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技術 呼気試料採取容器

出願人 日本電信電話株式会社国立大学法人東京工業大学
発明者 吉村了行阪本匡保井孝子界義久吉田尚弘山田桂太峯田裕己
出願日 2015年6月16日 (4年1ヶ月経過) 出願番号 2015-121273
公開日 2017年1月12日 (2年6ヶ月経過) 公開番号 2017-009288
状態 特許登録済
技術分野 サンプリング、試料調製 生物学的材料の調査,分析
主要キーワード ME機器 抽出完了後 利用割合 炭素同位体比 管理された状態 アセトン量 サンプリングバッグ 同一生体
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年1月12日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (9)

課題

途中で息を止めることなく一息の中の任意の部分の呼気採取し、一息の中での微妙な変動などを調べることなどへの応用を可能とする。

解決手段

呼気を吹き入れるための注入口と、吹き入れられた前記呼気を呼気試料として貯蔵するための貯蔵部と、貯蔵された前記呼気試料を排出するための排出口とを具備し、前記注入口を開閉するための注入口開閉弁と、前記排出口を開閉するための排出口開閉弁とを更に具備することを特徴とする、呼気試料採取容器である。

概要

背景

厚生労働省発表した2010年国民健康・栄養調査によると、国内の糖尿病患者数は250万人、有病者の数は900万人との推定されており、その予備群も加えると2300万人となる。全世界では、糖尿病患者数は2億5000万人とされている。予防医学早期診断などが進まない限り、糖尿病患者数が増加するのは明白である。

糖尿病の検査項目において、第1選択に位置づけられる項目グリコヘモグロビンA1c(HbA1c)検査である。また、糖尿病のスクリーニング及び糖尿病患者の日常治療効果モニタリングに使用されているのがグルコースセンサーによる血糖値の測定である。しかし、HbA1c値と平均血糖値との間に乖離がある場合も報告されており、HbA1c値のみを用いた糖尿病診断の問題性が指摘されている。また、いずれの方法も血液を試料としており、侵襲的な検査のため患者の痛みを伴い、頻繁に検査をすることができない。尿糖測定用グルコースセンサーも市販されているが、疾患との相関が悪く、糖尿病の検査としては使用されていない。

一方、非侵襲的な検査として、1990年から、大学や企業で近赤外線を用いた非侵襲的血糖値測定技術の開発が進められており、指などの近赤外透過スペクトルから血糖値を求める方法がある。しかし、この方法は、疾患との相関が悪く、現在まで実用化されているものはない。米国では皮膚から間質液を抽出し、グルコースセンサーでグルコース値連続測定できる非侵襲的グルコースモニタリング装置があり、FDA承認されている。しかし、この装置による測定は、1型糖尿病患者(インシュリン依存型)に対して有効性が示されているが、糖尿病患者の9割を占める2型糖尿病(インシュリン非依存型)では有効性が示されていない。

近年では、生体試料中アセトン濃度を測定し、その値から、糖尿病疾患に関わる代謝の正常と異常を区別することが議論されてきた(非特許文献1及び2)。しかしながら、アセトン濃度は同じ人間でも時間で大きく変化し、また個人差も大きいことから、正常と異常の濃度範囲をどのように設定するかが非常に難しいと指摘されている(非特許文献3)。

また、糖尿病のような代謝異常の疾患の評価及び診断を行うために13C標識化合物投与代謝産物への13C再分配パターン計測するという方法も報告されている。この方法は、代謝前駆物質代謝中間体代謝生成物の関係を有機分子の構成炭素部位ごとに明確に関連付けることができる優れた方法ではあるが、専門的な医療機関において厳密に管理された状態で13C標識基質を投与し、それに続く経過観察を行う必要がある(特許文献1)。

従来、糖尿病の検査に用いられてきたHbA1c検査やグルコースセンサーによる血糖値の測定は、いずれもの方法も血液を試料としている。

概要

途中で息を止めることなく一息の中の任意の部分の呼気採取し、一息の中での微妙な変動などを調べることなどへの応用を可能とする。呼気を吹き入れるための注入口と、吹き入れられた前記呼気を呼気試料として貯蔵するための貯蔵部と、貯蔵された前記呼気試料を排出するための排出口とを具備し、前記注入口を開閉するための注入口開閉弁と、前記排出口を開閉するための排出口開閉弁とを更に具備することを特徴とする、呼気試料採取容器である。

目的

特に、糖尿病診断技術は、糖尿病患者を増やさないための予防医学的なもの、或いは、早期診断であることが必要であるが、そのような技術分野に適用可能な分析手段又はモニタリング手段を開発することが望まれている

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

呼気を吹き入れるための注入口と、吹き入れられた前記呼気を呼気試料として貯蔵するための貯蔵部と、貯蔵された前記呼気試料を排出するための排出口とを具備し、前記注入口を開閉するための注入口開閉弁と、前記排出口を開閉するための排出口開閉弁とを更に具備することを特徴とする、呼気試料採取容器

請求項2

前記呼気試料から揮発した揮発性有機化合物固相マイクロ抽出(SPME)するための抽出口を具備することを特徴とする、請求項1に記載の呼気試料採取容器。

請求項3

前記呼気試料から揮発した揮発性有機化合物を抽出するための抽出口を具備し、前記抽出口が、樹脂から成るセプタムにより封止されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の呼気試料採取容器。

請求項4

前記貯蔵部の内部に乾燥剤を具備することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の呼気試料採取容器。

請求項5

呼気試料中に含まれる揮発性有機化合物の天然の安定炭素同位体比(13C/12C)を分析する方法であって、前記呼気試料中に含まれる前記揮発性有機化合物の前記天然の安定炭素同位体比(13C/12C)を測定する工程を含み、前記天然の安定炭素同位体比(13C/12C)を測定する際に、請求項1〜4のいずれか1項に記載の呼気試料採取容器を用いる工程を含むことを特徴とする方法。

請求項6

呼気試料中に含まれる揮発性有機化合物の天然の安定炭素同位体比(13C/12C)を分析する方法であって、(a)前記呼気試料中に含まれる前記揮発性有機化合物を、前記呼気試料から濃縮抽出する工程と、(b)濃縮抽出された前記揮発性有機化合物の天然の安定炭素同位体比(13C/12C)を測定する工程と、を含み、前記揮発性有機化合物を、前記呼気試料から濃縮抽出する手段が、請求項1〜4のいずれか1項に記載の呼気試料採取容器を含むことを特徴とする方法。

請求項7

脂質の代謝をモニタリングする方法であって、(a)呼気試料中に含まれる揮発性有機化合物を、前記呼気試料から濃縮抽出する工程と、(b)濃縮抽出された前記揮発性有機化合物の天然の安定炭素同位体比(13C/12C)を測定する工程と、を含み、前記揮発性有機化合物の天然の安定炭素同位体比(13C/12C)の減少が生体内における脂質の代謝の亢進を示し、前記揮発性有機化合物を、前記呼気試料から濃縮抽出する手段が、請求項1〜4のいずれか1項に記載の呼気試料採取容器を含むことを特徴とする方法。

技術分野

0001

本発明は、呼気試料採取容器に関し、これを用いて呼気試料中に含まれる揮発性有機化合物天然の安定炭素同位体比(13C/12C)を分析する方法および脂質の代謝をモニタリングする方法に関する。

背景技術

0002

厚生労働省発表した2010年国民健康・栄養調査によると、国内の糖尿病患者数は250万人、有病者の数は900万人との推定されており、その予備群も加えると2300万人となる。全世界では、糖尿病患者数は2億5000万人とされている。予防医学早期診断などが進まない限り、糖尿病患者数が増加するのは明白である。

0003

糖尿病の検査項目において、第1選択に位置づけられる項目グリコヘモグロビンA1c(HbA1c)検査である。また、糖尿病のスクリーニング及び糖尿病患者の日常治療効果のモニタリングに使用されているのがグルコースセンサーによる血糖値の測定である。しかし、HbA1c値と平均血糖値との間に乖離がある場合も報告されており、HbA1c値のみを用いた糖尿病診断の問題性が指摘されている。また、いずれの方法も血液を試料としており、侵襲的な検査のため患者の痛みを伴い、頻繁に検査をすることができない。尿糖測定用グルコースセンサーも市販されているが、疾患との相関が悪く、糖尿病の検査としては使用されていない。

0004

一方、非侵襲的な検査として、1990年から、大学や企業で近赤外線を用いた非侵襲的血糖値測定技術の開発が進められており、指などの近赤外透過スペクトルから血糖値を求める方法がある。しかし、この方法は、疾患との相関が悪く、現在まで実用化されているものはない。米国では皮膚から間質液を抽出し、グルコースセンサーでグルコース値連続測定できる非侵襲的グルコースモニタリング装置があり、FDA承認されている。しかし、この装置による測定は、1型糖尿病患者(インシュリン依存型)に対して有効性が示されているが、糖尿病患者の9割を占める2型糖尿病(インシュリン非依存型)では有効性が示されていない。

0005

近年では、生体試料中アセトン濃度を測定し、その値から、糖尿病疾患に関わる代謝の正常と異常を区別することが議論されてきた(非特許文献1及び2)。しかしながら、アセトン濃度は同じ人間でも時間で大きく変化し、また個人差も大きいことから、正常と異常の濃度範囲をどのように設定するかが非常に難しいと指摘されている(非特許文献3)。

0006

また、糖尿病のような代謝異常の疾患の評価及び診断を行うために13C標識化合物投与代謝産物への13C再分配パターン計測するという方法も報告されている。この方法は、代謝前駆物質代謝中間体代謝生成物の関係を有機分子の構成炭素部位ごとに明確に関連付けることができる優れた方法ではあるが、専門的な医療機関において厳密に管理された状態で13C標識基質を投与し、それに続く経過観察を行う必要がある(特許文献1)。

0007

従来、糖尿病の検査に用いられてきたHbA1c検査やグルコースセンサーによる血糖値の測定は、いずれもの方法も血液を試料としている。

0008

特開2007−192831号公報

先行技術

0009

C. Deng, et al., “Determination of acetone in human breath by gas chromatography-mass spectrometry and solid-phase microextraction with on-fiber derivatization,” Journal of Chromatography B, 810, 269-275, 2004.
他,「糖尿病患者における呼気アセトン測定の意義」,総合保健体育科学 28(1), 57-60, 2005
D. Smith, et al., “Can volatile compoundsin exhaled breath be used to monitor control in diabetes mellitus?,” J. Breath Res. 5, 1-8, 2011.
K. Yamada, et al., “Determination of hydrogen, carbon and oxygen isotope ratios of ethanol in aqueous solution at millimole levels,” Rapid Commun. Mass Spectrom. 2007; 21: 1431-1437.
K. Yamada, et al., “Determination of carbon isotope ratios of methanol and acetaldehyde in air samples by gas chromatography-isotope ratio mass spectrometry combined with headspace solid-phase microextraction,” Isotopes in Environmental and Health Studies, Vol. 46, No. 3, September 2010, 392-399.

発明が解決しようとする課題

0010

上述したように、従来、糖尿病の検査に用いられてきたHbA1c検査やグルコースセンサーによる血糖値の測定は、HbA1c値と平均血糖値との間に乖離が生じるという問題がある上に、いずれもの方法も血液を試料としており、侵襲的な検査のため患者の痛みを伴い頻繁に検査ができないという問題があった。

0011

尿試料は、呼気試料と同様患者の痛みを伴わない非侵襲的手段で試料を採取することができるが、尿中のアセトンはある程度の時間をかけて蓄積されるため、その炭素同位体比などの測定値は、蓄積される時間をかけて平均化された値を示すことになる。そのため、大局的な傾向をモニタリングするのには適しているが、俊敏な時間変化をモニタリングする目的には適していない。また、尿試料はプライバシーの問題や、精神的な抵抗感があるため、医療機関などによる検査などの特別な場合を除くと、被験者から提供を受けることが難しく、応用分野を広げることが困難であるという問題もある。

0012

皮膚ガスも、呼気と同様に非侵襲的で生体代謝状態の逐次的な時間変化を俊敏にモニタリングすることに適するという利点を有するが、量が少なく採取するのが難しいという問題がある。

0013

従って、簡便な日常的検査を可能にする新規な糖尿病診断技術に適用可能な分析手段又はモニタリング手段が要望されている。特に、糖尿病診断技術は、糖尿病患者を増やさないための予防医学的なもの、或いは、早期診断であることが必要であるが、そのような技術分野に適用可能な分析手段又はモニタリング手段を開発することが望まれている。

課題を解決するための手段

0014

本発明の課題を解決するための手段の一例は、呼気を吹き入れるための注入口と、吹き入れられた前記呼気を呼気試料として貯蔵するための貯蔵部と、貯蔵された前記呼気試料を排出するための排出口とを具備し、前記注入口を開閉するための注入口開閉弁と、前記排出口を開閉するための排出口開閉弁とを更に具備することを特徴とする、呼気試料採取容器である。

0015

ここで、前記呼気試料から揮発した揮発性有機化合物を固相マイクロ抽出(SPME)するための抽出口を具備することが好ましい。

0016

更に、前記呼気試料から揮発した揮発性有機化合物を抽出するための抽出口を具備し、前記抽出口が、樹脂から成るセプタムにより封止されていることが好ましい。

0017

更に、前記貯蔵部の内部に乾燥剤を具備することが好ましい。

0018

本発明の課題を解決するための手段の別の例は、呼気試料中に含まれる揮発性有機化合物の天然の安定炭素同位体比(13C/12C)を分析する方法であって、前記呼気試料中に含まれる前記揮発性有機化合物の前記天然の安定炭素同位体比(13C/12C)を測定する工程を含み、前記天然の安定炭素同位体比(13C/12C)を測定する際に、前述の呼気試料採取容器を用いる工程を含むことを特徴とする方法である。

0019

本発明の課題を解決するための手段の更に別の例は、呼気試料中に含まれる揮発性有機化合物の天然の安定炭素同位体比(13C/12C)を分析する方法であって、(a)前記呼気試料中に含まれる前記揮発性有機化合物を、前記呼気試料から濃縮抽出する工程と、(b)濃縮抽出された前記揮発性有機化合物の天然の安定炭素同位体比(13C/12C)を測定する工程と、を含み、前記揮発性有機化合物を、前記呼気試料から濃縮抽出する手段が、前述の呼気試料採取容器を含むことを特徴とする方法である。

0020

本発明の課題を解決するための手段の更に別の例は、脂質の代謝をモニタリングする方法であって、(a)呼気試料中に含まれる揮発性有機化合物を、前記呼気試料から濃縮抽出する工程と、(b)濃縮抽出された前記揮発性有機化合物の天然の安定炭素同位体比(13C/12C)を測定する工程と、を含み、前記揮発性有機化合物の天然の安定炭素同位体比(13C/12C)の減少が生体内における脂質の代謝の亢進を示し、前記揮発性有機化合物を、前記呼気試料から濃縮抽出する手段が、前述の呼気試料採取容器を含むことを特徴とする方法である。

発明の効果

0021

本発明の呼気試料採取容器は、呼気試料を用いる容器であるため、非侵襲的手段で試料を採取することができ、頻繁に検査を実施することが可能となる。また、特別な施設内での前準備及び経時的な観測を必要とせず、任意の時間に簡便な試料採取が可能である。このため、患者自身で試料の採取を行うことが可能であり、非常に簡便かつ経済的な分析方法となる。特に、呼気を用いるため、呼気中の揮発性有機化合物は生体の状態に即して俊敏に変化するので、生体の代謝状態の逐次的な時間変化を俊敏にモニタリングすることに適するという利点がある。皮膚ガスと比べて大量の試料を採取することが容易である。

0022

また、本発明による呼気試料採取容器は、途中で息を止めることなく一息の中の任意の部分の呼気を採取できることが確認できる。本発明は、一息の中での微妙な変動などを調べることなどへの応用にも適している。

0023

更に、本発明の脂質の代謝をモニターする方法は、生体内における脂質代謝の亢進をモニターすることができる。

図面の簡単な説明

0024

本発明の呼気試料採取容器の一例を示す概略部分縦断面図である。
(a)はSPME機器の概略側面図であり、(b)は(a)のニードル部の拡大図であり、(c)は、呼気試料中のアセトンを、ニードル部のファイバー表面に吸着する様子を示す図である。
図1の呼気試料採取容器を用いて採取し貯蔵された呼気試料から、SPME法によりアセトンを濃縮抽出する様子を説明する概念図である。
生体内でのアセトンの代謝経路を説明するための説明図である。
生体中のケトン体の代謝経路とアセトンの天然の安定炭素同位体比計測から定量的に糖質と脂質の利用率を区別する原理を説明するための説明図である。
SPMEの暴露時間の変化に対する、アセトンの濃度と天然の炭素同位体比の関係を示す図である。
(a)〜(c)は、封緘燃焼法を用いてアセトンの天然の安定炭素同位体比の真値を求める手順を示す図である。
健常な被験者の呼気を採取し、呼気試料中のアセトン濃度、及びアセトンの天然の安定炭素同位体比を観測した結果を表す図である。

0025

以下、本発明を実施するための形態の一例を説明する。

0026

<呼気試料採取容器>
図1は、本発明の呼気試料採取容器の一例を示す概略部分縦断面図である。図1の呼気試料採取容器9は、呼気を吹き入れるための注入口1と、吹き入れられた呼気を呼気試料として貯蔵するための貯蔵部5と、貯蔵された呼気試料を排出するための排出口3とを具備し、注入口1を開閉するための注入口開閉弁2と、排出口3を開閉するための排出口開閉弁4とを更に具備するものである。

0027

弁2、4を除く容器9全体は、例えばガラスを材料として作製することができるが、気密性を有する他の材料を用いることもできる。

0028

注入口1は、人が口にくわえて呼気を吹き込むのに適した構造を有していればよい。特に、注入口1の内径は、吹き始めの呼気、中間部の呼気、吹き終わりの呼気などを適切に選択するために、例えば1〜8mmが好ましい。

0029

排出口3の構造は、吹き入れられた呼気により、貯蔵部5内にある空気が適切に排出できる構造であればよい。排出口3の内径は、例えば1〜8mmが好ましい。

0030

貯蔵部5は、吹き入れられた呼気を呼気試料として貯蔵するためのものである。貯蔵部5の容量は、例えば吹き始めの呼気、中間部の呼気、吹き終わりの呼気などを適切に選択して貯蔵できる程度の容量である10〜1000mL、例えば100mLであるのが好ましい。10mL以上とすると呼気成分均質化が得られるため好ましく、1000mL以下とすると吹き始めの呼気、中間部の呼気、吹き終わりの呼気の選択性が高まるためで好ましい。貯蔵部5は、好適には、後述する抽出口6を介してSPME機器10のニードル部12のファイバーが露出した状態で維持できる形状を有する。図1に示された例においては、貯蔵部5の内部の上面から下面までの距離は、例えば3〜20cmである。

0031

注入口開閉弁2は、注入口1を独立に開閉できる弁であり、排出口開閉弁4は、排出口3を独立に開閉できる弁である。注入口開閉弁2および排出口開閉弁4の構造は、図示されたものに限定されない。

0032

図1に示された例においては、貯蔵された呼気試料から揮発性有機化合物(例えばアセトン)を固相マイクロ抽出(SPME)するための抽出口6が設けられている。抽出口6は、容器9の上部に設けるのが好ましいが、側部等に設けてもよい。後述する乾燥剤8が貯蔵部5内の下面に設けられている場合は、乾燥剤8を避けるように設けるとよい。

0033

図1において、抽出口6は弾力性のある樹脂から成るセプタム7により封止されている。セプタム7は、呼気試料の抽出時に後述のSPME機器10のニードル部12のファイバーを貫通させることができ、抽出完了後にファイバーを抜き取ると開けられた貫通穴が樹脂の弾力性により再び封止されるようになっている。抽出口6を弾力性のある樹脂からなるセプタムで封止すれば、抽出時はファイバーを貫通させ容器9内部に挿入し、揮発性有機化合物を抽出することができ、抽出完了後にファイバーを抜き取ると、ファイバーによって開けられた貫通穴は、樹脂の弾力性により再び封止されるため、抽出後の呼気試料は漏れることなく、しばらくの間保管することができる。

0034

容器9内には乾燥剤8が具備されている。呼気中に多量の水分が含まれている場合、通常の容器9を用いて呼気を採取すると、揮発性有機化合物が呼気中の水分に溶け込み測定の正確度を低下させることがある。乾燥剤8は、呼気中の水分を吸収し、揮発性有機化合物が水分に溶け込み測定の正確度を低下させるという問題を除去するためのものである。容器9内に乾燥剤8を具備すれば、呼気中の水分は乾燥剤8に吸収されるため、揮発性有機化合物が呼気中の水分に溶け込み測定の正確度を低下させることを回避することができる。後述の実施例では乾燥剤として硫酸ナトリウムを用いたが、他の乾燥剤を用いることもできる。

0035

<呼気の採取>
呼気の採取は、下記のような手法で行うことができる。

0036

通常は、注入口開閉弁2および排出口開閉弁4を開き、注入口1を口にくわえて呼気を吹き込む。呼気を吹き込み、内部に入っていた空気が呼気に置換された後、排出口開閉弁4を先に閉じ、次いで注入口開閉弁2を閉じることにより、呼気を採取することができる。

0037

ここで、一般的なサンプリングバッグを使って、例えば中間部の呼気を採取する場合、息を吐き、いったん息を止めて、サンプリングバッグに注入するという過程で採取する必要があるが、いったん息を止めることが、成分変動に影響を与える可能性があるという問題がある。更に、呼気は、一息のなかでも、吹き始め、中間部、吹き終わりなどで成分等が微妙に変動する可能性もある。

0038

特に、吹き始めの呼気を採取する場合は、まず注入口開閉弁2および排出口開閉弁4を開き、注入口1を口にくわえて呼気を吹き込む。吹き始めの呼気の量に相当する所定量の空気(呼気)が排出口3から排出された後すぐに、あるいは吹き始めの呼気が貯蔵部5に貯蔵されたと被験者が認識した段階で、排出口開閉弁4を先に閉じ、次いで注入口開閉弁2を閉じることにより、拭き始めの呼気を採取することができる。

0039

同様に、特に、中間部の呼気を採取する場合は、まず注入口開閉弁2および排出口開閉弁4を開き、注入口1を口にくわえて呼気を吹き込む。中間部の量に相当する所定量の空気(呼気)が排出口3から排出された後、あるいは中間部の呼気が貯蔵部5に貯蔵されたと被験者が認識した段階で、排出口開閉弁4を先に閉じ、次いで注入口開閉弁2を閉じることにより、中間部の呼気を採取することができる。

0040

同様に、特に、吹き終わりの呼気を採取する場合は、まず注入口開閉弁2および排出口開閉弁4を開き、注入口1を口にくわえて呼気を吹き込む。吹き終わりの量に相当する所定量の空気(呼気)が排出口3から排出された後、あるいは吹き終わりの呼気が貯蔵部5に貯蔵されたと被験者が認識した段階で、排出口開閉弁4を先に閉じ、次いで注入口開閉弁2を閉じることにより、吹き終わりの呼気を採取することができる。

0041

本発明による呼気試料採取容器は、注入口1と排出口3、及び独立に開閉できる注入口開閉弁2および排出口開閉4を備えるため、途中で息を止めることなく、排出口開閉弁4を閉めるタイミングを調整することにより、一息の中の任意の部分の呼気を採取できるという利点があり、一息の中での微妙な変動などを調べることなどへの応用にも適しているという利点がある。

0042

<SPME機器>
図2は、本発明の呼気試料採取容器に好適に用いられるSPME機器等を示す説明図である。図2において、(a)はSPME機器の概略側面図であり、(b)は(a)のSMPE機器のニードル部の拡大図であり、(c)は、呼気試料中のアセトン(揮発性有機化合物の典型例)を、ニードル部に吸着する様子を示す図である。

0043

SPME機器の本体構成と抽出原理を図2に示す。図2(a)及び図2(b)に示したように、SMPE機器10の本体構成は、ホルダー部11と取り換え可能なニードル部12に分かれており、ニードル部12のファイバー表面には吸着材コーティングされている。コーティング剤は、揮発性有機化合物を選択的に抽出することの出来るものであればいずれのものも使用できる。例えば、Carboxen(商標)/PDMSを挙げることができる。未使用時、ファイバーはホルダー部11内に格納されており、濃縮抽出時にファイバーを暴露させることで、目的成分を吸着させる(図2(c))。

0044

SPME法は、測定対象物(揮発性有機化合物)を吸着するための吸着材を備えたニードル部12のファイバー表面に目的の成分を吸着させて濃縮を行う方法である。呼気試料のような気体試料の場合には、SPME法を適用し、気体試料にニードル部12のファイバー表面を接触させて濃縮を行うことができる。この濃縮抽出法は、目的成分の濃縮を自動的に行えるので、極微量成分を濃縮して抽出することも可能である点で非常に優れている。また、SPME法は簡便かつ迅速な操作が可能である点においても非常に優れている。

0045

呼気試料採取容器9を用いて採取され貯蔵された呼気試料から揮発性有機化合物をSPME法により濃縮抽出する際には、呼気試料採取容器9の抽出口6を封止しているセプタム7に、SMPE機器10のニードル部12のファイバーを突き刺すことができる。ファイバー表面を呼気試料中で暴露させ、揮発性有機化合物を選択的に吸着させる(図3)。抽出が完了したら、ファイバーを引出しホルダー部11内に格納し、抽出口から引き抜くことができる。

0046

<原理>
以下、本発明の呼気試料採取容器を、呼気試料中に含まれる揮発性有機化合物の天然の安定炭素同位体比(13C/12C)を分析する方法および脂質の代謝をモニタリングする方法に適用する際の原理を説明する。

0047

まず、呼気などの生体試料に含まれるアセトンについて説明する。生体試料に含まれるアセトンは、図4に示すようなアセトンの代謝経路により生じる。即ち、グルコース及び脂肪酸は、それぞれ解糖系及びβ酸化によりアセチルCoAに変換され、クエン酸回路TCA回路)により消費される。ここで、肝臓では、肝臓のミトコンドリア内で、アセチルCoAは3−ヒドロキシ酪酸或いはアセト酢酸に変換され、アセト酢酸は脱炭酸してアセトンへと変化する。糖尿病などでβ酸化が過度に亢進した場合、ケトン体(アセト酢酸、3−ヒドロキシ酪酸及びアセトン)が大量に生産される。また、絶食などによってグルコースが枯渇した場合もケトン体が生成される。

0048

生体内でのアセトンの代謝経路を考えた場合、図4に示されるように、アセトンはグルコースと脂肪酸に由来する。同一生体内のグルコースと脂肪酸の天然の安定炭素同位体比(13C/12C)は明確に異なることが知られている。ここで、絶食状態又は糖尿病状態を考えると、血中から細胞内へのグルコースの取り込みが低下し、アセトンの代謝経路において脂肪酸の割合がグルコースよりも多くなる。これは、アセトンの起源がグルコースから脂肪酸へ傾くことを意味する。このように、アセトンの起源がグルコースから脂肪酸へ傾いた時、グルコースと脂肪酸の割合に従って、アセトンの天然の安定炭素同位体比(13C/12C)が変化することが期待される。このアセトンの天然の安定炭素同位体比(13C/12C)の変化がグルコースと脂肪酸の割合の変化(ひいては、糖尿病の疾患の状態)を定量的に反映することが実証できれば、アセトンの天然の安定炭素同位体比の変化を分析する方法は、糖尿病又は糖尿病予備群の対象を検査及び評価するのに適用可能な方法となりうる。また、このような分析方法は、脂質の代謝をモニターするのにも利用可能である。即ち、アセトンの天然の安定炭素同位体比の変化をモニターし、生体内での脂質の利用が亢進しているかどうかをモニタリングすることができる。

0049

しかし、生体試料中とくに呼気中のアセトンの天然の安定炭素同位体比(13C/12C)の変化を測定し、被験者の代謝状態の変化(グルコースと脂肪酸の割合の変化)によりアセトンの天然の安定炭素同位体比(13C/12C)が変化するか否かを実際に検証した例はない。

0050

同一生体内のグルコースと脂肪酸の天然の安定炭素同位体比(13C/12C)はわずかではあるが、明確に異なることが知られている。ここで、絶食によって、又は、糖尿病のような糖質利用障害の疾患によって、アセチルCoAの起源(即ちアセトンの起源)がグルコースから脂肪酸へと変化した場合、グルコースと脂肪酸の割合に従った、アセトンの天然の安定炭素同位体比(13C/12C)の変化が期待される。

0051

従来、糖尿病患者の血液、尿及び呼気中のアセトンの濃度が増加することから、糖尿病患者において、糖質が利用される状態から脂質が利用される状態へ生体エネルギー源の偏りが起きることが推測されてきた。しかし、同一個体内あるいは個体間におけるアセトン濃度の変動幅が大きいために、アセトンの濃度の増加のみを指標として、代謝の状態を推測することは時として曖昧である。

0052

上記分析方法及びモニタリング方法は、アセトン自体の量的な変化(濃度変化)ではなく、糖質及び脂質に対して特有エンドメンバー値をもつ天然の安定炭素同位体比(13C/12C)という質的な違いに着目し、この天然の安定炭素同位体比(13C/12C)を測定する点に特徴を有する。このような点に着目することで、上記分析方法及びモニタリング方法は、糖質及び脂質の利用割合を定量的に判断するための検査方法に資するといえる。特に、上記分析方法及びモニタリング方法は、脂質代謝の状態をモニターする際に有効な方法となる。

0053

例えば、図5に示すように、糖質利用障害により、脂肪酸のβ酸化によるアセチルCoAの産生が亢進し、ケトン体が多量に生成した場合、アセトンなどのケトン体が血液を通して呼気、尿などの生体試料中に排出される。この生体試料中のアセトンの天然の安定炭素同位体比(13C/12C)は、アセチルCoA(従ってアセトン)の起源であるグルコース及び脂肪酸の利用率を反映したものとなる。従って、生体試料中のアセトンの天然の安定炭素同位体比(13C/12C)をモニタリングすることで、アセチルCoAの起源が脂肪酸の利用に偏っているかどうか、即ち、脂質代謝の状態を把握することが可能となる。例えば、後述するように、アセトンの起源がグルコースから脂肪酸へ傾いた時、アセトンの天然の安定炭素同位体比(13C/12C)が減少するので、脂質代謝の状態を把握することが可能となる。

0054

アセトンの天然の安定炭素同位体比(13C/12C)の測定は、例えば、固相マイクロ抽出と、ガスクロマトグラフィー燃焼同位体比質量分析法を併用すること(SPME−GC−C−IRMS法)で行うこともできる。この方法は、メタノールエタノールアセトアルデヒド等の天然の安定炭素同位体比の測定について有効であることが報告されているものであるが(非特許文献4、5)、今回、アセトンの天然の安定炭素同位体比(13C/12C)の分析についても適用可能であることを確認した。

0055

上記分析方法及びモニタリング方法においては、固相マイクロ抽出の条件により、天然の安定炭素同位体比(13C/12C)の測定値が真値からずれることがわかっているが、これは補正することが可能である。例えば、あらかじめ、天然の安定炭素同位体比(13C/12C)が既知数種類のアセトン試薬を用いて標準試料を作成し、安定した計測結果が得られる条件の決定と、真値からのずれの正確な見積もり検量線の作成)を行い、その結果を基に測定値を補正することができる。

0056

本明細書において、「天然の安定炭素同位体比」とは、13C標識化合物のような標識剤を導入することなく、天然の材料によって生体内に取り込まれた物質によって生体内で産生される化合物の安定炭素同位体比(13C/12C)をいう。

0057

<呼気試料中に含まれる揮発性有機化合物の天然の安定炭素同位体比(13C/12C)を分析する方法>
呼気試料中に含まれる揮発性有機化合物の天然の安定炭素同位体比(13C/12C)を分析する方法は、呼気試料中に含まれる揮発性有機化合物の天然の安定炭素同位体比(13C/12C)を測定する工程を含み、天然の安定炭素同位体比(13C/12C)を測定する際に、上述の呼気試料採取容器を用いる。

0058

揮発性有機化合物の天然の安定炭素同位体比(13C/12C)の測定は、採取した試料から直接行うことができる。採取した呼気試料を直接に、例えばガスクロマトグラフィー−燃焼−同位体比質量分析法(GC−C−IRMS)などの測定手段で天然の安定炭素同位体比(13C/12C)を測定すればよい。

0059

あるいは、呼気試料中に含まれる揮発性有機化合物の天然の安定炭素同位体比(13C/12C)を分析する方法は、(a)呼気試料中に含まれる揮発性有機化合物を、呼気試料から濃縮抽出する工程と、(b)濃縮抽出された揮発性有機化合物の天然の安定炭素同位体比(13C/12C)を測定する工程と、を含み、揮発性有機化合物を、呼気試料から濃縮抽出する手段が、呼気試料採取容器を含む。

0060

呼気試料から揮発性有機化合物を濃縮抽出してから測定を行う場合、揮発性有機化合物が揮発性を有するので、呼気試料から揮発性有機化合物が消散せず、揮発性有機化合物の的確な採取が可能な手段を使用することが好ましい。例えば、固相マイクロ抽出(SPME)法などを挙げることができる。測定対象物である揮発性有機化合物を濃縮することで、測定の感度を更に高めることができる。

0061

濃縮抽出されたアセトンの天然の安定炭素同位体比(13C/12C)を測定する際には、ガスクロマトグラフィー−燃焼−同位体比質量分析法(GC−C−IRMS)を用いることが好ましい。

0062

具体的な操作は以下の通りである。まず、工程(a)において、試料容器内でアセトンを一定時間ファイバー上に吸着させて得られた試料を、ガスクロマトグラフィー(GC)にインジェクションする。インジェクター加熱脱着されたアセトンは、分離カラムで分離精製された後、オンライン燃焼炉でCO2に変換され、質量分析計に導入されて13C/12Cの含有量が計測される。

0063

<脂質の代謝をモニタリングする方法>
本発明の脂質の代謝をモニタリングする方法は、(a)呼気試料中に含まれる揮発性有機化合物を、呼気試料から濃縮抽出する工程と、(b)濃縮抽出された揮発性有機化合物の天然の安定炭素同位体比(13C/12C)を測定する工程と、を含み、揮発性有機化合物の天然の安定炭素同位体比(13C/12C)の減少が生体内における脂質の代謝の亢進を示し、揮発性有機化合物を、呼気試料から濃縮抽出する手段が、上述の呼気試料採取容器を含む。

0064

上記モニタリング方法におけるアセトンの天然の安定炭素同位体比(13C/12C)の測定は、分析方法における測定と同様である。上記モニタリング方法は、アセトンの天然の安定炭素同位体比(13C/12C)を測定し、その増加及び減少をモニタリングする。アセトンの天然の安定炭素同位体比(13C/12C)の減少は、図5を用いて説明したグルコースと脂肪酸の利用が脂肪酸側に傾いたことを示す。このように、アセトンの天然の安定炭素同位体比(13C/12C)の減少は、生体内で脂肪酸の利用が亢進したこと、即ちグルコースの代謝が低下し、糖尿病のような代謝異常の状態を示すと考えられる。

0065

呼気試料を対象とした非侵襲的検査に応用可能な分析(測定)方法、又はモニタリング方法は、定期健康診断でのスクリーニング検査を実施する際に有用である。また、これらの方法は、将来、糖尿病予備群や糖尿病患者が自宅で試料を採取して分析対象物を測定することにより、糖尿病予備糖尿病予防に応用できるだけでなく、糖尿病患者の治療(薬、食事運動など)効果を把握できる診断法に応用できれば極めてインパクトは大きい。更に、呼気試料を対象とした非侵襲的検査に応用可能な分析(測定)方法又はモニタリング方法が、簡易に糖尿病のモニタリングに応用できれば、薬、運動等による効果を段階的に反映でき、糖尿病の早期治療にもつながり社会的にも極めて有用である。

0066

糖尿病の患者の場合、糖質利用障害のため、健常者と比べて脂質利用率が高い。従って、アセトンに含まれる天然の安定炭素同位体比(13C/12C)は健常者と比べ一般的には低くなると考えられる。上記分析方法及びモニタリング方法は、糖尿病などの代謝異常にかかわる病気の診断や経過観測に利用しうるものである。

0067

また、上記分析方法及びモニタリング方法が、統計的なデータ処理や生体中のアセトン採取の手順など、精度を高めるための追加の検討を通して利用されれば、糖質と脂質の利用率を推定することが可能である。従って、医療分野のみならず、ダイエット管理など健康管理の目的で、本発明の方法を利用することも可能である。

0068

以上のように、上記分析方法およびモニタリング方法は、糖尿病などの代謝疾患などに関する診断、並びに、ダイエット管理などの代謝状態の評価及び管理などの分野で用いられる、代謝状態の評価及び診断に利用可能な有効な分析方法となりうる。

0069

以下に、本発明の実施例を詳細に説明する。以下の例は、食事前の空腹時はアセトンの起源がグルコースから脂肪酸へ傾くため、安定炭素同位体比(13C/12C)が減少するが、食事により糖分が体内に供給されるとアセトンの起源が脂肪酸からグルコースへ傾くため、安定炭素同位体比(13C/12C)が上昇するという、前述の仮説を実証するものである。実際の実験手順は以下の通りである。

0070

(イ)呼気試料の準備
図1に示すような呼気試料採取容器を準備した。容器の容量は、目的に応じて最適の容量のものを使えばよいが、本実施例では100mLのものを用いた。また、乾燥剤には、硫酸ナトリウム1gを用いた。

0071

この呼気試料採取容器の注入口開閉弁および排出口開閉弁を開き、注入口を口にくわえて呼気を吹き込んだ。数秒程度呼気を吹き込んで呼気の中間部を貯蔵部内に吹き込み、内部に入っていた空気が呼気に置換された後、排出口開閉弁を先に閉じ、次いで注入口開閉弁を閉じることにより呼気を採取した。

0072

(ロ)SPME法によるアセトン抽出
呼気試料からアセトンを抽出する方法として、固相マイクロ抽出(SPME)法を用いた。SPME機器のファイバー部のファイバー表面に吸着材をコーティングした(図2(a)、(b))。本実施例ではコーティング剤として、アセトンを選択的に抽出することの出来るCarboxen(商標)/PDMSを使用した。なお、未使用時、ファイバー部はホルダー部内に格納されており、抽出時にファイバーを暴露させることで、目的成分を吸着させた(図2(c))。

0073

前記、呼気試料採取容器を用いて採取した呼気試料から、アセトンをSPME法により濃縮抽出する方法は、以下の手順で行った。

0074

呼気試料採取容器の抽出口を封止しているセプタムに、前記ファイバーを突き刺し、ファイバー表面を呼気試料中で暴露させ、アセトンを選択的に吸着させた(図3)。抽出が完了したら、ファイバーをホルダー部内に格納し、抽出口から引き抜いた。これでファイバー表面にアセトンが吸着し濃縮抽出することができた。

0075

ここで、ファイバーを呼気試料中に暴露しアセトンを吸着させる際の暴露時間を何分にするかは重要である。暴露時間の決定の際に重要な点は、多少の暴露時間に差があっても結果に影響を与えないことである。従って、選択すべき時間は変化の激しい過渡状態時間範囲ではなく定常状態の時間範囲が望ましい。図6に、暴露時間を決定するために、あらかじめ標準試料を用いて測定した、暴露時間とアセトン濃度、及びアセトンの天然の安定炭素同位体比の関係を示した。暴露時間を50分以上にすれば濃度、安定炭素同位体比がともに安定することがわかる。効率の観点からは暴露時間は当然短い方が良い。できるだけ短時間で、かつ安定した結果を得られることを考慮し、今回、暴露時間は60分とした。

0076

(ハ)ガスクロマトグラフィー−燃焼−同位体比質量分析法(GC−C−IRMS)によるアセトン濃度、及び天然の安定炭素同位体比(13C/12C)の測定
アセトンの天然の安定炭素同位体比(13C/12C)は、ガスクロマトグラフィー−燃焼−同位体比質量分析計(GC−C−IRMS)を用いて測定した。アセトン濃度の測定は同じGC−C−IRMSのGCを用いて測定した。

0077

(ニ)アセトンの天然の安定炭素同位体比(13C/12C)検量線
本実施例ではSPME法により、呼気試料からアセトンを抽出している。この方法におけるアセトンは、ファイバーへの吸着を経てGCに打ち込まれて測定されるため、その間での同位体分別が起こり、測定で得られる天然の安定炭素同位体比は真値とは異なる可能性が考えられる。そこで、封緘燃焼法を用いてアセトンの天然の安定炭素同位体比の真値を求めた。SPME法と封緘燃焼法のそれぞれで得られた天然の安定炭素同位体比を用いて作成した検量線から、SPME法で得られる天然の安定炭素同位体比の補正を行った。

0078

封緘燃焼法の手順を、図7を参照して説明する。あらかじめ真空状態にしておいた石英管を準備した(図7(a))。この石英管中にアセトンを注入し、液体窒素で冷却して石英管内にアセトンをトラップして、密封した(図7(b))。次いで、この石英管内でアセトンを燃焼し、石英管内のアセトンを完全にCO2に変換した(図7(c))。こうして得られたCO2の天然の安定炭素同位体比を測定することで燃焼前のアセトンの天然の安定炭素同位体比の真値を算出した。本実施例では燃焼条件は850℃、2時間とした。なお、図7中の酸化銅は、酸素供給用である。

0079

検量線の作成は以下の通りに行った。まず、SPME法により市販のアセトン試薬7種の天然の安定炭素同位体比を測定した。次に、それらの試薬について封緘燃焼法により天然の安定炭素同位体比を測定し、天然の安定炭素同位体比の真値をとした。両方法の測定結果から天然の安定炭素同位体比の検量線を作成した。

0080

上記の方法により測定した、呼気試料中のアセトン濃度、及びアセトン中の天然の安定炭素同位体比(13C/12C)の変化を図8に示す。以下の例では、健常な被験者の呼気試料中のアセトンの濃度と天然の安定炭素同位体比(13C/12C)を1時間毎に測定した。ここで天然の安定炭素同位体比は、δ値を用いて表記した。δ13Cは下式(1)で定義されるパラメータであり、試料の13C/12Cが、標準試料の13C/12Cの値と比べてどれだけ多いか、又は少ないかを千分率で表したものである。
δ13C (‰)={(13C/12C)試料/(13C/12C)標準−1}×1000 (1)

0081

ここでは、13C/12Cの標準試料として国際標準であるPeeDee層のヤイシ類の化石(PDB)を用いた。

0082

図8から、昼食直後の13:30までは、アセトン濃度が増加するとともにδ13Cが減少していることがわかる。昼食により糖分が供給されると、次第にアセトン濃度は減少し、δ13Cが増大していることがわかる。

0083

この結果は、以下のように解釈することができる。
・空腹→糖質不足→脂質(脂肪酸)利用率増大→アセトン量増大、13C/12C減少
食事摂取→糖質補充→脂質(脂肪酸)利用率低下→アセトン量減少、13C/12C増加

0084

即ち、この結果はアセトンの起源がグルコースから脂肪酸へ傾いた時、その利用率に従ってアセトンの天然の安定炭素同位体比(13C/12C)が減少するという仮説を実証するものである。

0085

以上、呼気試料中に含まれるアセトンの13C/12Cを測定する実施例について詳細に説明したが、ガスクロマトグラフィー法によって分離抽出可能な成分であれば、本発明の呼気試料採取容器および分析方法によって、呼気試料中に含まれるイソプレンなど任意の揮発性有機化合物の13C/12Cを測定することが可能である。

0086

特に、本発明によれば、途中で息を止めることなく一息の中の任意の部分の呼気を採取できることが確認できた。本発明は、一息の中での微妙な変動などを調べることなどへの応用にも適している。

0087

糖尿病は同じ生活習慣病である高血圧高脂質血症と比較して薬の完成度が低い。それだけ大きなマーケットが残っている分野である。糖尿病予備群の早期発見が可能となれば、新たな治療薬の開発も活発になり、糖尿病患者で問題となっている糖尿病性網膜症糖尿病性腎症及び糖尿病性神経阻害の3大合併症への疾患の進展を阻止することが期待できる。

実施例

0088

また、本発明はダイエット管理など健康管理の目的で利用することも期待できる。呼気採取等の簡単な非侵襲的操作により得られた試料から、糖質と脂質の利用率を精度よく知ること、及び安全で効果的なダイエット管理法構築することが期待できる。

0089

本発明の方法は、糖尿病などの代謝異常にかかわる病気の診断や経過観測に利用できる可能性のあるものである。

0090

1注入口
2 注入口開閉弁
3 排出口
4排出口開閉弁
5貯蔵部
6抽出口
7セプタム
8乾燥剤
9呼気試料採取容器
10 SPME機器
11ホルダー部
12ニードル部

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