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技術 殺菌試験方法及び装置

出願人 鹿島建設株式会社
発明者 石川秀初岡徹朗三井麻衣上野翔平
出願日 2015年9月25日 (5年4ヶ月経過) 出願番号 2015-188990
公開日 2017年3月30日 (3年10ヶ月経過) 公開番号 2017-060451
状態 特許登録済
技術分野 微生物・酵素関連装置 酵素、微生物を含む測定、試験
主要キーワード 角ローラ 合成樹脂製プレート 製造室 不可抗力 目張り 密閉システム 粒状基材 環状ベルト
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年3月30日)のものです。
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図面 (8)

課題

施設内を燻蒸する殺菌剤殺菌効果を定量的に評価できる試験方法及び装置の提供。

解決手段

乾燥に耐える微生物の所定希釈系列D0〜D7の各希釈液S0〜S7をそれぞれ基材11上に滴下し且つ乾燥付着させて初発菌数Noの検定基材10とし,検定基材10を殺菌剤Mで燻蒸する施設1内に所定時間だけ設置したのち培地C及び殺菌中和剤Eを添加して培養し,検定基材10上の各希釈段階D0〜D7における微生物増殖状態から生残菌数Nを求めて殺菌効果を評価する方法。好ましくは、基材11上に希釈系列D0〜D7の各希釈液S0〜S7を列状に滴下するサイクルの複数回反復により行列状に乾燥付着させて検定基材10とし,施設1内設置後に培地C及び殺菌中和剤Mを添加した検定基材10上の各希釈段階D0〜D7の行における微生物増殖が陽性(+)の数からMPN法により生残菌数を求めて、殺菌効果を評価する殺菌試験方法。

概要

背景

衛生環境の維持が重要とされる病院調剤薬局医薬製造工場食品製造工場実験動物等を用いる研究所等の建造物において,微生物濃度が管理されたクリーンルーム等の施設を設けることがある。このような施設は微生物による汚染が生じにくいように設計されているが,新規立ち上げ時,実験終了時,定期的な清掃時等に施設内を完全に殺菌することが求められ,例えばホルマリンガスホルムアルデヒドガス)等の殺菌剤を施設内に充満させて所要時間放置する燻蒸殺菌が実施されている(特許文献1参照)。ホルマリンガスは,一般細菌だけでなく,ウィルス芽胞を作る微生物等をも死滅させる殺菌力を有しており,しかも細かな隙間や天井裏等にも進入して施設内の隅々まで殺菌できる利点を有している。

燻蒸殺菌では,例えば施設の外部に連通する開口を目張りしたうえで施設内に殺菌剤をガス状又はミスト(霧)状に導入して充満させ,施設内全体の微生物濃度が十分に低下する時間だけ放置する。燻蒸時間は施設内の隅々まで殺菌できるように設定するが(例えば24時間以上),必要に応じて所定菌数(例えば103〜108)の微生物の芽胞を保持させた基材(例えば濾紙等)と培地入りアンプルとを組み合わせたバイオインジケータ(BI)を用いて殺菌効果を確認することができる(非特許文献1参照)。すなわち,燻蒸前の施設内の殺菌剤が最も到達しにくい箇所にバイオインジケータを載置しておき,燻蒸後にバイオインジケータの基材を培地入りアンプルに浸漬して培養する。施設内の殺菌が完全であれば微生物が増殖しないのでバイオインジケータの培地の色調に変化はないが,殺菌が不完全であると微生物が増殖して培地の色調が変化するので,この色調の変化により施設内全体の殺菌が完全であったか否か(所定菌数の微生物が全滅したか否か)を確認できる。

ただし,ホルマリンガスには毒性(皮膚に対する刺激性等)があり,最近は発がん性による規制対象にも指定されていることから(非特許文献2参照),取り扱い上の注意が必要であると共に燻蒸後の残留物等に対する対策別途必要となっている。このため,燻蒸殺菌におけるホルマリンガスから代替殺菌剤への切り替えが進められおり,二酸化塩素ガスを用いる方法(非特許文献3参照),過酸化水素ガスを用いる方法,オゾンガスを用いる方法(非特許文献4参照),過酢酸水希釈液をミスト状に噴霧する方法(非特許文献5参照),次亜塩素酸を用いる方法(非特許文献6参照),メタノールガスを用いる方法(非特許文献7)等が提案されている。

概要

施設内を燻蒸する殺菌剤の殺菌効果を定量的に評価できる試験方法及び装置の提供。乾燥に耐える微生物の所定希釈系列D0〜D7の各希釈液S0〜S7をそれぞれ基材11上に滴下し且つ乾燥付着させて初発菌数Noの検定基材10とし,検定基材10を殺菌剤Mで燻蒸する施設1内に所定時間だけ設置したのち培地C及び殺菌中和剤Eを添加して培養し,検定基材10上の各希釈段階D0〜D7における微生物増殖状態から生残菌数Nを求めて殺菌効果を評価する方法。好ましくは、基材11上に希釈系列D0〜D7の各希釈液S0〜S7を列状に滴下するサイクルの複数回反復により行列状に乾燥付着させて検定基材10とし,施設1内設置後に培地C及び殺菌中和剤Mを添加した検定基材10上の各希釈段階D0〜D7の行における微生物増殖が陽性(+)の数からMPN法により生残菌数を求めて、殺菌効果を評価する殺菌試験方法。

目的

本発明の目的は,施設内を燻蒸する殺菌剤の殺菌効果を定量的に評価できる試験方法及び装置を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

乾燥に耐える微生物の所定希釈系列の各希釈液をそれぞれ基材上に滴下し且つ乾燥付着させて初発菌数検定基材とし,前記検定基材を殺菌剤燻蒸する施設内に所定時間設置したのち培地及び殺菌中和剤を添加して培養し,前記検定基材上の各希釈段階における微生物増殖状態から生残菌数又は菌生存率を求めて殺菌効果を評価してなる殺菌試験方法。

請求項2

請求項1の方法において,前記乾燥に耐える微生物を,乾燥時に胞子が形成される微生物としてなる殺菌試験方法。

請求項3

請求項1又は2の方法において,前記基材上に前記希釈系列の各希釈液を列状に滴下し且つ複数回反復により行列状に乾燥付着させて検定基材とし,前記施設内設置後に培地及び殺菌中和剤を添加した検定基材上の各希釈段階における微生物増殖が陽性の数からMPN法により生残菌数を求めてなる殺菌試験方法。

請求項4

請求項3の方法において,前記基材上に前記希釈系列の各希釈液を列状に滴下し且つN回(Nは6以上の整数)反復により行列状に付着させて検定基材とし,前記施設内設置後に培地及び殺菌中和剤を添加した検定基材上の微生物増殖の陽性及び陰性を共に含む希釈段階における微生物増殖が陽性の数Pから次式により生残菌数を求めてなる殺菌試験方法。生残菌数=ln(N/(N−P))

請求項5

請求項1から4の何れかの方法において,前記検定基材を密封する被覆材に前記培地及び殺菌中和剤を装填し,前記施設内設置後の検定基材を前記被覆材で密封すると同時に培地及び殺菌中和剤を添加してなる殺菌試験方法。

請求項6

請求項5の方法において,前記基材を行列状の窪みが形成された蓋材付きマイクロプレートとし,前記希釈系列の各希釈液を蓋材又はマイクロプレート上に列状に滴下し且つ複数回反復により行列状に乾燥付着させて検定基材とし,前記培地及び殺菌中和剤をマイクロプレート又は蓋材に装填し,前記施設内設置後にマイクロプレートと蓋材とを密着させて培養してなる殺菌試験方法。

請求項7

乾燥に耐える微生物の所定希釈系列の各希釈液をそれぞれ基材上に滴下し且つ乾燥付着させた初発菌数の検定基材,並びに前記検定基材に添加する培地及び殺菌中和剤を備えてなり,前記検定基材を殺菌剤で燻蒸する施設内に所定時間設置したのち前記培地及び殺菌中和剤を添加して培養し,前記検定基材上の各希釈段階における微生物増殖状態から生残菌数又は菌生存率を求めて殺菌効果を評価してなる殺菌試験装置。

請求項8

請求項7の装置において,前記乾燥に耐える微生物を,乾燥時に胞子が形成される微生物としてなる殺菌試験装置。

請求項9

請求項7又は8の装置において,前記基材上に前記希釈系列の各希釈液を列状に滴下し且つ複数回反復により行列状に乾燥付着させて検定基材とし,前記施設内設置後に培地及び殺菌中和剤を添加した検定基材上の各希釈段階における微生物増殖が陽性の数からMPN法により生残菌数を求めてなる殺菌試験装置。

請求項10

請求項9の装置において,前記基材上に前記希釈系列の各希釈液を列状に滴下し且つN回(Nは6以上の整数)反復により行列状に付着させて検定基材とし,前記施設内設置後に培地及び殺菌中和剤を添加した検定基材上の微生物増殖の陽性及び陰性を共に含む希釈段階における微生物増殖が陽性の数Pから次式により生残菌数を求めてなる殺菌試験装置。生残菌数=ln(N/(N−P))

請求項11

請求項7から10の何れかの装置において,前記培地及び殺菌中和剤が装填された前記検定基材の密封被覆材を設け,前記施設内設置後の検定基材を前記被覆材で密封すると同時に培地及び殺菌中和剤を添加してなる殺菌試験装置。

請求項12

請求項11の装置において,前記基材を行列状の窪みが形成された蓋材付きマイクロプレートとし,前記希釈系列の各希釈液を蓋材又はマイクロプレート上に列状に滴下し且つ複数回反復により行列状に乾燥付着させて検定基材とし,前記培地及び殺菌中和剤をマイクロプレート又は蓋材に装填し,前記施設内設置後にマイクロプレートと蓋材とを密着させて培養してなる殺菌試験装置。

技術分野

0001

本発明は殺菌試験方法及び装置に関し,とくに殺菌剤燻蒸する施設内の殺菌効果を評価する試験方法及び装置に関する。

背景技術

0002

衛生環境の維持が重要とされる病院調剤薬局医薬製造工場食品製造工場実験動物等を用いる研究所等の建造物において,微生物濃度が管理されたクリーンルーム等の施設を設けることがある。このような施設は微生物による汚染が生じにくいように設計されているが,新規立ち上げ時,実験終了時,定期的な清掃時等に施設内を完全に殺菌することが求められ,例えばホルマリンガスホルムアルデヒドガス)等の殺菌剤を施設内に充満させて所要時間放置する燻蒸殺菌が実施されている(特許文献1参照)。ホルマリンガスは,一般細菌だけでなく,ウィルス芽胞を作る微生物等をも死滅させる殺菌力を有しており,しかも細かな隙間や天井裏等にも進入して施設内の隅々まで殺菌できる利点を有している。

0003

燻蒸殺菌では,例えば施設の外部に連通する開口を目張りしたうえで施設内に殺菌剤をガス状又はミスト(霧)状に導入して充満させ,施設内全体の微生物濃度が十分に低下する時間だけ放置する。燻蒸時間は施設内の隅々まで殺菌できるように設定するが(例えば24時間以上),必要に応じて所定菌数(例えば103〜108)の微生物の芽胞を保持させた基材(例えば濾紙等)と培地入りアンプルとを組み合わせたバイオインジケータ(BI)を用いて殺菌効果を確認することができる(非特許文献1参照)。すなわち,燻蒸前の施設内の殺菌剤が最も到達しにくい箇所にバイオインジケータを載置しておき,燻蒸後にバイオインジケータの基材を培地入りアンプルに浸漬して培養する。施設内の殺菌が完全であれば微生物が増殖しないのでバイオインジケータの培地の色調に変化はないが,殺菌が不完全であると微生物が増殖して培地の色調が変化するので,この色調の変化により施設内全体の殺菌が完全であったか否か(所定菌数の微生物が全滅したか否か)を確認できる。

0004

ただし,ホルマリンガスには毒性(皮膚に対する刺激性等)があり,最近は発がん性による規制対象にも指定されていることから(非特許文献2参照),取り扱い上の注意が必要であると共に燻蒸後の残留物等に対する対策別途必要となっている。このため,燻蒸殺菌におけるホルマリンガスから代替殺菌剤への切り替えが進められおり,二酸化塩素ガスを用いる方法(非特許文献3参照),過酸化水素ガスを用いる方法,オゾンガスを用いる方法(非特許文献4参照),過酢酸水希釈液をミスト状に噴霧する方法(非特許文献5参照),次亜塩素酸を用いる方法(非特許文献6参照),メタノールガスを用いる方法(非特許文献7)等が提案されている。

0005

特開2005−323809号公報

先行技術

0006

コスモ・バイオ株式会社「ACEtestバイオロジカルインジケータ高圧蒸気滅菌用)仕様説明書」平成27年8月検索インターネット<http://search.cosmobio.co.jp/cosmo_search_p/search_gate2/docs/FUK_/H3723.20140121.pdf>
厚生労働省「平成20年度化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会報告書(医療現場におけるホルムアルデヒドについて)」平成20年11月,インターネット<http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei17/>
イカリ消毒株式会社「二酸化塩素ガス発生装置Minidox−M Gas Generator」平成27年8月検索,インターネット<https://www.ikari.co.jp/service/pdf/microbe_nisankatanso.pdf>
大成建設株式会社「無菌製造室燻蒸に対してもっと有効な方法を導入したい」平成27年8月検索,インターネット<http://librarytaisei.jp/slibrary/mono/medicine/fujiyakuhin/index_02.html>
小津産業株式会社「過酢酸系除菌剤MINNCARE ACTRIL」平成27年8月検索,インターネット<http://www.ozu.co.jp/products/pdf/minncare_01.pdf>
株式会社ピーステック次亜塩素酸水ミクロテクト」平成27年8月検索,インターネット<http://peacetech−co.com/items/steri/index.html>
株式会社ウイングターフMRGシステムの環境殺菌対応」平成27年8月検索,インターネット<http://www.wingturf.com/pdf/MRG1.pdf>
高野光・横山理雄「食品の殺菌−その科学と技術」株式会社幸い書房,1998年6月25日発行,p63
Halvorson,H.O. and Ziegler,N.R.“Application of statistics to problems in bacteriology: I. A means of determining bacterial population by the dilution method”,Journal of Bacteriology Vol.25 No.2,1933年2月,pp101−121

発明が解決しようとする課題

0007

しかし,上述した従来の燻蒸殺菌は,何れも施設内の微生物濃度を低下させるが,殺菌効果が定量的に評価されていない問題点がある。すなわち,従来のホルマリン燻蒸で用いるバイオインジケータは,保持する所定菌数の全滅というエンドインのみで殺菌効果を評価するものであり,仮に燻蒸後に生存する微生物が1桁であったとしても増殖して培地の色調が変化すれば不完全な殺菌と評価せざるをえない。このため,従来方法は過剰な殺菌となりがちであり,燻蒸時間が増えると共に,燻蒸後の残留物も増え,建材劣化も進む結果を招いている。必要最小限の燻蒸時間で施設内を効率的に殺菌する観点から,殺菌効果を定量的に評価できる試験技術の開発が求められている。

0008

また,施設内の殺菌効果を定量的に評価することは,上述したホルマリンガスの代替殺菌剤を用いる場合にも重要である。すなわち,これらはホルマリンガスに代えて代替殺菌剤を施設内に充填する方法であるが,燻蒸時間や燻蒸方法は必ずしもホルマリンガスと同じではない。施設内の隅々まで殺菌できる範囲内で過剰な殺菌とならないような燻蒸時間を殺菌剤毎に設定する必要があり,燻蒸時間の設計のために殺菌効果の定量的な評価が必要となる。また,ガス状ではなくミスト状に殺菌剤を噴霧する場合は,施設内における伝搬(隙間等への進入態様)や殺菌作用がホルマリンガスの場合と異なることも想定されるので,殺菌剤毎に適切な燻蒸方法を設計するためにも殺菌効果の定量的な評価が重要となる。

0009

そこで本発明の目的は,施設内を燻蒸する殺菌剤の殺菌効果を定量的に評価できる試験方法及び装置を提供することにある。

課題を解決するための手段

0010

図1の実施例を参照するに,本発明による殺菌試験方法は,乾燥に耐える微生物の所定希釈系列D0〜D7の各希釈液S0〜S7をそれぞれ基材11上に滴下し且つ乾燥付着させて初発菌数Np(=N0〜N7)の検定基材10とし(図1(A)及び(B)参照),検定基材10(11+S0〜S7)を殺菌剤Mで燻蒸する施設1内に所定時間tだけ設置したのち培地C及び殺菌中和剤Eを添加して培養し(図1(C)及び(D)参照),検定基材10上の各希釈段階D0〜D7における微生物増殖状態から生残菌数Nt又は菌生存率Nt/Npを求めて殺菌効果を評価してなるものである(図1(E)及び(F)参照)。乾燥に耐える微生物は,例えば乾燥時に胞子が形成される微生物とすることができる。

0011

また図1の実施例を参照するに,本発明による殺菌試験装置は,乾燥に耐える微生物の所定希釈系列D0〜D7の各希釈液S0〜S7をそれぞれ基材11上に滴下し且つ乾燥付着させた初発菌数Np(=N0〜N7)の検定基材10(図1(B)参照),並びに検定基材10に添加する培地C及び殺菌中和剤E(図1(D)参照)を備えてなり,検定基材10を殺菌剤Mで燻蒸する施設1内に所定時間tだけ設置したのち培地C及び殺菌中和剤Eを添加して培養し(図1(C)及び(D)参照),検定基材10上の各希釈段階D0〜D7における微生物増殖状態から生残菌数Nt又は菌生存率Nt/Npを求めて殺菌効果を評価してなるものである(図1(E)及び(F)参照)。乾燥に耐える微生物は,例えば乾燥時に胞子が形成される微生物とすることができる。

0012

好ましい実施例では,図2に示すように,基材12a上に希釈系列D0〜D7の各希釈液S0〜S7を列状に滴下し且つ複数回反復により行列状に乾燥付着させて検定基材10(12a+S0〜S7)とし,施設1内設置後に培地C及び殺菌中和剤Mを添加した検定基材10上の各希釈段階D0〜D7における微生物増殖が陽性(+)の数からMPN法により生残菌数を求める。例えば,図3に示すように,基材12a上にD0〜D7の各希釈液S0〜S7を列状に滴下し且つN回(Nは6以上の整数)反復により行列状に付着させて検定基材10(12a+S0〜S7)とし,施設1内設置後に培地C及び殺菌中和剤Mを添加した検定基材10上の微生物増殖の陽性(+)及び陰性(−)を共に含む希釈段階における微生物増殖が陽性(+)の数P(N>P>0)から次式(1)により生残菌数Ntを求める。
生残菌数Nt=ln(N/(N−P)) ………………………………(1)

0013

更に好ましい実施例では,図4図6に示すように,培地C及び殺菌中和剤Eが装填された検定基材10の密封被覆材15を設け,施設1内設置後に検定基材10を被覆材15で密封すると同時に培地C及び殺菌中和剤Eを添加する。例えば,図5に示すように,基材11を行列状の窪みが形成された蓋材12b付きマイクロプレート12aとし,希釈系列D0〜D7の各希釈液S0〜S7を蓋材12b又はマイクロプレート12a上に列状に滴下し且つ複数回反復により行列状に乾燥付着させて検定基材10((12b+S0〜S7)又は(12a+S0〜S7))とし,培地C及び殺菌中和剤Eをマイクロプレート12a又は蓋材12bに装填し,施設1内への設置後にマイクロプレート12aと蓋材12bとを密着させて培養する。

発明の効果

0014

本発明による殺菌試験方法及び装置は,乾燥に耐える微生物の所定希釈系列D0〜D7の各希釈液S0〜S7をそれぞれ基材11上に滴下し且つ乾燥付着させて初発菌数Np(=N0〜N7)の検定基材10とし,検定基材10を殺菌剤Mで燻蒸する施設1内に所定時間tだけ設置したのち培地C及び殺菌中和剤Eを添加して培養し,検定基材10上の各希釈段階D0〜D7における微生物増殖状態から生残菌数Nt又は菌生存率Nt/Npを求めて殺菌効果を評価するので,次の有利な効果を奏する。

0015

(イ)希釈系列D0〜D7を付着させた初発菌数Npの検定基材10の燻蒸殺菌後の微生物増殖状態から生残菌数Nt又は菌生存率Nt/Npを求めるので,その菌生存率Nt/Np又は死滅桁数(=log(Nt/Np))から殺菌効果を定量的に評価することができる。
(ロ)また,希釈系列D0〜D7を一列ではなく複数列(行列状)に付着させた検定基材10を用い,その燻蒸殺菌後の微生物増殖状態からMPN法によって生残菌数Ntを求めることにより,生残菌数Ntの検出精度を高め,殺菌効果の定量的な評価の精度向上を図ることができる。
(ハ)検定基材10は手のひら程度の小型なものとすることができ,殺菌剤Mで燻蒸する施設1内に複数の検定基材10を設置して所定時間おきに生残菌数Ntを連続的に検出することにより,殺菌剤M毎の最適な燻蒸時間を設計することができる。

0016

(ニ)また,従来のバイオインジケータのようなエンドポインのみでの評価ではなく,施設内の複数位置の殺菌効果を定量的な菌生存率の分布として検出できるので,たとえばガス状殺菌剤Mとミスト状殺菌剤Mとの相違に応じた燻蒸方法を設計することも可能となる。
(ホ)検定基材10を密封する被覆材15に培地C及び殺菌中和剤Eを装填し,検定基材10を被覆材15で密封すると同時に培地C及び殺菌中和剤Eを添加することにより,検定基材10の各希釈系列D0〜D7に対する殺菌時間を揃えることができる。
(ヘ)また,検定基材10を被覆材15で自動的に密封するシステム等を組み合わせることにより,例えば強力な殺菌剤Mが充満していて人の立ち入りができないような施設においても,生残菌数Ntを精度よく検出することが可能となる。

図面の簡単な説明

0017

以下,添付図面を参照して本発明を実施するための形態及び実施例を説明する。
は,本発明の殺菌試験装置の一実施例の説明図である。
は,本発明の殺菌試験装置の他の実施例の説明図である。
は,本発明の殺菌試験装置の更に他の実施例の説明図である。
は,検定基材の密封被覆材に培地及び殺菌中和剤を装填した本発明の殺菌試験装置の実施例の説明図である。
は,検定基材の密封被覆材に培地及び殺菌中和剤を装填した本発明の殺菌試験装置の他の実施例の説明図である。
は,検定基材の密封被覆材に培地及び殺菌中和剤を装填した本発明の殺菌試験装置の更に他の実施例の説明図である。
は,培養ユニット式検定基材を用いた本発明の殺菌試験装置の実施例の説明図である。

0018

図1は,殺菌剤Mで燻蒸する施設1の殺菌効果を,本発明の殺菌試験装置を用いて評価する実施例を示す。図示例の殺菌試験装置は,図1(B)に示すように微生物の所定希釈系列D0〜D7を基材11上に付着させた初発菌数Npの検定基材10と,図1(D)に示すように検定基材10に添加する培地C及び殺菌中和剤Eとを有している。図1(C)に示すように殺菌剤Mで燻蒸する施設1内に検定基材10を所定時間tだけ設置したのち培地C及び殺菌中和剤Eを添加し,図1(E)に示すように検定基材10の各希釈段階D0〜D7の微生物増殖状態から生残菌数Nt又は菌生存率Nt/Npを求めて施設1内の殺菌効果を評価する。

0019

図1(A)及び(B)は,検定基材10の作製方法を示している。先ず図1(A)に示すように,乾燥に耐える微生物を滅菌蒸留水10ミリリット希釈して単位量当たり所定濃度試料D0を作成し,7本の試験管にそれぞれ滅菌蒸留水を9ミリリットルずつ分注し,試料D0の1ミリリットルを滅菌蒸留水で10倍ずつ7段階に希釈して,8段階の希釈系列D0〜D7の希釈液S0〜S7を作成する。各希釈系列D1〜D7には,単位量当たり希釈系列D0の10−1〜10−7倍の微生物が含まれている。次いで図1(B)に示すように,希釈系列D0〜D7の各希釈液S0〜S7をそれぞれ基材11上にdミリリットルずつ(例えば0.005ミリ(5マイクロリットルずつ)滴下し,乾燥(例えば風乾)させて,初発菌数Npの微生物が付着した検定基材10を作製する。検定基材10(及び初発菌数Np)を構造又は特性から直接特定することはおよそ実際的ではなく,検定基材10は乾燥付着させる希釈系列D0〜D7によって特定できる。

0020

本発明において初発菌数Npとは,希釈系列D0〜D7の各希釈液S0〜S7を滴下した段階で検定基材10に付着している微生物数を意味し,殺菌剤Mで燻蒸する施設1内に設置しなかった場合の本来の菌数のことを指す。図示例のように,8段階の希釈系列D0〜D7の希釈液S0〜S7を検定基材10に滴下したときは,各希釈液S0〜S7に含まれる異なる菌数N0〜N7の微生物が検定基材10に付着しており,各希釈段階の初発菌数NpはN0〜N7となる。施設内設置後の菌数計測では,何れかの希釈段階の微生物増殖状態から生残菌数Nt又は菌生存率Nt/Npを算出する。

0021

乾燥に耐える微生物を用いる理由は,各希釈系列D0〜D7の微生物を水分が失われた状態で施設1内の空気中の殺菌剤Mと接触させ,検定基材10に含まれる水分による殺菌効果への影響を避けるため,基材11上に滴下した各希釈液S0〜S7を乾燥させて検定基材10とするからである。乾燥に耐える微生物は,例えば乾燥状態飢餓状態等の環境ストレス時に胞子が形成される好気性細菌(例えばBacillus属,Geobacillus属,Alicyclobacillus属等),嫌気性細菌(例えばClostridium属等),真菌であるカビ類の胞子(例えばAspergillus属,Penicillium等),原虫藻類等の胞子,シスト休眠細胞等とすることができる。ただし,胞子を形成しなくても比較的短い時間の乾燥に耐えられる微生物を用いることは可能であり,微生物の乾燥菌体等が利用できる場合や細胞が完全に乾燥しない処理が可能である場合は,大腸菌(Escherichia coli NBRC3972)等を用いることもできる。

0022

また図示例では,基材11として8つの窪み(ウェル)が一列に形成された手のひら程度の小型な合成樹脂製プレートを用い,8段階の希釈系列D0〜D7の希釈液S0〜S7を一列に付着させて検定基材10としている。検定基材11から複数の希釈段階D0〜D7の微生物増殖状態を読み取ることで,その検定基材11の設置位置における生残菌数Ntを求めることができる。ただし,例えば図6(B)に示すように,各希釈系列D0〜D7の希釈液S0〜S7をそれぞれ別々の基材11に付着させて検定基材11としてもよい。この場合は,各希釈段階D0〜D7の検定基材10を1セットとして用い,各希釈段階D0〜D7の検定基材10の殺菌位置や殺菌時間にずれが生じないようにすることが必要である。なお,希釈系列の段階数は8段階未満又は8段階より多くしてもよい。

0023

作製した検定基材10を施設1内の所要位置に設置したのち,図1(C)に示すように従来の燻蒸殺菌と同様に殺菌剤Mをガス状又はミスト状にして施設1内に充満させる。検定基材10の設置位置は,殺菌剤Mの最も到達しにくい箇所だけでなく,施設1内の複数の箇所とすることができる。従来のバイオインジケータのような所定菌数の全滅というエンドポインの検出と異なり,図1(B)検定基材10ではその設置位置の定量的な菌生存率が検出できるので,施設1内の複数位置に検定基材10を設置して各地点の菌生存率を検出することにより,施設1内における菌生存率の分布として殺菌効果を評価することができる。

0024

図1(D)は,施設1内に所定時間tだけ設置した検定基材10を施設1の外へ取り出し,培地C及び殺菌中和剤(殺菌反応停止剤)Eを添加して培養する処理を示している。培地Cは,微生物毎に適した培地を適宜選択できるが,一般的なブイヨン培地(NB培地)とすることもできる。また殺菌中和剤Eは,施設1内に設置した検定基材10には殺菌剤Mが満ち込まれており,殺菌剤Mを残したまま検定基材10を培養すると精確な生残菌数Ntが得られないから,残存する殺菌剤Mの影響を排除するためのものである。殺菌中和剤Eは,殺菌剤Mの種類に応じて適宜選択して使用することができる(表1参照)。なお,NB培地はペプトンタンパク質)を含んでいるので,タンパク質が中和剤として機能するような殺菌剤Mについては,NB培地を培地C及び中和剤Eとして機能させることができる。

0025

0026

図1(E)は,培地Cを添加した検定基材10の培養結果の一例を表し,希釈段階D0〜D4(100〜10−4)では微生物の増殖が検出される(陽性である)ことを示し,希釈段階D5〜D7(10−5〜10−7)では微生物の増殖が検出されない(陰性である)ことを示している。希釈段階D4は初発菌数N4であり,希釈段階D5は初発菌数N5であることから,図1(E)の微生物増殖状態から燻蒸殺菌処理後の菌生存率Nt/Npは(1/N5)以上(1/N4)未満であると算出することができ,菌生存率Nt/Npにより施設1内の殺菌効果を定量的に評価することができる。

0027

図1(F)は,図1(E)に示す検定基材10の各希釈段階D0〜D7の微生物増殖状態から,施設1内の殺菌効果,すなわち微生物の菌生存率を算出する評価装置20の実施例を示す。評価装置20の一例は,入力装置21と出力装置22と記憶手段23とを有するコンピュータである。記憶手段23には,上述した微生物の初発菌数Np(=N0〜N7)等を記憶する。また図示例のコンピュータ20は,内蔵プログラムとして,検定基材10の微生物増殖状態から菌生存率を算出する生存率算出手段25と,算出した菌生存率を出力装置15へ適宜出力する出力手段26とを有している。

0028

図1(F)の評価装置20において,入力装置21を介して検定基材10の各希釈段階D0〜D7の微生物増殖状態(図1(E)の微生物増殖が検出された希釈段階)を生存率算出手段25に入力すると,生存率算出手段25が菌生存率Nt/Npを算出し,出力手段26を介して出力装置22に表示する。施設1内の複数位置に検定基材10を設置すると共に記憶手段23に各設置位置を記憶しておき,複数位置の検定基材10の微生物増殖状態を入力することにより,出力手段26によって施設1内の菌生存率の分布を出力装置22に図示することもできる。また,施設1内の各位置に複数の検定基材10を設置しておき,所定時間おきに検定基材10を取り出して微生物増殖状態を入力することにより,出力手段26によって施設1内の菌生存率の時間的な変化を評価することもできる。

0029

図2は,殺菌剤Mで燻蒸する施設1の殺菌効果を評価する本発明の殺菌試験装置の他の実施例を示す。図2の殺菌試験装置も,検定基材10(図2(B)参照)と培地C及び殺菌中和剤E(図2(D)参照)とで構成されているが,行列状の窪みが形成されたマイクロプレートを基材12aとして用い,8段階の希釈系列D0〜D7の各希釈液S0〜S7を列状に滴下すると共に複数回にわたって反復し,乾燥(例えば風乾)させることにより,検定基材10に希釈系列D0〜D7の希釈液S0〜S7を行列状に付着させている。

0030

上述したように,希釈系列D0〜D7を一列に付着させた図1(B)の検定基材10を用いて燻蒸殺菌後の菌生存率Nt/Npを検出できるが,死滅桁数を検出できる程度であり,検出精度を高めることは難しい。これに対して,試料の希釈系列を一列ではなくN回反復して培養し,N回反復された各々における各希釈段階の微生物増殖状態から試料中の生残数を求める最確法(MPN法)が開発されている(非特許文献8参照)。希釈を繰り返すと生菌数が0となる確率が出てくるが,ある希釈段階をN回反復したうちK個の生菌数が0となる確率は二項分布から計算される。MPN法は,十分に希薄な微生物懸濁液を,新鮮な培地に繰り返し植菌・培養した場合の増殖有無の確率から,植菌した微生物の数を推算する手法である。

0031

具体的には,反復数Nを3回とし,そのN回の全て又はほとんどで微生物の増殖があった最低の希釈段階における増殖検出個数K1と,その次の希釈(10倍希釈)段階における増殖検出個数K2と,更に次の希釈(100倍希釈)段階における増殖検出個数K3とをそれぞれ求め,その3つの数を並べたコード[K1,K2,K3]から原液中の生菌数を推定する。このコード[K1,K2,K3]からの推定値最確数(MPN)と呼ばれ,予め表2のようなMPN表を作成しておけば,そのMPN表に照らしてコード[K1,K2,K3]を生残菌数Ntに換算することができる。反復数Nが3回の系ではMPN表は64通りとなるが,反復数を更に増やして精度を高めることができ,反復数Nが5回の系では216通りのMPN表となる。

0032

図2(A)及び(B)は,8つの窪み(ウェル)が3列に形成されたマイクロプレートを基材12aとして用い,8段階の希釈系列D0〜D7の希釈液S0〜S7を行列状(3×8)に付着させて検定基材10を作製する方法を示す。先ず,図1の場合と同様に乾燥に耐える微生物の希釈系列D0〜D7の希釈液S0〜S7を作成する。次いで,各希釈液S0〜S7を基材12a上の各ウェルにdミリリットルずつ(例えば5マイクロリットルずつ)列状に滴下すると共に3回にわたって反復し,更に乾燥(例えば風乾)させて検定基材10(12a+S0〜S7)を作製する。ただし,反復回数は3回に限らず,例えば5回又はそれ以上の反復回数が付着できるマイクロプレートを用いることができる。

0033

図2(C)に示すように作製した検定基材10を殺菌剤Mで燻蒸する施設1内に所定時間tだけ設置したのち,図2(D)に示すように検定基材10の各ウェルに培地C及び殺菌中和剤Eを添加して培養する。図2(E)は,培地Cを添加した検定基材10の培養結果の一例を表しており,3回反復の全てで微生物の増殖が検出された(陽性であった)最低の希釈段階D3の増殖検出個数K1(=3)と,次の希釈段階D4の増殖検出個数K2(=2)と,更に次の希釈段階D5の増殖検出個数K3(=0)とからコード[3,2,0]が求まることを示している。表2を参照すると,このコードに対応するMPNは0.93であることから,コード中央部の希釈段階D4の生残菌数Nt(=0.93)を求めることができ,希釈段階D4の初発菌数Np=N4から菌生存率Nt(=0.93/N4)を算出することができる。

0034

0035

図2(F)は,図2(E)で求めたコード[K1,K2,K3]から,施設1内の殺菌効果として定量的な菌生存率を算出する評価装置20の実施例を示す。図2の評価装置20もコンピュータで構成されており,記憶手段23には微生物の初発菌数Npと共に表2のようなMPN表Tが記憶されている。また,内蔵プログラムとして,生存率算出手段25及び出力手段26に加えて,検定基材10の微生物増殖状態から生残菌数Ntを算出する生残菌数算出手段24を有している。入力装置21から評価装置20にコード[K1,K2,K3]を入力すると,生残菌数算出手段24が上述したようにコード[K1,K2,K3]とMPN表Tとから生残菌数Ntを算出し,生存率算出手段25が菌生存率Nt/Npを算出し,出力手段26を介して出力装置22に表示する。図2のように,希釈系列D0〜D7を一列ではなく複数列(行列状)に付着させた検定基材10を用い,MPN法によって生残菌数を求めることにより,菌生存率の検出精度を高めることができ,図1の場合と比較して施設1内の殺菌効果の定量的な評価の精度向上を図ることができる。

0036

好ましく,図3に示すようにMPN法の反復数Nを6回以上とし,希釈系列D0〜D7の各希釈液S0〜S7を列状に滴下し且つ6回以上反復することにより行列状に付着させて検定基材10を作製する。図2のような反復数Nが3回の場合と比較して,反復数Nを6回以上とすることにより菌生存率の検出精度を更に高めることができる。ただし,反復数Nが6回以上の系のMPN表は極めて大きく,作成も不可能ではないが煩雑である。これに対し,MPN表を必要としないMPN法として,微生物の増殖が陽性(+)及び陰性(−)を共に含む希釈段階の状態から次式(1)により生残菌数Ntを求める方法が開発されている(非特許文献9参照)。式(1)において,Nは反復数を表し,Pは反復数Nのうち微生物の増殖が陽性(+)の数(N>P>0)を表す。
生残菌数Nt=ln(N/(N−P)) ………………………………(1)

0037

図3(A)は,8つの窪み(ウェル)が6列に形成されたマイクロプレートを基材12aとして用い,図2(A)及び(B)と同様に,8段階の希釈系列D0〜D7の希釈液S0〜S7を行列状(6×8)に付着させて作製した反復数N=6の検定基材10を示す。作製した検定基材10を殺菌剤Mで燻蒸する施設1内に所定時間tだけ設置したのち,各ウェルに培地C及び殺菌中和剤Eを添加して培養する。図3(B)は,培地Cを添加した検定基材10の培養結果の一例を表し,希釈段階D4が微生物増殖の陽性(+)及び陰性(−)を共に含んでいることを示している。希釈段階D4において反復数N=6のうち微生物増殖が陽性(+)の数は1であるから,(1)式により希釈段階D4の生残菌数Nt(=ln(6/(6−1))≒0.182)を求めることができ,希釈段階D4の初発菌数Np=N4から菌生存率Nt(=0.182/N4)を算出することができる。

0038

図3(C)は,図3(A)の検定基材10を燻蒸殺菌処理せずに培養した結果の一例を示す。検定基材10の初発菌数Npは,上述したように検定基材10の作製時の希釈系列D0〜D7から計算できるが,実験中の不可抗力等を考慮して,図3(B)のような殺菌未処理の検定基材10を培養して確認することができる。具体的には,図示例において希釈段階D6が微生物増殖の陽性(+)及び陰性(−)を共に含んでおり,希釈段階D6では反復数N=6のうち微生物増殖が陽性(+)の数は2であるから,(1)式により希釈段階D6の生残菌数N(=ln(6/(6−2))≒0.405)を求めることができ,そこから希釈段階D4の初発菌数Np(=0.405×103)を算出することができる。従って,図3(B)に示す殺菌処理後の検定基材10と図3(C)に示す殺菌未処理の検定基材10とを同時に培養することにより,菌生存率Nt(=0.182/0.405×103)を求めて殺菌効果を評価することができる。

0039

例えば図2(F)の評価装置20において,記憶手段23にMPN表Tに代えて反復数N=6を記憶しておき,図3(B)のような殺菌処理後の検定基材10の希釈段階D4における微生物増殖陽性(+)の数Pを入力装置21から評価装置20へ入力することにより,生残菌数算出手段24が(1)式により生残菌数Ntを算出し,生存率算出手段25が菌生存率Nt/Npを算出することができる。また,図3(C)のような殺菌未処理の検定基材10の希釈段階D6における微生物増殖陽性(+)の数Pを入力装置21から評価装置20へ入力することにより,生存率算出手段25が希釈段階D4の初発菌数Npを算出して菌生存率Nt/Npを算出することもできる。

0040

こうして,本発明の目的である「施設内を燻蒸する殺菌剤の殺菌効果を定量的に評価できる試験方法及び装置」の提供を達成することができる。

0041

図4は,検定基材10を密封する被覆材15を設け,その被覆材15に培地C及び殺菌中和剤Eを装填し,検定基材10を被覆材15で密封することにより検定基材10に培地C及び殺菌中和剤Eを添加する実施例を示す。図1図3の実施例では,施設1内に設置した検定基材10を所定時間tの経過後に外部へ取り出して培地C及び殺菌中和剤Eを添加しており,検定基材10の各希釈系列D0〜D7に対する培地C及び殺菌中和剤Eの添加タイミングに多少のずれを生じるおそれがあった。図4のように,検定基材10を密封する被覆材15に培地C及び殺菌中和剤Eを装填することにより,検定基材10を被覆材15で密封すると同時に各希釈系列D0〜D7に培地C及び殺菌中和剤Eを添加することが可能となり,添加タイミングのずれによる生残菌数Ntの検出誤差を避けることができる。

0042

図4(A)は8つの窪み(ウェル)が一列に形成された合成樹脂製プレート11を用いて作製した検定基材10を示し,図4(B)はその検定基材10を密封する同型シート状の被覆材15を示す。図示例の被覆材15は,片側表面に培地C及び殺菌中和剤Eが塗布された被覆材シート15aと,その培地C及び殺菌中和剤Eの表面に剥離可能に張り付ける汚染防止フィルム15bとにより構成されている。例えば図4(A)の検定基材10を施設1内に所定時間tだけ設置したのち,図4(B)の被覆材シート15aの表面から汚染防止フィルム15bを剥離し,図4(C)に示すように被覆材シート15aの培地塗布面を検定基材10に押し当てて被覆する。

0043

図4のように検定基材10を被覆材15で密封する方法によれば,施設1内に設置した検定基材10を外部へ取り出す手間を省き,所定時間tの経過時に被覆材15を持った作業員が施設1内に入って培地C及び殺菌中和剤Eを簡単に添加することができる。また,図4(D)の示すような基材密閉システム30を施設1内に設置しておけば,例えば強力な殺菌剤Mが充満していて人の立ち入りができないような施設1においても,所定時間tの経過時点において検定基材10を被覆材15で自動的に密封して培地C及び殺菌中和剤Eを添加することもできる。

0044

図4(D)の基材密閉システム30は,検定基材10を載置する環状ベルトを所定時間tの経過時に駆動する基材搬送ローラ31と,その検定基材10と対向するように被覆材15を搬送する被覆材搬送ローラ32と,その被覆材15から汚染防止フィルム15bを剥離するフィルム剥離ローラ33とを有するベルトコンベア装置により構成されている。環状ベルト上に載置された検定基材10は,所定時間tまではそのまま燻蒸殺菌される。所定時間tの経過時に基材搬送ローラ31と被覆材搬送ローラ32とフィルム剥離ローラ33とが同時に駆動され,フィルム剥離ローラ33によって被覆材15から汚染防止フィルム15bを剥離し,被覆材搬送ローラ32によって被覆材シート15aの培地塗布面を環状ベルト上の検定基材10に押し当てて被覆する。

0045

図5は,行列状の窪みが形成された蓋材12b付きマイクロプレート12aを用い,所定希釈系列D0〜D7の各希釈液S0〜S7をその蓋材12b上に行列状に付着させて検定基材10(12b+S0〜S7)を形成し,培地C及び殺菌中和剤Eをマイクロプレート12aに装填し,燻蒸殺菌後に蓋材12bとマイクロプレート12aとを密着させて培養する実施例を示す。この実施例では,マイクロプレート12aが,検定基材10である蓋材12bを密封する被覆材15として機能し,図4の場合と同様に,検定基材10を被覆材15で密封することにより検定基材10に培地C及び殺菌中和剤Eを添加することができる。

0046

図5(A)は,マイクロプレート12aの蓋材12b上に,図2(B)の場合と同様に8段階の希釈系列D0〜D7の希釈液S0〜S7を行列状(3×8)に付着させて作製した検定基材10を示す。また図5(B)は,マイクロプレート12aの行列状(3×8)のウェルにそれぞれ培地C及び殺菌中和剤Eを装填して作製した被覆材15を示す。例えば図5(A)の検定基材(蓋材)10を施設1内に所定時間tだけ設置したのち,図5(C)に示すように被覆材(マイクロプレート)15を被せて検定基材10を密封することにより,検定基材10の各希釈系列D0〜D7に培地C及び殺菌中和剤Eを同時に添加する。

0047

図5のように平板な蓋材12b上に希釈液S0〜S7を付着させて検定基材10とすることにより,図2のように窪み(ウェル)の中に希釈液S0〜S7を付着させて検定基材10とした場合に比して,検定基材10を施設1内に設置して燻蒸殺菌処理する際に,微生物を殺菌剤Mに均等に接触させることができる。すなわち,例えば殺菌剤Mがミスト状である場合に,窪み(ウェル)中に付着させた微生物はミストと均等に接触しないおそれがあるのに対し,平板な蓋材12b上に付着させた微生物であればミストと均等に接触させることができる。このため,図5のように平滑な検定基材10を用いることにより,殺菌効果の評価精度の向上が期待できる。ただし,例えば殺菌剤Mがガス状である場合は,マイクロプレート12aと蓋材12bとを交換し,マイクロプレート12aから検定基材10を作製し,蓋材12bから培地C及び殺菌中和剤Eの装填された被覆材15を作製することも可能である(図6の実施例3を参照)。

0048

図6は,蓋材付き検定基材10を用い,その蓋材に培地C及び殺菌中和剤Eを装填し,燻蒸殺菌後に蓋材を閉めて密着させて培養する実施例を示す。この実施例では,検定基材10の蓋材が被覆材15として機能し,図4及び図5の場合と同様に,検定基材10を被覆材15で密封することにより検定基材10に培地C及び殺菌中和剤Eを添加することができる。図6(A)は複数の窪み(ウェル)が一列に形成された合成樹脂製プレート11を用いて作製した蓋材15付き検定基材10を示し,図6(B)はそれぞれ1つの窪み(ウェル)が形成された合成樹脂製プレート11を用いて形成した蓋材15付き検定基材10を示す。図6(B)のように各希釈段階D0〜D7を個別の検定基材10とする場合は,例えば図6(C)に示すように各希釈段階D0〜D7の検定基材10を1セットとして用い,各希釈段階D0〜D7の検定基材10の殺菌位置や殺菌時間にずれが生じないようにすることができる。

0049

図6(C)の基材密閉システム30は,検定基材10を載置する環状ベルトを所定時間tの経過時に駆動する基材搬送ローラ31と,コンベアベルト上で搬送される検定基材10の蓋材15を閉めて密着させる多角ローラ34とを有するベルトコンベア装置により構成されている。環状ベルト上に載置された検定基材10は,所定時間tまでは蓋材15を開放したまま燻蒸殺菌され,所定時間tの経過時に基材搬送ローラ31が駆動されて移動し,その移動経路上の多角ローラ34に蓋材15が当接して閉まることにより検定基材10を被覆する。図6(C)のように被覆材15を被せて検定基材10を密封することにより,検定基材10の各希釈系列D0〜D7に培地C及び殺菌中和剤Eを同時に添加することができる。なお,図5(C)の基材密閉システム30は,図6(B)のように各希釈段階D0〜D7を個別に付着させた検定基材10だけでなく,図6(A)のように各希釈段階D0〜D7を一列に付着させた検定基材10についても適用可能である。

0050

図7は,粒状の検定基材10を用い,その検定基材10を収納する筒状容器41に培地C及び殺菌中和剤Eを内蔵させた培養ユニット式基材40の実施例を示す。図7(A)は,粒状基材13に希釈系列D0〜D7の各希釈液S0〜S7を付着させて検定基材10を作製する処理を示す。作製した粒状の検定基材10は,図7(B)に示すような筒状容器41に収納する。筒状容器41には深さ方向中間部位隔膜43が張設されており,筒状容器41の内側は隔膜43によって開口側の領域と底壁42側の領域とに仕切られている。底壁42の側領には培地C及び殺菌中和剤Eを装填し,開口側の領域に粒状の検定基材10を収納する。例えば,図5(B)に示すようなマイクロプレート12aの複数の窪み(ウェル)をそれぞれ図7(B)のような筒状容器41に差替え,各ウェルに培地C及び殺菌中和剤Eが内蔵された培養ユニット式基材40とすることができる。

0051

図7(C)は,筒状容器41に密着して被せる蓋材44を示す。図示例の蓋材44は,筒状容器41に被せたときに内側へ突出するニードル45が取り付けられており,図7(D)に示すように蓋材44の閉鎖時にニードル45が容器41の隔膜43を突き破ることにより,底壁42側に内蔵された培地C及び殺菌中和剤Eを開口側へ浸透させることができる。ニードル45には,培地C及び殺菌中和剤Eの浸透を促進する浸透促進溝46を設けることが望ましい。また蓋材44には,ニードル45が隔膜43を突き破ったときに培地C及び殺菌中和剤Eが飛散しないように,ニードル45の周囲を覆う飛散防止スカート47を設けることが望ましい。例えば,図5(A)に示すようなマイクロプレートの蓋材12bの窪み対向位置にそれぞれニードル34及びスカート47を取り付けて,培養ユニット式基材40の蓋材44とすることができる。

実施例

0052

図7の培養ユニット式基材40は,所定時間tまでは蓋材44を開放したまま筒状容器(例えばマイクロプレートのウェル)41に収納された検定基材10を燻蒸殺菌し,所定時間tの経過時に蓋材(例えばマイクロプレートの蓋材)44を閉鎖して検定基材10を密封する。その蓋材44の閉鎖と同時に,蓋材44のニードル45が容器41の隔膜43を突き破ることにより,培地C及び殺菌中和剤Eを浸透させて検定基材10に添加することができる。

0053

1…殺菌施設
10…検定基材11…基材
12a…基材(マイクロプレート) 12b…基材(マイクロプレートの蓋材)
13…基材(粒状基材) 15…被覆材
15a…被覆材シート15b…汚染防止フィルム
15c…ヒンジ
20…評価装置(コンピュータ) 21…入力装置
22…出力装置23…記憶手段
24…生残菌数算出手段 25…菌生存率算出手段
26…出力手段
30…基材密閉システム31…基材搬送ローラ
32…被覆材搬送ローラ 33…フィルム剥離ローラ
34…多角ローラ
40…培養ユニット式基材 41…筒状容器
42…底壁43…隔膜
44…蓋材 45…ニードル
46…浸透促進溝 47…飛散防止スカート
C…培地E…中和剤
D…希釈系列M…殺菌剤
N…反復数Np…初発菌数
Nt…生残菌数 P…陽性の数
S…希釈液T…MPN表

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