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技術 非タンパク質安定化クロストリジウム毒素医薬組成物

出願人 アラーガン、インコーポレイテッド
発明者 テレンス・ジェイ・ハント
出願日 2017年1月24日 (3年2ヶ月経過) 出願番号 2017-010322
公開日 2017年5月25日 (2年10ヶ月経過) 公開番号 2017-088611
状態 特許登録済
技術分野 医薬品製剤 蛋白脂質酵素含有:その他の医薬 化合物または医薬の治療活性
主要キーワード 二構成要素 凍害防止剤 実験用ガラス器具 初期力 復元液 矯正量 あばた 原因要素
関連する未来課題
重要な関連分野

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課題

解決手段

クロストリジウム毒素、例えばボツリヌス毒素を含有するクロストリジウム毒素医薬組成物であって、医薬組成物中に存在するクロストリジウム毒素が、非タンパク質賦形剤、例えばポリビニルピロリドン二糖三糖多糖アルコール、金属、アミノ酸界面活性剤および/またはポリエチレングルコールによって安定化される医薬組成物を提供する。

概要

背景

貯蔵安定性および取扱いの利便性を考えて、医薬組成物は、患者への投与に先だって適切な液体、例えば食塩水または水で復元することができる凍結乾燥(すなわちフリーズドライ粉末または真空乾燥粉末として、製剤化することができる。あるいは、医薬組成物を水性溶液または水性懸濁液として製剤化することもできる。医薬組成物はタンパク質性活性成分を含有することができる。残念なことに、タンパク質活性成分は安定化すること(すなわち、生物学的活性損失が最小限に抑えられる状態に保つこと)が非常に困難であり、それゆえに、タンパク質含有医薬組成物の製造時、復元(必要な場合)時、および使用するまでの貯蔵期間中に、タンパク質の損失および/またはタンパク質活性の損失が起こる。安定性の問題は、タンパク質の変性、分解、二量体化、および/または重合が原因となって起こりうる。医薬組成物中に存在するタンパク質活性成分を安定化する目的で、例えばアルブミンおよびゼラチンなどといった種々の賦形剤が使用され、大小さまざまな成功を納めている。さらに、凍結乾燥の冷凍条件下で起こるタンパク質変性を減らすために、アルコール類などの凍害防止剤も使用されてきた。

タンパク質賦形剤
医薬組成物中に存在するボツリヌス毒素を安定化するために、例えばアルブミンおよびゼラチンなどといった種々の賦形剤が使用されている。アルブミンは豊富に存在する小さな血漿タンパク質である。ヒト血清アルブミンは約69キロダルトン(kD)の分子量を持ち、医薬組成物に非活性成分として使用されてきた。その場合、ヒト血清アルブミンは、医薬組成物中に存在する一定のタンパク質活性成分のバル担体および安定剤として役立つことができる。

医薬組成物におけるアルブミンの安定化機能は、その医薬組成物の多段階製造中も、製造された医薬組成物を後に復元する際にも、存在することができる。したがってアルブミンは、医薬組成物中のタンパク質性活性成分に、例えば(1)表面、例えば実験用ガラス器具容器の表面、医薬組成物を復元する際のバイアル、および医薬組成物を注射するために使用する注射器内面へのタンパク質活性成分の付着(一般に「粘着性」と呼ばれる)を減少させること(表面へのタンパク質活性成分の付着は、活性成分の損失および失われなかった残りのタンパク質活性成分の変性につながる可能性があり、それらはどちらも医薬組成物中に存在する活性成分の総活性を減少させる)および(2)活性成分の低希釈度溶液を調製する際に起こりうる活性成分の変性を減少させることによって、安定性を付与することができる。

医薬組成物中のタンパク質活性成分を安定化することができるだけでなく、ヒト血清アルブミンには、ヒト患者に注射した時に一般に無視できるほどの免疫原性しか持たないという利点もある。それとわかるほどの免疫原性を持つ化合物は、その化合物に対する抗体の産生を引き起こすことができ、それがアナフィラキシー反応および/または薬物耐性発達(これにより、処置されるべき疾患または障害は、免疫原性構成要素を持つ医薬組成物に対して、潜在的に不応性になる)をもたらす場合がある。

ボツリヌス毒素医薬組成物中の安定剤として、組換えアルブミンが提案されている。すなわち、公開された米国特許出願第2003 0118598号(Hunt)には、組換えアルブミン、コラーゲンまたはデンプンなどといった種々の賦形剤を、医薬組成物中に存在するボツリヌス毒素の安定化のために使用することが開示されている。

コラーゲンは哺乳動物中で最も豊富なタンパク質で、身体の全タンパク質の約4分の1を占める。コラーゲンは、皮膚、靱帯およびなどといった結合組織の主要な構成成分である。天然コラーゲンは3つの高分子量タンパク質三重らせんをなすものである。コラーゲンらせんを構成する3本のタンパク質鎖のそれぞれが、1400を越えるアミノ酸を有する。少なくとも25種の異なるコラーゲンがヒトにおいて同定されている。

コラーゲンは、皮膚の外見的問題を処置するため、例えばスマイルラインしわおよび眉間のしわ、眉毛の間のしわ、眼角のしわおよび上下の細かい縦しわを滑らかにするために、美容的注入剤として用いられている。ある種の術後外傷性瘢痕またはざ瘡瘢痕およびウイルス性あばた、例えば水疱瘡痕を滑らかにするのにも、コラーゲンは有用である。そのような目的のために、コラーゲンを真皮注入して皮膚を持ち上げる。

ゼラチンはコラーゲンの加水分解によって得ることができる。ゼラチンは、タンパク質を活性成分とするいくつかの医薬組成物中にアルブミン代替物として用いられている。注意すべきは、ゼラチンは動物由来のタンパク質であり、それ故、ヒト血清アルブミンが持ちうるのと同じ感染性リスクを持つということである。中国特許CN1215084には、天然ゼラチンコラーゲン加水分解物)、動物由来タンパク質、デキストランおよびスクロースを用いて製剤化されるアルブミン不含有A型ボツリヌス毒素が記載されている。米国特許第6087327号にも、天然ゼラチンを用いて調製されるA型およびB型ボツリヌス毒素組成物が開示されている。

医薬組成物におけるアルブミンまたはゼラチンのようなタンパク質賦形剤の使用には、それらの安定化作用が知られているが、残念ながら重大な欠点もある。例えば、アルブミンおよびゼラチンは高価であり、入手が困難になりつつある。さらに、血液成分または動物由来生成物(例えばアルブミンおよびゼラチン)の患者への投与により、血液由来病原体または感染因子をもらう潜在的危険に、その患者をさらすことになりうる。すなわち、医薬組成物中に動物由来タンパク質賦形剤が存在すると、医薬組成物に感染性物質不用意に導入してしまう恐れがあることが知られている。例えば、ヒト血清アルブミンの使用により、医薬組成物にプリオンが導入されうることが報告されているる。プリオンは、正常タンパク質を作る配列と同じ核酸配列から異常コンフォメーションアイソフォームとして生じると考えられているタンパク質性感染粒子である。また、感染性は、翻訳後レベルでの正常アイソフォームタンパク質からプリオンタンパク質アイソフォームへの「補充(recruitment)反応」に存在するとも考えられている。正常な内因性細胞性タンパク質が病原性プリオンコンフォメーションへミスフォールド(misfold)するように誘導されるようである。

したがって、ボツリヌス毒素医薬組成物中に存在するボツリヌス毒素を安定化するのに使用しうる適当な賦形剤を見出すことが望ましい。ボツリヌス毒素安定剤は、動物(すなわち哺乳動物)性原料由来するタンパク質ではないことが好ましい。

ボツリヌス毒素
クロストリジウム属には127を越える種があり、形態学および機能に従って分類されている。嫌気性グラム陽性細菌であるボツリヌス菌(Clostridium botulinum)は、ボツリヌス中毒として知られる神経麻痺性障害をヒトおよび動物において引き起こす強力なポリペプチド神経毒であるボツリヌス毒素を産生する。ボツリヌス菌およびその胞子は共に土壌中に見出され、該細菌は、滅菌密閉不適切缶詰工場食品容器内で増殖する可能性があり、これが多くのボツリヌス中毒症例の原因である。ボツリヌス中毒の影響は、通例、ボツリヌス菌の培養物または胞子で汚染された食品飲食した18〜36時間後に現れる。ボツリヌス毒素は、消化管内を弱毒化されないで通過することができ、そして末梢運動ニューロン攻撃することができるようである。ボツリヌス毒素中毒の症状は、歩行困難、嚥下困難および会話困難から、呼吸筋麻痺および死にまで進行し得る。

A型ボツリヌス毒素は、人類に知られている最も致死性天然生物学的物質である。ボツリヌス毒素(精製された神経毒複合体)A型の約50ピコグラムマウスにおけるLD50である。興味深いことに、モル基準でA型ボツリヌス毒素の致死力はジフテリアの18億倍、シアン化ナトリウムの6億倍、コブロトキシンの3000万倍、コレラの1200万倍である。Natuaral Toxins II[B. R. Singhら編、Plenum Press、ニューヨーク(1976)]のSingh、Critical Aspects of Bacterial Protein Toxins、第63〜84頁(第4章)(ここで、記載されるA型ボツリヌス毒素LD50 0.3ng=1Uとは、BOTOX(登録商標)約0.05ng=1Uという事実に補正される)。1単位(U)のボツリヌス毒素は、それぞれが18〜20グラムの体重を有するメスのSwiss Websterマウスに腹腔内注射されたときのLD50として定義される。換言すれば、1単位のボツリヌス毒素は、メスSwiss Websterマウス群の50%を死亡させるボツリヌス毒素量である。

7種類の血清学的に異なるボツリヌス神経毒特徴付けられており、これらは、型特異的抗体による中和によってそのそれぞれが識別されるボツリヌス神経毒血清型A、B、C1、D、E、FおよびGである。ボツリヌス毒素のこれらの異なる血清型は、それらが冒す動物種、ならびにそれらが惹起する麻痺の重篤度および継続時間が異なる。例えば、A型ボツリヌス毒素は、ラットにおいて生じる麻痺率により評価された場合、B型ボツリヌス毒素よりも500倍強力であることが確認されている。また、B型ボツリヌス毒素は、霊長類では480U/kgの投与量で非毒性であることが確認されている。この投与量は、A型ボツリヌス毒素の霊長類LD50の約12倍である。ボツリヌス毒素は、コリン作動性の運動ニューロンに大きな親和性で結合して、ニューロンに移動し、アセチルコリンシナプス前放出を阻止するようである。

ボツリヌス毒素は、活動過多骨格筋によって特徴付けられる神経筋障害を処置するために臨床的状況において使用されている。A型ボツリヌス毒素(BOTOX(登録商標))は、本態性眼瞼痙攣、斜視および片側顔面痙攣を12を越える患者において処置するために、米国食品医薬品局によって1989年に承認された。末梢注射(例えば筋肉内または皮下)A型ボツリヌス毒素の臨床的効果は、通常、注射後1週間以内およびしばしば数時間以内に認められる。A型ボツリヌス毒素の単回筋肉内注射による症候緩和(例えば弛緩性筋肉麻痺)の典型的な継続時間は約3ヶ月〜約6ヶ月であり得る。

すべてのボツリヌス毒素血清型神経筋接合部における神経伝達物質アセチルコリンの放出を阻害するようであるが、そのような阻害は、種々の神経分泌タンパク質に作用し、かつ/またはこれらのタンパク質を異なる部位で切断することによって行われる。A型ボツリヌス毒素は、細胞小胞関連タンパク質SNAP-25のペプチド結合を特異的に加水分解しうる亜鉛エンドペプチダーゼである。E型ボツリヌス毒素も、25キロダルトン(kD)のシナプトソーム関連タンパク質(SNAP-25)を切断するが、A型ボツリヌス毒素とは異なるタンパク質内アミノ酸配列を標的とする。B型、D型F型およびG型のボツリヌス毒素は小胞関連タンパク質(VAMP、これはまたシナプトブレビンとも呼ばれる)に作用し、それぞれの血清型によってこのタンパク質は異なる部位で切断される。最後に、C1型ボツリヌス毒素は、シンタキシンおよびSNAP-25の両者を切断することが明らかにされている。作用機序におけるこれらの相違が、様々なボツリヌス毒素血清型の相対的な効力および/または作用の継続時間に影響していると考えられる。

血清型に関係なく、毒素中毒の分子メカニズムは類似し、少なくとも3つの過程または段階を含むようである。第1段階において、毒素は、重鎖H鎖)と細胞表面受容体との特異的相互作用によって、標的ニューロンシナプス前膜に結合する。受容体は、ボツリヌス毒素の各血清型および破傷風毒素で異なると考えられる。H鎖のカルボキシル末端セグメント(HC)は、毒素を細胞表面に指向させるのに重要であるようである。

第2段階において、毒素は、冒した細胞の形質膜を横切る。毒素は、初めに、受容体媒介エンドサイトーシスにより細胞に包み込まれ、毒素を含有するエンドソームが形成される。次に、毒素は、エンドソームから該細胞の細胞質中に逃れ出る。この最後の段階は、約5.5またはそれ以下のpHに反応して毒素のコンフォメーション変化を誘発するH鎖のアミノ末端セグメント(HN)によって媒介されると考えられる。エンドソームは、エンドソーム内pHを低下させるプロトンポンプを有することが既知である。コンフォメーションのシフトは毒素中の疎水性残基を露出させ、これが、毒素をエンドソーム膜内埋込むことを可能にする。次に、毒素が、エンドソーム膜を通って細胞質ゾルに移動する。

ボツリヌス毒素活性のメカニズムの最終段階は、H鎖およびL鎖を結合するジスルフィド結合の減少を伴うようである。ボツリヌス毒素および破傷風毒素の全毒素活性は、ホロトキシンのL鎖に含まれる。L鎖は亜鉛(Zn++)エンドペプチダーゼであり、これは、神経伝達物質を含有する小胞の認識および形質膜の細胞質表面とのドッキングならびに小胞と形質膜との融合に必須であるタンパク質を選択的に開裂する。破傷風神経毒、ボツリヌス毒素B、D、FおよびG型は、シナプトソーム膜タンパク質であるシナプトブレビン[小胞関連膜タンパク質(VAMP)とも称される]の分解を引き起こす。シナプス小胞の細胞質表面に存在する大部分のVAMPは、これらの開裂現象のいずれかの結果として除去される。各毒素は異なる結合を特異的に開裂する。

ボツリヌス毒素タンパク質分子の分子量は、既知のボツリヌス毒素血清型の7つのすべてについて約150kDである。ボツリヌス毒素は、会合する非毒素タンパク質とともに150kDのボツリヌス毒素タンパク質分子を含む複合体としてクロストリジウム属細菌によって放出される。例えば、A型ボツリヌス毒素複合体は、900kD、500kDおよび300kDの形態としてクロストリジウム属細菌によって産生され得る。B型およびC1型のボツリヌス毒素は500kDの複合体としてのみ産生されるようである。D型ボツリヌス毒素は300kDおよび500kDの両方の複合体として産生される。最後に、E型およびF型のボツリヌス毒素は約300kDの複合体としてのみ産生される。これらの複合体(すなわち、約150kDよりも大きな分子量)は、非毒素のヘマグルチニンタンパク質と、非毒素かつ非毒性の非ヘマグルチニンタンパク質とを含むと考えられる。これらの2つの非毒素タンパク質(これらは、ボツリヌス毒素分子とともに、関連する神経毒複合体を構成し得る)は、変性に対する安定性をボツリヌス毒素分子に与え、そして毒素が摂取されたときに消化酸からの保護を与えるように作用すると考えられる。また、より大きい(分子量が約150kDよりも大きい)ボツリヌス毒素複合体は、ボツリヌス毒素複合体の筋肉内注射部位からのボツリヌス毒素の拡散速度を低下させ得ると考えられる。毒素複合体は、pH7.3において赤血球で処理することにより、毒素タンパク質とヘマグルチニンタンパク質に解離しうる。毒素タンパク質は、ヘマグルチニンタンパク質から解離すると非常に不安定である。

すべてのボツリヌス毒素血清型は、神経活性となるためにはプロテアーゼによって切断またはニッキングされなければならない不活性な単鎖タンパク質として、ボツリヌス菌により合成される。A型およびG型のボツリヌス毒素血清型を産生する細菌株内因性プロテアーゼを有するので、A型およびG型の血清型は細菌培養物から主にその活性型回収することができる。これに対して、C1型、D型およびE型のボツリヌス毒素血清型は非タンパク質分解性菌株によって合成されるので、培養から回収されたときには、典型的には不活性型である。B型およびF型の血清型はタンパク質分解性菌株および非タンパク質分解性菌株の両方によって産生されるので、活性型または不活性型のいずれでも回収することができる。しかし、例えば、B型ボツリヌス毒素を産生するタンパク質分解性菌株でさえも、産生された毒素の一部を切断するだけである。

切断型分子と非切断型分子との正確な比率は培養時間の長さおよび培養温度に依存する。したがって、例えばB型ボツリヌス毒素の製剤はいずれも一定割合が不活性であると考えられ、このことが、A型ボツリヌス毒素と比較したB型ボツリヌス毒素の知られている著しく低い効力の原因であると考えられる。臨床製剤中に存在する不活性なボツリヌス毒素分子は、その製剤の総タンパク質量の一部を占めることになるが、このことはその臨床的効力に寄与せず、抗原性の増大に関連づけられている。また、B型ボツリヌス毒素は、筋肉内注射された場合、同じ用量レベルのA型ボツリヌス毒素よりも、活性の継続期間が短く、そしてまた効力が低いことも知られている。

インビトロでの研究により、ボツリヌス毒素が、脳幹組織初代細胞培養物からのアセチルコリンおよびノルエピネフリンの両方の、カリウムカチオンにより誘導される放出を阻害することが示されている。また、ボツリヌス毒素は、脊髄ニューロンの初代培養物におけるグリシンおよびグルタメートの両方の誘発された放出を阻害すること、そして脳のシナプトソーム調製物において、ボツリヌス毒素が神経伝達物質のアセチルコリン、ドーパミン、ノルエピネフリン、CGRPおよびグルタメートのそれぞれの放出を阻害することが報告されている。

ボツリヌス菌のHall A株から、≧3×107U/mg、A260/A2780.60未満、およびゲル電気泳動における明確なバンドパターンという特性を示す高品質結晶A型ボツリヌス毒素を生成し得る。Schantz, E. J.ら、Properties and use of Botulinum toxin and Other Microbial Neurotoxins in Medicine、Microbiol Rev.56:80-99(1992)に記載されているように既知のSchanz法を用いて結晶A型ボツリヌス毒素を得ることができる。通例、A型ボツリヌス毒素複合体を、適当な培地中でA型ボツリヌス菌を培養した嫌気培養物から分離および精製し得る。硫酸での沈殿によって粗毒素を採り、限外マイクロ濾過によって濃縮することができる。酸沈殿物塩化カルシウムに溶解することによって精製を行いうる。次いで、毒素を冷エタノールで沈殿させうる。沈殿物リン酸ナトリウムに溶解し、遠心しうる。次いで、乾燥して、比効力3×107LD50U/mgまたはそれ以上の900kD結晶A型ボツリヌス毒素複合体を得ることができる。この既知の方法を用い、非毒素タンパク質を分離除去して、例えば次のような純ボツリヌス毒素を得ることもできる:比効力1〜2×108LD50U/mgまたはそれ以上の分子量約150kDの精製A型ボツリヌス毒素;比効力1〜2×108LD50U/mgまたはそれ以上の分子量約156kDの精製B型ボツリヌス毒素;および比効力1〜2×107LD50U/mgまたはそれ以上の分子量約155kDの精製F型ボツリヌス毒素。

ボツリヌス毒素およびボツリヌス毒素複合体は例えば、List Biological Laboratories, Inc.(キャンベル、カリフォルニア);the Centre for Applied Microbiology and Research(ポートン・ダウンイギリス);Wako(日本、大阪);およびSigma Chemicals(セントルイス、ミズーリ)から入手し得る。市販のボツリヌス毒素含有医薬組成物には、次のものが包含される:BOTOX(登録商標)(A型ボツリヌス毒素神経毒複合体とヒト血清アルブミンおよび塩化ナトリウムを含む。使用前に0.9%塩化ナトリウムで再構成する凍結乾燥粉末として、100単位バイアルで、カリフォルニア、アーヴィンのAllergan, Inc.から入手可能。)、Dysport(登録商標)(A型ボツリヌス毒素ヘマグルチニン複合体とヒト血清アルブミンおよびラクトースを製剤中に含む。使用前に0.9%塩化ナトリウムで再構成する粉末として、イギリス、バークシャーのIpsen Limitedから入手可能。)、およびMyoBloc(登録商標)(B型ボツリヌス毒素、ヒト血清アルブミン、コハク酸ナトリウムおよび塩化ナトリウムを含むpH約5.6の注射可能な溶液。カリフォルニア、サウスサンフランシスコのSolstice Neurosciences, Inc.から入手可能。)。

種々の臨床症状の治療におけるA型ボツリヌス毒素の成功は、他のボツリヌス毒素血清型への関心を高めている。更に、純粋ボツリヌス毒素がヒトの処置に用いられている。例えば、Kohl A. ら、Comparison of the effect of botulinum toxin (Botox(R)) with the highly-purified neurotoxin(NT201) in the extensor digitorum brevis muscle test, Mov Disord 2000;15(補遺3):165参照。すなわち、純粋ボツリヌス毒素を使用して医薬組成物を調製することができる。

A型ボツリヌス毒素はpH4〜6.8で希水溶液に可溶であることが知られている。約7を越えるpHでは、安定化非毒性タンパク質が神経毒から解離し、その結果、特にpHおよび温度が上がるほど、毒性が徐々に失われる。Jankovic, J.ら、Therapy with Botulinum Toxin, Marcel Dekker, Inc (1994)の第3章のSchantz E.J.ら、Preparation and characterization of botulinum toxin type A for human treatment(特に第44-45頁)。

欧州特許EP1112082(“Stable liquid formulations of botulinum toxin”)(2002年7月31日発行)には、緩衝剤(pH5〜6)およびボツリヌス毒素を含有する安定な液体ボツリヌス毒素医薬製剤が特許請求されており、該毒素製剤は液体として0〜10℃で少なくとも1年間または10〜30℃で少なくとも6ヶ月間安定である。そのような毒素医薬組成物(その態様はSolstice Neurosciences, Inc. (サンディエゴ、カリフォルニア)からMyoBloc(登録商標)またはNeuroBloc(登録商標)の商品名で市販されている)は、使用前に復元する必要のない液体溶液として調製される(凍結乾燥または真空乾燥は行われない)。

米国特許第5,512,547号(Johnsonら)“Pharmaceutical Composition of Botulinum Neurotoxin and Method of Preparation”(1996年4月30日発行)には、37℃で貯蔵安定性を示す、アルブミンおよびトレハロースを含有する純粋なA型ボツリヌス毒素の製剤が特許請求されている。

米国特許第5,756,468号(Johnsonら)(1998年5月26日発行)(“Pharmaceutical Compositions of Botulinum Toxin or Botulinum Neurotoxin and Method of Preparation”)には、25〜42℃で貯蔵できる、チオアルキル、アルブミンおよびトレハロースを含有する凍結乾燥ボツリヌス毒素製剤が特許請求されている。

米国特許第5,696,077号(Johnsonら)“Pharmaceutical Composition Containing Botulinum B Complex”(1997年12月9日発行)には、B型複合体およびタンパク質賦形剤を含有する凍結乾燥した塩化ナトリウム不含有のB型ボツリヌス毒素複合体製剤が特許請求されている。

Goodnough M.C.ら、Stabilization of botulinum toxin type A during lyophilization, Appl Environ Microbiol 1992;58(10):3426-3428、およびGoodnough M.C.ら、Recovery of type-A botulinal toxin following lyophilization, Acs Symposium Series 1994;567(-):193-203に開示されている。

中国特許出願CN1215084Aには、動物由来タンパク質であるゼラチンを用いて調製された、アルブミン不含有のA型ボツリヌス毒素が記載されている。米国特許第6,087,327号にも、ゼラチンを用いて調製されたA型およびB型ボツリヌス毒素組成物が開示されている。したがって、これら製剤は、動物性タンパク質に由来するかまたは付随する感染性物質をもたらす危険性を排除するものではない。

BoNt/Aが様々な臨床用途に用いられていることが報告されており、その例には下記のものが含まれる:
(1)頸部ジストニーを処置するための筋肉内注射(多数の筋肉)あたり約75単位〜125単位のBOTOX(登録商標)(Allergan, Inc. (アーバイン、カリフォルニア)から商品名BOTOX(登録商標)で入手可能);
(2)眉間のしわを処置するための筋肉内注射あたり約5単位〜10単位のBOTOX(登録商標)(5単位が鼻根筋に筋肉内注射され、10単位がそれぞれの皺眉筋に筋肉内注射される);
(3)恥骨直腸筋括約筋内注射による便秘を処置するための約30単位〜80単位のBOTOX(登録商標);
(4)上瞼の外側瞼板前部眼輪筋および下瞼の外側瞼板前部眼輪筋に注射することによって眼瞼痙攣を処置するために筋肉あたり約1単位〜5単位の筋肉内注射されるBOTOX(登録商標);

(5)斜視を処置するために、外眼筋に、約1単位〜5単位のBOTOX(登録商標)が筋肉内注射されている。この場合、注射量は、注射される筋肉のサイズと所望する筋肉麻痺の程度(すなわち、所望するジオプター矯正量)との両方に基づいて変化する。
(6)卒中後上肢痙性を処置するために、下記のように5つの異なる上肢屈筋にBOTOX(登録商標)が筋肉内注射される:
(a)深指屈筋:7.5U〜30U
(b)浅指屈筋:7.5U〜30U
(c)尺側手根屈筋:10U〜40U
(d)橈側手根屈筋:15U〜60U
(e)上腕二頭筋:50U〜200U。5つの示された筋肉のそれぞれには同じ処置時に注射されるので、患者には、それぞれの処置毎に筋肉内注射によって90U〜360Uの上肢屈筋BOTOX(登録商標)が投与される。
(7)偏頭痛を治療するために、25UのBOTOX(登録商標)を頭蓋周囲に注射する(眉間、前頭および側頭筋対称的に注射する):該注射は、偏頭痛頻度、最大重症度、付随嘔吐および急性薬剤使用の減少(25U注射後の3ヶ月間にわたる)によって評価した場合に、ビヒクルと比較して、偏頭痛の予防療法として有意な利益を与える。

A型ボツリヌス毒素は、最大12ヶ月の有効性を有し(European J.Neurology 6(Supp 4), S111-S1150, 1999)、ある場合には27ヶ月間にもわたる有効性を有しうることが既知である(Laryngoscope 109, 1344-1346, 1999)。しかし、BOTOX (登録商標)筋肉注射効果の通常の持続期間は一般に約3〜4ヶ月間である。

種々の臨床症状の治療におけるA型ボツリヌス毒素の成功は、他のボツリヌス毒素血清型への関心を高めている。更に、純粋ボツリヌス毒素がヒトの処置に用いられている。例えば、Kohl A. ら、Comparison of the effect of botulinum toxin (Botox(R)) with the highly-purified neurotoxin(NT201) in the extensor digitorum brevis muscle test, Mov Disord 2000;15(補遺3):165参照。すなわち、純粋ボツリヌス毒素を使用して医薬組成物を調製することができる。

ボツリヌス毒素分子(約150kDa)、およびボツリヌス毒素複合体(約300〜900kDa)、例えばA型毒素複合体はまた、表面変性、熱およびアルカリ性条件による変性に対して非常に感受性である。不活性化毒素はトキソイドタンパク質を形成し、これは免疫原性であり得る。その結果生じる抗体の故に、患者が毒素注射に対して応答しなくなり得る。

酵素一般について言えるように、ボツリヌス毒素(細胞内ペプチダーゼ)の生物学的活性は、少なくとも部分的にはその三次元形状に依存する。すなわち、A型ボツリヌス毒素は、熱、種々の化学薬品、表面の伸長および表面の乾燥によって無毒化される。しかも、既知の培養、発酵および精製によって得られた毒素複合体を、医薬組成物に使用する非常に低い毒素濃度まで希釈すると、適当な安定剤が存在しなければ毒素の無毒化が急速に起こることが知られている。毒素をmg量からng/ml溶液へ希釈するのは、そのような大幅な希釈によって比毒性が急速に低下する故に、非常に難しい。毒素含有医薬組成物を製造後、何箇月も、または何年も経過してから毒素を使用することもあるので、毒素を安定剤で安定化しなければならない。これまでにこの目的のために有効であった安定剤は、動物由来タンパク質であるヒト血清アルブミンおよびゼラチンのみである。

市販のボツリヌス毒素含有医薬組成物は、BOTOX(登録商標)(カリフォルニア、アーヴィンのAllergan,Inc.から入手可能)の名称で市販されている。BOTOX(登録商標)は、精製A型ボツリヌス毒素複合体、ヒト血清アルブミンおよび塩化ナトリウムから成り、無菌の真空乾燥形態で包装されている。このA型ボツリヌス毒素は、N-Zアミンおよび酵母エキスを含有する培地中で増殖させたボツリヌス菌のHall株の培養物から調製する。そのA型ボツリヌス毒素複合体を培養液から一連の酸沈殿によって精製して、活性な高分子量毒素タンパク質および結合ヘマグルチニンタンパク質から成る結晶複合体を得る。結晶複合体を、塩およびアルブミンを含有する溶液に再溶解し、滅菌濾過(0.2μ)した後、真空乾燥する。BOTOX(登録商標)は、筋肉内注射前に、防腐していない無菌塩類液で復元し得る。BOTOX(登録商標)の各バイアルは、A型ボツリヌス毒素複合体約100単位(U)、ヒト血清アルブミン0.5mgおよび塩化ナトリウム0.9mgを、防腐剤不含有の無菌真空乾燥形態で含有する。

真空乾燥BOTOX(登録商標)を復元するには、防腐剤不含有の無菌生理食塩水(0.9%Sodium Chloride Injection)を使用し、適量のその希釈剤を適当な大きさの注射器で吸い上げる。BOTOX(登録商標)は、泡立てまたは同様の激しい撹拌によって変性しうるので、そのバイアルに希釈剤を穏やかに注入する。滅菌性の理由から、BOTOX(登録商標)は、復元後4時間以内に投与すべきである。その間、復元BOTOX(登録商標)は冷蔵庫(2〜8℃)内で保管する。復元BOTOX(登録商標)は、無色透明で、粒状物を含まない。真空乾燥生成物は、-5℃またはそれ以下の冷凍庫内で保管する。

ボツリヌス毒素安定剤としてヒト血清アルブミンの代わりに、他のタンパク質または低分子量(非タンパク質)化合物が適当であり得ると報告されている。Carpenderら、Interactions of Stabilizing Additives with Proteins During Freeze-Thawing and Freeze-Drying、International Symposium on Biological Product Freeze-Drying and Formulation、1990年10月24〜26日;Karger(1992)、225-239。

医薬組成物中に担体および充填剤として一般に用いられる多くの物質は、医薬組成物中に存在するボツリヌス毒素を安定化するための非タンパク質賦形剤としては適さないことがわかっている。例えば、二糖セロビオースは、ボツリヌス毒素安定剤として不適当であることがわかっている。すなわち、セロビオースを賦形剤としてアルブミンおよび塩化ナトリウムと組み合わせて使用した場合、それら賦形剤と共に結晶A型ボツリヌス毒素を凍結乾燥すると、毒素をヒト血清アルブミンとだけ組み合わせて凍結乾燥した時(回収率>75%ないし>90%)と比較して、毒素のレベルが非常に低下する(回収率10%)ことが知られている。Goodnoughら、Atabilization of Botulinum Toxin Type A During Lyophilization、App & Envir. Micro. 58(10) 3426-3428 (1992)。

更に、糖類(多糖を包含する)は通例、タンパク質安定剤として作用するとは考え難い。すなわち、タンパク質活性成分を含有する医薬組成物は本質的に、糖類(例えばグルコースまたはグルコースのポリマー)または炭水化物を含有する場合は不安定であることが知られているからである。なぜなら、タンパク質とグルコースとは、グルコースおよびグルコースポリマー還元性である故に、相互作用し、よく知られたメイラード反応を起こすことが知られているからである。例えば水分を減少するか、または非還元糖を使用することによって、このタンパク質−糖反応を抑制する試みが数多くなされたが、殆んど失敗に終わっている。重要なことに、メイラード反応の分解経路は、タンパク質活性成分の処置効果を低減し得る。従って、タンパク質および還元糖、炭水化物または糖(例えばグルコースポリマー)を含有する医薬製剤は、本質的に不安定であり、長期間貯蔵した場合、活性成分タンパク質の所望の生物学的活性の顕著な低下を免かれ得ない。

ある種の高分子量多糖(デンプン)、例えばヘタスターチが、ボツリヌス毒素医薬組成物中に存在するボツリヌス毒素の安定剤として提案されている。例えば欧州特許EP1253932(2005年4月27日発行)を参照されたい。

明らかに、アルブミンまたはゼラチンが医薬組成物中でタンパク質活性成分の安定剤として有効に作用し得る理由の一つは、そのような安定剤はタンパク質で、医薬組成物中でタンパク質活性成分とのメイラード反応を起こさない、ということである。従って、ボツリヌス毒素医薬組成物中に存在するボツリヌス毒素を安定化するために用いられるそのようなタンパク質賦形剤の代替物を他のタンパク質の中から見出すことが期待されるだろう。

独特なボツリヌス毒素の性質、および適当な医薬組成物へのその製剤化の故に、ボツリヌス毒素含有医薬製剤中のタンパク質安定剤の代替物の探索は、制限され、困難なものとなっている。そのような独特の性質の4つの例を次に示す。

第1に、ボツリヌス毒素は医薬製剤中に組み入れるには比較的大きなタンパク質であり(A型ボツリヌス毒素複合体の分子量は900kDである)、それゆえ本質的に脆く、不安定である。毒素複合体のサイズが、それを、複雑度の低い小さなタンパク質よりも、はるかに脆弱で不安定なものにし、その結果、毒素の安定性を維持すべき場合には、製剤の調合および取扱いが困難になる。したがって、ボツリヌス毒素安定剤は、毒素分子を変性させ、断片化し、もしくは他の形で解毒するか、または毒素複合体中に存在する非毒素タンパク質の解離を引き起こすことがないように、毒素と相互作用できるものでなければならない。

第2に、最も致死性の高い既知の生物学的製剤として、ボツリヌス毒素含有医薬組成物の製剤においては、全てのステップに並外れた安全性、精度および確度が要求される。したがって、ボツリヌス毒素安定剤は、既に極めて厳格なボツリヌス毒素含有医薬組成物の製剤要件を悪化させないように、それ自体毒性であるべきではなく、また取り扱いが困難なものであるべきではない。

第3に、ボツリヌス毒素は、ヒト疾患の処置を目的とする注射が(FDAによって1989年に)承認された初めての微生物毒素だったため、ボツリヌス毒素の培養、大量生産医薬への製剤化および使用について、具体的なプロトコールを開発して、承認を受ける必要があった。考慮すべき重要な事項は、毒素純度および注射用量である。培養による生産および精製は、たとえ微量でも最終生成物を汚染し患者において不適当な反応を起こすかも知れないいかなる物質にも毒素を曝すことがないように行わなければならない。このような制限の故に、培養は動物肉生成物を使用しない単純な培地中で行う必要があり、精製は合成溶媒または樹脂を伴わない方法で行う必要がある。酵素、様々な交換体(例えばクロマトグラフィーカラム中に存在するもの)、および合成溶媒を用いる毒素調製は汚染物をもたらしうるので、好ましい調製工程からは排除される。さらに、A型ボツリヌス毒素は容易に40℃を越える温度で変性し、気/液界面で発泡が起きれば毒性を失い、窒素または二酸化炭素の存在下で変性する。

第4に、A型は約750kDの重量を持つ非毒素タンパク質と非共有結合的に会合した約150kDの毒素分子からなるため、A型ボツリヌス毒素を安定化することには格別な困難がある。非毒素タンパク質は、二次構造および三次構造(毒性はこれらの構造に依存する)を保存し、またはその安定化を助けると考えられている。非タンパク質の安定化または比較的小さなタンパク質に応用することができる手法またはプロトコールは、ボツリヌス毒素複合体(例えば900kD A型ボツリヌス毒素複合体)の安定化に伴う固有の問題には応用することができない。例えば、pH3.5〜6.8では、A型毒素および非毒素タンパク質が非共有結合的に一つに結合しているが、弱アルカリ条件(pH>7.1)では、極めて不安定な毒素が毒素複合体から放出される。上述のように、純粋なボツリヌス毒素(すなわち150kD分子)が、医薬組成物中の活性成分として提案されている。

上述のようなボツリヌス毒素の独特の性質および必要条件を考慮すると、ボツリヌス毒素含有医薬組成物中に使用するタンパク質安定剤に代わる適当な非タンパク質安定剤を見出す可能性は現実的に皆無に近いに違いない。本発明以前には、動物由来タンパク質であるヒト血清アルブミンおよびゼラチンのみが、医薬組成物中に存在するボツリヌス毒素の適当な安定剤として有用であることが知られていた。すなわち、アルブミンは単独で、または1種もしくはそれ以上の他の物質(例えばリン酸ナトリウムまたはクエン酸ナトリウム)との組み合わせとして、凍結乾燥後のA型ボツリヌス毒素毒性の高回収率を可能にすることが知られている。しかしながら前記のように、プール血液生成物であるヒト血清アルブミンは、医薬組成物中に存在するとき感染性要素または疾患原因要素を、少なくとも潜在的に有しうる。実際、動物性生成物またはタンパク質(例えばヒト血清アルブミンまたはゼラチン)はまた、発熱物質、または患者への注射により不都合な反応を起こしうる他の物質を、潜在的に含有しうる。

概要

クロストリジウム毒素を非タンパク質賦形剤で安定化する。クロストリジウム毒素、例えばボツリヌス毒素を含有するクロストリジウム毒素医薬組成物であって、医薬組成物中に存在するクロストリジウム毒素が、非タンパク質賦形剤、例えばポリビニルピロリドン、二糖、三糖、多糖、アルコール、金属、アミノ酸、界面活性剤および/またはポリエチレングルコールによって安定化される医薬組成物を提供する。なし

目的

本発明はこの必要性を満たし、非タンパク質賦形剤で安定化したボツリヌス毒素医薬組成物を提供する

効果

実績

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請求項1

請求項2

ボツリヌス毒素が生物学的に活性なボツリヌス毒素である、請求項1に記載の医薬組成物。

請求項3

ボツリヌス毒素がA、B、C、D、E、FおよびG型ボツリヌス毒素からなる群より選択される、請求項1に記載の医薬組成物。

請求項4

ボツリヌス毒素がA型ボツリヌス毒素である、請求項1に記載の医薬組成物。

請求項5

ポリビニルピロリドンの機能がボツリヌス毒素を安定化することである、請求項1に記載の医薬組成物。

請求項6

(a)ボツリヌス毒素、および(b)ボツリヌス毒素約100単位ごとに約5グラム〜約20グラムのポリビニルピロリドンを含む医薬組成物。

請求項7

(a)タンパク質賦形剤によって安定化されていないボツリヌス毒素、および(b)ポリビニルピロリドンを含み、ボツリヌス毒素の力価がボツリヌス毒素の理論最大力価の少なくとも約40%である医薬組成物。

請求項8

ボツリヌス毒素が生物学的に活性なボツリヌス毒素である、請求項7に記載の医薬組成物。

請求項9

ボツリヌス毒素がA、B、C、D、E、FおよびG型ボツリヌス毒素からなる群より選択される、請求項7に記載の医薬組成物。

請求項10

ボツリヌス毒素がA型ボツリヌス毒素である、請求項7に記載の医薬組成物。

請求項11

ポリビニルピロリドンの機能がボツリヌス毒素を安定化することである、請求項7に記載の医薬組成物。

請求項12

(a)タンパク質賦形剤によって安定化されていないボツリヌス毒素、および(b)ポリビニルピロリドンを含み、ボツリヌス毒素の力価がボツリヌス毒素の理論最大力価の少なくとも約50%である医薬組成物。

請求項13

(a)タンパク質賦形剤によって安定化されていないボツリヌス毒素、(b)ポリビニルピロリドン、および(c)二糖を含み、ボツリヌス毒素の力価がボツリヌス毒素の理論最大力価の少なくとも約40%である医薬組成物。

請求項14

ボツリヌス毒素がA、B、C、D、E、FおよびG型ボツリヌス毒素からなる群より選択される、請求項13に記載の医薬組成物。

請求項15

ボツリヌス毒素がA型ボツリヌス毒素である、請求項13に記載の医薬組成物。

請求項16

(a)タンパク質賦形剤によって安定化されていないボツリヌス毒素、(b)ポリビニルピロリドン、および(c)二糖を含み、ボツリヌス毒素の力価がボツリヌス毒素の理論最大力価の少なくとも約50%である医薬組成物。

請求項17

(a)タンパク質賦形剤によって安定化されていないボツリヌス毒素、(b)ポリビニルピロリドン、および(c)二糖を含み、ボツリヌス毒素の力価がボツリヌス毒素の理論最大力価の少なくとも約60%である医薬組成物。

請求項18

(a)タンパク質賦形剤によって安定化されていないボツリヌス毒素、(b)ポリビニルピロリドン、および(c)二糖を含み、ボツリヌス毒素の力価がボツリヌス毒素の理論最大力価の少なくとも約70%である医薬組成物。

請求項19

(a)タンパク質賦形剤によって安定化されていないボツリヌス毒素、(b)ポリビニルピロリドン、および(c)ポリエチレングリコールを含み、ボツリヌス毒素の力価がボツリヌス毒素の理論最大力価の少なくとも約40%である医薬組成物。

請求項20

(a)タンパク質賦形剤によって安定化されていないボツリヌス毒素、(b)第1の単糖、第1の二糖、第1の三糖、および第1の単糖を還元することによって製造される第1のアルコールからなる群より選択される化合物、ならびに(c)ポリエチレングリコール、第2の単糖、第2の二糖、第2の三糖、金属、第2のアルコール、およびアミノ酸からなる群より選択される化合物(この場合、第2の単糖、第2の二糖および第2の三糖は、それぞれ第1の単糖、第1の二糖、および第1の三糖とは異なる)を含み、ボツリヌス毒素の力価がボツリヌス毒素の理論最大力価の少なくとも約40%である医薬組成物。

請求項21

(a)タンパク質賦形剤によって安定化されていないボツリヌス毒素、(b)ポリエチレングリコール、ならびに(c)単糖、二糖、三糖、金属、アルコール、およびアミノ酸からなる群より選択される化合物を含み、ボツリヌス毒素の力価がボツリヌス毒素の理論最大力価の少なくとも約20%である医薬組成物。

請求項22

(a)タンパク質賦形剤によって安定化されていないボツリヌス毒素、(b)ポリエチレングリコール、ならびに(c)単糖、二糖、三糖、金属、アルコール、およびアミノ酸からなる群より選択される化合物を含み、ボツリヌス毒素の力価がボツリヌス毒素の理論最大力価の少なくとも約30%である医薬組成物。

請求項23

(a)タンパク質賦形剤によって安定化されていないボツリヌス毒素、(b)ポリエチレングリコール、ならびに(c)単糖、二糖、三糖、金属、アルコール、およびアミノ酸からなる群より選択される化合物を含み、ボツリヌス毒素の力価がボツリヌス毒素の理論最大力価の少なくとも約40%である医薬組成物。

請求項24

(a)タンパク質賦形剤によって安定化されていないボツリヌス毒素、(b)ポリエチレングリコール、ならびに(c)単糖、二糖、三糖、金属、アルコール、およびアミノ酸からなる群より選択される化合物を含み、ボツリヌス毒素の力価がボツリヌス毒素の理論最大力価の少なくとも約50%である医薬組成物。

請求項25

(a)タンパク質賦形剤によって安定化されていないボツリヌス毒素、(b)ポリエチレングリコール、ならびに(c)単糖、二糖、三糖、金属、アルコール、およびアミノ酸からなる群より選択される化合物を含み、ボツリヌス毒素の力価がボツリヌス毒素の理論最大力価の少なくとも約60%である医薬組成物。

請求項26

(a)タンパク質賦形剤によって安定化されていないボツリヌス毒素、(b)ポリエチレングリコール、ならびに(c)単糖、二糖、三糖、金属、アルコール、およびアミノ酸からなる群より選択される化合物を含み、ボツリヌス毒素の力価がボツリヌス毒素の理論最大力価の少なくとも約70%である医薬組成物。

技術分野

0001

本発明はクロストリジウム毒素医薬組成物に関する。特に本発明は、医薬組成物中に存在するクロストリジウム毒素(例えばボツリヌス毒素)を安定化するよう機能する非タンパク質賦形剤を含有するクロストリジウム毒素医薬組成物に関する。

0002

医薬組成物は、少なくとも一つの活性成分(例えばクロストリジウム毒素)と、例えば一つ以上の賦形剤緩衝剤担体、安定剤、保存剤および/または充填剤とを含有する製剤であり、患者投与して所望の診断結果または処置効果を達成するのに適している。本発明が開示する医薬組成物は、診断上、治療上および/または研究上、有益である。

背景技術

0003

貯蔵安定性および取扱いの利便性を考えて、医薬組成物は、患者への投与に先だって適切な液体、例えば食塩水または水で復元することができる凍結乾燥(すなわちフリーズドライ粉末または真空乾燥粉末として、製剤化することができる。あるいは、医薬組成物を水性溶液または水性懸濁液として製剤化することもできる。医薬組成物はタンパク質性活性成分を含有することができる。残念なことに、タンパク質活性成分は安定化すること(すなわち、生物学的活性損失が最小限に抑えられる状態に保つこと)が非常に困難であり、それゆえに、タンパク質含有医薬組成物の製造時、復元(必要な場合)時、および使用するまでの貯蔵期間中に、タンパク質の損失および/またはタンパク質活性の損失が起こる。安定性の問題は、タンパク質の変性、分解、二量体化、および/または重合が原因となって起こりうる。医薬組成物中に存在するタンパク質活性成分を安定化する目的で、例えばアルブミンおよびゼラチンなどといった種々の賦形剤が使用され、大小さまざまな成功を納めている。さらに、凍結乾燥の冷凍条件下で起こるタンパク質変性を減らすために、アルコール類などの凍害防止剤も使用されてきた。

0004

タンパク質賦形剤
医薬組成物中に存在するボツリヌス毒素を安定化するために、例えばアルブミンおよびゼラチンなどといった種々の賦形剤が使用されている。アルブミンは豊富に存在する小さな血漿タンパク質である。ヒト血清アルブミンは約69キロダルトン(kD)の分子量を持ち、医薬組成物に非活性成分として使用されてきた。その場合、ヒト血清アルブミンは、医薬組成物中に存在する一定のタンパク質活性成分のバルク担体および安定剤として役立つことができる。

0005

医薬組成物におけるアルブミンの安定化機能は、その医薬組成物の多段階製造中も、製造された医薬組成物を後に復元する際にも、存在することができる。したがってアルブミンは、医薬組成物中のタンパク質性活性成分に、例えば(1)表面、例えば実験用ガラス器具容器の表面、医薬組成物を復元する際のバイアル、および医薬組成物を注射するために使用する注射器内面へのタンパク質活性成分の付着(一般に「粘着性」と呼ばれる)を減少させること(表面へのタンパク質活性成分の付着は、活性成分の損失および失われなかった残りのタンパク質活性成分の変性につながる可能性があり、それらはどちらも医薬組成物中に存在する活性成分の総活性を減少させる)および(2)活性成分の低希釈度溶液を調製する際に起こりうる活性成分の変性を減少させることによって、安定性を付与することができる。

0006

医薬組成物中のタンパク質活性成分を安定化することができるだけでなく、ヒト血清アルブミンには、ヒト患者に注射した時に一般に無視できるほどの免疫原性しか持たないという利点もある。それとわかるほどの免疫原性を持つ化合物は、その化合物に対する抗体の産生を引き起こすことができ、それがアナフィラキシー反応および/または薬物耐性発達(これにより、処置されるべき疾患または障害は、免疫原性構成要素を持つ医薬組成物に対して、潜在的に不応性になる)をもたらす場合がある。

0007

ボツリヌス毒素医薬組成物中の安定剤として、組換えアルブミンが提案されている。すなわち、公開された米国特許出願第2003 0118598号(Hunt)には、組換えアルブミン、コラーゲンまたはデンプンなどといった種々の賦形剤を、医薬組成物中に存在するボツリヌス毒素の安定化のために使用することが開示されている。

0008

コラーゲンは哺乳動物中で最も豊富なタンパク質で、身体の全タンパク質の約4分の1を占める。コラーゲンは、皮膚、靱帯およびなどといった結合組織の主要な構成成分である。天然コラーゲンは3つの高分子量タンパク質三重らせんをなすものである。コラーゲンらせんを構成する3本のタンパク質鎖のそれぞれが、1400を越えるアミノ酸を有する。少なくとも25種の異なるコラーゲンがヒトにおいて同定されている。

0009

コラーゲンは、皮膚の外見的問題を処置するため、例えばスマイルラインしわおよび眉間のしわ、眉毛の間のしわ、眼角のしわおよび上下の細かい縦しわを滑らかにするために、美容的注入剤として用いられている。ある種の術後外傷性瘢痕またはざ瘡瘢痕およびウイルス性あばた、例えば水疱瘡痕を滑らかにするのにも、コラーゲンは有用である。そのような目的のために、コラーゲンを真皮注入して皮膚を持ち上げる。

0010

ゼラチンはコラーゲンの加水分解によって得ることができる。ゼラチンは、タンパク質を活性成分とするいくつかの医薬組成物中にアルブミン代替物として用いられている。注意すべきは、ゼラチンは動物由来のタンパク質であり、それ故、ヒト血清アルブミンが持ちうるのと同じ感染性リスクを持つということである。中国特許CN1215084には、天然ゼラチンコラーゲン加水分解物)、動物由来タンパク質、デキストランおよびスクロースを用いて製剤化されるアルブミン不含有A型ボツリヌス毒素が記載されている。米国特許第6087327号にも、天然ゼラチンを用いて調製されるA型およびB型ボツリヌス毒素組成物が開示されている。

0011

医薬組成物におけるアルブミンまたはゼラチンのようなタンパク質賦形剤の使用には、それらの安定化作用が知られているが、残念ながら重大な欠点もある。例えば、アルブミンおよびゼラチンは高価であり、入手が困難になりつつある。さらに、血液成分または動物由来生成物(例えばアルブミンおよびゼラチン)の患者への投与により、血液由来病原体または感染因子をもらう潜在的危険に、その患者をさらすことになりうる。すなわち、医薬組成物中に動物由来タンパク質賦形剤が存在すると、医薬組成物に感染性物質不用意に導入してしまう恐れがあることが知られている。例えば、ヒト血清アルブミンの使用により、医薬組成物にプリオンが導入されうることが報告されているる。プリオンは、正常タンパク質を作る配列と同じ核酸配列から異常コンフォメーションアイソフォームとして生じると考えられているタンパク質性感染粒子である。また、感染性は、翻訳後レベルでの正常アイソフォームタンパク質からプリオンタンパク質アイソフォームへの「補充(recruitment)反応」に存在するとも考えられている。正常な内因性細胞性タンパク質が病原性プリオンコンフォメーションへミスフォールド(misfold)するように誘導されるようである。

0012

したがって、ボツリヌス毒素医薬組成物中に存在するボツリヌス毒素を安定化するのに使用しうる適当な賦形剤を見出すことが望ましい。ボツリヌス毒素安定剤は、動物(すなわち哺乳動物)性原料由来するタンパク質ではないことが好ましい。

0013

ボツリヌス毒素
クロストリジウム属には127を越える種があり、形態学および機能に従って分類されている。嫌気性グラム陽性細菌であるボツリヌス菌(Clostridium botulinum)は、ボツリヌス中毒として知られる神経麻痺性障害をヒトおよび動物において引き起こす強力なポリペプチド神経毒であるボツリヌス毒素を産生する。ボツリヌス菌およびその胞子は共に土壌中に見出され、該細菌は、滅菌密閉不適切缶詰工場食品容器内で増殖する可能性があり、これが多くのボツリヌス中毒症例の原因である。ボツリヌス中毒の影響は、通例、ボツリヌス菌の培養物または胞子で汚染された食品飲食した18〜36時間後に現れる。ボツリヌス毒素は、消化管内を弱毒化されないで通過することができ、そして末梢運動ニューロン攻撃することができるようである。ボツリヌス毒素中毒の症状は、歩行困難、嚥下困難および会話困難から、呼吸筋麻痺および死にまで進行し得る。

0014

A型ボツリヌス毒素は、人類に知られている最も致死性天然生物学的物質である。ボツリヌス毒素(精製された神経毒複合体)A型の約50ピコグラムマウスにおけるLD50である。興味深いことに、モル基準でA型ボツリヌス毒素の致死力はジフテリアの18億倍、シアン化ナトリウムの6億倍、コブロトキシンの3000万倍、コレラの1200万倍である。Natuaral Toxins II[B. R. Singhら編、Plenum Press、ニューヨーク(1976)]のSingh、Critical Aspects of Bacterial Protein Toxins、第63〜84頁(第4章)(ここで、記載されるA型ボツリヌス毒素LD50 0.3ng=1Uとは、BOTOX(登録商標)約0.05ng=1Uという事実に補正される)。1単位(U)のボツリヌス毒素は、それぞれが18〜20グラムの体重を有するメスのSwiss Websterマウスに腹腔内注射されたときのLD50として定義される。換言すれば、1単位のボツリヌス毒素は、メスSwiss Websterマウス群の50%を死亡させるボツリヌス毒素量である。

0015

7種類の血清学的に異なるボツリヌス神経毒特徴付けられており、これらは、型特異的抗体による中和によってそのそれぞれが識別されるボツリヌス神経毒血清型A、B、C1、D、E、FおよびGである。ボツリヌス毒素のこれらの異なる血清型は、それらが冒す動物種、ならびにそれらが惹起する麻痺の重篤度および継続時間が異なる。例えば、A型ボツリヌス毒素は、ラットにおいて生じる麻痺率により評価された場合、B型ボツリヌス毒素よりも500倍強力であることが確認されている。また、B型ボツリヌス毒素は、霊長類では480U/kgの投与量で非毒性であることが確認されている。この投与量は、A型ボツリヌス毒素の霊長類LD50の約12倍である。ボツリヌス毒素は、コリン作動性の運動ニューロンに大きな親和性で結合して、ニューロンに移動し、アセチルコリンシナプス前放出を阻止するようである。

0016

ボツリヌス毒素は、活動過多骨格筋によって特徴付けられる神経筋障害を処置するために臨床的状況において使用されている。A型ボツリヌス毒素(BOTOX(登録商標))は、本態性眼瞼痙攣、斜視および片側顔面痙攣を12を越える患者において処置するために、米国食品医薬品局によって1989年に承認された。末梢注射(例えば筋肉内または皮下)A型ボツリヌス毒素の臨床的効果は、通常、注射後1週間以内およびしばしば数時間以内に認められる。A型ボツリヌス毒素の単回筋肉内注射による症候緩和(例えば弛緩性筋肉麻痺)の典型的な継続時間は約3ヶ月〜約6ヶ月であり得る。

0017

すべてのボツリヌス毒素血清型神経筋接合部における神経伝達物質アセチルコリンの放出を阻害するようであるが、そのような阻害は、種々の神経分泌タンパク質に作用し、かつ/またはこれらのタンパク質を異なる部位で切断することによって行われる。A型ボツリヌス毒素は、細胞小胞関連タンパク質SNAP-25のペプチド結合を特異的に加水分解しうる亜鉛エンドペプチダーゼである。E型ボツリヌス毒素も、25キロダルトン(kD)のシナプトソーム関連タンパク質(SNAP-25)を切断するが、A型ボツリヌス毒素とは異なるタンパク質内アミノ酸配列を標的とする。B型、D型F型およびG型のボツリヌス毒素は小胞関連タンパク質(VAMP、これはまたシナプトブレビンとも呼ばれる)に作用し、それぞれの血清型によってこのタンパク質は異なる部位で切断される。最後に、C1型ボツリヌス毒素は、シンタキシンおよびSNAP-25の両者を切断することが明らかにされている。作用機序におけるこれらの相違が、様々なボツリヌス毒素血清型の相対的な効力および/または作用の継続時間に影響していると考えられる。

0018

血清型に関係なく、毒素中毒の分子メカニズムは類似し、少なくとも3つの過程または段階を含むようである。第1段階において、毒素は、重鎖H鎖)と細胞表面受容体との特異的相互作用によって、標的ニューロンシナプス前膜に結合する。受容体は、ボツリヌス毒素の各血清型および破傷風毒素で異なると考えられる。H鎖のカルボキシル末端セグメント(HC)は、毒素を細胞表面に指向させるのに重要であるようである。

0019

第2段階において、毒素は、冒した細胞の形質膜を横切る。毒素は、初めに、受容体媒介エンドサイトーシスにより細胞に包み込まれ、毒素を含有するエンドソームが形成される。次に、毒素は、エンドソームから該細胞の細胞質中に逃れ出る。この最後の段階は、約5.5またはそれ以下のpHに反応して毒素のコンフォメーション変化を誘発するH鎖のアミノ末端セグメント(HN)によって媒介されると考えられる。エンドソームは、エンドソーム内pHを低下させるプロトンポンプを有することが既知である。コンフォメーションのシフトは毒素中の疎水性残基を露出させ、これが、毒素をエンドソーム膜内埋込むことを可能にする。次に、毒素が、エンドソーム膜を通って細胞質ゾルに移動する。

0020

ボツリヌス毒素活性のメカニズムの最終段階は、H鎖およびL鎖を結合するジスルフィド結合の減少を伴うようである。ボツリヌス毒素および破傷風毒素の全毒素活性は、ホロトキシンのL鎖に含まれる。L鎖は亜鉛(Zn++)エンドペプチダーゼであり、これは、神経伝達物質を含有する小胞の認識および形質膜の細胞質表面とのドッキングならびに小胞と形質膜との融合に必須であるタンパク質を選択的に開裂する。破傷風神経毒、ボツリヌス毒素B、D、FおよびG型は、シナプトソーム膜タンパク質であるシナプトブレビン[小胞関連膜タンパク質(VAMP)とも称される]の分解を引き起こす。シナプス小胞の細胞質表面に存在する大部分のVAMPは、これらの開裂現象のいずれかの結果として除去される。各毒素は異なる結合を特異的に開裂する。

0021

ボツリヌス毒素タンパク質分子の分子量は、既知のボツリヌス毒素血清型の7つのすべてについて約150kDである。ボツリヌス毒素は、会合する非毒素タンパク質とともに150kDのボツリヌス毒素タンパク質分子を含む複合体としてクロストリジウム属細菌によって放出される。例えば、A型ボツリヌス毒素複合体は、900kD、500kDおよび300kDの形態としてクロストリジウム属細菌によって産生され得る。B型およびC1型のボツリヌス毒素は500kDの複合体としてのみ産生されるようである。D型ボツリヌス毒素は300kDおよび500kDの両方の複合体として産生される。最後に、E型およびF型のボツリヌス毒素は約300kDの複合体としてのみ産生される。これらの複合体(すなわち、約150kDよりも大きな分子量)は、非毒素のヘマグルチニンタンパク質と、非毒素かつ非毒性の非ヘマグルチニンタンパク質とを含むと考えられる。これらの2つの非毒素タンパク質(これらは、ボツリヌス毒素分子とともに、関連する神経毒複合体を構成し得る)は、変性に対する安定性をボツリヌス毒素分子に与え、そして毒素が摂取されたときに消化酸からの保護を与えるように作用すると考えられる。また、より大きい(分子量が約150kDよりも大きい)ボツリヌス毒素複合体は、ボツリヌス毒素複合体の筋肉内注射部位からのボツリヌス毒素の拡散速度を低下させ得ると考えられる。毒素複合体は、pH7.3において赤血球で処理することにより、毒素タンパク質とヘマグルチニンタンパク質に解離しうる。毒素タンパク質は、ヘマグルチニンタンパク質から解離すると非常に不安定である。

0022

すべてのボツリヌス毒素血清型は、神経活性となるためにはプロテアーゼによって切断またはニッキングされなければならない不活性な単鎖タンパク質として、ボツリヌス菌により合成される。A型およびG型のボツリヌス毒素血清型を産生する細菌株内因性プロテアーゼを有するので、A型およびG型の血清型は細菌培養物から主にその活性型回収することができる。これに対して、C1型、D型およびE型のボツリヌス毒素血清型は非タンパク質分解性菌株によって合成されるので、培養から回収されたときには、典型的には不活性型である。B型およびF型の血清型はタンパク質分解性菌株および非タンパク質分解性菌株の両方によって産生されるので、活性型または不活性型のいずれでも回収することができる。しかし、例えば、B型ボツリヌス毒素を産生するタンパク質分解性菌株でさえも、産生された毒素の一部を切断するだけである。

0023

切断型分子と非切断型分子との正確な比率は培養時間の長さおよび培養温度に依存する。したがって、例えばB型ボツリヌス毒素の製剤はいずれも一定割合が不活性であると考えられ、このことが、A型ボツリヌス毒素と比較したB型ボツリヌス毒素の知られている著しく低い効力の原因であると考えられる。臨床製剤中に存在する不活性なボツリヌス毒素分子は、その製剤の総タンパク質量の一部を占めることになるが、このことはその臨床的効力に寄与せず、抗原性の増大に関連づけられている。また、B型ボツリヌス毒素は、筋肉内注射された場合、同じ用量レベルのA型ボツリヌス毒素よりも、活性の継続期間が短く、そしてまた効力が低いことも知られている。

0024

インビトロでの研究により、ボツリヌス毒素が、脳幹組織初代細胞培養物からのアセチルコリンおよびノルエピネフリンの両方の、カリウムカチオンにより誘導される放出を阻害することが示されている。また、ボツリヌス毒素は、脊髄ニューロンの初代培養物におけるグリシンおよびグルタメートの両方の誘発された放出を阻害すること、そして脳のシナプトソーム調製物において、ボツリヌス毒素が神経伝達物質のアセチルコリン、ドーパミン、ノルエピネフリン、CGRPおよびグルタメートのそれぞれの放出を阻害することが報告されている。

0025

ボツリヌス菌のHall A株から、≧3×107U/mg、A260/A2780.60未満、およびゲル電気泳動における明確なバンドパターンという特性を示す高品質結晶A型ボツリヌス毒素を生成し得る。Schantz, E. J.ら、Properties and use of Botulinum toxin and Other Microbial Neurotoxins in Medicine、Microbiol Rev.56:80-99(1992)に記載されているように既知のSchanz法を用いて結晶A型ボツリヌス毒素を得ることができる。通例、A型ボツリヌス毒素複合体を、適当な培地中でA型ボツリヌス菌を培養した嫌気培養物から分離および精製し得る。硫酸での沈殿によって粗毒素を採り、限外マイクロ濾過によって濃縮することができる。酸沈殿物塩化カルシウムに溶解することによって精製を行いうる。次いで、毒素を冷エタノールで沈殿させうる。沈殿物リン酸ナトリウムに溶解し、遠心しうる。次いで、乾燥して、比効力3×107LD50U/mgまたはそれ以上の900kD結晶A型ボツリヌス毒素複合体を得ることができる。この既知の方法を用い、非毒素タンパク質を分離除去して、例えば次のような純ボツリヌス毒素を得ることもできる:比効力1〜2×108LD50U/mgまたはそれ以上の分子量約150kDの精製A型ボツリヌス毒素;比効力1〜2×108LD50U/mgまたはそれ以上の分子量約156kDの精製B型ボツリヌス毒素;および比効力1〜2×107LD50U/mgまたはそれ以上の分子量約155kDの精製F型ボツリヌス毒素。

0026

ボツリヌス毒素およびボツリヌス毒素複合体は例えば、List Biological Laboratories, Inc.(キャンベル、カリフォルニア);the Centre for Applied Microbiology and Research(ポートン・ダウンイギリス);Wako(日本、大阪);およびSigma Chemicals(セントルイス、ミズーリ)から入手し得る。市販のボツリヌス毒素含有医薬組成物には、次のものが包含される:BOTOX(登録商標)(A型ボツリヌス毒素神経毒複合体とヒト血清アルブミンおよび塩化ナトリウムを含む。使用前に0.9%塩化ナトリウムで再構成する凍結乾燥粉末として、100単位バイアルで、カリフォルニア、アーヴィンのAllergan, Inc.から入手可能。)、Dysport(登録商標)(A型ボツリヌス毒素ヘマグルチニン複合体とヒト血清アルブミンおよびラクトースを製剤中に含む。使用前に0.9%塩化ナトリウムで再構成する粉末として、イギリス、バークシャーのIpsen Limitedから入手可能。)、およびMyoBloc(登録商標)(B型ボツリヌス毒素、ヒト血清アルブミン、コハク酸ナトリウムおよび塩化ナトリウムを含むpH約5.6の注射可能な溶液。カリフォルニア、サウスサンフランシスコのSolstice Neurosciences, Inc.から入手可能。)。

0027

種々の臨床症状の治療におけるA型ボツリヌス毒素の成功は、他のボツリヌス毒素血清型への関心を高めている。更に、純粋ボツリヌス毒素がヒトの処置に用いられている。例えば、Kohl A. ら、Comparison of the effect of botulinum toxin (Botox(R)) with the highly-purified neurotoxin(NT201) in the extensor digitorum brevis muscle test, Mov Disord 2000;15(補遺3):165参照。すなわち、純粋ボツリヌス毒素を使用して医薬組成物を調製することができる。

0028

A型ボツリヌス毒素はpH4〜6.8で希水溶液に可溶であることが知られている。約7を越えるpHでは、安定化非毒性タンパク質が神経毒から解離し、その結果、特にpHおよび温度が上がるほど、毒性が徐々に失われる。Jankovic, J.ら、Therapy with Botulinum Toxin, Marcel Dekker, Inc (1994)の第3章のSchantz E.J.ら、Preparation and characterization of botulinum toxin type A for human treatment(特に第44-45頁)。

0029

欧州特許EP1112082(“Stable liquid formulations of botulinum toxin”)(2002年7月31日発行)には、緩衝剤(pH5〜6)およびボツリヌス毒素を含有する安定な液体ボツリヌス毒素医薬製剤が特許請求されており、該毒素製剤は液体として0〜10℃で少なくとも1年間または10〜30℃で少なくとも6ヶ月間安定である。そのような毒素医薬組成物(その態様はSolstice Neurosciences, Inc. (サンディエゴ、カリフォルニア)からMyoBloc(登録商標)またはNeuroBloc(登録商標)の商品名で市販されている)は、使用前に復元する必要のない液体溶液として調製される(凍結乾燥または真空乾燥は行われない)。

0030

米国特許第5,512,547号(Johnsonら)“Pharmaceutical Composition of Botulinum Neurotoxin and Method of Preparation”(1996年4月30日発行)には、37℃で貯蔵安定性を示す、アルブミンおよびトレハロースを含有する純粋なA型ボツリヌス毒素の製剤が特許請求されている。

0031

米国特許第5,756,468号(Johnsonら)(1998年5月26日発行)(“Pharmaceutical Compositions of Botulinum Toxin or Botulinum Neurotoxin and Method of Preparation”)には、25〜42℃で貯蔵できる、チオアルキル、アルブミンおよびトレハロースを含有する凍結乾燥ボツリヌス毒素製剤が特許請求されている。

0032

米国特許第5,696,077号(Johnsonら)“Pharmaceutical Composition Containing Botulinum B Complex”(1997年12月9日発行)には、B型複合体およびタンパク質賦形剤を含有する凍結乾燥した塩化ナトリウム不含有のB型ボツリヌス毒素複合体製剤が特許請求されている。

0033

Goodnough M.C.ら、Stabilization of botulinum toxin type A during lyophilization, Appl Environ Microbiol 1992;58(10):3426-3428、およびGoodnough M.C.ら、Recovery of type-A botulinal toxin following lyophilization, Acs Symposium Series 1994;567(-):193-203に開示されている。

0034

中国特許出願CN1215084Aには、動物由来タンパク質であるゼラチンを用いて調製された、アルブミン不含有のA型ボツリヌス毒素が記載されている。米国特許第6,087,327号にも、ゼラチンを用いて調製されたA型およびB型ボツリヌス毒素組成物が開示されている。したがって、これら製剤は、動物性タンパク質に由来するかまたは付随する感染性物質をもたらす危険性を排除するものではない。

0035

BoNt/Aが様々な臨床用途に用いられていることが報告されており、その例には下記のものが含まれる:
(1)頸部ジストニーを処置するための筋肉内注射(多数の筋肉)あたり約75単位〜125単位のBOTOX(登録商標)(Allergan, Inc. (アーバイン、カリフォルニア)から商品名BOTOX(登録商標)で入手可能);
(2)眉間のしわを処置するための筋肉内注射あたり約5単位〜10単位のBOTOX(登録商標)(5単位が鼻根筋に筋肉内注射され、10単位がそれぞれの皺眉筋に筋肉内注射される);
(3)恥骨直腸筋括約筋内注射による便秘を処置するための約30単位〜80単位のBOTOX(登録商標);
(4)上瞼の外側瞼板前部眼輪筋および下瞼の外側瞼板前部眼輪筋に注射することによって眼瞼痙攣を処置するために筋肉あたり約1単位〜5単位の筋肉内注射されるBOTOX(登録商標);

0036

(5)斜視を処置するために、外眼筋に、約1単位〜5単位のBOTOX(登録商標)が筋肉内注射されている。この場合、注射量は、注射される筋肉のサイズと所望する筋肉麻痺の程度(すなわち、所望するジオプター矯正量)との両方に基づいて変化する。
(6)卒中後上肢痙性を処置するために、下記のように5つの異なる上肢屈筋にBOTOX(登録商標)が筋肉内注射される:
(a)深指屈筋:7.5U〜30U
(b)浅指屈筋:7.5U〜30U
(c)尺側手根屈筋:10U〜40U
(d)橈側手根屈筋:15U〜60U
(e)上腕二頭筋:50U〜200U。5つの示された筋肉のそれぞれには同じ処置時に注射されるので、患者には、それぞれの処置毎に筋肉内注射によって90U〜360Uの上肢屈筋BOTOX(登録商標)が投与される。
(7)偏頭痛を治療するために、25UのBOTOX(登録商標)を頭蓋周囲に注射する(眉間、前頭および側頭筋対称的に注射する):該注射は、偏頭痛頻度、最大重症度、付随嘔吐および急性薬剤使用の減少(25U注射後の3ヶ月間にわたる)によって評価した場合に、ビヒクルと比較して、偏頭痛の予防療法として有意な利益を与える。

0037

A型ボツリヌス毒素は、最大12ヶ月の有効性を有し(European J.Neurology 6(Supp 4), S111-S1150, 1999)、ある場合には27ヶ月間にもわたる有効性を有しうることが既知である(Laryngoscope 109, 1344-1346, 1999)。しかし、BOTOX (登録商標)筋肉注射効果の通常の持続期間は一般に約3〜4ヶ月間である。

0038

種々の臨床症状の治療におけるA型ボツリヌス毒素の成功は、他のボツリヌス毒素血清型への関心を高めている。更に、純粋ボツリヌス毒素がヒトの処置に用いられている。例えば、Kohl A. ら、Comparison of the effect of botulinum toxin (Botox(R)) with the highly-purified neurotoxin(NT201) in the extensor digitorum brevis muscle test, Mov Disord 2000;15(補遺3):165参照。すなわち、純粋ボツリヌス毒素を使用して医薬組成物を調製することができる。

0039

ボツリヌス毒素分子(約150kDa)、およびボツリヌス毒素複合体(約300〜900kDa)、例えばA型毒素複合体はまた、表面変性、熱およびアルカリ性条件による変性に対して非常に感受性である。不活性化毒素はトキソイドタンパク質を形成し、これは免疫原性であり得る。その結果生じる抗体の故に、患者が毒素注射に対して応答しなくなり得る。

0040

酵素一般について言えるように、ボツリヌス毒素(細胞内ペプチダーゼ)の生物学的活性は、少なくとも部分的にはその三次元形状に依存する。すなわち、A型ボツリヌス毒素は、熱、種々の化学薬品、表面の伸長および表面の乾燥によって無毒化される。しかも、既知の培養、発酵および精製によって得られた毒素複合体を、医薬組成物に使用する非常に低い毒素濃度まで希釈すると、適当な安定剤が存在しなければ毒素の無毒化が急速に起こることが知られている。毒素をmg量からng/ml溶液へ希釈するのは、そのような大幅な希釈によって比毒性が急速に低下する故に、非常に難しい。毒素含有医薬組成物を製造後、何箇月も、または何年も経過してから毒素を使用することもあるので、毒素を安定剤で安定化しなければならない。これまでにこの目的のために有効であった安定剤は、動物由来タンパク質であるヒト血清アルブミンおよびゼラチンのみである。

0041

市販のボツリヌス毒素含有医薬組成物は、BOTOX(登録商標)(カリフォルニア、アーヴィンのAllergan,Inc.から入手可能)の名称で市販されている。BOTOX(登録商標)は、精製A型ボツリヌス毒素複合体、ヒト血清アルブミンおよび塩化ナトリウムから成り、無菌の真空乾燥形態で包装されている。このA型ボツリヌス毒素は、N-Zアミンおよび酵母エキスを含有する培地中で増殖させたボツリヌス菌のHall株の培養物から調製する。そのA型ボツリヌス毒素複合体を培養液から一連の酸沈殿によって精製して、活性な高分子量毒素タンパク質および結合ヘマグルチニンタンパク質から成る結晶複合体を得る。結晶複合体を、塩およびアルブミンを含有する溶液に再溶解し、滅菌濾過(0.2μ)した後、真空乾燥する。BOTOX(登録商標)は、筋肉内注射前に、防腐していない無菌塩類液で復元し得る。BOTOX(登録商標)の各バイアルは、A型ボツリヌス毒素複合体約100単位(U)、ヒト血清アルブミン0.5mgおよび塩化ナトリウム0.9mgを、防腐剤不含有の無菌真空乾燥形態で含有する。

0042

真空乾燥BOTOX(登録商標)を復元するには、防腐剤不含有の無菌生理食塩水(0.9%Sodium Chloride Injection)を使用し、適量のその希釈剤を適当な大きさの注射器で吸い上げる。BOTOX(登録商標)は、泡立てまたは同様の激しい撹拌によって変性しうるので、そのバイアルに希釈剤を穏やかに注入する。滅菌性の理由から、BOTOX(登録商標)は、復元後4時間以内に投与すべきである。その間、復元BOTOX(登録商標)は冷蔵庫(2〜8℃)内で保管する。復元BOTOX(登録商標)は、無色透明で、粒状物を含まない。真空乾燥生成物は、-5℃またはそれ以下の冷凍庫内で保管する。

0043

ボツリヌス毒素安定剤としてヒト血清アルブミンの代わりに、他のタンパク質または低分子量(非タンパク質)化合物が適当であり得ると報告されている。Carpenderら、Interactions of Stabilizing Additives with Proteins During Freeze-Thawing and Freeze-Drying、International Symposium on Biological Product Freeze-Drying and Formulation、1990年10月24〜26日;Karger(1992)、225-239。

0044

医薬組成物中に担体および充填剤として一般に用いられる多くの物質は、医薬組成物中に存在するボツリヌス毒素を安定化するための非タンパク質賦形剤としては適さないことがわかっている。例えば、二糖セロビオースは、ボツリヌス毒素安定剤として不適当であることがわかっている。すなわち、セロビオースを賦形剤としてアルブミンおよび塩化ナトリウムと組み合わせて使用した場合、それら賦形剤と共に結晶A型ボツリヌス毒素を凍結乾燥すると、毒素をヒト血清アルブミンとだけ組み合わせて凍結乾燥した時(回収率>75%ないし>90%)と比較して、毒素のレベルが非常に低下する(回収率10%)ことが知られている。Goodnoughら、Atabilization of Botulinum Toxin Type A During Lyophilization、App & Envir. Micro. 58(10) 3426-3428 (1992)。

0045

更に、糖類(多糖を包含する)は通例、タンパク質安定剤として作用するとは考え難い。すなわち、タンパク質活性成分を含有する医薬組成物は本質的に、糖類(例えばグルコースまたはグルコースのポリマー)または炭水化物を含有する場合は不安定であることが知られているからである。なぜなら、タンパク質とグルコースとは、グルコースおよびグルコースポリマー還元性である故に、相互作用し、よく知られたメイラード反応を起こすことが知られているからである。例えば水分を減少するか、または非還元糖を使用することによって、このタンパク質−糖反応を抑制する試みが数多くなされたが、殆んど失敗に終わっている。重要なことに、メイラード反応の分解経路は、タンパク質活性成分の処置効果を低減し得る。従って、タンパク質および還元糖、炭水化物または糖(例えばグルコースポリマー)を含有する医薬製剤は、本質的に不安定であり、長期間貯蔵した場合、活性成分タンパク質の所望の生物学的活性の顕著な低下を免かれ得ない。

0046

ある種の高分子量多糖(デンプン)、例えばヘタスターチが、ボツリヌス毒素医薬組成物中に存在するボツリヌス毒素の安定剤として提案されている。例えば欧州特許EP1253932(2005年4月27日発行)を参照されたい。

0047

明らかに、アルブミンまたはゼラチンが医薬組成物中でタンパク質活性成分の安定剤として有効に作用し得る理由の一つは、そのような安定剤はタンパク質で、医薬組成物中でタンパク質活性成分とのメイラード反応を起こさない、ということである。従って、ボツリヌス毒素医薬組成物中に存在するボツリヌス毒素を安定化するために用いられるそのようなタンパク質賦形剤の代替物を他のタンパク質の中から見出すことが期待されるだろう。

0048

独特なボツリヌス毒素の性質、および適当な医薬組成物へのその製剤化の故に、ボツリヌス毒素含有医薬製剤中のタンパク質安定剤の代替物の探索は、制限され、困難なものとなっている。そのような独特の性質の4つの例を次に示す。

0049

第1に、ボツリヌス毒素は医薬製剤中に組み入れるには比較的大きなタンパク質であり(A型ボツリヌス毒素複合体の分子量は900kDである)、それゆえ本質的に脆く、不安定である。毒素複合体のサイズが、それを、複雑度の低い小さなタンパク質よりも、はるかに脆弱で不安定なものにし、その結果、毒素の安定性を維持すべき場合には、製剤の調合および取扱いが困難になる。したがって、ボツリヌス毒素安定剤は、毒素分子を変性させ、断片化し、もしくは他の形で解毒するか、または毒素複合体中に存在する非毒素タンパク質の解離を引き起こすことがないように、毒素と相互作用できるものでなければならない。

0050

第2に、最も致死性の高い既知の生物学的製剤として、ボツリヌス毒素含有医薬組成物の製剤においては、全てのステップに並外れた安全性、精度および確度が要求される。したがって、ボツリヌス毒素安定剤は、既に極めて厳格なボツリヌス毒素含有医薬組成物の製剤要件を悪化させないように、それ自体毒性であるべきではなく、また取り扱いが困難なものであるべきではない。

0051

第3に、ボツリヌス毒素は、ヒト疾患の処置を目的とする注射が(FDAによって1989年に)承認された初めての微生物毒素だったため、ボツリヌス毒素の培養、大量生産医薬への製剤化および使用について、具体的なプロトコールを開発して、承認を受ける必要があった。考慮すべき重要な事項は、毒素純度および注射用量である。培養による生産および精製は、たとえ微量でも最終生成物を汚染し患者において不適当な反応を起こすかも知れないいかなる物質にも毒素を曝すことがないように行わなければならない。このような制限の故に、培養は動物肉生成物を使用しない単純な培地中で行う必要があり、精製は合成溶媒または樹脂を伴わない方法で行う必要がある。酵素、様々な交換体(例えばクロマトグラフィーカラム中に存在するもの)、および合成溶媒を用いる毒素調製は汚染物をもたらしうるので、好ましい調製工程からは排除される。さらに、A型ボツリヌス毒素は容易に40℃を越える温度で変性し、気/液界面で発泡が起きれば毒性を失い、窒素または二酸化炭素の存在下で変性する。

0052

第4に、A型は約750kDの重量を持つ非毒素タンパク質と非共有結合的に会合した約150kDの毒素分子からなるため、A型ボツリヌス毒素を安定化することには格別な困難がある。非毒素タンパク質は、二次構造および三次構造(毒性はこれらの構造に依存する)を保存し、またはその安定化を助けると考えられている。非タンパク質の安定化または比較的小さなタンパク質に応用することができる手法またはプロトコールは、ボツリヌス毒素複合体(例えば900kD A型ボツリヌス毒素複合体)の安定化に伴う固有の問題には応用することができない。例えば、pH3.5〜6.8では、A型毒素および非毒素タンパク質が非共有結合的に一つに結合しているが、弱アルカリ条件(pH>7.1)では、極めて不安定な毒素が毒素複合体から放出される。上述のように、純粋なボツリヌス毒素(すなわち150kD分子)が、医薬組成物中の活性成分として提案されている。

0053

上述のようなボツリヌス毒素の独特の性質および必要条件を考慮すると、ボツリヌス毒素含有医薬組成物中に使用するタンパク質安定剤に代わる適当な非タンパク質安定剤を見出す可能性は現実的に皆無に近いに違いない。本発明以前には、動物由来タンパク質であるヒト血清アルブミンおよびゼラチンのみが、医薬組成物中に存在するボツリヌス毒素の適当な安定剤として有用であることが知られていた。すなわち、アルブミンは単独で、または1種もしくはそれ以上の他の物質(例えばリン酸ナトリウムまたはクエン酸ナトリウム)との組み合わせとして、凍結乾燥後のA型ボツリヌス毒素毒性の高回収率を可能にすることが知られている。しかしながら前記のように、プール血液生成物であるヒト血清アルブミンは、医薬組成物中に存在するとき感染性要素または疾患原因要素を、少なくとも潜在的に有しうる。実際、動物性生成物またはタンパク質(例えばヒト血清アルブミンまたはゼラチン)はまた、発熱物質、または患者への注射により不都合な反応を起こしうる他の物質を、潜在的に含有しうる。

発明が解決しようとする課題

0054

したがって、クロストリジウム毒素(例えばボツリヌス毒素)を非タンパク質賦形剤で安定化するクロストリジウム毒素医薬組成物が必要とされている。

課題を解決するための手段

0055

概要
本発明はこの必要性を満たし、非タンパク質賦形剤で安定化したボツリヌス毒素医薬組成物を提供する。

0056

定義
本明細書で使用する場合、下記の単語または用語は下記の定義を持つ。
「約」とは、そのように修飾された事項、パラメータまたは用語が、明記した事項、パラメータまたは用語の値の上下に±10%の範囲を包含することを意味する。

0057

「投与」または「投与する」とは、医薬組成物を対象に与える(すなわち投与する)ステップを意味する。本明細書に開示する医薬組成物は、例えば筋肉内(i.m.)、皮内、皮下投与髄腔内投与腹腔内(i.p.)投与、局所外用経皮)およびインプラント(すなわちポリマーインプラントまたはミニ浸透圧ポンプなどの徐放装置の植込み投与経路などによって「局所投与」される。

0058

「動物性タンパク質を含まない」は、血液由来、血液プールおよび他の動物由来生成物または化合物の不在を意味する。「動物」とは哺乳動物(ヒトなど)、爬虫類昆虫クモまたは他の動物種を意味する。細菌などの微生物は「動物」から除外される。したがって、本発明に包含される動物性タンパク質を含まない医薬組成物は、クロストリジウム神経毒を含むことができる。例えば、動物性タンパク質を含まない医薬組成物とは、血清由来アルブミン、ゼラチンおよび他の動物由来タンパク質、例えば免疫グロブリンを実質的に含まない、または基本的に含まない、または全く含まない医薬組成物を意味する。動物性タンパク質を含まない医薬組成物の一例は、ボツリヌス毒素(活性成分として)および安定剤または賦形剤として適当な多糖を含有するかまたはそれらからなる医薬組成物である。

0059

「ボツリヌス毒素」は、クロストリジウムボツリナム(Clostridium botulinum)によって産生される神経毒、および非クロストリジウム種によって組換え生産されたボツリヌス毒素(またはその軽鎖もしくは重鎖)を意味する。本明細書で使用する「ボツリヌス毒素」という表現は、ボツリヌス毒素血清型A、B、C、D、E、FおよびGを包含する。また、本明細書で使用するボツリヌス毒素は、ボツリヌス毒素複合体(すなわち300、600および900kDa複合体)も、精製ボツリヌス毒素(すなわち約150kDa)も包含する。「精製ボツリヌス毒素」は、ボツリヌス毒素複合体を形成するタンパク質などの他のタンパク質から分離された、またはそれら他のタンパク質から実質的に分離された、ボツリヌス毒素と定義される。精製ボツリヌス毒素は95%より高い純度を持ち得、好ましくは99%より高い純度を持つ。神経毒でないボツリヌスC2およびC3細胞毒は、本発明の範囲からは除外される。

0060

「クロストリジウム神経毒」は、クロストリジウム・ボツリナム、クロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)またはクロストリジウム・ベラティ(Clostridium beratti)などのクロストリジウム細菌から産生される神経毒、またはそれらクロストリジウム細菌に固有の神経毒、および非クロストリジウム種によって組換え生産されたクロストリジウム神経毒を意味する。

0061

「全く含まない」(または「からなる」という用語法)とは、使用する機器または方法の検出範囲内で、その物質を検出することができないこと、またはその存在を確認することができないことを意味する。
「基本的に含まない」(または「から基本的になる」)とは、その物質が痕跡量しか検出され得ないことを意味する。

0062

修飾ボツリヌス毒素」とは、天然ボツリヌス毒素と比較して、そのアミノ酸の少なくとも1つが欠失、修飾、または置換されたボツリヌス毒素である。さらに修飾ボツリヌス毒素は、組換え生産された神経毒、または組換え生産された神経毒の誘導体もしくは断片であることもできる。修飾ボツリヌス毒素は、例えばボツリヌス毒素受容体に結合する能力またはニューロンからの神経伝達物質放出を阻害する能力などといった天然ボツリヌス毒素の生物学的活性を、少なくとも1つは保持している。修飾ボツリヌス毒素の一例は、あるボツリヌス毒素血清型(例えば血清型A)由来の軽鎖および異なるボツリヌス毒素血清型(例えば血清型B)由来の重鎖を持つボツリヌス毒素である。修飾ボツリヌス毒素のもう1つの例は、サブスタンスPなどの神経伝達物質に結合されたボツリヌス毒素である。

0063

「医薬組成物」とは、製剤を意味し、その活性成分はクロストリジウム神経毒、例えばボツリヌス毒素であることができる。「製剤」という単語は、その医薬組成物中にクロストリジウム神経毒活性成分の他に少なくとも1つの追加成分が存在することを意味する。したがって医薬組成物は、ヒト患者などの対象への診断的または治療的投与(例えば筋肉内注射もしくは皮下注射による投与またはデポー剤もしくはインプラントの挿入による投与)に適した製剤である。医薬組成物は、凍結乾燥状態もしくは真空乾燥状態にあるか、凍結乾燥もしくは真空乾燥した医薬組成物を食塩水もしくは水を使用して復元した後に生成した溶液であるか、または復元を必要としない溶液として存在しうる。神経毒活性成分は、ボツリヌス毒素血清型A、B、C1、D、E、FもしくはGの1つまたは破傷風毒素(いずれもクロストリジウム細菌によって自然に産生されうるもの)でありうる。上述のように、医薬組成物は液体または固体、例えば真空乾燥物であることができる。医薬組成物の構成成分は、単一組成物(すなわち、医薬組成物の初期配合時に、必要な復元液を除く全ての構成成分が存在する)に含まれるか、または二構成要素系として、例えば食塩水などの希釈剤(この場合の希釈剤は医薬組成物の初期配合時に存在しない成分を含有する)で復元される真空乾燥した組成物などとして含まれうる。二構成要素系には、長期間貯蔵するのに二構成要素系の第1構成要素とあまり適合しない成分を組み込むことができるという利点がある。例えば復元用のビヒクルまたは希釈剤は、使用期間中(例えば1週間の冷蔵貯蔵中)は微生物成長に対する十分な防護をもたらすが、毒素を分解するかもしれないので2年間の冷凍貯蔵期間中は存在させない保存剤を含むことができる。長期間はクロストリジウム毒素または他の成分と適合しないかもしれない他の成分は、このようにして組み込むことができる;すなわち、使用直前に第2ビヒクル(例えば復元液)に加えることができる。

0064

「安定剤」(または「一次安定剤」)は、タンパク質(例えばボツリヌス毒素などのクロストリジウム神経毒)の生物学的構造(すなわち三次元コンフォメーション)および/または生物学的活性を保存または維持するのに役立つ化学薬剤である。本発明において使用する安定剤は非タンパク質である。一次安定剤は、その一次安定剤を含有する組成物を受容した対象において免疫原性応答を生じない(または減弱した免疫応答を生じる)であろう合成薬剤であることができる。医薬組成物にはさらなる安定剤が含まれうる。これらのさらなる安定剤または二次安定剤は、単独で使用するか、一次安定剤と組み合わせて使用することができる。代表的な二次安定剤として、非酸化アミノ酸誘導体(例えばN-アセチル-トリプトファン(「NAT」)などのトリプトファン誘導体)、カプリレート(例えばカプリル酸ナトリウム)、ポリソルベート(例えばP80)、アミノ酸、および亜鉛などの二価金属カチオンが挙げられるが、これらに限るわけではない。医薬組成物は、ベンジルアルコール安息香酸フェノールパラベンおよびソルビン酸などの保存剤も、含むことができる。

0065

「安定化性」「安定化する」または「安定化」とは、ある医薬活性成分(「PAI」)が、そのPAIにとって安定化性であるか、そのPAIを安定化するか、またはそのPAIに安定化をもたらす化合物の存在下で、その生物学的活性(これは、インビボLD50またはED50測定により、力価としてまたは毒性として、評価することができる)の少なくとも20%、そして最高100%を保持することを意味する。例えば、(1)バルク溶液またはストック溶液から連続希釈液を調製した時に、または(2)約-2℃以下で6ヶ月〜4年間貯蔵してあった凍結乾燥または真空乾燥ボツリヌス毒素含有医薬組成物を食塩水または水で復元した時に、または(3)約2℃〜約8℃で6ヶ月〜4年間貯蔵してあった水性溶液ボツリヌス毒素含有医薬組成物に関して、その復元または水性溶液医薬組成物中に存在するボツリヌス毒素は(そのPAIにとって安定化性であるか、そのPAIを安定化するか、またはそのPAIに安定化をもたらす化合物の存在下で)、その生物学的に活性なボツリヌス毒素がその医薬組成物に組み込まれる前に持っていた力価または毒性の約20%より高い、そして最高約100%までの力価または毒性を持つ。

0066

「実質的に含まない」とは、その医薬組成物の1wt%未満のレベルで存在することを意味する。
治療用製剤」とは、例えば末梢筋の活動亢進(すなわち痙縮)を特徴とする障害または疾患などといった障害または疾患を処置し、それによってその障害または疾患を軽減するために使用することができる製剤を意味する。

0067

ボツリヌス毒素は、ボツリヌス毒素複合体として(すなわち、特定ボツリヌス毒素血清型に依存して、約300キロダルトン〜約900キロダルトンの複合体として)存在するか、または純粋なまたは精製されたボツリヌス毒素として(すなわち、約150キロダルトンのボツリヌス毒素分子として)存在することができる。
本明細書に開示する医薬組成物は、復元時または注射時に約5〜7.3のpHを持つことができる。

0068

本発明は、A型ボツリヌス毒素を含有する組成物を用いて実施することができる。本発明の他の態様においては、B型ボツリヌス毒素を含有する組成物を用いて前記方法を実施することができる。本発明のさらに別の態様においては、複数のボツリヌス毒素血清型、例えばボツリヌス毒素血清型A、B、C1、D、E、FおよびGからなる群から選択されるボツリヌス毒素血清型を含有する組成物を用いて方法を実施することができる。本発明のある態様においては、精製ボツリヌス毒素を使用しうる。他の態様においては、修飾ボツリヌス毒素を使用しうる。

0069

本発明のさらなる態様においては、前記方法に使用する組成物を患者に筋肉内投与することができる。他の態様においては、組成物を皮下および/または蜘蛛膜下投与することができる。

0070

本発明は、ボツリヌス毒素およびポリビニルピロリドンを含有する(またはそれらからなる、もしくはそれらから基本的になる)医薬組成物を包含する。ボツリヌス毒素は生物学的に活性なボツリヌス毒素であり、A、B、C、D、E、FおよびG型ボツリヌス毒素からなる群から選択される。好ましくはボツリヌス毒素はA型ボツリヌス毒素である。医薬組成物中に存在するポリビニルピロリドンの機能は、ボツリヌス毒素の安定化である。

0071

本発明はまた、ボツリヌス毒素、およびボツリヌス毒素約100単位につき約5g〜約20gのポリビニルピロリドンを含有する(またはそれらからなる、もしくはそれらから基本的になる)医薬組成物を包含する。

0072

本発明はまた、ボツリヌス毒素(ここで、ボツリヌス毒素はタンパク質賦形剤で安定化されていない)、およびポリビニルピロリドンを含有する(またはそれらからなる、もしくはそれらから基本的になる)医薬組成物であって、ボツリヌス毒素の効力が該ボツリヌス毒素の理論的最大効力の少なくとも約40%である医薬組成物を包含する。

0073

本発明はまた、ボツリヌス毒素(ここで、ボツリヌス毒素はタンパク質賦形剤で安定化されていない)、およびポリビニルピロリドンを含有する(またはそれらからなる、もしくはそれらから基本的になる)医薬組成物であって、ボツリヌス毒素の効力が該ボツリヌス毒素の理論的最大効力の少なくとも約50%である医薬組成物を包含する。

0074

本発明はまた、ボツリヌス毒素(ここで、ボツリヌス毒素はタンパク質賦形剤で安定化されていない)、ポリビニルピロリドンおよび二糖を含有する(またはそれらからなる、もしくはそれらから基本的になる)医薬組成物であって、ボツリヌス毒素の効力が該ボツリヌス毒素の理論的最大効力の少なくとも約40%である医薬組成物を包含する。

0075

本発明はまた、ボツリヌス毒素(ここで、ボツリヌス毒素はタンパク質賦形剤で安定化されていない)、ポリビニルピロリドンおよび二糖を含有する(またはそれらからなる、もしくはそれらから基本的になる)医薬組成物であって、ボツリヌス毒素の効力が該ボツリヌス毒素の理論的最大効力の少なくとも約50%である医薬組成物を包含する。

0076

本発明はまた、ボツリヌス毒素(ここで、ボツリヌス毒素はタンパク質賦形剤で安定化されていない)、ポリビニルピロリドンおよび二糖を含有する(またはそれらからなる、もしくはそれらから基本的になる)医薬組成物であって、ボツリヌス毒素の効力が該ボツリヌス毒素の理論的最大効力の少なくとも約60%である医薬組成物を包含する。

0077

本発明はまた、ボツリヌス毒素(ここで、ボツリヌス毒素はタンパク質賦形剤で安定化されていない)、ポリビニルピロリドンおよび二糖を含有する(またはそれらからなる、もしくはそれらから基本的になる)医薬組成物であって、ボツリヌス毒素の効力が該ボツリヌス毒素の理論的最大効力の少なくとも約70%である医薬組成物を包含する。

0078

本発明はまた、ボツリヌス毒素(ここで、ボツリヌス毒素はタンパク質賦形剤で安定化されていない)、ポリビニルピロリドンおよびポリエチレングルコールを含有する(またはそれらからなる、もしくはそれらから基本的になる)医薬組成物であって、ボツリヌス毒素の効力が該ボツリヌス毒素の理論的最大効力の少なくとも約40%である医薬組成物を包含する。

0079

本発明はまた、ボツリヌス毒素(ここで、ボツリヌス毒素はタンパク質賦形剤で安定化されていない)、第1の単糖、第1の二糖、第1の三糖、および第1の単糖の還元により生成する第1のアルコールからなる群から選択される化合物、並びにポリエチレングルコール、第2の単糖、第2の二糖、第2の三糖、金属、第2のアルコール、およびアミノ酸からなる化合物群から選択される化合物を含有する(またはそれらからなる、もしくはそれらから基本的になる)医薬組成物であって、第2の単糖、第2の二糖および第2の三糖はそれぞれ、第1の単糖、第1の二糖および第1の三糖とは異なり、ボツリヌス毒素の効力が該ボツリヌス毒素の理論的最大効力の少なくとも約40%である医薬組成物を包含する。

0080

本発明はまた、ボツリヌス毒素(ここで、ボツリヌス毒素はタンパク質賦形剤で安定化されていない)、ポリエチレングルコール、並びに単糖、二糖、三糖、金属、アルコールおよびアミノ酸からなる化合物群から選択される化合物を含有する(またはそれらからなる、もしくはそれらから基本的になる)医薬組成物であって、ボツリヌス毒素の効力が該ボツリヌス毒素の理論的最大効力の少なくとも約20%である医薬組成物を包含する。

0081

本発明はまた、ボツリヌス毒素(ここで、ボツリヌス毒素はタンパク質賦形剤で安定化されていない)、ポリエチレングルコール、並びに単糖、二糖、三糖、金属、アルコールおよびアミノ酸からなる化合物群から選択される化合物を含有する(またはそれらからなる、もしくはそれらから基本的になる)医薬組成物であって、ボツリヌス毒素の効力が該ボツリヌス毒素の理論的最大効力の少なくとも約30%である医薬組成物を包含する。

0082

本発明はまた、ボツリヌス毒素(ここで、ボツリヌス毒素はタンパク質賦形剤で安定化されていない)、ポリエチレングルコール、並びに単糖、二糖、三糖、金属、アルコールおよびアミノ酸からなる化合物群から選択される化合物を含有する(またはそれらからなる、もしくはそれらから基本的になる)医薬組成物であって、ボツリヌス毒素の効力が該ボツリヌス毒素の理論的最大効力の少なくとも約40%である医薬組成物を包含する。

0083

本発明はまた、ボツリヌス毒素(ここで、ボツリヌス毒素はタンパク質賦形剤で安定化されていない)、ポリエチレングルコール、並びに単糖、二糖、三糖、金属、アルコールおよびアミノ酸からなる化合物群から選択される化合物を含有する(またはそれらからなる、もしくはそれらから基本的になる)医薬組成物であって、ボツリヌス毒素の効力が該ボツリヌス毒素の理論的最大効力の少なくとも約50%である医薬組成物を包含する。

0084

本発明はまた、ボツリヌス毒素(ここで、ボツリヌス毒素はタンパク質賦形剤で安定化されていない)、ポリエチレングルコール、並びに単糖、二糖、三糖、金属、アルコールおよびアミノ酸からなる化合物群から選択される化合物を含有する(またはそれらからなる、もしくはそれらから基本的になる)医薬組成物であって、ボツリヌス毒素の効力が該ボツリヌス毒素の理論的最大効力の少なくとも約60%である医薬組成物を包含する。

0085

本発明はまた、ボツリヌス毒素(ここで、ボツリヌス毒素はタンパク質賦形剤で安定化されていない)、ポリエチレングルコール、並びに単糖、二糖、三糖、金属、アルコールおよびアミノ酸からなる化合物群から選択される化合物を含有する(またはそれらからなる、もしくはそれらから基本的になる)医薬組成物であって、ボツリヌス毒素の効力が該ボツリヌス毒素の理論的最大効力の少なくとも約70%である医薬組成物を包含する。

0086

説明
本発明は、クロストリジウム毒素の一次安定剤として非タンパク質賦形剤を用いて、安定化されたクロストリジウム毒素の医薬組成物を製造することができるという知見に基づく。
本発明者は、クロストリジウム毒素医薬組成物中のアルブミンまたはゼラチンなどといったタンパク質賦形剤の適当な代替物として、非タンパク質化合物を使用しうることを見出した。

0087

本発明において使用する非タンパク質賦形剤は、(1)表面、例えば実験用ガラス器具、容器、医薬組成物を復元する際のバイアルの表面、および医薬組成物を注射するために使用する注射器の内面へのボツリヌス毒素の付着(一般に「粘着性」と呼ばれる)を減少させることによって(表面へのボツリヌス毒素の付着は、ボツリヌス毒素の損失および失われなかったボツリヌス毒素の変性につながる可能性があり、それらはどちらも医薬組成物中に存在するボツリヌス毒素の毒性を減少させる);(2)ボツリヌス毒素の変性および/またはボツリヌス毒素複合体中に存在する他の非毒素タンパク質からのボツリヌス毒素の解離を減少させることによって(これらの変性および/または解離活動は、医薬組成物(すなわち凍結乾燥または真空乾燥前)中および復元された医薬組成物中に存在するボツリヌス毒素の低希釈度ゆえに起こりうる);(3)医薬組成物の製造、加工および復元時に起こるかなりのpH変化および濃度変化に際して、ボツリヌス毒素の損失(例えば変性または複合体中の非毒素タンパク質からの解離によるもの)を減少させることによって、医薬組成物中に存在するボツリヌス毒素などの神経毒活性成分に安定性を与えるのに役立ちうると考えられる。

0088

本発明が開示する非タンパク質安定剤によってもたらされるこれら3タイプのボツリヌス毒素安定化は、医薬組成物の注射前に、ボツリヌス毒素が持つ天然の毒性を保護、保存することができる。

0089

本発明の一定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、複数のボツリヌス毒素血清型を含みうる。言い換えると、本組成物は、二つ以上の異なるボツリヌス毒素血清型を含みうる。例えば、ある組成物はボツリヌス毒素血清型AおよびBを含みうる。もう一つの実施形態では、組成物がボツリヌス毒素血清型AおよびEを含みうる。ボツリヌス毒素血清型の組合わせを用いることにより、処置を施す者は、処置する状態に基づいて、望ましい作用が得られるように組成物を個別に調整することができるだろう。本発明のさらなる実施形態において、本組成物は修飾ボツリヌス毒素を含みうる。修飾ボツリヌス毒素は、好ましくは、ニューロンからの神経伝達物質の放出を阻害するだろうが、天然ボツリヌス毒素よりも高いもしくは低い力価を持つか、または天然ボツリヌス毒素より高いもしくは低い生物学的作用を持ちうる。本発明の組成物は比較的長期間にわたる動物の処置に使用されうるため、組成物は比較的純粋な形態で提供されうる。ある実施形態では、組成物が医薬品等級である。一定の実施形態では、クロストリジウム神経毒が95%より高い純度を持つ。さらなる実施形態では、クロストリジウム神経毒が99%より高い純度を持つ。

0090

本発明は、長期間にわたる貯蔵を可能にするために、希釈剤または製剤そのものへの保存剤の添加も包含する。好ましい保存剤はベンジルアルコールを含有する保存食塩水である。

0091

本発明の医薬組成物は、通常の投与様式を使用して投与することができる。本発明の好ましい実施形態では、組成物が対象に筋肉内投与または皮下投与される。別の実施形態では、本発明の組成物を髄腔内投与してもよい。また、本発明の組成物を、一つ以上の鎮痛剤または麻酔剤一緒に投与してもよい。

0092

本発明の組成物にとって最も有効な投与様式および投薬レジメンは、処置される状態のタイプ、重症度、および経過、動物の健康状態および処置に対する応答、ならびに処置医の判断に依存する。したがって、本方法および本組成物の投薬は、個々の対象に合わせられるべきである。

0093

限定するわけではないが、例えば、本発明の組成物を筋肉痙攣の軽減のために筋肉内投与することが有利でありうる。

0094

本発明はまた、ボツリヌス毒素およびコラーゲンを含有する、様々な状態を処置するための医薬組成物を包含し、ここで、ボツリヌス毒素は筋肉を麻痺させるよう作用し、コラーゲンは皮膚充填剤として作用する。

0095

ボツリヌス毒素の他の血清型を含有する組成物は、異なる投薬量のボツリヌス毒素を含有しうる。例えばB型ボツリヌス毒素は、組成物中に、A型ボツリヌス毒素を含有する組成物よりも高い用量で用意されうる。本発明の一実施形態では、B型ボツリヌス毒素は、約1U/kg〜150U/kgの量で投与されうる。B型ボツリヌス毒素は20,000U(上述のマウス単位)までの量で投与することもできる。本発明のもう一つの実施形態では、E型またはF型ボツリヌス毒素を、約0.1U/kg〜150U/kgの濃度で投与することができる。また、2タイプ以上のボツリヌス毒素を含有する組成物では、各タイプのボツリヌス毒素を、単一のボツリヌス毒素血清型に典型的に使用される用量よりも比較的少ない用量で提供することができる。その場合、ボツリヌス毒素血清型の組合わせは、神経毒の拡散の増加を伴わずに、適切な程度および持続時間の麻痺をもたらしうる(例えば米国特許第6,087,327号参照)。

0096

実施例
以下の実施例は、本発明の具体的実施形態を説明するものであって、本発明の範囲を限定しようとするものではない。

0097

以下の実施例では、周知のマウス致死量50アッセイ(「MLD50アッセイ」)を使って、ボツリヌス毒素力価を決定した。「力価(potency)」とは、情況に応じて、ボツリヌス毒素の回収力価(recovered potency)または凍結乾燥前のボツリヌス毒素の力価を意味しうる。回収力価は、復元力価(reconstitution potency)(recovery potency)および復元時の力価(potency upon reconstitution)と同義である。MLD50アッセイでは、ボツリヌス毒素の力価が、そのマウス50%致死量、すなわち「LD50」という形で決定される。したがって1単位(U)のボツリヌス毒素は、腹腔内注射した場合に、アッセイ開始時にそれぞれ体重17〜22グラムである雌Swiss Weberマウス群の50%を殺すボツリヌス毒素の量(すなわちLD50)と定義される。MLD50アッセイは、復元されたボツリヌス毒素の力価または復元されたボツリヌス毒素製剤の力価を測定するための、検証済みの方法である。

0098

各マウスを背臥位に保持して、その頭部を下向きに傾け、ボツリヌス毒素を生理食塩水に連続希釈したいくつかの液の一つを、25〜27ゲージ3/8"〜5/8"針を使って、右下腹部に約30度の角度で腹腔内注射する。各希釈液につき、その後72時間にわたって、死亡率を記録する。最低六つの希釈液を1.33の用量間隔で調製し、典型的には各投薬量群につき10匹の動物を使用する(したがって60匹のマウスを使用)。二つの参照基準アッセイを同時的に行う(さらに60匹のマウスを使用)。希釈液は、最高濃度の希釈液が、注射したマウスの少なくとも80%という死亡率をもたらし、かつ最低濃度の希釈液が、注射したマウスの20%を上回らない死亡率をもたらすように調製される。死亡率の単調減少範囲に最低四つの希釈液が含まれていなければならない。単調減少範囲は80%を下回らない死亡率から始まる。単調に減少するそれら四つ以上の死亡率のうち、最も大きい二つの死亡率および最も小さい二つの死亡率は減少していなければならない(すなわち等価であってはならない)。注射後3日以内にマウスの50%が死亡する希釈率を、1単位(1U)のボツリヌス毒素を含む希釈液と定義する。

0099

より少ない希釈液(六つではなくて五つ)を1.15の用量間隔で使用し、試験する希釈液ごとに、より少ないマウス(10匹ではなく6匹)を使用する、改良型MLD50アッセイが開発されている。

0100

ヒト血清アルブミンを含有するボツリヌス毒素医薬組成物(先行技術)
N-Zアミンおよび酵母エキスを含有する培地で生育したボツリヌス菌(Clostridium botulinum)Hall株の培養物から、A型ボツリヌス毒素複合体を得た。一連の酸沈殿により、培養溶液から、活性高分子量毒素タンパク質および会合したヘマグルチニンタンパク質からなる結晶性複合体へと、A型ボツリヌス毒素複合体を精製した。次に、食塩水とアルブミンとを含有する溶液に、その結晶性複合体を再溶解し、滅菌濾過(0.2ミクロン)してから、真空乾燥した。真空乾燥組成物を、注射に先立って、滅菌非保存剤処理食塩水で復元した。真空乾燥組成物の各バイアルは、約100単位(U)のA型ボツリヌス菌毒素複合体、0.5ミリグラムのヒト血清アルブミンおよび0.9ミリグラムの塩化ナトリウムを、滅菌真空乾燥状態で含有し、保存剤は含まない。この医薬組成物は、注射前に食塩水で復元されるように、100単位バイアルに入れて、BOTOX(登録商標)という商標で市販されている。

0101

非タンパク質安定化ボツリヌス毒素製剤
一つ以上の異なる非タンパク質安定化賦形剤を使って複数のボツリヌス毒素製剤を製造する実験を行った。異なる非タンパク質賦形剤または異なる複数の非タンパク質賦形剤を使って各製剤を製造したこと、あるいはボツリヌス毒素製剤中に存在する非タンパク質賦形剤の量または複数の非タンパク質賦形剤の量が異なる製剤を製造したことを除いて、これらの製剤は全て、同じ方法で配合し、凍結乾燥し、復元し、力価を評価し、各製剤には同じタイプのボツリヌス毒素を使用した。

0102

これらの実験で製造した製剤中に(個別にまたは組み合わせて)使用した非タンパク質賦形剤には、以下の賦形剤が含まれる:ポリビニルピロリドン(ポビドンとも呼ばれる、例えばKollidon 17);さまざまな二糖(例えばラクトースおよびトレハロース);三糖(例えばラフィノース);多糖(例えばイヌリン);アルコール(例えば単糖[例えばフルクトース]を還元することによって製造されるアルコール、または例えばマンニトール);金属(例えば亜鉛);アミノ酸(例えばグリシン);ならびにポリエチレングリコール(例えばポロキサマー188および/またはPEG3350)。タンパク質はポリアミノ酸であるから、本明細書に記載する製剤に一つ以上の単一アミノ酸を使用しても、これらの製剤にタンパク質賦形剤が供給されることにはならない。

0103

この実施例で開示する製剤を製造するのに、まず最初に、表示した量の非タンパク質賦形剤を滅菌注射用水に加えて溶液を形成させた。次に、その溶液に、100〜200単位のA型ボツリヌス毒素複合体(ボツリヌス菌Hall株の嫌気発酵を行った後、発酵培地に放出され発酵培地から取り出されたボツリヌス毒素を精製することによって得たもの。例えば上記実施例1およびSchantz E.J.ら「Properties and use of botulinum toxin andothermicrobial neurotoxins in medicine」Microbiol Rev 1992 Mar;56(1):80-99参照)を加えることにより、ボツリヌス毒素製剤を形成させた(同義語として、このボツリヌス毒素製剤を、ボツリヌス毒素医薬組成物と呼ぶか、あるいは単に製剤と呼ぶ場合がある)。ボツリヌス毒素を溶液に加える前に、使用したボツリヌス毒素の凍結乾燥前の力価をマウスLD50アッセイによって決定したところ、約100単位〜約200単位の範囲にあった。

0104

次に、製剤を凍結乾燥(または冷凍乾燥もしくは真空乾燥)した後、生理食塩水で復元した。復元された製剤中に存在するボツリヌス毒素の回収力価を、同じマウスLD50アッセイの適用によって決定した。

0105

表1〜5の「回収率」は、製剤を凍結乾燥する前のボツリヌス毒素の力価に対するパーセントとして表した復元後のボツリヌス毒素の力価(したがって「回収力価」)である。したがって、例えば回収率60%とは、復元後のボツリヌス毒素の力価が凍結乾燥前のボツリヌス毒素の力価に対して60%であったことを意味する。最大理論回収力価は100%である。回収率値は、製剤を凍結乾燥した直後に復元を行うことによって得た。
この実施例で行った実験(ここでは製剤を上述のように製造した)の結果を表1〜6に示す。

0106

0107

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0112

表5は、二つの非タンパク質賦形剤を含有しかつ指定した緩衝液を含むまたは含まないボツリヌス毒素製剤を使った実験の結果を表す。ボツリヌス毒素の力価は、(1)凍結乾燥し、直ちに復元した後(「初期力価」)、および(2)凍結乾燥し、二つの異なる貯蔵条件(-40℃または20℃)の一方で3ヶ月間貯蔵し、復元した後に測定した。

0113

表5の結果は、PVP非タンパク質賦形剤を含有するボツリヌス毒素医薬組成物が、クエン酸緩衝液を使って製剤しない限り、際立った室温安定性を持たないことを示している。本発明者は、たとえ同じpHであってもリン酸緩衝液では、望ましい室温安定性が前記製剤で得られないことを見出した。

0114

0115

表6は、三つの非タンパク質賦形剤を含有しかつ指定した緩衝液を含むまたは含まないボツリヌス毒素製剤を使った実験の結果を表す。ボツリヌス毒素の力価は、凍結乾燥に続いて直ちに復元した後に測定した(「初期力価」)。

0116

表6の結果は、同じ製剤中に存在する三つの非タンパク質賦形剤を使用することにより、ボツリヌス毒素医薬組成物を安定化できること、および製剤におけるクエン酸緩衝液の使用が初期力価を改善することを示している。他の三つの異なる非タンパク質賦形剤で安定化され際立った回収力価を持つボツリヌス毒素医薬組成物も製造した。

0117

0118

これらの実験からなされた発見には、以下に挙げるものがある。
1.ポリビニルピロリドン(例えばKollidon 17)である特定濃度の単一非タンパク質賦形剤を使って製造したボツリヌス毒素製剤は、回収力価を示さないことがある(表1の第1〜4行参照)。

0119

2.ポリビニルピロリドン(例えばKollidon 17)である異なる特定濃度の単一非タンパク質賦形剤を使って製造したボツリヌス毒素製剤は、39%〜52%の回収力価を示すことができる(表2の第1〜3行参照)。上記の項目1に照らして、これは驚くべき予想外の発見である。

0120

3.非タンパク質賦形剤の一方がポリビニルピロリドン(例えばKollidon 17)である二つの異なる非タンパク質賦形剤を使って製造したボツリヌス毒素製剤は、回収力価を示さないことがある(表3の第1〜7行参照)。

0121

4.非タンパク質賦形剤の一方がポリビニルピロリドン(例えばKollidon 17)である二つの異なる非タンパク質賦形剤を使って製造したボツリヌス毒素製剤は、65%という高さの回収力価を示すことができる(表4の第1〜18行参照)。上記の項目1および3に照らして、これは驚くべき予想外の発見である。

0122

5.二糖(例えばラクトース)である特定濃度の単一非タンパク質賦形剤を使って製造したボツリヌス毒素製剤は、回収力価を示さないことがある(表1の第5行参照)。

0123

6.二糖(例えばラクトース)である異なる特定濃度の単一非タンパク質賦形剤を使って製造したボツリヌス毒素製剤は、15%〜35%の回収力価を示すことができる(表2の第4〜5行参照)。上記の項目5に照らして、これは驚くべき予想外の発見である。

0124

7.非タンパク質賦形剤の一方が二糖(例えばラクトース)である二つの異なる非タンパク質賦形剤を使って製造したボツリヌス毒素製剤は、回収力価を示さないことがある(表3の第1〜3行参照)。

0125

8.非タンパク質賦形剤の一方が二糖(例えばラクトース)である二つの異なる非タンパク質賦形剤を使って製造したボツリヌス毒素製剤は、65%という高さの回収力価を示すことができる(表4の第1〜8行および第19〜22行参照)。上記の項目5および7に照らして、これは驚くべき予想外の発見である。

0126

9.二糖(例えばスクロース)である単一非タンパク質賦形剤を使って製造したボツリヌス毒素製剤は、回収力価を示さないことがある(表1の第6〜10行参照)。

0127

10.非タンパク質賦形剤の一方が二糖(例えばスクロース)である二つの異なる非タンパク質賦形剤を使って製造したボツリヌス毒素製剤は、回収力価を示さないことがある(表3の第4〜8行、第11〜12行、および第19〜27行参照)。

0128

11.非タンパク質賦形剤の一方が二糖(例えばスクロース)である二つの異なる非タンパク質賦形剤を使って製造したボツリヌス毒素製剤は、59%という高さの回収力価を示すことができる(表4の第9〜17行、第20行、第23行、第26行および第30〜35行参照)。上記の項目9および10に照らして、これは驚くべき予想外の発見である。

0129

12.アミノ酸(例えばグリシン)である単一非タンパク質賦形剤を使って製造したボツリヌス毒素製剤は、回収力価を示さないことがある(表1の第11〜13行参照)。

0130

13.非タンパク質賦形剤の一方がアミノ酸(例えばグリシン)である二つの異なる非タンパク質賦形剤を使って製造したボツリヌス毒素製剤は、回収力価を示さないことがある(表3の第19〜21行、第28〜30行、第38行、第42〜44行および第46〜48行参照)。

0131

14.非タンパク質賦形剤の一方がアミノ酸(例えばグリシン)である異なる特定濃度の二つの異なる非タンパク質賦形剤を使って製造したボツリヌス毒素製剤は、33%という高さの回収力価を示すことができる(表4の第38〜39行参照)。上記の項目12〜13に照らして、これは驚くべき予想外の発見である。

0132

15.金属(例えば亜鉛)である単一非タンパク質賦形剤を使って製造したボツリヌス毒素製剤は、回収力価を示さないことがある(表1の第14〜16行参照)。

0133

16.非タンパク質賦形剤の一方が金属(例えば亜鉛)である二つの異なる非タンパク質賦形剤を使って製造したボツリヌス毒素製剤は、回収力価を示さないことがある(表3の第8〜9行、第13〜15行、第22〜24行、および第28〜37行参照)。

0134

17.非タンパク質賦形剤の一方が金属(例えば亜鉛)である異なる特定濃度の二つの異なる非タンパク質賦形剤を使って製造したボツリヌス毒素製剤は、38%という高さの回収力価を示すことができる(表4の第21行および第36〜37行)。上記の項目15〜16に照らして、これは驚くべき予想外の発見である。

0135

18.アルコール(例えばマンニトール)である単一非タンパク質賦形剤を使って製造したボツリヌス毒素製剤は、回収力価を示さないことがある(表1の第17〜19行参照)。

0136

19.非タンパク質賦形剤の一方がアルコール(例えばマンニトール)である二つの異なる非タンパク質賦形剤を使って製造したボツリヌス毒素製剤は、回収力価を示さないことがある(表3の第9〜18行参照)。

0137

20.非タンパク質賦形剤の一方がアルコール(例えばマンニトール)である異なる特定濃度の二つの異なる非タンパク質賦形剤を使って製造したボツリヌス毒素製剤は、35%という高さの回収力価を示すことができる(表4の第22〜29行参照)。上記の項目17〜18に照らして、これは驚くべき予想外の発見である。

0138

21.二糖(例えばトレハロース)である単一非タンパク質賦形剤を使って製造したボツリヌス毒素製剤は、回収力価を示さないことがある(表1の第23〜25行参照)。

0139

22.非タンパク質賦形剤の一方が二糖(例えばトレハロース)である二つの異なる非タンパク質賦形剤を使って製造したボツリヌス毒素製剤は、回収力価を示さないことがある(表3の第16〜18行、第25〜27行、第33〜35行および第42〜45行参照)。

0140

23.非タンパク質賦形剤の一方が二糖(例えばトレハロース)である異なる特定濃度の二つの異なる非タンパク質賦形剤を使って製造したボツリヌス毒素製剤は、75%という高さの回収力価を示すことができる(表4の第40〜44行参照)。上記の項目21〜22に照らして、これは驚くべき予想外の発見である。

0141

24.ポリエチレングリコール(例えばPEG3350またはポロキサマー188)であるである単一非タンパク質賦形剤を使って製造したボツリヌス毒素製剤は、回収力価を示さないことがある(表1の第29〜30行参照)。

0142

25.非タンパク質賦形剤の一方がポリエチレングリコール(例えばPEG3350またはポロキサマー188)である二つの異なる非タンパク質賦形剤を使って製造したボツリヌス毒素製剤は、回収力価を示さないことがある(表3の第10行、第31〜32行、第36〜41行および第45〜48行参照)。

0143

26.非タンパク質賦形剤の一方がポリエチレングリコール(例えばPEG3350またはポロキサマー188)である異なる特定濃度の二つの異なる非タンパク質賦形剤を使って製造したボツリヌス毒素製剤は、75%という高さの回収力価を示すことができる(表4の第18〜19行、第24〜25行、第27〜44行参照)。上記の項目24〜25に照らして、これは驚くべき予想外の発見である。

0144

27.非タンパク質安定剤ラクトースおよびポリビニルピロリドン(「PVP」)(すなわちKollidon 17)は、それぞれ、ボツリヌス毒素医薬組成物中に存在するボツリヌス毒素の非タンパク質安定剤として使用した場合に、際立った復元力価をもたらした(表2参照)。

0145

28.使用されるラクトースおよびPVPの両方を同じボツリヌス毒素医薬組成物の非タンパク質安定剤として使用すると、ラクトースおよびPVPを非タンパク質安定剤として個別に使用した場合に観察される復元力価と比較して、復元力価が改善した(例えば表4、第1〜8行参照)。

0146

29.ラクトースおよび/またはPVPを上述した他の非タンパク質賦形剤の一つ以上と一緒に使用すると(復元されたボツリヌス毒素医薬組成物中に存在するボツリヌス毒素の)復元力価が改善した(それぞれ表4の第19〜22行および表4の第9〜18行参照)。

0147

30.賦形剤の一定の組み合わせを(復元されたボツリヌス毒素医薬組成物中に存在するボツリヌス毒素の非タンパク質安定剤として)使用したところ、そのような非タンパク質賦形剤のいずれかをボツリヌス毒素医薬組成物中に存在するボツリヌス毒素の非タンパク質安定剤として単独で使用しても復元力価が得られない場合でさえ、際立った復元力価が得られた。例えば(1)表1の第1〜4行および表1の第6〜10行を表4の第9〜17行と、また(2)表1の第23〜25行および表1の第29行を表4の第43〜44行と比較されたい。

0148

31.復元力価は、ボツリヌス毒素医薬組成物中に存在する非タンパク質安定剤の濃度に依存する場合があった。

0149

32.緩衝剤の添加は復元力価および貯蔵安定性を改善することができた。個々の緩衝剤はこの効果を発揮するその能力が異なっていた。緩衝剤は至適pHを与え、至適pHを維持し、場合によっては(例えばクエン酸塩の場合)、酸化に対して防御するように作用する。

0150

これらの実験から得られる一般的結論には以下に挙げる知見が含まれる。
(a)ボツリヌス毒素医薬組成物中に存在するボツリヌス毒素は、二つ以上の一般的非タンパク質賦形剤を使ってその組成物を製造することにより、安定化されうる(良好な復元力価によって示されうる)。

0151

(b)ポリビニルピロリドン(例えばKollidon 17)および二糖(例えばラクトース)は、他の非タンパク質安定剤が存在しなくても、ボツリヌス毒素製剤中の非タンパク質安定剤(賦形剤)として機能することができる。

0152

(c)同じ非タンパク質安定剤または同じ複数の非タンパク質安定剤を使っても、復元力価は、ボツリヌス毒素製剤中に使用される非タンパク質安定剤または複数の非タンパク質安定剤の比および/または濃度に依存しうる。

0153

(d)一定の非タンパク質安定剤(例えばポリビニルピロリドン[例えばKollidon 17]および二糖[例えばラクトース])は、一緒に使用するとボツリヌス毒素製剤中のボツリヌス毒素を安定化するように作用することができるだけでなく、一緒に使用すると、復元された製剤のより高い回収力価によって決定される、強化された安定化をもたらすこともできる。

0154

(e)一般に使用される医薬賦形剤(例えばポリビニルピロリドン、ラクトース、スクロースなど)は、安定剤として使用しても機能しないか、または特定の濃度で使用した場合にのみ、非タンパク質ボツリヌス毒素製剤中のボツリヌス毒素の安定剤として機能した。ポリビニルピロリドン(例えばKollidon 17)および二糖(例えばラクトース)。

0155

(f)多くの賦形剤が、ポリビニルピロリドン(例えばKollidon 17)と組み合わせるか、二糖(例えばラクトース)と組み合わせた場合に、非タンパク質ボツリヌス毒素製剤中のボツリヌス毒素の、より良い安定剤として機能した。

0156

(g)製造したいくつかのボツリヌス毒素製剤では具体的PVP「Kollidon 17」を使用したが、他のPVPも本発明の範囲に包含される。

0157

(h)製造したいくつかのボツリヌス毒素製剤では具体的ポロキサマー「ポロキサマー188」を使用したが、他のポロキサマーも本発明の範囲に包含される。

0158

(i)界面活性剤ポリソルベート(Tween)をポロキサマー188の代りに使用しても同様の結果が得られることがわかった。

0159

本発明の範囲内でボツリヌス毒素医薬組成物中に使用することができる他の非タンパク質賦形剤には、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)およびブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)などの酸化防止剤、ならびにシステインおよびメチオニンなどのアミノ酸が含まれる。凍結乾燥ボツリヌス毒素製剤は、食塩水、水、または復元もしくは注射後の性能に影響を与えるための特別な希釈剤で、復元することができる。

0160

ボツリヌス毒素医薬組成物の使用
48歳の男性頚部ジストニアなどの痙性筋状態という診断を受ける。ラクトースおよびPVPを含有する組成のA型ボツリヌス毒素医薬組成物、約10-3U/kg〜約35U/kgを、その患者に筋肉内注射する。1〜7日以内に痙性筋状態は軽減し、症状の軽減は少なくとも約2ヶ月〜約6ヶ月は持続する。

0161

本明細書に開示する本発明の医薬組成物は、以下に挙げる利点を含む多くの利点を持つ:
1.アルブミンなどの血液製剤を一切含まず、したがってプリオンなどの血液製剤感染因子を一切含まない医薬組成物を製造することができる。
2.本医薬組成物は、現在入手することができる医薬組成物で達成されるものと同等またはそれを上回る安定性および高い毒素力価回収率を持つ。
3.筋肉内投与または静脈内投与によって評価される、低下した毒性。
4.低下した抗原性。

0162

本明細書ではさまざまな刊行物、特許および/または参考文献に言及したが、それらの内容は、参照により、その全てが本明細書に組み入れられる。

実施例

0163

本発明を一定の好ましい方法に関して詳細に説明したが、本発明の範囲に含まれる他の実施形態、異形、および変形も考えられる。例えば、広範囲にわたるさまざまな安定化多糖およびアミノ酸が、本発明の範囲に包含される。
したがって、本願請求項の特質および範囲は、上述した好ましい実施形態の説明に限定されるべきではない。

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