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技術 微結晶合金中間製造物の製造方法及び微結晶合金中間製造物

出願人 信越化学工業株式会社
発明者 中村元
出願日 2016年10月31日 (4年0ヶ月経過) 出願番号 2016-212784
公開日 2017年3月30日 (3年7ヶ月経過) 公開番号 2017-063206
状態 特許登録済
技術分野 コア、コイル、磁石の製造 粉末冶金 硬質磁性材料 金属質粉又はその懸濁液の製造
主要キーワード アルゴンガスフロー 等温処理 大結晶粒子 中間製造物 多結晶粉末 焼結ブロック 高圧窒素ガス 高圧窒素
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重要な関連分野

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図面 (8)

課題

TbやDyの使用量が少なく、耐熱性の高い希土類焼結磁石の製造に用いられる微結晶合金中間製造物の製造方法を提供する

解決手段

R1aTbMcAd組成(R1はSc及びYを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の組合せであって、Nd及び/又はPrを必須元素として含み、TはFe又はFe及びCoであり、MはAlとCuを必須元素として含む2種以上の所定元素の組合せであって、AはB又はB及びCであり、a〜dは合金原子%を示し、12.5≦a≦18、0.2≦c≦10、5≦d≦10、bはその残部である)からなるストリップキャスト合金鋳造し、該ストリップキャスト合金についてHDDR処理を行い、1000℃以下の拡散処理を行って、平均結晶粒径0.1〜1μmのNd2Fe14B型結晶相からなる微細結晶粒と、該微細結晶粒を平均幅2〜10nmで取り囲むR1リッチ粒界相とから構成される微結晶合金からなる中間製造物を得る。

概要

背景

Nd−Fe−B系焼結磁石は、ハードディスクドライブからエアコン産業用モータハイブリッド自動車電気自動車発電機・駆動モータ等へとその応用範囲を拡大し続けている。今後の発展が期待される用途であるエアコンのコンプレッサモータ車載用途では磁石高温に曝されるために、高温における特性の安定性、即ち耐熱性が要求され、DyやTbの添加が必須である一方、昨今の資源問題の観点からは如何にしてDyを低減させるかが重要な課題となっている。今後、更なる応用の拡大が見込まれる本組成系磁石に含まれるDyやTbの量はゼロ、あるいは極力低いことが望ましい。

本組成系磁石では主成分で磁性を担うNd2Fe14B結晶粒の界面に逆磁区と呼ばれる逆向きに磁化された小さな領域が生成し、それが成長することで磁化反転すると考えられている。理論的には最大の保磁力はNd2Fe14B化合物の異方性磁場(6.4MA/m)と等しくなるが、結晶粒界近傍における結晶構造乱れに起因した異方性磁場の低下や組織形態などに起因した漏洩磁場の影響などにより、実際に得られる保磁力は異方性磁場の15%程度(1MA/m)に留まる。これは低い値ではあるが、この保磁力を出現させるためには結晶粒を取り囲むNdに富む相(Ndリッチ相ともいう)の存在は必須である。そのため、焼結磁石を作製する場合はNd2Fe14B化合物の化学量論組成におけるNd量(11.76原子%)よりも過剰な希土類元素を含む合金組成が用いられる。過剰に含有された希土類元素の一部は製造工程時に混入する酸素などの不純物元素ゲッターとして働くが、ほとんどが上記のNdに富む相として主相結晶粒子を取り囲み、保磁力を発現させることに寄与する。更に、Ndに富む相は焼結温度では液相となっており、本組成系磁石は液相焼結により緻密化が進行する。これは低温焼結でき、粒界異相が存在することで主相の結晶粒が成長することを効果的に抑制する作用があると考えられている。

また、上記組成の結晶形態を維持しながら磁石の主相であるNd2Fe14B粒子を小さくすると保磁力が増大することが経験的に知られている。焼結磁石の作製工程のうち、微粉砕工程において、通常は平均粒子径3〜5μm程度の粉末粉砕されるが、これを1〜2μmまで微細にした結果、焼結体の結晶粒も微細になり、保磁力が1.6MA/m程度まで増大することが報告されている(非特許文献1)。

実際に、焼結磁石以外の液体急冷法やHDDR(Hydrogenation Disproportionation Desorption Recombination)法により作製されたNd−Fe−B系磁石粉末は、粒径1μm以下の微細な結晶粒から構成され、DyやTbを含有しない組成で比較した場合、焼結磁石よりも高い保磁力を示すものもあり、これらの事実からも結晶粒微細化により保磁力が増大することがわかる。

焼結磁石においてそのような微細結晶を得る方法としては、非特許文献1に示されたように微粉砕時に粉末粒径を小さくすることしか見出されていないが、Nd−Fe−B系合金はNdが非常に活性なことに起因して微粉とすると容易に酸化するだけでなく、発火する危険もある。そのため、平均粒子径が3〜5μm以下となるような条件で操業する場合、微粉砕工程から焼結炉投入するまでに酸素に触れないように雰囲気不活性ガスで満たす、あるいは微粉とオイルを混合するなどして、粉末が大気に触れないような工夫がなされている。しかしながら、微粉砕粒子径は実質的には1μm程度が限界であり、これ以上に微細な結晶粒を得るための指針は見出されていない。

一方、前述のHDDR法は、Nd−Fe−B鋳造合金水素雰囲気中の700〜800℃の加熱と、引き続く真空中熱処理によって、鋳造合金では粒径数百μm程度であった結晶粒を0.2〜1μmの微細結晶粒集合体へと組織変化させることで保磁力を得る手法である。HDDR法において、水素雰囲気中で主相のNd2Fe14B化合物は水素不均化反応を起こし、NdH2、Fe、Fe2Bの3相に分解し、引き続く真空中熱処理により水素を放出させると共に、もとのNd2Fe14B化合物に再結合させて、その際に結晶粒径1μm以下の微細粒子とすることができる。また、このHDDR法では組成や処理条件により、微細な結晶粒の結晶方位がもとの粗大結晶粒子の結晶方位とほぼ同じ状態で微細化が出来るので、磁力の高い異方性粉末とすることが可能である。しかしながら、通常は微細結晶粒の間にはある幅以上(例えば2nm以上)の異相(異なる組成の化合物相)は存在しないため、例えば再結合させる熱処理温度が僅かでも高いと容易に粒成長を起こし、結果的に高い保磁力が得られない。また、HDDR粉末樹脂と混合してボンド磁石とするのが通常であるが、焼結磁石と同様な高い磁力を得るために、フルデンス化する試みもなされている。ほとんどの研究においてHDDR処理温度とほぼ同じ温度で熱をかけながら圧縮するホットプレスが適用されている(特開2012−49492号公報(特許文献1))。しかし、この方法では生産性極端に悪いために工業化には至っていない。

また、通電焼結による短時間焼結やHDDR粉末を一旦回転鍛造機に投入して緻密化させたものを焼結する試みがなされている(非特許文献2)。彼等の結果によれば通電焼結では焼結体の密度ムラが生じ、鍛造後の焼結では顕著な粒成長が起こっている。従って、HDDR粉末に対して焼結によるフルデンス化は困難であると考えられてきた。

概要

TbやDyの使用量が少なく、耐熱性の高い希土類焼結磁石の製造に用いられる微結晶合金中間製造物の製造方法を提供するR1aTbMcAd組成(R1はSc及びYを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の組合せであって、Nd及び/又はPrを必須元素として含み、TはFe又はFe及びCoであり、MはAlとCuを必須元素として含む2種以上の所定元素の組合せであって、AはB又はB及びCであり、a〜dは合金の原子%を示し、12.5≦a≦18、0.2≦c≦10、5≦d≦10、bはその残部である)からなるストリップキャスト合金鋳造し、該ストリップキャスト合金についてHDDR処理を行い、1000℃以下の拡散処理を行って、平均結晶粒径0.1〜1μmのNd2Fe14B型結晶相からなる微細結晶粒と、該微細結晶粒を平均幅2〜10nmで取り囲むR1リッチ粒界相とから構成される微結晶合金からなる中間製造物を得る。

目的

本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、資源的に希少なTbやDyの使用量の少ない、あるいはそれらを含まない耐熱性の高いR−Fe−B系(RはSc及びYを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の組合せであって、Nd及び/又はPrを必須元素として含む)の希土類焼結磁石の製造に用いられる微結晶合金中間製造物の製造方法、及び該製造方法により製造される微結晶合金中間製造物を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

Nd2Fe14B型結晶相を主相とするR−Fe−B系希土類焼結磁石(RはSc及びYを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の組合せであって、Nd及び/又はPrを必須元素として含む)の製造に用いられる微結晶合金中間製造物の製造方法であって、(a)ストリップキャスト法により、R1aTbMcAd組成(R1はSc及びYを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の組合せであって、Nd及び/又はPrを必須元素として含み、TはFe又はFe及びCoであり、MはAl,Cu,Zn,In,P,S,Ti,Si,V,Cr,Mn,Ni,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,Pd,Ag,Cd,Sn,Sb,Hf,Ta,Wの中から選ばれる2種以上の組合せであって、AlとCuを必須元素として含み、AはB(ホウ素)又はB及びC(炭素)であり、a〜dは合金原子%を示し、12.5≦a≦18、0.2≦c≦10、5≦d≦10、bはその残部である)であって、Nd2Fe14B型結晶相からなる結晶粒と、R1リッチ相からなる析出粒子とが、該析出粒子間の平均距離が20μm以下となる分散状態析出したストリップキャスト合金鋳造する工程、(b)上記ストリップキャスト合金を水素雰囲気中で700〜1000℃に加熱して、Nd2Fe14B型結晶相をR1の水素化物、Fe、Fe2Bに分解させる不均化反応を起こし、次に水素分圧減圧下で700〜1000℃に加熱してNd2Fe14B型結晶相に再結合させて、平均結晶粒径0.1〜1μmの微細結晶粒を形成するHDDR処理工程、(c)HDDR処理後に、真空中又は不活性ガス雰囲気中で加熱温度600〜1000℃、加熱時間1〜50時間の拡散処理を行う工程を有し、平均結晶粒径0.1〜1μmのNd2Fe14B型結晶相からなる微細結晶粒と、該微細結晶粒を平均幅2〜10nmで取り囲むR1リッチ粒界相とから構成される微結晶合金からなる中間製造物を得ることを特徴とする微結晶合金中間製造物の製造方法。

請求項2

上記微結晶合金中間製造物の組成におけるR1は、全R1に対してNd及び/又はPrを80原子%以上含有することを特徴とする請求項1記載の微結晶合金中間製造物の製造方法。

請求項3

上記微結晶合金中間製造物の組成におけるTは、全Tに対してFeを85原子%以上含有することを特徴とする請求項1又は2記載の微結晶合金中間製造物の製造方法。

請求項4

Nd2Fe14B型結晶相を主相とするR−Fe−B系希土類焼結磁石(RはSc及びYを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の組合せであって、Nd及び/又はPrを必須元素として含む)の製造に用いられる中間製造物であって、平均結晶粒径0.1〜1μmのNd2Fe14B型結晶相からなる微細結晶粒と、該微細結晶粒を平均幅2〜10nmで取り囲むR1リッチ粒界相とから構成される微結晶合金からなる微結晶合金中間製造物。

技術分野

0001

本発明は、高価なTbやDyの使用量を低減させた高性能希土類焼結磁石の製造に用いられる微結晶合金中間製造物の製造方法及び微結晶合金中間製造物に関する。

背景技術

0002

Nd−Fe−B系焼結磁石は、ハードディスクドライブからエアコン産業用モータハイブリッド自動車電気自動車発電機・駆動モータ等へとその応用範囲を拡大し続けている。今後の発展が期待される用途であるエアコンのコンプレッサモータ車載用途では磁石高温に曝されるために、高温における特性の安定性、即ち耐熱性が要求され、DyやTbの添加が必須である一方、昨今の資源問題の観点からは如何にしてDyを低減させるかが重要な課題となっている。今後、更なる応用の拡大が見込まれる本組成系磁石に含まれるDyやTbの量はゼロ、あるいは極力低いことが望ましい。

0003

本組成系磁石では主成分で磁性を担うNd2Fe14B結晶粒の界面に逆磁区と呼ばれる逆向きに磁化された小さな領域が生成し、それが成長することで磁化反転すると考えられている。理論的には最大の保磁力はNd2Fe14B化合物の異方性磁場(6.4MA/m)と等しくなるが、結晶粒界近傍における結晶構造乱れに起因した異方性磁場の低下や組織形態などに起因した漏洩磁場の影響などにより、実際に得られる保磁力は異方性磁場の15%程度(1MA/m)に留まる。これは低い値ではあるが、この保磁力を出現させるためには結晶粒を取り囲むNdに富む相(Ndリッチ相ともいう)の存在は必須である。そのため、焼結磁石を作製する場合はNd2Fe14B化合物の化学量論組成におけるNd量(11.76原子%)よりも過剰な希土類元素を含む合金組成が用いられる。過剰に含有された希土類元素の一部は製造工程時に混入する酸素などの不純物元素ゲッターとして働くが、ほとんどが上記のNdに富む相として主相結晶粒子を取り囲み、保磁力を発現させることに寄与する。更に、Ndに富む相は焼結温度では液相となっており、本組成系磁石は液相焼結により緻密化が進行する。これは低温焼結でき、粒界異相が存在することで主相の結晶粒が成長することを効果的に抑制する作用があると考えられている。

0004

また、上記組成の結晶形態を維持しながら磁石の主相であるNd2Fe14B粒子を小さくすると保磁力が増大することが経験的に知られている。焼結磁石の作製工程のうち、微粉砕工程において、通常は平均粒子径3〜5μm程度の粉末粉砕されるが、これを1〜2μmまで微細にした結果、焼結体の結晶粒も微細になり、保磁力が1.6MA/m程度まで増大することが報告されている(非特許文献1)。

0005

実際に、焼結磁石以外の液体急冷法やHDDR(Hydrogenation Disproportionation Desorption Recombination)法により作製されたNd−Fe−B系磁石粉末は、粒径1μm以下の微細な結晶粒から構成され、DyやTbを含有しない組成で比較した場合、焼結磁石よりも高い保磁力を示すものもあり、これらの事実からも結晶粒微細化により保磁力が増大することがわかる。

0006

焼結磁石においてそのような微細結晶を得る方法としては、非特許文献1に示されたように微粉砕時に粉末粒径を小さくすることしか見出されていないが、Nd−Fe−B系合金はNdが非常に活性なことに起因して微粉とすると容易に酸化するだけでなく、発火する危険もある。そのため、平均粒子径が3〜5μm以下となるような条件で操業する場合、微粉砕工程から焼結炉投入するまでに酸素に触れないように雰囲気不活性ガスで満たす、あるいは微粉とオイルを混合するなどして、粉末が大気に触れないような工夫がなされている。しかしながら、微粉砕粒子径は実質的には1μm程度が限界であり、これ以上に微細な結晶粒を得るための指針は見出されていない。

0007

一方、前述のHDDR法は、Nd−Fe−B鋳造合金水素雰囲気中の700〜800℃の加熱と、引き続く真空中熱処理によって、鋳造合金では粒径数百μm程度であった結晶粒を0.2〜1μmの微細結晶粒集合体へと組織変化させることで保磁力を得る手法である。HDDR法において、水素雰囲気中で主相のNd2Fe14B化合物は水素不均化反応を起こし、NdH2、Fe、Fe2Bの3相に分解し、引き続く真空中熱処理により水素を放出させると共に、もとのNd2Fe14B化合物に再結合させて、その際に結晶粒径1μm以下の微細粒子とすることができる。また、このHDDR法では組成や処理条件により、微細な結晶粒の結晶方位がもとの粗大結晶粒子の結晶方位とほぼ同じ状態で微細化が出来るので、磁力の高い異方性粉末とすることが可能である。しかしながら、通常は微細結晶粒の間にはある幅以上(例えば2nm以上)の異相(異なる組成の化合物相)は存在しないため、例えば再結合させる熱処理温度が僅かでも高いと容易に粒成長を起こし、結果的に高い保磁力が得られない。また、HDDR粉末樹脂と混合してボンド磁石とするのが通常であるが、焼結磁石と同様な高い磁力を得るために、フルデンス化する試みもなされている。ほとんどの研究においてHDDR処理温度とほぼ同じ温度で熱をかけながら圧縮するホットプレスが適用されている(特開2012−49492号公報(特許文献1))。しかし、この方法では生産性極端に悪いために工業化には至っていない。

0008

また、通電焼結による短時間焼結やHDDR粉末を一旦回転鍛造機に投入して緻密化させたものを焼結する試みがなされている(非特許文献2)。彼等の結果によれば通電焼結では焼結体の密度ムラが生じ、鍛造後の焼結では顕著な粒成長が起こっている。従って、HDDR粉末に対して焼結によるフルデンス化は困難であると考えられてきた。

0009

特開2012−49492号公報

先行技術

0010

宇根康裕、佐川眞人、“結晶粒微細化によるNd-Fe-B焼結磁石の高保磁力化”、日本金属学会誌第76巻 第1号 pp.12−16(2012)
A. F. Wilson, A. J. Williams, C. A. F. Manwarning, G. Keegan, and I. R. Harris,“The Rapid Heat Treatment Of HDDR Compacts”, The proceedings of 13th Int. Workshop on RE Magnets & Their Applications, pp. 563-572 (1994)
Y. Xiao, J. Liu, B. Qiu, and M. Lis,“The study of Phase Transformation During HDDR Process in Nd14Fe73Co6B7”, The proceedings of 12th Int. Workshop on RE Magnets & Their Applications, pp. 258-265 (1992)
C. Burkhardt, M. Steinhorst, and I. R. Harris,“Optimisation of the HDDR processing temperature for co-reduced Nd-Fe-B powder with Zr additions”, The proceedings of 13th Int. Workshop on RE Magnets & Their Applications, pp. 473-481 (1994)
O. Gutfleisch, N. Martinez, and I. R. Harris,“Electron Microscopy Characterisation of a Solid-HDDR Processed Nd16Fe76B8 Alloy”, The proceedings of 8th Int. Symposium on Magnetic Anisotropy and Coercivity in Rare Earth-Transition Metal Alloys, pp. 243-252 (1994)

発明が解決しようとする課題

0011

本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、資源的に希少なTbやDyの使用量の少ない、あるいはそれらを含まない耐熱性の高いR−Fe−B系(RはSc及びYを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の組合せであって、Nd及び/又はPrを必須元素として含む)の希土類焼結磁石の製造に用いられる微結晶合金中間製造物の製造方法、及び該製造方法により製造される微結晶合金中間製造物を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0012

ところで、非特許文献3によれば、化学量論組成よりもNdの過剰な組成の鋳造合金にHDDR処理を施した場合、鋳造合金中に疎らに散在しているNdに富む相の近辺において部分的ではあるがNdに富む相の成分が粒界拡散を起こしてNd2Fe14Bの微細結晶粒を取り囲んでおり、焼結磁石における粒界相の形態に近くなっていることが報告されている。同様な組織形態は非特許文献4、5においても報告されている。
Nd−Fe−B系合金において、鋳造組織鋳造時の冷却速度にもよるが、結晶粒径が50〜数百μmに及ぶNd2Fe14Bの粗大粒の間に少量のNdに富む相が存在する組織形態をとっている。従って、HDDR処理後にNdに富む相が粒界に沿ってNd2Fe14B粒子を取り囲む形態をとるのは鋳造合金に疎らに散在したNdに富む相の周囲だけである。また、鋳造組織には初晶のα−Feが残存することがあり、これが磁気特性劣化させる原因となるので800〜1000℃で均質化処理を施してα−Feを消失させる。この場合、Nd2Fe14B相、Ndに富む相ともに粒成長するため、Ndに富む相の偏析が著しくなる。
一方、焼結磁石の高性能化として合金ストリップキャスト法で作製する方法が用いられている。ストリップキャスト法では、回転銅ロール上に溶湯流し込んで急冷させ、0.1〜0.5mm程度の薄板状のインゴットを作製する。合金は非常に脆いので実際にはフレーク状の合金が得られる。この方法で得られた合金は通常の鋳造合金と比較して非常に細かい組織が得られており、Ndに富む相も細かに分散している。これは焼結磁石工程における液相の分散性を良くするので磁石の高特性化に繋がるものである。

0013

本発明者は、Nd2Fe14Bの化学量論組成よりもNdの過剰な組成のストリップキャスト合金に対してHDDR処理を施して異方性多結晶粉末とし、更にHDDR処理温度と同程度の温度で保持することで微細に分散したNdに富む相からその成分がNd2Fe14B結晶粒の周囲に均一に粒界拡散することを見出すと共に、これを微粉砕、磁場中成形して焼結すると、主相結晶粒がNdに富む相に囲まれているために顕著な粒成長が阻害され、微細な結晶からなる高保磁力の焼結磁石の作製が可能であることを知見し、本発明を完成したものである。

0014

従って本発明は、下記の微結晶合金中間製造物の製造方法及び微結晶合金中間製造物を提供する。
〔1〕 Nd2Fe14B型結晶相を主相とするR−Fe−B系希土類焼結磁石(RはSc及びYを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の組合せであって、Nd及び/又はPrを必須元素として含む)の製造に用いられる微結晶合金中間製造物の製造方法であって、
(a)ストリップキャスト法により、R1aTbMcAd組成(R1はSc及びYを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の組合せであって、Nd及び/又はPrを必須元素として含み、TはFe又はFe及びCoであり、MはAl,Cu,Zn,In,P,S,Ti,Si,V,Cr,Mn,Ni,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,Pd,Ag,Cd,Sn,Sb,Hf,Ta,Wの中から選ばれる2種以上の組合せであって、AlとCuを必須元素として含み、AはB(ホウ素)又はB及びC(炭素)であり、a〜dは合金の原子%を示し、12.5≦a≦18、0.2≦c≦10、5≦d≦10、bはその残部である)であって、Nd2Fe14B型結晶相からなる結晶粒と、R1リッチ相からなる析出粒子とが、該析出粒子間の平均距離が20μm以下となる分散状態析出したストリップキャスト合金を鋳造する工程、
(b)上記ストリップキャスト合金を水素雰囲気中で700〜1000℃に加熱して、Nd2Fe14B型結晶相をR1の水素化物、Fe、Fe2Bに分解させる不均化反応を起こし、次に水素分圧減圧下で700〜1000℃に加熱してNd2Fe14B型結晶相に再結合させて、平均結晶粒径0.1〜1μmの微細結晶粒を形成するHDDR処理工程、
(c)HDDR処理後に、真空中又は不活性ガス雰囲気中で加熱温度600〜1000℃、加熱時間1〜50時間の拡散処理を行う工程
を有し、平均結晶粒径0.1〜1μmのNd2Fe14B型結晶相からなる微細結晶粒と、該微細結晶粒を平均幅2〜10nmで取り囲むR1リッチ粒界相とから構成される微結晶合金からなる中間製造物を得ることを特徴とする微結晶合金中間製造物の製造方法。
〔2〕 上記微結晶合金中間製造物の組成におけるR1は、全R1に対してNd及び/又はPrを80原子%以上含有することを特徴とする〔1〕記載の微結晶合金中間製造物の製造方法。
〔3〕 上記微結晶合金中間製造物の組成におけるTは、全Tに対してFeを85原子%以上含有することを特徴とする〔1〕又は〔2〕記載の微結晶合金中間製造物の製造方法。
〔4〕 Nd2Fe14B型結晶相を主相とするR−Fe−B系希土類焼結磁石(RはSc及びYを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の組合せであって、Nd及び/又はPrを必須元素として含む)の製造に用いられる中間製造物であって、平均結晶粒径0.1〜1μmのNd2Fe14B型結晶相からなる微細結晶粒と、該微細結晶粒を平均幅2〜10nmで取り囲むR1リッチ粒界相とから構成される微結晶合金からなる微結晶合金中間製造物。

発明の効果

0015

本発明によれば、高性能で、かつTbあるいはDyを使用しない、もしくはTb及びDyの使用量の少ないR−Fe−B系希土類焼結磁石(Rは上記と同じである)を提供することができる。

図面の簡単な説明

0016

本発明に係る希土類焼結磁石の製造方法の第1の実施形態における製造工程図である。
本発明におけるストリップキャスト合金の結晶組織を示す模式図である。
本発明における拡散処理後の合金の結晶組織を示す模式図である。
本発明に係る希土類焼結磁石の製造方法の第2の実施形態における製造工程図である。
実施例1及び実施例3のHDDR処理及び拡散処理の熱処理パターン図である。
実施例2及び比較例2のHDDR処理及び拡散処理の熱処理パターン図である。
比較例3のHDDR処理の熱処理パターン図である。

0017

以下に、本発明に係る希土類焼結磁石の製造方法について説明する。
本発明は、Nd2Fe14B型結晶相を主相とするR−Fe−B系希土類焼結磁石(RはSc及びYを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の組合せであって、Nd及び/又はPrを必須元素として含む。以下、同じ。)の製造方法であって、R2Fe14B化合物の化学量論組成に対してR量を過剰とした組成のストリップキャスト合金(以降、母合金と称する)をHDDR処理し、更に拡散熱処理することにより、平均結晶粒径0.1〜1μmのR2Fe14B主相からなる微細結晶粒を取り囲むようにRに富む粒界相(Rリッチ粒界相)を存在させたもの(微結晶合金)に対して、粗粉砕、微粉砕、成形、焼結の処理を施すことにより、平均結晶粒径0.2〜2μmのR−Fe−B系焼結磁石体を得るものである。ここでは、2つの実施形態について説明する。

0018

図1は、本発明に係る希土類焼結磁石の製造方法の第1の実施形態における製造工程図である。
図1に示すように、本発明に係る希土類焼結磁石の製造方法は、(a)ストリップキャスト、(b)HDDR処理、(c)拡散処理を行って、微結晶合金粉を作製する(A)工程と、微結晶合金粉を粉砕して微粉末を得る(B)工程と、微粉末を磁場中で圧縮成形する(C)工程と、圧縮成形体を焼結する(D)工程とを有する。
以下、各工程の詳細について説明する。

0019

[(A)微結晶合金作製工程]
(A)工程は、R1aTbMcAd組成(R1はSc及びYを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の組合せであって、Nd及び/又はPrを必須元素として含み、TはFe又はFe及びCoであり、MはAl,Cu,Zn,In,P,S,Ti,Si,V,Cr,Mn,Ni,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,Pd,Ag,Cd,Sn,Sb,Hf,Ta,Wの中から選ばれる2種以上の組合せであって、AlとCuを必須元素として含み、AはB(ホウ素)又はB及びC(炭素)であり、a〜dは合金の原子%を示し、12.5≦a≦18、0.2≦c≦10、5≦d≦10、bはその残部である)からなるストリップキャスト合金(母合金)を鋳造し((a)工程)、該ストリップキャスト合金についてHDDR処理を行い((b)工程)、次いでHDDR処理における加熱温度以下の温度で拡散処理を行って((c)工程)、平均結晶粒径0.1〜1μmのNd2Fe14B型結晶相からなる微細結晶粒と、該微細結晶粒を平均幅2〜10nmで取り囲むR1リッチ粒界相とから構成される微結晶合金粉を作製する工程である。

0020

ここで、母合金の組成において、R1は、Sc及びYを含む希土類元素、具体的には、Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Yb及びLuの中から選ばれる1種又は2種以上の組合せであって、Nd及び/又はPrを必須元素として含むものである。これらSc及びYを含む希土類元素は、主相となるR2Fe14B化合物の化学量論組成におけるR量(11.765原子%)よりも高いことが必須であり、具体的には合金全体の12.5〜18原子%であり、特に13〜16原子%であることが好ましい。また、R1中にNd及び/又はPrを全R1に対して80原子%以上含有することが好ましく、特に85原子%以上含有することが好適である。

0021

Tは、Fe又はFe及びCoであり、FeはT全体の85原子%以上含有することが好ましく、90原子%以上含有することがより好ましい。
また、Mは、Al,Cu,Zn,In,P,S,Ti,Si,V,Cr,Mn,Ni,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,Pd,Ag,Cd,Sn,Sb,Hf,Ta,Wの中から選ばれる2種以上の組合せであって、AlとCuを必須元素として含み、合金全体の0.2〜10原子%であり、特に0.25〜4原子%含有してもよい。
また、Aは、B(ホウ素)又はB及びC(炭素)であり、合金全体の5〜10原子%であり、特に5〜7原子%含有することが好ましい。また、B(ホウ素)はA全体の60原子%以上、特に80原子%以上含有することが好ましい。
なお、当該合金組成の残部は、N(窒素)、O(酸素)、F(フッ素)、H(水素)等の不可避的な不純物である。

0022

−(a)ストリップキャスト工程−
上記母合金は、上記合金組成に従った原料金属あるいは合金を真空中あるいは不活性ガス中、好ましくはAr雰囲気中で溶解した後、ストリップキャスト法により鋳造することで得られる。ストリップキャスト法とは、上記合金組成の溶湯を冷却銅ロールに注湯することにより急冷して、薄板状の合金を鋳造する方法である。このストリップキャスト法により得られる合金片における結晶組織としては、上述したように、R12Fe14B主相の結晶粒と共に、R2Fe14B化合物の化学量論組成よりも過剰なR1量より生成するR1に富む相の析出粒子が微細に分散した状態であり、隣接するR1に富む相の析出粒子との距離が平均的に20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることが更に好ましい。本発明におけるストリップキャスト合金の結晶組織を示す模式図を図2に示す。図中、灰色のコントラストがR2Fe14B化合物で白色のコントラストがR1に富む相の析出粒子である。

0023

なお、この析出粒子間の平均距離は、鏡面としたストリップキャスト合金の断面の反射電子像において明るいコントラストにて示されるR1に富む粒界相の析出粒子について最隣接の距離を50〜200件の複数測定し、その平均値を算出することによって得られる(実施例において同じ)。

0024

母合金においてR1に富む相の析出粒子の分散状態は、後に行われるHDDR処理後の拡散処理によるR1に富む相の拡散状態に影響を与えるため、重要である。例えば、平型ブックモールドに溶湯を鋳込む通常の溶解・鋳造形態では冷却速度が遅いために過冷度が低く、核生成が少なく、その核が粗大に成長することから、R1に富む相の析出粒子の分散形態も粗くなってしまい、R1に富む相の析出粒子間の距離は平均的に50〜200μm程度になる。R1に富む相の析出粒子間の平均距離が50μm以上では、後で行われる拡散処理においてR1に富む相が粒界拡散する範囲(距離)が限定的であることから、析出粒子間の主相結晶粒界にR1リッチ粒界相の存在しない領域(即ち、粒界相の幅が狭く、主相結晶粒同士が近接する領域)が出来てしまい、この領域で焼結工程において粒成長を起こすようになり、本発明が目的とする高性能の焼結磁石を作製することができなくなる。更に、R1量が少ないほど初晶のα−Feが残存し易くなり、磁気特性の劣化を招くが、かといってα−Feを消失させるための800〜1000℃での均質化処理を施すと、主相結晶粒やR1に富む相の析出粒子は粒成長を起こすので、上記析出粒子間の距離は300〜1000μmと非常に大きくなり、焼結時に主相結晶粒の粒成長がより進行することから、高性能の焼結磁石の作製は困難となる。一方、ストリップキャスト法によれば、隣接するR1に富む相の析出粒子間の距離を平均的に20μm以下とすることが可能であり、このようなR1に富む相の析出粒子の分散状態であれば拡散処理によって微細結晶粒を平均幅2〜10nmで取り囲むR1リッチ粒界相とすることができ、その結果、焼結時の主相結晶粒の粒成長を抑制することが可能である。なお、メルトスパン法も更に高い冷却速度を有するが、通常の冷却条件では平均粒子径100μm以下で結晶方位がランダム等方性体となるので後工程における磁場中成形において磁場配向が出来なくなり、残留磁束密度の低い磁石となるので不適当である。
従って、本発明では、ストリップキャスト法による母合金の作製が必須である。

0025

−(b)HDDR処理工程−
上記母合金に対して水素雰囲気中で不均化反応を起こさせ、引き続き水素を放出させて再結合反応を起こさせるHDDR処理により、平均結晶粒径0.1〜1μmの微細結晶とする。HDDR処理の処理パターン温度条件雰囲気条件等)は常法に従うことが出来るが、再結合により生成した微結晶等方性であると後工程の磁場中成形で磁場配向が出来なくなるので、異方性粒子となる条件を選ぶことが望ましい。その一例を以下に示す。

0026

まず、ストリップキャスト合金(母合金)を炉に投入し、室温から300℃まで加熱される間は真空あるいはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気とすることができる。この温度範囲で雰囲気に水素を含むと、R2Fe14B化合物の格子間水素原子が取り込まれて磁石体体積膨脹し、合金に不要な崩壊が起きるため、これを防ぐためには有効である。この崩壊を後工程の微粉砕の効率向上に利用したい場合には、100kPa程度の水素分圧雰囲気としても良い。

0027

次に、300℃から処理温度(700〜1000℃)までは、合金組成と昇温速度にも依存するが、100kPaよりも低い水素分圧で昇温することが好ましい。圧力の限定理由は以下の通りである。100kPaを超える水素分圧で昇温すると、昇温過程磁石組成に依存するが600〜700℃)でR2Fe14B化合物の不均化反応が開始し、昇温と共に分解組織が荒い球状に成長してしまい、引き続き行われる脱水素処理においてR2Fe14B化合物に再結合する際の異方性化を妨げることがあるからである。

0028

処理温度に達した後、磁石組成に依存するが、水素分圧を100kPa以上まで高め、10分〜10時間保持してR2Fe14B化合物に不均化反応を起こさせる。時間の限定理由としては、不均化反応が十分に進行せず、生成物であるRH2、α−Fe、Fe2Bの他に、未反応の粗大なR2Fe14B化合物が残存するので10分以上とし、また熱処理が長時間に及ぶと不可避的な酸化によって磁気特性の劣化が起きるので10時間以内とする。より好ましくは30分〜5時間である。また、この等温処理の際、水素分圧を段階的に高めることが好ましい。段階を踏まずに水素分圧を高めると反応がはげしく起こりすぎて分解組織が不均一になってしまい、引き続き行われる脱水素処理においてR2Fe14B化合物に再結合する際に結晶粒径が不均一になるために、保磁力や角形性が低下する場合があるからである。

0029

引き続いて、炉内の水素分圧を10kPa以下とすることで合金内部の水素を放出させる。真空ポンプ排気能力を落としての排気アルゴンガスフローなどで水素分圧を調整する。この時、RH2相とα−Fe相の界面にR2Fe14B相がもとの粗大R2Fe14B相と同じ結晶方位で生成するが、上述のようにある程度の水素分圧を維持しながら緩慢に反応させることが好ましい。真空ポンプの能力まで一気に減圧させると再結合反応の駆動力が大きくなりすぎて、結晶方位がランダムなR2Fe14B相の核が多量に発生し、集合組織における配向度が低下してしまう。最終的に合金内に水素が残っていると、次の工程である拡散工程にて液相量の不足により拡散が阻害されるので、真空排気雰囲気(1Pa以下)に切り替える。

0030

減圧水素雰囲気と真空排気雰囲気を合わせて、5分〜49時間の処理時間が好ましい。5分未満であると再結合反応が終了しない。49時間より長くなると長時間熱処理による酸化の影響で磁気特性が劣化する。

0031

また、これらの処理において処理時間を短くする目的で700〜1000℃の範囲内で水素中熱処理温度よりも高い温度で脱水素処理をしても構わないし、より穏やかな再結合反応を促進するために水素中熱処理温度よりも低い温度で脱水素処理をしても構わない。

0032

−(c)拡散処理工程−
以上のようなHDDR処理を施された合金に対して引き続いてR1に富む相の拡散処理が施される。熱処理温度は600〜1000℃で、真空中あるいはアルゴンなどの不活性ガス中で1〜50時間の条件とする。

0033

処理温度に関して、600℃よりも低いとR1に富む相が固相のままで、拡散がほとんど進行しない。600℃以上で液相となったR1に富む相は微細なR2Fe14B結晶粒の粒界に拡散する。一方、1000℃よりも高いとR1に富む相におけるFeの固容量が急激に増加するためにR2Fe14B相が溶け出し、R1に富む相の体積が急激に上昇する。これは、粒子の溶解により拡散のパス広がり、また拡散物が増量するので、より効率よく拡散するようにも考えられるが、組織観察の結果から、このような形態はR1に富む相の凝集を助長することがわかっており、粒界部への拡散は促進されない。従って、処理温度の上限は1000℃とする。

0034

処理時間に関しては、1時間よりも短いと拡散が十分に進行しない。また、50時間より長くなると長時間熱処理による酸化の影響で磁気特性が劣化する。酸化の影響を考慮すれば、前工程での真空排気時間(5分〜49時間)と拡散処理時間の合計が50時間を超えないことが好ましい。

0035

このようにして得られた微結晶合金は、平均結晶粒径が0.1〜1μmで、結晶方位が配向したR2Fe14B粒子(主相結晶粒)からなり、それを取り囲むように平均幅で2〜10nm、好ましくは4〜10nmのR1に富む相が存在する組織形態を有している。通常のHDDR処理(即ち、通常の鋳造方法で鋳造した母合金を用いたHDDR処理)では、局所的にしか上記形態を取らないため、粒界相の幅が2nm未満、あるいは存在しない部位が多くみられる。即ち、R1リッチ粒界相の平均幅が2nm未満のこのような合金を用いて焼結磁石を作製すると、上記部位が粒成長の起点となり、微細な結晶粒からなる焼結体が得られない。また、粒界相の平均幅2nm以上の場合でも、局部的に幅が2nm未満となる部位ができるだけ少ない方が好ましい。一方、R1に富む粒界相の平均幅が10nmを超えることは、実質的に本発明における技術の範囲では困難であるが、1000nmまでは有効である。それ以上の平均幅を得る場合は合金組成のR1量を本発明の組成範囲以上に増やさねばならず、これは残留磁束密度と最大エネルギー積の著しい低下を招くために不適である。

0036

なお、平均結晶粒径は以下のようにして求める。まず、微結晶合金(あるいは磁石体)を鏡面研磨した後、腐食液にて粒界にコントラスト(凹凸)をつける。それらの任意の視野について撮影した走査電子顕微鏡像より個々の粒子の面積を測定し、それと等価な円の直径を個々の粒子の結晶粒径とする。続いて粒度分布を示すヒストグラムを作成する際、粒径の範囲に対して範囲内に存在する結晶粒の個数ではなく、結晶粒が占める面積の割合をプロットする。このヒストグラムより求められる面積中位粒径を平均結晶粒径と定義する(実施例において同じ)。

0037

また、R1に富む相の平均幅は次のようにして求める。機械研磨イオンミリング等によって薄片化した微結晶合金に対し、それらの任意の視野について撮影した透過電子顕微鏡像より、粒界相が三方向から集まる三重点を除く、任意(10〜20件)の粒界相の幅を測定し、平均値を算出することにより、R1に富む相の平均幅を求める(実施例において同じ)。図3に、拡散処理後の微細組織と粒界相の模式図を示す。

0038

続いて、上記微結晶合金は、通常、重量平均粒径0.05〜3mm、特に0.05〜1.5mmに粗粉砕されて微結晶合金粉となる。粗粉砕工程にはピンミル等の機械粉砕あるいは水素粉砕が用いられる。

0039

[(B)粉砕工程]
微結晶合金粉を、例えば高圧窒素を用いたジェットミルにより、好ましくは重量平均粒径1〜30μm、より好ましくは1〜5μmに微粉砕し、異方性多結晶微粉末とする。

0040

[(C)圧縮成形工程]
得られた微結晶合金微粉末を磁場中で圧縮成形機に投入され、圧縮成形する。

0041

[(D)焼結工程]
次に、圧縮成形体を焼結炉に投入し、焼結する。焼結は真空中あるいは不活性ガス雰囲気中、通常900〜1100℃、好ましくは950〜1050℃で行われる。

0042

得られた焼結磁石は、正方晶R2Fe14B化合物を主相として60〜99体積%、好ましくは80〜98体積%含有し、残部は0.5〜20体積%のRに富む相、0〜10体積%のBに富む相、0.1〜10体積%のRの酸化物及び不可避的不純物により生成した炭化物、窒化物水酸化物フッ化物のうち少なくとも1種あるいはこれらの混合物又は複合物からなる。また、主相結晶粒が平均結晶粒径0.2〜2μmの結晶組織を有する。

0043

また、(D)焼結工程の後に、更に焼結温度より低温での熱処理を施してもよい。即ち、得られた焼結ブロックを必要に応じて所定形状に研削した後、公知の技術を用いて拡散処理を施してもよい。また、必要に応じて表面処理を施す。

0044

以上のようにして得られた希土類焼結磁石は、高価なTbやDyの使用量を低減させた、あるいはTb、Dyを使用しない高保磁力・高性能な永久磁石として用いることができる。

0045

次に、本発明に係る希土類焼結磁石の製造方法の第2の実施形態について説明する。
本実施形態は、第1の実施形態について、焼結性を向上させる目的で、所定の希土類元素を20〜95原子%含む合金(以降、助剤合金と称する)を作製して粗粉とし、上記母合金の粗粉と混合したものを微粉砕、成形、焼結させる、いわゆる二合金法を適用したものである。

0046

図4は、本発明に係る希土類焼結磁石の製造方法の第2の実施形態における製造工程図であり、(A)工程と(B)工程の間に、(A’)助剤合金粉末混合工程を有する点が第1の実施形態(図1)と異なる。

0047

[(A’)助剤合金粉末混合工程]
R2eKf組成(R2はSc及びYを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の組合せであって、Nd,Pr,Dy,Tb及びHoの群から選ばれる1種以上を必須元素として含み、KはFe,Co,Al,Cu,Zn,In,P,S,Ti,Si,V,Cr,Mn,Ni,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,Pd,Ag,Cd,Sn,Sb,Hf,Ta,W,H及びFの中から選ばれる1種又は2種以上の組合せである。e,fは合金の原子%を示し、20≦e≦95、fはその残部である)からなる助剤合金粉末を(A)工程で作製された微結晶合金粉に対して15質量%以下の割合(ただし、0質量%を含まない)で混合する。

0048

ここで、助剤合金粉末の組成として、好ましくはR2中にNd及び/又はPrを全R2に対して80原子%以上、特に85原子%以上含有することが好適である。Kは、最終的に得られる焼結磁石の磁気特性や諸特性、粉砕性の要求に応じて適宜選ばれる。なお、N(窒素)、O(酸素)等の不可避的な不純物については0.01〜3原子%程度含まれても良い。

0049

上記助剤合金の作製には、通常の溶解・鋳造が適用できる他、ストリップキャスト法や液体急冷法も適用可能である。成分KにH(水素)を用いる場合には、鋳造された合金を水素雰囲気中に曝す、あるいは必要に応じて100〜300℃に加熱することで水素を吸蔵させる。

0050

助剤合金を粉末にする粗粉砕工程には、ピンミル等の機械粉砕あるいは水素粉砕が用いられ、成分Kに水素が含まれている場合は上述の水素吸蔵処理が水素粉砕を兼ねる。これにより、助剤合金は、通常重量平均粒径0.05〜3mm、特に0.05〜1.5mmに粗粉砕される。

0051

得られた助剤合金粉末は15質量%以下の範囲で微結晶合金粉と混合される。その混合比について、助剤合金が15質量%を超えると磁石中の非強磁性成分が増大し、磁気特性が低くなってしまうおそれがある。
なお、微結晶合金において希土類に富む相が十分に存在するような母合金組成であれば、助剤合金の添加は不要である。

0052

次に、(B)工程において、上記微結晶合金粉と助剤合金粉末を混合したものを微粉末に粉砕する。粉砕は、第1の実施形態と同様に、例えば高圧窒素を用いたジェットミルにより、好ましくは重量平均粒径1〜30μm、より好ましくは1〜5μmに微粉砕し、異方性多結晶微粉末とする。なお、微結晶合金粉と助剤合金粉末の粉砕性が著しく異なる場合などは、それぞれを微粉砕した後に混合しても構わない。

0053

以降、第1の実施形態と同じ処理を施し、平均結晶粒径0.2〜2μmのR−Fe−B系焼結磁石体を得る。

0054

以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。

0055

[実施例1、比較例1]
以下の要領で希土類焼結磁石を作製した。
Ndが14.5原子%、Alが0.5原子%、Cuが0.2原子%、Gaが0.1原子%、Zrが0.1原子%、Bが6.2原子%、Feが残部となるように、純度99質量%以上のNd,Al,Cu,Zr,Feメタル、純度99.9999質量%のGa、フェロボロンを用いてAr雰囲気中で高周波溶解した後、銅製単ロールに注湯するストリップキャスト法により、薄板状の母合金を得た。得られた母合金における粒界相(析出粒子)の間隔は平均で4μmであった。
この母合金について、図5に模式的に示した条件でHDDR処理と拡散処理を施した。具体的には、母合金を処理炉に設置した後、1Pa以下に真空排気すると共に加熱を開始し、300℃になった時点で、水素分圧PH2が10kPaとなるように水素、アルゴン混合気体を炉内に導入し、850℃まで加熱した。次いで、水素化処理として、その温度を維持したまま、水素分圧PH2が50kPaとなるように水素、アルゴン混合気体を炉内に導入し(この間、30分)、続いて水素ガスのみを導入して水素分圧PH2を100kPaとした(この間、1時間)。次に、脱水素処理として、870℃に昇温・保持しつつ、水素分圧PH2が5kPaとなるように水素、アルゴン混合気体を炉内に導入し(この間、1時間)、次いでガス導入を停止して1Pa以下の真空排気を行った(この間、1時間)。次に、拡散処理として、真空中で850℃の加熱を200分行った。次いで、真空中で300℃まで冷却し、最後にアルゴンガスを導入して室温まで冷却した。
この一連の熱処理によって、主相結晶粒の平均結晶粒径0.3μmで、粒界相の幅が平均で6nmの微結晶合金を得た。
次に、この合金を室温にて0.11MPaの水素雰囲気中に曝して水素を吸蔵させた後、真空排気を行いながら500℃まで加熱して部分的に水素を放出させ、冷却してからにかけ、50メッシュ以下の粗粉末の微結晶合金粉とした。
続いて、微結晶合金粉を高圧窒素ガスを用いたジェットミルにて、粉末の重量平均粒径4μmに微粉砕した。得られた微粉末を50kOeのパルス磁場着磁した後、窒素雰囲気下15kOeの磁界中で配向させながら、約1ton/cm2の圧力で圧縮成形した。次いで、この圧縮成形体をAr雰囲気の焼結炉内に投入し、1050℃で1時間加熱して焼結した。その後に550℃で1時間の熱処理を施し、本発明の磁石体T1を作製した。

0056

また、比較例1として、上記ストリップキャスト合金を用いて、図5のHDDR処理と拡散処理を施さずに、それ以降の工程を上記条件で行い、いわゆる通常の焼結磁石体S1を作製した。

0057

表1に、これらの磁石体の室温における磁気特性と平均結晶粒径を示す。なお、磁気特性には最大印加磁場が1989kA/mのBHトレーサを用い、平均結晶粒径は焼結体の破断面走査型顕微鏡像から算出した。
その結果、磁石体T1は、予めHDDR処理によって主相結晶粒が0.3μmまで微細化され、拡散処理によって生成した平均幅6nmの粒界相により、その後の焼結工程においても粒成長が十分に抑制されており、通常の焼結磁石製造プロセスで作製された磁石体S1と比較して、結晶粒微細化の効果により高い保磁力が得られていることがわかる。

0058

0059

[実施例2、比較例2]
以下の要領で希土類焼結磁石を作製した。
Ndが12原子%、Prが2.5原子%、Alが0.3原子%、Cuが0.15原子%、Gaが0.05原子%、Zrが0.08原子%、Bが6.1原子%、Feが残部となるように、純度99質量%以上のNd,Pr,Al,Cu,Zr,Feメタル、純度99.9999質量%のGa、フェロボロンを用いてAr雰囲気中で高周波溶解した後、銅製単ロールに注湯するストリップキャスト法により、薄板状の母合金を得た。得られた母合金における粒界相(析出粒子)の間隔は平均で3.7μmであった。
この母合金について、図6に模式的に示した条件でHDDR処理と拡散処理を施した。具体的には、母合金を処理炉に設置した後、1Pa以下に真空排気すると共に加熱を開始し、300℃になった時点で、水素分圧PH2が10kPaとなるように水素、アルゴン混合気体を炉内に導入し、850℃まで加熱した。次いで、水素化処理として、その温度を維持したまま、水素分圧PH2が50kPaとなるように水素、アルゴン混合気体を炉内に導入し(この間、30分)、続いて水素ガスのみを導入して水素分圧PH2を100kPaとした(この間、1時間)。次に、脱水素処理として、850℃に保持しつつ、水素分圧PH2が5kPaとなるように水素、アルゴン混合気体を炉内に導入し(この間、1時間)、次いでガス導入を停止して1Pa以下の真空排気を行った(この間、1時間)。次に、拡散処理として、真空中で870℃の加熱を200分行った。次いで、真空中で300℃まで冷却し、最後にアルゴンガスを導入して室温まで冷却した。
この一連の熱処理によって、主相結晶粒の平均結晶粒径0.25μmで、粒界相の幅が平均で6nmの微結晶合金を得た。
次に、この合金を室温にて0.11MPaの水素雰囲気中に曝して水素を吸蔵させた後、真空排気を行いながら500℃まで加熱して部分的に水素を放出させ、冷却してから篩にかけ、50メッシュ以下の粗粉末の微結晶合金粉とした。
続いて、微結晶合金粉を高圧窒素ガスを用いたジェットミルにて、粉末の重量平均粒径4.5μmに微粉砕した。得られた微粉末を50kOeのパルス磁場で着磁した後、窒素雰囲気下15kOeの磁界中で配向させながら、約1ton/cm2の圧力で圧縮成形した。次いで、この圧縮成形体をAr雰囲気の焼結炉内に投入し、1050℃で1時間加熱して焼結した。その後に550℃で1時間の熱処理を施し、本発明の磁石体T2を作製した。

0060

また、比較例2として、上記組成の原材料を高周波溶解した後、平型にて鋳造し、この合金を用いて、上記条件(図6)にてHDDR処理、拡散処理、粉砕、成形、焼結、焼結後熱処理を施し、焼結磁石体S2を作製した。

0061

表2に、これらの磁石体の室温における磁気特性と平均結晶粒径を示す。なお、測定方法は実施例1と同じである。
本発明の磁石体T2は、高い保磁力と最大エネルギー積を示した。一方、同一組成鋳造工程以外は同一の処理履歴を有している磁石体S2は、保磁力も低く、また角形の悪さを反映して最大エネルギー積も低い値にとどまっている。これは、従来の鋳造工程で得られた合金組織が粒度分布が粗く、希土類リッチ相の析出粒子間の距離が大きいため、HDDR処理後の拡散処理において、主相結晶粒を囲む粒界相が均一に形成されるに至らなかったことに起因して、焼結工程において一部の微細粒子が粒成長を起こしたためといえ、本発明の焼結磁石を得るためには鋳造工程における組織形態が重要であることがわかる。

0062

0063

[実施例3、比較例3]
以下の要領で希土類焼結磁石を作製した。
Ndが13原子%、Alが0.5原子%、Cuが0.3原子%、Gaが0.1原子%、Nbが0.07原子%、Bが6.1原子%、Feが残部となるように、純度99質量%以上のNd,Al,Cu,Nb,Feメタル、純度99.9999質量%のGa、フェロボロンを用いてAr雰囲気中で高周波溶解した後、銅製単ロールに注湯するストリップキャスト法により、薄板状の母合金を得た。得られた母合金における粒界相(析出粒子)の間隔は平均で4μmであった。
この母合金について、図5に模式的に示した条件でHDDR処理と拡散処理を施し、主相結晶粒の平均結晶粒径0.3μmで、粒界相の幅が平均で6nmの微結晶合金を得た。
次に、この合金を室温にて0.11MPaの水素雰囲気中に曝して水素を吸蔵させた後、真空排気を行いながら500℃まで加熱して部分的に水素を放出させ、冷却してから篩にかけ、50メッシュ以下の粗粉末の微結晶合金粉A3とした。
更に、Ndが30原子%、Feが25原子%、Coが残部となるように、純度99質量%以上のNd、Fe、Coメタルを所定量秤量し、Ar雰囲気中で高周波溶解した後、平型に鋳造して合金を得た。この合金を室温にて0.11MPaの水素化に曝して水素を吸蔵させた後、篩にかけ、50メッシュ以下の粗粉末とした。水素を吸蔵した合金の組成は、Ndが16.6原子%、Feが13.8原子%、Coが24.9原子%、H(水素)が44.8原子%であった。これを助剤合金粉末B3とする。
続いて、微結晶合金粉A3を90質量%、助剤合金粉末B3を10質量%となるように量して、窒素置換したVブレンダー中で30分間混合した。この混合粉末を高圧窒素ガスを用いたジェットミルにて、粉末の重量平均粒径4μmに微粉砕した。得られた微粉末を50kOeのパルス磁場で着磁した後、窒素雰囲気下15kOeの磁界中で配向させながら、約1ton/cm2の圧力で圧縮成形した。次いで、この圧縮成形体をAr雰囲気の焼結炉内に投入し、1060℃で1時間加熱して焼結した。その後に550℃で1時間の熱処理を施し、本発明の磁石体T3を作製した。

0064

また、比較例3として次の要領で磁石体S3を作製した。即ち、上記ストリップキャスト合金に図7に模式的に示した条件でHDDR処理のみを施した。具体的には、母合金を処理炉に設置した後、1Pa以下に真空排気すると共に加熱を開始し、300℃になった時点で、水素分圧PH2が10kPaとなるように水素、アルゴン混合気体を炉内に導入し、850℃まで加熱した。次いで、水素化処理として、その温度を維持したまま、水素分圧PH2が50kPaとなるように水素、アルゴン混合気体を炉内に導入し(この間、30分)、続いて水素ガスのみを導入して水素分圧PH2を100kPaとした(この間、1時間)。次に、脱水素処理として、870℃に加熱・保持しつつ、水素分圧PH2が5kPaとなるように水素、アルゴン混合気体を炉内に導入し(この間、1時間)、次いでガス導入を停止して1Pa以下の真空排気を行った(この間、1時間)。次いで、真空中で300℃まで冷却し、最後にアルゴンガスを導入して室温まで冷却した。
この一連の熱処理によって、主相結晶粒の平均結晶粒径0.3μmで、粒界相の幅が平均で1.8nmの微結晶合金を得た。これを上記方法で水素粉砕したものを微結晶合金粉P3と称する。
続いて、微結晶合金粉P3を90質量%、助剤合金粉末B3を10質量%となるように秤量して、窒素置換したVブレンダー中で30分間混合した。これ以降の工程も上記実施例3の条件で、HDDR処理後に拡散処理を施していない合金を用いた焼結磁石体S3を作製した。

0065

表3に、これらの磁石体の室温における磁気特性と平均結晶粒径を示す。なお、測定方法は実施例1と同じである。
本発明の磁石体T3と比較して、HDDR工程後の拡散工程を行わなかった磁石体S3は、保磁力については50kA/m程度低い値に留まり、最大エネルギー積は45kJ/m3だけ低い値を示している。磁石体S3では、一部の主相結晶粒が数十μmにも及ぶ異常粒成長を起こしていることから、主相結晶粒の平均結晶粒径が12.8μmと通常の焼結磁石よりも大きくなっていた。比較例3のように、HDDR処理のみでは十分な幅の粒界相が形成されず、焼結工程で主相結晶粒の粒成長が起こりやすいためである。従って、実施例2と同様に、焼結工程に供する前に十分な幅の粒界相が微細な主相結晶粒を均一に取り囲む組織形態を有していることが本発明の焼結磁石を得るために重要である。

0066

実施例

0067

なお、これまで本発明を実施形態をもって説明してきたが、これらの実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。

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