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技術 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具

出願人 三菱マテリアル株式会社
発明者 龍岡翔佐藤賢一山口健志
出願日 2015年9月14日 (5年2ヶ月経過) 出願番号 2015-181191
公開日 2017年3月23日 (3年8ヶ月経過) 公開番号 2017-056497
状態 特許登録済
技術分野 CVD バイト、中ぐり工具、ホルダ及びタレット フライス加工
主要キーワード 供給周期 ガス群 カッタ径 表面被覆部材 内接円直径 JIS規格 電子線回折図形 硬質被膜層
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (2)

課題

硬質被覆層がすぐれた硬さおよび靭性を備え、長期の使用に亘って耐チッピング性耐欠損性を発揮する被覆工具を提供する。

解決手段

硬質被覆層を少なくともTiAlCN層を含むものとして構成するとともに、該TiAlCN層を硬質被膜層表面側から工具基体側に向かって、TiAlCN層α、TiAlCN層βの2層を設け、さらにTiAlCN層βには組成の異なるTiAlCN層γが存在し、TiAlCN層αとTiAlCN層γの組成を(Ti1−XαAlXα)(CYαN1−Yα)と(Ti1−XγAlXγ)(CYγN1−Yγ)で表した場合、TiAlCN層αは0.60≦Xαavg≦0.95、0≦Yγavg≦0.005を満足し、また、TiAlCN層γはXβ2avg<Xγavg≦0.95、0≦Yγavg≦0.005を満足し、平均層厚Lγは3nm≦Lγ≦50nmを満足することによって、硬質被覆層の硬さと靭性の双方を高め、被覆工具の耐チッピング性及び耐摩耗性を向上させる。

概要

背景

従来、一般に、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットあるいは立方晶窒化ホウ素(以下、cBNで示す)基超高圧焼結体で構成された工具基体(以下、これらを総称して工具基体という)の表面に、硬質被覆層として、Ti−Al系複合窒化物層物理蒸着法により被覆形成した被覆工具が知られており、これらは、すぐれた耐摩耗性を発揮することが知られている。
ただ、前記従来のTi−Al系の複合窒化物層を被覆形成した被覆工具は、比較的耐摩耗性にすぐれるものの、高速断続切削条件で用いた場合にチッピング等の異常損耗を発生しやすいことから、硬質被覆層の改善についての種々の提案がなされている。

例えば、特許文献1には、工具基体表面に、組成式(AlxTi1−x)N(ただし、原子比で、xは0.40〜0.65)を満足するAlとTiの複合窒化物層からなり該複合窒化物層についてEBSDによる結晶方位解析を行った場合、表面研磨面法線方向から0〜15度の範囲内に結晶方位<100>を有する結晶粒面積割合が50%以上であり、また、隣り合う結晶粒同士のなす角を測定した場合に、小角粒界(0<θ≦15゜)の割合が50%以上であるような結晶配列を示すAlとTiの複合窒化物層からなる硬質被覆層を蒸着形成することにより、高速断続切削条件においても硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮することが開示されている。
ただ、この被覆工具は、物理蒸着法により硬質被覆層を蒸着形成するため、Alの含有割合xを0.65以上にすることは困難で、より一段切削性能を向上させることが望まれている。

このような観点から、化学蒸着法で硬質被覆層を形成することで、Alの含有割合xを、0.9程度にまで高める技術も提案されている。
例えば、特許文献2には、TiCl4、AlCl3、NH3の混合反応ガス中で、650〜900℃の温度範囲において化学蒸着を行うことにより、Alの含有割合xの値が0.65〜0.95である(Ti1−xAlx)N層を蒸着形成できることが記載されているが、この文献では、この(Ti1−xAlx)N層の上にさらにAl2O3層を被覆し、これによって断熱効果を高めることを目的とするものであるから、Alの含有割合xの値を0.65〜0.95まで高めた(Ti1−xAlx)N層の形成によって、切削性能にどのような影響を及ぼしているかについては明らかでない。

また、例えば、特許文献3には、TiCN層、Al2O3層を内層として、その上に、化学蒸着法により、立方晶構造あるいは六方晶構造を含む立方晶構造の(Ti1−xAlx)N層(ただし、原子比で、xは0.65〜0.90)を外層として被覆するとともに該外層に100〜1100MPaの圧縮応力を付与することにより、被覆工具の耐熱性疲労強度を改善することが提案されている。

また、例えば、特許文献4には、基材表面に形成された硬質被膜のうちの少なくとも1層をCVD法により形成した表面被覆部材において、第1単位層と第2単位層とが交互に多層積層され、第1単位層は、Tiと、B、C、NおよびOからなる群より選ばれる1種以上の元素とを含む第1化合物を含み、第2単位層は、Alと、B、C、NおよびOからなる群より選ばれる1種以上の元素とを含む第2化合物を含むことにより、表面被覆部材の耐摩耗性、耐溶着性および耐熱衝撃性を向上させることが提案されている。

また、例えば、特許文献5には、基材表面に形成された硬質被膜のうちの少なくとも1層をCVD法により形成した表面被覆部材において、前記層のうち少なくとも1層は、硬質粒子を含む層であり、前記硬質粒子は、第1単位層と第2単位層とが交互に積層された多層構造を含み、前記第1単位層は、周期表の4族元素、5族元素、6族元素およびAlからなる群より選ばれる1種以上の元素と、B、C、NおよびOからなる群より選ばれる1種以上の元素とからなる第1化合物を含み、前記第2単位層は、周期表の4族元素、5族元素、6族元素およびAlからなる群より選ばれる1種以上の元素と、B、C、NおよびOからなる群より選ばれる1種以上の元素とからなる第2化合物を含むことにより、表面被覆部材の耐摩耗性、耐溶着性を向上させることが提案されている。

概要

硬質被覆層がすぐれた硬さおよび靭性を備え、長期の使用に亘って耐チッピング性、耐欠損性を発揮する被覆工具を提供する。硬質被覆層を少なくともTiAlCN層を含むものとして構成するとともに、該TiAlCN層を硬質被膜層表面側から工具基体側に向かって、TiAlCN層α、TiAlCN層βの2層を設け、さらにTiAlCN層βには組成の異なるTiAlCN層γが存在し、TiAlCN層αとTiAlCN層γの組成を(Ti1−XαAlXα)(CYαN1−Yα)と(Ti1−XγAlXγ)(CYγN1−Yγ)で表した場合、TiAlCN層αは0.60≦Xαavg≦0.95、0≦Yγavg≦0.005を満足し、また、TiAlCN層γはXβ2avg<Xγavg≦0.95、0≦Yγavg≦0.005を満足し、平均層厚Lγは3nm≦Lγ≦50nmを満足することによって、硬質被覆層の硬さと靭性の双方を高め、被覆工具の耐チッピング性及び耐摩耗性を向上させる。

目的

ただ、この被覆工具は、物理蒸着法により硬質被覆層を蒸着形成するため、Alの含有割合xを0.65以上にすることは困難で、より一段と切削性能を向上させることが望まれている

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

炭化タングステン基超硬合金炭窒化チタンサーメットまたは立方晶窒化ホウ素超高圧焼結体のいずれかで構成された工具基体の表面に、硬質被覆層が設けられた表面被覆切削工具において、(a)前記硬質被覆層は、平均層厚が1.2μm以上25μm以下のTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層を少なくとも含み、(b)前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、NaCl型の面心立方構造を有する複合窒化物または複合炭窒化物の相を少なくとも含み、(c)前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、硬質被覆層表面側から工具基体側に向かって、TiAlCN層α、TiAlCN層βからなる2層を含み、(d)前記TiAlCN層αは、その組成を、組成式:(Ti1−XαAlXα)(CYαN1−Yα)で表した場合、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合XαavgおよびCのCとNの合量に占める平均含有割合Yαavg(但し、Xαavg、Yαavgはいずれも原子比)は、それぞれ、0.60≦Xαavg≦0.95、0≦Yαavg≦0.005を満足し、平均層厚Lαは1μm≦Lα≦20μmであり、(e)前記TiAlCN層βは、該層内に平均Al含有割合の異なるTiAlCN層γが存在し、前記TiAlCN層γを境に、工具基体表面側からTiAlCN層β1β2に分けられ、その組成を、組成式:(Ti1−Xβ1AlXβ1)(CYβ1N1−Yβ1)および(Ti1−Xβ2AlXβ2)(CYβ2N1−Yβ2)で表した場合、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合Xβ1avgとXβ2avgおよびCのCとNの合量に占める平均含有割合Yβ1avgとYβ2avg(但し、Xβ1avg、Yβ1avg、Xβ2avg、Yβ2avgはいずれも原子比)は、それぞれ、0.1≦Xβ1avg<Xβ2avg<Xαavg、0≦Yβ1avg≦0.005、0≦Yβ2avg≦0.005を満足し、平均層厚Lβ1、Lβ2は0.1μm≦Lβ1、0.1μm≦Lβ2、Lβ1+Lβ2<Lαであり、(f)前記TiAlCN層γの組成を、組成式:(Ti1−XγAlXγ)(CYγN1−Yγ)で表した場合、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合XγavgおよびCのCとNの合量に占める平均含有割合Yγavg(但し、Xγavg、Yγavgいずれも原子比)は、それぞれ、Xβ2avg<Xγavg≦0.95、0≦Yγavg≦0.005を満足し、平均層厚Lγは3nm≦Lγ≦50nmであることを特徴とする表面被覆切削工具。

請求項2

前記TiAlCN層β1およびβ2は、層内でも組成が異なっており、工具基体表面側からTiAlCN層α側に向かって、それぞれの層中のAlのTiとAlの合量に占める含有割合が段階的に増加することを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。

請求項3

前記TiAlCN層β1およびβ2は組成の傾斜が存在し、工具基体表面側からTiAlCN層α側に向かって、それぞれの層中のAlのTiとAlの合量に占める含有割合が順次増加していくことを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。

請求項4

前記複合窒化物または複合炭窒化物層について、TiAlCN層αの縦断面方向から観察した場合に、複合窒化物または複合炭窒化物層内のNaCl型の面心立方構造を有する個々の結晶粒粒界部に、六方晶構造を有する微粒結晶粒が存在し、該微粒結晶粒の存在する面積割合は5面積%以下であり、該微粒結晶粒の平均粒径Rは0.01〜0.3μmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の表面被覆切削工具。

請求項5

前記工具基体と前記TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の間に、Tiの炭化物層窒化物層炭窒化物層炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上のTi化合物層からなり、0.1〜20μmの合計平均層厚を有する下部層が存在することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の表面被覆切削工具。

請求項6

前記複合窒化物または複合炭窒化物層の上部に、少なくとも酸化アルミニウム層を含む上部層が1〜25μmの合計平均層厚で存在することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の表面被覆切削工具。

技術分野

0001

本発明は、炭素鋼合金鋼鋳鉄等の高熱発生を伴う高速断続切削加工で、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を備えることにより、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。

背景技術

0002

従来、一般に、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットあるいは立方晶窒化ホウ素(以下、cBNで示す)基超高圧焼結体で構成された工具基体(以下、これらを総称して工具基体という)の表面に、硬質被覆層として、Ti−Al系複合窒化物層物理蒸着法により被覆形成した被覆工具が知られており、これらは、すぐれた耐摩耗性を発揮することが知られている。
ただ、前記従来のTi−Al系の複合窒化物層を被覆形成した被覆工具は、比較的耐摩耗性にすぐれるものの、高速断続切削条件で用いた場合にチッピング等の異常損耗を発生しやすいことから、硬質被覆層の改善についての種々の提案がなされている。

0003

例えば、特許文献1には、工具基体表面に、組成式(AlxTi1−x)N(ただし、原子比で、xは0.40〜0.65)を満足するAlとTiの複合窒化物層からなり該複合窒化物層についてEBSDによる結晶方位解析を行った場合、表面研磨面法線方向から0〜15度の範囲内に結晶方位<100>を有する結晶粒面積割合が50%以上であり、また、隣り合う結晶粒同士のなす角を測定した場合に、小角粒界(0<θ≦15゜)の割合が50%以上であるような結晶配列を示すAlとTiの複合窒化物層からなる硬質被覆層を蒸着形成することにより、高速断続切削条件においても硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮することが開示されている。
ただ、この被覆工具は、物理蒸着法により硬質被覆層を蒸着形成するため、Alの含有割合xを0.65以上にすることは困難で、より一段と切削性能を向上させることが望まれている。

0004

このような観点から、化学蒸着法で硬質被覆層を形成することで、Alの含有割合xを、0.9程度にまで高める技術も提案されている。
例えば、特許文献2には、TiCl4、AlCl3、NH3の混合反応ガス中で、650〜900℃の温度範囲において化学蒸着を行うことにより、Alの含有割合xの値が0.65〜0.95である(Ti1−xAlx)N層を蒸着形成できることが記載されているが、この文献では、この(Ti1−xAlx)N層の上にさらにAl2O3層を被覆し、これによって断熱効果を高めることを目的とするものであるから、Alの含有割合xの値を0.65〜0.95まで高めた(Ti1−xAlx)N層の形成によって、切削性能にどのような影響を及ぼしているかについては明らかでない。

0005

また、例えば、特許文献3には、TiCN層、Al2O3層を内層として、その上に、化学蒸着法により、立方晶構造あるいは六方晶構造を含む立方晶構造の(Ti1−xAlx)N層(ただし、原子比で、xは0.65〜0.90)を外層として被覆するとともに該外層に100〜1100MPaの圧縮応力を付与することにより、被覆工具の耐熱性疲労強度を改善することが提案されている。

0006

また、例えば、特許文献4には、基材表面に形成された硬質被膜のうちの少なくとも1層をCVD法により形成した表面被覆部材において、第1単位層と第2単位層とが交互に多層積層され、第1単位層は、Tiと、B、C、NおよびOからなる群より選ばれる1種以上の元素とを含む第1化合物を含み、第2単位層は、Alと、B、C、NおよびOからなる群より選ばれる1種以上の元素とを含む第2化合物を含むことにより、表面被覆部材の耐摩耗性、耐溶着性および耐熱衝撃性を向上させることが提案されている。

0007

また、例えば、特許文献5には、基材表面に形成された硬質被膜のうちの少なくとも1層をCVD法により形成した表面被覆部材において、前記層のうち少なくとも1層は、硬質粒子を含む層であり、前記硬質粒子は、第1単位層と第2単位層とが交互に積層された多層構造を含み、前記第1単位層は、周期表の4族元素、5族元素、6族元素およびAlからなる群より選ばれる1種以上の元素と、B、C、NおよびOからなる群より選ばれる1種以上の元素とからなる第1化合物を含み、前記第2単位層は、周期表の4族元素、5族元素、6族元素およびAlからなる群より選ばれる1種以上の元素と、B、C、NおよびOからなる群より選ばれる1種以上の元素とからなる第2化合物を含むことにより、表面被覆部材の耐摩耗性、耐溶着性を向上させることが提案されている。

先行技術

0008

特開2009−56540号公報
特表2011−516722号公報
特表2011−513594号公報
特開2014−128848号公報
特開2014−129562号公報

発明が解決しようとする課題

0009

近年の切削加工における省力化および省エネ化の要求は強く、これに伴い、切削加工は一段と高速化、高効率化の傾向にあり、被覆工具には、より一層、耐チッピング性、耐欠損性、耐剥離性等の耐異常損傷性が求められるとともに、長期の使用に亘ってのすぐれた耐摩耗性が求められている。
しかし、前記特許文献1に記載されている被覆工具は、(Ti1−xAlx)N層からなる硬質被覆層が物理蒸着法で蒸着形成され、硬質被覆層中のAlの含有割合xを高めることが困難であるため、例えば、合金鋼等の高速断続切削に供した場合には、耐摩耗性、耐チッピング性が十分であるとは言えないという課題があった。
また、前記特許文献2に記載されている化学蒸着法で蒸着形成した(Ti1−xAlx)N層については、Alの含有割合xを高めることができ、また、立方晶構造を形成させることができることから、所定の硬さを有し耐摩耗性にすぐれた硬質被覆層が得られるものの、工具基体との密着強度は十分でなく、また、靭性に劣るという課題があった。
また、前記特許文献3に記載されている被覆工具は、所定の硬さを有し耐摩耗性にはすぐれるものの、靭性に劣ることから、合金鋼等の高速断続切削加工に供した場合には、チッピング、欠損剥離等の異常損傷が発生しやすく、満足できる切削性能を発揮するとは言えないという課題があった。
さらに、前記特許文献4、5に記載される被覆工具においても、合金鋼等の高速断続切削加工に供した場合には、チッピング、欠損、剥離等の異常損傷が発生しやすく、満足できる切削性能を発揮するとはいえなかった。
そこで、本発明は、炭素鋼、合金鋼、鋳鉄等の高速断続切削等に供した場合であっても、すぐれた靭性を備え、長期の使用に亘ってすぐれた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮する被覆工具を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0010

本発明者らは、前述の観点から、少なくともTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物(以下、「TiAlCN」、「(Ti,Al)(C,N)」あるいは「(Ti1−xAlx)(CyN1−y)」で示すことがある)を含む硬質被覆層を形成した被覆工具の耐チッピング性、耐摩耗性の改善をはかるべく、鋭意研究を重ねた結果、次のような知見を得た。

0011

即ち、本発明者らは、図1に示すように、硬質被覆層を少なくともTiAlCN層を含むものとして構成するとともに、該TiAlCN層を表面側から工具基体側に向かって、TiAlCN層α、TiAlCN層βの2層に区分し、TiAlCN層αのAl含有量が0.60以上であり、TiAlCN層β内には層厚の薄い組成の異なるTiAlCN層γを形成し、TiAlCN層γのAl含有量がTiAlCN層βのAl含有量より高い場合には、硬さと靭性の双方を兼ね備えた硬質被覆層が得られるため、被覆工具の耐チッピング性及び耐摩耗性を向上させ得ることを見出した。

0012

言い換えれば、硬質被覆層が、TiAlCN層を少なくとも含み、該TiAlCN層を硬質被膜層表面側から工具基体表面側に向かって、TiAlCN層α、TiAlCN層βの2領域に区分し、さらにTiAlCN層β内にAl含有量が異なるTiAlCN層が存在し、その層をTiAlCN層γとしたとき、それぞれの領域における組成、層厚が、以下の条件を満たす場合に、硬さと靭性の双方を兼ね備えた硬質被覆層が得られ、被覆工具の耐チッピング性及び耐摩耗性を向上させ得ることを見出したのである。TiとAlの含有割合およびCとNの含有割合を、その組成を、組成式:(Ti1−XAlX)(CYN1−Y)で表した場合、
(1)TiAlCN層αにおいて、その組成を、組成式:(Ti1−XαAlXα)(CYαN1−Yα)で表した場合、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合XαavgおよびCのCとNの合量に占める平均含有割合Yαavg(但し、Xαavg、Yαavgはいずれも原子比)が、それぞれ、0.60≦Xαavg≦0.95、0≦Yαavg≦0.005を満足し、TiAlCN層αの平均層厚Lαが1μm≦Lα≦20μmであり、
(2)TiAlCN層βにおいて、層内にAl含有量の異なるTiAlCN層γが存在し、前記TiAlCN層γを境に、工具基体表面側からTiAlCN層β1β2に分けられ、その組成を、組成式:(Ti1−Xβ1AlXβ1)(CYβ1N1−Yβ1)および(Ti1−Xβ2AlXβ2)(CYβ2N1−Yβ2)で表した場合、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合Xβ1avgとXβ2avgおよびCのCとNの合量に占める平均含有割合Yβ1avgとYβ2avg(但し、Xβ1avg、Yβ1avg、Xβ2avg、Yβ2avgはいずれも原子比)は、それぞれ、0.1≦Xβ1avg<Xβ2avg<Xαavg、0≦Yβ1avg≦0.005、0≦Yβ2avg≦0.005を満足し、TiAlCN層β1とTiAlCN層β2のそれぞれの平均層厚Lβ1、Lβ2は0.1μm≦Lβ1、0.1μm≦Lβ2、Lβ1+Lβ2<Lαであり、
(3)TiAlCN層β内にはTiAlCN層βとは異なるAl含有割合の多いTiAlCN層γが存在し、その組成を、組成式:(Ti1−XγAlXγ)(CYγN1−Yγ)で表した場合、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合XγavgおよびCのCとNの合量に占める平均含有割合Yγavg(但し、Xβavg、Yβavgはいずれも原子比)は、それぞれ、Xβ2avg<Xγavg≦0.95、0≦Yβavg≦0.005を満足し、TiAlCN層γの平均層厚Lγは3nm≦Lγ≦50nmである。

0013

そして、前述のような構成のTiAlCN層は、例えば、工具基体表面において反応ガス組成周期的に変化させる以下の化学蒸着法によって成膜することができる。
用いる化学蒸着反応装置へは、NH3とH2からなるガス群Aと、TiCl4、AlCl3、N2、H2からなるガス群Bがおのおの別々のガス供給管から反応装置内へ供給され、ガス群Aとガス群Bの反応装置内への供給は、例えば、一定の周期の時間間隔で、その周期よりも短い時間だけガスが流れるように供給し、ガス群Aとガス群Bのガス供給にはガス供給時間よりも短い時間の位相差が生じるようにして、工具基体表面における反応ガス組成を、(イ)ガス群A、(ロ)ガス群Aとガス群Bの混合ガス、(ハ)ガス群Bと時間的に変化させることができる。ちなみに、本発明においては、厳密なガス置換を意図した長時間の排気工程を導入する必要は無い。従って、ガス供給方法としては、例えば、ガス供給口を回転させたり、工具基体を回転させたり、工具基体を往復運動させたりして、工具基体表面における反応ガス組成を、(イ)ガス群Aを主とする混合ガス、(ロ)ガス群Aとガス群Bの混合ガス、(ハ)ガス群Bを主とする混合ガス、と時間的に変化させることで実現する事が可能である。
工具基体表面に、反応ガス組成(ガス群Aおよびガス群Bを合わせた全体に対する容量%)を、例えば、本発明のTiAlCN層αでは、ガス群AとしてNH3:2.0〜3.0%、H2:65〜75%、ガス群BとしてAlCl3:0.6〜0.9%、TiCl4:0.2〜0.3%、N2:0.0〜12.0%、C2H4:0.0〜0.5%、H2:残、反応雰囲気圧力:4.5〜5.0kPa、反応雰囲気温度:700〜900℃、供給周期1〜5秒、1周期当たりのガス供給時間0.1〜0.3秒、ガス群Aの供給とガス群Bの供給の位相差0.05〜0.25秒として、所定時間、熱CVD法を行うことにより、所定の組成、層厚のTiAlCN層α、TiAlCN層βを成膜することができる。
また、TiAlCN層β中に含まれるTiAlCN層γはTiAlCN層βの形成中に熱処理工程を加えることにより形成される。これはTiAlCN層βを熱処理することでTiAlCN層β中のAlが熱処理中に膜表面へ拡散し、偏析することを利用して形成されたものである。

0014

本発明は、前記知見に基づいてなされたものであって、
「(1)炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットまたは立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体のいずれかで構成された工具基体の表面に、硬質被覆層が設けられた表面被覆切削工具において、
(a)前記硬質被覆層は、平均層厚が1.2μm以上25μm以下のTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層を少なくとも含み、
(b)前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、NaCl型の面心立方構造を有する複合窒化物または複合炭窒化物の相を少なくとも含み、
(c)前記複合窒化物または複合炭窒化物層は、硬質被覆層表面側から工具基体表面側に向かって、TiAlCN層α、TiAlCN層βからなる2層を含み、
(d)前記TiAlCN層αは、その組成を、組成式:(Ti1−XαAlXα)(CYαN1−Yα)で表した場合、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合XαavgおよびCのCとNの合量に占める平均含有割合Yαavg(但し、Xαavg、Yαavgはいずれも原子比)は、それぞれ、0.60≦Xαavg≦0.95、0≦Yαavg≦0.005を満足し、平均層厚Lαは1μm≦Lα≦20μmであり、
(e)前記TiAlCN層βは、該層内に平均Al含有割合の異なるTiAlCN層γが存在し、前記TiAlCN層γを境に、工具基体表面側からTiAlCN層β1とβ2に分けられ、その組成を、組成式:(Ti1−Xβ1AlXβ1)(CYβ1N1−Yβ1)および(Ti1−Xβ2AlXβ2)(CYβ2N1−Yβ2)で表した場合、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合Xβ1avgとXβ2avgおよびCのCとNの合量に占める平均含有割合Yβ1avgとYβ2avg(但し、Xβ1avg、Yβ1avg、Xβ2avg、Yβ2avgはいずれも原子比)は、それぞれ、0.1≦Xβ1avg<Xβ2avg<Xαavg、0≦Yβ1avg≦0.005、0≦Yβ2avg≦0.005を満足し、平均層厚Lβ1、Lβ2は0.1μm≦Lβ1、0.1μm≦Lβ2、Lβ1+Lβ2<Lαであり、
(f)前記TiAlCN層γの組成を、組成式:(Ti1−XγAlXγ)(CYγN1−Yγ)で表した場合、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合XγavgおよびCのCとNの合量に占める平均含有割合Yγavg(但し、Xγavg、Yγavgはいずれも原子比)は、それぞれ、Xβ2avg<Xγavg≦0.95、0≦Yγavg≦0.005を満足し、平均層厚Lγは3nm≦Lγ≦50nmである
ことを特徴とする表面被覆切削工具。
(2)前記TiAlCN層β1およびβ2は層内でも組成が異なっており、工具基体表面側からTiAlCN層α側に向かって、それぞれの層中のAlのTiとAlの合量に占める含有割合が段階的に増加することを特徴とする(1)に記載の表面被覆切削工具。
(3)前記TiAlCN層β1およびβ2は組成の傾斜が存在し、工具基体表面側からTiAlCN層α側に向かって、それぞれの層中のAlのTiとAlの合量に占める含有割合が順次増加していくことを特徴とする(1)に記載の表面被覆切削工具。
(4) 前記複合窒化物または複合炭窒化物層について、TiAlCN層αの縦断面方向から観察した場合に、複合窒化物または複合炭窒化物層内のNaCl型の面心立方構造を有する個々の結晶粒の粒界部に、六方晶構造を有する微粒結晶粒が存在し、該微粒結晶粒の存在する面積割合は5面積%以下であり、該微粒結晶粒の平均粒径Rは0.01〜0.3μmであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
(5) 前記工具基体と前記TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の間に、Tiの炭化物層窒化物層炭窒化物層炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上のTi化合物層からなり、0.1〜20μmの合計平均層厚を有する下部層が存在することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
(6) 前記複合窒化物または複合炭窒化物層の上部に、少なくとも酸化アルミニウム層を含む上部層が1〜25μmの合計平均層厚で存在することを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。

0015

本発明について、以下に詳細に説明する。

0016

硬質被覆層を構成するTiAlCN層の平均層厚:
図1に、本発明の硬質被覆層を構成するTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層(TiAlCN層)の縦断面模式図とともに、層厚方向にわたるAl含有割合の変化の様子を示す。
本発明の硬質被覆層は、TiAlCN層を少なくとも含む。このTiAlCN層は、硬さが高く、すぐれた耐摩耗性を有するが、平均層厚が1.2μm未満では各層の耐摩耗性が十分に発揮されず、25μmを越えると、TiAlCN層の結晶粒が粗大化し易くなり、チッピングを発生しやすくなることから、その平均層厚は1.2μm以上25μm以下と定めた。

0017

硬質被覆層を構成するTiAlCN層の組成:
本発明の硬質被覆層を構成するTiAlCN層は、硬質被覆層の表面側から工具基体側に向かって、TiAlCN層α、TiAlCN層βの順で形成された2層を含み、TiAlCN層β中にはAl含有量の異なるTiAlCN層γが含まれる。

0018

前記TiAlCN層αは、その組成を、組成式:(Ti1−XαAlXα)(CYαN1−Yα)で表した場合、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合XαavgおよびCのCとNの合量に占める平均含有割合Yαavg(但し、Xαavg、Yαavgはいずれも原子比)は、それぞれ、0.60≦Xαavg≦0.95、0≦Yαavg≦0.005を満足することが必要である。
その理由は、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合Xαavgが0.60未満では、TiAlCN層は耐酸化性に劣るため、合金鋼等の高速断続切削に供した場合には、耐摩耗性が十分でない。一方、Alの平均含有割合Xαavgが0.95を超えると、硬さに劣る六方晶析出量が増大し硬さが低下するため、耐摩耗性が低下する。
したがって、Alの平均含有割合Xαavgは、0.60≦Xαavg≦0.95と定めた。
また、TiAlCN層に含まれるC成分のCとNの合量に占める平均含有割合Yαavgは、0≦Yαavg≦0.005の範囲の微量であるとき、TiAlCN層と工具基体もしくは下部層との密着性が向上し、かつ、潤滑性が向上することによって切削時の衝撃を緩和し、結果としてTiAlCN層の耐欠損性および耐チッピング性が向上する。一方、C成分の平均含有割合Yαavgが0.005を超えると、TiAlCN層の靭性が低下するため耐欠損性および耐チッピング性が逆に低下するため好ましくない。したがって、Cの平均含有割合Yαavgは、0≦Yavg≦0.005と定めた。
また、前記TiAlCN層αの平均層厚Lαは、1μm≦Lα≦20μmとする。これは平均層厚が1μm未満では耐摩耗性を十分に担持できず、20μmより大きくなるとTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の結晶粒が粗大化し易くなり、チッピングを発生しやすくなるという理由による。

0019

前記TiAlCN層βは、該層内に平均Al含有割合の異なるTiAlCN層γが存在し、前記TiAlCN層γを境に、工具基体表面側からTiAlCN層β1とβ2に分けられ、その組成を、その組成を、組成式:(Ti1−Xβ1AlXβ1)(CYβ1N1−Yβ1)および(Ti1−Xβ2AlXβ2)(CYβ2N1−Yβ2)で表した場合、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合Xβ1avgとXβ2avgおよびCのCとNの合量に占める平均含有割合Yβ1avgとYβ2avg(但し、Xβ1avg、Yβ1avg、Xβ2avg、Yβ2avgはいずれも原子比)は、それぞれ、0.1≦Xβ1avg<Xβ2avg<Xαavg、0≦Yβ1avg≦0.005、0≦Yβ2avg≦0.005を満足する。
Xβ1avgを0.1以上とした理由は、0.1未満では硬度が十分でなく、耐摩耗性が損なわれるためであり、Xβ1avg<Xβ2avgとした理由は、Xβ2avgがXβ1avg以下であると、TiAlCN層α側のTiAlCN層βの硬さ低下による耐摩耗性の低下が生じるためである。また、Xβ2avgをXαavg未満とした理由は、TiAlCN層α以上の平均Al含有量を有するとTiAlCN層αより硬さが向上する一方で靱性が低下し、耐欠損性が低下するため、チッピングや剥離が生じやすくなるためである。
また、Yβ1avgとYβ2avgについては、前記したTiAlCN層αのYαavgと同様な理由により0≦Yβ1avg≦0.005、0≦Yβ2avg≦0.005とした。
さらに、TiAlCN層β1およびβ2の平均層厚Lβ1とLβ2を0.1μm≦Lβ1<Lβ、0.1μm≦Lβ2<Lβ、Lβ1+Lβ2<Lαとする理由は0.1μm未満の平均層厚では各層の界面における付着強度を十分に向上させることができず、各層の層厚およびβ1層とβ2層の膜厚の総和がLα以上になると、TiAlCN層αに対して相対的なTiAlCN層βの膜厚が大きくなることによって、膜の剥離およびチッピングが生じやすくなるとともに、TiAlCN層αに対してAl含有量の低いTiAlCN層βによって、硬質被膜層全体の硬さが低下し、耐摩耗性の低下をもたらすためである。

0020

前記TiAlCN層γは、その組成を、組成式:(Ti1−XγAlXγ)(CYγN1−Yγ)で表した場合、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合XγavgおよびCのCとNの合量に占める平均含有割合Yγavg(但し、Xγavg、Yγavgはいずれも原子比)は、それぞれ、Xβ2avg<Xγavg≦0.95、0≦Yγavg≦0.005を満足し、平均層厚Lγは3nm≦Lγ≦50nmである。
これは、TiAlCN層γのXγavgをTiAlCN層βのXβ2avgより高め、それによって、TiAlCN層γの格子歪を増大させて高硬度化を図るために、TiAlCN層γのXγavgはXβ2avgより大きくする。一方、Xγavgが0.95を超えると硬さに劣る六方晶の析出量が増大し硬さが低下するため、XγavgはXβ2avg<Xγavg≦0.95とした。
また、Yγavgについて、0≦Yγavg≦0.005とする理由は、前記したYαavg、Yβavgと同様な理由である。
さらに、TiAlCN層γの平均層厚Lγを3nm≦Lγ≦50nmとする理由は
3nm未満の平均層厚では硬さおよび付着強度の向上効果が十分に発揮されず、平均層厚が50nmより大きいとTiAlCN層βとの界面における付着強度が損なわれ、耐剥離性が低下するためである。

0021

また、前記TiAlCN層β1とβ2は層内でも組成が異なっており、AlのTiとAlの合量に占める割合が工具基体表面側からTiAlCN層α側に向かって段階的に増加をすることまたは連続的に増加することが好ましい。いずれによっても結晶格子の格子歪が順次緩和され、密着性の向上が図られる。

0022

TiAlCN層の立方晶粒界に存在する微粒六方晶:
本発明のTiAlCN層αでは、NaCl型の面心立方構造を有するTiAlCN結晶粒の粒界に六方晶構造の微粒結晶粒を含有することができるが、NaCl型の面心立方構造を有するTiAlCN結晶粒の粒界に靱性に優れた微粒六方晶が存在することで粒界における摩擦が低減し、靱性が向上する。このときの六方晶構造の微粒結晶粒の面積割合が5面積%を超えると相対的に硬さが低下し好ましくなく、また、六方晶構造の微粒結晶粒の平均粒径Rが0.01μm未満であると靱性向上の効果が見られず、0.3μmを超えると、硬さが低下し、耐摩耗性が損なわれるため、平均粒径Rは0.01〜0.3μmとすることが好ましい。
なお、本発明でいう粒界中に存在する六方晶構造の微粒結晶粒は、透過型電子顕微鏡を用いて電子線回折図形解析することにより同定することができ、また、六方晶構造の微粒結晶粒の平均粒子径は、粒界を含んだ1μm×1μmの測定範囲内に存在する粒子について、粒径を測定し、それらの平均値を算出することによって求めることができる。

0023

下部層および上部層:
本発明のTiAlCN層は、それだけでも十分な効果を奏するが、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上のTi化合物層からなり、0.1〜20μmの合計平均層厚を有する下部層を設けた場合、および/または、1〜25μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層を含む上部層を設けた場合には、これらの層が奏する効果と相俟って、一層すぐれた特性が発揮される。
Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上のTi化合物層からなる下部層を設ける場合、下部層の合計平均層厚が0.1μm未満では、下部層の効果が十分に奏されず、一方、20μmを超えると結晶粒が粗大化し易くなり、チッピングを発生しやすくなる。
また、酸化アルミニウム層を含む上部層の合計平均層厚が1μm未満では、上部層の効果が十分に奏されず、一方、25μmを超えると結晶粒が粗大化し易くなり、チッピングを発生しやすくなる。

発明の効果

0024

本発明は、工具基体の表面に、硬質被覆層を設けた表面被覆切削工具において、硬質被覆層が、TiAlCN層を少なくとも含み、該TiAlCN層は表面側から工具基体側に向かって、TiAlCN層α、TiAlCN層βの2層に区分され、さらにTiAlCN層βにはAl含有量の異なるTiAlCN層γが含まれ、TiAlCN層βに対してTiAlCN層αのAl含有量は高くなり、TiAlCN層β中に存在するTiAlCN層γのAl含有量はTiAlCN層βに対して高くなるTiAlCN層が形成されていることから、このような硬質被覆層を形成した本発明被覆工具は、炭素鋼、合金鋼、鋳鉄等の高熱発生を伴う高速断続切削加工に供した場合でも、すぐれた耐チッピング性を発揮し、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮するのである。

図面の簡単な説明

0025

本発明の硬質被覆層を構成するTiAlCN層の縦断面を模式的に表した縦断面模式図であり、層厚方向にわたるAl含有割合の変化も併記して示す。

0026

つぎに、本発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。

0027

原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末TiC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr3C2粉末およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体プレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、ISO規格SEEN1203AFSNのインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Cをそれぞれ製造した。

0028

また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比でTiC/TiN=50/50)粉末、Mo2C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、WC粉末、Co粉末およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1500℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、ISO規格SEEN1203AFSNのインサート形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体Dを作製した。

0029

つぎに、これらの工具基体A〜Dの表面に、化学蒸着装置を用い、
表4、表5に示される形成条件βA〜βH、すなわち、NH3とH2からなるガス群Aと、TiCl4、AlCl3、N2、H2からなるガス群B、およびおのおのガスの供給方法として、反応ガス組成(ガス群Aおよびガス群Bを合わせた全体に対する容量%)を、ガス群AとしてNH3:1.0〜3.0%、H2:65〜75%、ガス群BとしてAlCl3:0.1〜0.6%、TiCl4:0.4〜0.7%、N2:0.0〜12.0%、C2H4:0.0〜0.5%、H2:残、反応雰囲気圧力:4.5〜5.0kPa、反応雰囲気温度:700〜900℃、供給周期1〜5秒、1周期当たりのガス供給時間0.1〜0.3秒、ガス群Aの供給とガス群Bの供給の位相差0.05〜0.25秒として、所定時間、熱CVD法を行い、成膜した。なお、βA〜βHの形成記号中に含まれるA〜Hは表5中の形成記号A〜Hと対応しており、それぞれ供給周期や1周期当たりのガス供給時間、ガス群Aの供給とガス群Bの供給の位相差が異なる。また、熱処理によってTiAlCN層γを形成するために、TiAlCN層βの形成は2工程に分かれる。前半の工程をβ1、後半の工程をβ2としたとき、表11に示されるように、β1およびβ2はそれぞれ所定の目標平均層厚になるよう成膜し、各工程の間に表6に示される形成条件γA〜γHの反応ガス組成・時間・温度・圧力で熱処理を行った。ここでもγA〜γHの形成記号中に含まれるA〜Hは表5中の形成記号A〜Hと対応しており、それぞれ供給周期や1周期当たりのガス供給時間、ガス群Aの供給とガス群Bの供給の位相差が異なる。なお、TiAlCN層γのAl含有量および膜厚は熱処理温度および時間によって変えることができ、窒素源として例えばNH3ガスを流し、また、Cを含有させる場合には例えばC2H4のような炭素を含むガスを流す。また、表5・表7・表8に示される形成条件β1E〜β1H、β2E〜β2Hにおいてはβ1およびβ2が段階的に平均Al含有量が工具基体側からTiAlCN層α側に向かって順次増加する、もしくは工具基体側からTiAlCN層α側に向かって、AlのTiとAlの合量に占める含有割合が、連続的に増加するようなTiAlCN層β1とTiAlCN層β2を成膜した。このとき表11に示される目標平均層厚になるようそれぞれ成膜され、TiAlCN層β1を成膜後に表5、6に示される条件で熱処理を行い、その後、TiAlCN層β2を成膜した。なお、TiAlCNγ層の層厚は熱処理の時間および温度を制御することによって変えることができる。

0030

次いで、上記で成膜したTiAlCN層βの表面に、表5、表9に示される形成条件αA〜αHで、反応ガス組成(ガス群Aおよびガス群Bを合わせた全体に対する容量%)を、ガス群AとしてNH3:1.0〜3.0%、H2:65〜75%、ガス群BとしてAlCl3:0.6〜0.9%、TiCl4:0.2〜0.3%、N2:0.0〜12.0%、C2H4:0.0〜0.5%、H2:残、反応雰囲気圧力:4.5〜5.0kPa、反応雰囲気温度:700〜900℃、供給周期1〜5秒、1周期当たりのガス供給時間0.1〜0.3秒、ガス群Aの供給とガス群Bの供給の位相差0.05〜0.25秒として、所定時間、熱CVD法を行い、表11に示される目標平均層厚、目標平均組成のTiAlCN層αを成膜した。なお、αA〜αHの形成記号中に含まれるA〜Hは表6中の形成記号A〜Hと対応しており、それぞれ供給周期や1周期当たりのガス供給時間、ガス群Aの供給とガス群Bの供給の位相差が異なる。
上記の成膜によって、表11に示されるそれぞれの平均層厚、平均組成を有する各層構造からなるTiAlCN層を被覆することにより本発明被覆工具1〜12を製造した。
なお、本発明被覆工具5〜12について、表3に示される形成条件で、表10に示される下部層、上部層を形成した。

0031

また、比較の目的で、工具基体A〜Dの表面に、表4および表5、6、9に示される比較成膜工程の形成条件a〜hで、表12に示される目標層厚(μm)で本発明被覆工具1〜12と同様に、少なくともTiAlCN層を含む硬質被覆層を蒸着形成し比較被覆工具1〜12を製造した。なお、本発明被覆工具と同様に各層の形成記号中のa〜hは表5の形成記号a〜hと対応している。
ただし、比較成膜工程の形成条件a〜hのうち、形成条件c、eでは、TiAlCN層γを層内に含まないTiAlCN層βとTiAlCN層αの層構造からなるTiAlCN層を形成し、形成条件f〜hでは、成膜条件を変化させずに硬質被覆層全体にわたって均一組成のTiAlCN層を形成した。
なお、本発明被覆工具5〜12と同様に、比較被覆工具5〜12について、表3に示される形成条件で、表10に示される下部層、上部層を形成した。

0032

本発明被覆工具1〜12、比較被覆工具1〜12の各構成層のうちTiAlCN層αに関しては工具基体に垂直な方向の断面を、走査型電子顕微鏡倍率5000倍)を用いて測定し、観察視野内の5点の層厚を測って平均して平均層厚を求めた。また、TiAlCN層β1、β2およびTiAlCN層γについては透過型電子顕微鏡を用いて加速電圧200kVの条件において複合窒化物または複合炭窒化物層の微小領域の観察を行い、エネルギー分散型X線分光法(EDS)を用いて、TiAlCN層βおよびTiAlCN層β内に存在するTiAlCN層γを同定し、該TiAlCN層について観察視野内の5点の層厚を測定して、各層の平均層厚を求めた。以上のように各層の平均層厚を測定したところ、いずれも表10、表11に示される平均層厚を示した。
また、TiAlCN層γ、TiAlCN層β及びTiAlCN層αからなる本発明被覆工具のTiAlCN層の各層、さらに、比較被覆工具のTiAlCN層について、Alの平均含有割合(Xγavg、Xβ1avg、Xβ2avg及びXαavg)を、透過型電子顕微鏡を用いて、加速電圧200kVの条件において複合窒化物または複合炭窒化物層の微小領域の観察を行い、エネルギー分散型X線分光法(EDS)を用いて、算出した。具体的には元素マッピングを行い、TiAlCN層の各層において膜厚方向に等分に5点測定した各点のAl含有割合の平均値を10箇所測定し、各層のAlの平均含有割合とした。
また、TiAlCN層β1およびβ2のAl量が基体側からTiAlCN層α側に対して段階的に増加するように成膜した場合と基体側からTiAlCN層α側に対して連続的にAl量が増加するように成膜した場合では、透過型電子顕微鏡を用いて、加速電圧200kVの条件においてTiAlCN層断面方向に対して、エネルギー分散型X線分光法(EDS)を用いて、元素の線分析を行い、工具基体表面側からTiAlCN層α側に対してAl量が段階的あるいは連続的に増加していることを確認した。
また、Cの平均含有割合(Yγavg、Yβ1avg、Yβ2avg及びYαavg)については、二次イオン質量分析SIMS,Secondary−Ion−Mass−Spectroscopy)を用い、イオンビーム試料表面側から70μm×70μmの範囲に照射し、スパッタリング作用によって放出された成分について深さ方向の濃度測定を行うことにより求めた。Cの平均含有割合は、TiAlCN層についての深さ方向の平均値を示す。
表11、表12に、その結果を示す。

0033

また、電子後方散乱回折装置を用いて、TiAlCN層からなる硬質被覆層の工具基体表面に垂直な方向の断面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記断面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に照射し、工具基体と水平方向に長さ100μm、工具基体表面と垂直な方向の断面に沿って膜厚以下の距離の測定範囲内の硬質被覆層について0.01μm/stepの間隔で、電子線後方散乱回折像を測定し、個々の結晶粒の結晶構造を解析することで、六方晶構造を有する微粒結晶粒の面積割合を求めた。
また、六方晶構造の微粒結晶粒の平均粒径Rは、粒界を含んだ1μm×1μmの測定範囲内に存在する粒子について、粒径を測定し、それらの平均値を算出することによって求めた。なお、粒径は六方晶と同定した各々の結晶粒に対して外接円を作成し、その外接円の半径を求め、その平均値を粒径とした。
その結果を、同じく、表11、表12に示す。

0034

0035

0036

0037

0038

0039

0040

0041

0042

0043

0044

0045

0046

つぎに、前記各種の被覆工具をいずれもカッタ径125mmの工具鋼カッタ先端部に固定治具にてクランプした状態で、本発明被覆工具1〜10、比較被覆工具1〜10について、以下に示す、合金鋼の高速断続切削の一種である乾式高速正面フライスセンターカット切削加工試験を実施し、切刃逃げ面摩耗幅を測定した。
その結果を表13に示す。

0047

工具基体:炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメット、
切削試験: 乾式高速正面フライス、センターカット切削加工、
被削材: JIS・SCM440幅100mm、長さ400mmのブロック材
回転速度: 994 min−1、
切削速度: 390 m/min、
切り込み: 1.5 mm、
一刃送り量: 0.12 mm/刃、
切削時間: 8分、
(通常の切削速度は、220m/min)、

0048

0049

原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr3C2粉末、TiN粉末およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表14に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO規格CNMG120412のインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体E〜Gをそれぞれ製造した。

0050

また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比でTiC/TiN=50/50)粉末、NbC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表15に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1500℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.09mmのホーニング加工を施すことによりISO規格・CNMG120412のインサート形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体Hを形成した。

0051

つぎに、これらの工具基体E〜Gおよび工具基体Hの表面に、化学蒸着装置を用い、
表4、表5、表7、表8に示される形成条件βA〜βHでTiAlCN層βを形成し、表6に示される形成条件γA〜γHでTiAlCN層βを形成する工程中に熱処理を行うことでTiAlCNγ層を形成し、また、表5、表9に示される形成条件αA〜αHでTiAlCN層αを成膜することにより、表17に示されるそれぞれの平均層厚、平均組成を有するTiAlCN層を被覆し、表17に示す本発明被覆工具13〜24を製造した。なお、実施例1と同様に各層の形成記号中のA〜Hは表5の形成記号A〜Hと対応しており、それぞれ供給周期や1周期当たりのガス供給時間、ガス群Aの供給とガス群Bの供給の位相差が異なる。
なお、TiAlCN層βの成膜にあたっては、形成条件βA〜βDでは成膜条件を変化させずに成膜を行い、形成条件βE、βFでは段階的に平均Al含有量が工具基体側からTiAlCN層α側に向かって順次増加する形態で成膜し、βG、βHでは工具基体側からTiAlCN層α側に対して連続的に順次増加する形態で成膜した。
なお、本発明被覆工具16〜24について、表3に示される形成条件で、表16に示される下部層、上部層を形成した。

0052

また、比較の目的で、工具基体E〜Hの表面に、表4および表5、表6、表9に示される比較成膜工程の形成条件a〜hで、表18に示される目標層厚(μm)で本発明被覆工具13〜24と同様に、少なくともTiAlCN層を含む硬質被覆層を蒸着形成し比較被覆工具13〜24を製造した。なお、本発明被覆工具と同様に各層の形成記号中のa〜hは表5の形成記号a〜hと対応している。
ただし、比較成膜工程の形成条件a〜hのうち、形成条件c、eでは、TiAlCN層γを含まないTiAlCN層βとTiAlCN層αからなるTiAlCN層を形成し、また、形成条件f〜hでは、成膜条件を変化させずに硬質被覆層全体にわたって均一組成のTiAlCN層を形成した。
なお、本発明被覆工具16〜24と同様に、比較被覆工具16〜24について、表3に示される形成条件で、表16に示される下部層、上部層を形成した。

0053

また、実施例1と同様の方法を用いて、本発明被覆工具13〜24、比較被覆工具13〜24の各構成層の平均層厚を求めたところ、いずれも表17および表18に示される目標層厚と実質的に同じ平均層厚を示した。
また、TiAlCN層γ、TiAlCN層β及びTiAlCN層αからなる本発明被覆工具のTiAlCN層の各層、さらに、比較被覆工具のTiAlCN層について、実施例1と同様の方法を用いて、Alの平均含有割合(Xγavg、Xβ1avg、Xβ2avg及びXαavg)、Cの平均含有割合(Yγavg、Yβ1avg、Yβ2avg及びYαavg)を求めた。
表17、表18に、その結果を示す。

0054

また、実施例1と同様の方法を用いて、TiAlCN層に含有される六方晶構造を有する微粒結晶粒の面積割合および六方晶構造の微粒結晶粒の平均粒径Rを求めた。
その結果を、同じく、表17、表18に示す。

0055

0056

0057

0058

0059

0060

つぎに、前記各種の被覆工具をいずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、本発明被覆工具13〜24、比較被覆工具13〜24について、以下に示す、炭素鋼の乾式高速断続切削試験、鋳鉄の湿式高速断続切削試験を実施し、いずれも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
切削条件1≫
被削材:JIS・S45Cの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒
切削速度:390 m/min、
切り込み:2.0 mm、
送り:0.2 mm/rev、
切削時間:5 分、
(通常の切削速度は、220m/min)、
≪切削条件2≫
被削材:JIS・FCD700の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:330 m/min、
切り込み:1.0 mm、
送り:0.15 mm/rev、
切削時間:5 分、
(通常の切削速度は、180m/min)、
表19に、前記切削試験の結果を示す。

0061

0062

原料粉末として、いずれも0.5〜4μmの範囲内の平均粒径を有するcBN粉末、TiN粉末、TiC粉末、Al粉末、Al2O3粉末を用意し、これら原料粉末を表20に示される配合組成に配合し、ボールミルで80時間湿式混合し、乾燥した後、120MPaの圧力で直径:50mm×厚さ:1.5mmの寸法をもった圧粉体にプレス成形し、ついでこの圧粉体を、圧力:1Paの真空雰囲気中、900〜1300℃の範囲内の所定温度に60分間保持の条件で焼結して切刃片用予備焼結体とし、この予備焼結体を、別途用意した、Co:8質量%、WC:残りの組成、並びに直径:50mm×厚さ:2mmの寸法をもったWC基超硬合金製支持片と重ね合わせた状態で、通常の超高圧焼結装置装入し、通常の条件である圧力:4GPa、温度:1200〜1400℃の範囲内の所定温度に保持時間:0.8時間の条件で超高圧焼結し、焼結後上下面をダイヤモンド砥石を用いて研磨し、ワイヤー放電加工装置にて所定の寸法に分割し、さらにCo:5質量%、TaC:5質量%、WC:残りの組成およびJIS規格CNGA120412の形状(厚さ:4.76mm×内接円直径:12.7mmの80°菱形)をもったWC基超硬合金製インサート本体のろう付け部(コーナー部)に、質量%で、Zr:37.5%、Cu:25%、Ti:残りからなる組成を有するTi−Zr−Cu合金ろう材を用いてろう付けし、所定寸法に外周加工した後、切刃部に幅:0.13mm、角度:25°のホーニング加工を施し、さらに仕上げ研摩を施すことによりISO規格CNGA120412のインサート形状をもった工具基体イ、ロをそれぞれ製造した。

0063

0064

つぎに、これらの工具基体イ、ロの表面に、化学蒸着装置を用い、実施例1と同様の方法により表4、表5、表7、表8に示される形成条件βA〜βCおよび、βE〜βGでTiAlCN層βを成膜し、さらに表6に示される形成条件γA〜γCおよび、γE〜γGに表される熱処理によってTiAlCN層γをTiAlCN層β内に形成し、また、表5、表9に示される形成条件αA〜αCおよび、αE〜αGでTiAlCN層αを成膜することにより、表22に示されるそれぞれの平均層厚、平均組成を有するTiAlCN層を被覆することにより表22に示す本発明被覆工具25〜30を製造した。実施例1、2と同様に各層の形成記号中のA〜C、E〜Gは表5の形成記号A〜C、E〜Gと対応しており、それぞれ供給周期や1周期当たりのガス供給時間、ガス群Aの供給とガス群Bの供給の位相差が異なる。
なお、本発明被覆工具28〜30について、表3に示される形成条件で、表21に示すような下部層、上部層を形成した。

0065

また、比較の目的で、同じく工具基体イ、ロの表面に、化学蒸着装置を用い、表5および表4、表6、及び表9に示される比較成膜工程の形成条件b、d〜hで、表23に示されるに示される目標層厚(μm)で本発明被覆工具25〜30と同様に、少なくともTiAlCN層を含む硬質被覆層を蒸着形成し比較被覆工具25〜30を製造した。なお、本発明被覆工具と同様に各層の形成記号中のb、d〜hは表5の形成記号b、d〜hと対応している。
なお、本発明被覆工具28〜30と同様に、比較被覆工具28〜30について、表3に示される形成条件で、表21に示すような下部層、上部層を形成した。

0066

また、実施例1と同様の方法を用いて、本発明被覆工具25〜30、比較被覆工具25〜30の各構成層の平均層厚を求めたところ、いずれも表22および表23に示される目標層厚と実質的に同じ平均層厚を示した。
また、TiAlCN層γ、TiAlCN層β及びTiAlCN層αからなる本発明被覆工具のTiAlCN層の各層、さらに、比較被覆工具のTiAlCN層について、実施例1と同様の方法を用いて、Alの平均含有割合(Xγavg、Xβ1avg、Xβ2avg及びXαavg)、Cの平均含有割合(Yγavg、Yβ1avg、Yβ2avg及びYαavg)を求めた。
表22、表23に、その結果を示す。

0067

また、実施例1と同様の方法を用いて、TiAlCN層に含有される六方晶構造を有する微粒結晶粒の面積割合および六方晶構造の微粒結晶粒の平均粒径Rを求めた。
その結果を、同じく、表22、表23に示す。

0068

0069

0070

0071

つぎに、各種の被覆工具をいずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、本発明被覆工具25〜30、比較被覆工具25〜30について、以下に示す、浸炭焼入れ合金鋼の乾式高速断続切削加工試験を実施し、切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
工具基体:立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体、
切削試験: 浸炭焼入れ合金鋼の乾式高速断続切削加工、
被削材: JIS・SCr420(硬さ:HRC62)の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 260 m/min、
切り込み: 0.12 mm、
送り: 0.12 mm/rev、
切削時間: 4分、
表24に、前記切削試験の結果を示す。

0072

0073

表13、表19および表24に示される結果から、本発明の被覆工具は、硬質被覆層を構成するTiAlCN層が、表面側から工具基体側に向かって、TiAlCN層α、TiAlCN層βの層で構成され、TiAlCN層β中にはAl含有量の異なるTiAlCN層γが形成されていることから、
このような硬質被覆層を形成した本発明被覆工具は、炭素鋼、合金鋼、鋳鉄等の高熱発生を伴う高速断続切削加工に供した場合でも、すぐれた耐チッピング性を発揮し、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮する。

実施例

0074

これに対して、硬質被覆層を構成するTiAlCN層が、TiAlCN層α、TiAlCN層βで構成されていても、各層におけるAl含有割合や平均層厚が本発明で規定する条件を備えない比較被覆工具1〜5、9〜12、13〜17、21、25〜27は各TiAlCN層の界面において剥離が生じ、チッピングおよび欠損の発生により短時間で寿命に至ることが明らかであり、
また、TiAlCN層全体が均一なAl含有割合である比較被覆工具6〜8、18〜20、22〜24、28〜30についても、TiAlCN層の付着強度が十分に得られていないことによって短時間で膜の剥離が生じ、チッピングおよび欠損が発生する為、短時間で寿命に至ることが明らかである。
である。
したがって、本発明被覆工具は、比較被覆工具に比し、高熱発生を伴い、しかも、切れ刃断続的・衝撃的高負荷が作用する高速断続切削加工に用いた場合、耐チッピング性、耐摩耗性のいずれにもすぐれることは明らかである。

0075

前述のように、本発明の被覆工具は、耐チッピング性、耐摩耗性のいずれにもすぐれることから、切削装置高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。

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