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技術 アクリル酸等のα、β−不飽和カルボン酸、その誘導体の製造法

出願人 国立研究開発法人産業技術総合研究所
発明者 川波肇畑田清隆石坂孝之長尾育弘
出願日 2015年6月30日 (5年7ヶ月経過) 出願番号 2015-131949
公開日 2017年1月19日 (4年0ヶ月経過) 公開番号 2017-014144
状態 特許登録済
技術分野 触媒を使用する低分子有機合成反応 有機低分子化合物及びその製造
主要キーワード モリブデン系合金 ニオブ系合金 銅ワイヤー 脱水過程 高温高圧条件下 高温高圧水中 石油由来原料 高温高圧処理
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図面 (9)

課題

2−ヒドロキシカルボン酸やその誘導体から高温高圧処理水処理によるα,β−不飽和カルボン酸やその誘導体を従来技術と同程度か、それ以上の収率(40%程度以上の収率)、選択率で選択的に合成する製造方法を提供する。

解決手段

2−ヒドロキシカルボン酸及び/又はその誘導体からα,β−不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体を得る反応において、200℃〜500℃、10MPa〜50MPaの高温高圧水中、金属(ただし、オーステナイト系ステンレス鋼ニッケルクロムモリブデン系合金、ニッケルクロム鉄ニオブ系合金黄銅を除く。)の存在下で反応させることを特徴とする。

概要

背景

α,β−不飽和カルボン酸を合成する手法は、種々報告されており、例えば固体触媒存在下、気相脱水法による製造法が報告されている(特許文献1)。特に乳酸からのアクリル酸合成は、乳酸が天然物発酵等から容易に得られることから、石油由来原料からの脱却を図る技術として長年注目されてきた技術課題である。乳酸の脱水反応で得られる化合物は、図1に示したとおりで、乳酸を原料としてPath Iを経由してアセトアルデヒド、Path IIを経由してペンタンジオン、Path IIIを経由してアクリル酸、Path IVを経由してプロパンジオール、Path Iを経てさらにPath Vを経由して酢酸、Path IIIを経てPath VIを経由してプロピオン酸、Path IIIを経てPath VIIを経由してエチレンと主に7種類の生成物が挙げられるが、その他にも乳酸自体が重合することによって得られるポリ乳酸などがある。その中でも、アクリル酸は、吸水ポリマー等の原料になることから、ポリ乳酸と同じように多くの研究が行われている。乳酸やそのエステル体からPath IIIを経由して脱水反応によってアクリル酸およびアクリル酸エステルが得られる(非特許文献1〜10)。

乳酸の脱水によるアクリル酸の製造法としては、1)無機酸の使用、2)有機酸の使用、3)固体酸の使用、4)高温高圧水(HPHT−H2O)または亜臨界超臨界水の使用等が挙げられる。特に、HPHT−H2Oまたは亜臨界・超臨界水を用いる場合、反応容器耐熱耐圧性を持たせるため、ハステロイC−276(非特許文献1、非特許文献3)、アルミナ(外はハステロイC−276、非特許文献1)、インコネル625(非特許文献2)、石英(非特許文献6)などが用いられており、シンプルな構造のシステムで反応が行われている。

しかし、これらの合成方法は、乳酸の転化率は高いものの、アクリル酸の収率は最大で53%程度であり効率の低さが乳酸を原料とするアクリル酸合成の問題点だった。

概要

2−ヒドロキシカルボン酸やその誘導体から高温高圧処理水処理によるα,β−不飽和カルボン酸やその誘導体を従来技術と同程度か、それ以上の収率(40%程度以上の収率)、選択率で選択的に合成する製造方法を提供する。2−ヒドロキシカルボン酸及び/又はその誘導体からα,β−不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体を得る反応において、200℃〜500℃、10MPa〜50MPaの高温高圧水中、金属(ただし、オーステナイト系ステンレス鋼ニッケルクロムモリブデン系合金、ニッケルクロム鉄ニオブ系合金黄銅を除く。)の存在下で反応させることを特徴とする。

目的

本発明は、乳酸等の2−ヒドロキシカルボン酸やその誘導体を原料として、当該原料に銅等の金属触媒の存在下で、高温高圧水を用いた処理を施すことにより、アクリル酸等のα,β−不飽和カルボン酸やその誘導体を合成する新技術を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

2−ヒドロキシカルボン酸及び/又はその誘導体からα,β−不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体を得る反応において、200℃〜500℃、10MPa〜50MPaの高温高圧水中、金属(ただし、オーステナイト系ステンレス鋼ニッケルクロムモリブデン系合金、ニッケルクロム鉄ニオブ系合金黄銅を除く。)の存在下で反応させることを特徴とする、2−ヒドロキシカルボン酸及び/又はその誘導体からα,β−不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体を合成ずる製造方法。

請求項2

前記金属が、アルミニウムシリコンチタンバナジウム、鉄、ニッケル、銅、亜鉛ジルコニウムモリブデンルテニウムロジウムパラジウム、銀、タンタルタングステンレニウムイリジウム白金、金、鉛から選択される1種類の金属又は2種類以上を含む合金であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。

請求項3

前記金属は、粒子ワイヤー、又は、管の形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。

請求項4

前記管は、内径が0.1mm以上5mm以下であることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。

請求項5

前記ワイヤーは、太さが直径1μm以上5mm以下、長さが1cm以上であることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。

請求項6

前記粒子は、直径が1μm以上5mm以下であることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。

請求項7

前記2−ヒドロキシカルボン酸及び/又はその誘導体が、2−ヒドロキシカルボン酸、2−ヒドロキシカルボン酸エステル、2−ヒドロキシカルボン酸アミド、及び/又は、2−ヒドロキシカルボン酸チオエステルである請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。

請求項8

前記2−ヒドロキシカルボン酸、及び/又は、前記2−ヒドロキシカルボン酸エステルが、一般式(I)で示される化合物(但し、R1、R2は、それぞれ独立して、水素アルキル基シクロアルキル基ビニル基フェニル基等のアリール基含窒素ヘテロアリール基アミノ基(−NR’R”)、水酸基チオール基アルコキシ基(−O−R)、チオアルコキシ基(−S−R)、アルデヒド基カルボキシ基アルキルカルボニル基(−C(O)R)、アルキルエステル基(−C(O)OR)、アルキルアミド(−C(O)NR’R”)、ベンジル基ハロゲン(F,Cl,Br,I)、ホスホニル基(−P(O)(OR)2)、シアノ基スルホニル基(−S(O)2R)、スルフィニル基(−S(O)R)から選択される1種を示し(前記式中、R’、 R”は、それぞれ独立して、水素又はアルキル基を示し、Rはアルキル基を示す。)、R3は、水素、アルキル基、シクロアルキル基、ビニル基、アリール基、アミノ基から選択される1種を示す。)であることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。

請求項9

前記2−ヒドロキシカルボン酸及び/又はその誘導体が、乳酸乳酸メチル乳酸エチル、乳酸プロピル、2−ヒドロキシイソ酪酸、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸プロピル、乳酸アミド、N,N−ジメチル乳酸アミド、及び/又は、乳酸チオエステルであり、α,β−不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体が、アクリル酸アクリル酸エステルメタクリル酸メタクリル酸エステルアクリルアミドジメチルアクリルアミド、及び/又は、アクリル酸チオエステルであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。

請求項10

前記2−ヒドロキシカルボン酸及び/又はその誘導体が、乳酸、乳酸エステル、及び/又は、乳酸アミドであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、アクリル酸等のα、β−不飽和カルボン酸やその誘導体新規製造方法に関するものである。より具体的には、本発明は、乳酸等の2−ヒドロキシカルボン酸やその誘導体を原料として、当該原料に銅等の金属触媒の存在下で、高温高圧水を用いた処理を施すことにより、アクリル酸等のα,β−不飽和カルボン酸やその誘導体を合成する新技術を提供するものである。

背景技術

0002

α,β−不飽和カルボン酸を合成する手法は、種々報告されており、例えば固体触媒存在下、気相脱水法による製造法が報告されている(特許文献1)。特に乳酸からのアクリル酸合成は、乳酸が天然物発酵等から容易に得られることから、石油由来原料からの脱却を図る技術として長年注目されてきた技術課題である。乳酸の脱水反応で得られる化合物は、図1に示したとおりで、乳酸を原料としてPath Iを経由してアセトアルデヒド、Path IIを経由してペンタンジオン、Path IIIを経由してアクリル酸、Path IVを経由してプロパンジオール、Path Iを経てさらにPath Vを経由して酢酸、Path IIIを経てPath VIを経由してプロピオン酸、Path IIIを経てPath VIIを経由してエチレンと主に7種類の生成物が挙げられるが、その他にも乳酸自体が重合することによって得られるポリ乳酸などがある。その中でも、アクリル酸は、吸水ポリマー等の原料になることから、ポリ乳酸と同じように多くの研究が行われている。乳酸やそのエステル体からPath IIIを経由して脱水反応によってアクリル酸およびアクリル酸エステルが得られる(非特許文献1〜10)。

0003

乳酸の脱水によるアクリル酸の製造法としては、1)無機酸の使用、2)有機酸の使用、3)固体酸の使用、4)高温高圧水(HPHT−H2O)または亜臨界超臨界水の使用等が挙げられる。特に、HPHT−H2Oまたは亜臨界・超臨界水を用いる場合、反応容器耐熱耐圧性を持たせるため、ハステロイC−276(非特許文献1、非特許文献3)、アルミナ(外はハステロイC−276、非特許文献1)、インコネル625(非特許文献2)、石英(非特許文献6)などが用いられており、シンプルな構造のシステムで反応が行われている。

0004

しかし、これらの合成方法は、乳酸の転化率は高いものの、アクリル酸の収率は最大で53%程度であり効率の低さが乳酸を原料とするアクリル酸合成の問題点だった。

0005

特開平3−167157号公報

先行技術

0006

William Shu-Lai Mork and Michael Jerry Antal, Jr.,Formation of Acrylic Acid from Lactic Acid in supercritical water, J. Org. Chem., 1989, 54, 4596-4602.
T.M. Aida, A. Ikarashi, Y. Saito, M. Watanabe, R.L. Smith, K. Arai, J. Supercritical. Fluids50 (2009) 257.
C.T. Lira, P.J. McCrackin, Ind. Eng. Chem. Res. 32 (1993) 2608.
Z. Zhang, Y. Qu, S. Wang, J. Wang, J. Mol. Catal. A 323 (2010) 91.
G.C. Gunter, D.J. Miller, J.E. Jackson, J. Catal. 148 (1994) 252.
D.C. Wadley, M.S. Tam, P.B. Kokitkar, J.E. Jackson, D.J. Miller, J. Catal. 165 (1997) 162.
M.S. Tam, G.C. Gunter, R. Craciun, D.J. Miller, J.E. Jackson, Ind. Eng. Chem. Res. 36 (1997) 3505.
H. Wang, D. Yu, P. Sun, J. Yan, Y. Wang, H. Huang, Catal. Commun. 9 (2008) 1799.
J. Zhang, Y. Zhao, M. Pan, X. Feng, W. Ji, C.T. Au, ACS Catal. 1 (2011) 32.
P. Sun, D. Yu, K. Fu, M. Gu, Y. Wang, H. Huang, H. Ying, Catal. Commun. 10 (2009) 1345.

発明が解決しようとする課題

0007

本発明は、上述のような従来技術を背景としたものであり、2−ヒドロキシカルボン酸やその誘導体からα,β−不飽和カルボン酸やその誘導体を従来技術と同程度か、それ以上の収率(40%程度以上の収率)、選択率で選択的に合成する製造方法を提供することを課題としており、殊に2−ヒドロキシカルボン酸である乳酸からアクリル酸を合成する際に、副生成物であるプロピオン酸、酢酸、二酸化炭素等の生成を抑え、アクリル酸を選択的に合成する製造方法を提供することを課題とするものである。

課題を解決するための手段

0008

このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、高温高圧水を媒体かつ触媒として乳酸からアクリル酸を合成する手法を開発することを目標として種々検討を重ねた結果、反応を行っている反応容器が触媒していることに気付き、触媒作用を改善することで、乳酸からアクリル酸を選択的に合成する手法を確立することに成功し、本発明を完成するに至った。

0009

上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)2−ヒドロキシカルボン酸及び/又はその誘導体からα,β−不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体を得る反応において、200℃〜500℃、10MPa〜50MPaの高温高圧水中、金属(ただし、オーステナイト系ステンレス鋼ニッケルクロムモリブデン系合金、ニッケルクロム鉄ニオブ系合金黄銅を除く。)の存在下で反応させることを特徴とする、2−ヒドロキシカルボン酸及び/又はその誘導体からα,β−不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体を合成ずる製造方法。
(2)前記金属が、アルミニウムシリコンチタンバナジウム、鉄、ニッケル、銅、亜鉛ジルコニウムモリブデンルテニウムロジウムパラジウム、銀、タンタルタングステンレニウムイリジウム白金、金、鉛から選択される1種類の金属又は2種類以上を含む合金であることを特徴とする前記(1)に記載の製造方法。
(3)前記金属は、粒子ワイヤー、又は、管の形状であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の製造方法。
(4)前記管は、内径が0.1mm以上5mm以下であることを特徴とする前記(3)に記載の製造方法。
(5)前記ワイヤーは、太さが直径1μm以上5mm以下、長さが1cm以上であるところを特徴とする前記(3)に記載の製造方法。
(6)前記粒子は、直径1μm以上5mm以下であるところを特徴とする前記(3)に記載の製造方法。
(7)前記2−ヒドロキシカルボン酸及び/又はその誘導体が、2−ヒドロキシカルボン酸、2−ヒドロキシカルボン酸エステル、2−ヒドロキシカルボン酸アミド、及び/又は、2−ヒドロキシカルボン酸チオエステルである前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の製造方法。
(8)前記2−ヒドロキシカルボン酸、及び/又は、前記2−ヒドロキシカルボン酸エステルが、一般式(I)で示される化合物(但し、R1、R2は、それぞれ独立して、水素アルキル基シクロアルキル基ビニル基フェニル基等のアリール基含窒素ヘテロアリール基アミノ基(−NR’R”)、水酸基チオール基アルコキシ基(−O−R)、チオアルコキシ基(−S−R)、アルデヒド基カルボキシ基アルキルカルボニル基(−C(O)R)、アルキルエステル基(−C(O)OR)、アルキルアミド(−C(O)NR’R”)、ベンジル基ハロゲン(F,Cl,Br,I)、ホスホニル基(−P(O)(OR)2)、シアノ基スルホニル基(−S(O)2R)、スルフィニル基(−S(O)R)から選択される1種を示し(前記式中、R’、R”は、それぞれ独立して、水素又はアルキル基を示し、Rはアルキル基を示す。)、R3は、水素、アルキル基、シクロアルキル基、ビニル基、アリール基、アミノ基から選択される1種を示す。)であることを特徴とする前記(7)に記載の製造方法。



(9)前記2−ヒドロキシカルボン酸及び/又はその誘導体が、乳酸、乳酸メチル乳酸エチル、乳酸プロピル、2−ヒドロキシイソ酪酸、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸プロピル、乳酸アミド、N,N−ジメチル乳酸アミド、及び/又は、乳酸チオエステルであり、α,β−不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体が、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸メタクリル酸エステルアクリルアミドジメチルアクリルアミド、及び/又は、アクリル酸チオエステルであることを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれか1項に記載の製造方法。
(10)前記2−ヒドロキシカルボン酸及び/又はその誘導体が、乳酸、乳酸エステル、及び/又は、乳酸アミドであることを特徴とする前記(1)〜(9)のいずれか1項に記載の製造方法。

発明の効果

0010

本発明の製造方法によれば、2−ヒドロキシカルボン酸やその誘導体からアクリル酸等のα,β−不飽和カルボン酸やその誘導体を40%以上の高い収率、選択率で製造することができる。しかも、製造物中の不純物(酢酸、プロピオン酸)含有量が少ない。さらに、反応温度条件や圧力条件等の反応条件を適切に調整することにより収率や選択率を80%程度以上や90%程度以上に向上することもできる。

図面の簡単な説明

0011

乳酸の脱水反応や該脱水反応を含む反応経路により得られる化合物例を示す図面。
実施例のアクリル酸の製造に用いた高温高圧マイクロリアクターを示す概略図。
実施例で用いた高温高圧マイクロリアクターの反応部を構成する二重管(反応管)の一部を示す図面。
実施例1で得られた生成物サンプルのGCチャートを示す図面。
実施例1の各反応温度(300〜420℃)において得られた生成化合物(アクリル酸、ヒドロキシアセトン、酢酸、プロピオン酸、アセトアルデヒド、3−メチル−2(5H)−フラノン)の収率を示す図面。
実施例2で用いた高温高圧マイクロリアクターの反応部を構成する反応管とその内部の反応部全長にわたって管軸方向に延設された銅ワイヤーの断面を示す図面。
実施例2で用いた高温高圧マイクロリアクターの反応部を構成する反応管とその内部に不規則に配された直径0.35mm、長さ2.57mmの銅ワイヤーとを示す図面。
実施例3の各反応温度(300〜420℃)において得られた生成化合物(アクリル酸、ヒドロキシアセトン、酢酸、プロピオン酸、アセトアルデヒド、3−メチル−2(5H)−フラノン)の収率を示す図面。

0012

次に、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明は、2−ヒドロキシカルボン酸やその誘導体を高温高圧水中で脱水反応させてα,β−不飽和カルボン酸やその誘導体を製造する方法であって、脱水反応をさせる際に、金属(ただし、オーステナイト系ステンレス鋼、ニッケルクロムモリブデン系合金、ニッケルクロム鉄ニオブ系合金、黄銅を除く。)を存在させることによって、水による無秩序な脱水反応を抑え、選択的に目的物を合成することを特徴とする手法である。

0013

本発明における反応は、図2に示すように、高温高圧マイクロリアクターを用いた反応システムが好適なものとして例示されるが、これと同効のシステムであれば同様に使用することが可能である。ここで、当該反応システムは、高温高圧水と乳酸などの原料水溶液を混合する混合手段に高温高圧マイクロリアクター、反応管から構成される反応部、これらを収容するためのオーブン設備反応液温度条件を所定の温度にコントロールするための熱電対、反応管で、高温高圧水条件下で反応させた反応液を所定の温度に冷却するための冷却器(熱交換器)、冷却した後に脱圧するための背圧弁などを備えている。

0014

図2に示した反応温度200℃〜500℃、10MPa〜50MPaの超臨界水を含む高温高圧水中で行われるが、好適には温度300℃〜420℃、圧力30MPa〜50MPa、更に好適には320℃〜420℃、圧力35MPa〜45MPaの範囲で反応させると収率良く目的物を得ることが出来る。

0015

本反応は、反応時間は、各原料の濃度や反応速度に応じて変わるが、平均して0.1秒から10分の反応時間で反応させることで、概ね最大収率でもって目的物を得ることができるが、更に好適には1秒以上5分以内、最も好適には1秒以上1分以内で反応させることで、オーバーリアクションを抑制しながら目的物を得ることができる。

0016

本反応は、高温高圧水中における脱水過程を金属(ただし、オーステナイト系ステンレス鋼、ニッケルクロムモリブデン系合金、ニッケルクロム鉄ニオブ系合金、黄銅を除く。)存在下で反応を行うことで、選択的にα,β−不飽和カルボン酸を得ることが出来るが、その際にアルミニウム、シリコン、チタン、バナジウム、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、タンタル、タングステン、レニウム、イリジウム、白金、金、鉛の中から選択される1種類の金属又は2種類以上を含む合金を用いることで選択的に目的物を得ることが出来るが、より好適には、金、銀、銅、鉄、ニッケル、亜鉛の中から1種類以上選ばれる金属あるいはこれらを含む合金を用いることで、目的物を選択的に得ることが出来る。

0017

本反応で用いた金属は、流通式およびバッチ式の何れの方法で用いることが出来、通常の形態は、耐熱および耐圧性を持たせるために図2の反応管として例えば、Inconel625製(ニッケル系合金)、ハステロイC276(ニッケル系合金)またはSUS316製(ステンレス系)の管の中に粒子、ワイヤー、管状のいずれかの形態で挿入して用いることが出来、粒状である場合は、直径1μm以上〜5mm以下の粒子で、ワイヤー状の場合は、長さは特に限定されないが、直径1μm以上5mm以下で長さ1cm以上のワイヤーを1本でも良いし、複数本束ねて良いし、ランダムに詰めて利用することが出来、管であれば、内径0.1mm〜5mmのものを1本でも良いし、複数本束ねても用いることで、目的物を選択的に得ることが出来る。なお、この場合、反応管の外径、内径、長さなどは、その実施に当たり適宜設計することが可能であり、上記反応管の耐熱や耐圧を持たせるための材質、外径、内径、長さの条件についても適宜設定することができる。

0018

本発明では、原料の2−ヒドロキシカルボン酸あるいは、2−ヒドロキシカルボン酸エステルが、下記一般式(I)で示される化合物(但し、R1、R2は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、シクロアルキル基、ビニル基、フェニル基等のアリール基、含窒素ヘテロアリール基、アミノ基(−NR’R”)、水酸基、チオール基、アルコキシ基(−O−R)、チオアルコキシ基(−S−R)、アルデヒド基、カルボキシ基、アルキルカルボニル基(−C(O)R)、アルキルエステル基(−C(O)OR)、アルキルアミド(−C(O)NR’R”)、ベンジル基、ハロゲン(F,Cl,Br,I)、ホスホニル基(−P(O)(OR)2)、シアノ基、スルホニル基(−S(O)2R)、スルフィニル基(−S(O)R)から選択される1種を示し(前記式中、R’、 R”は、それぞれ独立して、水素又はアルキル基を示し、Rはアルキル基を示す。)、R3は、水素、アルキル基、シクロアルキル基、ビニル基、アリール基、アミノ基から選択される1種を示す。)を用いることで、α,β−不飽和カルボン酸を好適に得ることが出来るが、更に好適には、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、2−ヒドロキシイソ酪酸、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸プロピルを用いることで、好適に目的のアクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル等のα,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体を得ることができる。

0019

反応溶液酸性度は、いずれの酸性度でも好適に目的物を合成することが出来るが、反応時に用いる金属の溶出腐食を考えて酸性度pH5〜10の範囲で行えば好適に目的物を収率良く得ることが可能で、更にはpH6〜8の中性付近の範囲で行えば最も好適に目的物を得ることができる。なお、強酸性では金属の溶出が著しく、特に高温高圧中では溶出速度が速くなることから、強酸性で行うことは好ましくない。

0020

次に、実施例および比較例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例などによって何ら限定されるものではない。

0021

<実施例1>[乳酸からアクリル酸の合成1]
反応は、通式高温高圧マイクロリアクションシステムを用いて行った。図2に、高温高圧マイクロリアクションシステムの反応部を示した。反応は、外形1/8インチのSUS316製の管の内側に内径0.5mmの銅管ライニングさせた長さ10mの二重管(図3)を用いて反応を行った。

0022

2−ヒドロキシカルボン酸として乳酸を原料に用い、α,β−不飽和カルボン酸としてアクリル酸を目的物として反応を行った。乳酸水溶液(0.11M、0.5mL/分)を、高温高圧の水(蒸留水またはイオン交換水、2.0mL/分)とマイクロミキサーで素早く混合し、室温(25℃)から所定の温度(300、320、340、360、380、400℃、420の各温度、圧力40MPa)へと急速に昇温させた。昇温後の温度は、熱電対で観測入り口と出口の温度差が0.1℃未満となるようオーブンの温度を調整した。混合・昇温させて高温高圧条件下の反応管で反応させた後、冷却器(熱交換器)で所定の温度(40℃)に冷却した後、最後に背圧弁を介して脱圧した。反応時間は、水の密度から換算して、300℃で46.8秒、320℃で44.7秒、360℃で39.7秒、380℃で36.4秒、400℃で32.0秒、420℃で25.9秒であった。得られたサンプルは、透明な水溶液で、分析は、特に処理をせずに、水溶液のまま液体クロマトグラフィーおよびガスクロマトグラフィー(GC)で分析を行い、生成物を分析した。

0023

図4に、得られたサンプル(反応温度380℃、反応圧力40MPa、反応時間36.4秒)のGCチャートを示す。カラムはHP−INNOWAXを用い、検出器FID検出器を用いて生成物の検出を行った。各ピーク化合物同定は、GC−MSと標準サンプルから、そして各化合物の収率は、標準サンプルを用いて検量線を作成して求めた。

0024

図5に、各温度で行った時のアクリル酸、ヒドロキシアセトン、酢酸、プロピオン酸、アセトアルデヒド、3−メチル−2(5H)-フラノンの各収率を求めてグラフに示した。40MPaにおいては、360℃〜380℃に極大値があることがわかり、アクリル酸の収率が85%と最も高くなることが分かった。同時にアセトアルデヒドの収率が10%と減少することも分かった。なお、以下の実施例2〜5も含め、何れの場合も原料の乳酸は残って居らず、転化率100%であった。そのため、実施例1〜5において、選択率と収率の数値は同一であった。

0025

<実施例2>[乳酸からアクリル酸の合成2−銅の形状の影響調査
図6図7に示すように、SUS316製管内の反応部全長にわたって銅ワイヤーが封入された反応管を用いた以外は実施例1と同様の条件でアクリル酸の合成を行った。その結果、それぞれの反応管において、アクリル酸は380℃前後で収率80%以上になることが分かった。
なお、銅ワイヤーとSUS316製管の条件は次のとおりで、銅ワイヤー体積を除く反応部内容積を全ての例でほぼ一定となるように設定した。
[銅ワイヤー]
図6-(a):直径2.0mm、(b):直径1.6mm、(c):直径1.2mm、(d):直径0.25mm、図6-(a)〜(d)では、反応部全長にわたって管軸方向に延設した長尺ワイヤー。図7:直径0.35mm、長さ2.57mmの不規則に配置された銅ワイヤー。
[SUS316製管]
図6-(a)〜6-(c)は、外径1/4インチ、内径4.3mm。
図6-(d)は、外径1/8インチ、内径1.78mm。
図7は、外径1/4インチ、内径4.3mm。

0026

<実施例3>[乳酸エステルからアクリル酸エステルの合成]
原料として乳酸エチルを用いた以外は実施例1と同様の条件でアクリル酸エチル合成反応を行った。図8に、各反応温度(300〜420℃)において得られた生成化合物であるアクリル酸、ヒドロキシアセトン、酢酸、プロピオン酸、アセトアルデヒド、3−メチル−2(5H)-フラノンの各収率を示した。アクリル酸エチルは、加水分解されてアクリル酸となっているものの、アクリル酸の収率は、40MPa、380℃で、83%と高収率で得られることが分かった。

0027

<実施例4>[乳酸アミドからアクリル酸アミドの合成]
原料として乳酸アミドを用いた以外は実施例1と同様の条件でアクリル酸アミドの合成反応を行った。結果、アクリルアミドが40MPa、380℃で90%以上の高収率で得られることが分かった。

0028

<実施例5>[乳酸からアクリル酸の合成3−金属の種類の影響調査]
銅の代わりに、金、銀、白金、パラジウム、又は、チタンを用いた以外は実施例1と同様の条件でアクリル酸の合成を行った。その結果、アクリル酸がそれぞれ65%、80%、72%、50%、44%であった。銅が最も好適であるが、金、銀、白金、パラジウム、チタンにも同様に反応の効率を上げる効果があることが判明した。

0029

<比較例1>[乳酸からアクリル酸の合成4−合金の種類の影響調査1]
反応管の材料としてSUS316、ハステロイ(登録商標)C−276、又は、インコネル625の合金系を用いた以外は実施例1と同様の条件でアクリル酸の合成を行った。結果、いずれの合金の場合もアクリル酸の収率は最高で14%程度に留まり、効果があまりないことが判明した。また、SUS316を用いた場合、400℃、40MPaにおける生成物の内訳は、アセトアルデヒドが49%、ヒドロキシアセトンが1.5%、酢酸が8.2%、プロピオン酸が29%、アクリル酸が7.9%、その他(フラノン等)が4.2%と、アクリル酸以外の副生成物、特にプロピオン酸とアセトアルデヒドが主生成物であることが判明した。

0030

<比較例2>[乳酸からアクリル酸の合成5−合金の種類の影響調査2]
SUS316製管内面に黄銅(C2680)をライニングした反応管を用いた以外は実施例1と同様の条件でアクリル酸の合成を行った。黄銅の場合収率は最高で1.4%に留まり、銅と亜鉛からなる合金は、効果があまりないことが判明した。

実施例

0031

<比較例3>[乳酸からアクリル酸の合成6−酸化物使用の影響調査]
実施例1と同様の条件で、SUS316製反応管にアルミナ、ジルコニア、又はチタニア粒子(粒径0.1mm)を充填して反応を行ったが、アクリル酸の収率は最高で3%であり、効果が無いことが判明した。

0032

以上詳述した通り、本発明は、乳酸の高温高圧処理水処理によるアクリル酸の合成方法に係るものであり、反応時に銅などの金属(ただし、オーステナイト系ステンレス鋼、ニッケルクロムモリブデン系合金、ニッケルクロム鉄ニオブ系合金、黄銅を除く。)を反応系中に存在させることでアクリル酸の選択率・収率が従来の40%〜50%程度だったものを50%以上や80%以上へ向上させることが可能となった。しかも媒体は水のみであることから環境にもやさしく、産業上の利用可能性がある。

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