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技術 非破壊検査方法および装置

出願人 一般財団法人電力中央研究所
発明者 大石祐嗣
出願日 2015年11月30日 (6年0ヶ月経過) 出願番号 2015-233865
公開日 2017年6月8日 (4年6ヶ月経過) 公開番号 2017-101967
状態 特許登録済
技術分野 放射線を利用した材料分析
主要キーワード 配設条件 減衰割合 減肉状態 空気部分 進行軸 散乱エネルギー 原子力設備 回散乱
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図面 (12)

課題

コンプトン散乱γ線を利用する場合において、検査対象物幅広く検出でき、さらに検出器の配設位置の制限という問題を生起することなく検出し得る非破壊検査方法およびその装置を提供する。

解決手段

X線またはγ線(以下、両者をまとめてγ線という)を検査対象物31に照射して前記検査対象物におけるコンプトン散乱に基づく1回散乱γ線のエネルギーよりも高エネルギー側に出現する前記2回散乱γ線のエネルギーに対する信号強度を表す散乱γ線エネルギー分布特性を検出する第1の工程と、前記散乱γ線エネルギー分布特性に基づき前記検査対象物における減肉の有無を検出する第2の工程とを有する。

概要

背景

原子力設備配管検査等にはX線またはγ線(以下、本明細書において両者をまとめてγ線という)を利用した非破壊検査汎用されている。これは検査対象物である配管等にγ線を照射し、これによる検査対象物の透過画像解析して減肉の程度等を検出するものである(例えば特許文献1参照)。

しかしながら、検査対象物の透過画像を得ることにより減肉の程度等を検査する場合においては、γ線を検出する検出器を、γ線を照射する線源に対し検査対象物を挟んで反対側に配置する必要がある。

このため、線源に対する検査対象物の反対側が狭隘部であったり、他の配管等の障害物の存在により検出器を配設するための十分なスペースが確保できない場合も多い。

一方、コンプトン後方散乱に基づく散乱γ線を利用すれば線源と検出器を検査対象物に対して同じ側に配設することもできる。コンプトン後方散乱とは、図10(a)に示すように、所定のγ線をターゲットTに照射したとき、γ線に対して角度Φの方向に飛び出す反跳電子Eeとともに、エネルギーが変化した散乱γ線として元のγ線が散乱される現象をいう。ここで、散乱γ線の散乱角θはターゲットTに照射されるγ線のエネルギーE0と散乱される散乱γ線のエネルギーE1とで一意に定まる。散乱角θ>90°の領域に散乱する場合を、特に後方散乱という。

したがって、図10(b)に示すように、γ線源01と検出器02とを散乱角θ>90°に合致するように配設すれば、γ線源01と検出器02とを検査対象物である配管03に対して同じ側に配設することができ、検出器02の配設条件緩和することができる。ここで、検出器02では、図10(c)に示すように、散乱角θ(γ線源01の配設位置と検出器02の配設位置とがなす角度)で一意に特定される散乱γ線のエネルギーE1で信号強度ピークとなる散乱γ線エネルギー分布が得られる。なお、図10(c)の横軸には、散乱γ線のエネルギーを採り、縦軸には検出器02で検出される散乱γ線信号の信号強度を採ってある。散乱γ線信号は、散乱γ線の強度を表す信号である。また、γ線源01および検出器02の前には、図示はしないが、通常コリメーターが配設される。

一方、図11(a)に示すように、検査対象物である配管03が内周に減肉を生起することなく正常な状態を維持している場合の後方散乱γ線のエネルギーE1の信号強度は、図11(b)に示すように、検査対象物である配管03の内周に減肉部03Aが形成されている場合よりも大きくなる。

検査対象物である配管03の肉厚部分は鉄等の高密度物質であるのに対し、減肉部03Aは低密度の空気であるので、かかる空気部分でγ線の散乱強度が大きく低下するからである。例えば、γ線源01である放射性同位体イリジウム線源から照射されるγ線のエネルギーE0が320keVとすると、散乱角θ=90°の場合の散乱γ線のエネルギーE1は197keVと、一意に決まる。したがって、検査対象物である配管03に減肉部03Aが発生している場合には散乱γ線のエネルギーE1の信号強度が小さくなる。

そこで、図10(c)に示す散乱γ線エネルギー分布において散乱γ線のエネルギーE1の信号強度を検出することにより減肉の発生を検出し得る(例えば、非特許文献1参照)。

概要

コンプトン散乱γ線を利用する場合において、検査対象物を幅広く検出でき、さらに検出器の配設位置の制限という問題を生起することなく検出し得る非破壊検査方法およびその装置を提供する。X線またはγ線(以下、両者をまとめてγ線という)を検査対象物31に照射して前記検査対象物におけるコンプトン散乱に基づく1回散乱γ線のエネルギーよりも高エネルギー側に出現する前記2回散乱γ線のエネルギーに対する信号強度を表す散乱γ線エネルギー分布特性を検出する第1の工程と、前記散乱γ線エネルギー分布特性に基づき前記検査対象物における減肉の有無を検出する第2の工程とを有する。

目的

本発明は、上述の従来技術に鑑み、コンプトン散乱γ線を利用する場合において、検査対象物の状態を幅広く検出でき、さらに検出器の配設位置の制限という問題を生起することなく検出し得る非破壊検査方法およびその装置を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

X線またはγ線(以下、両者をまとめてγ線という)を検査対象物照射して前記検査対象物におけるコンプトン散乱に基づく1回散乱γ線のエネルギーよりも高エネルギー側に出現する2回散乱γ線のエネルギーに対する信号強度を表す散乱γ線エネルギー分布特性を検出する第1の工程と、前記散乱γ線エネルギー分布特性に基づき前記検査対象物における減肉の有無を検出する第2の工程とを有することを特徴とする非破壊検査方法

請求項2

請求項1に記載する非破壊検査方法において、前記検査対象物に対して、前記γ線を照射する側と、前記2回散乱γ線を検出する側は、同じ側であることを特徴とする非破壊検査方法。

請求項3

請求項2に記載する非破壊検査方法において、前記検査対象物に前記γ線が入射して1回目のコンプトン散乱を生じてから2回目のコンプトン散乱を生じるまでの経路が前記減肉の有無を検出する対象箇所であることを特徴とする非破壊検査方法。

請求項4

請求項2又は3に記載する非破壊検査方法において、前記γ線を照射する方向に伸び仮想の第1直線と、前記2回散乱γ線を検出する方向に伸びる仮想の第2直線とは、前記検査対象物の前記γ線の照射側及び前記2回散乱γ線の検出側とは反対側で交差するようにし、この状態で、前記検査対象物からの散乱γ線に基づく2回散乱γ線のピークに基づき、前記検査対象物の減肉の有無を検出することを特徴とする非破壊検査方法。

請求項5

請求項2又は3に記載する非破壊検査方法において、前記γ線を照射する方向に伸びる仮想の第1直線と、前記2回散乱γ線を検出する方向に伸びる仮想の第2直線とは、前記検査対象物の前記γ線の照射側及び前記2回散乱γ線の検出側と同じ側で交差するようにし、この状態で、前記検査対象物からの散乱γ線に基づく2回散乱γ線のピークに基づき、前記検査対象物の減肉の有無を検出することを特徴とする非破壊検査方法。

請求項6

請求項1〜5の何れか一項に記載する非破壊検査方法において、前記検査対象物の前記減肉の有無を検出している部位とは異なる部位におけるコンプトン散乱に基づく1回散乱γ線のエネルギーに対する信号強度を表す散乱γ線エネルギー分布特性を検出し、前記異なる部位の減肉の有無を検出することを特徴とする非破壊検査方法。

請求項7

請求項6に記載する非破壊検査方法において、前記検査対象物が前記γ線の照射方向に伸びる直線に前記γ線の照射側で交差する第1の壁部材および当該第1の壁部材の前記γ線の照射側とは反対側で前記直線に交差する第2の壁部材を有する場合であって、前記第1の壁部材および前記第2の壁部材の何れか一方の減肉の有無を前記2回散乱γ線のエネルギーに対する信号強度を表す散乱γ線エネルギー分布特性で検出し、他方の減肉の有無を前記コンプトン散乱に基づく1回散乱γ線のエネルギーに対する信号強度を表す散乱γ線エネルギー分布特性で検出することを特徴とする非破壊検査方法。

請求項8

請求項7に記載する非破壊検査方法において、散乱γ線信号を検出する際に、前記γ線が照射された時点を基準として前記散乱γ線信号の時間軸に沿う成分を考慮し、前記第2の壁部材の減肉の有無を検出する際には前記第1の壁部材からの散乱γ線に基づく部分が除去されるとともに、前記第2の壁部材からの散乱γ線に基づく部分が選択されるように前記散乱γ線信号の時間軸に沿う成分の一部を除去し、前記第1の壁部材の減肉の有無を検出する際には前記第2の壁部材からの散乱γ線に基づく部分が除去されるとともに、前記第1の壁部材からの散乱γ線に基づく部分が選択されるように前記散乱γ線信号の時間軸に沿う成分の一部を除去し、減肉の有無を検出することを特徴とする非破壊検査方法。

請求項9

検査対象物に向けてγ線を照射するγ線源と、前記照射により検査対象物においてコンプトン散乱に起因して散乱された散乱γ線を検出する検出器とを有する非破壊検査装置において、前記散乱γ線エネルギーに対する前記散乱γ線信号の信号強度を表し、かつ1回散乱γ線のエネルギー線よりも高エネルギー側に出現する2回散乱γ線のエネルギーの散乱γ線エネルギー分布特性に基づき、前記2回散乱γ線の前記信号強度のピークである2回散乱γ線のピークにより前記検査対象物における減肉の有無を検出するように前記検出器を構成したことを特徴とする非破壊検査装置。

請求項10

請求項9に記載する非破壊検査装置において、前記γ線源と、前記検出器とは、前記検査対象物に対して同じ側に配置されていることを特徴とする非破壊検査装置。

請求項11

請求項10に記載する非破壊検査装置において、前記検査対象物に前記γ線が入射して1回目のコンプトン散乱を生じてから2回目のコンプトン散乱を生じるまでの経路を前記減肉の有無を検出する対象箇所とすることを特徴とする非破壊検査装置。

請求項12

請求項10又は11に記載する非破壊検査装置において、前記γ線源から前記γ線を照射する方向に伸びる仮想の第1直線と、前記検出器へ前記2回散乱γ線を検出する方向に伸びる仮想の第2直線とは、前記検査対象物の前記γ線の照射側及び前記2回散乱γ線の検出側とは反対側で交差するようにし、この状態で、前記検査対象物からの散乱γ線に基づく2回散乱γ線のピークに基づき、前記検査対象物の減肉の有無を検出することを特徴とする非破壊検査装置。

請求項13

請求項10又は11に記載する非破壊検査装置において、前記γ線源から前記γ線を照射する方向に伸びる仮想の第1直線と、前記検出器へ前記2回散乱γ線を検出する方向に伸びる仮想の第2直線とは、前記検査対象物の前記γ線の照射側及び前記2回散乱γ線の検出側と同じ側で交差するようにし、この状態で、前記検査対象物からの散乱γ線に基づく2回散乱γ線のピークに基づき、前記検査対象物の減肉の有無を検出することを特徴とする非破壊検査装置。

請求項14

請求項9〜13の何れか一項に記載する非破壊検査装置において、前記検査対象物の前記減肉の有無を検出している部位とは異なる部位におけるコンプトン散乱に基づく1回散乱γ線のエネルギーに対する信号強度を表す散乱γ線エネルギー分布特性を検出し、前記異なる部位の減肉の有無を検出するように前記検出器を構成したことを特徴とする非破壊検査装置。

請求項15

請求項14に記載する非破壊検査装置において、前記検査対象物が前記γ線の照射方向に伸びる直線に前記γ線の照射側で交差する第1の壁部材および当該第1の壁部材の前記γ線の照射側とは反対側で前記直線に交差する第2の壁部材を有する場合において、前記第1の壁部材および前記第2の壁部材の何れか一方の減肉の有無を前記2回散乱γ線のエネルギーに対する信号強度を表す散乱γ線エネルギー分布特性で検出し、他方の減肉の有無を前記コンプトン散乱に基づく1回散乱γ線のエネルギーに対する信号強度を表す散乱γ線エネルギー分布特性で検出するように前記検出器を構成したことを特徴とする非破壊検査装置。

請求項16

請求項15に記載する非破壊検査装置において、散乱γ線信号を検出する際に、前記γ線が照射された時点を基準として前記散乱γ線信号の時間軸に沿う成分を考慮し、前記第2の壁部材の減肉の有無を検出する際には前記第1の壁部材からの散乱γ線に基づく部分が除去されるとともに、前記第2の壁部材からの散乱γ線に基づく部分が選択されるように前記散乱γ線信号の時間軸に沿う成分の一部を除去し、前記第1の壁部材の減肉の有無を検出する際には前記第2の壁部材からの散乱γ線に基づく部分が除去されるとともに、前記第1の壁部材からの散乱γ線に基づく部分が選択されるように前記散乱γ線信号の時間軸に沿う成分の一部を除去し、減肉の有無を検出するように前記検出器を構成したことを特徴とする非破壊検査装置。

技術分野

0001

本発明は非破壊検査方法および装置に関し、特にコンプトン散乱を利用した非破壊検査に適用して有用なものである。

背景技術

0002

原子力設備配管検査等にはX線またはγ線(以下、本明細書において両者をまとめてγ線という)を利用した非破壊検査が汎用されている。これは検査対象物である配管等にγ線を照射し、これによる検査対象物の透過画像解析して減肉の程度等を検出するものである(例えば特許文献1参照)。

0003

しかしながら、検査対象物の透過画像を得ることにより減肉の程度等を検査する場合においては、γ線を検出する検出器を、γ線を照射する線源に対し検査対象物を挟んで反対側に配置する必要がある。

0004

このため、線源に対する検査対象物の反対側が狭隘部であったり、他の配管等の障害物の存在により検出器を配設するための十分なスペースが確保できない場合も多い。

0005

一方、コンプトン後方散乱に基づく散乱γ線を利用すれば線源と検出器を検査対象物に対して同じ側に配設することもできる。コンプトン後方散乱とは、図10(a)に示すように、所定のγ線をターゲットTに照射したとき、γ線に対して角度Φの方向に飛び出す反跳電子Eeとともに、エネルギーが変化した散乱γ線として元のγ線が散乱される現象をいう。ここで、散乱γ線の散乱角θはターゲットTに照射されるγ線のエネルギーE0と散乱される散乱γ線のエネルギーE1とで一意に定まる。散乱角θ>90°の領域に散乱する場合を、特に後方散乱という。

0006

したがって、図10(b)に示すように、γ線源01と検出器02とを散乱角θ>90°に合致するように配設すれば、γ線源01と検出器02とを検査対象物である配管03に対して同じ側に配設することができ、検出器02の配設条件緩和することができる。ここで、検出器02では、図10(c)に示すように、散乱角θ(γ線源01の配設位置と検出器02の配設位置とがなす角度)で一意に特定される散乱γ線のエネルギーE1で信号強度ピークとなる散乱γ線エネルギー分布が得られる。なお、図10(c)の横軸には、散乱γ線のエネルギーを採り、縦軸には検出器02で検出される散乱γ線信号の信号強度を採ってある。散乱γ線信号は、散乱γ線の強度を表す信号である。また、γ線源01および検出器02の前には、図示はしないが、通常コリメーターが配設される。

0007

一方、図11(a)に示すように、検査対象物である配管03が内周に減肉を生起することなく正常な状態を維持している場合の後方散乱γ線のエネルギーE1の信号強度は、図11(b)に示すように、検査対象物である配管03の内周に減肉部03Aが形成されている場合よりも大きくなる。

0008

検査対象物である配管03の肉厚部分は鉄等の高密度物質であるのに対し、減肉部03Aは低密度の空気であるので、かかる空気部分でγ線の散乱強度が大きく低下するからである。例えば、γ線源01である放射性同位体イリジウム線源から照射されるγ線のエネルギーE0が320keVとすると、散乱角θ=90°の場合の散乱γ線のエネルギーE1は197keVと、一意に決まる。したがって、検査対象物である配管03に減肉部03Aが発生している場合には散乱γ線のエネルギーE1の信号強度が小さくなる。

0009

そこで、図10(c)に示す散乱γ線エネルギー分布において散乱γ線のエネルギーE1の信号強度を検出することにより減肉の発生を検出し得る(例えば、非特許文献1参照)。

0010

特開2006—177841号公報

先行技術

0011

(社)日本原子力学会「1995大会」(1995年10月17日〜20日、原研)コンプトン散乱を用いた保温材表面からの点検技術、(株)東、宇高彰、濱島隆之、後哲夫

発明が解決しようとする課題

0012

ところが、上述の如く図10図(c)に示す散乱γ線エネルギー分布特性における散乱γ線のエネルギーE1の信号強度に基づき減肉を検出する場合には、1点で情報をもって判断しなければならないので、減肉の検出誤差が生じ易く、また、減肉の範囲を検出するためには、スキャンする必要があり、また、深さ方向の情報は検出が困難であるという問題がある。

0013

本発明は、上述の従来技術に鑑み、コンプトン散乱γ線を利用する場合において、検査対象物の状態を幅広く検出でき、さらに検出器の配設位置の制限という問題を生起することなく検出し得る非破壊検査方法およびその装置を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0014

上記目的を達成する本発明は次の知見を基礎とするものである。図1(a)に示すように、コンプトン散乱は、前述の如く、エネルギーE0のγ線がターゲットT1に照射されることにより、γ線に対して角度Φの方向に飛び出す反跳電子Eeとともに、エネルギーが変化した散乱γ線として元のγ線が散乱される現象をいうが、かかる散乱は、所定の確率で複数回生起されることもある。図1(a)では、2回散乱の態様を示している。この場合、エネルギーE0のγ線がターゲットT1に照射されてエネルギーE21の1回散乱γ線となり、さらに1回散乱γ線が同じターゲットT1で2回目の散乱を起こすことにより、エネルギーE22の2回散乱γ線となっている。このときの各γ線のエネルギーE0,E21,E22および1回散乱角θ1、2回散乱角θ2との関係は、次式(1)、(2)で示される。

0015

0016

ちなみに、エネルギーE0のγ線がターゲットT1内で1回のみ散乱される場合の散乱角θ(=θ1+θ2)と散乱エネルギーE1の関係は次式(3)で示される。

0017

0018

一般に、散乱回数が多くなるにつれ、信号強度が小さくなるので、散乱回数が増える程、図10(c)に示す散乱γ線エネルギー分布特性上では散乱γ線信号が検出されにくくなる。しかも、多重散乱に基づく散乱γ線信号は、通常、図10(c)に示す散乱γ線エネルギー分布特性上では1回散乱の場合の散乱γ線エネルギーよりも低エネルギー側に出現する。

0019

ところが、図1(b)に示すように、γ線源1から検査対象物である配管3に照射するγ線のエネルギーE0および散乱角θを適切に選び、かつ測定精度を上げることにより、検出器2ではエネルギーE1の1回散乱の高エネルギー側に、エネルギーE22の2回散乱のピークを観測できる。すなわち、例えば、E0=320keVで散乱角θ=90°とすると、上式(3)よりE1=197keV、上式(1)、(2)よりE22=234keVとなる。

0020

ここで、2回の散乱により後方90°(=θ=θ1+θ2)に散乱されるための散乱角度として、1回目の散乱角θ1=45°、2回目の散乱角θ2=45°とした。図1(c)は、1回散乱とともに2回散乱のピークが出現した散乱γ線エネルギー分布特性を示す特性図である。同図に示す特性図においては、エネルギーE1の信号強度P1よりも小さいが、エネルギーE1の1回散乱ピークよりも高エネルギー側でエネルギーE22の2回散乱ピークを与える信号強度P2が観測されている。

0021

本発明では、コンプトン後方散乱の中で、2回散乱に起因するエネルギーE22を観察することにより、対象物の減肉を検出しようとするものである。
図1をさらに模式化したものを図2に示す。
図2で(a)は1回散乱であるが、図2(b)は本発明で用いる2回散乱である。すなわち、図2(a)の1回散乱では、エネルギーE0を有する入射γ線γ0は、対象物3Aで散乱し、エネルギーE1の1回散乱γ線γ1が検出される。図2(b)では、エネルギーE0の入射γ線γ0は、対象物3Aで1回散乱が生じ、エネルギーE21の1回散乱γ線γ21となり、次いで、対象物3Bで2回目の散乱が生じ、エネルギーE22の2回散乱γ線γ22が生じ、これが検出される。

0022

図3(a)では、2回散乱の場合において、エネルギーE22の2回散乱γ線γ22だけが検出される。一方、図3(b)では、エネルギーE22の2回散乱γ線γ22の他に、対象物3Aを透過し、対象物3Cで1回だけ散乱したエネルギーE1の1回散乱γ線γ1も検出される。

0023

本発明では、図3(a)の場合も、図3(b)の場合も想定されるが、図3(b)の場合には、E22の2回散乱γ線γ22と、エネルギーE1の1回散乱γ線γ1とは、エネルギーの大きさが異なると共に、検出される時間が異なるので、両者を区別することは容易である。そして、エネルギーE1の1回散乱γ線γ1については、対象物3Cの減肉の有無の検出に使用することもできるし、必要ないものとして排除することもできる。

0024

かかる2回散乱による減肉の検出の原理は、次のように考えられる。
図4(a)に示す2回散乱の場合において、γ線源1を点線源ペンシルビームを放出するものとし、さらに散乱γ線の観測点となる検出器2も理想的な鉛コリメーターを設置して1点のみとすると、検出器2おける2回散乱ピークの信号強度は、γ線照射軸と検査対象物との交点I2、散乱γ線検出軸と検査対象物との交点I3およびγ線照射軸と散乱γ線検出軸との交点I1とを含む面P1と検査対象物31とが交わる領域R1内の散乱情報を得ていることになる。このため、2回散乱ピークは、1回散乱γ線γ21が鉄材料サンプル内の領域R1を通り、2散乱γ線γ22として検出される。一方、図4(b)に示す2回散乱の場合においては、1回散乱γ線γ21の一部は、減肉により、一部は空気中を通って、2散乱γ線γ22として検出される。ここで、空気よりも鉄の方が1回散乱γ線21の減衰割合が大きいので、従来の1回散乱を利用して減肉を検出する場合とは異なり、減肉が有る場合には、健全な場合と比較して、2回散乱γ線γ22の信号強度は大きくなり、その増加割合は減肉の大きさに依存する。

0025

このように、本発明においては、検査対象物にγ線が入射して1回目のコンプトン散乱を生じてから2回目のコンプトン散乱を生じるまでの経路を減肉の有無を検出する対象箇所とするものであり、1回散乱γ線γ21が検査対象物の構成物質そのものを通過するか、減肉により形成された空間を通過するかの違いにより、減肉の有無を検出するものである。

0026

かかる知見を基礎とする本発明の第1の態様は、X線またはγ線(以下、両者をまとめてγ線という)を検査対象物に照射して前記検査対象物におけるコンプトン散乱に基づく1回散乱γ線のエネルギーよりも高エネルギー側に出現する2回散乱γ線のエネルギーに対する信号強度を表す散乱γ線エネルギー分布特性を検出する第1の工程と、前記散乱γ線エネルギー分布特性に基づき前記検査対象物における減肉の有無を検出する第2の工程とを有することを特徴とする非破壊検査方法にある。

0027

本態様によれば、配管の減肉等、検査対象物の状態によってコンプトン散乱の2回散乱ピークに基づき、検出対象物における減肉の有無を検出しているので、かかる検出を含む所定の非破壊検査を簡便なものとすることができる。

0028

本発明の第2の態様は、第1の態様に記載する非破壊検査方法において、前記検査対象物に対して、前記γ線を照射する側と、前記2回散乱γ線を検出する側は、同じ側であることを特徴とする非破壊検査方法にある。

0029

本態様によれば、コンプトン後方散乱に起因して散乱された散乱γ線を検出して検査対象物の減肉等の状態を検出しているので、検査対象物に対して散乱γ線の検出をγ線の照射側と同じ側で行うことができる。この結果、検出器等の機器配置の自由度が大きく効率的な非破壊検査を実現し得る。

0030

本発明の第3の態様は、第2の態様に記載する非破壊検査方法において、前記検査対象物に前記γ線が入射して1回目のコンプトン散乱を生じてから2回目のコンプトン散乱を生じるまでの経路が前記減肉の有無を検出する対象箇所であることを特徴とする非破壊検査方法にある。

0031

本態様によれば、経路中に減肉が有るか無いかにより、2回コンプトン散乱の信号強度が大きく変化するので、減肉の有無を有効に検出することができる。

0032

本発明の第4の態様は、第2又は3の態様に記載する非破壊検査方法において、前記γ線を照射する方向に伸び仮想の第1直線と、前記2回散乱γ線を検出する方向に伸びる仮想の第2直線とは、前記検査対象物の前記γ線の照射側及び前記2回散乱γ線の検出側とは反対側で交差するようにし、この状態で、前記検査対象物からの散乱γ線に基づく2回散乱γ線のピークに基づき、前記検査対象物の減肉の有無を検出することを特徴とする非破壊検査方法にある。

0033

本態様によれば、検査対象物の手前側にスペースを確保でき、γ線の照射源と検出器を比較的容易に配置できる。

0034

本発明の第5の態様は、第2又は3の態様に記載する非破壊検査方法において、前記γ線を照射する方向に伸びる仮想の第1直線と、前記2回散乱γ線を検出する方向に伸びる仮想の第2直線とは、前記検査対象物の前記γ線の照射側及び前記2回散乱γ線の検出側と同じ側で交差するようにし、この状態で、前記検査対象物からの散乱γ線に基づく2回散乱γ線のピークに基づき、前記検査対象物の減肉の有無を検出することを特徴とする非破壊検査方法にある。

0035

本態様によれば、検査対象物の手前側に、γ線の照射源と検出器を比較的コンパクトに配置できる。

0036

本発明の第6の態様は、第1〜5の何れかの態様に記載する非破壊検査方法において、前記検査対象物の前記減肉の有無を検出している部位とは異なる部位におけるコンプトン散乱に基づく1回散乱γ線のエネルギーに対する信号強度を表す散乱γ線エネルギー分布特性を検出し、前記異なる部位の減肉の有無を検出することを特徴とする非破壊検査方法にある。

0037

本態様によれば、1回散乱γ線のエネルギーを検出することにより、2回散乱γ線のエネルギーの検出に基づく箇所とは異なる領域の減肉を一回の検出で検出することができる。

0038

本発明の第7の態様は、第6の態様に記載する非破壊検査方法において、前記検査対象物が前記γ線の照射方向に伸びる直線に前記γ線の照射側で交差する第1の壁部材および当該第1の壁部材の前記γ線の照射側とは反対側で前記直線に交差する第2の壁部材を有する場合であって、前記第1の壁部材および前記第2の壁部材の何れか一方の減肉の有無を前記2回散乱γ線のエネルギーに対する信号強度を表す散乱γ線エネルギー分布特性で検出し、他方の減肉の有無を前記コンプトン散乱に基づく1回散乱γ線のエネルギーに対する信号強度を表す散乱γ線エネルギー分布特性で検出することを特徴とする非破壊検査方法にある。

0039

かかる態様では、第1の壁部材の減肉状態と、第2の壁部材の減肉状態とを検出することができる。

0040

本発明の第8の態様は、第7の態様に記載する非破壊検査方法において、散乱γ線信号を検出する際に、前記γ線が照射された時点を基準として前記散乱γ線信号の時間軸に沿う成分を考慮し、前記第2の壁部材の減肉の有無を検出する際には前記第1の壁部材からの散乱γ線に基づく部分が除去されるとともに、前記第2の壁部材からの散乱γ線に基づく部分が選択されるように前記散乱γ線信号の時間軸に沿う成分の一部を除去し、前記第1の壁部材の減肉の有無を検出する際には前記第2の壁部材からの散乱γ線に基づく部分が除去されるとともに、前記第1の壁部材からの散乱γ線に基づく部分が選択されるように前記散乱γ線信号の時間軸に沿う成分の一部を除去し、減肉の有無を検出することを特徴とする非破壊検査方法にある。

0041

かかる態様では、1回散乱γ線のエネルギーと2回散乱γ線のエネルギーとを容易に区別することができ、第1の壁部材の減肉状態と、第2の壁部材の減肉状態とを比較的容易に検出することができる。

0042

本発明の第9の態様は、検査対象物に向けてγ線を照射するγ線源と、前記照射により検査対象物においてコンプトン散乱に起因して散乱された散乱γ線を検出する検出器とを有する非破壊検査装置において、前記散乱γ線エネルギーに対する前記散乱γ線信号の信号強度を表し、かつ1回散乱γ線のエネルギー線よりも高エネルギー側に出現する2回散乱γ線のエネルギーの散乱γ線エネルギー分布特性に基づき、前記2回散乱γ線の前記信号強度のピークである2回散乱γ線のピークにより前記検査対象物における減肉の有無を検出するように前記検出器を構成したことを特徴とする非破壊検査装置にある。

0043

本態様によれば、配管の減肉等、検査対象物の状態によってコンプトン散乱の2回散乱ピークに基づき、検出対象物における減肉の有無を検出しているので、かかる検出を含む所定の非破壊検査を簡便なものとすることができる。

0044

本発明の第10の態様は、第9の態様に記載する非破壊検査装置において、前記γ線源と、前記検出器とは、前記検査対象物に対して同じ側に配置されていることを特徴とする非破壊検査装置にある。

0045

本態様によれば、コンプトン後方散乱に起因して散乱された散乱γ線を検出して検査対象物の減肉等の状態を検出しているので、検査対象物に対して散乱γ線の検出をγ線の照射側と同じ側で行うことができる。この結果、検出器等の機器配置の自由度が大きく効率的な非破壊検査を実現し得る。

0046

本発明の第11の態様は、第10の態様に記載する非破壊検査装置において、前記検査対象物に前記γ線が入射して1回目のコンプトン散乱を生じてから2回目のコンプトン散乱を生じるまでの経路を前記減肉の有無を検出する対象箇所とすることを特徴とする非破壊検査装置にある。

0047

本態様によれば、経路中に減肉が有るか無いかにより、2回コンプトン散乱の信号強度が大きく変化するので、減肉の有無を有効に検出することができる。

0048

本発明の第12の態様は、第10又は11の態様に記載する非破壊検査装置において、前記γ線源から前記γ線を照射する方向に伸びる仮想の第1直線と、前記検出器へ前記2回散乱γ線を検出する方向に伸びる仮想の第2直線とは、前記検査対象物の前記γ線の照射及び前記2回散乱γ線の検出側とは反対側で交差するようにし、この状態で、前記検査対象物からの散乱γ線に基づく2回散乱γ線のピークに基づき、前記検査対象物の減肉の有無を検出することを特徴とする非破壊検査装置にある。

0049

本態様によれば、検査対象物の手前側にスペースが確保でき、γ線の照射源と検出器を比較的容易に配置できる。

0050

本発明の第13の態様は、第10又は11の態様に記載する非破壊検査装置において、前記γ線源から前記γ線を照射する方向に伸びる仮想の第1直線と、前記検出器へ前記2回散乱γ線を検出する方向に伸びる仮想の第2直線とは、前記検査対象物の前記γ線の照射側及び前記2回散乱γ線の検出側と同じ側で交差するようにし、この状態で、前記検査対象物からの散乱γ線に基づく2回散乱γ線のピークに基づき、前記検査対象物の減肉の有無を検出することを特徴とする非破壊検査装置にある。

0051

本態様によれば、検査対象物の手前側に、γ線の照射源と検出器を比較的コンパクトに配置できる。

0052

本発明の第14の態様は、第9〜13の何れかの態様に記載する非破壊検査装置において、前記検査対象物の前記減肉の有無を検出している部位とは異なる部位におけるコンプトン散乱に基づく1回散乱γ線のエネルギーに対する信号強度を表す散乱γ線エネルギー分布特性を検出し、前記異なる部位の減肉の有無を検出するように前記検出器を構成したことを特徴とする非破壊検査装置にある。

0053

本態様によれば、1回散乱γ線のエネルギーを検出することにより、2回散乱γ線のエネルギーの検出に基づく箇所とは異なる領域の減肉を一回の検出で検出することができる。

0054

本発明の第15の態様は、第14の態様に記載する非破壊検査装置において、前記検査対象物が前記γ線の照射方向に伸びる直線に前記γ線の照射側で交差する第1の壁部材および当該第1の壁部材の前記γ線の照射側とは反対側で前記直線に交差する第2の壁部材を有する場合において、前記第1の壁部材および前記第2の壁部材の何れか一方の減肉の有無を前記2回散乱γ線のエネルギーに対する信号強度を表す散乱γ線エネルギー分布特性で検出し、他方の減肉の有無を前記コンプトン散乱に基づく1回散乱γ線のエネルギーに対する信号強度を表す散乱γ線エネルギー分布特性で検出するように前記検出器を構成したことを特徴とする非破壊検査装置にある。

0055

かかる態様では、第1の壁部材の減肉状態と、第2の壁部材の減肉状態とを検出することができる。

0056

本発明の第16の態様は、第15の態様に記載する非破壊検査装置において、散乱γ線信号を検出する際に、前記γ線が照射された時点を基準として前記散乱γ線信号の時間軸に沿う成分を考慮し、前記第2の壁部材の減肉の有無を検出する際には前記第1の壁部材からの散乱γ線に基づく部分が除去されるとともに、前記第2の壁部材からの散乱γ線に基づく部分が選択されるように前記散乱γ線信号の時間軸に沿う成分の一部を除去し、前記第1の壁部材の減肉の有無を検出する際には前記第2の壁部材からの散乱γ線に基づく部分が除去されるとともに、前記第1の壁部材からの散乱γ線に基づく部分が選択されるように前記散乱γ線信号の時間軸に沿う成分の一部を除去し、減肉の有無を検出するように前記検出器を構成したことを特徴とする非破壊検査装置にある。

0057

かかる態様では、1回散乱γ線のエネルギーと2回散乱γ線のエネルギーとを容易に区別することができ、第1の壁部材の減肉状態と、第2の壁部材の減肉状態とを比較的容易に検出することができる。

発明の効果

0058

本発明によれば、配管の減肉等、検査対象物の状態によってコンプトン散乱の2回散乱ピークに基づき、検出対象物における減肉の有無を検出しているので、かかる検出を含む所定の非破壊検査を簡便なものとすることができる。また、検査対象物に衝突して散乱する後方散乱γ線による2回散乱ピークが観察できる散乱γ線の散乱γ線エネルギー分布特性により、検査対象物の減肉等、検査対象物の状態を検出するようにしたので、γ線源と検出器とを検査対象物に対して同じ側に配設することができ、γ線源と検出器との配設条件の緩和を図ることができるばかりでなく、簡便に所望の非破壊検査を行うことができる。

図面の簡単な説明

0059

コンプトン後方散乱の2回散乱を利用する本発明の原理を模式的に示す図で、(a)は2回散乱を概念的に示す説明図、(b)はこの場合の機器配置を示す説明図、(c)は2回散乱ピークが観察される散乱γ線エネルギー分布特性を示す特性図である。
本発明の原理を模式的に示す図で、(a)が1回散乱の場合、(b)が2回散乱の場合である。
本発明の原理を模式的に示す図で、(a)が交点に対象物が無い場合、(b)が有る場合である。
コンプトン後方散乱における2回散乱の場合において、鉄サンプルに照射されたγ線の経路を示す説明図であり、(a)はサンプルが健全である場合、(b)はサンプルに減肉が有る場合である。
本発明の第1の実施の形態に係る非破壊検査装置を示すブロック図である。
本発明の非破壊検査装置のバリエーションを説明する図である。
第2の実施の形態非破壊検査装置を示すブロック図である。
本発明の第2の実施の形態に係る非破壊検査装置を説明する図である。
実施例の結果を示すグラフである。
従来周知のコンプトン後方散乱(1回散乱)の原理を模式的に示す説明図である。
コンプトン後方散乱を利用して配管の減肉を非破壊検査する従来技術の原理を模式的に示す説明図である。

0060

以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。なお、各図において、同一部分には、同一番号を付し、重複する説明は省略する。

0061

<第1の実施の形態>
図5は本発明の第1の実施の形態に係る非破壊検査装置を示すブロック図である。同図に示すように、本形態に係る非破壊検査装置は、本形態における検査対象物である検査対象物31にγ線を照射するγ線源1と、検査対象物31に照射されたγ線に基づき生成される2回コンプトン後方散乱γ線を入射して所定の処理を行う検出器2とを有する。γ線源1と、2回コンプトン後方散乱γ線を入射する検出器2とは、検査対象物31に対し同じ側(図では左側)に配設されている。

0062

ここで、γ線源1は、図示していないが、鉛コリメーター等を設置することで指向性を高め、照射γ線進行軸が定まるようにされた状態で、検査対象物31に照射される。γ線の照射により、検査対象物31においてはコンプトン後方散乱による散乱γ線が生成される。検出器2は、散乱γ線を検出するように、検査対象物31に対しγ線源1と同じ側に配設してある。

0063

検出器2にも鉛コリメーター等を設置することにより、検出する散乱γ線の軸が定まるようにされている。本形態においては、図5に示すように照射γ線の進行軸と散乱γ線の検出軸は、検査対象物31に対してγ線源1および検出器2とは反対側の交点I1で交差している。

0064

また、本形態においては、γ線源1から検査対象物31に向かう直線が検査対象物31の表面に入射する入射角α1と、コンプトン後方散乱γ線の散乱角α2とが同一となるように、γ線源1に対する検出器2の相対位置が選定されている。ここで、入射角α1と散乱角α2との基準となる線上には鉛ブロック11が配設してある。鉛ブロック11はγ線源1側と検出器2側とを分離するためのものである。このように分離することでγ線源1側で検査対象物31の表面等で反射されたγ線を遮蔽して検出器2に入射されるのを防止している。なお、このように鉛ブロック11を配設することは必須ではない。また、γ線源1と検出器2とが上述の如き位置関係(α1=α2)とすることも必須ではない。さらに、理想的には、γ線源1はペンシルビームと呼ばれる極めて細いγ線を照射し、検出器2は入射面が可及的に点に近い面を有するものとする。

0065

本形態におけるγ線源1は、例えば放射性同位体イリジウム線源を好適に適用し得る。検出器2は、コンプトン後方散乱γ線を入射する入射部2A、コンプトン後方散乱γ線を表すコンプトン後方散乱γ線信号を生成する信号処理部2B、コンプトン後方散乱γ線信号を処理して検査対象物31の減肉の状態を検出する演算処理部2C、減肉の状態を検出するための検査対象物31の基準データを記憶している記憶部2Dおよび演算処理部2Cで検出した検出結果を表示する表示部2Eを有している。さらに詳言すると、信号処理部2Bでは、コンプトン後方散乱γ線を処理して散乱γ線エネルギーに対するコンプトン後方散乱γ線信号の信号強度を表す散乱γ線エネルギー分布特性を生成する。記憶部2Dには、健全な(減肉を生起していない)検査対象物31の散乱γ線エネルギー分布特性(以下、基準散乱γ線エネルギー分布特性という)が予め記憶してある。

0066

演算処理部2Cでは、入射部2Aを介してリアルタイムで入射されたγ線の実測データに基づき信号処理部2Bで得られた散乱γ線エネルギー分布特性と記憶部2Dに記憶している基準散乱γ線エネルギー分布特性とを比較して検査対象物31における減肉の有無および場合によってはその程度(減肉量)を検出する。ここで、検査対象物31に減肉部(図4(b)参照)を生起している場合、健全な場合と比較して、2回散乱γ線γ22の信号強度は大きくなり、その増加割合は減肉の大きさに依存する。そこで、基準散乱γ線エネルギー分布特性と実測データから得られた散乱γ線エネルギー分布特性とを比較すれば、検査対象物31における減肉の有無および場合によってはその程度(減肉量)を検出することができる。

0067

演算処理部2Cにおける所定のデータ処理の結果の減肉の有無およびその程度等の情報は表示部2Eに表示される。

0068

なお、上述した実施形態では、図6(a)に示すように、γ線の照射方向とγ線の検出方向との交点が検出対象物の後方に位置するようにγ線源1と検出器2とを配置したが、図6(b)に示すように、γ線の照射方向とγ線の検出方向との交点が検出対象物の手前側に位置するようにγ線源1と検出器2とを配置するようにすることができる。これによれば、装置全体をコンパクトに配置できるというメリットがある。

0069

<第2の実施の形態>
検査対象物31の一例である配管32(図7参照)には、これを横断する一つの直線上に2箇所の肉厚部(壁部)が存在する。すなわち、同一直線上におけるγ線源1側(以下、これを「手前側」と称する。)の肉厚部とその反対側(以下、これを「奥側」と称する。)の肉厚部である。上記第1の実施の形態は、検査対象物である配管32の手前側の肉厚部における減肉の有無等を検出するものである。これに対し、減肉は配管32の奥側の肉厚部にも発生する場合がある。本実施形態では、2回散乱γ線のγ線エネルギー分布特性により手前側の壁部の減肉を測定し、1回散乱γ線のγ線エネルギー分布特性により奥側の壁部の減肉を測定する例を説明する。
なお、γ線の照射方向とγ線の検出方向との交点I1は、領域IIの奥側の肉厚部の手前側の表面に位置するようにする。

0070

図7は本発明の第2の実施の形態に係る非破壊検査装置を示すブロック図である。同図に示すように、本形態に係る非破壊検査装置の検出器12は、信号処理部2Bと演算処理部2Cとの間に領域選択部2Fを介在させてある。領域選択部2Fは、信号処理部2B、入射部2Aを介して入射されたコンプトン後方散乱γ線を表す理論的なデータであるコンプトン後方散乱γ線信号から領域Iまたは領域IIの情報のみを選択する。すなわち、図8(a)に示すように、γ線源1から検出器2に至る光路長の違いに起因して時間軸上の位置が特定されるコンプトン後方散乱γ線信号Sγを、領域Iに相当する2回散乱γ線に基づくものと、領域IIに相当する1回散乱γ線に基づくものとに分離して検出する。

0071

かかる本形態によれば、図8(b)に示すように、γ線源1から配管32の領域Iで2回散乱されて検出器2に入射されたコンプトン後方散乱γ線に基づく信号成分は領域選択部2Fで分離され、また、領域IIで1回散乱されて検出器2に入射された信号成分が分離され、それぞれが分離されて演算処理部2Cに供給される。

0072

このように、本実施形態によれば、γ線源1から照射されたγ線が、配管32の手前側の肉厚部のみを通り、検出器2に入射されるまでの時間と、配管32の奥側の肉厚部も通り、検出器2に入射されるまでの時間とを比較した場合、前者の時間がより短いことを利用して両者を分離している。すなわち、図8(a)に示すように理論的なデータに基づき、信号処理部2Bで得られる後方散乱γ線信号の信号強度の時間特性において、手前側の肉厚部に相当する領域である領域Iと、奥側の肉厚部に相当する領域である領域IIとのそれぞれに起因する散乱γ線のエネルギー分布を分離することができる。これにより、領域IIの1回散乱に基づく後方散乱γ線信号の散乱γ線エネルギー分布特性の変化により奥側の減肉部を検出することができ、また、手前側の2回散乱の情報により、手前側の減肉部を検出することができる。すなわち、領域IIの減肉の有無は、減肉が生じたことにより、領域IIからの1回散乱に基づく後方散乱γ線信号が減少することにより検出することができる。また、領域Iの減肉の観察は実施形態1と同様である。

0073

<その他の実施の形態>
上述した第2の実施形態では、領域IIの減肉の観察を1回コンプトン散乱γ線のエネルギー分布の変化に求めるものとしたが、領域IIの減肉の観察も2回散乱ピークを用いて行うこともできる。すなわち、領域IIの奥側の肉厚部の奥側表面又は肉厚部を突き抜けたさらに奥側に、γ線の照射方向とγ線の検出方向との交点が位置するようにし、奥側の肉厚部において、1回目のコンプトン散乱を生じてから2回目のコンプトン散乱を生じるまでの経路が奥側の肉厚部を通過するようにすれば、1回目のコンプトン散乱を生じてから2回目のコンプトン散乱を生じるまでの経路中に減肉が存在するか否かにより、1回散乱γ線γ21が検査対象物の構成物質そのものを通過するか、減肉により形成された空間を通過するかの違いが生じ、領域Iと同様に減肉の有無を検出することができる。なお、この場合においても、領域Iのピークと、領域IIのピークとは時間特性を考慮して分離することができる。

0074

図9には、第1の実施形態の構成において、模擬的に減肉を形成したサンプルについて2回コンプトン散乱γ線のエネルギー分布を測定したシミュレーション結果を示す。なお、ここでは検査対象物として厚さ10mmの鉄サンプルを用い、サンプルの奥10mm先にγ線の照射方向とγ線の検出方向との交点が位置するようにし、γ線の照射方向とγ線の検出方向との成す角は120°(入射角が60°)とした。

0075

図9(a)は、減肉が生じていないサンプルであり、図9(b)は、奥側に5mmの深さで長さ20mmの減肉が生じた場合、図9(c)は、奥側に5mmの深さで長さ35mmの減肉が生じた場合を示す。

実施例

0076

このように、減肉の大きさに応じて2回コンプトン散乱γ線のエネルギー分布が変化し、これを定量化することにより、減肉の大きさ等を検出することができることがわかった。

0077

本発明は配管等の検査対象物が錯綜して配設されている発電所等の保守、点検等に伴う非破壊検査を実施する産業分野で有効に利用することができる。

0078

I、II 領域
1γ線源
2検出器
3、31、32配管(検査対象物)

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