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課題
解決手段
概要
背景
回転錠は鍵孔に差し込んだ鍵を回転させて施錠又は解錠される。回転錠の中で最もよく用いられているのは、シリンダー錠である。
シリンダー錠はシリンダー外筒の中にシリンダー内筒を有し、シリンダー内筒にカムが取り付けられている。施錠は、内筒を鍵の回転に応じて回転させ、カムを扉の開閉の障害とすることで達成される。鍵を抜くと機械的交叉が生じて内筒は外筒に固定される。解錠は、鍵の逆回転でカムを障害位置から外して達成される。
このような通常の動作に加え、錠は、火災や地震などの緊急時には、鍵がなくても、鍵の管理者が不在であっても、容易に解錠できることが望ましい。このような緊急時に解錠できる錠としては、すでにいくつかの方式が知られている。
扉内側に非常解錠用ハブを設け、非常時には鍵がなくても解錠できる(特許文献1)。非常信号によりバネ仕掛けで自動的に係止部材を引っ込め解錠する(特許文献2)。非常センサーからの信号により錠の係止部材を引き解錠する(特許文献3)。非常用解錠ハンドルを回転させ解錠する(特許文献4、)。感知器が作動すると、バッテリーの電力により錠を解錠する(特許文献5)。緊急信号を受けると施錠位置保持索を溶断する(特許文献6)。施錠レバーを鍵で回動させ電気錠を非常解錠させる(特許文献7)。非常解錠装置を備え、非常信号をマイクロスイッチに伝え解錠する(特許文献8)。非常時にはサムターンと表示部を回転させて解錠できる(特許文献9)。非常信号により部材の係止を解除し、部材が自由落下するため解錠する(特許文献10)。
概要
地震や火災といった非常の際、鍵がなくても解錠できる回転錠式非常錠を提供する。本発明の非常錠は、錠を固定すべき板の孔に緩合して錠自体が回転できる回転錠であって、カムを有する内筒と、自らの回転を制止する制御板を有する外筒を持ち、制御板の回転制止は非常信号により解除されるものであり、外筒は制御板の回転制止が解除されると自動的に回転し、施錠状態の外筒が回転すると、外筒に固定されたままの内筒のカムを施錠位置から解錠位置に移動させることを特徴とする。制御盤の回転制止には、ラッチレバーや落し込みピンを使用することが好ましい。制御板の回転には、ねじりコイルバネを利用できる。本非常錠は商用電源や電池を利用しないことが特徴である。
目的
本発明が解決しようとする課題は、簡単な構造で、電力や電池を用いず、しかも緊急時には容易に解錠される非常錠を提供する
効果
実績
- 技術文献被引用数
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- 牽制数
- 0件
この技術が所属する分野
技術分野
背景技術
0002
回転錠は鍵孔に差し込んだ鍵を回転させて施錠又は解錠される。回転錠の中で最もよく用いられているのは、シリンダー錠である。
シリンダー錠はシリンダー外筒の中にシリンダー内筒を有し、シリンダー内筒にカムが取り付けられている。施錠は、内筒を鍵の回転に応じて回転させ、カムを扉の開閉の障害とすることで達成される。鍵を抜くと機械的交叉が生じて内筒は外筒に固定される。解錠は、鍵の逆回転でカムを障害位置から外して達成される。
0003
このような通常の動作に加え、錠は、火災や地震などの緊急時には、鍵がなくても、鍵の管理者が不在であっても、容易に解錠できることが望ましい。このような緊急時に解錠できる錠としては、すでにいくつかの方式が知られている。
0004
扉内側に非常解錠用ハブを設け、非常時には鍵がなくても解錠できる(特許文献1)。非常信号によりバネ仕掛けで自動的に係止部材を引っ込め解錠する(特許文献2)。非常センサーからの信号により錠の係止部材を引き解錠する(特許文献3)。非常用解錠ハンドルを回転させ解錠する(特許文献4、)。感知器が作動すると、バッテリーの電力により錠を解錠する(特許文献5)。緊急信号を受けると施錠位置保持索を溶断する(特許文献6)。施錠レバーを鍵で回動させ電気錠を非常解錠させる(特許文献7)。非常解錠装置を備え、非常信号をマイクロスイッチに伝え解錠する(特許文献8)。非常時にはサムターンと表示部を回転させて解錠できる(特許文献9)。非常信号により部材の係止を解除し、部材が自由落下するため解錠する(特許文献10)。
先行技術
0005
実開昭58−90948号公報
特開平11−303476号公報
特開2003−206663号公報
特開2003−301642号公報
登実3144133号公報
特開2008−057295号公報
特開2009−161957号公報
特開2010−043411号公報
特開2011−102487号公報
特開2012−207438号公報
発明が解決しようとする課題
課題を解決するための手段
0007
上記課題を解決するためになされた本発明に係る非常錠は、カムを有する内筒と、自らの回転を制止する制御板を有する外筒を備える回転錠であって、制御板の回転制止は非常信号により解除されるものであり、外筒は制御板の回転制止が解除されると自動的に回転しカムを施錠位置から解錠位置に移動させることを特徴とする。
0008
非常錠用の回転錠は、シリンダー錠であることが好ましい。
回転錠の外筒が回転する、とは錠全体が回転することに相当する。本発明では、外筒の回転を制止できる制御板が外筒に取り付けられており、非常信号により制御板の回転制止が解除される。回転制止が解除されると、外筒(錠全体)が自動的に回転して、施錠していたカムが外れ、錠が解錠される。本発明の非常錠は、通常の回転錠と比較して、制御板を有することが特徴である。
0009
ここにカムとは、平常時(非常信号が入力していないとき)回転錠の内筒の鍵による回転と共に回転し、施錠時には扉の開放の阻害となる金具をいう。
本発明は錠が扉を貫く形で回転でき、錠自体を施錠状態のままで回転させることで解錠と等価の状態になし得る限り、錠と鍵の外見、形状、機構、構造に拘らない。また錠が回転盤などに固定されていて、その回転盤の回転制御を通して錠の回転が2次的に制御されてもよい。
0010
このような構造を取ることにより、本発明の非常錠は、鍵を用いて開閉する通常の動作に加え、緊急時には施錠されたままの錠全体が回転することにより、鍵によるカムの移動と等価な結果を生じさせて、鍵を用いることなく解錠の状態にすることができる。
本発明の非常錠と通常の回転錠との相違は、通常は扉に固定されているシリンダー錠を、扉を貫通して回転できるようにし、シリンダー外筒に固定した制御板と、扉側に装備した回転制止物(ラッチレバー、落し込みピンなど)とによって錠の回転を制御できるところにある。これによって、平時には回転制止物がシリンダー外筒(錠本体)の回転を抑止して通常の錠として機能し、緊急時の非常信号によって該回転制止物が無力化されると錠全体が回転し鍵の有無に関係なく解錠の状態になる。回転制止が有効である限り、施錠及び解錠には鍵が必要である。
0011
本発明の非常錠は、非常事態を検知する感知機構と組み合わされて、設定震度(例えば震度5)あるいは設定温度(例えば80℃)で作動するよう設定された感知機構からの錠の回転止めを外す信号を受けた場合にのみ回転可能となり、解錠と等価の状況になる。
0012
具体的には、感知機構からの信号が非常錠に伝達されると、錠/制御板の回転制止物(ラッチレバー、落し込みピンなど)が移動/除去され、錠を回転させてカムを施錠位置から移動させて解錠と等価の状態とする。
本発明の制御板/錠の回転制止には、ラッチレバー、落し込みピンなどを用いることができる。
また、シリンダー外筒の外面にラッチレバーと嵌合するスリットを彫ることや、固定ナットを加工することで制御板と等価な仕組みを構築することもできる。
発明の効果
0014
本発明の非常錠は、鍵がなくても緊急時に非常信号を受ければ自動的に解錠される。非常時の脱出や非常処置に便利である。
本発明の非常錠は、電池等の電源を一切使用しないので、安全であり、維持・管理も容易である。
0015
本発明の非常錠を利用すれば、地震、火災などの緊急時に、通常管理者によって施錠・管理された状態にあった鍵箱や、災害対策物品/備蓄物品等が保管されていた保管庫、貯蔵庫、倉庫などを、非管理者でも到達し使用可能とすることができる
図面の簡単な説明
0016
本発明に係る非常錠の作動模式図
本発明に係る非常錠の基本構造の模式図
0017
本発明の実施例を以下に示すが、本発明は以下の実施例に限定されるわけではない。
0018
本発明の非常錠の作動模式図を、シリンダー錠を例として図1に示す。
扉1は函体2に取り付けられている。函体としては、部屋や倉庫のドアの取り付け枠や、扉のついた収納箱や保管庫をイメージできる。錠は扉1に取り付けられ、それぞれ一体として独立に回転する鍵孔(図1では、シリンダー内筒3の中央に、太い線で表されている)、シリンダー内筒3、カム4と、シリンダー外筒5、制御板6とからなる。これらのうち、制御板6は通常のシリンダー錠には存在しない。
0019
カム4は函体2の錠受け部7に固定されたロッド8をくわえる凹部9を有し、鍵によって錠の開位置と閉位置の間の90°だけ回転できるが、閉位置で鍵が抜かれると、外筒に固定される(カギがかかる)。制御板6にはラッチレバー10が嵌まる切りこみ11があり、ラッチレバーが外された時に錠が全体として右回転するように、シリンダーと同軸のねじりコイルバネ(図示していない)が取り付けてある。
0020
本発明の非常錠の施錠された状態を(a)に、鍵を差し込み右回転することで解錠された状態を(b)に、鍵の有無に無関係に、施錠されたままの錠を回転させることで解錠された状態を(c)に示す。平常時の錠は、ラッチレバー10が制御板6のスリット11に嵌まって制御板を固定しているので、制御板と一体のシリンダー外筒5/錠全体の回転も阻止され、錠は安定に施錠状態を保つ。
施錠状態(a)では、カム4が錠受け部7の裏側に出ていて扉(開き戸)は開かない。また、カム4の凹部9が函体に固定したロッド8をくわえ込むために扉(引き戸)は開かない。
施錠されて鍵が抜かれているとカム4はシリンダー内筒、外筒と一体である(カギがかかっている)が、正当な鍵が挿されるとシリンダー内筒が外筒から離れ、シリンダー内筒/カムは回転して扉の中/裏に移動し、扉が開ける解錠状態(b)となる。これらは通常の鍵による施・解錠である。
0021
非常信号が入力された状態(c)では、解錠信号12(この例図ではラッチレバーの他端を下方に押す力)により回転軸13を支点にラッチレバー10がスリット11から外されると、制御板6は自動的に既設のバネ(図示していない)によって非常錠全体を右回りに回転させ、カム4がストッパー14に当たって止まり、結果的にカムはシリンダー外筒と一体(施錠)のままで解錠の状態となり開扉される。
0022
本非常錠を設備した扉は、非常事態の中で解錠信号を受けてラッチレバー10が外れておれば、万が一の物理的障害などで制御板6が回転しきれず開扉できない場合、鍵孔に差し込める金属片等(マイナスドライバー、合わない鍵など)で錠全体を右廻しして解錠状態(c)に出来れば解錠される。
また、一旦解錠状態(c)になって開くことのできる扉を、同様の手段によって錠全体を左廻しして制御板6のスリット11にラッチレバー10をはめることで、鍵とは無関係に再施錠できる。
0023
本発明の具体例を図2に示す。図2の上部は錠の横断面図、下部は錠を正面から見た透視的断面図(正面図)であって、作動機作の説明のための主要部分を補足・強調してある。挿入図15は本非常錠の回転制御部を説明するためのラッチ部分の断面図で、錠本体は省略している。
図2において、Aはカムの施錠位置であり、Bはカムの解錠位置である。
0024
函体2の扉板1に開けられた孔16に、錠のシリンダー外筒5が孔16と緩い整合で挿入され、シリンダー錠の頭部の顎17(通常錠の固定時に取り付け、扉の孔に架かり、扉板を挟んでナットで締め付けられる部分)と扉板1の間、及び扉板1と固定ナット18との間にそれぞれポリテトラフルオロエチレンワッシャー19が挟まれ、さらに制御板6が挟まれた状態で、シリンダー外筒/錠の回転が扉板の孔16の中でゆとりなく可能な程度にナット18とナット20で固定されている。この構造で錠は、制御板6によって回転に制限が加えられなければ、扉板1の孔16を支点として自由に回転できる。
0025
外筒5に内包されるシリンダー内筒3の終端にはカム4がナット21によって固定されている。通常、カム4(=シリンダー内筒)は、鍵が挿された状態で外筒5の中で回転できるが、錠に内蔵された仕組みによって図2の正面図の位置A、B間の1/4回転しかできない。さらに、施錠された状態(カムが位置Aにある)で鍵が抜かれている(内筒と外筒は絡んでいる)時は、シリンダー外筒/制御板/錠が回転すればシリンダー内筒3/カム4は同行するので、錠を右1/4回転(解錠と同じカム位置)で止めるためにストッパー14が扉板1上に設けられている。
ラッチレバー10は制御板6上のスリット11に嵌まりこんで制御板6の回転を抑止していて、支柱13を回転軸としてバネ22によって制御板6の側面に押し付けられ、保持されている。
0026
カム4が位置Aにある時は、開き戸の場合、函体2の錠受け部7と重なって施錠の状態にあり、引き戸の場合、カム4上の凹部9が錠受け部7に固定されたロッド8に掛かることで施錠される。いずれの場合も鍵によってカム4が右に90°回転させられたB位置で解錠される。
制御板6/シリンダー外筒5/錠本体が扉板1に固定されているこの状態では、本非常錠は通常のシリンダー錠と同じ作動形式を持つことになる。
0027
非常事態において、感知機構からの解錠信号がラッチレバー10の他端12を下方に押してラッチレバー10を制御板6のスリット11から外すと、設置したバネ(ねじりコイルバネ:図示していない)によって制御板6の右回転が可能となり、制御板6はカム4と共に位置Bまで回転してカムがストッパー14に当たって止まり、錠自体は鍵施錠の状態のままで扉は開けられるようになる。
万が一非常事態の中で錠が回りきらない時には、鍵孔に金属片(マイナスドライバー、合わない鍵など)を差し込んで右回転すれば開扉できる。
平面図では錠回転による開扉の状態を点線と括弧内番号で示してある。
0028
非常時に鍵がない状況で、錠の回転で解錠されている非常錠の再施錠は、鍵に代りうる硬質の平板(鍵孔に入るマイナスドライバー、合わない鍵など)を用いて錠を左廻しして制御板6上のスリット11にラッチレバー10を嵌めることで達せられる。
0030
本実施例では、実施例1の変形例を示す。
実施例1では非常錠を扉板に直付けしているが、金属函、保管庫等に組み込んだ非常錠ユニット、感知機構を連結した非常錠セット等として作業性、汎用性を改善出来る。本例は右開き(右引き)の扉と錠とによる簡単な構成図であって、性能の向上のために資材の追加、変更もありうる。
0031
実施例1では非常錠は錠自体が扉板の孔に緩合して回転するが,非常錠を固定した盤(たとえば制御板)に錠と同軸となる回転機構を組み付けて、その回転盤の回転をラッチレバー/スリット対などで固定/解除することによって2次的に回転錠本体の回転を制御して、回転錠の施/解錠するのも良い。
実施例
0033
実施例1では制御板/錠の回転には錠に巻き付けた形のねじりコイルバネ(図に記入無し:扉板と制御板に終端がある)を用いているが、制御板の縁辺に取り付けたコイルバネ(他端は扉板固定)で制御板の回転接線方向に引くことで回転させることもできる。
0034
1 函の扉板
2函体
3シリンダー内筒:シリンダー外筒5に内包され、カム4に固定され、鍵穴を備えている。鍵で図2の位置A、B間を左右に廻すことができ、鍵が抜かれた施錠状態ではシリンダー外筒に固定される
4 カム:扉の閉状態をつくる:一端にロッド8をくわえこむ凹部9を持つ
5 シリンダー外筒:シリンダー内筒を内包する:通常は錠の外套に同じ
6制御板:一端にラッチレバー10を嵌合するスリット11を有する:機能が同じな
ら形に制約はない
7施錠された時にカム4に対する函体2の錠受け部分
8 函体の錠受け部分7に固定され、カム4の凹部9にくわえこまれるロッド
9引き戸用としてカム4に作られたロッド8をくわえる凹部
10 ラッチレバー:制御板6の回転を制御し、感知機構からの信号を伝達する
11 ラッチレバーを嵌合して制御板6の回転を止めるスリット
12 ラッチレバーの非常信号(図では下方への押す力)受信端
13 ラッチレバーの回転軸
14ストッパー:カム4の右回転を止め、解錠の状態を作る
15 本非常錠の回転制御部を説明するための側面図:錠本体は省略してある。
16 函の扉板に開けられた円形の穴:非常錠の回転支点枠
17シリンダー錠の頭部の顎
18固定ナット
19ポリテトラフルオロエチレンワッシャー
20 固定ナット
21 カム固定用ナット
22 ラッチレバー10を制御板6側面に引きつけるバネ
23円形筒:防水・防塵・防犯・保護のために錠頭部を囲む
24 円形筒23をカバーするシールキャップ