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技術 発光素子、発光装置

出願人 株式会社半導体エネルギー研究所
発明者 山崎舜平瀬尾哲史大澤信晴下垣智子井上英子門間裕史尾坂晴恵鈴木邦彦竹村保彦
出願日 2016年11月24日 (2年11ヶ月経過) 出願番号 2016-227614
公開日 2017年3月30日 (2年7ヶ月経過) 公開番号 2017-063217
状態 特許登録済
技術分野 エレクトロルミネッセンス光源
主要キーワード NBB エネルギー移動過程 導電性化 零点補正 相関エネルギー 複合材料層 TSO 分子半径
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年3月30日)のものです。
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図面 (16)

課題

外部量子効率が高い発光素子を提供する。

解決手段

ゲスト、n型ホスト及びp型ホストを含む発光層を一対の電極間に有し、n型ホスト(あるいはp型ホスト)の三重項励起状態基底状態エネルギー差をゲストの三重項励起状態と基底状態のエネルギー差より差し引いた値が0.15電子ボルト以上である発光素子。該発光素子は、三重項励起状態にあるゲストからn型ホスト(あるいはp型ホスト)の三重項励起状態への遷移が起こりにくいため、三重項励起状態にあるゲストからの発光が効率的におこなわれる。あるいは、n型ホストのLUMO準位がゲストのLUMO準位より0.1電子ボルト以上高い、あるいはp型ホストのHOMO準位がゲストのHOMO準位より0.1電子ボルト以上低い発光素子。該発光素子は、ゲスト内で電子正孔再結合が効率よく発生し、発光効率あるいは外部量子効率を高めることができる。

概要

背景

有機EL素子研究開発が盛んにおこなわれている(特許文献1、非特許文献1および非
特許文献2参照)。有機EL素子の基本的な構成は、一対の電極間発光性有機化合物
を含む層(以下、発光層とも記す)を挟んだものであり、薄型軽量化できる・入力信号
高速応答できる・直流低電圧駆動が可能であるなどの特性から、次世代のフラットパネ
ディスプレイ素子として注目されている。また、このような発光素子を用いたディスプ
レイは、コントラスト画質に優れ、視野角が広いという特徴も有している。さらに、有
EL素子面光源であるため、液晶ディスプレイバックライト照明等の光源として
の応用も考えられている。

有機EL素子の発光機構は、キャリア注入型である。すなわち、電極間に発光層を挟んで
電圧印加することにより、電極から注入された電子および正孔再結合して発光物質
励起状態となり、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。励起状態には、一重項
起状態三重項励起状態がある。また、発光素子におけるその統計的な生成比率は、前者
は後者の3分の1であると考えられている。なお、本明細書では、一重項励起状態三重
項励起状態)とは、特にことわらない限り、一重項励起状態(三重項励起状態)のうち、
エネルギー準位が最も低いものを指す。

発光性の有機化合物は通常、基底状態が一重項状態である。したがって、一重項励起状態
からの発光は、同じスピン多重度間の電子遷移であるため蛍光と呼ばれる。一方、三重項
励起状態からの発光は、異なるスピン多重度間の電子遷移であるため燐光と呼ばれる。こ
こで、蛍光を発する化合物(以下、蛍光性化合物と記す)は室温において、通常、燐光は
観測されず蛍光のみが観測される。したがって、蛍光性化合物を用いた発光素子における
内部量子効率(注入したキャリアに対して発生するフォトンの割合)の理論的限界は、上
記の一重項励起状態と三重項励起状態の比率根拠に25%とされている。

一方、燐光を発する化合物(以下、燐光性化合物と記す)を用いれば、内部量子効率は1
00%にまで高めることが理論上は可能となる。つまり、蛍光性化合物に比べて高い発光
効率を得ることが可能になる。このような理由から、高効率な発光素子を実現するために
、燐光性化合物を用いた発光素子の開発が近年盛んにおこなわれている。

特に、その燐光量子効率の高さゆえに、燐光性化合物としてイリジウム等を中心金属とす
有機金属錯体が注目されており、例えば、特許文献1には、イリジウムを中心金属とす
る有機金属錯体が燐光材料として開示されている。

上述した燐光性化合物を用いて発光素子の発光層を形成する場合、燐光性化合物の濃度消
光や三重項−三重項消滅による消光を抑制するために、他の化合物からなるマトリクス
に該燐光性化合物が分散するようにして形成することが多い。この時、マトリクスとなる
化合物はホスト、燐光性化合物のようにマトリクス中に分散される化合物はゲストと呼ば
れる。

このような、燐光性化合物をゲストとして用いる発光素子における発光の一般的な素過程
はいくつかあるが、それらについて以下に説明する。

(1)電子及び正孔がゲスト分子において再結合し、ゲスト分子が励起状態となる場合(
直接再結合過程)。
(1−1)ゲスト分子の励起状態が三重項励起状態のときゲスト分子は燐光を発する。
(1−2)ゲスト分子の励起状態が一重項励起状態のとき一重項励起状態のゲスト分子は
三重項励起状態に項間交差し、燐光を発する。

つまり、上記(1)の直接再結合過程においては、ゲスト分子の項間交差効率、及び燐光
量子効率さえ高ければ、高い発光効率が得られることになる。

(2)電子及び正孔がホスト分子において再結合し、ホスト分子が励起状態となる場合(
エネルギー移動過程)。

(2−1)ホスト分子の励起状態が三重項励起状態のとき、ホスト分子の三重項励起状態
のエネルギー準位(T1準位)がゲスト分子のT1準位よりも高い場合、ホスト分子から
ゲスト分子に励起エネルギーが移動し、ゲスト分子が三重項励起状態となる。三重項励起
状態となったゲスト分子は燐光を発する。なお、ゲスト分子の一重項励起状態のエネルギ
ー準位(S1準位)へのエネルギー移動形式上あり得るが、多くの場合ゲスト分子のS
1準位の方がホスト分子のT1準位よりも高エネルギー側に位置しており、主たるエネル
ギー移動過程になりにくいため、ここでは割愛する。

(2−2)ホスト分子の励起状態が一重項励起状態のとき、ホスト分子の一重項励起状態
のエネルギー準位(S1準位)がゲスト分子のS1準位およびT1準位よりも高い場合、
ホスト分子からゲスト分子に励起エネルギーが移動し、ゲスト分子が一重項励起状態又は
三重項励起状態となる。三重項励起状態となったゲスト分子は燐光を発する。また、一重
項励起状態となったゲスト分子は、三重項励起状態に項間交差し、燐光を発する。

つまり、上記(2)のエネルギー移動過程においては、ホスト分子の三重項励起エネルギ
ー及び一重項励起エネルギーの双方が、いかにゲスト分子に効率良く移動できるかが重要
となる。

このエネルギー移動過程を鑑みれば、ホスト分子からゲスト分子に励起エネルギーが移動
する前に、ホスト分子自体がその励起エネルギーを光又は熱として放出して失活してしま
うと、発光効率が低下することになる。

<エネルギー移動過程>
以下では、分子間のエネルギー移動過程について詳述する。

まず、分子間のエネルギー移動の機構として、以下の2つの機構が提唱されている。ここ
で、励起エネルギーを与える側の分子をホスト分子、励起エネルギーを受け取る側の分子
をゲスト分子と記す。

≪フェルスター機構(双極子−双極子相互作用)≫
フェルスター機構は、エネルギー移動に、分子間の直接的接触を必要としない。ホスト分
子及びゲスト分子間の双極子振動共鳴現象を通じてエネルギー移動が起こる。双極子振
動の共鳴現象によってホスト分子がゲスト分子にエネルギーを受け渡し、ホスト分子が基
底状態になり、ゲスト分子が励起状態になる。フェルスター機構の速度定数kh*→gを
数式(1)に示す。

数式(1)において、νは、振動数を表し、f’h(ν)は、ホスト分子の規格化された
発光スペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル
三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光スペクトル)を表し、εg(ν
)は、ゲスト分子のモル吸光係数を表し、Nは、アボガドロ数を表し、nは、媒体屈折
率を表し、Rは、ホスト分子とゲスト分子の分子間距離を表し、τは、実測される励起状
態の寿命蛍光寿命燐光寿命)を表し、cは、光速を表し、φは、発光量子効率(一重
項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光量子効率、三重項励起状態からのエ
ネルギー移動を論じる場合は燐光量子効率)を表し、K2は、ホスト分子とゲスト分子の
遷移双極子モーメント配向を表す係数(0〜4)である。なお、ランダム配向の場合は
K2=2/3である。

デクスター機構(電子交換相互作用)≫
デクスター機構は、ホスト分子とゲスト分子が軌道の重なりを生じる接触有効距離に近づ
き、励起状態のホスト分子の電子と基底状態のゲスト分子の電子の交換を通じてエネルギ
ー移動が起こる。デクスター機構の速度定数kh*→gを数式(2)に示す。

数式(2)において、hは、プランク定数であり、Kは、エネルギーの次元を持つ定数
あり、νは、振動数を表し、f’h(ν)は、ホスト分子の規格化された発光スペクトル
(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル、三重項励起状態
からのエネルギー移動を論じる場合は燐光スペクトル)を表し、ε’g(ν)は、ゲスト
分子の規格化された吸収スペクトルを表し、Lは、実効分子半径を表し、Rは、ホスト分
子とゲスト分子の分子間距離を表す。

ここで、ホスト分子からゲスト分子へのエネルギー移動効率ΦETは、数式(3)で表さ
れると考えられる。krは、ホスト分子の発光過程(ホスト分子の一重項励起状態からの
エネルギー移動を論じる場合は蛍光、ホスト分子の三重項励起状態からのエネルギー移動
を論じる場合は燐光)の速度定数を表し、knは、非発光過程(熱失活や項間交差)の速
度定数を表し、τは、実測されるホスト分子の励起状態の寿命を表す。

まず、数式(3)より、エネルギー移動効率ΦETを高くするためには、エネルギー移動
の速度定数kh*→gを、他の競合する速度定数kr+kn(=1/τ)に比べて遙かに
大きくすれば良いことがわかる。そして、そのエネルギー移動の速度定数kh*→gを大
きくするためには、数式(1)及び数式(2)より、フェルスター機構、デクスター機構
のどちらの機構においても、ホスト分子の発光スペクトル(一重項励起状態からのエネル
ギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる
場合は燐光スペクトル)とゲスト分子の吸収スペクトル(通常は、燐光であるので、三重
項励起状態と基底状態とのエネルギー差)との重なりが大きい方が良いことがわかる。

例えば、ホスト分子の三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差が、ゲスト分子の三重
項励起状態と基底状態とのエネルギー差と重なるように選択された材料によって、より効
率的にホストからゲストへのエネルギー移動が生じる。

しかしながら、上記のエネルギー移動は、三重項励起状態のゲスト分子から基底状態のホ
スト分子へも全く同様に生じる。そして、ホスト分子の三重項励起状態と基底状態とのエ
ネルギー差が、ゲスト分子の三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差と重なるように
選択された材料では、ゲスト分子の三重項励起状態がホスト分子の三重項励起状態にエネ
ルギー移動しやすいということでもある。このことにより、発光効率の低下が生じる。

このような問題に対しては、例えば、非特許文献1に記載されているように、ホスト分子
の三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差をゲスト分子の三重項励起状態と基底状態
とのエネルギー差よりも大きくすることで克服することが提案されている。

非特許文献1では、ホスト分子の三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差をゲスト分
子のホスト分子の三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差より0.3電子ボルト(現
在では、0.15電子ボルトに訂正されている)大きくすることにより、ゲスト分子の三
重項励起状態からホスト分子の三重項励起状態への遷移を生じさせないようにしている。

すなわち、ホスト分子の三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差をゲスト分子のホス
ト分子の三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差より0.15電子ボルト以上大きく
すると、ゲスト分子の三重項励起状態からホスト分子の三重項励起状態への遷移を十分に
阻止できる。

概要

外部量子効率が高い発光素子を提供する。ゲスト、n型ホスト及びp型ホストを含む発光層を一対の電極間に有し、n型ホスト(あるいはp型ホスト)の三重項励起状態と基底状態のエネルギー差をゲストの三重項励起状態と基底状態のエネルギー差より差し引いた値が0.15電子ボルト以上である発光素子。該発光素子は、三重項励起状態にあるゲストからn型ホスト(あるいはp型ホスト)の三重項励起状態への遷移が起こりにくいため、三重項励起状態にあるゲストからの発光が効率的におこなわれる。あるいは、n型ホストのLUMO準位がゲストのLUMO準位より0.1電子ボルト以上高い、あるいはp型ホストのHOMO準位がゲストのHOMO準位より0.1電子ボルト以上低い発光素子。該発光素子は、ゲスト内で電子、正孔の再結合が効率よく発生し、発光効率あるいは外部量子効率を高めることができる。

目的

本発明の一態様は、このような矛盾を克服
する新しい原理に基づいた発光素子を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

一対の電極間発光層を有し、前記発光層は、燐光性化合物と、電子輸送性正孔輸送性よりも優れている第1の有機化合物と、正孔輸送性が電子輸送性よりも優れている第2の有機化合物と、を含み、前記第1の有機化合物と、前記第2の有機化合物とは、励起錯体を形成する組み合わせであり、前記第1の有機化合物の三重項励起状態基底状態エネルギー差および前記第2の有機化合物の三重項励起状態と基底状態のエネルギー差が、いずれも前記燐光性化合物の三重項励起状態と基底状態のエネルギー差より0.15電子ボルト以上大きく、前記励起錯体の発光スペクトルは、前記燐光性化合物の最も長波長側に位置する吸収帯と重なることを特徴とする発光素子

請求項2

一対の電極間に発光層を有し、前記発光層は、燐光性化合物と、電子輸送性が正孔輸送性よりも優れている第1の有機化合物と、正孔輸送性が電子輸送性よりも優れている第2の有機化合物と、を含み、前記第1の有機化合物と、前記第2の有機化合物とは、励起錯体を形成する組み合わせであり、前記第1の有機化合物のLUMO準位が前記燐光性化合物のLUMO準位よりも0.1電子ボルト以上高く、前記励起錯体の発光スペクトルは、前記燐光性化合物の最も長波長側に位置する吸収帯と重なることを特徴とする発光素子。

請求項3

一対の電極間に発光層を有し、前記発光層は、燐光性化合物と、電子輸送性が正孔輸送性よりも優れている第1の有機化合物と、正孔輸送性が電子輸送性よりも優れている第2の有機化合物と、を含み、前記第1の有機化合物と、前記第2の有機化合物とは、励起錯体を形成する組み合わせであり、前記第2の有機化合物のHOMO準位が前記燐光性化合物のHOMO準位よりも0.1電子ボルト以上低く、前記励起錯体の発光スペクトルは、前記燐光性化合物の最も長波長側に位置する吸収帯と重なることを特徴とする発光素子。

請求項4

請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、前記励起錯体の励起エネルギーが前記燐光性化合物に移動して、前記燐光性化合物が燐光を発する発光素子。

請求項5

請求項1乃至請求項4のいずれか一項において、前記第1の有機化合物及び前記第2の有機化合物の少なくとも一方が、蛍光性化合物である発光素子。

請求項6

請求項1乃至請求項5のいずれか一項において、前記燐光性化合物が、有機金属錯体である発光素子。

請求項7

請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の発光素子を有する発光装置

技術分野

0001

有機エレクトロルミネッセンス(EL:Electroluminescence)現象
を利用した発光素子(以下、有機EL素子とも記す)に関する。

背景技術

0002

有機EL素子の研究開発が盛んにおこなわれている(特許文献1、非特許文献1および非
特許文献2参照)。有機EL素子の基本的な構成は、一対の電極間発光性有機化合物
を含む層(以下、発光層とも記す)を挟んだものであり、薄型軽量化できる・入力信号
高速応答できる・直流低電圧駆動が可能であるなどの特性から、次世代のフラットパネ
ディスプレイ素子として注目されている。また、このような発光素子を用いたディスプ
レイは、コントラスト画質に優れ、視野角が広いという特徴も有している。さらに、有
EL素子面光源であるため、液晶ディスプレイバックライト照明等の光源として
の応用も考えられている。

0003

有機EL素子の発光機構は、キャリア注入型である。すなわち、電極間に発光層を挟んで
電圧印加することにより、電極から注入された電子および正孔再結合して発光物質
励起状態となり、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。励起状態には、一重項
起状態三重項励起状態がある。また、発光素子におけるその統計的な生成比率は、前者
は後者の3分の1であると考えられている。なお、本明細書では、一重項励起状態三重
項励起状態)とは、特にことわらない限り、一重項励起状態(三重項励起状態)のうち、
エネルギー準位が最も低いものを指す。

0004

発光性の有機化合物は通常、基底状態が一重項状態である。したがって、一重項励起状態
からの発光は、同じスピン多重度間の電子遷移であるため蛍光と呼ばれる。一方、三重項
励起状態からの発光は、異なるスピン多重度間の電子遷移であるため燐光と呼ばれる。こ
こで、蛍光を発する化合物(以下、蛍光性化合物と記す)は室温において、通常、燐光は
観測されず蛍光のみが観測される。したがって、蛍光性化合物を用いた発光素子における
内部量子効率(注入したキャリアに対して発生するフォトンの割合)の理論的限界は、上
記の一重項励起状態と三重項励起状態の比率根拠に25%とされている。

0005

一方、燐光を発する化合物(以下、燐光性化合物と記す)を用いれば、内部量子効率は1
00%にまで高めることが理論上は可能となる。つまり、蛍光性化合物に比べて高い発光
効率を得ることが可能になる。このような理由から、高効率な発光素子を実現するために
、燐光性化合物を用いた発光素子の開発が近年盛んにおこなわれている。

0006

特に、その燐光量子効率の高さゆえに、燐光性化合物としてイリジウム等を中心金属とす
有機金属錯体が注目されており、例えば、特許文献1には、イリジウムを中心金属とす
る有機金属錯体が燐光材料として開示されている。

0007

上述した燐光性化合物を用いて発光素子の発光層を形成する場合、燐光性化合物の濃度消
光や三重項−三重項消滅による消光を抑制するために、他の化合物からなるマトリクス
に該燐光性化合物が分散するようにして形成することが多い。この時、マトリクスとなる
化合物はホスト、燐光性化合物のようにマトリクス中に分散される化合物はゲストと呼ば
れる。

0008

このような、燐光性化合物をゲストとして用いる発光素子における発光の一般的な素過程
はいくつかあるが、それらについて以下に説明する。

0009

(1)電子及び正孔がゲスト分子において再結合し、ゲスト分子が励起状態となる場合(
直接再結合過程)。
(1−1)ゲスト分子の励起状態が三重項励起状態のときゲスト分子は燐光を発する。
(1−2)ゲスト分子の励起状態が一重項励起状態のとき一重項励起状態のゲスト分子は
三重項励起状態に項間交差し、燐光を発する。

0010

つまり、上記(1)の直接再結合過程においては、ゲスト分子の項間交差効率、及び燐光
量子効率さえ高ければ、高い発光効率が得られることになる。

0011

(2)電子及び正孔がホスト分子において再結合し、ホスト分子が励起状態となる場合(
エネルギー移動過程)。

0012

(2−1)ホスト分子の励起状態が三重項励起状態のとき、ホスト分子の三重項励起状態
のエネルギー準位(T1準位)がゲスト分子のT1準位よりも高い場合、ホスト分子から
ゲスト分子に励起エネルギーが移動し、ゲスト分子が三重項励起状態となる。三重項励起
状態となったゲスト分子は燐光を発する。なお、ゲスト分子の一重項励起状態のエネルギ
ー準位(S1準位)へのエネルギー移動形式上あり得るが、多くの場合ゲスト分子のS
1準位の方がホスト分子のT1準位よりも高エネルギー側に位置しており、主たるエネル
ギー移動過程になりにくいため、ここでは割愛する。

0013

(2−2)ホスト分子の励起状態が一重項励起状態のとき、ホスト分子の一重項励起状態
のエネルギー準位(S1準位)がゲスト分子のS1準位およびT1準位よりも高い場合、
ホスト分子からゲスト分子に励起エネルギーが移動し、ゲスト分子が一重項励起状態又は
三重項励起状態となる。三重項励起状態となったゲスト分子は燐光を発する。また、一重
項励起状態となったゲスト分子は、三重項励起状態に項間交差し、燐光を発する。

0014

つまり、上記(2)のエネルギー移動過程においては、ホスト分子の三重項励起エネルギ
ー及び一重項励起エネルギーの双方が、いかにゲスト分子に効率良く移動できるかが重要
となる。

0015

このエネルギー移動過程を鑑みれば、ホスト分子からゲスト分子に励起エネルギーが移動
する前に、ホスト分子自体がその励起エネルギーを光又は熱として放出して失活してしま
うと、発光効率が低下することになる。

0016

<エネルギー移動過程>
以下では、分子間のエネルギー移動過程について詳述する。

0017

まず、分子間のエネルギー移動の機構として、以下の2つの機構が提唱されている。ここ
で、励起エネルギーを与える側の分子をホスト分子、励起エネルギーを受け取る側の分子
をゲスト分子と記す。

0018

≪フェルスター機構(双極子−双極子相互作用)≫
フェルスター機構は、エネルギー移動に、分子間の直接的接触を必要としない。ホスト分
子及びゲスト分子間の双極子振動共鳴現象を通じてエネルギー移動が起こる。双極子振
動の共鳴現象によってホスト分子がゲスト分子にエネルギーを受け渡し、ホスト分子が基
底状態になり、ゲスト分子が励起状態になる。フェルスター機構の速度定数kh*→gを
数式(1)に示す。

0019

0020

数式(1)において、νは、振動数を表し、f’h(ν)は、ホスト分子の規格化された
発光スペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル
三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光スペクトル)を表し、εg(ν
)は、ゲスト分子のモル吸光係数を表し、Nは、アボガドロ数を表し、nは、媒体屈折
率を表し、Rは、ホスト分子とゲスト分子の分子間距離を表し、τは、実測される励起状
態の寿命蛍光寿命燐光寿命)を表し、cは、光速を表し、φは、発光量子効率(一重
項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光量子効率、三重項励起状態からのエ
ネルギー移動を論じる場合は燐光量子効率)を表し、K2は、ホスト分子とゲスト分子の
遷移双極子モーメント配向を表す係数(0〜4)である。なお、ランダム配向の場合は
K2=2/3である。

0021

デクスター機構(電子交換相互作用)≫
デクスター機構は、ホスト分子とゲスト分子が軌道の重なりを生じる接触有効距離に近づ
き、励起状態のホスト分子の電子と基底状態のゲスト分子の電子の交換を通じてエネルギ
ー移動が起こる。デクスター機構の速度定数kh*→gを数式(2)に示す。

0022

0023

数式(2)において、hは、プランク定数であり、Kは、エネルギーの次元を持つ定数
あり、νは、振動数を表し、f’h(ν)は、ホスト分子の規格化された発光スペクトル
(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル、三重項励起状態
からのエネルギー移動を論じる場合は燐光スペクトル)を表し、ε’g(ν)は、ゲスト
分子の規格化された吸収スペクトルを表し、Lは、実効分子半径を表し、Rは、ホスト分
子とゲスト分子の分子間距離を表す。

0024

ここで、ホスト分子からゲスト分子へのエネルギー移動効率ΦETは、数式(3)で表さ
れると考えられる。krは、ホスト分子の発光過程(ホスト分子の一重項励起状態からの
エネルギー移動を論じる場合は蛍光、ホスト分子の三重項励起状態からのエネルギー移動
を論じる場合は燐光)の速度定数を表し、knは、非発光過程(熱失活や項間交差)の速
度定数を表し、τは、実測されるホスト分子の励起状態の寿命を表す。

0025

0026

まず、数式(3)より、エネルギー移動効率ΦETを高くするためには、エネルギー移動
の速度定数kh*→gを、他の競合する速度定数kr+kn(=1/τ)に比べて遙かに
大きくすれば良いことがわかる。そして、そのエネルギー移動の速度定数kh*→gを大
きくするためには、数式(1)及び数式(2)より、フェルスター機構、デクスター機構
のどちらの機構においても、ホスト分子の発光スペクトル(一重項励起状態からのエネル
ギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる
場合は燐光スペクトル)とゲスト分子の吸収スペクトル(通常は、燐光であるので、三重
項励起状態と基底状態とのエネルギー差)との重なりが大きい方が良いことがわかる。

0027

例えば、ホスト分子の三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差が、ゲスト分子の三重
項励起状態と基底状態とのエネルギー差と重なるように選択された材料によって、より効
率的にホストからゲストへのエネルギー移動が生じる。

0028

しかしながら、上記のエネルギー移動は、三重項励起状態のゲスト分子から基底状態のホ
スト分子へも全く同様に生じる。そして、ホスト分子の三重項励起状態と基底状態とのエ
ネルギー差が、ゲスト分子の三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差と重なるように
選択された材料では、ゲスト分子の三重項励起状態がホスト分子の三重項励起状態にエネ
ルギー移動しやすいということでもある。このことにより、発光効率の低下が生じる。

0029

このような問題に対しては、例えば、非特許文献1に記載されているように、ホスト分子
の三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差をゲスト分子の三重項励起状態と基底状態
とのエネルギー差よりも大きくすることで克服することが提案されている。

0030

非特許文献1では、ホスト分子の三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差をゲスト分
子のホスト分子の三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差より0.3電子ボルト(現
在では、0.15電子ボルトに訂正されている)大きくすることにより、ゲスト分子の三
重項励起状態からホスト分子の三重項励起状態への遷移を生じさせないようにしている。

0031

すなわち、ホスト分子の三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差をゲスト分子のホス
ト分子の三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差より0.15電子ボルト以上大きく
すると、ゲスト分子の三重項励起状態からホスト分子の三重項励起状態への遷移を十分に
阻止できる。

0032

国際公開第2000/070655号パンフレット

先行技術

0033

Shizuo Tokito et al., ”Confinement of triplet energy on phosphorescent molecules for highly−efficient organic blue−light−emitting devices”, Appl. Phys. Lett., 83, 569 (2003).
Vi−En Choong et al., ”Organic light−emitting diodes with a bipolar transport layer” , Appl. Phys. Lett., 75, 172 (1999).

発明が解決しようとする課題

0034

しかしながら、このようにホスト分子とゲスト分子とのエネルギー差が異なるということ
は、上記のフェルスター機構やデクスター機構が起こりにくくなるということを意味し、
そのことによる発光効率の低下が問題となる。本発明の一態様は、このような矛盾を克服
する新しい原理に基づいた発光素子を提供する。

0035

また、上記のように、さまざまな励起過程が存在するが、失活の少ない励起過程は、直接
再結合過程であり、その比率を向上させることが発光効率あるいは外部量子効率の向上に
とって好ましい。本発明の一態様は効率よく直接再結合過程を発生させる方法を関する提
供することを課題とする。また、本発明の一態様は、外部量子効率が高い発光素子を提供
することを課題とする。

課題を解決するための手段

0036

本発明の一態様は、燐光性化合物(ゲスト)、第1の有機化合物、及び第2の有機化合物
を含む発光層を一対の電極間に有し、第1の有機化合物及び第2の有機化合物の三重項励
起状態と基底状態のエネルギー差が、ゲストの三重項励起状態と基底状態のエネルギー差
より0.15電子ボルト以上大きいことを特徴とする発光素子である。

0037

上記において、第1の有機化合物、及び第2の有機化合物が、励起錯体を形成する組み合
わせであってもよい。また、第1の有機化合物は電子輸送性正孔輸送性よりも優れてお
り、第2の有機化合物は正孔輸送性が電子輸送性よりも優れていてもよい。このような特
色を有する場合、第1の有機化合物、及び第2の有機化合物をそれぞれ、n型ホスト、p
型ホストと称する。

0038

また、本発明の一態様は、ゲスト、n型ホスト、p型ホストを含む発光層を一対の電極間
に有し、n型ホストのLUMO(Lowest Unoccupied Molecul
ar Orbital)準位がゲストのLUMO準位よりも0.1電子ボルト以上高いこ
とを特徴とする発光素子である。

0039

なお、ゲストのLUMO準位がn型ホストのLUMO準位より低すぎると電気伝導特性
上で好ましくない。そのため、n型ホストのLUMO準位EnからゲストのLUMO準位
Eaを差し引いた値、(En−Ea)が0.1電子ボルト以上0.5電子ボルト以下であ
ることが好ましい。

0040

また、本発明の一態様は、ゲスト、n型ホスト、及びp型ホストを含む発光層を一対の電
極間に有し、p型ホストのHOMO(Highest Occupied Molecu
lar Orbital)準位がゲストのHOMO準位よりも0.1電子ボルト以上低い
ことを特徴とする発光素子である。

0041

なお、ゲストのHOMO準位がp型ホストのHOMO準位より高すぎると電気伝導特性の
上で好ましくない。そのため、p型ホストのHOMO準位EpからゲストのHOMO準位
Ebを差し引いた値、(Ep−Eb)が−0.5電子ボルト以上−0.1電子ボルト以下
であることが好ましい。

0042

上記発光素子において、ゲストは、有機金属錯体であることが好ましい。上記発光素子に
おいて、n型ホスト及びp型ホストの少なくとも一方が、蛍光性化合物であってもよい。
本発明の一態様の発光素子は、発光装置電子機器、及び照明装置に適用することができ
る。

0043

本発明の一態様では、発光層は、n型ホスト分子とp型ホスト分子とゲスト分子を有する
。もちろん、分子は規則正しく配列している必要は無く、規則性が極めて少ない状態であ
ってもよい。特に発光層を50nm以下の薄膜とする場合には、アモルファス状態となる
ことが好ましく、そのために、結晶化しづらい材料の組み合わせを選択することが好まし
い。

0044

また、本発明の一態様は図1(A)に示されるように、基板101上に第1の電極103
、上記の構成を有する発光層102、第2の電極104を重ねて設けた発光素子でもよい
。ここで、第1の電極103は、陽極陰極の一方であり、第2の電極104は陽極と陰
極の他方である。

0045

また、本発明の一態様は図1(B)に示されるように、第1の電極103、発光層102
、第2の電極104に加えて、第1のキャリアの注入層105、第1のキャリアの輸送層
106、第2のキャリアの注入層107、第2のキャリアの輸送層108を重ねて設けた
発光素子でもよい。ここで、第1のキャリアは電子と正孔の一方であり、第2のキャリア
は電子と正孔の他方である。また、第1の電極が陽極であれば、第1のキャリアは正孔で
あり、第1の電極が陰極であれば、第1のキャリアは電子である。

発明の効果

0046

本発明の一態様では、ホスト(n型ホストおよびp型ホスト)分子の三重項励起状態と基
底状態とのエネルギー差を、ゲスト分子の三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差よ
り0.15電子ボルト以上高くすることで、ゲスト分子の三重項励起状態からホスト(n
型ホストおよびp型ホスト)分子の三重項励起状態への遷移を十分に防止することができ
、外部量子効率が高い発光素子を提供することができる。

0047

その一方、フェルスター機構やデクスター機構を使用するエネルギー移動過程に関しては
、n型ホスト分子とp型ホスト分子の励起錯体からゲスト分子にエネルギー移動する過程
を経ることができる。励起錯体は、エネルギーがゲスト分子に移動した段階で、n型ホス
ト分子とp型ホスト分子に分裂し、n型ホスト分子(あるいはp型ホスト分子)の三重項
励起状態と基底状態とのエネルギー差は、ゲスト分子の三重項励起状態と基底状態とのエ
ネルギー差より0.15電子ボルト以上高いので、ゲスト分子の三重項励起状態がn型ホ
スト分子(あるいはp型ホスト分子)の三重項励起状態にエネルギー移動することはない

0048

また、本発明の一態様では、例えば、n型ホスト分子のLUMO準位がゲスト分子のLU
MO準位よりも0.1電子ボルト以上高いことによりn型ホスト分子を伝導してきた電子
は、優先的にゲスト分子のLUMO準位に入る。その結果、ゲスト分子はアニオンとなり
、正孔を誘引し、ゲスト分子において正孔と電子が再結合する。

0049

また、本発明の一態様では、例えば、p型ホスト分子のHOMO準位がゲスト分子のHO
MO準位よりも0.1電子ボルト以上低いことによりp型ホスト分子を伝導してきた正孔
は、優先的にゲスト分子のHOMO準位に入る。その結果、ゲスト分子はカチオンとなり
、電子を誘引し、ゲスト分子において正孔と電子が再結合する。

0050

このようにして、本発明の一態様を用いることにより、効率よくゲスト分子にキャリアを
注入し、直接再結合過程の比率を高めることができる。特に、本発明の一態様では、発光
層にn型ホストとp型ホストを混在して用いているため、電子はn型ホスト分子を伝導し
、正孔はp型ホスト分子を伝導する傾向がある。その結果、ゲスト分子のLUMO準位に
はn型ホスト分子から電子が注入され、また、ゲスト分子のHOMO準位にはp型ホスト
分子から正孔が注入される。

図面の簡単な説明

0051

本発明のさまざまな態様を示す図。
本発明の一態様の原理を説明する図。
本発明の一態様の原理を説明する図。
実施例1の発光素子の電流密度輝度特性を示す図。
実施例1の発光素子の電圧−輝度特性を示す図。
実施例1の発光素子の輝度電流効率特性を示す図。
実施例1の発光素子の輝度−外部量子効率特性を示す図。
実施例1の発光素子の発光スペクトルを示す図。
実施例1の発光素子の信頼性試験の結果を示す図。
実施例2の発光素子の電流密度−輝度特性を示す図。
実施例2の発光素子の電圧−輝度特性を示す図。
実施例2の発光素子の輝度−電流効率特性を示す図。
実施例2の発光素子の輝度−外部量子効率特性を示す図。
実施例2の発光素子の発光スペクトルを示す図。
実施例2の発光素子の信頼性試験の結果を示す図。

0052

実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定さ
れず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し
得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の
記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において
、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、
その繰り返しの説明は省略する。

0053

(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光素子の原理について図2を用いて説明する。図
2(A)は2つのn型ホスト分子(H_n_1、H_n_2)と1つのゲスト分子(G)
と2つのp型ホスト分子(H_p_1、H_p_2)が直線状に並んでいる場合のこれら
の分子のエネルギー状態を示す。各分子は、それぞれHOMOとLUMOを有する。

0054

ここでは、説明を簡単にするため、n型ホスト分子のLUMO準位Enとゲスト分子のL
UMO準位Eaを等しく、また、p型ホスト分子のHOMO準位Epとゲスト分子のHO
MO準位Ebを等しくしてあるが、そのような場合に限られず、−0.3[電子ボルト]
<Ea−En<+0.3[電子ボルト]、−0.3[電子ボルト])<Eb−Ep<+0
.3[電子ボルト]であればよい。また、n型ホスト分子(あるいはp型ホスト分子)の
LUMO準位とHOMO準位の差はゲスト分子のLUMO準位とHOMO準位の差より0
.5電子ボルト以上大きいことが好ましい。

0055

n型ホスト分子、p型ホスト分子、ゲスト分子のいずれも、基底状態では、HOMOには
2つの電子があり、LUMOには電子が無い。例えば、n型ホスト分子H_n_2とゲス
ト分子Gとp型ホスト分子H_p_2は、HOMOには2つの電子があり、LUMOには
電子が無い状態である。

0056

一方、陽極(図の右側)より正孔が、陰極(図の左側)より電子が注入されたため、n型
ホスト分子H_n_1はLUMOに電子を有し、p型ホスト分子H_p_1はHOMOに
電子が1つしかない(正孔が一つある)状態となっている。すなわち、n型ホスト分子H
_n_1はアニオンであり、p型ホスト分子H_p_1はカチオンである。

0057

電子と正孔は、このようなn型ホスト分子とp型ホスト分子をホッピングしながら伝導す
る。そして、図2(B)に示すように、ゲスト分子のLUMOに電子が、HOMOに正孔
が注入され(直接再結合過程)、ゲスト分子は励起状態(分子内励起子、エキシトン)と
なる。このように、直接励起再結合過程でも、特にn型ホストおよびp型ホストからゲス
トに直接、キャリアが注入される現象を、Guest Coupled with Co
mplementary Hosts(GCCH)という。

0058

ところで、図2でも明らかなように、n型ホスト分子のLUMO準位とHOMO準位の差
およびp型ホスト分子のLUMO準位とHOMO準位の差は、いずれもゲスト分子のLU
MO準位とHOMO準位の差よりかなり大きいので、フェルスター機構やデクスター機構
によって、ゲストの三重項励起状態がn型ホストあるいはp型ホストの三重項励起状態に
移行する確率は十分に小さい。

0059

すなわち、図2(C)に示すように、ゲスト分子Gおよびn型ホスト分子H_n_1の基
底状態(それぞれ、S0_G、S0_H_n_1)を基準としたとき、n型ホスト分子H
_n_1の三重項励起状態のエネルギー準位T1_H_n_1はゲスト分子Gの三重項励
起状態のエネルギー準位T1_GよりもΔEt(≧0.15電子ボルト)だけ高いので、
この間の遷移は常温では起こりにくい。なお、図2(C)でS1_G、S1_H_n_1
は、それぞれ、ゲスト分子G、n型ホスト分子H_n_1の一重項励起状態のエネルギー
準位である。

0060

図2(C)では、n型ホスト分子のエネルギー状態について述べたが、p型ホスト分子で
も、その三重項励起状態のエネルギー準位が、ゲスト分子の三重項励起状態のエネルギー
準位より高ければ同様の効果が得られる。

0061

厳密には、分子のLUMO準位とHOMO準位の差が、その分子の三重項励起状態と基底
状態とのエネルギー差というわけではないが、一定の相関はある。例えば、後述する(ア
セチルアセトナト)ビス(4,6−ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略
称:[Ir(dppm)2(acac)])はゲストとして用いられるが、そのHOMO
準位とLUMO準位の差は2.58電子ボルトであるのに対し、その三重項励起状態と基
底状態とのエネルギー差は、2.22電子ボルトである。また、n型ホストとして用いら
れる2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イルフェニルジベンゾ[f,h]キノ
サリン略称:2mDBTPDBq−II)は、それぞれ、3.10電子ボルト、2.5
4電子ボルトであり、p型ホストとして用いられる4、4’−ジ(1−ナフチル)−4’
’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PC
NBB)は、ぞれぞれ、3.15電子ボルト、2.40電子ボルトである。

0062

ところで、ゲストとして上記の[Ir(dppm)2(acac)]、n型ホストとして
2mDBTPDBq−II、p型ホストとしてPCBNBBを用いた場合、2mDBTP
DBq−IIの三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差およびPCBNBBの三重項
励起状態と基底状態とのエネルギー差(光学測定の結果では、ぞれぞれ、2.54電子ボ
ルト、2.40電子ボルト)は、ゲストの三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差(
光学測定の結果では、2.22電子ボルト)より0.18電子ボルト以上高いので、ゲス
トの三重項励起状態がホストに移ることはほとんど無い。

0063

また、ゲストとして(ジピバロイルメタナト)ビス(3,5−ジメチル−2−フェニルピ
ラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr−Me)2(dpm)])を
用いることもできる。[Ir(mppr−Me)2(dpm)]の三重項励起状態と基底
状態とのエネルギー差は光学測定の結果では、2.24電子ボルトである。

0064

したがって、n型ホストとして2mDBTPDBq−II、p型ホストとしてPCBNB
Bを用いた場合、それらの三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差は、[Ir(mp
pr−Me)2(dpm)]の三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差より0.16
電子ボルト以上高いので、ゲストの三重項励起状態がホストに移ることはほとんど無い。

0065

以上は、ゲストに電子と正孔が注入される直接再結合過程であるが、n型ホスト分子とp
型ホスト分子が励起錯体を形成し、これがゲスト分子にエネルギー移動することにより、
ゲスト分子を励起状態とすることもできる。この場合には、エネルギー移動には、フェル
スター機構やデクスター機構を使用する。

0066

励起錯体(エキサイプレックス、exciplex)は、励起状態における異種分子間の
相互作用によって形成される。励起錯体は、比較的深いLUMO準位をもつ材料と、浅い
HOMO準位をもつ材料間との間で形成しやすいことが一般に知られている。例えば、前
者としてp型ホスト、後者としてn型ホストを用いることができる。

0067

ここで、n型ホストとp型ホストのHOMO準位及びLUMO準位は互いに異なり、n型
ホストのHOMO準位<p型ホストのHOMO準位<n型ホストのLUMO準位<p型ホ
ストのLUMO準位という順で高い。

0068

そして、このn型ホストとp型ホストにより励起錯体が形成された場合、励起錯体のLU
MO準位は、n型ホストに由来し、HOMO準位は、p型ホストに由来する。したがって
、励起錯体のエネルギー差は、n型ホストのエネルギー差、及びp型ホストのエネルギー
差よりも小さくなる。つまり、n型ホストとp型ホストのそれぞれの発光波長に比べて、
励起錯体の発光波長は長波長となる。励起錯体の形成過程は大きく分けて以下の2つの過
程が考えられる。

0069

エレクトロプレクス(electroplex)≫
本明細書において、エレクトロプレックスとは、基底状態のn型ホスト及び基底状態のp
型ホストから、直接、励起錯体が形成されることを指す。

0070

前述の通り、フェルスター機構やデクスター機構では、電子及び正孔がホスト中で再結合
した場合、励起状態のホストからゲストに励起エネルギーが移動し、ゲストが励起状態に
至り、発光する。

0071

ここで、ホストからゲストに励起エネルギーが移動する前に、ホスト自体が発光する、又
は励起エネルギーが熱エネルギーとなることで、励起エネルギーの一部を失う。特に、ホ
ストが一重項励起状態である場合は、三重項励起状態である場合に比べて励起寿命が短い
ため、一重項励起子の失活が起こりやすい。励起子の失活は、発光素子の寿命の低下につ
ながる要因の一つである。

0072

一方、本発明の一態様では、n型ホスト及びp型ホストが同じ発光層に存在するので、n
型ホスト分子及びp型ホスト分子がキャリアを持った状態(アニオンおよびカチオン)か
ら、エレクトロプレックスを形成することが多い。そのため、励起寿命の短いn型ホスト
分子の一重項励起子あるいはp型ホスト分子の一重項励起子は形成されにくい。

0073

つまり、個々の分子の一重項励起子を形成することなく、直接、励起錯体を形成する過程
がほとんどである。これにより、上記一重項励起子の失活も抑制することができる。そし
て、生じたエレクトロプレックスからゲストにエネルギー移動をおこなって発光効率が高
い発光素子を得ることができる。

0074

≪励起子による励起錯体の形成≫
もう一つの過程としては、ホストであるn型ホスト分子及びp型ホスト分子の一方が一重
項励起子を形成した後、基底状態の他方と相互作用して励起錯体を形成する素過程が考え
られる。エレクトロプレックスとは異なり、この場合は一旦、n型ホスト分子あるいはp
型ホスト分子の一重項励起子が生成してしまうが、これを速やかに励起錯体に変換できれ
ば、やはり一重項励起子の失活を抑制することができる。なお、上述のように、n型ホス
ト及びp型ホストが同じ発光層に存在する場合には、この過程は起こりにくい。

0075

例えば、n型ホストは電子トラップ性の化合物であり、一方でp型ホストは正孔トラップ
性の化合物である。これら化合物のHOMO準位の差、及びLUMO準位の差が大きい場
合(具体的には差が0.3eV以上)、電子は優先的にn型ホスト分子に入り、正孔は優
先的にp型ホスト分子に入る。この場合、一重項励起子を経て励起錯体が形成される過程
よりも、エレクトロプレックスが形成される過程の方が優先されると考えられる。

0076

ところで、上記のようにして形成された励起錯体からゲスト分子へのエネルギー移動は、
フェルスター機構やデクスター機構によるものであるが、上述のように、これらの機構に
おいては、例えば、ホスト分子の三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差とゲスト分
子の三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差が小さい方が好ましい。

0077

この場合、励起錯体の三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差は、n型ホスト分子の
LUMO準位とp型ホスト分子のHOMO準位の差に相当し、これらがゲスト分子のLU
MO準位とHOMO準位の差と等しいあるいは近い場合には、効率的にエネルギーが移動
し、ゲスト分子を三重項励起状態とすることができ、励起錯体自らは基底状態となる。

0078

ただし、励起錯体は、励起状態でのみ安定であるので、基底状態に戻ると、n型ホスト分
子とp型ホスト分子に分離する。そして、上述のように、これらの三重項励起状態と基底
状態とのエネルギー差は、ゲスト分子の三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差より
大きいため、ゲスト分子の三重項励起状態がいずれかのホスト分子にエネルギー移動する
ことは室温では極めて起こりにくい。

0079

(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光素子の原理について図3を用いて説明する。図
3(A)は2つのn型ホスト分子(H_n_1、H_n_2)と1つのゲスト分子(G)
と2つのp型ホスト分子(H_p_1、H_p_2)が直線状に並んでいる場合のこれら
の分子のエネルギーの様子を示す。各分子は、それぞれHOMOとLUMOを有する。

0080

ここでは、n型ホスト分子のLUMO準位Enはゲスト分子のLUMO準位Eaより0.
1電子ボルト以上高く、また、p型ホスト分子のHOMO準位Epはゲスト分子のHOM
O準位Ebより高いとする。また、n型ホスト分子のLUMO準位とHOMO準位の差お
よびp型ホスト分子のLUMO準位とHOMO準位の差は、いずれもゲスト分子のLUM
O準位とHOMO準位の差より0.5電子ボルト以上大きいことが好ましい。

0081

図3(A)に示すように、陽極(図の右側)より正孔が、陰極(図の左側)より電子が注
入されたため、n型ホスト分子H_n_1はLUMOにも電子を有し、p型ホスト分子H
_p_1はHOMOの電子が1つしかない(正孔が一つある)状態となっている。したが
って、n型ホスト分子H_n_1はアニオンであり、p型ホスト分子H_p_1はカチオ
ンである。

0082

電子と正孔は、このようなn型ホスト分子とp型ホスト分子をホッピングしながら伝導す
る。図に示すように、p型ホスト分子のLUMO準位はn型ホスト分子のLUMO準位よ
りも高いので、電子はn型ホスト分子を伝導する。また、n型ホスト分子のHOMO準位
はp型ホスト分子のHOMO準位よりも低いので、正孔はp型ホスト分子を伝導する。

0083

そして、図3(B)に示すように、ゲスト分子のLUMOに電子が注入され、ゲスト分子
はアニオンとなる。ここで、n型ホスト分子のLUMO準位はゲスト分子のLUMO準位
よりも0.1電子ボルト以上高く、もちろん、p型ホスト分子のLUMO準位はさらに高
い。すると、ゲスト分子のLUMOに入った電子は準安定な状態となり、いわば、ゲスト
分子にトラップされた状態となる。

0084

その結果、ゲスト分子は負の電荷を帯びたアニオンとなるので、周囲にある正孔をクーロ
ン相互作用(図中にFと表記)によって誘引する。そのため、図3(C)に示すように、
p型ホスト分子H_p_2にある正孔がゲスト分子Gに注入される。クーロン相互作用
比較的、遠くまで及ぶため、効率的にゲスト分子内に電子と正孔が集まることとなる。

0085

なお、この際、ゲスト分子GのLUMOにある電子とp型ホスト分子H_p_2のHOM
Oにある正孔と再結合する(すなわち、ゲスト分子GのLUMOにある電子がp型ホスト
分子H_p_2のHOMOに移動する、あるいは、p型ホスト分子H_p_2のHOMO
にある正孔がゲスト分子GのLUMOに移動する)と、その段階で発光が生じる。

0086

また、上記の電子移動禁制であれば、p型ホスト分子H_p_2のHOMOにある正孔
がゲスト分子GのHOMOに移動し、ゲスト分子Gは励起状態となる。その後、ゲスト分
子Gは基底状態に遷移するが、その過程で発光が生じる。

0087

ゲストにクーロン相互作用により正孔を誘引するには、(p型ホストのHOMO準位)−
(ゲストのHOMO準位)をΔEp、(n型ホストのLUMO準位)−(ゲストのLUM
O準位)をΔEnとするとき、ΔEp<ΔEn+0.2[電子ボルト]、好ましくは、Δ
Ep<ΔEnとするとよい。以上の作用により、ゲスト分子内で正孔と電子が再結合する

0088

上記の過程は、ゲスト分子がアニオンとなったために生じる。もし、ゲスト分子の電荷が
中性であれば、ゲスト分子のHOMO準位はp型ホスト分子のHOMO準位よりも低いの
で正孔がゲスト分子に注入される可能性は低い。

0089

図3は、n型ホスト分子のLUMO準位Enはゲスト分子のLUMO準位Eaより高く、
また、p型ホスト分子のHOMO準位Epはゲスト分子のHOMO準位Ebより高い場合
を示したが、逆にp型ホスト分子のHOMO準位Epがゲスト分子のHOMO準位Ebよ
り0.1電子ボルト以上低く、また、n型ホスト分子のLUMO準位Enがゲスト分子の
LUMO準位Eaより0.1電子ボルト以上低い場合でも同様の原理で、ゲスト分子内で
効率よく正孔と電子が再結合する。この場合は、ゲスト分子のHOMOに正孔が最初に注
入され、そのクーロン相互作用によりゲスト分子に電子が注入される。

0090

なお、n型ホスト分子のLUMO準位Enがゲスト分子のLUMO準位Eaより高く、ま
た、p型ホスト分子のHOMO準位Epがゲスト分子のHOMO準位Ebより低い場合は
、さらに効率的にゲストに電荷を注入し、励起状態とすることができる。その場合は、少
なくともn型ホスト分子のLUMO準位Enがゲスト分子のLUMO準位Eaより0.1
電子ボルト以上高いか、p型ホスト分子のHOMO準位Epがゲスト分子のHOMO準位
Ebより0.1電子ボルト以上低いことが好ましい。

0091

また、アニオンとなったn型ホスト分子とカチオンとなったp型ホスト分子が隣接する場
合、両者が励起錯体状態となることがある。このとき、近くにあるゲスト分子を励起状態
とするには、上述のエネルギー移動過程を経る必要があるが、その場合には、励起錯体の
励起状態と基底状態とのエネルギー差とゲスト分子の三重項励起状態と基底状態とのエネ
ルギー差ができるだけ近い方がよい。

0092

もし、n型ホスト分子のLUMO準位がゲスト分子のLUMO準位よりも0.1電子ボル
トだけ高ければ、p型ホスト分子のHOMO準位がゲスト分子のHOMO準位よりも0.
1電子ボルトだけ低くなるような材料を選択して、励起錯体の励起状態と基底状態とのエ
ネルギー差とゲスト分子の三重項励起状態と基底状態とのエネルギー差ができるだけ等し
くなるようにすればよい。

0093

具体的には、ゲストとして用いられる[Ir(dppm)2(acac)]のLUMO準
位、HOMO準位は、ぞれぞれ、−2.98電子ボルト、−5.56電子ボルトであり、
また、n型ホストとして用いられる2mDBTPDBq−IIは、それぞれ、−2.78
電子ボルト、−5.88電子ボルトであり、p型ホストとして用いられるPCBNBBは
、ぞれぞれ、−2.31電子ボルト、−5.46電子ボルトである。

0094

この組み合わせにおいては、ゲストのLUMO準位はn型ホストおよびp型ホストのLU
MO準位より低く、特にn型ホストのLUMO準位より0.2電子ボルト低いため、ゲス
ト分子は電子をトラップしてアニオンとなりやすい。また、ゲスト分子のHOMO準位は
n型ホスト分子のHOMO準位よりは高いものの、p型ホスト分子のHOMO準位よりは
0.1電子ボルト低い。

0095

したがって、図3に示したように、最初にゲストのLUMOに電子が注入され、そのクー
ロン相互作用によりゲストに正孔が注入されることにより、発光することとなる。

0096

また、[Ir(mppr−Me)2(dpm)]のLUMO準位は、−2.77電子ボル
トであり、n型ホスト(2mDBTPDBq−II)のLUMO準位(−2.78電子ボ
ルト)とほとんど同じであり、また、[Ir(mppr−Me)2(dpm)]のHOM
O準位は−5.50電子ボルトであり、p型ホスト(PCBNBB)のHOMO準位(−
5.43電子ボルト)よりも0.07電子ボルト低い。

0097

これらの数値は[Ir(mppr−Me)2(dpm)]が上記のn型ホストやp型ホス
トと一緒に用いられる場合には、電子やホールをトラップする作用が、[Ir(dppm
)2(acac)]よりも劣っていることを示している。

0098

(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光素子について図1(B)を用いて説明する。図
1(B)は、第1の電極103と第2の電極104との間にEL層110を有する発光素
子を示した図である。図1(B)における発光素子は、第1の電極103の上に順に積層
した第1のキャリアの注入層105、第1のキャリアの輸送層106、発光層102、第
2のキャリアの輸送層108、第2のキャリアの注入層107と、さらにその上に設けら
れた第2の電極104から構成されている。EL層110は発光層102以外に、第1の
キャリアの注入層105、第1のキャリアの輸送層106、第2のキャリアの輸送層10
8、第2のキャリアの注入層107より構成される。なお、EL層110は必ずしもこれ
らの層を全て有する必要は無い。

0099

ここで、第1の電極103は陽極あるいは陰極の一方であり、第2の電極104は陽極あ
るいは陰極の他方である。また、第1のキャリアは正孔あるいは電子の一方であり、第2
のキャリアは正孔あるいは電子の他方である。また、第1の電極が陽極であれば、第1の
キャリアは正孔であり、第1の電極が陰極であれば、第1のキャリアは電子である。また
、第1のキャリアの注入層105、第2のキャリアの注入層107は正孔注入層と電子注
入層のいずれかであり、第1のキャリアの輸送層106、第2のキャリアの輸送層108
正孔輸送層電子輸送層のいずれかである。

0100

陽極としては、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金導電性化
物、及びこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、例えば、酸化イン
ウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素又は酸化珪素を含
有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛(Indium Zinc
Oxide)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)
等が挙げられる。これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタリング法により成膜され
るが、ゾルゲル法などを応用して作製しても構わない。

0101

例えば、酸化インジウム−酸化亜鉛膜は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜
鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。また、I
WZO膜は、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0
.1〜1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができ
る。この他、グラフェン、金、白金ニッケルタングステンクロムモリブデン、鉄
コバルト、銅、パラジウム、又は金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げら
れる。

0102

但し、EL層110のうち、陽極に接して形成される層が、後述する有機化合物と電子受
容体アクセプター)とを混合してなる複合材料を用いて形成される場合には、陽極に用
いる物質は、仕事関数の大小に関わらず、様々な金属、合金、電気伝導性化合物、および
これらの混合物などを用いることができる。例えば、アルミニウム、銀、アルミニウムを
含む合金(例えば、Al−Si)等も用いることもできる。陽極は、例えばスパッタリン
グ法や蒸着法(真空蒸着法を含む)等により形成することができる。

0103

陰極は、仕事関数の小さい(好ましくは3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物
、及びこれらの混合物などを用いて形成することが好ましい。具体的には、元素周期表
第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウムセシウム等のアルカリ金属、およ
カルシウムストロンチウム等のアルカリ土類金属マグネシウム、およびこれらを含
む合金(例えば、Mg−Ag、Al−Li)、ユーロピウムイッテルビウム等の希土類
金属およびこれらを含む合金の他、アルミニウムや銀などを用いることができる。

0104

但し、EL層110のうち、陰極に接して形成される層が、後述する有機化合物と電子供
与体(ドナー)とを混合してなる複合材料を用いる場合には、仕事関数の大小に関わらず
、Al、Ag、ITO、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ等様
々な導電性材料を用いることができる。なお、陰極を形成する場合には、真空蒸着法やス
パッタリング法を用いることができる。また、銀ペーストなどを用いる場合には、塗布法
インクジェット法などを用いることができる。

0105

正孔注入層は、正孔注入性の高い物質を含む層である。正孔注入性の高い物質としては、
モリブデン酸化物チタン酸化物バナジウム酸化物レニウム酸化物ルテニウム酸化
物、クロム酸化物ジルコニウム酸化物ハフニウム酸化物タンタル酸化物銀酸化物
タングステン酸化物マンガン酸化物等の金属酸化物を用いることができる。また、フ
ロシアニン(略称:H2Pc)、銅(II)フタロシアニン(略称:CuPc)等のフ
タロシアニン系の化合物を用いることができる。

0106

また、低分子の有機化合物である4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ
)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メ
チルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4
,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニ
ル(略称:DPAB)、4,4’−ビス(N−{4−[N’−(3−メチルフェニル)−
N’−フェニルアミノ]フェニル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNT
D)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミ
ノ]ベンゼン(略称:DPA3B)、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル
)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,
6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−
フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(
9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:P
CzPCN1)等の芳香族アミン化合物等を用いることができる。

0107

さらに、高分子化合物オリゴマーデンドリマーポリマー等)を用いることもできる
。例えば、ポリN−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4−ビニルトリフ
ニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニ
ルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド
(略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビ
ス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)などの高分子化合物が挙げられ
る。また、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸
(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸)(PAni/PS
S)等の酸を添加した高分子化合物を用いることができる。

0108

また、正孔注入層として、有機化合物と電子受容体(アクセプター)とを混合してなる複
合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子受容体によって有機化合物に正孔が
発生するため、正孔注入性および正孔輸送性に優れている。この場合、有機化合物として
は、発生した正孔の輸送に優れた材料(正孔輸送性の高い物質)であることが好ましい。

0109

複合材料に用いる有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体芳香
炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合
物を用いることができる。なお、複合材料に用いる有機化合物としては、正孔輸送性の高
い有機化合物であることが好ましい。具体的には、10−6cm2/Vs以上の正孔移動
度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれ
ば、これら以外のものを用いてもよい。以下では、複合材料に用いることのできる有機
合物を具体的に列挙する。

0110

複合材料に用いることのできる有機化合物としては、例えば、TDATA、MTDATA
、DPAB、DNTPD、DPA3B、PCzPCA1、PCzPCA2、PCzPCN
1、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:
NPBまたはα−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェ
ニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4−フェニル
−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAF
P)等の芳香族アミン化合物や、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:
CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:
TCPB)、9−[4−(N−カルバゾリル)]フェニル−10−フェニルアントラセン
(略称:CzPA)、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フ
ェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)、1,4−ビス[4−(N−カルバ
リル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等のカルバゾール誘導体
を用いることができる。

0111

また、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−
BuDNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9
,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−t
ert−ブチル−9,10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−B
uDBA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−
ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン(
略称:t−BuAnth)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセン
(略称:DMNA)、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]−2−tert
−ブチルアントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン
、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン等の芳香
炭化水素化合物を用いることができる。

0112

さらに、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、
9,9’−ビアトリル、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,
10’−ビス(2−フェニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス
[(2,3,4,5,6−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アン
トラセンテトラセンルブレンペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブ
チル)ペリレン、ペンタセンコロネン、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)
ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルビニル)
フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等の芳香族炭化水素化合物を用いることが
できる。

0113

また、電子受容体としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフ
ルオロキノジメタン(略称:F4−TCNQ)、クロラニル等の有機化合物や、遷移金属
酸化物を挙げることができる。また、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属
の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム酸化ニオブ、酸化タン
ル、酸化クロム酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン酸化レニウムは電
受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸
湿性が低く、扱いやすいため好ましい。

0114

なお、上述したPVK、PVTPA、PTPDMA、Poly−TPD等の高分子化合物
と、上述した電子受容体を用いて複合材料を形成し、正孔注入層に用いてもよい。

0115

正孔輸送層は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送性の高い物質としては、
NPB、TPD、BPAFLP、4,4’−ビス[N−(9,9−ジメチルフルオレン
2−イル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPBi)、4,4’−ビ
ス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N—フェニルアミノ]ビフェ
ニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物を用いることができる。ここに述べた
物質は、主に10−6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よ
りも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸
送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層
したものとしてもよい。

0116

また、正孔輸送層には、CBP、CzPA、PCzPAのようなカルバゾール誘導体や、
t−BuDNA、DNA、DPAnthのようなアントラセン誘導体を用いても良い。

0117

また、正孔輸送層には、PVK、PVTPA、PTPDMA、Poly−TPDなどの高
分子化合物を用いることもできる。

0118

発光層102は、発光物質を含む層である。本実施の形態の発光層102は、ゲストとし
て燐光性化合物を有し、ホストとしてn型ホスト及びp型ホストを有する。n型ホスト(
あるいはp型ホスト)は、2種以上用いることができる。

0119

燐光性化合物としては、有機金属錯体が好ましく、イリジウム錯体が特に好ましい。なお
、上述のフェルスター機構によるエネルギー移動を考慮すると、燐光性化合物の最も長波
長側に位置する吸収帯のモル吸光係数は、2000M−1・cm−1以上が好ましく、5
000M−1・cm−1以上が特に好ましい。

0120

このような大きなモル吸光係数を有する化合物としては、例えば、[Ir(mppr−M
e)2(dpm)]や、[Ir(dppm)2(acac)]などが挙げられる。特に、
[Ir(dppm)2(acac)]のように、モル吸光係数が5000M−1・cm−
1以上に達する材料を用いると、外部量子効率が30%程度に達する発光素子が得られる

0121

n型ホストとしては、例えば、上述の2mDBTPDBq−II以外にも、2−[4−(
3,6−ジフェニル−9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キ
ノキサリン(略称:2CzPDBq−III)、7−[3−(ジベンゾチオフェン−4−
イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:7mDBTPDBq−II)
、及び、6−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キ
ノキサリン(略称:6mDBTPDBq−II)のような電子を受け取りやすい化合物の
うちいずれか一を用いればよい。

0122

またp型ホストとしては、上述のPCBNBB以外にも、4,4’−ビス[N−(1−ナ
フチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα−NPD)、及び、
4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニル
ミン(略称:PCBA1BP)のような正孔を受け取りやすい化合物を用いればよい。た
だし、これらに限定されることなく、例えば、実施の形態1あるいは実施の形態2に示し
たエネルギー準位の関係を満たすn型ホストとp型ホストの組み合わせであればよい。

0123

電子輸送層は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送性の高い物質としては、
Alq3、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq3)
、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)、
BAlq、Zn(BOX)2、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニルベンゾチアゾラト
亜鉛(略称:Zn(BTZ)2)などの金属錯体が挙げられる。

0124

また、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4
オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェ
ニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3
−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,
2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−
(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称
:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン
略称:BCP)、4,4’−ビス(5−メチルベンゾオキサゾール−2−イル)スチル
ン(略称:BzOs)などの複素芳香族化合物も用いることができる。

0125

また、ポリ(2,5−ピリジンジイル)(略称:PPy)、ポリ[(9,9−ジヘキシ
ルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(ピリジン−3,5−ジイル)](略称:PF
−Py)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,2
’−ビピリジン−6,6’−ジイル)](略称:PF−BPy)のような高分子化合物を
用いることもできる。ここに述べた物質は、主に10−6cm2/Vs以上の電子移動度
を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物
質を電子輸送層として用いてもよい。

0126

また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したも
のとしてもよい。

0127

電子注入層は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入層には、リチウム、セシ
ウム、カルシウム、フッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化カルシウム、リチウム酸化
物等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を用いることがで
きる。また、フッ化エルビウムのような希土類金属化合物を用いることができる。また、
上述した電子輸送層を構成する物質を用いることもできる。

0128

あるいは、電子注入層に、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料
を用いてもよい。このような複合材料は、電子供与体によって有機化合物に電子が発生す
るため、電子注入性および電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、発
生した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した電子
輸送層を構成する物質(金属錯体や複素芳香族化合物等)を用いることができる。

0129

電子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す物質であればよい。具体的には
、アルカリ金属やアルカリ土類金属や希土類金属が好ましく、リチウム、セシウム、マグ
ネシウム、カルシウム、エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アルカリ
属酸化物やアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物カルシウム酸化物、バ
リウム酸化物等が挙げられる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用いること
もできる。また、テトラチアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いることも
できる。

0130

なお、上述した正孔注入層、正孔輸送層、発光層102、電子輸送層、電子注入層は、そ
れぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗布法等の方法で形成するこ
とができる。

0131

また、図1(C)に示すように、陽極と陰極との間に複数のEL層110a、110bが
積層されていても良い。この場合、EL層110a、110bはそれぞれ少なくとも発光
層を有する。積層された第1のEL層110aと第2のEL層110bとの間には、電荷
発生層111を設けることが好ましい。電荷発生層111は上述の複合材料で形成するこ
とができる。また、電荷発生層111は複合材料からなる層と他の材料からなる層との積
層構造でもよい。

0132

この場合、他の材料からなる層としては、電子供与性物質と電子輸送性の高い物質とを含
む層や、透明導電膜からなる層などを用いることができる。このような構成を有する発光
素子は、エネルギーの移動や消光などの問題が起こり難く、材料の選択の幅が広がること
で高い発光効率と長い寿命とを併せ持つ発光素子とすることが容易である。また、一方の
EL層で燐光発光、他方で蛍光発光を得ることも容易である。この構造は上述のEL層の
構造と組み合わせて用いることができる。

0133

また、それぞれのEL層の発光色を異なるものにすることで、発光素子全体として、所望
の色の発光を得ることができる。例えば、第1のEL層110aの発光色と第2のEL層
110bの発光色を補色の関係になるようにすることで、発光素子全体として白色発光
る発光素子を得ることも可能である。また、3つ以上のEL層を有する発光素子の場合で
も同様である。

0134

あるいは、図1(D)に示すように、陽極201と陰極209との間に、正孔注入層20
2、正孔輸送層203、発光層204、電子輸送層205、電子注入バッファー層206
電子リレー層207、及び陰極209と接する複合材料層208を有するEL層210
を形成しても良い。

0135

陰極209と接する複合材料層208を設けることで、特にスパッタリング法を用いて陰
極を形成する際に、EL層210が受けるダメージを低減することができるため、好まし
い。複合材料層208は、前述の、正孔輸送性の高い有機化合物にアクセプター性物質
含有させた複合材料を用いることもできる。

0136

さらに、電子注入バッファー層206を設けることで、複合材料層208と電子輸送層2
05との間の注入障壁緩和することができるため、複合材料層208で生じた電子を電
子輸送層205に容易に注入することができる。

0137

電子注入バッファー層206には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およ
びこれらの化合物(アルカリ金属化合物酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物炭酸
リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロ
ン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を
含む))等の電子注入性の高い物質を用いることが可能である。

0138

また、電子注入バッファー層206が、電子輸送性の高い物質とドナー性物質を含んで形
成される場合には、電子輸送性の高い物質に対して質量比で、0.001以上0.1以下
の比率でドナー性物質を添加することが好ましい。電子輸送性の高い物質としては、先に
説明した電子輸送層205の材料と同様の材料を用いて形成することができる。

0139

また、ドナー性物質としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこ
れらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチ
ウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化
物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む
))の他、テトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセンデカメチルニッケロ
セン等の有機化合物を用いることもできる。

0140

さらに、電子注入バッファー層206と複合材料層208との間に、電子リレー層207
を形成することが好ましい。電子リレー層207は、必ずしも設ける必要は無いが、電子
輸送性の高い電子リレー層207を設けることで、電子注入バッファー層206へ電子を
速やかに送ることが可能となる。

0141

複合材料層208と電子注入バッファー層206との間に電子リレー層207が挟まれた
構造は、複合材料層208に含まれるアクセプター性物質と、電子注入バッファー層20
6に含まれるドナー性物質とが相互作用を受けにくく、互いの機能を阻害しにくい構造で
ある。したがって、駆動電圧の上昇を防ぐことができる。

0142

電子リレー層207は、電子輸送性の高い物質を含み、該電子輸送性の高い物質のLUM
O準位は、複合材料層208に含まれるアクセプター性物質のLUMO準位と、電子輸送
層205に含まれる電子輸送性の高い物質のLUMO準位との間となるように形成する。

0143

また、電子リレー層207がドナー性物質を含む場合には、当該ドナー性物質のドナー準
位も複合材料層208におけるアクセプター性物質のLUMO準位と、電子輸送層205
に含まれる電子輸送性の高い物質のLUMO準位との間となるようにする。具体的なエネ
ルギー準位の数値としては、電子リレー層207に含まれる電子輸送性の高い物質のLU
MO準位は−5.0eV以上、好ましくは−5.0eV以上−3.0eV以下とするとよ
い。

0144

電子リレー層207に含まれる電子輸送性の高い物質としてはフタロシアニン系の材料又
は金属−酸素結合芳香族配位子を有する金属錯体を用いることが好ましい。

0145

電子リレー層207に含まれるフタロシアニン系材料としては、具体的にはCuPc、S
nPc(Phthalocyanine tin(II) complex)、ZnPc
(Phthalocyanine zinc complex)、CoPc(Cobal
t(II)phthalocyanine, β−form)、FePc(Phthal
ocyanine Iron)及びPhO−VOPc(Vanadyl 2,9,16,
23−tetraphenoxy−29H,31H−phthalocyanine)の
いずれかを用いることが好ましい。

0146

電子リレー層207に含まれる金属−酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体としては
、金属−酸素二重結合を有する金属錯体を用いることが好ましい。金属−酸素の二重結
合はアクセプター性(電子を受容しやすい性質)を有するため、電子の移動(授受)がよ
り容易になる。また、金属−酸素の二重結合を有する金属錯体は安定であると考えられる
。したがって、金属−酸素の二重結合を有する金属錯体を用いることにより発光素子を低
電圧でより安定に駆動することが可能になる。

0147

金属−酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体としてはフタロシアニン系材料が好まし
い。具体的には、VOPc(Vanadyl phthalocyanine)、SnO
Pc(Phthalocyanine tin(IV) oxide complex)
及びTiOPc(Phthalocyanine titanium oxide co
mplex)のいずれかは、分子構造的に金属−酸素の二重結合が他の分子に対して作用
しやすく、アクセプター性が高いため好ましい。

0148

なお、上述したフタロシアニン系材料としては、フェノキシ基を有するものが好ましい。
具体的にはPhO−VOPcのような、フェノキシ基を有するフタロシアニン誘導体が好
ましい。フェノキシ基を有するフタロシアニン誘導体は、溶媒に可溶である。そのため、
発光素子を形成する上で扱いやすいという利点を有する。また、溶媒に可溶であるため、
成膜に用いる装置のメンテナンスが容易になるという利点を有する。

0149

電子リレー層207はさらにドナー性物質を含んでいても良い。ドナー性物質としては、
アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属及びこれらの化合物(アルカリ金属化合物
(酸化リチウムなどの酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウムなどの炭酸塩
を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、又は希土
類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))の他、テトラチアナフタセン
、ニッケロセン、デカメチルニッケロセンなどの有機化合物を用いることができる。電子
リレー層207にこれらドナー性物質を含ませることによって、電子の移動が容易となり
、発光素子をより低電圧で駆動することが可能になる。

0150

電子リレー層207にドナー性物質を含ませる場合、電子輸送性の高い物質としては上記
した材料の他、複合材料層208に含まれるアクセプター性物質のアクセプター準位より
高いLUMO準位を有する物質を用いることができる。具体的なエネルギー準位としては
、−5.0eV以上、好ましくは−5.0eV以上−3.0eV以下の範囲にLUMO準
位を有する物質を用いることが好ましい。このような物質としては例えば、ペリレン誘導
体や、含窒素縮合芳香族化合物などが挙げられる。なお、含窒素縮合芳香族化合物は、安
定であるため、電子リレー層207を形成する為に用いる材料として、好ましい材料であ
る。

0151

ペリレン誘導体の具体例としては、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸無水
物(略称:PTCDA)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシリックビスベン
イミダゾール(略称:PTCBI)、N,N’−ジオクチル−3,4,9,10−ペリ
レンテトラカルボン酸ジイミド(略称:PTCDI−C8H)、N,N’−ジヘキシル
3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:Hex PTC)等が挙
げられる。

0152

また、含窒素縮合芳香族化合物の具体例としては、ピラジノ[2,3−f][1,10]
フェナントロリン−2,3−ジカルボニトリル(略称:PPDN)、2,3,6,7,1
0,11−ヘキサシアノ−1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン(略称
HAT(CN)6)、2,3−ジフェニルピリド[2,3−b]ピラジン(略称:2P
YPR)、2,3−ビス(4−フルオロフェニル)ピリド[2,3−b]ピラジン(略称
:F2PYPR)等が挙げられる。

0153

その他にも、7,7,8,8,−テトラシアノキノジメタン(略称:TCNQ)、1,4
,5,8,−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(略称:NTCDA)、パーフルオロ
ペンタセン、銅ヘキサデカフルオロフタロシアニン(略称:F16CuPc)、N,N’
−ビス(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカ
ルオロオクチル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:NT
CDI−C8F)、3’,4’−ジブチル−5,5’’−ビス(ジシアノメチレン)−5
,5’’−ジヒドロ−2,2’:5’,2’’−テルチオフェン)(略称:DCMT)、
メタノフラーレン(例えば、[6,6]−フェニルC61酪酸メチルエステル)等を用い
ることができる。

0154

なお、電子リレー層207にドナー性物質を含ませる場合、電子輸送性の高い物質とドナ
性物質との共蒸着などの方法によって電子リレー層207を形成すれば良い。

0155

正孔注入層202、正孔輸送層203、発光層204、及び電子輸送層205は前述の材
料を用いてそれぞれ形成すれば良い。以上により、本実施の形態のEL層210を作製す
ることができる。

0156

上述した発光素子は、陽極と陰極との間に生じた電位差により電流が流れ、EL層におい
て正孔と電子とが再結合することにより発光する。そして、この発光は、陽極または陰極
のいずれか一方または両方を通って外部に取り出される。従って、陽極または陰極のいず
れか一方、または両方が可視光に対する透光性を有する電極となる。

0157

なお、陽極と陰極との間に設けられる層の構成は、上記のものに限定されない。発光領域
と金属とが近接することによって生じる消光を防ぐように、陽極及び陰極から離れた部位
に正孔と電子とが再結合する発光領域を設けた構成であれば上記以外のものでもよい。

0158

つまり、層の積層構造については特に限定されず、電子輸送性の高い物質、正孔輸送性の
高い物質、電子注入性の高い物質、正孔注入性の高い物質、バイポーラ性の物質(電子及
び正孔の輸送性の高い物質)、又は正孔ブロック材料等から成る層を、発光層と自由に組
み合わせて構成すればよい。

0159

本実施の形態で示した発光素子を用いて、パッシブマトリクス型の発光装置や、トラン
スタによって発光素子の駆動が制御されたアクティブマトリクス型の発光装置を作製する
ことができる。また、該発光装置を電子機器又は照明装置等に適用することができる。

0160

本実施例では、本発明の一態様の発光素子について説明する。本実施例で用いた材料の化
学式を以下に示す。

0161

0162

以下に、本実施例の発光素子1及び比較発光素子2の作製方法を示す。

0163

(発光素子1)
まず、ガラス基板上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリン
グ法にて成膜し、陽極として機能する第1の電極を形成した。なお、その膜厚は110n
mとし、電極面積は2mm×2mmとした。

0164

次に、基板上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200
℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒おこなった。

0165

その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置内の加熱室に基板を導入し
、170℃で30分間の真空焼成をおこなった後、基板を30分程度放冷した。

0166

次に、真空蒸着装置内の蒸着室に基板を導入し、第1の電極が形成された面が下方となる
ように、第1の電極が形成された基板が真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定
された状態で、10−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極上に、BPAFLPと酸化
モリブデン(VI)を共蒸着することで、正孔注入層を形成した。その膜厚は、40nm
とし、BPAFLPと酸化モリブデンの比率は、重量比で4:2(=BPAFLP:酸化
モリブデン)となるように調節した。

0167

次に、正孔注入層上に、BPAFLPを20nmの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層
を形成した。

0168

さらに、2mDBTPDBq−II、PCBNBB、及び[Ir(mppr−Me)2(
dpm)]を共蒸着し、正孔輸送層上に発光層を形成した。ここで、2mDBTPDBq
−II、PCBNBB及び[Ir(mppr−Me)2(dpm)]の重量比は、0.8
:0.2:0.05(=2mDBTPDBq−II:PCBNBB:[Ir(mppr−
Me)2(dpm)])となるように調節した。また、発光層の膜厚は40nmとした。

0169

次に、発光層上に2mDBTPDBq−IIを膜厚10nmとなるよう成膜し、第1の電
子輸送層を形成した。

0170

次に、第1の電子輸送層上にBPhenを膜厚20nmとなるように成膜し、第2の電子
輸送層を形成した。

0171

さらに、第2の電子輸送層上に、フッ化リチウム(LiF)を1nmの膜厚で蒸着し、電
子注入層を形成した。

0172

最後に、陰極として機能する第2の電極として、アルミニウムを200nmの膜厚となる
ように蒸着することで、本実施例の発光素子1を作製した。

0173

(比較発光素子2)
比較発光素子2の発光層は、2mDBTPDBq−II及び[Ir(mppr−Me)2
(dpm)]を共蒸着することで形成した。ここで、2mDBTPDBq−II及び[I
r(mppr−Me)2(dpm)]の重量比は、1:0.05(=2mDBTPDBq
−II:[Ir(mppr−Me)2(dpm)])となるように調節した。また、発光
層の膜厚は40nmとした。発光層以外は、発光素子1と同様に作製した。

0174

なお、上述した蒸着過程において、蒸着は全て抵抗加熱法を用いた。

0175

以上により得られた発光素子1及び比較発光素子2の素子構造を表1に示す。本実施例に
おいては、2mDBTPDBq−IIがn型ホスト、PCBNBBがp型ホスト、[Ir
(mppr−Me)2(dpm)]がゲストである。すなわち、発光素子1では、n型ホ
ストとp型ホストが共に発光層内にあるのに対し、比較発光素子2では、p型ホストが発
光層に存在しない。

0176

0177

これらの発光素子を、窒素雰囲気グローブボックス内において、発光素子が大気に曝さ
れないように封止する作業をおこなった後、発光素子の動作特性について測定をおこなっ
た。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)でおこなった。

0178

発光素子1及び比較発光素子2の電流密度−輝度特性を図4に示す。図4において、横軸
は電流密度(mA/cm2)を、縦軸は輝度(cd/m2)を表す。また、電圧−輝度特
性を図5に示す。図5において、横軸は電圧(V)を、縦軸は輝度(cd/m2)を表す
。また、輝度−電流効率特性を図6に示す。図6において、横軸は輝度(cd/m2)を
、縦軸は電流効率(cd/A)を表す。また、輝度−外部量子効率特性を図7に示す。図
7において、横軸は、輝度(cd/m2)を、縦軸は外部量子効率(%)を示す。

0179

また、発光素子1及び比較発光素子2における輝度1000cd/m2付近のときの電圧
(V)、電流密度(mA/cm2)、CIE色度座標(x、y)、電流効率(cd/A)
パワー効率(lm/W)、外部量子効率(%)を表2に示す。

0180

0181

また、発光素子1及び比較発光素子2に0.1mAの電流を流した際の発光スペクトルを
図8に示す。図8において、横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度任意単位)を表す
。また、表2に示す通り、1200cd/m2の輝度の時の発光素子1のCIE色度座標
は(x,y)=(0.56,0.44)であり、960cd/m2の輝度の時の比較発光
素子2のCIE色度座標は(x,y)=(0.55,0.44)であった。この結果から
、発光素子1及び比較発光素子2は、[Ir(mppr−Me)2(dpm)]に由来す
橙色発光が得られたことがわかった。

0182

表2及び図4乃至図7からわかるように、発光素子1は、比較発光素子2に比べて、電流
効率、パワー効率、外部量子効率がそれぞれ高い値を示した。一般に、発光体からの光を
外部に取り出すに際しては、基板その他と大気との間で全反射がおこり、内部量子効率の
25%乃至30%しか外部に光を取り出せないとされている。

0183

このことを考慮すると、比較発光素子2ではせいぜい、内部量子効率は60%弱であると
推定されるが、発光素子1は内部量子効率が80%程度にまで高まっていると推定できる
。以上の結果から、本発明の一態様を適用することで、外部量子効率の高い素子を実現で
きることが示された。

0184

次に、発光素子1及び比較発光素子2の信頼性試験をおこなった。信頼性試験の結果を図
9に示す。図9において、縦軸は初期輝度を100%とした時の規格化輝度(%)を示し
、横軸は素子の駆動時間(h)を示す。信頼性試験は、初期輝度を5000cd/m2に
設定し、電流密度一定の条件で発光素子1を駆動した。

0185

比較発光素子2は、120時間後の輝度が、初期輝度の58%であった。また、発光素子
1は、630時間後の輝度が、初期輝度の65%であった。この結果から、発光素子1は
、比較発光素子2に比べて、寿命の長い素子であることがわかった。以上の結果から、本
発明の一態様を適用することで、信頼性の高い素子を実現できることが示された。

0186

本実施例では、本発明の一態様の発光素子について説明する。本実施例で用いた材料の化
学式を以下に示す。なお、先の実施例で用いた材料の化学式は省略する。

0187

0188

以下に、本実施例の発光素子3の作製方法を示す。

0189

(発光素子3)
まず、ガラス基板上に、ITSOをスパッタリング法にて成膜し、陽極として機能する第
1の電極を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとし
た。

0190

次に、基板上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200
℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒おこなった。

0191

その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着
装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成をおこなった後、基板を30分
程度放冷した。

0192

次に、第1の電極が形成された面が下方となるように、第1の電極が形成された基板を真
蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減圧した後、第
1の電極上に、BPAFLPと酸化モリブデン(VI)を共蒸着することで、正孔注入層
を形成した。その膜厚は、40nmとし、BPAFLPと酸化モリブデンの比率は、重量
比で4:2(=BPAFLP:酸化モリブデン)となるように調節した。

0193

次に、正孔注入層上に、BPAFLPを20nmの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層
を形成した。

0194

さらに、2mDBTPDBq−II、PCBNBB、及び[Ir(dppm)2(aca
c)]を共蒸着し、正孔輸送層上に発光層を形成した。ここで、2mDBTPDBq−I
I、PCBNBB及び[Ir(dppm)2(acac)]の重量比は、0.8:0.2
:0.05(=2mDBTPDBq−II:PCBNBB:[Ir(dppm)2(ac
ac)])となるように調節した。また、発光層の膜厚は40nmとした。

0195

次に、発光層上に2mDBTPDBq−IIを膜厚10nmとなるよう成膜し、第1の電
子輸送層を形成した。

0196

次に、第1の電子輸送層上に、BPhenを膜厚20nmとなるように成膜し、第2の電
子輸送層を形成した。

0197

さらに、第2の電子輸送層上に、LiFを1nmの膜厚で蒸着し、電子注入層を形成した

0198

最後に、陰極として機能する第2の電極として、アルミニウムを200nmの膜厚となる
ように蒸着することで、本実施例の発光素子3を作製した。

0199

なお、上述した蒸着過程において、蒸着は全て抵抗加熱法を用いた。

0200

以上により得られた発光素子3の素子構造を表3に示す。

0201

0202

発光素子3を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されない
ように封止する作業をおこなった後、発光素子の動作特性について測定をおこなった。な
お、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)でおこなった。

0203

発光素子3の電流密度−輝度特性を図10に示す。図10において、横軸は電流密度(m
A/cm2)を、縦軸は輝度(cd/m2)を表す。また、電圧−輝度特性を図11に示
す。図11において、横軸は電圧(V)を、縦軸は輝度(cd/m2)を表す。また、輝
度−電流効率特性を図12に示す。図12において、横軸は輝度(cd/m2)を、縦軸
は電流効率(cd/A)を表す。また、輝度−外部量子効率特性を図13に示す。図13
において、横軸は、輝度(cd/m2)を、縦軸は外部量子効率(%)を示す。

0204

また、発光素子3における輝度1100cd/m2のときの電圧(V)、電流密度(mA
/cm2)、CIE色度座標(x、y)、電流効率(cd/A)、パワー効率(lm/W
)、外部量子効率(%)を表4に示す。

0205

0206

また、発光素子3に0.1mAの電流を流した際の発光スペクトルを、図14に示す。図
14において、横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。また、表4に
示す通り、1100cd/m2の輝度の時の発光素子3のCIE色度座標は(x,y)=
(0.54,0.46)であった。この結果から、発光素子3は、[Ir(dppm)2
(acac)]に由来する橙色発光が得られたことがわかった。

0207

表4及び図10乃至図13からわかるように、発光素子3は、電流効率、パワー効率、外
部量子効率がそれぞれ高い値を示した。特に、1100cd/m2の輝度の時の外部量子
効率が28%と極めて高い値を示した。これは内部量子効率に換算すると、90%以上と
なる。以上の結果から、本発明の一態様を適用することで、外部量子効率の高い素子を実
現できることが示された。

0208

次に、発光素子3の信頼性試験をおこなった。信頼性試験の結果を図15に示す。図15
において、縦軸は初期輝度を100%とした時の規格化輝度(%)を示し、横軸は素子の
駆動時間(h)を示す。

0209

信頼性試験は、初期輝度を5000cd/m2に設定し、電流密度一定の条件で発光素子
3を駆動した。320時間後の輝度について、発光素子3は、初期輝度の92%を保って
いた。以上の結果から、本発明の一態様を適用することで、信頼性の高い素子を実現でき
ることが示された。

0210

有機材料のT1準位は、その有機材料の薄膜や溶液の光学測定によって決定することもで
きるが、分子軌道計算によっても得られる。例えば、未知の材料のT1準位を見積もるに
は分子軌道計算が使用できる。本実施例では、ゲストとして用いられるIr(dppm)
2acac、Ir(mppr−Me)2dpm、N型ホストとして用いられる2mDBT
PDBqII、およびP型ホストとして用いられるPCBNBBのT1準位をそれぞれ算
出した。

0211

計算方法は以下の通りである。最初に、それぞれの分子の一重項基底状態(S0)と三重
項励起状態(T1)における最安定構造を、密度汎関数法DFT)を用いて計算した。
さらに、S0とT1の最安定構造において振動解析をおこない、零点補正したエネルギー
を求めた。S0とT1の零点補正したエネルギーの差から、T1準位を算出した。

0212

N型ホスト分子およびP型ホスト分子の計算では、全ての原子基底関数として、6−3
11G(それぞれの原子価軌道に三つの短縮関数を用いたtriple split v
alence基底系の基底関数)を用いた。上述の基底関数により、例えば、H原子であ
れば、1s〜3sの軌道が考慮され、また、C原子であれば、1s〜4s、2p〜4pの
軌道が考慮されることになる。さらに、計算精度向上のため、分極基底系として、H原子
にはp関数を、H原子以外にはd関数を加えた。汎関数にはB3LYPを用いて、交換と
相関エネルギーに係る各パラメータの重みを規定した。

0213

ゲスト分子の計算では、Ir原子の基底関数にはLanL2DZを用いた。Ir原子以外
の基底関数には6−311Gを用いた。さらに、計算精度向上のため、分極基底系として
、H原子にはp関数を、H原子以外にはd関数を加えた。汎関数にはB3PW91を用い
て、交換と相関エネルギーに係る各パラメータの重みを規定した。

0214

なお、量子化学計算プログラムとしては、Gaussian09を使用した。計算は、ハ
パフォーマンスコンピュータ(SGI社製、Altix4700)を用いておこなった

0215

計算によって得られたT1準位は、Ir(dppm)2acacは2.13電子ボルト、
Ir(mppr−Me)2dpmは2.13電子ボルト、2mDBTPDBqIIは2.
42電子ボルト、PCBNBBは2.31電子ボルトであった。これらの値は、光学測定
で得られたものに近いものであった。

0216

以上の結果より、N型ホストとして用いられる2mDBTPDBqII、およびP型ホス
トとして用いられるPCBNBBのT1準位は、ゲストとして用いられるIr(dppm
)2acac、Ir(mppr−Me)2dpmのT1準位よりも0.15eV以上高い
ことが分かった。そのため、ゲスト分子の三重項励起状態からN型ホスト分子またはP型
ホスト分子の三重項励起状態への遷移を十分に防止することができ、外部量子効率が高い
発光素子を得ることができることが示唆された。

実施例

0217

このように光学測定で得られるT1準位と分子軌道計算によって得られるT1準位は非常
に近いものである。したがって、新しい有機化合物を合成せずとも、分子軌道計算をおこ
ない、その有機化合物のT1準位を評価し、その有機化合物が発光効率を高める上で有用
か否かを判定できる。

0218

101基板
102発光層
103 第1の電極
104 第2の電極
105 第1のキャリアの注入層
106 第1のキャリアの輸送層
107 第2のキャリアの注入層
108 第2のキャリアの輸送層
110EL層
110a EL層
110b EL層
111電荷発生層
201陽極
202正孔注入層
203正孔輸送層
204 発光層
205電子輸送層
206電子注入バッファー層
207電子リレー層
208複合材料層
209陰極
210 EL層

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