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技術 射出増圧切換バルブ及び射出増圧切換方法

出願人 宇部興産機械株式会社
発明者 山根隆真鍋準治
出願日 2015年10月1日 (4年4ヶ月経過) 出願番号 2015-195696
公開日 2017年4月6日 (2年10ヶ月経過) 公開番号 2017-064766
状態 特許登録済
技術分野 チル鋳造・ダイキャスト
主要キーワード 供給側管路 補充填 流動断面積 最大開放状態 遮断開放 充填抵抗 伝播遅れ ポート閉塞
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (7)

課題

速度制御油圧源から射出シリンダに供給させる圧油量が多量であっても、同油圧源と接続されるポート閉塞させる際の制御応答性の悪化を抑制し、射出シリンダへの圧油の供給源速度制御用油圧源から増圧制御用油圧源へ切換制御する射出増圧切換方法を提供する。

解決手段

第1圧力室32aの第1ポート41及び第2ポート42を連通状態にさせると共に、同圧力室と第2圧力室32bとを仕切られた状態とする速度制御準備工程と、第2ポート開放力が、第2ポート閉塞力よりも大きい間、第2ポート42の開放状態が維持される速度制御工程と、同開放力が同閉塞力よりも小さくなることにより、第1可動スプール51が第2ポート42を閉塞させると共に、同スプール51の小径部51bにより、増圧制御用油圧源14からの圧油を第3ポート43から射出シリンダ10に供給させる増圧切換工程と、を有する射出増圧切換方法によって達成される。

概要

背景

まず、図1を参照しながら、油圧式射出シリンダを備える、一般的なダイカストマシン及び同ダイカストマシンを使用するアルミニウム製品鋳造方法を説明する。

ダイカストマシン100は、金型装置101と、射出装置102とから構成されている。金型装置101には、対向する一対の固定プラテン1と可動プラテン2との間に、固定金型3と可動金型4とがそれぞれ取付けられている。固定金型3及び可動金型4は、それぞれが取り付けられた固定プラテン1及び可動プラテン2が、図示しない型開閉手段によって型閉じされることにより、その間に製品形状を含む金型キャビティ(空洞)5が形成される。また、固定プラテン1には、アルミニウム(AL)等の溶湯高温溶融状態)が供給(注湯)されるスリーブ6が、固定プラテン1の固定金型3側から、固定プラテン1を貫通させて突出されるように配置されている。そして、スリーブ6内は、固定金型3を貫通させて金型キャビティ5内に連通されている。

次に、射出装置102には、本体13と、往復運動するピストン12とを具備する油圧式の射出シリンダ10が設けられている。ピストン12は、図1において右端にピストンヘッドを具備し、その左端は、射出カップリング9によってプランジャロッド8と連結され、プランジャロッド8の左端にプランジャチップ7が取付けられている。プランジャチップ7は、スリーブ6の突出端側からスリーブ6内に嵌合されており、射出シリンダ10のピストン12を前進(図1の左側)させることにより、スリーブ6内に注湯された溶湯を金型キャビティ5内に射出充填させることができる。

図1においては、射出シリンダ10が油圧式であるので、図示せぬ油圧供給源油圧ポンプ蓄圧器等)より、圧油を射出シリンダ10のヘッド室10Hに供給させて、ピストン12を前進させる。金型キャビティ5内に射出充填させた溶湯を凝固させた後、図示せぬ型開閉手段によって可動金型4を固定金型3から型開きさせて、図示しない製品取出手段等で、いずれかの金型(一般的には可動金型4側)に保持させたアルミニウム製品を金型装置101外へ搬送させることにより、アルミニウム製品が鋳造成形される。

ここで、射出充填工程、すなわち、後述する低速・高速射出工程における射出速度や、増圧工程における射出圧力、すなわち、金型キャビティ5内に射出充填させた溶湯に付与させる増圧力を、それぞれの工程において適切に設定し制御させることと、射出充填工程(速度制御)から増圧工程(増圧制御)への切換タイミングとが、良品鋳造するために極めて重要である。一般的なアルミニウム製品の鋳造方法の、射出充填工程における射出速度と、増圧工程における射出圧力の関係とを、図2を用いて説明する。射出充填工程が開始される前の注湯工程において、図示せぬ注湯装置により溶湯がスリーブ6上面の開口部からスリーブ6内に注湯され射出開始状態となる。この時のプランジャチップ7の先端位置はAである。(図2の上の図を参照)

この状態から、まず低速射出工程(SL)が行われる。この工程ではプランジャチップ7を安定した低速(VL)で前進させる制御が要求される。プランジャチップ7を高速で前進させたり、速度変動を伴う不安定な状態で前進させたりすると、スリーブ6の内部において溶湯を波立たせて、溶湯内に空気が巻き込まれ、等の品不良の要因となるためである。溶湯がスリーブ6内を満たし、更に、溶湯の湯面がゲート(金型キャビティ5内への溶湯流入口)近傍まで上昇されるB位置までプランジャチップ7を前進させると、図示しない射出ストロークセンサ等によりこれを検出させて、低速射出工程から高速射出工程に切り換えさせる。(図2の上から2番目の図を参照)

高速射出工程(Sh)では、プランジャチップ7の前進速度一気加速させ、高速(Vh)で金型キャビティ5内に溶湯を射出充填させる。これは、溶湯に対して温度が低い金型キャビティ5の表面に溶湯が接触すると急速に溶湯の凝固が進行するためであり、良品の鋳造のためには、できるだけ短時間で金型キャビティ5内への溶湯の射出充填を完了させることが望ましい。特に、アルミニウム製品が大型の場合、あるいは複雑な形状の場合、高速射出工程においてより高速での射出充填が求められる。

そして、金型キャビティ5内が溶湯で完全に満たされる直前になると、金型キャビティ5内の各部位に充填された溶湯の冷却凝固の進行に伴い、溶湯の流動性が低下し、金型キャビティ5内への溶湯の充填抵抗が急激に上昇する。そのため、射出圧力(射出シリンダ10のヘッド室10Hの圧力)が急激に上昇し、これに呼応するように射出速度が急速に低下する。そして、プランジャチップ7がC位置に達し、金型キャビティ5内が溶湯で完全に満たされる(VP切換位置等と呼称する)と、次の増圧工程に切り換えさせる。(図2の上から3番目の図を参照)この切り換えは、射出圧力が急激に上昇する際の所定の射出圧力(設定切換圧力)を予め設定させ、射出圧力を圧力センサ等で検出させて、設定切換圧力への到達を持って切り換えさせる形態や、金型キャビティ5内が溶湯で満たされるピストン12の位置(設定切換位置)を予め設定させ、ピストン12の位置を図示しない射出ストロークセンサ等により検出させて、設定切換位置への到達を持って切り換えさせる形態や、その両方の形態を適宜組み合わせた形態等がある。

増圧工程では、金型キャビティ5内の溶湯圧力を上昇させる(昇圧)タイミングが早すぎると、金型の合わせ面からバリ吹きが発生する。また、遅すぎると、金型キャビティ5内の溶湯の冷却凝固が進行し、射出充填中に溶湯内に巻き込まれた、金型キャビティ5内のガス等により形成された空間(巣)を効果的に押し潰して、同空間内のガスを溶湯外排出させることが困難になり、アルミニウム製品に巣が発生する。そのため、プランジャチップ7が、適切な昇圧位置に到達したタイミングで、且つ、適切な昇圧時間(速度)で射出圧力を上昇させる必要がある。そして、射出圧力が設定された増圧圧力(P)に到達すると、一定の時間、射出圧力を保持させる制御を行わせる。この間、射出圧力(増圧圧力P)を付与させた状態で、溶湯内に形成された空間(巣)を押し潰すと共に、溶湯が凝固により収縮する分、金型キャビティ5内に溶湯を補充填させる(押湯)ためのプランジャチップ7の前進が継続される。(図2の下の図を参照)

ここで、プランジャチップ7の前進動作を好適に制御するためには、まず射出充填工程中には、射出シリンダ10のヘッド室10Hへの所定圧での多量の圧油供給が、次に、増圧工程中には、同じく射出シリンダ10のヘッド室10Hへの、該所定圧より高圧での少量の圧油供給が必要とされる。何故なら、金型キャビティ5内が溶湯で満たされるまでの射出充填工程(低速・高速射出工程)中、プランジャチップ7の所定の前進速度を実現するために必要な、射出シリンダ10のヘッド室10Hの容量の増加率に準じた多量の圧油供給が必要となるからである。

次に、金型キャビティ5内が溶湯で満たされた後の増圧工程においては、金型キャビティ5内の溶湯の凝固収縮量を補う溶湯量を補充填させるだけ、プランジャチップ7を前進させれば良く、そのために多量の圧油を供給させる必要がない。一方、プランジャチップ7を介して所定の増圧力を溶湯へ短時間で、且つ、溶油凝固収縮連動させて付与させたり、溶湯の充填抵抗に抗して、溶湯内の巣を効果的に押し潰したりするために、射出充填工程に必要な該所定圧より高圧での圧油供給が必要になるからである。

このような背景を鑑み、射出シリンダ10へ圧油を供給させる様々な油圧回路が公知である。例えば、図示はしていないが、圧油の供給源として1つの蓄圧器(アキュムレータ)と、差動油圧回路(ランアラウンド回路)と、を備える差動方式がある。具体的には、射出シリンダ10のヘッド室10Hへの所定圧での多量の圧油供給を必要とする射出充填工程においては、射出シリンダ10のピストン12の前進動作に伴って同ロッド室10Rから排出される圧油を、蓄圧器から射出シリンダ10のヘッド室10Hに供給される圧油と合流させて圧油の供給量を増加させる差動油圧回路を形成させる。そして、射出シリンダ10のヘッド室10Hへの、該所定圧より高圧での少量の圧油供給を必要とする増圧工程への切換制御時は、この差動油圧回路を解除させ、蓄圧器から射出シリンダ10のヘッド室10Hに圧油を供給させると共に、同ロッド室10Rから圧油をタンクラインに排出させる方式である。記載した構成の符号は図1に準じているが、後述する特許文献1の図9を参照すると理解が容易である。

また、図示はしていないが、圧油の供給源として1つの蓄圧器(アキュムレータ)と、ブーストシリンダ増圧シリンダ)と、を備えるブースト方式がある。これは、射出シリンダ10のヘッド室10H側に、射出シリンダ10のピストン径よりもさらに大径のピストンを有するブーストシリンダが連結された射出シリンダを使用する方式であって、射出充填工程においては、射出シリンダ10のヘッド室10H側に蓄圧器から所定圧の圧油を供給させ、増圧工程においては、ブーストシリンダのヘッド室側に、同じ蓄圧器から所定圧の圧油を供給させて、両シリンダのピストン径の差分だけ、射出シリンダ10のヘッド室10H側に保持された圧油の圧力を上昇させて、該所定圧より高圧の保持圧力を得る方式である。こちらも、記載した構成の符号は図1に準じているが、後述する特許文献1の図10を参照すると理解が容易である。

一方、図3に示すように、圧油の供給源として2つの蓄圧器を備える2段油圧源方式がある。この2段油圧源方式は、所定圧での多量の圧湯供給を目的とした速度制御用油圧源14と、該所定圧より高圧での少量の圧油供給を目的とした増圧制御用油圧源15とを備え、それぞれの圧油供給源遮断開放切換弁18、19を介して射出シリンダ10のヘッド室10Hに圧油を供給可能に油圧回路が構成されており、射出充填工程及び増圧工程のそれぞれにおいて、射出シリンダ10のヘッド室10Hに供給させるべき、異なる仕様の圧油を、異なる供給源から供給させることができるため、油圧回路が複雑になることなく、プランジャチップ7の前進動作を好適に制御することができるとされている。

速度制御用油圧源14及び増圧制御用油圧源15は、本体内摺動可能な仕切りによりガス室油室とに分割させた構成のピストンアキュムレータ等の蓄圧器が採用される。同ガス室に不活性ガスを所望する圧力でチャージさせておくことにより、遮断開放切換弁18、19を開放させて、同油室内の圧油を管路に排出させて、射出シリンダ10のヘッド室10Hに所望する圧力の圧油を供給させることができる。また、圧油排出後は、図示しない管路により、油圧源22からの圧油を、必要に応じて増圧ブースタ等が配置された蓄圧増圧回路を介して同油室内に供給させることにより、再び、同油室内に圧油を蓄える(蓄圧させる)ことができる。所定圧での多量の圧湯供給を目的とした速度制御用油圧源14は、同油室からの圧油排出量が多いため、圧油排出時の同ガス室の容積増加(油室の容積減少)が、該所定圧より高圧での少量の圧油供給を目的とした増圧制御用油圧源15に対して著しく、同ガス室のガス圧力の低下も著しいため、例えば、同ガス室側にガスボトル17等を接続させ、同油室からの圧油排出中の、同ガス室のガス圧力の低下を抑制させても良い。

油圧源22は、一般的には電動モータで駆動される油圧ポンプが採用され、油圧源22により、速度制御用油圧源14や増圧制御用油圧源15への圧油の供給(蓄圧)や、射出シリンダ10のロッド室10Rへの圧油の供給(ピストン12の後退動作)が行われる。

尚、図3に示す油圧回路図においては、図2と同じ構成について同じ符号を付与しているため、図3にのみ記載されている構成について説明する。射出シリンダ10のピストン12には、ピストン12の位置をリアルタイムで検出できる射出ストロークセンサ26が配置されている。先に説明したように、射出充填工程における低速射出工程から高速射出工程への切換位置の設定や、VP切換位置等の、射出充填工程から増圧工程への切換位置の設定等に使用される。そして、射出シリンダ10のロッド室10R側の管路には、流量制御弁16が配置されている。この流量制御弁16は、サーボモータパイロット油圧等の駆動源により弁内の可動部(スプール)を移動させて、ロッド室10R側の管路を油圧源22側かタンク24側に切り換えると共に、それぞれの管路に切り換えた状態でその開度を調整して、圧油の流量を制御可能なサーボバルブである。本油圧回路においては、この流量制御弁16を、射出充填工程の低速・高速射出工程における、ロッド室10Rからタンク24側へ排出させる圧油量の流量制御、すなわち、低速・高速射出工程におけるピストン12の前進速度の制御時や、増圧工程完了後に、ロッド室10R側の管路を油圧源22側に切り換えさせての、射出シリンダ10のピストン12の後退動作時に使用する。

他には、流量制御弁16及び油圧源22の間に逆止弁23が配置されている。また、増圧制御用油圧源15の遮断開放切換弁19と、射出シリンダ10のヘッド室10Hとの間の管路には絞り弁21が配置されている。この絞り弁21は、先に説明したように、適切な昇圧時間(速度)で射出圧力を上昇させるために配置され、手動や自動で絞り量を予め調節可能な絞り弁が採用される。また、速度制御用油圧源14及び増圧制御用油圧源15から、射出シリンダ10のヘッド室10Hに圧油を供給させる管路は、途中で分岐されてタンク24側に管路接続され、そのタンク24側管路に射出シリンダ後退バルブ20が配置されている。この射出シリンダ後退バルブ20は、通常は遮断されているが、増圧工程完了後、同バルブを開放させると共に、流量制御弁16を油圧源22側の管路に切り換えさせ、油圧源22から、射出シリンダ10のロッド室10Rに圧油を供給させて、射出シリンダ10のピストン12を後退させる。以上が、図3に示す2段油圧源方式の油圧回路の主要な構成であって、本願発明を説明するのに不要と思われる構成や管路については、説明や図示を割愛している。

ここで、図3に示すような、2段油圧源方式の油圧回路において、射出充填工程から増圧工程への切り換えを行う方法を説明する。まず、増圧制御用油圧源15の遮断開放切換弁19が遮断されている状態において、速度制御用油圧源14の遮断開放切換弁18を開放させて、速度制御用油圧源14に蓄圧された圧湯を、射出シリンダ10のヘッド室10Hに供給させて、射出充填工程を開始させる。射出充填工程の低速・高速射出工程それぞれの射出速度(ピストン12の前進速度)は、射出シリンダ10のロッド室10R側の管路に配置された流量制御弁16をタンク24側の管路に切り換えると共に、同流量制御弁16により、タンク24へ排出させる圧油の流量制御により制御される。

射出充填工程の高速射出工程の終盤において、予め設定したVP切換位置が検出されると増圧工程に切り換えられる。具体的には、速度制御用油圧源14の遮断開放切換弁18を遮断させると共に、増圧制御用油圧源15の遮断開放切換弁19を開放させて、増圧制御用油圧源15に蓄圧された圧油を、絞り弁21を介して、射出シリンダ10のヘッド室10Hに供給させる。図3の油圧回路図においては、射出シリンダ10のピストン12の位置を射出ストロークセンサ26により検出させて、ピストン12の設定切換位置への到達を検出させて増圧工程に切り換えられる形態とする。尚、この時、射出シリンダ10のロッド室10R側の流量制御弁16は、直前の高速射出工程におけるタンク24側への開度(射出速度が高速なので開度は大)を維持させるか、絞り弁21による昇圧時間(速度)の設定をより有効にするため全開状態最大開度)にさせて、ロッド室10Rからの圧油の排出抵抗を最小限にすることが好ましい。

増圧制御用油圧源15に蓄圧される圧油の圧力(同ガス室にチャージさせる不活性ガスの圧力)、と、絞り弁21の絞り量(開度)は、上記の状態において、所望する昇圧時間(速度)で所望する射出圧力(増圧力)に到達した後、その増圧力が維持されるように予め調整・設定されている。そのため、予め設定した時間、同増圧力の溶湯への付与を継続させた後、増圧制御用油圧源15の遮断開放切換弁19を遮断させて、増圧工程を完了させる。

しかしながら、図3に示すような、2段油圧源方式の油圧回路における、上記のような、射出充填工程から増圧工程への切換方法(射出増圧切換方法)には、次のような問題があった。

それは、2つの油圧源を2つの遮断開放切換弁で切り換えさせることに起因する。まず、VP切換位置への到達を検出した射出ストロークセンサ26からの位置信号に基づき、速度制御用油圧源14の遮断開放切換弁18へ遮断信号発信させ、遮断開放切換弁18を遮断させた後、増圧制御用油圧源15の遮断開放切換弁19へ開放信号を発信させ、遮断開放切換弁19を開放させる制御、すなわち、2つの弁を連動制御させる必要がある。各信号の通信速度によっては、これら2つの弁の連動制御が所望する時間内に完了せず、増圧力の溶湯への付与が遅れる(圧力伝播遅れ)ため、試験鋳造等で、これら信号の遅れやそれぞれの弁の動作時間を確認して、これら2つの弁の連動制御が所望する時間内に完了するように、各弁の作動信号を発信させるピストン12の位置を予め設定させて、各弁を前倒しで作動させる必要があった。

次に、速度制御用油圧源14の遮断開放切換弁18は、多量の圧油の遮断開放を行わせるため、また、増圧制御用油圧源15の遮断開放切換弁19は、高い圧力の圧油の遮断開放を行わせるため、これら遮断開放切換弁はいずれも比較的大型の弁にならざるを得ない。そのため、これら2つの弁を接近させて、且つ、射出シリンダ10の近傍に配置させることが難しい。そのため、これら2つの弁は、それぞれの油圧源近傍に配置されることが一般的であり、その結果、これら遮断開放切換弁から、射出シリンダ10のヘッド室10Hまでの管路が長くなる。特に、増圧制御用油圧源15の遮断開放切換弁19が開放制御されてから、増圧制御用油圧源15からの圧油及び同圧油圧力が、遮断開放切換弁19以降の管路と絞り弁21とを介して、射出シリンダ10のヘッド室10Hに供給・伝播されて、その増圧力が、プランジャチップ7(ピストン12)を介して金型キャビティ5内の溶湯に付与される際、この管路長さが増圧力の圧力伝播遅れを生じさせるという問題があった。

このような問題を鑑み、出願人は、軸方向の端部に1つ、側面に2つ、合計3つのポートを有するバルブ本体内に、軸方向に摺動可能な中空可動スリーブと、同可動スリーブを軸方向に摺動させるパイロット圧力部とを配置させた射出成形制御装置(特許文献1/図1)を考案し、この射出成形制御装置1つで、射出シリンダへの圧油の供給源を速度制御用油圧源から増圧制御用油圧源へ切換制御する射出増圧切換バルブとして採用することを提案している(特許文献1の第3の実施形態/図4)。

特許文献1の射出成形制御装置(射出増圧切換バルブ)は、常時開放状態の、軸方向の端部のPポート102(第1ポート)に対する、バルブボディ101(バルブ本体)の側面のAポート103及びBポート104(第2及び第3ポート)との連通及び遮断を、中空の可動スプール111(第1可動スプール)の軸方向の摺動により切換制御させるものである。具体的には、可動スプール111の側面に2つの通路112、113が開口されており、可動スプール111を軸方向に摺動させて、Aポート103と通路112とが連通する位置において、Bポート104と通路113とを連通させず、逆に、Bポート104と通路113とが連通する位置において、Aポート103と通路112とを連通させないように、バルブボディ101の両ポートと可動スプール111の両通路とが構成されている。尚、ここで挙げた構成に続いて括弧書きした構成は、後述する本発明に係る実施例1の、射出増圧切換バルブの構成であって、特許文献1の射出成形制御装置の各構成に相当する構成である。特許文献1の射出成形制御装置と本発明に係る実施例1の射出増圧切換バルブとの比較を容易にするために挙げたものであって、相当する構成が他方の構成に対して同じ構成であること、あるいは、同じ機能を有していることを示唆すものではない。

可動スプール111の軸方向の摺動は、1つのパイロット制御バルブ200により制御される。具体的には、パイロット圧力部の第1パイロット圧力室105に圧油を供給させれば、Pポート102とAポート103とが連通され(Bポート104は遮断)、第2パイロット圧力106に圧油を供給させると、Pポート102とBポート104とが連通される(Aポート103は遮断)。

特許文献1の第3の実施形態においては、射出成形制御装置38の各ポートは、Pポート102及び油圧シリンダ31の第1油圧室H3、Aポート103及びACC31、Bポート104及びACC32、がそれぞれ管路接続されている。

この形態においては、VP切換位置への到達を検出した射出ストロークセンサ26からの位置信号に基づき、1つのパイロット制御バルブ200を制御して、1つの射出成形制御装置で、射出シリンダへの圧油の供給源を速度制御用油圧源から増圧制御用油圧源へ切換制御させる。そのため、図3の油圧回路図に示すような、2つの弁を連動制御させる形態に対して、各弁の信号遅れ分や動作時間を鑑みた、各弁の作動信号を発信させるピストン12の位置を予め設定させて、各弁を前倒しで作動させる必要はない。また、射出充填工程(射出速度制御)中、Bポート104が遮断されているため、予め、ACC32から蓄圧された圧油を管路に開放させて、絞り弁21を含む、Bポート104に接続される管路内に圧油を供給させると共に、同圧油に増圧圧力を伝播させておくことができる。そのため、Bポート104の開放と同時に、Pポート102以降の管路に圧油及び増圧圧力を供給・伝播させることができるため、2つの弁を連動制御させる形態に対して、増圧力を伝播させる必要のある管路を短縮させることができ、増圧力の溶湯への圧力伝播遅れを抑制させることができる。

上記のように、特許文献1の射出成形制御装置の、同文献の第3の実施形態のような、2段油圧源方式の油圧回路への射出増圧切換バルブとしての採用は、同射出成形制御装置駆動用のパイロット制御バルブを作動させるための、VP切換点の設定に問題が無ければ、射出充填工程(射出速度制御)から増圧工程(射出圧力制御)への切換制御を好適に行うことができ、アルミニウム製品の品質向上に大きく貢献するものである。

概要

速度制御油圧源から射出シリンダに供給させる圧油量が多量であっても、同油圧源と接続されるポートを閉塞させる際の制御応答性の悪化を抑制し、射出シリンダへの圧油の供給源を速度制御用油圧源から増圧制御用油圧源へ切換制御する射出増圧切換方法を提供する。第1圧力室32aの第1ポート41及び第2ポート42を連通状態にさせると共に、同圧力室と第2圧力室32bとを仕切られた状態とする速度制御準備工程と、第2ポート開放力が、第2ポート閉塞力よりも大きい間、第2ポート42の開放状態が維持される速度制御工程と、同開放力が同閉塞力よりも小さくなることにより、第1可動スプール51が第2ポート42を閉塞させると共に、同スプール51の小径部51bにより、増圧制御用油圧源14からの圧油を第3ポート43から射出シリンダ10に供給させる増圧切換工程と、を有する射出増圧切換方法によって達成される。

目的

この2段油圧源方式は、所定圧での多量の圧湯供給を目的とした速度制御用油圧源14と、該所定圧より高圧での少量の圧油供給を目的とした

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

射出シリンダにより、金型キャビティ溶湯射出充填させる際に、射出シリンダへの圧油供給源速度制御用油圧源から増圧制御用油圧源へ切換制御する射出増圧換バルブあって、長手方向に連続する空間が形成されたバルブ本体と、該バルブ本体の、該空間の該長手方向に直交する位置に第1ポートが、該空間の該長手方向の一端に第2ポートが配置される第1圧力室と、該バルブ本体の、該空間の該長手方向に摺動可能に配置され、該長手方向の一端に、該第2ポートに押圧させて該第2ポートを閉塞可能に形成される閉塞頂部と、他端に形成される大径部と、該閉塞頂部及び該大径部の中間部に形成される小径部と、該閉塞頂部及び該小径部間の開口部と該大径部端面の開口部とが連通される中空部と、を有する第1可動スプールと、該第1可動スプールの該大径部側に、該空間の該長手方向に摺動可能に配置され、該第1可動スプールの該大径部と略同じ外径を有する第2可動スプールと、該長手方向の一端側が、該第1可動スプールにより該第1圧力室と仕切られ、該長手方向の他端側も該第1可動スプールにより仕切られ、該バルブ本体の、該空間の該長手方向に直交する位置に、第3ポートが配置される第2圧力室と、該長手方向の一端側が、該第1可動スプールにより該第2圧力室と仕切られ、該長手方向の他端側が、該第1可動スプールの該大径部により仕切られ、第1パイロットポートが配置される第3圧力室と、該第1可動スプールの該大径部と該第2可動スプールとの間に形成され、該第1可動スプールの該中空部により該第1圧力室と連通される第4圧力室と、該第2可動スプールにより該第4圧力室と仕切られ、第2パイロットポートが配置される第5圧力室と、を有する射出増圧切換バルブ。

請求項2

前記第1可動スプールが前記第2ポートを閉塞させる位置よりも所定量、前記第2ポートから離間した連通開始位置に到達するまでは、前記第1可動スプールにより、前記第1圧力室と前記第2圧力室とが仕切られると共に、該連通開始位置を越えて、前記第1可動スプールが前記第2ポートに接近すると、前記第1可動スプールの前記小径部により、前記第1圧力室と前記第2圧力室との連通が開始され、前記第1可動スプールの前記閉塞頂部により、前記第2ポートを閉塞させた状態で、前記小径部による前記第1圧力室と前記第2圧力室との連通が最大開度となるように前記小径部が形成される、請求項1に記載の射出増圧切換バルブ。

請求項3

前記第1パイロットポートに圧油を供給させ、前記第3圧力室の圧力を上昇させて、前記第1可動スプール及び前記第2可動スプールを前記第2ポートから離間させて、前記第1圧力室において、前記第1ポート及び前記第2ポートを連通状態にさせると共に、前記第1圧力室と前記第2圧力室とを仕切られた状態とする速度制御開始工程と、該速度制御開始工程により開放させた前記第2ポートから、前記速度制御用油圧源からの圧油を前記第1ポートを介して前記射出シリンダに供給させて、前記第2ポート側の圧力及び前記閉塞頂部の受圧面積に基づく第2ポート開放力が、前記第1可動スプールの前記中空部により前記第4圧力室に伝播される前記第1ポート側の圧力及び前記第1可動スプールの前記大径部の受圧面積に基づく第2ポート閉塞力よりも大きい間、前記第2ポートの開放状態が維持される速度制御工程と、該第2ポート開放力が該第2ポート閉塞力よりも小さくなることにより、前記第1可動スプールの前記閉塞頂部が前記第2ポートを閉塞させると共に、前記第1可動スプールの前記小径部により、前記第1圧力室と前記第2圧力室とを連通させて、前記増圧制御用油圧源からの圧油を前記第3ポートから、前記第1ポートを介して前記射出シリンダに供給させる増圧切換工程と、により、前記射出シリンダへの圧油の供給源を前記速度制御用油圧源から前記増圧制御用油圧源へ切換制御する、請求項1又は請求項2に記載の射出増圧切換バルブを使用する射出増圧切換方法。

請求項4

前記速度制御準備工程の完了後、前記第1可動スプールにより、前記第1圧力室と前記第2圧力室とが仕切られている状態の所定のタイミングにおいて、前記増圧制御用油圧源からの圧油を前記第3ポート側の管路へ開放させる、請求項3に記載の射出増圧切換方法。

請求項5

前記速度制御工程において、流出側である前記第1ポート側の圧油圧力の上昇、又は、流入側である前記第2ポートの圧油の圧力低下、又は、その両方の現象発生に伴い、前記第2ポート開放力が前記第2ポート閉塞力と略同じ、又は、前記第2ポート開放力が前記第2ポート閉塞力よりも小さくなることにより、前記第1可動スリーブが前記第2ポート側へ移動して、前記第2ポートの開度が減少する第2ポート開度維持・減少状態と、該第2ポート開度減少状態における該開度の低下に準じて、前記第2ポート側の圧油圧力が圧力損失で低下し、再び、前記第2ポート開放力が前記第2ポート閉塞力と略同じ、又は、前記第2ポート開放力が前記第2ポート閉塞力より大きくなり、前記第2ポートの該開度が維持される、又は、増加する第2ポート開度維持・増加状態と、が、前記速度制御工程の進行に伴って繰り返されることにより、前記第2ポートを介して前記射出シリンダに供給される、前記速度制御用油圧源からの圧油量が漸次減少する、請求項3又は請求項4に記載の射出増圧切換方法。

請求項6

増圧工程が完了した後、前記第2パイロットポートに圧油を供給させて、前記第5圧力室の圧力を上昇させて、前記第2可動スプールにより、前記第1可動スプールを前記バルブ本体の前記第2ポート側に押圧させて、前記第2ポートを閉塞させる次サイクル準備工程を、更に有する請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載の射出増圧切換方法。

技術分野

0001

この発明は、速度制御用油圧源及び増圧制御用油圧源の2つの油圧源と、油圧式射出シリンダと、を備えるダイカストマシンにおいて、射出充填工程中及び増圧工程中の射出シリンダに供給させる圧油供給源を、速度制御用油圧源から増圧制御用油圧源に切換制御する射出増圧切換バルブと、同バルブを使用する射出増圧切換方法に関するものである。

背景技術

0002

まず、図1を参照しながら、油圧式射出シリンダを備える、一般的なダイカストマシン及び同ダイカストマシンを使用するアルミニウム製品鋳造方法を説明する。

0003

ダイカストマシン100は、金型装置101と、射出装置102とから構成されている。金型装置101には、対向する一対の固定プラテン1と可動プラテン2との間に、固定金型3と可動金型4とがそれぞれ取付けられている。固定金型3及び可動金型4は、それぞれが取り付けられた固定プラテン1及び可動プラテン2が、図示しない型開閉手段によって型閉じされることにより、その間に製品形状を含む金型キャビティ(空洞)5が形成される。また、固定プラテン1には、アルミニウム(AL)等の溶湯高温溶融状態)が供給(注湯)されるスリーブ6が、固定プラテン1の固定金型3側から、固定プラテン1を貫通させて突出されるように配置されている。そして、スリーブ6内は、固定金型3を貫通させて金型キャビティ5内に連通されている。

0004

次に、射出装置102には、本体13と、往復運動するピストン12とを具備する油圧式の射出シリンダ10が設けられている。ピストン12は、図1において右端にピストンヘッドを具備し、その左端は、射出カップリング9によってプランジャロッド8と連結され、プランジャロッド8の左端にプランジャチップ7が取付けられている。プランジャチップ7は、スリーブ6の突出端側からスリーブ6内に嵌合されており、射出シリンダ10のピストン12を前進図1の左側)させることにより、スリーブ6内に注湯された溶湯を金型キャビティ5内に射出充填させることができる。

0005

図1においては、射出シリンダ10が油圧式であるので、図示せぬ油圧供給源油圧ポンプ蓄圧器等)より、圧油を射出シリンダ10のヘッド室10Hに供給させて、ピストン12を前進させる。金型キャビティ5内に射出充填させた溶湯を凝固させた後、図示せぬ型開閉手段によって可動金型4を固定金型3から型開きさせて、図示しない製品取出手段等で、いずれかの金型(一般的には可動金型4側)に保持させたアルミニウム製品を金型装置101外へ搬送させることにより、アルミニウム製品が鋳造成形される。

0006

ここで、射出充填工程、すなわち、後述する低速・高速射出工程における射出速度や、増圧工程における射出圧力、すなわち、金型キャビティ5内に射出充填させた溶湯に付与させる増圧力を、それぞれの工程において適切に設定し制御させることと、射出充填工程(速度制御)から増圧工程(増圧制御)への切換タイミングとが、良品鋳造するために極めて重要である。一般的なアルミニウム製品の鋳造方法の、射出充填工程における射出速度と、増圧工程における射出圧力の関係とを、図2を用いて説明する。射出充填工程が開始される前の注湯工程において、図示せぬ注湯装置により溶湯がスリーブ6上面の開口部からスリーブ6内に注湯され射出開始状態となる。この時のプランジャチップ7の先端位置はAである。(図2の上の図を参照)

0007

この状態から、まず低速射出工程(SL)が行われる。この工程ではプランジャチップ7を安定した低速(VL)で前進させる制御が要求される。プランジャチップ7を高速で前進させたり、速度変動を伴う不安定な状態で前進させたりすると、スリーブ6の内部において溶湯を波立たせて、溶湯内に空気が巻き込まれ、等の品不良の要因となるためである。溶湯がスリーブ6内を満たし、更に、溶湯の湯面がゲート(金型キャビティ5内への溶湯流入口)近傍まで上昇されるB位置までプランジャチップ7を前進させると、図示しない射出ストロークセンサ等によりこれを検出させて、低速射出工程から高速射出工程に切り換えさせる。(図2の上から2番目の図を参照)

0008

高速射出工程(Sh)では、プランジャチップ7の前進速度一気加速させ、高速(Vh)で金型キャビティ5内に溶湯を射出充填させる。これは、溶湯に対して温度が低い金型キャビティ5の表面に溶湯が接触すると急速に溶湯の凝固が進行するためであり、良品の鋳造のためには、できるだけ短時間で金型キャビティ5内への溶湯の射出充填を完了させることが望ましい。特に、アルミニウム製品が大型の場合、あるいは複雑な形状の場合、高速射出工程においてより高速での射出充填が求められる。

0009

そして、金型キャビティ5内が溶湯で完全に満たされる直前になると、金型キャビティ5内の各部位に充填された溶湯の冷却凝固の進行に伴い、溶湯の流動性が低下し、金型キャビティ5内への溶湯の充填抵抗が急激に上昇する。そのため、射出圧力(射出シリンダ10のヘッド室10Hの圧力)が急激に上昇し、これに呼応するように射出速度が急速に低下する。そして、プランジャチップ7がC位置に達し、金型キャビティ5内が溶湯で完全に満たされる(VP切換位置等と呼称する)と、次の増圧工程に切り換えさせる。(図2の上から3番目の図を参照)この切り換えは、射出圧力が急激に上昇する際の所定の射出圧力(設定切換圧力)を予め設定させ、射出圧力を圧力センサ等で検出させて、設定切換圧力への到達を持って切り換えさせる形態や、金型キャビティ5内が溶湯で満たされるピストン12の位置(設定切換位置)を予め設定させ、ピストン12の位置を図示しない射出ストロークセンサ等により検出させて、設定切換位置への到達を持って切り換えさせる形態や、その両方の形態を適宜組み合わせた形態等がある。

0010

増圧工程では、金型キャビティ5内の溶湯圧力を上昇させる(昇圧)タイミングが早すぎると、金型の合わせ面からバリ吹きが発生する。また、遅すぎると、金型キャビティ5内の溶湯の冷却凝固が進行し、射出充填中に溶湯内に巻き込まれた、金型キャビティ5内のガス等により形成された空間(巣)を効果的に押し潰して、同空間内のガスを溶湯外排出させることが困難になり、アルミニウム製品に巣が発生する。そのため、プランジャチップ7が、適切な昇圧位置に到達したタイミングで、且つ、適切な昇圧時間(速度)で射出圧力を上昇させる必要がある。そして、射出圧力が設定された増圧圧力(P)に到達すると、一定の時間、射出圧力を保持させる制御を行わせる。この間、射出圧力(増圧圧力P)を付与させた状態で、溶湯内に形成された空間(巣)を押し潰すと共に、溶湯が凝固により収縮する分、金型キャビティ5内に溶湯を補充填させる(押湯)ためのプランジャチップ7の前進が継続される。(図2の下の図を参照)

0011

ここで、プランジャチップ7の前進動作を好適に制御するためには、まず射出充填工程中には、射出シリンダ10のヘッド室10Hへの所定圧での多量の圧油供給が、次に、増圧工程中には、同じく射出シリンダ10のヘッド室10Hへの、該所定圧より高圧での少量の圧油供給が必要とされる。何故なら、金型キャビティ5内が溶湯で満たされるまでの射出充填工程(低速・高速射出工程)中、プランジャチップ7の所定の前進速度を実現するために必要な、射出シリンダ10のヘッド室10Hの容量の増加率に準じた多量の圧油供給が必要となるからである。

0012

次に、金型キャビティ5内が溶湯で満たされた後の増圧工程においては、金型キャビティ5内の溶湯の凝固収縮量を補う溶湯量を補充填させるだけ、プランジャチップ7を前進させれば良く、そのために多量の圧油を供給させる必要がない。一方、プランジャチップ7を介して所定の増圧力を溶湯へ短時間で、且つ、溶油凝固収縮連動させて付与させたり、溶湯の充填抵抗に抗して、溶湯内の巣を効果的に押し潰したりするために、射出充填工程に必要な該所定圧より高圧での圧油供給が必要になるからである。

0013

このような背景を鑑み、射出シリンダ10へ圧油を供給させる様々な油圧回路が公知である。例えば、図示はしていないが、圧油の供給源として1つの蓄圧器(アキュムレータ)と、差動油圧回路(ランアラウンド回路)と、を備える差動方式がある。具体的には、射出シリンダ10のヘッド室10Hへの所定圧での多量の圧油供給を必要とする射出充填工程においては、射出シリンダ10のピストン12の前進動作に伴って同ロッド室10Rから排出される圧油を、蓄圧器から射出シリンダ10のヘッド室10Hに供給される圧油と合流させて圧油の供給量を増加させる差動油圧回路を形成させる。そして、射出シリンダ10のヘッド室10Hへの、該所定圧より高圧での少量の圧油供給を必要とする増圧工程への切換制御時は、この差動油圧回路を解除させ、蓄圧器から射出シリンダ10のヘッド室10Hに圧油を供給させると共に、同ロッド室10Rから圧油をタンクラインに排出させる方式である。記載した構成の符号は図1に準じているが、後述する特許文献1の図9を参照すると理解が容易である。

0014

また、図示はしていないが、圧油の供給源として1つの蓄圧器(アキュムレータ)と、ブーストシリンダ増圧シリンダ)と、を備えるブースト方式がある。これは、射出シリンダ10のヘッド室10H側に、射出シリンダ10のピストン径よりもさらに大径のピストンを有するブーストシリンダが連結された射出シリンダを使用する方式であって、射出充填工程においては、射出シリンダ10のヘッド室10H側に蓄圧器から所定圧の圧油を供給させ、増圧工程においては、ブーストシリンダのヘッド室側に、同じ蓄圧器から所定圧の圧油を供給させて、両シリンダのピストン径の差分だけ、射出シリンダ10のヘッド室10H側に保持された圧油の圧力を上昇させて、該所定圧より高圧の保持圧力を得る方式である。こちらも、記載した構成の符号は図1に準じているが、後述する特許文献1の図10を参照すると理解が容易である。

0015

一方、図3に示すように、圧油の供給源として2つの蓄圧器を備える2段油圧源方式がある。この2段油圧源方式は、所定圧での多量の圧湯供給を目的とした速度制御用油圧源14と、該所定圧より高圧での少量の圧油供給を目的とした増圧制御用油圧源15とを備え、それぞれの圧油供給源遮断開放切換弁18、19を介して射出シリンダ10のヘッド室10Hに圧油を供給可能に油圧回路が構成されており、射出充填工程及び増圧工程のそれぞれにおいて、射出シリンダ10のヘッド室10Hに供給させるべき、異なる仕様の圧油を、異なる供給源から供給させることができるため、油圧回路が複雑になることなく、プランジャチップ7の前進動作を好適に制御することができるとされている。

0016

速度制御用油圧源14及び増圧制御用油圧源15は、本体内摺動可能な仕切りによりガス室油室とに分割させた構成のピストンアキュムレータ等の蓄圧器が採用される。同ガス室に不活性ガスを所望する圧力でチャージさせておくことにより、遮断開放切換弁18、19を開放させて、同油室内の圧油を管路に排出させて、射出シリンダ10のヘッド室10Hに所望する圧力の圧油を供給させることができる。また、圧油排出後は、図示しない管路により、油圧源22からの圧油を、必要に応じて増圧ブースタ等が配置された蓄圧増圧回路を介して同油室内に供給させることにより、再び、同油室内に圧油を蓄える(蓄圧させる)ことができる。所定圧での多量の圧湯供給を目的とした速度制御用油圧源14は、同油室からの圧油排出量が多いため、圧油排出時の同ガス室の容積増加(油室の容積減少)が、該所定圧より高圧での少量の圧油供給を目的とした増圧制御用油圧源15に対して著しく、同ガス室のガス圧力の低下も著しいため、例えば、同ガス室側にガスボトル17等を接続させ、同油室からの圧油排出中の、同ガス室のガス圧力の低下を抑制させても良い。

0017

油圧源22は、一般的には電動モータで駆動される油圧ポンプが採用され、油圧源22により、速度制御用油圧源14や増圧制御用油圧源15への圧油の供給(蓄圧)や、射出シリンダ10のロッド室10Rへの圧油の供給(ピストン12の後退動作)が行われる。

0018

尚、図3に示す油圧回路図においては、図2と同じ構成について同じ符号を付与しているため、図3にのみ記載されている構成について説明する。射出シリンダ10のピストン12には、ピストン12の位置をリアルタイムで検出できる射出ストロークセンサ26が配置されている。先に説明したように、射出充填工程における低速射出工程から高速射出工程への切換位置の設定や、VP切換位置等の、射出充填工程から増圧工程への切換位置の設定等に使用される。そして、射出シリンダ10のロッド室10R側の管路には、流量制御弁16が配置されている。この流量制御弁16は、サーボモータパイロット油圧等の駆動源により弁内の可動部(スプール)を移動させて、ロッド室10R側の管路を油圧源22側かタンク24側に切り換えると共に、それぞれの管路に切り換えた状態でその開度を調整して、圧油の流量を制御可能なサーボバルブである。本油圧回路においては、この流量制御弁16を、射出充填工程の低速・高速射出工程における、ロッド室10Rからタンク24側へ排出させる圧油量の流量制御、すなわち、低速・高速射出工程におけるピストン12の前進速度の制御時や、増圧工程完了後に、ロッド室10R側の管路を油圧源22側に切り換えさせての、射出シリンダ10のピストン12の後退動作時に使用する。

0019

他には、流量制御弁16及び油圧源22の間に逆止弁23が配置されている。また、増圧制御用油圧源15の遮断開放切換弁19と、射出シリンダ10のヘッド室10Hとの間の管路には絞り弁21が配置されている。この絞り弁21は、先に説明したように、適切な昇圧時間(速度)で射出圧力を上昇させるために配置され、手動や自動で絞り量を予め調節可能な絞り弁が採用される。また、速度制御用油圧源14及び増圧制御用油圧源15から、射出シリンダ10のヘッド室10Hに圧油を供給させる管路は、途中で分岐されてタンク24側に管路接続され、そのタンク24側管路に射出シリンダ後退バルブ20が配置されている。この射出シリンダ後退バルブ20は、通常は遮断されているが、増圧工程完了後、同バルブを開放させると共に、流量制御弁16を油圧源22側の管路に切り換えさせ、油圧源22から、射出シリンダ10のロッド室10Rに圧油を供給させて、射出シリンダ10のピストン12を後退させる。以上が、図3に示す2段油圧源方式の油圧回路の主要な構成であって、本願発明を説明するのに不要と思われる構成や管路については、説明や図示を割愛している。

0020

ここで、図3に示すような、2段油圧源方式の油圧回路において、射出充填工程から増圧工程への切り換えを行う方法を説明する。まず、増圧制御用油圧源15の遮断開放切換弁19が遮断されている状態において、速度制御用油圧源14の遮断開放切換弁18を開放させて、速度制御用油圧源14に蓄圧された圧湯を、射出シリンダ10のヘッド室10Hに供給させて、射出充填工程を開始させる。射出充填工程の低速・高速射出工程それぞれの射出速度(ピストン12の前進速度)は、射出シリンダ10のロッド室10R側の管路に配置された流量制御弁16をタンク24側の管路に切り換えると共に、同流量制御弁16により、タンク24へ排出させる圧油の流量制御により制御される。

0021

射出充填工程の高速射出工程の終盤において、予め設定したVP切換位置が検出されると増圧工程に切り換えられる。具体的には、速度制御用油圧源14の遮断開放切換弁18を遮断させると共に、増圧制御用油圧源15の遮断開放切換弁19を開放させて、増圧制御用油圧源15に蓄圧された圧油を、絞り弁21を介して、射出シリンダ10のヘッド室10Hに供給させる。図3の油圧回路図においては、射出シリンダ10のピストン12の位置を射出ストロークセンサ26により検出させて、ピストン12の設定切換位置への到達を検出させて増圧工程に切り換えられる形態とする。尚、この時、射出シリンダ10のロッド室10R側の流量制御弁16は、直前の高速射出工程におけるタンク24側への開度(射出速度が高速なので開度は大)を維持させるか、絞り弁21による昇圧時間(速度)の設定をより有効にするため全開状態最大開度)にさせて、ロッド室10Rからの圧油の排出抵抗を最小限にすることが好ましい。

0022

増圧制御用油圧源15に蓄圧される圧油の圧力(同ガス室にチャージさせる不活性ガスの圧力)、と、絞り弁21の絞り量(開度)は、上記の状態において、所望する昇圧時間(速度)で所望する射出圧力(増圧力)に到達した後、その増圧力が維持されるように予め調整・設定されている。そのため、予め設定した時間、同増圧力の溶湯への付与を継続させた後、増圧制御用油圧源15の遮断開放切換弁19を遮断させて、増圧工程を完了させる。

0023

しかしながら、図3に示すような、2段油圧源方式の油圧回路における、上記のような、射出充填工程から増圧工程への切換方法(射出増圧切換方法)には、次のような問題があった。

0024

それは、2つの油圧源を2つの遮断開放切換弁で切り換えさせることに起因する。まず、VP切換位置への到達を検出した射出ストロークセンサ26からの位置信号に基づき、速度制御用油圧源14の遮断開放切換弁18へ遮断信号発信させ、遮断開放切換弁18を遮断させた後、増圧制御用油圧源15の遮断開放切換弁19へ開放信号を発信させ、遮断開放切換弁19を開放させる制御、すなわち、2つの弁を連動制御させる必要がある。各信号の通信速度によっては、これら2つの弁の連動制御が所望する時間内に完了せず、増圧力の溶湯への付与が遅れる(圧力伝播遅れ)ため、試験鋳造等で、これら信号の遅れやそれぞれの弁の動作時間を確認して、これら2つの弁の連動制御が所望する時間内に完了するように、各弁の作動信号を発信させるピストン12の位置を予め設定させて、各弁を前倒しで作動させる必要があった。

0025

次に、速度制御用油圧源14の遮断開放切換弁18は、多量の圧油の遮断開放を行わせるため、また、増圧制御用油圧源15の遮断開放切換弁19は、高い圧力の圧油の遮断開放を行わせるため、これら遮断開放切換弁はいずれも比較的大型の弁にならざるを得ない。そのため、これら2つの弁を接近させて、且つ、射出シリンダ10の近傍に配置させることが難しい。そのため、これら2つの弁は、それぞれの油圧源近傍に配置されることが一般的であり、その結果、これら遮断開放切換弁から、射出シリンダ10のヘッド室10Hまでの管路が長くなる。特に、増圧制御用油圧源15の遮断開放切換弁19が開放制御されてから、増圧制御用油圧源15からの圧油及び同圧油圧力が、遮断開放切換弁19以降の管路と絞り弁21とを介して、射出シリンダ10のヘッド室10Hに供給・伝播されて、その増圧力が、プランジャチップ7(ピストン12)を介して金型キャビティ5内の溶湯に付与される際、この管路長さが増圧力の圧力伝播遅れを生じさせるという問題があった。

0026

このような問題を鑑み、出願人は、軸方向の端部に1つ、側面に2つ、合計3つのポートを有するバルブ本体内に、軸方向に摺動可能な中空可動スリーブと、同可動スリーブを軸方向に摺動させるパイロット圧力部とを配置させた射出成形制御装置(特許文献1/図1)を考案し、この射出成形制御装置1つで、射出シリンダへの圧油の供給源を速度制御用油圧源から増圧制御用油圧源へ切換制御する射出増圧切換バルブとして採用することを提案している(特許文献1の第3の実施形態/図4)。

0027

特許文献1の射出成形制御装置(射出増圧切換バルブ)は、常時開放状態の、軸方向の端部のPポート102(第1ポート)に対する、バルブボディ101(バルブ本体)の側面のAポート103及びBポート104(第2及び第3ポート)との連通及び遮断を、中空の可動スプール111(第1可動スプール)の軸方向の摺動により切換制御させるものである。具体的には、可動スプール111の側面に2つの通路112、113が開口されており、可動スプール111を軸方向に摺動させて、Aポート103と通路112とが連通する位置において、Bポート104と通路113とを連通させず、逆に、Bポート104と通路113とが連通する位置において、Aポート103と通路112とを連通させないように、バルブボディ101の両ポートと可動スプール111の両通路とが構成されている。尚、ここで挙げた構成に続いて括弧書きした構成は、後述する本発明に係る実施例1の、射出増圧切換バルブの構成であって、特許文献1の射出成形制御装置の各構成に相当する構成である。特許文献1の射出成形制御装置と本発明に係る実施例1の射出増圧切換バルブとの比較を容易にするために挙げたものであって、相当する構成が他方の構成に対して同じ構成であること、あるいは、同じ機能を有していることを示唆すものではない。

0028

可動スプール111の軸方向の摺動は、1つのパイロット制御バルブ200により制御される。具体的には、パイロット圧力部の第1パイロット圧力室105に圧油を供給させれば、Pポート102とAポート103とが連通され(Bポート104は遮断)、第2パイロット圧力106に圧油を供給させると、Pポート102とBポート104とが連通される(Aポート103は遮断)。

0029

特許文献1の第3の実施形態においては、射出成形制御装置38の各ポートは、Pポート102及び油圧シリンダ31の第1油圧室H3、Aポート103及びACC31、Bポート104及びACC32、がそれぞれ管路接続されている。

0030

この形態においては、VP切換位置への到達を検出した射出ストロークセンサ26からの位置信号に基づき、1つのパイロット制御バルブ200を制御して、1つの射出成形制御装置で、射出シリンダへの圧油の供給源を速度制御用油圧源から増圧制御用油圧源へ切換制御させる。そのため、図3の油圧回路図に示すような、2つの弁を連動制御させる形態に対して、各弁の信号遅れ分や動作時間を鑑みた、各弁の作動信号を発信させるピストン12の位置を予め設定させて、各弁を前倒しで作動させる必要はない。また、射出充填工程(射出速度制御)中、Bポート104が遮断されているため、予め、ACC32から蓄圧された圧油を管路に開放させて、絞り弁21を含む、Bポート104に接続される管路内に圧油を供給させると共に、同圧油に増圧圧力を伝播させておくことができる。そのため、Bポート104の開放と同時に、Pポート102以降の管路に圧油及び増圧圧力を供給・伝播させることができるため、2つの弁を連動制御させる形態に対して、増圧力を伝播させる必要のある管路を短縮させることができ、増圧力の溶湯への圧力伝播遅れを抑制させることができる。

0031

上記のように、特許文献1の射出成形制御装置の、同文献の第3の実施形態のような、2段油圧源方式の油圧回路への射出増圧切換バルブとしての採用は、同射出成形制御装置駆動用のパイロット制御バルブを作動させるための、VP切換点の設定に問題が無ければ、射出充填工程(射出速度制御)から増圧工程(射出圧力制御)への切換制御を好適に行うことができ、アルミニウム製品の品質向上に大きく貢献するものである。

先行技術

0032

特開2007−290041号公報

発明が解決しようとする課題

0033

しかしながら、出願人は、特許文献1の射出成形制御装置を、2段油圧源方式の油圧回路の射出増圧切換バルブとして採用する場合の課題を見出した。それは、大型ダイカストマシンの射出増圧切換バルブとして採用する場合の課題である。

0034

まず1つは、制御対象アクチュエータである、射出シリンダ10の大型化に伴う、射出シリンダ10のヘッド室10Hに供給させる圧油量の増加である。特許文献1の射出成形制御装置では、射出充填工程において、バルブボディ101側面のAポート103と可動スプール111側面の通路112とを連通させることにより、油圧源ACC31からの圧油を射出シリンダ10のヘッド室10Hに供給させることができる。

0035

従って、必要な圧油の供給量を確保できるAポート103の開口形状及び開口面積に対して、可動スプール111側面の通路112の開口形状及び開口面積を一致させる必要がある。すなわち、互いに平行に配置された、バルブボディ101のAポート103(開口)と、可動スプール111の通路112(開口)と、を同一形状及び同一面積として、スライド移動により、これら開口を完全に一致させると最大開放状態(最大開度)となり、完全にずらすと閉塞状態開度ゼロ)となるように構成されている。

0036

従って、Aポート103を円形開口とすれば、可動スプール111の通路112も、同一直径の円形開口となり、Aポート103の最大開放状態(最大開度)から閉塞状態(開度ゼロ)に到るまでに必要な、可動スプール111の長手方向の摺動距離は、これら円形開口の直径+α(アルファ)となる。すなわち、射出シリンダ10が大型化すれば、射出充填工程の高速射出工程において、射出シリンダ10のサイズ(ピストン直径)及び所望する射出速度に準じて、多量の圧油を射出シリンダ10のヘッド室10Hに供給させるため、これら円形開口の直径も大きくなり、Aポート103の最大開放状態(最大開度)から閉塞状態(開度ゼロ)に到るまでに必要な、可動スプール111の長手方向の摺動距離も増加する。その結果、Aポート103を閉塞させる際の制御応答性が悪化するという問題が生じる。このAポート103を閉塞させる際の制御応答性の悪化は、増圧力の溶湯への圧力伝播遅れを発生させる要因となる。

0037

次は、射出充填毎のVP切換位置のバラツキの影響である。先に、金型キャビティ5内が溶湯で完全に満たされる点をVP切換位置と説明した。補足すると、理想的なVP切換位置とは、金型キャビティ5内が溶湯で完全に満たされ、且つ、同溶湯に、バリ吹きを伴うような高いサージ圧力ではない所定の圧力が生じた状態のプランジャチップ7の前進位置である。この前進位置は、射出ストロークセンサ26により検出させることが一般的であるが、VP切換位置の設定・定義においては、プランジャチップ7の前進位置だけでなく、金型キャビティ5内の溶湯圧力(射出シリンダ10のヘッド室10Hの圧油の圧力)も加味して、設定・定義されることもある。

0038

仮に、VP切換位置を、上記のような、プランジャチップ7/ピストン12の前進位置とすると、予め設定したVP切換位置が、理想的な位置よりも手前過ぎれば、金型キャビティ5内を溶湯が満たす前に射出圧力制御に切り換えられてしまう。そのため、設定された射出圧力(増圧力)の結果生じる射出速度が、高速射出工程における設定射出速度よりも遅くなる場合は、溶湯の充填速度不足し、凝固収縮分の溶湯を、その凝固収縮(容積減少)に連動させて金型キャビティ5内に好適に補充(押湯)させることができず、アルミニウム製品にヒケ鋳込巣等の鋳造不良が発生する。また、設定された射出圧力(増圧力)の結果生じる射出速度が、高速射出工程における設定射出速度よりも速くなる場合は、射出速度が更に増速されてバリ吹きを発生させてしまう。

0039

逆に、VP切換位置が理想的な位置を行き過ぎていれば、金型キャビティ5内の溶湯の冷却凝固が進行し、射出充填中に溶湯内に形成された空間(巣)を効果的に押し潰して、同空間内のガスを溶湯外排出させることが困難になり、アルミニウム製品に巣が発生する。

0040

そのため、VP切換位置を好適に設定することが重要である。具体的には、ゲート部を含む金型キャビティの容積、及び、スリーブ6へ給湯させる溶湯量から、金型キャビティ5内が溶湯で満たされるプランジャチップ7/ピストン12の前進位置等を上で求めて仮のVP切換位置とし、これに基づき試験鋳造を行い、良品を鋳造可能な範囲で、設定するVP切換位置を含む諸鋳造条件を求めることが一般的である。しかしながら、理想的なVP切換点は鋳造サイクル毎で一定ではない。その要因は、保持炉からスリーブ6内に供給(給湯)させる溶湯の温度変化や、金型の温度調節状況等様々であるが、最も大きな要因は、保持炉からスリーブ6内に給湯させる溶湯の量(給湯量)のバラツキである。

0041

給湯装置に取り付けたラドル等の給湯用容器で、保持炉から溶湯を汲み出し、それをスリーブの給湯口からスリーブ内に給湯させる形態においては、保持炉側の溶湯の湯面が波立つことに起因する、給湯装置による汲み取り時の湯面検知位置の差異や、機械的動作誤差、あるいは、給湯動作後、ラドル内面に付着するアルミカスの有無や、付着するアルミカスの量の差異により、給湯量に鋳造サイクル毎にバラツキが生じる。このような給湯量のバラツキは、鋳造後の後工程で除去される分留子(ビスケット/スリーブ6内でプランジャチップ7に押圧される部位)の型開閉方向の厚みの差異で吸収させることが一般的である。すなわち、給湯量が所望する量である場合の理想的なVP切換位置1に対して、給湯量が少ない場合の理想的なVP切換位置2は、理想的なVP切換位置1よりプランジャチップ7を前進させた位置(図2のC位置よりも左側)となる。また、給湯量が多い場合の理想的なVP切換位置3は、理想的なVP切換位置1までプランジャチップ7が前進していない位置(図2のC位置よりも右側)となる。

0042

中小型ダイカストマシンの場合、大型ダイカストマシンに対して、鋳造成形するアルミニウム製品の重量や、増圧力を伝播させるべき金型キャビティ容積も小さく、給湯量も少ない。そのため、設定させるVP切換位置と理想的なVP切換位置との差異(分留子/ビスケットの型開閉方向の厚みの差異)がアルミニウム製品の品質に及ぼす影響が小さく、良品を鋳造成形することが可能であった。

0043

しかしながら、大型ダイカストマシンの場合、中小型ダイカストマシンに対して、鋳造成形するアルミニウム製品の重量や、増圧力を伝播させるべき金型キャビティ容積が大きく、給湯量も多い。そのため、設定させるVP切換位置と理想的なVP切換位置との差異(分留子/ビスケットの型開閉方向の厚みの差異)が中小型ダイカストマシンより大きくなり、アルミニウム製品の品質に及ぼす影響も大きくならざるを得ない。そのため、VP切換位置の設定精度や、給湯量のバラツキによっては、良品率が低下するという問題がある。

0044

本発明は、上記したような問題点に鑑みてなされたもので、具体的には、射出シリンダにより、金型キャビティに溶湯を射出充填させる際に、大型ダイカストマシン等で、速度制御油圧源から射出シリンダに供給させる圧油量が多量であっても、速度制御油圧源と接続されるポートを閉塞させる際の制御応答性の悪化を抑制することができ、VP切換位置の設定精度や給湯量のバラツキに寄らず、射出シリンダへの圧油の供給源を速度制御用油圧源から増圧制御用油圧源へ切換制御する射出増圧切換バルブ及び射出増圧切換方法を提供することを目的としている。

課題を解決するための手段

0045

本発明の上記目的は、射出シリンダにより、金型キャビティに溶湯を射出充填させる際に、射出シリンダへの圧油の供給源を速度制御用油圧源から増圧制御用油圧源へ切換制御する射出増圧切換バルブあって、
長手方向に連続する空間が形成されたバルブ本体と、
該バルブ本体の、該空間の該長手方向に直交する位置に第1ポートが、該空間の該長手方向の一端に第2ポートが配置される第1圧力室と、
該バルブ本体の、該空間の該長手方向に摺動可能に配置され、該長手方向の一端に、該第2ポートに押圧させて該第2ポートを閉塞可能に形成される閉塞頂部と、他端に形成される大径部と、該閉塞頂部及び該大径部の中間部に形成される小径部と、該閉塞頂部及び該小径部間の開口部と該大径部端面の開口部とが連通される中空部と、を有する第1可動スプールと、
該第1可動スプールの該大径部側に、該空間の該長手方向に摺動可能に配置され、該第1可動スプールの該大径部と略同じ外径を有する第2可動スプールと、
該長手方向の一端側が、該第1可動スプールにより該第1圧力室と仕切られ、該長手方向の他端側も該第1可動スプールにより仕切られ、該バルブ本体の、該空間の該長手方向に直交する位置に、第3ポートが配置される第2圧力室と、
該長手方向の一端側が、該第1可動スプールにより該第2圧力室と仕切られ、該長手方向の他端側が、該第1可動スプールの該大径部により仕切られ、第1パイロットポートが配置される第3圧力室と、
該第1可動スプールの該大径部と該第2可動スプールとの間に形成され、該第1可動スプールの該中空部により該第1圧力室と連通される第4圧力室と、
該第2可動スプールにより該第4圧力室と仕切られ、第2パイロットポートが配置される第5圧力室と、
を有する射出増圧切換バルブによって達成される。

0046

そして、本発明に係る射出増圧切換バルブは、前記第1可動スプールが前記第2ポートを閉塞させる位置よりも所定量、前記第2ポートから離間した連通開始位置に到達するまでは、前記第1可動スプールにより、前記第1圧力室と前記第2圧力室とが仕切られると共に、該連通開始位置を越えて、前記第1可動スプールが前記第2ポートに接近すると、前記第1可動スプールの前記小径部により、前記第1圧力室と前記第2圧力室との連通が開始され、前記第1可動スプールの前記閉塞頂部により、前記第2ポートを閉塞させた状態で、前記小径部による前記第1圧力室と前記第2圧力室との連通が最大開度となるように前記小径部が形成されることが好ましい。

0047

また、本発明の上記目的は、本発明に係る射出増圧切換バルブを使用する射出増圧切換方法であって、
前記第1パイロットポートに圧油を供給させ、前記第3圧力室の圧力を上昇させて、前記第1可動スプール及び前記第2可動スプールを前記第2ポートから離間させて、前記第1圧力室において、前記第1ポート及び前記第2ポートを連通状態にさせると共に、前記第1圧力室と前記第2圧力室とを仕切られた状態とする速度制御開始工程と、
該速度制御開始工程により開放させた前記第2ポートから、前記速度制御用油圧源からの圧油を前記第1ポートを介して前記射出シリンダに供給させて、前記第2ポート側の圧力及び前記閉塞頂部の受圧面積に基づく第2ポート開放力が、前記第1可動スプールの前記中空部により前記第4圧力室に伝播される前記第1ポート側の圧力及び前記第1可動スプールの前記大径部の受圧面積に基づく第2ポート閉塞力よりも大きい間、前記第2ポートの開放状態が維持される速度制御工程と、
該第2ポート開放力が該第2ポート閉塞力よりも小さくなることにより、前記第1可動スプールの前記閉塞頂部が前記第2ポートを閉塞させると共に、前記第1可動スプールの前記小径部により、前記第1圧力室と前記第2圧力室とを連通させて、前記増圧制御用油圧源からの圧油を前記第3ポートから、前記第1ポートを介して前記射出シリンダに供給させる増圧切換工程と、
により、前記射出シリンダへの圧油の供給源を前記速度制御用油圧源から前記増圧制御用油圧源へ切換制御する射出増圧切換方法によって達成される。

0048

また、本発明に係る射出増圧切換方法は、前記速度制御準備工程の完了後、前記第1可動スプールにより、前記第1圧力室と前記第2圧力室とが仕切られている状態の所定のタイミングにおいて、前記増圧制御用油圧源からの圧油を前記第3ポート側の管路へ開放させることが好ましい。

0049

更に、本発明に係る射出増圧切換方法は、前記速度制御工程において、
流出側である前記第1ポート側の圧油圧力の上昇、又は、流入側である前記第2ポートの圧油の圧力低下、又は、その両方の現象発生に伴い、前記第2ポート開放力が前記第2ポート閉塞力と略同じ、又は、前記第2ポート開放力が前記第2ポート閉塞力よりも小さくなることにより、前記第1可動スリーブが前記第2ポート側へ移動して、前記第2ポートの開度が減少する第2ポート開度維持・減少状態と、
該第2ポート開度減少状態における該開度の低下に準じて、前記第2ポート側の圧油圧力が圧力損失で低下し、再び、前記第2ポート開放力が前記第2ポート閉塞力と略同じ、又は、前記第2ポート開放力が前記第2ポート閉塞力より大きくなり、前記第2ポートの該開度が維持される、又は、増加する第2ポート開度維持・増加状態と、
が、前記速度制御工程の進行に伴って繰り返されることにより、前記第2ポートを介して前記射出シリンダに供給される、前記速度制御用油圧源からの圧油量が漸次減少する射出増圧切換方法であっても良い。

0050

一方、本発明に係る射出増圧切換方法は、増圧工程が完了した後、前記第2パイロットポートに圧油を供給させて、前記第5圧力室の圧力を上昇させて、前記第2可動スプールにより、前記第1可動スプールを前記バルブ本体の前記第2ポート側に押圧させて、前記第2ポートを閉塞させる次サイクル準備工程を、更に有していても良い。

発明の効果

0051

本発明に係る射出増圧切換バルブは、射出シリンダにより、金型キャビティに溶湯を射出充填させる際に、射出シリンダへの圧油の供給源を速度制御用油圧源から増圧制御用油圧源へ切換制御する射出増圧切換バルブあって、
長手方向に連続する空間が形成されたバルブ本体と、
該バルブ本体の、該空間の該長手方向に直交する位置に第1ポートが、該空間の該長手方向の一端に第2ポートが配置される第1圧力室と、
該バルブ本体の、該空間の該長手方向に摺動可能に配置され、該長手方向の一端に、該第2ポートに押圧させて該第2ポートを閉塞可能に形成される閉塞頂部と、他端に形成される大径部と、該閉塞頂部及び該大径部の中間部に形成される小径部と、該閉塞頂部及び該小径部間の開口部と該大径部端面の開口部とが連通される中空部と、を有する第1可動スプールと、
該第1可動スプールの該大径部側に、該空間の該長手方向に摺動可能に配置され、該第1可動スプールの該大径部と略同じ外径を有する第2可動スプールと、
該長手方向の一端側が、該第1可動スプールにより該第1圧力室と仕切られ、該長手方向の他端側も該第1可動スプールにより仕切られ、該バルブ本体の、該空間の該長手方向に直交する位置に、第3ポートが配置される第2圧力室と、
該長手方向の一端側が、該第1可動スプールにより該第2圧力室と仕切られ、該長手方向の他端側が、該第1可動スプールの該大径部により仕切られ、第1パイロットポートが配置される第3圧力室と、
該第1可動スプールの該大径部と該第2可動スプールとの間に形成され、該第1可動スプールの該中空部により該第1圧力室と連通される第4圧力室と、
該第2可動スプールにより該第4圧力室と仕切られ、第2パイロットポートが配置される第5圧力室と、
を有するため、後述する射出増圧切換方法を行うことができる。

0052

また、本発明に係る射出増圧切換バルブを使用する、本発明に係る射出増圧切換方法は、前記第1パイロットポートに圧油を供給させ、前記第3圧力室の圧力を上昇させて、前記第1可動スプール及び前記第2可動スプールを前記第2ポートから離間させて、前記第1圧力室において、前記第1ポート及び前記第2ポートを連通状態にさせると共に、前記第1圧力室と前記第2圧力室とを仕切られた状態とする速度制御開始工程と、
該速度制御開始工程により開放させた前記第2ポートから、前記速度制御用油圧源からの圧油を前記第1ポートを介して前記射出シリンダに供給させて、前記第2ポート側の圧力及び前記閉塞頂部の受圧面積に基づく第2ポート開放力が、前記第1可動スプールの前記中空部により前記第4圧力室に伝播される前記第1ポート側の圧力及び前記第1可動スプールの前記大径部の受圧面積に基づく第2ポート閉塞力よりも大きい間、前記第2ポートの開放状態が維持される速度制御工程と、
該第2ポート開放力が該第2ポート閉塞力よりも小さくなることにより、前記第1可動スプールの前記閉塞頂部が前記第2ポートを閉塞させると共に、前記第1可動スプールの前記小径部により、前記第1圧力室と前記第2圧力室とを連通させて、前記増圧制御用油圧源からの圧油を前記第3ポートから、前記第1ポートを介して前記射出シリンダに供給させる増圧切換工程と、
により、前記射出シリンダへの圧油の供給源を前記速度制御用油圧源から前記増圧制御用油圧源へ切換制御するため、射出シリンダにより、金型キャビティに溶湯を射出充填させる際に、大型ダイカストマシン等で、速度制御油圧源から射出シリンダに供給させる圧油量が多量であっても、速度制御油圧源と接続されるポートを閉塞させる際の制御応答性の悪化を抑制することができ、VP切換位置の設定精度や給湯量のバラツキに寄らず、射出シリンダへの圧油の供給源を速度制御用油圧源から増圧制御用油圧源へ切換制御することができる。

図面の簡単な説明

0053

一般的なダイカストマシンの射出装置及び金型装置を示す概略断面図(側面)である。
一般的なダイカストマシンの射出充填工程におけるプランジャチップの位置、溶湯の状態、射出速度、射出圧力の関係を示す図及びグラフである。
一般的なダイカストマシンの射出装置の従来の2段油圧源方式の油圧回路図である。
本発明の実施例1に係る射出増圧切換バルブの概略断面図である。
本発明の実施例1に係る射出増圧切換バルブを、2段油圧源方式の油圧回路に採用した油圧回路図である。
本発明の実施例1に係る射出増圧切換バルブによる射出増圧切換方法を説明する概略断面図である。

0054

以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。

0055

図4乃至図6を参照しながら本発明の実施例1に係る射出増圧切換バルブ及び射出増圧切換方法を説明する。

0056

まず、図4を参照しながら、本発明の実施例1に係る射出増圧切換バルブ30の構成について説明する。バルブ本体31には長手方向(図4の上下方向)に連続する空間32が形成されており、同空間32は、長手方向の一端(図4の上方)側から他端(図4の下方)側に向かって、順番に5つの圧力室に分割されている。長手方向の一端側の第1圧力室32aには、バルブ本体31の、空間32の長手方向に直交する位置に第1ポート41が、空間32の長手方向の一端に第2ポート42が配置されている。

0057

そして、バルブ本体31の、空間32の長手方向に摺動可能に第1可動スプール51が配置されている。第1可動スプール51の長手方向の一端には、第2ポート42に押圧させて同ポートを閉塞可能な閉塞頂部51aが形成され、他端には大径部51cが形成されている。更に、第1可動スプール51の閉塞頂部51a及び大径部51cの中間部には小径部51bが形成されると共に、閉塞頂部51a及び小径部51b間の開口部と大径部51c端面の開口部とが連通される中空部51dが形成されている。

0058

また、第1可動スプール51の大径部51c側に、空間32の長手方向に摺動可能に第第2可動スプール52が配置されている。第2可動スプール52の外径は、第1可動スプール51の大径部51cの外径と略同じである。

0059

第1圧力室32aに連続する第2圧力室32bは、長手方向の一端側が第1可動スプール51により第1圧力室32aと仕切られ、長手方向の他端側も第1可動スプール51により次の圧力室(第3圧力室32c)と仕切られることにより形成される。そして、第2圧力室32bの、空間32の長手方向に直交する位置に、第3ポート43が配置されている。

0060

次に、第2圧力室32bに連続する第3圧力室32cは、長手方向の一端側が第1可動スプール51により第2圧力室32bと仕切られ、長手方向の他端側が、第1可動スプール51の大径部51cにより次の圧力室(第4圧力室32d)と仕切られることにより形成される。そして、第3圧力室32cには第1パイロットポート61が配置されている。

0061

更に、第1可動スプール51の大径部51cと第2可動スプール52との間に第4圧力室32dが形成されている。この第4圧力室32dは、第1可動スプール51の中空部51dにより第1圧力室32aと常時連通されている。

0062

最後に、長手方向の他端側の第5圧力室32eは、第2可動スプール52により第4圧力室32dと仕切られ、第2パイロットポート62が配置されている。

0063

ここで、第1可動スプール51及び第2可動スプール52の、長手方向に直交する断面形状は円形状であり、これら2つのスプールが摺動する、バルブ本体31の被摺動面も対応する円形状に加工され、これら2つのスプールの摺動面に配置された、図示しないO(オー)リング等のシール部材により、これら2つのスプールのバルブ本体31の長手方向の摺動と各圧力室シール性とが確保されているものとする。また、図4において、第1可動スプール51及び第2可動スプール52の長手方向の他端側の突出部は、後述する速度制御開始工程において、これら2つのスプールを長手方向の他端(図4の下方)側に押圧させた状態においても、第4圧力室32d及び第5圧力室32eの圧油供給空間を確保するための突出部である。同突出部は、同突出部により、それぞれの圧力室内を分割させるものではなく、図示しない切欠部が円周方向に複数形成されており、第4圧力室32d及び第5圧力室32eに圧油が供給された場合に、それぞれの圧力室の受圧面全体に圧油圧力が伝播されるように構成されている。

0064

図4は、図示しない外部パイロット管路から第1パイロットポート61に圧油を供給させ、第3圧力室32cの圧力を上昇させて、第1可動スプール51の大径部51cの一端側の面に押圧力を作用させて、第1可動スプール51を長手方向の他端側に移動・押圧させた状態を示している(速度制御開始工程)。第1可動スプール51の移動・押圧に伴い、第2可動スプール52も長手方向の他端側に移動・押圧されている。この状態において、第2ポート42は開放状態であり、第1圧力室32a内の管路開放部33において、第2ポート42と第1ポート41とが、最大開度Kaで連通されている。また、第1圧力室32aと第4圧力室32dとが中空部51dで常時連通されているため、射出シリンダ10のピストン12を前進させる際に、圧油の流出側となる第1ポート41側の圧油圧力は、第1可動スプール51の中空部51dにより第4圧力室32d内の圧油に常時伝播される。

0065

このような射出増圧切換バルブ30を、図3を参照しながら説明した2段油圧源方式の油圧回路に採用した油圧回路図を図5に示す。図5において、図3と同じ構成については図3と同じ符号を付し、それぞれの構成の説明は割愛する。

0066

図5に示すように、射出増圧切換バルブ30は、射出シリンダ10と、2つの油圧源である速度制御用油圧源14及び増圧制御用油圧源15との間の管路に配置されている。射出増圧切換バルブ30の各ポートは、第1ポート41及び射出シリンダ10のヘッド室10H、第2ポート42及び速度制御用油圧源14、第3ポート43及び増圧制御用油圧源15の遮断開放切換弁19、がそれぞれ管路接続されている。また、射出増圧切換バルブ30の採用により、速度制御用油圧源14の遮断開放切換弁18が不要になり、射出増圧切換バルブ30の第2ポート42と速度制御用油圧源14の油室とが直接管路接続されている点が、図3の油圧回路図との差異である。

0067

次に、図6も参照しながら、本発明の実施例1に係る射出増圧切換方法について説明する。図5において、速度制御用油圧源14及び増圧制御用油圧源15への蓄圧が完了している。速度制御用油圧源14に蓄圧された圧油は、射出増圧切換バルブ30の第2ポート42が、図6(g)に示す状態(次サイクル準備工程)で閉塞されているため、射出増圧切換バルブ30で遮断され、増圧制御用油圧源15に蓄圧された圧油は遮断開放切換弁19で遮断され、且つ、射出シリンダ10のピストン12の射出充填開始位置への後退が完了している。射出シリンダ後退バルブ20は遮断状態であり、流量制御弁16は、射出充填工程の低速射出工程における射出速度制御のために、管路がタンク24側に切り換えられると共に、射出充填工程の低速射出工程において必要とされる開度に調整されている。

0068

また、射出増圧切換バルブ30の第1ポート41及び第3ポート43に接続された管路は、射出シリンダ10のピストン12の射出充填開始位置への後退時の、射出シリンダ後退バルブ20の開放により、タンク24側の管路への圧油排出が行われており、同管路内の圧油に高い圧力は発生していない。この状態において、図6(g)に示す状態の射出増圧切換バルブ30の第2パイロットポート62への、図示しない外部パイロット管路からの圧油供給を停止させた後、図6(a)に示すように、図示しない外部パイロット管路から第1パイロットポート61に圧油を供給させ、第3圧力室32cの圧力を上昇させて、第1可動スプール51の大径部51cの長手方向の一端(図6の上方)側の面に押圧力を作用させて、第1可動スプール51を、第2可動スプール52と共に、長手方向の他端(図6の下方)側に移動・押圧させる(速度制御開始工程)。尚、説明を簡単にするため、以後、バルブ本体31の長手方向を図6における上下方向、長手方向の一端側を図6の上方側、長手方向の他端側を図6の下方側として説明する。

0069

速度制御開始工程により、第1圧力室32a内の管路開放部33において、第2ポート42と第1ポート41とが、最大開度Kaで連通される。先に説明したように、第1可動スプール51の閉塞頂部51aの上下方向に直交する断面形状は円形状であり、第2ポート42も、この閉塞頂部51aの端面形状に準じた円形状であるため、実際の管路開放部33の開放形状は、圧油の流動方向に直交する、幅がKaのリング状開口である。

0070

一方、特許文献1の射出成形制御装置においては、同特許文献1の図1及び図4に示すように、油圧源ACC31からの、必要な圧油の供給量を確保できるAポート103の開口形状及び開口面積に対して、可動スプール111側面の通路112の開口形状及び開口面積を一致させる必要がある。そのため、先に説明したように、射出シリンダ10が大型化すれば、Aポート103を閉塞させる際の制御応答性が悪化する。

0071

これに対して、本実施例の射出増圧切換バルブ30においては、バルブ本体31の上方側端部に配置された第2ポート42(開口)に対して、第1可動スプール51を下方側、言い換えれば、開口が形成された面に直交する方向に移動させることで、圧油の流動方向に直交する幅のリング状開口を形成させることができる。すなわち、速度制御用油圧源14に接続される第2ポート42に必要な開口形状は円形開口であり、第2ポート42に必要な開口面積は、リング状開口の開口外径(第2ポート42の開口径)と、開放時の圧油の流動方向に直交する幅(図6(a)においてはKa)により決定される。

0072

従って、最大開放状態(最大開度)を確保するために必要な、第1可動スプール51の下方側への摺動距離が可能な限り少なくなるように、リング状開口の開口外径を可能な限り大きく確保することにより、第2ポート42を閉塞させる際の制御応答性の悪化を抑制することができる。尚、本実施例の射出増圧切換バルブ30においては、第2ポート42が、バルブ本体31の上方側端部に配置されると共に、バルブ本体31内を摺動させる第1可動スプール51自体に通路等の開口を配置させる必要がないため、特許文献1の射出成形制御装置のAポート103に対して、第2ポート42の開口径を大きく確保することが容易である。

0073

本発明の実施例1に係る射出増圧切換バルブ30は、このような構成により、大型ダイカストマシン等で、速度制御油圧源14から射出シリンダ10のヘッド室10Hに供給させる圧油量が多量であっても、速度制御油圧源14と接続される第2ポート42を閉塞させる際の制御応答性の悪化を抑制することができる。一方、第2圧力室32bは、第1可動スプール51の小径部51bを含んで第1圧力室32aと仕切られている。

0074

速度制御準備工程により開放させた第2ポート42から、速度制御用油圧源14からの圧油を管路開放部33及び第1ポート41を介して射出シリンダ10のヘッド室10Hに供給させて、速度制御工程が開始される。圧油及び圧油圧力は第2ポート42から管路開放部33を介して第1ポート41に一気に流動・伝播する。この時、管路開放部33において圧油の流動断面積が減少するため、圧油の流速が上昇し圧力損失Δ(デルタ)Pが発生する。その結果、流入側の第2ポート42の圧油圧力Pvに対して、流出側の第1ポート41の圧油圧力がPv’まで低下する(Pv>Pv’)。また、第1ポート41側の圧油圧力Pv’は、第1可動スプール51の中空部51dを介して第4圧力室32d内の圧油に伝播する。

0075

ここで、第1可動スプール51の閉塞頂部51aの上下方向に直交する面積、すなわち、第2ポート42から流入される圧油の圧油圧力Pvにより、第1可動スプール51を下方側に押圧(開放)させる押圧力の受圧面積を受圧面積So(エスオー)、そして、第1可動スプール51の大径部51cの下方側の面積、すなわち、第1可動スプール51の中空部51dを介して第4圧力室32dに伝播する圧油圧力Pv’により、第1可動スプール51を上方側に押圧(閉塞)させる押圧力の受圧面積を受圧面積Sc(エスシー)、とする。また、第1可動スプール51を下方側に押圧させて、第2ポート42を開放させる力を第2ポート開放力Fo(エフオー)、逆に、第1可動スプール51を上方側に押圧させて、第2ポート42を閉塞させる力を第2ポート閉塞力Fc(エフシー)とすると、これら第2ポート開放力Fo及び第2ポート閉塞力Fcは以下のように表される。
第2ポート開放力:Fo=Pv×So
第2ポート閉塞力:Fc=Pv’×Sc
(ただし、Pv≧Pv’、So<Sc)
尚、図6においては、圧油の流動を実線矢印、パイロット圧力や圧力の伝播等、直接、射出シリンダ10を駆動させるものではない油圧の流動・作用方向を点線矢印、そして、第1可動スプール51や第2可動スプール52に作用する、第2ポート開放力Foや第2ポート閉塞力Fcを白抜き矢印表記している。

0076

第1可動スプール51の閉塞頂部51aの受圧面積Soと、同じく大径部51cの受圧面積Scとの関係が、So<Scであっても、図6(a)に示す、速度制御開始工程においては、管路開放部33における圧損ΔPが大きく、流入側(第2ポート42)の圧油圧力Pvの方が、流出側(第1ポート41)の圧油圧力Pv’よりも十分に大きいため、Pv≫Pv’の関係が成立する。そのため、速度制御用油圧源14の開放後、第1パイロットポート61への圧油供給を停止させても、第2ポート42の開放状態が維持される。また、第2ポート開放力Fo及び第2ポート閉塞力Fcの関係が、Fo>Fcである間、第2ポート42の開放状態が維持される(速度制御工程)。

0077

また、後述する、流入側(第2ポート42)及び流出側(第1ポート41)の圧油圧力バランス追従する、速度制御工程における第1可動スプール51の上下方向の摺動に制約が生じないように、速度制御開始工程後は、第2ポート42の開度が出来るだけ大きい所定のタイミングで、第1パイロットポート61に接続されるパイロット圧油管路を、パイロット圧油供給側管路からタンク24側管路に切り換えさせることが好ましい。この切り換えによって、第1可動スプール51が上方側へ移動・押圧される際の、第3圧力室32c(第1パイロットポート61)からの圧油の排出抵抗や、第1可動スプール51が下方側へ移動・押圧される際の、第1パイロットポート61から第3圧力室32cへの圧油の吸引抵抗が減少し、第1可動スプール51の上下方向の自由な摺動が可能になる。

0078

射出充填工程(速度制御工程)が進行し、速度制御用油圧源14からの圧油の開放が継続される。その過程で、低速射出工程から高速射出工程に切り換えられて、射出シリンダ10のロッド室10R側の流量制御弁16の開度が大きく制御され、射出シリンダ10のヘッド室10Hに供給される圧油量が急速に上昇する。この流動する圧油量の急激な上昇により、流入側(第2ポート42)の圧油圧力Pvが圧力開放当初より低下する、あるいは、金型キャビティ5内への溶湯の充填が進行し、プランジャチップ7の前進位置がVP切換点に接近して、金型キャビティ5内の溶湯圧力が急激に上昇することにより、流出側(第1ポート41)の圧油圧力Pv’が圧力開放当初より上昇する、あるいは、その両方の現象の発生に伴い、管路開放部33を流動する圧油の圧損ΔPに依らず、流入側(第2ポート42)の圧油圧力Pv及び流出側(第1ポート41)の圧油圧力Pv’の差異が漸次減少する。

0079

このような、管路開放部33を流動する圧油の圧損ΔPに依らないPv及びPv’の差異の減少によって、先に説明した第2ポート開放力Fo及び第2ポート閉塞力Fcの速度制御工程の開始時の関係(Fo>Fc)が、Fo≒Fcを経てFo<Fcへと逆転すると、第1可動スプール51が上方側への移動を開始して、管路開放部33の開度がKbまで低下する(Ka>Kb)(第2ポート開度維持・減少状態)。これを図6(b)に示す。また、この状態においても、第2圧力室32bは、第1可動スプール51の小径部51bを含んで第1圧力室32aと、第1可動スプール51により仕切られた状態が維持されている。

0080

すると、第2ポート42から管路開放部33を介した第1ポート41への圧油の流動が継続されているため、管路開放部33における圧損ΔPが再び増加し、流入側(第2ポート42)の圧油圧力Pv及び流出側(第1ポート41)の圧油圧力Pv’の差異が再び増加するため、第2ポート開放力Fo及び第2ポート閉塞力Fcの関係が、Fo<FcからFo≒Fcを経て、再びFo>Fcへと逆転し、第1可動スプール51が下方側に移動を開始して、管路開放部33の開度がKcまで増加する(Kb<Kc)(第2ポート開度維持・増加状態)。これを図6(c)に示す。また、この状態においても、第1可動スプール51により、第2圧力室32bは、第1可動スプール51の小径部51bを含んで第1圧力室32aと仕切られた状態が維持されている。

0081

射出充填工程(速度制御工程)が進行し、高速射出工程に切り換えられた後、プランジャチップ7の前進位置がVP切換位置に更に接近するに連れて、金型キャビティ5内の溶湯圧力の急激な上昇が継続し、管路開放部33の圧損ΔPに依らず、流出側(第1ポート41)の圧油圧力Pv’の上昇も継続する。そのため、上記のPv及びPv’の差異が更に減少し、第2ポート開放力Fo及び第2ポート閉塞力Fcの大小関係は、これらPv及びPv’の差異の増減に追従して上下方向に摺動する、第1可動スプール51の長手方向の位置、すなわち、第2ポート42の管路開放部33の開度増減に伴う、圧損ΔPの増減にほぼ連動するようになる。その結果、第1可動スプール51は、流入側(第2ポート42)及び流出側(第1ポート41)の圧油圧力バランスに追従しながら、第2ポート42の管路開放部33の開度を増減させる。

0082

そして、最終的には、第2ポート開放力Fo及び第2ポート閉塞力Fcの関係がFo<Fcへと移行し、第1可動スプール51の閉塞頂部51aが第2ポート42を閉塞させる。言い換えれば、速度制御開始工程の後、速度制御工程において、速度制御用油圧源14の圧油を開放させた後、第2ポート開度維持・減少状態と第2ポート開度維持・増加状態とが、速度制御工程の進行に伴って繰り返されることにより、第2ポート42を介して射出シリンダ10のヘッド室10Hに供給される、速度制御用油圧源14からの圧油量が漸次減少するように制御される。

0083

これに対して、図3の油圧回路図に示すような、2つの弁を連動制御させる形態においては、VP切換位置等の、速度制御工程から増圧工程への切り換えは、その切換タイミングにおいて、それぞれの圧油の供給源からの圧油の供給を、遮断開放切換弁18、19により遮断・開放させることにより行われる。そのため、高速射出工程への切換時と略同量の圧油の供給が、その切換タイミング直前まで継続されるため、増圧工程への切り換え直後に、射出シリンダ10のヘッド室10Hに大きなサージ圧力が発生し、これが金型キャビティ5内の溶湯に付与されて、バリ吹きが発生し易くなる。しかしながら、本実施例の射出増圧切換方法においては、同切換タイミングに近づくに連れて、速度制御用油圧源からの圧油の供給量が、漸次減少するように制御されるため、そのようなサージ圧力が発生し難い。

0084

また、図6(a)から図6(c)に示すように、速度制御工程が開始された後、流入側(第2ポート42)及び流出側(第1ポート41)の圧油圧力バランスに追従する、第1可動スプール51の上下方向の摺動が始まっても、第1可動スプール51により、第2圧力室32bは、第1可動スプール51の小径部51bを含んで第1圧力室32aと仕切られた状態が維持されている。そのため、後述する増圧工程における、速度制御用油圧源14から増圧制御用油圧源15への圧油の供給源の切り換えに備えて、図6(a)から図6(c)に示す状態、すなわち、第1可動スプール51により、第1圧力室32aと第2圧力室32bとが仕切られている状態の所定のタイミングにおいて、増圧制御用油圧源15の遮断開放切換弁19を開放させて、増圧制御用油圧源15からの圧油を第3ポート43側の管路へ開放させても良い。

0085

第3ポート43に、増圧制御用油圧源15からの圧油及び圧油圧力(増圧圧力)が供給・伝播された場合、第1可動スプール51の小径部51bの上下方向の上方側及び下方側の面にその増圧圧力が作用するが、それぞれの面の受圧面積が略等しくなるように小径部51bが構成されていれば、それぞれの受圧面に作用する増圧圧力は相殺され、第1可動スプール51の上下方向の摺動に影響を及ぼす虞はない。更に、増圧制御用油圧源15の遮断開放切換弁19を開放させるタイミングは、先に説明したように、第1可動スプール51により、第1圧力室32aと第2圧力室32bとが仕切られている状態の所定のタイミングにおいて行われれば良く、理想的なVP切換位置や、予め設定するVP切換位置に一致させる必要は全く無い。

0086

ここで、図6(d)に示すように、第1可動スプール51が上方側に移動(第2ポート42に接近)して、管路開放部33における第2ポートの開度がKdまで低下した状態(Kd<Kb)が、第1可動スプール51により、第2圧力室32bが、第1可動スプール51の小径部51bを含んで第1圧力室32aと仕切られた状態が維持される、第1可動スプール51の上方側の限界位置とする(連通開始位置)。そして、図6(d)に示す状態、すなわち、第1可動スプール51が連通開始位置にある状態から、図6(e)に示すように、更に、管路開放部33における第2ポートの開度がKe(Kd>Ke)に低下する位置まで、第1可動スプール51が第2ポート42に接近したとする。このように、第1可動スプール51が第2ポート42を閉塞させる位置よりも所定量、第2ポート42から離間した連通開始位置に到達するまでは、第1可動スプール51により、第1圧力室32aと第2圧力室32bとが仕切られると共に、連通開始位置を越えて、第1可動スプール51が第2ポート42に接近すると、第1可動スプール51の小径部51bにより、第1圧力室32aと第2圧力室32bとの連通が開始されるように小径部51bが構成されることが好ましい。

0087

このように、第1可動スプール51の小径部51bを構成させると、予め、新たに圧油の流入口となる第3ポート43を介して、第2圧力室32b内に、増圧制御用油圧源15からの圧油及び圧油圧力(増圧圧力Pp/ピーピー)を供給・伝播させておくことによって、図6(e)に示すように、速度制御工程の終盤の、第2ポート42が完全に閉塞されていない段階から、第1可動スプール51の小径部51bを介して、圧損ΔP’分減圧された増圧圧力Pp’を、第1圧力室32aの流出口である第1ポート41側に伝播させることができる。そして、第1圧力室32aの第1ポート41側に伝播された増圧圧力Pp’は、第1可動スプール51の中空部51dにより第4圧力室32d内の圧油にも伝播される。すると、第1可動スプール51の閉塞頂部51aの受圧面積Soよりも大きな、第1可動スプール51の大径部51cの下方側の受圧面積Scに作用する圧油圧力が、Pv’からPp’(Pp’>Pv>Pv’)へと増加するため、第2ポート閉塞力Fc(Fc=Pp’×Sc)が第2ポート開放力Fo(Fo=Pv×So)より確実に大きなものとなる。そのため、第1可動スプール51の第2ポート42への接近を促進させて、図6(f)に示すように、第1可動スプール51の閉塞頂部51aによる第2ポート42の閉塞が確実に行われ、増圧切換工程が完了する。

0088

また、図6(f)に示すように、第1可動スプール51により第2ポート42を完全に閉塞させた状態で、小径部51bによる第1圧力室32aと第2圧力室32bとの連通が最大開度になるように小径部51bを形成させれば、第1可動スプール51の閉塞頂部51aにより第2ポート42を完全に閉塞させた瞬間から、第3ポート43を介して第2圧力室32bに既に供給されている、増圧制御用油圧源15からの圧油及び圧油圧力を射出シリンダ10のヘッド室10Hに供給・伝播させて、増圧工程へと移行させることができる。

0089

つまり、上記のように第1可動スプール51の小径部51bを構成させると、図6(e)に示す速度制御工程の終盤から、第4圧力室32d内の圧油に増圧圧力Pp’を伝播させ、第2ポート閉塞力Fcを増加させて、第1可動スプール51の第2ポート42への接近を促進させる。そして、速度制御工程の終盤における、流入側(第2ポート42)及び流出側(第1ポート41)の圧油圧力バランスに追従する、第1可動スプール51の上下方向の微少な摺動を抑制して、図6(f)に示す増圧切換工程(第1可動スプール51による第2ポート42の閉塞)を短時間で完了させることができる。

0090

また、増圧切換工程後の第1圧力室32aと第2圧力室32bとの、第1可動スプール51の小径部51bによる連通開度が最大であるため、増圧切換工程における増圧力の伝播遅れを発生させることなく、プランジャチップ7により、金型キャビティ5内の溶湯に、所望する増圧力を付与させることができる。

0091

更に、図6(e)に示す速度制御工程の終盤から、図6(f)に示す増圧切換工程を短時間で完了させても、その短時間の切換時間内において、第2ポート43から第1ポート41への圧油の流動量の減少と、第3ポート43から第1ポート41への圧油の流動量の増加とが、1つの可動部分の単一方向への運動、すなわち、第1可動スプール51の第2ポート42への接近により行われるため、これら圧油の供給源の切り換えが結果的に連動して行われ、スムーズな切り換えが可能である。

0092

そして、射出増圧切換バルブ30への、外部からのパイロット圧油の供給や、射出増圧切換バルブ30自体の電気的制御を行わずとも、速度制御用油圧源14に接続される第2ポート42側と、射出シリンダ10のヘッド室10Hに接続される第1ポート41側との圧油の圧力バランスのみによって、純機械的に第1可動スプール51を上下方向に摺動させる構成により、これまで説明したような、速度制御工程から増圧完了工程に到る切換制御が行われる点も、本発明の射出増圧切換バルブ及び本バルブを採用する射出増圧切換方法の大きな特徴の1つである。

0093

この特徴により、本発明の射出増圧切換バルブ及び本バルブを採用する射出増圧切換方法においては、一般的には、VP切換位置等の切換タイミングの電気制御上の設定により切り換えられる、射出充填工程(速度制御工程)から増圧工程への2つの油圧源の切換タイミングを、VP切換位置等の切換タイミングの設定精度に依らずとも好適に切り換えが行われる。そのため、VP切換位置の設定精度や、給湯量が多く、そのバラツキの影響が大きい、大型ダイカストマシンにおける給湯量のバラツキに依らず、射出充填工程中の射出シリンダに供給させる圧油の供給源を、速度制御用油圧源から増圧制御用油圧源に好適に切換制御することができる。尚、図5に示すように、油圧回路上、速度制御用油圧源から増圧制御用油圧源に切換制御を行う際、電気的制御が必要な制御弁制御バルブ)は当然ながら存在する(例えば、遮断開放切換弁19)。しかしながら、これまで説明したように、本実施例に係る射出増圧切換方法において、厳密に、あるいは、好適に、予め設定したVP切換位置等の射出充填工程(速度制御工程)から増圧工程への切換タイミングに基づいて制御する必要のある制御弁は無い。

0094

増圧工程中は、増圧制御用油圧源15からの圧油及び圧油圧力は、射出増圧切換バルブ30の第3ポート43から、第1可動スプール51の小径部51b及び第1ポート41を介して、射出シリンダ10のヘッド室10Hに供給される。先に説明したように、多量の圧湯を供給させる必要がない一方、高圧力の圧油供給が必要なため、図6(f)において、第2ポート開放力Fo(Fo=Pv×So)よりも、第2ポート閉塞力Fc(Fc=Pp’×Sc)の方が大きい、Fo<Fcの関係が維持される。そのため、第2ポート42が閉塞状態で、第3ポート43及び第1ポート41間が最大開度で連通される状態が維持される。

0095

増圧工程の完了後、冷却工程を経てアルミニウム製品の鋳造成形が完了する。ここで、次の鋳造サイクルのために、圧油の2つの供給源である、速度制御用油圧源14及び増圧制御用油圧源15への蓄圧を開始する必要がある。特に、同油室内に多量の圧油を供給させて蓄圧を行わせる速度制御用油圧源14への蓄圧には時間を要する。そこで、速度制御用油圧源14と射出増圧切換バルブ30の第2ポート42との間の管路に合流する、油圧源22からの図示しない管路により、増圧工程の完了直後から速度制御用油圧源14への蓄圧を開始させることが好ましい。すなわち、第2ポート42側の管路の圧油に、速度制御用油圧源14への蓄圧のために、圧油圧力Pvを生じさせても、第2ポート42が閉塞された状態が維持される必要がある。

0096

一方、次の鋳造サイクルのために、図5において、射出シリンダ後退バルブ20をタンク24側に開放させて、射出シリンダ10のピストン12を後退させて、射出充填開始位置へ後退させる必要がある。このピストン12の後退動作中は、射出増圧切換バルブ30の第1ポート41と第3ポート43との連通状態、すなわち、同バルブの第2ポート42側の圧油圧力に依らず、第2ポート42が第1可動スプール51により閉塞され、且つ、第1ポート41と第3ポート43との間の連通状態が維持され、第1ポート41側及び第3ポート43側の管路は、射出シリンダ後退バルブ20を介してタンク24側へ開放された状態(圧油圧力がほぼゼロ)が維持されなければならない。一般的には、増圧工程完了後、前者の速度制御用油圧源14への蓄圧が先に行われ、アルミニウム製品の取り出しや、金型キャビティ5の内面への離型剤塗布等が完了するタイミングに合わせて、後者の射出シリンダ10の射出充填開始位置への後退動作が行われる。

0097

ここで、増圧工程が図6(f)に示す状態で完了したとする。増圧制御用油圧源15の遮断開放切換弁19を遮断させても、射出シリンダ後退バルブ20を開放しなければ、射出増圧切換バルブ30の第3ポート43側の管路の圧油圧力は、ほぼ増圧完了時の圧油圧力Ppが維持される。そのため、図6(f)に示す状態において、速度制御用油圧源14への蓄圧(圧油圧力Pv)を開始させて、蓄圧完了時に、射出増圧切換バルブ30の第2ポート42側に圧油圧力Pvが作用する状態になったとしても、Fo<Fcの関係が維持され、速度制御用油圧源14への蓄圧状態が維持される。

0098

しかしながら、速度制御用油圧源14への蓄圧が完了した後、射出シリンダ10のピストン12を後退させるために、射出シリンダ後退バルブ20を開放すれば、先に説明したように、射出増圧切換バルブ30の第3ポート43側の管路の圧油圧力はほぼゼロになるため、第1圧力室32aを介して第4圧力室32d内の圧油に伝播する圧油圧力もほぼゼロとなるため、Fo<Fcの関係が逆転し、Fo>Fcとなり速度制御用油圧源14の蓄圧状態を維持させることができなくなる。

0099

そこで、図6(g)に示すように、図示しない外部パイロット管路から第2パイロットポート62に圧油を供給させ、第5圧力室32eの圧力を上昇させて、第2可動スプール52の下方側の面に押圧力を作用させて、第1可動スプール51を、第2可動スプール52と共に、上方側に、第2ポート閉塞力Fc’で移動・押圧させる次サイクル準備工程を行わせることが好ましい。図6(f)に示す状態から、図6(g)に示す状態になるまで、第2可動スプール52を上方側に移動させるために必要な圧油量はごく少量である。そのため、油圧源22により、速度制御用油圧源14への蓄圧を開始させる前に、同油圧源22からの圧油を第2パイロットポート62に圧油を供給させて、第2ポート閉塞力Fc’を発生させた後、第2パイロットポート62と、速度制御用油圧源14とに、同時に圧油を供給させれば良い。

0100

速度制御用油圧源14への蓄圧時、油圧源22からの圧油を、図示しない増圧回路(増圧ブースター等)により、圧油圧力をPvまで上昇させて蓄圧が行われるように油圧回路が構成されていれば、同増圧回路で圧力をPvまで上昇させた圧油を、パイロットポート62に供給させれば、第2ポート閉塞力Fc’をFc’=Pv×Scとすることができるので、Fo<Fc’の関係を維持することができる。また、速度制御用油圧源14への蓄圧を完了させた後も圧油を第2パイロットポート62への圧油を継続させれば良い。この第2パイロットポート62への圧油供給の継続により発生させる第2ポート閉塞力Fc’は、第1圧力室32a(第4圧力室32d)及び第2圧力室32b内のいずれの圧油圧力にも影響を及ぼすことはない。そのため、第2ポート42が第1可動スプール51により閉塞され、且つ、第1ポート41と第3ポート43との間の連通状態が維持され、第3ポート43側の管路は、射出シリンダ後退バルブ20を介してタンク24側へ開放された状態が維持されるので、速度制御用油圧源14が蓄圧状態であっても、射出シリンダ10のピストン12の後退動作を問題なく行うことができる。尚、増圧制御用油圧源15への蓄圧時は、図示しない管路により、油圧源22からの圧油を、必要に応じて増圧ブースタ等が配置された蓄圧用増圧回路を介して、増圧制御用油圧源15及び遮断開放切換弁19間の管路に供給させれば、射出増圧切換バルブ30の第3ポート43側の管路に影響を与えることはない。

実施例

0101

上記の実施の形態は本発明の例であり、本発明は、これら実施の形態により制限されるものではなく、請求項に記載される事項によってのみ規定されており、上記以外の実施の形態も実施可能である。

0102

5金型キャビティ
10射出シリンダ
10Hヘッド室
10Rロッド室
14速度制御用油圧源
15増圧制御用油圧源
30射出増圧切換バルブ
31バルブ本体
32 空間
32a 第1圧力室
32b 第2圧力室
32c 第3圧力室
32d 第4圧力室
32e 第5圧力室
41 第1ポート
42 第2ポート
43 第3ポート
51 第1可動スプール
51a閉塞頂部
51b小径部
51c 大径部
51d中空部
52 第2可動スプール
61 第1パイロットポート
62 第2パイロットポート
Fo(エフオー) 第2ポート開放力
Fc(エフシー) 第2ポート閉塞力
Fc’ 第2ポート閉塞力(第2可動スプール)
So(エスオー)受圧面積(閉塞頂部側)
Sc(エスシー) 受圧面積(大径部側)

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