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技術 尿臭抑制剤

出願人 花王株式会社
発明者 吉川敬一齋藤菜穂子難波綾森一郎
出願日 2016年11月9日 (4年8ヶ月経過) 出願番号 2016-218693
公開日 2017年6月8日 (4年1ヶ月経過) 公開番号 2017-101224
状態 特許登録済
技術分野 脂肪類、香料 空気の消毒,殺菌または脱臭
主要キーワード 清掃員 介護従事者 トイレ用マット 四分位点 匂い分子 例示的実施 臭気中和剤 ヘアカラーリング
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (3)

課題

p−クレゾール臭または尿臭を抑制する物質の提供。

解決手段

嗅覚受容体OR9Q2のアンタゴニストを有効成分とする、p−クレゾール臭または尿臭の抑制剤

概要

背景

近年、下水道整備の向上により、トイレにおける便と尿が長期間接触することにより発生する強烈なアンモニア臭の問題は減少傾向にある。その反面、近年では、臭いの強度は弱いものの、トイレに飛び散った尿や、使用済みおむつなどの尿の吸収に関わる吸収性物品から発せられる尿臭が問題にされている。

尿の吸収に関わる吸収性物品としては、乳幼児被介護者用おむつだけでなく、軽失禁用おむつ尿とりパッドなどの軽失禁用品、さらには女性用の生理用品など、結果的に尿を吸収する可能性がある製品もこれに含まれる。特に近年では、乳幼児や被介護者用おむつだけでなく、高齢者経産婦病中もしくは病後者などの軽度な失禁ケアするための軽失禁用おむつもしくはパッド等の軽失禁用品の需要が高まっている。これら軽失禁用品は、日常生活の中で使用されるため、使用後だけでなく、装着中における尿臭の防止も重要な課題である。

特許文献1には、飛び散って乾燥した尿や、使用後放置したおむつから発する尿臭に対する最も寄与の高い成分がp−クレゾールであることが記載されている。また特許文献1には、p−クレゾールと、それ以外の炭素数6〜10のフェノール化合物、例えば、フェノールジメチルフェノールメトキシフェノールメトキシビニルフェノールジヒドロキシベンゼンとの組成物により、当該尿臭を再現できることが記載されている。また、菌が産生するβ−グルクロニダーゼが尿に作用すると、フェノール、p−クレゾール、4−ビニル−2−メトキシ−フェノール、4−ビニルフェノール、2−メトキシ−1,3−ベンゼンジオール、1,4−ベンゼンジオール、1,3−ベンゼンジオール、インドール等の成分が尿中に増加し、尿臭強度を顕著に増加させることが知られている(特許文献2)。これらの成分は、トイレに飛び散った尿や使用済みおむつなどの尿の吸収に関わる吸収性物品から発せられるアンモニア臭とは異なる尿臭に対して寄与の高い成分であると考えられている。

Acetyl cedrene、Iso−Longifolanone、Nerolidol、Bacdanol、およびAmber Core(登録商標)は、従来香料物質として知られている。さらにAcetyl cedrene、NerolidolおよびAmber Core(登録商標)は、スカトールを認識する嗅覚受容体アンタゴニストであり、スカトール臭を抑える物質であることが報告されている(特許文献3)。特許文献4には、頭髪化粧料基剤臭アミン臭、アンモニア臭、硫黄臭などをマスキングするための組成物の一成分としてAcetyl cedrene、NerolidolおよびAmber Core(登録商標)が開示されている。さらに、Acetyl cedreneは、トリメチルアミン等の塩基性悪臭消臭剤の一成分、および尿生殖路に存在するアミンによる悪臭を抑制する香料組成物の一成分として開示されている(特許文献5、6)。特許文献7には、尿からのアンモニア生成を抑制する香料組成物の一成分としてAmber Core(登録商標)を使用することができることが開示されている。特許文献8には、香料物質である一方で嗅細胞の活動を抑える効果も有する物質が開示されている。特許文献9には、ヘアカラーリング剤に添加してヘアカラーリング時に発生するアンモニア臭気を抑える成分の1つとして、Iso−Longifolanoneが開示されている。特許文献10には、エステル類を含有する臭気中和剤に配合することができる芳香成分の一例としてNerolidolが開示されている。しかし、現在のところ、これらの香料物質がp−クレゾールおよびこれに起因する尿臭に対して抑制効果をもつという報告はない。

最近、標的とする悪臭に対する嗅覚受容体の活性を特異的に阻害することによって、該悪臭を抑制する方法が提供された(例えば、特許文献3)。こうしたアンタゴニスト物質による受容体活性阻害に基づくにおいの抑制または変調メカニズムは、嗅覚受容体アンタゴニズムと呼ばれる。嗅覚受容体アンタゴニズムによるにおいの抑制または変調は、香水芳香剤等の別の強いにおいを付加することによる消臭方法と異なり、標的とする悪臭の認識を特異的に失くしてしまうことができ、また芳香剤の強いにおいによる不快感が生じることもないことから、好ましい消臭手段である。

概要

p−クレゾール臭または尿臭を抑制する物質の提供。嗅覚受容体OR9Q2のアンタゴニストを有効成分とする、p−クレゾール臭または尿臭の抑制剤。なし

目的

これら軽失禁用品は、日常生活の中で使用されるため、使用後だけでなく、装着中における尿臭の防止も重要な課題である

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

下記化合物からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、p−クレゾール臭抑制剤メチルドリルケトン;2,2,7,7−テトラメチルトリシクロ[6.2.1.01,6]ウンデカン−5−オン;3,7,11−トリメチルドデカ−1,6,10−トリエン−3−オール;(E)−2−エチル−4−(2,2,3−トリメチル−1−シクロペンタ−3−エニルブト−2−エン−1−オール;および1−(2−tert−ブチルシクロヘキシルオキシブタン−2−オール。

請求項2

下記化合物からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、尿臭抑制剤:メチルセドリルケトン;2,2,7,7−テトラメチルトリシクロ[6.2.1.01,6]ウンデカン−5−オン;3,7,11−トリメチルドデカ−1,6,10−トリエン−3−オール;(E)−2−エチル−4−(2,2,3−トリメチル−1−シクロペンタ−3−エニル)ブト−2−エン−1−オール;および1−(2−tert−ブチルシクロヘキシル)オキシブタン−2−オール。

請求項3

前記尿臭がp−クレゾールに起因する尿臭である、請求項2記載の尿臭抑制剤。

請求項4

下記化合物からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、OR9Q2またはそれと同等な機能を有する嗅覚受容体ポリペプチドに対するアンタゴニスト:メチルセドリルケトン;2,2,7,7−テトラメチルトリシクロ[6.2.1.01,6]ウンデカン−5−オン;3,7,11−トリメチルドデカ−1,6,10−トリエン−3−オール;(E)−2−エチル−4−(2,2,3−トリメチル−1−シクロペンタ−3−エニル)ブト−2−エン−1−オール;および1−(2−tert−ブチルシクロヘキシル)オキシブタン−2−オール。

請求項5

前記OR9Q2が、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなる嗅覚受容体ポリペプチドであり、前記OR9Q2と同等な機能を有する嗅覚受容体ポリペプチドが、配列番号2で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつp−クレゾール臭または尿臭に対する応答性を有する嗅覚受容体ポリペプチドである、請求項4記載のアンタゴニスト。

請求項6

前記OR9Q2と同等な機能を有する嗅覚受容体ポリペプチドが、配列番号2で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつp−クレゾール臭または尿臭に対する応答性を有する嗅覚受容体ポリペプチドである、請求項5記載のアンタゴニスト。

技術分野

0001

本発明は、尿臭抑制剤に関する。

背景技術

0002

近年、下水道整備の向上により、トイレにおける便と尿が長期間接触することにより発生する強烈なアンモニア臭の問題は減少傾向にある。その反面、近年では、臭いの強度は弱いものの、トイレに飛び散った尿や、使用済みおむつなどの尿の吸収に関わる吸収性物品から発せられる尿臭が問題にされている。

0003

尿の吸収に関わる吸収性物品としては、乳幼児被介護者用おむつだけでなく、軽失禁用おむつ尿とりパッドなどの軽失禁用品、さらには女性用の生理用品など、結果的に尿を吸収する可能性がある製品もこれに含まれる。特に近年では、乳幼児や被介護者用おむつだけでなく、高齢者経産婦病中もしくは病後者などの軽度な失禁ケアするための軽失禁用おむつもしくはパッド等の軽失禁用品の需要が高まっている。これら軽失禁用品は、日常生活の中で使用されるため、使用後だけでなく、装着中における尿臭の防止も重要な課題である。

0004

特許文献1には、飛び散って乾燥した尿や、使用後放置したおむつから発する尿臭に対する最も寄与の高い成分がp−クレゾールであることが記載されている。また特許文献1には、p−クレゾールと、それ以外の炭素数6〜10のフェノール化合物、例えば、フェノールジメチルフェノールメトキシフェノールメトキシビニルフェノールジヒドロキシベンゼンとの組成物により、当該尿臭を再現できることが記載されている。また、菌が産生するβ−グルクロニダーゼが尿に作用すると、フェノール、p−クレゾール、4−ビニル−2−メトキシ−フェノール、4−ビニルフェノール、2−メトキシ−1,3−ベンゼンジオール、1,4−ベンゼンジオール、1,3−ベンゼンジオール、インドール等の成分が尿中に増加し、尿臭強度を顕著に増加させることが知られている(特許文献2)。これらの成分は、トイレに飛び散った尿や使用済みおむつなどの尿の吸収に関わる吸収性物品から発せられるアンモニア臭とは異なる尿臭に対して寄与の高い成分であると考えられている。

0005

Acetyl cedrene、Iso−Longifolanone、Nerolidol、Bacdanol、およびAmber Core(登録商標)は、従来香料物質として知られている。さらにAcetyl cedrene、NerolidolおよびAmber Core(登録商標)は、スカトールを認識する嗅覚受容体アンタゴニストであり、スカトール臭を抑える物質であることが報告されている(特許文献3)。特許文献4には、頭髪化粧料基剤臭アミン臭、アンモニア臭、硫黄臭などをマスキングするための組成物の一成分としてAcetyl cedrene、NerolidolおよびAmber Core(登録商標)が開示されている。さらに、Acetyl cedreneは、トリメチルアミン等の塩基性悪臭消臭剤の一成分、および尿生殖路に存在するアミンによる悪臭を抑制する香料組成物の一成分として開示されている(特許文献5、6)。特許文献7には、尿からのアンモニア生成を抑制する香料組成物の一成分としてAmber Core(登録商標)を使用することができることが開示されている。特許文献8には、香料物質である一方で嗅細胞の活動を抑える効果も有する物質が開示されている。特許文献9には、ヘアカラーリング剤に添加してヘアカラーリング時に発生するアンモニア臭気を抑える成分の1つとして、Iso−Longifolanoneが開示されている。特許文献10には、エステル類を含有する臭気中和剤に配合することができる芳香成分の一例としてNerolidolが開示されている。しかし、現在のところ、これらの香料物質がp−クレゾールおよびこれに起因する尿臭に対して抑制効果をもつという報告はない。

0006

最近、標的とする悪臭に対する嗅覚受容体の活性を特異的に阻害することによって、該悪臭を抑制する方法が提供された(例えば、特許文献3)。こうしたアンタゴニスト物質による受容体活性阻害に基づくにおいの抑制または変調メカニズムは、嗅覚受容体アンタゴニズムと呼ばれる。嗅覚受容体アンタゴニズムによるにおいの抑制または変調は、香水芳香剤等の別の強いにおいを付加することによる消臭方法と異なり、標的とする悪臭の認識を特異的に失くしてしまうことができ、また芳香剤の強いにおいによる不快感が生じることもないことから、好ましい消臭手段である。

先行技術

0007

特開2009−132770号公報
国際公開公報第2009/037861号
特開2012−250958号公報
特開2003−137758号公報
特許第5695288号公報
国際公開公報第2004/098666号
米国公開特許公報第2015/0079017号
国際公開公報第2009/125604号
特開2004−067598号公報
特許第4520682号

発明が解決しようとする課題

0008

本発明は、尿臭、またはその原因物質による臭いの抑制剤を提供することに関する。

課題を解決するための手段

0009

本発明者は、嗅覚受容体OR9Q2発現細胞が、尿臭原因物質であるp−クレゾールに応答すること、およびOR9Q2発現細胞の応答を抑制する物質が、嗅覚受容体アンタゴニズムにより、p−クレゾールによる臭いおよびこれに起因する尿臭を抑制することができることを見出した。

0010

したがって、本発明は、下記化合物からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、p−クレゾール臭抑制剤を提供する。また本発明は、下記化合物からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、尿臭抑制剤を提供する。
メチルドリルケトン
2,2,7,7−テトラメチルトリシクロ[6.2.1.01,6]ウンデカン−5−オン
3,7,11−トリメチルドデカ−1,6,10−トリエン−3−オール
(E)−2−エチル−4−(2,2,3−トリメチル−1−シクロペンタ−3−エニルブト−2−エン−1−オール;および
1−(2−tert−ブチルシクロヘキシルオキシブタン−2−オール。

発明の効果

0011

本発明により提供されるp−クレゾール臭または尿臭の抑制剤は、嗅覚受容体アンタゴニズムにより、p−クレゾール臭およびこれに起因する尿臭を抑制することができる。したがって、当該抑制剤によれば、従来の消臭剤または芳香剤を用いる消臭方法において生じていた芳香剤の強いにおいに基づく不快感等の問題を生じることがなく、p−クレゾールまたは尿による臭いを消臭することができる。本発明によれば、例えばトイレに飛び散った尿、使用済みおむつなどの吸収性物品などから発せられる、アンモニア臭とは異なる尿の臭いを抑制することができる。

図面の簡単な説明

0012

種々の濃度のp−クレゾールに対する嗅覚受容体発現細胞の応答。n=3〜4、エラーバー=±SE。
試験物質による嗅覚受容体OR9Q2発現細胞のp−クレゾール応答の抑制効果。横軸に試験物質の濃度を、縦軸にp−クレゾール(100μM)単独刺激への応答強度を100%としたときの、p−クレゾールと試験物質とを併用したときの受容体発現細胞の応答(%)を表す。n=3、エラーバー=±SE。
A:試験物質のp−クレゾール臭抑制効果の官能評価(n=9)。B:試験物質の尿臭抑制効果の官能評価(n=10)。データの分布を箱ひげ図にて示す。箱の上下に出たひげは最大値最小値をそれぞれ表す。箱の三つの横線は第1・3四分位点および中央値を表す。

0013

本明細書において、「嗅覚受容体アンタゴニズムによる臭いの抑制」とは、目的の臭い分子と他の分子をともに適用することにより、当該他の分子によって目的の臭い分子に対する受容体活性を阻害し、結果的に個体に認識される臭いを抑制する手段である。嗅覚受容体アンタゴニズムによる臭いの抑制は、同様に他の分子を用いる手段であっても、芳香剤による消臭のように、目的の臭いを香料香気によって隠蔽する手段とは区別される。嗅覚受容体アンタゴニズムによる臭いの抑制の一例は、アンタゴニスト等の嗅覚受容体の活性を阻害する物質を使用するケースである。特定の臭いをもたらす臭い分子の受容体にその活性を阻害する物質を適用すれば、当該受容体の当該臭い分子に対する活性が抑制されるため、最終的に個体に知覚される臭いを抑制することができる。

0014

本明細書において、「尿の吸収に関わる吸収性物品」(または単に「吸収性物品」)とは、乳幼児や被介護者用おむつ、軽失禁用おむつ、尿とりパッド等の軽失禁用品、女性用の生理用品など、ヒトや動物に装着されて、結果的に尿を吸収する可能性がある製品をいう。

0015

本発明において、「p−クレゾールによる臭い(またはクレゾール臭)」とは、p−クレゾールによりもたらされる臭いであり得る。本発明における「p−クレゾールによる臭い」は、代表的には、放尿もしくは採尿後時間が経った尿または飛び散って乾燥した尿から発せられる臭い、あるいは使用後放置したおむつなど、装着中もしくは使用後の尿が付着した吸収性物品から発せられる尿の臭いとして表現され得る。それらの尿中には、その中に含まれる菌が持つ酵素βグルクロニダーゼの作用によって生成されたp−クレゾールが含まれている。βグルクロニダーゼは、各種のアルコール類フェノール類アミン類等がグルクロン酸抱合された化合物(グルクロニド)を加水分解する酵素であり、尿中に含まれる菌に含有されている。

0016

本明細書において、「尿臭」とは、好適には、放尿または採尿後時間が経った尿から発せられる臭いである。例えば、本明細書における「尿臭」は、飛び散って乾燥した尿の臭い、または使用後放置したおむつなど、装着中もしくは使用後の尿が付着した吸収性物品から発する尿の臭いであり得る。また好適には、本明細書における「尿臭」は、βグルクロニダーゼが作用した尿またはその抽出物の臭い(いわゆる、腐敗尿臭)である。本明細書における、「βグルクロニダーゼが作用した尿」には、放尿もしくは採尿された尿に積極的にβグルクロニダーゼを添加し、作用させたものも含まれるが、一方、βグルクロニダーゼは放尿もしくは採尿された尿中に含まれており、当該尿に作用するため、放尿もしくは採尿された後時間が経った尿もまた、βグルクロニダーゼが作用した尿に含まれる。βグルクロニダーゼが作用した尿中には、その作用によって生成されたp−クレゾールが含まれている。したがってより好適には、本明細書における「尿臭」は、βグルクロニダーゼが作用した、p−クレゾールを含む尿の臭い、またはp−クレゾールに起因する尿臭であり得る。

0017

本明細書において、「嗅覚受容体ポリペプチド」とは、嗅覚受容体またはそれと同等の機能を有するポリペプチドをいい、嗅覚受容体と同等の機能を有するポリペプチドとは、嗅覚受容体と同様に、細胞膜上に発現することができ、匂い分子の結合によって活性化し、かつ活性化されると、細胞内のGαsと共役してアデニル酸シクラーゼを活性化することで細胞内cAMP量を増加させる機能を有するポリペプチドをいう(Nat.Neurosci.,2004,5:263−278)。

0018

本明細書において、ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列同一性は、リップマンパーソン法(Lipman−Pearson法;Science,1985,227:1435−41)によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx−Win(Ver.5.1.1;ソフトウェア開発)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出される。

0019

本明細書において、ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列に関する「少なくとも80%の同一性」とは、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上、なお好ましくは99%以上の同一性をいう。

0020

嗅覚受容体OR9Q2は、ヒト嗅細胞で発現している嗅覚受容体であり、GenBankGI:284413710として登録されている。OR9Q2は、配列番号1で示されるヌクレオチド配列を有する遺伝子にコードされる、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である。本発明者らは、嗅覚受容体OR9Q2が、尿臭原因物質であるp−クレゾールに対して濃度依存的な活性化を示す(図1)、p−クレゾールに対する受容体であることを見出した。

0021

したがって、嗅覚受容体OR9Q2発現細胞の応答を抑制するOR9Q2アンタゴニストを、p−クレゾール臭または尿臭の抑制のために使用することができる。OR9Q2アンタゴニストは、嗅覚受容体アンタゴニズムによりp−クレゾールに対するOR9Q2の活性を抑制することで、個体のp−クレゾール臭または尿臭の認識に変化を生じさせ、結果として、p−クレゾール臭または尿臭を抑制することができる。

0022

したがって、一態様において、本発明は、OR9Q2アンタゴニストを有効成分とする、p−クレゾール臭または尿臭の抑制剤を提供する。本発明で使用されるOR9Q2アンタゴニストとしては、下記が挙げられる:
メチルセドリルケトン([1−[(1S,2R,5R,7S)−2,6,6,8−tetramethyltricyclo[5.3.1.01,5]undec−8−en−9−yl]ethanone;Acetyl cedrene);
2,2,7,7−テトラメチルトリシクロ[6.2.1.01,6]ウンデカン−5−オン(2,2,7,7−tetramethyltricyclo[6.2.1.01,6]undecan−5−one;Iso−Longifolanone);
3,7,11−トリメチルドデカ−1,6,10−トリエン−3−オール(3,7,11−trimethyldodeca−1,6,10−trien−3−ol;Nerolidol);
(E)−2−エチル−4−(2,2,3−トリメチル−1−シクロペンタ−3−エニル)ブト−2−エン−1−オール((E)−2−ethyl−4−(2,2,3−trimethyl−1−cyclopent−3−enyl)but−2−en−1−ol;Bacdanol);および
1−(2−tert−ブチルシクロヘキシル)オキシブタン−2−オール(1−(2−tert−butylcyclohexyl)oxybutan−2−ol;Amber core(登録商標))。

0023

より詳細には、上記の化合物は、OR9Q2またはそれと同等な機能を有する嗅覚受容体ポリペプチドに対するアンタゴニストである。本明細書において「OR9Q2と同等な機能を有する嗅覚受容体ポリペプチド」とは、配列番号2で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつp−クレゾール臭または尿臭に対する応答性を有する嗅覚受容体ポリペプチドをいう。OR9Q2と同等な機能を有する嗅覚受容体ポリペプチドの例としては、配列番号3で示されるアミノ酸配列からなるマウスの嗅覚受容体Olfr1497、および配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるラットの嗅覚受容体Olfr377、およびそれらと95%以上配列同一なポリペプチドが挙げられる。Olfr1497は、OR9Q2と相同なマウスの嗅覚受容体であって、配列番号2で示されるアミノ酸配列と86%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつp−クレゾール臭に対する応答性を有する。Olfr377は、OR9Q2と相同なラットの嗅覚受容体であって、配列番号2で示されるアミノ酸配列と84%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつp−クレゾール臭に対する応答性を有する。

0024

上記に挙げたOR9Q2アンタゴニスト化合物は、これまで香料素材として知られていたが、OR9Q2に対するアンタゴニスト作用を有することや、p−クレゾール臭または尿臭を選択的に抑制する機能があることは知られていなかった。なおこれらのOR9Q2アンタゴニスト化合物は、p−クレゾール臭または尿臭を抑制する機能を有する一方で、香料素材として自身の香りを呈することができるので、p−クレゾール臭または尿臭の抑制剤としてと同時に香料としても使用することができる。

0025

上記に挙げたOR9Q2アンタゴニスト化合物は、いずれも市販のものを購入することができる(「合成香料化学商品知識」増補改訂版、印元一著、化学工業日報社、2005年3月発行を参照)。例えば、上記OR9Q2アンタゴニスト化合物は、Firmenich S.A.、Givaudan S.A.、International Flavors & Fragrances Inc.、SIGMA−ALDRICH Corporation、高砂香料工業株式会社、花王株式会社などから入手することが可能である。あるいは、化学合成によって、該市販品と同一物質またはそれを含む組成物を製造することが可能である。

0026

本発明のp−クレゾール臭または尿臭の抑制剤は、上記に挙げたOR9Q2アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも1つの化合物を有効成分として含有する。例えば、本発明のp−クレゾール臭または尿臭の抑制剤の有効成分は、上記に挙げたOR9Q2アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも1つ、例えばいずれか単独もしくはいずれか2つ以上の組み合わせであり得る。あるいは、本発明のp−クレゾール臭または尿臭の抑制剤は、上記に挙げたOR9Q2アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも1つから本質的に構成され得る。

0027

本発明の別の一態様において、上記に挙げたOR9Q2アンタゴニストは、p−クレゾール臭または尿臭を抑制するための有効成分として使用され得る。

0028

一実施形態において、上記に挙げたOR9Q2アンタゴニストは、p−クレゾール臭または尿臭を抑制するための化合物または組成物に、p−クレゾール臭または尿臭を抑制するための有効成分として含有され得る。あるいは、上記に挙げたOR9Q2アンタゴニストは、p−クレゾール臭または尿臭の抑制剤の製造のため、またはp−クレゾール臭または尿臭を抑制するための化合物もしくは組成物の製造のために使用することができる。p−クレゾール臭または尿臭を抑制するための化合物もしくは組成物の例としては、トイレ用の消臭剤または芳香剤、トイレ用洗浄剤下着もしくはおむつ用の洗剤もしくは柔軟剤などが挙げられる。

0029

一実施形態において、上記に挙げたOR9Q2アンタゴニストは、p−クレゾール臭または尿臭の抑制が所望されるあらゆる化合物もしくは組成物に対して、あるいはp−クレゾール臭または尿臭の抑制が所望されるあらゆる環境下において、p−クレゾール臭または尿臭の抑制のための有効成分として使用され得る。あるいは、当該OR9Q2アンタゴニストは、p−クレゾール臭または尿臭の抑制のための有効成分として、p−クレゾール臭または尿臭の抑制が所望される化合物または組成物の製造のために使用することができる。p−クレゾール臭または尿臭の抑制が所望される化合物または組成物の例としては、吸収性物品(例えば、乳幼児や被介護者用おむつ、軽失禁用おむつや尿とりパッド等の軽失禁用品、女性用の生理用品)、ベッドパッドベッドマットシーツブランケット、下着、便器便座シートトイレ用マット、トイレの壁もしくは床材などが挙げられる。

0030

上記p−クレゾール臭または尿臭の抑制剤、およびp−クレゾール臭または尿臭を抑制するための化合物または組成物は、上記に挙げたOR9Q2アンタゴニストに加えて、他の消臭効果を有する成分を、その目的に応じて適宜含有していてもよい。当該消臭効果を有する他の成分としては、尿においてp−クレゾールを発生させる酵素βグルクロニダーゼを阻害する成分であるCyclohexadec−8−en−1−one(グロバノン(登録商標))などが挙げられる。さらに、上記抑制剤、およびp−クレゾール臭または尿臭を抑制するための化合物または組成物は、消臭剤や防臭剤に一般的に添加される任意の成分を含んでいてもよい。

0031

さらなる態様として、本発明は、p−クレゾール臭または尿臭と、上記に挙げたOR9Q2のアンタゴニストとを共存させる工程を含む、p−クレゾール臭または尿臭の抑制方法を提供する。

0032

上記本発明の方法の一実施形態においては、p−クレゾール臭または尿臭の存在下で、対象に、上記に挙げたOR9Q2アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも1つを適用することにより、p−クレゾール臭または尿臭と当該アンタゴニストとを共存させる。それによって、該対象のOR9Q2と当該アンタゴニストが結合して、p−クレゾールに対する該対象のOR9Q2の活性化が抑制されるので、嗅覚受容体アンタゴニズムによって、p−クレゾール臭または尿臭が抑制される。

0033

上記本発明の方法において、上記対象としては、p−クレゾール臭または尿臭の抑制を必要とする対象、好ましくは嗅覚受容体アンタゴニズムによるp−クレゾール臭または尿臭の抑制を必要とする対象が挙げられる。当該対象は、哺乳動物であれば特に限定されないが、好ましくはヒトである。より詳細には、本発明の方法における、p−クレゾール臭または尿臭の抑制を必要とする対象の例としては、吸収性物品(例えば、乳幼児や被介護者用おむつ、軽失禁用おむつや尿とりパッド等の軽失禁用品、女性用の生理用品)の使用者病人または高齢者の介護従事者清掃員ごみ収集作業従事するヒトなどが挙げられる。

0034

上記本発明の方法の一実施形態において、上記OR9Q2アンタゴニストは、p−クレゾール臭または尿臭の発生する可能性のある環境下に予め適用される。それにより、当該環境下でp−クレゾール臭または尿臭が発生した場合、対象に対して該p−クレゾール臭または尿臭存在下で該OR9Q2アンタゴニストが適用されるので、嗅覚受容体アンタゴニズムによってp−クレゾール臭または尿臭は抑制される。

0035

上記本発明の方法の一実施形態において、上記OR9Q2アンタゴニストは、p−クレゾールを含有する化合物または組成物に配合される。これによって、当該化合物または組成物に含まれるp−クレゾールに対する嗅覚受容体の活性を低下させ、対象におけるp−クレゾール臭または尿臭の認識を抑制し、結果としてp−クレゾール臭または尿臭を抑制する。また別の実施形態において、上記OR9Q2アンタゴニストは、p−クレゾールまたは尿臭を発生する可能性のある化合物または組成物に配合される。これによって、該アンタゴニストは当該化合物または組成物から発生したp−クレゾールに対する嗅覚受容体OR9Q2の活性を低下させ、対象におけるp−クレゾール臭または尿臭の認識を抑制し、結果としてp−クレゾール臭または尿臭を抑制する。p−クレゾールまたは尿臭を発生する可能性のある化合物または組成物の例としては尿、吸収性物品(例えば、乳幼児や被介護者用おむつ、軽失禁用おむつや尿とりパッド等の軽失禁用品、女性用の生理用品)、ベッドパッド、ベッドマット、シーツ、ブランケット、下着、便器、便座シート、トイレ用マット、トイレの壁もしくは床材などが挙げられる。したがって、本発明のなお別の態様として、上記OR9Q2アンタゴニストからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、吸収性物品(例えば、乳幼児や被介護者用おむつ、軽失禁用おむつや尿とりパッド等の軽失禁用品、女性用の生理用品)、ベッドパッド、ベッドマット、シーツ、ブランケット、下着、便器、便座シート、トイレ用マット、トイレの壁もしくは床材、トイレ用の消臭剤または芳香剤、トイレ用洗浄剤、または、下着もしくはおむつ用の洗剤もしくは柔軟剤が提供される。なおこれらの物品において、上記OR9Q2アンタゴニスト化合物は、p−クレゾール臭または尿臭の抑制成分としてと同時に香料としても機能し得る。

0036

本発明の例示的実施形態として、さらに以下の物質、製造方法、用途あるいは方法を本明細書に開示する。但し、本発明はこれらの実施形態に限定されない。

0037

〔1〕下記表A記載の化合物からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、p−クレゾール臭抑制剤。
〔表A〕
メチルセドリルケトン;
2,2,7,7−テトラメチルトリシクロ[6.2.1.01,6]ウンデカン−5−オン;
3,7,11−トリメチルドデカ−1,6,10−トリエン−3−オール;
(E)−2−エチル−4−(2,2,3−トリメチル−1−シクロペンタ−3−エニル)ブト−2−エン−1−オール;
1−(2−tert−ブチルシクロヘキシル)オキシブタン−2−オール

0038

〔2〕p−クレゾール臭の抑制のための、上記表A記載の化合物からなる群より選択される少なくとも1種の使用。

0039

〔3〕p−クレゾール臭抑制剤の製造における、上記表A記載の化合物からなる群より選択される少なくとも1種の使用。

0040

〔4〕p−クレゾール臭の抑制を必要とする対象に、上記表A記載の化合物からなる群より選択される少なくとも1種を適用することを含む、p−クレゾール臭の抑制方法。

0041

〔5〕上記表A記載の化合物からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、尿臭抑制剤。

0042

〔6〕尿臭の抑制のための、上記表A記載の化合物からなる群より選択される少なくとも1種の使用。

0043

〔7〕尿臭抑制剤の製造における、上記表A記載の化合物からなる群より選択される少なくとも1種の使用。

0044

〔8〕尿臭の抑制を必要とする対象に、上記表A記載の化合物からなる群より選択される少なくとも1種を適用することを含む、尿臭抑制方法

0045

〔9〕上記〔5〕〜〔8〕のいずれか1項において、好ましくは、上記尿臭は、放尿または採尿後時間が経った尿から発せられる臭い、飛び散って乾燥した尿から発せられる臭い、装着中もしくは使用後の尿が付着した吸収性物品から発せられる尿の臭い、βグルクロニダーゼが作用した尿またはその抽出物の臭い、またはp−クレゾールに起因する尿臭である。

0046

〔10〕上記表A記載の化合物からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、OR9Q2またはそれと同等な機能を有する嗅覚受容体ポリペプチドに対するアンタゴニスト。

0047

〔11〕OR9Q2またはそれと同等な機能を有する嗅覚受容体ポリペプチドに対するアンタゴニストとしての、上記表A記載の化合物からなる群より選択される少なくとも1種の使用。

0048

〔12〕OR9Q2またはそれと同等な機能を有する嗅覚受容体ポリペプチドに対する受容体活性阻害剤の製造における、上記表A記載の化合物からなる群より選択される少なくとも1種の使用。

0049

〔13〕上記〔10〕〜〔12〕のいずれか1項において、
好ましくは、OR9Q2は、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなる嗅覚受容体ポリペプチドであり、かつ
好ましくは、OR9Q2と同等な機能を有する嗅覚受容体ポリペプチドは、配列番号2で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつp−クレゾール臭または尿臭に対する応答性を有する嗅覚受容体ポリペプチドである。

0050

〔14〕上記〔13〕において、好ましくは、OR9Q2と同等な機能を有する嗅覚受容体ポリペプチドが、配列番号3で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、および配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む。

0051

〔15〕上記〔13〕において、好ましくは、上記尿臭は、放尿または採尿後時間が経った尿から発せられる臭い、飛び散って乾燥した尿から発せられる臭い、装着中もしくは使用後の尿が付着した吸収性物品から発せられる尿の臭い、βグルクロニダーゼが作用した尿またはその抽出物の臭い、またはp−クレゾールに起因する尿臭である。

0052

以下、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。

0053

本実施例で用いた尿臭物質および試験物質を下記表1に示す。

0054

0055

実施例1 p−クレゾール受容体の同定
1)嗅覚受容体発現細胞の作製
ヒト嗅覚受容体はGenBankに登録されている配列情報を基に、human genomic DNA female(G1521:Promega)を鋳型としたPCR法によりクローニングした。PCR法により増幅した遺伝子をpENTベクター(Invitrogen)にマニュアルに従って組込み、pENTRベクター上に存在するNotI、AscIサイトを利用して、pME18Sベクター上のFlag−Rhoタグ配列の下流に作製したNotI、AscIサイトへと組換えた。また、培養細胞内で作られた嗅覚受容体タンパク質を細胞膜表面へ移行するタンパク質であるヒトRTP1Sをコードする遺伝子を別のpME18SベクターのEcoRI、XhoIサイトへ組込んだ。
表2に示す組成反応液を調製し、クリーンベンチ内で15分静置した後、96ウェルプレート(BD)の各ウェルに添加した。次いで、HEK293細胞(3×105細胞/cm2)を90μLずつ各ウェルに播種し、37℃、5%CO2を保持したインキュベータ内で24時間培養した。対照として、嗅覚受容体を発現させない細胞(Mock)を用意した。

0056

0057

2)ルシフェラーゼアッセイ
HEK293細胞に発現させた嗅覚受容体は、細胞内在性のGαsと共役しアデニル酸シクラーゼを活性化することで、細胞内cAMP量を増加させる。本研究でのp−クレゾール応答測定には、細胞内cAMP量の増加をホタルルシフェラーゼ遺伝子(fluc2P−CRE−hygro)由来発光値としてモニターするルシフェラーゼレポータージーンアッセイを用いた。また、CMVプロモータ下流にウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子を融合させたもの(hRluc−CMV)を同時に遺伝子導入し、遺伝子導入効率細胞数誤差補正する内部標準として用いた。
上記1)で作製した培養物から、培地を取り除き、新しい培地で調製したp−クレゾールを所定の濃度で含む試験物質溶液を75μL添加した。細胞をCO2インキュベータ内で3時間培養し、ルシフェラーゼ遺伝子を細胞内で十分に発現させた。ルシフェラーゼ活性測定には、Dual−GloTMluciferase assay system(Promega)を用い、製品の操作マニュアルに従って測定を行った。p−クレゾール刺激により誘導されたホタルルシフェラーゼ由来の発光値をp−クレゾール刺激を行わない細胞での発光値で割った値を、fold increaseとして算出し、応答強度の指標とした。

0058

3)結果
387種類の嗅覚受容体それぞれを発現させた細胞についてp−クレゾールに対する応答を測定した結果、p−クレゾールに対して活性化する受容体としてOR9Q2が見出された。OR9Q2発現細胞のp−クレゾールに対する応答は濃度依存的であった(図1)。これらの結果から、OR9Q2を、p−クレゾールを認識するp−クレゾール受容体として同定した。

0059

実施例2 OR9Q2アンタゴニストの同定
1)ルシフェラーゼアッセイ
実施例1と同様の手順で、OR9Q2発現細胞を用いたルシフェラーゼアッセイにより、OR9Q2発現細胞のp−クレゾール応答に対する試験物質の影響を調べた。p−クレゾールの濃度は100μMとした。OR9Q2発現細胞の応答強度は以下のとおり算出した。各種刺激条件について、ホタルルシフェラーゼ由来の発光値をウミシイタケルシフェラーゼ由来の発光値で除した値fLuc/hRlucを算出した。p−クレゾール単独刺激により誘導されたfLuc/hRluc値(X)を、同じ受容体を導入し刺激を行わなかった細胞でのfLuc/hRluc値(Y)で除し、p−クレゾール単独刺激による受容体活性Fold increase(X/Y)を求めた。同様に、p−クレゾールと試験物質との混合物での刺激によるfLuc/hRluc値(Z)を、刺激を行わない細胞でのfLuc/hRluc値(Y)で除し、試験物質添加時の受容体活性(Z/Y)を求めた。以下の計算式により、p−クレゾール単独刺激による受容体活性(X/Y)に対する試験物質添加時の受容体活性(Z/Y)の割合を算出し、試験物質存在下での応答強度(Response%)を求めた。独立した実験を3回行い、各回の実験の平均値を得た。
Response(%)=(Z/Y)/(X/Y)×100

0060

2)結果
Acetyl cedrene、Amber Core(登録商標)、Iso−Longifolanone、Nerolidol、およびBacdanolは、濃度依存的にOR9Q2発現細胞のp−クレゾール応答を抑制し、OR9Q2アンタゴニストであると判断された(図2)。

0061

実施例3 OR9Q2アンタゴニストによるp−クレゾール臭および尿臭抑制能
実施例2で同定されたOR9Q2アンタゴニストによるp−クレゾール臭および尿臭抑制効果を、官能試験により確認した。
尿臭物質として、βグルクロニダーゼ処理した尿の抽出物を調製した。人尿400mLを37℃で2時間25units/mLのβグルクロニダーゼTypeVII−Aで処理し、次に37質量%の塩酸を用いてpH4程度に調整した後、ジクロロメタンで抽出を行った。得られたジクロロメタン層に1M水酸化ナトリウム水溶液を添加して、酸性成分水層に移行させて抽出し、中性成分を除去した。得られた水層を、塩酸を用いて酸性とした後、ジエチルエーテルで再抽出を行い、濃縮して抽出物を得た。尿原液80mL相当量の抽出物を1mLのエタノールに溶解し、さらにこの溶解液ミネラルオイルで1.25%になるよう希釈したものを尿抽出物として使用した。p−クレゾールとしては、蒸留水の1%(v/v)水溶液を用いた。実施例2で同定したアンタゴニスト化合物は、ミネラルオイル(Sigma)に溶解させて1%(v/v)溶液を調製し、試験物質溶液として用いた。
20mL容のガラス瓶マルエム、No.6)に2つの綿球を入れ、1つの綿球にはp−クレゾール水溶液または尿抽出物30μLを、もう1つの綿球にはいずれか一種の試験物質溶液30μLを染み込ませた。綿球を入れたガラス瓶は蓋をして37℃で1時間静置した後、試験サンプルとして試験に用いた。実施例2で同定したアンタゴニスト化合物のうち、p−クレゾールに対しては4つ、尿臭に対しては2つについて、それぞれ試験サンプルを準備した。基準サンプルとしてp−クレゾールまたは尿抽出物のみ、対照サンプルとしてミネラルオイルのみ(Vehicle)を準備した。

0062

官能試験は、9名または10名の評価者により単式にて行った。試験は、食後1時間半以上を経過した14時以降から開始した。においの拡散を防ぐため、試験は基本的にドラフト付近で行った。においへの順応の影響を排除するため、試験中には適宜、基準サンプルからの悪臭の認知強度を確認させ、必要であれば休憩をとった。試験サンプルは、3名の評価者による評価後に新しいものと交換した。試験サンプルの評価では、次の5段階の基準「対象の悪臭が、1:わからない、2:感知できる、3:楽にわかる、4:強く感じる、5:耐えられないほど強く感じる」を設定し、基準サンプルでの悪臭強度を3としたときの各試験サンプルからの悪臭強度を、1.0から0.5刻みで5.0までの9段階で評価した。

実施例

0063

各評価者による官能試験の評価結果の結果を図3に示す。試験されたOR9Q2アンタゴニストは、いずれもp−クレゾール臭および尿臭抑制効果を示した。p−クレゾール臭に関しては、9人の被験者のうち、Acetyl cedreneは全員に、Nerolidolは7人に、Amber Core(登録商標)およびIso−Longifolanoneは5人に対して、p−クレゾールを単独で嗅いだ場合と比較して弱いp−クレゾール臭強度(スコア3未満)を回答させるという抑制効果を示した。それぞれのアンタゴニストを併用したときのp−クレゾール臭強度の中央値は、Acetyl cedrene:2、Nerolidol:2.5、Amber Core(登録商標):2.5、Iso−Longifolanone:2.5、であり、いずれもp−クレゾール単独の時に比べて強度が下がることを表す値であった。尿臭に関しては、10人の被験者のうち、Acetyl cedreneおよびAmber Core(登録商標)は8人に対して抑制効果を示した。中央値は、Acetyl cedrene:2、Amber Core(登録商標):2、であり、いずれも尿抽出物単独の時に比べて強度が下がることを表す値であった。本実施例の結果から、試験されたOR9Q2アンタゴニスト化合物が、いずれもp−クレゾールおよび尿臭の抑制に有効であることが示された。また、本実施例で用いたOR9Q2アンタゴニスト化合物は、いずれも香料物質であるが、官能試験ではp−クレゾール臭を抑制する一方で自身の香りは保持しており、p−クレゾール臭を抑制するとともに香料として機能した。

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