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技術 耐硫化腐食性に優れたAl含有フェライト系ステンレス鋼およびその製造方法

出願人 日鉄ステンレス株式会社
発明者 秦野正治菅生三月内田俊彦山岸昭仁
出願日 2015年8月28日 (3年11ヶ月経過) 出願番号 2015-169683
公開日 2017年3月2日 (2年5ヶ月経過) 公開番号 2017-043831
状態 特許登録済
技術分野 金属質材料の表面への固相拡散 熱処理 電解清浄、電解エッチング
主要キーワード トータル含有量 JIS準拠 耐硫化腐食性 Cu被覆層 硫化雰囲気 鋼板類 ステンレス鋼素地 低露点雰囲気
関連する未来課題
重要な関連分野

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課題

コーティングメッキ表面処理や3%以上のAl添加によらず耐硫化腐食性具備したAl含有フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法の提供。

解決手段

質量%で、C:0.03%以下、Si:2%以下、Mn:2%以下、Cr:13〜21%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:1.5〜2.5%、Ti:0.03〜0.5%、N:0.03%以下、Mg:0.0005〜0.01%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、膜厚100nm以下の表面被膜を有し、表面被膜の組成が、C、OおよびNを除いた原子%のカチオンのみの割合で、Al>60%、Cr<10%、Fe<10%、0.5<Mg<5%とする。表面被膜は、700〜1100℃の温度範囲で低露点水素ガス中焼鈍を行い付与する。

概要

背景

従来、化合物系薄膜太陽電池基板用材料には、熱膨張係数の小さいセラミックスガラスが使用されているが、これらに加えて、耐熱性に優れるステンレス鋼の適用も検討されている。

たとえば特許文献1、2には、平滑なステンレス鋼板の表面にアルミナ酸化シリコンあるいは窒化シリコン膜コーティングした絶縁性材料が開示されている。素材には、汎用フェライト系ステンレス鋼SUS430(17Cr鋼)が使用されている。さらに、特許文献3には、成膜性が良好なステンレス表面として、表面粗さパラメータのRzとRskの両者を規定した材料が開示されている。素材には、NbとCuを添加したSUS430J1L(18Cr−0.4Cu−0.4Nb)と汎用のオーステナイト系ステンレス鋼SUS304(18Cr−8Ni)が使用されている。

近年、太陽光発電は、化石燃料に替わる主要なエネルギーの一つに発展しつつあり、太陽電池技術開発加速している。中でも、CI系薄膜等の化合物系太陽電池は、低コストと高効率を両立した太陽電池として、将来の普及が期待されている。
化合物系薄膜太陽電池は、例えば、基板上に絶縁層を形成し、絶縁層上にMo層からなる第一の電極層製膜し、その上に光吸収層としてカルコパイライト型化合物層を被膜し、更に第2の電極層を製膜する。ここで、カルコパイライト型化合物とは、Cu−In−Ga−Se−S系(以下CIS系)に代表される5元系合金である。

古くから、太陽電池基板には、絶縁体で熱膨張係数の小さいガラスが広く使用されてきた。しかしながら、ガラスは脆くて重いため、ガラス表面に光吸収層を形成した太陽電池基板を大量生産することは容易でない。そこで、近年、軽量化と大量生産を指向するうえで、耐熱性と強度・延性バランスに優れるステンレス鋼を用いた太陽電池基板の開発も進められている。

たとえば特許文献4には、0.2mm以下のステンレス箔に対して、特許文献1や2で開示された絶縁被膜を形成させ、その絶縁性基板上に[0004]項記載のMo層からなる裏面電極およびCu(In1-xGax)Se2皮膜からなる光吸収層を形成する太陽電池基板材の製造方法が開示されている。ステンレス箔の素材は、SUS430、SUS444(18Cr−2Mo)、SUS447J1(30Cr−2Mo)が用いられている。

また、特許文献5及び6には、Cu被覆層を有するCu被覆鋼板において、Cu被覆層上に上記のMo電極およびCu(In1-xGax)Se2皮膜からなる光吸収層を形成したCIS太陽電池用電極基板が開示されている。ここで、Cu被覆鋼板の素材として、C:0.0001〜0.15%、Si:0.001〜1.2%、Mn:0.001〜1.2%、P:0.001〜0.04%、S:0.0005〜0.03%、Ni:0〜0.6%、Cr:11.5〜32.0%、Mo:0〜2.5%、Cu:0〜1.0%、Nb:0〜1.0%、Ti:0〜1.0%、Al:0〜0.2%、N:0〜0.025%、B:0〜0.01%、V:0〜0.5%、W:0〜0.3%、Ca、Mg、Y、REM希土類元素)の合計:0〜0.1%、残部Feおよび不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼を使用することが開示されている。但し、実施例で使用されるフェライト系ステンレス鋼はSUS430に限定されている。

最近、特許文献7には、耐熱性の良い絶縁皮膜を形成したステンレス鋼材およびその製造方法について開示されている。基材となるステンレス鋼は、C:0.0001〜0.15%、Si:0.001〜1.2%、Mn:0.001〜2.0%、P:0.001〜0.05%、S:0.0005〜0.03%、Ni:0〜2.0%,Cu:0〜1.0%、Cr:11.0〜32.0%、Mo:0〜3.0%、Al:1.0〜6.0%、Nb:0〜1.0%、Ti:0〜1.0%、N:0〜0.025%、B:0〜0.01%,V:0〜0.5%、W:0〜0.3%、Ca、Mg、Y、REM(希土類元素)の合計:0〜0.1%、残部Feおよび不可避的不純物からなり、Al酸化物層を介して、厚さ1.0μm以上のNiOとNiFe22O4の混合層が形成されていることを特徴としている。ここで、NiO等の混合層とAl酸化物層は、電気メッキによりNiを塗布した後、大気中の熱処理により鋼とNiメッキの界面にAl酸化物層を形成させかつNiメッキを酸化物層変質させることにより創られる。

特許文献8及び9には、化合物系薄膜太陽電池の製膜工程において、光吸収層のプリカーサーであるCu、In、Gaを基板にスパッタリング製膜後、CIS系化合物薄膜転化するために、硫化水素(H2S)の腐食性が高いガス雰囲気に曝される熱処理工程(硫化工程)が開示されている。コーティングやメッキ表面処理によらずステンレス鋼を基板に適用するには、金属面が露出するデバイスの裏面において、耐硫化腐食性を確保することが重要な課題である。そこで、特許文献9には、JFE18−3USR:3.4%のAlを含有したフェライト系ステンレス基板の適用が検討されている。

概要

コーティングやメッキの表面処理や3%以上のAl添加によらず耐硫化腐食性を具備したAl含有フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法の提供。質量%で、C:0.03%以下、Si:2%以下、Mn:2%以下、Cr:13〜21%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:1.5〜2.5%、Ti:0.03〜0.5%、N:0.03%以下、Mg:0.0005〜0.01%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、膜厚100nm以下の表面被膜を有し、表面被膜の組成が、C、OおよびNを除いた原子%のカチオンのみの割合で、Al>60%、Cr<10%、Fe<10%、0.5<Mg<5%とする。表面被膜は、700〜1100℃の温度範囲で低露点水素ガス中焼鈍を行い付与する。なし

目的

コーティングやメッキの表面処理によらずステンレス鋼を基板に適用するには、金属面が露出するデバイスの裏面において、耐硫化腐食性を確保することが重要な課題である

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

質量%で、C:0.03%以下、Si:2%以下、Mn:2%以下、Cr:13〜21%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:1.5〜2.5%、Ti:0.03〜0.5%、N:0.03%以下、Mg:0.0005〜0.01%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなるステンレス鋼の表面に、組成が、C、OおよびNを除いた原子%のカチオンのみの割合で、Al>60%、Cr<10%、Fe<10%、0.5<Mg<5%である膜厚100nm以下の表面被膜を有することを特徴とする耐硫化腐食性に優れたAl含有フェライト系ステンレス鋼

請求項2

前記ステンレス鋼が、質量%で、Ga:0.1%以下を含み、0.11≧Mg+Ga>0.002%を満たすことを特徴とする耐硫化腐食性に優れた請求項1に記載するAl含有フェライト系ステンレス鋼。

請求項3

請求項1または2に記載の前記ステンレス鋼において、表面被膜の組成が、原子%のカチオン割合で更にS<3%であることを特徴とする耐硫化腐食性に優れたAl含有フェライト系ステンレス鋼。

請求項4

前記ステンレス鋼が、更に、質量%で、Ni:1%以下、Cu:1%以下、Mo:2%以下、Nb:0.5%以下、V:0.5%以下、Sn:0.2%以下、Sb:0.2%、W:1%以下、Zr:0.5%以下、Co:0.5%以下、B:0.005%以下、Ca:0.005%以下、La:0.1%以下、Y:0.1%以下、Hf:0.1%以下、REM:0.1%以下、の1種または2種以上を含有していることを特徴とする耐硫化腐食性に優れた請求項1〜3のいずれか1項に記載するAl含有フェライト系鋼

請求項5

請求項1、2、4のいずれか1項に記載する組成を有するステンレス鋼を、水素ガスを含む雰囲気中で700〜1100℃の温度範囲熱処理することにより、前記ステンレス鋼の表面に請求項1または3に記載する表面被膜を形成させることを特徴とする耐硫化腐食性に優れたAl含有フェライト系ステンレス鋼の製造方法。

請求項6

請求項5に記載する水素ガスを含む雰囲気中の熱処理に次いで、3〜20重量%の硝酸水溶液中で電解酸洗を行うことにより、前記ステンレス鋼の表面に請求項1または3に記載する表面被膜を形成させることを特徴とする耐硫化腐食性に優れたAl含有フェライト系ステンレス鋼の製造方法。

請求項7

太陽電池基板として使用されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐硫化腐食性に優れたAl含有フェライト系ステンレス鋼。

技術分野

0001

本発明は、コーティングメッキ表面処理によらず、耐硫化腐食性に優れたAl含有フェライト系ステンレス鋼およびその製造方法に関する。本発明は、油炊きや燃焼環境硫化雰囲気に曝される用途、例えば、硫化水素ガスに曝される熱処理を含む製膜プロセスなどが該当し、特に近年、太陽光発電で注目されている化合物系薄膜太陽電池基板に好適である。

背景技術

0002

従来、化合物系薄膜太陽電池の基板用材料には、熱膨張係数の小さいセラミックスガラスが使用されているが、これらに加えて、耐熱性に優れるステンレス鋼の適用も検討されている。

0003

たとえば特許文献1、2には、平滑なステンレス鋼板の表面にアルミナ酸化シリコンあるいは窒化シリコン膜をコーティングした絶縁性材料が開示されている。素材には、汎用のフェライト系ステンレス鋼SUS430(17Cr鋼)が使用されている。さらに、特許文献3には、成膜性が良好なステンレス表面として、表面粗さパラメータのRzとRskの両者を規定した材料が開示されている。素材には、NbとCuを添加したSUS430J1L(18Cr−0.4Cu−0.4Nb)と汎用のオーステナイト系ステンレス鋼SUS304(18Cr−8Ni)が使用されている。

0004

近年、太陽光発電は、化石燃料に替わる主要なエネルギーの一つに発展しつつあり、太陽電池技術開発加速している。中でも、CI系薄膜等の化合物系太陽電池は、低コストと高効率を両立した太陽電池として、将来の普及が期待されている。
化合物系薄膜太陽電池は、例えば、基板上に絶縁層を形成し、絶縁層上にMo層からなる第一の電極層製膜し、その上に光吸収層としてカルコパイライト型化合物層を被膜し、更に第2の電極層を製膜する。ここで、カルコパイライト型化合物とは、Cu−In−Ga−Se−S系(以下CIS系)に代表される5元系合金である。

0005

古くから、太陽電池基板には、絶縁体で熱膨張係数の小さいガラスが広く使用されてきた。しかしながら、ガラスは脆くて重いため、ガラス表面に光吸収層を形成した太陽電池基板を大量生産することは容易でない。そこで、近年、軽量化と大量生産を指向するうえで、耐熱性と強度・延性バランスに優れるステンレス鋼を用いた太陽電池基板の開発も進められている。

0006

たとえば特許文献4には、0.2mm以下のステンレス箔に対して、特許文献1や2で開示された絶縁被膜を形成させ、その絶縁性基板上に[0004]項記載のMo層からなる裏面電極およびCu(In1-xGax)Se2皮膜からなる光吸収層を形成する太陽電池基板材の製造方法が開示されている。ステンレス箔の素材は、SUS430、SUS444(18Cr−2Mo)、SUS447J1(30Cr−2Mo)が用いられている。

0007

また、特許文献5及び6には、Cu被覆層を有するCu被覆鋼板において、Cu被覆層上に上記のMo電極およびCu(In1-xGax)Se2皮膜からなる光吸収層を形成したCIS太陽電池用電極基板が開示されている。ここで、Cu被覆鋼板の素材として、C:0.0001〜0.15%、Si:0.001〜1.2%、Mn:0.001〜1.2%、P:0.001〜0.04%、S:0.0005〜0.03%、Ni:0〜0.6%、Cr:11.5〜32.0%、Mo:0〜2.5%、Cu:0〜1.0%、Nb:0〜1.0%、Ti:0〜1.0%、Al:0〜0.2%、N:0〜0.025%、B:0〜0.01%、V:0〜0.5%、W:0〜0.3%、Ca、Mg、Y、REM希土類元素)の合計:0〜0.1%、残部Feおよび不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼を使用することが開示されている。但し、実施例で使用されるフェライト系ステンレス鋼はSUS430に限定されている。

0008

最近、特許文献7には、耐熱性の良い絶縁皮膜を形成したステンレス鋼材およびその製造方法について開示されている。基材となるステンレス鋼は、C:0.0001〜0.15%、Si:0.001〜1.2%、Mn:0.001〜2.0%、P:0.001〜0.05%、S:0.0005〜0.03%、Ni:0〜2.0%,Cu:0〜1.0%、Cr:11.0〜32.0%、Mo:0〜3.0%、Al:1.0〜6.0%、Nb:0〜1.0%、Ti:0〜1.0%、N:0〜0.025%、B:0〜0.01%,V:0〜0.5%、W:0〜0.3%、Ca、Mg、Y、REM(希土類元素)の合計:0〜0.1%、残部Feおよび不可避的不純物からなり、Al酸化物層を介して、厚さ1.0μm以上のNiOとNiFe22O4の混合層が形成されていることを特徴としている。ここで、NiO等の混合層とAl酸化物層は、電気メッキによりNiを塗布した後、大気中の熱処理により鋼とNiメッキの界面にAl酸化物層を形成させかつNiメッキを酸化物層変質させることにより創られる。

0009

特許文献8及び9には、化合物系薄膜太陽電池の製膜工程において、光吸収層のプリカーサーであるCu、In、Gaを基板にスパッタリング製膜後、CIS系化合物薄膜転化するために、硫化水素(H2S)の腐食性が高いガス雰囲気に曝される熱処理工程(硫化工程)が開示されている。コーティングやメッキの表面処理によらずステンレス鋼を基板に適用するには、金属面が露出するデバイスの裏面において、耐硫化腐食性を確保することが重要な課題である。そこで、特許文献9には、JFE18−3USR:3.4%のAlを含有したフェライト系ステンレス基板の適用が検討されている。

先行技術

0010

特開平6−299347号公報
特開平6−306611号公報
特開2011−204723号公報
特開2012−169479号公報
特開2012−59854号公報
特開2012−59855号公報
特開2012−214886号公報
特許第3249407号公報
特許第3249408号公報

発明が解決しようとする課題

0011

特許文献8に開示された通り、将来、主要な太陽光発電としてCIS系化合物系薄膜太陽電池の普及を拡大していくには、基板用ステンレス鋼板の耐硫化腐食性を高めてコーティング等の煩雑な表面処理を省略した生産性の向上が重要な課題である。この点に関しては、特許文献1〜7に開示された技術ではコーティングやメッキによるステンレス鋼の適用技術、特許文献9に開示された技術は3.4%のAl含有フェライト系ステンレス基板の適用に限定される。
そこで本発明の目的は、コーティングやメッキの表面処理、あるいは3%以上のAl添加によらず耐硫化腐食性を具備したAl含有フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0012

本発明者らは、前記した課題を解決するために、Al含有フェライト系ステンレス鋼の表面被膜と耐硫化腐食性について鋭意実験と検討を重ね、本発明を完成させた。以下に本発明で得られた知見について説明する。

0013

(a)SUS430LXやSUS430J1Lに代表される高純度フェライト系ステンレス鋼は、400〜700℃の高温で0.5〜2h程度、数%の硫化水素ガスを含む雰囲気中に曝されると、鋼素地脱落に至るまで硫化腐食が進行する。これら硫化腐食は、ステンレス鋼の構成元素であるFeとCrが雰囲気ガス中のSと反応してFeS2やFeCr2S4を形成して鋼を浸食することによる。

0014

(b)上述した硫化腐食は、特許文献9で開示されたSUH21の規格に該当する3%以上のAl量を含有するフェライト系ステンレス鋼の場合、高温でAl2O3の連続被膜を形成するために改善する。一方、3%未満のAl含有フェライト系ステンレス鋼の場合、耐硫化腐食性は表面の被膜組成の影響を受ける。通常、酸洗研磨後の表面には、数nmからなる薄いFeとCrの不働態被膜が形成されている。硫化腐食は、FeとCrを主体とする不働態被膜が表面に形成されている場合に生じ易い。一方、予め表面被膜中のAl濃度を高めてFe及びCr濃度を低減することに加えて、Mg、Mg+Ga量を高めた場合、硫化腐食を顕著に抑止できる新規な知見が得られた。

0015

(c)前記した表面被膜中のAl、Mg量を高めるには、3%未満でステンレス鋼のAl含有量を高めるのではなく、微量元素としてMgおよびGaの添加が効果的であることを知見した。
MgやGaは、表面活性元素であり、微量添加でも低酸素雰囲気下において選択的に表面に濃化し、更にMgは酸化物を形成し、FeやCrの酸化を抑制してAlを主体とした被膜形成に対して有効に作用する。特に、Mg+Gaのトータル含有量が0.002%を超える場合に顕著な効果を奏でる。

0016

(d)更に、2%Al含有フェライト系ステンレス鋼の詳細な表面分析から、表面被膜からステンレス鋼素地にかけて検出されるS量を低減することで、前記した耐硫化腐食性の向上が重畳することも知見した。

0017

(e)前記した表面被膜形成には、冷間加工後水素ガスを含む低露点雰囲気中で光輝焼鈍を行うことが有効である。その場合でも、前記したMg、Gaを微量添加することが表面の被膜形成に有効である。

0018

(f)更に、表面被膜からステンレス鋼素地にかけてのSを低減して一層の耐硫化腐食性を得るには、前記した光輝焼鈍に次いで、硝酸電解酸洗処理を施すことが効果的である。

0019

上記(a)〜(f)の知見に基づいて成された本発明の要旨は、以下の通りである。

0020

(1)質量%で、C:0.03%以下、Si:2%以下、Mn:2%以下、Cr:13〜21%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:1.5〜2.5%、Ti:0.03〜0.5%、N:0.03%以下、Mg:0.0005〜0.01%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなるステンレス鋼の表面に、表面被膜の組成が、C、OおよびNを除いた原子%のカチオンのみの割合で、Al>60%、Cr<10%、Fe<10%、0.5%<Mg<5%である膜厚100nm以下の表面被膜を有することを特徴とする耐硫化腐食性に優れたAl含有フェライト系ステンレス鋼。
(2)前記ステンレス鋼が、質量%で、Ga:0.1%以下を含み、0.11≧Mg+Ga>0.002%を満たすことを特徴とする耐硫化腐食性に優れた(1)に記載するAl含有フェライト系ステンレス鋼。
(3)(1)または(2)に記載の前記ステンレス鋼において、表面被膜の組成が、原子%のカチオン割合で更にS<3%であることを特徴とする耐硫化腐食性に優れたAl含有フェライト系ステンレス鋼。
(4)前記ステンレス鋼が、更に、質量%で、Ni:1%以下、Cu:1%以下、Mo:2%以下、Nb:0.5%以下、V:0.5%以下、Sn:0.2%以下、Sb:0.2%、W:1%以下、Zr:0.5%以下、Co:0.5%以下、B:0.005%以下、Ca:0.005%以下、La:0.1%以下、Y:0.1%以下、Hf:0.1%以下、REM:0.1%以下、の1種または2種以上を含有していることを特徴とする耐硫化腐食性に優れた(1)〜(3)のいずれかに記載するAl含有フェライト系鋼
(5)(1)、(2)、(4)のいずれかに記載する組成を有するステンレス鋼を、水素ガスを含む雰囲気中で700〜1100℃の温度範囲で熱処理することにより、前記ステンレス鋼の表面に(1)または(3)に記載する表面被膜を形成させることを特徴とする耐硫化腐食性に優れたAl含有フェライト系ステンレス鋼の製造方法。
(6)(5)に記載する水素ガスを含む雰囲気中の熱処理に次いで、3〜20重量%の硝酸水溶液中で電解酸洗を行うことにより、前記ステンレス鋼の表面に(1)または(3)に記載する表面被膜を形成させることを特徴とする耐硫化腐食性に優れたAl含有フェライト系ステンレス鋼の製造方法。
(7)太陽電池基板として使用されることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の耐硫化腐食性に優れたAl含有フェライト系ステンレス鋼。
以下、上記(1)〜(4)、(7)の鋼板に係る発明をそれぞれ本発明という。また、(1)〜(7)の発明を合わせて、本発明ということがある。

発明の効果

0021

本発明によれば、コーティングやメッキの表面処理や3%以上のAl添加によらず耐硫化腐食性を具備し、例えば、製膜プロセスなどで硫化水素ガスに曝される熱処理を伴うCIS系薄膜太陽電池の基板に好適なAl含有フェライト系ステンレス鋼を得ることができるという顕著な効果を奏するものである。

0022

以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。

0023

(I)成分の限定理由を以下に説明する。

0024

Cは、フェライト相に固溶あるいはCr炭化物を形成して耐酸化性を低下させ、本発明の目標とする表面被膜の形成を阻害する。このため、C量は少ないほど良く、上限を0.03%とする。但し、過度の低減は精錬コストの上昇に繋がるため、下限は0.001%とすることが好ましい。耐硫化腐食性と製造性の点から、好ましい範囲は0.002〜0.02%である。

0025

Siは、本発明の目的とする耐硫化腐食性を確保する上で重要な元素である。Siは酸化被膜中に固溶するとともに、酸化被膜/鋼界面にも濃化し、硫化水素(H2S)の鋼中への浸入を抑制して耐硫化腐食性を向上させる。これらの効果を得るためには下限は0.1%とすることが好ましい。一方、過度な添加は、鋼の靭性加工性の低下を招くため、上限は2%とする。耐硫化腐食性と基本特性の点から、1.5%以下が好ましい。Siの効果を積極的に活用する場合は0.3%以上とすることが好ましい。

0026

Mnは、Feの表面酸化を抑制して本発明の目標とするAlやSi及びTiの表面被膜形成を促す作用を持つ。これらの効果を得るために下限は0.1%以上とすることが好ましい。一方、過度な添加は耐酸化性を低下させ、本発明の目標とする耐硫化腐食性を阻害することに繋がるため、上限は2%とする。耐酸化性と本発明の耐硫化腐食性の点から、1%以下が好ましい。Mnの効果を積極的に活用する場合は、0.2〜1%の範囲とすることが好ましい。

0027

Crは、耐食性に加えて、本発明の目標とする表面被膜形成と耐硫化腐食性を確保する上でも基本となる構成元素である。本発明において、13%未満では目標とする耐硫化腐食性が十分に確保されない。従って、下限は13%とする。しかし、過度なCrの添加は表面被膜中のCr濃度を高めて、高温硫化水素雰囲気に曝された際、耐硫化腐食性を阻害することに加え、合金コストの上昇を招く。上限は耐硫化腐食性と合金コストの視点から21%とする。好ましい範囲は15〜20%、より好ましい範囲は17〜19%である。

0028

Pは、製造性や溶接性を阻害する元素であり、その含有量は少ないほど良いため、上限を0.05%とする。但し、過度な低減は精錬コストの上昇に繋がるため、下限は0.003%とすることが好ましい。製造性と溶接性の点から、好ましい範囲は0.005〜0.04%、より好ましくは0.01〜0.03%である。

0029

Sは、鋼中に含まれる不可避的不純物元素であり、本発明の目標とする耐硫化腐食性を阻害する。特に、表面被膜中でのSの存在や、鋼中でのMn系介在物や固溶Sは、高温硫化水素雰囲気に曝された際、表面被膜の破壊起点として作用する。従って、S量は低いほど良いため、上限は0.01%とする。但し、過度な低減は原料や精錬コストの上昇に繋がるため、下限は0.0001とする。製造性と耐硫化腐食性の点から、好ましい範囲は0.0001〜0.002%、より好ましくは0.0002〜0.001%である。

0030

Alは、脱酸元素に加えて、本発明の目標とする表面被膜改質による耐硫化腐食性を達成するために必須の添加元素である。本発明において、1.5%未満では目標とする被膜組成を実現できず耐硫化腐食が得られない。従って、下限は1.5%とする。しかし、3%以上のAlの添加は、鋼の靭性や溶接性の低下を招き生産性を阻害するため、合金コストの上昇とともに経済性と製造性にも課題がある。上限は、経済性と製造性の視点から2.5%とする。2%未満であってもよい。本発明の耐硫化腐食性及び基本特性の点から、好ましい範囲は1.7〜2.3%である。

0031

Tiは、C,Nを固定する安定化元素の作用による鋼の高純度化を通じて耐酸化性を向上させることに加えて、本発明の目標とする被膜改質による耐硫化腐食性を向上させる。下限は、これら効果が発現する0.03%以上とする。但し、過度な添加は合金コストの上昇や再結晶温度の上昇に伴う製造性の低下にも繋がるため、上限は0.5%とする。合金コストや製造性及び耐硫化腐食性の点から、好ましい範囲は0.05〜0.35%、更にTiの効果を積極的に活用するより好ましい範囲は0.1〜0.25%である。

0032

Nは、Cと同様に本発明の目標とする耐硫化腐食性を阻害する。このため、N量は少ないほど良く、上限を0.03%とする。但し、過度な低減は精錬コストの上昇に繋がるため、下限は0.002%とすることが好ましい。耐硫化腐食性と製造性の点から、好ましい範囲は0.005〜0.02%である。

0033

上記の基本組成に加えて、本発明の目標とする表面被膜形成と耐硫化腐食性を得るには、MgおよびGaを添加する。これら元素は、前記した通り、表面に濃縮してFeやCrの酸化を抑制してAlを主体とする被膜形成を促進する作用がある。さらにSiやTi量の高い被膜形成を促進する作用もある。これら効果を得るために、Mg、Gaの下限は0.0005%とする。Mg、Gaについては、そのトータル含有量を0.002%超とする。一方、過度な添加は、鋼の精錬コスト上昇や製造性ならびに本発明の目標とする耐硫化腐食性を阻害するため、上限は、Mg:0.01%、Ga:0.1%とする。本発明の目標とする耐硫化腐食性とコスト及び製造性の点から、Mg:0.001〜0.008%、Ga:0.001〜0.02%の範囲とすることが好ましい。

0034

また、本発明のステンレス鋼は、更に必要に応じて、Ni:1%以下、Cu:1%以下、Mo:2%以下、Nb:0.5%以下、V:0.5%以下、Sn:0.2%以下、Sb:0.2%以下、W:1%以下、Zr:0.5%以下、Co:0.5%以下、B:0.005%以下、Ca:0.005%以下、La:0.1%以下、Y:0.1%以下、Hf:0.1%以下、REM:0.1%以下の1種または2種以上を含有しているものであってもよい。

0035

Ni、Cu、Mo、Nb、V、W、Sn、Sb、Coは、当該ステンレス鋼の高温強度と耐食性を高めるのに有効な元素であり、必要に応じて添加する。但し、過度な添加は合金コストの上昇や製造性を阻害することに繋がるため、Ni、Cu、Wの上限は1%とする。Moは熱膨張係数の低下による高温変形の抑制にも有効な元素であることから上限は2%とする。Nb、V、Coの上限は0.5%とする。Sn、Sbの上限は製造性の点から0.2%とする。いずれの元素も、より好ましい含有量の下限は0.05%とする。

0036

B、Caは、熱間加工性や2次加工性を向上させる元素であり、必要に応じて添加する。但し、過度な添加は製造性を阻害することに繋がるため、上限は0.005%とする。好ましい下限は0.0001%とする。

0037

Zr、La、Y、Hf、REMは、熱間加工性や鋼の清浄度を向上し、ならびに耐酸化性改善に対しても、従来から有効な元素であり、必要に応じて添加しても良い。但し、本発明の目標とする耐硫化腐食性は、これら元素の添加効果に頼るものではい。添加する場合、Zrの上限は0.5%、La、Y、Hf、REMの上限はそれぞれ0.1%とする。Zrのより好ましい下限は0.01%、La、Y、Hf、REMの好ましい下限は0.001%とする。ここで、REMは原子番号57〜71に帰属する元素であり、例えば、Ce、Pr、Nd等である。

0038

以上説明した各元素の他にも、本発明の効果を損なわない範囲で不純物元素を含有する。一般的な不純物元素である前述のP、Sを始め、Zn、Bi、Pb、Se、H、Ta等は可能な限り低減することが好ましい。これらの元素は、本発明の課題を解決する限度において、その含有割合が制御され、その含有量はZn≦500ppm、Bi≦100ppm、Pb≦100ppm、Se≦100ppm、H≦100ppm、Ta≦500ppmである。

0039

(II)表面被膜の限定理由について以下に説明する。
本発明のAl含有フェライト系ステンレス鋼は、耐硫化腐食性を発現させるために、上述した鋼成分を有し、更にMg、Mg+Gaを高めてAl主体の被膜を形成するものとする。被膜厚さの上限は100nmとし、生産性を考慮した光輝焼鈍又は光輝焼鈍と同等な効果が得られる熱処理や酸洗を施して100nm以下とすることが好ましい。被膜厚さの下限は特に規定するものではないが、好ましくは硫化水素中の耐硫化腐食性に効果を発揮する3nm以上とする。好ましい膜厚の範囲は3〜30nmである。

0040

上記の被膜組成は、H2S中の耐硫化腐食性に効果を発揮するために、O、C、及びNを除くカチオンイオン割合において、Al>60原子%、Cr<10原子%、Fe<10原子%、Mg>0.5原子%とする。Alは表面被膜の内層から地鉄界面にかけて濃化し、腐食性ガスSの鋼への侵入を顕著に抑制する。これらの効果は、表面被膜中のAl濃度を60原子%超とすることで顕著に発現し、好ましくは70原子%以上、より好ましくは80原子%以上である。Al濃度の上限は、特に規定するものでないが、光輝焼鈍等の効率を考慮して90原子%とすることが好ましい。CrとFeは、Alの濃縮した被膜形成により低下し、SとCrやFeの化合物からなる腐食生成物を顕著に低減させることができる。これら効果は、CrとFe濃度を10原子%以下に低減することで発現し、好ましくは7原子%以下、より好ましくは5原子%以下である。CrとFe濃度の下限は、特に規定するものでないが、光輝焼鈍等の効率を考慮して1原子%、より好ましくは2原子%とする。

0041

MgはAlを主体とする表面被膜中にも含有し、本発明の目標とする耐硫化腐食性の改善作用を持つ。これら効果は、被膜中Mg濃度を0.5原子%超とすることで得られ、好ましくは1原子%以上である。過度なMgの上昇は、逆にAlを主体とする被膜形成を阻害するため、上限は5原子%とする。好ましくは3原子%以下である。更に好ましくはSiやTiを表面被膜中および地鉄界面に濃縮して、耐硫化腐食性を高めることが効果的である。これら効果を得るには、表面被膜中のSi+Ti>5原子%とする。好ましくは、Si+Ti濃度は8原子%以上であり、両元素を複合して含有することが更に好ましい。過度なSi+Tiの増加はAlを主体とする被膜形成を阻害するため、上限は15原子%とする。好ましくは12原子%以下、より好ましくは10原子%以下とする。

0042

更に、表面被膜のS量は、高温での硫化水素による腐食起点を抑制するために、3原子%以下とすることが好ましい。より好ましくは2原子%以下、更に好ましくは1原子%未満である。S量の下限は特に規定するものではないが、非検出=ゼロである。

0043

表面被膜の組成はAl、Mg、S、Si、Ti、Cr、Feの存在状態については、X線光電子分光法により調べることができる。X線源=mono−AlKα線入射X線エネルギー=1486.6eVの場合、各元素の存在状態は、下記の結合エネルギー付近におけるスペクトルの検出により確認することができる。X線検出角度は90°とし、表面から5nm程度深さを非破壊分析することができる。
Al2s:119eV、Mg1s:1303eV、S2p:160eV
Si2p:153eV、Ti2p3/2:456〜458eV、
Cr2p3/2:576eV Fe2p3/2:710eV
ここで、各元素の濃度は、各スペクトルの積分強度を測定し、CやO、Nの軽元素を除くカチオンイオン換算で求めることができる。
被膜厚さは、同分析装置のArスパッタ法により、Oのプロファイルを測定し、Oの強度が半分の値となる半値幅で求めることができる。

0044

(III )製造方法について以下に説明する。
(I)項に記載する成分の鋼において(II)項に記載した表面被膜を形成させるために、以下の諸条件で熱処理することが好ましい。素材のうち鋼板は、薄板、箔、厚中板を対象とし、製造方法は特に規定するものでない。ここで、薄板は0.2mm以上、箔は0.02〜0.2mm、厚中板は6mm以上の板厚を対象にするものとする。鋼の表面粗度は特に規定するものでなく、JIS準拠したBA、2B、2D、No.4、研磨などであれば良い。

0045

本発明のステンレス鋼のうち、鋼板類は、主として,熱間圧延鋼帯焼鈍あるいは焼鈍を省略してデスケリングの後冷間圧延し,続いて光輝焼鈍による仕上げ焼鈍や必要に応じてデスケ−リングした冷延焼鈍板を対象としている。仕上げ焼鈍は、700〜1100℃とするのが好ましい。700℃未満では鋼の軟質化と再結晶が不十分となり、所定の材料特性が得られないこともある。他方、1100℃超では粗大粒となり、鋼の靭性・延性を阻害することもある。

0046

本発明の目標とするAlを主体として、Mgを高めた表面被膜の形成には、冷間加工後に水素ガスを含む低露点雰囲気中で光輝焼鈍を行うことが有効である。光輝焼鈍の雰囲気ガスは、CrとFeの酸化を抑制して上記元素を選択的に表面に酸化させるために、水素ガスを50体積%以上含み残部は不活性ガスとする。雰囲気ガスの露点は、−40℃以下が好ましく、水素ガスは80体積%以上が好ましく、より好ましくは90体積%以上とする。残部の不活性ガスは、工業的には安価な窒素ガスが好ましいが、ArガスやHeガスでも良い。また、本発明の目標とする表面被膜の形成を促進または支障ない範囲で雰囲気ガス中に酸素やその他のガスが5体積%未満の範囲で混入しても構わない。特に、前記した低露点の水素ガス雰囲気下において、0.1体積%以上、3体積%未満の酸素ガスを混入させることで、Al、Mgを選択的に酸化させて本発明の目標とする耐硫化腐食性に好適な表面被膜の形成を促進させることができる。この場合、Si、Tiも選択的に酸化させてもよい。

0047

光輝焼鈍の温度は、鋼の再結晶温度700℃以上とし、雰囲気ガスの露点を下げるために800℃以上とすることが好ましく、より好ましくは850℃以上とする。他方、1100℃超では粗大粒となり、前記した通り、鋼の靭性・延性など材質上好ましくない。鋼板の加熱温度は、850〜1000℃の範囲とすることが好ましい。上記温度に滞留する加熱時間は、光輝焼鈍を工業的な連続焼鈍ラインで実施することを想定して10分以内とすることが好ましい。より好ましくは5分以内とする。昇温速度はFe、Crの酸化を抑制するために10℃/秒以上、好ましくは15℃/秒以上とすることが好ましい。昇温速度の上限は特に規定するものではないが、工業生産可能な視点から、50℃/秒以下とすることが好ましい。
これら光輝焼鈍をバッチ炉で実施する場合においては、加熱温度の下限や加熱時間の上限は特に規定するものでなく、例えば、700℃、24時間としても構わない。ここで、本発明の目標とする表面皮膜の形成と耐ガス腐食性を達成できる本発明のステンレス鋼において、当該光輝焼鈍条件に限定されるものでないことは言うまでもない。

0048

本発明の耐硫化腐食性に好適な被膜組成としてS量を低減するために、光輝焼鈍に次いで、硝酸水溶液中で電解酸洗を行うことが好ましい。硝酸濃度は、表面に付着したSを電解で除去するために3〜20重量%の範囲が好ましい。硝酸濃度が3%未満の場合、電解酸洗の効果が得られ難い。一方、硝酸濃度が20%を超えると、表面被膜へのCrの濃化が進行し、Al主体の表面被膜を阻害することに繋がる。硝酸電解は、工業的な電解酸洗装置で実施することが好ましく、例えば、前処理槽や複数の電解酸洗槽を備えた設備において水洗いや希硫酸電解酸洗などの洗浄工程を施した後、硝酸電解を実施しても良い。硝酸電解の電流密度と温度は被膜組成を害さない限り、特に限定するものではない。

0049

以下、本発明の実施例を説明する。

0050

表1の成分を有するフェライト系ステンレス鋼を溶製し、熱間圧延と焼鈍を実施した後、冷間圧延を経て板厚0.05〜0.5mmの箔又は薄板とした。ここで、鋼の成分は、本発明で規定する範囲とそれ以外とした。冷延鋼板は、いずれも再結晶が完了する800〜1000℃の範囲で光輝焼鈍(BA)による仕上げ焼鈍を行った。更に、一部は8%硝酸水溶液中で硝酸電解酸洗を実施した。得られた鋼板は、表面被膜のXPS分析を行い、700℃の2%H2S−bal.N2雰囲気中1hの熱処理を実施して、耐硫化腐食性を評価した。

0051

0052

光輝焼鈍は、水素ガスを80〜100体積%含み残部を窒素ガスとする雰囲気中で700〜1050℃、雰囲気ガス露点は−45〜−65℃の範囲で実施した。加熱時間は1〜3分、一部は3%未満で酸素ガスを混入させた。また、一部は、同水素ガス雰囲気中600分のバッチ炉による熱処理とした。作製した鋼板の表面被膜は、0042項で記載したXPS法により、被膜中のAl、Mg、S、Cr、Feの組成を定量した。被膜厚さは、Arスパッタ法により、Oの半値幅とした。

0053

耐硫化腐食性は、目視判定にて、腐食が観察されない状態を「◎」、メタルの脱落には至っていない軽微な腐食を「○」、メタルが脱落する程度の腐食に至ったものを「×」とした。本発明の目標とする耐硫化腐食性は、「◎」ないし「○」に該当する場合とする。

0054

表2に表面被膜と耐硫化腐食性の評価結果をまとめて示す。
No.1〜8は、本発明で規定する成分と表面被膜を有し、H2S中の耐硫化腐食性を達成したものである。No.3、4、7、8は、微量元素Mg+Gaの好適量を含み、表面被膜中の最も好適なAl濃度80%以上と、S量<1%を満たすものであり、顕著な耐硫化腐食性を発現し、評価は「◎」となった。ここで、No.3はGaの添加効果により被膜中のAl濃度が顕著に上昇した。また、No.7、8は、光輝焼鈍雰囲気中に微量の酸素を含有し、被膜中のAl濃度が顕著に上昇した。No.1、2、5、6は、本発明の目標とする被膜組成と耐硫化腐食性が得られ、評価は「○」となった。また、No.5、7、8は、光輝焼鈍後の硝酸電解により被膜中のS濃度が低減した。
鋼No.9〜17は、本発明で規定する鋼成分から外れるものであり、本発明で規定する光輝焼鈍を実施しても本発明の被膜組成を満足せず、目標とする耐硫化腐食性が得られず、評価は「×」となった。
なお、鋼Aについて、光輝焼鈍ではなく、焼鈍酸洗を施したところ、本発明の表面被膜の形成は無く、耐硫化腐食性は「×」であった。

0055

実施例

0056

以上の結果から、3%未満のAl含有フェライト系ステンレス鋼において、耐硫化腐食性を付与するには、本発明で規定する被膜中のAl、Cr、Fe、Mgの範囲を満足することが必要である。ここで、耐硫化腐食性を高めるには、前記したAl濃度を80%以上に高めてS濃度も1%未満に低減することが有効である。好適な被膜組成の制御には、0.11≧Mg+Ga>0.002%、光輝焼鈍雰囲気中に微量の酸素を含有させる、光輝焼鈍後に硝酸電解を施すことがより効果的であることが分かる。

0057

本発明によれば、コーティングやメッキの表面処理や3%以上のAl添加によらず耐硫化腐食性を具備し、例えば、製膜プロセスなどで硫化水素ガスに曝されるCIS系太陽電池基板に好適なAl含有フェライト系ステンレス鋼を得ることができる。

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