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課題

剥がれや捲れによる性能低下等の問題があるコーティングではなく、化学的に固定され、タンパク質細胞に対する低吸着性表面や選択的吸着性表面だけでなく、優れた耐久性も付与することが可能な加硫ゴム又は熱可塑性樹脂表面改質方法を提供する。

解決手段

加硫ゴム又は熱可塑性樹脂を改質対象物とする表面改質方法であって、前記改質対象物の表面に重合開始点を形成する工程1と、前記重合開始点を起点にして、アルカリ金属塩の存在下で、300〜400nmのUV光照射して親水性モノマーラジカル重合させ、前記改質対象物の表面にポリマー鎖成長させる工程2とを含む表面改質方法。

概要

背景

医療医用分野などにおいて使用される医療・医用基盤フィルター流路チューブ等は、使用時に体内・体外で血液や体液に接することに起因して、それらの表面に血液や体液中のタンパク質細胞接着吸着し、本来の機能が損なわれるという問題がある。一方、癌細胞等の特定の細胞は、捕捉して診断診療に役立てるため、選択的に吸着させて回収するという要請もあるが、選択的に吸着させることが難しいという問題もある。

特許文献1〜2には、親水性モノマー重合したポリマーを医療・医用基盤、フィルター、流路、チューブ表面コーティングし、上記の問題を解決することが提案されているが、親水性であるため、コーティング層が剥がれたり、捲れたりし、耐久性に問題がある。

概要

剥がれや捲れによる性能低下等の問題があるコーティングではなく、化学的に固定され、タンパク質や細胞に対する低吸着性表面や選択的吸着性表面だけでなく、優れた耐久性も付与することが可能な加硫ゴム又は熱可塑性樹脂表面改質方法を提供する。加硫ゴム又は熱可塑性樹脂を改質対象物とする表面改質方法であって、前記改質対象物の表面に重合開始点を形成する工程1と、前記重合開始点を起点にして、アルカリ金属塩の存在下で、300〜400nmのUV光照射して親水性モノマーをラジカル重合させ、前記改質対象物の表面にポリマー鎖成長させる工程2とを含む表面改質方法。なし

目的

本発明は、前記課題を解決し、剥がれや捲れによる性能低下等の問題があるコーティングではなく、化学的に固定され、タンパク質や細胞に対する低吸着性表面や選択的吸着性表面だけでなく、優れた耐久性も付与することが可能な加硫ゴム又は熱可塑性樹脂の表面改質方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

加硫ゴム又は熱可塑性樹脂改質対象物とする表面改質方法であって、前記改質対象物の表面に重合開始点を形成する工程1と、前記重合開始点を起点にして、アルカリ金属塩の存在下で、300〜400nmのUV光照射して親水性モノマーラジカル重合させ、前記改質対象物の表面にポリマー鎖成長させる工程2とを含む表面改質方法。

請求項2

加硫ゴム又は熱可塑性樹脂を改質対象物とする表面改質方法であって、光重合開始剤及びアルカリ金属塩の存在下で、300〜400nmのUV光を照射して親水性モノマーをラジカル重合させ、前記改質対象物の表面にポリマー鎖を成長させる工程Iを含む表面改質方法。

請求項3

前記工程1は、前記改質対象物の表面に光重合開始剤を吸着させ、又は更に300〜400nmのUV光を照射し、前記表面上の光重合開始剤から重合開始点を形成させるものである請求項1記載の表面改質方法。

請求項4

前記工程1又は前記工程Iの前に、前記改質対象物の表面に160〜300nmの光を照射して、該表面を親水化する工程を含む請求項1〜3のいずれかに記載の表面改質方法。

請求項5

前記光重合開始剤は、ベンゾフェノン系化合物及び/又はチオキサントン系化合物である請求項2〜4のいずれかに記載の表面改質方法。

請求項6

前記アルカリ金属塩は、塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムである請求項1〜5のいずれかに記載の表面改質方法。

請求項7

前記光照射時又は光照射前反応容器反応筒及び反応液不活性ガスを導入し、不活性ガス雰囲気置換して重合させる請求項1〜6のいずれかに記載の表面改質方法。

請求項8

前記工程2又は前記工程Iにおける前記親水性モノマーのラジカル重合は、前記改質対象物の表面に前記親水性モノマーの含有液を塗工又は噴霧した後、該塗工又は噴霧を施した改質対象物を透明なガラス又は樹脂で覆い、更に該透明なガラス又は樹脂上から前記UV光を照射し、ラジカル重合させるものである請求項1〜7のいずれかに記載の表面改質方法。

請求項9

前記親水性モノマーは、アクリル酸アクリル酸エステルアクリル酸アルカリ金属塩、アクリル酸アミン塩メタクリル酸メタクリル酸エステル、メタクリル酸アルカリ金属塩、メタクリル酸アミン塩、アクリロニトリルアクリルアミドジメチルアクリルアミドジエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミドヒドロキシエチルアクリルアミドメトキシエチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリンメタクリルアミドジメチルメタクリルアミド、ジエチルメタクリルアミド、イソプロピルメタクリルアミドヒドロキシエチルメタクリルアミド、メトキシエチルメタクリルアミド、及びメタクリロイルモルホリンからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜8のいずれかに記載の表面改質方法。

請求項10

前記親水性モノマーは、アルカリ金属塩含有モノマーである請求項1〜8のいずれかに記載の表面改質方法。

請求項11

前記アルカリ金属塩含有モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、3−ビニルプロピオン酸ビニルスルホン酸、2−スルホエチルメタアクリレート、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、又はスチレンスルホン酸のアルカリ金属塩の少なくとも1種である請求項10記載の表面改質方法。

請求項12

前記親水性モノマーは、ハロゲン含有モノマーである請求項1〜8のいずれかに記載の表面改質方法。

請求項13

前記ハロゲン含有モノマーは、窒素含有モノマーである請求項12記載の表面改質方法。

請求項14

前記窒素含有モノマーは、2−(メタクロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロリド及び/又は2−(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウム・クロリドである請求項13記載の表面改質方法。

請求項15

前記親水性モノマーは、双性イオン性モノマーである請求項1〜8のいずれかに記載の表面改質方法。

請求項16

前記親水性モノマーの含有液が重合禁止剤を含むもので、該重合禁止剤の存在下で重合させる請求項1〜15のいずれかに記載の表面改質方法。

請求項17

請求項1〜16のいずれかに記載の表面改質方法により得られる表面改質体。

請求項18

請求項1〜16のいずれかに記載の表面改質方法により得られる、血液及び体液中のタンパク質細胞接着・吸着しにくい表面改質体。

請求項19

請求項1〜16のいずれかに記載の表面改質方法により得られる、血液及び体液中の特定のタンパク質や細胞を選択的に接着・吸着しやすい表面改質体。

請求項20

請求項1〜16のいずれかに記載の表面改質方法により三次元形状の固体表面の少なくとも一部が改質された表面改質体。

請求項21

請求項1〜16のいずれかに記載の表面改質方法により改質された表面を少なくとも一部に有する医療医用基盤

請求項22

請求項1〜16のいずれかに記載の表面改質方法により改質された表面を少なくとも一部に有する医療・医用フィルター

請求項23

請求項1〜16のいずれかに記載の表面改質方法により改質された表面を少なくとも一部に有する医療・医用流路

請求項24

請求項1〜16のいずれかに記載の表面改質方法により改質された表面を少なくとも一部に有する医療・医用チューブ

技術分野

0001

本発明は、血液及び体液中のタンパク質細胞に対する低接着性、又は癌細胞等に対する選択的接着性を付与する表面改質方法、並びに、該改質方法により得られる改質された表面を少なくとも一部に有する医療医用基盤フィルター流路チューブなどの表面改質体に関する。

背景技術

0002

医療・医用分野などにおいて使用される医療・医用基盤、フィルター、流路、チューブ等は、使用時に体内・体外で血液や体液に接することに起因して、それらの表面に血液や体液中のタンパク質や細胞が接着吸着し、本来の機能が損なわれるという問題がある。一方、癌細胞等の特定の細胞は、捕捉して診断診療に役立てるため、選択的に吸着させて回収するという要請もあるが、選択的に吸着させることが難しいという問題もある。

0003

特許文献1〜2には、親水性モノマー重合したポリマーを医療・医用基盤、フィルター、流路、チューブ表面コーティングし、上記の問題を解決することが提案されているが、親水性であるため、コーティング層が剥がれたり、捲れたりし、耐久性に問題がある。

先行技術

0004

特表2005−516736号公報
特表2005−523981号公報

発明が解決しようとする課題

0005

本発明は、前記課題を解決し、剥がれや捲れによる性能低下等の問題があるコーティングではなく、化学的に固定され、タンパク質や細胞に対する低吸着性表面や選択的吸着性表面だけでなく、優れた耐久性も付与することが可能な加硫ゴム又は熱可塑性樹脂の表面改質方法を提供することを目的とする。また、該表面改質方法により得られる改質された表面を少なくとも一部に有する医療・医用基盤、フィルター、流路、チューブ等の表面改質体を提供することも目的とする。

課題を解決するための手段

0006

本発明は、加硫ゴム又は熱可塑性樹脂を改質対象物とする表面改質方法であって、前記改質対象物の表面に重合開始点を形成する工程1と、前記重合開始点を起点にして、アルカリ金属塩の存在下で、300〜400nmのUV光照射して親水性モノマーをラジカル重合させ、前記改質対象物の表面にポリマー鎖成長させる工程2とを含む表面改質方法に関する。

0007

本発明は、加硫ゴム又は熱可塑性樹脂を改質対象物とする表面改質方法であって、光重合開始剤及びアルカリ金属塩の存在下で、300〜400nmのUV光を照射して親水性モノマーをラジカル重合させ、前記改質対象物の表面にポリマー鎖を成長させる工程Iを含む表面改質方法に関する。

0008

前記工程1は、前記改質対象物の表面に光重合開始剤を吸着させ、又は更に300〜400nmのUV光を照射し、前記表面上の光重合開始剤から重合開始点を形成させるものであることが好ましい。

0009

前記工程1又は前記工程Iの前に、前記改質対象物の表面に160〜300nmの光を照射して、該表面を親水化する工程を含むことが好ましい。

0010

前記光重合開始剤は、ベンゾフェノン系化合物及び/又はチオキサントン系化合物であることが好ましい。
前記アルカリ金属塩は、塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムであることが好ましい。

0011

前記光照射時又は光照射前反応容器反応筒及び反応液不活性ガスを導入し、不活性ガス雰囲気置換して重合させることが好ましい。

0012

前記工程2又は前記工程Iにおける前記親水性モノマーのラジカル重合は、前記改質対象物の表面に前記親水性モノマーの含有液を塗工又は噴霧した後、該塗工又は噴霧を施した改質対象物を透明なガラス又は樹脂で覆い、更に該透明なガラス又は樹脂上から前記UV光を照射し、ラジカル重合させるものであることが好ましい。

0013

前記親水性モノマーは、アクリル酸アクリル酸エステルアクリル酸アルカリ金属塩、アクリル酸アミン塩メタクリル酸メタクリル酸エステル、メタクリル酸アルカリ金属塩、メタクリル酸アミン塩、アクリロニトリルアクリルアミドジメチルアクリルアミドジエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミドヒドロキシエチルアクリルアミドメトキシエチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリンメタクリルアミドジメチルメタクリルアミド、ジエチルメタクリルアミド、イソプロピルメタクリルアミドヒドロキシエチルメタクリルアミド、メトキシエチルメタクリルアミド、及びメタクリロイルモルホリンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。

0014

前記親水性モノマーは、アルカリ金属塩含有モノマーであることが好ましい。
ここで、前記アルカリ金属塩含有モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、3−ビニルプロピオン酸ビニルスルホン酸、2−スルホエチルメタアクリレート、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、又はスチレンスルホン酸のアルカリ金属塩の少なくとも1種であることが好ましい。

0015

前記親水性モノマーは、ハロゲン含有モノマーであることが好ましい。
ここで、前記ハロゲン含有モノマーは、窒素含有モノマーであることが好ましい。
前記窒素含有モノマーは、2−(メタクロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロリド及び/又は2−(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウム・クロリドであることが好ましい。

0016

前記親水性モノマーは、双性イオン性モノマーであることが好ましい。
前記親水性モノマーの含有液が重合禁止剤を含むもので、該重合禁止剤の存在下で重合させることが好ましい。

0017

本発明は、前記表面改質方法により得られる表面改質体に関する。
本発明は、前記表面改質方法により得られる、血液及び体液中のタンパク質や細胞を接着・吸着しにくい表面改質体に関する。
本発明は、前記表面改質方法により得られる、血液及び体液中の特定のタンパク質や細胞を選択的に接着・吸着しやすい表面改質体に関する。
本発明は、前記表面改質方法により三次元形状の固体表面の少なくとも一部が改質された表面改質体に関する。
本発明は、前記表面改質方法により改質された表面を少なくとも一部に有する医療・医用基盤に関する。
本発明は、前記表面改質方法により改質された表面を少なくとも一部に有する医療・医用フィルターに関する。
本発明は、前記表面改質方法により改質された表面を少なくとも一部に有する医療・医用流路に関する。
本発明はまた、前記表面改質方法により改質された表面を少なくとも一部に有する医療・医用チューブに関する。

発明の効果

0018

本発明によれば、加硫ゴム又は熱可塑性樹脂を改質対象物とする表面改質方法であって、前記改質対象物の表面に重合開始点を形成する工程1と、前記重合開始点を起点にして、アルカリ金属塩の存在下で、300〜400nmのUV光を照射して親水性モノマーをラジカル重合させ、前記改質対象物の表面にポリマー鎖を成長させる工程2とを含む表面改質方法、又は、加硫ゴム又は熱可塑性樹脂を改質対象物とする表面改質方法であって、光重合開始剤及びアルカリ金属塩の存在下で、300〜400nmのUV光を照射して親水性モノマーをラジカル重合させ、前記改質対象物の表面にポリマー鎖を成長させる工程Iを含む表面改質方法である。これにより、改質対象物表面に親水性を有する高分子が固定されることから、タンパク質や細胞に対する低吸着性、又は特定のタンパク質や細胞に対する選択的吸着性を有するだけでなく、繰り返し使用に対する耐久性も付与され、該低接着性や選択的接着性の悪化を充分に抑制することもできる。従って、該方法を用いて対象物表面親水性ポリマー鎖を形成することで、以上の性能に優れた医療・医用基盤、フィルター、流路、チューブ等の表面改質体を提供できる。

0019

本発明は、加硫ゴム又は熱可塑性樹脂を改質対象物とする表面改質方法であって、前記改質対象物の表面に重合開始点を形成する工程1と、前記重合開始点を起点にして、アルカリ金属塩の存在下で、300〜400nmのUV光を照射して親水性モノマーをラジカル重合させ、前記改質対象物の表面にポリマー鎖を成長させる工程2とを含む表面改質方法である。

0020

本発明では、工程1又は工程Iを行う前に、前記改質対象物の表面に160〜300nmの光を照射して、該表面を親水化する工程を行うことが好適である。光重合開始剤の改質対象物表面への吸着工程1の前に、改質対象物の表面に前記光を照射することで、表面が親水化されて、光重合開始剤が溶解した有機溶剤馴染みが良くなり、結果、工程1において、より均一に、より多く光重合開始剤が前記改質対象物の表面に吸着される。160〜300nmの光照射は、従来公知を方法で実施でき、例えば、低圧水銀ランプの照射、Xeエキシマランプ高圧水銀ランプ等の手法が挙げられる。なかでも、親水化効率の高い低圧水銀ランプが好ましい。

0021

必要に応じて、改質対象物表面に前記親水化工程を施した後、工程1において、加硫成形後ゴム又は成形後の熱可塑性樹脂(改質対象物)の表面に重合開始点が形成される。例えば、前記工程1は、前記改質対象物の表面に光重合開始剤を吸着させて重合開始点を形成すること、前記改質対象物の表面に光重合開始剤を吸着させて更に300〜400nmのUV光を照射し、該表面上の光重合開始剤から重合開始点を形成させること、等により実施できる。

0022

改質対象物としての熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレンポリカーボネートポリテトラフルオロエチレンポリジメチルシロキサン等が挙げられる。

0024

なお、ゴムの加硫条件は適宜設定すれば良く、ゴムの加硫温度は、好ましくは140℃以上、より好ましくは170℃以上、更に好ましくは175℃以上である。

0025

光重合開始剤としては、例えば、カルボニル化合物テトラエチルチウラムジスルフィドなどの有機硫黄化合物、過硫化物レドックス系化合物アゾ化合物ジアゾ化合物ハロゲン化合物光還元性色素などが挙げられ、なかでも、カルボニル化合物が好ましい。

0026

光重合開始剤としてのカルボニル化合物としては、ベンゾフェノン及びその誘導体(ベンゾフェノン系化合物)が好ましく、例えば、下記式で表されるベンゾフェノン系化合物を好適に使用できる。



(式において、R1〜R5及びR1′〜R5′は、同一若しくは異なって、水素原子アルキル基ハロゲンフッ素塩素臭素ヨウ素)、水酸基、1〜3級アミノ基、メルカプト基、又は酸素原子窒素原子硫黄原子を含んでもよい炭化水素基を表し、隣り合う任意の2つが互いに連結し、それらが結合している炭素原子と共に環構造を形成してもよい。)

0027

ベンゾフェノン系化合物の具体例としては、ベンゾフェノン、キサントン、9−フルオレノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4′−ビスジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどが挙げられる。なかでも、良好にポリマーブラシが得られるという点から、ベンゾフェノン、キサントン、9−フルオレノンが特に好ましい。

0028

光重合開始剤としては、重合速度が速い点、及びゴムなどに吸着及び/又は反応し易い点から、チオキサントン系化合物も好適に使用可能である。例えば、下記式で表される化合物を好適に使用できる。



(式において、R6〜R9及びR6′〜R9′は、同一若しくは異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、環状アルキル基アリール基アルケニル基アルコキシ基、又はアリールオキシ基を表す。)

0029

上記式で示されるチオキサントン系化合物としては、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,3−ジエチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2−メトキシチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−シクロヘキシルチオキサントン、4−シクロヘキシルチオキサントン、2−ビニルチオキサントン、2,4−ジビニルチオキサントン2,4−ジフェニルチオキサントン、2−ブテニル−4−フェニルチオキサントン、2−メトキシチオキサントン、2−p−オクチルオキシフェニル−4−エチルチオキサントンなどが挙げられる。なかでも、R6〜R9及びR6′〜R9′のうちの1〜2個、特に2個がアルキル基により置換されているものが好ましく、2,4−Diethylthioxanthone(2,4−ジエチルチオキサントン)がより好ましい。

0030

ベンゾフェノン系、チオキサントン系化合物などの光重合開始剤の改質対象物表面への吸着方法としては、例えば、ベンゾフェノン系、チオキサントン系化合物については、対象物の改質する表面部位を、ベンゾフェノン系、チオキサントン系化合物を有機溶媒に溶解させて得られた溶液で処理することで表面に吸着させ、必要に応じて有機溶媒を乾燥により蒸発させることにより、重合開始点が形成される。表面処理方法としては、該ベンゾフェノン系、チオキサントン系化合物溶液を改質対象物の表面に接触させることが可能であれば特に限定されず、例えば、該ベンゾフェノン系、チオキサントン系化合物溶液の塗布、吹き付け、該溶液中への浸漬などが好適である。更に、一部の表面にのみ表面改質が必要なときには、必要な一部の表面にのみ光重合開始剤を吸着させればよく、この場合には、例えば、該溶液の塗布、該溶液の吹き付けなどが好適である。前記溶媒としては、メタノールエタノールアセトンベンゼントルエンメチルエチルケトン酢酸エチル、THFなどを使用できるが、改質対象物を膨潤させない点、乾燥・蒸発が早い点でアセトンが好ましい。

0031

また、前記のとおり、改質対象物の表面に光重合開始剤を吸着させた後、更に300〜400nmのUV光を照射し、該表面上の光重合開始剤から重合開始点を形成させることも可能であるが、この場合のUV光照射については公知の方法を採用でき、例えば、後述の工程2のUV光照射と同様の方法で実施できる。

0032

工程2では、工程1で形成された前記重合開始点を起点にして、アルカリ金属塩の存在下において、300〜400nmのUV光を照射して親水性モノマーをラジカル重合させ、前記改質対象物の表面にポリマー鎖を成長させることが行われる。特に、工程1をアルカリ金属塩の存在下で行うことにより、改質対象物表面に親水性を有する高分子が充分に固定され、結果、優れたタンパク質や細胞に対する低吸着性、特定のタンパク質や細胞に対する選択的吸着性に加え、繰り返し使用に対する耐久性も改善され、該低接着性や選択的接着性の悪化も抑制できる。

0035

なかでも、低接着性、選択的接着性や、繰り返し使用に対する耐久性の点から、ハロゲン化アルカリ金属塩が好ましく、塩化ナトリウム、塩化カリウムが特に好ましい。

0036

親水性モノマーとしては、親水性を示す官能基に変換可能な官能基を有するモノマーが挙げられ、例えば、アミド基硫酸基スルホン酸基カルボン酸基、水酸基、アミノ基、アミド基、オキシエチレン基又はその前駆体となる官能基等に代表されるような親水性基を有するモノマーである。親水性モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。

0037

前記親水性モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル(メトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等)、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩、(メタ)アクリル酸アミン塩が挙げられ、更に分子内にC−N結合を持つモノマーなども挙げられる。分子内にC−N結合を持つモノマーとしては、(メタ)アクリルアミド;N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体(N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−シクロプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド等);N,N−ジアルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体(N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−エチルメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド等);ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド;ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド誘導体(N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等);環状基を有する(メタ)アクリルアミド誘導体((メタ)アクリロイルモルホリン等)などが挙げられる。なかでも、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩、(メタ)アクリル酸アミン塩、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリンが好ましく、(メタ)アクリルアミド、2−メトキシエチルアクリレートがより好ましく、2−メトキシエチルアクリレートが特に好ましい。

0038

前記親水性モノマーとしては、アルカリ金属塩含有モノマー(分子中にアルカリ金属を含むモノマー)、双性イオン性モノマー(双性イオン性基含有化合物永久陽電荷の中心及び陰電荷の中心を有する化合物)、ハロゲン含有モノマー(分子中にハロゲンを含むモノマー)なども好適に使用できる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、例えば、親水性モノマーがアルカリ金属及びハロゲンを含むモノマー(アルカリ金属塩含有モノマー、ハロゲン含有モノマーのいずれにも該当)である場合等、アルカリ金属塩含有モノマー、双性イオン性モノマー、ハロゲン含有モノマーの2種以上に同時に該当する場合、いずれのモノマーにも含まれる。モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。

0039

アルカリ金属塩含有モノマーとしては、アクリル酸アルカリ金属塩(アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウムなど);メタクリル酸アルカリ金属塩(メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カリウムなど);イタコン酸アルカリ金属塩(イタコン酸ナトリウム、イタコン酸カリウムなど);3−ビニルプロピオン酸アルカリ金属塩(3−ビニルプロピオン酸ナトリウム、3−ビニルプロピオン酸カリウムなど);ビニルスルホン酸アルカリ金属塩(ビニルスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸カリウムなど);2−スルホエチル(メタ)アクリレートアルカリ金属塩(2−スルホエチル(メタ)アクリル酸ナトリウム、2−スルホエチル(メタ)アクリル酸カリウムなど);3−スルホプロピル(メタ)アクリレートアルカリ金属塩(3−スルホプロピル(メタ)アクリル酸ナトリウム、3−スルホプロピル(メタ)アクリル酸カリウムなど);2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸アルカリ金属塩(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸カリウムなど);スチレンスルホン酸アルカリ金属塩(スチレンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸カリウムなど);などが挙げられる。なかでも、3−スルホプロピルメタクリル酸カリウムが好ましい。

0040

双性イオン性モノマーとしては、カルボキシベタインスルホベタインホスホベタインなどが挙げられる。また、下記式(1)で示される化合物も挙げられ、なかでも、下記式(2)で表される化合物が好適である。



(式中、R11は−H又は−CH3、Xは−O−、NH−又はN+−、mは1以上の整数、Yは双性イオン性基又はハロゲン基(Cl−、Br−、F−など)を表す。)

0041

式(1)において、R11は−CH3、Xは−O−、mは1〜10の整数が好ましい。Yで表される双性イオン性基において、カチオンとしては、テトラアルキルアンモニウムなどの第四級アンモニウムアニオンとしては、カルボン酸、スルホン酸、ホスフェートなどが挙げられる。

0042

(式中、式中、R11は−H又は−CH3、p及びqは1以上の整数、Y1及びY2は反対の電荷を有するイオン性官能基を表す。)

0043

式(2)において、pは2以上の整数が好ましく、2〜10の整数がより好ましい。qは1〜10の整数が好ましく、2〜4の整数がより好ましい。また、好ましいR11は前記と同様である。Y1及びY2は、前記カチオン、アニオンと同様である。

0044

前記双性イオン性モノマーの好適な代表例としては、下記式(2−1)〜(2−4)で表される化合物が挙げられる。



(式中、R11は水素原子又はメチル基、p及びqは1〜10の整数を示す。)

0045

(式中、R11は水素原子又はメチル基、p及びqは1〜10の整数を示す。)

0046

(式中、R11は水素原子又はメチル基、R12は炭素数1〜6の炭化水素基、p及びqは1〜10の整数を示す。)

0047

(式中、R11は水素原子又はメチル基、R13、R14及びR15は、同一若しくは異なって炭素数1又は2の炭化水素基、p及びqは1〜10の整数を示す。)

0048

上記式(2−1)で表される化合物としては、ジメチル(3−スルホプロピル)(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アンモニウムベタインなど、式(2−2)で表される化合物としては、ジメチル(2−カルボキシエチル)(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アンモニウムベタインなど、式(2−3)で表される化合物としては、ジメチル(3−メトキシホスホプロピル)(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アンモニウムベタインなど、式(2−4)で表される化合物としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンなどが挙げられる。また、双性イオン性モノマーとしては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルスルホベタインなども挙げられる。なかでも、生体適合性が高い、即ちタンパク吸着性が低いという点から、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンが好ましい。

0049

ハロゲン含有モノマーは、分子内にハロゲン原子を有する親水性モノマーである。ハロゲン含有モノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。

0050

低接着性、選択的接着性や、繰り返し使用に対する耐久性の点から、好適なハロゲン含有モノマーとしては、窒素含有モノマー(ハロゲン−窒素含有モノマー)が挙げられ、具体的には、下記式(I)で示される化合物等が好ましい。



(式中、Aは、酸素原子又はNHを表す。Bは、炭素数1〜4のアルキレン基を表す。R101は、水素原子又はメチル基を表す。R102、R103及びR104は、同一若しくは異なって、炭素数1〜4のアルキル基を表す。X−はハロゲンイオンを表す。)

0051

Aは酸素原子が好ましい。Bとしては、メチレン基エチレン基プロピレン基等の直鎖、分岐状アルキレン基が挙げられ、なかでも、メチレン基、エチレン基が好ましい。R102〜104としては、メチル基、エチル基プロピル基等の直鎖、分岐状アルキル基が挙げられ、なかでも、メチル基、エチル基が好ましい。X(ハロゲン原子)としては、フッ素、塩素、臭素等が挙げられ、なかでも、塩素が好ましい。

0052

式(I)で示される窒素含有モノマーとしては、2−(メタクロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウム・クロリド(2−(メタクロイルオキシ)エチルトリメチルアミニウム・クロリド)、2−(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウム・クロリド(2−(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアミニウム・クロリド)、2−(メタクロイルオキシ)エチルジメチルエチルアンモニウム・クロリド(2−(メタクロイルオキシ)エチルジメチルエチルアミニウム・クロリド)、2−(アクリロイルオキシ)エチルジメチルエチルアンモニウム・クロリド(2−(アクリロイルオキシ)エチルジメチルエチルアミニウム・クロリド)等が例示される。

0053

工程2の親水性モノマーのラジカル重合の方法としては、例えば、ベンゾフェノン系、チオキサントン系化合物などが吸着した改質対象物の表面に、アルカリ金属塩及び親水性モノマー含有液を塗工(噴霧)し、又は、該改質対象物をアルカリ金属塩及び親水性モノマー含有液に浸漬し、UV光を照射することでそれぞれのラジカル重合(光ラジカル重合)が進行し、該改質対象物表面に対して、ポリマー鎖を成長させることができる。更に前記塗工後に、表面に透明なガラス・PET・ポリカーボネートなどで覆い、その上から紫外線などの光を照射することでそれぞれのラジカル重合(光ラジカル重合)を進行させ、改質対象物表面に対して、ポリマーを成長させることもできる。

0054

塗工(噴霧)溶媒、塗工(噴霧)方法、浸漬方法、照射条件などは、従来公知の材料及び方法を適用できる。なお、ラジカル重合性モノマーの溶液としては、水溶液又は使用する光重合開始剤(ベンゾフェノン系、チオキサントン系化合物など)を溶解しない有機溶媒に溶解させた溶液が使用される。また、ラジカル重合性モノマー含有液として、4−メチルフェノールなどの公知の重合禁止剤を含むものも使用できる。

0055

本発明では、親水性モノマー含有液の塗布後又は親水性モノマー若しくはその溶液への浸漬後、光照射することで親水性モノマーのラジカル重合が進行するが、主に紫外光発光波長をもつ高圧水銀灯メタルハライドランプLEDランプなどのUV照射光源を好適に利用できる。照射光量は、重合時間や反応の進行の均一性を考慮して適宜設定すればよい。また、反応容器内や反応筒内における酸素などの活性ガスによる重合阻害を防ぐために、光照射時又は光照射前において、反応容器内、反応筒内や反応液中の酸素を除くことが好ましい。そのため、反応容器内、反応筒内や反応液中に窒素ガスアルゴンガスなどの不活性ガスを導入して酸素などの活性ガスを反応系外に排出し、反応系内を不活性ガス雰囲気に置換すること、などが適宜行われている。更に、酸素などの反応阻害を防ぐために、UV照射光源をガラスやプラスチックなどの反応容器と反応液や改質対象物の間に空気層酸素含有量が15%以上)が入らない位置に設置する、などの工夫も適宜行われる。

0056

紫外線の波長は、300〜400nmである。これにより、改質対象物の表面に良好にポリマー鎖を形成できる。光源としては高圧水銀ランプや、365nmの中心波長を持つLED、375nmの中心波長を持つLED、385nmの中心波長を持つLEDなどを使用することが出来る。355〜390nmのLED光を照射することがより好ましい。特に、ベンゾフェノンの励起波長366nmに近い365nmの中心波長を持つLEDなどが効率の点から好ましい。波長が300nm未満では、改質対象物の分子を切断させて、ダメージを与える可能性があるため、300nm以上の光が好ましく、改質対象物のダメージが非常に少ないという観点から、355nm以上の光が更に好ましい。一方、400nmを超える光では、光重合開始剤が活性されにくく、重合反応が進みにくいため、400nm以下の光が好ましい。なお、LED光は波長が狭く、中心波長以外の波長が出ない点で好適であるが、水銀ランプ等でもフィルターを用いて、300nm未満の光をカットすれば、LED光と同様の効果を得ることも可能である。

0057

本発明では、波長300〜400nmの光照射時間を短時間化し、生産性よくポリマー鎖を形成できる。例えば、光照射時間を3〜120分間にすることが可能であり、5〜100分間、10〜60分間に短縮化することもできる。

0058

本発明はまた、加硫ゴム又は熱可塑性樹脂を改質対象物とする表面改質方法であって、光重合開始剤及びアルカリ金属塩の存在下で、300〜400nmのUV光を照射して親水性モノマーをラジカル重合させ、前記改質対象物の表面にポリマー鎖を成長させる工程Iを含む表面改質方法である。具体的には、開始剤としての光重合開始剤に加え、更にアルカリ金属塩の存在下において、UV光を照射して親水性モノマーをラジカル重合させて親水性ポリマー鎖を作製することで、改質対象物の表面に親水性ポリマー層親水性高分子)が固定化された表面改質体を製造できる。工程Iで使用される改質対象物、光重合開始剤、アルカリ金属塩、親水性モノマーとしては、前記と同様のものを使用できる。

0059

なお、工程Iを行う前に、前述の親水化工程を行うことが好ましい。前記と同様、表面が親水化されて、光重合開始剤が溶解した有機溶剤の馴染みが良くなり、結果、工程Iにおいて、より均一に、より多く光重合開始剤が前記改質対象物の表面に吸着される。

0060

例えば、工程Iは、改質対象物の表面に光重合開始剤、アルカリ金属塩及び親水性モノマーを接触させた後、300〜400nmのLED光を照射することで、該光重合開始剤から重合開始点を生じさせるとともに、該重合開始点を起点として、アルカリ金属塩の存在下でモノマーをラジカル重合させてポリマー鎖を成長させることにより実施できる。

0061

工程Iの親水性モノマーのラジカル重合の方法としては、改質対象物の表面に、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物などの光重合開始剤及びアルカリ金属塩を含む親水性モノマー含有液を塗工(噴霧)し、又は、改質対象物を光重合開始剤及びアルカリ金属塩を含む親水性モノマー含有液に浸漬し、紫外線などの光を照射することでラジカル重合(光ラジカル重合)が進行し、該改質対象物表面に対して、ポリマー鎖を成長させることができる。更に、前述の透明なガラス・PET・ポリカーボネートなどで覆い、その上から紫外線などの光を照射する方法なども採用できる。なお、塗工(噴霧)溶媒、塗工(噴霧)方法、浸漬方法、照射条件などは、前述と同様の材料及び方法を適用できる。また、前記と同様、波長300〜400nmの光照射時間を3〜120分間、5〜100分間、10〜60分間に短縮化することも可能である。

0062

工程2、工程Iでは、2種以上のモノマーを同時にラジカル重合させてもよい。更に、改質対象物の表面に複数のポリマー鎖を成長させてもよい。本発明の表面改質方法は、ポリマー鎖間架橋してもよい。この場合、ポリマー鎖間には、イオン架橋、酸素原子を有する親水性基による架橋、ヨウ素などのハロゲン基による架橋が形成されてもよい。

0063

加硫ゴム又は熱可塑性樹脂に前記表面改質方法を適用することで、表面改質体が得られる。また、三次元形状の固体表面の少なくとも一部に前記方法を適用することで、改質された表面改質体が得られる。更に、該表面改質体の好ましい例としては、ポリマーブラシ(高分子ブラシ)が挙げられる。ここで、ポリマーブラシとは、表面開始重合を用いたgrafting from法で得られるグラフトポリマーを意味する。また、グラフト鎖は、改質対象物の表面から略垂直方向配向しているものがエントロピーが小さくなり、グラフト鎖の分子運動が低くなることにより、潤滑性が得られて好ましい。更に、ブラシ密度として、0.01chains/nm2以上である準希薄及び濃厚ブラシが好ましい。

0064

また、加硫ゴム又は熱可塑性樹脂に前記表面改質方法を適用することで、改質された表面を少なくとも一部に有する医療・医用基盤、フィルター、流路、チューブ等の医療用具を製造できる。改質は、少なくとも医療・医用基盤(採取した血液及び体液から特定のタンパク質や細胞(癌細胞など)を取り出し、それらを吸着する基盤など)、フィルター、流路、チューブ等の医療用具の表面における血液及び体液が接する箇所に施されていることが好ましく、表面全体に施されていてもよい。所望の性能に応じて親水性モノマーを適宜選択することで、血液及び体液中のタンパク質や細胞が表面に接着、吸着することを防止したり、癌細胞等を選択的に接着、吸着させることが可能になるとともに、ポリマー鎖が固定化されているため、優れた耐久性も得られる。

0065

以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。

0066

(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート(PET)の改質対象物表面にベンゾフェノンの3wt%アセトン溶液を塗布して、ベンゾフェノンを吸着させ、乾燥した。その後、365nmの波長を持つLED光(5mW/cm2)を60分照射した。その際、改質対象物を回転させて、全面に光が照射されるようにした。
その後、アクリルアミド水溶液(1.25M)に塩化ナトリウム濃度が1.5Mになるように添加・調整した水溶液の入ったガラス反応容器に浸漬し、ゴムで蓋をし、アルゴンガスを導入して120分間バブリングをし、酸素を追い出した。ガラス反応容器を回転させながら、365nmの波長を持つLED光を30分照射してラジカル重合を行い、PET表面にポリマー鎖を成長させ、表面改質体(ポリマーブラシ)を得た。

0067

(実施例2)
PETの改質対象物表面にベンゾフェノンの3wt%アセトン溶液を塗布して、ベンゾフェノンを吸着させ、乾燥した。
その後、アクリルアミド水溶液(1.25M)に塩化ナトリウム濃度が1.5Mになるように添加・調整した水溶液の入ったガラス反応容器に浸漬し、ゴムで蓋をし、アルゴンガスを導入して120分間バブリングをし、酸素を追い出した。ガラス反応容器を回転させながら、365nmの波長を持つLED光を30分照射してラジカル重合を行い、PET表面にポリマー鎖を成長させ、表面改質体(ポリマーブラシ)を得た。

0068

(実施例3)
ベンゾフェノンを0.015wt%になるように溶かした水を用いて、アクリルアミド水溶液濃度が1.25M、塩化ナトリウム濃度が1.5Mになるように添加・調整した水溶液を作製し、その水溶液が入ったガラス反応容器にPETの改質対象物表面を浸漬し、ゴムで蓋をし、アルゴンガスを導入して120分間バブリングをし、酸素を追い出した。ガラス反応容器を回転させながら、365nmの波長を持つLED光を30分照射してラジカル重合を行い、PET表面にポリマー鎖を成長させ、表面改質体を得た。

0069

(実施例4)
塩化ナトリウム1.5Mを塩化カリウム0.75Mに変えて、照射時間を60分にした以外は、実施例1と同様にして表面改質体(ポリマーブラシ)を得た。

0070

(実施例5)
アクリルアミドを2−メトキシエチルアクリレートに変更した以外は、実施例2と同様にして表面改質体を得た。

0071

(実施例6)
アクリルアミドを2—メトキシエチルアクリレートに変更した以外は、実施例3と同様にして表面改質体を得た。

0072

(実施例7)
アクリルアミドを2—メトキシエチルアクリレートに変更した以外は、実施例4と同様にして表面改質体を得た。

0073

(実施例8)
アクリルアミドを2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに変更した以外は、実施例2と同様にして表面改質体を得た。

0074

(実施例9)
アクリルアミドを2−(メタクロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウム・クロリドに変更した以外は、実施例2と同様にして表面改質体を得た。

0075

(実施例10)
アクリルアミドを3−スルホプロピルメタクリル酸カリウムに変更した以外は、実施例2と同様にして表面改質体を得た。

0076

(実施例11)
PETの改質対象物表面にベンゾフェノンの3wt%アセトン溶液を塗布して、ベンゾフェノンを吸着させ、乾燥した。
その後、2−メトキシエチルアクリレート水溶液(1.25M)に塩化ナトリウム濃度が1.5Mになるように添加・調整した水溶液を塗布し、表面にガラスを被せて覆った。
次いで、ガラスの上から、365nmの波長を持つLED光を30分照射してラジカル重合を行い、PET表面にポリマー鎖を成長させ、表面改質体(ポリマーブラシ)を得た。

0077

(実施例12)
PETに代えてPS(ポリスチレン)を用いた以外は、実施例5と同様にして表面改質体を得た。

0078

(実施例13)
PETに代えてアクリル樹脂を用いた以外は、実施例5と同様にして表面改質体を得た。

0079

(実施例14)
PETにベンゾフェノンを吸着させる前に、低圧水銀ランプ(185nmと254nmに強度の高いスペクトルを有する)を5分照射して表面を親水化した以外は、実施例5と同様にして表面改質体を得た。

0080

(実施例15)
PETにベンゾフェノンを吸着させる前に、低圧水銀ランプ(185nmと254nmに強度の高いスペクトルを有する)を5分照射して表面を親水化した以外は、実施例6と同様にして表面改質体を得た。

0081

(比較例1)
PETそのものを用いた。

0082

(比較例2)
ポリエチレンテレフタレート(PET)の改質対象物表面にベンゾフェノンの3wt%ア
セトン溶液を塗布して、ベンゾフェノンを吸着させ、乾燥した。その後、365nmの波
長を持つLED光(5mW/cm2)を60分照射した。その際、改質対象物を回転させ
て、全面に光が照射されるようにした。
その後、アクリルアミド水溶液(1.25M)の入ったガラス反応容器に浸漬し、ゴムで蓋をし、アルゴンガスを導入して120分間バブリングをし、酸素を追い出した。ガラス反応容器を回転させながら、365nmの波長を持つLED光を300分照射してラジカル重合を行い、PET表面にポリマー鎖を成長させ、表面改質体を得た。

0083

実施例、比較例で作製した表面改質体を以下の方法で評価した。

0084

タンパク質吸着量
試料(表面改質体)の表面を1mg/mlのウシ血清アルブミンBSA)溶液に接触させ、37℃で3時間静置した。試料表面をリン酸緩衝生理食塩水で軽く洗浄し、タンパク質吸着試料とした。タンパク質吸着試料全量を50ml用遠沈管に入れ、JIS T9010:1999「ゴム製品生物学的安全性に関する試験方法」の3.6項水溶性タンパク質に記載の方法に従って、試料表面に吸着したタンパク質を抽出した。得られたタンパク質に0.1mol/l水酸化ナトリウム水溶液0.5mlを正確に加えて溶解し、試料溶液とした。また、試料を入れずに同じ操作を行ったものを操作ブランクとした。
試料溶液及び標準溶液(BSA溶液(5〜100μg/ml))0.2mlを正確にとり、Lowry法によりタンパク量を定量した。標準溶液のBSA濃度(μg/ml)と吸光度から検量線を作成し、それを用いて試料溶液1mlあたりのタンパク濃度(μg/ml)を算出し、その値を表面改質体の面積当たりの値に換算した。

0085

耐久後のタンパク質吸着量)
タンパク質吸着試験を行い、その後、表面を70℃のお湯につけて洗浄して、タンパク質を落とした。この吸着・洗浄を10回繰り返した後、再度タンパク質吸着試験を行い、耐久後のタンパク質吸着量及び初期吸着量からの増加率を算出した。

0086

0087

0088

表1〜2の結果から、実施例の表面改質体は、タンパク質の吸着量が少なく、繰り返しの吸着・洗浄によるタンパク質吸着量の増加率も低かった。一方、PET表面自体の比較例1は吸着量が初めから多く、繰り返しの吸着・洗浄によるタンパク質吸着量の増加率も高かった。なお、細胞はタンパク質が吸着した上に接着・吸着を起こすので、タンパク質吸着量が少なければ、細胞も接着・吸着を起こしにくい。また、比較例2と実施例1の比較から、アルカリ金属塩を添加すると照射時間を大幅に短くしても、同等以上の性能が得られ、非常に経済的であった。

0089

従って、アルカリ金属塩の存在下において、アクリルアミド、2−メトキシエチルアクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンなどの親水性モノマーを用いて、医療・医用基盤、フィルター、流路、チューブ等の医療用具の表面にポリマー鎖を形成することで、タンパク質吸着性や細胞吸着性を低下できると同時に、繰り返し使用による耐久性も付与することが可能であることが明らかとなった。

実施例

0090

また、実施例5〜7で成長させた2−メトキシエチルアクリレートのポリマーは、血液中で、血小板白血球赤血球を吸着せず、癌細胞のみを選択的に吸着する材料であり、例えば、癌細胞を含む血液中で選択的に癌細胞のみを接着・吸着させることを期待できる。

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