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技術 農産物の品位を向上させる光処理方法

出願人 マルハニチロ株式会社
発明者 小泉大輔庵原啓司柿崎裕介住田基樹鈴木元
出願日 2016年6月27日 (5年2ヶ月経過) 出願番号 2016-126826
公開日 2017年2月16日 (4年6ヶ月経過) 公開番号 2017-035075
状態 特許登録済
技術分野 果実または野菜の調製 果実、野菜の保存
主要キーワード ガス噴出装置 利用部分 照射区 試作機 実施温度 熟成室 輸送コンテナ 色素含量
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年2月16日)のものです。
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図面 (4)

課題

経済的かつ簡便に実施可能な、農産物食味および栄養価向上方法の提供。

解決手段

農産物に近赤外光照射することにより、農産物の食味および栄養価を向上させる、農産物の光処理方法

概要

背景

農産物において、食味栄養価といった品位は重要な要素である。しかしながら農産物の品位は天候等の環境に大きく影響されるため、必ずしも高品位な農産物が安定的に収穫できるとは限らない。そのため、安定して高品位な農産物を手にするための、農産物の処理技術が望まれている。

農産物の品位を向上する先行技術としては、エチレンアセトアルデヒドおよびエタノールよりなる群から選択される少なくとも1種を用いて追熟を行うことで、食味や食感などを向上させる方法(特許文献1)、UV‐A域の紫外線照射してアミノ酸含量を増大させることで、旨味を向上させる方法(特許文献2)、遠赤色光を用いた柑橘類カロテノイド色素増強方法(特許文献3)などが提案されている。また、農産物に近赤外光を照射することで、農産物の鮮度を保持する方法(特許文献4)なども提案されている。

概要

経済的かつ簡便に実施可能な、農産物の食味および栄養価の向上方法の提供。農産物に近赤外光を照射することにより、農産物の食味および栄養価を向上させる、農産物の光処理方法。なし

目的

そのため、安定して高品位な農産物を手にするための、農産物の処理技術が望まれている

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

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請求項1

農産物近赤外光照射することにより、農産物の食味および栄養価を向上させる、農産物の光処理方法

請求項2

農産物の食味が、農産物の味、食感および色調の全部または少なくとも1つである、請求項1記載の光処理方法。

請求項3

農産物の呈味成分を増大させるように変化させる、請求項1または2に記載の光処理方法。

請求項4

農産物の呈味成分が、糖であり、スクロース含量を増大させるように変化させる、請求項3に記載の光処理方法。

請求項5

農産物の呈味成分が、遊離アミノ酸であり、アラニン含量を増大させるように変化させる、請求項3に記載の光処理方法。

請求項6

農産物の水分含量を減少させる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光処理方法。

請求項7

農産物の色素成分を増大させる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光処理方法。

請求項8

農産物に照射する近赤外光の波長範囲が851nm〜2500nmである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の光処理方法。

請求項9

農産物に照射する近赤外光の波長範囲が950nm〜2500nmである、請求項8記載の光処理方法。

請求項10

農産物が果菜類根菜類または葉菜類に属する農産物である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の光処理方法。

請求項11

農産物が果樹類に属する農産物である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の光処理方法。

請求項12

請求項1〜11のいずれか1項に記載の光処理方法により、食味および栄養価が向上した農産物を製造する方法。

請求項13

請求項1〜11のいずれか1項に記載の光処理方法によって製造される、近赤外光を照射しない農産物に比べて、食味および栄養価が向上した農産物。

技術分野

0001

本発明は農産物食味栄養価の品位を向上させるための方法に関する。

背景技術

0002

農産物において、食味や栄養価といった品位は重要な要素である。しかしながら農産物の品位は天候等の環境に大きく影響されるため、必ずしも高品位な農産物が安定的に収穫できるとは限らない。そのため、安定して高品位な農産物を手にするための、農産物の処理技術が望まれている。

0003

農産物の品位を向上する先行技術としては、エチレンアセトアルデヒドおよびエタノールよりなる群から選択される少なくとも1種を用いて追熟を行うことで、食味や食感などを向上させる方法(特許文献1)、UV‐A域の紫外線照射してアミノ酸含量を増大させることで、旨味を向上させる方法(特許文献2)、遠赤色光を用いた柑橘類カロテノイド色素増強方法(特許文献3)などが提案されている。また、農産物に近赤外光を照射することで、農産物の鮮度を保持する方法(特許文献4)なども提案されている。

先行技術

0004

特開2004-159519号公報
特許第3727560号公報
特開2012-213381号公報
国際公開第WO2013/031925

発明が解決しようとする課題

0005

特許文献1に記載の各種ガスを用いた追熟方法については、大型の熟成室ガス噴出装置および温度制御装置などの大掛かりな設備が必要であり、経済性や作業性の面で好ましくない。特許文献2に記載の、UV-A域の紫外線を用いた光処理方法については、乾燥や加温時に実施されることで効果が発揮されることから、乾燥や加温を望まない農産物に対しては利用できない。特許文献3に記載の遠赤色光を用いたカロテノイド色素の増強方法や、特許文献4に記載の近赤外光を用いた農産物の鮮度保持方法については、大型の装置を必要とせず、また乾燥および加熱を必要とせずに簡便に実施可能な点では優れているものの、特許文献3の効果は色素の増強に限られていること、特許文献4の効果は鮮度維持に留まっており、農産物の食味や栄養価を増強させる効果は確認されていない。以上の背景から、安定して高品位な農産物を手にするための、経済的かつ簡便な農産物の食味や栄養価の増強方法が望まれている。

0006

そこで本発明では、大型の設備や乾燥および加熱操作を必要とせず、経済的かつ簡便に実施可能な、農産物の食味および栄養価の向上方法を提供する。

課題を解決するための手段

0007

本発明者は、農産物の食味および栄養価の向上方法を検討した結果、農産物に対して近赤外光を照射することにより、農産物の食味および栄養価が向上することを見出した。また、農産物への近赤外光の照射は、農産物の食味および栄養価に重要な、糖や遊離アミノ酸等の呈味成分、水分、色素成分などの各種成分の組成を変化させる効果があることを見出し、農産物の品位を向上させる光処理方法に関する本発明を完成させるに至った。

0008

すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]農産物に近赤外光を照射することにより、農産物の食味および栄養価を向上させる、農産物の光処理方法。
[2] 農産物の食味が、農産物の味、食感および色調の全部または少なくとも1つである、[1]の光処理方法。
[3] 農産物の呈味成分を増大させるように変化させる、[1]または[2]の光処理方法。
[4] 農産物の呈味成分が、糖であり、スクロース含量を増大させるように、[3]に記載の光処理方法。
[5] 農産物の呈味成分が、遊離アミノ酸であり、アラニン含量を増大させるように変化させる、[3]の光処理方法。
[6] 農産物の水分含量を減少させる、[1]〜[5]のいずれかの光処理方法。
[7] 農産物の色素成分を増大させる、[1]〜[6]のいずれかの光処理方法。
[8] 農産物に照射する近赤外光の波長範囲が851nm〜2500nmである、[1]〜[7]のいずれかの光処理方法。
[9] 農産物に照射する近赤外光の波長範囲が950nm〜2500nmである、[8]の光処理方法。
[10] 農産物が果菜類根菜類葉菜類または果樹類に属する農産物である、[1]〜[9]のいずれかの光処理方法。
[11] 農産物が果樹類に属する農産物である、[1]〜[9]のいずれかの光処理方法。
[12] [1]〜[11]のいずれかの光処理方法により、食味および栄養価が向上した農産物を製造する方法。
[13] [1]〜[11]のいずれかの光処理方法によって製造される、近赤外光を照射しない農産物に比べて、食味および栄養価が向上した農産物。

発明の効果

0009

農産物に近赤外光を照射することにより、農産物の食味および栄養価に重要な、糖や遊離アミノ酸等の呈味成分、水分、色素成分などの各種成分の組成を変化させることができ、その結果農産物の食味および栄養価が向上し、農産物の品位を向上させることができる。

0010

農産物への近赤外光の照射は、近赤外光を発する光源のみで実施可能であり、経済的かつ簡便に農産物の品位を向上させることが可能である。

図面の簡単な説明

0011

ピーク波長を1550nmに有するLED光源ウシライティング社、MC120-1550)の分光分布を示す図である。
ピーク波長を850nmに有するLED光源(ウシオライティング社、MC120-850)の分光分布を示す図である。
ピーク波長を1050nmに有するLED光源(ウシオライティング社、MC120-1050)の分光分布を示す図である。
ピーク波長を940nmに有するLED光源(ルミナスジャパン社、940nm試作機)の分光分布を示す図である。

0012

以下、本発明を詳細に説明する。

0013

本発明の方法は、農産物の品位を向上させるための光処理方法であり、具体的には農産物に近赤外光を照射する。品位とは品質ともいう。

0014

本発明の方法により食味および栄養価を向上させる対象となる農産物は限定されないが、好ましくは果菜類、根菜類、葉菜類および果樹類に属する農産物である。果菜類、根菜類、葉菜類または果樹類は利用部分食用部分)による分類である。果菜類とは実の部分を食する野菜をいい、カボチャエダマメソラマメメロンイチゴ、ナス、キュウリトマトゴーヤピーマントウモロコシオクラ、ズキーニ、シシトウ、ウリ、トウガン等が挙げられる。根菜類とは土壌中にある根、地下茎、坦根体等を含む部位を食する野菜をいい、サツマイモヤマイモ大根カブサトイモジャガイモゴボウニンジンタケノコレンコン等が挙げられる。葉菜類とは、主に葉の部分を食用とする野菜をいい、キャベツレタスハクサイホウレンソウブロッコリーカリフラワーインゲン、シュンギク、タマネギアスパラガス、ミズナ、コマツナアブラナチンゲンサイニラネギ等が挙げられる。果樹類とは、木になる食用の果実をいい、ビワミカンブドウモモリンゴ等が挙げられる。本発明において、農産物はこれらの野菜の、実、根、地下茎、坦根体等の食される部分をいう。

0015

また、収穫後追熟させて食する果菜類、根菜類、葉菜類、果樹類も好ましい。追熟とは収穫後、一定期間置くことにより甘み増したり、軟らかくすることをいう。収穫後に追熟させる果菜類、根菜類として、カボチャ、サツマイモ、トマト等が挙げられる。上記の農産物の中でも本発明の方法により食味および栄養価を向上させる対象となる農産物としてはカボチャおよびサツマイモが好ましい。

0016

本発明の方法においては、農産物に近赤外光を照射する。照射する近赤外光の波長は、851〜2500nm、好ましくは900〜2500nm、さらに好ましくは940〜2500nm、さらに好ましくは950〜2500nm、さらに好ましくは1050nm〜2500nmである。上限は1550nmでもよく、例えば1050〜1550nmである。また、上限は1650nmでもよく、例えば、1050nm〜1650nmである。

0017

近赤外光の光源としては、上記波長の近赤外光を照射できる限り限定されないが、例えば、前記の波長範囲内にピーク波長を有する近赤外光LED(Light Emitting Diode)を用いることができる。また、蛍光管ハロゲンランプキセノンランプレーザ等を用いることもできる。

0018

上記の波長の近赤外光を照射する場合、940nm〜1550nmにピーク波長を有しているLED等の光源を用いて近赤外光を照射してもよい。例えば、940nmにピーク波長を有している光源には約851nm以上の波長の近赤外光が含まれ(図4)、1050nmにピーク波長を有している光源には約950nm以上の波長の近赤外光が含まれ(図3)、1550nmにピーク波長を有している光源には少なくとも約1350nm以上の波長の近赤外光が含まれる(図1)。

0019

近赤外光の照射時間は限定されないが、1ナノ秒〜1440時間、好ましくは、72〜336時間である。近赤外光は、連続して前記時間照射してもよいし、断続して照射し、トータルの時間で前記の時間照射してもよい。

0020

照射強度は、農産物と近赤外光光源との距離や処理する農産物の量にもより限定されないが、パワーメーター(ニューオプト社、OPM−130-Ge)を用いて測定した際に、10nW〜199.9mW、好ましくは、10〜200μW程度である。

0021

近赤外光を照射するときの実施温度は限定されないが、温度が低すぎると農産物が凍結してしまい、温度が高すぎると農産物が加熱されることで品位が低下してしまう。従って、好ましくは0〜40℃であり、より好ましくは5〜20℃である。

0022

近赤外光の照射は、収穫後の農産物に対して行っても、収穫前の農産物に対して行ってもよい。好ましくは、収穫後の農産物に対して行う。収穫後追熟させるときに近赤外光を照射してもよい。

0023

例えば、収穫後、出荷までの保管中に近赤外光を照射しても、出荷中の輸送コンテナ中で近赤外光を照射してもよい。近赤外光は、紙、木、ポリエチレン等、農産物の収納容器収納袋に用いられる材質を透過する性質を有するため、上記の材質の収納容器や収納袋に収納した状態で近赤外光を照射することができる。また、近赤外光は、農産物自体を透過する性質を有するため、農産物を収納容器や収納袋に重ねて収納した状態で照射してもよい。小売店陳列しているときに近赤外光を照射してもよい。好ましくは保管中に時間を管理して行い、近赤外光照射後に食味および栄養価が向上したことを確認する。

0024

農産物への近赤外光の照射は、大型の装置や特殊な設備は必要とせず、近赤外光を発する光源のみで実施可能なことから、経済的かつ簡便な方法である。

0025

本発明の方法により農産物に近赤外光を照射することにより、農産物の食味および栄養価等の品位を向上させることができる。農産物の食味および栄養価を向上させることにより、結果的に農産物の鮮度を保持することもできるが、本発明の方法により、単に農産物の鮮度を保持するだけでなく、食味および栄養価を向上させ、農産物の品位を向上させることができる。

0026

食味とは、農産物自体の味をいい、食べたときの味わいをいう。食味は、味、食感、色調等種々の要素で表すことができる。近赤外光を照射することにより味、食感、色調のすべてあるいは少なくとも1つを向上させることができる。栄養価とは、農産物の食品としての価値をいい、農産物が有する機能性成分の量で表すことができる。農産物の食味および栄養価にとって糖や遊離アミノ酸等の呈味成分、水分、色素成分等の各種成分の含量が重要であり、農産物に近赤外光を照射することにより農産物中の糖含量遊離アミノ酸含量等の呈味成分含量、水分含量、色素成分含量が変化し、農産物の食味および栄養価が向上する。

0027

農産物には各種糖が含まれているが、その甘味度は異なっており、例えば、スクロースの甘味度を1とした際のグルコースの相対甘味度は0.55であることが知られている。農産物に近赤外光を照射することにより、農産物の糖組成を変化させることが可能であり、例えば、グルコースよりも甘味の強いスクロースの相対含量比を増加させることで食味を向上させることが可能である。

0028

従って、近赤外光の照射による農産物の食味の向上はスクロースの含量を指標として評価することができる。スクロース含量は、例えば、高速液体クロマトグラフ法で測定することができる。この際、例えば、本発明の近赤外光を照射したカボチャでは、同時に農産物中のグルコース含量を測定し、グルコース含量を1.0とした場合のスクロース含量の相対値をスクロース組成比として算出し、このスクロース組成比により甘さに関する食味を評価してもよい。本発明の近赤外光を照射した農産物は近赤外光を照射していない農産物に比べスクロース組成比が向上し、例えば、スクロース組成比が1.1以上、1.2以上、4.5以上、好ましくは6.0以上、さらに好ましくは6.5以上になり、近赤外光を照射してない農産物に比べ、9%以上向上する。

0029

農産物には各種遊離アミノ酸が含まれており、農産物の味に寄与することが知られている。例えば、遊離アミノ酸の一種であるアラニンは甘味に関係することが知られている。農産物に近赤外光を照射することにより、農産物のアラニンを増加させ、食味を向上させることが可能である。

0030

従って、近赤外光の照射による農産物の食味の向上はアラニンの含量を指標として評価することができる。アラニン含量は、例えば、高速液体クロマトグラフ法で測定することができる。本発明の近赤外光を照射した農産物は、アラニン含量が上昇し、原料農産物のアラニン含量を1.0とした場合、近赤外光を照射した農産物では2.7以上、好ましくは3.5以上になる。

0031

また、スクロース含量やアラニン含量が多くなることにより甘味が向上する。甘味は複数の訓練を積んだパネルを用いた官能検査により評価することができる。例えば、甘味について評価を行う場合、10名のパネルを用い、甘さについて1(甘くない)〜5(甘い)のスコアを付けさせ、10名のスコアを平均すればよい。この際、原料農産物を比較対象とし、該比較対象のスコアを3としてスコアを付けてもよい。このような官能検査により、本発明の近赤外光を照射した農産物は甘さに関する食味のスコアが4以上、好ましくは4.5以上になる。官能検査による食味の評価は、農産物を食べやすいように適宜加工して行うことが望ましい。例えば、カボチャの場合、加熱した後に官能検査を行う。

0032

食味の要素の1つである食感とは、農産物を食したときに感じる歯やを含む口腔内皮膚感覚をいい、舌触り歯ごたえごしの良さ等で表現される。食感も食味と同様、官能検査により評価することができる。例えば、食感について1(悪い)〜5(良い)のスコアを付けさせて評価することができる。このような官能検査により、本発明の近赤外光を照射した農産物は食感のスコアが4以上、好ましくは4.5以上になる。

0033

栄養価とは、農産物の食品としての価値をいい、本発明においては、農産物が有する栄養成分の量で表す。栄養成分として、ビタミンやその前駆体、ポリフェノール等が挙げられる。具体的には、例えば、農産物の色素成分含量を指標にして栄養価を評価することができる。例えば、農産物の色素成分であるカロテノイドプロビタミンAとしてヒトの健康に重要なだけでなく、農産物の商品価値として重要な要素の1つである色調に対しても重要である。農産物に近赤外光を照射することにより、農産物のカロテノイド等の色素成分を増加させることができ、農産物の栄養価および色調を向上させることが可能である。色素成分は、例えば、高速液体クロマトグラフ法で測定することができる。例えば、本発明の近赤外光を照射した農産物は、β-カロテン含量やクリプトキサンチン含量が上昇し、原料農産物のβ-カロテン含量を1.0とした場合、近赤外光を照射した農産物では1.1以上、好ましくは1.2以上になる。また、原料農産物のクリプトキサンチン含量を1.0とした場合、近赤外光を照射した農産物では1.1以上になる。その他、農産物の色素成分として、リコピンルテインクロロフィルアントシアニンケルセチンカプサンチンゼアキサンチンフラボノイド、カロテノイド、クロロゲン酸イソチオシアネート、α-カロテン等が挙げられる。アントシアニンについては、原料農産物のアントシアニン含量を1.0とした場合、近赤外光を照射した農産物では1.2以上、好ましくは1.3以上になる。ルテインについては、原料農産物のルテイン含量を1.0とした場合、近赤外光を照射した農産物では1.1以上、好ましくは1.2以上になる。α-カロテンについては、近赤外光を照射していない農産物のα-カロテン含量を1.0とした場合、近赤外光を照射した農産物では1.2以上、好ましくは1.5以上、さらに好ましくは1.8以上になる。

0034

農産物の色素含量が増えると農産物の色調も向上する。色調も官能検査により評価することができる。例えば、新鮮で高品質な農産物の色調を基準として、1(薄い)〜5(濃い)のスコアを付けさせて評価することができる。このような官能検査により、本発明の近赤外光を照射した農産物は色調のスコアが4以上、好ましくは4.5以上になる。また、色調は農産物をデジタルカメラ撮影し、得られた画像について画像解析ソフトで色の解析を行うことによっても評価することができる。

0035

さらに、農産物の水分は食味に影響を及ぼし、例えば、カボチャについては、水分含量の少ないものほど食味が良好であるとされているが、カボチャに近赤外光を照射することにより、カボチャの水分含量を減少させることにより、食味を向上させることが可能である。

0036

なお、本発明においては、農産物に近赤外光を照射しても農産物の蒸散量抑制効果はない。

0037

本発明は、農産物に近赤外光を照射する光処理方法により、食味および栄養価が向上した農産物を製造する方法も包含する。

0038

さらに、本発明は、農産物に近赤外光を照射する光処理方法によって製造される、近赤外光を照射しない農産物に比べて、食味および栄養価が向上した農産物を包含する。該農産物は味、食感、色調等の食味や栄養価が向上しているが、食味等の特性は専ら官能検査により評価し得る特性であり、得られた農産物を農産物自体の物性で特定することは実際的ではないので、農産物を製造方法で特定する。

0039

本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。

0040

[実施例1]カボチャへの近赤外光照射(その1)
5℃の条件下にて、収穫後3日のカボチャに対してピーク波長を1550nmに有するLED光源(ウシオライティング社、MC120-1550(図1に分光分布を示す))を用いて72時間または336時間の光照射を行った。光照射は、暗幕で全体を遮光した(ウシオライティング社、ODCハウスODC-1)の各段上部にLED光源を7本設置し、LED光源とカボチャの距離8cmの位置に、ヘタを上向きにして、各試験区あたり4個設置して行った。この時のカボチャ上部の位置の照度は120μW(ニューオプト社、OPM-130-Geで測定)であった。食味および栄養価の評価は、光照射前のカボチャ、所定の時間所定の波長で光照射を行ったカボチャ、所定の時間光照射を行わずに置いたカボチャを用いた。以下の表において、光照射前のカボチャの試験区(原料)を「原料」、光照射しないカボチャの試験区(無照射区)を「無照射(照射時間)」、光照射したカボチャの試験区(光照射区)を「波長(照射時間)」で表す(以下の実施例についても同様)。光照射前と光照射後のカボチャの重量変化から蒸散量を算出した。蒸散量は無照射区を1.00とした際の相対値で表示した。また、光照射後に、98℃で20分間加熱した後、食味(甘味および食感)の評価および糖組成の分析を行った。食味の評価基準は表1に記載のとおりであり、いずれの評価項目もスコアが高いほど良好である。糖組成は、高速液体クロマトグラフ法で各試験区のカボチャに含まれるグルコースとスクロースの含量を分析した後、グルコース含量を1.0とした際のスクロース含量の相対値をスクロース組成比として算出した。

0041

得られた結果を表2および表3に示した。甘味を評価した結果、原料および無照射区と比較して、ピーク波長を1550nmに有する光照射区では甘味のスコアが高く、食味が優れていた。また、スクロース組成比は、ピーク波長を1550nmに有する光照射区では、72時間後、336時間後にそれぞれ6.0、6.7であり、原料や無照射区と比較して大きく増加していた。なお、カボチャの蒸散量については、いずれの光照射区も1.00であり、無照射区と光照射区の間に差は認められなかった。

0042

0043

0044

0045

[実施例2]カボチャへの近赤外光照射(その2)
20℃の条件下にて、カボチャに対してピーク波長を850nm、1050nm、1550nmに有するLED光源(ウシオライティング社、MC120-850(図2に分光分布を示す)、MC120-1050(図3に分光分布を示す)、MC120-1550(図1に分光分布を示す))を用いて168時間の光照射を行った。光照射は、暗幕で全体を遮光した棚(ウシオライティング社、ODC苗ハウスODC-1)の各段上部にLED光源を7本設置し、LED光源とカボチャの距離8cmの位置に、ヘタを上向きにして、各試験区あたり4個設置して行った。この時のカボチャ上部の位置の照度はそれぞれ、2mW/cm2(Ocean Optics社、USB2000+XR1-ESで測定)(850nm)、60μW(ニューオプト社、OPM-130-Geで測定)(1050nm)、120μW(1550nm)であった。光照射前と光照射168時間後のカボチャの重量変化から蒸散量を算出した。また、光照射後に、98℃で20分間加熱した後、食味の評価および糖組成の分析を行った。

0046

得られた結果を表4に示した。甘味を評価した結果、原料および無照射区と比較して、ピーク波長を1050nm、1550nmに有する光照射区では甘味のスコアが高く、食味が優れていた。また、スクロース組成比は、ピーク波長を1050nm、1550nmに有する光照射区では、それぞれ2.2、4.5であり、原料や無照射区と比較して大きく増加していた。なお、カボチャの蒸散量については、いずれの光照射区も1.00〜1.01であり、無照射区との間に大差は認められなかった。

0047

0048

[実施例3]カボチャへの近赤外光照射(その3)
5℃の条件下にて、カボチャに対してピーク波長を850nm、1050nm、1550nmに有するLED光源(ウシオライティング社、MC120-850、MC120-1050、MC120-1550)を用いて168時間の光照射を行った。光照射は、暗幕で全体を遮光した棚(ウシオライティング社、ODC苗ハウスODC-1)の各段上部にLED光源を7本設置し、LED光源とカボチャの距離8cmの位置に、ヘタを上向きにして、各試験区あたり4個設置して行った。この時のカボチャ上部の位置の照度はそれぞれ、2mW/cm2(850nm)、60μW(1050nm)、120μW(1550nm)であった。光照射前と光照射168時間後の重量変化から光照射期間中の蒸散量を算出した。また、光照射後に、98℃で20分間加熱した後、食味の評価、糖組成、水分およびβ-カロテン含量の分析を実施した。水分含量は常圧加熱乾燥法により求め、原料中の含量を1.00とした際の相対値を水分含量として算出した。β-カロテン含量は、高速液体クロマトグラフ法で各試験区のカボチャに含まれるβ-カロテン含量を分析した後、原料中の含量を1.00とした際の相対値をβ-カロテン含量として算出した。

0049

食味のスコアを表5に示した。原料および無照射区と比較して、ピーク波長を1050nm、1550nmに有する光照射区では、甘味および食感のスコアが高く、食味が優れていた。また、ピーク波長を1050nmに有する光照射区では、色調のスコアが高かった。スクロース組成比、水分含量、β-カロテン含量、蒸散量を表6に示した。スクロース組成比については、ピーク波長を1050nm、1550nmに有する光照射区では、それぞれ7.0、6.9であり、原料や無照射区と比較して大きく増加していた。水分含量については、ピーク波長を1050nm、1550nmに有する光照射区では、それぞれ0.97、0.96であり、原料や無照射区と比較して3〜4%減少していた。β-カロテン含量については、ピーク波長を1050nmに有する光照射区では、1.20であり、原料や無照射区と比較して増加していた。なお、カボチャの蒸散量については、いずれの試験区も1.00であり、無照射区と光照射区の間に差は認められなかった。

0050

0051

0052

[実施例4]サツマイモへの近赤外光照射
20℃の条件下にて、サツマイモに対してピーク波長を1050nmに有するLED光源(ウシオライティング社、MC120-1050)を用いて168時間の光照射を行った。光照射は、暗幕で全体を遮光した棚(ウシオライティング社、ODC苗ハウスODC-1)の各段上部にLED光源を3本設置し、LED光源とサツマイモの距離10cmの位置に、サツマイモを横に寝かせた状態で、各試験区あたり4個設置して行った。この時のサツマイモ上部の位置の照度は50μWであった。

0053

光照射前と光照射168時間後のサツマイモの重量変化から蒸散量を算出した。また、光照射後に、85℃で90分間加熱した後、食味の評価を行った。

0054

得られた結果を表7に示した。食味を評価した結果、原料および無照射区と比較して、ピーク波長を1050nmに有する光照射区では甘味および食感のスコアが高く、食味が優れていた。なお、サツマイモの蒸散量は、ピーク波長を1050nmに有する光照射区では1.03であり、無照射区との間に大差は認められなかった。

0055

0056

[実施例5]エダマメへの近赤外光照射
20℃の条件下にて、エダマメに対してピーク波長を850nm、1050nm、1550nmに有するLED光源(ウシオライティング社、MC120-850、MC120-1050、MC120-1550)を用いて14時間の光照射を行った。光照射は、暗幕で全体を遮光した棚(ウシオライティング社、ODC苗ハウスODC-1)の各段上部にLED光源を3本設置し、LED光源とエダマメの距離5cmの位置に、エダマメを横に寝かせた状態で、各試験区あたり15個設置して行った。この時のエダマメ上部の位置の照度はそれぞれ、2.5mW/cm2(850nm)、70μW(1050nm)、130μW(1550nm)であった。

0057

得られた結果を表8に示した。食味を評価した結果、原料および無照射区と比較して、ピーク波長を1050nm、1550nmに有する光照射区では甘味のスコアが高く、食味が優れていた。アラニン含量については、ピーク波長を1050nm、1550nmに有する光照射区では、それぞれ3.59、2.76であり、原料や無照射区と比較して大きく増加していた。なお、エダマメの蒸散量は、ピーク波長を850nm、1050nmに有する光照射区では、それぞれ1.09、1.06であり、無照射区と比較して多かった。

0058

0059

[実施例6]カボチャへの近赤外光照射(その4)
5℃の条件下にて、カボチャに対してピーク波長を1050nmに有するLED光源(ウシオライティング社、MC120-1050)を用いて144時間の光照射を行った。光照射は、暗幕で全体を遮光した棚(ウシオライティング社、ODC苗ハウスODC-1)の各段上部にLED光源を7本設置し、LED光源とカボチャの距離8cmの位置に、ヘタを上向きにして、各試験区あたり4個設置して行った。この時のカボチャ上部の位置の照度は60μWであった。光照射前と光照射144時間後の重量変化から光照射期間中の蒸散量を算出した。また、光照射後に、98℃で20分間加熱した後、食味の評価、糖組成、水分、色素成分(β-カロテン含量、α-カロテン含量、ルテイン含量、クリプトキサンチン含量)の分析を実施した。水分含量は常圧加熱乾燥法により求め、原料中の含量を1.00とした際の相対値を水分含量として算出した。色素成分は、高速液体クロマトグラフ法で各試験区のカボチャに含まれる色素成分を分析した後、原料中の含量を1.00とした際の相対値を色素成分として算出した。なお、α-カロテン含量に関しては、原料中の含量が検出限界値以下であったため、無照射区の含量を1.00とした際の相対値を算出した。

0060

食味のスコアを表9に示した。原料および無照射区と比較して、ピーク波長を1050nmに有する光照射区では、甘味および食感のスコアが高く、食味が優れていた。また、ピーク波長を1050nmに有する光照射区では、色調のスコアが高かった。スクロース組成比、水分含量、蒸散量を表10に、色素成分含量(β-カロテン含量、α-カロテン含量、ルテイン含量、クリプトキサンチン含量)を表11に示した。スクロース組成比については、ピーク波長を1050nmに有する光照射区では、1.2であり、原料や無照射区と比較して大きく増加していた。水分含量については、ピーク波長を1050nmに有する光照射区では0.96であり、原料や無照射区と比較して4〜7%減少していた。色素成分含量(β-カロテン含量、α-カロテン含量、ルテイン含量、クリプトキサンチン含量)については、ピーク波長を1050nmに有する光照射区では、それぞれ1.67, 2.00, 1.25, 1.61であり、原料や無照射区と比較して増加していた。なお、カボチャの蒸散量については、いずれの試験区も1.00であり、無照射区と光照射区の間に差は認められなかった。

0061

0062

0063

0064

[実施例7]カボチャへの近赤外光照射(その5)
5℃の条件下にて、カボチャに対してピーク波長を940nm, 1050nmに有するLED光源(940nm:ルミナスジャパン社、940nm試作機(図4に分光分布を示す)、1050nm:ウシオライティング社、MC120-1050)を用いて144時間の光照射を行った。光照射は、暗幕で全体を遮光した棚(ウシオライティング社、ODC苗ハウスODC-1)の各段上部にLED光源をそれぞれ2本、3本設置し、LED光源とカボチャの距離8cmの位置に、ヘタを上向きにして、各試験区あたり4個設置して行った。この時のカボチャ上部の位置の照度はそれぞれ、150μW, 60μWであった。光照射前と光照射144時間後の重量変化から光照射期間中の蒸散量を算出した。また、光照射後に、98℃で20分間加熱した後、食味の評価を実施した。

0065

食味のスコアおよび蒸散量を表12に示した。原料および無照射区と比較して、ピーク波長を1050nmに有する光照射区では、甘味および食感のスコアが高く、食味が優れていた。また、ピーク波長を1050nmに有する光照射区では、色調のスコアが高かった。なお、カボチャの蒸散量については、いずれの試験区も1.00であり、無照射区と光照射区の間に差は認められなかった。

0066

0067

[実施例8]イチゴへの近赤外光照射
5℃の条件下にて、イチゴに対してピーク波長を1050nm、1550nmに有するLED光源(ウシオライティング社、MC120-1050、MC120-1550)を用いて96時間の光照射を行った。光照射は、暗幕で全体を遮光した棚(ウシオライティング社、ODC苗ハウスODC-1)の各段上部にLED光源を6本設置し、LED光源との距離30cmの位置にヘタを下向きにして、各試験区につき20個設置して行った。このときのイチゴ上部の位置の照度はそれぞれ、58μW、73μWであった。光照射前と光照射96時間後の重量変化から光照射期間中の蒸散量を算出した。また、光照射後にアントシアニンの分析を実施した。アントシアニン含量は高速液体クロマトグラフ法で各試験区に含まれるアントシアニン含量を分析した後、原料中の含量を1.00とした際の相対値をアントシアニン含量として算出した。

0068

アントシアニン含量、水分含量、蒸散量を表13に示した。アントシアニン含量については、ピーク波長を1050nm、1550nmに有する光照射区では、それぞれ1.20、1.38であり、原料や無照射区と比較して増加していた。なお、イチゴの水分含量については、いずれの試験区も1.00であり、各試験区で差は認められず、蒸散量については、ピーク波長を1050nm、1550nmに有する光照射区では、それぞれ1.29、1.67であり、無照射区と比較して多かった。

実施例

0069

0070

本発明の方法により、品質の向上した農産物を低コストで製造することができる。

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