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概要
背景
ブドウ原料由来のワインには、味質の改善が求められている。
飲料の味質改善に関して、特許文献1(特開平8−224075号公報)には、アルコールに起因する苦味やバーニング感を抑え、アルコールの軽やか風味を生かすため、アルコール飲料に含まれるエチルアルコール100部に対してシュクラロースを0.0001〜2.0部添加することが開示されている。
また、特許文献2(特開平10−262601号公報)には、渋味を呈する製品に、スクラロースを添加することを特徴とする渋味のマスキング方法が開示されている。この文献には、スクラロースの添加量は、通常甘みを呈するために使用される量以下であることが好ましい点が記載されている。
更に、特許文献3(特開2015−104349号公報)には、高甘味度甘味料を含有する低エキス分のリンゴ果実酒において、飲み応えとキレを付与する為に、高甘味度甘味料の含有量を、ショ糖の甘味度換算で0.8〜8.0w/v%とする点が記載されている。
特許文献4(米国特許出願公開第2008/0305207号)には、糖尿病等の予防のため、ノーカロリー甘味料を用いたワインの製造方法において、ワイン100mlに対して約0.0140gmのスクラロースを甘味料として添加することが記載されている。
概要
目的
本発明の課題は、コク等のポジティブな味を増強することができる、ワイン及びワインの製造方法を提供する
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 0件
- 牽制数
- 0件
この技術が所属する分野
請求項1
請求項2
請求項3
前記高甘味度甘味料の含有量が、2.5〜12.5mg/Lである、請求項2に記載されたワイン。
請求項4
ショ糖換算で1.5〜7.5g/Lの含有量になるように高甘味度高甘味料を添加する工程を含む、ワインの製造方法。
請求項5
前記高甘味度甘味料が、アセスルファムK、スクラロース、アスパルテーム、ステビアからなる群から選ばれる少なくとも1種の甘味料である、請求項4に記載されたワインの製造方法。
請求項6
前記高甘味度甘味料が、2.5〜12.5mg/Lの含有量になるように添加される、請求項5に記載されたワインの製造方法。
技術分野
0001
本発明は、ワイン及びワインの製造方法に関する。
背景技術
0002
ブドウ原料由来のワインには、味質の改善が求められている。
飲料の味質改善に関して、特許文献1(特開平8−224075号公報)には、アルコールに起因する苦味やバーニング感を抑え、アルコールの軽やか風味を生かすため、アルコール飲料に含まれるエチルアルコール100部に対してシュクラロースを0.0001〜2.0部添加することが開示されている。
また、特許文献2(特開平10−262601号公報)には、渋味を呈する製品に、スクラロースを添加することを特徴とする渋味のマスキング方法が開示されている。この文献には、スクラロースの添加量は、通常甘みを呈するために使用される量以下であることが好ましい点が記載されている。
更に、特許文献3(特開2015−104349号公報)には、高甘味度甘味料を含有する低エキス分のリンゴ果実酒において、飲み応えとキレを付与する為に、高甘味度甘味料の含有量を、ショ糖の甘味度換算で0.8〜8.0w/v%とする点が記載されている。
特許文献4(米国特許出願公開第2008/0305207号)には、糖尿病等の予防のため、ノーカロリー甘味料を用いたワインの製造方法において、ワイン100mlに対して約0.0140gmのスクラロースを甘味料として添加することが記載されている。
先行技術
0003
特開平8−224075号公報
特開平10−262601号公報
特開2015−104349号公報
米国特許出願公開第2008/0305207号
発明が解決しようとする課題
0004
低品質なブドウ原料由来のワインには、コク(ボディ感)等のポジティブな味が薄い、という傾向がある。ここでいうコク・ボディ感とは、口中で感じられる膨らみや厚み、複雑さのことであり、甘味とは異なる。上記のいずれの文献にも、コク等のポジティブな味が薄いワインの味質を改善する手法は記載されていない。従って、本発明の課題は、コク等のポジティブな味を増強することができる、ワイン及びワインの製造方法を提供することにある。
課題を解決するための手段
0005
本発明者は、ワインに特定の濃度で高甘味度甘味料を添加することにより、コク等のポジティブな味を増強することができることを見出した。
すなわち、本発明は以下の事項を含んでいる。
〔1〕高甘味度甘味料をショ糖換算で1.5〜7.5g/Lの含有量で含有する、ワイン。
〔2〕前記高甘味度甘味料が、アセスルファムK、スクラロース、アスパルテーム、ステビアからなる群から選ばれる少なくとも1種の甘味料である、前記〔1〕に記載されたワイン。
〔3〕前記高甘味度甘味料の含有量が、2.5〜12.5mg/Lである、前記〔2〕に記載されたワイン。
〔4〕ショ糖換算で1.5〜7.5g/Lの含有量になるように高甘味度高甘味料を添加する工程を含む、ワインの製造方法。
〔5〕前記高甘味度甘味料が、アセスルファムK、スクラロース、アスパルテーム、ステビアからなる群から選ばれる少なくとも1種の甘味料である、前記〔4〕に記載されたワインの製造方法。
〔6〕前記高甘味度甘味料が、2.5〜12.5mg/Lの含有量になるように添加される、前記〔5〕に記載されたワインの製造方法。
発明の効果
0006
本発明によれば、コク等のポジティブな味を増強することができる、ワイン及びワインの製造方法が提供される。
図面の簡単な説明
実施例
0008
本発明の実施態様に係るワインは、高甘味度甘味料を、ショ糖換算で1.5〜7.5g/Lの量で含有する。このような濃度で高甘味度甘味料を含有することにより、コク等のポジティブな味を増強することができる。尚、ショ糖換算での高甘味度甘味料の含有量は、より好ましくは1.5〜6.0g/Lであり、更に好ましくは3.0〜6.0g/Lである。高甘味度甘味料の含有量が多すぎると、甘みが必要以上に増し、全体的なおいしさが損なわれる。高甘味度甘味料の含有量が少なすぎると、コク(ボディ感)等のポジティブな味が増強されにくい。
加えて、高甘味度甘味料を用いることにより、糖類(ショ糖)等を甘味料として添加する場合と比べて、低カロリーで所望する味質を得ることができる。また、小量の添加量で所望の味質を得られるため、再発酵のリスクがなく、微生物に対する安定性を高めることができる。
0009
本明細書において、高甘味度甘味料とは、甘味度が100以上の甘味料を指す。甘味度とは、濃度が「A」であるショ糖水溶液と同等の甘味が得られる高甘味度甘味料の水溶液の濃度Bとしたときに、濃度Aと濃度Bとの比、すなわち「濃度A/濃度B」によって表される値である。高甘味度甘味料としては、アセスルファムK、スクラロース、アスパルテーム、ステビアからなる群から選ばれる少なくとも1種の甘味料が好ましく用いられる。またこれらの甘味料を単独で使用しても、あるいは複数併用してもよい。尚、アセスルファムKの甘味度は、200である。スクラロースの甘味度は600である。アスパルテームの甘味度は200である。ステビアの甘味度は甘味成分により10〜300である。
また、高甘味度甘味料は、スクラロースを含んでいることがより好ましい。スクラロースを特定の含有量になるように添加することにより、低品質なワインにおいてしばしば感じられる、酸味及び収斂味などのネガティブな味を低減することができ、全体的なおいしさをより高めることができる。
本明細書において、高甘味度甘味料のショ糖換算の含有量とは、高甘味度甘味料の含有量に、甘味度を乗じた値である。高甘味度甘味料として、アセスルファムK、スクラロース、アスパルテーム、ステビア、又はこれらの混合物が用いられる場合、高甘味度甘味料の含有量(ショ糖換算ではない)は、2.5〜12.5mg/Lであることが好ましく、2.5〜10.0mg/Lであることがより好ましく、5.0mg/L〜10.0mg/Lであることがより好ましい。
0010
本実施態様に係るワインは、ブドウを原料とするワインであれば特に制限は無く、赤ワインであっても白ワインであってもロゼワインであってもよい。さらにスティルワイン(非発泡性ワイン)であっても、スパークリングワイン(発泡性ワイン)であってもよい。
0011
本実施態様に係るワインのアルコール度数は、1.0〜20.0v/v%であることが好ましく、5〜16v/v%であることがより好ましく、7〜14v/v%であることが更に好ましい。
本実施態様に係るワインの総酸度は、1.0〜10.0g/Lであることが好ましく、2.0〜9.0g/Lであることがより好ましく、4.0〜8.0g/Lであることが更に好ましい。
尚、総酸度は、国税庁所定分析法注解「7−10総酸」に記載の分析方法により求められる。上記した総酸度は酒石酸換算した値である。
本実施態様に係るワインのpHは、2.0〜5.0であることが好ましく、2.5〜4.5であることがより好ましく、3.0〜4.0であることが更に好ましい。
本実施態様に係るワインのエキス分は、1.0〜5.0(%)であることが好ましく、1.5〜4.5(%)であることが好ましく、1.5〜4.0(%)であることが更に好ましい。
尚、エキス分は、国税庁所定分析法注解「7−7 エキス分」に記載の分析方法により求められる。
0012
本実施態様に係るワインは、例えば、ブドウ由来の原料の粉砕物をそのまま又は酵母を添加して発酵させ、発酵液をろ過し、ショ糖換算で1.5〜7.5g/Lの含有量になるように高甘味度甘味料を添加することにより得ることができる。但し、高甘味度甘味料は、ワインの製造過程におけるどの段階で添加されてもよい。
0013
(実施例)
以下に、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
0014
1:白ワインに対する高甘味度甘味料の効果
(実施例1)
白ワイン(チリ産ワイン)に、アセスルファムKを、10mg/L(ショ糖換算で2g/L)の含有量になるように添加し、実施例1に係るワインを得た。尚、使用した白ワインは、アルコール度数12.4%、総酸度5.5(g/L)、pH3.03、エキス分1.9(%)、比重0.9904であった。
(実施例2)
実施例1と同一の白ワインを用いて実施例2に係るワインを得た。但し、アセスルファムKの代わりに、スクラロースを5mg/L(ショ糖換算で3g/L)の含有量になるように添加した。
0015
対照として、高甘味度甘味料が添加されていない白ワインを使用し、実施例1及び2のワインについて官能評価を行った。官能評価は、以下の6項目について行った。それぞれの項目について、対照のワインを「4」とし、1〜7の7段階で評価した。官能評価はワイン専門パネリスト6名で行った。
(1)甘みの強さ
(2)酸味の強さ
(3)苦味の強さ、
(4)味わいのコク、ボディ感
(5)後味の収斂味の強さ
(6)全体的なおいしさ
結果を表1に示す。
0016
表1に示されるように、実施例1に係るワインは、対照と比較して、味わいのコク、ボディ感が増強されている。また、酸味の強さ、及び苦味の強さが低減されており、全体的なおいしさが増している。すなわち、白ワインにアセスルファムKを10mg/L(ショ糖換算で2g/L)の含有量になるように添加することで、ワインのコク等のポジティブな味を増強でき、酸味の強さ、及び苦味の強さを低減でき、それによって全体的なおいしさを高めることができることが理解される。
また、実施例2に係るワインにおいても、対照と比較して、味わいのコク及びボディ感が増強されると共に、酸味の強さ、苦味の強さ、及び後味の収斂味の強さが低減されており、全体的なおいしさが増している。すなわち、白ワインにスクラロースを5mg/L(ショ糖換算で3g/L)の含有量になるように添加することにより、ワインのコクなどのポジティブな味を増強でき、加えて、酸味及び収斂味などのネガティブな味を低減することができることが理解できる。
0017
2:赤ワインに対する高甘味度甘味料の効果
(実施例3)
白ワインに代えて赤ワイン(チリ産ワイン)を使用した。その他の点は実施例1と同様にして、実施例3に係るワインを得た。使用した赤ワインは、アルコール度数12.4%、総酸度5.7(g/L)、pH3.57、エキス分2.7(%)、比重0.9936であった。
(実施例4)
白ワインに代えて、実施例3で用いた赤ワイン(チリ産ワイン)を使用した。その他の点は実施例2と同様の方法を用いて、実施例4に係るワインを得た。
0018
対照として高甘味度甘味料が添加されていない赤ワインを使用し、「1:白ワインに対する高甘味度甘味料添加の効果」と同様に、実施例3及び4のワインについて官能評価を行った。但し、「苦味の強さ」に代えて「渋みの強さ、粗さ」を評価した。
結果を表2に示す。
0019
表2に示されるように、実施例3に係るワインは、対照と比較して、味わいのコク、ボディ感が増強されており、全体的なおいしさも増している。すなわち、赤ワインにアセスルファムKを10mg/L(ショ糖換算で2g/L)の含有量になるように添加することにより、ワインのコク等のポジティブな味を増強でき、それによって全体的なおいしさを高めることができることが理解される。
また、実施例4に係るワインは、対照と比較して、味わいのコク及びボディ感が増強されると共に、酸味の強さ、渋みの強さ、及び後味の収斂味の強さが低減されており、全体的なおいしさが増している。すなわち、白ワインのときと同様に、赤ワインにスクラロースを5mg/L(ショ糖換算で3g/L)の含有量になるように添加した場合であっても、ワインのコクなどのポジティブな味を増強でき、加えて、酸味及び収斂味などのネガティブな味を低減することができることが理解できる。
0020
3:高甘味度甘味料の濃度
スクラロースの添加量を、1〜12.5mg/L(ショ糖換算で0.6〜7.5g/L)の範囲で変更した以外は実施例4と同様にして、参考例1及び実施例5〜9に係る赤ワインを得た。参考例1及び実施例5〜9に係るワインについて、「2:赤ワインに対する高甘味度甘味料の効果」と同様に官能評価を行った。官能評価はワイン専門パネリスト7名で行った。
結果を表3及び図1に示す。
0021
表3及び図1に示されるように、スクラロースの添加量を増やすに従い、コク及び甘みが増し、酸味、渋み及び収斂味が低減した。スクラロースの添加量が1mg/Lである参考例1では、全体的なおいしさがさほど対照と変わらなかったが、スクラロースの添加量が2.5〜12.5mg/Lである実施例5〜実施例9では、対照と比較して全体的なおいしさが十分に高められた。更に、スクラロースの添加量が5.0mg/L〜10.0mg/Lである実施例6〜8では、実施例5及び9に比べて、全体的なおいしさがさらに高められていた。