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技術 積層構造体、圧電素子および圧電素子の製造方法

出願人 富士フイルム株式会社
発明者 藤井隆満直野崇幸
出願日 2015年6月30日 (6年5ヶ月経過) 出願番号 2015-131539
公開日 2017年1月19日 (4年11ヶ月経過) 公開番号 2017-017157
状態 特許登録済
技術分野 圧電、電歪、磁歪装置
主要キーワード 初期撓み 構造体作製 柱状構造膜 パターン化電極 パイロクロア型酸化物 バイモルフ型圧電素子 回折コントラスト 非熱平衡
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図面 (7)

課題

剛性が高く、耐久性の高い圧電素子、その製造方法及び圧電素子用積層構造体を提供する。

解決手段

第1のシリコン基板11の一面に第1の電極層12、第1の圧電体膜14及び第1の対向電極層16をこの順に積層して第1の構造体10を、第2のシリコン基板21の一面に第2の電極層22、第2の圧電体膜24及び第2の対向電極層26をこの順に積層して第2の構造体20を作製する。振動板基材の一方の面に第1の対向電極層16を対向させて、振動板基材の一方の面に第1の構造体10を貼り合わせ、第1の構造体10と貼り合わせた振動板基材の他方の面を研磨又はエッチングして振動板31に加工し、振動板31の露出面に第2の対向電極層26を対向させて、第2の構造体20を貼り合わせて積層構造体2を作製し、第1のシリコン基板11及び第2のシリコン基板21の少なくとも一部を除去して圧電素子を得る。

概要

背景

従来の圧電アクチュエータとしては、上部電極/圧電体/下部電極/振動板が積層された構造のユニモルフアクチュエータが一般的である。このユニモルフアクチュエータの発生力は圧電体の圧電定数印加電圧の積で概ね決定され、圧電定数は材料に依存して定まるため、ユニモルフアクチュエータの発生力は原理的に限界がある。

ユニモルフアクチュエータよりも発生力が大きいものとして、特許文献1では圧電体層を2層に重ねた構成のバイモルフ構造のアクチュエータが示されている(特許文献1の図7参照。)。特許文献1に記載のバイモルフ構造のアクチュエータは、2つの圧電体薄膜素子構造体を貼り合わせることによって作製される(特許文献1の段落0070−0071参照。)。

また、特許文献2には積層圧電体を用いた圧電バイモルフ型のアクチュエータの一部を力検出センサとして使用する構成が提案されている。特許文献2に示されているバイモルフ型のアクチュエータは、2枚のフィルム状圧電体を共通電極用の導電部材表裏面に貼り合わせることによって作製される(特許文献2の段落0074および図3参照。)。

同様に、特許文献3には、2枚のフィルム状圧電素子の一方の電極層同士を接着剤を介して貼り合わせることによってバイモルフ型の圧電素子を製造する方法が開示されている。(特許文献3の図2および図3参照。)。

さらに、特許文献4では、0.4μm〜10μm厚みの中間層を挟んで2つの圧電体膜を備えたバイモルフ型の圧電素子が提案されている。特許文献4では、シリコン基板上に第1の圧電体膜を備えた第1の薄膜圧電素子成膜形成した後、振動板として機能する中間層を成膜し、さらに、第2の圧電体膜を備えた第2の薄膜圧電素子を中間層上に成膜形成するバイモルフ型圧電素子の製造方法が開示されている。

概要

剛性が高く、耐久性の高い圧電素子、その製造方法及び圧電素子用積層構造体を提供する。第1のシリコン基板11の一面に第1の電極層12、第1の圧電体膜14及び第1の対向電極層16をこの順に積層して第1の構造体10を、第2のシリコン基板21の一面に第2の電極層22、第2の圧電体膜24及び第2の対向電極層26をこの順に積層して第2の構造体20を作製する。振動板基材の一方の面に第1の対向電極層16を対向させて、振動板基材の一方の面に第1の構造体10を貼り合わせ、第1の構造体10と貼り合わせた振動板基材の他方の面を研磨又はエッチングして振動板31に加工し、振動板31の露出面に第2の対向電極層26を対向させて、第2の構造体20を貼り合わせて積層構造体2を作製し、第1のシリコン基板11及び第2のシリコン基板21の少なくとも一部を除去して圧電素子を得る。

目的

本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、剛性が高く、耐久性の高いバイモルフ型の圧電素子およびその製造方法、並びに圧電素子用の積層構造体を提供する

効果

実績

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請求項1

厚みが10μm超500μm以下である振動板と、該振動板の一方の面に接着された第1の構造体と、前記振動板の他方の面に接着された第2の構造体とを備え、前記第1の構造体は、第1のシリコン基板と、該第1のシリコン基板の一面に順に積層された第1の電極層、第1の圧電体膜および第1の対向電極層とを備え、該第1の対向電極層を前記振動板の前記一方の面に対向させて、該振動板の前記一方の面と接着されており、前記第2の構造体は、第2のシリコン基板と、該第2のシリコン基板の一面に順に積層された第2の電極層、第2の圧電体膜および第2の対向電極層とを備え、該第2の対向電極層を前記振動板の前記他方の面に対向させて、該振動板の前記他方の面と接着されており、前記第1の圧電体膜および前記第2の圧電体膜がペロブスカイト型酸化物からなり、前記第1の圧電体膜と前記第1の電極層との界面、および前記第2の圧電体膜と前記第2の電極層との界面にそれぞれ3nm以上のパイロクロア型酸化物層を有している積層構造体

請求項2

前記第1の対向電極層と前記振動板との間に第1の接着層を備え、前記第2の対向電極層と前記振動板との間に第2の接着層を備えた請求項1記載の積層構造体。

請求項3

前記第1の接着層および前記第2の接着層が無機材料からなる請求項2記載の積層構造体。

請求項4

前記第1の圧電体膜がスパッタ法により成膜された膜であり、前記第1の圧電体膜の自発分極ベクトルが前記第1の電極層から前記第1の対向電極層に向かい、前記第2の圧電体膜の自発分極ベクトルが前記第2の電極層から前記第2の対向電極層に向かうものである請求項1から3いずれか1項記載の積層構造体。

請求項5

前記第1の対向電極層および前記第2の対向電極層がパターン化されている請求項1から4いずれか1項記載の積層構造体。

請求項6

前記振動板がシリコンからなる請求項1から5いずれか1項記載の積層構造体。

請求項7

前記第1の構造体と前記第2の構造体が前記振動板を挟んで対称構造であり、前記第1の圧電体膜および前記第2の圧電体膜を構成する前記ペロブスカイト型酸化物の組成が同一である請求項1から6いずれか1項記載の積層構造体。

請求項8

前記ペロブスカイト型酸化物が、下記一般式PXで表されるものであり、Aa(Zrx,Tiy,Mb−x−y)bOc(PX)前記一般式PXにおいて、AはAサイト元素であり、Pbを含む少なくとも1種の元素であり、MはBサイト元素であり、V、Nb、Ta、およびSbからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素であり、0<x<b、0<y<b、0≦b−x−yである請求項1から7いずれか1項記載の積層構造体。

請求項9

請求項1から8いずれか1項記載の積層構造体の前記第1のシリコン基板および前記第2のシリコン基板の少なくとも一部が除去されてなる圧電素子

請求項10

シリコン基材の一面に、第1の電極層、第1の圧電体膜、第1の対向電極、厚みが10μm超500μm以下である振動板、第2の対向電極、第2の圧電体膜、第2の電極層がこの順に積層されてなり、前記第1の圧電体膜および前記第2の圧電体膜がペロブスカイト型酸化物からなり、前記第1の圧電体膜と前記第1の電極層との界面、および前記第2の圧電体膜と前記第2の電極層との界面にそれぞれ3nm以上のパイロクロア型酸化物層を有している圧電素子。

請求項11

前記第1の対向電極層と前記振動板との間に第1の接着層を備え、前記第2の対向電極層と前記振動板との間に第2の接着層を備えた請求項10記載の圧電素子。

請求項12

第1のシリコン基板の一面に第1の電極層、第1の圧電体膜および第1の対向電極層をこの順に積層して第1の構造体を作製する工程、第2のシリコン基板の一面に第2の電極層、第2の圧電体膜および第2の対向電極層をこの順に積層して第2の構造体を作製する工程、振動板基材の一方の面に前記第1の対向電極層を対向させて、前記振動板基材の前記一方の面に前記第1の構造体を貼り合わせる工程、前記第1の構造体と貼り合わせた前記振動板基材の他方の面を研磨またはエッチングして該振動板基材を振動板に加工する工程、前記振動板の前記第1の構造体と貼り合わせていない露出面に前記第2の対向電極層を対向させて、該露出面に前記第2の構造体を貼り合わせて積層構造体を作製する工程、および前記積層構造体から前記第1のシリコン基板および前記第2のシリコン基板の少なくとも一部を除去する工程を含む圧電素子の製造方法。

請求項13

前記第1の圧電体膜および前記第2の圧電体膜として、ペロブスカイト型酸化物膜スパッタ成膜する請求項12記載の圧電素子の製造方法。

請求項14

前記振動板基材を、10μm超500μm以下の厚みに調整して前記振動板に加工する請求項12または13記載の圧電素子の製造方法。

請求項15

前記第1の構造体を作製する工程において、前記第1の対向電極層としてパターン化した電極層を形成し、前記第2の構造体を作製する工程において、前記第2の対向電極層としてパターン化した電極層を形成する請求項12から14いずれか1項記載の圧電素子の製造方法。

請求項16

前記振動板基材の前記一方の面および前記第1の対向電極層の表面の少なくとも一方に無機材料からなる接着層を形成し、該接着層を介して前記一方の面と前記第1の対向電極層の表面とを接合する請求項12から15いずれか1項記載の圧電素子の製造方法。

請求項17

前記振動板の前記露出面および前記第2の対向電極層の表面の少なくとも一方に無機材料からなる接着層を形成し、該接着層を介して前記露出面と前記第2の対向電極層の表面とを接合する請求項12から16いずれか1項記載の圧電素子の製造方法。

請求項18

前記振動板基材としてシリコン基材を用いる請求項12から17いずれか1項記載の圧電素子の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、振動板の両面に圧電部を備えた圧電素子用積層構造体圧電素子および圧電素子の製造方法に関する。

背景技術

0002

従来の圧電アクチュエータとしては、上部電極/圧電体/下部電極/振動板が積層された構造のユニモルフアクチュエータが一般的である。このユニモルフアクチュエータの発生力は圧電体の圧電定数印加電圧の積で概ね決定され、圧電定数は材料に依存して定まるため、ユニモルフアクチュエータの発生力は原理的に限界がある。

0003

ユニモルフアクチュエータよりも発生力が大きいものとして、特許文献1では圧電体層を2層に重ねた構成のバイモルフ構造のアクチュエータが示されている(特許文献1の図7参照。)。特許文献1に記載のバイモルフ構造のアクチュエータは、2つの圧電体薄膜素子構造体を貼り合わせることによって作製される(特許文献1の段落0070−0071参照。)。

0004

また、特許文献2には積層圧電体を用いた圧電バイモルフ型のアクチュエータの一部を力検出センサとして使用する構成が提案されている。特許文献2に示されているバイモルフ型のアクチュエータは、2枚のフィルム状圧電体を共通電極用の導電部材表裏面に貼り合わせることによって作製される(特許文献2の段落0074および図3参照。)。

0005

同様に、特許文献3には、2枚のフィルム状圧電素子の一方の電極層同士を接着剤を介して貼り合わせることによってバイモルフ型の圧電素子を製造する方法が開示されている。(特許文献3の図2および図3参照。)。

0006

さらに、特許文献4では、0.4μm〜10μm厚みの中間層を挟んで2つの圧電体膜を備えたバイモルフ型の圧電素子が提案されている。特許文献4では、シリコン基板上に第1の圧電体膜を備えた第1の薄膜圧電素子成膜形成した後、振動板として機能する中間層を成膜し、さらに、第2の圧電体膜を備えた第2の薄膜圧電素子を中間層上に成膜形成するバイモルフ型圧電素子の製造方法が開示されている。

先行技術

0007

特開2005−203750号公報
特開2006−48302号公報
特開2007−5374号公報
特開2015−88521号公報

発明が解決しようとする課題

0008

しかしながら、特許文献1〜3のように、二つの薄膜圧電素子を貼り合わせて構成されたバイモルフ型圧電素子は、剛性が低く、共振周波数が高いデバイス駆動源として使用できない。また、フィルム用圧電素子を貼り合わせる際のハンドリングが困難であるため、生産性の向上が図りにくいという問題がある。

0009

特許文献4のバイモルフ型圧電素子は、成膜のみで形成するので、やはり十分な剛性を有する素子を作製するのは難しい。また、高い圧電性を得るために、チタン酸ジルコン酸鉛PZT)系などのペロブスカイト型酸化物からなる圧電体膜を採用し、特許文献4に記載のように圧電体膜を気相成長法で作製した場合、圧電体膜において自発分極基板面側から膜成長面に向けて生じる。したがって、特許文献4のように成膜で順次形成する素子構造では、第1の圧電体膜および第2の圧電体膜の自発分極の向きが、同じ方向になる。そのために、第1の薄膜圧電素子および第2の薄膜圧電素子の中間層側の電極を共通電極にした場合、第1の薄膜圧電素子の他方の電極と第2の薄膜圧電素の他方の電極との電位差が大きくなり、駆動回路負荷がかかる。

0010

また、ペロブスカイト型酸化物からなる圧電体膜を気相成長法で作製した場合、基板面側の界面にパイロクロアなどの異相成長するために、特許文献4のアクチュエータにおいては、少なくとも一方の圧電体膜のパイロクロア型酸化物層が振動板となる中間層側に形成されることとなる。駆動時において、振動板側のパイロクロアがクラックの起点となりやすく、十分な耐久性が得られない場合がある。振動板側の圧電膜拘束されているため、パイロクロアが存在した場合、パイロクロア層応力が集中しやすい。そのため異相であるパイロクロア層を起点にクラックが生じる可能性がある。一方で基板と反対側は、拘束力が弱いためある程度のパイロクロア層があっても、クラックが生じにくい。

0011

本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、剛性が高く、耐久性の高いバイモルフ型の圧電素子およびその製造方法、並びに圧電素子用の積層構造体を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0012

本発明の積層構造体は、厚みが10μm超500μm以下である振動板と、振動板の一方の面に接着された第1の構造体と、振動板の他方の面に接着された第2の構造体とを備え、
第1の構造体は、第1のシリコン基板と、この第1のシリコン基板の一面に順に積層された第1の電極層、第1の圧電体膜および第1の対向電極層とを備え、第1の対向電極層を振動板の一方の面に対向させて、振動板の一方の面と接着されており、
第2の構造体は、第2のシリコン基板と、この第2のシリコン基板の一面に順に積層された第2の電極層、第2の圧電体膜および第2の対向電極層とを備え、第2の対向電極層を振動板の他方の面に対向させて、振動板の他方の面と接着されており、
第1の圧電体膜および第2の圧電体膜がペロブスカイト型酸化物からなり、第1の圧電体膜と第1の電極層との界面、および第2の圧電体膜と第2の電極層との界面にそれぞれ3nm以上のパイロクロア型酸化物層を有している。

0013

本発明の積層構造体においては、第1の対向電極層と振動板との間に第1の接着層を備え、第2の対向電極層と振動板との間に第2の接着層を備えていてもよい。
第1の接着層および第2の接着層は有機材料からなるものであってもよいが、無機材料からなるものであることが特に好ましい。

0014

本発明の積層構造体においては、第1の圧電体膜がスパッタ法により成膜された膜であり、第1の圧電体膜の自発分極ベクトルが第1の電極層から第1の対向電極層に向かい、第2の圧電体膜の自発分極ベクトルが第2の電極層から第2の対向電極層に向かうものであることが好ましい。

0015

本発明の積層構造体においては、第1の対向電極層および第2の対向電極層がパターン化されていてもよい。

0016

本発明の積層構造体においては、振動板はシリコンからなることが特に好ましい。

0017

本発明の積層構造体においては、第1の構造体と第2の構造体が振動板を挟んで対称構造であり、第1の圧電体膜および第2の圧電体膜を構成するペロブスカイト型酸化物の組成が同一であることが特に好ましい。

0018

本発明の積層構造体において、第1の圧電体膜および第2の圧電体膜を構成するペロブスカイト型酸化物は、特に限定されるものではなく、例えば、下記一般式(P)で表される1種又は複数種のペロブスカイト型酸化物からなるものとすることができる。
一般式ABO3 (P)
(式中、A:Aサイト元素であり、Pb,Ba,La,Sr,Bi,Li,Na,Ca,Cd,Mg,及びKからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、
B:Bサイトの元素であり、Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Sc,Co,Cu,In,Sn,Ga,Zn,Cd,Fe,およびNiからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、
O:酸素原子
サイト元素モル数が1.0であり、かつBサイト元素のモル数が1.0である場合が標準であるが、Aサイト元素とBサイト元素のモル数はペロブスカイト構造を取り得る範囲内で1.0からずれてもよい。)

0019

特には、ペロブスカイト型酸化物が、下記一般式PXで表されるものであることが好ましい。
Aa(Zrx,Tiy,Mb−x−y)bOc (PX)
一般式PXにおいて、AはAサイトの元素であり、Pbを含む少なくとも1種の元素であり、MはBサイト元素であり、V,Nb,Ta,およびSbからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素である。また、0<x<b、0<y<b、0≦b−x−yであり、a:b:c=1:1:3が標準であるが、これらのモル比はペロブスカイト構造を取り得る範囲内で基準モル比からずれてもよい。)

0020

本発明の圧電素子は、上記本発明の積層構造体の第1のシリコン基板および第2のシリコン基板の少なくとも一部が除去されてなる。

0021

すなわち、本発明の圧電素子は、シリコン基材の一面に、第1の電極層、第1の圧電体膜、第1の対向電極、厚みが10μm超500μm以下である振動板、第2の対向電極、第2の圧電体膜、第2の電極層がこの順に積層されてなり、
第1の圧電体膜および第2の圧電体膜がペロブスカイト型酸化物からなり、第1の圧電体膜と第1の電極層との界面、および第2の圧電体膜と第2の電極層との界面にそれぞれ3nm以上のパイロクロア型酸化物層を有するものである。

0022

本発明の圧電素子においては、第1の対向電極層と振動板との間に第1の接着層を備え、第2の対向電極層と振動板との間に第2の接着層を備えていてもよい。

0023

本発明の圧電素子の製造方法は、第1のシリコン基板の一面に第1の電極層、第1の圧電体膜および第1の対向電極層をこの順に積層して第1の構造体を作製する工程、
第2のシリコン基板の一面に第2の電極層、第2の圧電体膜および第2の対向電極層をこの順に積層して第2の構造体を作製する工程、
振動板基材の一方の面に第1の対向電極層を対向させて、振動板基材の一方の面に第1の構造体を貼り合わせる工程、
第1の構造体と貼り合わせた振動板基材の他方の面を研磨またはエッチングして振動板基材を振動板に加工する工程、
振動板の第1の構造体と貼り合わせていない露出面に第2の対向電極層を対向させて、その露出面に第2の構造体を貼り合わせて積層構造体を作製する工程、および
積層構造体から第1のシリコン基板および第2のシリコン基板の少なくとも一部を除去する工程を含む圧電素子の製造方法である。

0024

本発明の圧電素子の製造方法においては、第1の圧電体膜および第2の圧電体膜はいかなる材料からなるものであってもよく、各圧電体膜成膜方法も特に限定されないが、第1の圧電体膜および第2の圧電体膜として、ペロブスカイト型酸化物膜スパッタ成膜することが好ましい。そして、ペロブスカイト型酸化物膜としては、上記式PあるいはPXで示されるペロブスカイト型酸化物からなるものが特に好ましい。

0025

また、振動板基材を振動板に加工する工程においては、振動板基材を、10μm超500μm以下の厚みに調整して振動板とすることが好ましい。

0026

なお、第1の構造体を作製する工程において、第1の対向電極層としてパターン化した電極層を形成し、第2の構造体を作製する工程において、第2の対向電極層としてパターン化した電極層を形成することが好ましい。

0027

振動板基材の一方の面に第1の構造体を貼り合わせる工程において、振動板基材の一方の面および第1の対向電極層の表面の少なくとも一方に無機材料からなる接着層を形成し、その接着層を介して一方の面と第1の対向電極層の表面とを接合することが好ましい。

0028

振動板の露出面に第2の構造体を貼り合わせて積層構造体を作製する工程において、振動板の露出面および第2の対向電極層の表面の少なくとも一方に無機材料からなる接着層を形成し、その接着層を介して振動板の露出面と第2の対向電極層の表面とを接合することが好ましい。

0029

本発明の圧電素子の製造方法においては、振動板基材としてシリコン基材を用いることが特に好ましい。

発明の効果

0030

本発明の積層構造体は、振動板の厚みが10μm超500μm以下の範囲の十分に高い剛性のバイモルフ型の圧電素子を作製することができる。また、パイロクロア型酸化物層が圧電体膜の振動板側とは反対の界面に形成されているので、振動板側に備えられている場合と比較して、絶縁耐圧が高く、耐久性も高い圧電素子を得ることができる。

図面の簡単な説明

0031

本発明の圧電素子の一実施形態の積層構造を示す断面模式図である。
本発明の積層構造体の一実施形態の積層構造を示す断面模式図である。
図1に示す圧電素子の製造工程I〜IIIを示す工程図である。
図1に示す圧電素子の製造工程IV〜Vを示す工程図である。
実施例および比較例の片持ち梁型デバイスの上面図である。
図5Aの片持ち梁型デバイスのQ−Q’断面図である。

0032

以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。

0033

図1は本発明の実施形態に係る圧電素子1の構成例を示す断面図である。なお、視認容易のため、各層の膜厚やそれらの比率は、適宜変更して描いており、必ずしも実際の膜厚や比率を反映したものではない(以下の図面において同様とする。)。

0034

本実施形態に係る圧電素子1は、シリコン基材11a上に、第1の電極層12、第1の圧電体膜14、第1の対向電極層16、第1の接着層32、厚みが10μm超500μm以下である振動板31、第2の接着層34、第2の対向電極層26、第2の圧電体膜24、第2の電極層22がこの順に積層されてなる。すなわち、圧電素子1は、第1の圧電体膜14と、第1の圧電体膜14を挟む第1の電極層12および第1の対向電極層16とからなる第1の圧電部19と、第2の圧電体膜24と、第2の圧電体膜24を挟む第2の電極層22および第2の対向電極層26とからなる第2の圧電部29とが振動板31の両面に設けられてなるバイモルフ型の圧電素子である。なお、第1の接着層32および第2の接着層34を備えていなくても構わない。

0035

第1の圧電体膜14と第2の圧電体膜24とは、いずれもペロブスカイト型酸化物からなり、図1中の一部拡大図に示すように、第1の圧電体膜14と第1の電極層12との界面、および第2の圧電体膜24と第2の電極層22との界面にそれぞれ平均膜厚3nm以上のパイロクロア型酸化物層13、23を有している。パイロクロア型酸化物層13、23は平均膜厚が50nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましい。一方で、第1の圧電体膜14と第1の対向電極層16との界面、第2の圧電体膜24と第2の対向電極層26との間にはパイロクロア型酸化物層はほとんど存在しない。ここで、パイロクロア型酸化物層が存在しないとは、パイロクロア型酸化物の平均膜厚が2nm以下(0nmを含む)であることを意味する。パイロクロア型酸化物の平均膜厚の算出方法については後記する。

0036

図1に記載されている圧電体膜14および24中における矢印は、各膜における自発分極軸の向き(自発分極ベクトル)を示したものである。第1の圧電体膜14および第2の圧電体膜24はいずれもスパッタ法により成膜されてなるものであり、自発分極ベクトルが膜厚方向に沿い、互いに逆向きである。第1の圧電体膜14の自発分極ベクトルは第1の電極層12から第1の対向電極層16に向き、第2の圧電体膜24の自発分極ベクトルは第2の電極層22から第2の対向電極層26に向くものとなっている。
自発分極軸の向きは、電荷分布偏りによる双極子モーメントのベクトル(マイナスからプラスへの向き)で定義されるものである。圧電体膜では、分極方向と電界印加方向とが一致するときに、電界印加強度増減に伴う伸縮が効果的に起こり、電界誘起歪による圧電効果が効果的に得られる。

0037

なお、第1の電極層12と第2の電極層22、第1の圧電体膜14と第2の圧電体膜24、第1の対向電極層16と第2の対向電極層26とは、異なる材料および厚みで構成されていてもよいが、それぞれ同一の材料および厚みで構成されていることが好ましい。振動板31を挟んで層構造対称であれば、応力バランスが良く、かつ温度変化が生じても反りが発生しないデバイスを実現することができる。

0038

シリコン基材11aには凹部11bが形成されている。圧電素子1は、シリコン基材11aの凹部11bの開口領域Aに対応する位置における第1の電極層12、第1の圧電体膜14、第1の対向電極層16、振動板31、第2の対向電極層26、第2の圧電体膜24および第2の電極層22の積層体の部分が膜厚方向(図1の上下方向)に撓み変形可能な可動部として機能するダイアフラム構造を有する。

0039

シリコン基材11aは、第1の電極層12、第1の圧電体膜14、第1の対向電極層16、振動板31、第2の対向電極層26、第2の圧電体膜24および第2の電極層22の積層体を支持する支持部となる。すなわち、シリコン基材11aは、凹部11bの開口領域Aに対応する可動部の縁を固定する固定部として機能する。

0040

本実施形態に係る圧電素子1は、本発明の積層構造体から作製することができる。
なお、本明細書において「AにBを積層する」という表現は、Aに接してBをA上に直接積層する場合に限らず、AとBの間に他の1又は複数の層を介在させ、Aの上に1又は複数の層を介してBを積層する場合も有りうる。

0041

図2は、上記圧電素子1を作製するため積層構造体2の構成例を示す断面模式図である。
本実施形態の積層構造体2は、厚みが10μm超500μm以下である振動板31と、振動板31の一方の面に接着された第1の構造体10と、振動板31の他方の面に接着された第2の構造体20とを備えている。第1の構造体10は振動板31と第1の接着層32を介して貼り合わせられており、第2の構造体20は振動板31と第2の接着層34を介して貼り合わせられている。

0042

第1の構造体10は、第1のシリコン基板11と、第1のシリコン基板11の一面に順に積層された第1の電極層12、第1の圧電体膜14および第1の対向電極層16とを備え、第1の対向電極層16を振動板31の一方の面に対向させて、振動板31に接着されている。また、第2の構造体20は、第2のシリコン基板21と、第2のシリコン基板21の一面に順に積層された第2の電極層22、第2の圧電体膜24および第2の対向電極層26とからなり、第2の対向電極層26を振動板31の他方の面と対向させて振動板31に接着されている。
そして、第1の圧電体膜14および第2の圧電体膜24がペロブスカイト型酸化物からなり、第1の圧電体膜14と第1の電極層12との界面、および第2の圧電体膜24と第2の電極層22との界面にそれぞれ3nm以上のパイロクロア型酸化物層13、23を有している(図1の拡大図参照。)。

0043

本積層構造体2において第2のシリコン基板21を除去し、第1のシリコン基板11の一部を除去することにより図1に示した圧電素子1を得ることができる。

0044

図1に示す圧電素子1の製造方法を本発明の圧電素子の製造方法の一実施形態として、図3および図4を参照して説明する。
本発明の圧電素子の製造方法は、第1のシリコン基板11の一面に第1の電極層12、第1の圧電体膜14および第1の対向電極層16をこの順に積層して第1の構造体10を作製する工程I(図3のI参照)、第2のシリコン基板21の一面に第2の電極層22、第2の圧電体膜24および第2の対向電極層26をこの順に積層して第2の構造体20を作製する工程II(図3のII参照)、振動板基材30の一方の面30aに第1の対向電極層16を対向させて、振動板基材30の一方の面30aに第1の構造体10を貼り合わせる工程III(図3のIII参照)、振動板基材30の他方の面30bを研磨またはエッチングして振動板基材30の厚みを調整して振動板31に加工する工程IV(図4のIV参照)、厚みが調整された振動板基材(すなわち振動板31)の他方の面に第2の対向電極層26を対向させて、振動板基材の他方の面に第2の構造体20を貼り合わせて積層構造体2を作製する工程V(図4のV参照)、および、積層構造体2から第1のシリコン基板11および第2のシリコン基板21の少なくとも一部を除去する工程VIを含む(図1参照)。以下に各工程についてより詳細に説明する。

0045

[工程I:第1の構造体の作製]
第1のシリコン基板11の一面に第1の電極層12、第1の圧電体膜14および第1の対向電極層16をこの順に積層する。第1のシリコン基板11としては、標準市販品のシリコンウエハSOI構造を有しない非SOI基板)を用いることが好ましい。シリコンウエハは、その表面にSiO2膜(酸化膜)を有している構成でもよい。

0046

第1のシリコン基板11上への各層の成膜は薄膜形成法によって行われる。薄膜形成法には、物理気相成膜法PVD:physical vapor deposition)、化学的気相成膜法(CVD:chemical vapor deposition)、液相成膜法(めっき、塗布、ゾルゲル法スピンコート法など)、熱酸化法が含まれる。それぞれの層について適宜の成膜方法を選択できるが、すべての層を気相成長法で成膜する構成が最も好ましい。気相成長法は高精度な厚さ寸法制御が可能である。また、材料が安価で、成膜レートが高く、量産適性があるので、デバイスのコストダウンが可能である。特には、スパッタ法により成膜することが好ましい。

0047

第1の電極層12の材料は特に限定されず、金属でもよいし、酸化物導電体材料であってもよい。具体的には、Pt(白金)、Al(アルミニウム)、Mo(モリブデン)、TiN(窒化チタン)、Ru(ルテニウム)、Au(金)、銀(Ag)、Ir(イリジウム)、ITO(インジウムとスズの酸化物)などの材料を用いることができる。また、第1のシリコン基板11との密着性を高めるための密着層としてTiやTiW等を第1のシリコン基板11と第1の電極層12との間に設けてもよい。

0048

第1の電極層12の厚みついては、適宜の膜厚に設計することが可能であるが、50〜500nmであることが好ましい。電極層は厚すぎると電極部の剛性が高くなり圧電体膜の変位を制限してしまう恐れがあるため、厚みは50〜300nmがより好ましい。

0049

第1の圧電体膜14は、上記実施形態の圧電素子1においては、ペロブスカイト型酸化物からなり、スパッタ法に代表される気相成長法により基板温度を上げて(好ましくは400℃以上で)成膜中結晶化させる方法で形成される。なお、圧電体膜の成膜方法としてはスパッタ法に限らず、イオンプレーティング法MOCVD法有機金属気相成長法)、PLD法パルスレーザー堆積法)など、各種の方法を適用し得る。また、気相成長以外の方法(例えば、ゾルゲル法など)を用いることも考えられる。

0050

しかしながら、圧電体膜をスパッタ法により基板に直接成膜し、圧電体膜を薄膜化することで製造プロセスを簡便にすることができる。
本発明の圧電素子の製造方法においては、圧電体膜はペロブスカイト型酸化物からなるものに限定されない。

0051

第1の圧電体膜14の膜厚については、0.3μm以上10μm以下とすることが好ましく、より好ましくは、0.5μm以上8μm以下、さらに好ましくは1μm以上7μm以下である。0.3μm以上の厚みがあれば、アクチュエータとして十分な駆動力を発生することができ、センサ発電デバイスとして十分な電圧信号を取り出すことが可能となる。また、第1の圧電体膜14の厚みが0.3μm以上あれば、リーク電流破壊されるのを抑制でき、さらに、圧電体の結晶性が悪化して所要圧電性能が得られなくなるという問題も生じにくくすることができる。また、第1の圧電体膜14の膜厚が10μm以下であれば、クラックの発生を抑制し、剥離しやすくなる恐れも少ない。

0052

ペロブスカイト型の酸化物圧電体膜の成膜時には、成膜される成膜面との界面にはパイロクロア型酸化物層が形成されやすい。本例の場合には、第1の圧電体膜14の成膜時には第1の電極層12との界面に、第2の圧電体膜24の成膜時には第2の電極層22との界面にそれぞれパイロクロア型酸化物層13、23が形成される(図1参照。)。成膜条件によりパイロクロア型酸化物層の成長を抑制することは可能であるが、平均膜厚を3nm未満とすることは非常に困難である。パイロクロア型酸化物の成長を抑制する成膜条件を用いない場合には、60nmを超える平均膜厚のパイロクロア型酸化物層が形成される場合もある。

0053

第1の対向電極層16としては、Irが好適であるがIrに限らず、他の導電性材料を用いてもよい。第1の対向電極層16の厚みは特に制限なく、50〜500nmであることが好ましい。

0054

上述した各膜の成膜毎に大気や室温に戻してもよいし、連続成膜してもよい。また、必要に応じて、膜のパターニング(パターン化)を行っても構わない。なお、PZT以外の材料は室温成膜でもよいが、好ましくは加熱して成膜する方が、PZTに加わる応力を減らすことが可能であり、耐久性の観点から好ましい。

0055

[工程II:第2の構造体の作製]
第2のシリコン基板21の一面に第2の電極層22、第2の圧電体膜24および第2の対向電極層26をこの順に積層する。第2のシリコン基板21としては、第1のシリコン基板11と同様に、標準市販品のシリコンウエハを用いることが好ましい。また、第2の電極層22、第2の圧電体膜24および第2の対向電極層26の詳細については、それぞれ第1の電極層12、第1の圧電体膜14および第1の対向電極層16と同等である。
なお、積層構造体2および圧電素子1において、第1の電極層12と第2の電極層22、第1の圧電体膜14と第2の圧電体膜24、第1の対向電極層16と第2の対向電極層26とは、異なる材料および厚みで構成されていてもよいが、それぞれ同一の材料および厚みで構成されていることが好ましい。圧電素子は使用環境によってデバイスに反りが発生するという問題があったが、この反りの発生原因は、圧電体膜(14,24)に用いた圧電体材料と振動板31の材料の熱膨張係数差が主原因である。振動板31を挟んで対称な構造であれば、振動板の表裏において応力バランスが取れ、使用環境に依存せず反りがほとんどないデバイスを得ることができる。なお、第1の圧電体膜14に対する第2の圧電体膜24の厚みの比が0.25から4の範囲であれば、反り量を比較的抑制することができる。

0056

[工程III:第1の構造体と振動板基材との接着]
振動板基材30の一方の面30aおよび第1の構造体10の第1の対向電極層16の表面に接着層32a、32bを形成し、振動板基材30の一方の面30aに第1の接着層32を介して第1の構造体10を貼り合わせる。例えば、接着層32a、32bとしてAu−Snなどの無機半田膜を成膜し、加熱しながら貼り合わせることにより、Au−Snの共晶結合により接着する。なお、接着層32aおよび32bはいずれか一方のみ形成するようにしてもよい。また、共晶接合以外の方法で接着しても構わない。
なお、接着層の材料としては、有機材料を用いてもよいが、耐久性が高いことから無機半田材料などの無機材料を用いることがより好ましい。但し、無機材料は半田材料でなくとも構わない。なお、接合させる2つの面に対して表面活性処理を施して密着接合させる常温接合法を用いてもよい。常温接合法を用いた場合には、接着層を備えない積層構造体および圧電素子を得ることができる。

0057

振動板基材30としては、シリコン基板、ガラス基板、各種セラミックス基板を用いることができる。また、ステンレス基板金属基板であってもよい。種々の材料の基板を振動板基材として用いることができるため、設計の自由度が非常に高い。なお、厚み調整が容易であり取扱い性が良く、安価であることからシリコン基板が特に好ましい。
振動板基材30としては、ハンドリング性がよいことから200μm以上の厚みの基材を用いることが好ましく、500μm以上であることがより好ましい。

0058

[工程IV:振動板加工]
工程IIIの後、振動板基材30の他方の面30bを研磨またはエッチングして振動板基材30の厚みを調整して振動板31に加工する。圧電素子の振動板31として、用途に応じて設計された厚みとなるように研磨またはエッチングする。振動板31の厚みは10μm超500μm以下とすることが好ましく、20μm以上300μm以下とすることがより好ましい。

0059

[工程V:積層構造体の作製]
工程IVの後、振動板31の、振動板基材30の研磨またはエッチング処理後に露出した面(露出面)および第2の構造体20の第2の対向電極層26の表面に接着層34a、34bを形成し、振動板31(すなわち研磨後の振動板基材30)の露出面に第2の接着層34を介して第2の構造体20を貼り合わせて積層構造体2を作製する。接着層の材料および接着方法については、第1の構造体10と振動板基材30との接着の場合と同様である。

0060

[工程VI:素子成形]
上記のようにして得られた積層構造体2から第1のシリコン基板11および第2のシリコン基板21の少なくとも一部を除去して圧電素子1を形成する。より具体的には、積層構造体2をドライエッチングにより所望のデバイス形状パターン加工し、その後、第2のシリコン基板21を除去し、さらに第1のシリコン基板11の一部を除去して凹部11bを形成して、凹部11bを備えたシリコン基材11aを支持部とするダイアフラム構造(図1参照)を形成する。第1のシリコン基板11および第2のシリコン基板21の除去には、ドライエッチングやウエットエッチングなど公知のエッチング技術を適用できる。特に、反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching;RIE)が好適である。
以上の工程により図1に示す圧電素子1を得ることができる。

0061

本圧電素子の製造方法によれば、第1の構造体10、振動板基材30および第2の構造体20のいずれもシリコン基板など剛性の高い材料を含むため、製造時におけるハンドリング性が良く、製造効率を向上させることができる。また、振動板基材30を第1の構造体10と貼り合わせた後に、エッチングして所望の厚みの振動板31を得ることができるので、設計の自由度が非常に高い。振動板を成膜で作製する場合と比較して簡単に厚い振動板を作製することができ、剛性の高い素子を得ることができる。

0062

なお、第1の構造体および第2の構造体の作製時に、第1の対向電極層および第2の対向電極層について、パターン化しておくことにより、振動板側をアドレス電極とする圧電素子を得ることができる。なお、この場合、工程Vにおける貼り合わせ時に、第1の構造体と第2の構造体との位置合わせが必要となる。なお、この場合、積層構造体中における第1の対向電極層および第2の対向電極層は、それぞれパターン化電極となる。

0063

一方、第1の構造体および第2の構造体作製時にはパターン化電極を形成しない場合には、貼り合わせ時の位置合わせは不要であるが、積層構造体から圧電素子形成時において、第1のシリコン基板および第2のシリコン基板を除去して露出した第1の電極層および第2の電極層をパターニングする必要がある。

0064

第1の圧電体膜14および第2の圧電体膜24は、下記一般式(P)で表される1種又は複数種のペロブスカイト型酸化物からなるものであることが好ましい。
一般式ABO3 (P)
(一般式P中、A:Aサイトの元素であり、Pb,Ba,La,Sr,Bi,Li,Na,Ca,Cd,Mg,及びKからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、
B:Bサイトの元素であり、Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Sc,Co,Cu,In,Sn,Ga,Zn,Cd,FeおよびNiからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、
O:酸素原子、
Aサイト元素のモル数が1.0であり、かつBサイト元素のモル数が1.0である場合が標準であるが、Aサイト元素とBサイト元素のモル数はペロブスカイト構造を取り得る範囲内で1.0からずれてもよい。)

0065

上記一般式で表されるペロブスカイト型酸化物としては、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ジルコニウム酸鉛、チタン酸鉛ランタンジルコン酸チタン酸鉛ランタンマグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛、ニッケルニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛、亜鉛ニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛等の鉛含有化合物、およびこれらの混晶系;チタン酸バリウムチタン酸ストロンチウムバリウムチタン酸ビスマスナトリウムチタン酸ビスマスカリウムニオブ酸ナトリウムニオブ酸カリウムニオブ酸リチウムビスマスフェライト等の非鉛含有化合物、およびこれらの混晶系が挙げられる。

0066

また、本実施形態の圧電体膜は、下記一般式PXで表される1種又は2種以上のペロブスカイト型酸化物を含むことが好ましい。

0067

Aa(Zrx,Tiy,Mb−x−y)bOc (PX)
(一般式PX中、AはAサイトの元素であり、Pbを含む少なくとも1種の元素、Mが、V、Nb、Ta、およびSbからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素である。
0<x<b、0<y<b、0≦b−x−yであり、a:b:c=1:1:3が標準であるが、これらのモル比はペロブスカイト構造を取り得る範囲内で基準モル比からずれてもよい。)

0068

ペロブスカイト型酸化物(PX)は、真性PZT、あるいはPZTのBサイトの一部がMで置換されたものである。被置換イオンの価数よりも高い価数を有する各種ドナーイオンを添加したPZTでは、真性PZTよりも圧電性能等の特性が向上することが知られている。Mは、4価のZr,Tiよりも価数の大きい1種又は2種以上のドナーイオンであることが好ましい。かかるドナーイオンとしては、V5+,Nb5+,Ta5+,Sb5+,Mo6+,およびW6+等が挙げられる。

0069

b−x−yは、ペロブスカイト構造を取り得る範囲であれば特に制限されない。例えば、MがNbである場合、Nb/(Zr+Ti+Nb)モル比が0.05以上0.25以下であることが好ましく、0.06以上0.20以下であることがより好ましい。

0070

上述の一般式(P)および(PX)で表されるペロブスカイト型酸化物からなる圧電体膜は、高い圧電定数(d31定数)を有するため、かかる圧電体膜を備えた圧電素子は、変位特性検出特性の優れたものとなる。
特に一般式(PX)において、AサイトがPb、MがNbである、Pba(Zrx,Tiy,Nbb−x−y)bOcで表されるNbドープPZT(以下においてNb−PZT)膜は、成膜直後の状態(asdepo状態,as-deposited)で自発分極を示し、圧電性能が高く、かつ、構造体、振動板基材および第2の構造体の貼り合わせに高温での処理を要する共晶接合を用いた場合にも、自発分極が脱分極しないため好ましい。

0071

本発明の実施に際しては、鉛系のペロブスカイト型の圧電体材料のみならず、非鉛系のペロブスカイト型の圧電体材料も好適に用いることができる。また、本発明の圧電素子の製造方法においては薄膜形成することができる圧電体材料であればペロブスカイト型酸化物からなる圧電体材料のみならず、いかなる材料を採用してもよい。

0072

また、圧電体膜14、24は、高い圧電性能が得られることから、基板面に対して非平行方向に延びる多数の柱状結晶体からなる柱状構造膜であることが好ましい。基板面に対して非平行に延びる多数の柱状結晶からなる膜構造では、結晶方位の揃った配向膜が得られる。例えば、PZT系の圧電体膜をスパッタ法等の非熱平衡プロセスにより成膜した場合に(100)配向の膜構造を得ることができる。柱状結晶の成長方向は基板面に対して非平行であればよく、略垂直方向でも斜め方向でも構わない。圧電体膜をなす多数の柱状結晶の平均柱径は特に制限なく、30nm以上1μm以下が好ましい。

0073

なお、圧電体は結晶配向性によって撓みモードでの圧電性能、すなわちd31圧電定数(pm/V)が異なってくることが知られている。同じ配向性の圧電体膜であれば駆動条件も同じように扱うことができ、かつ、応力中性面のシフトも抑えられるため、第1の圧電体膜14と第2の圧電体膜24結晶配向性が同じ方向性である態様が好ましい。

0074

仮に、2層の圧電体膜の配向性が異なり、一方の圧電体膜が(100)方位、他方の圧電体膜が(111)方位の配向性を有しているとすると、それぞれの圧電体膜の駆動条件が大きく異なるため、駆動設計が複雑になる。

0075

この点、本例のように、2層の圧電体膜14,24を同一構成とすれば配向性も同等であるため駆動設計が容易になり、良好に駆動可能である。また、2層の圧電体膜(16,26)の配向性を同じにすることで、長期駆動時の歪みが少なく、信頼性の高いデバイスを実現できる。なお、圧電体膜は(100)方位に限らず、(001)方位の配向性を有するものであってもよい。

0076

また、上述したように、第1の圧電体膜14の第1の電極層12との界面および第2の圧電体膜24の第2の電極層22との界面には、パイロクロア型酸化物層13、23が形成されている。上記製造方法によれば、パイロクロア型酸化物層13、23は、それぞれ第1の圧電体膜14および第2の圧電体膜24の振動板31から遠い側の界面に位置する構成となるため、高い絶縁耐圧および高い耐久性を有する圧電素子を得ることができる。パイロクロア型酸化物層は、圧電素子の作動時においてクラックの起点となり、剥がれの原因になることがあるが、圧電体膜の振動板側に存在する場合と比較して、振動板から離れた側に存在する場合の方がクラックの発生を抑制することができ、耐久性を向上させることができる。

0077

一般にパイロクロア型酸化物とは、一般式がA2B2O7によって表される膜のことである。しかしながら、鉛系圧電体不純物として出現するパイロクロア型酸化物は、A2B2O7の他に、A3B4O13、A5B4O15およびA3B2O8などがある。

0078

<パイロクロア型酸化物層の平均層厚の測定>
パイロクロア型酸化物層の平均層厚は以下のように測定するものとする。

0079

1)高角散乱暗視野走査透過電子顕微鏡)法(HADF−STEM:high-angle annular dark-field scanning transmission electron microscopy)により、圧電体膜の、基板面に対して垂直な断面のHAADF−STEM像(特に圧電体—下部電極界面領域)を撮影する。これを原画像とする。

0080

2)HAADF−STEM像においてペロブスカイト型酸化物層とパイロクロア型酸化物層のコントラストが異なることを利用し、画像処理ソフトコントラスト調整機能を利用して、所定のしきい値(例えば原画像が255階調であれば、しきい値は100〜150程度)でパイロクロア型酸化物層を2値化し、画像処理ソフトのエッジ抽出機能を用いて抽出する。この場合のしきい値は、できるだけノイズを除去するとともに明らかにパイロクロア型酸化物層と判別できるものだけが抽出されるようにする。2値化画像においてパイロクロア型酸化物層の輪郭が不鮮明な場合、2値化画像を見ながら経験的に輪郭線を引き、その内部を塗りつぶす

0081

3)抽出したパイロクロア型酸化物層の面積を画像処理ソフトのピクセル数から算出し、HAADF−STEM像の視野幅で除して平均層厚とする。

0082

1)において、HAADF−STEM像を撮影するサンプルは、奥行き方向(観察断面と垂直方向)に100nmの均一な厚みとなるように加工されたものとする。HAADF−STEM像で観察する理由は、回折コントラストの影響を除き、ペロブスカイト型酸化物層とパイロクロア型酸化物層の密度差に起因するコントラストの違いを観察するためである。また、測定において、電子線は、基板面に対して垂直方向に入射させるものとする。画像処理ソフトとしては、例えばPhotoshopを利用するものとする。2値化画像において、パイロクロア型酸化物層を塗りつぶすのは、面積を過小評価することを防ぐためである。

0083

第1および第2の圧電体膜は、スパッタ法により形成され成膜直後に自発分極を有するものに限らず、成膜後に所望の分極状態を得るために、各圧電体膜を挟む電極間電圧印加するなどの方法により分極処理を実施してもよい。分極処理は、加熱を伴ってもよい。また、分極処理の方法として、コロナ法などの方式を採用してもよい。なお、上記したスパッタ法で成膜した場合等、成膜時の分極状態をそのまま利用することができる場合には、分極処理を省略できる。

0084

圧電体膜に電界を作用させる駆動電圧として、正負いずれの電位を選択してもよい。駆動する方向についても、図1において、振動板を上に凸の方向に撓ませるか、下に凸の方向に撓ませるかを圧電体膜の自発分極ベクトルと振動板31との関係で決めることができる。

0085

さらに、第1の圧電体膜14と、第2の圧電体膜24に印加する電圧の位相を変えてもよい。駆動の方法は、デバイスの用途および/または目的に応じて自由に選択することができる。例えば、第1の圧電部19と、第2の圧電部29とを互いに位相をずらして駆動した場合、どちらか一方の圧電部のみを駆動する場合よりも実効的に約2倍の変位を実現できる。例えば、振動板側の電極を接地電位とした場合、それぞれの圧電体の振動板と反対側の電極にマイナスの交流電圧を印加し、印加する電圧の位相を180度ずらすことで、大きな変位が得られる。

0086

本実施形態の圧電素子1は、アクチュエータとして利用する形態に限らず、圧電体膜の変位を電気信号に変換するセンサとして、あるいは圧電体膜の変位を電気エネルギーに変換する発電デバイスとして利用することも可能である。

0087

本実施形態の圧電素子1は、振動板31を挟んで第1の圧電部19および第2の圧電部29を備えたバイモルフ型であるため、1層(単層)の圧電体膜のみを有するユニモルフ型と比較して、圧電素子の実効的な性能向上を達成できる。例えば、図1で説明した構造の圧電素子をアクチュエータとして利用した場合には、1層(単層)の圧電体膜のみを有する構成と比べて、同等の変位を得るための駆動電圧を約1/2にすることができる。

0088

つまり、本実施形態の圧電素子1をアクチュエータとして利用する場合、比較的低電圧の駆動電圧の印加によって大きな変位を得ることができる。また、駆動電圧の低下によって駆動回路を含む制御回路の負担が軽減され、低コスト化省電力化、耐久性向上等を実現することができる。

0089

また、本実施形態の圧電素子1をセンサとして利用する場合についても、圧電体膜の変形によって大きな電圧信号を得ることができ、センサ感度を向上させることができる。

0090

さらに、本実施形態の圧電素子1を発電デバイスとして利用する場合、圧電体膜の積層によって発電電圧を増大させることができ、平面的に面積を増やしたものと同等の効果が得られる。これにより、小型で発電効率のよいデバイスを実現することができ、実用に適する所望の発電性能を実現できる。

0091

振動板31は振動板基材30をエッチングもしくは研磨して形成されたものであり、10μm超えの厚みであるので、素子全体としての剛性を向上させることができる。剛性が高まるため、共振周波数が高いデバイスの駆動源として用いることができる。さらに、第1の圧電体膜14と第2の圧電体膜24のそれぞれの膜厚や応力が異なっていても初期撓みを比較的小さく抑えることができ、デバイスに正常な動作を行わせることが可能となる。

0092

振動板31の両面に備えられる第1の圧電部19と第2の圧電部29の構成が振動板31を中心として対称であれば、環境温度に関わらず常に反りのないデバイスとすることができる。

0093

本圧電素子の製造方法によれば、第1の構造体と振動板基材を貼り合わせ、その後、研磨もしくはエッチングにより振動板基材の厚みを薄くして振動板に加工し、さらに振動板に第2の構造体を貼り合わせる方法で作製する。係る方法においては、貼り合わせ時の少なくとも一方の構造体として剛性の高いウエハを用いることができるのでハンドリング性が高い。また、振動板基材の厚みの設計自由度が高いので、デバイスの設計自由度も向上する。

0094

なお、本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内でこの技術分野における通常の知識を有するものにより、多くの変形が可能である。

0095

本発明の実施例および比較例について説明する。

0096

[実施例1]
第1のシリコン基板11である両面研磨の200μm厚のシリコンウエハ上に、第1の電極層12であるIr電極層を介して第1の圧電体膜14としてNb−PZT膜を3μm形成した。Nb−PZT膜上にはさらに第1の対向電極層16としてIr電極層を形成して第1の構造体10を得た。
同様に、第2のシリコン基板21である200μm厚のシリコンウエハ上に、第2の電極層22であるIr電極層を介して第2の圧電体膜24としてNb−PZT膜を3μm形成した。Nb−PZT膜上にはさらに第2の対向電極層26としてIr電極層を形成して第2の構造体20を得た。

0097

各Ir電極層はスパッタ法にて膜厚150nmの膜厚で形成した。成膜時の基板温度は350℃とした。
各Nb−PZT膜としてNbを13%(原子組成比)でドープしたPZT膜をスパッタ法にて基板温度を予めダミーSiウエハに埋め込んだ熱電対で測定した温度で約500℃の条件で成膜した。Nb−PZT膜の成膜には、高周波(RF;radio frequency)マグネトロンスパッタ装置を用いた。成膜ガスは97.5%Arと2.5%O2の混合ガスを用い、ターゲット材料としてはPb1.3((Zr0.52 Ti0.48)0.88 Nb0.12)O3の組成のものを用いた。成膜圧力は2.2mTorr(0.293Pa)とした。

0098

上記の成膜方法にて得られた膜は、ペロブスカイト構造の(100)方向に配向していた。また、この膜の断面SEM(Scanning Electron Microscopy:走査電子顕微鏡)像を観測したところ、電極と圧電体の界面に僅かなパイロクロア構造が観測された。シリコンウエハ上のIr電極層上へのNb−PZT膜形成は非エピタキシャル成長であるため、成膜初期核形成時において、ある一定の確率でパイロクロア構造のものができるものと思われる。成長が進むに連れて、ペロブスカイト構造の方が安定にできる成膜条件であるため、パイロクロア構造は消失し、ペロブスカイト構造のみになると推察している。また、得られた膜は、分極処理を行わない状態でも分極されていた。

0099

第1の構造体10の第1の対向電極層16の上に、無機接着層32aとしてAu−Snを5μm成膜にて形成した。
振動板基材30である500μm厚のシリコンウエハの一面に無機接着層32bとしてAu−Snを5μm形成し、第1のシリコン基板11上のAu−Sn膜上に、第1の構造体10のAu−Sn膜が形成された面を、300℃に加熱しながら貼り付けた。300℃で貼り付けることによりAu−Sn膜同士が溶け合い共晶結合により、振動板基材30の一面と第1の構造体10の第1の対向電極層16とが対向するように振動板基材30と第1の構造体10とを接着した。

0100

振動板基材30と第1の構造体10とを貼り合わせた後、振動板基材30である500μm厚のシリコンウエハを200μmまで研磨して振動板31に加工した。
その後、第2の構造体20を、振動板31の第1の構造体10との接合面の裏面となる露出面に上記と同じ方法にて貼り合わせて積層構造体2を得た。積層構造体2は反りのほとんど無いものが得られた。
その後、第2のシリコン基板21をドライエッチングにて取り除き、さらに第1のシリコン基板11も同様にして取り除き、ダイシングを行い、図5A(上面図)および図5B図5AのQ−Q’断面図)のような構成の片持ち梁型デバイスを作製した。なお、図5Bにおいて、接着層32、34は省略している。片持ち梁の幅は2mm、長さは約25mmとした。

0101

[実施例2]
実施例1と同じ方法において、第2の構造体20の第2の圧電体膜24の厚みを1μmとした以外は同様の方法で積層構造体を得た。本例の積層構造体では、3μmの厚みを有する第1の圧電体膜14を備えた第1の構造体10側を上にした場合、6インチウエハで全体として下に300μm凸となった。ここで、300μm凸とは、ウエハの両端部を基準としてその基準位置から、最も凸となるウエハ中心ウエハ厚み方向の距離、すなわち高低差が300μmであることを意味する。
その後、実施例1と同様にして片持ち梁型デバイスを作製した。

0102

[比較例1]
200μm厚のシリコンウエハ上にIr電極層を介して、圧電体膜としてNb−PZT膜を3μm形成し、Nb−PZT膜上にはさらに対向電極層としてIr層を形成した。これは、実施例1の第1の構造体および第2の構造体と同等の構成であり、所謂ユニモルフ構造の圧電素子である。本構成では、成膜基板でもある200μm厚のシリコンウエハが振動板に相当する。得られた構造体は下に凸に実施例2の場合よりも大きく、6インチウエハで300μm超反っていた。
その後、実施例1と同様にして、但し、振動板の一方の面側のみに圧電部を備えたユニモルフ構造の片持ち梁型デバイスを作製した。

0103

[比較例2]
200μm厚の両面研磨のシリコンウエハの両面にそれぞれIr電極層を形成し、片側ずつNb−PZT膜を同一条件にて3.0μmずつ成膜して200μm厚のシリコンウエハを振動板とするバイモルフ型構造体を作製した。
バイモルフ型構造体をダイシングして実施例1と同様の片持ち梁型デバイスを作製した。

0104

以下、各実施例および比較例において作製したデバイスについての評価方法および評価結果を説明する。表1に評価結果を纏めて示す。

0105

<層構造>
各実施例および比較例の積層構造体の断面SEM画像の観察により、各デバイスにおけるパイロクロア型酸化物層の位置を確認した。

0106

結晶構造
全ての実施例および比較例において圧電体膜の成膜条件は同一であり、上記の成膜条件で成膜した圧電体膜は、X線回折解析によりペロブスカイト単層であり、かつ結晶の(100)面に優先配向してなる膜であることを確認している。

0107

圧電特性
図5Aおよび図5Bに示す片持ち梁型デバイスについて、各圧電部に、振動板31側の電極層16、26を接地電位とし、振動板31側から遠い電極層12、22に1kHzのサイン波の電圧Vpp=10、オフセット電圧−5Vを印加した。それぞれの圧電体膜14、24へ印加する電圧は180°位相をずらした。この時の上下への変位量を測定した。駆動時の片持ち梁先端の変位速度レーザードップラー振動計(Laser Doppler Vibrometry,LDV)で測定し、変位速度と駆動周波数から変位量を算出した。表1には実施例1の変位量を1として規格化した値を示す。
また、各デバイスについて絶縁耐圧は、振動板側の電極を接地電位とし、反対側の電極にマイナスの直流電圧を、2V/秒にて上昇させながら、流れる電流を測定した。電流値が急激に大きくなり、大きなリーク電流が発生し絶縁破壊した電圧を絶縁耐圧の電圧とした。実施例1、2および比較例2については、振動板を挟んで配置されている2つの圧電部についてそれぞれ測定したが、1つの素子における2つの圧電部の絶縁耐圧は同等であった。

0108

<耐久性>
40℃、80%RHの環境下にて、振動板側を接地電位とした時に反対側の電圧にマイナス20V印加して1000時間駆動した。1000時間駆動後に、上記の変位測定と同じやり方で測定を行い、初期状態との変化をみた。

0109

0110

実施例1は、パイロクロア型酸化物層が第1の圧電体膜と第1の電極層との界面、および第2の圧電体膜と第2の電極層との界面に観察された。一方、各圧電体膜の振動基板側、すなわち第1の圧電体膜と第1の対向電極層との界面、および第2の圧電体膜と第2の対向電極層との界面にはパイロクロア型酸化物層は観察されなかった。絶縁耐圧は両面ともに200V以上と良好であった。駆動変位はユニモルフデバイスである比較例1と比べて2倍の変位量が得られた。また1000時間経過後の特性劣化もなかった。

0111

実施例2は、実施例1と同様に貼り合わせて作製したものであるため、パイロクロア型酸化物層が第1の圧電体膜と第1の電極層との界面、および第2の圧電体膜と第2の電極層との界面に観察され、各圧電体膜の振動基板側には観察されなかった。また、第2の圧電体膜の膜厚が小さいため、変位量は実施例1のデバイス程の大きさは得られなかったが、比較例1のものより大きかった。絶縁耐圧は実施例1と同等であった。なお、比較例1に比べると初期の反り量も抑えることができた。

実施例

0112

比較例2は振動板の両面にそれぞれ圧電体膜を直接成膜して形成するものであるため、振動板界面には約10nmのパイロクロア相が存在していた。変位量は実施例1と同等であったが、絶縁耐圧は実施例1と比較すると低い。また、耐久性の経時変化を測定した結果、僅かであるが、変位の劣化が見られた。
絶縁耐圧が低く、経時による変位量の低下は、振動板側にパイロクロア型酸化物層が存在するためであり、実施例1、2において、同等の膜厚で比較したとき、絶縁耐圧が高く、経時劣化が生じなかったのはパイロクロア型酸化物層が振動板から遠い側に存在したためであると推察される。

0113

本発明の圧電素子は、インクジェット装置高周波スイッチマイクロミラー、発電デバイス、スピーカーバイブレーターポンプおよび超音波探触子など様々な用途のデバイスとして好適な構造にて応用することができる。

0114

1圧電素子
2積層構造体
10 第1の構造体
11 第1のシリコン基板
11aシリコン基材
11b 凹部
12 第1の電極層
13パイロクロア型酸化物層
14 第1の圧電体膜
16 第1の対向電極層
19 第1の圧電部
20 第2の構造体
21 第2のシリコン基板
22 第2の電極層
23 パイロクロア型酸化物層
24 第2の圧電体膜
26 第2の対向電極層
29 第2の圧電部
30振動板基材
31振動板
32 第1の接着層
34 第2の接着層

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