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技術 スケール防止剤の製造方法及びスケール防止方法

出願人 伯東株式会社
発明者 伊藤賢一関戸広太
出願日 2015年11月20日 (4年4ヶ月経過) 出願番号 2015-228231
公開日 2017年6月1日 (2年9ヶ月経過) 公開番号 2017-094261
状態 特許登録済
技術分野 熱交換管の清掃 スケール防止
主要キーワード 水温制御装置 溶解成分濃度 冷却塔循環水 ユーティリティコスト 液面制御装置 誘引通風 排出水量 ケイ酸鉄
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (1)

課題

解決手段

(A)ホスホノ基及びホスフィノ基を有さないマレイン酸系重合体を製造後、同一反応容器において該マレイン酸系重合体が入ったままでの状態で(B)ホスホノ基及びホスフィノ基を有さないイタコン酸系重合体の製造を行い、マレイン酸重合時の1回目重合開始剤添加終了時からイタコン酸重合時の2回目の重合開始剤添加開始までの重合開始剤添加間隔が15〜120分間の範囲である2種の重合体の混合物直接製造する水と接する金属のスケール防止剤の製造方法。更に(C)モノエチレン性不飽和カルボン酸モノエチレン性不飽和スルホン酸の共合体を含むことが好ましいスケール防止剤の製造方法。

概要

背景

石油精製石油化学製鉄所火力発電所の各種プロセス等、産業界において大量の冷却水が使用される。通常、これらの冷却水は開放型冷却塔によって冷却され、循環水として繰り返し冷却用途に使用される。この開放型冷却塔では、循環水は送風による空気との熱交換のみならず、循環水の一部が蒸発して蒸発潜熱が奪われることによっても冷却される。このため、循環水中溶解成分は、水分の蒸発に伴って徐々に濃縮されてスケールとして析出し、プロセス内の熱交換器配管内や冷却塔内に付着して、運転上の大きな障害となることがある。

従来、こうした不具合を防止するための開放式循環冷却水系管理方法として、循環冷却水系濃縮度による管理が知られている。この方法は、循環冷却水系の濃縮度を補給水及び循環水の電気伝導度カルシウム硬度分析値等から求め、その濃縮度が一定値以下となるように循環水の一部を排出水として排水し、その排出分の補給水を加える方法である。これにより、循環水中の溶解成分濃度を低く保つことが可能となり、循環水の溶解成分の析出によるスケール障害をある程度防止することができる。

しかしながら、近年、水の有効利用及びコスト削減の観点から、冷却水の高濃縮運転が行われるようになったため、薬剤スケール防止剤)によるスケール障害の防止が行われるようになった。

上記の冷却水系で発生する代表的なスケールは炭酸カルシウムスケールである。炭酸カルシウムスケールの析出防止には、ホスホン酸重合リン酸などのリン化合物マレイン酸重合体が有効であることが知られており、開放循環冷却水系では、一般的にこれらの化合物を添加して炭酸カルシウムの析出を防止することによって、スケール障害を防止している(例えば、特許文献1参照)。しかし、水系の水質がこれらの化合物による炭酸カルシウム析出防止性能限界を超える場合には、炭酸カルシウムの結晶化が急速に進み、スケール障害に到る。

一方、上記の冷却水系で発生するスケールの中でも、特に析出防止が困難なスケールはシリカ系スケールである。我が国において、工業用水として多く用いられる河川水は一般にシリカ濃度が高く、その工業用水を補給水とする開放式循環冷却水系では、シリカ系スケールの析出防止が重要な課題である。ところが、上記循環水系の濃縮度のみに基づく管理方法では、補給水中シリカを多く含み、そのシリカ濃度が大きく変化する場合には、濃縮度が同じであっても循環水系中のシリカ濃度が大きく変動するため、シリカ系スケールの析出を防止することが困難となる。

そこで、循環水系のシリカを吸着除去することにより、シリカの析出を防止する冷却塔循環水の管理方法が知られている。例えば、特許文献2には、イオン交換樹脂を用いて循環水中のシリカを吸着除去する冷却塔循環水の管理方法が記載されている。さらに、特許文献3及び特許文献4にはシリカゲル等の吸着剤によって循環水中のシリカを吸着除去する冷却塔循環水の管理方法が記載されている。循環水中のシリカを除去する方法では、シリカを吸着するためにイオン交換樹脂やシリカゲル等の吸着剤が多量に必要となり、その多量の吸着剤を収容するための吸着塔も必要となる。このため、設備や運転に要する経費が高騰化してしまい、依然として、満足しうる循環冷却水系におけるシリカ系スケールの付着防止方法は、得られていない。

また、シリカ系スケールの析出を防止する冷却塔循環水の別の管理方法として、電気伝導度やカルシウム硬度の分析値等から求めた濃縮度で管理する代わりに、循環水のシリカ濃度を測定し、その値に応じて補給水量及び排出水量を制御する管理方法も考えられる。しかし、補給水中のような低濃度状態でのシリカは単核体として溶解しているため比色法によって容易に分析できるが、循環水中のような高濃度状態でのシリカは多核重合体を形成しており、その分析方法は操作が複雑で手間がかかり、熟練を要する。そのため、冷却塔循環水のシリカ濃度の測定値管理指標とすることは、非常に困難が伴い、現実的ではない。そこで、特許文献5では、容易に分析できる補給水のシリカ濃度と電気伝導度やカルシウム硬度の分析値等から求めた循環水の濃縮度の積である計算シリカ濃度を用いる冷却塔循環水の管理方法が提案されている。

一方、特許文献6には、水性系におけるシリカまたは珪酸塩の形成を防止するための方法が開示されており、その方法とは、水性系にa)重量平均分子量約1000〜約25000の、(メタアクリル酸またはマレイン酸またはそれらの塩の水溶性コポリマーまたはターポリマー、b)マグネシウムイオン、c)前記コポリマーまたはターポリマーと、アルミニウムイオンまたはマグネシウムイオンとの混合物、d)重量平均分子量約1000〜約25000のポリ(メタ)アクリル酸またはポリマレイン酸またはそれらの塩と、アルミニウムイオンまたはマグネシウムイオンとの混合物からなる群から選択されたスケール防止剤の有効量を添加することを特徴とする方法である。

しかし、上記のいずれの防止方法によっても、開放式循環冷却水系におけるシリカ系スケールに対する十分な付着防止効果が得られない場合がある。

上述のように、開放式循環冷却水系では炭酸カルシウムスケールのみならずシリカ系スケールも防止できる方法が求められているが、従来、シリカ系スケールと炭酸カルシウムスケールを同時に防止できる有効なスケール防止剤及びスケール防止方法は見いだされていなかった。

概要

シリカ濃度が高い開放式循環冷却水系におけるシリカ系スケールと炭酸カルシウムスケールも同時に防止するスケール防止剤の製造方法及びスケール防止方法の提供。(A)ホスホノ基及びホスフィノ基を有さないマレイン酸系重合体を製造後、同一反応容器において該マレイン酸系重合体が入ったままでの状態で(B)ホスホノ基及びホスフィノ基を有さないイタコン酸系重合体の製造を行い、マレイン酸重合時の1回目重合開始剤添加終了時からイタコン酸重合時の2回目の重合開始剤添加開始までの重合開始剤添加間隔が15〜120分間の範囲である2種の重合体の混合物を直接製造する水と接する金属のスケール防止剤の製造方法。更に(C)モノエチレン性不飽和カルボン酸モノエチレン性不飽和スルホン酸の共合体を含むことが好ましいスケール防止剤の製造方法。なし

目的

我が国において、工業用水として多く用いられる河川水は一般にシリカ濃度が高く、その工業用水を補給水とする開放式循環冷却水系では、シリカ系スケールの析出防止が重要な課題である

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
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請求項1

(A)ホスホノ基及びホスフィノ基を有さないマレイン酸系重合体及び(B)ホスホノ基及びホスフィノ基を有さないイタコン酸系重合体を含む、水と接する金属のスケール防止剤の製造方法であって、該製造方法が、前記(A)マレイン酸系重合体を製造後、同一反応容器において前記(A)マレイン酸系重合体が入ったままの状態で前記(B)イタコン酸系重合体の製造を行い、マレイン酸重合時の1回目重合開始剤添加終了時からイタコン酸重合時の2回目の重合開始剤添加開始までの重合開始剤添加間隔が15〜120分間の範囲である2種の重合体の混合物直接製造する方法であることを特徴とする水と接する金属のスケール防止剤の製造方法。

請求項2

さらに(C)モノエチレン性不飽和カルボン酸モノエチレン性不飽和スルホン酸共重合体を含むことを特徴とする請求項1記載の水と接する金属のスケール防止剤の製造方法。

請求項3

請求項1又は2記載の製造方法によって得られる水と接する金属のスケール防止剤を対象水系に添加して、該水系におけるケイ酸塩スケール炭酸カルシウムスケールを同時に防止する水と接する金属のスケール防止方法

技術分野

0001

本発明は、工業用水系冷却水系温水系、ボイラ水系洗浄水工程水系、排水系などの各種水系における水と接する金属材料表面におけるスケールの付着を防止するスケール防止剤の製造方法及びスケールを防止する方法に関する。

背景技術

0002

石油精製石油化学製鉄所火力発電所の各種プロセス等、産業界において大量の冷却水が使用される。通常、これらの冷却水は開放型冷却塔によって冷却され、循環水として繰り返し冷却用途に使用される。この開放型冷却塔では、循環水は送風による空気との熱交換のみならず、循環水の一部が蒸発して蒸発潜熱が奪われることによっても冷却される。このため、循環水中溶解成分は、水分の蒸発に伴って徐々に濃縮されてスケールとして析出し、プロセス内の熱交換器配管内や冷却塔内に付着して、運転上の大きな障害となることがある。

0003

従来、こうした不具合を防止するための開放式循環冷却水系管理方法として、循環冷却水系濃縮度による管理が知られている。この方法は、循環冷却水系の濃縮度を補給水及び循環水の電気伝導度カルシウム硬度分析値等から求め、その濃縮度が一定値以下となるように循環水の一部を排出水として排水し、その排出分の補給水を加える方法である。これにより、循環水中の溶解成分濃度を低く保つことが可能となり、循環水の溶解成分の析出によるスケール障害をある程度防止することができる。

0004

しかしながら、近年、水の有効利用及びコスト削減の観点から、冷却水の高濃縮運転が行われるようになったため、薬剤(スケール防止剤)によるスケール障害の防止が行われるようになった。

0005

上記の冷却水系で発生する代表的なスケールは炭酸カルシウムスケールである。炭酸カルシウムスケールの析出防止には、ホスホン酸重合リン酸などのリン化合物マレイン酸重合体が有効であることが知られており、開放循環冷却水系では、一般的にこれらの化合物を添加して炭酸カルシウムの析出を防止することによって、スケール障害を防止している(例えば、特許文献1参照)。しかし、水系の水質がこれらの化合物による炭酸カルシウム析出防止性能限界を超える場合には、炭酸カルシウムの結晶化が急速に進み、スケール障害に到る。

0006

一方、上記の冷却水系で発生するスケールの中でも、特に析出防止が困難なスケールはシリカ系スケールである。我が国において、工業用水として多く用いられる河川水は一般にシリカ濃度が高く、その工業用水を補給水とする開放式循環冷却水系では、シリカ系スケールの析出防止が重要な課題である。ところが、上記循環水系の濃縮度のみに基づく管理方法では、補給水中シリカを多く含み、そのシリカ濃度が大きく変化する場合には、濃縮度が同じであっても循環水系中のシリカ濃度が大きく変動するため、シリカ系スケールの析出を防止することが困難となる。

0007

そこで、循環水系のシリカを吸着除去することにより、シリカの析出を防止する冷却塔循環水の管理方法が知られている。例えば、特許文献2には、イオン交換樹脂を用いて循環水中のシリカを吸着除去する冷却塔循環水の管理方法が記載されている。さらに、特許文献3及び特許文献4にはシリカゲル等の吸着剤によって循環水中のシリカを吸着除去する冷却塔循環水の管理方法が記載されている。循環水中のシリカを除去する方法では、シリカを吸着するためにイオン交換樹脂やシリカゲル等の吸着剤が多量に必要となり、その多量の吸着剤を収容するための吸着塔も必要となる。このため、設備や運転に要する経費が高騰化してしまい、依然として、満足しうる循環冷却水系におけるシリカ系スケールの付着防止方法は、得られていない。

0008

また、シリカ系スケールの析出を防止する冷却塔循環水の別の管理方法として、電気伝導度やカルシウム硬度の分析値等から求めた濃縮度で管理する代わりに、循環水のシリカ濃度を測定し、その値に応じて補給水量及び排出水量を制御する管理方法も考えられる。しかし、補給水中のような低濃度状態でのシリカは単核体として溶解しているため比色法によって容易に分析できるが、循環水中のような高濃度状態でのシリカは多核重合体を形成しており、その分析方法は操作が複雑で手間がかかり、熟練を要する。そのため、冷却塔循環水のシリカ濃度の測定値管理指標とすることは、非常に困難が伴い、現実的ではない。そこで、特許文献5では、容易に分析できる補給水のシリカ濃度と電気伝導度やカルシウム硬度の分析値等から求めた循環水の濃縮度の積である計算シリカ濃度を用いる冷却塔循環水の管理方法が提案されている。

0009

一方、特許文献6には、水性系におけるシリカまたは珪酸塩の形成を防止するための方法が開示されており、その方法とは、水性系にa)重量平均分子量約1000〜約25000の、(メタアクリル酸またはマレイン酸またはそれらの塩の水溶性コポリマーまたはターポリマー、b)マグネシウムイオン、c)前記コポリマーまたはターポリマーと、アルミニウムイオンまたはマグネシウムイオンとの混合物、d)重量平均分子量約1000〜約25000のポリ(メタ)アクリル酸またはポリマレイン酸またはそれらの塩と、アルミニウムイオンまたはマグネシウムイオンとの混合物からなる群から選択されたスケール防止剤の有効量を添加することを特徴とする方法である。

0010

しかし、上記のいずれの防止方法によっても、開放式循環冷却水系におけるシリカ系スケールに対する十分な付着防止効果が得られない場合がある。

0011

上述のように、開放式循環冷却水系では炭酸カルシウムスケールのみならずシリカ系スケールも防止できる方法が求められているが、従来、シリカ系スケールと炭酸カルシウムスケールを同時に防止できる有効なスケール防止剤及びスケール防止方法は見いだされていなかった。

先行技術

0012

特開平9−174092号公報
特開2002−054894号公報
特開2001−324296号公報
特開2002−282892号公報
特開2005−081251号公報
特許第3055815号公報

発明が解決しようとする課題

0013

本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、特にシリカ濃度が高い開放式循環冷却水系において発生するシリカ系スケール、中でもケイ酸塩スケールの付着を防止するとともに、炭酸カルシウムスケールも同時に防止できるスケール防止剤の製造方法及びスケール防止方法を提供することを課題としている。

課題を解決するための手段

0014

本発明者らは、上記の課題を解決すべく、開放循環式冷却水システムの水と接触する金属のスケール防止剤の製造方法とスケール防止方法について鋭意検討の結果、特定の製造方法で製造したマレイン酸系重合体イタコン酸系重合体の混合物を用いることにより、確実で安定的な優れたスケール防止効果を達成することができること、さらには該混合物にモノエチレン性不飽和カルボン酸モノエチレン性不飽和スルホン酸共重合体を併用することにより、格段に優れたスケール防止効果を達成できることを見出し本発明に到達した。

0015

即ち、請求項1に係る発明は、(A)ホスホノ基及びホスフィノ基を有さないマレイン酸系重合体及び(B)ホスホノ基及びホスフィノ基を有さないイタコン酸系重合体を含む、水と接する金属のスケール防止剤の製造方法であって、該製造方法が、前記(A)マレイン酸系重合体を製造後、同一反応容器において前記(A)マレイン酸系重合体が入ったままの状態で前記(B)イタコン酸系重合体の製造を行い、マレイン酸重合時の1回目重合開始剤添加終了時からイタコン酸重合時の2回目の重合開始剤添加開始までの重合開始剤添加間隔が15〜120分間の範囲である2種の重合体の混合物を直接製造する方法であることを特徴とする水と接する金属のスケール防止剤の製造方法である。

0016

請求項2に係る発明は、さらに(C)モノエチレン性不飽和カルボン酸とモノエチレン性不飽和スルホン酸の共重合体を含むことを特徴とする請求項1記載の水と接する金属のスケール防止剤の製造方法である。

0017

請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の製造方法によって得られる水と接する金属のスケール防止剤を対象水系に添加して、該水系におけるケイ酸塩スケールと炭酸カルシウムスケールを同時に防止する水と接する金属のスケール防止方法である。

発明の効果

0018

本発明の方法を開放式循環冷却水系に適用することによって、シリカ濃度が高く、そのシリカ濃度が大きく変化する補給水を用いる水系においても、該水系を構成する冷却塔、熱交換器や配管へのシリカ系スケールの付着を防止でき、さらには炭酸カルシウムスケールも同時に防止できるため、熱交換器の伝熱効率の低下を防止し多大な省エネルギー効果が得られる。更に、該水系の操業安定化にも大きく寄与するため、この点においても省資源、省エネルギー効果が得られる。

図面の簡単な説明

0019

実施例に使用した試験装置を示す系統図である。

0020

本発明は水と接する金属のスケール防止剤の製造方法及びスケール防止方法であり、この水と接する金属とは、工業用水系、冷却水系、温水系、ボイラ水系、洗浄水、工程水系、排水系などの各種水系における水と接する金属を指す。

0021

本発明で用いる(A)ホスホノ基及びホスフィノ基を有さないマレイン酸系重合体(以下、「(A)重合体」と称す)及び(B)ホスホノ基及びホスフィノ基を有さないイタコン酸系重合体(以下、「(B)重合体」と称す)を含む、水と接する金属のスケール防止剤の製造方法は、同一反応容器において(A)重合体製造後に(B)重合体を連続して製造する方法である。即ち、(A)重合体を製造後、同一反応容器において(A)重合体が入ったままの状態で(B)重合体の製造を行って2種の重合体の混合物を直接製造する方法である。

0022

同一反応容器で(A)重合体と(B)重合体を連続して製造し、その2つの重合体の混合物を製造する方法(以下、「同一容器製造方法」と称す)には、本発明の(A)重合体製造後に(B)重合体を連続して製造する方法と、(B)重合体製造後に(A)重合体を連続して製造する方法があるが、本発明の(A)重合体製造後に(B)重合体を連続して製造する方法によって製造した(A)重合体と(B)重合体の混合物のスケール防止効果は、(B)重合体製造後に(A)重合体を連続して製造する方法によって製造した(B)重合体と(A)重合体の混合物のスケール防止効果よりも優れていることを、本発明者らが初めて見出した。

0023

また、(A)重合体と(B)重合体を別個に製造した後、両者を混合してその2つの重合体の混合物を製造する方法(以下、「別個混合製造方法」と称す)によっても、(A)重合体と(B)重合体を含む水と接する金属のスケール防止剤を得ることができるが、本発明の同一容器製造方法によって製造されたスケール防止剤のスケール防止効果は別個混合製造方法によって製造されたスケール防止剤のスケール防止効果よりも優れていることを、本発明者らが初めて見出した。

0024

本発明の製造方法によれば、各モノマー反応率が向上するため、製造されたスケール防止剤のスケール防止効果を向上させることができる。更に、製造時の加熱に要する蒸気使用量が削減でき、各工程後の洗浄の手間が省け、工程短縮等によりユーティリティコストマンパワーが削減できる。

0025

本発明における同一反応容器による(A)重合体と(B)重合体の混合物の好ましい製造方法の具体例は、水にマレイン酸または無水マレイン酸のいずれか又は両方とアルカリ金属水酸化物を加えて溶解するか、あるいは水にマレイン酸のアルカリ金属塩を溶解して調製したマレイン酸のモノマー溶液所定温度に加熱し、その温度を維持しながら一定時間かけて重合開始剤溶液を添加する1回目の重合開始剤添加を行なって(A)重合体溶液を調製し、次いで、その(A)重合体溶液にイタコン酸(あるいは無水イタコン酸)を加えて溶解した後、所定温度に加熱し、その温度を維持しながら一定時間かけて重合開始剤溶液を添加する2回目の重合開始剤添加を行なうことにより、(A)重合体と(B)重合体の混合物溶液を調製する方法である。

0026

ここで、マレイン酸重合時の1回目の重合開始剤添加終了時からイタコン酸重合時の2回目の重合開始剤添加開始までの重合開始剤添加間隔は、モノマー反応率や該製造方法により製造した重合体混合物を配合した組成物のスケール防止効果に影響を及ぼし、重合開始剤添加間隔が15〜120分間の範囲のとき、高いモノマー反応率と優れたスケール防止効果を示し、重合開始剤添加間隔がこの範囲を外れるスケール防止効果が低下する。この理由は必ずしも明確でないが、重合開始剤添加間隔が15分間未満では、(A)重合体の残存ラジカルにさらにイタコン酸モノマーが重合して、性能上好ましくないイタコン酸とマレイン酸のブロック共重合体が生成する可能性が考えられる。重合開始剤添加間隔が15〜120分間では(A)重合体の残存ラジカルが消失するため、独立した(A)重合体と(B)重合体が生成すると推察される。重合開始剤添加間隔が120分間を超えると、重合開始剤活性が低下するためモノマー反応率が低下し、同一反応容器で製造する利点が無くなると推察される。イタコン酸の添加方法は、上述の1回目の重合開始剤添加終了時から2回目の重合開始剤添加開始までの重合開始剤添加間隔の時間内に一括して添加するのが好ましい。

0027

本発明の製造方法において(A)重合体を製造するために用いるモノマーとしては、マレイン酸以外にマレイン酸の中和塩、無水マレイン酸、マレイン酸エステルおよびこれらの混合物などが挙げられる。上記中和塩としては、例えばアルカリ金属塩(具体的にはカリウム塩ナトリウム塩など)、およびアンモニウム塩などが挙げられ、これらの1種以上であってもよい。また、これらのマレイン酸系モノマーと共にこれらのモノマーと共重合可能なその他のモノマーを使用することができ、具体的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸クロトン酸などの不飽和カルボン酸類;(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;(メタ)アクリル酸ヒドロキシルアキルエステル類;(メタ)アクリルアミド;N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド類エチレンプロピレンイソプロピレンブチレンイソブチレンヘキセン、2−エチルヘキセンペンテンイソペンテン、オクテンイソオクテンなどのオレフィン類ビニルアルキルメチルエーテル類などが挙げられ、これらの2種以上を用いてもよい。

0028

(A)重合体におけるマレイン酸の構成比率は70〜100重量%の範囲であり、好ましくは80〜100重量%の範囲である。(A)重合体は、マレイン酸ホモ重合体、あるいはマレイン酸と共重合可能なその他モノマーを30重量%未満の割合で含むマレイン酸共重合体であってもよい。

0029

本発明の製造方法において(B)重合体を製造するために用いるモノマーとしては、イタコン酸以外にイタコン酸の中和塩、無水イタコン酸、イタコン酸エステルおよびこれらの混合物などが挙げられる。中和塩としては、上記マレイン酸系モノマーで例示したものと同じである。また、これらのイタコン酸系モノマーと共にこれらのモノマーと共重合可能なその他のモノマーを使用することができ、具体的な例としては、上記のマレイン酸系モノマーと共重合可能なその他のモノマーと同じものが用いられる。

0030

(B)重合体におけるイタコン酸の構成比率は70〜100重量%の範囲であり、好ましくは80〜100重量%の範囲である。(B)重合体は、イタコン酸ホモ重合体、あるいはイタコン酸と共重合可能なその他モノマーを30重量%未満の割合で含むイタコン酸共重合体であってもよい。

0031

本発明の、同一反応容器により(A)重合体と(B)重合体の混合物を製造する方法においては、マレイン酸系モノマーやイタコン酸系モノマー以外に、これらのモノマーと共重合可能な前記のその他モノマーを含んでもよいが、その量はマレイン酸やイタコン酸の合計量に対して30重量%未満であることが好ましく、その添加時期は特に制限はないが、通常はマレイン酸系モノマーあるいはイタコン酸系モノマーの投入と同時に行う。

0032

上記の本発明の製造方法において用いられるアルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム水酸化カリウムなどが挙げられ、その添加量は、マレイン酸とイタコン酸ならびにその他の不飽和カルボン酸合計モル数に対して0.2〜2のモル比で添加するのが好ましい。ここで、アルカリ金属水酸化物は重合開始前一括添加するか、あるいは各重合工程時に分割添加してもよいが、好ましくは重合開始前に一括添加する方法である。

0033

上記の本発明の製造方法において用いられる重合開始剤は、過酸化水素過硫酸塩などを単独で使用してもよいが、過酸化水素と過硫酸塩を併用するのが好ましく、該重合開始剤の添加量は、マレイン酸とイタコン酸の合計量に対して過酸化水素が0.3〜30重量%、過硫酸塩が0.1〜5重量%の範囲が好ましい。更に、重合開始剤とともにレドックス触媒を添加するのが好ましく、好ましいレドックス触媒は、還元可能なカチオンであり、鉄、亜鉛コバルトモリブデンクロムニッケルバナジウムおよびセシウムおよびそれらの組み合わせから得られる金属イオンを含み、より好ましいレドックス触媒は硫酸第一鉄アンモニウム、硫酸第一鉄、塩化第一鉄コバルト塩(例えば、硫酸コバルト六水和物)、バナジウム塩およびそれらの組み合わせである。レドックス触媒の量は、マレイン酸とイタコン酸の合計量に対して金属換算で0.001〜0.5重量%の範囲が好ましい。

0034

前記のアルカリ金属水酸化物の量、重合開始剤の量、レドックス触媒の量のいずれかが上記の範囲を外れると、モノマー反応率が十分上がらず、かなりの量の未反応のモノマーが残留するため、十分なスケール防止効果を得ることが難しい。ここで、上記のマレイン酸とイタコン酸の合計量は、無水マレイン酸を使用する場合はマレイン酸に換算し、無水イタコン酸を使用する場合はイタコン酸に換算した量で計算される。

0035

本発明の製造方法における(A)重合体と(B)重合体の分子量の調整は、重合開始剤の量、重合温度、重合時間、モノマー濃度などを適宜変えることにより達成できる。または、重合調整剤を添加して、その濃度を変えることにより分子量を調整することができる。重合調整剤として、イソプロピルアルコール、2−ブチルアルコールなどの2級アルコール重亜硫酸塩亜硫酸塩などの公知の化合物が使用できる。

0036

本発明の製造方法における重合反応の温度は、重合方法、重合開始剤の種類、溶媒の種類などにより異なるが、通常は還流温度または還流温度よりも低い温度に制御され、通常、40〜200℃の範囲であるが、好ましい反応温度は60〜140℃の範囲である。反応温度が低すぎると十分な反応率が得られず、逆に、反応温度が高すぎると重合体の脱カルボキシル化反応が起きてスケール防止効果が低下するため、いずれも好ましくない。

0037

本発明の製造方法におけるイタコン酸の重合工程時において、イタコン酸の比率が高いと発泡が生じ易いため、イタコン酸の投入前に消泡剤を添加するのが好ましい。ここで使用する消泡剤は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール高級アルコールエチレンオキシド付加物、高級アルコールエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物などの曇点が20℃以上のポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤が、常温において水溶液中での分離を生じないため好ましい。

0038

本発明の同一容器製造方法では、(A)重合体と(B)重合体の分子量をそれぞれ別個に測定することができないため、これらの混合物の平均分子量として測定される。すなわち、この(A)重合体と(B)重合体の混合物の重量平均分子量は、通常は300〜3000、好ましくは400〜2000である。分子量がこの範囲を外れると、スケール防止効果が小さくなり好ましくない。尚、(A)重合体及び/又は(B)重合体が共重合体である場合は、その共重合体はブロックまたはランダム共重合体の何れであってもよい。

0039

本発明の製造方法によって得られるスケール防止剤における(A)重合体と(B)重合体の含有重量比率は90:10〜10:90の範囲であり、好ましくは70:30〜30:70の範囲である。

0040

本発明の製造方法によって製造された(A)重合体と(B)重合体の混合物を含む水と接する金属のスケール防止剤は、取扱い上の必要に応じて水で希釈することもできる。

0041

また、(A)重合体と(B)重合体を別個に製造して混合した場合はマレイン酸やイタコン酸のモノマー反応性が低く、かなりの量の未反応のマレイン酸モノマーやイタコン酸モノマーが残留するため、十分なスケール防止効果を得ることが難しいが、本発明の同一容器製造方法では高いモノマー反応率を得ることができ、結果として優れたスケール防止効果を得ることができると推察される。例えば、水性重合におけるマレイン酸の単独重合では、一般に反応率が90%を超えることはないが、本発明の同一容器製造方法では90%以上のマレイン酸の反応率を得ることができる。

0042

(A)重合体の単独重合方法及び(B)重合体の単独重合方法は公知である。すなわち、マレイン酸系モノマーまたはイタコン酸系モノマーを水溶液中、またはキシレントルエン、イソプロピルアルコールなどの有機溶媒中で、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、過硫酸塩、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの重合開始剤の存在下において、必要に応じて重合調整剤を加えて加熱することにより製造される。マレイン酸系重合体の製造方法は、例えば芳香族系溶媒に対して、2〜10重量%の無水マレイン酸を入れて加熱・溶解し、重合開始剤を無水マレイン酸に対して5〜12重量%添加して、100〜200℃の温度で重合する方法(特許2964154号公報)が開示されている。イタコン酸系重合体の製造方法は、例えば、水溶性塩基中和したイタコン酸水溶液に開始剤を添加して80〜120℃の温度に維持する方法(特開平5−86129号公報)が開示されている。

0043

これらの重合体の製造に用いる溶媒がトルエンやキシレンなどの非水系の有機溶媒の場合、マレイン酸の替わりに無水マレイン酸やマレイン酸エステル類、イタコン酸の替わりにイタコン酸エステル類や無水イタコン酸などの有機溶媒に溶解可能なモノマーを使用し、過酸化ベンゾイル、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの有機溶媒に溶解可能な重合開始剤を用いる。無水物やエステルを含む重合体を製造後、有機溶媒をデカンテーションや蒸発により除去して、水を加えて加熱しながらエステルや無水物を加水分解して目的とする水溶性のマレイン酸系重合体やイタコン酸系重合体を得ることができる。しかしながら、非水系溶媒中における重合では有機溶媒の除去工程や加水分解工程が必要であるため、操作が煩雑なだけでなく、これらの工程で使用される加熱用エネルギーコストや溶媒の費用が大きく、経済的でない。また、有害な有機溶媒が大気中や排水や土壌などに放出された場合の、環境や人体への影響も無視できない。

0044

このため、マレイン酸系重合体の単独重合方法とイタコン酸系重合体の単独重合方法では、有機溶媒を用いない水系重合法で製造することが好ましい。溶媒として主に水を使用した水系重合法の場合、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸などの水に溶解可能なモノマーを使用し、過酸化水素、過硫酸塩、水溶性アゾ系触媒などの水に溶解可能な重合開始剤を用いて製造される。

0045

本発明の水と接する金属のスケール防止剤の他の製造方法は、(A)重合体を製造後、同一反応容器において(A)重合体が入ったままの状態で(B)重合体の製造を行って2種の重合体の混合物を直接製造し、その混合物にさらに(C)モノエチレン性不飽和カルボン酸とモノエチレン性不飽和スルホン酸の共重合体(以下、「(C)共重合体」と称す)を含有する製造方法である。

0046

この(C)共重合体は、モノエチレン性不飽和スルホン酸とモノエチレン性不飽和カルボン酸の共重合体及びモノエチレン性不飽和スルホン酸とモノエチレン性不飽和カルボン酸と他の共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体との共重合体を含む。モノエチレン性不飽和スルホン酸として、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸ブタジエンスルホン酸やイソプレンスルホン酸等の共役ジエンスルホン化物スチレンスルホン酸スルホアルキル(メタ)アクリレートエステル、スルホアルキル(メタ)アリルエーテルスルホフェノ(メタ)アリルエーテル、(メタ)アリルスルホン酸などの1種以上が用いられる。モノエチレン性不飽和カルボン酸として、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸などの1種以上が用いられる。他の共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル類の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシルアルキルエステル;(メタ)アクリルアミド類の(メタ)アクリルアミド、N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド;炭素数2〜8のオレフィンのエチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、ヘキセン、2−エチルヘキセン、ペンテン、イソペンテン、オクテン、イソオクテンなど;ビニルアルキルエーテル類ビニルメチルエーテルビニルエチルエーテル;マレイン酸アルキルエステルなどがあげられ、その1種または2種以上が用いられる。なかでも好ましい具体的な化合物として、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(略号AMPS)と(メタ)アクリル酸の共重合体、3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸と(メタ)アクリル酸の共重合体、共役ジエンスルホン化物と(メタ)アクリル酸の共重合体が挙げられる。

0047

前記(C)共重合体の分子量は、重量平均分子量として通常は1,000〜100,000であり、好ましくは4,000〜20,000である。

0048

本発明の製造方法によって得られる(A)重合体と(B)重合体の混合物に(C)共重合体を含有する水と接する金属のスケール防止剤において、(A)重合体の重合体固形分量と(B)重合体の重合体固形分量の合計量に対する(C)共重合体の重合体固形分の配合量の好ましい重量比は0.4〜2.0である。

0049

本発明の(A)重合体と(B)重合体の混合物と(C)共重合体を含む水と接する金属のスケール防止剤の製造方法は、撹拌下に(A)重合体と(B)重合体の混合物と(C)共重合体を水に加えて溶解することにより製造でき、各成分の添加順序は特に限定されない。

0050

本発明の製造方法によって得られる水と接する金属のスケール防止剤には、更に公知のスケール防止剤を配合するか、あるいは別添加しても良い。このような公知のスケール防止剤の例として、有機ホスホン酸ホスホノカルボン酸ホスフィノポリカルボン酸並びにそれらの水溶性塩から選択されるリン系化合物が挙げられる。前記の有機ホスホン酸は、分子中に1個以上のホスホノ基を有する有機化合物であり、具体的には1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸アミノトリメチレンホスホン酸エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸などが挙げられ、好ましくは1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(略号:HEDP)である。

0051

前記のホスホノカルボン酸は、分子中に1個以上のホスホノ基と1個以上のカルボキシル基を有する有機化合物であり、具体的には2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、ヒドロキシホスホノ酢酸、ホスホノポリマレイン酸、ホスホコハク酸などが挙げられ、好ましくは、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸(略号:PBTC)、ホスホノポリマレイン酸である。ここで、ホスホノカルボン酸はローディア社からBRICORR288の商品名、また、BWA社からBELCOR585の商品名で市販されている。ホスホノカルボン酸は、例えば、中性アルカリ性水性溶媒中で亜リン酸とモノエチレン性不飽和カルボン酸とを遊離ラジカル開始剤の存在下で加熱することにより製造することができる(例えば、特開平4−334392号公報参照)。また、ホスホノカルボン酸は、次亜リン酸カルボニル化合物イミン化合物との反応物反応開始剤の存在下で不飽和カルボン酸と反応させることにより得ることができる(特許第3284318号公報参照)。

0052

前記のホスフィノポリカルボン酸は、分子中に1個以上のホスフィノ基と2個以上のカルボキシル基を有する化合物であり、具体的にはアクリル酸と次亜リン酸を反応させて得られるビス−ポリ(2−カルボキシエチルホスフィン酸、マレイン酸と次亜リン酸を反応させて得られるビス−ポリ(1,2−ジカルボキシエチル)ホスフィン酸、マレイン酸とアクリル酸と次亜リン酸を反応させて得られるポリ(2−カルボキシエチル)(1,2−ジカルボキシエチル)ホスフィン酸、イタコン酸と次亜リン酸を反応させて得られるビス−ポリ[2−カルボキシ−(2−カルボキシメチル)エチル]ホスフィン酸、アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸と次亜リン酸の反応物などが挙げられ、好ましくはアクリル酸とマレイン酸と次亜リン酸の反応物、イタコン酸とマレイン酸と次亜リン酸の反応物である。ホスフィノポリカルボン酸の製造は、通常、水性溶媒中で次亜リン酸とモノエチレン性不飽和カルボン酸とを遊離ラジカル開始剤の存在下で加熱することにより行なわれ、例えば、特公昭54−29316号公報、特公平5−57992号公報、特公平6−47113号公報などに開示されている。また、ホスフィノポリカルボン酸は、バイオラボ社よりBELCLENE500、BELSPERSE164、BELCLENE400などの商品名で市販されている。

0053

その他、公知のスケール分散剤防食剤、消泡剤等も、本発明の製造方法によって得られる水と接する金属のスケール防止剤に配合するか、あるいは別添加しても良い。

0054

本発明の水と接する金属のスケール防止方法は、請求項1又は2記載の製造方法によって得られる水と接する金属のスケール防止剤を対象水系に添加して、該水系におけるケイ酸塩スケールと炭酸カルシウムスケールを同時に防止する水と接する金属のスケール防止方法である。

0055

本発明の水と接する金属のスケール防止方法における対象水系は、工業用水系、冷却水系、温水系、ボイラ水系、洗浄水、工程水系、排水系などであり、中でも本発明のスケール防止方法は開放循環式冷却水系に対して顕著な効果を示す。

0056

本発明の水と接する金属のスケール防止方法において用いられるスケール防止剤の添加方法は、対象となる水系システムに対して薬注ポンプによる連続添加が好ましく、必要な薬品濃度が維持できれば間欠添加も選択できる。

0057

本発明の水と接する金属のスケール防止方法において用いられるスケール防止剤の添加個所は、添加した薬剤が速やかに均一な濃度となる撹拌の良い個所であれば特に制限はなく、対象水系の適当な個所を選択できる。

0058

本発明の水と接する金属のスケール防止方法において用いられるスケール防止剤の水系への添加量は、対象とする水系の条件、特に水質、温度などにより異なるが、一般的には該スケール防止剤に含まれる(A)重合体と(B)重合体の合計の有効成分濃度として1〜1,000mg/L、好ましくは5〜500mg/L、より好ましくは10〜100mg/Lである。

0059

また、本発明の水と接する金属のスケール防止方法において用いられるスケール防止剤は、(A)重合体と(B)重合体にさらに(C)モノエチレン性不飽和カルボン酸とモノエチレン性不飽和スルホン酸の共重合体(=(C)共重合体)を含有することができる。また、(A)重合体と(B)重合体を含有するスケール防止剤と(C)共重合体を別添加で併用することも本発明の水と接する金属のスケール防止方法に含まれる。

0060

この(A)重合体、(B)重合体及び(C)共重合体を含有するスケール防止剤を用いた場合、及び(A)重合体と(B)重合体を含有するスケール防止剤と(C)共重合体を別添加で併用する場合の水系への添加量は、対象とする水系の条件、特に水質、温度などにより異なるが、一般的には、(A)重合体の添加量と(B)重合体の添加量の合計量に対する(C)共重合体の添加量の好ましい重量比は固形分換算で0.4〜2.0である。

0061

本発明の製造方法によって得られる水と接する金属のスケール防止剤及び本発明の水と接する金属のスケール防止方法は、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、シリカ系スケールなどの各種スケールを防止できるが、特にシリカ系スケールに対して有効である。ここで、シリカ系スケールは、一般に水中のシリカが単独で無定形シリカとして析出する狭義のシリカスケール、水中のシリカと多価金属イオンが反応して生じるケイ酸塩が析出するケイ酸塩スケール、及びケイソウが水中のシリカ微粒子を抱きこみシリカ粒子凝集させて形成するシリカの付着物を含む。本発明の製造方法によって得られる水と接する金属のスケール防止剤は、特にケイ酸塩スケールの防止に有効である。ここでケイ酸塩スケールとは、ケイ酸マグネシウムケイ酸カルシウムケイ酸アルミニウムケイ酸鉄ケイ酸亜鉛など、あらゆる種類の金属のケイ酸塩を含む。

0062

本発明の製造方法によって得られる水と接する金属のスケール防止剤及び本発明の水と接する金属のスケール防止方法が適用される対象水系の水質は特に限定されないが、通常はpH6.0〜12.0、電気伝導率は500mS/m以下、Ca硬度ないしMg硬度は0〜1000mg−CaCO3/L、Mアルカリ度は0〜500mg−CaCO3/L、シリカは0〜250mg/L、塩化物イオンは0〜3000mg/L、硫酸イオンは0〜3000mg/L、全鉄は10ppm以下、好ましくは3ppm以下、アルミニウムは3mg/L以下、濁度ないし懸濁物質濃度は100度以下、好ましくは20度以下、リツナーの安定度指数は3.0以上、ランゲリア飽和指数は3.0以下の範囲である。

0063

上記の対象水系の温度は特に限定されないが、通常は0〜300℃の範囲である。また、上記の対象水系の伝熱面における流速は特に限定されないが、通常は0.1〜5.0m/sの範囲である。

0064

本発明の製造方法によって得られる水と接する金属のスケール防止剤及び本発明の水と接する金属のスケール防止方法は、対象水系のpHが8.5以上、Mg硬度(mg−CaCO3/L)とシリカ濃度(mg/L)の積が5000以上、バルク水温が40℃以上、伝熱面の表面温度が50℃以上のケイ酸マグネシウムのスケールが生成し易い条件で特に有効である。

0065

スケールとともに微生物障害は水系における主要な障害である。本発明の製造方法によって得られる水と接する金属のスケール防止剤に微生物障害防止剤を配合するか、配合できない場合は併用することが好ましい。微生物障害防止剤の例として、次亜塩素酸ナトリウム次亜塩素酸カルシウム液化塩素塩化臭素次亜塩素酸塩臭化物の反応物、クロロイソシアヌル酸類クロロジメチルヒダントイン酸類ブロモジメチルヒダントイン酸類、クロロブロモジメチルヒダントイン酸類等の水に溶解して次亜塩素酸及び/又は次亜臭素酸を生成する化合物;ヒドラジン;2−メチルイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−クロロイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−5−クロロイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4,5−ジクロロイソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−3(2H)イソチアゾリン等のイソチアゾリン化合物;2,2−ジブロモ−2−ニトエタノール、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド等の有機ブロム化合物メチレンビスチオシアネート、ビス−(1,4−ジブロムアセトキシ)−2−ブテンベンジルブロムアセテートソジウムブロマイド、α−ブロモシンナムアルデヒド、2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウム、ビス(2−ピリジンチオール−1−オキシド)亜鉛、2−(4−チアゾリルベンツイミダゾールヘキサヒドロ−1,3,5−トリス−(2−ヒドロキシエチル)−S−トリアジン、ビス(トリクロルメチルスルホンジチオカーバメート、3,5−ジメチルテトラヒドロ−1,3,5,2H−チアジアジン−2−チオンブロム酢酸エチルチオフェニルエステル、α−クロルベンゾアルドキシムアセテート、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン、3−ヨード−2−プロペニルブチルカルバメートサリチル酸サリチル酸ナトリウムパラオキシ安息香酸エステル及びp−クロル−m−キシレノール等が挙げられる。

0066

本発明の製造方法によって得られる水と接する金属のスケール防止剤及び本発明の水と接する金属のスケール防止方法において、該スケール防止剤に配合する、もしくは併用するのが好ましい微生物障害防止剤は、次亜塩素酸及びまたは次亜臭素酸を生成する化合物であるが、その添加量は対象となる開放循環式冷却水システムの循環水中遊離ハロゲン濃度(遊離塩素遊離臭素の合計)として通常0.05〜2mg/L(Cl2換算)である。

0067

以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。また、特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。

0068

1.試験装置
本発明の製造方法によって得られるスケール防止剤及び本発明のスケール防止方法のスケール防止効果を評価するために用いた試験装置ならびに試験方法は、JIS G0593−2002『水処理剤のスケール及びスケール防止評価試験方法』のオンサイト試験法準拠した。試験装置の概略を図1に示す。
熱交換器7のHE−1、HE−4、HE−5、HE−6は、JIS G0593−2002に準拠した二重管式熱交換器であり、内管外径12.7mm、長さ510mmの伝熱管を設置し、管内にカートリッジヒーターを挿入して加熱し、管外に冷却水を通水した。伝熱管の材質として、HE−1は復水器用黄銅継目無管C6871T(JIS H3300:2012)、HE−4、HE−5は機械構造用炭素鋼鋼管STKM11A(JIS G3445:2010)、HE−6はステンレス鋼管SUS304(JIS G3459)とした。 また、HE−2とHE−3は、試験用伝熱管として外径19.0mm、長さ600mmの冷間仕上げ継目無管の熱交換器用炭素鋼鋼管STB340SC(JIS G3461)を設置し、STB340SCの管内に冷却水を通水し、管外を電気ヒーターブロックにより加熱した。

0069

水槽2及び配管を含む系全体の水容量は62Lとし、水槽2の水温は35℃になるように水温制御装置9で制御した。試験用伝熱管評価部の線流速0.3m/sに相当する流量210L/hとなるように流量調整バルブ5で制御しながら循環ポンプ3で通水し、熱交換器7の熱流束は40〜70kW/m2とした。伝熱管の水側表面温度は、HE−1が63℃、HE−2が44℃、HE−3が51℃、HE−4が63℃、HE−5が70℃、HE−6が91℃であった。冷却塔1は冷却能力1.8冷却トン誘引通風向流接触型のものを使用した。熱交換器HE−6の出口水温は50℃、冷却塔入口・出口の循環水の温度差は15℃であった。循環水の電気伝導率は電気伝導率測定セル4で連続的に測定され、電気伝導率の入力信号より電気伝導率制御装置11を用いて所定の濃縮度に相当する電気伝導率になるようにブローダウンポンプ10を制御した。

0070

2.スケール防止剤
(製造例1)同一反応容器によるマレイン酸重合体とイタコン酸重合体の製造例
ガラス還流管窒素通気管、滴下ロート攪拌器付きの500mLの4つ口フラスコに無水マレイン酸18.3重量部(マレイン酸換算21.6重量部)、硫酸第一鉄7水和物0.012重量部、水31.0重量部を加え、これに48%水酸化カリウム水溶液を11.9重量部加えた。この液を90℃に加熱して液温を90〜95℃に維持しながら、35%過酸化水素7.3重量部と過硫酸ナトリウム0.25重量部を水1.0重量部に溶解した1回目の重合開始剤溶液を50分間かけて滴下した。滴下終了後、反応液にイタコン酸18.4重量部、硫酸第一鉄7水和物0.012重量部を一括で加えた。イタコン酸の添加により温度が低下したため、反応液を90℃に再加熱して液温を90〜95℃に維持しながら、1回目の重合開始剤溶液添加終了から6分後に35%過酸化水素11.0重量部と過硫酸ナトリウム0.4重量部を水1.5重量部に溶解した2回目の重合開始剤溶液を50分間かけて滴下した。2回目の重合開始剤溶液滴下終了後、硫酸第一鉄7水和物0.012重量部を加え、更に90℃で2時間加熱した後、全体で100重量部になるように水を追加投入して重量平均分子量1100のマレイン酸重合体21.6重量%とイタコン酸重合体18.4重量%を含む水溶液を得た。尚、全反応工程中、撹拌しながら窒素を連続的に通気した。高速液体クロマトグラフ法により反応液の残留モノマーを測定した結果、マレイン酸の反応率は85%、イタコン酸の反応率は98%であった。

0071

(製造例2)
1回目の重合開始剤溶液添加終了から15分後に2回目の重合開始剤溶液の添加を開始した以外は製造例1と同じ方法によりマレイン酸重合体21.6重量%とイタコン酸重合体18.4重量%を含む水溶液を製造した。マレイン酸の反応率は90%、イタコン酸の反応率は98%であった。

0072

(製造例3)
1回目の重合開始剤溶液添加終了から50分後に2回目の重合開始剤溶液添加を開始した以外は製造例1と同じ方法により、マレイン酸重合体21.6重量%とイタコン酸重合体18.4重量%を含む水溶液を得た。マレイン酸の反応率は95%、イタコン酸の反応率は99%であった。

0073

(製造例4)
1回目の重合開始剤溶液添加終了から70分後に2回目の重合開始剤溶液添加を開始した以外は製造例1と同じ方法により、マレイン酸重合体21.6重量%とイタコン酸重合体18.4重量%を含む水溶液を得た。マレイン酸の反応率は95%、イタコン酸の反応率は98%であった。

0074

(製造例5)
1回目の重合開始剤溶液添加終了から120分後に2回目の重合開始剤溶液添加を開始した以外は製造例1と同じ方法により、マレイン酸重合体21.6重量%とイタコン酸重合体18.4重量%を含む水溶液を得た。マレイン酸の反応率は90%、イタコン酸の反応率は94%であった。

0075

(製造例6)
1回目の重合開始剤溶液添加終了から22時間後に2回目の重合開始剤溶液添加を開始した以外は製造例1と同じ方法により、マレイン酸重合体21.6重量%とイタコン酸重合体18.4重量%を含む水溶液を得た。マレイン酸の反応率は84%、イタコン酸の反応率は88%であった。

0076

(製造例7)
製造例1と同じ4つ口フラスコにイタコン酸18.4重量部、硫酸第一鉄7水和物0.012重量部、水22重量部を加え、これに48%水酸化カリウム水溶液を10.9重量部加えた。窒素を連続的に通気しながら、この液を90℃に加熱した後、液温を90〜95℃に維持しながら、35%過酸化水素9.2重量部と過硫酸ナトリウム0.32重量部を水1.0重量部に溶解した1回目の重合開始剤溶液を50分間かけて滴下した。滴下終了後、無水マレイン酸18.3重量部(マレイン酸換算21.6重量部)、硫酸第一鉄7水和物0.012重量部を一括で加え、液温を90〜95℃に維持しながら、1回目の重合開始剤溶液添加終了から50分後に35%過酸化水素9.2重量部と過硫酸ナトリウム0.32重量部を水1.0重量部に溶解した2回目の重合開始剤溶液を90℃に維持しながら50分間かけて滴下した。2回目の重合開始剤溶液添加終了後、更に90℃で2時間加熱した後、全体で100重量部になるように水を追加投入してマレイン酸重合体21.6重量%とイタコン酸重合体18.4重量%を含む水溶液を得た。マレイン酸の反応率は79%、イタコン酸の反応率は95%であった。
このようにイタコン酸系重合体を製造後、同一反応容器にイタコン酸系重合体が入ったままの状態でマレイン酸系重合体の製造を行った場合、製造例1のマレイン酸系重合体を製造後、同一反応容器にマレイン酸系重合体が入ったままの状態でイタコン酸系重合体の製造する方法と比較して、マレイン酸の反応率が低かった。

0077

(製造例8)
無水マレイン酸を5.9重量部(マレイン酸換算7.0重量部)に、イタコン酸を33.0重量部に替え、1回目の重合開始剤溶液添加終了から50分後に2回目の重合開始剤溶液添加を開始した以外は製造例1と同じ方法により、マレイン酸重合体7.0重量%とイタコン酸重合体33.0重量%を含む水溶液を得た。マレイン酸の反応率は95%、イタコン酸の反応率は99%であった。

0078

(製造例9)
無水マレイン酸を11.4重量部(マレイン酸換算13.5重量部)に、イタコン酸を26.5重量部に替え、1回目の重合開始剤溶液添加終了から50分後に2回目の重合開始剤溶液添加を開始した以外は製造例1と同じ方法により、マレイン酸重合体13.5重量%とイタコン酸重合体26.5重量%を含む水溶液を得た。マレイン酸の反応率は95%、イタコン酸の反応率は99%であった。

0079

(製造例10)
無水マレイン酸を22.4重量部(マレイン酸換算26.5重量部)に、イタコン酸を13.5重量部に替え、1回目の重合開始剤溶液添加終了から50分後に2回目の重合開始剤溶液添加を開始した以外は製造例1と同じ方法により、マレイン酸重合体26.5重量%とイタコン酸重合体13.5重量%を含む水溶液を得た。マレイン酸の反応率は92%、イタコン酸の反応率は98%であった。

0080

(製造例11)
無水マレイン酸を27.9重量部(マレイン酸換算33.0重量部)に、イタコン酸を7.0重量部に替え、1回目の重合開始剤溶液添加終了から50分後に2回目の重合開始剤溶液添加を開始した以外は製造例1と同じ方法により、マレイン酸重合体33.0重量%とイタコン酸重合体7.0重量%の水溶液を得た。マレイン酸の反応率は90%、イタコン酸の反応率は98%であった。

0081

(製造例12)マレイン酸とイタコン酸の共重合体の製造例
製造例1と同じ4つ口フラスコに無水マレイン酸18.3重量部(マレイン酸換算21.6重量部)とイタコン酸18.4 重量部、硫酸第一鉄7水和物0.022重量部、水31.0重量部を加え、これに48%水酸化カリウム水溶液を11.9重量部加えた。窒素を連続的に通気しながら、液を95℃に加熱した後、液温を95℃に維持しながら35%過酸化水素18.3重量部と過硫酸ナトリウム0.65重量部を水2.5重量部に溶解した重合開始剤溶液を100分間かけて滴下後、更に95℃で2時間加熱した。マレイン酸の反応率は62%、イタコン酸の反応率は98%であった。

0082

(製造例13)水系重合法によるマレイン酸重合体の製造例
製造例1と同じ4つ口フラスコに無水マレイン酸40重量部(0.40モル)、硫酸第一鉄7水和物0.02重量部、水40重量部を加え、これに48%水酸化カリウム水溶液を11.9重量部(0.10モル)加えた。窒素を連続的に通気しながら、液を95℃に加熱した後、液温を95℃に維持しながら35%過酸化水素18.3重量部と過硫酸ナトリウム0.65重量部を水2.5重量部に溶解した重合開始剤溶液を120分間かけて滴下した。滴下終了後、硫酸第一鉄7水和物0.02重量部を一括で加え、更に95℃で2時間加熱して、重量平均分子量1000のマレイン酸重合体の水溶液を得た。マレイン酸の反応率は88%であった。
さらに、反応温度や重合開始剤の量や反応時間を変えてマレイン酸重合体の製造を行ったが、マレイン酸の反応率が90%を超えることはなかった。

0083

(製造例14)水系重合法によるイタコン酸重合体の製造例
製造例1と同じ4つ口フラスコにイタコン酸40重量部(0.3モル)、硫酸第一鉄7水和物0.02重量部、水40重量部を加え、これに48%水酸化カリウム水溶液を11.9重量部(0.1モル)加えた。窒素を連続的に通気しながら液を90℃に加熱した後、液温を95℃に維持しながら、35%過酸化水素20重量部と過硫酸ナトリウム0.3重量部を水1.2重量部に溶解した重合開始剤溶液を120分間かけて滴下した。滴下終了後、硫酸第一鉄7水和物0.02重量部を一括で加え、更に95℃で2時間加熱して、重量平均分子量1200のイタコン酸重合体の水溶液を得た。イタコン酸の反応率は99%であった。

0084

3.スケール防止効果の評価試験(1)
前記の試験装置を用いて表2に示すスケール防止剤のスケール防止効果を評価した。図1に示す試験装置の補給水12の水質はpH:7、電気伝導率:29.1mS/m、Ca硬度:68mg−CaCO3/L、Mg硬 度:35mg−CaCO3/L、Mアルカリ度:71mg−CaCO3/L、塩化物イオン:26mg/L、硫酸イオン:51mg/L、シリカ:21mg/Lであった。
初期処理として水槽2に上記補給水を張り込み、表1記載の初期処理剤200mg/Lとヘキサメタリン酸ソーダ平均縮合度40)を12.5mg/L添加して、常温で48時間循環した。



48時間経過後、アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の共重合体(=アクリル酸−AMPS共重合体)〔共重合比(重量)60:40、平均分子量10,000〕を40mg/L添加し、熱負荷を開始した。規定濃縮度に達した時点で直ちにブローダウンを開始して濃縮度が約4.7倍、循環水中のCa硬度が320mg−CaCO3/Lになるように電気伝導率を自動的に制御した。循環水の平均pHは8.9、Mg硬度は164.5mg−CaCO3/L、シリカは98.7mg/Lであった。ブローダウン開始と同時に、ブローダウン量に対して固形分換算で10mg/Lの表2に示したスケール防止剤を水処理剤注入装置13により添加した。循環水中のMg硬度(mg−CaCO3/L)とシリカ濃度(mg/L)の積は16236であった。試験期間は1ヶ月間とした。

0085

試験終了後、JIS G0593−2002に準拠した方法によりスケール付着量を測定し、テスト熱交換器HE−1、HE−4、HE−5、HE−6のスケール付着速度の平均値を求めた。スケールの元素分析蛍光X線分析法により、スケールの同定を赤外分光分析法によりそれぞれ行った。
赤外分光分析法において、炭酸カルシウムは波数1420と870と710cm−1近辺に強い吸収が見られ、ケイ酸マグネシウムは波数1020と470cm−1近辺に強い吸収が見られるため、それぞれのスケールを同定可能である。
ケイ酸マグネシウム(MgSiO3)のスケール付着速度を、下記式により計算した。
MgSiO3のスケール付着速度=(全体のスケール付着速度)×{(全体スケール中のMgO組成比、%)+(全体スケール中のSiO2組成比、%)}/100
また、炭酸カルシウム(CaCO3)のスケール付着速度を、下記式により計算した。
CaCO3のスケール付着速度=(全体のスケール付着速度)×(全体スケール中のCaCO3組成比、%)/100
赤外分光分析法のベースライン法にて波数870cm−1近辺における吸光度を求め、予め作成した検量線により炭酸カルシウムのスケール中の組成比を求めた。

0086

結果を表2に示す。
表2における用語、記号、略号の定義は次の通りである。
MAL:(A)重合体(マレイン酸系重合体)。ただし、製造例12ではマレイン酸を示す。
ITA:(B)重合体(イタコン酸系重合体)。ただし、製造例12ではイタコン酸を示す。
MAL:ITA重量比:各製造例中に含有される(A)重合体対(B)重合体の重量比を示す。ただし、製造例12ではマレイン酸対イタコン酸の重量比を示す。
混合方法
同一容器;同一反応容器において(A)重合体と(B)重合体を連続して製造して2種の重合体の混合物を得た。
別個混合;個別に製造した(A)重合体と(B)重合体を混合して2種の重合体の混合物を得た。
(MAL+ITA共重合体);マレイン酸とイタコン酸の共重合体
重合順序
MAL⇒ITA;同一反応容器において、(A)重合体を製造後、連続して(B)重合体を製造した。
ITA⇒MAL;同一反応容器において、(B)重合体を製造後、連続して(A)重合体を製造した。
重合開始剤添加間隔:1回目の重合開始剤添加終了時から2回目の重合開始剤添加開始までの時間
ポリマレイン酸A:BELCLENE200LA(商品名、BWA社製)

0087

0088

表2に示されたスケール付着速度の結果より、本発明の製造方法によって得られるスケール防止剤は、ケイ酸マグネシウムスケールと炭酸カルシウムスケールを同時に防止する優れた効果を有することが明示された。

0089

4.スケール防止効果の評価試験(2)
ブローダウン開始と同時に、ブローダウン量に対して固形分換算で50mg/Lの表3に示したスケール防止剤を添加した以外は、スケール防止効果の評価試験(1)と同じ試験装置と試験方法によりスケール防止効果を評価した。結果を表3に示す。
尚、表3における用語、記号、略号の定義は次の通りである。
アクリル酸−AMPS共重合体:(C)共重合体(アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の共重合体)〔共重合比(重量)60:40、平均分子量10,000〕
HEDP:1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸
PBTC:2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸
ポリマレイン酸A:表2と同じ

0090

0091

表3に示されたスケール付着速度の結果より、本発明の製造方法によって得られる(A)重合体と(B)重合体の混合物にさらに(C)共重合体を含むスケール防止剤は、ケイ酸マグネシウムスケールのスケール防止に特に優れた効果を発揮し、ケイ酸マグネシウムスケールと炭酸カルシウムスケールを同時に防止する特異な効果を有することが明示された。

0092

5.スケール防止効果の評価試験(3)
循環水中のMg硬度(mg−CaCO3/L)とシリカ濃度(mg/L)の積を変化させて、特にケイ酸マグネシウムスケールの防止効果を評価した。この積の値が大きい程、ケイ酸マグネシウムスケールの生成が多くなる条件になる。
実施例9及び比較例11で用いたスケール防止剤を使用し、実施例9及び比較例11での試験条件、及び循環水中のMg硬度(mg−CaCO3/L)とシリカ濃度(mg/L)の積を変更した試験条件についてスケール防止効果を評価した。

0093

実施例9及び比較例11での試験条件では、循環水中のMg硬度(mg−CaCO3/L)とシリカ濃度(mg/L)の積は16236であった。これに対し、循環水中のMg硬度(mg−CaCO3/L)とシリカ濃度(mg/L)の積を5433及び1701に変更した試験を行った。

0094

循環水中のMg硬度(mg−CaCO3/L)とシリカ濃度(mg/L)の積を5433とした試験は次の条件で行った。
補給水の水質をpH:7、電気伝導率:8.2mS/m、Ca硬度:32mg−CaCO3/L、Mg硬 度:7mg−CaCO3/L、Mアルカリ度:32mg−CaCO3/L、塩化物イオン:7mg/L、硫酸イオン:12mg/L、シリカ:11mg/Lとし、循環水中のCa硬度が270mg−CaCO3/Lになるように設定する以外は、スケール防止効果の評価試験(2)と同じ試験装置と試験方法により実施例9及び比較例11で用いたスケール防止剤のスケール防止効果を評価した。この試験の循環水の平均pHは8.7、Mg硬度は58.8mg−CaCO3/L、シリカは92.4mg/Lであり、上記の積は5433となった。

0095

また、循環水中のMg硬度(mg−CaCO3/L)とシリカ濃度(mg/L)の積を1701とした試験は次の条件で行った。
上記の積を5433とした試験において、循環水中のCa硬度が150mg−CaCO3/Lになるように設定する以外は上記の積を5433とした試験と同様に試験して、実施例9及び比較例11で用いたスケール防止剤のスケール防止効果を評価した。この試験の循環水の平均pHは8.5、Mg硬度は32.9mg−CaCO3/L、シリカは51.7mg/Lであり、上記の積は1701となった。

0096

スケール防止効果の評価試験(3)の結果を表4に示す。尚、表4の「Mg硬度×シリカ濃度」は、循環水中のMg硬度(mg−CaCO3/L)とシリカ濃度(mg/L)の積を示す。

実施例

0097

表4に示されたスケール付着速度の結果から判るように、比較例では、Mg硬度×シリカ濃度の値が大きくなり、ケイ酸マグネシウムスケールが多く生成される条件になるにつれて、ケイ酸マグネシウムスケールの付着速度も大きく増加し、併せて炭酸カルシウムスケールも増加している。一方、本発明の製造方法によって得られるスケール防止剤を用いた実施例では、Mg硬度×シリカ濃度の値にかかわらず、ケイ酸マグネシウムスケールの付着速度は低く抑えられており、炭酸カルシウムスケールの付着も認められない。以上のように、本発明の製造方法によって得られるスケール防止剤は、対象水系の水質が変動してケイ酸マグネシウムスケールの生成が多くなる条件となってもケイ酸マグネシウムスケールの付着を良好に防止でき、併せて炭酸カルシウムスケールの付着も防止できるので、ケイ酸マグネシウムスケールと炭酸カルシウムスケールを同時に防止する優れたスケール防止剤であることが明示された。

0098

本発明は、工業用水系、冷却水系、温水系、ボイラ水系、洗浄水、工程水系、排水系などの各種水系に適用でき、中でも開放循環式冷却水系における冷却塔や熱交換器や配管などへのシリカ系スケールと炭酸カルシウムスケールの付着防止に利用することができる。

0099

1冷却塔
2水槽
3循環ポンプ
4電気伝導率測定セル
5流量調整バルブ
流量計
7熱交換器
試験片保持器
9水温制御装置
10ブローダウンポンプ
11電気伝導率制御装置
12補給水
13水処理剤注入装置
14 液面制御装置

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