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技術 被覆切削工具

出願人 株式会社タンガロイ
発明者 浅利翔太
出願日 2015年7月27日 (5年5ヶ月経過) 出願番号 2015-147291
公開日 2017年2月2日 (3年10ヶ月経過) 公開番号 2017-024136
状態 特許登録済
技術分野 穴あけ工具 フライス加工 バイト、中ぐり工具、ホルダ及びタレット 重金属無機化合物(II)
主要キーワード イオンミキシング法 各積層構造 耐酸化層 損傷形態 制限スリット 多層皮膜 金属蒸発源 ソーラースリット
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重要な関連分野

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課題

耐摩耗性に優れる耐酸化層を有することにより、耐チッピング性および耐欠損性に優れ、工具寿命延長できる被覆切削工具を提供する。

解決手段

基材と前記基材の表面に形成された被覆層を含む被覆切削工具であって、前記被覆層は少なくとも1層の硬質層を含み、前記硬質層は、M元素酸化物層または酸窒化物層[但し、M元素は、WまたはTaのいずれかの元素を表す]であり、前記硬質層の平均厚さが、0.005μm以上1.0μm以下である被覆切削工具。

概要

背景

切削加工高能率化需要の高まりに伴い、従来よりも工具寿命の長い切削工具が求められている。このため、工具材料要求特性として、切削工具の寿命に関係する耐摩耗性の向上および耐欠損性の向上が一段と重要になっている。そこで、これらの特性を向上させるため、超硬合金サーメット、cBNなどからなる基材表面にTiN層TiAlN層などの被覆層を1層または2層以上含む被覆切削工具が広く用いられている。

加工能率を上げるため従来よりも切削条件が厳しくなる傾向の中で、これまでより工具寿命を長くすることが求められてきた。しかしながら、鉄系材料高速、且つ、高送りの条件で加工する場合は、切削加工時の発熱によって切れ刃における被覆層が分解および酸化する。そのため、耐酸化性および耐熱定性に優れる層として、酸化物層が広く用いられている。

たとえば特許文献1には、基体表面周期律表のIVa、Va、VIa族金属炭化物、窒化物炭窒化物酸化物酸炭化物酸窒化物および酸炭窒化物のいずれか一種単層皮膜または二種以上からなる多層皮膜、並びに少なくとも一層のα型酸化アルミニウムを主とする酸化物層が形成されている酸化アルミニウム被覆工具が提案されている。

また、特許文献2には、(Al,Cr)2O3結晶体よりなる酸化物層を形成した切削工具が提案されている。

概要

耐摩耗性に優れる耐酸化層を有することにより、耐チッピング性および耐欠損性に優れ、工具寿命を延長できる被覆切削工具を提供する。基材と前記基材の表面に形成された被覆層を含む被覆切削工具であって、前記被覆層は少なくとも1層の硬質層を含み、前記硬質層は、M元素の酸化物層または酸窒化物層[但し、M元素は、WまたはTaのいずれかの元素を表す]であり、前記硬質層の平均厚さが、0.005μm以上1.0μm以下である被覆切削工具。なし

目的

本発明は、これらの問題を解決するためになされたものであり、より過酷な切削加工を施しても、耐チッピング性および耐欠損性に優れ、長期間にわたって加工できる被覆切削工具を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

基材と前記基材の表面に形成された被覆層を含む被覆切削工具であって、前記被覆層は少なくとも1層の硬質層を含み、前記硬質層は、M元素酸化物層または酸窒化物層[但し、M元素は、WまたはTaのいずれかの元素を表す]であり、前記硬質層の平均厚さが、0.005μm以上1.0μm以下である被覆切削工具。

請求項2

前記硬質層の平均粒径は、5nm以上300nm以下である請求項1に記載の被覆切削工具。

請求項3

前記硬質層は、Wの酸化物または酸窒化物のいずれかである請求項1または2のいずれかに記載の被覆切削工具。

請求項4

前記硬質層は、WO2、WO3、W0.62(N,O)、TaO、TaO2、Ta2O3、TaONからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物層である請求項1または2のいずれかに記載の被覆切削工具。

請求項5

前記被覆層は、前記基材と前記硬質層との間に下部層を含み、前記下部層は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、AlおよびSiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、C、N、OおよびBからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物(但し、Wの酸化物層、Taの酸化物層、Wの酸窒化物層、Taの酸窒化物層を除く)の単層または多層である請求項1〜4のいずれか1項に記載の被覆切削工具。

請求項6

前記下部層は、(AlxTi1−x-yLy)(C1−uNu)[但し、L元素はZr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、WおよびSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表し、xはAlとTiとL元素との合計に対するAlの原子比を表し、yはAlとTiとL元素との合計に対するL元素の原子比を表し、uはCとNとの合計に対するNの原子比を表し、0≦x≦1、0≦y≦0.2、0≦x+y≦1、0≦u≦1を満足する。]を満たす化合物層である請求項1〜5のいずれか1項に記載の被覆切削工具。

請求項7

前記硬質層は、最外層である請求項1〜6のいずれか1項に記載の被覆切削工具。

請求項8

前記下部層の平均厚さは、1.5μm以上11.9μm以下である請求項1〜7のいずれか1項に記載の被覆切削工具。

請求項9

前記被覆層全体の平均厚さが0.5μm以上12.0μm以下である請求項1〜8のいずれか1項に記載の被覆切削工具。

請求項10

前記基材は、超硬合金サーメットセラミックスまたは立方晶窒化硼素焼結体のいずれかである請求項1〜9のいずれか1項に記載の被覆切削工具。

技術分野

0001

本発明は、被覆切削工具に関するものである。

背景技術

0002

切削加工高能率化需要の高まりに伴い、従来よりも工具寿命の長い切削工具が求められている。このため、工具材料要求特性として、切削工具の寿命に関係する耐摩耗性の向上および耐欠損性の向上が一段と重要になっている。そこで、これらの特性を向上させるため、超硬合金サーメット、cBNなどからなる基材表面にTiN層TiAlN層などの被覆層を1層または2層以上含む被覆切削工具が広く用いられている。

0003

加工能率を上げるため従来よりも切削条件が厳しくなる傾向の中で、これまでより工具寿命を長くすることが求められてきた。しかしながら、鉄系材料高速、且つ、高送りの条件で加工する場合は、切削加工時の発熱によって切れ刃における被覆層が分解および酸化する。そのため、耐酸化性および耐熱定性に優れる層として、酸化物層が広く用いられている。

0004

たとえば特許文献1には、基体表面周期律表のIVa、Va、VIa族金属炭化物、窒化物炭窒化物酸化物酸炭化物酸窒化物および酸炭窒化物のいずれか一種単層皮膜または二種以上からなる多層皮膜、並びに少なくとも一層のα型酸化アルミニウムを主とする酸化物層が形成されている酸化アルミニウム被覆工具が提案されている。

0005

また、特許文献2には、(Al,Cr)2O3結晶体よりなる酸化物層を形成した切削工具が提案されている。

先行技術

0006

特開平10−156606号公報
特開平5−208326号公報

発明が解決しようとする課題

0007

近年、切削加工の高速化および高送り化がより顕著になっている。このため、工具欠損が発生することが多くなった。例えば、加工中に刃先の温度が高くなることにより、被覆層が酸化する。この際、酸化によるクレーター摩耗が進行すると、被覆層に亀裂が発生しやすくなる。その結果、工具の欠損が発生する傾向にある。

0008

この様な背景により上記特許文献1の酸化アルミニウム層は、化学蒸着法により、形成されているため、被覆層中に引張応力残留する。そのため、特許文献1の被覆工具では、耐欠損性が劣るという問題があった。

0009

また、特許文献2の(Al,Cr)2O3結晶体よりなる硬質層を形成した切削工具では、耐摩耗性が不十分であるため、クレーター摩耗が進行しやすい。そのため、切削工具の耐チッピング性および耐欠損性が十分でないという問題があった。

0010

本発明は、これらの問題を解決するためになされたものであり、より過酷な切削加工を施しても、耐チッピング性および耐欠損性に優れ、長期間にわたって加工できる被覆切削工具を提供することにある。

課題を解決するための手段

0011

本発明者は、被覆切削工具の工具寿命の延長について研究を重ねた。本発明者は、以下の構成によって、被覆切削工具の耐チッピング性および耐欠損性を向上させることができた。その結果、被覆切削工具の工具寿命を延長することができた。

0012

すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)基材と前記基材の表面に形成された被覆層を含む被覆切削工具であって、
前記被覆層は少なくとも1層の硬質層を含み、
前記硬質層は、M元素の酸化物層または酸窒化物層[但し、M元素は、WまたはTaのいずれかの元素を表す]であり、
前記硬質層の平均厚さが、0.005μm以上1.0μm以下である被覆切削工具。
(2)前記硬質層の平均粒径は、5nm以上300nm以下である(1)の被覆切削工具。
(3)前記硬質層は、Wの酸化物または酸窒化物のいずれかである(1)または(2)のいずれかの被覆切削工具。
(4)前記硬質層は、WO2、WO3、W0.62(N,O)、TaO、TaO2、Ta2O3、TaONからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物層である(1)または(2)のいずれかの被覆切削工具。
(5)前記被覆層は、前記基材と前記硬質層との間に下部層を含み、
前記下部層は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、AlおよびSiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、C、N、OおよびBからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物(但し、Wの酸化物層、Taの酸化物層、Wの酸窒化物層、Taの酸窒化物層を除く)の単層または多層である(1)〜(4)のいずれかの被覆切削工具。
(6)前記下部層は、(AlxTi1−x-yLy)(C1−uNu)[但し、L元素はZr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、WおよびSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表し、xはAlとTiとL元素との合計に対するAlの原子比を表し、yはAlとTiとL元素との合計に対するL元素の原子比を表し、uはCとNとの合計に対するNの原子比を表し、0≦x≦1、0≦y≦0.2、0≦x+y≦1、0≦u≦1を満足する。]を満たす化合物層である(1)〜(5)のいずれかの被覆切削工具。
(7)前記硬質層は、最外層である(1)〜(6)の被覆切削工具。
(8)前記下部層の平均厚さは、1.5μm以上11.9μm以下である(1)〜(7)の被覆切削工具。
(9)前記被覆層全体の平均厚さが0.5μm以上12.0μm以下である(1)〜(8)のいずれかの被覆切削工具。
(10)前記基材は、超硬合金、サーメット、セラミックスまたは立方晶窒化硼素焼結体のいずれかである(1)〜(9)のいずれかの被覆切削工具。

発明の効果

0013

本発明の被覆切削工具は、耐摩耗性に優れる耐酸化層を有することにより、耐チッピング性および耐欠損性を向上させることができる。そのため、従来よりも工具寿命を延長できるという効果を奏する。

0014

本発明の被覆切削工具は、基材と基材の表面に形成された被覆層とを含む。本発明における基材は被覆切削工具の基材として用いられるものであれば特に限定はされないが、その例として、超硬合金、サーメット、セラミックス、立方晶窒化硼素焼結体、ダイヤモンド焼結体高速度鋼などを挙げることができる。その中でも、基材が超硬合金、サーメット、セラミックスおよび立方晶窒化硼素焼結体のいずれかであると、耐摩耗性および耐欠損性に優れるので、さらに好ましい。

0015

本発明の被覆切削工具における被覆層全体の平均厚さは、0.5μm未満であると耐摩耗性が低下する傾向がみられ、被覆層全体の平均厚さが、12μmを超えると耐欠損性が低下する傾向がみられる。そのため、被覆層全体の平均厚さは、0.5μm以上12μm以下であると好ましい。その中でも、被覆層全体の平均厚さは、1.5μm以上8.0μm以下であるとさらに好ましい。

0016

本発明の被覆層は、少なくとも1層の硬質層を含む。本発明の硬質層は、M元素の酸化物層または酸窒化物層である。但し、M元素は、WまたはTaのいずれかの元素を表す。本発明の被覆層は、硬質層を有すると、酸化によるクレーター摩耗を抑制することができる。そのため、クレーター摩耗を起因としたクラック進展を抑制することができるので、耐欠損性に優れる。その中でも、硬質層は、Wの酸化物または酸窒化物のいずれかであるとクレーター摩耗を抑制する効果が高いため、好ましい。

0017

本発明の硬質層は、具体的に、WO2、WO3、W0.62(N,O)、TaO、TaO2、Ta2O3、TaONなどを挙げることができる。

0018

本発明の硬質層の平均厚さは、0.005μm未満であると、酸化によるクレーター摩耗を抑制する効果を発揮することができない。一方、硬質層の平均厚さが1.0μmを超えると耐欠損性が低下する。そのため、硬質層の平均厚さは0.005μm以上1.0μm以下とした。

0019

本発明の硬質層の平均粒径は、5nm未満であると、酸化によるクレーター摩耗を抑制する効果を発揮することができない場合がある。一方、硬質層の平均粒径が300nmを超えると耐欠損性が低下する場合がある。そのため、硬質層の平均粒径は5nm以上300nm以下であると好ましい。

0020

本発明の硬質層は、最外層であると、酸化によるクレーター摩耗を抑制する効果が大きいので、好ましい。

0021

本発明の被覆層は、硬質層のみからなる単層であってもよいが、基材と硬質層との間に下部層を含むと、耐摩耗性が向上するため、好ましい。本発明の下部層は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、AlおよびSiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、C、N、OおよびBからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物(但し、Wの酸化物層、Taの酸化物層、Wの酸窒化物層、Taの酸窒化物層を除く)より選択された少なくとも1種の単層または多層構成であると、耐摩耗性が向上するので好ましい。

0022

本発明の下部層は、(AlxTi1−x-yLy)(C1−uNu)[但し、L元素はZr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、WおよびSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表し、xはAlとTiとL元素との合計に対するAlの原子比を表し、yはAlとTiとL元素との合計に対するL元素の原子比を表し、uはCとNとの合計に対するNの原子比を表し、0≦x≦1、0≦y≦0.2、0≦x+y≦1、0≦u≦1を満足する。]を満たす化合物の単層または多層構成であると、さらに好ましい。

0023

下部層を構成する化合物として具体的には、(Al0.50Ti0.50)N、(Al0.65Ti0.35)N、(Al0.35Ti0.65)N、(Al0.67Ti0.33)CN、(Al0.45Ti0.45Si0.10)N、(Al0.45Ti0.45Y0.10)N、(Al0.50Ti0.30Cr0.20)N、(Al0.50Ti0.45Nb0.05)N、(Al0.50Ti0.45Ta0.05)N、(Al0.50Ti0.45W0.05)Nなどを挙げることができる。

0024

本発明の下部層の平均厚さは、1.5μm未満であると、長期に亘り、耐摩耗性を発揮することができないため、短寿命になる傾向がみられる。一方、下部層の平均厚さが11.9μmを超えると耐欠損性が低下する傾向がみられる。そのため、下層の平均厚さは1.5μm以上11.9μm以下であることが好ましい。

0025

本発明の硬質層は、最外層であると、酸化によるクレーター摩耗を抑制する効果が大きいので、好ましい。最外層として硬質層を有すると、下部層のクレーター摩耗の進行を遅らせることができる。

0026

なお、本発明の下部層を(MaLb)Nと表記する場合は、金属元素全体に対するM元素の原子比がa、L元素の原子比がbであることを意味する。例えば、(Al0.55Ti0.45)Nは、金属元素全体に対するAlの原子比が0.55、金属元素全体に対するTiの原子比が0.45、すなわち、金属元素全体に対するAl元素量が55原子%、金属元素全体に対するTi元素量が45原子%であることを意味する。

0027

本発明の被覆切削工具における被覆層の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、イオンプレーティング法アークイオンプレーティング法スパッタ法イオンミキシング法などの物理蒸着法を使用して、形成することができる。その中でもアークイオンプレーティング法は被覆層と基材の密着性に優れるので、さらに好ましい。

0028

本発明の被覆切削工具の製造方法について、具体例を用いて説明する。なお、本発明の被覆切削工具の製造方法は、当該被覆切削工具の構成を達成し得る限り特に制限されるものではない。

0029

工具形状に加工した基材を物理蒸着装置反応容器内に入れ、反応容器内を圧力1×10−2Pa以下の真空になるまで真空引きする。真空引きした後、反応容器内のヒーターで基材の温度が200〜800℃になるまで加熱する。加熱後、反応容器内にアルゴン(以下、Arとする)ガスを導入して圧力を0.5〜5.0Paとする。圧力0.5〜5.0PaのArガス雰囲気にて、基材に−200〜−1000Vのバイアス電圧印加し、反応容器内のタングステンフィラメントに5〜20Aの電流を流して、基材の表面をArガスによるイオンボンバードメント処理をする。基材の表面をイオンボンバードメント処理した後、圧力1×10−2Pa以下の真空になるまで真空引きする。

0030

基材と硬質層との間に下部層を形成する場合には、イオンボンバードメント処理し、真空引きした後、窒素ガスなどの反応ガスを反応容器内に導入し、反応容器内の圧力を0.5〜5.0Paにして、基材に−10〜−150Vのバイアス電圧を印加し、各層の金属成分に応じた金属蒸発源アーク放電により蒸発させて基材の表面に各層を形成することができる。

0031

本発明の硬質層を形成するには、イオンボンバードメント処理後、または下部層を形成した後、反応容器内を真空引きし、基材の温度が200℃〜800℃になるまで加熱する。その後、WまたはTaの酸化物層を形成する場合には、酸素ガス(以下、O2とする)とArガスとを反応容器内に2:8〜8:2の体積比率で導入する。WまたはTaの酸窒化物層を形成する場合には、O2ガスと窒素ガス(以下、N2とする)とを反応容器内に4:6〜6:4の体積比率で導入する。ガスを導入し、反応容器内の圧力を0.5〜5.0Paにして、基材に−50〜−350Vのバイアス電圧を印加し、アーク電流150〜200Aのアーク放電によりWまたはTaの金属蒸発源を蒸発させて基材の表面または内層の表面に硬質層を形成することができる。反応容器内における混合ガス比率と、アーク電流の値を調整することにより、硬質層の組成を制御することができる。具体的には、WまたはTaの蒸発量に対し、O2ガスの流量を変化させると酸化物層の組成に影響を及ぼす。Wの蒸発量に対し、O2ガスの流量を小さくすると、WO2が形成され、Wの蒸発量に対し、O2ガスの流量を大きくすると、WO3が形成される。Taの蒸発量に対し、O2ガスの流量を小さくすると、TaOが形成され、O2ガスの流量を大きくすると、Ta2O3が形成され、さらにO2ガスの流量を大きくすると、TaO2が形成される。なお、WまたはTaの蒸発量を大きくするには、アーク電流を大きくするとよい。

0032

本発明の硬質層の平均粒径を制御するには、基材に印加する負のバイアス電圧を高くするとよい。すなわち、−50Vよりも−350Vの方が硬質層の平均粒径は小さくなる。但し、基材に印加する負のバイアス電圧を−350Vよりも高くすると、アモルファス酸化タングステンを形成するため、好ましくない。

0033

本発明の被覆切削工具における被覆層を構成する各層の層厚は、被覆切削工具の断面組織から光学顕微鏡走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡TEM)などを用いて測定することができる。なお、本発明の被覆切削工具における各層の平均層厚は、金属蒸発源に対向する面の刃先から当該面の中心部に向かって50μmの位置の近傍において、3箇所以上の断面から各層の層厚および各積層構造の厚さを測定して、その平均値を計算することで求めることができる。

0034

また、本発明の被覆切削工具における被覆層を構成する各層の組成は、本発明の被覆切削工具の断面組織からエネルギー分散X線分析装置(EDS)や波長分散型X線分析装置(WDS)などを用いて測定することができる。

0035

また、本発明の硬質層の組成は、市販のX線回折装置を用いて特定することができる。例えば、株式会社リガク製 X線回折装置RINTTRIIIを用いて、Cu−Kα線を用いた2θ/θ集中法光学系X線回折測定を、出力:50kV、250mA、入射ソーラースリット:5°、発散縦スリット:2/3°、発散縦制限スリット:5mm、散乱スリット2/3°、受光側ソーラースリット:5°、受光スリット:0.3mm、BENTモノクロメータ、受光モノクロスリット:0.8mm、サンプリング幅:0.01°、スキャンスピード:4°/min、2θ測定範囲:20〜140°という条件で行うと、得られたX線回折図形を得ることができる。該X線回折図形から、各組成のJCPDSカードにより、硬質層の組成を特定することができる。

0036

本発明の硬質層の平均粒径は、以下の方法により、求めることができる。本発明の交硬質層の平均粒径は、被覆切削工具における基材の表面に対して、垂直な方向の断面組織から透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定することができる。被覆切削工具の断面組織をTEMで観察し、10000倍〜80000倍に拡大した画像を撮影する。撮影した画像に、基材の表面に対して平行な直線を引く。このとき、硬質層の組織を横切るように直線を引く。この直線に含まれる粒子の長さを硬質層の粒子の数で割った値を硬質層の粒径とする。5箇所以上で引いた直線から硬質層の粒径をそれぞれ測定し、得られた値の平均値を硬質層の平均値と定義する。

0037

本発明の被覆切削工具の種類として具体的には、フライス加工用または旋削加工用刃交換切削インサートドリルエンドミルなどを挙げることができる。

0038

基材としてISO規格CNMG120408形状の90%WC−10%Co(以上体積%)組成の超硬合金製インサートとを用意した。アークイオンプレーティング装置の反応容器内に表1、表2および表3に示す各層の組成になる金属蒸発源を配置した。用意した基材を反応容器内の回転テーブルの固定金具に固定した。

0039

反応容器内の圧力が5.0×10−3Pa以下の真空になるまで真空引きした。真空引き後、反応容器内のヒーターで基材の温度が400℃になるまで加熱した。加熱後、反応容器内の圧力が5.0PaになるようにArガスを導入した。

0040

圧力5.0PaのArガス雰囲気にて、基材に−900Vのバイアス電圧を印加して、反応容器内のタングステンフィラメントに10Aの電流を流して、基材の表面にArガスによるイオンボンバードメント処理を30分間行った。イオンボンバードメント処理終了後、反応容器内の圧力が5.0×10−3Pa以下の真空になるまで真空引きした。

0041

発明品1〜5、7〜16、18〜27については、真空引き後、窒素ガスを反応容器内に導入し、圧力2.7Paの窒素ガス雰囲気にした。基材には−50Vのバイアス電圧を印加してアーク電流200Aのアーク放電により金属蒸発源を蒸発させて下部層を形成した。

0042

発明品17については、真空引き後、反応容器内の雰囲気を窒素ガス(N2)とメタンガス(CH4)の分圧比がN2:CH4=1:1となるように混合した混合ガスとし、圧力2.7Paの混合ガス雰囲気にした。基材には−50Vのバイアス電圧を印加してアーク電流200Aのアーク放電により金属蒸発源を蒸発させて下部層を形成した。

0043

発明品1〜5、7〜27については、下部層を形成した後、反応容器内の圧力が5.0×10−3Pa以下の真空になるまで真空引きし、表3に示す条件で、硬質層を形成した。発明品6については、表3に示す条件で、基材の表面に硬質層を形成した。

0044

比較品1〜5については、真空引き後、窒素ガスを反応容器内に導入し、圧力2.7Paの窒素ガス雰囲気にした。基材には−50Vのバイアス電圧を印加してアーク電流200Aのアーク放電により金属蒸発源を蒸発させて被覆層を形成した。

0045

比較品6については、真空引き後、反応容器内の雰囲気をN2ガスとメタンガス(CH4)の分圧比がN2:CH4=1:1となるように混合した混合ガスとし、圧力2.7Paの混合ガス雰囲気にした。基材には−50Vのバイアス電圧を印加してアーク電流200Aのアーク放電により金属蒸発源を蒸発させて被覆層を形成した。

0046

比較品7〜10については、真空引き後、窒素ガスを反応容器内に導入し、圧力2.7Paの窒素ガス雰囲気にした。基材には−50Vのバイアス電圧を印加してアーク電流200Aのアーク放電により金属蒸発源を蒸発させて第1層を形成した。第1層を形成した後、反応容器内の圧力が5.0×10−3Pa以下の真空になるまで真空引きし、表4に示す条件で、酸化物層を形成した。

0047

基材の表面に表1、表2および表3に示す所定の層厚まで各層を形成した後に、ヒーターの電源切り試料温度が100℃以下になった後で、反応容器内から試料を取り出した。

0048

比較品11については、通常の化学蒸着法により、被覆層を形成した。所定の厚さまで各層を形成した後、試料温度が100℃以下になった後で、反応容器内から試料を取り出した。

0049

0050

0051

0052

0053

0054

得られた試料の各層の平均厚さは、被覆切削工具の金属蒸発源に対向する面の刃先から当該面の中心部に向かって50μmの位置の近傍において、3箇所の断面をTEM観察し、各層の厚さを測定し、その平均値を計算することで求めた。比較品11については、被覆切削工具の刃先から逃げ面の中心部に向かって50μmの位置の近傍において、3箇所の断面をTEM観察し、各層の厚さを測定し、その平均値を計算することで求めた。
なお、得られた試料の硬質層または酸化物層の組成は、Cu−Kα線を用いた2θ/θ集中法光学系のX線回折測定を、出力:50kV、250mA、入射側ソーラースリット:5°、発散縦スリット:2/3°、発散縦制限スリット:5mm、散乱スリット2/3°、受光側ソーラースリット:5°、受光スリット:0.3mm、BENTモノクロメータ、受光モノクロスリット:0.8mm、サンプリング幅:0.01°、スキャンスピード:4°/min、2θ測定範囲:20〜140°とするX線回折測定を行った。X線回折図形から組成を特定した。各層の組成および厚さを表1、表2および表3に示した。

0055

比較品11の組成は、被覆切削工具の刃先から逃げ面の中心部に向かって50μmまでの位置の断面でEDSを用いて測定した。また、酸化物層の組成については、それらの結果を、表1および表3に示す。なお、表1および表3の各層の金属元素組成比は、各層を構成する金属化合物における金属元素全体に対する各金属元素の原子比を示した。

0056

本発明の硬質層の平均粒径は、以下の方法により、求めた。本発明の交硬質層の平均粒径は、被覆切削工具における基材の表面に対して、垂直な方向の断面組織から透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定した。被覆切削工具の断面組織をTEMで観察し、30000倍に拡大した画像を撮影した。撮影した画像に、基材の表面に対して平行な直線を引いた。このとき、硬質層の組織を横切るように直線を引いた。この直線に含まれる粒子の長さを硬質層の粒子の数で割った値を硬質層の粒径とした。10箇所で引いた直線から硬質層の粒径をそれぞれ測定し、得られた値の平均値を硬質層の平均値とした。その結果を、表6および表7に示した。

0057

0058

0059

得られた試料を用いて、以下の切削試験を行い、耐欠損性および耐摩耗性を評価した。その評価結果を表7および表8に示した。

0060

[切削試験1]
被削材:S45C、
被削材形状:φ120mm×400mmの円柱(外周に1本の溝が入っている。)、
切削速度:180m/min、
送り:0.2mm/rev、
切り込み:2.0mm、
クーラント:使用、
評価項目:試料が欠損(試料の切れ刃部に欠けが生じる)したとき、または逃げ面摩耗幅が0.2mmに至ったときを工具寿命とし、工具寿命に至るまでの加工時間を測定した。

0061

0062

実施例

0063

表8および表9の結果より、発明品の損傷形態は、正常摩耗であり、耐チッピング性および耐欠損性に優れることが分かる。また、発明品の加工時間は、30min以上であり、比較品よりも工具寿命が長くなっていることが分かる。

0064

本発明の被覆切削工具は、耐摩耗性に優れる耐酸化層を有することにより、耐チッピング性および耐欠損性を向上させることができる。そのため、従来よりも工具寿命を延長できるので、産業上の利用可価値が高い。

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