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技術 溶接構造用鋳鋼品及び溶接構造用鋳鋼品の製造方法

出願人 株式会社神戸製鋼所
発明者 谷和也高岡宏行篠崎智也
出願日 2015年11月5日 (5年8ヶ月経過) 出願番号 2015-217231
公開日 2017年5月25日 (4年1ヶ月経過) 公開番号 2017-088924
状態 特許登録済
技術分野 物品の熱処理
主要キーワード 溶接構造用鋳鋼 鋳造工程後 鋳鋼品 試験片温度 質量含有率 合計面積率 応力除去 粒界面積
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課題

本発明は、強度及び溶接性に優れる溶接構造用鋳鋼品を提供することを課題とする。

解決手段

本発明の溶接構造用鋳鋼品は、C:0.10質量%以上0.17質量%以下、Si:0.01質量%以上0.40質量%以下、Mn:0.7質量%以上1.4質量%以下、Ni:1.00質量%以上2.00質量%以下、Cr:0.20質量%以上0.50質量%以下、Mo:0.10質量%以上0.30質量%以下、V:0.05質量%以上0.20質量%以下、並びに残部:Fe及び不可避的不純物である組成を有し、Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5Bで表わされる溶接割れ感受性組成Pcmが0.3以下であり、フェライト及びベイナイト主組織とし、転位密度が1.35×1013m−2以上であることを特徴とする溶接構造用鋳鋼品である。

概要

背景

JIS−G5102(2015)には、引張強度が550MPa以上の溶接構造用鋳鋼品としてSCW550等が規定されている。このような強度を満足するためには、一般に合金量を増加させる必要がある。しかしながら、合金量を増加させると溶接性が低下し、溶接施工前にある温度以上へ溶接部を加熱する予熱や、溶接後に溶接部を加熱し応力除去する焼鈍後熱)が必要となることが知られている。

しかしながら、特に、例えばラダーホンネックベアリング等の船舶用船体部品などとして使用される大型鋳鋼品の場合、溶接施工を屋外で実施することが多く、予熱及び後熱を管理して実施することが困難である。そこで、特に大型の溶接構造用鋳鋼品の溶接性を向上し、予熱及び後熱を簡素化できるようにすることが期待されている。

一般的に、強度と溶接性とは互いに相反するトレードオフの関係にある。そこで、溶接構造用鋳鋼品の強度の低下を最小限に抑制しながら、溶接性を向上するために、以下の式(1)で表わされる溶接割れ感受性組成Pcmを溶接性の指標としては用いることが提案されている(例えば特開2001−181783号公報参照)。具体的には、上記公報では、溶接割れ感受性組成Pcmを0.3以下とすることで、良好な溶接性を得られるとしている。
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B ・・・(1)

しかしながら、大型の溶接構造用鋳鋼品には、さらなる強度及び溶接性の向上が求められている。具体的には、冬場に屋外でも予熱や後熱を行わずに溶接できる溶接構造用鋳鋼品が求められている。

概要

本発明は、強度及び溶接性に優れる溶接構造用鋳鋼品を提供することを課題とする。本発明の溶接構造用鋳鋼品は、C:0.10質量%以上0.17質量%以下、Si:0.01質量%以上0.40質量%以下、Mn:0.7質量%以上1.4質量%以下、Ni:1.00質量%以上2.00質量%以下、Cr:0.20質量%以上0.50質量%以下、Mo:0.10質量%以上0.30質量%以下、V:0.05質量%以上0.20質量%以下、並びに残部:Fe及び不可避的不純物である組成を有し、Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5Bで表わされる溶接割れ感受性組成Pcmが0.3以下であり、フェライト及びベイナイト主組織とし、転位密度が1.35×1013m−2以上であることを特徴とする溶接構造用鋳鋼品である。なし

目的

本発明は、比較的強度及び溶接性に優れる溶接構造用鋳鋼品を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

C:0.10質量%以上0.17質量%以下、Si:0.01質量%以上0.40質量%以下、Mn:0.7質量%以上1.4質量%以下、Ni:1.00質量%以上2.00質量%以下、Cr:0.20質量%以上0.50質量%以下、Mo:0.10質量%以上0.30質量%以下、V:0.05質量%以上0.20質量%以下、並びに残部:Fe及び不可避的不純物である組成を有し、下記式(1)で表わされる溶接割れ感受性組成Pcmが0.3以下であり、フェライト及びベイナイト主組織とし、転位密度が1.35×1013m−2以上であることを特徴とする溶接構造用鋳鋼品。Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B・・・(1)

請求項2

C:0.10質量%以上0.17質量%以下、Si:0.01質量%以上0.40質量%以下、Mn:0.7質量%以上1.4質量%以下、Ni:1.00質量%以上2.00質量%以下、Cr:0.20質量%以上0.50質量%以下、Mo:0.10質量%以上0.30質量%以下、V:0.05質量%以上0.20質量%以下、並びに残部:Fe及び不可避的不純物である組成を有し、下記式(1)で表わされる溶接割れ感受性組成Pcmが0.3以下である溶接構造用鋳鋼を鋳造する工程と、上記鋳造工程で得られた鋳造品調質する工程とを備え、上記調質工程が、上記鋳造品をオーステナイト化温度以上に加熱する工程と、上記鋳造品をフェライト及びベイナイトが主組成となるよう冷却する工程と、上記鋳造品をオーステナイト化温度より低い温度で焼き戻しする工程とを有し、上記冷却工程で、転位密度が1.35×1013m−2以上となる速度で冷却することを特徴とする溶接構造用鋳鋼品の製造方法。Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B・・・(1)

技術分野

0001

本発明は、溶接構造用鋳鋼品及び溶接構造用鋳鋼品の製造方法に関する。

背景技術

0002

JIS−G5102(2015)には、引張強度が550MPa以上の溶接構造用鋳鋼品としてSCW550等が規定されている。このような強度を満足するためには、一般に合金量を増加させる必要がある。しかしながら、合金量を増加させると溶接性が低下し、溶接施工前にある温度以上へ溶接部を加熱する予熱や、溶接後に溶接部を加熱し応力除去する焼鈍後熱)が必要となることが知られている。

0003

しかしながら、特に、例えばラダーホンネックベアリング等の船舶用船体部品などとして使用される大型鋳鋼品の場合、溶接施工を屋外で実施することが多く、予熱及び後熱を管理して実施することが困難である。そこで、特に大型の溶接構造用鋳鋼品の溶接性を向上し、予熱及び後熱を簡素化できるようにすることが期待されている。

0004

一般的に、強度と溶接性とは互いに相反するトレードオフの関係にある。そこで、溶接構造用鋳鋼品の強度の低下を最小限に抑制しながら、溶接性を向上するために、以下の式(1)で表わされる溶接割れ感受性組成Pcmを溶接性の指標としては用いることが提案されている(例えば特開2001−181783号公報参照)。具体的には、上記公報では、溶接割れ感受性組成Pcmを0.3以下とすることで、良好な溶接性を得られるとしている。
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B ・・・(1)

0005

しかしながら、大型の溶接構造用鋳鋼品には、さらなる強度及び溶接性の向上が求められている。具体的には、冬場に屋外でも予熱や後熱を行わずに溶接できる溶接構造用鋳鋼品が求められている。

先行技術

0006

特開2001−181783号公報

発明が解決しようとする課題

0007

上記状況に鑑みて、本発明は、比較的強度及び溶接性に優れる溶接構造用鋳鋼品を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0008

上記課題を解決するためになされた発明は、C:0.10質量%以上0.17質量%以下、Si:0.01質量%以上0.40質量%以下、Mn:0.7質量%以上1.4質量%以下、Ni:1.00質量%以上2.00質量%以下、Cr:0.20質量%以上0.50質量%以下、Mo:0.10質量%以上0.30質量%以下、V:0.05質量%以上0.20質量%以下、並びに残部:Fe及び不可避的不純物である組成を有し、下記式(1)で表わされる溶接割れ感受性組成Pcmが0.3以下であり、フェライト及びベイナイト主組織とし、転位密度が1.35×1013m−2以上であることを特徴とする溶接構造用鋳鋼品である。
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B ・・・(1)

0009

当該溶接構造用鋳鋼品は、C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo及びVの含有量がそれぞれ上記範囲内であり、溶接割れ感受性組成Pcmが0.3以下であり、かつ転位密度が1.35×1013m−2以上であることによって、常温よりもさらに低温の0℃においても予熱や後熱を行わずに溶接できる比較的優れた溶接性を有すると共に比較的強度に優れる。なお、「転位密度」とは、X線回折装置を用いて、Williamson−Hall法により測定される値である。

0010

また、上記課題を解決するためになされた別の発明は、C:0.10質量%以上0.17質量%以下、Si:0.01質量%以上0.40質量%以下、Mn:0.7質量%以上1.4質量%以下、Ni:1.00質量%以上2.00質量%以下、Cr:0.20質量%以上0.50質量%以下、Mo:0.10質量%以上0.30質量%以下、V:0.05質量%以上0.20質量%以下、並びに残部:Fe及び不可避的不純物である組成を有し、下記式(1)で表わされる溶接割れ感受性組成Pcmが0.3以下である溶接構造用鋳鋼を鋳造する工程と、上記鋳造工程で得られた鋳造品調質する工程とを備え、上記調質工程が、上記鋳造品をオーステナイト化温度以上に加熱する工程と、上記鋳造品をフェライト及びベイナイトが主組成となるよう冷却する工程と、上記鋳造品をオーステナイト化温度より低い温度で焼き戻しする工程とを有し、上記冷却工程で、転位密度が1.35×1013m−2以上となる速度で冷却することを特徴とする溶接構造用鋳鋼品の製造方法である。
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B ・・・(1)

0011

当該溶接構造用鋳鋼品の製造方法は、C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo及びVの含有量がそれぞれ上記範囲内あり、かつ溶接割れ感受性組成Pcmが0.3以下である鋳鋼を用いることによって、得られる溶接構造用鋳鋼品の転位密度を大きくできると共に常温よりもさらに低温の0℃においても予熱や後熱を行わずに溶接できるまで溶接性を向上できる。そして、当該溶接構造用鋳鋼品の製造方法は、転位密度が1.35×1013m−2以上となるよう冷却する工程を有することによって、得られる溶接構造用鋳鋼品の強度を向上することができる。

発明の効果

0012

以上のように、本発明の溶接構造用鋳鋼品及び溶接構造用鋳鋼品の製造方法によって得られる溶接構造用鋳鋼品は、比較的強度及び溶接性に優れる。

0013

以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。

0014

[溶接構造用鋳鋼品]
当該溶接構造用鋳鋼品は、C(炭素):0.10質量%以上0.17質量%以下、Si(シリコン):0.01質量%以上0.40質量%以下、Mn(マンガン):0.7質量%以上1.4質量%以下、Ni(ニッケル):1.00質量%以上2.00質量%以下、Cr(クロム):0.20質量%以上0.50質量%以下、Mo(モリブデン):0.10質量%以上0.30質量%以下、V(バナジウム):0.05質量%以上0.20質量%以下、並びに残部:Fe(鉄)及び不可避的不純物である組成を有する。

0015

また、当該溶接構造用鋳鋼品の下記式(1)で表わされる溶接割れ感受性組成Pcmの下限としては、上記組成により必然的に0.17であり、0.2が好ましく、0.22がより好ましい。一方、当該溶接構造用鋳鋼品の溶接割れ感受性組成Pcmの上限としては、0.3であり、0.27が好ましく、0.26がより好ましい。上記溶接割れ感受性組成Pcmが上記下限に満たない場合、強度が不十分となるおそれがある。逆に、上記溶接割れ感受性組成Pcmが上記上限を超える場合、常温で溶接すると溶接割れを生じるおそれがある。
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B ・・・(1)
(但し、式中の各元素シンボルは、それぞれの質量含有率を%で表わした値である)

0016

また、当該溶接構造用鋳鋼品は、フェライト及びベイナイトを主組織とする。なお、「フェライト及びベイナイトを主組織とする」とは、断面におけるフェライト組織及びベイナイト組織合計面積率が50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上であることを意味する。

0017

また、当該溶接構造用鋳鋼品における転位密度の下限としては、1.35×1013m−2であり、1.80×1013m−2が好ましく、2.00×1013m−2がより好ましい。一方、当該溶接構造用鋳鋼品における転位密度の上限としては、特に限定されないが、現実的には1.00×1015m−2が限界と考えられる。転位密度が上記下限に満たない場合、強度が不十分となるおそれがある。

0018

以下、当該溶接構造用鋳鋼品の各成分について説明する。

0019

<C(炭素)>
Cは、当該溶接構造用鋳鋼品の強度確保のために必要な元素である。Cの含有量の下限としては、0.10質量%であり、0.11質量%が好ましく、0.12質量%がより好ましい。一方、Cの含有量の上限としては、0.17質量%であり、0.15質量%が好ましく、0.14質量%がより好ましい。Cの含有量が上記下限に満たない場合、当該溶接構造用鋳鋼品の強度が不十分となるおそれがある。逆に、Cの含有量が上記上限を超える場合、当該溶接構造用鋳鋼品に島状マルテンサイトが生じ、これがHIC(水素誘起割れ:Hydrogen Induced Cracking)の起点となることで耐HIC性が低下することで溶接性が不十分となるおそれがある。また、Cの含有量が上記上限を超える場合、溶接時にHAZ(熱影響部:Heat Affected Zone)におけるボンド部近傍部位マルテンサイト硬度が上昇し、耐SSCC(硫化物応力腐食割れ:Sulfied Stress Corrosion Cracking)性が低下することで溶接性が不十分となるおそれがある。

0020

<Si(ケイ素)>
Siは、当該溶接構造用鋳鋼品の脱酸に必要な元素である。Siの含有量の下限としては、0.01質量%であり、0.10質量%が好ましく、0.20質量%がより好ましい。一方、Siの含有量の上限としては、0.40質量%であり、0.36質量%が好ましく、0.34質量%がより好ましい。Siの含有量が上記下限に満たない場合、当該溶接構造用鋳鋼品の脱酸が不十分となるおそれがある。逆に、Siの含有量が上記上限を超える場合、逆V偏析等の鋳造欠陥が発生し易くなることで靱性バラツキが生じるおそれや、HICの起点となる島状マルテンサイトが生成されることで耐HIC性が低下するおそれがある。

0021

<Mn(マンガン)>
Mnは、当該溶接構造用鋳鋼品の強度確保のために必要な元素である。Mnの含有量の下限としては、0.7質量%であり、0.9質量%が好ましく、1.0質量%がより好ましい。一方、Mnの含有量の上限としては、1.4質量%であり、1.3質量%が好ましく、1.2質量%がより好ましい。Mnの含有量が上記下限に満たない場合、当該溶接構造用鋳鋼品の強度が不十分となるおそれがある。逆に、Mnの含有量が上記上限を超える場合、不可避的不純物中のSと共にMnSを形成することで耐HIC性が低下して溶接性が不十分となるおそれがある。

0022

<Ni(ニッケル)>
Niは、当該溶接構造用鋳鋼品の強度向上に寄与する元素である。Niの含有量の下限としては、1.00質量%であり、1.10質量%が好ましく、1.20質量%がより好ましい。一方、Niの含有量の上限としては、2.00質量%であり、1.95質量%が好ましく、1.90質量%がより好ましい。Niの含有量が上記下限に満たない場合、当該溶接構造用鋳鋼品の強度が低下するおそれがある。逆に、Niの含有量が上記上限を超える場合、当該溶接構造用鋳鋼品の溶接時にHAZにおけるボンド部の近傍部位で硬質マルテンサイトが増加することにより耐SSCC性が低下するおそれや、当該溶接構造用鋳鋼品が不必要に高価となるおそれがある。

0023

<Cr(クロム)>
Crは、当該溶接構造用鋳鋼品の強度向上に寄与する元素である。Crの含有量の下限としては、0.20質量%であり、0.23質量%が好ましく、0.25質量%がより好ましい。一方、Crの含有量の上限としては、0.50質量%であり、0.35質量%が好ましく、0.30質量%がより好ましい。Crの含有量が上記下限に満たない場合、当該溶接構造用鋳鋼品の強度が低下するおそれがある。逆に、Crの含有量が上記上限を超える場合、当該溶接構造用鋳鋼品の溶接時にHAZにおけるボンド部の近傍部位で硬質マルテンサイトが増加し、耐SSCC性が低下することで溶接性が不十分となるおそれがある。

0024

<Mo(モリブデン)>
Moは、当該溶接構造用鋳鋼品の強度向上に寄与し、焼き戻し軟化抵抗を高める元素である。Moの含有量の下限としては、0.10質量%であり、0.12質量%が好ましく、0.13質量%がより好ましい。一方、Moの含有量の上限としては、0.30質量%であり、0.25質量%が好ましく、0.20質量%がより好ましい。Moの含有量が上記下限に満たない場合、当該溶接構造用鋳鋼品の強度が不十分となるおそれや、強度を維持したまま焼き戻しをすることが容易ではなくなるおそれがある。逆に、Moの含有量が上記上限を超える場合、当該溶接構造用鋳鋼品の溶接時にHAZにおけるボンド部の近傍部位で硬質マルテンサイトが増加し、耐SSCC性が低下することで溶接性が不十分となるおそれがある。

0025

<V(バナジウム)>
Vは、当該溶接構造用鋳鋼品の強度向上に寄与し、焼き戻し軟化抵抗を高める元素である。Vの含有量の下限としては、0.05質量%であり、0.07質量%が好ましく、0.08質量%がより好ましい。一方、Vの含有量の上限としては、0.20質量%であり、0.17質量%が好ましく、0.15質量%がより好ましい。Vの含有量が上記下限に満たない場合、当該溶接構造用鋳鋼品の強度が不十分となるおそれや、強度を維持したまま焼き戻しをすることが容易ではなくなるおそれがある。逆に、Vの含有量が上記上限を超える場合、当該溶接構造用鋳鋼品の溶接時にHAZにおけるボンド部の近傍部位で硬質マルテンサイトが増加し、耐SSCC性が低下することで溶接性が不十分となるおそれがある。

0026

<残部>
当該溶接構造用鋳鋼品は、上述した各元素以外にFe(鉄)及び不可避的不純物を残部として含有する。この不可避的不純物としては、例えばP(リン)、S(硫黄)等が挙げられる。当該溶接構造用鋳鋼品における不可避的不純物の合計含有量は、諸特性を損なわない限り、特に限定されない。具体的な当該溶接構造用鋳鋼品における不可避的不純物の合計含有量の上限としては、0.1質量%が好ましく、0.05質量%がより好ましく、0.02質量%がさらに好ましい。不可避的不純物の合計含有量を上記上限以下とすることで、当該溶接構造用鋳鋼品の強度及び溶接性の低下を抑制することができる。

0027

<P(リン)>
Pは、当該溶接構造用鋳鋼品に不可避的に含まれ、当該溶接構造用鋳鋼品の耐HIC性及び耐SSCC性を低下させる元素である。Pの含有量の下限としては、0.001質量%が好ましく、0.002質量%がより好ましい。一方、Pの含有量の上限としては、0.012質量%が好ましく、0.010質量%がより好ましく、0.008質量%がさらに好ましい。Pの含有量が上記下限に満たない場合、当該溶接構造用鋳鋼品の製造コスト上昇に見合うだけの耐HIC性及び耐SSCC性の向上効果が得られないおそれがある。逆に、Pの含有量が上記上限を超える場合、当該溶接構造用鋳鋼品の耐HIC性及び耐SSCC性が低下するおそれがある。

0028

<S(硫黄)>
Sは、当該溶接構造用鋳鋼品に不可避的に含まれ、Mnと共にMnSを形成し、当該溶接構造用鋳鋼品の耐HIC性を低下させる元素である。Sの含有量の下限としては、0.0001質量%が好ましく、0.0003質量%がより好ましい。一方、Sの含有量の上限としては、0.010質量%が好ましく、0.008質量%がより好ましく、0.006質量%がさらに好ましい。Sの含有量が上記下限に満たない場合、当該溶接構造用鋳鋼品の製造コスト上昇に見合うだけの耐HIC性の向上効果が得られないおそれがある。逆に、Sの含有量が上記上限を超える場合、当該溶接構造用鋳鋼品の耐HIC性が低下するおそれがある。

0029

<Cu(銅)>
Cuは、一般的に強度を向上させるために鋳鋼に添加されることが多い金属である。しかしながら、Cuは、溶接割れ感受性組成Pcmを大きくする金属であるため、当該溶接構造用鋳鋼品は、Cuを含まないことが好ましいが、当該溶接構造用鋳鋼品を他の鋳鋼と同じ工場で製造する場合にはCuが微量に混入するおそれがある。つまり、当該溶接構造用鋳鋼品は、Cuを意図的に添加せず、不可避的不純物としての含有のみを許容する。当該溶接構造用鋳鋼品におけるCuの含有量の上限としては、0.02質量%が好ましく、0.01質量%がより好ましい。Cuの含有量が上記上限を超える場合、溶接割れ感受性組成Pcmが大きくなり、溶接性が不十分となるおそれがある。

0030

<B(ホウ素)>
Bは、一般的に強度を向上させるために鋳鋼に添加され得る金属である。しかしながら、Bは、溶接割れ感受性組成Pcmを大きくする金属であるため、当該溶接構造用鋳鋼品では、Bを意図的に添加せず、不可避的不純物としての含有のみを許容する。Bの含有量の上限としては、0.003質量%が好ましく、0.002質量%がより好ましい。Bの含有量が上記上限を超える場合、溶接割れ感受性組成Pcmが大きくなり、溶接性が不十分となるおそれがある。

0031

[溶接構造用鋳鋼品の製造方法]
当該溶接構造用鋳鋼品は、溶接構造用鋳鋼を鋳造する工程と、上記鋳造工程で得られた鋳造品を調質する工程とを備える。当該溶接構造用鋳鋼品の製造方法は、上記鋳造工程後、上記調質工程の前に、鋳造品をオーステナイト化温度以上に加熱して焼鈍する工程をさらに備えることが好ましい。

0032

<鋳造工程>
鋳造工程では、C:0.10質量%以上0.17質量%以下、Si:0.01質量%以上0.40質量%以下、Mn:0.7質量%以上1.4質量%以下、Ni:1.00質量%以上2.00質量%以下、Cr:0.20質量%以上0.50質量%以下、Mo:0.10質量%以上0.30質量%以下、V:0.05質量%以上0.20質量%以下、並びに残部:Fe及び不可避的不純物である組成を有し、Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5Bで表わされる溶接割れ感受性組成Pcmが0.3以下である溶接構造用鋳鋼を鋳造する。

0033

<焼鈍工程>
焼鈍工程では、溶接構造用鋳鋼の鋳造品をオーステナイト化(γ化)温度以上に再加熱することにより組織均質化する。この焼鈍温度の下限としては、900℃が好ましく、910℃がより好ましい。一方、焼鈍温度の上限としては、1000℃が好ましく、980℃がより好ましい。焼鈍温度が上記下限に満たない場合、鋳造品の均質化が不十分となり、当該溶接構造用鋳鋼品の品質バラツクおそれがある。逆に、焼鈍温度が上記上限を超える場合、鋳鋼品が変形するおそれがある。

0034

上記焼鈍温度の保持時間の下限としては、1時間が好ましく、3時間がより好ましい。一方、焼鈍温度の保持時間の上限としては、15時間が好ましく、10時間がより好ましい。焼鈍温度の保持時間が上記下限に満たない場合、溶接構造用鋳鋼の均質化が不十分となるおそれがある。逆に、焼鈍温度の保持時間が上記上限を超える場合、当該溶接構造用鋳鋼品の製造コストが不必要に増大するおそれがある。

0035

<調質工程>
調質工程は、上記鋳造工程で得られる鋳造品をオーステナイト化温度以上に加熱する工程と、上記鋳造品をフェライト及びベイナイトが主組成となるよう冷却する工程と、上記鋳造品をオーステナイト化温度より低い温度で焼き戻しする工程とを有する。

0036

(加熱工程)
加熱工程では、溶接構造用鋳鋼の鋳造品をオーステナイト化温度以上に加熱して組織をオーステナイト化する。この加熱工程における加熱温度の下限としては、溶接構造用鋳鋼の組成にもよるが、860℃が好ましく、880℃がより好ましい。一方、加熱工程における加熱温度の上としては、1000℃が好ましく、980℃がより好ましい。加熱工程における加熱温度が上記下限に満たない場合、結晶粒を大きくすることができず、粒界面積が大きくなることにより、ベイナイトの生成が不十分となるおそれや、転位密度を十分に大きくできないおそれがある。逆に、加熱工程における加熱温度が上記上限を超える場合、靱性が不十分となるおそれがある。

0037

上記加熱温度での保持時間の下限としては、1時間が好ましく、2時間がより好ましい。一方、上記加熱温度での保持時間の上限としては、10時間が好ましく、7時間がより好ましい。上記加熱温度での保持時間が上記下限に満たない場合、溶接構造用鋳鋼の均質化が不十分となるおそれがある。逆に、上記加熱温度での保持時間が上記上限を超える場合、当該溶接構造用鋳鋼品の製造コストが不必要に増大するおそれがある。

0038

(冷却工程)
冷却工程では、転位密度が1.35×1013m−2以上、好ましくは1.80×1013m−2以上、より好ましくは2.00×1013m−2以上となるような速度で上記鋳造品を冷却する。具体的な冷却方法としては、例えば強制空冷水冷油冷等を挙げることがでる。

0039

冷却工程における冷却速度の下限としては、鋳造品の表面で2℃/minが好ましく、5℃/minがより好ましく、8℃/minがさらに好ましい。一方、冷却工程における冷却速度の上限としては、鋳造品の表面で250℃/minが好ましい。冷却工程における冷却速度が上記下限に満たない場合、転位密度を十分に大きくできず、強度が不十分となるおそれがある。逆に、冷却工程における冷却速度が上記上限を超える場合、当該溶接構造用鋳鋼品が不均質となるおそれがある。

0040

冷却工程における上記冷却速度での到達温度の下限としては、250℃が好ましく、280℃がより好ましい。一方、冷却工程における到達温度の上限としては、450℃が好ましく、400℃がより好ましい。冷却工程における到達温度が上記下限に満たない場合、ベイナイト組織を十分に形成できないおそれがある。逆に、冷却工程における到達温度が上記上限を超える場合にも、ベイナイト組織を十分に形成できないおそれがある。

0041

冷却工程では、上記到達温度まで上記冷却速度で冷却した後、上記到達温度を保持することで、ベイナイト組織の比率を大きくすることができる。厳密に上記到達温度で保持する必要はなく、上記到達温度まで上記冷却速度で冷却した後、常温まで徐冷してもよい。

0042

(焼き戻し工程)
焼き戻し工程では、冷却した鋳造品をオーステナイト化温度より低い温度で焼き戻しする。これにより、当該溶接構造用鋳鋼品の靱性を向上することができる。

0043

焼き戻し温度の下限としては、400℃が好ましく、500℃がより好ましい。一方、焼き戻し温度の上限としては、650℃が好ましく、630℃がより好ましい。焼き戻し温度が上記下限に満たない場合、靱性を十分に向上できないおそれがある。逆に、焼き戻し温度が上記上限を超える場合、焼き戻しにより転位密度が低下し、強度が不十分となるおそれがある。

0044

焼き戻し時間(上記焼き戻し温度での保持時間)の下限としては、2時間が好ましく、3時間がより好ましい。一方、焼き戻し時間の上限としては、15時間が好ましく、10時間がより好ましい。焼き戻し時間が上記下限に満たない場合、靱性を十分に向上できないおそれがある。逆に、焼き戻し時間が上記上限を超える場合、強度が不十分となるおそれや、不必要に製造コストが増大するおそれがある。

0045

<利点>
当該溶接構造用鋳鋼品は、C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo及びVの含有量がそれぞれ上記範囲内であり、溶接割れ感受性組成Pcmが0.3以下であり、かつ転位密度が1.35×1013m−2以上であることによって、常温よりもさらに低温の0℃においても予熱や後熱を行わずに溶接できる比較的優れた溶接性を有すると共に比較的強度に優れる。

0046

[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。

0047

例えば、当該溶接構造用鋳鋼品は、P、S及びCu以外の不可避的不純物を含んでもよく、例えばO(酸素)、H(水素)等を不可避的不純物として含み得る。

0048

以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。

0049

(実施例1乃至4及び比較例1乃至5)
溶接構造用鋳鋼品の実施例1乃至4及び比較例1乃至5として、C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo及びVを含み(比較例5はさらにCuを添加した)、残部が鉄及び不可避的不純物である溶接構造用鋳鋼を鋳造、焼鈍及び調質することによって溶接構造用鋳鋼品の試作品を得た。

0050

表1に、実施例1乃至4及び比較例1乃至5における各金属の含有量の測定値に加え、不可避的不純物としてのP及びSの含有量の測定値を示す。また、表1には、各金属の含有量から算出される溶接割れ感受性組成Pcmの値も合わせて示す。なお、上記金属及びPの含有量は島津製作所社の発光分析装置「PDA−1017」を用いて測定し、C及びSの含有量は堀場製作所社の炭素・硫黄分析装置EMIA−920V」を用いて測定した。

0051

0052

溶接構造用鋳鋼品の実施例1乃至4及び比較例1乃至5の試作は、最初に、上記組成を有する溶接構造用鋳鋼を鋳造した。続いて、この鋳造品を切断して、25mm×25mm×180mmの直方体状のテストピース(後述する引張試験及び衝撃試験用)及び220mm×170mm×60mmの直方体状のテストピース(後述する溶接割れ試験用)を作成した。

0053

先ず、上記2種類のテストピースを920℃に加熱して5時間保持することによりオーステナイト化してから300℃まで炉内で徐冷し、300℃から室温まで空冷することにより焼鈍した。この焼鈍したテストピースを890℃に加熱して3時間保持することにより十分にオーステナイト化し、続いて2℃/min又は10℃/minの冷却速度で300℃まで冷却してから300℃から室温まで空冷することにより、主組織をフェライト及びベイナイトにした。さらに、このテストピースを590℃、620℃又は640℃に加熱して6時間保持することにより焼き戻しして溶接構造用鋳鋼品の実施例1乃至4及び比較例1乃至5を得た。なお、各例に適用した冷却速度及び焼き戻し温度については、表1に合わせて示す。また、各温度は、テストピースの表面温度である。

0054

(転位密度)
溶接構造用鋳鋼品の実施例1乃至4及び比較例1乃至5を、一辺15mmの立方体に切断したものをリガク社のX線回折装置「RINT−1500」を用いて、Williamson−Hall法により測定した。

0055

(引張試験)
溶接構造用鋳鋼品の実施例1乃至4及び比較例1乃至5の引張強度を、JIS−Z2241(2015)に準拠し、14A号試験片を用い、室温にて測定した。

0056

シャルピー衝撃試験
溶接構造用鋳鋼品の実施例1乃至4及び比較例1乃至5の靱性の指標として、シャルピー衝撃試験における吸収エネルギーをJIS−Z2242(2005)に準拠して複数回測定し、その平均値及び標準偏差を算出した。

0057

(溶接割れ試験)
溶接構造用鋳鋼品の実施例1乃至4及び比較例1乃至5の溶接性について、JIS−Z3158(1993)に準拠して、y型溶接割れ試験を行った。なお、溶接は、試験片温度0℃、入熱量16kJ/cmのCO2半自動溶接を行った。なお、溶接性の評価は、y型溶接割れ試験での割れ率が0%であるものを「A」、0%超1%以下であるものを「B」、1%超であるものを「C」とした。

0058

表2に、上記転位密度測定、引張試験、シャルピー衝撃試験及び溶接割れ試験の結果を示す。なお、表中の「−」は測定を実施していないことを意味する。

0059

0060

このように、実施の形態において説明した組成及び転位密度を有する溶接構造用鋳鋼品は、550MPa以上の十分な引張強度を有し、溶接性が良好であることが確認された。

0061

但し、C含有量が1.7質量%と略上限値である実施例4は、許容範囲ではあるものの溶接性がやや低い評価となっている。

0062

一方、転位密度が1.35×1013m−2よりも小さい比較例1、2、3及び5は、引張強度が不十分となっている。

0063

また、Si含有量が0.40質量%よりも大きい比較例4は、吸収エネルギーの標準偏差、つまり靱性のバラツキが大きくなっている。

実施例

0064

また、溶接割れ感受性組成Pcmが0.3よりも大きい比較例5は、溶接性が不良であり、溶接割れ感受性組成Pcmが0.3よりは小さいもののこれに近い0.29及び0.28である実施例4及び比較例4は、溶接性がやや低い評価となっている。

0065

本発明の溶接構造用鋳鋼品及び溶接構造用鋳鋼品の製造方法は、大型の溶接構造用鋳鋼品に好適に利用される。

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