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技術 化学修飾セルロースナノファイバー及び熱可塑性樹脂を含有する繊維強化樹脂組成物

出願人 国立大学法人京都大学地方独立行政法人京都市産業技術研究所王子ホールディングス株式会社日本製紙株式会社星光PMC株式会社
発明者 仙波健伊藤彰浩上坂貴宏北川和男中坪文明矢野浩之
出願日 2016年10月25日 (4年8ヶ月経過) 出願番号 2016-208783
公開日 2017年2月2日 (4年5ヶ月経過) 公開番号 2017-025338
状態 特許登録済
技術分野 高分子組成物
主要キーワード 携帯音楽再生機器 針葉樹林 熱重量分析測定 繊維含有材料 減少領域 リグニン含有率 グラインダー処理 耐圧試験管
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図面 (16)

解決課題

本発明は、分散性が良好な繊維とその繊維が分散され易い樹脂とが好適に複合化がされた、繊維強化樹脂組成物とその製造方法を提供することを目的とする。より具体的には、繊維と樹脂との好適な複合により物性が改良された、化学修飾CNFと熱可塑性樹脂とを含有する繊維強化樹脂組成物、及びその製造方法を提供することを目的とする。

解決手段

(A)化学修飾CNF及び(B)熱可塑性樹脂を含有する繊維強化樹脂組成物であって、前記化学修飾CNF及び熱可塑性樹脂が下記の条件:(a)(B)熱可塑性樹脂の溶解パラメータ(SPpol)に対する(A)化学修飾CNFの溶解パラメータ(SPcnf)の比率R (SPcnf/SPpol)が0.87〜1.88の範囲である、及び(b)(A)化学修飾CNFの結晶化度が42.7%以上である、を満たす繊維強化樹脂組成物。

概要

背景

植物繊維の重量は鋼鉄の1/5程度と軽く、植物繊維の強度は鋼鉄の5倍程度以上と強く、植物繊維の熱膨張ガラスの1/50と低線熱膨張係数を有する。また、植物繊維を機械的又は化学的解繊処理することによりミクロフィブリル化植物繊維(MFC)を製造する技術が
ある。MFCは、繊維径100nm程度、繊維長5μm程度以上、比表面積250m2/g程度の繊維であ
る。MFCは、未解繊の植物繊維と比べて、高強度である。

しかし、植物繊維に含まれるセルロースは、その分子繰り返し単位あたり3個の水酸
基を有し、植物繊維全体として多くの水酸基を有する。その結果、セルロース分子間水素結合による凝集力が強くなっている。

従来、植物繊維やMFCと樹脂とを複合化して植物繊維複合材料を得る際に、樹脂中で植
物繊維やMFCを十分に分散させる技術が開示されている。特許文献1には、第1級アミノ
を有する高分子化合物無水マレイン酸変性された高分子化合物、ミクロフィブリル化植物繊維及びポリオレフィンを含む組成物が開示されている。特許文献2には、アルキル
無水コハク酸エステル化された変性ミクロフィブリル化植物繊維及び熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が開示されている。特許文献3には、セルロースナノファイバー(CNF)
、熱可塑性樹脂及びノニオン界面活性剤を含む分散液、この分散液から得られる樹脂組成物が開示されている。

この様に樹脂中に微細セルロース繊維を分散させる工夫がされ、微細セルロース繊維で強化された繊維強化複合樹脂組成物が開示されている。改良された繊維強化樹脂組成物を得るには、分散性良好な繊維とその繊維が分散され易い樹脂との好適な組み合わせが必要である。

概要

本発明は、分散性が良好な繊維とその繊維が分散され易い樹脂とが好適に複合化がされた、繊維強化樹脂組成物とその製造方法を提供することを目的とする。より具体的には、繊維と樹脂との好適な複合により物性が改良された、化学修飾CNFと熱可塑性樹脂とを含有する繊維強化樹脂組成物、及びその製造方法を提供することを目的とする。(A)化学修飾CNF及び(B)熱可塑性樹脂を含有する繊維強化樹脂組成物であって、前記化学修飾CNF及び熱可塑性樹脂が下記の条件:(a)(B)熱可塑性樹脂の溶解パラメータ(SPpol)に対する(A)化学修飾CNFの溶解パラメータ(SPcnf)の比率R (SPcnf/SPpol)が0.87〜1.88の範囲である、及び(b)(A)化学修飾CNFの結晶化度が42.7%以上である、を満たす繊維強化樹脂組成物。 なし

目的

本発明は、分散性が良好な繊維とその繊維が分散され易い樹脂とが好適に複合化がされた、繊維強化樹脂組成物とその製造方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

(A)化学修飾セルロースナノファイバー及び(B)熱可塑性樹脂を含有する繊維強化樹脂組成物であって、前記化学修飾セルロースナノファイバー及び熱可塑性樹脂が下記の条件:(a)(B)熱可塑性樹脂の溶解パラメータ(SPpol)に対する(A)化学修飾セルロースナノファイバーの溶解パラメータ(SPcnf)の比率R (SPcnf/SPpol)が0.87〜1.88の範囲である、及び(b)(A)化学修飾セルロースナノファイバーの結晶化度が42.7%以上であるを満たす繊維強化樹脂組成物。

請求項2

前記条件(a)の比率R (SPcnf/SPpol)が1.03〜1.88の範囲である、請求項1に記載の繊維強化樹脂組成物。

請求項3

前記条件(b)の(A)化学修飾セルロースナノファイバーの結晶化度が55.6%以上である、請求項1又は2に記載の繊維強化樹脂組成物。

請求項4

前記(A)化学修飾セルロースナノファイバーが、セルロースナノファイバーを構成する糖鎖水酸基アルカノイル基で修飾されたセルロースナノファイバーである、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化樹脂組成物。

請求項5

前記(B)熱可塑性樹脂が、ポリアミドポリアセタールポリプロピレン無水マレイン酸変性ポリプロピレンポリ乳酸ポリエチレンポリスチレン及びABS樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂である、請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化樹脂組成物。

請求項6

前記(B)熱可塑性樹脂がポリアミド、ポリアセタール及びポリ乳酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂であり、前記条件(a)の比率Rが1.03〜1.32であり、前記(b)の化学修飾セルロースナノファイバーの結晶化度が55.6%以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化樹脂組成物。

請求項7

前記(B)熱可塑性樹脂がポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリスチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂であり、前記条件(a)の比率Rが1.21〜1.88であり、前記(b)の化学修飾セルロースナノファイバーの結晶化度が42.7%以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化樹脂組成物。

請求項8

前記(A)化学修飾セルロースナノファイバーが、セルロースナノファイバーを構成する糖鎖の水酸基がアセチル基で修飾されたセルロースナノファイバーである、請求項1〜7のいずれかに記載の繊維強化樹脂組成物。

請求項9

前記化学修飾セルロースナノファイバー及びセルロースナノファイバーのセルロースが、リグノセルロースである、請求項1〜8のいずれかに記載の繊維強化樹脂組成物

請求項10

(A)化学修飾セルロースナノファイバー及び(B)熱可塑性樹脂を含有する繊維強化樹脂組成物の製造方法であって、下記の工程:(1)下記の条件:(a)(B)熱可塑性樹脂の溶解パラメータ(SPpol)に対する(A)化学修飾セルロースナノファイバーの溶解パラメータ(SPcnf)の比率R (SPcnf/SPpol)が0.87〜1.88の範囲である、及び(b)(A)化学修飾セルロースナノファイバーの結晶化度が42.7%以上であるを満たす(A)化学修飾セルロースナノファイバー及び(B)熱可塑性樹脂を選定する工程、(2)前記工程(1)で選定された(A)化学修飾セルロースナノファイバーと(B)熱可塑性樹脂とを配合する工程、及び(3)前記工程(2)で配合された(A)化学修飾セルロースナノファイバーと(B)熱可塑性樹脂とを混練し、樹脂組成物を得る工程を含むことを特徴とする製造方法。

請求項11

(A)化学修飾セルロースナノファイバー及び(B)熱可塑性樹脂を含有する繊維強化樹脂組成物の製造方法であって、下記の工程:(1)下記の条件:(a)(B)熱可塑性樹脂の溶解パラメータ(SPpol)に対する(A)化学修飾セルロースナノファイバーの溶解パラメータ(SPcnf)の比率R (SPcnf/SPpol)が0.87〜1.88の範囲である、及び(b)化学修飾セルロースナノファイバーの結晶化度が42.7%以上であるを満たす解繊処理後の(A)化学修飾セルロースナノファイバーとなる(A1)化学修飾パルプ及び(B)熱可塑性樹脂を選定する工程、(2)前記工程(1)で選定された(A1)化学修飾パルプと(B)熱可塑性樹脂とを配合する工程、及び(3)前記工程(2)で配合された(A1)化学修飾パルプと(B)熱可塑性樹脂とを混練し、同時に(A1)化学修飾パルプを解繊し、(A)化学修飾セルロースナノファイバー及び(B)熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を得る工程を含むことを特徴とする製造方法。

請求項12

(A)化学修飾セルロースナノファイバー及び(B)熱可塑性樹脂を含有する繊維強化樹脂組成物の製造方法であって、下記の工程:(1)(A1)化学修飾パルプ及び(B)熱可塑性樹脂を選定する工程、(2)前記工程(1)で選定された(A1)化学修飾パルプと(B)熱可塑性樹脂とを配合する工程、及び(3)前記工程(2)で配合された(A1)化学修飾パルプと(B)熱可塑性樹脂とを混練し、同時に(A1)化学修飾パルプを解繊し、(A)化学修飾セルロースナノファイバー及び(B)熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を得る工程を含み、前記(A)化学修飾セルロースナノファイバーと(B)熱可塑性樹脂とが、下記の条件:(a)(B)熱可塑性樹脂の溶解パラメータ(SPpol)に対する(A)化学修飾セルロースナノファイバーの溶解パラメータ(SPcnf)の比率R (SPcnf/SPpol)が0.87〜1.88の範囲である、及び(b)化学修飾セルロースナノファイバーの結晶化度が42.7%以上であるを満たすことを特徴とする製造方法。

請求項13

前記(a)の比率R (SPcnf/SPpol)が1.03〜1.82の範囲である、請求項10〜12のいずれかに記載の製造方法。

請求項14

結晶化度が42.7%以上であり、糖鎖の水酸基がアセチル基で置換されており、その置換度が0.29〜2.52であり、溶解度パラメータ(SPcnf)が9.9〜15である、(A2)アセチル化セルロースナノファイバー

請求項15

請求項14に記載の(A2)アセチル化セルロースナノファイバー及び、(B)熱可塑性樹脂を含む繊維強化樹脂組成物。

請求項16

前記(B)熱可塑性樹脂100質量部に対する前記(A2)アセチル化セルロースナノファイバーの含有量が0.1〜30質量部である、請求項15に記載の繊維強化樹脂組成物。

請求項17

前記(B)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂ポリアセタール樹脂、ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリエチレン、ポリスチレン、ABS樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂である、請求項15又は16に記載の繊維強化樹脂組成物。

請求項18

前記アセチル化セルロースナノファイバーが、アセチル化リグノセルロースナノファイバーである、請求項15又は16に記載の繊維強化樹脂組成物。

請求項19

(A2)アセチル化セルロースナノファイバー及び(B)熱可塑性樹脂を含む繊維強化樹脂組成物の製造方法であって、下記の工程:(1) (A3)アセチル化セルロースを含む(A4)繊維集合体と(B)熱可塑性樹脂とを混練し、同時に(A3)アセチル化セルロースを解繊し、(A2)アセチル化セルロースナノファイバー及び(B)熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を得る工程を含み、前記(A2)アセチル化セルロースナノファイバーの結晶化度が42.7%以上であり、糖鎖の水酸基がアセチル基で置換されており、その置換度が0.29〜2.52であり、溶解度パラメータ(SPcnf)が9.9〜15である、ことを特徴とする製造方法。

技術分野

背景技術

0002

植物繊維の重量は鋼鉄の1/5程度と軽く、植物繊維の強度は鋼鉄の5倍程度以上と強く、植物繊維の熱膨張ガラスの1/50と低線熱膨張係数を有する。また、植物繊維を機械的又は化学的解繊処理することによりミクロフィブリル化植物繊維(MFC)を製造する技術が
ある。MFCは、繊維径100nm程度、繊維長5μm程度以上、比表面積250m2/g程度の繊維であ
る。MFCは、未解繊の植物繊維と比べて、高強度である。

0003

しかし、植物繊維に含まれるセルロースは、その分子繰り返し単位あたり3個の水酸
基を有し、植物繊維全体として多くの水酸基を有する。その結果、セルロース分子間水素結合による凝集力が強くなっている。

0004

従来、植物繊維やMFCと樹脂とを複合化して植物繊維複合材料を得る際に、樹脂中で植
物繊維やMFCを十分に分散させる技術が開示されている。特許文献1には、第1級アミノ
を有する高分子化合物無水マレイン酸変性された高分子化合物、ミクロフィブリル化植物繊維及びポリオレフィンを含む組成物が開示されている。特許文献2には、アルキル
無水コハク酸エステル化された変性ミクロフィブリル化植物繊維及び熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が開示されている。特許文献3には、セルロースナノファイバー(CNF)
、熱可塑性樹脂及びノニオン界面活性剤を含む分散液、この分散液から得られる樹脂組成物が開示されている。

0005

この様に樹脂中に微細セルロース繊維を分散させる工夫がされ、微細セルロース繊維で強化された繊維強化複合樹脂組成物が開示されている。改良された繊維強化樹脂組成物を得るには、分散性良好な繊維とその繊維が分散され易い樹脂との好適な組み合わせが必要である。

先行技術

0006

公表特許WO2011/049162A1
公開特許公報特開2012-214563A
公開特許公報特開2013-166818A

発明が解決しようとする課題

0007

本発明は、分散性が良好な繊維とその繊維が分散され易い樹脂とが好適に複合化がされた、繊維強化樹脂組成物とその製造方法を提供することを目的とする。より具体的には、繊維と樹脂との好適な複合により物性が改良された、化学修飾CNFと熱可塑性樹脂とを含
有する繊維強化樹脂組成物、及びその製造方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0008

本発明者らは、化学修飾セルロースナノファイバー及び熱可塑性樹脂を含有する繊維強化樹脂組成物について鋭意研究を重ねた結果、特定の溶解パラメータ(SP)値(以下「SP値
」とも記す)と特定の結晶化度を有する化学修飾CNFと特定のSP値を有する樹脂とを好適に
組み合わせることにより、樹脂中の化学修飾CNFの分散性が優れ、物性が改善された繊維
強化樹脂組成物が得られるとの知見を得て本発明を完成させた。

0009

本発明で使用される用語「セルロースナノファイバー」は、セルロースで構成されるナノファーバー(セルロースナノファイバー)又は/及びリグノセルロースで構成されるナノファーバー(リグノセルロースナノファイバー)を意味し、合わせて「CNF」とも記す。

0010

CNFは、ミクロフィブリル化されたセルロース繊維又は/及びミクロフィブリル化され
リグノセルロース繊維同義的に使用されることもある。

0011

「化学修飾セルロースナノファイバー」は、化学修飾されたCNF又は/及び化学修飾さ
れたリグノCNFを意味し、合わせて「化学修飾CNF」とも記す。

0012

本発明の樹脂組成物に分散される化学修飾CNFは、セルロースを構成する糖鎖の水酸基
水素原子の代わりに、例えば、アセチル基等のアルカノイル基が導入されている(即ち
水酸基が化学修飾されている)ことにより、セルロース分子の水酸基が封鎖され、セルロ
ース分子の水素結合力が抑制されていることに加え、セルロース繊維が本来有していた結晶構造を特定の割合で保持していることが特徴である。

0013

また、この様な化学修飾CNFと特定のSP値を有する樹脂とを組み合わせた(複合化した)
点に本発明の特徴がある。

0014

この様な本発明の特徴は、セルロース繊維又はリグノセルロース繊維表面の糖鎖に存在する水酸基を化学修飾(例えばアセチル基等に置換)する度合いを変えることによって、SP値とセルロース繊維又はリグノセルロースが元来有していた結晶化度を制御できるとの知見と、そして、この様にしてSP値と結晶化度が制御された化学修飾CNFは、特定のSP値を
有するセルロースが樹脂に対して相容性が向上すること等の知見を得た結果に基づくものである。

0015

本発明は下記の化学修飾CNF及び熱可塑性樹脂を含有する繊維強化樹脂組成物及びその
製造方法に関する。

0016

項1.
(A)化学修飾セルロースナノファイバー及び(B)熱可塑性樹脂を含有する繊維強化樹脂組成物であって、
前記化学修飾セルロースナノファイバー及び熱可塑性樹脂が下記の条件:
(a)(B)熱可塑性樹脂の溶解パラメータ(SPpol)に対する(A)化学修飾セルロースナノファイバーの溶解パラメータ(SPcnf)の比率R (SPcnf/SPpol)が0.87〜1.88の範囲である、及び(b)(A)化学修飾セルロースナノファイバーの結晶化度が42.7%以上である
を満たす繊維強化樹脂組成物。

0017

項2.
前記条件(a)の比率R (SPcnf/SPpol)が1.03〜1.88の範囲である、前記項1に記載の繊維
強化樹脂組成物。

0018

項3.
前記条件(b)の(A)化学修飾セルロースナノファイバーの結晶化度が55.6%以上である、前
記項1又は2に記載の繊維強化樹脂組成物。

0019

項4.
前記(A)化学修飾セルロースナノファイバーが、セルロースナノファイバーを構成する糖
鎖の水酸基がアルカノイル基で修飾されたセルロースナノファイバーである、前記項1〜3のいずれかに記載の繊維強化樹脂組成物。

0020

項5.
前記(B)熱可塑性樹脂が、ポリアミドポリアセタールポリプロピレン無水マレイン
酸変性ポリプロピレンポリ乳酸ポリエチレンポリスチレン及びABS樹脂からなる群
から選ばれる少なくとも1種の樹脂である、前記項1〜4のいずれかに記載の繊維強化樹脂組成物。

0021

項6.
前記(B)熱可塑性樹脂がポリアミド、ポリアセタール及びポリ乳酸からなる群から選ばれ
る少なくとも1種の樹脂であり、前記条件(a)の比率Rが1.03〜1.32であり、前記(b)の化
修飾セルロースナノファイバーの結晶化度が55.6%以上である、前記項1〜4のいずれ
かに記載の繊維強化樹脂組成物。

0022

項7.
前記(B)熱可塑性樹脂がポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレンポリエチ
レン及びポリスチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂であり、前記条件(a)の比率Rが1.21〜1.88であり、前記(b)の化学修飾セルロースナノファイバーの結晶化度
が42.7%以上である、前記項1〜4のいずれかに記載の繊維強化樹脂組成物。

0023

項8.
前記(A)化学修飾セルロースナノファイバーが、セルロースナノファイバーを構成する糖
鎖の水酸基がアセチル基で修飾されたセルロースナノファイバーである、前記項1〜7のいずれかに記載の繊維強化樹脂組成物。

0024

項9.
前記化学修飾セルロースナノファイバー及びセルロースナノファイバーのセルロースが、リグノセルロースである、前記項1〜8のいずれかに記載の繊維強化樹脂組成物。

0025

項10.
(A)化学修飾セルロースナノファイバー及び(B)熱可塑性樹脂を含有する繊維強化樹脂組成物の製造方法であって、下記の工程:
(1)下記の条件:
(a)(B)熱可塑性樹脂の溶解パラメータ(SPpol)に対する(A)化学修飾セルロースナノファイバーの溶解パラメータ(SPcnf)の比率R (SPcnf/SPpol)が0.87〜1.88の範囲である、及び(b)(A)化学修飾セルロースナノファイバーの結晶化度が42.7%以上である
を満たす(A)化学修飾セルロースナノファイバー及び(B)熱可塑性樹脂を選定する工程、
(2)前記工程(1)で選定された(A)化学修飾セルロースナノファイバーと(B)熱可塑性樹脂とを配合する工程、及び
(3)前記工程(2)で配合された(A)化学修飾セルロースナノファイバーと(B)熱可塑性樹脂とを混練し、樹脂組成物を得る工程
を含むことを特徴とする製造方法。

0026

項11.
(A)化学修飾セルロースナノファイバー及び(B)熱可塑性樹脂を含有する繊維強化樹脂組成物の製造方法であって、下記の工程:
(1)下記の条件:
(a)(B)熱可塑性樹脂の溶解パラメータ(SPpol)に対する(A)化学修飾セルロースナノファイ
バーの溶解パラメータ(SPcnf)の比率R (SPcnf/SPpol)が0.87〜1.88の範囲である、及び(b)化学修飾セルロースナノファイバーの結晶化度が42.7%以上である
を満たす解繊処理後の(A)化学修飾セルロースナノファイバーとなる(A1)化学修飾パルプ
及び(B)熱可塑性樹脂を選定する工程、
(2)前記工程(1)で選定された(A1)化学修飾パルプと(B)熱可塑性樹脂とを配合する工程、
及び
(3)前記工程(2)で配合された(A1)化学修飾パルプと(B)熱可塑性樹脂とを混練し、同時に(A1)化学修飾パルプを解繊し、(A)化学修飾セルロースナノファイバー及び(B)熱可塑性
脂を含有する樹脂組成物を得る工程
を含むことを特徴とする製造方法。

0027

項12.
(A)化学修飾セルロースナノファイバー及び(B)熱可塑性樹脂を含有する繊維強化樹脂組成物の製造方法であって、下記の工程:
(1)(A1)化学修飾パルプ及び(B)熱可塑性樹脂を選定する工程、
(2)前記工程(1)で選定された(A1)化学修飾パルプと(B)熱可塑性樹脂とを配合する工程、
及び
(3)前記工程(2)で配合された(A1)化学修飾パルプと(B)熱可塑性樹脂とを混練し、同時に(A1)化学修飾パルプを解繊し、(A)化学修飾セルロースナノファイバー及び(B)熱可塑性樹
脂を含有する樹脂組成物を得る工程
を含み、
前記(A)化学修飾セルロースナノファイバーと(B)熱可塑性樹脂とが、下記の条件:(a)(B)熱可塑性樹脂の溶解パラメータ(SPpol)に対する(A)化学修飾セルロースナノファイバーの溶解パラメータ(SPcnf)の比率R (SPcnf/SPpol)が0.87〜1.88の範囲である、及び(b)化学修飾セルロースナノファイバーの結晶化度が42.7%以上である
を満たすことを特徴とする製造方法。

0028

項13.
前記(a)の比率R (SPcnf/SPpol)が1.03〜1.82の範囲である、前記項10〜12のいずれ
かに記載の製造方法。

0029

項14.
結晶化度が42.7%以上であり、糖鎖の水酸基がアセチル基で置換されており、その置換度
が0.29〜2.52であり、溶解度パラメータ(SPcnf)が9.9〜15である、(A2)アセチル化セルロースナノファイバー

0030

項15.
前記項14に記載の(A2)アセチル化セルロースナノファイバー及び、(B)熱可塑性樹脂を
含む繊維強化樹脂組成物。

0031

項16.
前記(B)熱可塑性樹脂100質量部に対する前記(A2)アセチル化セルロースナノファイバーの含有量が0.1〜30質量部である、前記項15に記載の繊維強化樹脂組成物。

0032

項17.
前記(B)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂ポリアセタール樹脂、ポリプロピレン、無水
マレイン酸変性ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリエチレン、ポリスチレン、ABS樹脂から
なる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂である、前記項15又は16に記載の繊維強化樹脂組成物。

0033

項18.
前記アセチル化セルロースナノファイバーが、アセチル化リグノセルロースナノファイバーである、前記項15又は16に記載の繊維強化樹脂組成物。

0034

項19.
(A2)アセチル化セルロースナノファイバー及び(B)熱可塑性樹脂を含む繊維強化樹脂組成
物の製造方法であって、下記の工程:
(1) (A3)アセチル化セルロースを含む(A4)繊維集合体と(B)熱可塑性樹脂とを混練し、同
時に(A3)アセチル化セルロースを解繊し、(A2)アセチル化セルロースナノファイバー及び(B)熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を得る工程を含み、
前記(A2)アセチル化セルロースナノファイバーの結晶化度が42.7%以上であり、糖鎖の水
酸基がアセチル基で置換されており、その置換度が0.29〜2.52であり、溶解度パラメータ(SPcnf)が9.9〜15である、ことを特徴とする製造方法。

発明の効果

0035

本発明の繊維強化樹脂組成物では、この組成物中の化学修飾CNFがCNFを構成する糖鎖の表面の水酸基が、例えば、アセチル基等のアルカノイル基等で修飾されている(即ち化学修飾されている)ことにより、セルロースの水素結合による自己凝集が抑制されている。

0036

しかも本発明の繊維強化樹脂組成物は、このマトリックス成分(樹脂)と化学修飾CNFの
好適な組み合わせにより構成されているので、樹脂中の化学修飾CNFと樹脂との親和性は
高く、樹脂中の化学修飾CNFの分散性は良好である。その結果、本発明繊維強化樹脂組成
物は最適の強度を発揮する。

0037

例えば、化学修飾CNFを10質量%含有する本発明の繊維強化樹脂組成物と、それと同一の樹脂に無修飾CNFを同量含有する繊維強化樹脂組成物とを比較すると、本発明の繊維強化
樹脂組成物の弾性率は、熱可塑性樹脂の溶解パラメータ(SPpol)に対する(化学修飾CNFの
溶解パラメータ(SPcnf)の比率R (SPcnf/SPpol)が0.87〜1.88の範囲内にあるとき無修飾CNFを含有する繊維強化樹脂組成物の弾性率の1.05倍以上である。そして、この比率Rの範
囲内で更に最適の強度を発揮するように、化学修飾CNF及び樹脂を設計することもできる

0038

本発明の繊維強化樹脂組成物は化学修飾CNFと樹脂とを混練して製造できるが、パルプ
などのセルロース繊維集合体を化学修飾したのちこれを樹脂と溶融混合すると、その工程において、繊維径が数十から数百μmの化学修飾(例えば、アセチル化等)パルプが、混練
と同時に繊維径が数十nm〜数百nmの化学修飾CNFに容易に解繊され、本発明の繊維強化樹
脂組成物を容易に製造することができる。

0039

本発明に使用される化学修飾CNFは、アセチル化剤等の低廉な化学修飾剤で簡便な操作
で化学修飾したものを使用することもできる。そして、本発明の繊維強化樹脂組成物は、最適な樹脂との組合せにより容易に製造することも可能であることから、低コストであり、実用化が容易である。そして、本発明の繊維強化樹脂組成物は樹脂中での化学修飾CNF
の分散性が良好なので、良好な特性を有する。

0040

本発明の繊維強化樹脂組成物では、セルロース又はリグノセルロースに存在する水酸基のうちの幾つを化学修飾するか(例えばアセチル基等の修飾基で置き換えるか)に依って、各樹脂に対して最適な溶解度パラメータ(SP)値を有する化学修飾CNF(アセチル化CNF等)を容易に選定してこれを繊維強化樹脂組成物の製造のために使用することができる。

0041

本発明の繊維強化樹脂組成物では、セルロースの結晶化度を約42%以上に保ち、適切な
溶解度パラメータ(SP)値とすることにより、化学修飾CNFの樹脂中での分散性が高く、セ
ルロースの樹脂に対する補強効果が向上しているので、優れた力学的特性を持つ維強化複合材料を得ることができる。

0042

本発明の繊維強化樹脂組成物では、例えばポリアミド6(PA6)、ポリアセタール(ポリオ
シメチレン、POM)、ポリプロピレン(PP)、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(MAPP)等の樹脂(マトリックス)と化学修飾(例えばアセチル化等)パルプとを溶融混練して、せん断応力を利用して解繊することができる。その化学修飾パルプはナノファイバー化され、化学修飾CNFは樹脂中に良好に分散される。

0043

樹脂及び化学修飾CNFを含む本発明の繊維強化樹脂組成物は、樹脂のみの態様に比べて
曲げ弾性率が高い。例えば化学修飾CNFを10質量%含有する場合、PA6-化学修飾CNFでは2.2倍以上、POM-化学修飾CNFでは2.1倍以上、PP-化学修飾CNFでは1.2倍以上、MAPP-化学修飾CNFでは1.5倍以上の曲げ弾性率となる。

0044

また、本発明の樹脂及び化学修飾CNFを含む繊維強化樹脂組成物の曲げ弾性率は、無修
飾CNF含有繊維強化樹脂組成物と比較しても曲げ弾性率が高い。例えば化学修飾CNFを10質量%含有する場合、少なくとも1.1倍以上である。具体的には、PA6-化学修飾CNFでは1.4倍以上、POM-化学修飾CNFでは1.5倍以上、PP-化学修飾CNFでは1.1倍以上、MAPP-化学修飾CNFでは1.1倍以上、PLA-化学修飾CNFでは1.1倍以上、PS-化学修飾CNFでは1.1倍以上、PE-化学修飾CNFでは1.3倍の曲げ弾性率となる。なお、この曲げ弾性率の倍率数値は、小数点第二位を四捨五入した値である。

0045

繊維強化樹脂組成物は、化学修飾CNFによる樹脂の補強効果が高い。

図面の簡単な説明

0046

原材料であるNBKPのSEM写真である。
アセチル化NBKP(DS=0.88)のSEM写真である。
未処理NBKP添加PA6(No.PA6-15)のX-CT像である。
未処理NBKP添加PA6(No.PA6-15)のPA6を抽出し得られたセルロースのSEM写真である。
アセチル化NBKP添加PA6(NO.PA6-216)のX-CT像である。
アセチル化NBKP添加PA6(NO.PA6-216)のPA6を抽出し得られたセルロースのSEM写真である。
未処理NBKP添加POM(No.POM-148)のPOMを抽出し得られたセルロースのSEM写真である。
アセチル化NBKP添加POM(No.POM-134)のPOMを抽出し得られたセルロースのSEM写真である。
低DS(DS=0.46)アセチル化NBKP添加POM(No.POM-129)のPOMを抽出し得られたセルロースのSEM写真である。
低DS(DS=0.40)アセチル化NBKP添加POM(No.POM-128)複合材料の透過型電子顕微鏡写真である。
未処理NBKP添加PP(No.PP-116)のX-CT像である。
未処理NBKP添加PP(No.PP-116)のPPを抽出し得られたセルロースのSEM写真である。
アセチル化NBKP添加PP(No.PP-367)のX-CT像である。
アセチル化NBKP添加PP(No.PP-367)のPPを抽出し得られたセルロースのSEM写真である。
低DS(DS=0.46)アセチル化NBKP添加PP(No.PP-304)のX-CT像である。
低DS(DS=0.46)アセチル化NBKP添加PP(No.PP-304)のPPを抽出し得られたセルロースのSEM写真である。

0047

以下、本発明の繊維強化樹脂組成物を詳しく説明する。

0048

(1)繊維強化樹脂組成物
本発明の繊維強化樹脂組成物は、(A)化学修飾セルロースナノファイバー(化学修飾CNF)及び(B)熱可塑性樹脂を含有し、
前記化学修飾CNF及び熱可塑性樹脂が下記の条件:
(a)(B)熱可塑性樹脂の溶解パラメータ(SPpol)に対する(A)化学修飾CNFの溶解パラメータ(SPcnf)の比率R (SPcnf/SPpol)が0.87〜1.88の範囲である、及び(b)(A)化学修飾CNFの結
晶化度が42.7%以上である
を満たす。

0049

前記(a)の比率R (SPcnf/SPpol)は、1.03〜1.88程度の範囲が好ましく、1.03〜1.82程
度の範囲がより好ましい。

0050

セルロース分子の繰り返し単位には3つの水酸基が存在する。本発明では、セルロース
分子に存在する水酸基のうちの幾つを化学修飾するか(例えばアセチル基等で置き換える
か)に依って、各樹脂に対して最適な溶解度パラメータ(SP)値を有する化学修飾CNF(例え
ばアセチル化CNF等)を得ることができる。その化学修飾処理により、本発明繊維強化樹脂組成物の樹脂中での化学修飾CNFの分散性が促進され、樹脂に対する化学修飾CNFの補強効果が向上し、優れた力学的特性を持つCNF複合材料を得ることができる。

0051

(1-1) (A)化学修飾セルロースナノファイバー(化学修飾CNF)
本発明の繊維強化樹脂組成物は(A)化学修飾CNFを含む。

0052

(A)化学修飾CNFの結晶化度は42.7%以上である。

0053

植物繊維(セルロース及びリグノセルロース)
化学修飾CNFの原料として用いられる植物繊維には、セルロース又は/及びリグノセル
ロースを含む、木材、ジュートケナフ、綿、ビート農産物廃物、布といった天然植物原料から得られる繊維挙げられる。木材としては、例えば、シトカスプルーススギヒノキユーカリアカシア等が挙げられ、紙としては、脱墨古紙、段ボール古紙、雑誌コピー用紙等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。植物繊維は、1種単独でも用いてもよく、これらから選ばれた2種以上を用いてもよい。

0054

化学修飾CNFの原料として、リグノセルロースも用いることができる。

0055

リグノセルロースは、植物の細胞壁を構成する、複合炭化水素高分子であり、主に多糖類のセルロース、ヘミセルロース芳香族高分子であるリグニンから構成されていることが知られている。

0056

参照例1:Review Article Conversion of Lignocellulosic Biomass to Nanocellulose: Structure and Chemical Process H. V. Lee, S. B. A. Hamid, and S. K. Zain, Scientific World Journal Volume 2014、Article ID 631013, 20 pages, http://dx.doi.org/10.1155/2014/631013
参照例2:New lignocellulose pretreatments using cellulose solvents: a review,
Noppadon Sathitsuksanoh, Anthe George and Y-H Percival Zhang, J Chem Technol Biotechnol 2013; 88: 169-180
本明細書で使用される「リグノセルロース」の用語は、植物中に天然に存在する化学構造のリグノセルロース又は/及びリグノセルロース混合物人工的に改変されたリグノセルロース又は/及びリグノセルロース混合物を意味する。前記混合物は、例えば、天然の植物から得られる、木材、これを機械的又は/及び化学的に処理して得られる種々のパルプ中に含まれる化学構造のリグノセルロース又は/及びリグノセルロース混合物である。リグノセルロースは、天然に存在する化学構造のリグノセルロースに限定されるものではなく、また、リグノセルロース中のリグニン含有量も限定されるものではない。

0057

即ち、本発明で使用されるリグノセルロースやリグノパルプの用語は、リグニン成分の含量が微量であっても、それぞれ、リグノセルロース、リグノパルプとして解釈される。

0058

リグノセルロースの原料には、リグノセルロースを含有する繊維又はリグノセルロースを含有する繊維集合体を使用することができる。リグノセルロースを含有する繊維集合体には、植物由来パルプ、木粉木片等の他、あらゆる形状のリグノセルロースを含有する繊維集合体が含まれる。植物性原料として、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ等の植物由来素材バガス、藁、ビート絞りかす等の農産物残廃物等を用いることができる。それらリグノセルロースが含まれている植物性原料を、片状、紛状、繊維状等の形状にして使用することができる。

0059

植物の細胞壁は、主としてリグノセルロースから構成されている。植物細胞壁微細構造では、通常、約40本のセルロース分子が、水素結合で結合し、通常、幅4〜5nm程度のセルロースミクロフィブリル(シングルCNF)を形成し、セルロースミクロフィブリルが数個
集まってセルロース微繊維(セルロースミクロフィブリル束)を形成している。そして、ヘミセルロースはセルロースミクロフィブリル同士の間隙やセルロースミクロフィブリルの周囲に存在し、リグニンはセルロースミクロフィブリル同士の間隙に充填された状態で存在していることが知られている。

0060

植物繊維やリグノセルロースの製造原料の代表的な例はパルプである。パルプは、木材等の植物由来素材を化学的又は/及び機械的に処理してそこに含まれる繊維を取り出したものである。これは、植物由来素材の化学的、生化学的処理の程度によりヘミセルロース及びリグニンの含有量は低くなり、セルロースを主成分とする繊維となる。

0061

パルプ製造用の木材としては、例えば、シトカスプルース、スギ、ヒノキ、ユーカリ、アカシア等を用いることができる。本発明の繊維強化樹脂組成物に使用する化学修飾CNF
の原料には、例えば、脱墨古紙、段ボール古紙、雑誌、コピー用紙等の古紙を用いることもできる。本発明の繊維強化樹脂組成物に使用する化学修飾CNFの原料として、一種の植
物繊維又は二種以上の植物繊維を組み合わせて用いることもできる。

0062

本発明の繊維強化樹脂組成物に使用する化学修飾CNFの原料として、パルプやパルプを
フィブリル化したフィブリル化セルロース及びフィブリル化リグノセルロースが好ましい原材料として挙げられる。パルプはリグノセルロースを含み、主にセルロース、ヘミセルロース、リグニンから構成される。パルプは、植物性原料を機械パルプ化法、化学パルプ化法又は機械パルプ化法と化学パルプ化法との組み合わせにより処理して、得ることができる。機械パルプ化法は、リグニンを残したまま、グラインダーリファイナー等の機械力によりパルプ化する方法である。化学パルプ化法は、薬品を使用して、リグニンの含有量を調整することによりによりパルプ化する方法である。

0063

機械パルプ(MP)としては、砕木パルプ(GP)、リファイナーGP(RGP)、サーモメカニカル
パルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、晒化学サーモメカニカルパルプ(BCTMP)等を用いることができる。

0064

機械パルプ化法と化学パルプ化法との組み合わせで製造されたパルプとしては、ケミメカニカルパルプ(CMP)、ケミグランドパルプ(CGP)、セミケミカルパルプ(SCP)等を用いる
ことができる。セミケミカルパルプ(SCP)としては、亜硫酸塩法、冷ソーダ法クラフト
法、ソーダ法等で製造されたパルプを用いることができる。

0065

化学パルプ(CP)としては、亜硫酸パルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)、クラフトパルプ(KP)、溶解用クラフトパルプ(DKP)等を用いることができる。

0066

機械パルプ、化学パルプ等のパルプを主成分とする、脱墨古紙パルプ段ボール古紙パルプ雑誌古紙パルプも化学修飾CNFの原料として用いることができる。

0067

これらの原材料は、必要に応じ、脱リグニン、又は漂白を行い、当該パルプ中のリグニン量を調整することができる。

0068

本発明の繊維強化樹脂組成物に使用される化学修飾CNFの原料として、これらのパルプ
の中でも、繊維の強度が強い針葉樹由来の各種クラフトパルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹酸素晒し未漂白クラフトパルプ(NOKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP))が特に好ましい。

0069

パルプを用いる場合、植物原料由来のリグニンが完全には除去されずにパルプ中でリグニンが適度に存在するパルプ化法で製造されたパルプでも制限なく適用できる。例えば、植物原料を機械的にパルプ化する機械パルプ化法が好ましい。本発明の繊維強化樹脂組成物に使用される化学修飾CNFの製造に用いるパルプとしては、砕木パルプ(GP)、リファイ
ナーGP (RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の
機械パルプ(MP)を用いることが好ましい。

0070

リグノセルロース繊維を本発明の繊維強化樹脂組成物の原料として用いる場合、リグノセルロース繊維又はこの繊維集合体(例えば、リグノパルプ)におけるリグニンの含有率は、これら原料中に化学修飾が可能な程度のリグニンを含んでいればよく、その含有量には限定がない。リグニンの含有率は、得られる化学修飾リグノセルロース強度、熱安定性等の点から、1〜40質量%程度が好ましく、3〜35質量%程度がより好ましく、5〜35質量%程度が更に好ましい。リグニン含有量の測定は、Klason法により測定することができる。

0071

リグノセルロース及びリグノパルプは、リグニンを含まないセルロースやパルプに比べて、その製造工程が簡単、その原料(例えば木材)からの収率が良好である。また、少ないエネルギーで製造できることからコストの点から有利であり、本発明の繊維強化樹脂組成物の原料として有用である。

0072

植物繊維を解繊し、CNFやミクロフィブリル化リグノセルロース(MFLC、本明細書ではリグノセルロースナノファイバー(リグノCNF)ともいう)を調製する方法としては、パルプ等のセルロース繊維含有材料を解繊する方法が挙げられる。解繊方法としては、例えば、セルロース繊維含有材料の水懸濁液又はスラリーを、リファイナー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、一軸又は多軸混練機(好ましくは二軸混練機)、ビーズミル等による機械的な摩砕又は叩解することにより解繊する方法が使用できる。必要に応じて、上記の解繊方法を組み合わせて処理してもよい。これらの解繊処理の方法としては、公知の解繊方法等を用いれば良い。

0073

化学修飾セルロース繊維含有材料(化学修飾パルプ又は化学修飾リグノパルプ等)は、熱可塑性樹脂と共に一軸又は多軸混練機(好ましくは多軸混練機)で、加熱下に樹脂を溶融
混練すると解繊されてナノフィブリル化し、熱可塑性樹脂中で化学修飾CNF又は/及び化
学修飾リグノCNFとすることができるので、本発明の繊維強化樹脂組成物を製造するには
、このようにして化学修飾セルロース繊維含有材料を溶融熱可塑樹脂中で解繊するのが有利である。

0074

以下、CNF及びMFLCを、合わせてCNFとも記す。

0075

CNFは、セルロース繊維を含む材料(例えば、木材パルプ等)を、その繊維をナノサイズ
ベルまで解きほぐした(解繊処理した)ものである。CNFの繊維径の平均値繊維幅)は4〜200nm程度が好ましく、繊維長の平均値は5μm程度以上が好ましい。CNFの繊維径の平均値は、4〜150nm程度がより好ましく、4〜100nm程度が更に好ましい。

0076

本発明に使用される化学修飾CNFの平均繊維長及び平均繊維径の夫々の好ましい範囲、
更に好ましい範囲についても、上記CNFのそれらと同様である。

0077

繊維径、繊維長はメッツォ社製のカヤーニ繊維長測定器を用いて測定することができる。CNF及び化学修飾CNFの繊維径の平均値(平均繊維径)及び繊維長の平均値(平均繊維長)は、電子顕微鏡視野内のCNF又は化学修飾CNFの少なくとも50本以上について測定した時の平均値として求める。

0078

走査型電子顕微鏡(SEM)で繊維を観察することにより、繊維の解繊改善状態を観察する
こともできる。

0079

なお、本発明の目的を達成(例えば、化学修飾CNF/又は化学修飾リグノCNF強化組成物
の曲げ弾性率が、未修飾CNF/又は未修飾リグノCNF強化組成物の曲げ弾性率に対し1.1倍
以上の弾性率を示す)する限り、解繊が不十分で、上記の化学修飾CNFよりも繊維径の大きな化学修飾セルロースファイバー/又は化学修飾リグノセルロースファイバーを含んでいたとしても、そのような繊維強化組成物は本発明に包含される。

0080

化学修飾CNFの比表面積は、70〜300m2/g程度が好ましく、70〜250m2/g程度がより好ま
しく、100〜200m2/g程度が更に好ましい。化学修飾CNFの比表面積を高くすることで、樹
脂(マトリックス)と組み合わせて組成物とした場合に、接触面積を大きくすることができ、樹脂成形材料の強度を向上させることができる。また、化学修飾CNFは樹脂組成物の樹
脂中で凝集せず、樹脂成形材料の強度を向上させることができる。

0081

化学修飾
繊維強化樹脂組成物に含まれる化学修飾CNF(化学修飾MFLCを含む)は、使用する樹脂に
応じてCNFの表面に存在する水酸基が疎水化されている。

0082

化学修飾CNFとしては、例えば、アシル基アルキル基での修飾によってナノファイバ
ーの表面に存在する水酸基が疎水化された疎水化CNF;アミノ基を有するシランカップ
ング剤、グリシジルトリアルキルアンモニウムハライド若しくはそのハロヒドリン型化合物等の修飾によりにより、ナノファイバーの表面に存在する水酸基がカチオン変性された変性CNF;無水コハク酸、アルキル又はアルケニル無水コハク酸のような環状酸無水物
よるモノエステル化、カルボキシル基を有するシランカップリング剤による修飾等により、ナノファイバーの表面に存在する水酸基がアニオン変性された変性CNF等を使用するこ
とができる。

0083

このうち、本発明に使用する化学修飾CNFには、CNFを構成する糖鎖の水酸基がアルカノイル基で修飾されているCNF(アルカノイル修飾CNF)が、製造が容易であるので、好ましい
。化学修飾CNFは、CNFを構成する糖鎖の水酸基が低級アルカノイル基で修飾されているCNF(低級アルカノイル修飾CNF)が、より好ましい。

0084

さらには、製造の容易さ及び製造コストの点から、本発明で使用する化学修飾CNFには
、CNFを構成する糖鎖の水酸基がアセチル基で修飾されているCNF(Ac-CNFとも記す)がより好ましい。

0085

本発明において化学修飾CNFは、前記のCNFを化学修飾するか、又は化学修飾パルプ又は化学修飾セルロース等の繊維集合体を、公知の解繊方法で解繊して得ることができる。また樹脂(マトリックス材料、後述)との複合体を作製するときは、樹脂と化学修飾パルプ又は化学修飾セルロース等の繊維集合体とを混練して、混練中せん断力により樹脂内でこれをミクロフィブリル化することもできる。

0086

化学修飾CNFは、セルロース及びヘミセルロースの少なくとも一種(リグノセルロースが含まれる)中に存在する水酸基(即ち、糖鎖の水酸基)が、飽和脂肪酸不飽和カルボン酸
モノ不飽和脂肪酸ジ不飽和脂肪酸トリ不飽和脂肪酸テトラ不飽和脂肪酸、ペンタ不飽和脂肪酸、ヘキサ不飽和脂肪酸、芳香族カルボン酸ジカルボン酸アミノ酸マレイミド化合物

0087

0089

0090

からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物カルボキシ基から水素原子を除去した残基によって置換されていることが好ましい。

0091

即ち、化学修飾CNFは、セルロース及びリグノセルロースの糖鎖の水酸基が、上記カル
ボン酸のカルボキシ基から水酸基を除いた残基(アシル基)でアシル化されていることが好ましい。

0093

上記の不飽和カルボン酸としては、アクリル酸メタクリル酸等が好ましい。

0094

モノ不飽和脂肪酸としては、クロトン酸ミリストレイン酸パルミトレイン酸オレイン酸リシノール酸等が好ましい。

0095

上記のジ不飽和脂肪酸としては、ソルビン酸リノール酸エイコサジエン酸等が好ましい。

0096

上記のトリ不飽和脂肪酸としては、リノレン酸ピノレン酸エレオステアリン酸等が好ましい。

0097

上記のテトラ不飽和脂肪酸としては、ステアリドン酸及びアラキドン酸から選ばれる等が好ましい。

0098

ペンタ不飽和脂肪酸としては、ボセオペンタエン酸、エイコサペンタエン酸等が好ましい。

0099

上記のヘキサ不飽和脂肪酸としては、ドコサヘキサエン酸ニシン酸等が好ましい。

0100

芳香族カルボン酸としては、安息香酸フタル酸イソフタル酸テレフタル酸サリチル酸没食子酸(3,4,5-トリヒドロキシベンゼンカルボン酸)、ケイ皮酸(3-フェニル
ロパ-2-エン酸)等が好ましい。

0101

上記のジカルボン酸としては、シュウ酸マロン酸コハク酸グルタル酸アジピン酸フマル酸マレイン酸等が好ましい。

0102

上記のアミノ酸としては、グリシンβ-アラニン、ε-アミノカプロン酸(6-アミノヘ
キサン酸)等が好ましい。

0103

上記の各種カルボン酸で修飾された化学修飾CNFのうち、本発明に使用する化学修飾CNFには、CNFを構成する糖鎖の水酸基が低級アルカノイル基で修飾されているCNF(CNFを構
成する糖鎖の水酸基が低級アルカノイル化されたCNF、低級アルカノイル化CNFと呼ぶ、CNFを構成する糖鎖の水酸基が低級アルカノイルオキシ基で置換された化学構造のCNFに相当する)が、製造が容易で好ましい。

0104

分岐鎖アルキルカルボン酸(例えば、ピバル酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸等)、環式アルカンカルボン酸(シクロヘキサンカルボン酸、t-ブチルシクロヘキサンカルボン酸等)及び、置換若しくは非置換フェノキシアルキルカルボン酸(フェノキシ酢酸、1,1,3,3-テ
トラメチルブチルフェノキシ酢酸、ボルナンフェノキシ酢酸、ボルナンフェノキシヘキサン酸等)のカルボキシ基から水酸基を除いた残基(アシル基)でアシル化されたCNF及びリグノCNFは、樹脂(特に、PP、PE等オレフィン系のSP値が低い樹脂)に対しても補強効果が大
きく有利に使用できる。

0105

更には、製造の容易さ及び製造コストの点から、本発明で使用する化学修飾CNFには、CNFを構成する糖鎖の水酸基がアセチル基で修飾されているCNF(CNFを構成する糖鎖の水酸
基がアセチル化された化学修飾CNF、Ac-CNFとも記す。)がより好ましい。

0106

本発明に使用する化学修飾CNFは、原料中のセルロース及びヘミセルロースの水酸基(糖鎖水酸基)が、原料セルロース又は/及びリグノセルロース繊維中に存在していたセルロ
ースの結晶構造が出来る限り保持された状態で、アシル化されていることが好ましい。即ち、本発明に使用する化学修飾CNFは、元来、原料セルロース又は/及びリグノセルロ
ス繊維中に存在するセルロース結晶構造を壊さないように原料繊維の表面に存在する水酸基、例えばセルロースの水酸基、ヘミセルロースの水酸基等をアシル化することが好ましい。その化学修飾処理により、CNF本来の優れた力学的特性を持つ化学修飾CNFを得ることができるとともに、樹脂中での化学修飾CNFの分散性が促進され、樹脂に対する化学修飾C
NFの補強効果が向上する。

0107

前記アシル化反応は、原料繊維(CNF又はパルプ)を膨潤させることのできる無水非プロ
トン極性溶媒、例えばN-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド中に原料を懸濁し、前記カルボン酸の無水物又は酸塩化物で、塩基の存在下で行うのが好ましい。このアシル化反応で用いる塩基としては、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン炭酸ナトリウム炭酸水素ナトリウム炭酸カリウム等が好ましい。

0108

このアシル化反応は、例えば、室温〜100℃で撹拌しながら行うことが好ましい。

0109

本発明に使用する化学修飾CNFの糖鎖水酸基のアシル化度(DSとも表記する。置換度又は修飾度ということもある)を説明する。

0110

アシル化反応によって得られる化学修飾CNFの糖鎖水酸基におけるアシル化度(修飾度、DS)は、0.05〜2.5程度が好ましく、0.1〜1.7程度がより好ましく、0.15〜1.5程度が更に
好ましい。置換度(DS)の最大値は、CNFの糖鎖水酸基量に依存するが、2.7程度である。置換度(DS)を0.05〜2.5程度に設定することによって、適度の結晶化度とSP値を有する化学
修飾CNFが得られる。例えば、アセチル化CNFでは、好ましいDSは0.29〜2.52であり、その範囲のDSでは結晶化度は42.7%程度以上に保つことが可能である。

0111

置換度(DS)は、元素分析中和滴定法、FT-IR、二次元NMR(1H及び13C-NMR)等の各種分
析方法により分析することができる。

0112

化学修飾CNFの結晶化度
繊維強化樹脂組成物に含まれる化学修飾CNFの結晶化度が42.7%程度以上である。

0113

化学修飾CNFは、結晶化度が42.7%程度以上と高い結晶化度を有するもので、その結晶型はセルロースI型結晶を有することが好ましい。前記「結晶化度」とは、全セルロース中
の結晶(主にセルロースI型結晶)の存在比である。化学修飾CNFの結晶化度(好ましくはセ
ルロースI型の結晶)は、順に50%程度以上が好ましく、55%程度以上がより好ましく、55.6%程度以上がより好ましく、60%程度以上が更に好ましく、69.5%程度以上がなお更に好ま
しい。

0114

化学修飾CNFの結晶化度の上限は、一般的に80%程度である。化学修飾CNFは、セルロー
スI型の結晶構造を維持し、高強度、低熱膨張といった性能を発現する。

0115

結晶の中でもセルロースI型結晶構造とは、例えば書店発行の「セルロースの辞典
新装版第一刷81〜86頁、或いは93〜99頁に記載の通りのものであり、ほとんどの天然セルロースはセルロースI型結晶構造である。これに対して、セルロースI型結晶構造ではなく、例えばセルロースII、III、IV型構造のセルロース繊維はセルロースI型結晶構造を有するセルロースから誘導されるものである。中でもI型結晶構造は他の構造に比べて結晶
弾性率が高い。

0116

結晶構造がI型結晶であると、CNFと樹脂(マトリックス材料)との複合材料とした際に、低線膨張係数、且つ高弾性率な複合材料を得ることができる。

0117

化学修飾CNFのCNFがI型結晶構造であることは、その広角X線回折像測定により得られ
回折プロファイルにおいて、2θ=14〜17°付近と2θ=22〜23°付近の二つの位置に典
型的なピークを持つことから同定することができる。

0118

セルロースの重合度は天然セルロースで500〜10,000程度、再生セルロースで200〜800
程度である。セルロースは、β-1,4結合により直線的に伸びたセルロースが何本かの束になって、分子内或いは分子間の水素結合で固定され、伸びきり鎖となった結晶を形成している。セルロースの結晶には、多くの結晶形が存在していることはX線回折固体NMRに
よる解析で明らかになっているが、天然セルロースの結晶形はI型のみである。X線回折等から、セルロースにおける結晶領域の比率は、木材パルプで約50〜60%、バクテリアセル
ロースはこれより高く約70%程度と推測されている。セルロースは、伸びきり鎖結晶であ
ることに起因して、弾性率が高いだけでなく、鋼鉄の5倍の強度、ガラスの1/50以下の線
熱膨張係数を示す。

0119

(1-2) (B)熱可塑性樹脂
本発明の繊維強化樹脂組成物は、(A)化学修飾CNFに加えて、(B)熱可塑性樹脂を含む。
この繊維強化樹脂組成物を用いて、強度に優れる成形体を作製することができる。

0120

本発明の繊維強化樹脂組成物は、(A)化学修飾CNFとして、アシル化セルロースナノファイバー(アシル化CNF)を含有し、製造法とコストの観点から、好ましくは低級アルカノ
ルセルロースナノファイバー(低級アルカノイルCNF)を含有することが好ましく、アセチ
ル化セルロースナノファイバー(アセチル化CNF)を含むことがより好ましい。

0121

熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデンフッ素樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂(ナイロン樹脂、PA)、ポリエステルポリ乳酸樹脂、ポリ乳酸とポリエステル共重合樹脂アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリカーボネート、ポ
リフェニレオキシド、(熱可塑性)ポリウレタン、ポリアセタール(POM)、ビニルエーテ
ル樹脂ポリスルホン系樹脂セルロース系樹脂(例えばトリアセチル化セルロース、ジ
アセチル化セルロース)等の熱可塑性樹脂を好ましく使用することができる。

0122

フッ素樹脂
テトラクロロエチレン、ヘキフロロプロピレンクロロトリフロロエチレン、フッ化ビリニデン、フッ化ビニルペルフルオロアルキルビニルエーテル等の単独重合体又は共重合体を好ましく使用することができる。

0123

(メタ)アクリル系樹脂
(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド類等の単独重合体又は共重合体を好ましく使用することができる。なお、この明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。(メタ)アクリル酸としては、アクリル酸又はメタクリル酸が挙げられる。

0124

(メタ)アクリロニトリルとしては、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルが挙げられる。

0125

(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸系単量体、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル等が挙げられる。

0126

(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(
メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等が挙げられる。

0127

シクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸系単量体としては、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。

0128

(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ブトキシエチル等が挙げられる。

0129

(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-t-オクチル(メタ)アクリルアミド等のN置換(メタ)アクリルアミド等、及びこれら(メタ)アクリル系樹脂の
共重合物が挙げられる。

0130

ポリエステル
芳香族ポリエステル脂肪族ポリエステル不飽和ポリエステル等を好ましく使用することができる。

0131

芳香族ポリエステルとしては、エチレングリコールプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール等の後述するジオール類とテレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸との共重合体が挙げられる。

0132

脂肪族ポリエステルとしては、後述するジオール類とコハク酸、吉草酸等の脂肪族ジカルボン酸との共重合体や、グリコール酸乳酸等のヒドロキシカルボン酸の単独重合体又は共重合体、後述するジオール類、脂肪族ジカルボン酸及び上記ヒドロキシカルボン酸の共重合体等が挙げられる。

0133

不飽和ポリエステルとしては、後述するジオール類、無水マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸、及び必要に応じてスチレン等のビニル単量体との共重合体が挙げられる。

0134

ポリカーボネート
ビスフェノールAやその誘導体であるビスフェノール類と、ホスゲン又はフェニルジカ
ボネートとの反応物を好ましく使用することができる。

0135

ポリスルホン樹脂
4,4’-ジクロロジフェニルスルホンやビスフェノールA等の共重合体を好ましく使用することができる。

0136

ポリフェニレンスルフィド
p-ジクロロベンゼン硫化ナトリウム等の共重合体を好ましく使用することができる。

0137

ポリウレタン
ジイソシアネート類とジオール類との共重合体を好ましく使用することができる。

0138

ジイソシアネート類としては、ジシクロキシルメタンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートイソホロンジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。

0139

ジオール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールネオペンチルグリコール、ジエチレングリ
コールトリメチレングリコールトリエチレングリコールテトラエチレングリコールジプロピレングリコールトリプロピレングリコールシクロヘキサンジメタノール等の比較的低分子量のジオールや、ポリエステルジオールポリエーテルジオールポリカーボネートジオール等が挙げられる。

0140

アミド系樹脂(ポリアミド樹脂)
ナイロン66(ポリアミド66、PA66)、ナイロン6(ポリアミド6、PA6)、ナイロン11(ポリアミド11、PA11)、ナイロン12(ポリアミド12、PA12)、ナイロン46(ポリアミド46、PA46)、
ナイロン610(ポリアミド610、PA610)、ナイロン612(ポリアミド612、PA612)等の脂肪族アミド系樹脂や、フェニレンジアミン等の芳香族ジアミン塩化テレフタロイル塩化イソフタロイル等の芳香族ジカルボン酸又はその誘導体からなる芳香族ポリアミド等を好ましく使用することができる。

0141

ポリアセタール
トリオキサンホルムアルデヒドエチレンオキシド等の重合体及び共重合体を好ましく使用することができる。

0142

これらの熱可塑性樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上の混合樹脂として用いてもよい。

0143

前記熱可塑性樹脂の中でも、力学的特性、耐熱性表面平滑性及び外観に優れるという点から、ポリアミド、ポリアセタール、ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリ乳酸とポリエステル共重合樹脂、ABS樹脂及びポリ
スチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂が好ましい。

0144

分子構造内に極性の高いアミド結合を有するポリアミド樹脂(PA)は、セルロース系材料との親和性が高いという理由から、PA6(ε-カプロラクタム開環重合体)、PA66(ポリヘ
サメチレンアジポアミド)、PA11(ウンデカンラクタム開環重縮合したポリアミド)、PA12(ラウリルラクタムを開環重縮合したポリアミド)等、及びポリアミド共重合樹脂等を
用いることが好ましい。

0145

更に、構造部材として汎用性を有するポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE、特に高
密度ポリエチレン:HDPE)及びこれら汎用性ポリオレフィンと相溶性の高い無水マレイン
酸変性ポリプロピレンが好ましい。

0146

(1-3) (A)化学修飾CNFのSPcnfと(B)熱可塑性樹脂のSPpolとの関係
本発明の繊維強化樹脂組成物では、(B)熱可塑性樹脂の溶解パラメータ(SPpol)に対する(A)化学修飾CNFの溶解パラメータ(SPcnf)の比率R (SPcnf/SPpol)が0.87〜1.88程度であ
り、好ましくは1.03〜1.88の範囲が好ましく、より好ましくは1.03〜1.82程度の範囲である。

0147

本発明の繊維強化樹脂組成物では、(B)熱可塑性樹脂としてポリアミド(PA)、ポリアセ
タール(POM)、ポリ乳酸(PLA)又はこの混合樹脂を好適に使用することができ、この場合比率R (SPcnf/SPpol)が1.04〜1.32程度であることが好ましく、化学修飾CNFの結晶化度が69.5%程度以上であることが好ましい。

0148

一方、本発明の繊維強化樹脂組成物では、上記の熱可塑性樹脂よりも極性の低い熱可塑
性樹脂(即ちSPpolが小さい)、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、無水
マレイン酸変性ポリプロピレン(MAPP)、ポリスチレン(PS)も使用することができる。この場合、化学修飾CNFのSPcnfと熱可塑性樹脂のSPpolとの比率R (SPcnf/SPpol)は1.21〜1.88程度、より好ましくは1.21〜1.82であることが好ましく、化学修飾CNFの結晶化度が42.7%以上であることが好ましい。

0149

本発明繊維強化樹脂組成物において、汎用性の(B)熱可塑性樹脂としては例えば、ポリ
プロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のオレフィン系樹脂及びこれらオレフィン系樹脂と相溶性の良い変性ポリオレフィン、例えば、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(MAPP)を用いることが好ましく、この場合、化学修飾CNFのSPcnfと熱可塑性樹脂のSPpolとの比率R
(SPcnf/SPpol)が1.21〜1.88程度であり、より好ましくは1.21〜1.82程度であることが
好ましく、化学修飾CNFの結晶化度が42.7%程度以上であることが好ましい。

0150

この様に、(A)化学修飾CNFのSPcnfと(B)熱可塑性樹脂のSPpolとの関係を選定すること
によって、繊維強化組成物の好適な組み合わせとその力学的特性が最適に改善された繊維強化組成物が得られる。

0151

尚、(A)化学修飾CNFのSPcnfと(B)熱可塑性樹脂のSPpolとの関係の実例を、主に、実施
例のAc化CNFのSPcnfと6種の熱可塑性樹脂(PA6、POM、PP、MAPP、PLA、PS)の各SPpol との関係で示したが、これと異なる他の修飾基で修飾されたCNF、例えば、プロピオニル化CNF、ミリストイル化CNF化など各種アルカノイル基)を用いる場合も、上記に定める比率R
(SPcnf/SPpol)に合致するプロピオニル化CNF等各種アルカノイル化CNFと熱可塑性樹脂
との組合せを選定することによって、好適な化学修飾CNFと好適な樹脂の組み合わせを選
定し、化学修飾CNFと熱可塑樹脂が最適に組み合わされた繊維強化樹脂を製造することが
できる。

0152

(A)化学修飾CNFの溶解パラメータ(SPcnf)
<溶解度パラメータ(SP、単位(cal/cm3)1/2)( Fedors計算法による)>
アセチル化NBKP(Ac-NBKP)のSP値算出方法
アセチル化NBKPについては、文献記載のセルロース及びセルロースジアセテートのSP値を用い、セルロースはDS=0、セルロースジアセテートはDS=2として直線近似することにより、各DSのアセチル化セルロースのSP値を算出した。算出、使用したSP値の妥当性をFedorsのSP値算出方法により検証した。

0153

その結果、上記直線近似により得られたアセチル化セルロースのSP値は,Fedorsの計算方法により得られた計算値と±10%以内であったことから妥当な値であると考えられる。

0154

アセチル化リグノパルプ(LP)のSP値算出方法

0155

0156

以下リグノパルプについて説明を行う。リグノパルプの一例として,150℃にて砕木パ
ルプ(GP)を1時間蒸解処理を行ったリグノパルプ150-1(GP150-1)の組成は、モル比で大よ
そセルロース(Cel):66%、ヘミセルロース(HCel):12%(マンナン(Man):7%及びキシラン(Xyl):5%)、及びリグニン(Lig):22%で構成)を例に挙げて説明する。

0157

このリグニンは,本発明では,β-O-4型リグニンのみからなると仮定する。これがアセチル化されるとアセチル化リグニンとなり、リグノパルプの最大DSは2.73となる。このリグニンには水酸基が2個含まれており、リグニンのDSは最大で2となる。

0158

同様に150℃にて砕木パルプ(GP)を、3時間蒸解処理を行ったリグノパルプ150-3の場合
、水酸基を3個含むセルロース及びヘミセルロースが87.4%(質量%)、水酸基を2個含むリグニンが12.6%(質量%)であることから、リグノパルプの最大DSは2.87となる。

0159

リグノパルプ(150-3)に含まれるセルロース、へミセルロース及びリグニンの各成分の
質量分率モル分率換算し、各々に含有される各原子及び各原子団モル数見積った。そして、1モルあたり蒸発エネルギー及び1モルあたりの体積を用いて、FedorsのSP値算出方法より、リグノパルプのSP値を算出することができる。

0160

仮に、リグノパルプ(LP)(150-1:150℃で1時間蒸解処理)をアセチル化処理する場合を
説明する。

0161

そして、リグノパルプ(アセチル化度(修飾度)が0.88(DS=0.88))の場合のSPの計算方法
を説明する。

0162

このDS値(0.88)は、リグノパルプに含まれるセルロースをベースとしており、アセチル含量(g/mol)は0.88mol/162g(セルロースのg/mol)である。

0163

リグノパルプの平均分子量(g/mol)は、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンの存
在比(モル比)を考慮すると、
162x0.66(Cel)+HCel[162x0.07(Man)+147x0.05(Xyl)]+196x0.22(Lig)=168.2である。

0164

従って、LP(150-1)のDSは、0.88x168.73/162=0.92である。

0165

SP(LP150-1-OH)は、
17.6x0.73(Cel+Man)+16.5x0.05(Xyl)+13.6x0.22(Lig)=16.62、ca.16.6である。

0166

SP(LP150-1-OAC)は
11.1x0.73(Cel+Man)+11.1x0.05(Xyl)+10.6x0.22(Lig)=10.99、ca.11.0である。

0167

SP(LP150-1-OAC)のDSは、
3x0.73(Cel+Man)+2x0.05(Xyl)+2x0.22(Lig)=2.73である。

0168

SP(LP150-1-OAC、DS=0.88)のSPは、
-((16.6-11.0)/2.73)x0.92+16.6=14.713、ca.14.7である。

0169

上記計算方法に従い、DS=dのアセチル化リグノパルプのSP値(Y)の計算式一般式で示
すと以下の通りである。

0170

Y=〔-(a-b)/c〕*d+a
(式中*は乗算(掛け算)の演算記号を示す。

0171

a、b、c、dは夫々以下の意味である)
a:無修飾リグノパルプ(LP-OH)のSP値
=SPcel(セルロースのSP値) *(Cel+Man)
+SPxyl(キシランのSP値) *(Xyl)
+SPlig(リグニンのSP値) *(Lig)
b:全部の水酸基がアセチル化されたりグノパルプ(LP-OAC)のSP値
=SPcelac3(セルローストリアセテートのSP値) *(Cel+Man)
+SPxylac(キシランジアセテートのSP値) *(Xyl)
+SPligac(リグニンジアセテートのSP値) *(Lig)
c:(全部の水酸基がアセチル化されたグノパルプのDS)
=3*(Cel)+3*(Man)+2*(Xyl)+2*(Lig)
ここで、(Cel)、(Man)、(Xyl)、(Lig)は、夫々リグノパルプ中の、セルロース、マンナン、キシラン、リグニンのモル分率を示す。

0172

d:(アセチル化度(滴定法で求めたDS値、dsと表記)の場合のリグノセルロースのDS)
=ds*(リグノパルプ繰り返し単位の平均式量)
/(セルロース繰り返し単位の式量)
上記において、SPcel(セルロースのSP値)は、文献値(実用ポリマーアロイ設計、井出文雄著、工業調査初版、1996年9月1日発行第19頁)を使用した。

0173

Spcelac3(セルローストリアセテートのSP値)は、SPcel(セルロースのSP値、文献値)と
、SPcelac2(セルロースジアセテートのSP値、文献値)とを用いて求めた。

0174

即ち、SPcel値(DS=0)、SPcelac2(DS=2)の関係は、これらSP値を縦軸に、このときのDS
横軸プロットした一次関数上にあるとして、一次関数を求め、DS=3のときの値をSPcelac3(セルローストリアセテートのSP値)として求めた。

0175

SPxy(キシランのSP値)、SPlig(リグニンのSP値)、SPxylac(キシランジアセテートのSP
値)及びSPligac(リグニンジアセテートのSP値)は、Fedorsの方法(Robert F. Fedors、Polymer Engineering and Science, February,1974、vol.14, No.2, 147-154)に準じて計
算した。

0176

なお、Fwdorsの計算でセルロース、マンナン、キシラン及びリグニンの水酸基のΔei(
蒸発エネルギー)、Δvi(モル体積)はすべて2級水酸基の値を使用した。

0177

ヘミセルロース中に含まれるマンナン(Man)とキシラン(Xyl)は等モルと仮定しても実用上問題ないのでないのでそのようにして計算できる。

0178

また、リグニン含有率が1質量%未満のリグノセルロースはリグニンを無視しても(リグ
ニン含有量を0として計算しても)実質上、特に、問題はない。

0179

そして、セルロースとグルコマンナンの合計含有量が92質量%以上であり、リグニン含
有量が0.5質量%以下のリグノセルロースのSP値、アセチル化リグノセルロースのSP値については、このリグノセルロースの成分は、全てセルロースのみから構成されていると仮定して、上記のセルロースのSP文献値、セルロースジアセテートのSP文献値を使用してSP計算することができる。

0180

化学修飾CNFの溶解パラメータ(SPcnf)の最適範囲は、化学修飾CNFと複合される樹脂(マトリックス)の溶解パラメータ(SPpol)に依存するが、好ましくは9.9〜15程度である。化
学修飾CNFの溶解パラメータ(SPcnf)の最適範囲は、より好ましくは樹脂(マトリックス)の溶解パラメータ(SPpol)が11〜13程度の親水性樹脂に対しては11.5〜15である。

0181

化学修飾CNFの溶解パラメータ(SPcnf)の最適範囲は、樹脂(マトリックス)の溶解パラメータ(SPpol)が8〜9程度の疎水性の樹脂に対しては9.9〜15程度である。

0182

要するに化学修飾CNFの溶解パラメータ(SPcnf)は、樹脂(マトリックス)の溶解パラメータSPpolに依存して決定することが好ましく、樹脂の溶解パラメータ(SPpol)に対する化学修飾CNFの溶解パラメータ(SPcnf)の比率R (SPcnf/SPpol)を0.87〜1.88程度の範囲にすることが好ましい。

0183

比率R (SPcnf/SPpol)は、1.03〜1.88程度の範囲がより好ましく、1.03〜1.82程度の範囲が更に好ましい。

0184

比率Rがこ範囲では、化学修飾CNFの樹脂(マトリックス)への分散性が向上し、化学修飾CNFを含む樹脂組成物の強度が向上するという効果が有る。

0185

(B)熱可塑性樹脂の溶解パラメータ(SPpol)
熱可塑性樹脂の溶解パラメータ(SPpol)値については、井出文雄著「実用ポリマーアロ
イ設計」(工業調査会初版、1996年9月1日発行)記載のSP値を参考にすることができる。代表的な熱可塑性樹脂にSP値については下記の通りである。

0186

0187

この文献において、数値の範囲でSP値が示されている材料のSP値については、この数値範囲の平均値をその材料のSP値として本願発明では使用した。例えば、ナイロン6(PA6)の文献SP値11.6〜12.7については、11.6と12.7の平均値12.2(小数点以下2桁で四捨五入)を
ナイロン6(PA6)のSP値として使用した。

0188

繊維強化樹脂複合体に使用する熱可塑性樹脂の選定は、それを使用した繊維強化複合体の用途によってきまる。そして、熱可塑性樹脂の溶解パラメータ(SPpol)の範囲は樹脂固
有のものである。

0189

例えば、エンジンカバーや、マニホールド等の自動車部品家電部品等に多用されるポリアミド類の溶解パラメータ(SPpol)は12〜13程度であり、ナイロン6(PA6)のSPpolは12.2である。強度が要求される電気電子製品外装筐体機構部品類に多用されるポリアセタール(POM)のSPpolは11.1程度である。一方、比重小さく疎水性で自動車部品、家電部品、包装フィルム食品容器などに汎用されるポリプロピレン(PP)のSPpolは8.1程度で、PPやポリエチレン(PE)等の疎水性ポリオレフィンの接着性、分散性向上のために使用される無水マレイン酸変性ポリプロピレン(MAPP)のSPpolは、8.2程度である。この様なSPpolに
対応して、比率R (SPcnf/SPpol)が1.03〜1.32程度となる様なSPcnfを有する化学修飾CNFが選定されて本発明の繊維強化樹脂組成物が製造される。

0190

(B)SPpolに対する(A)SPcnfの比率R (SPcnf/SPpol)
本発明の繊維強化樹脂組成物ではSPpolに対する(A)SPcnfの比率R (SPcnf/SPpol)は0.87〜1.88程度の範囲であり、1.03〜1.88の範囲が好ましく、1.03〜1.82程度の範囲がより
好ましい。この数値(1.03〜1.82)の範囲内で、熱可塑性樹脂のSPpolが大きいときにはR (SPcnf/SPpol)は小さく、SPpolが小さいときにはR (SPcnf/SPpol)は大きいことがより好ましい。

0191

例えば、ポリアミド(PA6、SPpol=12.2)、ポリアセタール(POM、SPpol=11.1)、ポリ乳酸又はこの混合樹脂を使用する場合は、比率R (SPcnf/SPpol)が1.03〜1.32であることが好ましい。

0192

一方、SPpolが小さい、例えばポリプロピレン(PP、SPpol=8.1)、無水マレイン酸変性
ポリプロピレン(MAPP、SPpol=8.2)又はこの混合樹脂を使用する場合は、比率R (SPcnf/SPpol)は1.21〜1.82であることが好ましい。こうすることによって、化学修飾CNFの樹脂(マトリックス)への分散性が向上し、化学修飾CNFを含む樹脂組成物の強度が向上するという効果が有る。

0193

具体的には、熱可塑性樹脂として、ポリアミド(PA6、SP=12.2)を使用するときは、DS=0.29〜1.17程度、SP=14.2〜13.0程度、結晶化度69.5%程度以上のアセチル化セルロースが
好ましく、より好ましくはDS=0.46〜0.88程度、SP=14.6〜13.7程度、結晶化度72.1%程度
以上のアセチル化セルロースを添加することで、良好な曲げ特性を得ることができる。

0194

熱可塑性樹脂として、ポリアセタール(POM、SP=11.1)を使用するときは、DS=0.46〜1.84程度、SP=14.6〜11.5程度、結晶化度55.6%程度以上のアセチル化セルロースが好ましく
、より好ましくはDS=0.64〜1.17程度、SP=14.2〜13.0程度、結晶化度69.5%程度以上のア
セチル化セルロースを添加することで、良好な曲げ特性を得ることができる。

0195

熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン(PP、SP=8.1)を使用するときは、DS=0.46程度以
上が好ましく、より好ましくはDS=1.84程度以上が好ましく、DS=2.52程度以上にピークがあると考えられ、結晶化度は影響していない。

0196

熱可塑性樹脂として、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(MAPP、SPpol=8.2)を使用するときは、DS=0.32〜2.52程度、SP=15.0〜9.90程度、結晶化度42.7%程度以上のアセチル
化セルロースが好ましく、より好ましくはDS=0.88〜1.57程度、SP=13.7〜12.1程度、結晶化度55.6%程度以上のアセチル化セルロースを添加することで、良好な曲げ特性を得るこ
とができる。

0197

熱可塑性樹脂として、ポリ乳酸(PLA、SPpol=11.4)を使用するときは、DS=0.32〜2.52
程度、SP=15.0〜9.9程度、結晶化度42.7%程度以上のアセチル化セルロースが好ましい。
より好ましくはDS=0.32〜1.57程度、SP=15.0〜12.1程度、結晶化度55.6%程度以上のアセ
チル化セルロースである。これらのアセチル化セルロースを添加することで、良好な曲げ特性を得ることができる。

0198

ポリエチレン(PE、SP=8.0)を使用するときは、DS=0.30〜2.02程度、SP=15.0〜11.1程度、結晶化度42.7%程度以上のアセチル化セルロースが好ましい。良好な曲げ特性を得るこ
とができる。

0199

ポリスチレン(PS、SP=8.85)を使用するときは、DS=0.30〜2.02程度、SP=15.0〜11.0程
度、結晶化度42.7%程度以上のアセチル化セルロースが好ましい。良好な曲げ特性を得る
ことができる。

0200

アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体(ABS樹脂)を使用するときは、アク
リロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体の共重合比によりSP値が変動するので一概に言えないが、DS=0.30〜1.57程度、SP=15.0〜12.1程度、結晶化度55.6%程度以上のアセ
チル化セルロースが好ましい。良好な曲げ特性を得ることができる。

0201

ポリアミド(PA6)、ポリアセタール(POM)等の極性材料においては、そのSPが高いため、DS=1.2程度までのアセチル化処理で十分セルロースとの相容性が向上し、セルロースの結晶化度を70%程度以上に保つ、つまりセルロース繊維の強度を高い状態に保つことにより
最も高曲げ特性の材料を得ることができる。

0202

ポリプロピレン(PP)等の非極性材料においては、そのSPが低いため、結晶化度の高く繊維強度の高いDS=1.0程度までのアセチル化セルロースでは界面強度が低すぎて不十分な曲げ特性となる。アセチル化NBKP/PP複合材料では,結晶化度が低下しても高DSにする必要
があると言える。即ち高アセチル化セルロースを使用することが好ましい。

0203

(1-4)繊維強化樹脂組成物の配合組成
本発明の繊維強化樹脂組成物は(A)化学修飾CNF及び(B)熱可塑性樹脂を含む。

0204

繊維強化樹脂組成物中の(A)化学修飾CNFの含有割合は、熱可塑性樹脂(B)100質量部に対し、1〜300質量部程度が好ましく、1〜200質量部程度がより好ましく、1〜100質量部程度が更に好ましい。繊維強化樹脂組成物中の(A)化学修飾CNF(好ましくはアセチル化CNF)の
含有割合は、0.1〜30質量部程度であることが好ましい。

0205

(B)熱可塑性樹脂に(A)化学修飾CNFを配合することにより、力学的特性、耐熱性、表面
平滑性及び外観に優れる繊維強化樹脂組成物を得ることができる。

0206

(A)化学修飾CNFは、植物繊維と同様に、軽量であり、強度を有し、低線熱膨張係数を有する。組成物が(A)化学修飾CNFを含んでも、組成物は汎用のプラスチックと同様に、加熱すると軟化して成形し易くなり、冷やすと再び固くなる性質(熱可塑性)を持ち、良好な加工性を発現できる。

0207

本発明の繊維強化樹脂組成物は、前記(A)化学修飾CNF及び(B)熱可塑性樹脂に加え、例
えば、相溶化剤界面活性剤でんぷん類、アルギン酸等の多糖類;ゼラチンニカワカゼイン等の天然たんぱく質;タンニンゼオライトセラミックス金属粉末等の無機
化合物;着色剤可塑剤香料顔料流動調整剤レベリング剤導電剤帯電防止剤紫外線吸収剤紫外線分散剤消臭剤等の添加剤を配合してもよい。任意の添加剤の含有割合としては、本発明の効果が損なわれない範囲で適宜含有されてもよい。

0208

本発明の繊維強化樹脂組成物は、(A)化学修飾CNFを含むので、(A)化学修飾CNF同士が、水素結合によって凝集することを抑制できる。よって、(A)化学修飾CNFと熱可塑性樹脂(マトリックス材料)との混合工程において、(A)化学修飾CNF同士の凝集が抑制され、(A)
化学修飾CNFが熱可塑性樹脂中で均一に分散され、力学的特性、耐熱性、表面平滑性及び
外観に優れた(A)化学修飾CNFを含む繊維強化樹脂組成物を得ることができる。

0209

本発明の(A)化学修飾CNFを含む繊維強化樹脂組成物は、力学的特性において、曲げ試験等の静的特性、及び衝撃試験等の動的特性バランス良く向上できる。

0210

(1-5)化学修飾CNFの結晶化度の好ましい態様
繊維強化樹脂組成物に含まれる化学修飾CNFは(A2)アセチル化セルロースナノファイバ
ー(アセチル化CNF)であることが好ましい。

0211

アセチル化CNFは、結晶化度が42.7%程度以上であり、糖鎖の水酸基がアセチル基で置換されており、その置換度が0.29〜2.52程度であり、溶解度パラメータ(SPcnf)が9.9〜15程度であることが好ましい。

0212

ポリプロピレンや無水マレイン酸変性ポリプロピレンのような極性の低いマトリックス及びポリアミドやポリアセタールのような極性マトリックスに対しては、アセチル化CNF
は、結晶化度42.7%程度以上であり、置換度(DS)が0.29〜2.52程度であり、溶解度パラ
ータ(SPcnf)が9.9〜15.0程度であることが好ましい。

0213

中でも極性ポリマーであるポリアミドやポリアセタールに対しては、アセチル化CNFは
、結晶化度55.6%程度以上であり、置換度(DS)が0.29〜1.84程度であり、溶解度パラメー
タ(SPcnf)が11.5〜15.0程度であることが好ましい。

0214

また、前記アセチル化CNFは、200℃以上の高融点樹脂との溶融混練、及び繰り返しの溶融混練に耐えることができる。

0215

繊維強化樹脂組成物では、(B)熱可塑性樹脂として極性樹脂(ポリアミド樹脂、ポリア
セタール樹脂)を用いる場合は、結晶化度65%程度以上であり、置換度(DS)が0.4〜1.2程
度であり、溶解度パラメータ(SPcnf)が12〜15程度である化学修飾CNFを用いることが好ましい。その化学修飾CNFを調製することができる原料パルプとしてNBKPを使用することが
好ましい。

0216

繊維強化樹脂組成物では、(B)熱可塑性樹脂として非極性樹脂(ポリプロピレン、PP)を
用いる場合は、結晶化
度が40%程度以上であり、置換度(DS)が1.2程度以上であり、溶解度パラメータ(SPcnf)が8〜12程度であるである化学修飾CNFを用いることが好ましい。その化学修飾CNFを調製することができる原料パルプとしてNBKPを使用することが好ましい。

0217

(2)繊維強化樹脂組成物の製造方法
繊維強化樹脂組成物は、(A)化学修飾CNFと(B)熱可塑性樹脂(マトリックス材料)とを混
合することにより作製することができる。更に、その繊維強化樹脂組成物を成形することにより成形体を作製することができる。

0218

本発明の繊維強化樹脂組成物は、化学修飾CNFと樹脂とを混練して製造できるが、混練
機等を用いて、化学修飾パルプ(化学修飾CNFになる物)と(B)熱可塑性樹脂とを混練し、それらを複合化することにより製造することもできる。その混練中のせん断応力により化学修飾パルプのフィブリル化が進行し、(A)化学修飾CNFと(B)熱可塑性樹脂との均一な混合
組成物を得ることができる。

0219

繊維強化樹脂組成物中の(A)化学修飾CNF及び(B)熱可塑性樹脂の含有量は前記の通りで
ある。

0220

(A)化学修飾CNF又は化学修飾パルプと(B)熱可塑性樹脂とを混合する場合、両成分を室
温下で加熱せずに混合してからしてから加熱しても、加熱しながら混合しても良い。加熱する場合、混合する温度は、使用する(B)熱可塑性樹脂に合わせて調整することができる

加熱設定温度は、熱可塑性樹脂供給業者推奨する、最低加工温度(PA6は225〜240℃、POMは170℃〜190℃、PP及びMAPPは160〜180℃)〜この推奨加工温度より20℃高い温度の範囲が好ましい。混合温度をこの温度範囲に設定することにより、(A)化学修飾CNF又は化学修飾パルプと(B)熱可塑性樹脂とを均一に混合することができる。

0221

混合方法として、ベンチロールバンバリーミキサーニーダープラネタリーミキサー等の混練機により混練する方法、攪拌羽により混合する方法、公転自転方式の攪拌機により混合する方法等により、混合することが好ましい。

0222

繊維強化樹脂組成物の製造方法では、CNFを構成する糖鎖の水酸基に、例えばアセチル
基等の低級アルカノイル基を導入する(化学修飾する)ことにより、セルロースの水素結合が抑制される。これにより、化学修飾(アセチル化等)セルロースと樹脂の溶融混合工程において、繊維径が数十から数百μmの化学修飾(アセチル化等)パルプが、繊維径が数十nm
〜数百nmの化学修飾CNFに解繊することができる。そのアセチル化等の化学修飾処理は、
低コストであり、処理の簡便性に優れていることから実用化が容易である。つまり、その化学修飾処理により、樹脂中での化学修飾セルロース繊維の分散性が促進され、解繊(ナ
ファイバー化)も促進される。

0223

本発明では、セルロース分子に存在する水酸基のうちの幾つを化学修飾するか(アセチ
ル基等で置き換えるか)に依って各樹脂に対して最適なSP値を有する化学修飾CNF(アセチ
ル化CNF等)を使用して繊維強化樹脂組成物を得ることができる。繊維強化樹脂組成物では、セルロースの結晶化度を42%程度以上に保ち、適切なSP値とすることにより、セルロー
スの樹脂中での分散性が高く、セルロースの樹脂に対する補強効果が向上し、優れた力学的特性を持つCNF複合材料を得ることができる。

0224

製造方法では、混練処理混合処理を「複合化」ともいう。

0225

本発明の繊維強化樹脂組成物の製造方法は、前記繊維強化樹脂組成物が(A)化学修飾CNF及び(B)熱可塑性樹脂を含有し、下記の工程:
(1)下記の条件:
(a)(B)熱可塑性樹脂の溶解パラメータ(SPpol)に対する(A)化学修飾CNFの溶解パラメータ(SPcnf)の比率R (SPcnf/SPpol)が0.87〜1.88の範囲である、及び(b)(A)化学修飾CNFの結
晶化度が42.7%以上である
を満たす(A)化学修飾CNF及び(B)熱可塑性樹脂を選定する工程、
(2)前記工程(1)で選定された(A)化学修飾CNFと(B)熱可塑性樹脂とを配合する工程、及び
(3)前記工程(2)で配合された(A)化学修飾CNFと(B)熱可塑性樹脂とを混練し、樹脂組成物
を得る工程
を含むことを特徴とする。

0226

前記(a)の比率R (SPcnf/SPpol)は、1.03〜1.88程度の範囲が好ましく、1.03〜1.82程
度の範囲であることがより好ましい。

0227

本製造工程においては、本発明の繊維強化樹脂組成物のために調製及び作製したCNF、
並びに市販されている未変性CNFを直接化学変性して使用することが可能となる。つまり
様々な状態のCNFを化学修飾し熱可塑性樹脂との複合化を可能とするものである。

0228

また比率R (SPcnf/SPpol)を考慮することにより高性能なCNF強化熱可塑性樹脂組成物
の作製が可能となる。

0229

本発明の繊維強化樹脂組成物の製造方法は、前記繊維強化樹脂組成物が(A)化学修飾CNF及び(B)熱可塑性樹脂を含有し、下記の工程:
(1)下記の条件:
(a)(B)熱可塑性樹脂の溶解パラメータ(SPpol)に対する(A)化学修飾CNFの溶解パラメータ(SPcnf)の比率R (SPcnf/SPpol)が0.87〜1.88の範囲である、及び(b)化学修飾CNFの結晶化度が42.7%以上である
を満たす解繊処理後の(A)化学修飾CNFとなる(A1)化学修飾パルプ及び(B)熱可塑性樹脂を
選定する工程、
(2)前記工程(1)で選定された(A1)化学修飾パルプと(B)熱可塑性樹脂とを配合する工程、
及び
(3)前記工程(2)で配合された(A1)化学修飾パルプと(B)熱可塑性樹脂とを混練し、同時に(A1)化学修飾パルプを解繊し、(A)化学修飾CNF及び(B)熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を得る工程
を含むことを特徴とする。

0230

前記(a)の比率R (SPcnf/SPpol)は、1.03〜1.88程度の範囲が好ましく、1.03〜1.82程
度の範囲であることがより好ましい。

0231

本発明の繊維強化樹脂組成物の製造方法は、前記繊維強化樹脂組成物が(A)化学修飾CNF及び(B)熱可塑性樹脂を含有し、下記の工程:
(1)(A1)化学修飾パルプ及び(B)熱可塑性樹脂を選定する工程、
(2)前記工程(1)で選定された(A1)化学修飾パルプと(B)熱可塑性樹脂とを配合する工程、
及び
(3)前記工程(2)で配合された(A1)化学修飾パルプと(B)熱可塑性樹脂とを混練し、同時に(A1)化学修飾パルプを解繊し、(A)化学修飾CNF及び(B)熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を得る工程
を含み、
前記(A)化学修飾CNFと(B)熱可塑性樹脂とが、下記の条件:(a)(B)熱可塑性樹脂の溶解パ
ラメータ(SPpol)に対する(A)化学修飾CNFの溶解パラメータ(SPcnf)の比率R (SPcnf/SPpol)が0.87〜1.88の範囲である、及び(b)化学修飾CNFの結晶化度が42.7%以上である
を満たすことを特徴とする。

0232

前記(a)の比率R (SPcnf/SPpol)は、1.03〜1.88程度の範囲が好ましく、1.03〜1.82程
度の範囲であることがより好ましい。

0233

一般にCNFの製造は、高圧ホモジナイザー等により機械的にパルプ等を解繊していく。
しかし、パルプの低濃度のスラリーを使用すること、設備が高価で大型であること等から、これにより製造されたCNFは高価である。

0234

本製造工程においては、未解繊のパルプを化学修飾し、樹脂との複合化の際の加熱溶融混合機のせん断応力により、樹脂と複合化しながら解繊を行うため、製造費用低コスト化が図れ、更にダメージの少ないCNFが分散した高性能な繊維強化樹脂組成物を得ること
が可能となる。

0235

また比率R(SPcnf/SPpol)を考慮することにより高性能なCNF強化熱可塑性樹脂組成物の作製が可能となる。

0236

本発明の繊維強化樹脂組成物の製造方法は、前記繊維強化樹脂組成物が(A2)アセチル化CNF及び(B)熱可塑性樹脂を含有し、下記の工程:
(1)(A3)アセチル化セルロースを含む(A4)繊維集合体と(B)熱可塑性樹脂とを混練し、同時に(A3)アセチル化セルロースを解繊し、(A2)アセチル化CNF及び(B)熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を得る工程を含み、
前記(A2)アセチル化CNFの結晶化度が42.7%以上であり、糖鎖の水酸基がアセチル基で置換されており、その置換度が0.29〜2.52であり、溶解度パラメータ(SPcnf)が9.9〜15である、ことを特徴とする。

0237

一般にCNFの製造は、高圧ホモジナイザー等により機械的にパルプ等を解繊していく。
しかし、パルプの低濃度のスラリーを使用すること,設備が高価で大型であること等から、これにより製造されたCNFは高価である。

0238

本製造工程においては、未解繊のパルプを化学修飾し、樹脂との複合化の際の加熱溶融混合機のせん断応力により、樹脂と複合化しながら解繊を行うため、製造費用の低コスト化が図れ、更にダメージの少ないCNFが分散した高性能な繊維強化樹脂組成物を得ること
が可能となる。

0239

またアセチル基による置換度及び溶解度パラメータを制御することにより、非極性から極性マトリックスまでの対応が可能となる。

0240

(3)繊維強化樹脂組成物を用いた成形材料及び成形体(成型材料及び成型体
本発明の繊維強化樹脂組成物を用いて、成形材料及び成形体(成型材料及び成型体)を製造することができる。成形体の形状としては、フィルム状、シート状、板状、ペレット状、粉末状、立体構造など各種形状等の各種形状の成形体が挙げられる。成形方法として、金型成形射出成形押出成形中空成形発泡成形等を用いることができる。

0241

成形体(成型体)は、植物繊維を含むマトリックス成形物(成形物)が使用される繊維強化プラスチック分野に加え、熱可塑性及び機械強度(引張り強度等)が要求される分野にも使用できる。

0242

自動車電車船舶飛行機等の輸送機器内装材外装材構造材等;パソコンテレビ電話時計等の電化製品等の筺体、構造材、内部部品等;携帯電話等の移動通信機器等の筺体、構造材、内部部品等;携帯音楽再生機器映像再生機器印刷機器複写機器、スポーツ用品等の筺体、構造材、内部部品等;建築材文具等の事務機器等、容器コンテナー等として有効に使用することができる。

0243

化学修飾CNFと樹脂との混合工程において、化学修飾CNF同士の凝集が起こらず、化学修飾CNFが樹脂中で均一に分散されるので、力学的特性、耐熱性、表面平滑性、外観等に優
れた化学修飾CNFを含む樹脂組成物及び成形体を得ることができる。更に、樹脂組成物で
は、力学的特性において、曲げ試験等の静的特性、及び衝撃試験等の動的特性をバランス
良く向上できる。また、樹脂組成物では、耐熱性において、荷重たわみ温度では数十℃の向上を達成できる。また、樹脂組成物から得られる最終成形品では、化学修飾CNFの凝集
塊が発生せず、表面平滑性及び外観に優れる。

0244

以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。本発明はこれら実施例に限定されるものではない。

0245

実施例において、パルプ、化学修飾パルプ、化学修飾CNF、熱可塑性樹脂等の成分含量
は質量%を示す。

0246

I.試験方法
下記に示す実施例及び比較例等で使用した試験方法は以下の通りである。

0247

(1)リグニンの定量方法(クラソン法)
ガラスファイバーろ紙(GA55)を110℃オーブン恒量になるまで乾燥させ、デシケータ
内で放冷後、計量した。110℃で絶乾させた試料(約0.2g)を精し、50mL容チューブに入
れた。72%濃硫酸3mL加え、内容物が均一になるようにガラス棒で適宜押しつぶしながら、30℃の温水にチューブを入れて1時間保温した。次いで、チューブ内容物蒸留水84gとを三角フラスコに注ぎ込み混合した後、オートクレーブ中で、120℃で1時間反応させた。放冷後、内容物をガラスファイバーろ紙で濾過不溶物をろ取し、200mLの蒸留水で洗浄
た。110℃オーブンで恒量になるまで乾燥させ計量した。

0248

(2)セルロース及びへミセルロースの定量方法(糖分析)
ガラスファイバーろ紙(GA55)を110℃オーブンで恒量になるまで乾燥させ、デシケータ
内で放冷後、計量した。110℃で絶乾させた試料(約0.2g)を精秤し、50mL容チューブに入
れた。72%濃硫酸3mL加え、内容物が均一になるようにガラス棒で適宜押しつぶしながら、30℃の温水にチューブを入れて1時間保温した。次いで、チューブ内容物と蒸留水84gと
を加え定量的に三角フラスコに注ぎ込み混合した後、混合物1.0mLを耐圧試験管に入れ、
内部標準として0.2%イノシトール溶液100μL加えた。メスピペットを用いて72%濃硫酸(7.5μL)を加え、オートクレーブ中で120℃で1時間反応させた。放冷後、反応液100μLを
超純水希釈し、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製イオンクロマトグラフ分析に供し、試料に含まれていた糖成分を分析した。

0249

(3)セルロース、ヘミセルロース水酸基の化学修飾度(DS)の測定方法
(3-1)逆滴定方法
セルロース、ヘミセルロース及びリグノセルロースの水酸基がアシル化(エステル化)された試料のDS測定方法を、アセチル化された試料を例にとり以下に説明する。他のアシル化の場合も同様である。

0250

準備、秤量及び加水分解
試料を乾燥し,0.5g(A)を正確に秤量した。そこにエタノール75mL、0.5NのNaOH 50mL(0.025mol)(B)を加え、3〜4時間撹拌した。これをろ過、水洗、乾燥し、ろ紙上の試料のFTIR測定を行い、エステル結合カルボニルに基づく吸収ピーク消失していること、つま
りエステル結合が加水分解されていることを確認した。ろ液を下記の逆滴定に用いた。

0251

逆滴定
ろ液には加水分解の結果生じた酢酸ナトリウム塩及び過剰に加えられたNaOHが存在する。このNaOHの中和滴定を1NのHCl及びフェノールフタレインを用いて行った。

0252

・0.025mol(B)‐(中和に使用したHClのモル数)=セルロースなどの水酸基にエステル
合していたアセチル基のモル数(C)
・(セルロース繰り返しユニット分子量162×セルロース繰り返しユニットのモル数(未
知(D)))+(アセチル基の分子量43×(C))=秤量した試料0.5g(A) によりセルロースの繰り返しユニットのモル数(D)が算出される。

0253

DSは、
・DS=(C)/(D)
により算出される。

0254

(3-2)赤外線(IR)吸収スペクトルによるDSの測定方法
エステル化セルロース/リグノセルロースのDSは、赤外線(IR)吸収スペクトルを測定することにより求めることもできる。セルロース/リグノセルロースがエステル化されると1733cm-1付近にエステルカルボニル(C=O)に由来する強い吸収帯が現れるので、この吸収
帯の強度(面積)を横軸に、上記のが逆滴定法で求めたDSの値を横軸にプロットした検量線をまず作成する。そして、試料のDS値は、吸収帯の強度を測定し、この値と検量線から、試料のDSを求める。このようにしてDSを迅速かつ簡便に測定することができる。

0255

(4)セルロース等の結晶化度の測定
機種Rigaku ultraX18HF((株)リガク製)を使用し、木質科学実験マニュアル4.微細
造(1)X線による構造解析(P198-202)に記載された方法に準じて、試料(リファイナー処理済みパルプ及びこの化学修飾物)の広角X線回折を測定し、試料の結晶化度を求める。X線
CuKα線、30kV/200mAの出力にて、2θ=5〜40°を測定した。

0256

II.原料(パルプ)の調製
(1)リファイナー処理済み針葉樹由来漂白クラフトパルプ(NBKP)の調製
針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP、入手先:王子ホールディングス(株))のスラリー(パルプスラリー濃度3質量%の水懸濁液)をシングルディスクリファイナー(相川鉄工(株)製)に
通液させ、カナディアンスタンダードフリーネス(CSF)値が50mLになるまで、繰返しリフ
ァイナー処理により解繊処理を行った。

0257

走査型電子顕微鏡(SEM)で繊維を観察したところ、直径がサブミクロンオーダーの繊維
も見られるが、直径数10から数100μmの粗大な繊維径を有している繊維が散見された。

0258

(2)リファイナー処理済み針葉樹由来未晒針葉樹林パルプ(NUKP)の調製
針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP、入手先:日本製紙(株))のスラリー(パルプスラリー濃度3質量%の水懸濁液)をシングルディスクリファイナー(相川鉄工(株)製)に通液させ、
カナディアンスタンダードフリーネス(CSF)値が50mLになるまで、繰返しリファイナー処
理により解繊を行った。

0259

走査型電子顕微鏡(SEM)で繊維を観察したところ、直径がサブミクロンオーダーの繊維
も見られるが、直径数十から数百μmの粗大な繊維径を有している繊維が多数観察された

0260

(3)リファイナー処理済みリグノセルロースを含むパルプ(リグノパルプ、LP):GP-150-1の調製
「針葉樹グラインダー処理パルプ(GP、入手先:日本製紙(株))を、パルプ1gに対して薬
液20g(0.8M-NaOH、0.2M-Na2S)で、オートクレーブ中、150℃、1時間反応させてパルプ
スラリーを得た。

0261

得られたスラリー(パルプスラリー濃度3質量%の水懸濁液)をシングルディスクリファイナー(相川鉄工(株)製)に通液させ、カナディアンスタンダードフリーネス(CSF)値が50mL
になるまで、繰返しリファイナー処理により解繊を行った。

0262

走査型電子顕微鏡(SEM)で繊維を観察したところ、直径がサブミクロンオーダーの繊維
も見られるが、直径数10から100μm程度の粗大な繊維径の繊維が多数観察された。

0263

(4)リファイナー処理済みリグノセルロースを含むパルプ(リグノパルプ(LP)GP(150−3)の調製
針葉樹グラインダー処理パルプ(GP、入手先:日本製紙(株))を、パルプ1gに対して薬液20g(0.8M-NaOH、0.2M-Na2S)で、オートクレーブ中、150℃、3時間反応させてパルプスラリーを得た。

0264

得られたスラリー(パルプスラリー濃度3質量%の水懸濁液)をシングルディスクリファイナー(相川鉄工(株)製)に通液させ、カナディアンスタンダードフリーネス(CSF)値が50mL
になるまで、繰返しリファイナー処理により解繊を行った。

0265

走査型電子顕微鏡(SEM)で繊維を観察したところ、直径がサブミクロンオーダーの繊維
も見られるが、直径数10から100μm程度の粗大な繊維径の繊維が多数観察された。

0266

III.パルプ/リグノパルプのアセチル化、それを用いた各種樹脂との複合化
(1)セルロースのアセチル化及び樹脂との複合化
(1-1)材料の組成及びアセチル化処理
表1に示す組成を有する針葉樹由来漂白クラフトパルプ(NBKP)を使用した(具体的な調製方法は上記の通り)。主成分がセルロース(84.3質量%)であり、残りがヘミセルロース、ペクチン多糖及び極僅かのリグニンより構成されている。

0267

また、リグノセルロースを含むパルプ(リグノパルプ、LP)を使用した。その組成を表2
に示す。用いたのは針葉樹由来未漂白クラフトパルプ(NUKP)、砕木パルプ(GP)を温度150
℃で1時間若しくは3時間蒸解しリファイナー処理することにより得たGP150-1-a、GP150-3及びGP150-3-aである。GP150-1-aは上記の原料(パルプ)の調製の項で記載したGP150-1と
同様の操作で調製したものである。

0268

GP150-3及びGP150-3-aは上記の原料(パルプ)の調製の項で記載したGP150-3と同様の処
理条件にて蒸解処理とリファイナー処理を行っているが、バッチによる成分の変化が表れている。

0269

0270

0271

表3及び表4にアセチル化パルプ及びアセチル化リグノパルプの合成手順を示す。

0272

無水酢酸、炭酸カリウムの添加量反応温度及び反応時間を変化させることにより異なるDS(セルロース繰り返し単位に3個、或いはβ-O-4型リグニンに2個含まれる水酸基の置
換度合)=0.29〜2.64のアセチル化NBKP及びアセチル化リグノパルプを得た。

0273

DSは、アセチル化NBKP及びアセチル化リグノパルプにアルカリを添加し、エステル結合を加水分解することにより発生した酢酸量を滴定することにより算出した。

0274

0275

0276

(1-2)アセチル化NBKP/樹脂及びリグノパルプ/樹脂の複合化
マトリックス樹脂には,市販のポリアミド6(PA6、ユニチカ株式会社製のNYRON RESIN))、ポリアセタール(POM、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製(ユピタール))
、ポリプロピレン(PP、日本ポリプロ株式会社製(ノバテックPP))、無水マレイン酸で変性したポリプロピレン(MAPP、東洋紡株式会社社製(トーヨータックH1000))、ポリ乳酸(PLA
、三井化学株式会社製(レイシア))、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体(ABS、日本エイアンドエル株式会社製(クララスチック))及びポリスチレン(PS、PSジャ
ン株式会社製(PSJポリスチレン))及びポリエチレン(PE、旭化成ケミカルズ(株)社製(サンテック))を用いた。

0277

表5に各樹脂の特性を示す(MI:メルトインデックス)。

0278

アセチル化NBKPはPA6、POM、PP、MAPP、PLA、ABS、PS及びPEと複合化した。アセチル化リグノパルプはPA6、POM、PP及びMAPPと複合化した。アセチル化NBKP又はアセチル化リグノパルプと樹脂とを二軸押出機投入し溶融混練した。

0279

溶融混練温度は、PA6では215℃、POM、PP、MAPP及びPLAでは170℃、ABS及びPSは195℃
、PEは140℃に調整した。

0280

0281

(2)評価
(2-1)アセチル化NBKPの熱重量分析測定
得られた幾つかのアセチル化NBKPの熱分解特性を熱重量測定により評価した。測定は、窒素雰囲気下、温度範囲は110〜600℃、昇温速度10℃/minにて行った。

0282

(2-2)アセチル化NBKPの結晶化度測定
得られた幾つかのアセチル化NBKP及びアセチル化リグノパルプの結晶化度を広角X線回
折測定により算出した。

0283

X線はCuKα線、30kV/200mAの出力にて、2θ=5〜40°を測定した。

0284

(2-3)アセチル化NBKP/樹脂複合材料の曲げ試験及びIzod衝撃試験
得られたアセチル化NBKP/樹脂複合材料及びアセチル化リグノパルプ/樹脂複合材料の3点曲げ試験を行った。試験条件は、曲げ速度10mm/min、支点間距離64mmにて行った。

0285

得られたアセチル化NBKP/樹脂複合材料及びアセチル化リグノパルプ/樹脂複合材料のIzod衝撃試験を行った。試験片中央部に深さ2mmのVノッチを挿入し、容量2.75Jのハンマ
ーにより打撃した。

0286

(2-4)アセチル化NBKP/樹脂複合材料内のアセチル化セルロースの分散状態の観察
得られた幾つかのアセチル化NBKP/樹脂複合材料に分散しているアセチル化セルロースの分散状態観察を行った。観察は、X線コンピュティッドトモグラフィ(X-CT:分解能1.3μm、一辺1mmの立方体で表示)及びマトリックス樹脂を溶媒抽出し得られた繊維の電子顕微
鏡(SEM)観察により行った。

0287

(3)結果及び考察
(3-1)アセチル化NBKPの耐熱性
表6に得られた幾つかのアセチル化NBKPの熱重量測定により得られた1%質量減少温度を
示す。

0288

複合材料化においては、例えばPA6では215℃、POM及びPPでは170℃の高設定温度下での溶融混練を行ったが、スクリュー混練ゾーンにおいては、せん断発熱により設定温度よりも数十℃以上高温となっていると考えられる。そのような条件下にセルロースが曝されることから、アセチル化パルプの熱重量減少特性は重要である。

0289

特に微量の分解物異物として樹脂中に存在すると着色し、大きく特性が損なわれると考えられることから、微量重量減少領域観測が重要となる。そこでここでは1%質量減少温度を計測した。

0290

DSが大きくなるほどアセチル化NBKPの耐熱性が向上していることがわかり、溶融混練における耐熱性が付与されている。

0291

0292

(3-2)アセチル化NBKP及びアセチル化リグノパルプの結晶化度
セルロースは結晶性材料であり、結晶化度により大きく樹脂への補強性が異なると考えられる。

0293

表6に幾つかのDSのアセチル化NBKPの結晶化度を示す。

0294

表7に幾つかのDSのアセチル化リグノパルプの結晶化度を示す。

0295

0296

表6では,出発原料である未処理NBKP(DS=0)では、結晶化度が77.4%であった。これに対してアセチル化NBKPでは、DS=1.17では69.5%まで緩やかに低下したが、更にDSを高めたDS=1.84においては55.6%まで急激に低下した。

0297

このようにDSを高めるほど結晶化度が低下し、DS=1.17〜1.84の領域以上ではそれが特
に顕著になることが確認された。

0298

表7では,NUKPは結晶化度78.3%であり、アセチル化のDS値の増加に伴い結晶化度が低下し、DS0.85では74.4%となった。

0299

GP150-1-aは結晶化度が78.7%であり、アセチル化のDS値の増加に伴い結晶化度が低下し、DS0.97では73.1%となった。GP150-3-aは結晶化度が83.1%であり、アセチル化のDS値の
増加に伴い結晶化度が低下し、DS0.95では75.4%となった。

0300

リグノパルプについてもDS1.0程度までは、NBKPとほぼ同様の結晶化度及びアセチル化
のDS増加に伴う結晶化度の低下が見られた。

0301

(3-3)アセチル化NBKP/樹脂複合材料の曲げ試験及びIzod衝撃試験
(3-3-1)アセチル化NBKP及びアセチル化リグノパルプのDSが
力学的特性に及ぼす影響
各マトリックス樹脂複合材料のDSと力学的特性の関係をまとめた。何れもセルロース成分とへミセルロース成分の合計添加量を10質量%とした。

0302

以下の表中では、便宜上、未処理繊維、アセチル化繊維とも、繊維量を10質量%と記載
する。

0303

PA6マトリックス
PA6樹脂(ポリアミド)マトリックス複合材料の力学的特性を表8及び表9に示す。

0304

表8はNBKPを添加した材料の特性である。

0305

表9はリグノパルプを添加した材料の特性である。

0306

NBKP強化PA6材料(表8)においては,曲げ弾性率及び曲げ強度において大きな向上が見られた。DS=0.64のアセチル化NBKP添加複合材料(No.PA6-225)は、曲げ弾性率が5430MPaであり、ニートPA6(No.PA6)の2.5倍、未処理NBKP添加PA6(No.PA6-15)の1.6倍の値を示した。

0307

DS=0.46のアセチル化NBKP添加複合材料(No.PA6-216)は、曲げ強度が159MPaであり、ニ
ートPA6(No.PA6)の1.8倍、未処理NBKP添加PA6(No.PA6-15)の1.4倍の値を示した。

0308

Izod衝撃強度については、DS=0.46(No.216)〜DS=0.88(No.PA6-205)のDS領域において,ニートPA6(No.PA6)と同等の耐衝撃性が得られた。

0309

このようにPA6/NBKP複合材料では、DS=0.46〜0.88の低DS領域において、曲げ弾性率、
曲げ強度及び耐衝撃性に優れたアセチル化セルロース複合材料が得られることがわかった。

0310

0311

リグノパルプ強化PA6材料(表9)においても、曲げ弾性率及び曲げ強度において大きな向上が見られた。NUKP強化材料では、DS0.41のアセチル化NUKP添加複合材料(No.PA6-263)において、曲げ弾性率が5110MPaであり、ニートPA6(No.PA6)の2.3倍、未処理NUKP添加PA6(No.PA6-265)の1.3倍の値を示した。

0312

DS=0.41のアセチル化NUKP添加複合材料(No.PA6-263)は、曲げ強度が154MPaであり、ニ
ートPA6(No.PA6)の1.7倍、未処理NUKP添加PA6(No.PA6-265)の1.2倍の値を示した。Izod衝撃強度については、DS=0.41(No.263)において、ニートPA6(No.PA6)と同等以上の耐衝撃性が得られた。

0313

GP(150-1)強化材料では、DS=0.42のアセチル化GP(150-1)添加複合材料(No.PA6-270)に
おいて、曲げ弾性率が5000MPaであり、ニートPA6(No.PA6)の2.3倍、未処理GP(150-1)添加PA6(No.PA6-269)の1.3倍の値を示した。

0314

DS=0.42のアセチル化GP(150-1)添加複合材料(No.PA6-270)は、曲げ強度が150MPaであり、ニートPA6(No.PA6)の1.7倍、未処理GP(150-1)添加PA6(No.PA6-269)の1.1〜1.2倍の値を示した。Izod衝撃強度については、DS=0.56(No.240)において、ニートPA6(No.PA6)と同等の耐衝撃性が得られた。

0315

GP(150-3)強化材料では、DS=0.57のアセチル化GP(150-3)添加複合材料(No.PA6-237)に
おいて、曲げ弾性率が5380MPaであり、ニートPA6(No.PA6)の2.4倍、未処理GP(150-3)添加PA6(No.PA6-266)の1.4倍の値を示した。

0316

DS=0.57のアセチル化GP(150-3)添加複合材料(No.PA6-237)は、曲げ強度が161MPaであり、ニートPA6(No.PA6)の1.8倍、未処理GP(150-3)添加PA6(No.PA6-266)の1.3倍の値を示し
た。Izod衝撃強度については、DS=0.62(No.268)において,ニートPA6(No.PA6)と同等以上の耐衝撃性が得られた。

0317

0318

POMマトリックス
ポリアセタール樹脂(POM)マトリックス複合材料の力学的特性を表10に示す。

0319

曲げ弾性率及び曲げ強度において大きな向上が見られた。DS=1.17のアセチル化NBKP添
加複合材料(No.POM-134)は、曲げ弾性率が5590MPaであり、ニートPOM(No.POM)の2.5倍、
未処理NBKP添加POM(No.POM-148)の1.8倍の値を示した。

0320

同じくDS=1.17のアセチル化NBKP添加複合材料(No.POM-134)は,曲げ強度が129MPaであ
り、ニートPOM(No.POM)の1.7倍、未処理NBKP添加POM(No.POM-148)の1.4倍の値を示した。

0321

Izod衝撃強度については,ニートPOMに対して,概ね1kJ/m2程度の低下が見られたが,
未処理NBKP添加POM(No.POM-148)よりも低下率は抑えられた。

0322

DS=0.75のアセチル化リグノパルプ(GP150-3)添加複合材料(No.POM-138)では,曲げ弾性率が5100MPa、曲げ強度が128MPaであり、高い補強効果を示した。DS=1.17のアセチル化NBKPを添加したNo.POM134と比較すると弾性率が10%程度低くなった。

0323

このようにPOMマトリックス樹脂NBKP複合材料では、DS1.17程度の領域において曲げ弾
性率、曲げ強度及び耐衝撃性に優れたアセチル化セルロース複合材料が得られること,またリグノパルプにおいても高い補強効果が得られることがわかった。

0324

0325

PPマトリックス
ポリプロピレン(PP)マトリックス複合材料の力学的特性を表11に示す。

0326

曲げ弾性率及び曲げ強度において一定の向上が見られた。

0327

PPマトリックスでは、ニートPP(No.PP)と未処理NBKP添加材料(PP-116)を比較するとわ
かるように、セルロースによる補強度合が低い。しかしながら、より高いDSのアセチル化NBKPを補強材料とすることにより、曲げ弾性率及び曲げ強度を向上させることが可能であることがわかった。

0328

また耐衝撃性は、DS=0.46のアセチル化処理NBKP添加複合材料(No.PP-304)によりニート
PP(No.PP)の2倍となった。

0329

DS=0.6のアセチル化リグノパルプ[GP(150-3)]添加複合材料(No.PP-450)では、曲げ弾性率が2620MPa、曲げ強度が66MPaであり補強効果を示した。

0330

このように疎水性の高いPPをマトリックスとした場合は、DSを高くすることにより曲げ特性が向上し、DS=0.46程度の低DSでは耐衝撃性が向上すること、またリグノパルプにお
いても補強効果が得られることがわかった。

0331

0332

MAPPマトリックス
無水マレイン酸変性PP(MAPP)マトリックス複合材料の力学的特性を表12に示す。

0333

曲げ弾性率及び曲げ強度において大きな向上が見られた。DS=0.88のアセチル化NBKP添
加複合材料(No.PP-382)は、曲げ弾性率が3070MPaであり、ニートMAPP(No.MAPP)の1.8倍、未処理NBKP添加MAPP(No.PP-309)の1.3倍の値を示した。

0334

同じくDS=0.88のアセチル化NBKP添加複合材料(No.PP-382)は,曲げ強度が76.3MPaであ
り、ニートMAPP(No.MAPP)の1.5倍、未処理NBKP添加MAPP(No.PP-309)の1.3倍の値を示した。

0335

Izod衝撃強度については,ニートMAPPに対して同等以上の値であった。

0336

DS=0.56のアセチル化リグノパルプ[GP(150-3-a)]添加複合材料(No.PP-451)では,曲げ
弾性率が2730MPa、曲げ強度が70.2MPaであり補強効果を示した。

0337

0338

PLAマトリックス
ポリ乳酸(PLA)マトリックス複合材料の力学的特性を表13に示す。

0339

曲げ弾性率及び曲げ強度において大きな向上が見られた。DS=0.88のアセチル化NBKP添
加複合材料(No.PLA-2)は、曲げ弾性率が6400MPaであり、ニートPLA(No.PLA-5)の1.9倍、
未処理NBKP添加PLA(No.PLA-6)の1.5倍の値を示した。

0340

同じくDS=0.88のアセチル化NBKP添加複合材料(No.PLA-2)は,曲げ強度が119MPaであり
、ニートPLA(No.PLA-5)の1.1倍、未処理NBKP添加PLA(No.PLA-6)の1.2〜1.3倍の値を示し
た。

0341

Izod衝撃強度については、ニートPLAに対して同等以上の値であった。

0342

0343

ABSマトリックス
アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)マトリックス複合材料の力学的
特性を表14に示す。

0344

曲げ弾性率及び曲げ強度において大きな向上が見られた。DS=0.87のアセチル化NBKP添
加複合材料(No.ABS-70)は、曲げ弾性率が3780MPaであり、ニートABS(No.ABS)の1.9倍、未処理NBKP添加ABS(No.ABS-63)の1.4倍の値を示した。

0345

同じくDS=0.87のアセチル化NBKP添加複合材料(No.ABS-70)は、曲げ強度が87.3MPaであ
り、ニートABS(No.ABS)の1.4倍、未処理NBKP添加ABS(No.ABS-63)の1.2倍の値を示した。

0346

0347

PSマトリックスポリスチレン(PS)マトリックス複合材料の力学的特性を表15に示す。

0348

曲げ弾性率において大きな向上が見られた。DS=0.86のアセチル化NBKP添加複合材料(No.PS-3)は、曲げ弾性率が4110MPaであり、ニートPS(No.PS)の1.3〜1.4倍、未処理NBKP添加PS(No.PS-1)の1.2倍の値を示した。

0349

0350

PEマトリックス
ポリエチレン(PE)マトリックス複合材料の力学的特性を表16に示す。

0351

曲げ弾性率及び曲げ強度において大きな向上が見られた。DS=0.86のアセチル化NBKP添
加複合材料(No.PE-184)は、曲げ弾性率が2390MPaであり、ニートPE(No.PE)の2.2倍、未処理NBKP添加PE(No.PE-182)の1.5倍の値を示した。

0352

同じくDS=0.86のアセチル化NBKP添加複合材料(No.PE-184)は,曲げ強度が42.4MPaであ
り、ニートPE(No.PE)の1.8倍、未処理NBKP添加PE(No.PE-182)の1.4倍の値を示した。

0353

0354

(3-3-2)アセチル化NBKPの添加量が複合材料の力学的特性に及ぼす影響
アセチル化NBKPの添加量を1〜10質量%に変化させ、その力学的特性を評価した。ここでは補強効果が特に高いPA6及びPOMマトリックスについて検討を行った。

0355

PA6マトリックス
PA6樹脂マトリックス複合材料の力学的特性を表17に示す。

0356

曲げ弾性率においては、未処理NBKPを1,3,5,10質量%添加した材料(No.PA6-242,-243,-244,-15)では、ニートPA6(No.PA6)と比較して各々120,310,410,1230MPa程度の向上であった。アセチル化NBKPを1,3,5,10質量%添加した材料(No.PA6-234,-235,-236
,-226)では、各々310,820,1410,3120MPaの大きな向上が見られた。

0357

曲げ強度においては、未処理NBKPを1,3,5,10質量%添加した材料(No.PA6-242,-243
,-244,-15)では、ニートPA6(No.PA6)と比較して各々4.6,8.3,9.8,25.8MPa程度の向
上であった。アセチル化NBKPを1,3,5,10質量%添加した材料(No.PA6-234,-235,-236
,-226)では、各々9.8,20.8,33.8,65.8MPaの大きな向上が見られた。

0358

0359

POMマトリックス
POM樹脂マトリックス複合材料の力学的特性を表18に示す。

0360

曲げ弾性率においては、未処理NBKPを1,3,5,10質量%添加した材料(No.POM-149,-150,-151,-148)では、ニートPOM(No.POM)と比較して各々80,310,450,930MPa程度の向
上であった。アセチル化NBKPを1,3,5,10質量%添加した材料(No.POM-128-1,-128-2,-128-3,-129)では、各々410,1060,1760,2880MPaの大きな向上が見られた。

0361

曲げ強度においては、未処理NBKPを1,3,5,10質量%添加した材料(No.POM-149,-150
,-151,-148)では、ニートPOM(No.POM)と比較して各々2.3,6.1,8.7,15.3MPa程度の向上であった。アセチル化NBKPを1,3,5,10質量%添加した材料(No.POM-128-1,-128-2,-128-3,-129)では、各々12.5,28.3,39.3,44.3MPaの大きな向上が見られた。

0362

耐衝撃性においても、アセチル化NBKP添加材料は,未処理NBKPよりも高い値を示した。

0363

0364

以上のPA6及びPOMの結果より、従来のセルロース系複合材料よりも、本アセチル化NBKP強化複合材料が優れた材料であり、極少量の添加量により効果的に補強することが可能であることが明らかとなった。

0365

(3-3-3)アセチル化NBKP/樹脂複合材料の混練回数が力学的特性に及ぼす影響
アセチル化セルロース材料のリサイクル特性の評価を行った。ここでは補強効果が特に高いPA6及びPOMマトリックスについて、繰り返し成形加工(混練回数)による物性変化を測定した。

0366

PA6マトリックス
PA6樹脂マトリックス複合材料の力学的特性を表19に示す。

0367

混練は215℃にて2回まで行った。

0368

曲げ弾性率は、1回目混練(No.PA6-220-1)で5120MPa、2回目混練(No.PA6-220-2)で4780MPaと低下した。低下率は6.60%であり,これは東レ(株)のガラス繊維30質量%強化PA6と同
等の低下率であった。

0369

曲げ強度は、1回目混練(No.PA6-220-1)で154MPa、2回目混練(No.PA6-220-2)で150MPaと低下した。低下率は2.60%であり,これは東レ(株)のガラス繊維30質量%強化PA6の低下率
約5%よりも小さくなった。

0370

Izod衝撃強度は、1回目混練(No.PA6-220-1)で3.41kJ/m2、2回目混練(No.PA6-220-2)で3.60kJ/m2と大きく変化しなかった。東レ(株)のガラス繊維30質量%強化PA6の低下率は約20
%である。しかし、新品原料衝撃特性が非常に良いため比較することはできない。

0371

0372

POMマトリックス
POM樹脂マトリックス複合材料の力学的特性を表20に示す。

0373

混練は170℃にて3回まで行った。

0374

曲げ弾性率は、1回目混練(No.POM129)で5170MPa、2回目混練(No.POM130)で5270MPa、3
回目混練(No.POM131)で5290MPaと向上した。向上率は1回目→2回目、1回目→3回目とも約2%であった。

0375

曲げ強度は、1回目混練(No.POM129)で122MPa、2回目混練(No.POM130)で117MPa、3回目
混練(No.POM131)で120MPaと一定であった。

0376

Izod衝撃強度は、1回目混練(POM129)で4.18kJ/m2、2回目混練(No.POM130)で4.70kJ/m2
、3回目混練(No.POM131)で4.95kJ/m2と向上した。3回目は、ニートPOM(No.POM)と同等の
衝撃強度まで向上した。

0377

0378

以上のPA6及びPOMの結果より、アセチル化NBKPのリサイクル性に関する知見が得られた。

0379

PA6マトリックスでは、混練温度が高く繰り返しの成形加工(溶融混練等)により、ア
セチル化NBKPは耐熱性が通常のNBKPよりも向上しているが劣化する。

0380

それに対してPOMマトリックスでは、混練温度が低いため、耐熱性が向上したアセチル
化NBKPはほとんど劣化せず、逆に繰り返し成形加工により解繊性が向上し、曲げ弾性率及び耐衝撃性が向上したと考えられる。

0381

汎用な補強繊維であるガラス繊維(GF)及び炭素繊維(CF)と樹脂の複合材料は、リサイクル加工時に繊維が破断したり、繊維の短繊維化が起こったりするため、一般的にカスケードリサイクル(低品位用途への利用)しかできない。

0382

それに対して本アセチル化セルロースファイバーは、POM等の成形温度領域以下である
ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ABS、熱可塑性エラストマー、その他低
融点樹脂材料においては、本アセチル化NBKPは繰り返しの成形加工に耐えるリサイクル性に優れた素材となると考えられる。

0383

(3-4)アセチル化セルロースの分散状態の観察
図1に原材料であるNBKPのSEM写真を示す。

0384

図2に原材料であるNBKPをアセチル化したアセチル化NBKP(DS=0.88)のSEM写真を示す。

0385

NBKPでは直径がサブミクロンオーダーの繊維も見られるが、直径数十から数百μmの粗
大な繊維径を有している繊維が多く存在する。

0386

アセチル化NBKPは、NBKPよりは解繊が進行しているが、数十μm以上の粗大な繊維が存
在している。

0387

PA6マトリックス
図3に未処理NBKP添加PA6(No.PA6-15)のX-CT像を示す。図4にその未処理NBKP添加PA6のPA6を抽出し得られたセルロースのSEM写真を示す。

0388

図5にアセチル化NBKP添加PA6(NO.PA6-216)のX-CT像を示す。図6にそのアセチル化NBKP
添加PA6のPA6を抽出し得られたセルロースのSEM写真を示す。

0389

X-CT像では,未処理NBKPよりもアセチル化セルロースの方がμm単位で存在する繊維の
輪郭不明瞭になり、分解能(1.3μm)と同等の白いモヤ状の分散が多く観察された。1.3
μm以下のセルロースは、X-CTでは確認することはできない。

0390

SEM写真では,未処理NBKP添加PA6(No.PA6-15)では,数十μmの太さの繊維が多く見られ、サブミクロンや数十nmオーダーのセルロースは少ない。

0391

それに対してアセチル化NBKP添加PA6(No.PA6-216)では、3μm程度のセルロースが散見
されるが、その多くは数十から数百nmのアセチル化CNFとして分散していた。

0392

POMマトリックス
POMは、セルロースと密度差が小さいためX-CT撮影において、POMマトリックスとセルロースのコントラスト差が小さく、セルロースの判別が困難である。

0393

そこでSEM観察のみ実施した。

0394

図7に未処理NBKP添加POM(No.POM-148)のPOMを抽出し得られたセルロースのSEM写真を示す。

0395

図8にアセチル化NBKP添加POM(No.POM-134)のPOMを抽出し得られたセルロースのSEM写真を示す。

0396

未処理NBKP添加POM(No.POM-148)では、数十μm以上の粗大な繊維塊が多数観察された。

0397

一方アセチル化NBKP添加POM(No.POM-134, DS=1.17)では、繊維状ではなくゲル状で樹脂が膨潤したような抽出物が得られた。その観察写真は、やはり樹脂状でありPOMが完全に
抽出されていなかった。

0398

これはアセチル化が進みセルロース表面に存在する多数のアセチル基がPOMと相互作用
することによりPOMが繊維上から抽出されにくくなったためであると考えられる。抽出物
の亀裂部分を拡大観察すると、前記アセチル化NBKP添加PA6(No.PA6-216)と同等以下の微
細な繊維が存在していた。

0399

図9に低DS(DS=0.46)アセチル化NBKP添加POM(No.POM-129)のPOMを抽出し得られたセルロースのSEM写真を示す。

0400

この場合は、ほぼ完全にPOMが抽出されており、アセチル化NBKPとPOMの相容性がそれほど高くないと判断することができる。

0401

図10に低DS(DS=0.40)アセチル化NBKP添加POM(No.POM-128)複合材料の透過型電子顕微鏡写真を示す。DS1.17のアセチル化セルロースほどはPOMと相容性は高くないと考えられる
が、低DS=0.40においても、セルロース繊維束内にPOMが含浸されている様子が観察され、その繊維径は数nmとなっている。

0402

PPマトリックス
図11に未処理NBKP添加PP(No.PP-116)のX-CT像を示す。

0403

図12にその未処理NBKP添加PPのPPを抽出し得られたセルロースのSEM写真を示す。

0404

図13に高DS(DS=1.84)アセチル化NBKP添加PP(No.PP-367)のX-CT像を示す。

0405

図14にそのアセチル化NBKP添加PPのPPを抽出し得られたセルロースのSEM写真を示す。

0406

X-CT像では、未処理NBKPよりもアセチル化セルロースの方がμm単位で存在する繊維の
輪郭が不明瞭になり、より微細なセルロースが分散していた。

0407

SEM写真については、未処理NBKP添加PP(No.PP-116)では、数十μmの粗大な繊維と数μm以上の解繊が進みつつある繊維が存在した。しかし解繊が進みつつある繊維は繊維長が著しく低下し、短繊維化していた。

0408

図15に低DS(DS=0.46)アセチル化NBKP添加PP(No.PP-304)のX-CT像を示す。図16にその低DSアセチル化NBKP添加PPのPPを抽出し得られたセルロースのSEM写真を示す。

0409

高DS(DS=1.84)アセチル化NBKP添加PP(No.PP-367)では、数百nmから1μm程度までの繊維が多くを占め、その繊維長は未処理NBKP添加PP(No.PP-116)や、図15及び図16に示す低DS(DS=0.46)アセチル化NBKP添加PP(No.PP-304)よりも著しく長く観察された。

0410

以上の結果よりアセチル化NBKPは、未処理NBKPと比較して、二軸押出機による溶融混練時のせん断により容易に解れ、樹脂中でナノ分散化していると言え、その分散サイズは部分的には分子複合材料の領域に達していると結論付けられる。

0411

また疎水性の高いPPとの複合化においては、よりアセチル化度(DS)を高くし、疎水性を上げることにより物性が向上することが分かり、相容性が高い方が溶融混練工程での解繊
性が向上し繊維破断が防げることが示唆された。

0412

(3-5)アセチル化セルロースと樹脂材料の相容化
表21〜表33にアセチル化セルロース添加樹脂複合材料の総括表を示す。

0413

アセチル化セルロースのDS、溶解度パラメータ(SP)結晶化度と各樹脂の曲げ特性のピーク領域を示している。また各樹脂のSPも記載した。

0414

表21〜表28では、アセチル化NBKPのDS(x)とSP(y)との関係式はy=-2.3x+15.7である。

0415

アセチル化セルロースのSP値は、文献値のセルロース及びジアセチル化セルロースのSP値より直線近似で算出した。結晶化度は、各セルロースを加圧タブレット化し、広角X
散乱法により算出した。樹脂SPは、井出文雄著 実用ポリマーアロイ設計(発行所:(株)工業調査会、1996年発行)を引用した。樹脂SPがSP値の範囲で記載されている場合は、上
限値と下限値の平均値をその樹脂のSPとして用い、上記のAcCNFのDS(x)とSP(y)との関係
式を求めた。

0416

記文献(井出文雄著)に記載されていない樹脂のSP(MAPPのSP)については、Fedorsの方法(Robert F. Fedors、Polymer Engineering and Science, February,1974、vol.14, No.2 147-154)に従って計算し、求めた。 またPLAのSP値は,特開2011-231285記載の値を用いた。

0417

表25〜表28では、表21〜表24の物性値を、未修飾NBKP-樹脂組成物を基準として、指数
表示した。

0418

表29〜表31では,アセチル化リグノパルプのSP値は,Fedorsの方法(Robert F. Fedors、Polymer Engineering and Science, February,1974、vol.14, No.2 147-154)に準じて計算し、求めた(前記「アセチル化リグノパルプ(LP)のSP値算出方法」参照)。

0419

表31では、表29のPA6強化材料の数値を、未修飾リグノパルプ-樹脂組成物を基準として、指数表示した。

0420

表32は表25〜表28をまとめたものである。

0421

表33は表31をまとめたものである。

0422

0423

0424

0425

0426

0427

0428

0429

0430

0431

0432

0433

0434

0435

NBKPにおいては、最もSPの高いPA6(SP=12.2)は、DS=0.46〜0.88程度、SP=14.6〜13.7程度、結晶化度72.1%程度以上のアセチル化NBKPを添加することで最も高い曲げ特性が得ら
れる。

0436

次にSPの高いPLA(SP=11.4)は、DS=0.32〜1.57程度、SP=15.7〜0.32程度、結晶化度55.6%程度以上のアセチル化NBKPを添加することで高い曲げ特性が得られる。

0437

次にSPの高いPOM(SP=11.1)は、DS=0.64〜1.17程度、SP=14.2〜13.0程度、結晶化度69.5%程度以上のアセチル化セルロースを添加することで最も高い曲げ特性が得られる。

0438

そして最もSPの低いPP(SP=8.1)は、DS=2.52程度以上にピークがあると考えられ、結晶
化度は影響していない。

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