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技術 劣化度判定方法及び金属加工部材の製造方法

出願人 株式会社神戸製鋼所
発明者 松宮知朗有川剛史飯沼角王今村亮祐
出願日 2015年8月11日 (4年7ヶ月経過) 出願番号 2015-159027
公開日 2017年2月16日 (3年1ヶ月経過) 公開番号 2017-037019
状態 特許登録済
技術分野 粘度、粘性・表面、境界、拡散効果の調査 耐候試験、機械的方法による材料調査
主要キーワード 継続使用不可 経時的温度変化 円柱状領域 円筒状領域 冷却液管 閾値線 平均熱伝達率 鍛鋼品
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重要な関連分野

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課題

金属材料熱処理冷却液に用いるポリマー水溶液の継続使用の可否を容易かつ精度よく判断できる劣化度判定方法を提供する。

解決手段

劣化度判定方法は、金属材料の熱処理の冷却液に用いるポリマー水溶液の劣化度判定方法であって、ポリマー水溶液の動粘度を測定する工程と、測定工程での動粘度測定時のポリマー水溶液のポリマー濃度を取得する工程と、測定工程で得た動粘度及び取得工程で得たポリマー濃度に基づいてポリマー水溶液の劣化度を判定する工程とを備える。判定工程で、動粘度及びポリマー濃度を軸とする座標系にポリマー水溶液の継続使用の可否を示す閾値線TLを設定し、この閾値線より動粘度が大きい場合にポリマー水溶液の継続使用可能と判断するとよい。取得工程で、測定工程での動粘度測定時のポリマー水溶液のポリマー濃度を測定するとよい。

概要

背景

金属材料焼入れ等の熱処理において、一般に焼割れの防止のために、水よりも冷却速度の遅い冷却液が使用される。近年では、高温操作に伴う火災の危険性を回避するため、冷却液としてポリマー水溶液が実用化されている。

このような冷却液は、使用し続けることにより劣化冷却緩和能が低下するため、金属材料の焼割れが生じ易くなる。金属材料の焼割れが生じないようにするためには、冷却液がこのような状態になる前に新しい冷却液に交換する必要がある。交換するまでの期間が短いと冷却液の消費量が多くなり、金属材料の製造コストが増加する。そのため、冷却液の交換期間を長くすべく、冷却液の継続使用の可否を適切に判断できる管理指標確立が要求されている。

このような要求に対して、管理対象の冷却液に加熱した試験片を浸漬して試験片が所定の温度まで冷却される時間を計測し、この計測した冷却時間から、予め基準データとして求めておいた冷却時間と冷却液の濃度との関係を用いて管理対象の冷却液の濃度を推定する冷却液管理方法が提案されている(特開2014−167487号公報)。この冷却液管理方法は、冷却液の冷却時間から濃度を求め、冷却液の継続使用の可否を判断する管理指標としてその濃度を用いるものである。

しかし、上記冷却液管理方法では、加熱した試験片を管理対象の冷却液に浸漬し、その冷却時間を計測するという繁雑な作業が必要となる。

また、発明者らの既往の検討結果より、冷却液としてポリマー水溶液を用いる場合、使用に伴ってポリマー低分子量化することがわかっている。そのため、例えば同じ濃度のポリマー水溶液であっても、使用時間の長いポリマー水溶液はポリマーの分子量が小さくなり、焼割れの生じ易さが異なってくると考えられる。従って、例えば劣化を抑制するために使用中のポリマー水溶液に新たなポリマー水溶液を継ぎ足しながら使用するような場合、上記冷却液管理方法のように冷却液の濃度のみで冷却液の継続使用の可否を判断することは困難と考えられる。

概要

金属材料の熱処理の冷却液に用いるポリマー水溶液の継続使用の可否を容易かつ精度よく判断できる劣化度判定方法を提供する。劣化度判定方法は、金属材料の熱処理の冷却液に用いるポリマー水溶液の劣化度判定方法であって、ポリマー水溶液の動粘度を測定する工程と、測定工程での動粘度測定時のポリマー水溶液のポリマー濃度を取得する工程と、測定工程で得た動粘度及び取得工程で得たポリマー濃度に基づいてポリマー水溶液の劣化度を判定する工程とを備える。判定工程で、動粘度及びポリマー濃度を軸とする座標系にポリマー水溶液の継続使用の可否を示す閾値線TLを設定し、この閾値線より動粘度が大きい場合にポリマー水溶液の継続使用可能と判断するとよい。取得工程で、測定工程での動粘度測定時のポリマー水溶液のポリマー濃度を測定するとよい。

目的

本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、金属材料の熱処理の冷却液に用いるポリマー水溶液の継続使用の可否を容易かつ精度よく判断できる劣化度判定方法及び金属加工部材の製造方法の提供を目的とする

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

金属材料熱処理冷却液に用いるポリマー水溶液劣化度判定方法であって、ポリマー水溶液の動粘度を測定する工程と、上記測定工程での動粘度測定時のポリマー水溶液のポリマー濃度を取得する工程と、上記測定工程で得た動粘度及び上記取得工程で得たポリマー濃度に基づいてポリマー水溶液の劣化度を判定する工程とを備えることを特徴とする劣化度判定方法。

請求項2

上記判定工程で、上記動粘度及びポリマー濃度を軸とする座標系に上記ポリマー水溶液の継続使用の可否を示す閾値線を設定し、この閾値線より動粘度が大きい場合にポリマー水溶液の継続使用可能と判断する請求項1に記載の劣化度判定方法。

請求項3

上記座標系を動粘度y[mm2/s]及びポリマー濃度x[体積%]を軸とする2軸直交座標系とし、上記閾値線をy=ax+b(aは正の定数、bは定数)の一次関数とし、上記判定工程で、下記式(1)の場合にポリマー水溶液の継続使用可能と判断し、下記式(2)の場合にポリマー水溶液の継続使用不可と判断する請求項2に記載の劣化度判定方法。y>ax+b・・・(1)y≦ax+b・・・(2)

請求項4

上記取得工程で、上記測定工程での動粘度測定時のポリマー水溶液のポリマー濃度を測定する請求項1、請求項2又は請求項3に記載の劣化度判定方法。

請求項5

上記測定工程前にポリマー水溶液を特定濃度希釈する工程をさらに備え、上記測定工程で上記希釈工程後のポリマー水溶液の動粘度を測定し、上記取得工程で取得するポリマー濃度として上記希釈工程後の特定濃度を採用する請求項1、請求項2又は請求項3に記載の劣化度判定方法。

請求項6

上記判定工程が、上記測定工程で得た動粘度及び上記取得工程で得たポリマー濃度に基づき上記金属材料及びポリマー水溶液間の200℃以上400℃以下の平均熱伝達率を同定する工程と、上記同定工程で得た平均熱伝達率が閾値より小さい場合にポリマー水溶液の継続使用可能と判断する工程とを有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の劣化度判定方法。

請求項7

上記金属材料と同質の円柱状の試験片を加熱して閾値導出用のポリマー水溶液へ浸漬し、上記試験片の中心、上面、側面及び底面並びにポリマー水溶液の温度の経時変化を測定し、その経時的温度を下記式(3)に導入することで上記閾値を導出する請求項6に記載のポリマー水溶液の劣化度判定方法。但し、式(3)中、tは試験片の上面から所定厚さの上部円柱状領域の重心、bは底面から上記所定厚さの底部円柱状領域の重心、sは側面から上記所定厚さの側部円筒状領域の上記側面から上記所定厚さの1/2の位置で試験片の高さの1/2の位置、cは上記上部、底部及び側部に囲まれる中央部円柱状領域の重心である。mi(iはt、s、b)は上記上部、側部及び底部の質量[kg]である。Aiは上記上部、側部及び底部と上記中央部との接触面積[m2]である。Cpx(xはc、t、s、b)は上記中央部、上部、側部及び底部の比熱[J/kg・K]である。liは重心cから上面、側面及び底面までの距離[m]である。Txはc、t、s及びbで測定される温度[K]であり、Tbulkはポリマー水溶液の温度[K]である。hiは上面、側面及び底面における熱伝達率[W/m2・K]である。

請求項8

金属材料を加熱する工程と、ポリマー水溶液への浸漬により上記金属材料を冷却する工程と、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の劣化度判定方法によりポリマー水溶液の劣化度を判定する工程とを備える金属加工部材の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、劣化度判定方法及び金属加工部材の製造方法に関する。

背景技術

0002

金属材料焼入れ等の熱処理において、一般に焼割れの防止のために、水よりも冷却速度の遅い冷却液が使用される。近年では、高温操作に伴う火災の危険性を回避するため、冷却液としてポリマー水溶液が実用化されている。

0003

このような冷却液は、使用し続けることにより劣化冷却緩和能が低下するため、金属材料の焼割れが生じ易くなる。金属材料の焼割れが生じないようにするためには、冷却液がこのような状態になる前に新しい冷却液に交換する必要がある。交換するまでの期間が短いと冷却液の消費量が多くなり、金属材料の製造コストが増加する。そのため、冷却液の交換期間を長くすべく、冷却液の継続使用の可否を適切に判断できる管理指標確立が要求されている。

0004

このような要求に対して、管理対象の冷却液に加熱した試験片を浸漬して試験片が所定の温度まで冷却される時間を計測し、この計測した冷却時間から、予め基準データとして求めておいた冷却時間と冷却液の濃度との関係を用いて管理対象の冷却液の濃度を推定する冷却液管理方法が提案されている(特開2014−167487号公報)。この冷却液管理方法は、冷却液の冷却時間から濃度を求め、冷却液の継続使用の可否を判断する管理指標としてその濃度を用いるものである。

0005

しかし、上記冷却液管理方法では、加熱した試験片を管理対象の冷却液に浸漬し、その冷却時間を計測するという繁雑な作業が必要となる。

0006

また、発明者らの既往の検討結果より、冷却液としてポリマー水溶液を用いる場合、使用に伴ってポリマー低分子量化することがわかっている。そのため、例えば同じ濃度のポリマー水溶液であっても、使用時間の長いポリマー水溶液はポリマーの分子量が小さくなり、焼割れの生じ易さが異なってくると考えられる。従って、例えば劣化を抑制するために使用中のポリマー水溶液に新たなポリマー水溶液を継ぎ足しながら使用するような場合、上記冷却液管理方法のように冷却液の濃度のみで冷却液の継続使用の可否を判断することは困難と考えられる。

先行技術

0007

特開2014−167487号公報

発明が解決しようとする課題

0008

本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、金属材料の熱処理の冷却液に用いるポリマー水溶液の継続使用の可否を容易かつ精度よく判断できる劣化度判定方法及び金属加工部材の製造方法の提供を目的とする。

課題を解決するための手段

0009

本発明者らは、ポリマー水溶液の継続使用の可否を判断できる管理指標を確立すべく、劣化度の異なる複数のポリマー水溶液の物性値を測定し検討を行った。その結果、本発明者らは、ポリマー濃度及び動粘度組合せが上記管理指標として採用できることを見出した。具体的には、本発明者らは、劣化が進んだポリマー水溶液を水で希釈したときの動粘度と、その希釈したポリマー水溶液と同じポリマー濃度の劣化が進んでいないポリマー水溶液の動粘度とを比較したところ、劣化が進むに従って動粘度が低下することを見出した。これにより、本発明者らは、ポリマー濃度及び動粘度の組合せがポリマー水溶液の劣化度の判定に用いることができることを見出した。本発明者らは、この知見に基づき本願発明を完成するに至った。

0010

すなわち、上記課題を解決するためになされた発明は、金属材料の熱処理の冷却液に用いるポリマー水溶液の劣化度判定方法であって、ポリマー水溶液の動粘度を測定する工程と、上記測定工程での動粘度測定時のポリマー水溶液のポリマー濃度を取得する工程と、上記測定工程で得た動粘度及び上記取得工程で得たポリマー濃度に基づいてポリマー水溶液の劣化度を判定する工程とを備えることを特徴とする劣化度判定方法である。

0011

当該劣化度判定方法は、ポリマー水溶液の劣化度を判定するために、ポリマー水溶液の動粘度の測定、及び動粘度測定時のポリマー水溶液のポリマー濃度の取得を行なえばよく、試験材をポリマー水溶液に浸漬して冷却温度を測定するような繁雑な作業が必要ないので、容易にポリマー水溶液の継続使用の可否を判断できる。また、動粘度及びその動粘度に対応するポリマー濃度に基づいてポリマー水溶液の劣化度を判定するので、ポリマー水溶液の継続使用の可否を精度よく判断できる。

0012

上記判定工程で、上記動粘度及びポリマー濃度を軸とする座標系に上記ポリマー水溶液の継続使用の可否を示す閾値線を設定し、この閾値線より動粘度が大きい場合にポリマー水溶液の継続使用可能と判断するとよい。このように、ポリマー水溶液の継続使用の可否を示す閾値線を設定した動粘度及びポリマー濃度を軸とする座標系を用いてポリマー水溶液の継続使用の可否を判断することにより、ポリマー水溶液の劣化度をより容易に判断できる。

0013

上記座標系を動粘度y及びポリマー濃度xを軸とする2軸直交座標系とし、上記閾値線をy=ax+b(aは正の定数、bは定数)の一次関数とし、上記判定工程で、下記式(1)の場合にポリマー水溶液の継続使用可能と判断し、下記式(2)の場合にポリマー水溶液の継続使用不可と判断するとよい。
y>ax+b ・・・(1)
y≦ax+b ・・・(2)

0014

このように、動粘度y及びポリマー濃度xを軸とする2軸直交座標系の一次関数で上記閾値線を表すことで、上記継続使用の可否をより精度よく判断できると共に、対象とする動粘度及びポリマー水溶液と閾値線との差を把握し易い。

0015

上記取得工程で、上記測定工程での動粘度測定時のポリマー水溶液のポリマー濃度を測定するとよい。このように、測定工程での動粘度測定時のポリマー水溶液のポリマー濃度を測定することで、ポリマー水溶液の希釈等の作業なしで、動粘度及びポリマー濃度を測定するという簡易な作業のみで、ポリマー水溶液の継続使用の可否を判断できる。

0016

上記測定工程前にポリマー水溶液を特定濃度に希釈する工程をさらに備え、上記測定工程で上記希釈工程後のポリマー水溶液の動粘度を測定し、上記取得工程で取得するポリマー濃度として上記希釈工程後の特定濃度を採用してもよい。このように、特定濃度に希釈後のポリマー水溶液の動粘度を測定すると共に希釈工程後の特定濃度を採用することで、動粘度のみに基づいてポリマー水溶液の継続使用の可否を判断できるので、より容易にポリマー水溶液の劣化度を判定できる。

0017

上記判定工程が、上記測定工程で得た動粘度及び上記取得工程で得たポリマー濃度に基づき上記金属材料及びポリマー水溶液間の200℃以上400℃以下の平均熱伝達率を同定する工程と、上記同定工程で得た平均熱伝達率が閾値より小さい場合にポリマー水溶液の継続使用可能と判断する工程とを有するとよい。ここで、200℃以上400℃以下は、経験則より焼割れが生じる温度域であるので、焼割れの発生に対する上記閾値の精度が高い。従って、このようにポリマー水溶液の動粘度及びポリマー濃度に基づいて上記温度域での平均熱伝達率を同定し、この平均熱伝達率と上記閾値との比較によりポリマー水溶液の継続使用の可否を判断するので、ポリマー水溶液の継続使用の可否の判断精度をより向上できる。

0018

上記金属材料と同質の円柱状の試験片を加熱して閾値導出用のポリマー水溶液へ浸漬し、上記試験片の中心、上面、側面及び底面並びにポリマー水溶液の温度の経時変化を測定し、その経時的温度を下記式(3)に導入することで上記閾値を導出するとよい。



但し、式(3)中、tは試験片の上面から所定厚さの上部円柱状領域の重心、bは底面から上記所定厚さの底部円柱状領域の重心、sは側面から上記所定厚さの側部円筒状領域の上記側面から上記所定厚さの1/2の位置で試験片の高さの1/2の位置、cは上記上部、底部及び側部に囲まれる中央部円柱状領域の重心である。mi(iはt、s、b)は上記上部、側部及び底部の質量[kg]である。Aiは上記上部、側部及び底部と上記中央部との接触面積[m2]である。Cpx(xはc、t、s、b)は上記中央部、上部、側部及び底部の比熱[J/kg・K]である。liは重心cから上面、側面及び底面までの距離[m]である。Txはc、t、s及びbで測定される温度[K]であり、Tbulkはポリマー水溶液の温度[K]である。hiは上面、側面及び底面における熱伝達率[W/m2・K]である。

0019

このように、試験片の中心、上面、側面及び底面並びにポリマー水溶液の温度の経時変化を測定し、その経時的温度を上記式(3)に導入して上記閾値を導出することにより、焼割れの発生に対する閾値の精度をより高くでき、ポリマー水溶液の劣化度の判定精度をより向上できる。

0020

また、上記課題を解決するためになされた別の発明は、金属材料を加熱する工程と、ポリマー水溶液への浸漬により上記金属材料を冷却する工程と、上記劣化度判定方法によりポリマー水溶液の劣化度を判定する工程とを備える金属加工部材の製造方法である。

0021

当該金属加工部材の製造方法は、上記劣化度判定方法によりポリマー水溶液の劣化度を判定する工程を備えるので、金属材料の熱処理の冷却液に用いるポリマー水溶液の継続使用の可否を容易かつ精度よく判断できる。これにより、当該金属加工部材の製造方法は、焼割れが発生する状態により近い状態となるまでポリマー水溶液の継続使用を可能とし、ポリマー水溶液を交換するまでの使用時間を長くすることができるため、ポリマー水溶液の使用量を低減でき、金属加工部材の製造コストを低減できる。

発明の効果

0022

以上説明したように、本発明の劣化度判定方法は、金属材料の熱処理の冷却液に用いるポリマー水溶液の継続使用の可否を容易かつ精度よく判断できる。また、本発明の金属加工部材の製造方法は、金属材料の熱処理の冷却液に用いるポリマー水溶液の継続使用の可否を容易かつ精度よく判断できるので、ポリマー水溶液を交換するまでの使用時間を長くすることができる。

図面の簡単な説明

0023

本発明の第一実施形態の劣化度判定方法におけるポリマー水溶液の継続使用の可否を判定する閾値線を示すグラフである。
使用期間の異なるポリマー水溶液の動粘度の測定結果を示すグラフである。
使用期間の異なるポリマー水溶液を同じポリマー濃度に希釈した場合の動粘度の測定結果を示すグラフである。
ポリマー濃度αにおける動粘度と金属材料及びポリマー水溶液間の200℃以上400℃以下の平均熱伝達率との関係を示すグラフである。
ポリマー濃度1.2αにおける動粘度と金属材料及びポリマー水溶液間の200℃以上400℃以下の平均熱伝達率との関係を示すグラフである。
ポリマー濃度1.4αにおける動粘度と金属材料及びポリマー水溶液間の200℃以上400℃以下の平均熱伝達率との関係を示すグラフである。
平均熱伝達率の導出のために用いた試験材の模式的断面図である。
ポリマー濃度αにおける試験材上面での温度と金属材料及びポリマー水溶液間の熱伝達率との関係を示すグラフである。
ポリマー濃度αにおける試験材側面での温度と金属材料及びポリマー水溶液間の熱伝達率との関係を示すグラフである。
ポリマー濃度αにおける試験材底面での温度と金属材料及びポリマー水溶液間の熱伝達率との関係を示すグラフである。
動粘度と金属材料及びポリマー水溶液間の200℃以上400℃以下の平均熱伝達率との近似直線切片とポリマー濃度との関係を示すグラフである。

実施例

0024

以下、本発明に係る劣化度判定方法、及び金属加工部材の製造方法の実施形態について説明する。

0025

〔第一実施形態〕
[劣化度判定方法]
当該劣化度判定方法は、金属材料の熱処理の冷却液に用いるポリマー水溶液の劣化度判定方法である。当該劣化度判定方法は、ポリマー水溶液の動粘度を測定する工程(測定工程)と、上記測定工程での動粘度測定時のポリマー水溶液のポリマー濃度を取得する工程(取得工程)と、上記測定工程で得た動粘度及び上記取得工程で得たポリマー濃度に基づいてポリマー水溶液の劣化度を判定する工程(判定工程)とを備える。

0026

当該劣化度判定方法を適用する熱処理で対象とする金属材料として、例えば鋼、Ni基合金Co基合金アルミニウム合金マグネシウム合金銅合金等が挙げられる。

0027

上記ポリマー水溶液に用いるポリマーとしては、水に溶解するものであればよく、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリアルキレングリコール(PAG)などを用いることができる。

0028

上記ポリマー水溶液に用いるポリマーの数平均分子量の下限としては、4,000が好ましく、4,500がより好ましい。上記ポリマーの数平均分子量が上記下限に満たないと、必要な冷却緩和能を得るためにポリマー濃度を高くしなければならず、ポリマーの使用量が多くなり、製造コストが増加するおそれがある。

0029

上記ポリマー水溶液のポリマー濃度の下限としては、10体積%が好ましく、15体積%がより好ましい。一方、上記ポリマー濃度の上限としては、60体積%が好ましく、50体積%がより好ましい。上記ポリマー濃度が上記下限に満たないと、必要な冷却緩和能を得ることができないおそれがある。逆に、上記ポリマー濃度が上記上限を超えると、ポリマーの必要量が増加し、製造コストが増加するおそれがある。

0030

上記ポリマー水溶液の熱伝導率の下限としては、0.40W/(m・K)が好ましく、0.45W/(m・K)がより好ましい。一方、上記ポリマー水溶液の熱伝導率の上限としては、0.65W/(m・K)が好ましく、0.60W/(m・K)がより好ましい。上記ポリマー水溶液の熱伝導率が上記下限に満たないと、金属材料の冷却速度が遅くなりすぎ、熱処理で期待される金属材料の所望の特性が得られないおそれがある。逆に、上記ポリマー水溶液の熱伝導率が上記上限を超えると、ポリマーによる冷却緩和効果が小さすぎ、焼割れ抑制効果が低下するおそれがある。

0031

<測定工程>
測定工程では、粘度計を用いてポリマー水溶液の動粘度を測定する。動粘度を測定する粘度計として、例えばウベローデ粘度計キャノンフェンスケ粘度計を用いることができる。

0032

<取得工程>
取得工程では、上記測定工程での動粘度測定時のポリマー水溶液のポリマー濃度を測定する。このポリマー濃度は、例えば屈折率濃度計を用いることにより容易に測定することができる。

0033

<判定工程>
判定工程では、測定工程で測定した動粘度及び取得工程で測定したポリマー濃度に基づいてポリマー水溶液の劣化度を判定する。

0034

上記判定工程では、具体的には、動粘度及びポリマー濃度を軸とする座標系にポリマー水溶液の継続使用の可否を示す閾値線を設定し、この閾値線より動粘度が大きい場合にポリマー水溶液の継続使用可能と判断し、動粘度がこの閾値線以下の場合にポリマー水溶液の継続使用不可と判断する。

0035

さらに具体的には、上記判定工程では、例えば図1に示すように、上記座標系を動粘度y及びポリマー濃度xを軸とする2軸直交座標系とし、閾値線TLをy=ax+b(aは正の定数、bは定数)の一次関数とする。この判定工程では、この一次関数に上記測定した動粘度及びポリマー濃度を代入し、下記式(1)の場合にポリマー水溶液の継続使用可能と判断し、下記式(2)の場合にポリマー水溶液の継続使用不可と判断する。
y>ax+b ・・・(1)
y≦ax+b ・・・(2)

0036

なお、上記閾値線TLは、例えば閾値線導出用のポリマー水溶液として、使用劣化により焼割れが発生し始める状態となったポリマー水溶液を用いて得ることができる。具体的には、異なるポリマー濃度となるよう上記閾値線導出用のポリマー水溶液の希釈により複数のポリマー水溶液を作成してこれらの動粘度を測定した後、例えば最小二乗法により、これらのポリマー水溶液の濃度及び動粘度の関係を一次近似して上記閾値線TLを得ることができる。なお、図1に示す各プロットは、上記閾値線導出用のポリマー水溶液の動粘度、及びこのポリマー水溶液に水を添加して複数のポリマー濃度に希釈したものの各動粘度を測定し、各ポリマー濃度に対する動粘度を示すものである。これらのプロットより、上述のように上記閾値線TLを求めることができる。

0037

ここで、動粘度及びポリマー濃度に基づいてポリマー水溶液の劣化度を判定できる理由について説明するが、発明者らは、動粘度及びポリマー濃度がポリマー水溶液の継続使用の可否を判断できる管理指標として採用できることを見出す前に、これ以外の物性についても上記管理指標として採用できるか検討した。具体的には、発明者らは、まず分子量について検討し、その結果、測定毎のばらつき及び測定箇所によるばらつきが大きいため、分子量を上記管理指標として用いることは困難であることがわかった。次に、本発明者らは、ポリマー水溶液の熱伝導率と動粘度とのそれぞれについて検討したが、いずれもポリマー水溶液の劣化との相関が認められず、これらも上記管理指標として用いることは困難であることがわかった。次に、発明者らは、動粘度及びポリマー濃度の組合せについて検討した。

0038

発明者らは、まず表1に示す使用時間の異なるポリマー水溶液について動粘度を測定したところ、図2のような結果が得られた。表1中の新液Aは、熱処理に使用する前のポリマー水溶液であり、操業液B〜Eは、使用中の複数のポリマー水溶液である。各操業液B〜Eは、この順に使用時間が長いものである。表1では、ポリマー水溶液のポリマー濃度を濃度比で示している。この濃度比は、新液Aのポリマー濃度に対する各操業液B〜Eのポリマー濃度の割合(操業液のポリマー濃度[体積%]/新液Aのポリマー濃度[体積%])である。使用中のポリマー水溶液は、劣化を抑制するために新液Aを継ぎ足しながら使用するので、使用期間が長くなるほどポリマー濃度が高くなる。

0039

0040

図2より、使用期間が長く劣化が進んでいると考えられるポリマー水溶液ほど動粘度が高いことがわかる。「動粘度が高い」ことは、通常「熱伝達率が低い」と予測されるので、「焼割れが発生し難い」と考えられる。しかし、図2はこのことと逆の結果となっている。従って、動粘度をポリマー水溶液の劣化度の管理指標として用いることはできない。

0041

そこで発明者らは、ポリマー濃度が新液Aのポリマー濃度αと同じとなるよう各操業液B〜Eを水で希釈し、同じポリマー濃度αとした各操業液B〜Eの動粘度を測定した。この測定結果を図3に示す。図3より、劣化が進んでいると考えられるポリマー水溶液ほど動粘度が低いことがわかる。これは、劣化が進んでいるポリマー水溶液ほど分子量が低下しているためと考えられる。このことより、所定の濃度における動粘度が、ポリマー水溶液の継続使用の可否を判断するための管理指標として使用できることがわかる。従って、ポリマー濃度毎にポリマー水溶液の継続使用の可否を判断するための閾値となる動粘度が定まるので、上述のように閾値線導出用のポリマー水溶液を用いることで、ポリマー濃度に対応する動粘度の閾値を示す上記閾値線TLが得られる。これにより、動粘度及びポリマー濃度から閾値線TLを用いてポリマー水溶液の継続使用の可否を判断できる。

0042

当該劣化度判定方法は、試験材をポリマー水溶液に浸漬して冷却温度を測定する等の作業なしで、ポリマー水溶液のポリマー濃度及び動粘度を測定するという簡易な作業のみで、ポリマー水溶液の継続使用可否を判断できる。また、当該劣化度判定方法は、測定したポリマー濃度及び動粘度を閾値線TLと比較することで、ポリマー水溶液の継続使用可否を判断できるので、ポリマー水溶液の劣化度を判定し易い。

0043

[金属加工部材の製造方法]
当該金属加工部材の製造方法は、金属材料を加熱する工程(加熱工程)と、ポリマー水溶液への浸漬により上記金属材料を冷却する工程(冷却工程)と、上記劣化度判定方法によりポリマー水溶液の劣化度を判定する工程(劣化度判定工程)とを主に備える。

0044

上記加熱工程及び冷却工程は、金属材料に対する焼入れ処理焼戻し処理などの熱処理において加熱及び冷却を行う工程である。例えば金属加工部材としてクランクシャフト等に用いる鍛鋼品高強度鋼を製造する場合、上記工程以外に、溶製工程、鋳造工程鍛造工程などを備える。さらに、このようにして製造した鍛鋼品用高強度鋼を機械加工工程により加工することで、例えば船舶用駆動源伝達部材として用いられる中間軸推進軸連接棒ラダーストックラダーホーン、クランクシャフト等が製造される。

0045

<加熱工程>
加熱工程では、所定の温度で所定時間、金属材料を加熱する。例えば鍛鋼品用高強度鋼の焼入れ処理における加熱工程では、焼入前処理工程で冷却された鋼材を800℃以上950℃以下程度まで昇温して1時間以上保持する。

0046

<冷却工程>
冷却工程では、上記加熱工程で加熱した金属材料をポリマー水溶液に浸漬することにより所定温度まで冷却する。例えば鍛鋼品用高強度鋼の焼入れ処理における冷却工程では、加熱工程で加熱された鋼材をポリマー水溶液に浸漬し、例えば平均冷却速度50℃/min程度で450℃以上530℃以下程度まで冷却する。

0047

<劣化度判定工程>
劣化度判定工程では、ポリマー水溶液のポリマー濃度及び動粘度を測定し、上記劣化度判定方法によりポリマー水溶液の継続使用可否を判断する。例えば劣化度判定方法として図1の座標系を用いる場合、劣化度判定工程では、測定したポリマー濃度x及び動粘度yが上記式(1)を満たすときは、そのポリマー水溶液を継続使用し、上記式(2)を満たすときは、そのポリマー水溶液の継続使用不可と判断して、新しいポリマー水溶液に交換する。

0048

なお、上記劣化度判定工程は、金属材料を冷却する毎に行ってもよいし、所定回数の金属材料の冷却が焼割れなく行えると見込めるような場合には、所定回数の冷却処理を行った後のみに行うようにしてもよい。

0049

このように当該金属加工部材の製造方法は、上記劣化度判定方法によりポリマー水溶液の劣化度を判定する工程を備えるので、金属材料の熱処理の冷却液に用いるポリマー水溶液の継続使用の可否を容易かつ精度よく判断でき、焼割れが発生する状態により近い状態となるまでポリマー水溶液の継続使用ができる。これにより、ポリマー水溶液を交換するまでの使用時間を長くすることができるため、ポリマー水溶液の使用量を低減でき、金属材料の製造コストを低減できる。

0050

〔第二実施形態〕
[劣化度判定方法]
当該劣化度判定方法は、ポリマー水溶液を特定濃度に希釈する工程(希釈工程)と、希釈工程後のポリマー水溶液の動粘度を測定する工程(測定工程)と、測定工程での動粘度測定時のポリマー水溶液のポリマー濃度を取得する工程(取得工程)と、上記測定工程で得た動粘度及び上記取得工程で得たポリマー濃度に基づいてポリマー水溶液の劣化度を判定する工程(判定工程)とを備える。上記取得工程は、具体的には、ポリマー水溶液のポリマー濃度として希釈工程後の特定濃度を採用する。

0051

<希釈工程>
希釈工程では、ポリマー水溶液に水を添加して特定濃度に希釈する。具体的には、希釈工程では、例えばポリマー水溶液のポリマー濃度を測定し、そのポリマー濃度から特定濃度に希釈するために必要な水の添加量を算出し、その算出した量の水をポリマー水溶液に添加する。

0052

ここで、上記ポリマー水溶液は、劣化を抑制するために適宜ポリマー水溶液の新液を継ぎ足して使用するので、使用中のポリマー水溶液のポリマー濃度は時間が経過するに伴って大きくなる。従って、上記特定濃度は、使用中のポリマー水溶液より低いポリマー濃度であればよく、例えばポリマー水溶液の新液のポリマー濃度とすることができる。

0053

<測定工程>
測定工程では、粘度計を用いて、上記希釈工程後の特定濃度に希釈したポリマー水溶液の動粘度を測定する。

0054

<取得工程>
取得工程では、ポリマー水溶液のポリマー濃度として希釈工程後の特定濃度を採用する。つまり、取得工程ではポリマー水溶液のポリマー濃度として上記特定濃度を取得する。

0055

<判定工程>
判定工程では、取得工程で取得した特定濃度における動粘度、すなわち測定工程で測定した動粘度に基づいてポリマー水溶液の劣化度を判定する。具体的には、判定工程では、測定した動粘度を閾値と比較し、測定した動粘度が閾値よりも大きい場合には、ポリマー水溶液の継続使用可能と判断する。

0056

上記動粘度の閾値は、次のようにして求められる。つまり、図1に示すように、閾値線TLは、動粘度y及びポリマー濃度xを軸とする2軸直交座標系で一次関数として表される。従って、この閾値線TLより特定濃度に対する動粘度の閾値が求められる。例えば図1において上記特定濃度を25体積%とした場合、動粘度の閾値は6mm2/sと求められる。

0057

このように当該劣化度判定方法は、ポリマー水溶液を特定濃度に希釈することで、動粘度のみに基づいてポリマー水溶液の継続使用の可否を判断できるので、より容易にポリマー水溶液の劣化度を判定できる。

0058

〔第三実施形態〕
[劣化度判定方法]
当該劣化度判定方法は、ポリマー水溶液を特定濃度に希釈する工程(希釈工程)と、希釈工程後のポリマー水溶液の動粘度を測定する工程(測定工程)と、測定工程での動粘度測定時のポリマー水溶液のポリマー濃度を取得する工程(取得工程)と、上記測定工程で得た動粘度及び上記取得工程で得たポリマー濃度に基づいてポリマー水溶液の劣化度を判定する工程(判定工程)とを備える。上記判定工程は、測定工程で得た動粘度及び取得工程で得たポリマー濃度に基づき金属材料及びポリマー水溶液間の200℃以上400℃以下の平均熱伝達率を同定する工程(同定工程)と、同定工程で得た平均熱伝達率が閾値より小さい場合にポリマー水溶液の継続使用可能と判断する工程(判断工程)とを有する。

0059

当該劣化度判定方法は、判定工程が同定工程及び判断工程を有し、ポリマー水溶液の継続使用の可否を平均熱伝達率により判断する点が、上記第二実施形態の劣化度判定方法と異なる。以下に、上記第二実施形態と異なる判定工程について説明する。

0060

<判定工程>
上述したように、判定工程は、同定工程及び判断工程を有する。なお、ここでは上記特定濃度をポリマー濃度αとする。従って、判定工程は、ポリマー濃度αに希釈されたポリマー水溶液の動粘度を測定工程から取得し、ポリマー濃度αという情報を取得工程から取得する。

0061

(同定工程)
同定工程では、ポリマー濃度αに希釈されたポリマー水溶液の動粘度とポリマー濃度αとに基づき、金属材料及びポリマー水溶液間の200℃以上400℃以下の平均熱伝達率を同定する。この同定方法について、以下に具体的に説明する。

0062

後述するように、発明者らは、ポリマー水溶液のポリマー濃度に対して、動粘度と金属材料及びポリマー水溶液間の200℃以上400℃以下の平均熱伝達率との間に相関があることを見出した。ここで、ポリマー濃度αのポリマー水溶液における動粘度と上記平均熱伝達率との関係を図4に示す。図4は、複数のポリマー水溶液のそれぞれに対してポリマー濃度αとなるよう水で希釈し、それらの希釈後のポリマー水溶液の動粘度の測定値及び上記平均熱伝達率の算出値を示したものである。図4の第1相関線CL1は、動粘度及び上記平均熱伝達率の関係を一次近似した直線である。同定工程では、この動粘度と上記平均熱伝達率との相関を示す第1相関線CL1を用いて、測定工程で得た動粘度から金属材料及びポリマー水溶液間の200℃以上400℃以下の平均熱伝達率を同定する。

0063

なお、図5は、図4と同様に希釈したポリマー水溶液に基づいて得たポリマー濃度αの1.2倍のポリマー濃度1.2αのポリマー水溶液における動粘度と上記平均熱伝達率との関係を示したものである。同様に、図6は、ポリマー濃度αの1.4倍のポリマー濃度1.4αのポリマー水溶液における動粘度と上記平均熱伝達率との関係を示したものである。図5の第2相関線CL2及び図6の第3相関線CL3は、それぞれポリマー濃度1.2α及びポリマー濃度1.4αにおける動粘度及び上記平均熱伝達率の関係を一次近似した直線である。図4図6に示すように、いずれのポリマー濃度においても、上記平均熱伝達率は動粘度と相関していることがわかる。

0064

(判断工程)
判断工程では、同定工程で得た平均熱伝達率が閾値より小さい場合にポリマー水溶液の継続使用可能と判断する。この判断方法について、以下に具体的に説明する。

0065

図4の第1閾値P1は、上記閾値導出用のポリマー水溶液をポリマー濃度αに希釈したポリマー水溶液における動粘度及び200℃以上400℃以下の平均熱伝達率を示したものである。判断工程では、この閾値導出用のポリマー水溶液の平均熱伝達率(第1閾値P1)をポリマー水溶液の継続使用可否の判断用の閾値として用い、同定工程で得た平均熱伝達率の方が第1閾値P1より小さい場合に、ポリマー水溶液の継続使用可能と判断する。ここで、200℃以上400℃以下は、経験則より焼割れが生じる温度域であるので、200℃以上400℃以下の平均熱伝達率を示す上記第1閾値P1は、焼割れの発生に対する精度が高い。上記判断工程は、この精度の高い閾値を用いるので、ポリマー水溶液の継続使用の可否の判断精度が高い。

0066

なお、図5の第2閾値P2及び図6の第3閾値P3は、それぞれ上記閾値導出用のポリマー水溶液をポリマー濃度1.2α及びポリマー濃度1.4αに希釈したポリマー水溶液における動粘度及び200℃以上400℃以下の平均熱伝達率を示したものである。上記測定工程で、ポリマー濃度1.2α又はポリマー濃度1.4αに希釈したポリマー水溶液の動粘度を測定する場合には、判断工程は、第2閾値P2又は第3閾値P3を用いてポリマー水溶液の継続使用の可否を判断する。

0067

(平均熱伝達率の閾値の導出方法
平均熱伝達率の閾値は、例えば上記金属材料と同質の試験片を加熱して閾値導出用のポリマー水溶液へ浸漬し、上記試験片の中心、上面、側面及び底面並びにポリマー水溶液の温度の経時変化を測定し、その経時的温度を下記式(3)に導入することで導出できる。



但し、式(3)中、tは試験片の上面から所定厚さの上部円柱状領域の重心、bは底面から上記所定厚さの底部円柱状領域の重心、sは側面から上記所定厚さの側部円筒状領域の上記側面から上記所定厚さの1/2の位置で試験片の高さの1/2の位置、cは上記上部、底部及び側部に囲まれる中央部円柱状領域の重心である。mi(iはt、s、b)は上記上部、側部及び底部の質量[kg]である。Aiは上記上部、側部及び底部と上記中央部との接触面積[m2]である。Cpx(xはc、t、s、b)は上記中央部、上部、側部及び底部の比熱[J/kg・K]である。liは重心cから上面、側面及び底面までの距離[m]である。Txはc、t、s及びbで測定される温度[K]であり、Tbulkはポリマー水溶液の温度[K]である。hiは上面、側面及び底面における熱伝達率[W/m2・K]である。

0068

上記試験片の直径の下限としては、10mmが好ましく、15mmがより好ましい。一方、試験片の直径の上限としては、40mmが好ましく、30mmがより好ましい。試験片の直径が上記下限未満であると、試験材の中心及び外周間の温度差が小さくなりすぎ、導出される平均熱伝達率の精度が低下するおそれがある。逆に試験片の直径が上記上限を超えると、平均熱伝達率導出用の設備が不必要に大きくなるおそれがある。

0069

上記試験片の高さの下限としては、30mmが好ましく、40mmがより好ましい。一方、試験片の高さの上限としては、120mmが好ましく、100mmがより好ましい。試験片の高さが上記下限未満であると、試験材の中心と上面及び下面との温度差が小さくなりすぎ、導出される平均熱伝達率の精度が低下するおそれがある。逆に試験片の高さが上記上限を超えると、試験片をポリマー水溶液へ浸漬させるための移動量が大きくなり、導出用設備のコストが増加するおそれがある。

0070

仮想的な領域に区切るための試験材の表面からの上記所定厚さの下限としては、1mmが好ましく、2mmがより好ましい。一方、上記試験材の表面からの所定厚さの上限としては、5mmが好ましく、4mmがより好ましい。上記試験材の表面からの所定厚さが上記下限未満であると、正確な位置への熱電対の設定が困難となり、算出される熱伝達率の精度が低下するおそれがある。逆に、上記試験材の表面からの所定厚さが上記上限を超えると、算出される熱伝達率と表面における熱伝達率との差が大きくなるため、算出される熱伝達率の精度が低下するおそれがある。

0071

なお、上記閾値の導出は、金属材料の冷却毎に行う必要はなく、金属材料の種類毎に一度行えばよい。

0072

次に、上記閾値の導出方法の具体例として、発明者らが行った導出方法について説明する。

0073

上記閾値の導出は、加熱した円柱状の試験材をポリマー水溶液に浸漬し、試験材の経時的な温度変化を測定し、その温度変化から金属材料及びポリマー水溶液間の熱伝達率を算出して行った。具体的には、直径20mm、高さ60mmの丸棒スペシャルメタルズ社の「インコネル600」)を用いた。また、ポリマー水溶液として、表1に示す各ポリマー水溶液を用いた。

0074

この試験材を表面から厚さ3mmで仮想的な領域に区切り、区切った領域ごとに熱伝達率を算出した。具体的には、図7の試験材の軸を通る模式的断面図において、上面から厚さ3mmの円柱状領域を上部Rt、底面から厚さ3mmの円柱状領域を底部Rb、外周側面から厚さ3mmの円筒状領域を側部Rs、上部Rt、底部Rb及びRsに囲まれる円柱状領域を中央部Rcとした。上部Rtの重心をt、底部Rbの重心をb、中央部Rcの重心をc、側部Rsの外周面から1.5mmの位置で高さ30mmの位置をsとし、これらのt、b、s、cの位置に熱電対を設置した。

0075

次に、上記試験材を900℃まで加熱し、ポリマー水溶液の入ったビーカー内に浸漬させ、試験材各部の温度変化及びポリマー水溶液の温度変化を測定した。ここで、試験材を浸漬する際のポリマー水溶液の温度は、湯煎により50℃とした。

0076

側部Rs、上部Rt及び底部Rbの熱量変化は、ポリマー水溶液への放熱量と、中央部Rcからの入熱量とによって決まるので、これらの関係を表す上記式(3)に、上記測定した各部の経時的温度変化を導入して、ポリマー水溶液と側部Rs、上部Rt及び底部Rbとの間の各熱伝達率hiを算出した。

0077

経験則より焼割れが生じる温度域は200℃以上400℃以下であるが、上記各熱伝達率hiを算出した結果、この温度域において各ポリマー水溶液の冷却特性に有意な差は認められなかった。

0078

次に、各操業液B〜Eを新液Aと同じポリマー濃度αとなるように水を添加して希釈し、上述した方法と同様の方法により、ポリマー水溶液と側部Rs、上部Rt及び底部Rbとの間の各熱伝達率hiを算出した。その結果、図8図10に示すように、200℃以上400℃以下の温度域において、使用時間が長く劣化が進んでいるほど熱伝達率が高くなることが確認できた。

0079

次に、新液Aのポリマー濃度αに対して、各操業液B〜Eをポリマー濃度がα、1.2α、1.4αとなるよう希釈し、上述した方法と同様の方法により、ポリマー水溶液と側部Rs、上部Rt及び底部Rbとの間の各熱伝達率hiを算出した。図4図6は、この算出結果を用いて、各ポリマー濃度ごとの動粘度と200℃以上400℃以下の平均熱伝達率との関係を示したグラフである。図4図6より、所定濃度において、動粘度と200℃以上400℃以下の平均熱伝達率との間に相関があることがわかる。従って、動粘度及びポリマー濃度がわかれば、200℃以上400℃以下の平均熱伝達率を同定することができる。

0080

なお、図4図6より、動粘度と200℃以上400℃以下の平均熱伝達率との間の相関を一次式近似したときの傾きがほぼ等しいことがわかる。図11は、これらの一次式の切片とポリマー濃度との関係を示しており、切片の値がポリマー濃度と相関していることがわかる。従って、図11より任意のポリマー濃度における動粘度と200℃以上400℃以下の平均熱伝達率との相関を示す一次式を求めることができる。これにより、任意のポリマー濃度のポリマー水溶液について、動粘度を測定することで200℃以上400℃以下の平均熱伝達率を同定することができる。

0081

なお、上記判定工程では、ポリマー濃度αに希釈した後のポリマー水溶液の動粘度及びポリマー濃度に基づいてポリマー水溶液の継続使用の可否を判断したが、希釈前のポリマー水溶液の動粘度及びポリマー濃度に基づいてポリマー水溶液の継続使用の可否を判断してもよい。この場合、上記劣化度判定方法において、希釈工程は省略できる。

0082

[その他の実施形態]
当該劣化度判定方法及び金属加工部材の製造方法は上記実施形態に限定されるものではない。

0083

つまり、上記第一実施形態では、ポリマー水溶液の継続使用の可否を示す閾値線を設定する座標系として、動粘度及びポリマー濃度を軸とする2軸直交座標系を用いることとしたが、2軸直交座標系以外の座標系を用いてもよい。例えば、さらに他のパラメータを追加して3軸以上の座標系を用いてもよい。

0084

また、上記第二実施形態では、ポリマー水溶液を希釈するために、まずポリマー水溶液のポリマー濃度を測定し、そのポリマー濃度から特定濃度に希釈するために算出した量の水を添加することとしたが、例えば希釈する前のポリマー水溶液のポリマー濃度を測定せずに希釈を行ってもよい。つまり、ポリマー水溶液に水を添加しつつポリマー濃度を測定し、ポリマー濃度が特定濃度まで低下した時点で水の添加を停止するようにしてもよい。

0085

また、上記第一実施形態では、動粘度及びポリマー濃度を軸とする座標系に設定した閾値線を用いてポリマー濃度に対する動粘度によりポリマー水溶液の継続使用の可否を判断した。一方、上記第三実施形態では、金属材料及びポリマー水溶液間の200℃以上400℃以下の平均熱伝達率を同定し、この平均熱伝達率によりポリマー水溶液の継続使用の可否を判断したが、これらの両方の判断を組み合わせてポリマー水溶液の継続使用の可否を判断してもよい。つまり、動粘度及び上記平均熱伝達率の両方で、ポリマー水溶液の継続使用の可否を判断してもよい。このようにすることで、ポリマー水溶液の継続使用の可否をより精度よく判断することができる。

0086

以上説明したように、本発明の劣化度判定方法及び金属加工部材の製造方法は、金属材料の熱処理の冷却液に用いるポリマー水溶液の継続使用の可否を容易かつ精度よく判断できるので、熱処理の冷却液にポリマー水溶液を用いる金属材料の製造等に好適に用いることができる。

0087

b試験片の底部円柱状領域の重心
c 試験片の上部、底部及び側部に囲まれる中央部円柱状領域の重心
t 試験片の円柱状領域の重心
s 試験片の側部円筒状領域の側面から所定厚さの1/2の位置で試験片の高さの1/2の位置
Rb 底部
Rc 中央部
Rt 上部
Rs 側部
TL閾値線
CL1 第1相関線
CL2 第2相関線
CL3 第3相関線
P1 第1閾値
P2 第2閾値
P3 第3閾値

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