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技術 白金族元素の回収方法

出願人 国立大学法人横浜国立大学
発明者 松宮正彦
出願日 2015年11月4日 (5年0ヶ月経過) 出願番号 2015-216956
公開日 2017年5月25日 (3年6ヶ月経過) 公開番号 2017-088920
状態 特許登録済
技術分野 金属の製造または精製 固体廃棄物の処理 金属の電解製造
主要キーワード 平面四角形 電解浴温 イオン液体相 化学量論係数 定電位電解法 電析物 希少元素 陽極溶解
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年5月25日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (3)

課題

高い効率で白金族元素イオン液体に溶解させ、簡便に回収することが可能な白金族元素の回収方法を提供する。

解決手段

1種以上の白金族元素を含有する水相から前記白金族元素を選択的に回収する方法であって、前記1種以上の白金族元素を含有する資源から、酸を使用して、前記1種以上の白金族元素を溶出させ、前記1種以上の白金族元素を含有する水相を調製する溶出工程と、前記白金族元素のうち少なくとも1種を前記水相から、イオン液体からなる有機相へ選択的に抽出する溶媒抽出工程と、前記溶媒抽出工程の後、前記有機相を電解浴として電解析出を行うことにより、前記有機相から前記少なくとも1種の白金族金属を回収する電解析出工程と、を有することを特徴とする白金族元素の回収方法。

概要

背景

自動車排ガスを処理する触媒超伝導体蛍光発光体磁性体等に、希少資源である白金族元素希土類元素が使用されている。これらの元素を触媒等から回収するための技術として、環境負荷を低減した高効率な回収方法の開発が望まれている。

自動車の排ガスを処理する触媒に含まれる白金族元素を触媒から回収するための従来方法としては、湿式法及び乾式法が知られている。
湿式法は、粉砕した触媒を王水酸化剤を含む強酸に浸漬させて、白金族元素を溶解させた後、該強酸の溶液濃縮して不溶性沈殿としてろ過分離を行い、さらに水素還元を行うことによって、スポンジ状の白金族元素として回収する方法である。
乾式法は、触媒を溶鉱炉において銅とともに溶解することにより白金族元素を粗銅に溶解した状態にした後、該粗銅を電解精製して純銅にする過程沈積する電解スライムとして白金族元素を得て、さらに酸溶液に溶解させて白金族元素を分離精製する方法である。
このような溶鉱炉と電解精製を組み合わせた白金族元素の回収方法は、特許文献1に開示されている。
しかしながら、特許文献1の回収方法は、消費エネルギーが大きく、安全性を高めるために複雑で高価な装置を使用する必要がある。

上記背景に基づいて、消費エネルギーが少なく、簡便且つ安全な装置で実施することが可能な白金族元素及び希土類元素の回収方法が特許文献2に提案されている。この方法においては、難燃性難揮発性という、環境調和の観点から優れた物理化学的特性を有する「イオン液体」を利用している。具体的には、希少資源を含む廃材から白金族元素及び希土類元素をイオン液体に溶解させ、これらの元素を電解析出及び電気泳動によって選択的に分離して回収する。希少元素が回収された後のイオン液体は再利用可能であるため、環境負荷を低減する技術として有望視されている。

概要

高い効率で白金族元素をイオン液体に溶解させ、簡便に回収することが可能な白金族元素の回収方法を提供する。1種以上の白金族元素を含有する水相から前記白金族元素を選択的に回収する方法であって、前記1種以上の白金族元素を含有する資源から、酸を使用して、前記1種以上の白金族元素を溶出させ、前記1種以上の白金族元素を含有する水相を調製する溶出工程と、前記白金族元素のうち少なくとも1種を前記水相から、イオン液体からなる有機相へ選択的に抽出する溶媒抽出工程と、前記溶媒抽出工程の後、前記有機相を電解浴として電解析出を行うことにより、前記有機相から前記少なくとも1種の白金族金属を回収する電解析出工程と、を有することを特徴とする白金族元素の回収方法。なし

目的

これらの元素を触媒等から回収するための技術として、環境負荷を低減した高効率な回収方法の開発が望まれている

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
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請求項1

1種以上の白金族元素を含有する水相から前記白金族元素を選択的に回収する方法であって、前記1種以上の白金族元素を含有する資源から、酸を使用して、前記1種以上の白金族元素を溶出させ、前記1種以上の白金族元素を含有する水相を調製する溶出工程と、前記白金族元素のうち少なくとも1種を前記水相から、イオン液体からなる有機相へ選択的に抽出する溶媒抽出工程と、前記溶媒抽出工程の後、前記有機相を電解浴として電解析出を行うことにより、前記有機相から前記少なくとも1種の白金族金属を回収する電解析出工程と、を有することを特徴とする白金族元素の回収方法

請求項2

1種以上の白金族元素を含有する水相から前記白金族元素を選択的に回収する方法であって、前記白金族元素のうち少なくとも1種を前記水相から、イオン液体からなる有機相へ選択的に抽出する溶媒抽出工程を有することを特徴とする白金族元素の回収方法。

請求項3

前記溶媒抽出工程の後、前記有機相を電解浴として電解析出を行うことにより、前記有機相から前記少なくとも1種の白金族金属を回収する電解析出工程を有することを特徴とする請求項2に記載の白金族元素の回収方法。

請求項4

1種以上の白金族元素を含有する資源から、酸を使用して、前記1種以上の白金族元素を溶出させ、前記1種以上の白金族元素を含有する水相を調製する溶出工程を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の白金族元素の回収方法。

請求項5

前記水相中に前記少なくとも1種の白金族元素のイオン又は荷電錯体が形成されており、前記イオン又は前記荷電錯体と、前記有機相に含まれるイオンとのイオン交換によって、前記白金族元素を前記有機相に抽出することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の白金族元素の回収方法。

請求項6

前記少なくとも1種の白金族元素と結合して、前記有機相中中性錯体及び荷電錯体のうち少なくとも一方を形成可能な1種以上の抽出剤が、前記有機相又は前記水相に含まれていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の白金族元素の回収方法。

請求項7

前記イオン液体は、前記少なくとも1種の白金族元素を前記水相から選択的に抽出する作用を有することを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の白金族元素の回収方法。

請求項8

前記溶媒抽出工程において、前記有機相に対して前記水相から前記白金族元素を抽出した後、さらに、同じ有機相に対して新たな前記水相から前記白金族元素を抽出することにより、当該有機相中の前記白金族元素の濃度を高めることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の白金族元素の回収方法。

請求項9

前記溶媒抽出工程において、前記電解析出工程で使用された前記有機相を再利用することを特徴とする請求項1又は3に記載の白金族元素の回収方法。

請求項10

前記水相は鉄族元素をさらに含有し、前記水相に沈殿剤を添加して、沈殿処理によって前記鉄族元素を除去して得られた水相を、前記溶媒抽出工程で使用することを特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載の白金族元素の回収方法。

請求項11

前記水相は希土類元素をさらに含有し、前記溶媒抽出工程において前記水相から前記少なくとも1種の白金族元素を抽出し、その後、前記希土類元素をイオン液体からなる有機相へ抽出する希土類抽出工程を有することを特徴とする請求項1〜10の何れか一項に記載の白金族元素の回収方法。

技術分野

0001

本発明は、白金族元素回収方法に関する。より詳しくは、水相から有機相に白金族元素を抽出し、その後有機相から電気化学的手法により白金族元素を回収する方法に関する。

背景技術

0002

自動車排ガスを処理する触媒超伝導体蛍光発光体磁性体等に、希少資源である白金族元素や希土類元素が使用されている。これらの元素を触媒等から回収するための技術として、環境負荷を低減した高効率な回収方法の開発が望まれている。

0003

自動車の排ガスを処理する触媒に含まれる白金族元素を触媒から回収するための従来方法としては、湿式法及び乾式法が知られている。
湿式法は、粉砕した触媒を王水酸化剤を含む強酸に浸漬させて、白金族元素を溶解させた後、該強酸の溶液濃縮して不溶性沈殿としてろ過分離を行い、さらに水素還元を行うことによって、スポンジ状の白金族元素として回収する方法である。
乾式法は、触媒を溶鉱炉において銅とともに溶解することにより白金族元素を粗銅に溶解した状態にした後、該粗銅を電解精製して純銅にする過程沈積する電解スライムとして白金族元素を得て、さらに酸溶液に溶解させて白金族元素を分離精製する方法である。
このような溶鉱炉と電解精製を組み合わせた白金族元素の回収方法は、特許文献1に開示されている。
しかしながら、特許文献1の回収方法は、消費エネルギーが大きく、安全性を高めるために複雑で高価な装置を使用する必要がある。

0004

上記背景に基づいて、消費エネルギーが少なく、簡便且つ安全な装置で実施することが可能な白金族元素及び希土類元素の回収方法が特許文献2に提案されている。この方法においては、難燃性難揮発性という、環境調和の観点から優れた物理化学的特性を有する「イオン液体」を利用している。具体的には、希少資源を含む廃材から白金族元素及び希土類元素をイオン液体に溶解させ、これらの元素を電解析出及び電気泳動によって選択的に分離して回収する。希少元素が回収された後のイオン液体は再利用可能であるため、環境負荷を低減する技術として有望視されている。

先行技術

0005

特開平7−243080号公報
特許第5709102号公報

発明が解決しようとする課題

0006

特許文献2に開示された技術を適用する場合、廃材に含まれる白金パラジウムなどの白金族元素をイオン液体に溶解させる必要がある。その方法として、廃材をハロゲン化物等に転換後、イオン液体中錯形成剤を添加して溶解させたり、廃材をイオン液体中で陽極溶解させたりする方法が特許文献2に例示されている。しかしながら、より高い効率的かつ大規模処理量に対応するためには、水相とイオン液体相間での連続的な操業が必要となる。そのため、白金族元素が錯形成した水相中の白金族錯体をイオン液体中に溶解させ、その白金族元素を簡便に回収し、さらに当該イオン液体を再利用可能とする技術が求められている。

0007

本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、高い効率で白金族元素をイオン液体に溶解させ、簡便に回収することが可能な白金族元素の回収方法を提供する。

課題を解決するための手段

0008

[1] 1種以上の白金族元素を含有する水相から前記白金族元素を選択的に回収する方法であって、前記1種以上の白金族元素を含有する資源から、酸を使用して、前記1種以上の白金族元素を溶出させ、前記1種以上の白金族元素を含有する水相を調製する溶出工程と、前記白金族元素のうち少なくとも1種を前記水相から、イオン液体からなる有機相へ選択的に抽出する溶媒抽出工程と、前記溶媒抽出工程の後、前記有機相を電解浴として電解析出を行うことにより、前記有機相から前記少なくとも1種の白金族金属を回収する電解析出工程と、を有することを特徴とする白金族元素の回収方法。
[2] 1種以上の白金族元素を含有する水相から前記白金族元素を選択的に回収する方法であって、前記白金族元素のうち少なくとも1種を前記水相から、イオン液体からなる有機相へ選択的に抽出する溶媒抽出工程を有することを特徴とする白金族元素の回収方法。
[3] 前記溶媒抽出工程の後、前記有機相を電解浴として電解析出を行うことにより、前記有機相から前記少なくとも1種の白金族金属を回収する電解析出工程を有することを特徴とする上記[2]に記載の白金族元素の回収方法。
[4] 1種以上の白金族元素を含有する資源から、酸を使用して、前記1種以上の白金族元素を溶出させ、前記1種以上の白金族元素を含有する水相を調製する溶出工程を有することを特徴とする上記[2]又は[3]に記載の白金族元素の回収方法。
[5] 前記水相中に前記少なくとも1種の白金族元素のイオン又は荷電錯体が形成されており、前記イオン又は前記荷電錯体と、前記有機相に含まれるイオンとのイオン交換によって、前記白金族元素を前記有機相に抽出することを特徴とする上記[1]〜[4]の何れか一項に記載の白金族元素の回収方法。
[6] 前記少なくとも1種の白金族元素と結合して、前記有機相中中性錯体及び荷電錯体のうち少なくとも一方を形成可能な1種以上の抽出剤が、前記有機相又は前記水相に含まれていることを特徴とする上記[1]〜[5]の何れか一項に記載の白金族元素の回収方法。
[7] 前記イオン液体は、前記少なくとも1種の白金族元素を前記水相から選択的に抽出する作用を有することを特徴とする上記[1]〜[6]の何れか一項に記載の白金族元素の回収方法。
[8] 前記溶媒抽出工程において、前記有機相に対して前記水相から前記白金族元素を抽出した後、さらに、同じ有機相に対して新たな前記水相から前記白金族元素を抽出することにより、当該有機相中の前記白金族元素の濃度を高めることを特徴とする上記[1]〜[7]の何れか一項に記載の白金族元素の回収方法。
[9] 前記溶媒抽出工程において、前記電解析出工程で使用された前記有機相を再利用することを特徴とする上記[1]又は[3]に記載の白金族元素の回収方法。
[10] 前記水相は鉄族元素をさらに含有し、前記水相に沈殿剤を添加して、沈殿処理によって前記鉄族元素を除去して得られた水相を、前記溶媒抽出工程で使用することを特徴とする上記[1]〜[9]の何れか一項に記載の白金族元素の回収方法。
[11] 前記水相は希土類元素をさらに含有し、前記溶媒抽出工程において前記水相から前記少なくとも1種の白金族元素を抽出し、その後、前記希土類元素をイオン液体からなる有機相へ抽出する希土類抽出工程を有することを特徴とする上記[1]〜[10]の何れか一項に記載の白金族元素の回収方法。

0009

本明細書および特許請求の範囲において、「白金族元素」とは、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)及びロジウム(Rh)の合計6種をいう。また、「鉄族元素」とは、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)をいう。また、「希土類元素」とは、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、及びランタノイドをいう。また、「オニウム」とは、ホスホニウムアンモニウム包括する呼称である。
本明細書および特許請求の範囲において、「中性錯体」とは、電気的に中性であり、溶媒中の電気泳動によって正極へも負極へも泳動されない錯体をいう。また、「荷電錯体」とは、電気的に正又は負に荷電しており、溶媒中の電気泳動によって正極又は負極へ泳動され得る錯体をいう。

発明の効果

0010

本発明の白金族元素の回収方法によれば、高い効率で白金族元素をイオン液体に溶解させ、簡便に回収することができる。また、回収を終えた後のイオン液体を再利用することが可能であり、環境負荷を低減する技術として有用である。

図面の簡単な説明

0011

本発明の白金族元素の回収方法の一例を示す流れ図である。
本発明の白金族元素の回収方法の別の一例を示す流れ図である。
実施例1における抽出剤の濃度と白金族元素の抽出率との関係を示す図である。

0012

本発明の白金族元素の回収方法は、1種以上の白金族元素を含有する水相から前記白金族元素を選択的に回収する方法であって、前記白金族元素のうち少なくとも1種を前記水相からイオン液体からなる有機相へ選択的に抽出する溶媒抽出工程を有する。
ここで、「白金族元素の回収」の意味は、廃棄物に由来する白金族元素を再利用する目的で取り出すことだけに限定されず、白金族元素の由来とは無関係に、水相から有機相に抽出した白金族元素を任意の形態で、任意の目的のために取り出すことを含む。

0013

[溶媒抽出工程]
前記水相から前記有機相へ白金族元素を抽出する方法としては、例えば、容器内で水相と有機相を接触させた状態で激しく撹拌する方法が挙げられる。撹拌後、相分離した有機相中には、分配平衡に従って白金族元素が抽出されているので、有機相とともに白金族元素を回収することができる。

0014

前記水相に複数の白金族元素が含有されている場合、同一の有機相に2種以上の白金族元素を抽出してもよいが、1つの有機相に対して1種の白金族元素を抽出する方が、選択性を高める観点から好ましい。

0015

前記水相から特定の白金族元素のみを前記有機相に抽出する方法として、例えば、白金族元素の種類に応じたイオン液体の種類を選択して使用する方法、白金族元素の種類に応じた抽出剤を有機相又は水相中に添加する方法、等が挙げられる。

0016

一例として、Pt(IV)及びRu(III)が含有されている水相に対して、トリエチル−n−ペンチルホスホニウム・ビストリフルオロメチルスルホニルアミド(以下、[P2225][TFSA]と表記する。下記式(A)参照。)からなる有機相を使用することにより、Pt(IV)をRu(III)よりも優先的に有機相へ抽出することができる。

0017

0018

なお、単一の有機相中に複数の白金族元素を抽出した場合、後述する電解析出工程において、各元素に対応した過電圧印加することにより、個々の白金族元素を分離して回収することができる。

0019

本発明の溶媒抽出工程において、前記水相中に前記少なくとも1種の白金族元素のイオン又は荷電錯体が形成されており、前記イオン又は前記荷電錯体と、前記有機相に含まれるイオンとのイオン交換によって、前記白金族元素を前記有機相に抽出することが好ましい。
上記水相中で白金族元素のイオン又は荷電錯体が形成されていることにより、前記水相中に白金族元素が安定して溶解し、白金族元素が沈殿することを抑制することができる。さらに、イオン交換によって、目的の白金族元素をイオン液体からなる有機相へ高い抽出率で抽出することができる。

0020

本発明の溶媒抽出工程において、前記有機相へ抽出された前記少なくとも1種の白金族元素は、中性錯体及び荷電錯体のうちの少なくとも一方を形成していることが好ましい。白金族元素が上記錯体を形成することにより、有機相中での安定性が高められ、水相へ再分配されることを抑制することができる。

0021

本発明の溶媒抽出工程において、前記少なくとも1種の白金族元素と結合して、前記有機相中で中性錯体及び荷電錯体のうち少なくとも一方を形成可能な1種以上の抽出剤が、前記有機相又は前記水相に含まれていることが好ましい。ここで、前記抽出剤が前記白金族元素に結合する相は、水相であってもよいし、有機相であってもよい。
抽出時の有機相又は水相に1種以上の前記抽出剤が含まれていることにより、特定の白金族元素の選択性を高めたり、抽出率を高めたり、有機相中での白金族元素の溶解性(安定性)を高めたりすることができる。添加する1種以上の抽出剤の合計濃度としては、例えば、0.01〜1.0Mが挙げられる。

0022

また、1種の抽出剤に対して適切な中性配位子を作用させ、協同効果により抽出率を高めることも効果的な手法である。なお、協同効果とは溶媒抽出工程において、中性配位子の作用により錯形成状態が変化し、抽出剤単独で使用した場合よりも分配比が大きくなる現象のことである。
白金族元素の中で特にRu金属については、従来はRu酸化物を生成させ、蒸留により回収する方法が一般的であった。Ru金属についても、他の白金族金属と同様に溶媒抽出工程において、分離・精製できればプロセスの簡素化に直結するため、有効な手段である。

0023

有機相(又は水相)に添加された抽出剤の一部は、有機相に接する水相へ分配され(又は水相に接する有機相に分配され)、水相中の白金族元素に作用する。
水相の塩化物イオン濃度が高い場合には、逐次反応が進み、[MCl42-]のような高次アニオン錯体が形成されるため、添加した抽出剤のうち塩基性抽出剤が機能し易くなり、水相の塩化物イオン濃度が低い場合には、逐次反応が進行せず、[Mn+]のようなカチオン種として溶存しているため、添加した抽出剤のうち溶媒和抽出剤が機能し易くなる。ここで、高い塩化物イオン濃度としては、例えば5.0M以上が挙げられ、低い塩化物イオン濃度としては、例えば0.1mM以下が挙げられる。塩化物イオンは、例えば、後述する溶出工程で使用した酸に由来することがある。

0024

塩基性抽出剤は、水相中でプロトン化して正に帯電した後、白金族元素のアニオン錯体に配位し、中性錯体もしくは荷電錯体を形成する。塩基性抽出剤としては、例えば、トリn‐オクチルアミン、トリ‐イソオクチルアミン、トリ‐n‐ドデシルアミン等が挙げられる。
溶媒和抽出剤は、水相中で荷電状態とならず、水相中の白金族元素のカチオン種に溶媒和することで荷電錯体を形成する。荷電錯体を形成した後、水相中のアニオンが配位する場合は中性錯体を形成する。溶媒和抽出剤としては、例えば、トリ‐n‐ブチルホスフェート、トリ‐n‐オクチルホスフェート、トリ‐オクチホスフィンオキシド、ジ‐n‐ヘキシルスルフィドジ‐n‐オクチルスルフィド等が挙げられる。
以下、特定の白金族元素の抽出に適した抽出剤を例示する。

0025

〔パラジウムの抽出〕
パラジウムの抽出に好適な抽出剤としては、例えば、スルフィド系抽出剤であるジアルキルスルフィド(DAS)、アミン系抽出剤であるトリアルキルアミン(TAA)等が挙げられる。
DASとしては、例えば、ジ‐n‐オクチルスルフィド(DOS)、ジ‐n‐ヘキシルスルフィド(DHS)等が挙げられる。
TAAとしては、例えば、トリ‐n‐オクチルアミン(TOA)又はそのハロゲン化物等が挙げられる。
これらのうち、パラジウムの選択性及び抽出率を高める観点からDOSがより好ましい。

0026

抽出剤としてDOSを用いた場合、水相と有機相の間で下記式のカチオン交換が生じて、有機相にパラジウムが選択的に抽出される。なお、下記式において、[ ]orgは有機相中の溶質を示し、[ ]aqは水相中の溶質を示し、[R2S]はDOSを表し、Rはn‐オクチル基を表し、[P2225+]はトリエチル−n−ペンチルホスホニウムカチオンを表す。
<カチオン交換>
[Pd2+]aq + n[R2S]org + [P2225+]org → [Pd(R2S)n]2+org + [P2225+]aq ・・・(1)

0027

上記式(1)は、水相中のPd(II)と、有機相中のDOSが化学量論係数nで溶媒和することにより、有機相中にパラジウムを含むカチオン錯体が形成されることを表す。ここで、カチオン錯体が有機相側に移行したため、電気的中性を維持するため、有機相側の[P2225+]orgが水相側へ[P2225+]aqとして放出されるカチオン交換反応が進行する。[P2225+]は有機相を構成するイオン液体のカチオン成分である。

0028

抽出剤としてTOAを用いた場合、水相と有機相の間で下記式のアニオン交換が生じて、有機相にパラジウムが選択的に抽出される。なお、下記式において、[ ]orgは有機相中の溶質を示し、[ ]aqは水相中の溶質を示し、[R3N]はTOAを表し、Rはn‐オクチル基を表し、[HCl]は塩化水素を表す。
<アニオン交換>
[R3N]org + [HCl]aq → [R3NH+Cl-]org ・・・(2)
[PdCl4]2-aq + 2[R3NH+Cl-]org → [(R3NH)2(PdCl4)]org + 2[Cl-]aq ・・・(3)

0029

上記式(2)は、有機相中のTOAは水相中において、プロトン化して正に帯電した後、塩化物イオンが配位して、有機相中に中性錯体が形成されることを表す。
上記式(3)は、水相中のPd(II)及び4個の塩化物イオンからなる2価のアニオン錯体と、有機相中の2個のプロトン化した抽出剤:[R3NH+]が配位することにより、有機相中にパラジウムを含む中性錯体が形成され、水相中に2個の塩化物イオンが放出されることを表す。
上記式(3)をPdから白金族元素Mに拡張すると、下記式(4)で表される。

0030

[MClm]n-aq + n[R3NH+Cl-]org → [(R3NH)n(MClm)]org + n[Cl-]aq ・・・(4)

0031

上記式(4)は、水相中の白金族元素M及びm個の塩化物イオンからなるn価のアニオン錯体と、有機相中のn個の中性錯体(あるいはn個の荷電錯体[R3NH+])とが配位することにより、有機相中に白金族元素を含む中性錯体が形成され、水相中にn個の塩化物イオンが放出されることを表す。
この様なアニオン交換が生じるためには、水相中の白金族元素が予めアニオン錯体を形成していることが望ましい。後述するように塩酸、王水等の酸を使用して白金族元素を含有する水相を調製することにより、白金族元素のアニオン錯体を水相中に形成することができる。

0032

〔白金の抽出〕
白金の抽出に好適な抽出剤としては、例えば、アミン系抽出剤である前記TOA、第四級アンモニウムのハロゲン化物塩であるトリ‐n‐オクチル‐メチルアンモニウム塩化物塩([N8881]Cl)、溶媒和抽出剤であるトリ‐n‐ブチル‐ホスフェート(TBP)(別名:リン酸トリブチル)等が挙げられる。
これらのうち、白金の選択性及び抽出率を高める観点からTOAと[N8881]Clがより好ましい。

0033

抽出剤としてTOAを用いた場合、水相と有機相の間で下記式のアニオン交換が生じて、有機相に白金が選択的に抽出される。なお、下記式において、[ ]orgは有機相中の溶質を示し、[ ]aqは水相中の溶質を示し、R3NはTOAを表し、Rはn‐オクチル基を表し、HClは塩化水素を表す。
<アニオン交換>
[PtCl6]2-aq + 2[R3NH+Cl-]org → [(R3NH)2(PtCl6)]org + 2[Cl-]aq ・・・(5)

0034

上記式(5)は、水相中のPt(IV)及び6個の塩化物イオンからなる2価のアニオン錯体と、有機相中の2個の前記中性錯体(あるいはn個の荷電錯体[R3NH+])とが配位することにより、有機相中に白金を含む中性錯体が形成され、水相中に2個の塩化物イオンが放出されることを表す。

0035

抽出剤として[N8881]Clを用いた場合、水相と有機相の間で下記式のカチオン交換が生じて、有機相に白金が選択的に抽出される。なお、下記式において、[ ]orgは有機相中の溶質を示し、[ ]aqは水相中の溶質を示し、[N8881+]はトリ‐n‐オクチル‐メチルアンモニウムカチオンを表す。
<カチオン交換>
[Pt4+]aq + [N8881+]org → [Pt4+]org + [N8881+]aq ・・・(6)

0036

上記式(6)は、水相中のPt(IV)と、有機相中の4モルの[N8881+]とが接触することにより、有機相へPt(IV)が抽出され、水相へ[N8881+]が移ることを表す。

0037

〔ルテニウムの抽出〕
ルテニウムの抽出に好適な抽出剤としては、例えば、オキシン(別名:8‐ヒドロキシキノリン)、アミン系抽出剤である前記TOA、溶媒和抽出剤であるトリ‐n‐ブチル‐ホスフェート(TBP)(別名:リン酸トリブチル)等が挙げられる。
これらのうち、ルテニウムの選択性及び抽出率を高める観点からTBPがより好ましい。TBPを抽出剤として使用する場合、下記式(7)に示す様に、[RuCl6]3-を含有する水相にチオシアン酸アンモニウム(NH4SCN)を添加することで、[Ru-SCN]アニオン錯体を形成した後、TBPにより有機相へ抽出する方法(イオン対抽出)が特に好ましい。

0038

[Ru(Cl)m(SCN)m’]n-aq + 3[TBP]org → [Ru(Cl)m(SCN)m’(TBP)3]n-org ・・・(7)

0039

上記式(7)において、[ ]orgは有機相中の溶質を示し、[ ]aqは水相中の溶質を示し、m、m'、nはそれぞれモル数又は価数を表す。

0040

〔イリジウムの抽出〕
イリジウムの抽出に好適な抽出剤としては、アミン系抽出剤である前記TOA、溶媒和抽出剤である前記TBP等が挙げられる。
水相中、イリジウムはIr(III)とIr(IV)の何れの価数も取り得る。Ir(III)は有機相へ抽出し難いため、Ir(IV)に転換した後で上記の抽出剤を用いて有機相へ抽出することが好ましい。
TOAを使用する場合、下記式(8)で表されるアニオン交換によってIr(IV)が抽出される。TBPを使用する場合、下記式(9)で表されるカチオン交換によってIr(IV)が抽出される。なお、下記式中、[ ]orgは有機相中の溶質を示し、[ ]aqは水相中の溶質を示し、Cationは有機相のイオン液体を構成するカチオン成分を表す。

0041

<アニオン交換>
[IrCl6]2-aq + 2[R3NH+Cl-]org → [(R3NH)2(IrCl6)]org + 2[Cl-]aq ・・・(8)
<カチオン交換>
[Ir4+]aq + [Cation]org → [Ir4+] org + [Cation]aq ・・・(9)

0042

〔複数の白金族元素の分離〕
イオン液体からなる有機相において、前述した抽出剤は下記の性質を有する。
抽出剤のDOSを使用すると、Pd(II)の抽出率が高い。
抽出剤のTOAを使用すると、Pd(II)、Pt(IV)及びIr(IV)の抽出率が高く、Ir(III)の抽出率は低い。
抽出剤の[N8881]Clを使用すると、Pt(IV)の抽出率が高い。
抽出剤のTBPを使用すると、Ru(III)の抽出率が高く、Ir(III)の抽出率は低い。

0043

各抽出剤の上記性質を利用して、水相中に複数の白金族元素、Ru(III)、Pd(II)、Pt(IV)及びIr(IV)若しくはIr(III)が含まれる場合、例えば、図1に示すチャートに従って、白金族元素を一連抽出処理によって分離することができる。

0044

図1に示す具体例においては、まず、DOSを含むイオン液体[P2225][TFSA]からなる有機相を使用し、Pd(II)を選択的に有機相へ抽出する。次に、水相中のRu(III)、Pt(IV)及びIr(IV)のうち、Ir(IV)を亜硫酸ガス等の還元剤によって三価のIr(III)に還元した後で、TOA又は[N8881]Clを含むイオン液体[P2225][TFSA]からなる有機相を使用し、Pt(IV)を選択的に有機相へ抽出する。続いて、水相中にチオシアン酸アンモニウムを添加して、水相中のRu(III)及びIr(III)のうち、Ru(III)のRu-SCN錯体を形成した後で、TBPを含むイオン液体[P2225][TFSA]からなる有機相を使用し、Ru-SCN錯体を選択的に有機相へ抽出する。次いで、水相中のIr(III)を次亜鉛素酸ナトリウム等の酸化剤によって四価のIr(IV)へ酸化した後で、TOAを含むイオン液体[P2225][TFSA]からなる有機相を使用し、Ir(IV)を選択的に有機相へ抽出する。
各有機相に抽出された白金族元素は、電解析出等によって回収することができる。また、白金族元素を回収した後の各有機相は再び抽出処理に使用することができる。

0045

〔白金族元素とその他の元素との分離〕
別の具体例として、水相中に、鉄族元素(例えばFe)、白金族元素(例えばPd, Pt)、希土類元素(例えばLa, Ce, Pr)、アルカリ土類元素(例えばMg)及び典型金属元素(例えばAl)が含まれる場合、例えば、図2に示すチャートに従って、白金族元素を一連の抽出処理によって分離することができる。

0046

図2においては、まず、水相中に塩酸及びリン酸三ナトリウムを添加して、pH3.4に調整することによって、FePO4及びAlPO4の沈殿を形成して、これらを遠心分離処理、ろ過処理等の常法によって水相中から除去する。次に、DOSを含むイオン液体からなる有機相を使用し、Pd(II)を選択的に有機相へ抽出する。次いで、TOA又は[N8881]Clを含むイオン液体からなる有機相を使用し、Pt(IV)を選択的に有機相へ抽出する。続いて、TBPを含むイオン液体[P2225][TFSA]からなる有機相を使用し、希土類元素を選択的に有機相へ抽出する。最後に、水相中には他の元素から分離されたMg(II)が残る。
各有機相に抽出された白金族元素、希土類元素は、電解析出等によって回収することができる。また、白金族元素、希土類元素を回収した後の各有機相は再び抽出処理に使用することができる。

0047

〔イオン液体〕
本発明にかかる溶媒抽出工程で使用するイオン液体は、有機相を構成し、水相と相分離する公知のイオン液体が適用可能であり、電解浴として使用可能な電気化学的に安定なイオン液体が好ましい。有機相の総質量に対するイオン液体の含有量は、例えば、50〜100質量%が好ましく、80〜99質量%がより好ましい。イオン液体には抽出剤が含まれることが好ましい。具体的な好ましいイオン液体として、例えば、以下のホスホニウム系及びアンモニウム系イオン液体が挙げられる。

0048

式PR1R1R1R2で表される四級ホスホニウムのカチオン成分、及び式NR3R3R3R4で表される四級アンモニウムのカチオン成分から選択される少なくとも1種類のカチオン成分と、ビストリフルオロメチルスルホニルアミド(N[SO2CF3]2)、ビス(フルオロスルホニル)アミド(N[SO2F]2)、トリフルオロメタンスルホネート(SO3CF3)、メタンスルホネート(SO3CH3)、トリフルオロ酢酸(CF3COO)、チオシアネート(SCN)、ジシアナミド(N(CN)2)、ジアルキルリン酸(式:(RO)2POO)、ジアルキルジチオリン酸(式:(RO)2PSS)、脂肪族カルボン酸(式:RCOO)、ヘキサフルオロホスフェート(PF6)、テトラフルオロボレート(BF4)及びハロゲン等から選択される少なくとも1種類のアニオン成分と、によって構成されるホスホニウム系及びアンモニウム系イオン液体が好ましい。
ここで、上記の式中のR等は以下の意味である。

0049

・Rは、炭素数1〜6の脂肪族又は芳香族炭化水素基を表す。
・R1は、置換基を有していてもよい炭素数2〜6の直鎖状分岐状若しくは脂環状のアルキル基、又はR’-O-(CH2)m-で表されるアルコキシアルキル基(R’はメチル基またはエチル基を表し、mは1〜4の整数である。)を表す。
・R3は、置換基を有していてもよい炭素数2〜6の直鎖状、分岐状又は脂環状のアルキル基を表す。
・R2, R4は、置換基を有していてもよい炭素数1〜14の直鎖状、分岐状又は脂環状のアルキル基を表す。
・R1, R2, R3, R4が有していてもよい前記置換基としては、例えば、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン、フッ素原子置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基酸素原子(=O)等が挙げられる。
・各式中に存在する複数のR1, R3は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
・R1とR2は、互いに異なる基であり、R1R1R1R2の炭素数の総数は20以下である。
・R3とR4は、互いに異なる基であり、R3R3R3R4の炭素数の総数は20以下である。

0050

上記のイオン液体の他、窒素含有環式化合物骨格とするカチオン成分を有する公知のイオン液体、例えば、イミダゾリウム塩ピロリジニウム塩、ピペリジニウム塩、ピリジニウム塩、モルホリニウム塩等も、溶媒抽出工程における有機相として適用可能である。
有機相に抽出した白金族元素を電解析出によって回収する場合には、電気化学的安定性に優れた上記のホスホニウム系及びアンモニウム系イオン液体が好適である。

0051

本発明の溶媒抽出工程において、前記有機相に対して前記水相から前記白金族元素を抽出した後、さらに、同じ有機相に対して新たな前記水相から前記白金族元素を抽出することにより、当該有機相中の前記白金族元素の濃度を高めることができる。白金族元素の濃度が高いほど、後段の電解析出工程における白金族元素の回収率が高まるため、好ましい。
前記同じ有機相に対して新たな水相を接触させて前記抽出を行う回数は、例えば、2回〜100回が挙げられる。回数が多くなる程、有機相中に抽出される白金族元素の濃度は高まるが、抽出は分配平衡に従うため、平衡に達すると抽出は頭打ちとなる。
前記新たな水相は、先に抽出された水相の組成と同じであってもよいし、異なっていてもよい。前記新たな水相は、先に抽出された水相に別の水相が継ぎ足されたものであってもよいし、先に抽出された水相が一切含まれず、完全に別の水相であってもよい。

0052

以上で説明した溶媒抽出工程は、白金族元素を回収する目的に限らず、単に水相から有機相へ白金族元素を抽出することを目的として、溶媒抽出工程を単独で実施することもできる。有機相へ抽出した白金族元素に対して、例えば、有機相中で任意の化学反応を行う等、他の処理を加えてもよい。

0053

[電解析出工程]
本発明の白金族元素の回収方法において、溶媒抽出工程で抽出した白金族元素を含む有機相を電解浴として電解析出を行うことにより、前記有機相から少なくとも1種の白金族元素を回収する電解析出工程を有することが好ましい。

0054

通常、水相中に含まれる白金族元素を電解析出によって回収した場合、水相中の塩酸に由来する次亜塩素酸及び塩素アノード側で発生したり、水の電気分解による水素ガスカソード側で発生したりする。これらの副生成物が発生する反応は、白金族元素の電解析出と競合する反応であり、白金族元素の電解析出の効率を著しく低下させる原因となる。
しかしながら、本発明の電解析出工程においては、イオン液体からなる有機相中で白金族元素の電解析出を行うため、水相中で行う場合と比べて競合反応が起き難く、高い効率で白金族元素を回収することができる。

0055

有機相に含まれる白金族元素を電解析出する方法は、従来方法が適用可能であり、例えば特許文献2に記載の方法が挙げられる。
具体的には、例えば、白金族元素が含まれるイオン液体に、ポテンショスタットに接続した陽極陰極及び擬似参照極を浸漬させて、白金族元素が析出する電位参照電極基準で印加することにより、白金族元素を陰極に析出させて回収することができる。
白金族元素が析出する電位は、白金族元素が含まれるイオン液体のサイクリックボルタンメトリーを予め測定し、白金族元素の還元電位ピークに基づいて設定することができる。このとき、陰極電流効率を高める観点から、還元電位ピークよりも−0.1V以上卑な側に設定することが好ましい。

0056

[溶出工程]
本発明の白金族元素の回収方法において、白金族元素を含有する固体の資源から、酸を使用して、1種以上の白金族元素を溶出させ、前記1種以上の白金族元素を含有する水相を調製する溶出工程を有することが好ましい。
前記資源としては、例えば、永久磁石、自動車等の排ガス触媒液晶ディスプレイ等の電子機器が挙げられる。
前記酸としては、例えば、塩酸、硝酸、王水(塩酸と硝酸の混酸)が、白金族元素の溶解性に優れるため、好ましい。
溶出に使用する酸の濃度や容量等の溶出条件は、資源の形態や白金族元素の含有量に応じて適宜設定すればよい。
酸を使用して溶出させる方法は特に限定されず、例えば、酸又はその水溶液に資源を浸漬させる方法が挙げられる。

0057

王水を用いて固体の白金族元素M(s)を溶解する場合、下記反応式(10)に示す様に、硝酸イオン[NO3-]が酸化剤として働くこと、及び塩化物イオン[Cl-]が錯形成剤として働くこと、という2つの作用が得られる。
M(s) + 4H+ (aq) + NO3- (aq) + Cl- (aq) → [MCl4]-(aq)+ NO(g) + 2H2O(l) ・・・(10)
この場合、溶液中における活性物質は次の反応で発生するCl2及び強い酸化力を有するニトロシル(NOCl)である。
3HCl + HNO3 → Cl2 + NOCl + 2H2O ・・・(11)

0058

電子配置がd8になるような酸化状態にある白金族金属では、平面四角形錯体が通常形成される。上記白金族金属としては、例えば、Ir(I), Pd(II), Pt(II)が挙げられる。上記平面四角形錯体としては、例えば、 [Pt(NH3)4]2+が挙げられる。上記平面四角形錯体に特徴的な反応は、配位子置換及び酸化的付加である。

0059

前記溶出工程において、前記資源から鉄族元素(例えばFe, Co, Ni)、希土類元素(例えばLa, Ce, Pr)、アルカリ土類元素(周期表の第2族に属する典型元素:例えばMg, Ca, Sr)、第13族元素(周期表の第13族に属する元素、例えばB, Al, Ga)等が、白金族元素に伴って溶出されて、水相に含有されてもよい。これらの白金族元素及び希土類元素以外の元素は、いわゆるベースメタルとして前記資源に含まれていることがある。

0060

前記水相に、白金族元素に加えて、さらに鉄族元素、アルカリ土類元素及び第13族元素の少なくとも1種以上が含有される場合、前記溶媒抽出工程の前に、前記1種以上の元素を除去しておくことが好ましい。これらのベースメタルを予め除去しておくことにより、純度の高い白金族元素を回収することができる。
上記ベースメタルを除去する方法としては、例えば、水相中に1種以上の沈殿剤を添加し、凝集沈殿、遠心分離処理、濾過処理等の沈殿処理を行う方法が挙げられる。水相中に添加する沈殿剤の種類としては、ベースメタルの不溶性沈殿を形成可能な公知の沈殿剤が適用可能であり、例えば、塩酸及びリン酸三ナトリウムの組み合わせが挙げられる。
なお、前記水相に含有され得る鉄族元素、アルカリ土類元素及び第13族元素は、前記資源から溶出されたものに限定されない。

0061

[希土類抽出工程]
前記水相に、白金族元素に加えて、さらに希土類元素が含有される場合、前記溶媒抽出工程において、白金族元素を回収した後の水相に希土類元素が残留する。この希土類元素を含む水相から、イオン液体からなる有機相に希土類元素を抽出して回収することができる。
前記希土類元素を前記有機相に抽出する方法としては、白金族元素と同様の方法が適用可能である。また、有機相に抽出した希土類元素は、電解析出によって回収することができる。
なお、前記水相に含有され得る前記希土類元素は、前記資源から溶出されたものに限定されない。

0062

次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。

0063

[イオン液体の調製]
トリエチル−n−ペンチルホスホニウムカチオン([P2225]+)の臭化物(日本化学工業株式会社製)と、ビストリフルオロメチルスルホニルアミドアニオン([TFSA]-)のリチウム塩(関東化学株式会社製)とを蒸留水中で温度70℃で攪拌して反応させた。
前記反応で生成したイオン液体相をジクロロエタンで抽出し、エバポレーションにより溶媒を除去し、イオン液体[P2225][TFSA]を得た。

0064

[実施例1]
各々500mg/LのPt(IV), Ru(III)及び1.0M HClを含む水溶液からなる水相(pH=1.5)を調製した。
有機相としてホスホニウム系イオン液体である[P2225][TFSA]を使用した。水相と有機相の体積比(A/O)=1の条件で、分液ロート内で両相を接触させて激しく撹拌し、白金族元素を有機相へ抽出した。
上記抽出試験において、有機相に、抽出剤としてN-methyl-N,N,N-trioctyl ammonium chloride([N8881]Cl)を、0〜0.30Mまで0.05Mずつ変化させて含有させた場合の抽出挙動図3に示す。

0065

図3の結果から、Pt(IV)とRu(III)の何れについても、抽出剤の濃度が増加するにつれて抽出率(Extraction / %)が増加する傾向が見られた。
抽出剤を加えずにイオン液体のみからなる有機相で抽出した場合には、Pt(IV)については抽出率=38%であり、Ru(III)については抽出率=0%であった。この結果から、上記イオン液体は、それ単独でPt(IV)の選択的な抽出作用を有することが分かった。また、何れの抽出剤濃度の場合においても、Pt(IV)とRu(III)の抽出率の差は大きく、Pt(IV)をRu(III)から分離して選択的に回収できることが明らかである。なお、抽出率は、ICP-AESを使用して常法により測定した。

0066

[実施例2]
各濃度1000mg/LのRu(III), Pt(IV)を含む水相を調製した。
有機相として、抽出剤:TOA(0.01M)を含むイオン液体[P2225][TFSA]を調製した。
実施例1と同様にA/O=1.0の条件下で抽出試験を行い、有機相側にPt(IV)を抽出した。Pt抽出率=98.7%であることをICP-AES分析から確認した。
続いて、抽出したPt(IV)を含む上記有機相(イオン液体)をオイルバスにて110℃, 300rpm, 24hの条件で真空乾燥処理を行い、水分量83ppmの上記有機相からなる電解浴を調製した。この電解浴においてPtの電解析出を行った。この電解析出において三電極法を適用し、作用極Cu基板対極:Vycor glassを介して接続したPt線、擬似参照極:Pt線を使用した。電解浴温度は100℃に設定し、予め行ったサイクリックボルタンメトリー等の電気化学測定還元ピーク電位から過電圧を決定した。定電位電解法にて、-1.2Vの過電圧を3.2h印加して、作用極の表面に黒色析出物が得られた。電流効率は92.7%であった。得られた黒色物質Pt金属であることはEDX分析結果から確認した。

0067

次に、上記の電解析出によりPtを回収した後の有機相を使用して、各濃度1000mg/L Ru(III), Pt(IV)を含む新たな水相から、実施例1と同様にA/O=1.0の条件下で抽出試験を行い、有機相側にPt(IV)を抽出した。この際、電解析出後の上記有機相に新たな抽出剤(TOA)の添加は行わなかったが、ICP-AESで測定したPt抽出率は74.6%であった。
この結果から、電解析出工程の電解浴として使用した有機相を溶媒抽出工程で再利用できることが確認できた。

0068

[実施例3]
各濃度1000mg/LのRu(III), Pd(II), Ir(IV), Pt(IV)を含む王水を調製した(図1参照)。希釈倍率1/2で水相を希釈した後、有機相として抽出剤:DOS(0.01M)を含むイオン液体[P2225][TFSA]を調製した。実施例1と同様にA/O=1.0の条件下で抽出試験を行い、有機相側にPd(II)を抽出した。Pd抽出率=99.8%であることをICP-AES分析から確認した。
次に、Ru(III), Ir(IV), Pt(IV)を含む水相中に亜硫酸ガスを5.0mL min-1で吹き込み、Ir(IV)をIr(III)に還元した。有機相として抽出剤:[N8881]Cl(0.01M)を含むイオン液体[P2225][TFSA]を調製し、A/O=1.0の条件下で抽出試験を行い、有機相側にPt(IV)を抽出した。Pt抽出率=99.6%であることをICP-AES分析から確認した。
次に、Ru(III), Ir(III)を含む水相中に2.0mM NH4SCNを添加して、Ru-SCN錯体を生成させた。その後、有機相として抽出剤:TBP(0.01M)を含むイオン液体[P2225][TFSA]を調製した。A/O=1.0の条件下で抽出試験を行い、Ru抽出率=90.2%であることをICP-AES分析から確認した。
次に、Ir(III)を含む水相中に5.0mM NaClOを添加してIr(III)→Ir(IV)に酸化させた。有機相として抽出剤:TOA(0.01M)を含むイオン液体[P2225][TFSA]を調製した。A/O=1.0の条件下で抽出試験を行い、Ir抽出率=89.6%であることをICP-AES分析から確認した。
Pd(II), Pt(IV), Ru(III), Ir(IV)の抽出錯体を含むイオン液体[P2225][TFSA]を120℃, 300rpm, <-0.1MPaの条件下で>24h真空攪拌乾燥を行い、電解浴中の水分量を<50ppmとした。各電解浴における定電位電解試験の電位はサイクボルタンメトリによる結果から判断した。電解試験では作用極:円筒状Cu基板、対極:Vycor glassを介して接続したPt線、擬似参照極は白金線を使用した。電解浴温度は100℃に設定した。定電位電解試験後、黒色電析物が得られ、SEM/EDX分析からPd, Pt, Ru,Ir金属であることを確認した。各種電析物の重量増加から計算した電流効率はPd:94.2%, Pt:93.8%, Ru:85.6%, Ir:86.3%であり、高効率であることを確認した。

実施例

0069

[実施例4]
各濃度1000mg/LのPd(II), Pt(IV), 200mg/LのFe(III), Al(III), La(III), Ce(III). Pr(III),Mg(II)を含むHCl溶液を調製した(図2参照)。Na3PO4を少量ずつ添加していき、pH=3.4に制御した。FePO4褐色沈殿及びAlPO4白色沈殿の混合物を生じ、9840G, 5minの遠心分離法により完全に除去した。得られたろ液を1/2希釈した溶液を水相とした。有機相として抽出剤:DOS(0.01M)を含むイオン液体[P2225][TFSA]を調製した。実施例1と同様にA/O=1.0の条件下で抽出試験を行い、有機相側にPd(II)を抽出した。Pd抽出率=96.2%であることをICP-AES分析から確認した。
次に、Pt(IV), La(III), Ce(III), Pr(III), Mg(II)を含む水相に対して、有機相として抽出剤:[N8881]Cl(0.01M)及びTOA(2.0mM)を含むイオン液体[P2225][TFSA]を調製し、A/O=1.0の条件下で抽出試験を行い、有機相側にPt(IV)を抽出した。Pt抽出率=99.8%であることをICP-AES分析から確認した。
次に、La(III), Ce(III), Pr(III), Mg(II)を含む水相に対して、有機相として抽出剤:TBP(0.01M)を含むイオン液体[P2225][TFSA]を調製した。A/O=1.0の条件下で抽出試験を行い、La抽出率=87.4%, Ce抽出率=82.1%, Pr抽出率=78.3%, Mg抽出率=0.32%であることをICP-AES分析から確認した。
Pd(II), Pt(IV)の抽出錯体を含むイオン液体[P2225][TFSA]を120℃, 300rpm, <-0.1MPaの条件下で>24h真空攪拌乾燥を行い、電解浴中の水分量を<50ppmとした。各電解浴における定電位電解試験の電位はサイクボルタンメトリによる結果から判断した。電解試験では作用極:円筒状Cu基板、対極:Vycor glassを介して接続したPt線、擬似参照極は白金線を使用した。電解浴温度は100℃に設定した。定電位電解試験後、黒色電析物が得られ、SEM/EDX分析からPd,Pt金属であることを確認した。各種電析物の重量増加から計算した電流効率はPd:93.1%, Pt:92.6%であり、高効率であることを確認した。
La(III), Ce(III), Pr(III) の抽出錯体を含むイオン液体[P2225][TFSA]を120℃, 300rpm, <-0.1MPaの条件下で真空攪拌乾燥を行い、電解浴中の水分量を<50ppmとした。電極構成は上記と同様に設定した。電解浴温度は120℃に設定した。定電位電解試験後、黒色電析物が得られ、SEM/EDX分析からLa, Ce, Pr金属の混在であることを確認した。

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