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技術 溶接金属、及び溶接金属の製造方法

出願人 株式会社神戸製鋼所
発明者 難波茂信岡崎喜臣山下賢井海和也
出願日 2015年8月27日 (5年3ヶ月経過) 出願番号 2015-168245
公開日 2017年3月2日 (3年9ヶ月経過) 公開番号 2017-042799
状態 特許登録済
技術分野 溶接材料およびその製造 溶接用非金属材料(フラックス) アーク溶接一般
主要キーワード ヒーリング効果 Cr鋼製 使用データベース ボイラーチューブ 圧力容器用 高温物性 液相側 ワイヤ供給速度
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (2)

課題

タンデムアーク溶接のような大入熱溶接を行っても高温割れが発生し難い溶接金属を提供する。

解決手段

C:0.03〜0.08質量%、Si:0.01〜0.5質量%、Mn:0.6〜2.0質量%、Ni:0.1〜0.8質量%、Cr:8〜10質量%、Mo:0.7〜1.1質量%、V:0.05〜0.5質量%、Nb:0.01〜0.1質量%、N:0.02〜0.08質量%、P:0.0001〜0.01質量%、S:0.0001〜0.01質量%、を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、下記式(1)で算出されるパラメータFSTが1260以上である、溶接金属とする。 FST=1449−2133×[C]+450×[N]−2365×[P]+543×[S]−19.8×[Mn] ・・・(1) (上記式(1)中、[C]、[N]、[P]、[S]及び[Mn]は、それぞれC、N、P、S及びMnの含有量(質量%)を表す。)

概要

背景

石油精製用の圧力容器周溶接などでは、肉厚が300mm程度の場合もあることから、大入熱かつ高効率のタンデムアーク溶接が一般的である。従来、石油精製用圧力容器用材料としては、改良2.25Cr−1Mo鋼が使われていたが、その使用温度は450℃程度までであった。これを500℃程度まで上げて、さらに反応効率を上げるために、圧力容器用材料として、改良9Cr鋼を使うなどのさらに耐熱性を高める必要がある。

改良9Cr鋼は、その優れた耐熱性から500〜600℃ともなる超超臨界石炭火力発電ボイラーチューブ用として広く実用化されてきた。したがって、その溶接金属においても、ボイラーチューブ用であれば、5〜40mm程度までの肉厚しかないため、TIG溶接やいわゆる手棒によるガスシールド溶接という低入熱溶接が一般的である。

例えば特許文献1には、アーク溶接法により形成される、特定組成を有する高Cr系溶接金属に関する発明において、電流250A−電圧11V、10cm/minという溶接条件で15〜18kJ/cmという溶接入熱のTIG溶接の事例が開示されている(特許文献1の段落0049)。また、特許文献2には、改良9Cr−1Mo鋼用溶接ワイヤに関する発明において、TIG溶接とシングルサブマージアーク溶接の事例が開示されており、シングルサブマージアーク溶接においては、溶接電流400A−電圧29〜30V、溶接速度30cm/minで、TIG溶接の約1.5倍となる23.2〜24kJ/cmの溶接入熱の事例が開示されている(特許文献2の段落0047〜0051、0058〜0059)。

概要

タンデムアーク溶接のような大入熱の溶接を行っても高温割れが発生し難い溶接金属を提供する。C:0.03〜0.08質量%、Si:0.01〜0.5質量%、Mn:0.6〜2.0質量%、Ni:0.1〜0.8質量%、Cr:8〜10質量%、Mo:0.7〜1.1質量%、V:0.05〜0.5質量%、Nb:0.01〜0.1質量%、N:0.02〜0.08質量%、P:0.0001〜0.01質量%、S:0.0001〜0.01質量%、を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、下記式(1)で算出されるパラメータFSTが1260以上である、溶接金属とする。 FST=1449−2133×[C]+450×[N]−2365×[P]+543×[S]−19.8×[Mn] ・・・(1) (上記式(1)中、[C]、[N]、[P]、[S]及び[Mn]は、それぞれC、N、P、S及びMnの含有量(質量%)を表す。)なし

目的

本発明は、タンデムアーク溶接のような大入熱の溶接を行っても高温割れが発生し難い溶接金属、及びその溶接金属の製造方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

C:0.03〜0.08質量%、Si:0.01〜0.5質量%、Mn:0.6〜2.0質量%、Ni:0.1〜0.8質量%、Cr:8〜10質量%、Mo:0.7〜1.1質量%、V:0.05〜0.5質量%、Nb:0.01〜0.1質量%、N:0.02〜0.08質量%、P:0.0001〜0.01質量%、S:0.0001〜0.01質量%、を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、下記式(1)で算出されるパラメータFSTが1260以上である、溶接金属。FST=1449−2133×[C]+450×[N]−2365×[P]+543×[S]−19.8×[Mn]・・・(1)(上記式(1)中、[C]、[N]、[P]、[S]及び[Mn]は、それぞれC、N、P、S及びMnの含有量(質量%)を表す。)

請求項2

請求項1に記載の溶接金属をタンデムアーク溶接によって形成する、溶接金属の製造方法。

請求項3

母材及び溶接ワイヤが用いられ、前記溶接ワイヤ中のC含有量(質量%)が前記母材中のC含有量(質量%)よりも少ない、請求項2に記載の溶接金属の製造方法。

請求項4

母材及び溶接ワイヤが用いられ、前記溶接ワイヤ中のMn含有量(質量%)が前記母材中のMn含有量(質量%)よりも多い、請求項2又は3に記載の溶接金属の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、溶接金属、及び溶接金属の製造方法に関する。より詳しくは、改良9Cr鋼溶接金属、及び改良9Cr鋼溶接金属の製造方法に関する。

背景技術

0002

石油精製用の圧力容器周溶接などでは、肉厚が300mm程度の場合もあることから、大入熱かつ高効率のタンデムアーク溶接が一般的である。従来、石油精製用圧力容器用材料としては、改良2.25Cr−1Mo鋼が使われていたが、その使用温度は450℃程度までであった。これを500℃程度まで上げて、さらに反応効率を上げるために、圧力容器用材料として、改良9Cr鋼を使うなどのさらに耐熱性を高める必要がある。

0003

改良9Cr鋼は、その優れた耐熱性から500〜600℃ともなる超超臨界石炭火力発電ボイラーチューブ用として広く実用化されてきた。したがって、その溶接金属においても、ボイラーチューブ用であれば、5〜40mm程度までの肉厚しかないため、TIG溶接やいわゆる手棒によるガスシールド溶接という低入熱溶接が一般的である。

0004

例えば特許文献1には、アーク溶接法により形成される、特定組成を有する高Cr系溶接金属に関する発明において、電流250A−電圧11V、10cm/minという溶接条件で15〜18kJ/cmという溶接入熱のTIG溶接の事例が開示されている(特許文献1の段落0049)。また、特許文献2には、改良9Cr−1Mo鋼用溶接ワイヤに関する発明において、TIG溶接とシングルサブマージアーク溶接の事例が開示されており、シングルサブマージアーク溶接においては、溶接電流400A−電圧29〜30V、溶接速度30cm/minで、TIG溶接の約1.5倍となる23.2〜24kJ/cmの溶接入熱の事例が開示されている(特許文献2の段落0047〜0051、0058〜0059)。

先行技術

0005

特開2000−015480号公報
特開2005−329415号公報

発明が解決しようとする課題

0006

例えば特許文献1及び特許文献2の開示からもみられるように、従来、改良9Cr鋼の溶接は、大きな入熱の溶接、又は大きな入熱を活用した高速の溶接となるような溶接条件では行われておらず、入熱が大きくなるタンデムアーク溶接はなされてこなかった。これは、改良9Cr鋼用の溶接金属が高温割れを起こし易いという性質があったからでもある。

0007

改良9Cr鋼に対して、これまでタンデムアーク溶接のような大入熱溶接を行うことができていなかったのは、次のような改良9Cr鋼自体の高温物性によるところも大きい。例えば、Fe−Cr合金高温液体になった場合は、2.25Cr鋼と9Cr鋼とでは1.5倍程度の粘度の差がある上に、凝固が進行し、液相側にC、P、Crなどが濃化して融点が低い偏析部が形成される。この偏析部が最終凝固部となり、高温割れが発生し易くなる。また、偏析し高い濃度となったCrが凝固温度を低下させるだけでなく、さらに粘度を上げることになるため、高温割れが生じたところに液相が流れ込んでその割れを塞ぐような、低粘度の液相に見られるいわゆるヒーリング効果は、高粘度の液相となる改良9Cr鋼では期待できない。

0008

そこで、本発明は、タンデムアーク溶接のような大入熱の溶接を行っても高温割れが発生し難い溶接金属、及びその溶接金属の製造方法を提供することを主目的とする。

課題を解決するための手段

0009

本発明に係る溶接金属は、C:0.03〜0.08質量%、Si:0.01〜0.5質量%、Mn:0.6〜2.0質量%、Ni:0.1〜0.8質量%、Cr:8〜10質量%、Mo:0.7〜1.1質量%、V:0.05〜0.5質量%、Nb:0.01〜0.1質量%、N:0.02〜0.08質量%、P:0.0001〜0.01質量%、S:0.0001〜0.01質量%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、下記式(1)で算出されるパラメータFSTが1260以上である、溶接金属である。
FST=1449−2133×[C]+450×[N]−2365×[P]+543×[S]−19.8×[Mn] ・・・(1)
(上記式(1)中、[C]、[N]、[P]、[S]及び[Mn]は、それぞれC、N、P、S及びMnの含有量(質量%)を表す。)
本発明に係る溶接金属の製造方法は、本発明に係る溶接金属をタンデムアーク溶接によって形成する方法である。
この溶接金属の製造方法は、溶接ワイヤ中のC含有量(質量%)が母材中のC含有量(質量%)よりも少ない関係で母材及び溶接ワイヤが用いられてよい。
この溶接金属の製造方法は、溶接ワイヤ中のMn含有量(質量%)が母材中のMn含有量(質量%)よりも多い関係で母材及び溶接ワイヤが用いられてよい。

発明の効果

0010

本発明によれば、タンデムアーク溶接のような大入熱の溶接を行っても高温割れが発生し難い溶接金属を実現することができ、また、その溶接金属を高効率に製造することができる。

図面の簡単な説明

0011

高温割れが発生した溶接部組成と割れなかった溶接部組成とを分析し、その組成から熱力学計算ソフトにより計算される偏析部の平衡凝固温度割れ発生の有無の関係をプロットした図である。
偏析部の凝固温度の熱力学計算値と組成による回帰式の関係を示した図である。

0012

以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。

0013

<溶接金属>
本発明者は、高Cr鋼や改良9Cr鋼(Mod.9Cr−1Mo、9Cr−1Mo−Nb−V鋼)を母材(被溶接材)として用いた場合において、タンデムアーク溶接を行った際にも高温割れが発生し難い溶接金属を得るため、溶接金属における偏析部の凝固温度に着目し、鋭意検討を行った。その結果、偏析部の凝固温度が特定値未満の場合に高温割れが発生し、その特定値以上の場合には高温割れが発生し難くなるとの知見を得た。以下にこの知見と、それから本発明を完成させた過程について述べる。

0014

溶接などの凝固現象には、凝固が進行する過程で特定の成分が液相側に濃縮する凝固偏析と呼ばれる現象がある。この凝固偏析部は通常の凝固点よりもずっと低い凝固温度を持つことが知られている。凝固温度付近温度域で発生する割れ(高温割れ)は、この偏析部が凝固しようとしたときに相対的に小さい体積固相になり、その体積収縮に耐え切れずに割れてしまうことで起きる。

0015

加えて、改良9Cr鋼では、密度が低く体積の大きなδ相から、相対的に密度が高く体積の小さなγ相への変態が1200〜1350℃にかけて起こり、上記体積収縮に重畳して引張応力を作用させるため、高温割れがより起こり易いこととなる。改良9Cr鋼では、その化学組成よって、偏析部の凝固温度は1200〜1350℃の広い範囲で変化するが、上記体積収縮による引張応力は、温度が低いほど大きくなるため、偏析部の凝固温度が低くなるほど、この偏析部が凝固するときに高温割れが発生し易くなる。

0016

偏析部が最終的に凝固する温度を正確に知るのは困難ではあるが、熱力学ソフトウェアなどを使えば、ある程度は計算で推定が可能である。図1は、改良9Cr鋼において、タンデムアーク溶接をしたときに、高温割れが発生した溶接部組成と割れなかった溶接部組成を分析し、その組成から熱力学計算ソフトにより計算される偏析部の平衡凝固温度と割れ発生の有無の関係をプロットしたものである。図1から、偏析部の凝固温度が1260℃未満までは高温割れが発生するが、凝固温度が1260℃以上の場合は高温割れが発生しなくなることが見出された。

0017

この偏析部の凝固温度と組成の関係を調べ、特に影響の大きい元素によって回帰式を作成したのが、FST=1449−2133×[C]+450×[N]−2365×[P]+543×[S]−19.8×[Mn](式(1))である。この式(1)において、[C]、[N]、[P]、[S]及び[Mn]は、それぞれC、N、P、S及びMnの含有量(質量%)を表す。

0018

図2は、熱力学計算ソフトを用いた熱力学計算値による偏析部凝固温度と、組成による上記回帰式との関係を示した図であり、この図2から、上記式(1)は精度良く近似できていることがわかる。それ故、本発明者は、パラメータFSTの値が1260以上であれば、高温割れが発生しない条件となると考え、本発明を完成させた。
なお、ここで用いた熱力学計算ソフトは、Thermo−Calc version Sであり、使用データベースはTCFE6である。

0019

そこで、本発明の実施形態に係る溶接金属では、C:0.03〜0.08質量%、Si:0.01〜0.5質量%、Mn:0.6〜2.0質量%、Ni:0.1〜0.8質量%、Cr:8〜10質量%、Mo:0.7〜1.1質量%、V:0.05〜0.5質量%、Nb:0.01〜0.1質量%、N:0.02〜0.08質量%、P:0.0001〜0.01質量%、S:0.0001〜0.01質量%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、下記式(1)で算出されるパラメータFSTが1260以上を満たすこととしている。
FST=1449−2133×[C]+450×[N]−2365×[P]+543×[S]−19.8×[Mn] ・・・(1)
(上記式(1)中、[C]、[N]、[P]、[S]及び[Mn]は、それぞれC、N、P、S及びMnの含有量(質量%)を表す。)

0020

以下、本実施形態の溶接金属における組成限定理由について説明する。
なお、本実施形態の溶接金属における成分含有量は、溶接金属の中央部を切り出した測定用試料について、燃焼赤外線吸収法(C、S)、不活性ガス融解熱伝導度法(N)、吸光光度法(P)、ICP発光分光分析法(Si、Mn、Ni、Cr、Mo、V、Nb)によって分析した値である。

0021

[C:0.03〜0.08質量%]
C(炭素)は、高温強度を確保するのに重要な元素であることから、溶接金属中のC含有量は0.03質量%以上とし、好ましくは0.045質量%以上とする。
しかし、溶接金属中のC含有量が過剰に多くなると偏析部の凝固温度を大きく低下させ、高温割れが発生しやすいことから、C含有量は0.08質量%以下とし、好ましくは0.075質量%以下とする。

0022

[Si:0.01〜0.5質量%]
Si(ケイ素)は強化元素として有効であるが、Siの過剰な添加は靭性劣化させることから、溶接金属中のSi含有量は0.5質量%以下とし、好ましくは0.4質量%以下とする。また、Siは有効な脱酸元素であるが、その効果は、0.01質量%未満では発揮し難いことから、Si含有量は0.01質量%以上とし、好ましくは0.05質量%以上とする。

0023

[Mn:0.6〜2.0質量%]
Mn(マンガン)は、上記Siと同様に脱酸剤として機能し、溶接金属中の酸素量をコントロールする効果を発揮する。また溶接金属の強度を向上させると共に、靭性を改善する効果をも発揮する。これらの効果を発揮させるため、溶接金属中のMn含有量は0.6質量%以上とし、好ましくは0.7質量%以上、より好ましくは0.8質量%以上とする。しかし、Mn含有量が過剰になって2質量%を超えると、高温強度の劣化、及び偏析部の凝固温度の低下を引き起こすことから、Mn含有量は2.0質量%以下とし、好ましくは1.8質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下とする。

0024

[Ni:0.1〜0.8質量%]
Ni(ニッケル)はMnと同様に溶接金属の靱性向上に欠くことのできない元素である。溶接金属の靱性向上の効果を有効に発揮させるため、溶接金属中のNi含有量は0.1質量%以上とし、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上とする。しかし、Ni含有量が多すぎると高温強度を劣化させ、さらに変態点の低下を招くことから、Ni含有量は0.8質量%以下に抑え、好ましくは0.7質量%以下、より好ましくは0.6質量%以下とする。

0025

[Cr:8〜10質量%]
Cr(クロム)は、溶接金属の耐酸化性耐食性を向上させると共に、固溶強化によって高温強度を高める作用を有している。その効果を有効に発揮させるため、Crを8質量%以上含有させる。しかし、Cr含有量が多すぎると、δ−フェライト析出により靱性が劣化し、また、偏析部の融点を低下させることから、Cr含有量を10質量%以下に抑えなければならない。よって、溶接金属中のCr含有量は8〜10質量%の範囲とする。

0026

[Mo:0.7〜1.1質量%]
Mo(モリブデン)は、Crと同様に固溶強化効果を有すると共に、クリープ中に粒界に析出するラーベス相によって長時間時効後の靭性を低下させる作用も有する。高温強度を発揮させるため、溶接金属中のMo含有量は0.7質量%以上とし、好ましくは0.8質量%以上とする。Mo含有量が1.1質量%を超えると、ラーベス相形成が促進されるため、Mo含有量は1.1質量%以下とする。

0027

[V:0.05〜0.5質量%]
V(バナジウム)は、炭窒化物の形成元素であり、高温強度を維持する上で重要な元素である。溶接金属中のV含有量が0.05質量%未満ではその効果が発揮されない。しかし、V含有量が多すぎると、炭窒化物の粒成長を促進して高温強度を劣化させることから、V含有量は0.5質量%以下に抑えなければならない。したがって、V含有により高温強度を維持するため、V含有量は0.05質量%以上0.5質量%以下とし、V含有量の下限は好ましくは0.1質量%とし、上限は好ましくは0.4質量%とする。

0028

[Nb:0.01〜0.1質量%]
Nb(ニオブ)は、炭窒化物形成元素で高温強度を確保するのに重要な元素である。その効果を有効に発揮させるため、溶接金属中のNb含有量は0.01質量%以上とし、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上とする。しかし、Nb含有量が多すぎると靱性に悪影響が現れてくることから、高温強度と靱性を両立させるため、Nb含有量は0.1質量%以下に抑えなければならず、好ましくは0.08質量%以下、より好ましくは0.07質量%以下とする。

0029

[N:0.02〜0.08質量%]
N(窒素)は炭窒化物形成元素であり、高温強度を維持する効果と偏析部の凝固温度を上げて高温割れを抑制する効果を有している。N含有量が0.02質量%未満ではその効果が有効に発揮されず、一方、0.08質量%を超えると靱性劣化の原因となる。したがって、溶接金属中のN含有量は、0.02質量%以上、0.08質量%以下とし、N含有量の上限は好ましくは0.07質量%、より好ましくは0.06質量%とする。

0030

[P:0.0001〜0.01質量%]
P(リン)は、代表的な不純物元素であり、靭性を劣化させ、かつ偏析部の凝固温度を低下させて高温割れを助長する作用があるため、溶接金属中のP含有量の上限は0.01質量%とする。しかし、P含有量を0.0001質量%未満とすることは、多大なコストと長いプロセスを必要とするため現実的でないことから、P含有量の下限は0.0001質量%とする。

0031

[S:0.0001〜0.01質量%]
S(硫黄)も代表的な不純物元素であり、靭性を劣化させるものの、偏析部の凝固温度を上昇させ、高温割れを抑制する効果を少ないながらも有する。しかしながら、靭性を劣化させる影響が大きいため、溶接金属中のS含有量の上限は0.01質量%とする。またS含有量の下限は、P含有量の下限と同様にコスト上の理由で0.0001質量%とする。

0032

[残部:Fe及び不可避的不純物]
残部のFeは、母材(被溶接材)を構成するFeの他、溶接の際に溶接棒及び溶接ワイヤ等の溶加材が用いられる場合における溶加材のFe、並びに溶接の際にフラックスが用いられる場合におけるフラックスとして添加され得る鉄粉及び合金粉のFeなどに相当する。残部の不可避的不純物としては、上述のP及びSのほか、O、Ti、Cu、Sn、などが挙げられる。

0033

[パラメータFST≧1260]
下記式(1)で算出されるパラメータFSTは、すでに述べたように、偏析部の凝固温度を、その凝固温度に影響を与える度合いの大きい元素(C、N、P、S、Mn)によって回帰したものである。
FST=1449−2133×[C]+450×[N]−2365×[P]+543×[S]−19.8×[Mn] ・・・(1)
ここで、上記式(1)中、[C]、[N]、[P]、[S]及び[Mn]は、それぞれC、N、P、S及びMnの含有量(質量%)を表す。
このFSTは、FSTが1260未満では高温割れが発生し易く、FSTが1260以上では高温割れが発生し難い指標として適用できるパラメータである。本実施形態の溶接金属では、上記式(1)で算出されるFSTが1260以上であり、好ましくはFSTが1260を超える値である。

0034

本実施形態の溶接金属は、好ましくはアーク溶接等の溶接ワイヤが用いられる溶接によって形成され、より好ましくはサブマージアーク溶接等の溶接ワイヤ及びフラックスが用いられる溶接によって形成される。これらの場合、溶接金属は、母材(被溶接材)に、溶接ワイヤやフラックスの成分が混ざり合って、上述の特定範囲の組成を有する。

0035

本実施形態の溶接金属では、上述の通り、各成分の含有量を特定範囲にし、かつ、上記FSTを1260以上として、高温割れを生じ難くしていることから、2本の溶接ワイヤで同時にアークを出して溶接を行う点で大入熱かつ高効率であるタンデムアーク溶接にて形成されるのが好適である。より好適には、溶接の際に溶接ワイヤ及びフラックスを用いるタンデムサブマージアーク溶接により形成された溶接金属である。

0036

(母材)
本実施形態の溶接金属における母材としては、溶接金属が上記特定範囲の組成を有すれば特に限定されない。しかし、溶接金属が上記特定範囲の組成を有するためには、母材の成分系として、好ましくは9Cr系鋼等の高Cr系鋼、及び改良9Cr鋼(Mod.9Cr−1Mo、9Cr−1Mo−Nb−V鋼)であり、耐熱性が高いことからより好ましくは改良9Cr鋼である。
改良9Cr鋼の母材の具体例としては、後述する実施例で使用する組成(後記表1参照)の材料であり、通常、0.1質量%程度のCを含む。また、この母材は、Mnなども溶接金属におけるMnの組成比とは異なっている。

0037

(溶接ワイヤ)
そこで、本実施形態の溶接金属は、母材と共に溶接ワイヤを用いて形成されることが好ましく、溶接ワイヤとしては、母材に比べて、C及びPなどの組成比を低くし、Mnなどの組成比を高くして調整することが好ましい。

0038

溶接ワイヤは特に限定されないが、例えば組成として、C:0.01〜0.06質量%、Si:0.01〜0.5質量%、Mn:1.0〜2.5質量%、Ni:0.1〜0.8質量%、Cr:8〜10質量%、Mo:0.7〜1.1質量%、V:0.05〜0.5質量%、Nb:0.01〜0.08質量%、N:0.01〜0.05質量%、P:0.0001〜0.01質量%、及びS:0.0001〜0.01質量%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる溶接ワイヤが好適である。

0039

<溶接金属の製造方法>
本発明の実施形態に係る溶接金属の製造方法は、本発明の実施形態に係る溶接金属をタンデムアーク溶接によって形成する方法であり、好ましくはタンデムサブマージアーク溶接によって形成する方法である。本実施形態の溶接金属の製造方法は、溶接ワイヤ中のC含有量(質量%)が母材中のC含有量(質量%)よりも少ない関係を有する母材及び溶接ワイヤを用いてよく、この場合、溶接ワイヤ中のC含有量(質量%)は、母材中のC含有量(質量%)の0.05〜0.7倍程度の量であることが好ましく、0.1〜0.5倍程度の量であることがより好ましい。また、本実施形態の溶接金属の製造方法は、溶接ワイヤ中のMn含有量(質量%)が母材中のMn含有量(質量%)よりも多い関係を有する母材及び溶接ワイヤを用いた溶接により形成されることが好ましい。この場合、溶接ワイヤ中のMn含有量(質量%)は、母材中のMn含有量(質量%)の2〜4倍程度の量であることが好ましく、3〜4倍程度の量であることがより好ましい。

0040

以上詳述したように、本実施形態の溶接金属は、各成分の含有量を特定の範囲にすると共に、上記式(1)で算出されるFSTが1260以上としているため、大入熱の溶接となるタンデムアーク溶接を行っても高温割れが発生し難い。例えば、本実施形態の溶接金属は、石油精製用圧力容器などを製造するときに、高Cr鋼や改良9Cr鋼製母材の150〜300mmともなる肉厚材を、高効率かつ高入熱のタンデムアーク溶接にて製造するときでも高温割れが発生し難い。よって、本実施形態の溶接金属の製造方法により、肉厚な改良9Cr鋼等の鋼材に対して溶接を行う際、高入熱のタンデムアーク溶接にて高効率に本実施形態の溶接金属を製造することができる。より好適なタンデムサブマージアーク溶接により形成された本実施形態の溶接金属であれば、通常、前述の特許文献2で開示されたようなシングルサブマージアーク溶接の場合の約2倍程度の溶接入熱が可能となるため、石油精製反応容器のような肉厚の溶接能率を大きく向上させることができる。

0041

本発明の実施形態は、以下のような構成をとることもできる。
[1]C:0.03〜0.08質量%、
Si:0.01〜0.5質量%、
Mn:0.6〜2.0質量%、
Ni:0.1〜0.8質量%、
Cr:8〜10質量%、
Mo:0.7〜1.1質量%、
V:0.05〜0.5質量%、
Nb:0.01〜0.1質量%、
N:0.02〜0.08質量%、
P:0.0001〜0.01質量%、
S:0.0001〜0.01質量%、
を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
下記式(1)で算出されるパラメータFSTが1260以上である、溶接金属。
FST=1449−2133×[C]+450×[N]−2365×[P]+543×[S]−19.8×[Mn] ・・・(1)
(上記式(1)中、[C]、[N]、[P]、[S]及び[Mn]は、それぞれC、N、P、S及びMnの含有量(質量%)を表す。)
[2][1]に記載の溶接金属をタンデムアーク溶接によって形成する、溶接金属の製造方法。
[3]母材及び溶接ワイヤが用いられ、
前記溶接ワイヤ中のC含有量(質量%)が前記母材中のC含有量(質量%)よりも少ない、[2]に記載の溶接金属の製造方法。
[4]母材及び溶接ワイヤが用いられ、
前記溶接ワイヤ中のMn含有量(質量%)が前記母材中のMn含有量(質量%)よりも多い、[2]又は[3]に記載の溶接金属の製造方法。

0042

以下、本発明の試験例を挙げて、本発明の効果について具体的に説明する。本実施例においては、以下に示す方法及び条件で、溶接金属を作製し、その溶接金属において、高温割れの発生の有無を確認した。

0043

(溶接条件)
下記の、表1に示す母材、表2に示すワイヤ径4mmの溶接ワイヤ(W1〜W8)、及び表3に示すフラック(F1)を使用して、タンデムサブマージアーク溶接を行った。この際、溶接条件は、AC−ACタンデム先行電極:溶接電流400A、アーク電圧31V、ワイヤ供給速度45g/min、後行電極:溶接電流350A、アーク電圧31V、ワイヤ供給速度60g/min、先行/後行電極間距離:20mm、溶接チップ/母材距離:先行電極30mm、後行電極35mm、トーチ角度:先行電極−5°、後行電極40°、溶接速度:55cm/min(入熱:25.4kJ/cm)とした。

0044

(割れの評価方法
表面割れの評価は、割れが発生しやすい2層目の溶接の終了後の表面を目視で確認をした。内部割れの評価は、割れが発生しやすい2層目の溶接の終了後の表面をグラインダ研磨して、表面から2mmの深さの位置の割れを目視で確認をした。

0045

0046

0047

0048

なお、表3に示される塩基度(質量%)は以下の式により求められるものである。
塩基度(質量%)=(CaF2+CaO+MgO+SrO+Na2O+Li2O+1/2(MnO+FeO))
/(SiO2+1/2(Al2O3+TiO2+ZrO3))

0049

また、表3に示される粒度は、JIS Z3352(サブマージドアーク溶接用フラックス)に記載されている「メッシュ」の表現に基づき、フラックス粒子の大きさの代表範囲で、「10(上限)x48(下限)」を意味する。

0050

表2に示すように、組成の異なる8種類の溶接ワイヤを用いたことに対応し、8つの溶接金属を作製した。作製した各溶接金属の組成(質量%)を表4に示す。なお、溶接金属の化学成分の測定方法としては、得られた溶接金属の中央部を切り出して測定用試料とし、C含有量及びS含有量については「燃焼−赤外線吸収法」により、N含有量については「不活性ガス融解−熱伝導度法」により、その他の元素の含有量については「ICP発光分光分析法」により、成分分析を行った。

0051

0052

作製した溶接金属WM1〜8において、目視により、表面割れの有無、及び内部割れの有無を確認した。割れが確認されなかった場合を「○」、割れが確認された場合を「×」とし、その結果を表5に示す。

0053

0054

溶接金属WM3及びWM4は、FSTが1260より大きく、表面割れ及び内部割れのいずれも確認されなかった。一方、溶接金属WM2、WM5、WM6及びWM7は、FSTの値が1260を大きく下回っているため、表面も内部も割れが発生した。また、溶接金属WM1は、FSTの値が1260に近いため、表面割れは抑制できていたが、内部で割れが確認された。溶接金属WM8は、FST1260より相当に高いため、高温割れは発生しなかったが、C含有量が0.03質量%未満であるため、強度が劣っていた。

実施例

0055

以上の結果から、本発明の溶接金属(WM3及びWM4)を用いることにより、大入熱となるタンデムアーク溶接を行っても、高温割れが発生し難いことが確認された。したがって、本発明の溶接金属によれば、石油精製用圧力容器などを製造するときに、高Cr鋼や改良9Cr鋼製母材の150〜300mmともなる肉厚材を、高効率かつ大入熱のタンデムアーク溶接にて製造するときでも高温割れの発生を抑制することができると考えられる。

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