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技術 脆性材料の回転切削用工具および回転切削方法

出願人 学校法人帝京大学
発明者 大野威徳
出願日 2015年8月31日 (5年2ヶ月経過) 出願番号 2015-170860
公開日 2017年3月9日 (3年8ヶ月経過) 公開番号 2017-047555
状態 特許登録済
技術分野 穴あけ工具 フライス加工 石材または石材類似材料の加工 バイト、中ぐり工具、ホルダ及びタレット
主要キーワード 切込み面 点状接触 各微細構造 取付け角 各切込み 軸ステッピングモータ 軸方向切込み 押付圧力
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重要な関連分野

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図面 (20)

課題

脆性材料回転切削において、脆性損傷を発生させることなく、平滑な仕上げ面または任意の表面性状を有する仕上げ面を生成できる回転切削用工具、及びそれを用いる回転切削方法を提供する。

解決手段

前記回転切削用工具は、切れ刃稜線上に、マイクロナノメータースケールの複数の微細構造規則的に配置し、前記微細構造の形状が、被削材の加工面に対して先端が点状接触する形状である。前記回転切削方法は、前記回転切削用工具を使用する。

概要

背景

一般に光学ガラスセラミックス等の脆性材料切削研削する場合に脆性損傷が発生するため、製品の機能を確保するために研磨加工等の後工程によりこれを除去している。研磨加工が砥粒の材料への押付圧力が加工形状として転写される「圧力転写原理」に基づくこと、砥粒による機械的な除去の他に砥粒と工作物表面との化学的作用にも影響を受けることから、得られる形状を明確に予想することが難しい。そのため、上記の研磨工程による形状精度の確保は、現在においても熟練作業者の技量に大きく依存している。

他方、切削・研削加工については、両者とも工具工作物間相対運動仕上げ面として転写される「運動転写原理」に従う加工法のため、脆性損傷を発生させずに仕上げ面を生成できるのであれば、研磨加工と比べ、加工による材料除去量や生成される形状を比較的簡単に予測でき、作業者の技量に拠らずより簡単な作業工程により加工精度補償できる。

概要

脆性材料の回転切削において、脆性損傷を発生させることなく、平滑な仕上げ面または任意の表面性状を有する仕上げ面を生成できる回転切削用工具、及びそれを用いる回転切削方法を提供する。前記回転切削用工具は、切れ刃稜線上に、マイクロナノメータースケールの複数の微細構造規則的に配置し、前記微細構造の形状が、被削材の加工面に対して先端が点状接触する形状である。前記回転切削方法は、前記回転切削用工具を使用する。

目的

本発明の課題は、脆性材料の回転切削において、脆性損傷を発生させることなく、平滑な仕上げ面または任意の表面性状を有する仕上げ面を生成できる回転切削用工具、及びそれを用いる回転切削方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

切れ刃稜線上に、マイクロナノメータースケールの複数の微細構造規則的に配置した回転切削工具であって、前記微細構造の形状が、被削材の加工面に対して先端が点状接触する形状である、前記工具。

請求項2

前記の複数の微細構造が、同一形状かつ同一寸法のマイクロ・ナノメータースケールの複数の微細構造であり、隣接する微細構造の各間隔が、前記間隔の最小値基本周期)の整数倍である、請求項1に記載の工具。

請求項3

主軸一回転当たりの工具移動量が、被削材の延性モード切削の条件以下である、請求項2に記載の工具。

請求項4

主軸一回転当たりの工具移動量が、微細構造の基本周期の整数倍である、請求項2に記載の工具。

請求項5

前記の複数の微細構造が、形状及び/又は大きさが段階的に変化するマイクロ・ナノメータースケールの複数の微細構造であり、隣接する微細構造の各間隔が、前記間隔の最小値(基本周期)の整数倍である、請求項1に記載の工具。

請求項6

主軸一回転当たりの工具移動量が、被削材の延性モード切削の条件以下である、請求項5に記載の工具。

請求項7

主軸一回転当たりの工具移動量が、微細構造の基本周期の整数倍である、請求項5に記載の工具。

請求項8

請求項1〜7のいずれか一項に記載の工具を使用する、回転切削方法。

技術分野

0001

本発明は、脆性材料回転切削工具、及び、それを用いる回転切削方法に関する。

背景技術

0002

一般に光学ガラスセラミックス等の脆性材料を切削研削する場合に脆性損傷が発生するため、製品の機能を確保するために研磨加工等の後工程によりこれを除去している。研磨加工が砥粒の材料への押付圧力が加工形状として転写される「圧力転写原理」に基づくこと、砥粒による機械的な除去の他に砥粒と工作物表面との化学的作用にも影響を受けることから、得られる形状を明確に予想することが難しい。そのため、上記の研磨工程による形状精度の確保は、現在においても熟練作業者の技量に大きく依存している。

0003

他方、切削・研削加工については、両者とも工具・工作物間相対運動仕上げ面として転写される「運動転写原理」に従う加工法のため、脆性損傷を発生させずに仕上げ面を生成できるのであれば、研磨加工と比べ、加工による材料除去量や生成される形状を比較的簡単に予測でき、作業者の技量に拠らずより簡単な作業工程により加工精度補償できる。

発明が解決しようとする課題

0004

従って、本発明の課題は、脆性材料の回転切削において、脆性損傷を発生させることなく、平滑な仕上げ面または任意の表面性状を有する仕上げ面を生成できる回転切削用工具、及びそれを用いる回転切削方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0005

切削において脆性損傷の発生は、回転切削用工具の切れ刃被削材への切込みに依存し、一定の切込量を下回る場合に抑制される。この状態で行う切削を延性モード切削と呼ぶ。本発明者は、特定形状を有するマイクロナノメータースケールの複数の微細構造を、切れ刃稜線上に規則的に配置することにより、各微細構造による被削材の各切込量を、延性モード切削を達成できる限界切込量以下に抑えることができることを見出し、その結果、脆性損傷(例えば、亀裂)を生じさせることなく、平滑な仕上げ面または任意の表面性状を有する仕上げ面を生成できることを見出した。本発明はこのような知見に基づくものである。

0006

本発明は、
[1]切れ刃稜線上に、マイクロ・ナノメータースケールの複数の微細構造を規則的に配置した回転切削用工具であって、
前記微細構造の形状が、被削材の加工面に対して先端が点状接触する形状である、前記工具;
[2]切れ刃稜線上に、同一形状かつ同一寸法のマイクロ・ナノメータースケールの複数の微細構造を規則的に配置した回転切削用工具であって、
前記微細構造の形状が、被削材の加工面に対して先端が点状接触する形状であり、
隣接する微細構造の各間隔が、前記間隔の最小値基本周期)の整数倍である、前記工具;
[3]切れ刃稜線上に、同一形状かつ同一寸法のマイクロ・ナノメータースケールの複数の微細構造を規則的に配置した回転切削用工具であって、
前記微細構造の形状が、被削材の加工面に対して先端が点状接触する形状であり、
隣接する微細構造の各間隔が、前記間隔の最小値(基本周期)の整数倍であり、
主軸一回転当たりの工具移動量が、被削材の延性モード切削の条件以下である、前記工具;
[4]切れ刃稜線上に、同一形状かつ同一寸法のマイクロ・ナノメータースケールの複数の微細構造を規則的に配置した回転切削用工具であって、
前記微細構造の形状が、被削材の加工面に対して先端が点状接触する形状であり、
隣接する微細構造の各間隔が、前記間隔の最小値(基本周期)の整数倍であり、
主軸一回転当たりの工具移動量が、微細構造の基本周期の整数倍である、前記工具;
[5]切れ刃稜線上に、形状及び/又は大きさが段階的に変化するマイクロ・ナノメータースケールの複数の微細構造を規則的に配置した回転切削用工具であって、
前記微細構造の形状が、被削材の加工面に対して先端が点状接触する形状であり、
隣接する微細構造の各間隔が、前記間隔の最小値(基本周期)の整数倍である、前記工具;
[6]切れ刃稜線上に、形状及び/又は大きさが段階的に変化するマイクロ・ナノメータースケールの複数の微細構造を規則的に配置した回転切削用工具であって、
前記微細構造の形状が、被削材の加工面に対して先端が点状接触する形状であり、
隣接する微細構造の各間隔が、前記間隔の最小値(基本周期)の整数倍であり、
主軸一回転当たりの工具移動量が、被削材の延性モード切削の条件以下である、前記工具;
[7]切れ刃稜線上に、形状及び/又は大きさが段階的に変化するマイクロ・ナノメータースケールの複数の微細構造を規則的に配置した回転切削用工具であって、
前記微細構造の形状が、被削材の加工面に対して先端が点状接触する形状であり、
隣接する微細構造の各間隔が、前記間隔の最小値(基本周期)の整数倍であり、
主軸一回転当たりの工具移動量が、微細構造の基本周期の整数倍である、前記工具;
[8]前記[1]〜[7]のいずれかの工具を使用する、回転切削方法。
に関する。

発明の効果

0007

本発明によれば、脆性材料の回転切削において、脆性損傷を発生させることなく、平滑な仕上げ面または任意の表面性状を有する仕上げ面を生成できる。

図面の簡単な説明

0008

バイトに本発明を適用した、本発明の一態様を模式的に示す平面図および側面図と、前記一態様における微小構造及びその周辺切り刃稜線を模式的に示す部分拡大図である。
ボールエンドミルに本発明を適用した、本発明の一態様を模式的に示す部分正面図である。
ドリルに本発明を適用した、本発明の一態様を模式的に示す部分正面図である。
砥石に本発明を適用した、本発明の一態様を模式的に示す部分正面図と、前記一態様における微小構造を模式的に示す部分拡大図である。
本発明で用いることのできる微細構造の各種形状を模式的に示す説明図である。
本発明で用いることのできる別の微細構造の各種形状を模式的に示す説明図である。
複数の微細構造が同一形状かつ同一寸法であって、隣接する微細構造の間隔が一定である、本発明の一態様を、被削材と共に、模式的に示す部分断面図である。
複数の微細構造が同一形状かつ同一寸法であって、隣接する微細構造の間隔が等間隔でない、本発明の一態様を、被削材と共に、模式的に示す部分断面図である。
複数の微細構造の形状及び/又は大きさが段階的に変化する、本発明の一態様を、被削材と共に、模式的に示す部分断面図である。
複数の微細構造の形状及び/又は大きさが段階的に変化する本発明の一態様において、各微細構造(1〜4)のみを取り出し、その先端および中心軸が一致するように、それらの形状を重ねた様子を模式的印示す説明図である。
複数の微細構造の形状及び/又は大きさが段階的に変化する本発明の別の一態様において、各微細構造(1〜9)のみを取り出し、その先端および中心軸が一致するように、それらの形状を重ねた様子を模式的印示す説明図である。
工具(A−1)をボールエンドミルに適用した、本発明の工具の一態様について、ボールエンドミル切削において、切れ刃稜線上に設けた微細構造が被削材の加工面に切込む状態を模式的に示す説明図である。
工具(A−2)をボールエンドミルに適用した、本発明の工具の一態様について、ボールエンドミル切削において、切れ刃稜線上に設けた微細構造が仕上げ面を生成する過程時系列的に示す模式的説明図である。
図13の最上段における2番の微細構造の領域に注目し、仕上げ面の生成過程を示す模式的説明図である。
工具(B−2)をボールエンドミルに適用した、本発明の工具の一態様について、ボールエンドミル切削において、切れ刃稜線上に設けた微細構造が被削材の加工面に切込んでいる状態を模式的に示す説明図である。
図15における1番の微細構造の領域に注目し、仕上げ面の生成過程を示す模式的説明図である。
回転切削において脆性損傷が発生する原因のひとつを説明するための模式的説明図である。
本発明の作用機序を説明するための模式的説明図である。
試験に使用した本発明の工具の一態様の微細構造を示す走査電子顕微鏡写真である。図19(a)は、ボールエンドミルの先端の形状を示す走査電子顕微鏡写真であり、図19(b)は、図19(a)の円で囲んだ領域の部分拡大写真であり、図19(c)は、更に拡大した、微細構造の形状を示す部分拡大写真である。

0009

本発明の回転切削用工具(以下、単に本発明の工具と称することがある)は、切れ刃稜線上に、マイクロ・ナノメータースケールの複数の微細構造が規則的に配置されていることを特徴とする。
本発明を適用することのできる工具としては、脆性材料(例えば、光学ガラス、セラミックス等)の回転切削に用いることのできる工具である限り、特に限定されるものではないが、例えば、旋盤(例えば、正面切削)で使用するバイト(図1)、フライス盤で使用するフライス工具(特にはエンドミル図2)、ボール盤で使用するドリル(図3)、および周期構造を有する多刃工具図4)等を挙げることができる。

0010

本発明の工具に設ける微細構造は、延性モード切削を達成することのできる形状および寸法を有する構造である限り、特に限定されるものではないが、被削材の加工面に対して切れ刃稜線上各微細構造の先端近傍が点状接触する形状からなるマイクロ・ナノメータースケールの微細構造を挙げることができる。

0011

被削材の加工面に対して切れ刃稜線上各微細構造の先端近傍が点状接触する形状としては、例えば、図5に示すような、工具のすくい面側から見て、三角波図5a、b、d)、正弦波図5c)、多角形波(図5e)、のこぎり波図5f)等を挙げることができ、また、図6に示すような、三次元的な立体構造とすることもできる。

0012

本明細書において「マイクロ・ナノメータースケール」とは、単位マイクロメーター(μm)またはナノメーター(nm)で表すことのできる大きさ及びその近傍の範囲を意味し、具体的には1nm〜1000nm、および1μm(1000nm)〜1000μmの範囲を指す。図5a〜図5fに示す各形状の場合、各寸法は被削材および適用する加工条件に対し適切な寸法・幾何学的関係を適用する。例えば図5a〜図5fに示す各形状の場合、振幅基準線と先端との最短距離図5に示すz)は例えば0.1μm〜20μm、好ましくは0.1μm〜10μmであることができ、周期(隣接する微細構造の間隔;図5に示すx)は例えば0.1μm〜20μm、好ましくは0.1μm〜10μmであることができる。また、ソーダライムガラス三角波状の微細構造を成形した1枚刃ボールエンドミルにより傾斜角45度の条件で切削するのであれば振幅1μmに対し周期が2μmであることが望ましい。

0013

本発明の工具は、切れ刃稜線上に複数の微細構造を設けることを特徴とし、切れ刃稜線の全体にわたって微細構造を設けることもできるが、被削材の加工面と接触し、加工面の切削に実質的に関与する領域およびその周辺領域に微細構造を設けることが好ましい。この領域は工具ノーズ曲率半径と切込量および仕上げ面法線方向に対する工具傾斜角により決まる。例えば、工具ノーズ曲率半径500μm、切込量20μm、工具傾斜角45度である場合、切れ刃高150μmを中心として±50μmすなわち切れ刃高100〜200μmの範囲内に、成形長(稜線上)20〜40μm、好ましくは40〜120μmの領域に微細構造を設けることができる。

0014

本発明の工具では、複数の微細構造を切れ刃稜線上に規則的に配置する。本明細書において「複数の微細構造を規則的に配置する」とは、微細構造の形状及び/又は大きさが規則的であること、及び/又は、隣接する微細構造の間隔が規則的であることを意味する。

0015

「微細構造の形状及び/又は大きさが規則的である」場合としては、例えば、複数の微細構造が同一形状かつ同一寸法である場合(図7図8)、複数の微細構造の形状及び/又は大きさが段階的に変化する場合(図9)等を挙げることができる。なお、本発明においては、同一形状かつ同一寸法である複数の微細構造のみ、あるいは、形状及び/又は大きさが段階的に変化する複数の微細構造のみを設けることもできるし、それらを組み合わせて、同一形状かつ同一寸法である一群の微細構造と、形状及び/又は大きさが段階的に変化する一群の微細構造とを連続して設けることもできる。

0016

図10図11は、複数の微細構造の形状及び/又は大きさが段階的に変化する場合に関して、各微細構造のみを取り出し、その先端および中心軸が一致するように、それらの形状を重ねた様子を示す説明図である。なお、図10に示す1〜4の数字は、図9に示す微細構造を表す数字〔例えば、4(1)〕の括弧内の数字に対応し、従って、被削材への切込み順を表す。図11に示す1〜9の数字についても同様である。

0017

図10は、各微細構造の形状が同一(ここでは、例として三角波を想定)であり、被削材への切込み順に従って、大きさが段階的に大きくなる態様を示す。なお、以下の説明では、主軸一回転当たりの工具移動量は、微細構造の周期と同じ(すなわち、同周期の1倍)であるものとして説明する。最初に微細構造1が三角形状に切込みを入れた後、次に同切込みに到達した微細構造2は、微細構造1よりもわずかに切込み面積が大きいため、その面積差分だけ切込みを行う。この際、切込み面積の面積差が延性モード切削条件を超えないように設定しておくと、脆性損傷(例えば、亀裂)の発生を回避することができる。同様に、微細構造3、微細構造4が順次、同切込みに到達するたびに、隣接する微細構造の面積差分だけ切込みが行われ、最終的に、微細構造4の三角波に相当する表面性状が仕上げ面に生成される。
例えば、上記の微細構造を有するボールエンドミルを直線状に移動させた場合、工具の進行方向に沿って延びる複数の曲線状の条痕(溝)であって、進行方向に垂直な方向の横断面が三角形状である条痕が仕上げ面に生成される。正面切削の場合、渦巻き状に連続して延びる条痕(溝)であって、横断面が三角形状である条痕が仕上げ面に生成される。ドリルの場合、めねじ形状に延びる条痕(溝)であって、横断面が三角形状である条痕が仕上げ面に生成される。

0018

図11は、各微細構造の形状が三角波(微細構造1)から多角形波(微細構造2〜9)に変化し、大きさが段階的に大きくなる態様を示す。最初に微細構造1が三角形状に切込みを入れた後、次に同切込みに到達した微細構造2は、微細構造1よりもわずかに切込み面積が大きいため、その面積差分だけ切込みを行うと共に、形状が三角形状から多角形状に変わる。続いて、微細構造3、微細構造4が順次、同切込みに到達するたびに、形状は多角形状のまま、隣接する微細構造の面積差分だけ切込みが行われ、最終的に、微細構造9の多角形波に相当する表面性状が仕上げ面に生成される。本発明では、切込み面積の面積差が延性モード切削条件を超えないように設定するため、各切込みにおいて仕上げ面における脆性損傷(例えば、亀裂)の発生を回避することができる。
なお、微細構造9の後に、頂点の角度が180度に近い微細構造を更に配置すると、実質的に平滑な仕上げ面を生成することができる。

0019

「隣接する微細構造の間隔が規則的である」場合としては、例えば、隣接する微細構造の各間隔(周期)が、前記間隔の最小値(以下、基本周期と称する)の整数倍である場合を挙げることができる。本発明においては、後述するとおり、微細構造を規則的に配置することにより、突発的な過大な切込量の発生を抑制することができ、その結果、材料除去領域の全部(但し、回転切削の初期段階を除く)に亘って、切込量を延性モード切削条件以下とすることが可能である。
前記の「整数倍」は1以上の正の整数であって、間隔毎に設定することができる。本発明の工具においては、隣接する微細構造の各間隔は、全て同一(すなわち、等間隔)であることもできるし、あるいは、間隔毎に同一及び/又は相違していることもできる。

0020

本発明の工具には、例えば、微細構造の形状及び寸法に従って、更には、主軸一回転当たりの工具移動量と微細構造の基本周期との関係に従って、各種の具体的態様が含まれる。
具体的には、本発明の工具には、例えば、
(A)切れ刃稜線上に、同一形状かつ同一寸法のマイクロ・ナノメータースケールの複数の微細構造を規則的に配置した回転切削用工具であって、
前記微細構造の形状が、被削材の加工面に対して先端が点状接触する形状であり、
隣接する微細構造の各間隔が、前記間隔の最小値(基本周期)の整数倍である、前記工具;
(B)切れ刃稜線上に、形状及び/又は大きさが段階的に変化するマイクロ・ナノメータースケールの複数の微細構造を規則的に配置した回転切削用工具であって、
前記微細構造の形状が、被削材の加工面に対して先端が点状接触する形状であり、
隣接する微細構造の各間隔が、前記間隔の最小値(基本周期)の整数倍である、前記工具;
が含まれる。

0021

前記工具(A)には、更に、例えば、
(A−1)主軸一回転当たりの工具移動量が、被削材の延性モード切削の条件以下となる条件下で使用することのできる、前記工具(A);
(A−2)主軸一回転当たりの工具移動量が、微細構造の基本周期の整数倍となる条件下で使用することのできる、前記工具(A);
が含まれる。前記工具(A−1)は、平滑な仕上げ面を生成するために使用することができ、前記工具(A−2)は、任意の表面性状を有する仕上げ面を生成するために使用することができる。

0022

前記工具(B)には、更に、例えば、
(B−1)主軸一回転当たりの工具移動量が、被削材の延性モード切削の条件以下となる条件下で使用することのできる、前記工具(B);
(B−2)主軸一回転当たりの工具移動量が、微細構造の基本周期の整数倍となる条件下で使用することのできる、前記工具(B);
が含まれる。前記工具(B−1)は、平滑な仕上げ面を生成するために使用することができ、前記工具(B−2)は、任意の表面性状を有する仕上げ面を生成するために使用することができる。

0023

以下、本発明の各種具体的態様に基づいて、更に本発明を説明する。
図12は、前記工具(A−1)をボールエンドミルに適用した、本発明の工具の一態様について、ボールエンドミル切削において、切れ刃稜線上に設けた微細構造が被削材の加工面に切込む状態を模式的に示す説明図である。

0024

図12に示すように、工具1の切れ刃2には、その稜線上に沿って、同一形状かつ同一寸法のマイクロ・ナノメータースケールの複数の微細構造4(1)〜4(7)が設けられている。工具は、図面の左から右に向かって(矢印で示す方向に向かって)移動する。また、工具は、進行方向に対して後退する形で傾斜しており、工具軸に対して時計周り、すなわち、図面の奥から手前側に向かって回転する。以下の説明では、主軸一回転当たりの矢印で示す方向への工具移動量は、被削材の延性モード切削の条件以下とする。

0025

図12に示すように、微細構造4(7)が切れ刃2の最下点に到達した時、先行する微細構造4(1)〜4(6)は、それぞれ、被削材9の加工面に対して切込みを行っているが、切れ刃の稜線(微細構造を設ける前の稜線)が円形であるため、切込み位置が変化し、後続の微細構造になるに従って仕上げ面91が低くなる。ここで、例えば、微細構造4(5)に着目すると、微細構造4(4)の位置まで移動する間に、工具は20回転するため、回転毎に、階段状仕上げ面15の内、微細構造4(5)と4(4)との間に挟まれた仕上げ面91(4)を微細構造4(4)の頂点近傍のみで切削していくこととなる。本発明においては、延性モード切削を達成できる限界切込量以下になるように、微細構造の形状および寸法、並びに切削条件を設定するため、図12に示す態様において、各微細構造の頂点近傍の切込量が、それぞれ、前記の限界切込量以下である場合、脆性損傷(例えば、亀裂)を生じさせることなく、平滑な仕上げ面を生成することができる。

0026

図13は、前記工具(A−2)をボールエンドミルに適用した、本発明の工具の一態様について、ボールエンドミル切削において、切れ刃稜線上に設けた微細構造が仕上げ面を生成する過程を時系列的に示す模式的説明図である。図13では、細線を切れ刃稜線および微細構造として、太線を仕上げ面として示しており、工具は、図面の左から右に向かって進行する。また、工具は、進行方向に対して後退する形で傾斜しており、工具軸に対して時計周り、すなわち、図面の奥から手前側に向かって回転する。図13では、送り前方の微細構造より1番〜13番の番号を振っている。

0027

図14は、図13の最上段における2番の微細構造の領域に注目し、仕上げ面の生成過程を示す模式的説明図である。工具(A−2)では、主軸一回転当たりの工具移動量を、微細構造の基本周期の整数倍と等しくなるように設定する。以下の説明では、主軸一回転当たりの工具移動量を、微細構造の周期と同じ(すなわち、同周期の1倍)であるものとして説明する。この場合、1番の微細構造で生成された仕上げ面に対して、主軸一回転後に、2番の微細構造が通過する。以後、一回転毎に後続の微細構造が番号順に(3→4→5・・・)同領域の仕上げ面を通過していく。ボールエンドミル切削の場合、各微細構造は、切れ刃の稜線(微細構造を設ける前の稜線)が円形であるため、切込み方向(図面の垂直方向)位置が変化し、後続の微細構造になるに従って低くなる。すなわち、円状切れ刃の最下点となる7番の微細構造が仕上げ面を通過するまで、後続の微細構造は、前段の微細構造が生成した仕上げ面に対して軸方向へ切込んでいくことになる。7番が仕上げ面を通過した後は、8番以降の後続の微細構造が仕上げ面を通過しても、位置が高くなるために軸方向への切込みは行われず、そのまま通過していき、仕上げ面が形状を保ったままとなる。本発明においては、延性モード切削を達成できる限界切込量以下になるように、微細構造の形状および寸法、並びに切削条件を設定するため、図13に示す態様において、各微細構造の切込量が、それぞれ、前記の限界切込量以下である場合、脆性損傷(例えば、亀裂)を生じさせることなく、微細構造の表面性状を有する仕上げ面を生成することができる。

0028

図13に示す態様において、主軸一回転当たりの工具移動量が、微細構造の周期の整数倍、例えば、2倍である場合、図13の最上段における1番の微細構造の領域に注目すると、1番の微細構造が通過した後、主軸一回転毎に、3番、5番、7番の順に同領域の仕上げ面を通過していく。同様に、図13の最上段における2番の微細構造の領域に注目すると、2番の微細構造が通過した後、主軸一回転毎に、4番、6番、8番の順に同領域の仕上げ面を通過していく。従って、主軸一回転当たりの工具移動量が、微細構造の周期の整数倍である場合も、各微細構造の切込量が、それぞれ、延性モード切削の条件を超えない場合、脆性損傷(例えば、亀裂)を生じさせることなく、微細構造の表面性状を有する仕上げ面を生成することができる。

0029

図15は、前記工具(B−2)をボールエンドミルに適用した、本発明の工具の一態様について、ボールエンドミル切削において、切れ刃稜線上に設けた微細構造が被削材の加工面に切込んでいる状態を模式的に示す説明図である。工具は、図面の左から右に向かって進行する。また、工具は、進行方向に対して後退する形で傾斜しており、工具軸に対して時計周り、すなわち、図面の奥から手前側に向かって回転する。図15では、送り前方の微細構造より1番〜6番の番号を振っている。
図16は、図15における1番の微細構造の領域に注目し、仕上げ面の生成過程を示す模式的説明図である。

0030

工具(B−2)では、微細構造の形状及び/又は大きさが段階的に変化する。また、主軸一回転当たりの工具移動量が、微細構造の基本周期の整数倍である。以下の説明では、主軸一回転当たりの工具移動量を、微細構造の周期と同じ(すなわち、同周期の1倍)であるものとして説明する。図15に示す態様では、三角波状の微細構造の頂角が、先頭から番号順に拡大している。各微細構造が一回転毎に仕上げ面を通過し、最終番(6番)の形状が仕上げ面性状としてそのまま残る。各微細構造の頂角の変化に伴い、各段での切込みが変化していくが、各段の切込量が、それぞれ、延性モード切削の条件を超えない場合、脆性損傷(例えば、亀裂)を生じさせることなく、最終番の微細構造の表面性状に応じた仕上げ面を生成することができる。

0031

図15に示す態様において、主軸一回転当たりの工具移動量を「微細構造の基本周期の整数倍」から「被削材の延性モード切削の条件以下である」に変更することにより、図15に示す態様を前記工具(B−1)として使用できる。

0032

これまで述べたとおり、本発明においては、回転切削用工具の切れ刃稜線上に、マイクロ・ナノメータースケールの複数の微細構造を規則的に配置することにより、各微細構造の切込量を、延性モード切削を達成できる限界切込量以下になるように設定することができるため、被削材の仕上げ面に脆性破壊を生じさせることなく、平滑な仕上げ面を、あるいは、任意の表面性状を有する仕上げ面を、生成することができる。
延性モード切削を達成できる限界切込量は、例えば、使用する工作機械および回転切削用工具の種類、被削材および回転切削用工具の材料、回転切削の各種実施条件(例えば、工具または被削材の回転数、工具または被削材の送り速度、被削材への工具切れ刃の切込量、工具または被削材の傾斜角、切削液等)等により変動するため、後述の実施例に示すように、回転切削の実施予定の条件下において、予備実験を行い、例えば、脆性破壊の有無や加工面の状態を評価指標として、微細構造の形状および大きさ、並びに配置方法を決定することができる。
あるいは、微細構造の形状および大きさ、並びに配置方法を予め決定しておき、予備実験において、回転切削の各種条件を変化させながら、前記評価指標により好適実施条件を決定することにより、本発明を実施することができる。

0033

被削材材料として光学ガラス以外の脆性材料を選択し、工具としてボールエンドミル以外の回転切削用工具を選択した場合であっても、それぞれの通常の加工条件は当業者にとってよく知られており、前記の場合と同様にして、所望の仕上げ面を生成することのできる微細構造および加工条件を決定することができる。

0034

(本発明の作用)
本発明により、脆性損傷を発生させることなく、平滑な仕上げ面または任意の表面性状を有する仕上げ面を生成できる理由について、本発明は以下の作用機序に限定されるものではないが、本発明者は以下の作用機序を考えている。
回転切削において切れ刃稜線形状の変化(所謂、凹凸)により脆性損傷が発生する原因の一つに、図17に示すように切れ刃2または被削材9が一回転するまでに稜線上各位置の切れ刃の切込量が局所的に変化し、過大な切込みとなる箇所から脆性損傷が発生することが考えられる。この現象は、後述の実施例における比較例に示すように、仮に凹凸のない稜線を有する切れ刃(例えば、後述の実施例における比較例)を用いたとしても、脆性損傷が発生したため、回転切削中に切れ刃稜線形状の不規則な変化が起こり、その結果、図17と同じ状態になっていることが推測される。
しかし、図18に示すように、特定形状を有する複数の微細構造4を切れ刃2の稜線上に規則的に配置した場合、突発的な過大な切込量の発生を抑制することにより、切込量を延性モード切削条件以下とすることが可能であり、その結果、局所的な切込量の増大および応力状態の変化が起こらず、材料除去領域の全て(但し、回転切削の初期段階を除く)で脆性損傷を起こさずに延性モード切削が行えるものと考えられる。

0035

以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。

0036

《実施例1》
本実施例における切削試験では、切れ刃稜線上に周期2μm、振幅1.0μmの三角波状の微細構造を成形した刃数1枚の工具ノーズ半径0.5mmの単結晶ダイヤモンド製ボールエンドミルを用いてソーダライムガラス基盤に対して溝切削を行い、仕上げ面性状(平滑面)の観察により脆性損傷への影響を評価した。

0037

図19に、試験に使用した工具の微細構造を示す。図19(a)は、ボールエンドミルの先端の形状を示す走査電子顕微鏡写真であり、図19(b)は、図19(a)の円で囲んだ領域の部分拡大写真であり、図19(c)は、更に拡大した、微細構造の形状を示す部分拡大写真である。集束イオンビーム加工機(FIB)を用いて、稜線上で切削時に仕上げ面生成に寄与する領域(切れ刃高:144〜178μm、成形長(稜線上):48μm)に、周期2μm、振幅1.0μmの微細構造を生成した。三角波山頂部の頂角は90°である。

0038

工具を取り付ける加工機は、XY2軸のリニアステージ分解能0.1μm)とZ軸ステッピングモータステージ(分解能0.01μm)の計3軸で構成され、モーションコントローラにより各軸を同時制御することができる。最高回転数6万rpmのブラシレスモータスピンドルを被削材に対して特定の角度で傾斜させながらZ軸ステージ側面に治具を介して設置し、工具を傾斜させながら溝切削が行える。被削材は圧電式動力計上に設置したゴニオステージ上に設置し、工具送りに対して被削材を傾斜させながら切削を行うことが可能であるが、今回は被削材の取付け角を0度に固定し、工具送り方向に対する工具傾斜角45度、軸方向切込み20μm(一定)として溝切削を行った。なお、工具傾斜角は被削材上面に対し垂直方向を0度とし送りに対し工具が後退する方向を正とする。切削液に蒸留水を使用した。主な加工条件を表1に示す。

0039

0040

前記条件で切削した溝底部の仕上げ面の粗さ測定の結果を表2に示す。Ra、Rzのいずれの評価指標においても、周期2μm、振幅1.0μmの微細構造を設けた本発明の工具は、微細構造を設けない比較例と比べて、より平滑な仕上げ面を生成できることが確認された。また、仕上げ面の観察においても、比較例では、仕上げ面全体に微細剥離が観察されたが、実施例では、微細な剥離も抑制されていた。

実施例

0041

0042

本発明は、光学ガラス、セラミックス等の脆性材料の回転切削の分野において利用することができる。

0043

1・・・工具;2・・・切れ刃;3・・・稜線;4・・・微細構造;
9・・・被削材;91・・・仕上げ面。

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