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技術 絶縁油分析による油入りケーブルの硫化銅生成状況の推定方法、危険度の診断方法

出願人 東京電力ホールディングス株式会社東京電設サービス株式会社
発明者 中出雅彦松井健郎杉本修永原茂樹羽田淳也
出願日 2015年7月23日 (5年10ヶ月経過) 出願番号 2015-145433
公開日 2017年2月2日 (4年4ヶ月経過) 公開番号 2017-026470
状態 特許登録済
技術分野 特有な方法による材料の調査、分析
主要キーワード コアずれ 銅部品 暫定基準値 相関直線 生成箇所 測定インターバル 油入り 減少過程
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年2月2日)のものです。
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図面 (10)

課題

絶縁油を用いた油入りケーブル中の硫化銅生成状況を推定し、当該方法で推定された硫化銅生成状況に基づいて、油入りケーブルの異常発生危険度を評価する診断方法を提供すること。

解決手段

絶縁油を使用した油入りケーブルにおいて、ケーブルから採取した絶縁油について、油中溶解銅量もしくは誘電正接可燃性ガス総量の経時変化を示すトレンドグラフを作成するステップ1と、油入りケーブル使用前の絶縁油と油入りケーブルから採取した絶縁油の油中溶解銅量と誘電正接の関係を示すグラフを作成し、過去の最大誘電正接の値から最大油中溶解銅量を求めるステップ2と、誘電正接と油中溶解銅量の比を求めるステップ3とを含み、ステップ1〜3の値を用いてケーブル内における硫化銅の生成状況を推定する。また、ステップ3で求めた誘電正接と油中溶解銅量の比、最大油中溶解銅量の基準値及び可燃性ガス総量の基準値をもとに危険度を評価、診断する。

概要

背景

油入り変圧器などの油入り電気機器は、油入り電気機器の銅部品絶縁油中硫黄成分の反応により導電性硫化銅が生成(硫化腐食)し、絶縁破壊を引き起こすために油入り電気機器に致命的な損傷を及ぼす場合があることが知られている。絶縁油中の推定硫黄成分としては、絶縁油中に含まれている硫黄成分や、絶縁紙等の部材から溶出する溶出硫黄成分や、絶縁油後添加する酸化防止剤等の添加硫黄成分が考えられる。

大型変圧器などの油入り電気機器では、絶縁体として油浸紙を使用するため、この油浸絶縁紙に硫化銅が付着したときはコイル間で短絡が発生し、破壊されることになり、海外では絶縁破壊事例として報告されている。また、同じ絶縁体として油浸紙を使用している油入りケーブル劣化は、非常に緩やかであると考えられてきたが、近年経年油入りケーブル線路における絶縁破壊事例も確認されている。ただし、絶縁破壊要因硫化銅生成という報告はされていない。

硫化銅生成に関わる反応メカニズムは、絶縁油中に添加された酸化防止剤ジベンジルジスルフィド(以下、「DBDS」と略称することがある。)との関係で詳細に検討されている。すなわち、DBDSがコイル銅に吸着し、次に、DBDSがコイル銅と反応してDBDS−銅錯体を生成し、さらに、DBDS−銅錯体がベンジルラジカル及びベンジルスルフェニルラジカルと硫化銅へと分解する反応が起こるためと報告されている(例えば、特許文献1〜3を参照)。

特許文献1及び特許文献2では、稼動中の変圧器から絶縁油を採取し、DBDSやその分解物副生成物などを分析して硫化銅の生成を予測し、油入り電気機器の異常発生危険度診断する方法を開示している。また、特許文献3では、絶縁油が空気雰囲気下にある場合に、絶縁油中のジベンジルスルホキシドの濃度を測定し、該濃度に基づいて、硫化銅の生成量を推定する方法を開示している。

しかしながら、上記の診断方法は、絶縁油中にDBDSが添加されていることが不可欠であり、基本的にDBDSを添加していない絶縁油を用いている油入りケーブルの場合は、絶縁油中のDBDS−銅錯体生成量から絶縁油中の硫化銅生成量を推定できない問題点がある。また、従来、油入りケーブルの点検技術としては、絶縁油の誘電正接(tanδ)測定や、絶縁油中のガスを分析し、部分放電(絶縁油の局所的な絶縁破壊)により生成される可燃性ガス量を、劣化度合い目安とする油中ガス分析が一般的であり、硫化銅の生成状況から危険度を診断する方法は実施されていない。

概要

絶縁油を用いた油入りケーブル中の硫化銅生成状況を推定し、当該方法で推定された硫化銅生成状況に基づいて、油入りケーブルの異常発生の危険度を評価する診断方法を提供すること。絶縁油を使用した油入りケーブルにおいて、ケーブルから採取した絶縁油について、油中溶解銅量もしくは誘電正接と可燃性ガス総量の経時変化を示すトレンドグラフを作成するステップ1と、油入りケーブル使用前の絶縁油と油入りケーブルから採取した絶縁油の油中溶解銅量と誘電正接の関係を示すグラフを作成し、過去の最大誘電正接の値から最大油中溶解銅量を求めるステップ2と、誘電正接と油中溶解銅量の比を求めるステップ3とを含み、ステップ1〜3の値を用いてケーブル内における硫化銅の生成状況を推定する。また、ステップ3で求めた誘電正接と油中溶解銅量の比、最大油中溶解銅量の基準値及び可燃性ガス総量の基準値をもとに危険度を評価、診断する。

目的

本発明は、前記従来の課題に鑑みてなされたものであり、絶縁油を使用した油入りケーブル中の硫化銅生成状況を推定し、当該方法で推定された硫化銅生成状況に基づいて、油入りケーブルの異常発生の危険度を評価する診断方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

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請求項1

絶縁油を使用した油入りケーブルにおいて、該ケーブル内における硫化銅の生成状況を推定する方法であって、油入りケーブルから採取した絶縁油について、油中溶解銅量もしくは誘電正接(tanδ)と可燃性ガス総量(TCG)の経時変化を示すトレンドグラフを作成するステップ1を含み、作成されたトレンドグラフにおいて、油中溶解銅量もしくは誘電正接(tanδ)の値が極大値を示した後に減少して行く期間を、硫化銅生成期と推定し、トレンドグラフで示される油中溶解銅量もしくは誘電正接(tanδ)の最大値と硫化銅生成期の可燃性ガス総量(TCG)の最大値から、硫化銅の生成状況を推定することを特徴とする方法。

請求項2

絶縁油を使用した油入りケーブルにおいて、該ケーブル内における硫化銅の生成状況を推定する方法であって、油入りケーブルから採取した絶縁油について、油中溶解銅量もしくは誘電正接(tanδ)と可燃性ガス総量(TCG)の経時変化を示すトレンドグラフを作成するステップ1と、油入りケーブル使用前の絶縁油と油入りケーブルから採取した絶縁油の油中溶解銅量と誘電正接(tanδ)の関係を示すグラフを作成し、過去の最大誘電正接(tanδ)の値から、最大油中溶解銅量を求めるステップ2と、誘電正接(tanδ)と油中溶解銅量の比を求めるステップ3とを含み、作成されたトレンドグラフで示される油中溶解銅量もしくは誘電正接(tanδ)の値が極大値を示した後に減少して行く期間を、硫化銅生成期と推定し、ステップ2で求めた最大油中溶解銅量と、ステップ3で求めた誘電正接(tanδ)と油中溶解銅量の比と、ステップ1の油中溶解銅量もしくは誘電正接(tanδ)と可燃性ガス総量(TCG)の値を用いて、硫化銅の生成状況を推定することを特徴とする方法。

請求項3

絶縁油を使用した油入りケーブルにおいて、該ケーブル内における異常発生危険度を評価する診断方法であって、油入りケーブルから採取した絶縁油について、油中溶解銅量もしくは誘電正接(tanδ)と可燃性ガス総量(TCG)の経時変化を示すトレンドグラフを作成するステップ1と、油入りケーブル使用前の絶縁油と油入りケーブルから採取した絶縁油の油中溶解銅量と誘電正接(tanδ)の関係を示すグラフを作成し、過去の最大誘電正接(tanδ)の値から、最大油中溶解銅量を求めるステップ2と、誘電正接(tanδ)と油中溶解銅量の比を求めるステップ3とを含み、(A)ステップ3で求めた誘電正接(tanδ)と油中溶解銅量の比、(B)予め設定した最大油中溶解銅量の基準値、及び(C)予め設定した可燃性ガス総量(TCG)の基準値をもとに、危険度を評価することを特徴とする診断方法。

請求項4

ステップ1で作成されたトレンドグラフで示される油中溶解銅量もしくは誘電正接(tanδ)が減少過程または減少後ほぼ定常状態にある油入りケーブルを、要診断と評価し、当該油入りケーブルについて、(A)ステップ3で求めた誘電正接(tanδ)と油中溶解銅量の比、(B)予め設定した最大油中溶解銅量の基準値、及び(C)予め設定した可燃性ガス総量(TCG)の基準値をもとに危険度を評価することを特徴とする請求項3に記載の診断方法。

請求項5

(A)ステップ3で求めた誘電正接(tanδ)と油中溶解銅量の比、(B)予め設定した最大油中溶解銅量の基準値、(C)予め設定した可燃性ガス総量(TCG)の基準値の順で、危険度を評価し、ランク付けすることを特徴とする請求項4に記載の診断方法。

技術分野

0001

本発明は、絶縁油分析による油入りケーブル硫化銅生成状況の推定方法危険度診断方法に関する。

背景技術

0002

油入り変圧器などの油入り電気機器は、油入り電気機器の銅部品絶縁油中硫黄成分の反応により導電性硫化銅が生成(硫化腐食)し、絶縁破壊を引き起こすために油入り電気機器に致命的な損傷を及ぼす場合があることが知られている。絶縁油中の推定硫黄成分としては、絶縁油中に含まれている硫黄成分や、絶縁紙等の部材から溶出する溶出硫黄成分や、絶縁油後添加する酸化防止剤等の添加硫黄成分が考えられる。

0003

大型変圧器などの油入り電気機器では、絶縁体として油浸紙を使用するため、この油浸絶縁紙に硫化銅が付着したときはコイル間で短絡が発生し、破壊されることになり、海外では絶縁破壊事例として報告されている。また、同じ絶縁体として油浸紙を使用している油入りケーブルの劣化は、非常に緩やかであると考えられてきたが、近年経年油入りケーブル線路における絶縁破壊事例も確認されている。ただし、絶縁破壊要因が硫化銅生成という報告はされていない。

0004

硫化銅生成に関わる反応メカニズムは、絶縁油中に添加された酸化防止剤ジベンジルジスルフィド(以下、「DBDS」と略称することがある。)との関係で詳細に検討されている。すなわち、DBDSがコイル銅に吸着し、次に、DBDSがコイル銅と反応してDBDS−銅錯体を生成し、さらに、DBDS−銅錯体がベンジルラジカル及びベンジルスルフェニルラジカルと硫化銅へと分解する反応が起こるためと報告されている(例えば、特許文献1〜3を参照)。

0005

特許文献1及び特許文献2では、稼動中の変圧器から絶縁油を採取し、DBDSやその分解物副生成物などを分析して硫化銅の生成を予測し、油入り電気機器の異常発生の危険度を診断する方法を開示している。また、特許文献3では、絶縁油が空気雰囲気下にある場合に、絶縁油中のジベンジルスルホキシドの濃度を測定し、該濃度に基づいて、硫化銅の生成量を推定する方法を開示している。

0006

しかしながら、上記の診断方法は、絶縁油中にDBDSが添加されていることが不可欠であり、基本的にDBDSを添加していない絶縁油を用いている油入りケーブルの場合は、絶縁油中のDBDS−銅錯体生成量から絶縁油中の硫化銅生成量を推定できない問題点がある。また、従来、油入りケーブルの点検技術としては、絶縁油の誘電正接(tanδ)測定や、絶縁油中のガスを分析し、部分放電(絶縁油の局所的な絶縁破壊)により生成される可燃性ガス量を、劣化度合い目安とする油中ガス分析が一般的であり、硫化銅の生成状況から危険度を診断する方法は実施されていない。

先行技術

0007

特開2010−010439号公報
特開2012−156232号公報
特開2014−045212号公報

発明が解決しようとする課題

0008

本発明は、前記従来の課題に鑑みてなされたものであり、絶縁油を使用した油入りケーブル中の硫化銅生成状況を推定し、当該方法で推定された硫化銅生成状況に基づいて、油入りケーブルの異常発生の危険度を評価する診断方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0009

前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した。その結果、絶縁油を使用した油入りケーブルの解体調査結果より、当該油入りケーブル中においても硫化銅が生成すること;硫化銅の生成原因と思われる絶縁油中の油中溶解銅量と絶縁油の誘電正接(tanδ)との間に相関関係が認められること;硫化銅生成時に油中溶解銅量と誘電正接(tanδ)の経時変化を示したトレンドグラフ極大値をとった後に減少する傾向があること;硫化銅生成時に絶縁油中の可燃性ガスが発生し可燃性ガス総量(Total Combustible Gas:TCG)が増加すること;に着目した。
そして、油入りケーブルから採取した絶縁油中の油中溶解銅量、誘電正接(tanδ)及び可燃性ガス量(TCG)から、硫化銅生成状況を推定することができ、当該方法で推定された硫化銅生成状況に基づいて、油入りケーブルの異常発生の危険度を診断することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。

0010

すなわち、本発明の硫化銅生成状況の推定方法は、
絶縁油を使用した油入りケーブルにおいて、該ケーブル内における硫化銅の生成状況を推定する方法であって、
油入りケーブルから採取した絶縁油について、油中溶解銅量もしくは誘電正接(tanδ)と可燃性ガス総量(TCG)の経時変化を示すトレンドグラフを作成するステップ1を含み、
作成されたトレンドグラフにおいて、油中溶解銅量もしくは誘電正接(tanδ)の値が極大値を示した後に減少して行く期間を、硫化銅生成期と推定し、トレンドグラフで示される油中溶解銅量もしくは誘電正接(tanδ)の最大値と硫化銅生成期の可燃性ガス総量(TCG)の最大値から、硫化銅の生成状況を推定することを特徴とする。

0011

また、本発明の硫化銅生成状況の推定方法は、
絶縁油を使用した油入りケーブルにおいて、該ケーブル内における硫化銅の生成状況を推定する方法であって、
油入りケーブルから採取した絶縁油について、油中溶解銅量もしくは誘電正接(tanδ)と可燃性ガス総量(TCG)の経時変化を示すトレンドグラフを作成するステップ1と、
油入りケーブル使用前の絶縁油と油入りケーブルから採取した絶縁油の油中溶解銅量と誘電正接(tanδ)の関係を示すグラフを作成し、過去の最大誘電正接(tanδ)の値から、最大油中溶解銅量を求めるステップ2と、
誘電正接(tanδ)と油中溶解銅量の比を求めるステップ3とを含み、
作成されたトレンドグラフで示される油中溶解銅量もしくは誘電正接(tanδ)の値が極大値を示した後に減少して行く期間を、硫化銅生成期と推定し、ステップ2で求めた最大油中溶解銅量と、ステップ3で求めた誘電正接(tanδ)と油中溶解銅量の比と、ステップ1の油中溶解銅量もしくは誘電正接(tanδ)と可燃性ガス総量(TCG)の値を用いて、硫化銅の生成状況を推定することを特徴とする。

0012

本発明の硫化銅生成状況の推定方法は、油入りケーブルを構成する導体が、絶縁油中の炭化水素非炭化水素化合物と反応し、銅錯体もしくは銅化合物として絶縁油中に溶解し、当該銅錯体が高電界領域にある補強絶縁層の絶縁紙に凝集し、硫化銅を生成するとの推定に基づいている。
また、油入りケーブル使用前の絶縁油について、誘電正接(tanδ)と油中溶解銅量との間に直線性の正の相関が認められるため、誘電正接(tanδ)の最大値(極大値)が大きいと油中溶解銅量も多くなるため、硫化銅生成量が多くなるとの推定に基づいている。
油中溶解銅量と誘電正接(tanδ)のトレンドは相関する。いずれのパラメータを使用しても硫化銅生成状況を推定することが可能である。蓄積データ量信頼性の高さ、データ処理のし易さ等を考慮して任意に選択できる。

0013

また、本発明の診断方法は、
絶縁油を使用した油入りケーブルにおいて、該ケーブル内における異常発生の危険度を評価する診断方法であって、
油入りケーブルから採取した絶縁油について、油中溶解銅量もしくは誘電正接(tanδ)と可燃性ガス総量(TCG)の経時変化を示すトレンドグラフを作成するステップ1と、
油入りケーブル使用前の絶縁油と油入りケーブルから採取した絶縁油の油中溶解銅量と誘電正接(tanδ)の関係を示すグラフを作成し、過去の最大誘電正接(tanδ)の値から、最大油中溶解銅量を求めるステップ2と、
誘電正接(tanδ)と油中溶解銅量の比を求めるステップ3とを含み、
(A)ステップ3で求めた誘電正接(tanδ)と油中溶解銅量の比、(B)予め設定した最大油中溶解銅量の基準値、及び(C)予め設定した可燃性ガス総量(TCG)の基準値をもとに、危険度を評価することを特徴とする。

0014

本発明の診断方法においては、ステップ1で作成されたトレンドグラフで示される油中溶解銅量もしくは誘電正接(tanδ)が減少過程または減少後ほぼ定常状態にある油入りケーブルを、要診断と評価した上で、
要診断と評価した油入りケーブルを、(A)ステップ3で求めた誘電正接(tanδ)と油中溶解銅量の比、(B)予め設定した最大油中溶解銅量の基準値、及び(C)予め設定した可燃性ガス総量(TCG)の基準値をもとに危険度を評価することが好ましい。

0015

また、本発明の診断方法においては(A)ステップ3で求めた誘電正接(tanδ)と油中溶解銅量の比、(B)予め設定した最大油中溶解銅量の基準値、及び(C)予め設定した可燃性ガス総量(TCG)の基準値の順で、危険度を評価し、ランク付けすることが好ましい。

0016

ステップ3で求めた関係式は、実設備におけるスラッジ生成量やスラッジ生成範囲(広狭)との相関が認められるため、信頼性が高い指標と言える。油中溶解銅量は、硫化銅生成要因となる銅量を表す指標であるため、硫化銅生成に直結する因子である。また、TCG量は、絶縁油溶存ガスの増加を表す指標であるため、部分放電の危険性を評価する上で重要である。

発明の効果

0017

本発明の硫化銅生成状況の推定方法によれば、トレンドグラフで示される油中溶解銅量もしくは誘電正接(tanδ)の値が、極大値を示した後に、減少して行く期間を、硫化銅生成期と推定するので、油入りケーブルから採取した絶縁油の油中溶解銅量もしくは誘電正接(tanδ)の値から、硫化銅の生成状況を推定することが可能になる。
また、本発明の診断方法によれば、油中ガス分析(部分放電や熱劣化により発生したガスのトレンド傾向診断)、絶縁油の電気特性低下傾向診断(tanδ、TCG、体積抵抗率、AC耐圧測定)、水の浸入診断(水分量測定)等による従来の診断方法とは異なる観点で、硫化銅生成メカニズムに基づいて診断するので、ジベンジルジスルフィドを添加していない絶縁油を使用した油入りケーブルについても劣化診断が可能になる。

0018

さらに、絶縁油の誘電正接(tanδ)と絶縁油中の可燃性ガス総量(TCG)の測定データを使用するので、油入りケーブル稼働時より蓄積してきた測定データからトレンドグラフを作成することができる。
また、解体した油入りケーブルにおける硫化銅生成範囲の広狭データを、未使用絶縁油を用いて作成した油中溶解銅量と誘電正接(tanδ)の関係式と関連付けることで、危険度を評価、診断することができる。

0019

従って、運転開始から30〜40年を迎える油入りケーブルについて、従来の蓄積データを活用しながら、手軽に精度よく診断することができる。

図面の簡単な説明

0020

OFケーブルの(a)断面図と(b)接続部構造の一例を示す図である。
ケーブルコア部のスラッジ、硫化銅生成例を示す図である。 (a);オイルギャップに沿って生成された例を示す写真である。 (b);ケーブルコア(絶縁紙全体)に生成された例を示す写真である。
解体調査した経年OFケーブルの補強層でのスラッジ、硫化銅生成傾向を示す図である。
解体調査した経年OFケーブルの補強層でのスラッジ、硫化銅生成傾向を示す図である。
tanδ、TCGの経時変化を示すトレンドグラフの一例を示す図である。
油中溶解銅量とtanδの相関図である。
最大溶解銅量算出方法を示す図である。
油中溶解銅量と解体調査結果との関係図である。
トレンドグラフ形状別の油中溶解銅量、tanδ、TCG、H2量を示す図である。

0021

以下、本発明による油入りケーブル(以下、OFケーブルと記す)内における硫化銅の生成状況の推定方法、ならびに、異常発生の危険度を評価する診断方法を詳細に説明する。

0022

≪OFケーブルにおける劣化状況

0023

OFケーブルの一例を図1に示す。図1(a)はOFケーブルの断面図、図1(b)はOFケーブル接続部構造を示したものである。OFケーブルは、単に油浸絶縁紙を絶縁体としただけでは、温度変化による絶縁油の圧力低下で絶縁油中に気泡が生じ、要求特性満足しないため、導体(または金属被)の内側に油通路を設け、絶縁油に大気圧以上の圧力を外部に設置した油槽によって常時加え、高電界強度にも耐えられるように設計されている。OFケーブルの絶縁体は、図1(b)に示すように、テープ状の絶縁紙を巻き付けて絶縁油を含浸させることで構成される。その際、曲げ特性を向上させるために、通常、絶縁紙はラップさせず、ギャップを均等に設けて構成されている。

0024

OFケーブルの絶縁性能が低下する要因は、過熱による絶縁紙重合度の低下、振動熱伸縮による損傷・変形・絶縁体の崩れ、負圧、漏油、絶縁油特性異常などが考えられており、従来より、各種点検技術が報告、実施されている。点検技術としては、例えば、油中ガス分析技術(部分放電や熱劣化により発生したガスのトレンド傾向診断)、絶縁油の電気特性(tanδ、TCG、体積抵抗率、AC耐圧測定)の低下傾向を診断する技術、水の浸入診断(水分量測定)等が存在する。

0025

OFケーブルの電気特性はAC電圧に対し裕度をもっているが、コアずれ等により絶縁紙のずれや損傷により欠陥が存在する場合、過電圧侵入により欠陥部で部分放電が発生してガスが発生し、それが繰り返される場合には欠陥部にボイドとして存在する可能性がある。さらに、ボイドは絶縁耐力が著しく低いため、AC電圧の印加により部分放電が継続することも考えられる。

0026

図2は、実設備で30年以上運転された経年OFケーブルを撤去し、解体調査を行った結果、ケーブルコア(ケーブル絶縁体)において、オイルギャップに沿ってスジ状のスラッジや硫化銅(図2(a))、あるいは、ケーブルコア(絶縁紙)全体に点状のスラッジや硫化銅(図2(b))が生成した例を示した写真である。ケーブルコア部のスラッジや硫化銅は、セミストップ下部のケーブルコア部に最も生成堆積する傾向がある。

0027

また、図3に示すように、ギャップ部に最も生成堆積するが、絶縁紙全体に生成堆積するケースもある。スラッジや硫化銅は、ケーブルコア部の外層内層中層の順に生成堆積していくが、絶縁破壊したケーブルでは中層付近までスラッジが生成堆積していた例も存在する。

0028

図4は、絶縁破壊につながる可能性のある生成状況の一例を示したものである。図4に示すように、上下のオイルギャップが互いに近かったりつながったりした状況の場所で硫化銅が中層まで生成堆積すると、硫化銅生成堆積部も内外層から中層までつながることになる。これにより、絶縁性能が著しく低下し、絶縁破壊に至る可能性が大きくなる。

0029

≪OFケーブル中の硫化銅生成メカニズム≫

0030

従来からのDBDSを添加した絶縁油中での硫化銅の生成は、DBDSと導体の銅が反応し、DBDS−銅錯体が絶縁油中に拡散し、油中拡散したDBDS−銅錯体が絶縁紙に吸着し、熱エネルギーにより分解されることで硫化銅が生成する、というメカニズムによるものと推定されている。

0031

一方、本発明では、OFケーブル中の硫化銅の生成は、(i)導体と絶縁油が反応し、(ii)銅錯体もしくは銅化合物として絶縁油中に溶解し、(iii)溶解した銅錯体もしくは銅化合物が高電界領域に凝集し、(iv)銅錯体もしくは銅化合物の触媒効果により絶縁油のスラッジが生成すると共に、(v)銅錯体もしくは銅化合物は絶縁紙あるいは絶縁油中に含まれる硫黄成分と反応することで硫化銅が生成する、というメカニズムによると推定している。そして、本発明では、銅錯体もしくは銅化合物と反応する硫黄成分は、DBDSのように絶縁油中に添加される成分とは限らず、絶縁紙の製造時に用いられた硫黄化合物由来する硫黄成分や、絶縁油の原料である石油等に由来する硫黄成分も含まれると想定している。
すなわち、本発明による硫化銅生成メカニズムは、DBDSのような硫黄化合物を添加しない絶縁油の場合でも、反応速度は非常に遅いが、時間を掛けて硫化銅が生成するとの想定に基づいており、銅+絶縁油+高電界の3条件が、硫化銅の生成に必要であると推定している。

0032

≪硫化銅生成メカニズムに基づく診断法

0033

上記のOFケーブル中の硫化銅生成メカニズムによれば、(ii)銅錯体もしくは銅化合物が絶縁油中に溶解する状態になると、油中溶解銅量及び絶縁油の誘電正接(tanδ)が増加し、その後、(iii)銅錯体もしくは銅化合物が高電界領域に凝集した時点で溶解量は最大値となり、やがて、(iv)スラッジ生成及び(v)硫化銅生成にともなって、油中溶解銅量及び絶縁油の誘電正接(tanδ)が減少する。

0034

一方、銅錯体の生成反応、スラッジ及び硫化銅の生成反応にともなって発生するガスは絶縁油に吸収されるため、油中ガス濃度が増加し、油中の可燃性ガス総量(TCG)の測定値が増大する。

0035

図5は、上記のOFケーブル中の硫化銅生成メカニズムに基づく、絶縁油の誘電正接(tanδ)と油中の可燃性ガス総量(TCG)の増減を経時変化として示したトレンドグラフの一例である。また、誘電正接(tanδ)のトレンドグラフは油中溶解銅量のトレンドと相関する。すなわち、油中溶解銅量および油の誘電正接(tanδ)のトレンドグラフ(図5)より、これらの特性値の「減少」期が、硫化銅生成期に相当し、これらの特性値(絶対値)が大きいと硫化銅になる油中溶解銅量が多いことから硫化銅生成量は多い、と推定することができる。よって、トレンドグラフで示される油中溶解銅量もしくは誘電正接(tanδ)の最大値から、OFケーブル内における硫化銅の生成状況を推定することが可能となる。

0036

<診断に必要な特性値の測定と分析>

0037

図6は、油中溶解銅量と誘電正接(tanδ)の相関図の一例である。模擬試験として、OFケーブルに使用前の絶縁油を用いて、銅棒から銅を溶解させた絶縁油と銅化合物を溶解させた絶縁油について、油中溶解銅量の異なる絶縁油を作製し、各絶縁油について油中溶解銅量と誘電正接(tanδ)値を測定し、得られた測定値をプロットして近似直線を引き、相関係数を求めたものである。また、合わせて実設備から採油した絶縁油について、油中溶解銅量とtanδ値を測定し、得られた測定値をプロットしたものである。
図6の結果より、銅や銅化合物を溶解させた絶縁油においては、溶解銅量と誘電正接(tanδ)の相関係数はいずれも0.9以上であり、相関係数0.9以上より直線性を確認できたことから、該相関係数を用いて、図7に示すようにtanδ値の過去最大値より最大油中溶解銅量を推定することができる。よって、溶解銅量の値もしくはtanδの値を用いて、硫化銅の生成状況を推定することが可能となる。

0038

ただし、油中溶解銅の形態が違うと直線の傾きが違うことを確認している。また、実設備において、同じ溶解銅量でも設備によって誘電正接(tanδ)値が違うことを確認している。この同じ溶解銅量でも設備によって誘電正接(tanδ)値が違う要因として、絶縁油の劣化(水分含有や熱劣化)により誘電正接(tanδ)値が増加する点が想定されるものの、OFケーブルで絶縁油の劣化が起きることは稀である。したがって、同じ溶解銅量でも設備によって誘電正接(tanδ)値が違うのは、設備毎に油中溶解銅の形態が異なることが、最大要因と推定され、油中溶解銅量と誘電正接(tanδ)の相関を表す直線の傾きは、設備毎に異なることとなる。これにより、実際の運用では、かかる測定及びプロットは、OFケーブル設備毎に作成する必要がある。

0039

本発明者らは、実設備解体結果より、図8に示すように、誘電正接(tanδ)の値が油中溶解銅量に対して、相関直線より高い値の絶縁油を使用している設備で、設備中の多箇所に硫化銅が生成していること、また、補強層の広範囲、ケーブルコアの内外層から中層付近まで硫化銅が生成していることを確認している。

0040

なお、図8に示すように、設備中の多箇所に硫化銅が生成していた設備の誘電正接(tanδ)のプロットは、誘電正接(tanδ)(%)と油中溶解銅量(ppm)の相関を表す直線(傾き0.9(%/ppm)の直線)より上の部分に存在する。

0041

つまり、0.9(%/ppm)を基準値と設定した場合、未知の絶縁油について測定した油中溶解銅量と誘電正接(tanδ)の比が基準値より大きい場合(測定値が直線より上の部分に存在する場合)は、設備中の多くの箇所に硫化銅が生成していると推定することが可能である。反対に、油中溶解銅量と誘電正接(tanδ)の比が基準値より小さい場合(測定値が直線より下の部分に存在する場合)は、硫化銅の生成は設備中の狭い範囲に留まると推定することが可能である。

0042

<診断>
診断に際しては、「診断I」、「診断II」の順で評価を実施する。

0043

最初の「診断I」では、硫化銅生成期に該当する設備を抽出する。
該当設備の抽出に際しては、誘電正接(tanδ)のトレンドグラフ形状を表1の5種類に分類し、それぞれについて、硫化銅生成状況を推定し、硫化銅生成期及びその前後にある設備を抽出する。
そして、診断必要性の項目が「要診断」のときは、次の「診断II」を行うようにする。「要警戒」のときは、測定インターバルを短くし、グラフが減少傾向(硫化銅生成期)になったら、改めて「診断II」を行うのが良い。「必要無し」のときは、通常ペースで測定を行えば良い。

0044

本発明の油入りケーブル内における異常発生の危険度を評価する診断方法では、ステップ1として、油入りケーブルから採取した絶縁油について、油中溶解銅量と誘電正接(tanδ)と可燃性ガス総量(TCG)を測定して得られた油中溶解銅量もしくは誘電正接(tanδ)と、可燃性ガス量(TCG)について、経時変化を示すトレンドグラフを作成する。
そして、上記と同様のステップ2とステップ3を採用し、(A)ステップ3で求めた誘電正接(tanδ)と油中溶解銅量の比、(B)予め設定した最大油中溶解銅量の基準値、及び(C)予め設定した可燃性ガス総量(TCG)の基準値をもとに、危険度を評価する。
ステップ1で作成されたトレンドグラフで示される油中溶解銅量もしくは誘電正接(tanδ)が極大値を示した後に、減少過程または減少後ほぼ定常状態にある油入りケーブルについては、硫化銅が生成している状態にあると推定できるため、要診断と評価するのが良い。

0045

0046

次の「診断II」では、硫化銅生成箇所、生成量からの設備危険度を診断する。
診断基準として、誘電正接(tanδ)と油中溶解銅量の相関を表す直線の傾きである「tanδと油中溶解銅量の比」、「最大油中溶解銅量」、「TCG最大値(硫化銅生成期)」を採用し、表2の基準に基づき、設備危険度(下記A〜Eの5区分)を診断する。
なお、表2に示す各基準値は一例であり、その数値の設定については後述する。
(設備危険度の診断基準)
A:多箇所に生成し、各所の絶縁紙上の堆積量も多量
B:多箇所に生成しているが、各所の絶縁紙上の堆積量は少量
C:限定箇所での生成だが、生成箇所の絶縁紙上の堆積量は多量
D:限定箇所での生成で、生成箇所の絶縁紙上の堆積量は少量
E:ほとんど生成されていない

0047

0048

診断IIに際しては、最初に、(A)ステップ3で求めた誘電正接(tanδ)と油中溶解銅量の比に対する大小、を評価するのが好ましい。当該は、解体調査結果とも相関性がある評価基準であるため信頼性が高いからである。
次いで、ステップ2で求めた最大油中溶解銅量から、(B)予め設定した最大油中溶解銅量の基準値に対する大小、を評価するのが好ましい。硫化銅生成量と相関することが推定されるからである。
次いで、(C)予め設定した可燃性ガス総量(TCG)の基準値に対する大小、を評価するのが好ましい。硫化銅生成期の可燃性ガス総量(TCG)は、硫化銅生成量と相関することが推定されるからである。
上記の順で危険度を評価しランク付けすることにより、設備の危険度を段階的に評価・把握することが可能となる。

0049

部分放電発生状況を推定は、「補足診断」として実施する。
図5に示した絶縁油のtanδ、TCGの経時変化を示すトレンドグラフを用い、診断Iにより表1にある硫化銅生成状況が硫化銅生成後と抽出された設備について、tanδ減少後のTCG最大値から、予め設定した可燃性ガス総量(TCG)の基準値に対する大小、を評価する。
図5に示す例では、tanδ減少後である測定日2010以降で、TCG140ppm以上のときに、部分放電発生設備と診断することで、部分放電発生状況を推定することができる。

0050

次に、本発明による診断法による効果の確認結果を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。

0051

(1)本診断法よる効果の確認(表3参照)
実設備(OFケーブル3線)について、本発明の診断方法に基づいて診断した推定診断結果と、解体調査結果を比較した。その結果を表3に示す。
各OFケーブルについて、B相、R相、W相から別々に採取した絶縁油中溶解銅量(この値を最大油中溶解銅量とする)を測定し、基準値(0.6ppm)と対比評価した。

0052

解体調査では、硫化銅生成範囲を目視確認(絶縁紙上の黒色化部)することにより実施し、生成範囲が広範囲であった設備を「広」、狭範囲であった設備を「狭」と評価した。
また、硫化銅の生成確認は、電子顕微鏡蛍光X線分析装置により、絶縁紙上の黒色化部で銅(Cu)と硫黄(S)の両方が検出される場所を特定し、その特定場所について、顕微ラマン分光装置により硫化銅のラマンスペクトルが検出されたことで確認した。

0053

(油中溶解銅量の測定方法
試料油キシレンにより10倍希釈し、調整した溶液をICP発光分光分析した。検量線用標準溶液の調整は、市販の油性銅含有標準溶液ブランク油とキシレンにより順に希釈して調整した標準溶液を用いた。

0054

0055

表3の結果より、硫化銅が補強層の広範囲やケーブルコア中層付近まで生成されていた設備については危険度「A・B」と判定でき、生成量が少ない設備については危険度「E」、「生成無し」と判定できた。
本発明の診断方法により、OFケーブル中の硫化銅生成量の多い実設備を特定可能であることを確認できた。

0056

(2)本診断法と硫化銅生成メカニズムの相関確認
実設備の解体試験及び各評価試験により、下記の通り、本発明の診断方法が硫化銅生成メカニズムと相関があることを確認した。
(イ)最大油中溶解銅量の算出(図6参照)
銅棒から銅を溶解させた油中溶解銅量が異なる絶縁油(試料絶縁油)と、異なる量の銅化合物を溶解させた絶縁油(銅化合物溶解試料絶縁油)と、実設備から採取した絶縁油について、油中溶解銅量とtanδを測定した結果を図6に示す。
なお、試料絶縁油の油中溶解銅量は、銅棒を浸漬した絶縁油を窒素雰囲気下80℃で加熱し、経時で適時サンプリングを行い上記のICP発光分光分析により測定した。銅化合物溶解試料絶縁油の油中溶解銅量は、市販の銅化合物試薬アルキルベンゼンスルホン酸銅あるいはオレイン酸銅)を適宜濃度に溶解した後、その後に上記の方法にてICP発光分光分析により測定した。tanδは、誘電正接測定器を用いて測定した。

0057

図6より、銅溶解試料絶縁油では、油中溶解銅量とtanδ値に直線性を示す相関が認められるが、実設備では、油中溶解銅量が同じでも設備によってtanδ値が異なることがわかる。絶縁油の劣化(水分含有や熱劣化)によりtanδ値は増加するが、OFケーブルで絶縁油の劣化が起きることは稀である。一方、図6には、銅化合物を溶解した銅溶解試料絶縁油であっても、用いた銅化合物の種類により油中溶解銅量とtanδ値の相関を示す直線の傾き(相関係数)が異なることが示されており、このことは絶縁油中に溶解している銅化合物の形態によりtanδの値が影響されることを表している。したがって、実設備で油中溶解銅量が同じでも誘電正接(tanδ)の値が異なるのは、油中溶解銅の形態が設備毎に異なることが最大要因であると考えられる。
以上のことから、油中溶解銅量とtanδ値の関係式を用いて、tanδ値から油中溶解銅量を算出することが可能であること、そして、設備毎に絶縁油中に溶解している銅の形態が異なるため、設備毎に関係式を作成する必要があることがわかる。

0058

(ロ)硫化銅生成期の推定
本発明で提唱するOFケーブル中の硫化銅生成メカニズムによれば、硫化銅生成に伴うOFケーブルの危険度との関係を、次のように、油中溶解銅量と関連付けて説明することができる。
(i)導体と絶縁油が反応する。この段階では油中溶解銅量は変化しない。
(ii)銅が銅錯体もしくは銅化合物として絶縁油中に溶解すると、油中溶解銅量が次第に増加していき、やがて時間とともに溶解停止になる。
(iii)溶解した銅錯体もしくは銅化合物は、高電界領域において、絶縁体(絶縁紙)油隙部に凝集する。
(iv)さらに、銅錯体もしくは銅化合物が高電界領域に凝集することで、絶縁体油隙部における銅錯体もしくは銅化合物による触媒効果が増大する。
(v)触媒媒効果の増大により、油が酸素や硫黄と結合して急激に劣化し、絶縁体油隙部にスラッジが生成する。この段階では油中溶解銅量は最大値を保持している。
(vi)銅錯体もしくは銅化合物が絶縁紙中あるいは絶縁油中の硫黄(本来的に絶縁油に含まれている硫黄)と反応して硫化銅が生成する。硫化銅生成に伴って油中溶解銅量は次第に減少する。
(vii)油隙部に硫化銅が生成すると、油中溶解銅量は減少した状態となり、油隙部の硫化銅によって部分放電発生という事態に陥る。

0059

油中溶解銅量とtanδ値は相関があることから、tanδトレンドと油中溶解銅量トレンドにも相関があると言える。また、上記のように推定した硫化銅生成メカニズムから、硫化銅が生成すると油中の溶解銅量が減少することから、tanδ値も減少することになる。
以上のことから、tanδトレンドが減少した場合は、硫化銅生成により溶解銅量が減少したものと判断することができる。

0060

(ハ)硫化銅生成箇所・生成量からの設備危険度診断
(a)tanδ、油中溶解銅量と硫化銅生成箇所の関係(表4、図8参照)
図8に、tanδ、油中溶解銅量と硫化銅生成箇所の関係図を示す。図8は、解体調査を行った実設備における油中溶解銅量とtanδの関係をグラフに表し、tanδと油中溶解銅量の比が0.9となるように直線を引いたものである。
さらに、解体調査結果から、硫化銅生成箇所が多箇所(硫化銅生成が広範囲)の設備について、グラフのプロット11箇所(試料名:A〜K)を○で囲み、tanδと油中溶解銅量の比を求めた結果を表4に示した。
その結果、硫化銅生成箇所が多箇所の設備については、tanδと油中溶解銅量の比の最低値(試料名:K)が「0.95」で、比0.9の直線より上部にプロットされた。

0061

ただし、硫化銅生成箇所が少ない箇所の設備でも、比0.9の直線より上部にプロットされた設備があった。しかし、油中溶解銅量が少なく過去の最大油中溶解銅量を算出できた設備(×のプロット)では、算出された最大油中溶解銅量が0.1ppmとかなり少量であった。つまり、元々の油中溶解銅量が少なかったので、生成箇所が少なかったと推測できる。

0062

また、同様に油中溶解銅量1ppm以上の設備では、過去データがなくトレンド傾向が不明であったが、これから硫化銅生成期を迎える可能性が推測できる。

0063

以上のことから、tanδと油中溶解銅量の比の数値が高いと、多箇所に硫化銅が生成する可能性のある設備と判断することができ、絶縁破壊につながる劣化設備の判別が可能となる。

0064

0065

(b)油中溶解銅量と硫化銅生成量の関係
硫化銅生成メカニズムより、油中溶解銅量が多いほど硫化銅生成量も多くなると言える。
以上のことから、最大油中溶解銅量が多い設備で硫化銅が生成された場合に、生成量は多くなると判断することができる。

0066

(c)油中溶解銅量とTCGの関係(表5、図9参照)
実設備(1230箇所)のtanδのトレンドグラフを作成し、グラフ形状を分類し、分類別各特性値平均値を表5と図9にまとめた。
その結果、tanδの増減時は、TCG量が多い傾向だった。これは、生成メカニズムより、銅溶解、スラッジ生成、硫化銅生成過程で様々な化学反応が起き、この化学反応時に発生する分解生成ガスとして、TCGが検出されたと推測した。つまり、TCG量が多いほど銅溶解量、スラッジ生成量、硫化銅生成量が多いと判断できる。
以上のことから、溶解銅減少時(tanδ減少時)のTCG量が多いほど、硫化銅生成量も多いと判断することができる。

0067

0068

(ニ)各基準値について(表5参照)
前記の表2の設備危険度診断表に記載した各基準値は、現状明確な相関関係を掴んでいないため、表5に示す現時点の試験データから暫定基準値として定めた。この点については、設備実態に合わせ今後見直す必要がある。

0069

(ホ)補足診断〔部分放電発生状況〕(表1、表5、図9参照)
TCG量(H2量)、tanδ、油中溶解銅量を、表1に示した硫化銅生成傾向(tanδ増減傾向)と関連付けて図9に示す。
図9から明らかなように、硫化銅生成後にTCG量(H2)は多い(減少しない)傾向を示している。この場合、硫化銅生成後には、様々な化学反応による分解ガスは発生していないことから、従来の絶縁油分析の考え方から、部分放電による発生ガス(H2は放電電荷量が大きい部分放電の発生ガス)と言える。特に硫化銅生成後という点で、硫化銅生成場所での部分放電発生と推測できる。
以上のことから、硫化銅生成後にTCG量が多い設備では、部分放電が多く発生していると判断することができる。

0070

以上説明した通り、本発明のOFケーブル異常発生の危険度の診断方法は、従来の診断方法と比較して、硫化銅生成要因となるジベンジルジスルフィドを添加していない絶縁油にも適用でき、従来の診断方法による特性値(油中溶解銅量、tanδ、TCG)を使用できるため簡易である等の利点を有し、簡易で精度の良い診断手法であると言える。実設備との整合性もある。

実施例

0071

ただし、tanδの値が油中溶解銅の形態により影響され、そして、油中溶解銅の形態が設備毎に異なるため、上記診断方法はOFケーブル設備毎に実施する必要がある。

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