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技術 接合金型の製造方法および液相拡散接合用インサート材

出願人 日立金属株式会社
発明者 福元志保福丸大志郎
出願日 2015年9月29日 (5年2ヶ月経過) 出願番号 2015-190579
公開日 2017年4月6日 (3年8ヶ月経過) 公開番号 2017-064731
状態 特許登録済
技術分野 はんだ付・ろう付材料 鋳型又は中子及びその造型方法 プラスチック等の成形用の型 チル鋳造・ダイキャスト 物品の熱処理 圧接、拡散接合
主要キーワード 合金工具鋼鋼材 炭化物自身 ミクロ写真 金型用鋼材 オーステナイト変態温度 接合効果 ブリネル硬さ 冷却割れ
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (2)

課題

接合界面の部分の機械的特性健全に維持できる接合金型の製造方法と、この接合金型の製造方法に使用できる液相拡散接合用インサート材を提供する。

解決手段

固相点が1330℃以上、AC3点が820〜900℃の鋼材どうしの間に、質量%で、B:1.00〜5.00%、Si:3.00〜6.00%、残部Feおよび不純物でなるインサート材が挟み込まれた挟持体を得る挟持工程と、この挟持体を1180〜1300℃に加熱して、鋼材どうしが液相拡散接合された接合体を得る接合工程と、この接合体に鋼材のAC3点〜(AC3点+50℃)の温度の焼鈍を行って、焼鈍体を得る焼鈍工程と、この焼鈍体の外面を金型の形状に機械加工して、金型形状体を得る機械加工工程と、この金型形状体に焼入れ焼戻しを行って、金型を得る焼入れ焼戻し工程と、を含む接合金型の製造方法である。そして、上記の成分組成を有する液相拡散接合用インサート材である。

概要

背景

従来、ダイカスト射出成型用プラスチック成形用といった金型は、成形品や金型自身を冷却するために、その内部に冷却媒体を通す「冷却孔」が設けられている。この冷却孔に代表される、金型の内部孔は、ドリル等による切削穿孔といった機械加工で形成されている。しかし、最近、金型の内部孔の形状や経路は複雑化しており、このような複雑な内部孔を、金型素材の外面から、機械加工で形成することが難しくなってきている。そこで、このような複雑な内部孔は、例えば、放電加工によって形成されている。しかし、放電加工は、機械加工に比べて、一般的に、加工工数が多く、かつ、加工時間も長いことから、金型の完成までにコストや日数が掛かりやすい。
そこで、複数の「別個」の金型素材を準備して、これら別個の金型素材を「一つに」接合する「接合金型」の製造方法が提案されている(特許文献1)。この金型の製造方法によれば、別個の金型素材の、それぞれの表面に、所望の内部孔を形成してから、この内部孔が形成された金型素材の面どうしを接合することで、複雑な内部孔も機械加工で形成することが可能である。また、上記した内部孔の複雑化の他にも、別個の金型素材を接合すること自体により、大きな金型を製造することができる。

概要

接合界面の部分の機械的特性健全に維持できる接合金型の製造方法と、この接合金型の製造方法に使用できる液相拡散接合用インサート材を提供する。固相点が1330℃以上、AC3点が820〜900℃の鋼材どうしの間に、質量%で、B:1.00〜5.00%、Si:3.00〜6.00%、残部Feおよび不純物でなるインサート材が挟み込まれた挟持体を得る挟持工程と、この挟持体を1180〜1300℃に加熱して、鋼材どうしが液相拡散接合された接合体を得る接合工程と、この接合体に鋼材のAC3点〜(AC3点+50℃)の温度の焼鈍を行って、焼鈍体を得る焼鈍工程と、この焼鈍体の外面を金型の形状に機械加工して、金型形状体を得る機械加工工程と、この金型形状体に焼入れ焼戻しを行って、金型を得る焼入れ焼戻し工程と、を含む接合金型の製造方法である。そして、上記の成分組成を有する液相拡散接合用インサート材である。

目的

本発明の目的は、別個の金型素材が一つに接合されてなる接合金型の製造方法において、その接合界面の部分の機械的特性を健全に維持できる接合金型の製造方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
0件

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請求項1

固相点が1330℃以上、AC3点が820〜900℃である鋼材どうしの間に、質量%で、B:1.00〜5.00%、Si:3.00〜6.00%、残部Feおよび不純物でなるインサート材を挟み込んで、前記インサート材が前記鋼材で挟み込まれた挟持体を得る挟持工程と、前記挟持工程で得た前記挟持体の、少なくとも前記インサート材が挟み込まれた部分を、1180〜1300℃に加熱して、前記鋼材どうしが液相拡散接合された接合体を得る接合工程と、前記接合工程で得た前記接合体に、前記鋼材のAC3点〜(AC3点+50℃)の温度の焼鈍を行って、前記接合体の全体が焼鈍された焼鈍体を得る焼鈍工程と、前記焼鈍工程で得た前記焼鈍体の外面を、金型の形状に機械加工して、金型形状体を得る機械加工工程と、前記機械加工工程で得た前記金型形状体に、焼入れ焼戻しを行って、金型を得る焼入れ焼戻し工程と、を含むことを特徴とする接合金型の製造方法。

請求項2

質量%で、B:1.00〜5.00%、Si:3.00〜6.00%、残部Feおよび不純物でなることを特徴とする液相拡散接合用インサート材。

技術分野

0001

本発明は、液相拡散接合を利用した接合金型の製造方法、および、液相拡散接合用インサート材に関する。

背景技術

0002

従来、ダイカスト射出成型用プラスチック成形用といった金型は、成形品や金型自身を冷却するために、その内部に冷却媒体を通す「冷却孔」が設けられている。この冷却孔に代表される、金型の内部孔は、ドリル等による切削穿孔といった機械加工で形成されている。しかし、最近、金型の内部孔の形状や経路は複雑化しており、このような複雑な内部孔を、金型素材の外面から、機械加工で形成することが難しくなってきている。そこで、このような複雑な内部孔は、例えば、放電加工によって形成されている。しかし、放電加工は、機械加工に比べて、一般的に、加工工数が多く、かつ、加工時間も長いことから、金型の完成までにコストや日数が掛かりやすい。
そこで、複数の「別個」の金型素材を準備して、これら別個の金型素材を「一つに」接合する「接合金型」の製造方法が提案されている(特許文献1)。この金型の製造方法によれば、別個の金型素材の、それぞれの表面に、所望の内部孔を形成してから、この内部孔が形成された金型素材の面どうしを接合することで、複雑な内部孔も機械加工で形成することが可能である。また、上記した内部孔の複雑化の他にも、別個の金型素材を接合すること自体により、大きな金型を製造することができる。

先行技術

0003

特開2009−195914号公報

発明が解決しようとする課題

0004

上述した「接合金型の製造方法」は、金型の製作に有効な一手法である。しかし、もとは別個の金型素材であったものを接合して得た金型素材は、その接合界面の部分の機械的特性を、その他の部分、つまり、上記した金型素材自体の健全な部分の機械的特性と合わせることが容易ではない。そして、接合界面の部分の靱性や硬さが不十分であると、使用中の金型の強度不足要因となり、また、割れ発生の要因となる。
本発明の目的は、別個の金型素材が一つに接合されてなる接合金型の製造方法において、その接合界面の部分の機械的特性を健全に維持できる接合金型の製造方法を提供することである。そして、この接合金型の製造方法に使用できる、液相拡散接合用インサート材を提供することである。

課題を解決するための手段

0005

本発明は、固相点が1330℃以上、AC3点が820〜900℃である鋼材どうしの間に、質量%で、B:1.00〜5.00%、Si:3.00〜6.00%、残部Feおよび不純物でなるインサート材を挟み込んで、このインサート材が上記の鋼材で挟み込まれた挟持体を得る挟持工程と、
この挟持工程で得た挟持体の、少なくとも上記のインサート材が挟み込まれた部分を、1180〜1300℃に加熱して、鋼材どうしが液相拡散接合された接合体を得る接合工程と、
この接合工程で得た接合体に、上記した鋼材のAC3点〜(AC3点+50℃)の温度の焼鈍を行って、接合体の全体が焼鈍された焼鈍体を得る焼鈍工程と、
この焼鈍工程で得た焼鈍体の外面を、金型の形状に機械加工して、金型形状体を得る機械加工工程と、
この機械加工工程で得た金型形状体に、焼入れ焼戻しを行って、金型を得る焼入れ焼戻し工程と、
を含む接合金型の製造方法である。

0006

また、本発明は、質量%で、B:1.00〜5.00%、Si:3.00〜6.00%、残部Feおよび不純物でなる液相拡散接合用インサート材である。

発明の効果

0007

本発明であれば、別個の金型素材が接合されてなる接合金型において、その接合界面の部分の機械的特性を健全に維持することができる。

図面の簡単な説明

0008

本発明例および比較例の接合金型について、その接合部の金属組織の一例を示すミクロ写真である。

0009

液相拡散接合とは、接合したい材料(つまり、本発明でいう鋼材)の間にインサート材を挟み込んだ挟持体を(または、その挟持体のインサート材を挟み込んだ部分を)、インサート材が溶融する温度で加熱することで、上記の接合したい材料どうしを接合する方法である。つまり、インサート材の溶融後に続いて、通常は、上記の溶融温度に維持することで、溶融したインサート材中の「融点液相点)降下元素」が鋼材中拡散する。そして、この拡散の進行に連れて、溶融しているインサート材の融点も上昇していき、これが最終的に凝固して、拡散接合を終える方法である。なお、拡散中の拡散温度を、上記の溶融温度から変化させてもよい。また、上記の拡散接合を終えた後に、上記の接合温度(溶融温度および拡散温度)よりも高い温度による拡散処理を、追加で行うこともできる。
そして、本発明では、このような液相拡散接合に係るインサート材と接合温度とを見直したことで、この見直した接合条件を接合金型の製造方法に適用したときに、金型の接合部における機械的特性を健全に維持できる手法を見いだした点に特徴がある。以下に、本発明の各構成要件について説明する。

0010

(1)本発明の接合金型の製造方法は、固相点が1330℃以上、AC3点が820〜900℃である鋼材どうしの間に、質量%で、B:1.00〜5.00%、Si:3.00〜6.00%、残部Feおよび不純物でなるインサート材を挟み込んで、このインサート材が上記の鋼材で挟み込まれた挟持体を得る挟持工程を、含むものである。
まず、本発明に関する接合金型の主体である鋼材には、その焼鈍組織が焼入れ焼戻しされてマルテンサイト組織発現するものを使用することができる。焼鈍組織とは、焼鈍処理によって得られる組織のことであり、例えば、硬さが、ブリネル硬さで150〜230HBW程度に軟化された組織である。また、焼入れとは、焼鈍状態の鋼材を、オーステナイト温度域にまで加熱し、これを急冷することで、組織をマルテンサイト変態させる工程である。そして、焼戻しとは、焼入れされた鋼材を加熱して、所定の使用硬度に調整する工程である。

0011

本発明で使用できる鋼材には、例えば、JIS−G−4404の「合金工具鋼鋼材」に規格される、SKD61といった汎用鋼種も含まれる。つまり、本発明の接合金型の製造方法において、上述した本発明の「接合界面の部分の機械的特性の維持効果(以下、単に「接合効果」という)」は、従来の金型用鋼材に別段の改良等を行わなくても、その達成が可能である。そして、このような鋼材は、その融点(固相点)が、概ね「1330℃以上」である。そして、その加熱時のオーステナイト変態温度AC3点が、概ね「820〜900℃」の範囲である。以下に、本発明で使用する鋼材の好ましい成分組成の一例を示しておく。

0012

・C:0.30〜1.50質量%(以下、単に「%」と表記
Cは、Cr、W、Mo、V等と結合して炭化物を形成し、金型の耐摩耗性を向上させる元素である。また、一部が基地中に固溶して、金型の焼戻しマルテンサイト組織に硬さを付与する元素である。しかし、多すぎると、金型の靭性が低下する。よって、0.30〜1.50%とするのが好ましい。より好ましくは、0.60%以下である。

0013

・Si:2.00%以下
Siは、通常、溶解工程における脱酸剤として使用される。しかし、多すぎると、靭性が低下するので、2.00%以下が好ましい。より好ましくは、1.20%以下である。
なお、Siには、金型組織中に固溶して、金型の硬さを高める効果がある。この効果を得るために、0.10%以上とするのが好ましい。

0014

・Mn:1.00%以下
Mnは、Siと同様、脱酸剤として使用される。しかし、多すぎると、靭性が低下するので、1.00%以下が好ましい。より好ましくは、0.50%以下である。
なお、Mnは、オーステナイト形成元素であり、焼入性を高める効果を有する。この効果を得るために、0.20%以上とするのが好ましい。

0015

・P:0.050%以下
Pは、通常、添加を行わなくても、各種の鋼材に不可避的に含まれる元素である。そして、焼戻しなどの熱処理時に旧オーステナイト粒界偏析して、粒界脆化させる元素である。したがって、金型の靭性を向上するために、0.050%以下に規制することが好ましい。より好ましくは、0.030%以下である。

0016

・S:0.004%以下
Sは、通常、添加を行わなくても、各種の鋼材に不可避的に含まれる元素である。そして、鋼塊熱間加工して鋼材の状態に仕上げるときにおいて、その熱間加工性劣化させて、熱間加工中に割れを生じさせる元素である。したがって、熱間加工性を向上するために、0.004%以下に規制することが好ましい。より好ましくは、0.002%以下である。さらに好ましくは、0.001%以下である。

0017

・Cr:3.00〜7.00%
Crは、焼入性を高める元素である。また、炭化物を形成して、耐摩耗性の向上に効果を有する元素である。そして、金型の耐酸化性の向上にも寄与する元素である。但し、多すぎると、大きな未固溶炭化物を形成して、靱性を低下させる。また、高温強度焼戻し軟化抵抗も低下させる。よって、3.00〜7.00%とすることが好ましい。より好ましくは、3.50%以上である。また、より好ましくは、5.00%以下である。

0018

・WおよびMoは単独または複合で(W+2Mo):2.00〜10.00%
WおよびMoは、Cと結合して特殊な炭化物を形成して、金型に耐摩耗性や耐焼付き性を付与する。また、焼戻し時の2次硬化作用が大きく、高温強度も向上する。しかし、多すぎると、上述した熱間加工性を阻害する。
WおよびMoは、単独または複合で添加できる。そして、この際の添加量は、WがMoの約2倍の原子量であることから、(W+2Mo)の式で定義されるW当量一緒に規定できる。そして、この(W+2Mo)の関係式において、単独または複合で2.00〜10.00%とすることが好ましい。より好ましくは、8.00%以下である。さらに好ましくは、6.00%以下である。

0019

・V:0.60〜2.00%
Vは、Cと結合して硬質の炭化物を形成し、耐摩耗性の向上に寄与する。しかし、多すぎると、炭化物自身の増加によって、靭性が低下する。よって、0.60〜2.00%とすることが好ましい。より好ましくは、0.80%以上である。また、より好ましくは、1.50%以下である。

0020

本発明に関する鋼材の好ましい成分組成は、上記した元素種を含んだ鋼の成分組成とすることができる。また、上記した元素種を含み、残部をFeおよび不純物とした成分組成とすることができる。そして、上記した元素種の他には、下記の元素種の含有も可能である。
・Ni:1.00%以下
Niは、鋼材に焼入性を付与する元素である。しかし、多すぎると、被削性を低下させる元素である。よって、添加する場合、その上限を1.00%とすることが好ましい。
・Co:10.00%以下
Coは、金型の焼戻しマルテンサイトの硬さを向上させ、金型の耐摩耗性の向上に寄与する元素である。但し、多すぎると、靭性が低下する。よって、添加する場合、その上限を10.00%とすることが好ましい。

0021

そして、上述した、固相点が1330℃以上、AC3点が820〜900℃である鋼材どうしを液相拡散接合するにおいては、その後述する「1180〜1300℃」の接合温度に対して、用いるインサート材の融点(液相点)が、上記の接合温度から概ね30℃ないし60℃程度低いことが、本発明の接合効果を得る上で有効である。そして、上記の融点を有する本発明に係るインサート材は、成分組成が、質量%で、B:1.00〜5.00%、Si:3.00〜6.00%、残部Feおよび不純物でなるものである。なお、このような成分組成のインサート材は、一般的に、非晶質状態の金属組織を有している。

0022

・B:1.00〜5.00%
まず、本発明に係るインサート材は、その主体をFe(鉄)とする。Feが主体のインサート材であれば、その接合中において、接合したい鋼材との間で拡散し合っても、接合後の接合体の成分組成の「均質性」に大きな影響を与えない。
そして、Bは、Feの融点を下げるのに適した融点降下元素であり、かつ、接合中の鋼材に拡散しやすい元素である。FeにBを添加すると、BはFeと硼化物を生成する。そして、このときの共晶反応によって、Feの融点(約1535℃)が下がる。そして、このFeの融点を、目標とするインサート材の、上記した接合温度から30℃ないし60℃低い温度にするには、1.00〜5.00%とする必要がある。

0023

・Si:3.00〜6.00%
Siもまた、Feの融点を下げるのに適した融点降下元素であり、かつ、接合中の鋼材に拡散しやすい元素である。Siは、Feに添加すると、Feとの化合物を生成する。そして、Bと同様、このときの共晶反応によって、Feの融点が下がる。そして、Feの融点を、目標とするインサート材の、上記した接合温度から30℃ないし60℃低い温度にするには、3.00〜6.00%とする必要がある。このとき、Siの含有量が6.00%を超えると、非晶質状態のインサート材の靱性が低下して、ハンドリング性が悪くなる場合もある。

0024

(2)本発明の接合金型の製造方法は、(1)の挟持工程で得た挟持体の、少なくともインサート材が挟み込まれた部分を、1180〜1300℃に加熱して、鋼材どうしが液相拡散接合された接合体を得る接合工程を、含むものである。
本工程では、上述した挟持体に液相拡散接合を実施することで、「別個の」鋼材を「一つの」鋼材に接合する。そして、このときの接合温度(溶融温度および拡散温度)は、使用するインサート材の液相点に対して、数十度高めに、例えば、30℃ないし60℃程度高めに設定するのがよい。接合温度が低すぎると(インサート材の液相点に近すぎると)、インサート材が溶融した後に、そのインサート材中の融点降下元素が十分に拡散する前に、溶融したインサート材の部分が凝固して、本発明の接合効果が得られ難い。一方で、接合温度が高すぎると、接合中の鋼材に割れが発生しやすい。よって、本発明が適用する接合温度は、1180〜1300℃とする。好ましくは、この接合温度の上限を、接合される鋼材の(AC3点+400℃)とする。

0025

なお、この接合工程において、好ましくは、上述した挟持体の、少なくともインサート材が挟み込まれた部分が、1180〜1300℃の接合温度に到達してから、30〜60分の間は、鋼材とインサート材との接合界面に対して垂直方向に、3〜10MPaの圧力を加えることがよい。これにより、液相拡散接合が進んで、溶融したインサート材の部分が凝固するときに、この凝固部に残る引け巣の低減に効果的である。
また、上記の30〜60分が経過した後には、その1180〜1300℃の接合温度の範囲内で、5〜20時間保持することが、好ましい。これにより、インサート材中の拡散物質を、鋼材中に、より十分に拡散させることができる。そして、液相拡散接合が終わった後の接合体を冷却するときには、20〜120℃/hの冷却速度で冷却することが好ましい。これにより、接合体に生じる冷却割れの抑制に効果的である。

0026

(3)本発明の接合金型の製造方法は、(2)の接合工程で得た接合体に、接合したい鋼材のAC3点〜(AC3点+50℃)の温度の焼鈍を行って、上記の接合体の全体が焼鈍された焼鈍体を得る焼鈍工程を、含むものである。
上記した(2)の接合工程で「一つになった」鋼材に、AC3点以上の温度で焼鈍を行うこと自体は、特別な工程ではない。つまり、この焼鈍は、通常の金型の製造工程で、金型形状に機械加工する前等の鋼材に行われる焼鈍と同じである。そして、この焼鈍工程によって、接合後の鋼材から残留応力を除去することができる。但し、焼鈍温度が高すぎると、鋼材の結晶粒の粗大化が進み、焼入れ焼戻し後の靱性を低めることとなる。よって、焼鈍温度は、鋼材の(AC3点+50℃)以下とする。

0027

なお、(2)の接合工程で得た接合体は、上記の焼鈍前に、接合温度から一旦、冷却されていることが、現実的である。このようにして得た接合体は、その組織中のオーステナイト粒が粗大化している場合がある。この時点で組織中のオーステナイト粒が粗大化していると、後の焼入れ焼戻しを経て製作された金型の靱性が低下する可能性がある。そこで、この(3)の焼鈍工程では、上記の焼鈍温度で組織中に新たなオーステナイト粒を十分に析出させた後に、その焼鈍温度から「10〜30℃/h」の冷却速度で冷却させることが好ましい。この冷却によって、上記のオーステナイト粒の粗大化を抑制することができる。

0028

(4)本発明の接合金型の製造方法は、(3)の焼鈍工程で得た焼鈍体の外面を、金型の形状に機械加工して、金型形状体を得る機械加工工程を、含むものである。
上記した(3)の焼鈍工程で全体を焼鈍された焼鈍体には、通常の金型の製造工程に倣って、金型の製品形状に合わせた必要な機械加工を行う。つまり、上記の焼鈍体の外面より機械加工して、金型の形状面等を形成する加工である。そして、この機械加工を、鋼材の硬さが低い「焼鈍状態」で行うことで、鋼材の被切削性を確保でき、機械加工を容易に行うことができる。

0029

(5)本発明の接合金型の製造方法は、(4)の機械加工工程で得た金型形状体に、焼入れ焼戻しを行って、金型を得る焼入れ焼戻し工程を、含むものである。
上記した(4)の機械加工工程で得られた金型形状体には、通常の金型の製造工程に倣って、焼入れおよび焼戻しを行う。そして、この焼入れ焼戻しによって、上記の金型形状体は所定の硬さを有したマルテンサイト組織に調製されて、金型製品に整えられる。このとき、焼入れ焼戻し後に仕上げの機械加工を行ってもよい。

0030

この焼入れおよび焼戻しの温度は、素材の成分組成や狙い硬さ等によって異なるが、焼入れ温度は概ね950〜1100℃程度、焼戻し温度は概ね400〜650℃程度であることが好ましい。焼入れ焼戻し硬さは45HRC以上とすることが好ましい。上限は特に要しないが、55HRC以下が現実的である。

0031

所定の成分組成に調整した溶鋼鋳造して鋼塊を作製した。そして、この鋼塊に熱間鍛造を行った後、冷却して、表1の成分組成を有する焼鈍状態の鋼材1、2を準備した。鋼材の寸法は、断面が50mm×50mm角で、長さ(つまり、鍛造による延伸方向)が60mmである。また、鋼材1の融点(固相点)は1350℃、AC3点は835℃である。鋼材2の融点(固相点)は1370℃、AC3点は865℃である。

0032

0033

次に、表1の鋼材1どうし、および、鋼材2どうしを接合するために、それぞれの鋼材の全面を研磨した後、その接合面となる50mm×50mmの面を粒度番号#500のSiCペーパー仕上げ研磨した。
そして、表2に示すインサート材A、Bを準備して、鋼材1どうしの間にインサート材Aを挟み込んで挟持した「挟持体1A」と、鋼材1どうしの間にインサート材Bを挟み込んで挟持した「挟持体1B」と、鋼材2どうしの間にインサート材Aを挟み込んで挟持した「挟持体2A」の、3種類の挟持体を準備した。このとき、インサート材Aは、本発明を満たすインサート材である。また、インサート材Bは、従来の液相拡散接合に用いられているインサート材である。
そして、これら挟持体の全体を1200℃に加熱して、液相拡散接合を実施した。このとき、挟持体の温度が1200℃に到達したときから30分間は、その接合界面に対して垂直方向に、8MPaの接合圧力をかけた。そして、その後、同温度で10時間保持した。そして、10時間経過後に、60℃/hの冷却速度で冷却して、接合体を得た。

0034

0035

上記で得た接合体に、870℃で4時間保持し、その保持後に20℃/hの冷却速度で冷却する焼鈍を行って、焼鈍体を得た(硬さ160HBW)。そして、この焼鈍体を機械加工して、金型形状体に相当する、接合部の靱性を評価するためのシャルピー衝撃試験片と、接合部の強度を評価するための引張試験片形状体を作製した。このとき、シャルピー衝撃試験片は、10mm角×長さ60mmの、Uノッチタイプである。また、引張試験片は、ゲージ長さ15mm、直径3mmの形状である。いずれの試験片も、その長手方向が接合界面に直交しており、かつ、シャルピー衝撃試験片では、そのノッチ底が接合界面と一致するように、引張試験片では、そのゲージ中央部が接合界面と一致するように、接合体から採取した。
そして、上記のシャルピー衝撃試験片および引張試験片に、1030℃に加熱して60分間保持後に急冷する焼入れを行った。そして、この焼入れを行った試験片に、鋼材の硬さが47HRCとなるように、概ね550〜650℃での焼戻しを行って、接合金型相当の試験片とし、シャルピー衝撃試験および引張試験に供した。なお、それぞれの試験片(接合金型)につき、シャルピー衝撃試験片は3本作製し、引張試験片は2本作製した。そして、それぞれの試験片で得られた試験結果を平均して、評価した。

0036

表3に、シャルピー衝撃試験の結果を示す。接合した鋼材が共通する本発明例の「接合金型1A」と比較例の「接合金型1B」との間で、それらの接合部の靱性はほぼ同等であり、本発明例の金型1Aは、従来の金型1Bと同等の靱性を維持できた。なお、本発明例の「接合金型2A」では、その鋼材自体の靱性が高いことに依存して、そのシャルピー衝撃値が、接合金型1A、1Bのそれよりも高かった。

0037

0038

表4に、引張試験の結果を示す。Feを多く含むインサート材Aを用いて接合した、本発明例の接合金型1A、2Aの接合部の硬さは、その金型全体の狙い硬さである47HRCに近い、490HV前後(約48HRC)を達成していた。これに対して、Niを多く含むインサート材Bを用いて接合した接合金型1Bの接合部の硬さは、接合金型1A、2Aのそれに比して、390HV程度(約40HRC)と低かった。そして、引張試験後の破断位置は、接合金型1Bのそれが「接合部」であったことに対して、接合金型1A、2Aのそれは、接合部ではなくて、「鋼材」の位置であった。

0039

実施例

0040

図1は、それぞれの接合金型について、その接合部の金属組織を示すものである。本発明例のインサート材を用いて接合した接合金型1A、2Aの接合部は、比較例のインサート材を用いて接合した接合金型1Bの接合部と比べて、その接合界面が不明瞭となっており、拡散が十分に進行したことがわかった。

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