス成形体40を作製した後、2次プレス成形により同じ形状(加工高さ)を有する2次プレス成形体を作製した。そのため、試験例1、2における各1次プレス成形体の加工高さに応じて、変形1次プレス成形体60を作製する際に残存させるフランジ領域の幅(フランジ残り部62)を設定し、同一の加工高さが得られるプレス条件で2次プレス成形を行った。1次プレス加工高さとフランジ領域幅との総和からなる2次プレス加工高さは、試験例1が25mm+7mm、試験例2が30mm+2mm)のように、いずれも32mmとなるように設定された。

0094

[試験例3]
プレス成形の対象となる対象材料が、長さ:300mm四方、板厚:1.5mmの第2のSUS430改良鋼(高加工用フェライト系ステンレス鋼)であること以外は、試験例1と同じ手法にて、2次プレス成形体を得た。なお、当該第2のSUS430改良鋼は、試験例1のSUS430改良鋼と異なる組成を有する。その組成は、質量%で、C:0.005%、Si:0.10%、Mn:0.17%、Cr:17.09%、Cu:1.39%、Mo:0.04%、N:0.019%、残部Fe及び不可避的不純物である。

0095

[試験例4]
プレス成形の対象となる対象材料が、長さ:300mm四方、板厚:1.5mmの第2のSUS430改良鋼(高加工用フェライト系ステンレス鋼)であること以外は、試験例2と同じ手法にて、2次プレス成形体を得た。

0096

解析
[変形量(歪量)の測定]
上記のとおり、変形量(歪量)は、非接触歪測定装置ARGUS(GOM社製/コベルコ科研)を用い、次の手法にて測定した。
(1)加工前の対象材料(供試材)の表面に、φ0.8mmドットマーク(1.5mm間隔)を電解転写して形成した。
(2)プレス加工前のドットマークと、プレス加工後のドットマークとを、CCDカメラを用いて多方向から撮影した。
(3)撮影されたドットマークに基づいて加工前後のドット間距離を測定し、その変化量から最大主歪及び最小主歪を算出した。

0097

[割れ位置予測工程]
実施例の2次プレス成形体は、ほぼ4等分にされた対称的形状を有している。そこで、図14に示した網掛け模様の領域を選択し、当該領域における最大主歪量の分布を調べた。

0098

図15は、[変形量の測定]の(3)で算出された最大主歪量を、試験例1及び2に関わる2次プレス成形体に重ね合わせることにより、最大主歪分布を可能視化して模式的に示したものである。縁部付近破線で囲まれた領域は、2次プレス成形体の伸びフランジ領域に相当する箇所を示す。また、濃淡を示した領域は、最大主歪の大きさに対応し、色が淡色に近づくほど最大主歪量が大きいことを示し、色が濃色に近づくほど最大主歪量が小さいことを示す。

0099

伸びフランジ領域では、試験例1、試験例2共に実線で囲んだ部分は、色が最も淡く、最大主歪量が大きい。図9に示すように、単軸引張変形の一態様である伸びフランジ変形においては、最大主歪量が大きいほど伸びフランジ割れが発生し易いと考えられる。そのため、上記の実線で囲んだ部分は、伸びフランジ割れを生じる箇所であると予測できる。同様の理由から、板厚変化の割合が大きい箇所、すなわち板厚変化率が最大となる箇所についても、実線で囲んだ部分内に存在すると簡便に予測できる。

0100

また、図15において、実線で囲んだ部分の色は、試験例2に比べて試験例1の方が淡く、最大主歪量が大きい。前記のとおり、伸びフランジ変形においては、最大主歪量が大きいほど伸びフランジ割れが発生し易いことから、試験例1の方が試験例2よりも伸びフランジ割れを生じ易いと予測できる。そして、同様の理由から、板厚変化率についても、試験例1の板厚変化率が試験例2のそれよりも大きいことを簡便に予測できる。

0101

[板厚変化率の測定]
試験例1〜試験例4について、2次プレス成形の前後で、伸びフランジ領域における板厚を測定し、2次プレス成形による板厚変化量を算出した。伸びフランジ領域において、ほぼ等間隔となるよう任意に10箇所を選定し、超音波厚み計(型式:38DL−PLUS、オリンパス株式会社製)を用いて、板厚を測定した。板厚の測定値に基づいて板厚変化率を算出し、そのうちの最大値を図16に示す。

0102

試験例1と試験例2とを対比する。図16に示すように、試験例1の工程で成形された2次プレス成形体は、試験例2の工程で成形された2次プレス成形体に比べて、伸びフランジ領域の板厚変化率が大きく、板厚が薄くなっている。このことから、試験例2の工程は、試験例1の工程と比べて、2次プレス成形にともなう板厚の変化を小さくできるので、2次プレス成形品の伸びフランジ割れが抑えられると予測される。

0103

次に、使用されたステンレス鋼の種類に関して、試験例1〜4の各2次プレス成形体を対比する。試験例1及び2は、第1のSUS430改良鋼Aを使用し、試験例3及び4は、第2のSUS430改良鋼Bを使用しており、鋼材の種類が異なる。そして、試験例1、3は、鋼材の種類を除いて同様の工程で成形が行われた結果を示し、また、試験例2、4は、鋼材の種類を除いて同様の工程で成形が行われた結果を示している。

0104

図16に示すように、試験例1は、試験例3に比べて、また、試験例2は、試験例4と比べて、それぞれ伸びフランジ領域の板厚変化率が大きく、板厚が薄くなっている。このことから、試験例3及び4のステンレス鋼Bは、試験例1及び2のステンレス鋼Aに比べて、2次プレス成形品の伸びフランジ割れを抑えられる鋼材であると予測される。

0105

[実製品での検証]
[実製品の製造]
金型(ダイス、パンチ及び板押え)の形状が異なること以外は、試験例1、2と同じ工程及び条件により1次プレス成形及び2次プレス成形を行い、図19に示す形状の2次プレス成形体(実プレス試作品)を得た。

0106

そして、図17に示すように、位置1〜位置3で、2次プレス成形の前後における板厚の変化率を測定した。図17の「十字試作品」は、試験例1、2の試験体を意味し、「実プレス試作品」は、図19の2次プレス成形体を意味する。位置1〜3の領域において、ほぼ等間隔となるよう任意に10箇所を選定し、超音波厚み計(型式:38DL−PLUS、オリンパス株式会社製)を用いて板厚を測定した。板厚の測定値に基づいて板厚変化率を算出し、そのうちの最大値を図18に示す。

0107

図18に示すように、図19の形状を有する実プレス試作品においては、試験例2工程を用いた当該試作品は、試験例1工程を用いた当該試作品に比べて板厚減少率が小さく、板厚変化が抑えられた。このような板厚変化の傾向は、図21に示す十字形状の2次プレス成形体による試験結果と同様であった。

0108

以上のことから、本発明に係る伸びフランジ性の評価方法を用いると、複合成形された1次プレス成形体に、2次プレス成形として伸びフランジ成形が適用された場合の加工安定度について、その評価と予測を簡便に実施することができる。

0109

また、種々の2次プレス成形体の加工安定度を比較することにより、伸びフランジ割れが生じ難いような適正な工程を選定することができる。

0110

また、測定結果をプロットして、成形体の歪分布を得ることにより、歪状態を一元化して把握することができる。そのため、成形対象材料同士の成形性や加工性に関する差異を容易に比較することができる。

0111

また、成形線図と板厚減少率とを比較することにより、成形対象材料ごとの加工性を評価できる。

0112

さらに、1次プレスを行う際に、良好な性状の1次プレス成形体を得るのに適したダイス及びパンチの形状について検討した。

0113

<ダイス及びパンチの形状の最適化>
[試験例5]
板厚:0.8mmの第3のSUS430改良鋼(高加工用フェライト系ステンレス鋼)を供試材とし、一辺が300mmである略正方形にカットしたプレス成形対象材料を用いて、上記プレス加工性評価装置にて下記に示す1次プレス条件で1次プレス成形し、複数種類の1次プレス成形体を得た。なお、当該供試材は、試験例1〜4で使用した第1及び第2のSUS430改良鋼と異なる組成を有するSUS430改良鋼である。当該供試材の組成は、質量%で、C:0.011%、Si:0.39%、Mn:0.36%、Cr:16.42%、Cu:0.09%、Mo:0.05%、N:0.010、残部Fe及び不可避的不純物である。

0114

(1次プレス条件)
ダイス及びパンチの形状は、図2図4に示すとおりである。枝の幅Wdと枝の角部の曲率半径Rcとの比Wd/Rcは、1、1.5、2、2.5、5、10、15、15.5の8種類にしている。1次プレス成形の加工高さ、及びパンチ13の凸部厚さHpをそれぞれ32mmとしたこと以外は、試験例1と同様の1次プレス条件を用いた。

0115

得られた種々の1次プレス成形体について、枝の割れの状態を観察した。枝の割れがない場合を“○”とし、図20の(a)に示すように、角部e3の境界で割れが生じている場合を“×1”とし、図20の(b)に示すように、角部e3で割れが生じている場合を“×2”とした。その結果を表1に示す。

0116

0117

表1に示すように、Wd/Rcが2以上15以下である場合、プレス成形体の枝において、割れは生じなかった。一方、Wd/Rcが2未満である場合、図20の(a)に示すように、1次プレス成形体において、角部e3の境界に応力が局部的に集中し、プレス成形体の割れが発生した。また、Wd/Rcが15を超える場合、図20の(b)に示すとおり、1次プレス成形体において、枝の角部e3の周方向の塑性歪域が縮小し、角部e3での割れが発生した。

0118

[試験例6]
試験例5と同じ高加工用フェライト系ステンレス鋼を供試材とし、一辺が300mmである略正方形にカットしたプレス成形対象材料の板材を用いた。上記プレス加工性評価装置により、下記に示す1次プレス条件でプレス成形を行い、複数種類の1次プレス成形体を得た。

0119

(1次プレス条件)
ダイス及びパンチの形状は、図2図4に示すとおりである。パンチの凸部を正面視し、当該凸部の厚さをHpとし、パンチ肩部g1の曲率半径をRpとし、ダイス底部h3の曲率半径をRdとするとき、Hpと(Rp+Rd)との比Hp/(Rp+Rd)が、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2の10種類にしている。その他の条件は、試験例5と同じである。

0120

得られた種々の1次プレス成形体について、以下のとおり、「変形量(歪量)の測定」及び「成形線の作成」を行い、4つの加工要素(平面歪引張変形、二軸引張変形、縮みフランジ変形及び単軸引張変形)の現出の有無を確認した。

0121

[変形量(歪量)の測定]
試験例1で説明したように、変形量(歪量)は、非接触歪測定装置ARGUS(GOM社製/コベルコ科研)を用い、次の手法にて測定した。
(1)加工前の対象材料(供試材)の表面に、φ0.8mmドットマーク(1.5mm間隔)を電解転写して形成した。
(2)プレス加工前のドットマークと、プレス加工後のドットマークとを、CCDカメラを用いて多方向から撮影した。
(3)撮影されたドットマークに基づいて加工前後のドット間距離を測定し、その変化量から最大主歪及び最小主歪を算出した。

0122

[成形線の作成]
上記の算出の結果から、各々のドットマークについて、最大主歪を縦軸座標とし、最小主歪を横軸座標とした複数の座標を得ることができる。図21のうち、「1次加工」は、これら複数の座標をプロットすることによって得られる、1次プレス成形体の歪分布である。図21のうち、「2次加工」は、これら複数の座標をプロットすることによって得られる、2次プレス成形体の歪分布である。これらの歪分布において、直線L1(ε2=0)方向の変形は、平面歪引張変形に相当し、直線L2(ε1=−2ε2)方向の変形は、単軸引張変形に相当する。直線L3(ε1=ε2)方向の変形は、二軸引張変形に相当し、直線L4(ε1=−ε2)方向の変形は、縮みフランジ変形に相当する。また、濃淡で示した領域は、最大主歪の大きさに対応し、淡色に近づくほど最大主歪量が大きいことを示し、濃色に近づくほど最大主歪量が小さいことを示す。

0123

また、歪分布の最外線を結ぶことによって成形線が得られる。例えば、図21に示した成形線では、a〜dにおいて突出する形状の曲線が描かれている。これらのa〜dは、プレス成形体で測定された領域のうち、最大主歪ε1及び最小主歪ε2が大きい箇所に位置しており、図9に示された4つの加工要素A〜Dの変形形態を強く受けている領域である。これらの測定箇所は、このうち、直線L1に最も近接する点aは、平面歪引張変形の測定に好適な箇所に相当し、直線L2に最も近接する点bは、単軸引張変形の測定に好適な箇所に相当し、直線L3に最も近接する点cは、二軸引張変形の測定に好適な箇所に相当し、直線L4に最も近接する点dは、縮みフランジ変形の測定に好適な箇所に相当する。

0124

図21に示すように、1次加工では歪量が非常に軽度なため、試験例6に係る2次プレス成形体と、試験例5に係る2次プレス成形体とは、歪分布に大きな差異は確認されない。1次加工では、1次プレス成形体の凸部は、点aのような平面歪変形に近い歪分布となっている。それに対し、2次加工では、試験例5と試験例6はともに、点a’のような単軸引張変形を伴う歪が新たに発生する。試験例5と試験例6を対比すると、両者の点aは、単軸引張変形の基準線L2に近接する距離が異なっており、試験例6の線分a−a’は、試験例5の線分a−a’よりも単軸引張変形の基準線L2に向かって傾いている。単軸引張変形は、図9に示すように、最大主歪が引張、最小主歪が圧縮の加工要素であるから、単軸引張変形が加わるプレス成形体は、最小主歪の絶対値が大きくなるほど、体積一定の関係により、板厚減少が小さくなる傾向にある。そのため、上記の線分a−a’が単軸引張変形の基準線L2に近づくほど最小主歪の影響度が強くなり、板厚減少の程度が小さくなることを視覚的に把握できる。そして、過度の板厚減少が割れに関係することから、2次加工後の割れ易さに関する鋼種間の序列簡易的に評価することができる。

0125

図21に示された試験結果は、試験例6の線分a−a’が試験例1よりも単軸引張変形の基準線L2に近接することを示している。そのため、試験例6で使用されたステンレス鋼は、試験例5で使用されたよりも板厚減少が小さく、2次プレス成形品の割れが抑えられて、加工性が良好な鋼種であると判定できる。

0126

加工領域において加工割れが発生し易くなる条件を概略すると、表2に示すとおりである。最大主歪及び最小主歪が大きいことに加えて、a〜dがL1〜L4に近接あるいは離隔する程度に応じて、加工割れが発生し易い状態となる。その理由を、プレス成形中の板材が体積一定の関係にあることに基づいて説明する。

0127

例えば、aがL1に近接する場合は、引張り歪が1軸方向(最大主歪方向)に偏ることによって、板材の面内の歪み域が狭くなり、局部的な板厚減少を生じ易くなる。bがL2から最大主歪軸方向に離れる場合は、圧縮歪みによる板厚増加の効果が低下し、局部的な板厚減少を招く。また、cがL3に近接すると、2軸方向で歪が均等になるので、板材の面内の歪が均一に広がりやすくなるのに対し、cがL3から最大主歪方向に離れる場合は、均一な歪み域が狭くなり、局部的な板厚減少が発生しやすくなる。dがL4から最小主歪軸方向に離れる場合は、1軸方向(最大主歪方向)の引張要素が小さくなり、板材の面内の圧縮歪が過多となるため、板厚増加の追従が困難となって割れが発生しやすくなる。

0128

0129

図22は、図21に示した成形線を、試験例6に係る1次プレス成形体及び2次プレス成形体に重ね合わせることで歪分布を可視化して模式的に示したものである。破線は、プレス成形体の凸部の輪郭を示す。また、濃淡を示した領域は、最大主歪の大きさに対応し、色が淡色に近づくほど最大主歪量が大きいことを示し、色が濃色に近づくほど最大主歪量が小さいことを示す。

0130

図23は、図22について、図21に示した点a〜dに相当する箇所の最大主歪及び最小主歪を詳細に説明したものである。1次加工のプレス成形体におけるa〜dの丸で囲んだ部分は、点a〜dに相当する箇所を示す。丸内に記載した矢印ε1は、点a〜dにおいて最大主歪が生じた方向を示し、矢印ε2は、点a〜dにおいて最小主歪が生じた方向を示す。また、この矢印の方向は、変形の方向を示し、外向きの矢印は、変形が引張変形であることを示し、内向きの矢印は、変形が圧縮変形であることを示す。なお、点aの位置では平面歪引張変形の測定が好適であり、点bの位置では単軸引張変形の測定が好適であり、点cの位置では二軸引張変形の測定が好適であり、点dの位置では縮みフランジ変形の測定が好適である。2次加工のプレス成形体におけるa’の丸で囲んだ部分は、点a’に相当する箇所を示す。点a’は、1次加工のプレス成形体における点aに対応する位置にあり、矢印ε1や矢印ε2の意味は、上記と同様である。なお、以下、点a〜d、点a’を位置a〜d、位置a’ということもある。

0131

図23の1次加工のプレス成形体に示すように、(ア)1次プレス成形体の凸部の隅部f3に隣接する底部h3を含む領域に相当する箇所(位置aを含み、図6のCに相当する領域)では、平面歪引張変形が生じていることが分かる。また、(イ)1次プレス成形体の枝における長さ方向の側面の領域に相当する箇所(位置bを含み、図6のSに相当する領域)では、単軸引張変形が生じていることが分かる。また、(ウ)1次プレス成形体の凸部の角部e3であり、かつ、肩部g3である領域に相当する箇所(位置cを含み、図6のTに相当する領域)では、二軸引張変形が生じていることが分かる。また、(エ)1次プレス成形体の平面部の領域に相当する箇所(位置dを含み、図6のFに相当する領域)では、縮みフランジ変形が生じていることが分かる。すなわち、試験例に係るプレス成形体は、4つの加工要素(平面歪引張変形、二軸引張変形、縮みフランジ変形及び単軸引張変形)をいずれも含んでおり、位置aが平面歪引張変形の測定に、位置bが単軸引張変形の測定に、位置cが二軸引張変形の測定に、また、位置dが単軸引張変形の測定にそれぞれ好適な箇所である。また、2次プレス成形体における位置a’を含む領域は、平面歪引張変形及び単軸引張変形が生じていることが分かる。

0132

試験例6で得られた複数種類の1次プレス成形体について、上記の加工要素A〜Dに相当する変形形態が現出された場合を“○”とし、現出されなかった場合を“×”とした。その結果を表3に示す。

0133

実施例

0134

表3に示すように、対象材料を1次プレス成形して得られる1次プレス成形体において、Hp/(Rp+Rd)が0.5以上、すなわち、Hpが(Rp+Rd)の0.5倍以上である場合は、4つの加工要素(平面歪引張変形、二軸引張変形、縮みフランジ変形及び単軸引張変形)の全てを好適に測定できることが確認された。一方、Hp/(Rp+Rd)が0.5未満、すなわち、Hpが(Rp+Rd)の0.5倍未満のプレス成形体においては、4つの加工要素のうち、二軸引張変形だけを測定できるに止まり、他の加工要素(平面歪引張変形、縮みフランジ変形及び単軸引張変形)を好適に測定できなかった。
Hp≧(Rp+Rd)/2であると、1つの1次プレス成形体において複数の加工要素を現出することから、加工性の評価に活用できる点で好ましい。

0135

1プレス加工性評価装置
10パンチ部
11底板
12パンチホルダー
13 パンチ
132 凸部
20ダイス部
21上板
22ダイスホルダー
23 ダイス
231 凹部
232 ダイス側平面部
30、30A、30Bガイド部
31、31A、31Bガイドピン
32、32A、32B板押え
321 板押え側平面部
33クッションピン
40 1次プレス成形体
41 プレス成形体凸部
42平面部
43 枝
50板材
60 変形1次プレス成形体
61トリム部
62フランジ残り部
70 2次プレス成形体

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