図面 (/)

技術 有機イリジウム化合物からなる化学蒸着用原料及び化学蒸着法、並びに、電気化学用触媒の製造方法

出願人 田中貴金属工業株式会社
発明者 榎本貴男原田了輔鈴木和治
出願日 2015年6月19日 (5年1ヶ月経過) 出願番号 2015-123420
公開日 2017年1月12日 (3年6ヶ月経過) 公開番号 2017-008351
状態 特許登録済
技術分野 化合物または非金属の製造のための電極 CVD
主要キーワード DTA曲線 電気化学的酸化処理 元素構成比 複合材料膜 OF値 添加状態 電気分解用電極 電気化学的触媒
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年1月12日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (13)

課題

酸化イリジウム酸化ケイ素とを含む酸化イリジウムの単体と同等の活性を有する複合材料からなる薄膜を製造するために好適な原料物質、及び、薄膜製造方法の提供。

解決手段

有機イリジウム化合物からなり、化学蒸着法によりイリジウム及びケイ素を含む薄膜を製造するための化学蒸着用原料であって、前記有機イリジウム化合物は、イリジウムに、シクロペンタジエン又はその誘導体及びトリアルキルシリル基配位した次式で示される有機イリジウム化合物である化学蒸着用原料。(R1〜R5は各々独立にH又はC1〜3のアルキル;R6〜R11は各々独立にC1〜6のアルキル)

概要

背景

酸化イリジウムは、電気化学的触媒作用の高い材料であり、メッキ等の表面処理有機電解、水の電気分解といった各種電解処理のための電極陽極)用の触媒として知られている。近年では、再生可能クリーンエネルギーである水素酸素を製造するための水分解のための電気化学用触媒として着目されている。例えば、非特許文献1では、イリジウム化合物溶液から酸化イリジウム薄膜電解析出し、その触媒性能の評価がなされている。

ここで、酸化イリジウムは、貴金属であるイリジウム酸化物であるため高価な材料である。その電解化学用触媒への利用を促進するためには、そのコス対策が重要となる。酸化イリジウムの電気化学用触媒への利用促進策として、他の無機酸化物、例えば、酸化錫酸化タンタル酸化ケイ素を酸化イリジウムに添加した複合材料の適用が検討されている。これら添加される無機酸化物の中でも酸化ケイ素は、地球上に豊富に存在し安価な物質であるため、コスト低減効果も大きい。

触媒に対して、コスト低減を目的としつつ上記のような複合材料を適用しようとする場合、触媒性能の低下が当然に懸念される。酸化ケイ素等は、本来、電気化学的触媒作用を有するものではないので、その添加量添加状態によって全体の触媒性能を低減させることとなる。そこで、酸化イリジウムに酸化ケイ素を添加した複合材料からなる電気化学用触媒としては、例えば、非特許文献2のようなものがある。この先行技術では、イリジウム化合物(H2IrCl6:塩化イリジウム酸)とケイ素化合物(TEOS(オルトケイ酸テトラエチル))とを含む処理液基材に塗布し、所定の熱処理を行うことで酸化ケイ素をドープした酸化イリジウムを製造している。

概要

酸化イリジウムと酸化ケイ素とを含む酸化イリジウムの単体と同等の活性を有する複合材料からなる薄膜を製造するために好適な原料物質、及び、薄膜製造方法の提供。有機イリジウム化合物からなり、化学蒸着法によりイリジウム及びケイ素を含む薄膜を製造するための化学蒸着用原料であって、前記有機イリジウム化合物は、イリジウムに、シクロペンタジエン又はその誘導体及びトリアルキルシリル基配位した次式で示される有機イリジウム化合物である化学蒸着用原料。(R1〜R5は各々独立にH又はC1〜3のアルキル;R6〜R11は各々独立にC1〜6のアルキル)

目的

本発明は、酸化イリジウムと酸化ケイ素とで構成される複合材料であって、添加された酸化ケイ素の影響を受けることなく、酸化イリジウム単体に対して同等以上の触媒活性を発揮し得るものを製造するための新規な方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

有機イリジウム化合物からなり、化学蒸着法によりイリジウム及びケイ素を含む薄膜を製造するための化学蒸着用原料であって、前記有機イリジウム化合物は、イリジウムに、シクロペンタジエン又はその誘導体及びトリアルキルシリル基配位した次式で示される有機イリジウム化合物である化学蒸着用原料。(式中、置換基であるR1、R2、R3、R4、R5は、水素又は炭素数1以上3以下のアルキル基である。R1、R2、R3、R4、R5は全てが同一でも良く、相違していても良い。また、置換基であるR6、R7、R8、R9、R10、R11は、炭素数1以上6以下のアルキル基である。R6、R7、R8、R9、R10、R11は全てが同一のアルキル基でも良く、相違するアルキル基でも良い。)

請求項2

R6、R7、R8、R9、R10、R11の全ての置換基がエチル基である請求項1記載の化学蒸着用原料。

請求項3

R1、R2、R3、R4、R5の全ての置換基が水素である請求項1又は請求項2記載の化学蒸着用原料。

請求項4

R1、R2、R3、R4、R5の少なくとも一つの置換基がメチル基であり、他の置換基が水素である請求項1又は請求項2記載の化学蒸着用原料。

請求項5

R1、R2、R3、R4、R5の少なくとも一つの置換基がエチル基であり、他の置換基が水素である請求項1又は請求項2記載の化学蒸着用原料。

請求項6

有機イリジウム化合物からなる原料を気化して原料ガスとし、前記原料ガスを反応器に導入した後、前記有機イリジウム化合物を分解して、イリジウム及びケイ素を含む薄膜を製造する化学蒸着法において、前記原料として請求項1〜請求項5のいずれかに記載の化学蒸着用原料を用いる化学蒸着法。

請求項7

反応ガスとして酸素ガスを適用する請求項6記載の化学蒸着法。

請求項8

更に、薄膜を酸化処理する工程を含む請求項6又は請求項7記載の化学蒸着法。

請求項9

基材上に形成され、イリジウム酸化物及びケイ素酸化物を含む電気化学触媒を製造するための方法であって、請求項6〜請求項8のいずれかに記載の化学蒸着法により、基材上にイリジウム及びケイ素を含む薄膜を製造する工程を含む電気化学用触媒の製造方法。

請求項10

イリジウム及びケイ素を含む電気化学用触媒層を備える電解用電極であって、前記電気化学用触媒層は請求項9記載の方法により製造される電気化学用触媒からなるものである電解用電極。

技術分野

0001

本発明は、有機イリジウム化合物からなる化学蒸着用原料に関する。詳しくは、イリジウムケイ素を含む複合薄膜を形成するのに好適な化学蒸着用原料に関する。そして、本発明は、当該化学蒸着用原料を用いて電気化学触媒化学蒸着法により製造する方法、及び、電解用電極の製造方法にも関する。

背景技術

0002

酸化イリジウムは、電気化学的触媒作用の高い材料であり、メッキ等の表面処理有機電解、水の電気分解といった各種電解処理のための電極陽極)用の触媒として知られている。近年では、再生可能クリーンエネルギーである水素酸素を製造するための水分解のための電気化学用触媒として着目されている。例えば、非特許文献1では、イリジウム化合物溶液から酸化イリジウム薄膜電解析出し、その触媒性能の評価がなされている。

0003

ここで、酸化イリジウムは、貴金属であるイリジウムの酸化物であるため高価な材料である。その電解化学用触媒への利用を促進するためには、そのコス対策が重要となる。酸化イリジウムの電気化学用触媒への利用促進策として、他の無機酸化物、例えば、酸化錫酸化タンタル酸化ケイ素を酸化イリジウムに添加した複合材料の適用が検討されている。これら添加される無機酸化物の中でも酸化ケイ素は、地球上に豊富に存在し安価な物質であるため、コスト低減効果も大きい。

0004

触媒に対して、コスト低減を目的としつつ上記のような複合材料を適用しようとする場合、触媒性能の低下が当然に懸念される。酸化ケイ素等は、本来、電気化学的触媒作用を有するものではないので、その添加量添加状態によって全体の触媒性能を低減させることとなる。そこで、酸化イリジウムに酸化ケイ素を添加した複合材料からなる電気化学用触媒としては、例えば、非特許文献2のようなものがある。この先行技術では、イリジウム化合物(H2IrCl6:塩化イリジウム酸)とケイ素化合物(TEOS(オルトケイ酸テトラエチル))とを含む処理液基材に塗布し、所定の熱処理を行うことで酸化ケイ素をドープした酸化イリジウムを製造している。

先行技術

0005

Yixin Zhao et al., “Anodic Deposition of Colloidal Iridium Oxide Thin Films from Hexahydroxyiridate(IV) Solutions” Small, 2011, 7, 2087-2093.
Xiao-Mei Wang et al., “IrO2-SiO2 binary oxide films : Preparation ,physiochemical characterization and their electrochemical properties”, Electrochimica Acta, 2010, 55, 4623-4628.

発明が解決しようとする課題

0006

非特許文献2の酸化ケイ素をドープした酸化イリジウムのような複合材料は、電気化学用触媒への利用も一応は可能である。しかし、この先行技術における触媒は、添加した酸化ケイ素の影響を完全に払拭されているとはいえず、酸化イリジウム単体で構成される触媒の活性よりも低くなってしまうことが予測される。

0007

そこで、本発明は、酸化イリジウムと酸化ケイ素とで構成される複合材料であって、添加された酸化ケイ素の影響を受けることなく、酸化イリジウム単体に対して同等以上の触媒活性を発揮し得るものを製造するための新規な方法を提供する。特に、本願はかかる新規の複合材料を製造するための具体的な手法、及び、そのために好適な原料物質提示する。

課題を解決するための手段

0008

酸化ケイ素は電気絶縁体であり、電気化学的な触媒活性を発揮する物質でもない。触媒(酸化イリジウム)に対し、そのような触媒活性に寄与し難い物質を添加し、もとの触媒以上の活性を期待しようとした場合、単純な混合状態を超えた特異な状態を形成する必要がある。それは、非特許文献2のような処理液の塗布や、その後の熱処理による酸化物形成といった方法では不可能と考えられる。本発明者等は、鋭意検討の結果、有機金属化合物を用いた化学蒸着法を適用する複合材料製造に想到した。

0009

化学蒸着法は、原料となる有機金属化合物(金属錯体)を気化し、これを所定の基材上で分解させて金属を析出堆積させる方法である。化学蒸着法における原料物質の分解及び金属析出は、原子レベルで進行し、形成される薄膜は微細構造を有する。そして、本発明者等は、化学蒸着法によりイリジウムとケイ素とを含む薄膜を形成し、これを利用することで両金属の酸化物が均一・微細に混合・分散した複合材料を得ることができると考えた。そして、そのための原料として好適な構成について更なる検討を行い、本発明に係る有機イリジウム化合物からなる化学蒸着用原料を見出した。

0010

即ち、本発明は、有機イリジウム化合物からなり、化学蒸着法によりイリジウム及びケイ素を含んでなる薄膜を製造するための化学蒸着用原料であって、前記有機イリジウム化合物は、イリジウムに、シクロペンタジエン又はその誘導体及びトリアルキルシリル基配位した次式で示される有機イリジウム化合物である化学蒸着用原料である。

0011

(式中、置換基であるR1、R2、R3、R4、R5は、水素又は炭素数1以上3以下のアルキル基である。R1、R2、R3、R4、R5は全てが同一でも良く、相違していても良い。また、置換基であるR6、R7、R8、R9、R10、R11は、炭素数1以上6以下のアルキル基である。R6、R7、R8、R9、R10、R11は全てが同一のアルキル基でも良く、相違するアルキル基でも良い。)

0012

上記の通り、本願は、酸化イリジウムと酸化ケイ素とを含む複合材料を製造する手段として、化学蒸着法の適用を提案すると共に、当該化学蒸着法に好適な原料を提示する。この原料を構成する有機イリジウム化合物は、中心金属であるイリジウムに、配位子であるシクロペンタジエン(誘導体)とトリアルキルシリル基が配位している。この有機イリジウム化合物は、配位子としてトリアルキルシリル基を有することから、適宜の反応ガスを用いつつ分解・成膜することでイリジウムにケイ素化合物(酸化物等)をドープした薄膜を形成することができる。そして、形成した薄膜を酸化処理することで、酸化イリジウムと酸化ケイ素とを含む複合材料を製造することができる。

0013

このような化学蒸着法と酸化処理に基づき製造される薄膜は、酸化イリジウムと酸化ケイ素とが均一に分散した状態にあると共に、アモルファス構造の複合材料である。この薄膜中で分散する酸化イリジウムは電気的な接触を有する状態になっており、薄膜全体が電気化学的触媒として作用し得る。本発明により製造される薄膜は、酸化イリジウム単体からなる電気化学触媒に対しても、同等かそれ以上の触媒活性が期待できる。

0014

以下、本発明に係る化学蒸着用原料、及び、これを用いたイリジウム薄膜の化学蒸着方法について説明する。上記の通り、本発明に係る化学蒸着用原料を構成する有機イリジウム化合物は、イリジウム(中心金属)に、シクロペンタジエン(誘導体)と2つのトリアルキルシリル基が配位する。

0015

イリジウムに配位する一方の配位子である、シクロペンタジエン及びその誘導体について、R1、R2、R3、R4、R5は、水素又は炭素数が1以上3以下のアルキル基である。これらの置換基は全て同じものであっても良いし、相違するものであっても良い。アルキル基の炭素数を1以上3以下とするのは、好適な分子量の錯体として、熱分解特性と蒸気圧とのバランスを確保するためである。

0016

また、他方の配位子である2つのトリアルキルシリル基は、形成される薄膜中にSi化合物をドープさせる上で重要な配位子となる。このトリアルキルシリル基について、R6、R7、R8、R9、R10、R11は、炭素数1以上6以下のアルキル基である。炭素数を1以上6以下とするのは、炭素数が大きいほどシリル基は安定化するが、分子量が大きくなるとイリジウム錯体の蒸気圧は低下し気化しにくくなるためである。R6、R7、R8、R9、R10、R11は同一のアルキル基でも良く、相違するアルキル基でも良い。

0017

ここで、本発明に係る化学蒸着用原料を構成する有機イリジウム化合物のより好ましい態様について説明すると、まず、トリアルキルシリル基に関しては、化合物の安定性と蒸気圧との観点から、R6、R7、R8、R9、R10、R11の全ての置換基がエチル基であるトリアルキルシリル基が2つ配位したものが好ましい。

0018

また、一方の配位子であるシクロペンタジエン(誘導体)についてより好ましいものとしては、R1、R2、R3、R4、R5の全ての置換基が水素であるもの、R1、R2、R3、R4、R5の少なくとも一つの置換基がメチル基であり、他の置換基が水素であるもの、及び、R1、R2、R3、R4、R5の少なくとも一つの置換基がエチル基であり、他の置換基が水素であるもの、が挙げられる。

0019

上記したより好適な有機イリジウム化合物としては、具体的には以下の化合物が例示される。

0020

0021

0022

0023

0024

そして、上記有機イリジウム化合物からなる原料を用いて化学蒸着法によりイリジウム化合物薄膜を製造する方法は、当該原料を気化して原料ガスとし、前記原料ガスを反応器に導入し、原料ガスを加熱し分解してイリジウム及びケイ素を析出させて薄膜を製造するものである。原料を気化して原料ガスを生成するとき、原料をそのまま加熱しても良いが、適宜に溶媒(へキサンベンゼンメタノール等)に溶解しその溶液を加熱して原料ガスを発生させても良い。原料気化のための加熱温度としては、30℃以上150℃以下とする。

0025

原料ガスの反応器への導入には、キャリアガスとしてアルゴン等の不活性ガスを用いるのが一般的である。また、キャリアガスに加えて反応ガスの導入が考慮される。反応ガスは、原料である有機イリジウム化合物中のケイ素原子をSi又はケイ素化合物として析出させるために必要な要素となる。このとき、イリジウム薄膜に酸化物(酸化ケイ素)をドープしようとする場合、反応ガスとして酸素を適用するのが好ましい。この他、イリジウム薄膜にドープするケイ素の形態(窒化物等)に応じて、反応ガスとして水素、アンモニア等が用いられる。尚、反応ガスがキャリアガスを兼ねても良い。

0026

反応器において、原料ガスを分解し薄膜形成するための加熱温度は、100℃以上500℃以下とするのが好ましい。より好ましくは200℃以上400℃以下である。この加熱は、通常、反応器内に設置された基板の加熱によりなされる。反応器内の圧力は10Pa以上10,000Pa以下とするのが好ましい。より好ましくは50Pa以上1,000Pa以下である。尚、この基板の材質・寸法・形状については、特に制限はない。それらの要素は、薄膜の用途に応じて設定される。薄膜を電気化学用触媒として利用し、例えば、水の電気分解用電極を製造する場合、基板の材質としては、チタンタンタル、金、白金等の金属の他、カーボン酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)が用いられることが多い。

0027

このようにして形成される薄膜は、イリジウムとケイ素(又はケイ素化合物)を含むものである。例えば、酸素を反応ガスとして形成される薄膜は、イリジウムに酸化ケイ素がドープされ、均一に分散した薄膜となる。

0028

そして、本発明に係る化学蒸着法では、この薄膜を酸化処理する工程を含むことができる。この酸化処理により、イリジウムを酸化物(酸化イリジウム)に変化させて、酸化イリジウムと酸化ケイ素とを含む複合材料からなる薄膜を得ることができる。つまり、本発明に係る化学蒸着法により製造される薄膜は、酸化イリジウムと酸化ケイ素とを含む複合材料の前駆物質ということができ、これを酸化処理することで複合材料薄膜を得ることができる。

0029

この酸化処理は電気化学的なものが好ましい。薄膜の構造(非晶質性)や粒子構造に影響を与えることなくイリジウムを酸化イリジウムとするためである。電気化学的酸化処理は、電解液中で、製造した薄膜を作用極としつつ電流印加する。この電流印加は、一定範囲内で電流を正方向、負方向に掃引する、いわゆるサイクリックボルタンメトリーによって実施するのが好ましい。尚、化学蒸着法により製造した薄膜を酸化処理するとき、膜中のイリジウムの全てを酸化イリジウムとしなくても良い。表面を酸化イリジウムとしつつ薄膜内部は酸化されていない状態あっても良い。更に、酸化イリジウムに酸化された部位についても、酸素含有量が一定であることは必須ではなく、濃度勾配が生じていても良い。

0030

そして、このようにして製造される酸化イリジウムと酸化ケイ素とを含む複合材料は、電気化学用触媒として優れた活性を発揮する。つまり、本発明に係る化学蒸着法によれば、イリジウム酸化物及びケイ素酸化物を含む電気化学用触媒層を基材上に製造するための方法を構成することができる。この触媒相の製造方法は、化学蒸着法により基材上にイリジウム及びケイ素を含む薄膜を製造する工程を含む。更に、薄膜を酸化処理して電気化学用触媒層を製造する工程を含むことができる。

発明の効果

0031

以上説明したように、本発明は酸化イリジウムと酸化ケイ素とを含む複合材料の製造プロセスとして、所定の有機イリジウム化合物を原料化合物とした化学蒸着法を主体とするものを提案する。本発明により製造される薄膜は、酸化イリジウムと酸化ケイ素とが好適に分散した状態にあり、電気化学用触媒として、酸化イリジウム単体の触媒と同等以上の活性を発揮する。

図面の簡単な説明

0032

本実施形態で製造した有機イリジウム化合物からなる化学蒸着用原料のTG−DTA分析結果。
第1実施形態でCVD法により製造した薄膜(A1膜)の酸化処理の際のサイクリックボルタモグラム
第1実施形態でCVD法により製造した薄膜(A1膜)のXPS分析結果。
第1実施形態で製造した複合材料膜(A2膜)のXPS分析結果。
A1膜、A2膜、FTO基板の表面のSEM写真
FTO基板、A1膜、A2膜、及び熱処理したA2膜について行ったXRDの分析結果。
A1膜、A2膜の断面のSTEM−EDSプロファイル
第2実施形態において測定された複合材料膜(A2膜)のサイクリックボルタモグラム。
酸素同位体水を添加した水の電気分解で発生したガスの分析結果。
第2実施形態で評価した各種薄膜(A2膜、B膜、C膜)の製造プロセスを説明する図。
A2膜で水を電気分解したときの(a)0.5mA/cm2、(b)1.0mA/cm2、(c)1.5mA/cm2の電流密度とするための電位プロットした図。
A2膜でpH0の水を電気分解したときのTOFの測定結果を示す図。

実施例

0033

以下、本発明の実施形態について説明する。
第1実施形態:本実施形態では、化学蒸着の原料となる有機イリジウム化合物として、上記化4で示した有機イリジウム化合物である、ジヒドリドペンタメチルシクロペンタジエニルビストリエチルシリル)イリジウム([{(C5Me5)Ir(H)2(SiEt3)2}]):化1のR1、R2、R3、R4、R5が全てメチル基であり、R6、R7、R8、R9、R10、R11が全てエチル基である)を用意した。そして、この有機イリジウム化合物にて成膜を行い、得られた薄膜を酸化処理して複合材料からなる薄膜を製造した。

0034

[有機イリジウム化合物の製造]
ペンタメチルシクロペンタジエニルイリジウム(III)ジクロリド二量体([{(C5Me5)Ir}2Cl4])0.5g(0.62mmol)とトリエチルシラン(SiEt3)2cm3(12.6mmol)、更に、トリエチルアミン2cm3の混合溶液(溶媒:ベンゼン(10cm3))を15分間還流して反応させた。このとき溶液の色は緑色から黄色に変化した。反応後、トリエチルアンモニウムフィルター除去すると共に、溶媒を減圧留去した。得られた油分について、有機シリコン組成物等の不純物を除去するため、メタノールで洗浄して白色の固形採取した。この固形分をヘキサンフロリジルを用いたクロマトグラフィーで分離精製して目的の有機イリジウム化合物結晶(無色)を得た。

0035

物性評価
上記で製造した有機イリジウム化合物について、TG−DTA分析により、熱分解特性と蒸気圧を評価した。TG−DTA分析は、窒素気流下(200cc(標準状態)/min)、試料昇温速度2℃/minにて室温から450℃まで加熱した際の試料の重量変化を観察した。この測定結果を図1に示す。

0036

図1のTG−DTA曲線によれば、82℃で融解による吸熱ピークが観察されている。このとき重量減少観測されておらず、熱分解は起きていないことが分かる。また、重量減少は130℃付近から開始し、ブロードな吸熱ピークが見られる約250℃で完了している。その後の重量減は極めて緩やかであることから、250℃で熱分解が完了していると考えられる。以上から、本実施形態の有機イリジウム化合物は、化学蒸着用原料として好適な熱的特性を有することが確認された。

0037

[成膜試験
本実施形態の有機イリジウム化合物を原料とし(反応ガス:酸素)、チューブ型化学気相蒸着CVD)装置を用い、イリジウム薄膜を成膜した。この成膜試験に用いた基板は、FTO(フッ素ドープ酸化錫)がコートされたガラス基板である。このCVDによる成膜直後のイリジウム薄膜は、イリジウム中に酸化ケイ素がドープされた薄膜である。以下、この酸化ケイ素がドープされたイリジウム薄膜を「A1膜」と称して説明する。成膜条件は、次の通りである。

0038

成膜条件
原料気化温度:95℃
基板加熱温度:400℃
反応ガス:酸素40sccm(キャリアガスを兼ねる)
反応器圧力:55−60Pa
成膜時間:5分

0039

上記条件にてA1膜を成膜後、SEM観察、組成分析(XPS分析)を行った。

0040

[薄膜の酸化処理(電気化学用触媒層の形成)]
上記で成膜したA1膜を酸化処理してIrを酸化し、酸化イリジウムと酸化ケイ素とからなる薄膜を製造した。以下、A1膜の酸化処理により製造された複合材料膜について、「A2膜」と称する。

0041

A2膜製造のための酸化処理は、電気化学的酸化処理にて行った。硫酸溶液(0.5M、pH=0)溶液中、A1膜を形成した基板を作用極とし、白金対極参照電極であるAg/AgCl電極をセットした。そして、作用極の電位を−0.3Vから1.5V(vs.Ag/AgCl)の間のサイクルに設定して掃引した(図2)。A2膜を形成するため、1.5V(vs.Ag/AgCl)における電流密度が飽和点に達するまでサイクルを継続した。以上の酸化処理後、基板を蒸留水で洗浄し乾燥した。

0042

本実施形態で製造したA1膜及びA2膜については、XPS分析、SEM観察、XRDを行った。以下、これら分析結果と共に説明する。まず、図3図4は、各薄膜のXPS分析結果である。いずれの分析でも、膜の表面と内部の状態を分析するため、Arイオンスパッタリングによるクリーニング前後のスペクトルを示している。

0043

図3は、A1膜の分析結果である。この薄膜においては、クリーニング前のIrのピーク(4f7/2軌道、4f5/2軌道)は、それぞれ61.3eV、64.3eVである(図3(a)、(c))。この結合エネルギーは、金属イリジウム(Ir0)を示すものである。そして、これをスパッタリングして、薄膜の下地であるFTOが検出されるまでクリーニングしたとき、Irのピーク(4f7/2軌道、4f5/2軌道)は、それぞれ61.2eV、64.1eVである(図3(b)、(d))。つまり、本実施形態で製造したA1膜について、イリジウムは全体的に金属イリジウム(Ir0)の状態にある。

0044

これに対して図4は、酸化処理で製造されたA2膜の分析結果である。このA2膜においては、クリーニング前のIrのピーク(4f7/2軌道、4f5/2軌道)は、それぞれ62.1eV、64.9eVである(図4(a)、(c))。この薄膜における、Irのピークのシフト(金属Irに対するシフト)は、酸化物の生成によるものと考えられる。そして、この薄膜をFTOが検出されるまでクリーニングしたとき、Irのピーク(4f7/2軌道、4f5/2軌道)は、それぞれ60.9eV、63.9eVとなる(図4(b)、(d))。この表面に対するIrのピークの変位は、FTO下地付近ではIrは酸化しておらず金属Irのままであったことによるものと考えられる。即ち、電気化学的な酸化処理により、A1膜の表面から金属Irが酸化していることが分かる。そして、本実施形態のA2膜は、外側(表面側)に酸化イリジウムが、内側に金属Irが分布していると考えられる。

0045

図5は、A1膜(図5(a))、A2膜(図5(b))、及び、FTO基板(図5(c))の表面形態を示すSEM写真である。この観察結果について、A2膜はA1膜を電気化学的に処理したものであるが、この処理は粒子形状に大きな影響を及ぼすことはないことがわかる。尚、これらの薄膜表面についてSTEM分析を行ったところ、結晶相は見られず、アモルファスからなることが確認された。

0046

また、図6は、基板(図6(a))、A1膜(図6(b))、及び、A2膜(図6(c))の表面について行ったXRDの結果である。いずれも、基板であるFTO由来のピークしか観察されていない。イリジウムや酸化イリジウム、酸化ケイ素については結晶質由来のピークはみられず、このことからこれらは結晶質ではなくアモルファスの状態にあることが推察される。そこで、A2膜について600℃、2時間の熱処理の後XRDを行ったところ、図6(d)のプロファイルを得た。熱処理の結果、結晶質の酸化イリジウム由来のピークが発現している。このことから、A2膜がアモルファスの状態にあることが確認された。

0047

図7は、A1膜及びA2膜の断面におけるSTEM−EDS分析像である。CVD成膜直後のA1膜は、イリジウム、ケイ素、酸素の原子比率がほぼ均等であるが、これを酸化処理したA2膜は各元素構成比率に勾配が生じており、表面側の酸素比率が上昇している。これは電気化学的な処理によって薄膜表面のイリジウムが酸化されたことにより酸素の原子比率が増加したことを示しており、上記のXPSの測定結果と一致するものである。

0048

第2実施形態:ここでは、第1実施形態で製造したA2膜(酸化処理後の酸化イリジウム−酸化ケイ素複合材料膜)について、電気化学用触媒としての活性を評価した。A2膜の活性評価試験では、硫酸リン酸塩緩衝液水酸化ナトリウム溶液でpHを0〜13に調整した水を電解液とし、白金対極及びAg/AgCl参照電極を用い、掃引速度100mv/sでサイクリックボルタンメトリー測定を行った。

0049

図8は、A2膜について測定したサイクリックボルタモグラムである。この図によると、例えば、pH13の水では0.5V(vs.Ag/AgCl)以上の電位において電流密度の上昇(水の電気分解)がみられる。この測定では、ガス発生が認められたが、これを分析(GC−MS)すると酸素であることが確認された。即ち、本実施形態のA2膜を触媒とした水の電気分解が起きたことが推察される。

0050

この推察を確認すべく、酸素の発生源をつきとめるため、電解液となる水に酸素同位体水(H218O)を添加した試験を行った。この確認試験では、本実施形態のA2膜を作用極として、酸素同位体水を5%(体積比)添加した水(pH0)を電気分解し、発生した酸素ガス中の酸素同位体(18O)の原子比を分析(GC−MS)した。

0051

図9は、酸素同位体水(H218O)を添加した水(pH0)を電気分解したときの発生ガスの分析結果である。この結果に基づき、酸素同位体(18O)の原子比を算出したところ5.4%であった。この数値は、発生ガスが水の電気分解に基づくと仮定したときの理論値(5.1%)に近似するものであった。よって、本実施形態のA2膜は、水電気分解の触媒として作用し得ることが確認された。

0052

ここで、本実施形態によるA2膜の特性について、従来技術との対比を行った。この対比は、イリジウム化合物とケイ素化合物とからなる処理液から製造される酸化ケイ素と酸化イリジウムとの複合膜(非特許文献2)と、イリジウム化合物溶液から電解析出された酸化イリジウム薄膜(非特許文献1)とについて行った。以下、前者の複合膜(非特許文献2)を「B膜」と称し、後者の酸化イリジウム膜を「C膜」と称する。図10は、本実施形態のA2膜、及び、各比較例であるB膜、C膜の製造工程を説明するものである(基板はいずれも同じものを使用した)。

0053

そして、製造したA2膜、B膜及びC膜を陽極として、水(pH=0)にてサイクリックボルタモグラムを測定した(電解電位1.3V(vs.Ag/AgCl))。このときの電流密度の値を用いて各イリジウム膜の触媒活性を比較した。この結果を表1に示す。

0054

0055

表1の通り、従来技術である酸化イリジウムに酸化ケイ素をドープしたB膜は、活性比が酸化イリジウムからなるC膜よりも劣る。これは、酸化ケイ素の混合により、触媒活性を有する酸化イリジウムの占める割合が減少したことによると考えられる。これに対し、本実施形態における複合膜(A2膜)は、B膜の倍以上の活性を呈し、酸化イリジウムのみからなるC膜よりも高活性を示した。本実施形態のA2膜は酸化イリジウムと酸化ケイ素が良好に分散しあったモルファス膜である。この膜表面に存在する酸化イリジウムにより高活性が発揮されたと考えられる。

0056

そこで、本実施形態のA2膜について、電解用触媒としての能力を更に確認するため、図8で測定したサイクリックボルタモグラムの結果を整理した。図11は、水電気分解に際して(a)0.5mA/cm2、(b)1.0mA/cm2、(c)1.5mA/cm2の電流密度を得るための電位と、(d)熱平衡状態にある水の酸化電位である(いずれの電位もNHE基準であり、IRドロップを除いた数値である。)pH=0の水の熱平衡状態における酸化電位は1.23V(vs.NHE)である。この水について、本実施形態のA2膜を用いて、0.5mA/cm2(pH=0)の電流を流すために必要な過電圧は、0.22Vとなる。この過電圧については、C膜について同様の評価を行っており、その値は0.28Vであった。従って、A2膜の過電圧は、酸化イリジウムのみからなるC膜の過電圧より低く、触媒活性が高いといえる。

0057

更に、本実施形態のA2膜及び従来技術のC膜について、それぞれの触媒活性について、ターンオーバー頻度(TOF)を用いて比較検討した。ターンオーバー頻度(turnover frequency:TOF)は、1秒あたりの、(発生した酸素のモル数)/(触媒表面に存在するイリジウムのモル数)にて算出される数値である。TOFの測定は、pH0及びpH7の水を電解液として1.61〜1.91V(vs.NHE)の電位範囲で電気分解(電解時間1時間)し、発生した酸素を容量分析して発生した酸素のモル数を算出した。また、触媒表面に存在する電気化学的に活性なイリジウムのモル数は、サイクリックボルタモグラムにおけるIrIV/IrIIIの陽極波積分値を用いて算出した。(非特許文献1参照)。これらにより各電解電位におけるTOFを算出した。この測定結果の例として、図12に本実施形態のA2膜のpH0の水について測定・算出したTOFの値を示す。

0058

TOFの評価については、各電解液の電解電位(pH0で1.76Vであり、pH7で1.36Vである(いずれもIRドロップを除いた電位)。)におけるTOF値を用いた。この評価結果を表2に示す。

0059

0060

表2から、pH7の水において、本実施形態のA2膜はC膜よりもTOF値が高く、同等以上の活性を発揮し得ることが分かる。そして、A2膜はpH0の水(硫酸水溶液)でのTOF値が更に大きくなっている。これに対して、C膜は膜の分解・剥離が生じて安定した電解ができずTOFが測定できなかった。これらの対比結果から、本実施形態で製造したA2膜(酸化イリジウムと酸化ケイ素とからなる複合材料薄膜)は、水の電気分解等の電気化学用触媒として、活性及び安定性の面から好適であることが確認された。その性能は酸化イリジウムのみからなる薄膜と同等以上になり得るといえる。

0061

本発明に係る化学蒸着用原料によれば、酸化イリジウムと酸化ケイ素とが好適に分散した複合材料からなる薄膜を製造することができる。この複合膜は、電気化学用触媒として、酸化イリジウムのみからなる触媒と同等以上の活性を発揮し得る。本発明により製造される電気化学用触媒を備える電極は、表面処理や水の電気分解等の各種電解処理のための電極として好適である。

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

該当するデータがありません

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

該当するデータがありません

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ