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図面 (20)

課題

ヒトCLCP1抗原細胞外ドメインを認識する抗体及びその用途の提供。

解決手段

CLCP1を発現する、腎がん膀胱腫瘍前立腺がん膵臓がん胃がん大腸がん乳がん又は肺がん細胞遊走阻害活性浸潤阻害活性増殖阻害活性転移阻害活性、及び細胞障害活性を有する、特定のアミノ酸配列からなるペプチドを認識する抗体、及び該抗体をコードする核酸、該核酸を発現可能に保持するベクター、及び該ベクターを有する形質転換細胞

概要

背景

CLCP1分子は、ESDN(endothelial and smooth muscle cell-derived neuropilin血管内皮細胞平滑筋細胞由来ニューロピリン様分子)、或いはDCBLD2 (discoidin, CUB and LCCL domain containing 2)とも呼ばれており、775アミノ酸よりなる、膜貫通領域を1箇所もつI型膜タンパク質一種である。スプライシングバライアントによる743アミノ酸からなるアイソフォーム報告されているが、細胞外機能ドメインは実質的に同一である。古くは、1999年にNadadur S.らによる遺伝子断片が取得され(非特許文献1)、また、特表2002-523076に大部分のアミノ酸配列(配列番号2の106番目-775番目)の情報が開示されている。その細胞外ドメインは、モチーフとして、N末端よりCUBドメイン、LCCLドメインFA58Cドメインを有する。その後、本分子は、冠動脈細胞ならびに平滑筋細胞で発現され、またバルーン傷害した動脈血管平滑筋総頸動脈中膜で発現されることから、循環器領域におけるPTCA後の再狭窄動脈硬化治療に有用であることが報告されている(特許文献1)。
一方、本発明者でもある高橋らはCLCP1分子が転移性肺がん細胞亜株に多く発現し、生体における肺がんにおいてもCLCP1が高率に発現していることを見出した。さらにCLCP1に対するsiRNA(small interference RNA)に細胞内で生合成されるshRNA(short hairpin RNA)を恒常的に発現させることによってがん増殖阻害転移抑制が引き起こされることを確認している(例えば非特許文献1〜4を参照)。
しかしながら、siRNAに細胞内で生合成されるshRNAを恒常的に発現させることによる該分子の発現阻害で上記の通りの効果が確認されているものの、本分子はマウスとヒトの相同性アミノ酸レベルで約85%であるが、当該分子特異的に結合するモノクローナル抗体は、市販品や学術論文での報告もほとんどない。このような理由により、その抗体の作用や機能等について十分に解明されず、またその抗体の用途も、今後の研究進展が待たれるところであった。

概要

ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識する抗体及びその用途の提供。CLCP1を発現する、腎がん膀胱腫瘍前立腺がん膵臓がん胃がん大腸がん乳がん又は肺がん細胞の遊走阻害活性浸潤阻害活性増殖阻害活性転移阻害活性、及び細胞障害活性を有する、特定のアミノ酸配列からなるペプチドを認識する抗体、及び該抗体をコードする核酸、該核酸を発現可能に保持するベクター、及び該ベクターを有する形質転換細胞。なし

目的

本発明は以上の背景の下、肺がんの転移阻害浸潤阻害、遊走阻害、細胞増殖阻害、細胞障害等の有用な生理活性を持った抗体及びその用途を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

列番号:2における456番目から470番目のアミノ酸配列からなるペプチドを認識する、単離された抗体。

請求項2

配列番号:2における461番目から470番目のアミノ酸配列からなるペプチドを認識し、配列番号:2における466番目から475番目のアミノ酸配列からなるペプチドを認識しない、請求項1に記載された抗体。

請求項3

配列番号:2における456番目から465番目のアミノ酸配列からなるペプチドを認識し、配列番号:2における451番目から460番目のアミノ酸配列からなるペプチドを認識しない、請求項1に記載された抗体。

請求項4

CLCP1を発現するがん細胞遊走阻害活性を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の、単離された抗体。

請求項5

CLCP1を発現するがん細胞の浸潤阻害活性を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の、単離された抗体。

請求項6

CLCP1を発現するがん細胞の増殖阻害活性を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の、単離された抗体。

請求項7

CLCP1を発現するがん細胞の転移阻害活性を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の、単離された抗体。

請求項8

CLCP1を発現するがん細胞に細胞障害活性を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の、単離された抗体。

請求項9

前記CLCP1を発現するがん細胞が、腎がん膀胱腫瘍前立腺がん膵臓がん胃がん大腸がん乳がん又は肺がん細胞である、請求項4〜8のいずれか一項に記載の単離された抗体。

請求項10

重鎖可変領域各相性決定領域(VHCDR1、VH CDR2及びVH CDR3)及び軽鎖可変領域の各相補性決定領域(VL CDR1、VL CDR2及びVL CDR3)のアミノ酸配列が以下の(A)-(C)から選ばれる、請求項1から9のいずれか一項に記載の単離された抗体。(A)(1)VH CDR1:配列番号:16に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、(2)VH CDR2:配列番号:17に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、(3)VH CDR3:配列番号:18に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、(4)VL CDR1:配列番号:21に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、(5)VL CDR2:配列番号:57に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、(6)VL CDR3:配列番号:22に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列(B)(1)VH CDR1:配列番号:7に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、(2)VH CDR2:配列番号:8に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、(3)VH CDR3:配列番号:9に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、(4)VL CDR1:配列番号:12に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、(5)VL CDR2:配列番号:56に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、(6)VL CDR3:配列番号:13に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列(C)(1)VH CDR1:配列番号:60に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、(2)VH CDR2:配列番号:61に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、(3)VH CDR3:配列番号:62に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、(4)VL CDR1:配列番号:65に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、(5)VL CDR2:配列番号:66に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、(6)VL CDR3:配列番号:67に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列

請求項11

重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列が以下の(A)-(C)から選ばれる、請求項1から10のいずれか一項に記載の単離された抗体。(A)(1)VH:配列番号:45若しくは配列番号:15に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、(2)VL:配列番号:55若しくは配列番号:20に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列(B)(1)VH:配列番号:6に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、(2)VL:配列番号:11に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列(C)(1)VH:配列番号:59に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、(2)VL:配列番号:64に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列

請求項12

請求項1から11のいずれか一項に記載の抗体が認識するエピトープと同一のエピトープを認識する、単離された抗体。

請求項13

Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、scFv、dsFv、Diabody又はsc(Fv)2である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の単離された抗体。

請求項14

IgG抗体である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の単離された抗体。

請求項15

前記抗体がヒト化抗体である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の単離された抗体。

請求項16

請求項1〜15のいずれか一項に記載の単離された抗体をコードする単離された核酸

請求項17

請求項16に記載された核酸を発現可能に保持するベクター

請求項18

請求項17に記載のベクターを有する形質転換細胞

請求項19

以下の工程:(a)請求項18に記載の形質転換細胞を培養する工程;及び(b)発現産物である抗体を分離・精製する工程;を含む、抗体の製造方法。

請求項20

請求項1から15のいずれか一項に記載の単離された抗体および医薬的に許容される担体を含有する、医薬組成物

請求項21

ヒトCLCP1抗原細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の遊走阻害活性を有する抗体を含有する、がん細胞の遊走阻害剤

請求項22

ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の浸潤阻害活性を有する抗体を含有する、がん細胞の浸潤阻害剤。

請求項23

ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の転移阻害活性を有する抗体を含有する、がん細胞の転移阻害剤

請求項24

ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の増殖阻害活性を有する抗体を含有する、がん細胞の増殖阻害剤

請求項25

ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の細胞障害活性を有する抗体を含有する、がん細胞の細胞障害剤

請求項26

ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の増殖阻害活性を有する抗体を含有する、腫瘍治療又は予防に使用するための薬剤

請求項27

ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の増殖阻害活性を有する抗体を含有する、がんの治療又は予防に使用するための薬剤。

請求項28

遊走阻害細胞浸潤阻害、転移阻害、細胞増殖阻害から選ばれる少なくとも1つの阻害効果を有する、請求項27に記載のCLCP1を発現するがんの治療又は予防に使用するための薬剤。

請求項29

ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識する抗体を含有する、細胞または組織におけるCLCP1の発現を免疫学的手法により検出するために用いられる薬剤。

請求項30

ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識する抗体を含有する、細胞または組織におけるCLCP1の発現を免疫学的手法により検出するために用いられるキット

請求項31

ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識する抗体を含有する、がんの予後診断用薬剤。

請求項32

ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識する抗体を含有する、がんの予後診断用キット

請求項33

以下の工程:(a)ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識する抗体と、分離された細胞または組織を接触させる工程;及び(b)該細胞または該組織におけるCLCP1の発現を検出する工程;を含む、免疫学的手法。

請求項34

ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識する抗体を、分離された病理組織に接触させ、免疫学的手法によって該病理組織における細胞のCLCP1の発現を検出する工程を含む、がんの診断法

請求項35

ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識する抗体を、分離された病理組織に接触させ、免疫学的手法によって該病理組織における細胞のCLCP1の発現を検出する工程を含む、がんの予後診断法。

請求項36

以下の工程:(a)被験物質をヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインと接触させる工程;(b)ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインと被験物質との結合活性を検出する工程;及び(c)ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインと結合する被験物質を選択する工程;を含む、がん細胞の増殖、浸潤、遊走、若しくは、転移を阻害する候補物質、又は、がん細胞に細胞障害活性を有する候補物質のスクリーニング方法

技術分野

0001

本発明は、ヒトCLCP1(CUB, LCCL-homology, coagulation factor V/VIII homology domains protein)の細胞外ドメインに対する抗体及びその用途に関する。

背景技術

0002

CLCP1分子は、ESDN(endothelial and smooth muscle cell-derived neuropilin血管内皮細胞平滑筋細胞由来ニューロピリン様分子)、或いはDCBLD2 (discoidin, CUB and LCCL domain containing 2)とも呼ばれており、775アミノ酸よりなる、膜貫通領域を1箇所もつI型膜タンパク質一種である。スプライシングバライアントによる743アミノ酸からなるアイソフォーム報告されているが、細胞外機能ドメインは実質的に同一である。古くは、1999年にNadadur S.らによる遺伝子断片が取得され(非特許文献1)、また、特表2002-523076に大部分のアミノ酸配列(配列番号2の106番目-775番目)の情報が開示されている。その細胞外ドメインは、モチーフとして、N末端よりCUBドメイン、LCCLドメインFA58Cドメインを有する。その後、本分子は、冠動脈細胞ならびに平滑筋細胞で発現され、またバルーン傷害した動脈血管平滑筋総頸動脈中膜で発現されることから、循環器領域におけるPTCA後の再狭窄動脈硬化治療に有用であることが報告されている(特許文献1)。
一方、本発明者でもある高橋らはCLCP1分子が転移性肺がん細胞亜株に多く発現し、生体における肺がんにおいてもCLCP1が高率に発現していることを見出した。さらにCLCP1に対するsiRNA(small interference RNA)に細胞内で生合成されるshRNA(short hairpin RNA)を恒常的に発現させることによってがん増殖阻害転移抑制が引き起こされることを確認している(例えば非特許文献1〜4を参照)。
しかしながら、siRNAに細胞内で生合成されるshRNAを恒常的に発現させることによる該分子の発現阻害で上記の通りの効果が確認されているものの、本分子はマウスとヒトの相同性アミノ酸レベルで約85%であるが、当該分子特異的に結合するモノクローナル抗体は、市販品や学術論文での報告もほとんどない。このような理由により、その抗体の作用や機能等について十分に解明されず、またその抗体の用途も、今後の研究進展が待たれるところであった。

0003

特願2001-397725

先行技術

0004

Biochim Biophys Acta. 1999 Dec 23;1489(2-3):433-439
越川 克己 ら、日本外科学雑誌Journal of Japan Surgical Society Vol.104, No.臨時増刊(20030430) p. 520"ヒト肺癌における新規転移関連遺伝子CLCP1の単離とその解析"
Koshikawa K, et al Oncogene 21: 2822-2828 、2002"Significant up-regulation of a novel gene, CLCP1, in a highly metastatic lung cancer subline as well as in lung cancers in vivo."
Nagai H, et al Oncogene 26:4025-4031(2007)"CLCP1 interacts with semaphorin 4B and regulates motility of lung cancer cells."

発明が解決しようとする課題

0005

本発明は以上の背景の下、肺がんの転移阻害浸潤阻害、遊走阻害、細胞増殖阻害、細胞障害等の有用な生理活性を持った抗体及びその用途を提供することを課題とする。より詳細には、ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識する新規な抗体、該抗体をコードする核酸、該核酸を発現可能に保持するベクター、該ベクターを有する形質転換細胞、該抗体の製造方法、該抗体を用いたがんの診断方法及び予後診断方法、細胞もしくは組織免疫学的測定方法、細胞もしくは組織におけるCLCP1の発現量を検出するためのキット、並びに、該抗体を含む医薬組成物、CLCP1を発現するがんの治療又は予防に使用するための薬剤、CLCP1を発現するがん細胞の増殖・遊走・浸潤・転移阻害剤細胞障害剤及び免疫染色剤、並びに、CLCP1を発現する腫瘍の治療又は予防に使用するための薬剤を提供することを課題とする。さらに、本発明は、がん細胞の増殖、浸潤、遊走、若しくは、転移を阻害する候補物質、又は、がん細胞に細胞障害活性を有する候補物質のスクリーニング方法を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0006

本発明者らは上記課題に鑑みヒトCLCP1を標的とした研究を行った。その結果、ヒトCLCP1の細胞外ドメインの部分断片を用いると、特に免疫効率が上がることを発見し、ヒトCLCP1の細胞外ドメインを特異的に認識する抗ヒトCLCP1モノクローナル抗体の取得に成功し、好適な抗体配列及びエピトープの同定にも成功した。
さらに、当該抗体を用いた種々の実験によって、その抗体が肺がん細胞の転移抑制作用を奏することを見出した。即ち、本抗体は、肺がん細胞に対して以下の5つの作用の中のいずれか1つ以上の作用を持つことを明らかにし、当該抗体の有用性が確認された。
(1)当該抗体が肺がん細胞の遊走阻害作用を発揮すること、
(2)当該抗体が肺がん細胞の浸潤抑制作用を発揮すること
(3)当該抗体が肺がん細胞の転移抑制作用を発揮すること
(4)当該抗体が肺がん細胞の増殖抑制作用を発揮すること
(5)当該抗体が肺がん細胞の細胞障害作用を発揮すること
癌の転移は癌細胞原発巣からの離脱・遊走、細胞外マトリックス基底膜への浸潤、血管内侵入遠隔部位での接着血管外侵入、基底膜・細胞外マトリックスへの 浸潤、増殖という過程を経る。中でも、細胞外マトリックス・基底膜への浸潤の過程は二回行われることから極めて重要なステップであると考えられる。上記阻害効果を持つ抗体を含む組成物は、がん治療剤として大変有効である。
さらに、がん細胞の増殖阻害効果を発揮することで、上記阻害効果を持つ抗体を含む組成物は、がんの進行を食い止める、がん治療剤として大変有効である。

0007

また、当該抗体は、抗体依存性細胞障害作用(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity ;ADCC)を有することを見出した。このADCC活性は、治療抗体Fc部分が、癌細胞を殺傷できるキラー細胞上のFcγレセプターに結合し、さらに治療抗体の可変領域の認識作用で、癌細胞へキラー細胞を導くことにより、結果的に治療抗体を介してキラー細胞が癌細胞を殺傷する機構である。本発明者らは、最初に肺がん(H460-LNM35、A549等)に対しこの作用を確認した。特に、CLCP1発現性高転移性肺がん細胞、H460-LNM35に対してもこの作用を有すことで、前述した転移抑制性との相乗的効果によりがん根治が期待できうる。
さらに、後述のように、CLCP1発現性の様々ながんの種が存在することを確認し、同様な効果が期待できることが示唆された。そのような対象のがん種として特に、腎がん膀胱腫瘍前立腺がん膵臓がん胃がん大腸がん乳がんが挙げられる。
がん細胞に対するADCC作用を発揮することで、上記作用を持つ抗体を含む組成物は、がんを積極的に殺傷する、がん治療剤として大変有効であり、このがん治療剤は様々ながんに対して適用可能であることが判明した。

0008

一方、得られた抗体の診断分野での有効性を検討した。具体的には当該抗体を用いて肺癌細胞及び肺癌組織の免疫染色を施行したところ、肺癌細胞、肺癌組織及びリンパ節転移がんにおける、転移浸潤状態を特異的に染色できることが判明した。即ち、当該抗体によれば、正常と、肺癌細胞、肺癌組織又はリンパ節転移がんと転移浸潤とを染め分けることが可能であった。この結果から、取得に成功した抗体を用いれば肺癌細胞(組織)の予後や悪性度転移状態を判定することが可能になると考えられた。また、当該分子を標的とした治療薬治療効果診断を可能にする。以上のように、取得に成功した抗体が肺癌などの診断用途において非常に有用であることが明らかとなり、本抗体を用いると、がん細胞の免疫染色、特に肺癌又はリンパ節転移がん組織切片の染色、肺癌又はリンパ節転移がんの転移の進行状態の診断、特に好適には肺がんの予後診断に有用であることが判明した。

0009

さらに、当該抗体を用いた、がん細胞に対する染色性を検討したところ、CLCP1は肺がんのみならず、各種のがんに共通して発現する分子であり、それに対して正常組織ではほとんど発現がないことから、治療効果の診断に利用できると考えられた。そのような対象のがん種として特に、腎がん、膀胱腫瘍、前立腺がん、膵臓がん、胃がん、大腸がん、乳がんが挙げられる。
また、当該抗体を用いた、CLCP1発現性疾患の治療効果の診断であれば肺癌又はリンパ節転移がんに限定されず、治療効果の診断に転用可能であると考えられる。

0010

本発明は以上の成果に基づくものであり、以下の抗体又は抗体断片、及びその用途を提供する。
〔1〕配列番号:2における456番目から470番目のアミノ酸配列からなるペプチドを認識する、単離された抗体。
〔2〕配列番号:2における461番目から470番目のアミノ酸配列からなるペプチドを認識し、配列番号:2における466番目から475番目のアミノ酸配列からなるペプチドを認識しない、〔1〕に記載された抗体。
〔3〕配列番号:2における456番目から465番目のアミノ酸配列からなるペプチドを認識し、配列番号:2における451番目から460番目のアミノ酸配列からなるペプチドを認識しない、〔1〕に記載された抗体。
〔4〕CLCP1を発現するがん細胞の遊走阻害活性を有する、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の、単離された抗体。
〔5〕CLCP1を発現するがん細胞の浸潤阻害活性を有する、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の、単離された抗体。
〔6〕CLCP1を発現するがん細胞の増殖阻害活性を有する、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の、単離された抗体。
〔7〕CLCP1を発現するがん細胞の転移阻害活性を有する、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の、単離された抗体。
〔8〕CLCP1を発現するがん細胞に細胞障害活性を有する、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の、単離された抗体。
〔9〕前記CLCP1を発現するがん細胞が、腎がん、膀胱腫瘍、前立腺がん、膵臓がん、胃がん、大腸がん、乳がん又は肺がん細胞である、〔4〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の単離された抗体。
〔10〕重鎖可変領域各相性決定領域(VHCDR1、VH CDR2及びVH CDR3)及び軽鎖可変領域の各相補性決定領域(VL CDR1、VL CDR2及びVL CDR3)のアミノ酸配列が以下の(A)-(C)から選ばれる、〔1〕から〔9〕のいずれか一項に記載の単離された抗体。
(A)
(1)VH CDR1:配列番号:16に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、
(2)VH CDR2:配列番号:17に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、
(3)VH CDR3:配列番号:18に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、
(4)VL CDR1:配列番号:21に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、
(5)VL CDR2:配列番号:57に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、
(6)VL CDR3:配列番号:22に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列
(B)
(1)VH CDR1:配列番号:7に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、
(2)VH CDR2:配列番号:8に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、
(3)VH CDR3:配列番号:9に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、
(4)VL CDR1:配列番号:12に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、
(5)VL CDR2:配列番号:56に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、
(6)VL CDR3:配列番号:13に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列
(C)
(1)VH CDR1:配列番号:60に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、
(2)VH CDR2:配列番号:61に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、
(3)VH CDR3:配列番号:62に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、
(4)VL CDR1:配列番号:65に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、
(5)VL CDR2:配列番号:66に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、
(6)VL CDR3:配列番号:67に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列
〔11〕重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列が以下の(A)-(C)から選ばれる、〔1〕から〔10〕のいずれか一項に記載の単離された抗体。
(A)
(1)VH:配列番号:45若しくは配列番号:15に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、
(2)VL:配列番号:55若しくは配列番号:20に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列
(B)
(1)VH:配列番号:6に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、
(2)VL:配列番号:11に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列
(C)
(1)VH:配列番号:59に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、
(2)VL:配列番号:64に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列
〔12〕〔1〕から〔11〕のいずれか一項に記載の抗体が認識するエピトープと同一のエピトープを認識する、単離された抗体。
〔13〕Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、scFv、dsFv、Diabody又はsc(Fv)2である、〔1〕〜〔12〕のいずれか一項に記載の単離された抗体。
〔14〕IgG抗体である、〔1〕〜〔13〕のいずれか一項に記載の単離された抗体。
〔15〕前記抗体がヒト化抗体である、〔1〕〜〔14〕のいずれか一項に記載の単離された抗体。
〔16〕〔1〕〜〔15〕のいずれか一項に記載の単離された抗体をコードする単離された核酸。
〔17〕〔16〕に記載された核酸を発現可能に保持するベクター。
〔18〕〔17〕に記載のベクターを有する形質転換細胞。
〔19〕以下の工程:
(a)〔18〕に記載の形質転換細胞を培養する工程;及び
(b)発現産物である抗体を分離・精製する工程;
を含む、抗体の製造方法。
〔20〕〔1〕から〔15〕のいずれか一項に記載の単離された抗体および医薬的に許容される担体を含有する、医薬組成物。
〔21〕ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の遊走阻害活性を有する抗体を含有する、がん細胞の遊走阻害剤
〔22〕ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の浸潤阻害活性を有する抗体を含有する、がん細胞の浸潤阻害剤。
〔23〕ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の転移阻害活性を有する抗体を含有する、がん細胞の転移阻害剤。
〔24〕ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の増殖阻害活性を有する抗体を含有する、がん細胞の増殖阻害剤
〔25〕ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の細胞障害活性を有する抗体を含有する、がん細胞の細胞障害剤。
〔26〕ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の増殖阻害活性を有する抗体を含有する、腫瘍の治療又は予防に使用するための薬剤。
〔27〕ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の増殖阻害活性を有する抗体を含有する、がんの治療又は予防に使用するための薬剤。
〔28〕遊走阻害、細胞浸潤阻害、転移阻害、細胞増殖阻害から選ばれる少なくとも1つの阻害効果を有する、〔27〕に記載のCLCP1を発現するがんの治療又は予防に使用するための薬剤。
〔29〕ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識する抗体を含有する、細胞または組織におけるCLCP1の発現を免疫学的手法により検出するために用いられる薬剤。
〔30〕ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識する抗体を含有する、細胞または組織におけるCLCP1の発現を免疫学的手法により検出するために用いられるキット。
〔31〕ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識する抗体を含有する、がんの診断または予後診断用薬剤。
〔32〕ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識する抗体を含有する、がんの診断または予後診断用キット
〔33〕以下の工程:
(a)ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識する抗体と、分離された細胞または組織を接触させる工程;及び
(b)該細胞または該組織におけるCLCP1の発現を検出する工程;
を含む、免疫学的手法。
〔34〕ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識する抗体を、分離された病理組織に接触させ、免疫学的手法によって該病理組織における細胞のCLCP1の発現を検出する工程を含む、がんの診断法
〔35〕ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識する抗体を、分離された病理組織に接触させ、免疫学的手法によって該病理組織における細胞のCLCP1の発現を検出する工程を含む、がんの予後診断法。
〔36〕以下の工程:
(a)被験物質をヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインと接触させる工程;
(b)ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインと被験物質との結合活性を検出する工程;及び
(c)ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインと結合する被験物質を選択する工程;
を含む、がん細胞の増殖、浸潤、遊走、若しくは、転移を阻害する候補物質、又は、がん細胞に細胞障害活性を有する候補物質のスクリーニング方法。
〔37〕ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の遊走阻害活性を有する抗体を対象に投与する工程を含む、CLCP1を発現するがん細胞の遊走を阻害するための方法。
〔38〕ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の浸潤阻害活性を有する抗体を対象に投与する工程を含む、CLCP1を発現するがん細胞の浸潤を阻害するための方法。
〔39〕ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の転移阻害活性を有する抗体を対象に投与する工程を含む、CLCP1を発現するがん細胞の転移を阻害するための方法。
〔40〕ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の増殖阻害活性を有する抗体を対象に投与する工程を含む、CLCP1を発現するがん細胞の増殖を阻害するための方法。
〔41〕ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の細胞障害活性を有する抗体を対象に投与する工程を含む、CLCP1を発現するがん細胞を障害するための方法。
〔42〕ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の増殖阻害活性を有する抗体を対象に投与する工程を含む、CLCP1を発現する腫瘍の治療又は予防に使用するための方法。
〔43〕ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の増殖阻害活性を有する抗体を対象に投与する工程を含む、CLCP1を発現するがんの治療又は予防に使用するための方法。
〔44〕CLCP1を発現するがん細胞の遊走阻害剤の製造における、ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の遊走阻害活性を有する抗体の使用。
〔45〕CLCP1を発現するがん細胞の浸潤阻害剤の製造における、ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の浸潤阻害活性を有する抗体の使用。
〔46〕CLCP1を発現するがん細胞の転移阻害剤の製造における、ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の転移阻害活性を有する抗体の使用。
〔47〕CLCP1を発現するがん細胞の増殖阻害剤の製造における、ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の増殖阻害活性を有する抗体の使用。
〔48〕CLCP1を発現するがん細胞の細胞障害剤の製造における、ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の細胞障害活性を有する抗体の使用。
〔49〕CLCP1を発現する腫瘍の治療又は予防に使用するための薬剤の製造における、ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の増殖阻害活性を有する抗体の使用。
〔50〕CLCP1を発現するがんの治療又は予防に使用するための薬剤の製造における、ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の増殖阻害活性を有する抗体の使用。
〔51〕CLCP1を発現するがん細胞の遊走を阻害するための方法に使用するための、ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の遊走阻害活性を有する抗体。
〔52〕CLCP1を発現するがん細胞の浸潤を阻害するための方法に使用するための、ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の浸潤阻害活性を有する抗体。
〔53〕CLCP1を発現するがん細胞の転移を阻害するための方法に使用するための、ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の転移阻害活性を有する抗体。
〔54〕CLCP1を発現するがん細胞の増殖を阻害するための方法に使用するための、ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の増殖阻害活性を有する抗体。
〔55〕CLCP1を発現するがん細胞を障害するための方法に使用するための、ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の細胞障害活性を有する抗体。
〔56〕CLCP1を発現する腫瘍の治療又は予防に使用するための方法に使用するための、ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の増殖阻害活性を有する抗体。
〔57〕CLCP1を発現するがんの治療又は予防に使用するための方法に使用するための、ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の増殖阻害活性を有する抗体。

発明の効果

0011

本発明が提供する、ヒトCLCP1の細胞外ドメインを特異的に認識する抗ヒトCLCP1モノクロナル抗体、好ましくは、配列番号:2における456番目から470番目のアミノ酸配列からなるペプチドを認識する、単離された抗体、より好ましくは、配列番号:2における461番目から470番目のアミノ酸配列からなるペプチドを認識し、配列番号:2における466番目から475番目のアミノ酸配列からなるペプチドを認識しない、単離された抗体、又は、配列番号:2における456番目から465番目のアミノ酸配列からなるペプチドを認識し、配列番号:2における451番目から460番目のアミノ酸配列からなるペプチドを認識しない、単離された抗体、もっとも好ましくはFA19-1、FA17-9、6AA_17-2、さらに特に好ましくは、FA19-1は、CLCP1の細胞外ドメインを特異的に認識し、かつ該蛋白質と結合することでCLCP1の生理作用;例えば、シグナルリング活性或いは他の分子との相互作用を強く阻害する特徴を有するものである。本発明は、がん疾患において、CLCP1が関与していると思われる細胞増殖、遊走、浸潤、或いは転移(特に肺癌転移、リンパ節転移)の阻害、及び、細胞障害に有効なモノクロ−ナル抗体を初めて提供するものである。

0012

本発明によれば、前記記載抗体を有効成分とした、CLCP1を発現するがん細胞の遊走阻害剤、浸潤阻害剤、増殖阻害剤、細胞障害剤、或いは転移阻害剤ひいては、前記阻害を機序とするがん治療剤を容易に製造することが可能であり、がん疾患の治療および/がん転移の予防に用いることができる。

0013

また、本発明は、CLCP1発現のがん疾患において、細胞障害作用を有するモノクロ−ナル抗体を初めて提供するものである。
本発明によれば、前記記載の抗体を有効成分とした、CLCP1を発現するがん細胞の細胞障害を機序とするがん治療剤を容易に製造することが可能であり、がん疾患の治療および/がんの予防に用いることができる。

0014

さらに、CLCP1は肺癌、リンパ節がんなどに高発現であり、がん組織中にCLCP1の発現量またはCLCP1発現細胞の割合が大きければ浸潤・転移している度合いが高いことを明らかにした。正常組織では発現がほとんどなく、様々ながん種でCLCP1が高発現していることを明らかにした。

0015

このことから、前記記載の抗体を用い、病理検体の免疫染色手法により、容易にCLCP1の発現を確認でき、診断分野における利用が可能である。具体的には当該抗体を有効成分とした免疫染色剤で、CLCP1の発現を検定することができ、特に癌転移に関係した病態病状の診断、例えば、癌治療薬効果判定診断用、予後診断用、悪性度診断用の、免疫染色剤を容易に製造することが可能である。

0016

特に、肺がんの組織染色が、強陽性細胞膜染色性観察)群では、カプラン・マイヤー(Kaplan - Meier)分析法における生存率の術後1年(12か月)経過時点で、抗CLCP1抗体の組織染色強陽性症例(細胞膜染色強陽性症例)群の生存率が73%であるのに対し、弱陽性・陰性症例(細胞膜染色弱陽性、又は陰性症例)群が93%であり、術後3年(36か月)経過時点で、強陽性症例群55%、弱陽性・陰性症例群90%となり、強陽性症例群の生存率が継続的に低い。この差異を、2群間の生存率の有意差を検定するのに一般的に用いられるlogrank test(ログランク検定)又はgeneralized Wilcoxon test (一般化ウィルソン検定、Gehan-Wilcoxon検定)を用いて検定すると、ログランク検定でp=0.012, 一般化ウィルソン検定でp=0.0072となり、統計学的に有意に強陽性症例の生存率が低いことが判明した(図37A)。

0017

なお、ここで本抗体の免疫組織学的反応性は強陽性(+)、弱陽性(±)、陰性(-)の3群に分別された。具体的には、図37B上のように細胞膜が明瞭に描出される(細胞膜の輪郭顕微鏡下で視認できる)染色結果を強陽性、図37B下のように細胞膜が不明瞭にしか描出されない(細胞膜の輪郭が顕微鏡下で視認できない)染色結果を弱陽性、更に細胞膜が全く描出されない染色結果を陰性とした。

0018

すなわち、本発明によれば、前記記載の抗体を含む、がんの予後診断用キットが提供され、生存期間が短くなることが推定されるハイリスク患者への迅速な処置、新たな治療に措置を講ずることができるという点で、本発明は有用である。好ましい対象がん種として、肺がんである。
また、本発明は、癌細胞の増殖、浸潤、遊走、又は、転移を阻害する候補物質のスクリーニング方法を提供する。該スクリーニング方法によって得られる物質は、前記阻害を機序とするがん疾患の治療およびがん転移の予防に用いることができる候補物質となりうる。

図面の簡単な説明

0019

CLCP1分子の構造を示す図である。
CLCP1発現細胞に対する抗ヒトCLCP1抗体の反応性を示す図である。H460-LNM35細胞についてのフローサイトメトリー(FCM)解析の結果(各モノクローナル抗体をPE-標識抗マウス抗体で検出)。
阻害実験によるエピトープ解析を示す図である。反応性が強い3クローンについて一定濃度のビオチン化抗体に対する各抗体の濃度依存的な阻害効果をFCMで解析した。FA17-9とFA19-1が相互に阻害されることが確認され、エピトープが同一または近傍と考えられた。EC6−8はFA17-9とFA19-1ともに阻害がかからなかった。EC6-8はFA17-9、FA19-1が認識するエピトープと別のエピトープを認識すると考えられる。
EC6-8抗体が認識するエピトープの同定実験を示す写真、及び、図である。EC6-8のFA58Cドメインに対する免疫沈降を行なったところ、沈降でき、FA58Cドメインを認識していることが判明した。
FCMによる親和性解析を示す図である。
A: 抗体の細胞浸潤阻害活性を示すグラフである。各グラフの横軸は各抗体の番号、縦軸ネガティブコントロール(mock)の活性を100%とした場合の細胞浸潤阻害活性。白抜きは抗体IgG画分試験群の検出結果であり、塗りつぶし(mock)はコントロール群の検出結果である。B:抗体の細胞遊走阻害活性を示すグラフである。各グラフの横軸は各抗体の番号、縦軸はネガティブコントロール(mock)の活性を100%とした場合の細胞遊走阻害活性。白抜きは抗体IgG画分試験群の検出結果であり、塗りつぶし(mock)はコントロール群の検出結果である。
モノクローナル抗体の機能評価を示す写真である。(A)上段:各抗体を曝露後のH460-LNM35の細胞溶解液ウエスタンブロット。(A)下段:各抗体を用いた免疫沈降物のウエスタンブロット。(B):各抗体を表示濃度で曝露後のH460-LNM35の細胞溶解液のウエスタンブロット。いずれもCLCP1の検出にはFA19-1及びHRP標識抗マウス抗体を使用した。
モノクローナル抗体での染色性評価を示す写真である。A:細胞染色。B,C:癌組織染色。A: 今回の実験条件ではFA19-1のみがパラフィン包埋した標本免疫組織染色に使用できることが確認された。B:検体1の癌組織(肺扁平上皮癌)において、細胞膜の染色が確認された。B左: 肺扁平上皮癌組織染色。肺癌が均一に細胞膜染色陽性となっている。これは、病理学所見のがん部と一致する。B中:癌が正常部に浸潤している部分は陽性で、正常が陰性と明瞭に染め分けられている。これは、病理学所見のがん部と一致する。B右:正常肺組織染色像:染色陰性。なお、黒点見えるのは鉄粉沈着部である。検体2の癌組織(肺腺癌)においても、細胞膜の染色が確認され、細胞質も染色された。C左:肺癌組織で均一に染色陽性である。細胞表面が強く染色陽性であるが、細胞質も染色される。C中:肺癌組織の他の部位でも、大部分が染色陽性である。しかし、やや染色が不均一である。C右:癌と離れた正常肺組織部分は染色陰性である。なお、黒点に見えるのは鉄粉沈着部である。
抗体FA17-9の塩基配列、及び、アミノ酸配列を示す図である。重鎖(可変領域及び定常領域の一部)のアミノ酸配列及び塩基配列。四角で囲った領域は上から順にシグナル配列、CDR1(配列番号:7)、CDR2(配列番号:8)、CDR3(配列番号:9)である。矢印はCH1を示す。軽鎖(可変領域及び定常領域の一部)のアミノ酸配列及び塩基配列。四角で囲った領域は上から順にシグナル配列、CDR1(配列番号:12)、CDR2(配列番号:56)、CDR3(配列番号:13)である。矢印はCL1を示す。
抗体FA19-1の塩基配列、及び、アミノ酸配列を示す図である。重鎖(可変領域及び定常領域の一部)のアミノ酸配列及び塩基配列。四角で囲った領域は上から順にシグナル配列、CDR1(配列番号:16)、CDR2(配列番号:17)、CDR3(配列番号:18)である。矢印はCH1を示す。軽鎖(可変領域及び定常領域の一部)のアミノ酸配列及び塩基配列。四角で囲った領域は上から順にシグナル配列、CDR1(配列番号:21)、CDR2(配列番号:57)、CDR3(配列番号:22)である。矢印はCL1を示す。
抗体配列比較を示す図である。FA17-9とFA19-1は同じGermline由来で、体細胞変異のアミノ酸変換の違いのみである。
各抗体の内因性CLCP1に対するWestern blot解析を示す写真である。CLCP1に対するsiRNAに細胞内で生合成されるshRNA(short hairpin RNA)を恒常的に発現し、mRNAベルでCLCP1の発現が著減していることが確認されているH460-LNM35細胞の亜株(Nagai H, et al Oncogene 26:4025-4031(2007)のsiCLCP1-3 #9細胞)(レーン:LNM35-siCLCP1)と、親株H460-LNM35細胞の細胞溶解液を用いて、表示の各抗体にてWestern blotを施行した。その結果FA19-1, FA17-9, 及び極微弱ながらFA16-3で同一サイズシグナルが得られた。Western blotではFA19-1及びFA17-9で特異的に効率よく内因性CLCP1を認識できることが確認された。
FA17-9及び FA19-1曝露後のLNM35のCLCP1 Western blotを示す写真である。図7(B)と同様に、LNM35細胞にFA17-9とFA19-1を表示濃度で24時間曝露し、その後等量の細胞溶解液でFA19-1を用いてWestern blot解析を施行した。FA17-9とFA19-1ともに0.5 μg/mlの濃度からCLCP1の分解(インターナリゼーション)が誘導されていることが示唆された。
抗体曝露後のフローサイトメトリー解析を示す図である。対照マウスIgG, FA17-9, 及びFA19-1を 1μg/ml, 5 μg/ml濃度で24時間曝露し、PBS洗浄後に、各々同じ抗体でフローサイトメトリー解析した。FA19-1曝露で、細胞表面のCLCP1の反応性が低下しており、細胞表面のCLCP1分解(インターナリゼーション)の誘導が示された。
KSN/slc nude mice左そけい部皮下にLNM35細胞を移植し、その後抗体を投与し、肺転移・リンパ節転移の変化を観察した結果を示す図である。(A)腫瘍容積10 day(移植後10日後)。(B)腫瘍容積34 day(移植後34日後)。(C)腫瘍容積41 day(移植後41日後)。(D)腫瘍の増殖速度:たて軸は腫瘍容積(mm3)、よこ軸は移植後経過日数
移植後46日後堵殺時の結果を示す図である。(A)腫瘍重量を除いた体重は変化なし。(B)FA19-1で増殖抑制傾向である。一方、FA17-9で増殖促進傾向のように見られるが、有意差はなし。(C)FA19-1で有意に転移抑制。FA17-9でも転移抑制傾向有。(D)3群とも転移による腫大傾向があるが、control IgGが、一番腫大が著明。(E)対照のばらつきのために有意差はないが、FA17-9/FA19-1では転移によるリンパ節腫大はほとんどない。(F)対照のばらつきのために有意差はないが、FA17-9/FA19-1では転移によるリンパ節腫大はほとんどない。
NCI-H460由来高転移株NCI-H460-LNM35と低転移株NCI-H460-N15の分離、CLCP1発現解析結果を示す図である。ヘテロ細胞集団である親株のNCI-H460を転移能強弱クローニングすると、CLCP1の細胞膜上の発現が均一化したNCI-H460-LNM35、NCI-H460-N15に分離できた。細胞膜上の発現レベルと転移能の関係が明確化された。
NCI-H460系統以外の肺がん細胞株に対する抗CLCP1抗体(FA19-1)のフローサイトメトリー解析を示す図である。対照はマウスIgG1とした。抗体濃度5 μg/mlにおいて染色し、フローサイトメトリーで解析した。
各種がん細胞株に対する抗CLCP1抗体(FA19-1)のフローサイトメトリー解析を示す図である。対照はマウスIgG1とした。抗体濃度5 μg/mlにおいて染色し、フローサイトメトリーで解析した。
各種がん細胞株における抗原発現状況平均蛍光強度)を示す図である。各種がん細胞株(横軸)に対して抗CLCP1抗体(FA19-1)を5 μg/ml濃度でフローサイトメトリーにおいて平均蛍光強度(MFI)を解析し、本グラフの縦軸とした。肺がん以外に、腎癌膀胱癌前立腺癌膵臓癌胃癌大腸癌乳癌細胞株で、CLCP1が発現していることが判明した。表2に各種がん細胞株とその由来、登録番号を記載した。
FA17-9キメラ化抗体、FA19-1キメラ化抗体の反応性確認した結果を示す図である。可変領域にFA17-9又はFA19-1をもち、ヒトIgG1定常領域を持つキメラ化抗体を作製し、その結合特性をNCI-H460-LNM35に対するフローサイトメトリーで確認した。
LNM35細胞に対するFA19-1キメラ化抗体、FA17-9キメラ化抗体のADCC活性を評価した結果を示す図である。抗体濃度(図22上(A))又はE/T ratio(エフェクター/ターゲット比)(図22下(B))を変化させてキメラ化抗体のNCI-H460-LNM35細胞をターゲットとしたADCC活性を評価した。
FA19-1キメラ化抗体のNCI-H460-LNM35又はA549に対するADCC活性を測定した結果を示す図である。ADCC活性の測定における、使用するエフェクターのドナー差を解析した結果である。FA19-1キメラ化抗体のNCI-H460-LNM35(図23上)又はA549(図23下)に対するADCC活性はドナー(A〜E)により若干の強弱はあったものの、普遍的に確認された。FA19-1キメラ化抗体、FA17-9キメラ化抗体は、これらの肺がん細胞に対しADCC活性を有することがわかった。
新規抗体のFCMによる抗体結合強度を評価した結果を示す図である。FCM解析における抗体濃度とMFI(平均蛍光強度)の結果から、結合定数(親和性)の高さが評価できる。2AA_171-1>6AA_17-2≒2AA_197-3>FA19-1≒2AA_83-6>2AA_111-3>6AA_60-1、の順に結合定数高い(親和性高い)ことが判明した。
新規抗体のepitope mappingを示す図である。部分たんぱく質断片に対するELISAの反応性からの認識ドメインの推定。細胞外領域全長(白抜き)、又はFA58Cを含む領域(灰色)を感作し、ELISAを行った。
図16(C)同様、移植後46日後堵殺時の肺転移抑制の結果を示す図である。(A)FA19-1で有意に転移抑制。FA17-9でも転移抑制が追試で確認された。(B)FA19-1で有意に転移抑制。6AA_17-2で有意に転移抑制。
新規抗体が認識すると推測されるエピトープ(部分長発現抗原への反応性)の絞込みを行った結果を示す図である。部分長の抗原に対するELISAを行い、6AA_17-2、EC6-8、FA19-1抗体の結合(反応性)を検討、結合領域の絞込みを行った。
新規抗体が認識すると推測されるエピトープ(部分長発現抗原への反応性)の絞込みを行った結果を示す図である。部分長の抗原に対するELISAを行い、FA19-1抗体の結合(反応性)を検討した。
新規抗体が認識すると推測されるエピトープ(部分長発現抗原への反応性)の絞込みを行った結果を示す図である。部分長の抗原に対するELISAを行い、6AA_17-2抗体の結合(反応性)を検討した。
新規抗体が認識すると推測されるエピトープ(部分長発現抗原への反応性)の絞込みを行った結果を示す図である。部分長の抗原に対するELISAを行い、EC6-8抗体の結合(反応性)を検討した。
新規抗体のepitope mappingを示す図である。FCMにおける競合阻害実験による推定。(A)2AA_197-3に対する阻害試験競合抗体は2AA_197-3自身のみで、他の抗体が認識するエピトープとは異なる単一のエピトープであることが判明した。(B)2AA_171-1に対する阻害試験:競合抗体は2AA_171-1自身のみで、他の抗体が認識するエピトープとは異なる単一のエピトープであることが判明した。(C)6AA_17-2に対する阻害試験:6AA_17-2は、EC6-8、FA19-1と競合し、これら2クローンが認識するエピトープと近傍のエピトープを認識することが判明した。
図27図30のELISA、図3図31のFCM競合阻害アッセイによる結果をまとめてエピトープを考察した図である。6AA_17-2、EC6-8、FA19-1は近傍であることが判明し、各エピトープ配列が同定された。EC6-8が認識するエピトープは破線で示す。
FCM競合阻害アッセイによる結果をまとめてエピトープをグルーピングした結果の図である。同じ枠内のものはFCM競合阻害実験で競合したものを表す。
新規抗体曝露後のフローサイトメトリー解析を示す図である。LNM35細胞に新規抗体を表示濃度で24時間曝露し、PBS洗浄後に、ビオチン化抗体でフローサイトメトリー解析した。2AA_171-1、6AA_17-2、2AA_197-3抗体で強いCLCP1の分解(インターナリゼーション)が誘導されていることが示唆された。
抗体曝露後のLNM35のCLCP1 Western blotを示す写真である。対照抗体はマウスIgG1とし各抗体を 5 μg/ml濃度で24時間曝露し、その後等量の細胞溶解液でFA19-1を用いてWestern blot解析を施行した。2AA_171-1、6AA_17-2、2AA_197-3抗体で、FA17-9とFA19-1と同様に、CLCP1の分解(インターナリゼーション)が誘導されていることが示唆された。
新規抗体の internalization作用を示す図である。対照抗体添加サンプルを100%としたときのinternalization作用を比で示す。FA19-1の場合のinternalization作用をNCI-H460-LNM35の場合、A549の場合を矢印で示した。抗体を細胞に作用させると、細胞表面上のヒトCLCP1抗原の量が少なくなっていたことが判明した。このことは抗体が結合作用したことによって、ヒトCLCP1の細胞内へのインターナリゼーションが誘導されているためではないかと推測できる。この傾向は細胞種が変化しても見られた。
組織染色による予後予測を示す図及び写真である。(A)前述の染色方法に基づき、FA19-1抗体を用いて肺癌検体を染色した。細胞膜染色が、強陽性症例:11、弱陽性症例:7、陰性症例:52、に分けられ、Kaplan-Meier(カプラン・マイヤー分析)で強陽性症例群と弱陽性・陰性症例群との比較したところ、強陽性症例の予後はログランク検定p=0.012で統計学的に有意に生存率が低いことが判明した。なお、観察期間中に「End-point=死亡」に至らなかった症例(生存例)「打ちきり例censored case」を縦バーで表す。(B)強陽性症例と弱陽性症例の染色の違いを示す。本抗体の免疫組織学的反応性は強陽性(+)、弱陽性(±)、陰性(-)の3群に分別された。具体的には、上図のように細胞膜が明瞭に描出される症例を強陽性、下図のように細胞膜が不明瞭にしか描出されない症例を弱陽性、更に細胞膜が全く描出されない症例(図なし)を陰性とした。
抗体6AA_17-2の可変領域の塩基配列、及び、アミノ酸配列を示す図である。重鎖(可変領域)のアミノ酸配列(配列番号:59)及び塩基配列(配列番号:58)。四角で囲った領域は上から順にシグナル配列、CDR1(配列番号:60)、CDR2(配列番号:61)、CDR3(配列番号:62)である。軽鎖(可変領域)のアミノ酸配列(配列番号:64)及び塩基配列(配列番号:63)。四角で囲った領域は上から順にシグナル配列、CDR1(配列番号:65)、CDR2(配列番号:66)、CDR3(配列番号:67)である。
各抗体の解離定数ビアコア測定した結果を示すグラフである。
重鎖のヒト化への変換過程を示す図である。A:FA19RHAヒト型化)と選択したヒト抗体配列を示す。U00570が選択したヒト抗体配列であり、CDR部分を、FA19-1のCDR部分に変換した。B:フレームワーク内のアミノ酸一致率を示す。作製したヒト化抗体は、FA19-1とフレームワーク内のアミノ酸は77.0%が一致している。
軽鎖のヒト化への変換過程を示す図である。A:FA19RKA(ヒト型化)と選択したヒト抗体配列を示す。U96396が選択したヒト抗体配列であり、CDR部分を、FA19-1のCDR部分に変換した。B:フレームワーク内のアミノ酸一致率を示す。作製したヒト化抗体は、FA19-1とフレームワーク内のアミノ酸は78.8%が一致している。
セリン置換抗体における膜外ドメインに対するELISA活性を示す図である。FA19-1の抗体の軽鎖CDR部分に存在するシステインをセリンへ変換した抗体の結合性を確認した。作製されたセリン置換抗体は、変換前の抗体と比較して、同等の結合活性を示した。
膜外ドメインに対するELISA活性(ヒト化IgG1とキメラIgG1の比較)を示す図である。作製したヒト化抗体の結合活性をELISAで確認した。作製されたヒト化抗体は、キメラ抗体と比較して、同等の結合活性を示した。
CLCP1の451aa-475aaの領域を4種類に分割したペプチド配列とGSTを融合させた蛋白質に対するELISAを行い、各種抗体の反応性を解析した結果を示す図である。得られた各種GST融合蛋白質を0.5μg/mLで固相化したプレートに対するELISAを行うことにより、FA17-9、FA19-1、6AA_17-2、EC6-8の結合活性を確認した結果である。FA17-9とFA19-1は配列番号:2の461aa-470aa、6AA_17-2は配列番号:2の456aa-465aaに対して結合活性を示した。

0020

(用語)
本明細書において用語「単離された抗体」には、天然であって且つ何ら外的操作(人為的操作)が施されていない抗体、即ちある個体の体内で産生され、そこに留まっている状態の抗体は含まれない。尚、単離された抗体は、典型的には、他の種類の抗体が混在していない状態、即ち単独で(同種の抗体の集合として)存在している。

0021

アミノ酸配列に関して使用する用語「実質的に同一」とは、比較される二つのアミノ酸配列間で配列上の相違が比較的小さく且つ配列上の相違が抗原に対する特異的結合性に関して実質的な影響を与えないことを意味する。基準となるアミノ酸配列に対して、抗原に対する特異的結合性に実質的な影響を与えない範囲で一部の改変を含んでいるとみることができるアミノ酸配列は実質的に同一なアミノ酸配列である。ここでの「アミノ酸配列の一部の改変」とは、アミノ酸配列を構成する1〜数個のアミノ酸の欠失置換、若しくは1〜数個のアミノ酸の付加、挿入、又はこれらの組合せによりアミノ酸配列に変化が生ずることをいう。アミノ酸配列の変異の位置は特に限定されず、複数の位置で変異を生じていてもよい。ここでの複数とはアミノ酸配列を構成する全アミノ酸の例えば10%以内に相当する数であり、好ましくは全アミノ酸の5%以内に相当する数である。さらに好ましくは全アミノ酸の1%以内に相当する数である。
二つのアミノ酸が実質的に同一であるか否かは、各アミノ酸配列を含む抗体(他の領域の配列は同一)の抗原に対する結合特異性(以下、特に記載のない限り「特異性」は「抗原に対する特異性」を意味する)を比較することによって判定できる。例えば、基準となる抗体の生理食塩水環境下での抗原に関する解離定数(Kd)をAとしたとき、比較対象の抗体のKdがA×10-1〜A×10の範囲であれば実質的な同一性認定できる。

0022

抗体の結合定数に関して使用する用語「実質的に同一以上」とは二つの抗体の結合定数が実質的に同一以上であるか否かは、各抗体の抗原に対する結合特異性(以下、特に記載のない限り「特異性」は「抗原に対する特異性」を意味する)を比較することによって判定できる。例えば、基準となる抗体の生理食塩水環境下での抗原に関する解離定数(Kd)をAとしたとき、比較対象の抗体のKdが0.9XA以上の範囲であれば実質的な同一性を認定できる。

0023

本明細書において用語「単離された核酸」とは、もともと天然に存在している核酸(例えばヒト生体内の核酸)の場合、典型的には、天然状態において共存するその他の核酸から分離された状態の核酸をいう。但し、天然状態において隣接する核酸配列など一部の他の核酸成分を含んでいてもよい。例えばゲノムDNAの場合の「単離された核酸」の好ましい形態では、天然状態において共存する他のDNA成分(天然状態において隣接するDNA配列を含む)を実質的に含まない。
例えばcDNA分子など遺伝子組み換え技術によって生産される核酸の場合の「単離された核酸」は好ましくは、細胞成分や培養液などを実質的に含まない状態の核酸をいう。同様に、化学合成によって生産される核酸の場合の「単離された核酸」は好ましくは、dNTPなどの前駆体(原材料)や合成過程で使用される化学物質等を実質的に含まない状態の核酸をいう。
ベクターや組成物の一部として核酸が存在していても、又は外来性分子として細胞内に核酸が存在していても、人為的操作の結果として存在している限り「単離された核酸」と言える。尚、特に言及しない限り、本明細書において単に「核酸」と記載した場合には「単離された状態の核酸」を意味する。
本明細書における用語「核酸」はDNA(cDNA及びゲノムDNAを含む)、RNA(mRNAを含む)、DNA類似体、及びRNA類似体を含む。本発明の核酸の形態は限定されず、即ち1本鎖及び2本鎖のいずれであってもよい。好ましくは2本鎖DNAである。またコドン縮重も考慮される。即ちタンパク質をコードする核酸の場合には、その発現産物として当該タンパク質が得られる限り任意の塩基配列を有していてよい。本明細書において「あるタンパク質(例えば抗体)をコードする核酸」は、それを発現させた場合に当該タンパク質が得られる核酸のことをいい、当該タンパク質のアミノ酸配列に対応する塩基配列を有する核酸は勿論のこと、そのような核酸にアミノ酸配列をコードしない配列が付加されてなる核酸(例えば1又は複数個イントロンを含むDNA)をも含む。

0024

本発明において「肺癌」は広義解釈することとし、肺癌腫及び肺肉腫を含む。また、本発明において用語「癌」は「腫瘍」と互換的に使用される。また、病理学的に診断が確定される前の段階、すなわち腫瘍としての良性悪性のどちらかが確定される前には、良性腫瘍、良性悪性境界病変悪性腫瘍総括的に含む場合もあり得る。

0025

本明細書では必要に応じて、慣習に従い以下の略号括弧内)を使用する。
重鎖(H鎖)、軽鎖(L鎖)、重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)、相補性決定領域(CDR)、第1相補性決定領域(CDR1)、第2相補性決定領域(CDR2)、第3相補性決定領域(CDR3)重鎖の第1相補性決定領域(VH CDR1)、重鎖の第2相補性決定領域(VH CDR2)、重鎖の第3相補性決定領域(VH CDR3)軽鎖の第1相補性決定領域(VL CDR1)、軽鎖の第2相補性決定領域(VL CDR2)、軽鎖の第3相補性決定領域(VL CDR3)。

0026

(抗ヒトCLCP1抗体)
本発明の第1の局面はヒトCLCP1(アミノ酸配列を配列番号:2、塩基配列を配列番号:1に示す)の細胞外ドメイン(配列番号:3)を特異的に認識する(「認識する」は「結合する」と言い換えることもできる。また、「認識する」とは、抗原に存在するエピトープを認識することを意味する)単離された抗体(以下、「本発明の抗体」ともいう)に関する。特に好ましくは、ヒトCLCP1細胞外ドメイン中のFA58Cドメインを含む領域(配列番号:4)を認識する抗体である。
さらに、本発明の別の局面は、配列番号:2における456番目から470番目のアミノ酸配列からなるペプチドを認識する、単離された抗体に関する。
好ましくは、以下の(c)に記載のペプチドを認識し、以下の(a)、(b)及び(d)に記載の少なくとも1つのペプチドを認識しない、単離された抗体、又は、以下の(b)に記載のペプチドを認識し、以下の(a)、(c)及び(d)に記載の少なくとも1つのペプチドを認識しない、単離された抗体である。
(a)配列番号:2における451番目から460番目のアミノ酸配列からなるペプチド
(b)配列番号:2における456番目から465番目のアミノ酸配列からなるペプチド
(c)配列番号:2における461番目から470番目のアミノ酸配列からなるペプチド
(d)配列番号:2における466番目から475番目のアミノ酸配列からなるペプチド
より好ましくは、配列番号:2における461番目から470番目のアミノ酸配列からなるペプチドを認識し、配列番号:2における466番目から475番目のアミノ酸配列からなるペプチドを認識しない、単離された抗体、又は、配列番号:2における456番目から465番目のアミノ酸配列からなるペプチドを認識し、配列番号:2における451番目から460番目のアミノ酸配列からなるペプチドを認識しない、単離された抗体である。
さらにより好ましくは配列番号:2における461番目から470番目のアミノ酸配列からなるペプチドには結合し、配列番号:2における466番目から475番目のアミノ酸配列からなるペプチドに結合しない、かつさらに、配列番号:2における456番目から465番目のアミノ酸配列からなるペプチドに結合しない単離された抗体、又は、配列番号:2における456番目から465番目のアミノ酸配列からなるペプチドには結合し、配列番号:2における451番目から460番目のアミノ酸配列からなるペプチドに結合しない、かつさらに、配列番号:2における461番目から470番目のアミノ酸配列からなるペプチドに結合しない単離された抗体である。
最も好ましくは、以下の(c)に記載のペプチドを認識し、以下の(a)、(b)及び(d)に記載のいずれのペプチドも認識しない、単離された抗体、又は、以下の(b)に記載のペプチドを認識し、以下の(a)、(c)及び(d)に記載のいずれのペプチドも認識しない、単離された抗体である。
(a)配列番号:2における451番目から460番目のアミノ酸配列からなるペプチド
(b)配列番号:2における456番目から465番目のアミノ酸配列からなるペプチド
(c)配列番号:2における461番目から470番目のアミノ酸配列からなるペプチド
(d)配列番号:2における466番目から475番目のアミノ酸配列からなるペプチド
本発明の抗体は、ヒトCLCP1抗原を認識して作用・活性を発揮する。具体的には、細胞表面にヒトCLCP1分子を発現するヒトがん細胞、好ましくはヒトCLCP1分子を高発現するがん細胞、さらに好ましくは肺癌細胞、特に転移性肺癌細胞に対して活性を発揮する。本抗体の活性としては、遊走阻害活性、或いは浸潤阻害、或いは転移阻害活性、さらには、増殖阻害活性である。さらに別の局面として、細胞障害活性(例えば、ADCC活性)である。
ヒトCLCP1分子は、肺癌細胞において高レベルの発現が認められることが知られていたが、他のがん種での発現はほとんど知られていなかった上、ヒトCLCP1の細胞外ドメインに対する抗体の機能についてはほとんど知られておらず、後述のように、本発明者らの検討によって興味深い知見が得られた。

0027

本発明の抗体は、(1)ヒト肺がん細胞に発現する、ヒトCLCP1抗原を認識することによって、その遊走阻害活性、かつ/または(2)ヒト肺がん細胞に発現する、ヒトCLCP1抗原を認識することによって、その浸潤阻害活性、かつ/または(3)ヒト肺がん細胞に発現する、ヒトCLCP1抗原を認識することによって、その転移阻害活性、かつ/または(4)ヒト肺がん細胞に発現する、ヒトCLCP1抗原を認識することによって、その増殖阻害活性を発揮する。さらに別の局面として、様々ながん細胞に発現する、ヒトCLCP1抗原を認識することによって細胞障害活性を発揮する。
尚、ここでの「遊走阻害活性」とは、当該生細胞試験管内または、生体内において2次元または、3次元的に移動することを阻害する活性をいう。「浸潤阻害活性」とは当該生細胞が生体内において基底膜を通過することを阻害する活性をいい、または試験管内において当該生細胞の細胞外マトリックスやマトリゲルへの膜で上下に仕切られたチャンバーで、細胞が上のチャンバーから、下のチャンバーまで移動することを阻害する活性をいう。「転移阻害活性」とは生体内における癌細胞が原発巣から離脱・遊走し、細胞外マトリックス・基底膜への浸潤を経て、他の臓器または、同じ臓器の異なる位置へ広がることを阻害する活性をいう。「増殖阻害活性」とは、該抗体の投与によりその後の経過観察の結果として、がん細胞分裂/がん増殖を抑え、「がん細胞体積を対象のIgG群より低下させる、または重量増加を抑制する活性」をいう。「細胞障害活性」とは、がん細胞を障害し、「生存しているがん細胞数又は量を対象のIgG群より低下させる活性」をいう。
本発明において、「遊走・浸潤・転移・増殖阻害」には、遊走・浸潤・転移・増殖が完全に阻害される場合のみならず、遊走・浸潤・転移・増殖が部分的に阻害される場合も含まれる。「細胞障害活性」には、完全にがん細胞群が障害される場合のみならず、部分的に障害される場合も含まれる。なお、非特許文献4によりin vitro遊走阻害作用及び浸潤阻害作用が、in vivoでの「転移阻害活性」と相関していることが示されている。

0028

本発明の抗体を細胞に作用させると、細胞表面上のヒトCLCP1抗原の量が少なくなっていたことが判明した。このことは抗体が結合作用したことによって、ヒトCLCP1の細胞内へのインターナリゼーションを誘導しているためではないかと推測できうる。この傾向は細胞種が変化しても見られた。
最後に、遊走阻害、浸潤阻害試験で、上記との関連を見たところ、配列番号:2における456番目から470番目のアミノ酸配列からなるペプチドを認識する、単離された抗体、より好ましくは、配列番号:2における461番目から470番目のアミノ酸配列からなるペプチドを認識し、配列番号:2における466番目から475番目のアミノ酸配列からなるペプチドを認識しない、単離された抗体、又は、配列番号:2における456番目から465番目のアミノ酸配列からなるペプチドを認識し、配列番号:2における451番目から460番目のアミノ酸配列からなるペプチドを認識しない、単離された抗体、もっとも好ましくはFA19-1、FA17-9、6AA_17-2抗体、特に好ましくはFA19-1が特に遊走阻害性、浸潤阻害性を有し、in vivo転移阻害の効果を生じると考えられた。

0029

さらに、後述の実施例に示すように、本発明者等の検討の結果、抗ヒトCLCP1抗体として取得された抗体が認識するエピトープの位置を特定することに成功した。
この結果に基づき、ヒトCLCP1の細胞外ドメインのうちそれぞれの抗体が以下のエピトープを認識することによって本発明の抗体を更に特徴づけることができた。本発明で同一のエピトープを認識する場合とは、競合実験:FCMにおいて一方ビオチン化抗体で互いに競合し、他方の結合が妨げられる場合をいう。
今回、取得に成功した抗体クローンは、認識するエピトープの異同に基づき、7種類に分類されることを示した。
即ち、FA58Cドメインを含む領域中のエピトープA:(1)配列番号2における456番目から470番目のアミノ酸配列(以下、「456aa-470aa」のように記載する)内に存在するエピトープを認識する、単離された抗体である。
そのような抗体として、例えば、(2)ヒトCLCP1抗原のアミノ酸配列部分配列(配列番号2の461aa-470aa)内に存在するエピトープを認識する、単離された抗体(第1の抗体)が挙げられる。第1の抗体は、転移阻害、特に肺転移阻害に有効であることが示された抗体クローンFA17-9、FA19-1を含み(に対応するものであり)、抗体クローンFA17-9、即ち「配列番号:6のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号:11のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域とを有する抗体」が認識するエピトープと同一のエピトープ、或いは抗体クローンFA19-1、即ち「配列番号:15のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号:20のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域とを有する抗体」が認識するエピトープと同一のエピトープを認識することによって特徴づけられる。第1抗体が認識するエピトープは、抗体クローンFA17-9、FA19-1が認識するエピトープに一致することから、第1抗体と抗体クローンFA17-9またはFA19-1を確認すべき抗体と同時にヒトCLCP1に反応させれば競合が認められ、第1抗体としての適格性は、抗体クローンFA17-9、FA19-1、特に好ましくはFA19-1を利用した競合実験:FCMによって確認することができる(実施例参照)。
第1抗体としての適格性は、部分ペプチド間の交差性として捉えることもでき、配列番号:2における461番目から470番目のアミノ酸配列からなるペプチドには結合し、配列番号:2における466番目から475番目のアミノ酸配列からなるペプチドに結合しない、かつさらに、配列番号:2における456番目から465番目のアミノ酸配列からなるペプチドに結合しない単離された抗体として確認することができる。
今回、複数の抗体クローンが選択されたものの、エピトープAを認識する抗体が繰り返し選択されていることが明らかとなった。この現象が生ずる原因について検討した結果、エピトープAは抗原性極端に高いエピトープであり、それがエピトープのオーバーラップを引き起こしていると予想された。
なお、エピトープAを認識する第1の抗体は、FA17-9、FA19-1はじめ、FA2-10、FA7-6、FA9-1、FA12-3、FA14-9、FA20-3のモノクローナル抗体が認識する。
FA58Cドメインを含む領域中のエピトープAを認識する(1)配列番号2の456aa-470aa内に存在するエピトープを認識する抗体の第2の抗体は、転移阻害に有効であることが示された、(3)配列番号2の456aa-465aa内に存在するエピトープを認識する、単離された抗体、(に対応するものであり)第2抗体が認識するエピトープは、抗体クローン6AA_17-2又は、2AA_62-4が認識するエピトープに一致することから、第2抗体と抗体クローン6AA_17-2又は、2AA_62-4を確認すべき抗体と同時にヒトCLCP1に反応させれば競合が認められ、第2抗体としての適格性は、抗体クローン6AA_17-2又は、2AA_62-4、特に好ましくは6AA_17-2を利用した競合実験によって競合する抗体として確認することができる。第2抗体としての適格性は、部分ペプチド間の交差性として捉えることもでき、配列番号:2における456番目から465番目のアミノ酸配列からなるペプチドには結合し、配列番号:2における451番目から460番目のアミノ酸配列からなるペプチドに結合しない、かつさらに、配列番号:2における461番目から470番目のアミノ酸配列からなるペプチドに結合しない単離された抗体として確認することができる。
一方、抗体のアミノ酸配列を解析し、重鎖可変領域の各相補性決定領域(VHCDR1、VH CDR2、VH CDR3)及び軽鎖可変領域の各相補性決定領域(VL CDR1、VL CDR2、VL CDR3)のアミノ酸配列、並びに重鎖可変領域全体(VH)及び軽鎖可変領域全体(VL)のアミノ酸配列を同定することに成功した(同定された各アミノ酸配列を以下に示す)。
抗体1:FA17-9
(1)VH CDR1:配列番号:7に示すアミノ酸配列
(2)VH CDR2:配列番号:8に示すアミノ酸配列
(3)VH CDR3:配列番号:9に示すアミノ酸配列
(4)VL CDR1:配列番号:12に示すアミノ酸配列
(5)VL CDR2:配列番号:56に示すアミノ酸配列
(6)VL CDR3:配列番号:13に示すアミノ酸配列
(7)VH:配列番号:6に示すアミノ酸配列(該アミノ酸配列をコードする塩基配列は配列番号:5)
(8)VL:配列番号:11に示すアミノ酸配列(該アミノ酸配列をコードする塩基配列は配列番号:10)
抗体2:FA19-1
(1)VH CDR1:配列番号:16に示すアミノ酸配列
(2)VH CDR2:配列番号:17に示すアミノ酸配列
(3)VH CDR3:配列番号:18に示すアミノ酸配列
(4)VL CDR1:配列番号:21に示すアミノ酸配列
(5)VL CDR2:配列番号:57に示すアミノ酸配列
(6)VL CDR3:配列番号:22に示すアミノ酸配列
(7)VH:配列番号:15に示すアミノ酸配列(該アミノ酸配列をコードする塩基配列は配列番号:14)
(8)VL:配列番号:20に示すアミノ酸配列(該アミノ酸配列をコードする塩基配列は配列番号:19)
抗体3:6AA_17-2
(1)VH CDR1:配列番号:60に示すアミノ酸配列
(2)VH CDR2:配列番号:61に示すアミノ酸配列
(3)VH CDR3:配列番号:62に示すアミノ酸配列
(4)VL CDR1:配列番号:65に示すアミノ酸配列
(5)VL CDR2:配列番号:66に示すアミノ酸配列
(6)VL CDR3:配列番号:67に示すアミノ酸配列
(7)VH:配列番号:59示すアミノ酸配列(該アミノ酸配列をコードする塩基配列は配列番号:58)
(8)VL:配列番号:64に示すアミノ酸配列(該アミノ酸配列をコードする塩基配列は配列番号:63)

0030

以上の同定結果に基づいて本発明の抗体を更に特徴づけることができる。そこで本発明の抗体の一態様は各CDRの配列を用いて特定され、例えば、相補性決定領域(VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2及びVL CDR3)のアミノ酸配列が以下の(A)-(C)から選ばれる、ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識する、単離された抗体である。
(A)
(1)VH CDR1:配列番号:7に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、
(2)VH CDR2:配列番号:8に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、
(3)VH CDR3:配列番号:9に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、
(4)VL CDR1:配列番号:12に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、
(5)VL CDR2:配列番号:56に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、
(6)VL CDR3:配列番号:13に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列
(B)
(1)VH CDR1:配列番号:16に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、
(2)VH CDR2:配列番号:17に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、
(3)VH CDR3:配列番号:18に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、
(4)VL CDR1:配列番号:21に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、
(5)VL CDR2:配列番号:57に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、
(6)VL CDR3:配列番号:22に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列
(C)

(1)VH CDR1:配列番号:60に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、

(2)VH CDR2:配列番号:61に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、

(3)VH CDR3:配列番号:62に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、

(4)VL CDR1:配列番号:65に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、

(5)VL CDR2:配列番号:66に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、

(6)VL CDR3:配列番号:67に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、
本発明の抗体の可変領域においてフレームワーク領域(FR領域)の配列は、ヒトCLCP1抗原に対する特異的結合性に実質的な影響のない限り、特に限定されない。
例えば、本発明の抗体をヒト化抗体として構築する場合には、公知のヒト抗体のFR領域を用いることができる。

0031

本発明の他の態様はVH及びVLの配列を用いて特定され、例えば、可変領域(VH及びVL)のアミノ酸配列が以下の(A)-(C)から選ばれる、ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識する、単離された抗体である。
(A)
(1)VH:配列番号:6に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、
(2)VL:配列番号:11に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列
(B)
(1)VH:配列番号:45若しくは配列番号:15に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、
(2)VL:配列番号:55若しくは配列番号:20に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列
(C)
(1)VH:配列番号:59示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列、
(2)VL:配列番号:64に示すアミノ酸配列又はそれと実質的に同一のアミノ酸配列

0032

本発明の抗体は一態様において、可変領域に加えて定常領域を含む(例えばIgG型抗体の場合など)。当該態様における定常領域の配列は特に限定されない。例えば、後述のように本発明の抗体をヒト化抗体として構築する場合には、公知のヒト抗体の定常領域を用いることができる。

0033

上記本発明の抗体は、通常の免疫学的手法、その他、ファージディスプレイ法など利用して調製することができる。
免疫学的手法によるポリクローナル抗体の調製は次の手順で行うことができる。抗原(CLCP1又はその一部)を調製し、これを用いてウサギ等の動物に免疫を施す。抗原としては、ヒトCLCP1の他、マウスCLCP1などヒト以外の種のCLCP1を用いることができる。これらのCLCP1は、生体試料を精製することにより得ることができる。また、組換えCLCP1を用いることもできる。組換えヒトCLCP1は例えば、CLCP1をコードする遺伝子(遺伝子の一部であってもよい)を、ベクターを用いて適当な宿主に導入し、得られた組換え細胞内で発現させることにより調製される。
免疫惹起作用を増強するために、特に前述したように、CLCP1の細胞外ドメイン(配列番号:3)(又はその一部)、好ましくは、FA58Cドメインを含む領域(配列番号:4)を、GST、βガラクトシダーゼマルトース結合タンパク、又はヒスチジン(His)タグ等との融合タンパク質として発現させた抗原を用いることもできる。このような融合タンパク質は、汎用的な方法により簡便に精製することができる。

0034

必要に応じて免疫を繰り返し、十分に抗体価が上昇した時点で採血し、遠心処理などによって血清を得る。得られた抗血清アフィニティー精製し、ポリクローナル抗体とする。
一方、モノクローナル抗体については次の手順で調製することができる。まず、上記と同様の手順で免疫操作を実施する。必要に応じて免疫を繰り返し、十分に抗体価が上昇した時点で免疫動物から抗体産生細胞摘出する。次に、得られた抗体産生細胞と骨髄腫細胞とを融合してハイブリドーマを得る。続いて、目的タンパク質に対して高い特異性を有する抗体を産生するクローンを選択する。このハイブリドーマをモノクローン化した後、選択されたクローンの培養液を精製することによって目的の抗体が得られる。一方、ハイブリドーマを所望数以上に増殖させた後、これを動物(例えばマウス)の腹腔内に移植し、腹水内で増殖させて腹水を精製することにより目的の抗体を取得することもできる。上記培養液の精製又は腹水の精製には、プロテインG、プロテインA等を用いたアフィニティークロマトグラフィーが好適に用いられる。また、抗原を固相化したアフィニティークロマトグラフィーを用いることもできる。更には、イオン交換クロマトグラフィーゲルろ過クロマトグラフィー硫安分画、及び遠心分離等の方法を用いることもできる。これらの方法は単独ないし任意に組み合わされて用いられる。

0035

本発明の抗体の一形態はヒト化抗体である。ここでの「ヒト化抗体」とは、ヒトの抗体に構造を類似させた抗体のことをいい、抗体の定常領域のみをヒト抗体のものに置換したヒト型キメラ抗体、及び定常領域及び可変領域に存在するCDR(相補性決定領域)以外の部分をヒト抗体のものに置換したヒト型CDR移植(CDR-grafted)抗体(P.T.Johons et al., Nature 321,522(1986))を含む。ヒト型CDR移植抗体抗原結合活性を高めるため、マウス抗体と相同性の高いヒト抗体FRを選択する方法、相同性の高いヒト型化抗体を作製する方法、ヒト抗体にマウスCDRを移植した後さらにFR領域のアミノ酸を置換する方法の改良技術もすでに開発され(米国特許第5585089号、米国特許第5693761号、米国特許第5693762号、米国特許第6180370号、欧州特許第451216号、欧州特許第682040号、特許第2828340号などを参照)、本発明のヒト型抗体の作製に利用することもできる。
ヒト型キメラ抗体は例えば、上記のH鎖可変領域の構造及び/又はL鎖可変領域の構造を有する抗体の定常領域をヒト抗体の定常領域に置換することにより作製することができる。ヒト抗体の定常領域としては公知のものを採用することができる。以下に、ヒト型キメラ抗体の作製方法の一例を示す。
まず、本発明の抗体を産生するハイブリドーマよりmRNAを抽出し、常法に従ってcDNAを合成する。合成したcDNAをベクターに組み込みcDNAライブラリーを構築する。このcDNAライブラリーから、H鎖遺伝子フラグメント及びL鎖遺伝子フラグメントをプローブとして用いることにより、H鎖遺伝子及びL鎖遺伝子を含有するベクターを選択する。選択されたベクターの挿入配列シークエンシングを行うことにより、H鎖可変領域及びL鎖可変領域の遺伝子の配列が決定される。このようにして得られた配列データを基にH鎖可変領域をコードするDNAを化学合成、生化学的切断/再結合等により作製する。得られたH鎖可変領域をコードするDNAを、ヒトH鎖定常領域をコードするDNAとライゲーションして発現用ベクター組込むことによりH鎖発現ベクターを作製する。発現ベクターとしては例えばSV40virus basedベクター、EB virus basedベクター、BPVパピローマウイルス)basedベクターなどを用いることができるが、これらに限定されるものではない。一方、同様の方法によりL鎖発現ベクターを作製する。これらH鎖発現ベクター及びL鎖発現ベクターにより宿主細胞共形転換する。宿主細胞としてはCHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣)(A.Wright& S.L.Morrison, J.Immunol.160, 3393-3402 (1998))、SP2/0細胞(マウスミエローマ)(K.Motmans et al., Eur.J.Cancer Prev.5,512-519 1996),R.P.Junghans et al.,Cancer Res.50,1495-1502 (1990))などが好適に用いられる。また、形質転換にはリポフェクチン法(R.W.Malone et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,6077 (1989), P.L.Felgner et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84,7413 (1987)、エレクトロポレーション法リン酸カルシウム法(F.L.Graham & A.J.van der Eb,Virology 52,456-467(1973))、DEAE-Dextran法等が好適に用いられる。
形質転換体を培養した後、形質転換体の細胞内又は培養液よりヒト型キメラ抗体を分離する。抗体の分離、精製には、遠心分離、硫安分画、塩析限外濾過、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィーなどの方法を適宜組み合わせて利用することができる。

0036

一方、ヒト型CDR移植抗体は例えば以下の方法により作製することができる。まず、上記キメラ抗体の製造方法の欄で述べた方法により、マウス抗ヒトCLCP1抗体のH鎖可変領域及びL鎖可変領域のアミノ酸配列及びそれをコードする塩基配列を決定する。併せて各CDR領域のアミノ酸配列を決定する。

0037

次に、CDR領域を挟んで存在するFR(フレームワーク領域)を選択する。FRの選択には、およそ三つの方法が採用できる。1つめの方法は、NEWM、REIなど既に三次元構造の明らかとなったヒト抗体フレームを用いる方法である(Riechmann L. et al., Nature 332, 323-3Z7 (1988); Tempst, PR. et al., Protein Engineering 7, 1501-1507 (1994); Ellis JH. et al., J. Immunol 155, 925-937 (1995))。2つめの方法は、目的のマウス抗体可変領域と最も高いホモロジーを持つヒト抗体可変領域をデータベースより選択し、そのFRを用いる方法である(Queen C. et al., Proc Natl Acad Sci USA 86, 10029-10033 (1989); Rozak MJ. et al., J Biol Chem 271, 22611-22618 (1996); Shearman CW. et al., J.Immunol 147, 4366-4373 (1991))。3つめの方法は、ヒト抗体のFRで最も共通に用いられるアミノ酸を選択する方法である(Sato K. et al., Mol Immunol 31, 371-381 (1994); Kobinger F. et al., Protein Engineering 6, 971-980 (1993); Kettleborough CA. et al., Protein Engineering 4, 773-783 (1991))。本発明ではこれらいずれの方法を用いることもできる。

0038

尚、選択されたヒトFRのアミノ酸配列を改変したアミノ酸配列であっても、最終的に得られるヒト型CDR移植抗体がヒトCLCP1に対する特異的結合性を有する限り、FRのアミノ酸配列として利用することができる。特に、選択されたヒトFRのアミノ酸の一部をCDRの由来となった抗体のFRのアミノ酸に変更した場合、抗体の特性が維持される可能性が高い。改変されるアミノ酸の数は好ましくはFR全体の30%以下であり、更に好ましくはFR全体の20%以下であり、更に好ましくはFR全体の10%以下である。
次に、これらいずれかの方法により選択したFRと上記CDRとを組み合わせることによりH鎖可変領域及びL鎖可変領域をコードするDNAを設計する。この設計を基にH鎖可変領域をコードするDNAとL鎖可変領域をコードするDNAを化学合成、生化学的切断/再結合等によりそれぞれ作製する。そしてH鎖可変領域をコードするDNAを、ヒト免疫グロブリンH鎖定常領域をコードするDNAとともに発現ベクターに組み込みH鎖発現ベクターを構築する。同様に、L鎖可変領域をコードするDNAを、ヒト免疫グロブリンL鎖定常領域をコードするDNAとともに発現ベクターに組み込みL鎖発現ベクターを構築する。発現ベクターとしては例えばSV40virus basedベクター、EB virus basedベクター、BPV(パピローマウイルス)basedベクターなどを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
以上の方法で作製されたH鎖発現ベクター及びL鎖発現ベクターにより宿主細胞を共形質転換する。宿主細胞としてはCHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣)(A.Wright& S.L.Morrison, J.Immunol.160, 3393-3402 (1998))、SP2/0細胞(マウスミエローマ)(K.Motmans et al., Eur.J.Cancer Prev.5,512-519 (1996),R.P.Junghans et al.,Cancer Res.50,1495-1502 (1990))などが好適に用いられる。また、形質転換にはリポフェクチン法(R.W.Malone et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,6077 (1989), P.L.Felgner et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84,7413 (1987)、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法(F.L.Graham & A.J.van der Eb,Virology 52,456-467(1973))、DEAE-Dextran法等が好適に用いられる。
形質転換体を培養した後、形質転換体の細胞内又は培養液よりヒト型CDR移植抗体を分離する。抗体の分離、精製には、遠心分離、硫安分画、塩析、限外濾過、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィーなどの方法を適宜組み合わせて利用することができる。

0039

本発明の抗体には、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、scFv、dsFv、Diabody及びsc(Fv)2等の、抗体の機能的断片も含まれる。また、これら機能的断片の多量体(例えば、ダイマートリマーテトラマーポリマー)も、本発明の抗体に含まれる。
Fabは、IgGをシステイン存在下パパイン消化することにより得られる、L鎖とH鎖可変領域、並びにCH1ドメイン及びヒンジ部の一部からなるH鎖フラグメントとから構成される分子量約5万の断片である。本発明では、上記抗体をパパイン消化することにより得ることができる。また、上記抗体のH鎖の一部及びL鎖をコードするDNAを適当なベクターに組み込み、当該ベクターを用いて形質転換した形質転換体よりFabを調製することもできる。
Fab'は、後述のF(ab')2のH鎖間のジスルフィド結合を切断することにより得られる分子量が約5万の断片である。本発明では、上記抗体をペプシン消化し、還元剤を用いてジスルフィド結合を切断することにより得られる。また、Fab同様に、Fab'をコードするDNAを用いて遺伝子工学的に調製することもできる。
F(ab')2は、IgGをペプシン消化することにより得られる、L鎖とH鎖可変領域、並びにCH1ドメイン及びヒンジ部の一部からなるH鎖フラグメントとから構成される断片(Fab')がジスルフィド結合で結合した分子量約10万の断片である。本発明では、上記抗体をペプシン消化することにより得られる。また、Fab同様に、F(ab')2をコードするDNAを用いて遺伝子工学的に調製することもできる。
Fvは、抗体を酵素、例えばパパインペプシンで処理し抗体断片を生成させるか、または、これら抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現できる(例えば、Co, M.S. et al., J. Immunol.(1994)152, 2968-2976、Better, M. & Horwitz, A. H. Methods in Enzymology(1989)178, 476-496、Plueckthun, A. & Skerra, A. Methods in Enzymology(1989)178, 476-496、Lamoyi, E., Methods in Enzymology(1989)121, 652-663、Rousseaux, J. et al., Methods in Enzymology(1989)121, 663-669、Bird, R. E. et al., TIBTECH(1991)9, 132-137参照)。
scFvは、H鎖可変領域とL鎖可変領域とからなるFvを、片方の鎖のC末端と他方のN末端とを適当なペプチドリンカーで連結し一本鎖化した抗体断片である。ペプチドリンカーとしては例えば柔軟性の高い(GGGGS(配列番号:23))3などを用いることができる。例えば、上記抗体のH鎖可変領域及びL鎖可変領域をコードするDNAとペプチドリンカーをコードするDNAを用いてscFv抗体をコードするDNAを構築し、これを適当なベクターに組み込み、当該ベクターを用いて形質転換した形質転換体よりscFvを調製することができる。
dsFvは、H鎖可変領域及びL鎖可変領域の適切な位置にCys残基を導入し、H鎖可変領域とL鎖可変領域とをジスルフィド結合により安定化させたFv断片である。各鎖におけるCys残基の導入位置は分子モデリングにより予測される立体構造に基づき決定することができる。本発明では例えば上記抗体のH鎖可変領域及びL鎖可変領域のアミノ酸配列から立体構造を予測し、かかる予測に基づき変異を導入したH鎖可変領域及びL鎖可変領域をそれぞれコードするDNAを構築し、これを適当なベクターに組み込み、そして当該ベクターを用いて形質転換した形質転換体よりdsFvを調製することができる。
尚、適当なリンカーを用いてscFv抗体、dsFv抗体などを連結させたり、ストレプトアビジンを融合させたりして抗体断片を多量体化することもできる。本発明の抗体(抗体断片を含む)に低分子化合物、タンパク質、標識物質などを融合又は結合させることにより、融合抗体又は標識化抗体を構成することができる。標識物質としては125I等の放射性物質、などを用いることができる。
Diabodyは、遺伝子融合により構築された二価(bivalent)の抗体断片を指す(Holliger P et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90: 6444-6448 (1993)、EP404,097号、WO93/11161号等)。Diabodyは、2本のポリペプチド鎖から構成されるダイマーであり、通常、ポリペプチド鎖は各々、同じ鎖中でVL及びVHが、互いに結合できない位に短い、例えば、5残基程度のリンカーにより結合されている。同一ポリペプチド鎖上にコードされるVLとVHとは、その間のリンカーが短いため単鎖可変領域フラグメントを形成することが出来ず二量体を形成するため、Diabodyは2つの抗原結合部位を有することとなる。Diabodyは、抗体を酵素、例えば、パパイン、ペプシンなどで処理し、抗体断片を生成させるか、又はこれら抗体断片をコードするDNAを構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させればよい(例えば、Co, M. S. et al., J. Immunol. (1994) 152, 2968-2976 ; Better, M. and Horwitz, A. H., Methods Enzymol. (1989) 178, 476-496 ; Pluckthun, A. and Skerra, A., Methods Enzymol. (1989) 178, 497-515 ; Lamoyi, E., Methods Enzymol. (1986) 121, 652-663 ; Rousseaux, J. et al., Methods Enzymol. (1986) 121, 663-669 ; Bird, R. E. and Walker, B. W., Trends Biotechnol. (1991) 9, 132-137参照)。
sc(Fv)2は、2つのVH及び2つのVLをリンカー等で結合して一本鎖にした低分子化抗体である(Hudson et al、J Immunol. Methods 1999;231:177-189)。sc(Fv)2は、例えば、scFvをリンカーで結ぶことによって作製できる。

0040

本発明の細胞障害作用を利用する場合は定常領域を結合した抗体を用いる。本発明の抗体には、isotypeのうちIgG1、IgG2、IgG3、IgG4が含まれる。抗体のisotypeは、定常領域 の構造によって決定される。IgG1、IgG2、IgG3、IgG4の各isotypeの定常領域は、それぞれ、Cγ1、Cγ2、Cγ3、Cγ4と呼ばれている。効果の程度に差はあるものの、それぞれの定常領域で、本発明の細胞障害作用を有する態様が実施可能である。なお、細胞障害効果の観点好ましい定常領域はIgG1である。

0041

(抗ヒトCLCP1抗体又はその一部をコードする核酸分子
本発明の別の局面は本発明の抗体をコードする核酸分子(以下、「本発明の核酸」ともいう)に関する。
本発明の核酸は化学合成、生化学的切断/再結合など常法で調製することができる。本発明の核酸は、これに限定されるものではないが、本発明の抗体の調製に利用される。

0042

(ベクター)
本発明の別の局面は、上記本発明の核酸を発現可能に保持するベクター(以下、「本発明のベクター」ともいう)、及び、該ベクターを有する形質転換細胞(以下、「本発明の形質転換細胞」ともいう)に関する。本発明の核酸又は当業者に周知のシグナル配列をつけた核酸(例えば実施例に記載の核酸を参照)を適当なベクターに組み込むことによって、宿主細胞内で本発明の抗体を発現させるために使用される発現ベクターを得ることができる。本発明の核酸を発現可能な状態で保持することができ、且つ保持した当該核酸を宿主細胞内で発現させることができる限り、任意のベクターを使用することができる。本発明の核酸のベクターへの挿入は、制限酵素及びDNAリガーゼを用いた方法(Molecular Cloning, Third Edition, 1.84, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)等、常法で行うことができる。使用するベクターの種類に応じて適切な宿主細胞が採用される。宿主細胞として例えばエッシュリヒア・コリ(Escherichia coli)等の細菌、サッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等の酵母、COS細胞、CHO細胞等の動物細胞を用いることができる。

0043

本発明の別の局面は、以下の工程(a)及び(b)を含む本発明の抗体の製造方法に関する。
(a)本発明の形質転換細胞を培養する工程;及び
(b)発現産物である抗体を分離・精製する工程;
本発明の核酸を保持させたベクターで宿主細胞を形質転換することによって得られる形質転換細胞を培養することにより、形質転換細胞内又は培養液中に本発明の抗体を発現させることができる。そして、当該発現産物を分離・精製すれば本発明の抗体を取得できる。分離・精製には、遠心分離、硫安分画、塩析、限外濾過、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィーなどの方法を適宜組み合わせればよい。

0044

(医薬組成物)
本発明の別の局面は、本発明の抗体および医薬的に許容される担体を含有する医薬組成物に関する。

0045

(抗体を含有する製剤及びその使用)
更なる局面として、本発明の抗体を含有するCLCP1を発現するがんの治療又は予防に使用するための薬剤、及び、それを用いた治療又は予防方法、CLCP1を発現するがん細胞の遊走・浸潤・転移・増殖阻害剤、細胞障害剤並びに、CLCP1を発現する腫瘍の治療又は予防に使用するための薬剤が提供される。
また、以下の(a)から(g)を提供する。
(a)ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の遊走阻害活性を有する抗体を含有する、がん細胞の遊走阻害剤
(b)ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の浸潤阻害活性を有する抗体を含有する、がん細胞の浸潤阻害剤
(c)ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の転移阻害活性を有する抗体を含有する、がん細胞の転移阻害剤
(d)ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の増殖阻害活性を有する抗体を含有する、がん細胞の増殖阻害剤
(e)ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の細胞障害活性を有する抗体を含有する、がん細胞の細胞障害剤
(f)ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の遊走阻害活性、浸潤阻害活性、転移阻害活性、増殖阻害活性及び細胞障害活性から選ばれる少なくとも1つの活性を有する抗体を含有する、腫瘍の治療又は予防に使用するための薬剤
(g)ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインを認識し、CLCP1を発現するがん細胞の遊走阻害活性、浸潤阻害活性、転移阻害活性、増殖阻害活性及び細胞障害活性から選ばれる少なくとも1つの活性を有する抗体を含有する、がんの治療又は予防に使用するための薬剤
ここでのがんの種類は、CLCP1を発現するがんであれば、特に限定されない。そのようながんの一例として、特に肺癌、リンパ節への転移がんを例示することができる。また、該がんの治療又は予防に使用するための薬剤は、遊走阻害、細胞浸潤阻害、転移阻害、細胞増殖阻害から選ばれる少なくとも1つの阻害効果および/又は細胞障害作用を有する。これらの製剤はがん転移に対して予防的に投与することもできる。

0046

抗体を含有する製剤に使用する抗CLCP1抗体は、CLCP1に対する特異的結合性を有する限り、その種類や由来などは特に限定されない。抗CLCP1抗体はポリクローナル抗体、オリゴクローナル抗体(数種〜数十種の抗体の混合物)、及びモノクローナル抗体のいずれでもよい。ポリクローナル抗体又はオリゴクローナル抗体として、好ましくは動物免疫して得たハイブリドーマ等からの抗体遺伝子の単離に基づき、遺伝子組み換え技術により組み換え抗体(ヒト化抗体、キメラ抗体)を発現させ、その精製抗体を使用できる。また、ファージディスプレイ技術などから得られる、完全なヒト可変領域をもつ、ヒト遺伝子組み換え抗体も用いることができる。さらに、抗CLCP1抗体が、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、scFv、dsFv、Diabody及びsc(Fv)2抗体などの抗体断片、又はその遺伝子組み換え体であってもよい。抗CLCP1抗体は、上述の方法に従って調製することができる。
CLCP1への特異的結合性を保持することを条件として、上述の方法に従って得られた抗体に種々の改変を施すことができる。本発明では、このような改変抗体を利用してもよい。

0047

本発明の抗体を含有するCLCP1を発現するがんの治療又は予防に使用するための薬剤、及び、CLCP1を発現するがん細胞の遊走・浸潤・転移・増殖阻害剤の製剤化は常法に従って行うことができる。製剤化する場合には、医薬的に許容される他の成分(例えば、担体、賦形剤崩壊剤緩衝剤乳化剤懸濁剤無痛化剤、安定剤、保存剤防腐剤、生理食塩水など)を含有させることができる。賦形剤としては乳糖デンプンソルビトール、D-マンニトール白糖等を用いることができる。崩壊剤としてはデンプン、カルボキシメチルセルロース炭酸カルシウム等を用いることができる。緩衝剤としてはリン酸塩クエン酸塩酢酸塩等を用いることができる。乳化剤としてはアラビアゴムアルギン酸ナトリウムトラガント等を用いることができる。懸濁剤としてはモノステアリン酸グリセリンモノステアリン酸アルミニウムメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースラウリル硫酸ナトリウム等を用いることができる。無痛化剤としてはベンジルアルコールクロロブタノール、ソルビトール等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコール、ジエチリ亜硫酸塩アスコルビン酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等を用いることができる。防腐剤としては塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等と用いることができる。

0048

製剤化する場合の剤型は特に限定されない。剤型の例は、錠剤散剤細粒剤顆粒剤カプセル剤シロップ剤注射剤外用剤、及び座剤である。
本発明の上記製剤の投与経路も特に限定されない。即ち、本発明の上記製剤はその形態に応じて経口投与又は非経口投与静脈内、動脈内、皮下、筋肉腹腔内注射標的細胞への直接導入など)によって対象(患者)に適用され得る。
本発明の上記製剤の投与量は症状、患者の年齢性別、及び体重などによって異なるが、当業者であれば適宜適当な投与量を設定することが可能である。例えば、成人(体重約60kg)を対象として一回当たりの有効成分量が約0.001〜約100000 mgとなるよう投与量を設定することができる。投与スケジュールとしては例えば一日一回〜数回、二日に一回、三日に一回、一週間に1回、一月に1回などを採用できる。投与スケジュールの設定においては、患者の病状や薬剤の効果持続時間などを考慮することができる。

0049

(免疫学的手法)
本発明の別の局面は、以下の工程(a)及び(b)を含む、免疫学的手法に関する。
(a)本発明の抗体と、分離された細胞または組織を接触させる工程;及び
(b)該細胞または該組織におけるCLCP1の発現を検出する工程;
免疫学的手法としては、例えば、免疫組織化学染色法ELISA法ラジオイムノアッセイ、FCM、免疫沈降法、イムノブロッティング等が挙げられる。例えば、上記免疫学的手法のうち免疫組織化学的染色法によって、細胞または組織等の生体組織におけるCLCP1の発現量を検出する手順は、一般に後述の手順(1)〜(10)で実施される。
該免疫学的手法は、本発明の抗体を含有する、細胞または組織におけるCLCP1の発現量を免疫学的手法により検出するために用いられる薬剤と言い換えることができる。また、該免疫学的手法は、例えば、以下に述べる肺癌の診断方法に使用することができる。
細胞または組織としては、特に制限はないが、がん細胞、がん組織、がんの可能性がある細胞又は組織等が例示できる。

0050

(免疫学的手法によりCLCP1を検出するための薬剤)
本発明の別の局面は、本発明の抗体を含有する、細胞または組織におけるCLCP1の発現を免疫学的手法により検出するために用いられる薬剤に関する。
該薬剤は、当業者に周知の担体を含むことができる。また、該薬剤は、例えば、以下に述べる肺癌の診断方法に使用することができる。

0051

(キット)
本発明の別の局面は、本発明の抗体を含有する、細胞または組織におけるCLCP1の発現を免疫学的手法により検出するために用いられるキットに関する。すなわち、本発明の抗体をはじめとして、標識の検出に必要な基質、強陽性対照陰性対照、あるいは試料希釈や洗浄に用いる緩衝液等を組み合わせてキットとすることができる。
また、該キットは、例えば、以下に述べる肺癌の診断方法に使用することができる。

0052

(ヒト肺がん浸潤の度合いあるいは転移状態の免疫染色による診断)
本発明の更なる局面は、本発明の抗体が、肺がん、特に良好な肺癌への染色性を示した事実に基づき、がんの浸潤の部位、また、その度合い(浸潤度)あるいは転移状況、その部位を診断する方法を提供する(以下、「本発明の診断方法」ともいう)。本発明の診断方法は、本発明の抗体を、分離された病理組織に接触させ、免疫学的手法によって該病理組織におけるCLCP1の発現を検出する工程を含む。
本明細書において、「CLCP1の発現を検出する」とは、CLCP1を発現する細胞当たりのCLCP1の発現量、又は、CLCP1を発現する細胞の割合を検出することを意味し、細胞が癌であるおそれとCLCP1の発現、または、組織へのがんの浸潤度あるいは転移している部位とCLCP1の発現(免疫学的手法による染色強度、および、強染色される癌細胞の割合とも表現することができる)との間に強い関連性がある。
本発明の診断法によれば転移している状況・部位、あるいは、新たな組織に浸潤していくがん細胞の存在様式が視覚的にとらえることができる。
以下、本発明の診断方法を詳述する。
まず、生体よりがんの浸潤、転移が疑われる組織を分離する。
当該方法で得られる情報(検出結果)は、病理組織で肺癌細胞が浸潤の度合いあるいは転移している部位を判定するために利用される。
ここで、後述の実施例に示すように、浸潤度の異なる複数の肺癌組織、肺がん腫を、抗CLCP1抗体を用いて免疫染色したところ、染色性に顕著な違いを認め、染色性の高い部位が病理学的所見の癌部と一致していた。即ち、肺癌細胞の浸潤度・転移状況とCLCP1の発現量、細胞のCLCP1発現頻度との間に強い関連性が存在する。本発明の診断法によれば転移している部位及びその状況、あるいは、新たな組織に浸潤していくがん細胞の存在様式が視覚的にとらえることができる。即ち、肺癌細胞の浸潤度判定用マーカーとしてもCLCP1が有効であることが判明した。
さらに、肺癌では正常肺に比較して有意にCLCP1発現が高い(染色性強度、組織中の細胞の発現頻度)。
この知見に基づき本発明の他の一態様では、上記ステップの検出結果を病理組織の悪性度を判定するために利用した方法、即ち癌細胞の悪性度を判定する方法が提供される。

0053

本発明の方法による検出結果は癌の診断に有益である。例えば、癌患者を対象として上記方法を実施して得られた情報は、当該患者の病態の評価ないし把握、治療効果の評価などに利用できる。例えば、癌の治療と並行して本発明の方法を実施すれば、結果として得られる情報を基に治療効果を評価することができる。具体的には、薬剤投与後に本発明の方法を実施することで病理組織における染色性の変化を調べ、浸潤度あるいは転移している部位の増減推移から治療効果を判定することができる。このように本発明の方法を治療効果のモニターに利用してもよい。
一方、患者以外の者、即ち癌が認定されていない者を対象とした場合に得られた情報は、癌浸潤あるいは転移に関して罹患の有無の判定評価等に利用できる。本発明の方法によれば染色性という客観性に優れた指標を基に癌の診断を行えることから、その価値は非常に高いといえる。
対象(被検者、生体、患者)がヒトである場合、癌の診断は、通常、医師(医師の指示を受けた者も含む。以下同じ。)によって行われるが、本発明の診断方法によって得られる、病理組織におけるCLCP1の発現量に関するデータは、医師による診断に役立つものである。よって、本発明の診断方法は、医師による診断に役立つデータを収集し、提示する方法とも表現しうる。
本発明の診断方法の対象となるがんの種類は特に制限されないが、例えば、腎がん、膀胱腫瘍、前立腺がん、膵臓がん、胃がん、大腸がん、乳がん又は肺癌等、特に好ましくは肺癌が挙げられる。

0054

以下、本発明の構成を詳細に説明する。
対象(被検者、生体)から分離された細胞を用意する。癌患者に限らず、健常者(癌のおそれがある者を含む)をここでの対象とすることもできる。バイオプシー生検)で採取した、対象の臓器や組織の一部を被検癌細胞として本発明の方法に供することができる。
本発明において「病理組織」とは、本発明の方法における検出をする際の試料(対象)となる組織である。病理組織は生体より分離される。即ち、生体より分離された状態の病理組織に対して本発明が適用される。「生体より分離された」とは、病理組織が存在する生体組織の一部を摘出することによって、被検癌細胞がその由来の生体と完全に隔離されている状態をいう。
抗体または抗体断片を接触させる際には、通常、病理組織は生体で存在していた状態、即ち周囲の細胞と結合した状態で(組織片として)調製され、本発明の方法に使用される。尚、病理組織を周囲の細胞から分離(単離)した後に本発明の方法に使用してもよい。なお、ここで、「接触」させるとは、抗体を含有した溶液にがん細胞又はがん組織を浸す、或いはがん細胞又はがん組織に抗体を含有した溶液を十分に滴下、或いは噴霧し、該抗体が、がん細胞またはがん組織中のCLCP1を認識できうる生理条件下におくことをいう。

0055

検出結果を病理組織の浸潤度あるいは転移している部位の判定に利用する場合、病理組織として、他の診断法によって癌であると判断される細胞、癌である蓋然性が高いと判断される細胞、又は癌である可能性を有する細胞が好適 に採用される。好ましくは、他の診断法によって癌であると判断される細胞、又は癌である蓋然性が高いと判断される細胞が用いられる。ここでの他の診断法としては例えば、X線造影検査内視鏡検査超音波検査、CT検査MRI検査、PET検査腫瘍マーカーを用いた診断法などが該当する。通常は、これらの一つ以上によって癌が疑われる組織から被検癌細胞が採取される。

0056

次に、用意した被検病理組織を対象としてCLCP1を検出する。「CLCP1を検出する」とは、CLCP1が発現しているか否か(発現の有無)を調べること、又はCLCP1の発現量を絶対量として又は相対量として把握することをいう。ここでの相対量の基準を例えば、浸潤度あるいは転移している部位に応じて用意した標準試料のCLCP1量にすることができる。本発明において「標準試料」とは、癌の浸潤度あるいは転移している部位に応じたCLCP1を発現する試料である。例えば、既に癌の浸潤度あるいは転移している部位が特定されている病理組織を、本発明の標準試料とすることができる。また、癌に罹患していない組織も、本発明の標準試料とすることができる。
通常は、病理組織において、CLCP1の発現の有無、及び発現している場合にはその量が調べられることになる。CLCP1を検出する際に厳密にCLCP1量を定量することは必須でない。例えば、病理組織の浸潤度あるいは転移している部位を判定するためにCLCP1を検出する場合には、浸潤度あるいは転移している部位の指標となる標準試料のCLCP1量と比較することによって病理組織の浸潤度あるいは転移している部位を判定することが可能な程度にCLCP1量を測定できればよい。
また、本発明の診断方法によれば、分離された病理組織の一部が、周囲の病理組織よりも染色強度が強い場合、該病理組織は癌のおそれがあると診断される。
ここでの癌の種類は、特に限定されない。そのような癌の例として、腎がん、膀胱腫瘍、前立腺がん、膵臓がん、胃がん、大腸がん、乳がん等、好ましくは肺癌を例示することができる。後述する実施例において、肺癌組織標本を本発明の抗体で免疫染色したところ、該肺癌組織標本中の肺癌部位は、該肺癌組織標本中の非肺癌部位よりも強く染色されることが明らかになった。
特に、免疫学的手法(例えば免疫組織化学的染色法、ELISA法、ラジオイムノアッセイ、FCM、免疫沈降法、イムノブロッティング等)でCLCP1を検出することが好ましい。免疫学的手法では抗CLCP1抗体が使用され、当該抗体の結合性(結合量)を指標としてCLCP1タンパク質が検出される。免疫学的検出法によれば迅速で感度のよい検出が可能となる。また、操作も簡便である。
免疫組織化学的染色法によれば、迅速に且つ感度よくCLCP1を検出できる。また、操作も簡便である。従って、CLCP1の検出に伴う被検者(患者)への負担も小さくなる。
免疫組織化学的染色法では通常、まず被検病理組織に抗CLCP1抗体を接触させるステップを実施し、その後、抗CLCP1抗体の結合量を調べる。具体的には、以下に示す免疫組織化学的染色法に従って本発明の方法を実施することができる。

0057

生体組織の免疫組織化学的染色は一般に以下の手順(1)〜(10)で実施される。尚、生体組織の免疫組織化学的染色法については様々な文献及び成書を参照することができる(例えば、「酵素抗体法改訂第3版」、渡辺慶一、中根一編集、学際企画)。
(1)固定・パラフィン包埋
外科的に生体より採取した組織をホルマリンパラフォルムアルデヒド無水エチルアルコール等によって固定する。その後パラフィン包埋する。一般にアルコール脱水した後キシレンで処理し、最後にパラフィン包埋する。パラフィンで包埋された標本を所望の厚さ(例えば3〜5μm厚)に薄切し、スライドガラス上に伸展させる。尚、パラフィン包埋標本に代えてアルコール固定標本、乾燥封入した標本、凍結標本などを用いる場合もある。
(2)脱パラフィン
一般にキシレン、アルコール、及び精製水で順に処理する。
(3)前処理(抗原賦活
必要に応じて抗原賦活のために酵素処理加熱処理及び/又は加圧処理等を行う。
(4)内因性ペルオキシダーゼ除去
染色の際の標識物質としてペルオキシダーゼを使用する場合、過酸化水素水で処理して内因性ペルオキシダーゼ活性を除去しておく。
(5)非特異的反応阻害
切片ウシ血清アルブミン溶液(例えば1%溶液)で数分から数十分程度処理して非特異的反応を阻害する。尚、ウシ血清アルブミンを含有させた抗体溶液を使用して次の一次抗体反応を行うこととし、この工程を省略してもよい。
(6)一次抗体反応
適当な濃度に希釈した抗体をスライドガラス上の切片に滴下し、その後数十分〜数時間反応させる。反応終了後リン酸緩衝液など適当な緩衝液で洗浄する。
(7)標識試薬の添加
標識物質としてペルオキシダーゼが頻用される。ペルオキシダーゼを結合させた2次抗体をスライドガラス上の切片に滴下し、その後数十分〜数時間反応させる。反応終了後、リン酸緩衝液など適当な緩衝液で洗浄する。
(8)発色反応
トリス緩衝液にDAB(3,3'-diaminobenzidine)を溶解する。続いて過酸化水素水を添加する。このようにして調製した発色用溶液を数分間(例えば5分間)切片に浸透させ、発色させる。発色後、切片を水道水で十分に洗浄し、DABを除去する。
(9)核染色
マイヤーのヘマトキシリンを数秒〜数十秒反応させて核染色を行う。流水で洗浄し色出しする(通常、数分間)。
(10)脱水、透徹、封入
アルコールで脱水した後、キシレンで透徹処理し、最後に合成樹脂グリセリンゴムシロップなどで封入する。

0058

免疫学的染色法に使用する抗CLCP1抗体は、CLCP1に対する特異的結合性を有する限り、その種類や由来などは特に限定されない。抗CLCP1抗体はポリクローナル抗体、オリゴクローナル抗体(数種〜数十種の抗体の混合物)、及びモノクローナル抗体のいずれでもよい。ポリクローナル抗体又はオリゴクローナル抗体としては、動物免疫して得た抗血清由来のIgG画分のほか、抗原によるアフィニティー精製抗体を使用できる。抗CLCP1抗体が、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、scFv、dsFv、Diabody及びsc(Fv)2抗体などの抗体断片であってもよい。
抗CLCP1抗体は、上述の方法に従って調製することができる。
CLCP1への特異的結合性を保持することを条件として、上述の方法に従って得られた抗体に種々の改変を施すことができる。本発明では、このような改変抗体を利用してもよい。

0059

抗CLCP1抗体として標識化抗体を使用すれば、標識量を指標に結合抗体量を直接検出することが可能である。従って、より簡易な方法となる。その反面、標識物質を結合させた抗CLCP1抗体を用意する必要があることに加えて、検出感度が一般に低くなるという問題点がある。そこで、標識物質を結合させた二次抗体を利用する方法、二次抗体と標識物質を結合させたポリマーを利用する方法など、間接検出方法を利用することが好ましい。ここでの二次抗体とは、抗CLCP1抗体に特異的結合性を有する抗体であって例えばウサギ抗体として抗CLCP1抗体を調製した場合には抗ウサギIgG抗体を使用できる。ウサギやヤギ、マウスなど様々な種の抗体に対して使用可能な標識二次抗体が市販されており、本発明で使用する抗CLCP1抗体に応じて適切なものを適宜選択して使用することができる。

0060

標識物質には、ペルオキシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼマイクロペルオキシダーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、フルオレセインイソチオシアネートFITC)、ローダミンイソチオシアネートRITC)、アルカリホスファターゼビオチン、及び放射性物質の中から任意に選択されるものが好適に用いられる。特に、ビオチンを標識物質として用いてアビジンペルオキシダーゼを反応させる方法によれば高感度の検出が可能である。

0061

上記本発明の抗体をここでの抗CLCP1抗体として利用してもよい。具体的には例えば、本発明者らが取得に成功した抗体を利用することができる。後述の実施例に示すように、取得に成功した抗体の中で特にFA19-1抗体等を使用した場合、浸潤あるいは転移している異なる癌を明確に染め分けることができた。従って、癌細胞(例えば、肺癌細胞)の浸潤あるいは転移している部位を判定する方法において当該抗体は特に利用価値が高い。

0062

さらに、本発明の更なる局面は、がんの予後を診断する方法もまた提供する(以下、「本発明の予後診断方法」ともいう)。本発明の予後診断方法は、医師による予後診断に役立つデータを収集し、提示する方法とも表現しうる。
本発明の予後診断方法の対象となるがんの種類は特に制限されないが、例えば、腎がん、膀胱腫瘍、前立腺がん、膵臓がん、胃がん、大腸がん、乳がん又は肺癌等、特に好ましくは肺癌が挙げられる。
本発明の予後診断方法は、本発明の抗体を、分離された病理組織に接触させ、免疫学的手法によって該病理組織におけるCLCP1の発現を検出する工程を含む。当該工程の詳細は、上記の本発明の診断方法の例による。
本発明の予後診断方法では、分離された病理組織の組織染色強陽性症例群の生存率は、組織染色弱陽性・陰性症例群の生存率より低いと診断される。
例えば、カプラン・マイヤー(Kaplan - Meier)分析法における生存率の術後1年(12か月)経過時点で、組織染色強陽性症例群の生存率が73%であるのに対し、組織染色弱陽性・陰性症例群が93%であり、術後3年(36か月)経過時点で、組織染色強陽性症例群55%、組織染色弱陽性・陰性症例群90%と診断される。
ここで、組織染色強陽性とは、図37B上のように、分離された病理組織における細胞の細胞膜が明瞭に描出される(細胞膜の輪郭が顕微鏡下で視認できる)染色結果を意味し、組織染色弱陽性とは、図37B下のように、分離された病理組織における細胞の細胞膜が不明瞭にしか描出されない(細胞膜の輪郭が顕微鏡下で視認できない)染色結果を意味し、組織染色陰性とは、分離された病理組織における細胞の細胞膜が全く描出されない染色結果を意味する。
また、本発明は、本発明の抗体を含有する、上記予後診断方法に用いるためのキットや薬剤もまた提供するものである。

0063

(スクリーニング方法)
本発明の別の局面は、以下の工程(a)から(c)を含む、癌細胞の増殖、浸潤、遊走、若しくは、転移を阻害する候補物質、又は、がん細胞に細胞障害活性を有する候補物質のスクリーニング方法に関する。
(a)被験物質をヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインと接触させる工程;
(b)ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインと被験物質との結合活性を検出する工程;及び
(c)ヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインと結合する被験物質を選択する工程;
各工程は、上述した技術または公知の技術を用いて実施される。

0064

本発明のスクリーニング方法において利用することができる候補物質には、精製蛋白質(抗体を含む)、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成ペプチドのライブラリー、DNAまたはRNAライブラリー(アプタマー、siRNAなど機能性核酸を含む)、細胞抽出液細胞培養上清、及び合成低分子化合物のライブラリー等が挙げられるが、これらに制限されない。

0065

本発明のスクリーニング方法によって選択されるヒトCLCP1抗原の細胞外ドメインと結合する被験物質は、CLCP1を発現するがんの治療又は予防に使用するための薬剤、及び、がん細胞の増殖・遊走・浸潤・転移阻害剤の候補物質、又は、がん細胞に細胞障害活性を有する候補物質となる。即ち、本発明は、本発明のスクリーニングによって選択された物質を有効成分として含有するCLCP1を発現するがんの治療又は予防に使用するための薬剤、及び、がん細胞の増殖・遊走・浸潤・転移阻害剤、又は、がん細胞の細胞障害剤を提供する。また本発明は、本発明のスクリーニング方法によって選択された物質の、CLCP1を発現するがんの治療又は予防に使用するための薬剤、及び、がん細胞の増殖・遊走・浸潤・転移阻害剤、又は、がん細胞の細胞障害剤の製造における使用に関する。本発明のスクリーニング法により単離される物質を、CLCP1を発現するがんの治療又は予防に使用するための薬剤として用いる場合には、公知の製剤学的製造法により製剤化して用いることができる。例えば、薬理学上許容される担体または媒体(生理食塩水、植物油、懸濁剤、界面活性剤、安定剤など)とともに患者に投与する。投与は、物質の性質に応じて、経皮的、鼻腔内的、経気管支的、筋内的、静脈内、または経口的に行われる。投与量は、患者の年齢、体重、症状、投与方法等により変動するが、当業者であれば適宜適当な投与量を選択することができる。
具体的な本発明の一例を以下に実施例として示すが、本発明の範囲はこれらの実施例に記載された態様に限定されるものではない。
なお本明細書において引用されたすべての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。

0066

[実施例1]ヒトCLCP1のcDNA取得
NCBIESTデータベースからCLCP1に対応するESTを選択し、3’側は3’-RACEにて確定し、ヒトCLCP1全長のcDNA配列を決定して、データベースに登録した(GenBankデータベース Accession No.:AB073146 、Koshikawa K, et al Oncogene 21: 2822-2828 、2002)。このヒトCLCP1のcDNA配列(GenBankデータベース Accession No.: AB073146 (NM_080927と同一配列))に基づいて、このORF開始点(364番目)直前の336〜356番目の塩基配列(5’-CTATGCAGGCAGACTGCCGG C-3’(配列番号:24))に基づき、5'側末端にHindIII認識配列(AAGCTT)を付加し、読み枠の異なるATG(下線部)からの翻訳開始を防止するためにATG =>TTG変異を加えた(下線部)プライマー:5’-CCCAAGCTTTGCAGGCAGAC TGCCGGC-3’(配列番号:25))、及び終止コドン直前の2664 〜 2688番目の塩基配列の相補配列にKpnI認識部位(GGTACC)を5'側末端に付加したプライマー5'- CGAGGTACCAAGGATTTCTTTAAAAACATCACAT -3'(配列番号:26))を作製した。このプライマーとRNAeasy kit(Qiagen社)を用いて調整した正常肺組織由来RNAを用いてRT-PCRを行い、ヒトCLCP1のcDNAを増幅し、PCR産物クローニングベクターpBSSKII(Stratagene)のHindIII-KpnI間にクローニングし塩基配列を確認した(付加配列を含めて約2362bp、翻訳領域2331bp, 777コドン(CLCP1 HindIII-KpnI))。塩基配列の確認は、オートシークエンサー(アプライドバイオシステム社製)を用いた。配列確認後に、CLCP1をHindIII/KpnIで切り出し、Michigan大学医学部N Inohara博士から提供されたHA-tag蛋白発現用ベクターpcDNA3-HAのHindIII-KpnI間に挿入し、HA-tag付加された全長CLCP1発現ベクターpcDNA3-CLCP1-HAを得た。

0067

[実施例2]ヒトCLCP1を発現する細胞の構築
ヒトCLCP1全長(アミノ酸位置1〜775)、ヒトCLCP1細胞外領域全長(アミノ酸位置1〜526)を動物細胞に発現させるためのベクターは、CMVプロモータで制御され、IRES配列により目的遺伝子とPuromycin-EGFPfusion proteinが同時に発現するpQCXIPGを用いた。一方、ヒトFA58Cドメインを含むヒトCLCP1部分長(アミノ酸位置284〜526)を動物細胞に発現させるためのベクターは上記pQCXIPGのマルチクローニングサイト上流にChicken egg white Lysozymeの分泌シグナル配列(アミノ酸配列:MRSLLILVLCFLPLAALG|AAA(配列番号:27)、遺伝子配列:ATGAGGTCTTTGCTAATCTTGGTGCTTTGCTTCCTGCCCCTGGCTGCTCTGGGG|GCGGCCGCC(配列番号:28)。「|」は、シグナル配列と構造蛋白質との境界を示す)を付加し、導入遺伝子翻訳産物を細胞外に強制分泌させることを可能にするベクター(lyssig-pQCXIPG)を用いた。pQCXIPG及びlyssig-pQCXIPGは、発明者らが「BD Retro-XTM Q Vectors」のpQCXIPをベースとして改変したベクターである。
目的遺伝子のPCRによる増幅は、すべて上記pcDNA3-CLCP1-HAを鋳型としてKOD-Plus-(TOYOBO)を用いて行った。
ヒトCLCP1全長は、5’Primer:5’-AATAGCGGCCGCACCATGGCGAGCCGGGCGGTG-3'(配列番号:29、下線部はNotIサイト)と、3’Primer:5'-ACGCGTCGACAAGGATTTCTTTAAAAACATCACATTC-3’(配列番号:30、下線部はSalIサイト)を用いて増幅したPCR産物(サイクル[99℃ 30秒、61℃ 30秒、68℃ 2分]を34サイクル)、ヒトCLCP1細胞外領域全長は、5’Primer:5’-AATAGCGGCCGCACCATGGCGAGCCGGGCGGTG-3'(配列番号:29、下線部はNotIサイト)と、3’Primer:5'−ACGCGTCGACTACATCTTTGGTTACATTTGGAG-3’(配列番号:31、下線部はSalIサイト)を用いて増幅したPCR産物(サイクル[99℃ 30秒、61℃ 30秒、68℃ 2分]を34サイクル)をそれぞれ制限酵素NotIとSalIで消化した断片をpQCXIPGのNotI-XhoIサイトへ導入し、発現ベクターpQCXIPG-fullとpQCXIPG-ECを構築した。一方、FA58Cドメインを含むヒトCLCP1部分長は、5’Primer:5’-AATAGCGGCCGCTCTTTTTACATTTAAGACAAGTGG-3'(配列番号:32、下線部はNotIサイト)と、3’Primer:5'-ACGCGTCGACAAGGATTTCTTTAAAAACATCACATTC-3’(配列番号:30、下線部はSalIサイト)を用いて増幅したPCR産物(サイクル[99℃ 30秒、61℃ 30秒、68℃ 2分]を34サイクル)を制限酵素NotIとSalIで消化した断片をlyssig-pQCXIPGのNotI-XhoIサイトへ導入し、発現ベクターpQCXIPG-FAを構築した。
抗原発現細胞株を樹立には、Pantropic Retroviral Expression System(Clontech;K1063-1)を用いた。Collagen-coated 100mm dishに80〜90%コンフルエント状態のGP2-293(Clontech;K1063-1)を準備し、Lipofectamine 2000を用いて上記構築した発現ベクター(pQCXIPG-fullもしくはpQCXIPG-ECもしくはpQCXIPG-FA)とpVSV-G(Clontech;K1063-1)各11.2μgずつをco-transfectionした。48時間後、ウイルス粒子を含む上清を回収し、超遠心(18,000rpm, 1.5h, 4℃)によりウイルス沈殿させ、その沈殿物を30μLのTNE(50mM Tris-HCl [pH 7.8], 130mM NaCl, 1mMEDTA)で懸濁し、レトロウイルスベクター濃縮液を調製した。
レトロウイルスベクター濃縮液5μLを8μg/mLのHexadimethrine bromide(SIGMA;H-9268)を含んだ150μLのDMEM(SIGMA;D5796)-10%FBSで希釈し、ウイルス粒子入り培地を調製した。96穴マイクロプレートに約40%コンフルエントの状態になるように準備した293Tの培地を、調製したウイルス粒子入りの培地と交換することにより、pQCXIPG-fullもしくはpQCXIPG-ECもしくはpQCXIPG-FAを遺伝子導入した。遺伝子導入後、5μg/mLのPuromycin(SIGMA;P-8833)を含むDMEM(SIGMA;D5796)-10%FBSで拡大培養し、抗原発現細胞株(hCLCP1-full/293T、hCLCP1-EC/293T、hCLCP1-FA/293T)を樹立した。

0068

[実施例3]免疫用抗原の調製
樹立した上記発現細胞株(hCLCP1-EC/293T、hCLCP1-FA/293T)をDMEM-10%FBS(5μg/mL puromycin)もしくはCD293(Invitrogen)で培養した上清を約1L回収し、そこからmyc-tag抗体を化学修飾した担体を充填したアフニティカラム、もしくは、TALON Purification Kit(Clontech;K1253-1)を用いて、myc-His Tag付きのリコンビナント蛋白質を精製後、PBSで透析し、SDS-PAGE及びウェスタンブロットにて精製蛋白質を確認した。プロテインアッセイキットII(BioRad;500-0002JA)を用いて蛋白質濃度を決定し、免疫原用抗原とした。

0069

[実施例4]抗原免疫
ヒトCLCP1細胞外領域精製蛋白質もしくはヒトCLCP1のFA58Cドメインを含む部分長精製蛋白質を同量コンプリートアジュバント(SIGMA;F5881)と混合してエマルジョンにし、BALB/cマウス(メス)に5〜50μg/headで3〜7日おきに数回免疫した。最終免疫の3〜5日後にマウスからリンパ球細胞を摘出し、マウス骨髄腫細胞P3U1(P3-X63Ag8U1)との細胞融合を行った。

0070

[実施例5]細胞融合、及びモノクローナル抗体産生細胞の選択と取得
細胞融合は次に示す一般的な方法を基本として行った。全ての培地中のFetal Bovine Serum(FBS)は、56℃で30min保温する処理により、非働化したものを使用した。P3U1は、RPMI1640-10%FBS(Penicillin, Streptomycin 含)で培養して準備した。
摘出したマウスのリンパ球細胞とP3U1を10:1〜2:1の割合で混合し、遠心した。沈殿した細胞に50%ポリエチレングリコール4000(Merck;1.09727.0100)を融合促進剤として徐々に加えながら穏やかに混合し、細胞融合を行った。さらにRPMI1640を徐々に加えながら穏やかに混合後、遠心した。沈殿した融合細胞を、15%FBSを含むHAT培地(RPMI1640,HAT-supplement(Invitrogen;11067-030), Penicillin, Streptomycin)で適宜希釈し、200μL/wellで96穴のマイクロプレートに播種した。
融合細胞をCO2インキュベータ(5%CO2、37℃)中で培養し、コロニーが十分に形成されたところで、培養上清サンプリングしてスクリーニングを行った。
スクリーニングは、免疫に使用したCLCP1抗原を感作した96穴プレートに対するELISAで陽性となったものの中から、全長CLCP1を強制発現させた293T(hCLCP1-full/293T)に対するフローサイトメトリーで反応性が確認されたハイブリドーマを選別した。15%FBSを含むHT培地(RPMI1640, HT-supplement(Invitrogen;21060-017), Penicillin, Streptomycin)でこれらを拡大培養後、限界希釈(limiting dilution)法により単クローン化した。このようにして、抗ヒトCLCP1抗体(細胞外領域全長蛋白質(アミノ酸位置1〜526)を免疫原として1クローン(抗体番号:EC6-8)、FA58Cドメインを含んだ部分長蛋白質(アミノ酸位置284〜526)を免疫原として10クローン(抗体番号:FA2-10、FA7-6、FA9-1、FA10-3、FA12-3、FA14-9、FA16-3、FA17-9、FA19-1、FA20-3))を産生するハイブリドーマクローンを11種類得た。

0071

[実施例6]抗体のヒトCLCP1発現細胞に対する反応性(FCM)
以上のように得られた抗体の、内因性ヒトCLCP1への反応性を検証するため、CLCP1高発現細胞H460−LNM35株に対する反応性を次のように確認した。各ハイブリドーマクローンの培養上清からProtein A-Sepharoseを用いた一般的なアフィニティー精製法により抗ヒトCLCP1抗体をそれぞれ精製した。得られた精製抗体をそれぞれ5μg/mLに希釈し、H460-LNM35に対する反応強度をフローサイトメトリーにより確認した。この時、細胞表面に結合した抗CLCP1モノクローナル抗体の検出はPhycoerythrin標識-抗マウスIgG抗体を用いたが、全てのサンプルにおいて同条件で行った。その結果、図2に示すように、抗体番号:FA10-3、FA16-3を除く9クローン(抗体番号:EC6-8、FA2-10、FA7-6、FA9-1、FA12-3、FA14-9、FA17-9、FA19-1、FA20-3)で反応が確認され、内因性のヒトCLCP1に対して反応性を示すことが明らかとなった。特に、EC6-8、FA17-9、FA19-1の3クローンで格段に反応性が強いことが示唆された。

0072

[実施例7]モノクローナル抗体が認識するエピトープ解析(ビオチン化抗体による阻害試験)
確立した抗ヒトCLCP1抗体9クローンを一般的な方法によりビオチン化した。一定濃度のビオチン化抗体(1μg/mL)に対して、未標識抗体を2μg/mL、1μg/mL、0.5μg/mL、0.25μg/mLで添加した各反応液とH460-LNM35株を反応させ、Phycoerythrin標識-StreptAvidinを用いて細胞表面に結合したビオチン化抗体量をフローサイトメトリーで検出することで、阻害実験を行った。この実験系では、評価するビオチン化抗体と添加した未標識抗体が認識するエピトープが近傍であれば、ビオチン化抗体の結合量が阻害されるため、未標識抗体添加濃度依存的にその反応が変化する。これを得られたモノクローナル抗体における全ての組み合わせで行うことによりエピトープ解析(エピトープグルーピング)を行った。特に反応性が強い3クローンにおける解析結果を図3に示す。縦軸がビオチン化抗体(Phycoerythrin標識-StreptAvidin)の結合量(平均蛍光強度;MFI)、横軸が未標識抗体の添加量(μg/mL)である。全クローンの結果から、EC6-8以外の8クローン(抗体番号:FA2-10、FA7-6、FA9-1、FA12-3、FA14-9、FA17-9、FA19-1、FA20-3)は全て近傍のエピトープを認識することが示唆された。

0073

[実施例8]EC6-8モノクローナル抗体が認識するエピトープ解析(免疫沈降)
上記ビオチン化抗体による阻害実験で、唯一、認識するエピトープが異なったEC6-8が認識するエピトープがどの領域であるかを免疫沈降法により解析した。標的蛋白質としては、細胞外領域全長蛋白質(アミノ酸位置1〜526)とFA58Cドメインを含んだ部分長蛋白質(アミノ酸位置284〜526)を用いた。EC6-8を結合させたProtein G-Sepharoseに、これらそれぞれの標的蛋白質を反応させて免疫沈降を行い、得られたサンプルからウェスタンブロットによりmycタグ抗体で標的蛋白質を検出することで、EC6-8との結合を確認した。結果を図4に示す。その結果、細胞外領域全長蛋白質(アミノ酸位置1〜526)とFA58Cドメインを含む部分長蛋白質(アミノ酸位置284〜526)、どちらも免疫沈降されてくることが明らかとなり、EC6-8が認識するエピトープがアミノ酸位置284〜526の領域内にあることが示された。内因性CLCP1に反応性を示す抗CLCP1抗体9クローン(抗体番号:EC6-8、FA2-10、FA7-6、FA9-1、FA12-3、FA14-9、FA17-9、FA19-1、FA20-3)において、上記ビオチン化抗体による阻害実験とあわせて明らかとなったエピトープグルーピングの結果を同じく図4に示す。

0074

[実施例9]抗体の親和性
特に反応性が強い3クローンにおいて、相対的な親和性を次のように解析した。各精製抗体を同条件下(同数のH460-LNM35(1×105個)、同濃度の各精製抗体、同濃度の2次(検出)抗体)におけるフローサイトメトリーの平均蛍光強度の解析を行った。また、抗体濃度依存的な平均蛍光強度もデータを取得し、低濃度での検出限界を解析することで、相対的な親和性を評価した。その結果をグラフ化したものを図5に示す。グラフの横軸は使用した抗体濃度(ng/mL)、縦軸はフローサイトメトリーにおける平均蛍光強度(MFI)である。その結果、相対的な親和性は、EC6-8>FA17-9>FA19-1、となった。

0075

[実施例10]抗体の反応性確認(WB・免液沈降)
更に以上のようにして得られた抗体が確かにCLCP1を認識しているか、以下のようにWestern blot及び免疫染色で内因性CLCP1に対する反応性を検討して再確認した。
Nagai H, et al Oncogene 26:4025-4031(2007)に示しているように、CLCP1高発現細胞H460-LNM35細胞から、CLCP1に対するsiRNAに細胞内で生合成されるshRNA(short hairpin RNA)を恒常的に発現し、mRNAレベルでCLCP1の発現が著減していることが確認されている亜株を樹立しており(Nagai H, et al Oncogene 26:4025-4031(2007)siCLCP1-3 #9細胞)、このsiCLCP1-3、#9細胞(図8: CLCP1 Knockdown)とH460-LNM35細胞とを用いて、Western blotを施行した。
CLCP1高発現細胞株H460-LNM35とsiCLCP1-3 #9細胞2x106個を溶解バッファ(Tris(pH=6.8) 50mM, Glycerol 5%, SDS 2%)に懸濁し、DC Protein Assay kit (Bio-Rad)を用いて蛋白濃度を測定した。その後、2-メルカプトエタノールを 5.3%添加し加熱した後に、20μgずつSDS-PAGEに供し、各抗体とHRP標識抗マウスあるいは抗ウサギ抗体にてウエスタンブロットを施行した。その結果FA19-1, FA17-9で同一サイズのシグナル(シグナル強度: FA19-1>FA17-9)が得られた(図12)。一方、siCLCP1-3 #9細胞ではシグナルは殆ど得られず、ウエスタンブロットでFA19-1及びFA17-9が特異的にCLCP1を認識していることが確認された。
CLCP1高発現細胞株H460-LNM35 1x107個を免疫沈降用溶解バッファ(HEPES(pH=7.5) 10mM, NaCl 300mM NP-40 0.5%,EDTA5mM, DTT 0.5mM, Protease Inhibitor Cocktail Complete (Roche) x1)に懸濁した。その後、微量遠心管(Eppendorf tube)に1/10の懸濁液を入れ、それぞれFA2-10、FA7-6、FA9-1、FA12-3、FA14-9、FA17-9、FA19-1、FA20-3、EC6-8 (及び兎ポリナール抗体)の各抗体1μgを加えて、2時間4℃で攪拌した。その後ProteinG-sepharose (GEヘルスケア) 20μl加えてさらに1時間攪拌した。その後、3000rpm 1分間遠心しProteinG-sepharoseを沈殿させ、沈殿物を免疫沈降用溶解バッファにて4回洗浄した。その後その沈殿物をSDS-PAGEに供し、FA19-1抗体とHRP標識抗マウス抗体にてウエスタンブロット施行した。その結果、(兎ポリクナール抗体を除き)すべてのモノクローナル抗体で上記FA19-1/FA17-9と同一サイズのシグナルが得られ、これらのモノクローナル抗体が、CLCP1を特異的に認識していることが確認された(図7(A)下)。更に、FA9-1, FA17-9, FA19-1, EC6-8で特に強いシグナルが得られ、これらのモノクローナル抗体で特に強い反応性を持つことが確認された。

0076

[実施例11]抗体の病理組織染色性確認(免疫染色)
以上のように免疫沈降でCLCP1蛋白の強いシグナルが得られた、FA9-1, FA17-9, FA19-1, EC6-8の4抗体に関して、上記siCLCP1-3、#9細胞(図8(A)下: CLCP1 Knockdown)とH460-LNM35細胞(図8(A)上)とを用いて免疫組織染色を行った。その結果、FA19-1のみで、H460-LNM35細胞特異的に細胞表面にシグナルが得られ、今回の実験条件ではFA19-1のみがパラフィン包埋した標本の免疫組織染色でCLCP1検出に使用できることが確認された(図8(A))。
その後、肺癌組織標本もFA19-1で染色を試み、肺癌症例でもFA19-1強陽性となる症例が確認された(図8(B, C))。
以上のようにして得られた抗体が、さらに組織中の転移評価に用いられるか試験した。具体的には以下のように行なった。
(1)切片作製
各々の肺癌の臨床検体(肺扁平上皮癌あるいは、肺腺癌)は、ホルマリン固定後パラフィン包埋組織検体を用いた。検体はミクロトームにより3μmの厚さで薄切後,剥離防止コートスライドグラス(MAS-GP, typeA, MATSUNAMI)に張り付けた。
(2)染色
以下但し書きのない場合は切片を室温にて処理した。スライドグラス上の切片を,脱パラフィン処理後,イムノセイバー(日新EM,イムノセイバーを蒸留水にて200倍に希釈)に浸し,電動ポットにて98℃に保温した状態で50分間反応させ抗原賦活化を行った。次に,20分3%過酸化水素メタノール処理にて内因性ペルオキシダーゼを不活化させた。PBSで5分間ずつ3回洗浄を行った。一次抗体は抗CLCP1抗体(FA19-1)を用い,1%BSA/1%メチロザール/PBSにより250倍に希釈して1時間反応させた。PBSで5分間ずつ3回洗浄を行った。二次抗体はビオチン標識抗マウス免疫グロブリン抗体(Vectastain ABC Kit, VectorLab.)を用い,30分間反応させた。ABC reagent(Vectastain ABC Kit, Vector Lab.)を滴下し,ABC法により60分間反応させた。PBSで5分間ずつ3回洗浄を行った。DAB(3,3’-Diaminobenzidine)反応液(20mgDAB/100ml)は,蒸留水100mlにDABトリス錠(武化学薬品)を2錠加え溶解後,過酸化水素を3,4滴加えて作製した。DAB反応液に12分間切片を浸し発色させた。水道水,蒸留水にて水洗後,ヘマトキシリンによる核染を行い,脱水・透徹・封入し,鏡検した。肺癌組織への染色結果を(図8(B,C))に示す。
その結果、二人の肺癌患者検体の染色結果を示す。
検体1((図8(B): 肺扁平上皮癌)では、癌組織が染色陽性である。
図8(B)左:肺癌組織で均一に細胞表面が染色陽性となり、周辺非癌部分(所謂、間質部分)は染色陰性である。
図8(B)中:癌が正常肺組織に浸潤している部分は浸潤癌細胞が染色陽性で、残存正常肺部分は染色陰性である。
図8(B)右:癌と離れた正常肺組織部分は染色陰性である。なお、黒点に見えるのは鉄粉沈着部である。
以上のように癌組織と非癌組織が明瞭に染め分けられていた。この結果は顕微鏡による病理学的な所見のがん部と一致した。
検体2(図8(C):肺腺癌)も癌組織の染色は陽性である。しかし、検体1と比較すると、(おそらくCLCP1遺伝子発現が検体1よりも低いために)染色がやや弱く、染色が不均一な部位も見られる。
図8(C)左:肺癌組織で均一に染色陽性である。細胞表面が強く染色陽性であるが、細胞質も染色される。周辺非癌部分(所謂、間質部分)は染色陰性である。
図8(C)中:同一肺癌組織の他の部位でも、大部分が染色陽性である。しかし、やや染色が不均一で、染色陰性の癌細胞も見られる。周辺非癌部分(所謂、間質部分)では、ごく一部の間質細胞例外的に染色陽性となっているが、ほとんどの周辺非癌部分は染色陰性である。
図8(C)右:癌と離れた正常肺組織部分は染色陰性である。なお、黒点に見えるのは鉄粉沈着部である。
以上のように、検体2でも癌組織と非癌組織が明らかに染め分けられていた。この結果は顕微鏡による病理学的な所見のがん部と一致した。
以上から、FA19-1は、組織染色においてもパラフィン包埋した標本の免疫組織染色に使用できることが確認され、図8に示される肺癌組織標本中の非肺癌部位の染色強度よりも病理組織の染色強度が強い場合は、該病理組織は肺癌のおそれがあると診断される。なお、本発明の抗体での染色された部位は、病理形態学的に肺癌と推察される部分と一致し、染色されなかった部分は正常部位と推察される部分と一致し、総じて顕微鏡の病理学的所見と一致していた。

0077

[実施例12]抗体の正常組織染色性確認(免疫染色)
実施例11と同様な手法で、FA19-1を用い、下記正常な組織切片に対し染色性を確認した。
その結果、濾胞上皮の細胞質以外では、特異的かつ、顕著な染色性はなかった。

0078

0079

[実施例13]肺がん患者組織染色による予後予測
抗CLCP1抗体FA19-1抗体を用いて肺癌検体を、前述のとおりの組織染色法で染色、肺がん検体染色性と予後予測の関連を検討した。
その結果、肺がんの組織染色が、細胞膜染色強陽性群では、カプラン・マイヤー(Kaplan - Meier)分析法における生存率の術後1年(12か月)経過時点で、抗CLCP1抗体の組織染色強陽性症例(細胞膜染色強陽性症例)群の生存率が73%であるのに対し、弱陽性・陰性症例(細胞膜染色弱陽性、又は陰性症例)群が93%であり、術後3年(36か月)経過時点で、強陽性症例群55%、弱陽性・陰性症例群90%となり、強陽性症例群の生存率が継続的に低い。この差異を、2群間の生存率の有意差を検定するのに一般的に用いられるlogrank test(ログランク検定)又はgeneralized Wilcoxon test (一般化ウィルソン検定、Gehan-Wilcoxon検定)を用いて検定すると、ログランク検定でp=0.012, 一般化ウィルソン検定でp=0.0072となり、統計学的に有意に強陽性症例の生存率が低いことが判明した(図37A)。
なお、ここで本抗体の免疫組織学的反応性は強陽性(+)、弱陽性(±)、陰性(-)の3群に分別された。具体的には、図37B上のように細胞膜が明瞭に描出される症例(細胞膜の輪郭が視認できる)染色を強陽性、図37B下のように細胞膜が不明瞭にしか描出されない症例(細胞膜の輪郭が視認できない)を弱陽性、更に細胞膜が全く描出されない症例を陰性とした。

0080

[実施例14]浸潤阻害活性試験
まず抗体曝露として、RPMI1640培地(0.25%FCS)で、5x104 〜2x105細胞/mlの濃度のH460-LNM35細胞の細胞浮遊液を作製し、微量遠心管(Eppendorf tube)に分注し、各抗体を1.5μg 〜 5μg/mlの濃度で加え、室温で30分静置した。その後、その処理細胞を用いて、浸潤活性試験(invasion assay)を文献(Kozaki K et al. Cancer Res. 60: 2535-40, 2000.) に記載の方法に準じて行った。すなわち、10μgの基底膜再構成基質マトリゲルでコートしたポアサイズ8-μmのセルカルチャーインサート、或いは、基底膜再構成基質マトリゲルでコートされた「マトリゲルインベージョンチャンバー(ベクトン・ディキンソン)」を、各穴(下層)にRPMI1640(5% FCS)培養液を1 ml添加した24穴プレートに設置し、チャンバー内(上層)に、RPMI1640培地(0.25% FCS)で調製し抗体曝露したH460-LNM35細胞浮遊液(5x104 〜 2x105細胞/ml)を0.5 ml播種した(2.5 x 104 〜 1x105 細胞/チャンバー)。その後、37℃、5% CO2の条件下、48時間インキュベーションした。上層に残った細胞およびマトリゲルを綿棒できれいにふき取り、下層に残った細胞を70%エタノール溶液で固定後、ギムザ染色液で染色した。下層の細胞を顕微鏡で計測し、抗体無添加群をもとに各抗体の浸潤活性(%)を下記式により求めた。結果を図6(A)に示す。
浸潤活性(%)=抗体添加時の浸潤癌細胞数/抗体無添加時の浸潤癌細胞数×100
図6(A)の結果より、特に抗体FA17-9とFA19-1が、高転移性ヒト肺がん細胞H460-LNM35細胞に対して、対照の抗体(マウスIgG)よりも強い浸潤阻害活性を有することが示された。

0081

[実施例15]遊走阻害活性試験
上記と同様に、抗体曝露として、RPMI1640培地(0.25%FCS)で、5x104 〜2x105細胞/mlの濃度のH460-LNM35細胞の細胞浮遊液を作製し、微量遠心管(Eppendorf tube)に分注し、各抗体を1.5μg 〜 5μg/mlの濃度で加え、室温で30分静置する。その後、その処理細胞を用いて、遊走活性試験(motility assay)を文献 (Kozaki K et al. Cancer Res. 60: 2535-40, 2000.) に記載の方法に準じて行った。すなわち、ポアサイズ8-μmのセルカルチャーインサート(ベクトン・ディッキンソン)を、各穴(下層)にRPMI1640培地(0.25% FCS)を1 ml添加した24穴プレートに設置し、チャンバー内(上層)に、RPMI1640培地(0.25% FCS)で調製し抗体曝露したH460-LNM35細胞浮遊液(5x104 〜 2x105細胞/ml)を0.5 ml播種した(2.5 x 104 〜 1x105 細胞/チャンバー)。その後、37℃、5% CO2の条件下、24時間インキュベーションした。上層に残った細胞を綿棒できれいにふき取り、下層に残った細胞を70%エタノール溶液で固定後、ギムザ染色液で染色した。下層の細胞を顕微鏡で計測し、抗体無添加群をもとに各抗体の遊走活性(%)を下記式 により求めた。結果を図6(B)に示す。
遊走活性(%)=抗体添加時の遊走癌細胞数/抗体無添加時の遊走癌細胞数×100
図6(B)の結果より、特に抗体FA17-9とFA19-1が、高転移性ヒト肺がん細胞H460-LNM35細胞に対して、対照の抗体(マウスIgG)よりも強い遊走阻害活性を有することが示された。

0082

[実施例16]NCI-H460由来高転移株と低転移株のCLCP1発現解析
以前、発明者らは親株であるNCI-H460をマウス移植による転移能の強弱で2種類の亜株に分離している。高転移株であるNCI-H460-LNM35の細胞膜上に存在するCLCP1の発現量が、低転移株であるNCI-H460-N15よりも高いことがFA19‐1による染色で確認された(図17)。同様に親株のNCI-H460をFA19-1による染色を行うと、ヘテロな細胞集団であることが認められた。このことから細胞膜上に発現しているCLCP1が転移能に一定のかかわりがあることが初めて示唆された(図17)。
[実施例17]各種がん細胞株でのCLCP1抗原発現状況(FCM)
FCMにて各種がん細胞株のCLCP1発現を抗CLCP1抗体(FA19-1;5μg/mL)を用いたFCMで評価した。用いた細胞株とその由来を表2−1及び表2−2に記載した。

0083

0084

0085

その結果、図18、図19のように顕著なCLCP1発現が見受けられ、平均蛍光強度(MFI : Mean fluorescence Intensity)の結果を図20にまとめた。
肺がんのほか、CLCP1発現顕著ながん種細胞株として特に、腎癌(例えばCaki-1細胞株)、膀胱癌(例えばT24細胞株)、前立腺癌(例えばPC3細胞株)、膵臓癌(例えばPK-45p細胞株)、胃癌(例えばGCIY細胞株)、大腸癌(例えばSW480細胞株)、乳癌(例えばBT-20細胞株)が挙げられる。特に、図20中MFIの20以上の場合、発現が顕著に亢進しているといえる。

0086

[実施例18]モノクローナル抗体の機能解析(WB・FCM)
上記と同様に、抗体曝露として、RPMI1640培地(10%FCS)でH460-LNM35細胞の6x104細胞/ml細胞浮遊液を準備し、培養用6-well plate (ベクトン・ディッキンソン)に0.5 mlずつ播種(3x104細胞/well)した。その後各wellに表示の抗体を表示濃度(図7(B): 1, 2.5, 5 μg/ml,図13:0.5, 1, 2.5, 5 μg/ml)加えて、その後、37℃, 5% CO2の 条件下、24時間インキュベーションした。その後PBSで洗浄後に各wellに溶解バッファ(Tris(pH=6.8) 50mM, Glycerol 5%, SDS 2%)200 μl加え細胞溶解液を調製した。上記のようにDC Protein Assay kit (Bio-Rad)を用いて細胞溶解液の蛋白濃度を測定した。その後、2-メルカプトエタノールを 5.3%添加し加熱した後に、5μgずつSDS-PAGEに供し、FA19-1抗体とHRP標識抗マウス抗体にてウエスタンブロットを施行した。その結果対照のマウスIgG曝露及び無処理細胞に比して、FA9-1, FA17-9, FA19-1, EC6-8 (図7(B)、図13)でCLCP1シグナルの減弱が見られた。Nagai H, et al Oncogene 26:4025-4031(2007)でみられたSEMA4B曝露によるCLCP1の分解と同様に、抗CLCP1抗体曝露によりCLCP1の分解が誘導されることが確認された。
同様にH460-LNM35細胞を培養用6-well plateにて、FA17-9, FA19-1及び対照マウスIgGに曝露し(濃度1 μg/ml, 5 μg/ml)、37℃, 5% CO2の条件下、24時間インキュベーションした。その後PBS洗浄しPBS/0.5mMEDTA液にて細胞を剥離し、細胞懸濁液を作製した。その後、処理したものと同じ各抗体と、Alexa Flour 488標識抗マウス抗体(Molecular Probe)を用いてFACSCaliber (ベクトン・ディッキンソン)にてフローサイトメトリー解析を行った(図14)。その結果、細胞表面のCLCP-1発現量はFA19-1曝露により減少することが確認された。抗CLCP1抗体FA19-1曝露により細胞表面のCLCP1の分解又は細胞内へのインターナリゼーションが誘導されることが確認された。

0087

[実施例19]新規抗体の取得
実施例3に示したように作製されたヒトCLCP1細胞外領域精製蛋白質(ECD:Extra-cellular domain)を免疫原として、新規抗体2AA_62-4、2AA_83-6、2AA_111-3、2AA_171-1、2AA_197-3のクローンを得た。また、同様に実施例3に示したように作製されたヒトCLCP1のFA58Cドメインを含む部分長精製蛋白質(FA)を免疫原として、新規抗体6AA_17-2、6AA_44-3、6AA_60-1、6AA_61-2、6AA_95-5を取得した。

0088

[実施例20]新規抗体のFCMにおける抗体結合強度の評価
実施例9と同様の方法で、新規抗体のFCMにおける抗体結合強度の評価を行った。3クローン(2AA_171-1、6AA_17-2、2AA_197-3)でFA19-1以上の反応性を示した (図24)。

0089

[実施例21]新規抗体の epitope mapping
(1)部分たんぱく質断片に対するELISAの反応性からの認識ドメインの推定
実施例3で調製した免疫用抗原に対するELISAによって、抗体の認識ドメインの推定を行った。ヒトCLCP1細胞外領域精製蛋白質もしくはヒトCLCP1のFA58Cドメインを含む部分長精製蛋白質をPBSで0.5μg/mLに希釈した溶液をプレート(NUNC;MaxiSorp)に50μL/wellで添加し、室温で4時間以上静置することで固相化した。BSAでブロッキングした後、1次反応としてPBSで1μg/mLに希釈した各抗体を添加し、室温に1時間静置した。HRP標識抗マウス抗体を2次反応とした常法により、各固相化蛋白質に対して結合した抗体を検出した。その結果、2AA_ 171-1は、細胞外ドメインを認識するがFA58Cドメインを含む部分長を認識しないことが判明した(図25)。

0090

(2)FCMにおける競合阻害実験による推定
試験手順方法の具体的記載)
実施例7と同様の方法でFCMにおける新規抗体の競合阻害実験を行った。ビオチン化抗体に対して、各未標識抗体を添加することにより、全組み合わせの阻害実験を行った。FCMでFA19-1以上の反応性を示した3クローン(2AA_171-1、6AA_17-2、2AA_197-3)についての結果を例として表3及び図31に示す。6AA_17-2、2AA_62-4はEC6-8、FA19-1双方に競合した。

0091

0092

(3)エピトープグルーピング
(1)と(2)の結果から推測されるエピトープグルーピングを行い、その結果を図33に示す。 2AA_171-1のみがFA58Cを含む領域以外を認識し、他はFA58Cを含む領域を認識する。6AA_17-2、2AA_62-4はEC6-8、FA19-1双方に競合し、その2つが認識するエピトープと近傍のエピトープを認識する。2AA_83-6、6AA_44-3、6AA_60-1、6AA_61-2、6AA_95-5は同じエピトープを認識するが、EC6-8、FA19-1とは異なり、2AA_111‐3や2AA_197‐3は他のすべての抗体と競合しなかった。

0093

[実施例22]FCMにおける細胞内インターナリゼーション評価
実施例18に記載の方法と同様に6well plateで培養のNCI-H460-LNM35細胞又はA549細胞を未標識の各抗体5μg/mLで24時間曝露後、PBS/0.5mMEDTA液にて剥離した細胞をFCM(図34)及びWB(図35)により細胞膜上に残存したCLCP1分子をビオチン化抗体で検出した。その結果、強い internalization活性が認められた。
図34において対照抗体を添加した場合の細胞膜上のCLCP1の検出量を100%とした際の、残存分子の割合をMFI値換算することによって解析した結果を図36に示す。転移阻害活性が高いFA19-1とのinternalization 活性比較した場合、FA19-1以上に internalization誘導活性を有した機能性抗体が3クローン確認できた(図36)。

0094

[実施例23]Biacore
結合活性を反応速度論的に解析するため、Biacoreを用いて結合活性測定を行った。以下の操作は全てBiacore3000(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用いて行った。評価系としては、抗マウス抗体をキャプチャーとしたキャプチャー法を用いた。
アミンカップリング法によりCM5センサーチップ(GEヘルスケア バイオサイエンス社製)に、抗マウス抗体(GEヘルスケア バイオサイエンス社製)を固層化した。そこへHBSEP Buffer(GEヘルスケア バイオサイエンス社製)で2μg/mLに希釈した各種モノクローナル抗体を10μL/minの速度でチップ上に流し、その後、アナライトとして5段階希釈した293T由来CLCP1細胞外領域全長の精製蛋白質を20μL/minの速度で流した。この際のアナライトの希釈濃度は、各モノクローナル抗体につき次のように決定した。まずアナライトを5μg/mLに固定した条件で各種抗体のKD値(M)を算出し、このKD値が示す濃度(M)の10倍の濃度から2倍に段階的希釈した5段階とした。このセンサーグラムを解析することで、各種抗体の結合速度定数及び解離速度定数を算出し、KD値を求めた(図39)。

0095

[実施例24]抗体のVH及びVL遺伝子の単離、並びにCDRの同定
選択された陽性ハイブリドーマを培養し、一般的な方法によりtotal RNAを取得した。次に、GeneRacerTMキット(Invitrogen)を用いた5’-RACE法により、cDNAを取得した。得られたcDNAを鋳型とし、GeneRacerTM 5’Primer(5’-CGACTGGAGCACGAGGACACTGA-3’(配列番号:33))とCH1(mouseIgG1 constant領域1) 3’Primer(5’-AATTTTCTTGTCCACCTGG-3’(配列番号:34))を用いてPlutinum Taq High Fidelity(Invitrogen)でPCR(サイクル[94℃ 30秒、57℃ 30秒、72℃ 50秒]を35サイクル)を実施した。これによってVH遺伝子(cDNA)を単離した。一方、VL遺伝子も同様にGeneRacerTM 5’Primerと、Ck(κconstant領域)3’Primer(5’-CTAACACTCATTCCTGTTGAAGCTCT-3’(配列番号:35))を用いてPCRを実施し、VL遺伝子(cDNA)を単離した。
VH遺伝子及びVL遺伝子をそれぞれpT7Blueベクターにサブクローニングした後、オートシークエンサー(アプライドバイオシステム社製)又は蛍光式オートシークエンサーを用いて配列を解析した。その結果得られたVHの塩基配列及びVLの塩基配列がコードするアミノ酸、及び各CDRの配列を決定した(図9〜11、図38)。

0096

以下、同定された各配列を記す。
(FA17-9アミノ酸配列)
VHCDR1:配列番号:7に示すアミノ酸配列
VH CDR2:配列番号:8に示すアミノ酸配列
VH CDR3:配列番号:9に示すアミノ酸配列
VL CDR1:配列番号:12に示すアミノ酸配列
VL CDR2:配列番号:56に示すアミノ酸配列
VL CDR3:配列番号:13に示すアミノ酸配列
VH:配列番号:6に示すアミノ酸配列
VL:配列番号:11に示すアミノ酸配列
(FA17-9塩基配列)
VH:配列番号:5に示す塩基配列
VL:配列番号:10に示す塩基配列

0097

(FA19-1アミノ酸配列)
VHCDR1:配列番号:16に示すアミノ酸配列
VH CDR2:配列番号:17に示すアミノ酸配列
VH CDR3:配列番号:18に示すアミノ酸配列
VL CDR1:配列番号:21に示すアミノ酸配列
VL CDR2:配列番号:57に示すアミノ酸配列
VL CDR3:配列番号:22に示すアミノ酸配列
VH:配列番号:15に示すアミノ酸配列
VL:配列番号:20に示すアミノ酸配列
(FA19-1塩基配列)
VH:配列番号:14に示す塩基配列
VL:配列番号:19に示す塩基配列

0098

(6AA_17-2アミノ酸配列)
VHCDR1:配列番号:60に示すアミノ酸配列
VH CDR2:配列番号:61に示すアミノ酸配列
VH CDR3:配列番号:62に示すアミノ酸配列
VL CDR1:配列番号:65に示すアミノ酸配列
VL CDR2:配列番号:66に示すアミノ酸配列
VL CDR3:配列番号:67に示すアミノ酸配列
VH:配列番号:59に示すアミノ酸配列
VL:配列番号:64に示すアミノ酸配列
(6AA_17-2塩基配列)
VH:配列番号:58に示す塩基配列
VL:配列番号:63に示す塩基配列

0099

[実施例25]キメラ化抗体の作製・評価(FA19-1、FA17-9)
同定した遺伝子配列をもとに、以下に示すPCR増幅用primerを設計した。FA17-9、FA19-1ともに同じゲノム配列由来の抗体であるため、同じプライマーを使用した。
重鎖用Forward primer:5’-CCCaagcttACCATGGAATGGAGTTGGATATTTC-3’(配列番号:68)
重鎖用Reverse primer:5’-CCGctcgagACGGTGACCGTGGTCC-3’(配列番号:69)
軽鎖用Forward primer:5’-CCCaagcttACCATGAGACCGTCTATTCAGTTCC-3’(配列番号:70)
軽鎖用Reverse primer:5’-AATAcgtacgTTTGATTTCCAGCTTGGTCCC-3’(配列番号:71)
小文字制限酵素配列
これらのprimerにより増幅されたPCR産物を常法によりヒトIgG1の定常領域を組み込んだロンザ社の抗体産生用ベクターに導入した。ロンザ社推奨プロトコールにより、キメラ抗体産生細胞株を樹立し、その培養上清からProtein Aを用いてキメラ化抗体の精製抗体を得た。
FA17-9のキメラ化抗体、FA19-1のキメラ化抗体の反応性確認としてFCMを行った。10μg/mL〜0.01μg/mLの抗体の濃度にて元々のマウス抗体と同等の結合活性を示した(図21)。

0100

[実施例26]ADCC(Antibody-dependent Cellular Cytotoxicity)活性試験
抗体濃度0.1〜10μg/mL又はE/T ratio(エフェクター/ターゲット比)100〜5と変化させてADCC活性を測定した。使用する抗体は実施例25で結合活性が確認された、FA17-9のキメラ化抗体とFA19-1のキメラ化抗体を使用した。ターゲット細胞としては、癌細胞株、例えばNCI-H460-LNM35を用いた。エフェクター細胞は、ヒトの末梢血から密度勾配遠心による常法で調製したPBMCを使用した。
ADCC活性評価は、lactate dehydrogenase release assayにより行った。細胞傷害活性(%)は以下の式によって算出した。
[% Cytotoxicity] = 100×(E−SE−ST)/(M−ST)
ここで、EとはExperimental releaseを表し、抗体とEffector細胞が、Target細胞と共に保温された時のTarget細胞からreleaseされたlactate dehydrogenase活性である。SEとは、Effector細胞からの自然発生的に放出されたlactate dehydrogenase活性である。STとは、Target細胞からも自然発生的に放出されたlactate dehydrogenase活性である。Mとは、Target細胞の最大に放出されるlactate dehydrogenase活性を表し、これはLysis Solution (9% Triton X-100)の添加により、Target細胞から放出されたlactate dehydrogenase活性である。

0101

(1)NCI-H460-LNM35細胞に対するFA19-1キメラ化抗体、FA17-9キメラ化抗体のADCC活性
抗体濃度(図22A)又はE/T ratio(エフェクター/ターゲット比)(図22B)を変化させてNCI-H460-LNM35 細胞をターゲットとしたADCC活性を評価した。ターゲット細胞(NCI-H460-LNM35)104個に対してエフェクター細胞を2×105個と条件を固定し、キメラ化抗体の添加量を10μg/mL、1μg/mL、0.1μg/mLと変化させて各条件におけるADCC活性を上記の式により算出した。その結果、FA19-1キメラ化抗体の方がFA17-9キメラ化抗体よりも高いADCC活性を認め、抗体濃度10μg/mLで最大であった。次に抗体添加濃度を10μg/mLに固定し、ターゲット細胞104個に対して、エフェクター細胞を100倍(106個)、50倍(5×105個)、20倍(2×105個)、10倍(105個)、5倍(5×104個)と変化させ、E/T ratioの影響を確認した。その結果、E/T ratio = 50の条件で最大のADCC活性を認め、FA19-1キメラ化抗体の場合にCytotoxity:32.4%を認めた。

0102

(2)FA19-1キメラ化抗体NCI-H460-LNM35 又はA549に対するADCC活性(ドナー別)
上記検討で最大のADCC活性が認められた条件(キメラ化抗体の10 μg/mL、E/T ratio = 50)にて、5名のドナー(A〜E)由来のエフェクター細胞とNCI-H460-LNM35 又はA549のターゲット細胞に対するADCC活性を測定した。その結果、全てのドナーでCytotoxityが認められ、特にCLCP1が強発現しているA549に対しては47.1%という強いCytotoxityが認められ (図23)、CLCP1に対する抗体を用いた細胞傷害活性が認められるという初めての知見を得た。

0103

[実施例27]ヒト化抗体作製(FA19-1)
CDR-grafting法に従い、ヒトフレームワークを選択し、マウスモノクローナル抗体FA19-1のCDRに置き換えた。
具体的には重鎖可変領域フレームワーク、軽鎖可変領域フレームワークに分けてホモロジー検索を行った結果、FA19-1抗体重鎖可変領域フレームワーク領域(以下、FR1からFR4領域(配列番号:36〜39)、以下、全体合わせてFR)はヒト抗体のAccession number U00570(配列番号:40)のFR領域(配列番号:41〜44)と高い相同性を持つことが分かった(図40参照)。マウスFA19-1抗体の重鎖におけるFRとCDR移植先ヒト抗体のFR 部分の相同性は67/87=77.0%であった。このヒト抗体のAccession number U00570のFR領域に適切にFA19-1の重鎖CDR1〜CDR3(配列番号:16〜18)が移植されるようにアミノ酸配列を設計し、ヒト化抗体重鎖可変領域アミノ酸を設計した(配列番号:45)。以下、ヒト型化重鎖をFA19RHAと表記する。

0104

同様に、FA19-1抗体軽鎖のFR1からFR4領域(配列番号:46〜49、以下、全体合わせてFR)はヒト抗体のAccession number U96396(配列番号:50)のFR領域(配列番号:51〜54)と高い相同性を持つことが分かった(図41参照)。マウスFA19-1抗体軽鎖におけるFRとCDR移植先ヒト抗体FR 部分の相同性は63/80=78.8%であった。このヒト抗体のAccession number U96396のFR領域に適切にFA19-1の軽鎖重鎖CDR1〜CDR3(配列番号:21、57、22)が移植されるようにアミノ酸配列を設計し、ヒト化抗体軽鎖可変領域アミノ酸を設計した(配列番号:55)。以下、ヒト型化軽鎖をFA19RKAと表記する。

0105

また、FA19-1の軽鎖CDR2領域にはシステインが含まれており、アグリゲーションなどによる抗体の安定性に問題が生じる可能性があった。そのため、上記で設計したヒト型化FA19-1抗体の当該部位を、マウス生殖系列で使用されているセリンに変換したものも同時に設計した(FA19-1の軽鎖CDR2:HTCTLQP(配列番号:57)→セリン変換版の軽鎖CDR2:HTSTLQP(配列番号:72)。以下、セリン変換版軽鎖と表記する。

0106

ヒト化抗体の重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の作製には、50base程度の合成オリゴDNAを約20base程度ハイブリダイズするように設計し、これらの合成オリゴDNAをPCR法によりアッセンブリさせて各可変領域をコードする遺伝子を作製した。5’端の合成オリゴDNAの末端に挿入した制限酵素HindIII部位、および3’端の合成オリゴDNAの 末端に挿入したXhoI(RHA)、BsiWI(RKA、セリン変換版軽鎖)部位で切断し、Lonza社のヒトIgG1定常領域がクローニングされたpEE6.4ベクター、ヒトκ鎖定常領域がクローニングされたpEE14.4ベクターへそれぞれ導入した。

0107

構築したFA19RHAとFA19RKA、セリン変換版軽鎖の発現ベクターをFA19RHAとFA19RKA、及びFA19RHAとセリン変換版軽鎖の組み合わせで、リポフェクトアミン2000を使用した常法により293T細胞へコトランスフェクションを行った。48時間後、培養上清を回収し、培養上清中のIgG濃度を、Goat anti-human IgG antibody, Fcγ fragment-specific (Stratech Scientific)とGoat anti-human kappa light chain peroxidase conjugate (Sigma)を用いたサンドウィッチELISAによって市販の精製ヒトIgG(Cappel社)の検量線から算出した。

0108

IgG濃度を測定した培養上清を用いて、キメラ抗体、ヒト型化抗体、セリン変換版ヒト型化抗体の活性比較を実施例21に示したCLCP1細胞外領域の精製蛋白質に対するELISAにより評価した。その結果、キメラ抗体とセリン変換版ヒト型化抗体、およびヒト型化抗体とセリン変換版ヒト型化抗体で、同等の活性を確認でき、ヒト型化FA19-1の設計が成功した(図42、図43)。

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