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技術 連続鋳造用モールドパウダー及び溶融金属の連続鋳造方法

出願人 日本製鉄株式会社
発明者 三島和晃塚口友一及川雅史
出願日 2015年10月27日 (5年2ヶ月経過) 出願番号 2015-210982
公開日 2017年5月18日 (3年7ヶ月経過) 公開番号 2017-080767
状態 特許登録済
技術分野 連続鋳造
主要キーワード 全率固溶体 パウダー成分 含有溶融 メリライト 伝熱抵抗 割れ欠陥 パウダー中 アケルマナイト
関連する未来課題
重要な関連分野

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課題

Tiをある一定以上含む溶融金属連続鋳造を行うに際し、ペロブスカイト析出を抑えることのできる低塩基度パウダーであって、高凝固温度および低粘度を兼ね備え、結晶化しやすく潤滑性と緩冷却機能を兼ね揃えたモールドパウダーを提供する。

解決手段

主成分としてCaO,SrO,SiO2を含有し、原子比率としての(CaO+SrO)/SiO2で表される塩基度Aが0.7〜1.0であり、かつ原子比率としてのSrO/(CaO+SrO)が0.25〜0.60の範囲にあり、かつ1300℃における粘度が0.1〜0.3Pa・sであり、溶融したモールドパウダーが凝固する際に析出する主たる結晶がアケルマナイトであることを特徴とする連続鋳造用モールドパウダー

概要

背景

溶融金属連続鋳造において、鋳型内の溶融金属表面被覆するように連続鋳造用モールドパウダーが供給される。以下単に「モールドパウダー」という。鋳型内に供給されたモールドパウダーは、溶融金属からの加熱によって溶融金属表面に溶融層を形成し、溶融したモールドパウダーはメニスカス部から鋳型内壁に沿って凝固シェルとの間隙へ流入し、フィルムを形成する。

モールドパウダーの重要な機能の一つに、鋳型と凝固シェルとの間のフィルムによる伝熱能の調整機能がある。鋳片の縦割れなどの割れ欠陥が発生しやすい品種、例えば炭素含有量が0.08〜0.18質量%程度の溶鋼高速鋳造する場合、鋳型内でのパウダーフィルムによる冷却を緩冷却化することにより、鋳片の冷却速度を低下させ、連続鋳造時に鋳片表面に発生する割れを防止することができる。

鋳型内においてモールドパウダーフィルムの結晶化が促進されると、フィルム層中での輻射伝熱が抑制されて伝熱抵抗が増大し、フィルムを通した凝固シェルの冷却が緩冷却化され、凝固シェルが均一に生成、成長する結果、鋳片表面の割れを防止する効果が生じる。そのため、上記のような割れ感受性が高い品種を連続鋳造する際の割れ発生を防止することができる(非特許文献1参照)。

一般的にモールドパウダーフィルムから析出する代表的な結晶としてカスピダイン(Cuspidine:3CaO・2SiO2・CaF2)が挙げられる。カスピダインの析出を促進させるためにはモールドパウダーの塩基度を上げ、カスピダインの純組成に近づけることが有効である。

低塩基度のモールドパウダーにおいて析出を促進することが容易である結晶として、アケルマナイト(Akermanite:2CaO・MgO・2SiO2)が特許文献1に開示されている。

特許文献2には、パウダーフィルムから析出する結晶がゲーレナイト(Gehlenite:2CaO・Al2O3・SiO2)とアケルマナイトの全率固溶体メリライトであり、パウダー中にSrOを15質量%以下添加することにより、メリライト中のカルシウムの一部がストロンチウムに置き代わっているものが開示されている。

概要

Tiをある一定以上含む溶融金属の連続鋳造を行うに際し、ペロブスカイトの析出を抑えることのできる低塩基度パウダーであって、高凝固温度および低粘度を兼ね備え、結晶化しやすく潤滑性と緩冷却機能を兼ね揃えたモールドパウダーを提供する。主成分としてCaO,SrO,SiO2を含有し、原子比率としての(CaO+SrO)/SiO2で表される塩基度Aが0.7〜1.0であり、かつ原子比率としてのSrO/(CaO+SrO)が0.25〜0.60の範囲にあり、かつ1300℃における粘度が0.1〜0.3Pa・sであり、溶融したモールドパウダーが凝固する際に析出する主たる結晶がアケルマナイトであることを特徴とする連続鋳造用モールドパウダー。なし

目的

本発明は、Tiをある一定以上含む溶融金属の連続鋳造を行うに際し、ペロブスカイトの析出を抑えることのできる低塩基度パウダーであって、高凝固温度および低粘度を兼ね備え、結晶化しやすく潤滑性と緩冷却機能を兼ね揃えた連続鋳造用モールドパウダー、及びそれを用いた溶融金属の連続鋳造方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

主成分としてCaO,SrO,SiO2を含有し、原子比率としての(CaO+SrO)/SiO2で表される塩基度Aが0.7〜1.0であり、かつ原子比率としてのSrO/(CaO+SrO)が0.25〜0.60の範囲にあり、かつ1300℃における粘度が0.1〜0.3Pa・sであり、溶融したモールドパウダー凝固する際に析出する主たる結晶アケルマナイト(Akermanite:2CaO・MgO・2SiO2)であることを特徴とする連続鋳造用モールドパウダー

請求項2

請求項1に記載の連続鋳造用モールドパウダーを用いて、Ti濃度が0.01〜1.5質量%の溶融金属連続鋳造することを特徴とする溶融金属の連続鋳造方法

技術分野

0001

本発明は、鋼等の溶融金属連続鋳造する際に使用する連続鋳造用モールドパウダー、およびそのモールドパウダーを用いた溶融金属の連続鋳造方法に関するものである。

背景技術

0002

溶融金属の連続鋳造において、鋳型内の溶融金属表面被覆するように連続鋳造用モールドパウダーが供給される。以下単に「モールドパウダー」という。鋳型内に供給されたモールドパウダーは、溶融金属からの加熱によって溶融金属表面に溶融層を形成し、溶融したモールドパウダーはメニスカス部から鋳型内壁に沿って凝固シェルとの間隙へ流入し、フィルムを形成する。

0003

モールドパウダーの重要な機能の一つに、鋳型と凝固シェルとの間のフィルムによる伝熱能の調整機能がある。鋳片の縦割れなどの割れ欠陥が発生しやすい品種、例えば炭素含有量が0.08〜0.18質量%程度の溶鋼高速鋳造する場合、鋳型内でのパウダーフィルムによる冷却を緩冷却化することにより、鋳片の冷却速度を低下させ、連続鋳造時に鋳片表面に発生する割れを防止することができる。

0004

鋳型内においてモールドパウダーフィルムの結晶化が促進されると、フィルム層中での輻射伝熱が抑制されて伝熱抵抗が増大し、フィルムを通した凝固シェルの冷却が緩冷却化され、凝固シェルが均一に生成、成長する結果、鋳片表面の割れを防止する効果が生じる。そのため、上記のような割れ感受性が高い品種を連続鋳造する際の割れ発生を防止することができる(非特許文献1参照)。

0005

一般的にモールドパウダーフィルムから析出する代表的な結晶としてカスピダイン(Cuspidine:3CaO・2SiO2・CaF2)が挙げられる。カスピダインの析出を促進させるためにはモールドパウダーの塩基度を上げ、カスピダインの純組成に近づけることが有効である。

0006

低塩基度のモールドパウダーにおいて析出を促進することが容易である結晶として、アケルマナイト(Akermanite:2CaO・MgO・2SiO2)が特許文献1に開示されている。

0007

特許文献2には、パウダーフィルムから析出する結晶がゲーレナイト(Gehlenite:2CaO・Al2O3・SiO2)とアケルマナイトの全率固溶体メリライトであり、パウダー中にSrOを15質量%以下添加することにより、メリライト中のカルシウムの一部がストロンチウムに置き代わっているものが開示されている。

0008

特開2003−326342号公報
特開2010−125457号公報

先行技術

0009

第5版鉄鋼便覧第1巻製銑・製鋼第417〜419頁

発明が解決しようとする課題

0010

フィルムから析出する結晶がカスピダインとなるような高塩基度のモールドパウダーを用い、Tiをある一定以上含む溶融金属の連続鋳造を行うと、CaO・TiO2が析出する。以下、CaO・TiO2をペロブスカイト(Perovskite)と呼ぶ。融点が非常に高いペロブスカイトは鋳型内で滞留する、また鋳型壁面に付着するなどにより連続鋳造において潤滑性を損なう原因になるので好ましくない。ペロブスカイトの析出を抑制するためには、モールドパウダーの塩基度を低くする必要がある。

0011

低塩基度のモールドパウダーにおいて析出を促進することが容易である結晶として、前述のようにアケルマナイトを用いることができる。しかし、アケルマナイトを主たる結晶相としつつ、ペロブスカイトの析出を抑制できる程度にまで塩基度を低下させたパウダーを用いると、低塩基度パウダーは高粘度であるため、モールドパウダーの塩基度がアケルマナイトの純組成に近い場合でも、溶融したモールドパウダー中物質移動阻害されるため結晶化が遅い。

0012

パウダーの粘度を低下させるために用いられる成分であるNa2OやFは、いずれも凝固温度の低下をもたらすため、アケルマナイトの結晶化を阻害することとなる。

0013

またモールドパウダーにFを多く配合すると、カスピダインの二次的な結晶化が起きやすくなる。ここでの二次的な結晶化とは、溶融状態のモールドパウダーが冷却される過程において一旦アケルマナイトが析出した後、残存する液相からより低温でカスピダインが析出することを意味する。アケルマナイト結晶系のモールドパウダーを用いた連続鋳造においてカスピダインが二次的に析出すると、潤滑不良が発生しやすくなるという問題が生じる。

0014

以上の理由により、Tiをある一定以上含む溶融金属の連続鋳造を行うに際し、ペロブスカイトの析出を抑えることのできる低塩基度パウダーであって、高凝固温度および低粘度を兼ね備え、結晶化しやすく潤滑性と緩冷却機能を兼ね揃えたモールドパウダーを得ることは困難であった。

0015

本発明は、Tiをある一定以上含む溶融金属の連続鋳造を行うに際し、ペロブスカイトの析出を抑えることのできる低塩基度パウダーであって、高凝固温度および低粘度を兼ね備え、結晶化しやすく潤滑性と緩冷却機能を兼ね揃えた連続鋳造用モールドパウダー、及びそれを用いた溶融金属の連続鋳造方法を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0016

本発明に係るモールドパウダーは、以下に詳述するように、Ca(CaO)の一部をSr(SrO)に置き換えていることを特徴する。以下、塩基度についても、SrOを考慮し、原子比率としての(CaO+SrO)/SiO2を塩基度Aと称し、塩基度の定義として用いることとする。SrOを含有しない場合は、通常用いられるとおり、原子比率としてのCaO/SiO2が塩基度となるが、SrOを含む本発明の塩基度Aと区別するため、「塩基度*」と呼ぶことがある。また、本発明において、モールドパウダー中に含まれるCa分がすべてCaOであるとしてCaO含有量を算出している。

0017

本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
(1)主成分としてCaO,SrO,SiO2を含有し、原子比率としての(CaO+SrO)/SiO2で表される塩基度Aが0.7〜1.0であり、かつ原子比率としてのSrO/(CaO+SrO)が0.25〜0.60の範囲にあり、かつ1300℃における粘度が0.1〜0.3Pa・sであり、溶融したモールドパウダーが凝固する際に析出する主たる結晶がアケルマナイト(Akermanite:2CaO・MgO・2SiO2)であることを特徴とする連続鋳造用モールドパウダー。
(2)上記(1)に記載の連続鋳造用モールドパウダーを用いて、Ti濃度が0.01〜1.5質量%の溶融金属を連続鋳造することを特徴とする溶融金属の連続鋳造方法。

発明の効果

0018

割れ感受性が高く、Tiを含有する溶融金属を連続鋳造するに際し、本発明の連続鋳造用モールドパウダーを用いることにより、鋳造中にパウダー中にペロブスカイトが析出することがなく、割れの発生しない良好な鋳片を鋳造することができる。

0019

本発明の連続鋳造用モールドパウダーは、Ti濃度が0.01〜1.5質量%の溶融金属の連続鋳造に用いるに際し、鋳片の割れ発生を防止し、良好な連続鋳造を可能にするものである。

0020

パウダー中にSrOを含有しない従来知見においては、前述のように、アケルマナイトを主たる結晶相として緩冷却機能を発揮しつつ、Ti含有溶融金属の連続鋳造でペロブスカイトの析出を抑制できる程度に低い塩基度*のパウダーを用いようとすると、低い塩基度*パウダーは高粘度であるため結晶化が遅くなる問題が生じる。パウダーの粘度を低下させるために用いられる成分であるNa2OやFは、いずれも凝固温度の低下をもたらすため、アケルマナイトの結晶化を阻害することとなる。またモールドパウダーにFを多く配合すると、カスピダインの二次的な結晶化が起きやすくなる。

0021

本発明のパウダーの適正な粘度範囲は、1300℃における粘度が0.1〜0.3Pa・s(1〜3poise)の範囲である。前記粘度が0.3Pa・sを超えると、鋳片に表面縦割れが発生することがある。粘度が高すぎるためにアケルマナイトの結晶化が遅くなり、緩冷却効果を十分に得られないためと推定される。一方、0.1Pa・s未満とするためには、FやNa2Oなどの粘度を低下させる成分が極端に多くなり、結晶を構成する成分が少なくなるため緩冷却に必要な量のアケルマナイトが析出しない。

0022

本発明においては、パウダー中にSrOを含有させることによって凝固温度を上昇させ、上記問題を解決することを着想した。なお、モールドパウダーの好ましい凝固温度の範囲は1100〜1270℃である。凝固温度が1100℃未満ではモールドパウダーが連続鋳造において十分に結晶化しない。一方、凝固温度が1270℃を超えると鋳型内の潤滑性が損なわれる。凝固温度のより好ましい範囲は1130〜1230℃である。

0023

そこでまず、パウダー中のSrOが、アケルマナイト、ペロブスカイトやゲーレナイトの析出に及ぼす影響について評価した。その結果、パウダー成分において原子比率としてのSrO/(CaO+SrO)が0.60以下の範囲であれば、アケルマナイトとペロブスカイトの析出に関しては、SrOはCaOと同じように働くことが明らかとなった。CaOをSrOで置換できる、と表現することもできる。従って、前述のごとく、原子比率としての(CaO+SrO)/SiO2を塩基度Aとして塩基度の定義としたとき、同じ塩基度Aであれば、CaOが多くSrOが少ない場合も、CaOが少なくSrOが多い場合でも、アケルマナイトやペロブスカイトが析出するか否かという点については差が生じない。具体的には、塩基度Aを0.7以上とすればアケルマナイトを析出させることができる。また塩基度Aを1.0以下とすれば、ペロブスカイトの析出を防止することができる。塩基度Aのより好ましい範囲は0.8〜0.95である。なお、前述のとおり、モールドパウダー中のCaO含有量については、パウダーに含まれるCa分がすべてCaOであるとしてCaO含有量を算出している。

0024

以上のように、モールドパウダーがSrOを含有する場合、析出するアケルマナイトやペロブスカイト中のCaOの一部はSrOで置換される。ただし、結晶の一部がSrOで置換されている場合についても、以下、結晶名を「アケルマナイト」「ペロブスカイト」とそのままの名称で呼ぶこととする。

0025

パウダー中にSrOを含有させ、塩基度Aを0.7〜1.0の範囲内の一定塩基度Aとする。塩基度Aを定めているので、パウダー中のSrO濃度を上昇させるに従ってCaO含有量が低減する、換言すればパウダー中のCaOをSrOで置換することとなる。パウダー中の塩基度Aを上記範囲としつつSrO含有量を増大したところ、SrO/(CaO+SrO)が0.25以上である場合、モールドパウダーの凝固温度の上昇が認められた。

0026

本発明は、パウダーの塩基度Aを1.0以下の低塩基度Aとするため、このままでは粘度が高くなりすぎる。粘度を低下するためにNa2OやF含有量を増加すると、凝固温度が低くなりすぎる。これに対して本発明では、SrOの添加で凝固温度を上昇させることができるので、Na2OやFの増加で低下しすぎた凝固温度を適正化することが可能となった。具体的には、原子比率としてのSrO/(CaO+SrO)が0.25以上であれば、Na2OやFを添加して粘度を適正化した上で、パウダーの凝固温度を上昇させて凝固温度を適正化することが可能となった。ただし、SrO/(CaO+SrO)が0.60を超えると凝固温度が高くなりすぎてしまい、連続鋳造において鋳型内の潤滑性が損なわれるので、上限を0.60とする。SrO/(CaO+SrO)のより好ましい範囲は0.30〜0.50である。

0027

また、パウダー中にSrOを含まずにFを含有する場合、上述のようにカスピダインの二次的な結晶化が起きやすくなる。SrOがカスピダインの結晶化に及ぼす影響を調査したところ、SrOはカスピダインのCaOに置き換わらないことが明らかとなった。従って、塩基度Aを本発明範囲に保持しつつSrOを添加すると、それに応じてCaO含有量が低下するので、カスピダインの析出が阻まれることとなる。換言すると、SrOはカスピダインの二次的な結晶化を抑制する。そのため、SrOを含有する本発明のパウダーは、Fを多く配合したとしても、カスピダインが二次的に析出することによる潤滑性不良の発生を防止することができる。

0028

以上述べたとおり、本発明の連続鋳造用モールドパウダーは、主成分としてCaO,SrO,SiO2を含有し、原子比率としての(CaO+SrO)/SiO2で表される塩基度Aが0.7〜1.0であり、かつ原子比率としてのSrO/(CaO+SrO)が0.25〜0.60の範囲にあり、かつ1300℃における粘度が0.1〜0.3Pa・sであり、溶融したモールドパウダーが凝固する際に析出する主たる結晶がアケルマナイト(Akermanite:2CaO・MgO・2SiO2)であることを特徴とする。ただし、アケルマナイト中のCaOの一部がSrOに置換されている。

0029

まず、溶融したモールドパウダーが凝固する際に析出する主たる結晶について説明する。対象となるモールドパウダーを1300℃〜1400℃で一旦溶融した後、1〜20℃/分の冷却速度で凝固したときに、最も多く晶/析出する結晶を主たる結晶という。主たる結晶の定義は、前記凝固したモールドパウダーをX線回折解析に供した際のピーク強度が他の結晶の1.5倍以上ある結晶をいう。結晶をピーク強度順に並べたとき、1番と2番とのピーク強度比が1.5倍以上であれば、1番の結晶のみが主たる結晶である。1番と2倍のピーク強度比が1.5倍未満であり、2番と3番のピーク強度比が1.5倍以上であれば、1番と2番の結晶が主たる結晶である。2番の結晶は二次的な結晶化で析出した結晶であるといえる。

0030

「主成分としてCaO,SrO,SiO2を含有」するとは、CaO,SrO,SiO2の合計含有量が50質量%以上をいう。80質量%以上がより好ましい。

0031

パウダーの成分含有量(質量%)から、本発明の原子比率としての(CaO+SrO)/SiO2、原子比率としてのSrO/(CaO+SrO)を算出するには、以下の算出式を用いることができる。
(CaO+SrO)/SiO2(原子比率)
=(質量%CaO/56.1+質量%SrO/103.6)/(質量%SiO2/60.1)
SrO/(CaO+SrO)(原子比率)
=(質量%SrO/103.6)/(質量%CaO/56.1+質量%SrO/103.6)

0032

以上のように規定した本発明のモールドパウダーは、凝固温度を好ましい凝固温度の範囲である1100〜1270℃、より好ましい凝固温度の範囲である1130〜1230℃に維持することができる。

0033

また、本発明に係るモールドパウダーにおける前記作用の確実性を高めるためには、Al2O3濃度を3質量%以下、Na2O濃度とF濃度の和を3〜12質量%とすることがより望ましい。Al2O3濃度を3質量%以下とするのは、Al2O3濃度が3質量%を超えるとモールドパウダーの1300℃における粘度が高くなるからである。Al2O3濃度の下限値は特に指定しないが、原料に含まれる不純分である0.3〜1質量%が実質的な下限値である。

0034

Na2O濃度とF濃度の和を3〜12質量%とするのは、Na2O濃度とF濃度の和が3質量%未満ではモールドパウダーの1300℃における粘度が高くなるからである。一方、Na2O濃度とF濃度の和が12質量%を超えると、アケルマナイトを構成する成分が希釈されるため必要な量のアケルマナイトが析出しないからである。Na2O濃度とF濃度の和のより好ましい範囲は5〜9質量%である。

0035

上記本発明のモールドパウダーを用いることにより、Tiを含む溶融金属の鋳造においても、低塩基度Aであることからペロブスカイトを析出することがなく、凝固時に結晶としてアケルマナイトを析出するので緩冷却機能を備えているため、良好な連続鋳造が可能であるとともに鋳片の緩冷却化が可能であり、割れ発生感受性の高い品種についても割れを発生させることなく連続鋳造することが可能である。

0036

本発明のモールドパウダーを用いて鋳造する溶融金属として好ましくは溶鋼である。溶融金属中に含まれるTi含有量好適範囲は0.01〜1.5質量%である。Ti含有量が0.01%未満では、本発明のモールドパウダーを用いなくてもペロブスカイトの析出を防止することができる。Ti含有量が1.5%を超えると、本発明のモールドパウダーを用いたとしてもペロブスカイトの析出を防止することが困難である。

0037

(実施例1)
以下、本発明の効果を確認するために行った実施結果について説明する。本発明の実施例および比較例であるモールドパウダーとして下記表1に示す成分組成のものを準備し、凝固温度、1300℃での粘度、溶融したモールドパウダーが凝固する際に析出する主たる結晶について評価した。

0038

凝固温度は、モールドパウダーを1400℃で一旦溶融した後、2℃/分の冷却速度で冷却した際に振動片粘度計により測定した粘度が急上昇する温度である。

0039

1300℃における粘度は、上記粘度測定において連続的に測定された粘度のうち、1300℃における値である。

0040

溶融したモールドパウダーが凝固する際に析出する主たる結晶については、対象となるモールドパウダーを1300℃〜1400℃で一旦溶融した後、1〜20℃/分の冷却速度で凝固したときに、最も多く晶/析出する結晶とした。主たる結晶の定義は、前記凝固したモールドパウダーをX線回折解析に供した際のピーク強度が他の結晶の1.5倍以上ある結晶をいう。結晶をピーク強度順に並べたとき、1番と2番とのピーク強度比が1.5倍以上であれば、1番の結晶のみが主たる結晶である。1番と2倍のピーク強度比が1.5倍未満であり、2番と3番のピーク強度比が1.5倍以上であれば、1番と2番の結晶が主たる結晶である。主たる結晶がアケルマナイトである場合、アケルマナイト中のCaOの一部がSrOで置き換わっているか否かについては、SEM/EDXによりアケルマナイト結晶を観察し、SrOの含有率分析することで評価した。アケルマナイト中のSrO含有率が10質量%以上であれば、SrOでCaOが一部置換されたアケルマナイトであるとした。

0041

0042

結果を表1に示す。アンダーラインを付加した値は、本発明の範囲を外れている。主たる結晶のCaOの一部がSrOで置き換わっている場合には、結晶名に「Sr入り」と記載した。

0043

表1中のA〜Eは、本発明の実施例である。
本発明の実施例A〜Eはいずれも粘度が本発明範囲であり、塩基度Aが1.0以下であるからTi含有溶融金属の連続鋳造でもペロブスカイトを析出することがなく、連続鋳造において用いた際にアケルマナイトの結晶を析出することで緩冷却効果を得ることができる。特に実施例Aは凝固温度が高く、緩冷却効果に優れている。実施例Cは塩基度Aが特に低く、ペロブスカイトの析出を抑制する効果に優れる。

0044

一方、表1中のF〜Hは、本発明の要件を満たさない比較例である。
比較例FはSrOを含まないためにCaO含有量が高い従来のモールドパウダーであり、主たる結晶としてアケルマナイトの他にカスピダインの析出が認められる。

0045

比較例GはSrO/(CaO+SrO)が本発明の下限を外れており、SrOによる凝固温度時上昇効果が不十分であることから、実施例Aと同程度の凝固温度にするためFを少なくした例である。Fを減らしたことで粘度が本発明上限を外れ、連続鋳造において結晶化が遅くなり緩冷却効果が十分に得られない。

0046

比較例Hは塩基度Aが本発明の上限を外れ、SrOを含有しないモールドパウダーであり、主たる結晶はカスピダインである。塩基度Aが高いので、Tiを含む鋼種の連続鋳造においてはペロブスカイトが析出しやすい。

0047

(実施例2)
上記実施例1における実施例A、比較例GおよびHに示すモールドパウダーを用いて、垂直型連続鋳造機において表2の鋼No.1に示す成分を含むTi含有の中炭素鋼を鋳造した。C含有量が0.11%であることから鋳片の割れが発生しやすい品種である。鋳造速度は0.4m/分、鋳型サイズは厚み280mm×幅600mmであった。

0048

0049

実施例Aのモールドパウダーを使用した場合には、モールドパウダーの塩基度Aが1.0以下であるためにペロブスカイトの析出は発生せず、アケルマナイトの結晶化が起こり、十分な緩冷却効果が得られたことで鋳片の割れは発生せず、良好な表面品質を有する鋳片を鋳造することができた。

0050

一方、比較例Gのモールドパウダーは粘度が本発明の上限を外れたため結晶化が遅く、鋳造初期に十分な緩冷却効果が得られなかった。そのため、鋳造初期の鋳片には割れや疵が発生した。

0051

また、比較例Hのモールドパウダーは塩基度Aが1.0を超えているために鋳型内でペロブスカイトが析出しやすかった。鋳造した鋳片には析出したペロブスカイトが原因であると考えられる深い疵が多発した。

0052

次に、上記実施例1における実施例Cに示すモールドパウダーを用いて、表2の鋼No.2に示す成分を含むTi含有の中炭素鋼を鋳造した。連続鋳造機、鋳造速度、鋳型サイズも上記と同様である。このパウダーを用いた場合も、良好な表面品質を有する鋳片を製造することができた。溶鋼中のTi濃度が比較的高いにもかかわらず、ペロブスカイトの析出に由来すると考えられる疵は見られなかった。

0053

以上のように、本発明に係るモールドパウダーは、緩冷却効果を得ることで良質な鋳片を連続鋳造する際に使用するモールドパウダーとして有用であり、特にTiを含む鋼種の連続鋳造においてペロブスカイトの析出を避ける際に適している。

実施例

0054

本発明は上記の例に限らず、各請求項に記載された技術的思想範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。

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  • ポスコの「 ノズル」が 公開されました。( 2020/10/29)

    【課題・解決手段】本発明に係るノズルは、溶鋼が通過可能な通路、及び下端に、前記溶鋼が外部に吐き出される吐出し口が設けられた胴体部と、前記胴体部を中心として前記胴体部の外側の幅方向に延設されるように、前... 詳細

  • 日本製鉄株式会社の「 冷却ロール、双ロール式連続鋳造装置、薄肉鋳片の鋳造方法、及び、冷却ロールの製造方法」が 公開されました。( 2020/10/29)

    【課題】均一で粗大な結晶組織を有する薄肉鋳片を、安定して製造することが可能な冷却ロールを提供する。【解決手段】双ロール式連続鋳造装置に用いられる冷却ロールであって、ロール本体と、このロール本体の外周面... 詳細

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