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技術 環境負荷低減クリンカー、セメント組成物及びその製造方法、並びに地盤改良方法

出願人 宇部興産株式会社
発明者 佐々木玲伊藤貴康高橋俊之
出願日 2016年5月19日 (4年7ヶ月経過) 出願番号 2016-100599
公開日 2017年1月12日 (3年11ヶ月経過) 公開番号 2017-007931
状態 特許登録済
技術分野 地盤中に固結物質を施すことによる地盤強化 セメント、コンクリート、人造石、その養生
主要キーワード 間隙相 コンダクション 調合量 熱重量減少量 スラリー流動性 スラリー粘性 示差熱熱重量分析 水蒸気吸
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (8)

課題

原料の一部として廃棄物や産業副産物を十分に有効利用できるとともに製造過程におけるCO2発生量を十分に低減できる環境負荷低減クリンカーを提供する。

解決手段

本発明に係る環境負荷低減クリンカーは、水硬率(HM)が1.75〜2.20、ケイ酸率SM)が1.30以上2.50未満、鉄率IM)が2.5〜10.0であり且つボーグ式にて算定されるC3A量が15質量%以上、C4AF量が0.5〜11質量%である。

概要

背景

従来、一般的なセメント地盤改良材は、ポルトランドセメントクリンカーを含むポルトランドセメントベースに製造されている。特許文献1,2は、固化処理土からの六価クロム溶出量を低減可能な固化材を開示する。特許文献3は、C3S含有量が35〜65質量%、C3A量が10〜20質量%、Fe2O3含有量が2質量%以下、Al2O3/Fe2O3(鉄率)が3以上であるセメント組成物と、石膏と、高炉スラグとを含む地盤改良材を開示する。

概要

原料の一部として廃棄物や産業副産物を十分に有効利用できるとともに製造過程におけるCO2発生量を十分に低減できる環境負荷低減クリンカーを提供する。本発明に係る環境負荷低減クリンカーは、水硬率(HM)が1.75〜2.20、ケイ酸率SM)が1.30以上2.50未満、鉄率(IM)が2.5〜10.0であり且つボーグ式にて算定されるC3A量が15質量%以上、C4AF量が0.5〜11質量%である。なし

目的

本発明は、原料の一部として廃棄物や産業副産物を十分に有効利用できるとともに製造過程におけるCO2発生量を十分に低減できる環境負荷低減クリンカーを提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

水硬率(HM)が1.75〜2.20、ケイ酸率SM)が1.30以上2.50未満、鉄率IM)が2.5〜10.0であり且つボーグ式にて算定されるC3A量が15質量%以上、C4AF量が0.5〜11質量%である環境負荷低減クリンカー

請求項2

ケイ酸率(SM)の下限値が1.50であり、鉄率(IM)の下限値が3.0であり、ボーグ式にて算定されるC4AF量の上限値が10質量%である、請求項1に記載の環境負荷低減クリンカー。

請求項3

遊離石灰(f.CaO)含有量は8.0質量%未満である、請求項1又は2に記載の環境負荷低減クリンカー。

請求項4

モリブデン含有量は30mg/kg以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の環境負荷低減クリンカー。

請求項5

クロム含有量は100mg/kg以下であり、鉛含有量は100mg/kg以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の環境負荷低減クリンカー。

請求項6

請求項1〜5のいずれか一項に記載の環境負荷低減クリンカーと、石膏と、を含むセメント組成物

請求項7

高炉スラグを更に含み、当該セメント組成物100質量部に対する前記高炉スラグの含有量が5〜80質量部であり、当該セメント組成物100質量部に対するSO3量が1.5〜15.0質量部である、請求項6に記載のセメント組成物。

請求項8

全石膏に対する半水石膏の割合が40質量%以下である、請求項6又は7に記載のセメント組成物。

請求項9

吸着過程における相対圧0.9265での水蒸気吸着量が当該セメント組成物100gに対して4.90g以下であり、相対圧0.1000における吸着等温線脱着等温線との水蒸気吸着量の差異が当該セメント組成物100gに対して1.90g以下である、請求項6〜8のいずれか一項に記載のセメント組成物。

請求項10

熱重量測定において、20℃から115℃までの重量減少が0.2%〜1.0%である、請求項6〜9のいずれか一項に記載のセメント組成物。

請求項11

熱重量測定において、200℃から350℃までの重量減少が1.0%以下である、請求項6〜10のいずれか一項に記載のセメント組成物。

請求項12

コンダクションカロリーメーターで測定した接水から15分間での水和発熱量が3.8J/g以下である、請求項6〜11のいずれか一項に記載のセメント組成物。

請求項13

水硬率(HM)が1.75〜2.20、ケイ酸率(SM)が1.30以上2.50未満、鉄率(IM)が2.5〜10.0であり且つボーグ式にて算定されるC3A量が15質量%以上、C4AF量が0.5〜11質量%である環境負荷低減クリンカーが得られるように原料調合する原料調合工程と、1200〜1450℃の焼成温度で前記原料を焼成することによって前記環境負荷低減クリンカーを得る焼成工程と、前記環境負荷低減クリンカーと、少なくとも石膏とを含む混合物粉砕することによってセメント組成物を得る粉砕工程と、を含む、セメント組成物の製造方法。

請求項14

ケイ酸率(SM)の下限値が1.50であり、鉄率(IM)の下限値が3.0であり、ボーグ式にて算定されるC4AF量の上限値が10質量%である、請求項13に記載のセメント組成物の製造方法。

請求項15

前記原料は、Al2O3量が10質量%以上、SiO2/Al2O3質量比が5.0以下である廃棄物又は副産物を250〜600kg/t−cl’と、Fe2O3量が30質量%以上である鉄原料を30kg/t−cl’以下と、石灰石を800〜1200kg/t−cl’と、を含む、請求項13又は14に記載のセメント組成物の製造方法。

請求項16

前記粉砕工程における前記混合物は、前記環境負荷低減クリンカーと、前記石膏と、高炉スラグと、粉砕助剤として有機系粉砕助剤及び/又は水とを含み、前記環境負荷低減クリンカーと前記石膏と前記高炉スラグとの合計量100質量部に対し、前記混合物の前記有機系粉砕助剤の含有量は1.0質量部以下であり、前記混合物の前記水の含有量は0.5〜5.0質量部である、請求項13〜15のいずれか一項に記載のセメント組成物の製造方法。

請求項17

前記粉砕工程後、前記セメント組成物の水蒸気吸着量を測定する工程を更に含む、請求項13〜16のいずれか一項に記載のセメント組成物の製造方法。

請求項18

前記粉砕工程後、前記セメント組成物の熱重量減少量を測定する工程を更に含む、請求項13〜17のいずれか一項に記載のセメント組成物の製造方法。

請求項19

前記粉砕工程後、前記セメント組成物の水和発熱量を測定する工程を更に含む、請求項13〜18のいずれか一項に記載のセメント組成物の製造方法。

請求項20

請求項6〜12のいずれか一項に記載のセメント組成物を用いる地盤改良方法

請求項21

水/セメント組成物の質量比が0.2〜10.0のスラリーを用いて土壌固化することを含む、請求項20に記載の地盤改良方法。

技術分野

0001

本発明は、セメントクリンカー、特に環境負荷低減クリンカーに関する。また、本発明は、環境負荷低減クリンカーを含むセメント組成物及びその製造方法、並びに地盤改良方法に関する。

背景技術

0002

従来、一般的なセメント地盤改良材は、ポルトランドセメントクリンカーを含むポルトランドセメントベースに製造されている。特許文献1,2は、固化処理土からの六価クロム溶出量を低減可能な固化材を開示する。特許文献3は、C3S含有量が35〜65質量%、C3A量が10〜20質量%、Fe2O3含有量が2質量%以下、Al2O3/Fe2O3(鉄率)が3以上であるセメント組成物と、石膏と、高炉スラグとを含む地盤改良材を開示する。

先行技術

0003

特開2010−202463号公報
特開2011−195714号公報
特開2005−105234号公報

発明が解決しようとする課題

0004

現状のポルトランドセメントクリンカーは、ポルトランドセメントの品質規格水和熱、強度、流動性)を満足するための制約を受け、原料として使用できる廃棄原単位が限定される。また、セメントの強度発現性の面から、クリンカー鉱物のうちC3Sの含有量を一定の範囲内とするため、原料としての石灰石原単位を大幅に低減したり、焼成温度を大幅に低くしたりすることが難しく、製造におけるCO2発生量が多くなるという問題がある。

0005

例えば、上記特許文献1,2に記載のクリンカーの水硬率は2.2以上であり、当該クリンカーの焼成温度は普通ポルトランドセメントクリンカーや早強ポルトランドセメントクリンカーと同程度である。すなわち、特許文献1,2に記載のクリンカーは、比較的高温で実施される焼成プロセスを経て製造されるものであり、CO2発生量の低減の点において改善の余地があった。

0006

本発明は、原料の一部として廃棄物や産業副産物を十分に有効利用できるとともに製造過程におけるCO2発生量を十分に低減できる環境負荷低減クリンカーを提供することを目的とする。また、本発明は、上記環境負荷低減クリンカーを用いて製造されたセメント組成物及びその製造方法、並びに当該セメント組成物を使用した地盤改良方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0007

本発明に係る環境負荷低減クリンカーは、水硬率(HM)が1.75〜2.20、ケイ酸率SM)が1.30以上2.50未満、鉄率(IM)が2.5〜10.0であり且つボーグ式にて算定されるC3A量が15質量%以上、C4AF量が0.5〜11質量%である。

0008

上記環境負荷低減クリンカーは、従来のポルトランドセメントクリンカーと比較して水硬率及びケイ酸率が低めであり且つ鉄率が高めである。これらの諸率(水硬率、ケイ酸率及び鉄率)の範囲設定は、焼成温度を低温化することによって製造過程におけるCO2発生量を低減するとともに、原料の一部に例えば産業副産物である石炭灰フライアッシュボトムアッシュなど)を比較的多く使用するためである。なお、間隙相の量(C3A量及びC4AF量)を比較的高めに設定することも焼成温度の低温化に寄与する。

0009

上記環境負荷低減クリンカーが例えば地盤改良材(「固化材」又は「セメント系固化材」と称される場合もある。)の調製に使用される場合、ポルトランドセメントの調製に使用される場合と比較し、当該環境負荷低減クリンカーは遊離石灰(f.CaO)を多く含有してもよい。例えば、上記環境負荷低減クリンカーの遊離石灰含有量(f.CaO量)は8.0質量%未満であればよい。

0010

上記環境負荷低減クリンカーは、例えば、Al2O3 量が10質量%以上、SiO2/Al2O3質量比が5.0以下である廃棄物又は副産物を250〜600kg/t−cl’と、Fe2O3量が30質量%以上である鉄原料を30kg/t−cl’以下とを原料とし、当該原料を1200〜1450℃の焼成温度で焼成する工程を経て製造することができる。鉄原料の使用量を30kg/t−cl’以下(鉄原料を使用しない場合(0kg/t−cl’)も含む)とすることで、鉄原料(例えば銅カラミ)に含まれる重金属がクリンカーに持ち込まれる量を十分に低減できる。例えば、上記環境負荷低減クリンカーにおいて、モリブデン含有量は30mg/kg以下であることが好ましく、全クロム含有量は100mg/kg以下であることが好ましく、鉛含有量は100mg/kg以下であることが好ましい。

0011

本発明は、上記環境負荷低減クリンカーと、石膏とを含むセメント組成物を提供する。本発明に係るセメント組成物は、セメントクリンカーとして上記環境負荷低減クリンカーを含むため、原料の一部として廃棄物や産業副産物を十分に有効利用するとともに製造過程におけるCO2発生量を十分に低減できる。

0012

上記セメント組成物は、産業副産物の利用及び重金属の溶出量低減の観点から、適度な量の高炉スラグを更に含むことが好ましい。セメント組成物において、当該セメント組成物100質量部に対する高炉スラグの含有量は5〜80質量部であればよい。また、強度発現性の観点から、上記セメント組成物のSO3量は、当該セメント組成物の全質量100質量部に対して1.5〜15.0質量部であればよい。

0013

上記セメント組成物に含まれる全石膏に対する半水石膏の割合は40質量%以下であることが好ましい。この割合が40質量%以下であれば、セメント組成物に水を加えてスラリーを調製する際、スラリーに強張りが生じることを抑制できる。

0014

本発明は上記セメント組成物の製造方法を提供する。この製造方法は、水硬率(HM)が1.75〜2.20、ケイ酸率(SM)が1.30以上2.50未満、鉄率(IM)が2.5〜10.0であり且つボーグ式にて算定されるC3A量が15質量%以上、C4AF量が0.5〜11質量%である環境負荷低減クリンカーが得られるように原料を調合する原料調合工程と、1200〜1450℃の焼成温度で原料を焼成することによって環境負荷低減クリンカーを得る焼成工程と、環境負荷低減クリンカーと、少なくとも石膏とを含む混合物粉砕することによってセメント組成物を得る粉砕工程とを含む。

0015

上記製造方法によれば、焼成温度を低温化することによって製造過程におけるCO2発生量を低減できるとともに、原料の一部に例えば産業副産物である石炭灰を比較的多く使用できる。

0016

上記セメント組成物に少なくとも水を加えて調製されるスラリーの流動性を十分に確保する観点から、セメント組成物の反応性を抑制する処理を当該セメント組成物に施してもよい。例えば、上記粉砕工程において環境負荷低減クリンカーに対して所定の粉砕助剤有機系粉砕助剤及び/又は水)を添加して粉砕することにより、得られるセメント組成物を風化させればよい。すなわち、粉砕工程における混合物は、環境負荷低減クリンカーと、石膏と、高炉スラグと、粉砕助剤として有機系粉砕助剤及び/又は水とを含み、環境負荷低減クリンカーと石膏と高炉スラグとの合計量100質量部に対し、混合物における有機系粉砕助剤の含有量は1.0質量部以下であり、混合物における水の含有量は0.5〜5.0質量部であることが好ましい。また、セメント組成物を適度に風化させることにより、クリンカーのC3A量が多くても十分に優れた強度発現性を達成しやすいという利点もある。

0017

セメント組成物の風化の程度は、セメント組成物の水蒸気吸着量を測定することによって把握することができる。より具体的には、本発明に係るセメント組成物は、吸着過程における相対圧0.9265での水蒸気吸着量が当該セメント組成物100gに対して4.90g以下であり且つ相対圧0.1000における吸着等温線脱着等温線との水蒸気吸着量の差異が当該セメント組成物100gに対して1.90g以下であることが好ましい。

0018

セメント組成物の風化の程度は、セメント組成物の熱重量減少量を測定することによっても把握することができる。より具体的には、本発明に係るセメント組成物は、熱重量測定において20℃から115℃までの重量減少が0.2%〜1.0%であることが好ましく、また200℃から350℃までの重量減少が1.0%以下であることが好ましい。

0019

セメント組成物の風化の程度は、セメント組成物の水和発熱量を測定することによっても把握することができる。より具体的には、本発明に係るセメント組成物は、コンダクションカロリーメーターで測定した接水から15分間での水和発熱量が3.8J/g以下であることが好ましい。

0020

本発明に係るセメント組成物の製造方法は、粉砕工程後、セメント組成物の水蒸気吸着量、熱重量減少及び水和発熱量のいずれかを測定する工程を更に含むことが好ましい。この工程を実施することで、製造されたセメント組成物の風化の程度が反応性の観点から適度な範囲であるか否かを把握することができ、製品管理上、有用な情報を得ることができる。

0021

本発明は上記セメント組成物を用いる地盤改良方法を提供する。本発明に係る上記セメント組成物の好適な用途の一つとして地盤改良を挙げることができる。このセメント組成物を地盤改良材として使用した場合、従来品と遜色ない固化処理強度を達成できる。

0022

本発明に係る上記セメント組成物を地盤改良材として使用する場合、水/セメント組成物の質量比を0.2〜10.0としたスラリーを用いることで、良好なスラリー粘性を得ることができる。

発明の効果

0023

本発明によれば、廃棄物や産業副産物を原料の一部として有効利用でき且つ製造過程においてCO2発生量を低減できる環境負荷低減クリンカーが提供される。また、本発明によれば、上記環境負荷低減クリンカーを用いて製造されたセメント組成物及びその製造方法、並びに当該セメント組成物を使用した地盤改良方法が提供される。

図面の簡単な説明

0024

実施例11の水蒸気吸着量測定結果を示すグラフである。
実施例12の水蒸気吸着量測定結果を示すグラフである。
比較例6,7及び実施例15〜19の熱重量測定結果を示すグラフである。
比較例6,7及び実施例15〜19の熱重量測定結果を示すグラフである。
比較例6,7及び実施例15〜19の水和発熱測定結果(発熱速度)を示すグラフである。
比較例6,7及び実施例15〜19の水和発熱測定結果(発熱量)を示すグラフである。
熱重量測定結果と見掛け粘度との関係を示すグラフである。
水和発熱測定結果と見掛け粘度との関係を示すグラフである。

0025

以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の実施形態においては、セメントクリンカー及びこれを含む地盤改良材を例示するが、本発明に係るセメントクリンカー(環境負荷低減クリンカー)の用途は地盤改良材に限定されず、当該セメントクリンカーを使用して他のセメント組成物(例えば、各種ポルトランドセメント、高炉セメント等)を製造してもよい。

0026

<セメントクリンカー>
本実施形態のセメントクリンカーは環境負荷低減クリンカー(以下、「セメントクリンカー」という。)であって、水硬率(HM)が1.75〜2.20、ケイ酸率(SM)が1.30以上2.50未満、鉄率(IM)が2.5〜10.0であり且つボーグ式にて算定されるC3A量が15質量%以上、C4AF量が0.5〜11質量%である。本実施形態のセメントクリンカーによれば、廃棄物や産業副産物を原料の一部として有効利用でき且つ製造過程においてCO2発生量を低減できる。

0027

セメントクリンカーの水硬率(HM)は、以下の式(1)で算出される。セメントクリンカーの水硬率は、1.75〜2.20(1.75以上2.20以下)である。水硬率が1.75未満であると地盤改良材の水硬性が低下し強度発現性が不十分となりやすい。他方、水硬率が2.20を超えるとセメントクリンカーの製造プロセスにおける焼成温度を十分に低温化できない。セメントクリンカーの水硬率は、好ましくは1.85〜2.20であり、より好ましくは1.95〜2.20であり、更に好ましくは2.00〜2.20である。
HM=CaO/(SiO2+Al2O3+Fe2O3)・・・(1)

0028

セメントクリンカーのケイ酸率(SM)は、以下の式(2)で算出される。セメントクリンカーのケイ酸率は、1.30以上2.50未満である。ケイ酸率が1.30未満であると適正な組成のセメントクリンカーが得られ難い。他方、ケイ酸率が2.50以上であると従来のポルトランドセメントクリンカーと比較して廃棄物使用量を高めることが難しく、セメントクリンカーの製造原価が上がってしまう。セメントクリンカーのケイ酸率は、好ましくは1.50〜2.48であり、より好ましくは1.60〜2.30であり、更に好ましくは1.80〜2.05である。
SM=SiO2/(Al2O3+Fe2O3)・・・(2)

0029

セメントクリンカーの鉄率(IM)は、以下の式(3)で算出される。セメントクリンカーの鉄率は、2.5〜10.0である。鉄率が2.5未満であると従来のポルトランドセメントクリンカーと比較して廃棄物又な産業副産物の使用量を高めることが難しく、セメントクリンカーの製造原価が上がってしまう。他方、鉄率が10.0を超えるとセメントクリンカーを含むセメント組成物に水を添加して得られるスラリーの流動性が悪化する。セメントクリンカーの鉄率は、好ましくは2.8〜9.0であり、より好ましくは3.0〜8.0であり、更に好ましくは4.0〜8.0であり、最も好ましくは5.0〜8.0である。
IM=Al2O3/Fe2O3・・・(3)

0030

本実施形態のセメントクリンカーは、C3A、C4AF、C3S及びC2Sを含有するものであり、その組成は、ボーグ式により算出することができる。ボーグ式は、セメントクリンカー中の主要な四鉱物の含有量を求める計算式である。セメントクリンカーの場合のボーグ式は、下記のように表される。
C3S量=(4.07×CaO)−(7.60×SiO2)−(6.72×Al2O3)−(1.43×Fe2O3)
C2S量=(2.87×SiO2)−(0.754×C3S)
C3A量=(2.65×Al2O3)−(1.69×Fe2O3)
C4AF量=3.04×Fe2O3

0031

式中の「CaO」、「SiO2」、「Al2O3」及び「Fe2O3」は、それぞれ、セメントクリンカーにおけるCaO、SiO2、Al2O3及びFe2O3のセメントクリンカー全体質量に対する含有割合(質量%)である。これらの含有割合は、JIS R 5202(2010)「ポルトランドセメントの化学分析方法」により測定することができる。

0032

本実施形態のセメントクリンカーは、ボーグ式にて算定されるC3A量が15質量%以上である。C3A量が15質量%未満であるとセメント組成物の強度発現性が不十分になるとともにセメントクリンカーの製造プロセスにおける焼成温度を十分に低温化できない。セメントクリンカーのC3A量は、好ましくは15〜40質量%であり、より好ましくは16〜40質量%であり、更に好ましくは20〜35質量%であり、特に好ましくは21〜35質量%である。なお、セメントクリンカーのC3A量が40質量%を超えるとセメントクリンカーを含むセメント組成物に水を添加して得られるスラリーの流動性が悪化しやすい。

0033

本実施形態のセメントクリンカーは、ボーグ式にて算定されるC4AF量が0.5〜11質量%である。C4AF量が0.5質量%未満であるとセメントクリンカーの製造プロセスにおける焼成温度を十分に低温化できない。他方、C4AF量が11質量%を超えるとセメント組成物の強度発現性が低下するほか、環境基準に定められる六価クロム等の重金属含有量が増加する。C4AF量は、好ましくは0.7〜10質量%であり、より好ましくは1〜8.5質量%であり、更に好ましくは3〜8質量%であり、更により好ましくは5〜7.5質量%であり、特に好ましくは6〜7.5質量%である。

0034

本実施形態において、C3A量及びC4AF量の合計量は21〜35質量%であることが好ましい。この合計量が21質量%未満であるとセメントクリンカー原料として使用する粘土代替廃棄物の量が少なくなり、資源循環型社会への貢献が小さくなる。他方、この合計量が35質量%を超えるとセメント組成物の強度発現性及び流動性が低下するほか、セメントクリンカーの融液量が多くなり、通常のロータリーキルンで安定的に製造することが難しくなる。C3A量及びC4AF量の合計量は、より好ましくは24〜32質量%であり、更に好ましくは27〜30質量%である。

0035

本実施形態において、C2S量は好ましくは10〜50質量%であり、より好ましくは11〜45質量%であり、更に好ましくは15〜40質量%である。C2S量が10質量%未満であると長期的な強度発現性が不十分となりやすく、他方、50質量%を超えると短期的な強度が低下する恐れがある。C3S量は好ましくは20〜70質量%であり、より好ましくは30〜60質量%であり、更に好ましくは35〜60質量%である。C3S量が20質量%未満であると強度発現性が不十分となりやすく、他方、70質量%を超えると発熱量の増加に伴う収縮量の増大により強度発現性が不十分となる恐れがあるほか、間隙相量が十分でなくなることで焼成温度が上がる恐れがある。

0036

セメントクリンカーにおける遊離石灰含有量(f.CaO量)は、強度発現性の観点から、なるべく少ないことが好ましい(例えば1質量%以下)。ただし、このセメントクリンカーを地盤改良材の調製に使用する場合、ポルトランドセメントの調製に使用する場合と比較し、セメントクリンカーは遊離石灰を多く含有してもよい。この場合、セメントクリンカーの遊離石灰含有量の上限値は好ましくは8.0質量%であり、より好ましくは6.0質量%であり、更に好ましくは5.0質量%であり、特に好ましくは4.5質量%である。他方、セメントクリンカーの遊離石灰(f.CaO)含有量の下限値は好ましくは0質量%であり、より好ましくは1.0質量%であり、更に好ましくは3.0質量%である。セメントクリンカーの遊離石灰(f.CaO)含有量が8.0質量%以下であれば、セメントクリンカーを地盤改良材として使用した場合に従来品と同等以上の強度発現性を確保できるとともに、その製造過程において十分に低い温度で焼成することができ、CO2発生量を低減できる。

0037

セメントクリンカーにおけるモリブデン含有量は可能な限り少ないことが好ましく、例えば30mg/kg以下であることが好ましい。モリブデン含有量が30mg/kgを超えるとセメントクリンカーを地盤改良材として使用した場合に固化処理条件によっては固化処理土からのモリブデン溶出量が増大する恐れがある。なお、セメントクリンカーにおけるモリブデン含有量を例えば5mg/kg未満にしようとすると廃棄物及び産業副産物のセメントクリンカー原料としての調合量が少なくなり、セメントクリンカーの製造原価が上がってしまう。十分に低い製造原価及び十分に低いモリブデン溶出量を両立させる観点から、セメントクリンカーにおけるモリブデン含有量は好ましくは6〜28mg/kgであり、より好ましくは12〜24mg/kgである。

0038

セメントクリンカーにおける全クロム含有量は可能な限り少ないことが好ましく、例えば100mg/kg以下であることが好ましい。ここで、全クロム含有量とは、セメントクリンカー中に含まれる三価クロムや六価クロム等の価数の異なる全てのクロムの合計含有量をいう。セメントクリンカーにおける全クロム含有量が100mg/kgを超えると、セメントクリンカーを地盤改良材として使用した場合に固化処理条件によっては固化処理土からの六価クロム溶出量が増大する恐れがある。なお、セメントクリンカーにおける全クロム含有量を例えば30mg/kg未満にしようとすると廃棄物及び産業副産物のセメントクリンカー原料としての調合量が少なくなり、セメントクリンカーの製造原価が上がってしまう。十分に低い製造原価及び十分に低い六価クロム溶出量を両立させる観点から、セメントクリンカーにおける全クロム含有量は好ましくは40〜65mg/kgであり、より好ましくは43〜62mg/kgである。

0039

セメントクリンカーにおける六価クロム含有量は、20〜45mg/kgであることが好ましい。全クロム含有量と同様に、六価クロム含有量はできるだけ少ないことが好ましいが、セメントクリンカーにおける六価クロム含有量が20mg/kg未満では、セメントクリンカー原料に使用できる廃棄物及び産業副産物の量が少なくなり、製造原価が上がる傾向がある。一方、セメントクリンカーにおける六価クロム含有量が45mg/kgを超えると、セメントクリンカーを地盤改良材として使用した場合に固化処理土からの六価クロム溶出量が増大する傾向がある。十分に低い製造原価及び十分に低い六価クロム溶出量を両立させる観点から、セメントクリンカーにおける六価クロム含有量は好ましくは25〜40mg/kgであり、より好ましくは30〜35mg/kgである。

0040

セメントクリンカーにおける鉛含有量は可能な限り少ないことが好ましく、例えば100mg/kg以下であることが好ましい。セメントクリンカーにおける鉛含有量が100mg/kgを超えると、セメントクリンカーを地盤改良材として使用した場合に固化処理条件によっては固化処理土からの鉛溶出量が増大する恐れがある。なお、セメントクリンカーにおける鉛含有量を例えば10mg/kg未満にしようとすると廃棄物及び産業副産物のセメントクリンカー原料としての調合量が少なくなり、セメントクリンカーの製造原価が上がってしまう。十分に低い製造原価及び十分に低い鉛溶出量を両立させる観点から、セメントクリンカーにおける鉛含有量は好ましくは10〜100mg/kgであり、より好ましくは30〜70mg/kgである。

0041

上述のとおり、本実施形態に係るセメントクリンカーは、鉄率(IM、Al2O3/Fe2O3)が比較的高く(2.5〜10.0)且つC3A量((2.65×Al2O3)−(1.69×Fe2O3)が比較的多い(15質量%以上)。つまり、本実施形態のセメントクリンカーは原燃料から持ち込まれるAl2O3の量がFe2O3の量と比較して多いといえる。特に、C3A(アルミネート相)は急速に水和反応が進むため、C3A量が多いセメントクリンカーを含む地盤改良材に水を添加してスラリーを調製する場合、スラリーの流動性が不十分となる場合がある。スラリーの流動性の十分に確保するため、換言すると、セメントクリンカーに含まれるC3Aの水和活性を適度に抑制するため、セメントクリンカーを意図的に風化させる処置を施してもよい。この処置はセメントクリンカーを対象に実施してもよいし、地盤改良材を製造する過程において実施してもよい(後述の「粉砕工程」参照)。

0042

<地盤改良材>
本実施形態の地盤改良材(セメント組成物)は、上記セメントクリンカーと石膏とを含む。地盤改良材における石膏の質量割合は、セメントクリンカー100質量部に対し、好ましくは5〜30質量部であり、より好ましくは10〜25質量部であり、更に好ましくは15〜20質量部である。地盤改良材における石膏の質量割合が5質量部未満であると固化処理土の強度発現性が不十分となりやすい。なお、地盤改良材における石膏の質量割合が増えるほど、固化処理土の強度発現性は向上する傾向があるが、30質量部を超えると添加効果飽和する。

0043

上記地盤改良材に使用される石膏の形態は、特に限定されるものでなく、二水塩、半水塩、無水塩のいずれも使用可能である。石膏の具体例としては、天然石膏や排煙脱硫処理によって副生する副産石膏、天然無水石膏、ふっ酸の製造過程で副産するふっ酸無水石膏等が挙げられる。地盤改良材をスラリー工法で使用する場合には、半水石膏の使用量をなるべく低減し、主に二水塩又は無水塩を用いることが好ましい。例えば、地盤改良材に含まれる全石膏に対する半水石膏の割合は好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは0.1〜30質量%であり、更に好ましくは0.5〜20質量%である。半水石膏の割合を40質量%以下にすることで、地盤改良材に水を加えてスラリーを調製する際、スラリーに強張りが生じることを抑制できる。

0044

上記地盤改良材におけるSO3量は、強度発現性の観点から地盤改良材100質量部に対して好ましくは1.5〜15.0質量部であり、より好ましくは1.8〜14.5質量部であり、更に好ましくは3〜14.0質量部であり、特に好ましくは8〜13.0質量%である。地盤改良材のSO3量が上記範囲となるように石膏の配合量を調整すればよい。

0045

上記地盤改良材は、適度な量の高炉スラグを更に含むことが好ましい。高炉スラグの具体例として、高炉水砕スラグ高炉徐冷スラグ等が挙げられる。地盤改良材における高炉スラグの含有量は、地盤改良材100質量部に対して好ましくは5〜80質量部であり、より好ましくは10〜70質量部であり、更に好ましくは20〜50質量部である。地盤改良材における高炉スラグの質量割合が5質量部未満では産業副産物(高炉スラグ)の有効利用が不十分となりやすく、また関東ロームのような火山灰質粘性土を処理する場合、固化処理条件によってはクロムなどの重金属の溶出量の低減効果が不十分となりやすい。他方、地盤改良材における高炉スラグの質量割合が80質量部を超えると、固化処理土の強度が不十分となりやすい。

0046

<地盤改良材の製造方法>
上記地盤改良材(セメント組成物)の製造方法について説明する。この製造方法は、原料調合工程と、焼成工程と、粉砕工程とをこの順序で含む。原料調合工程と焼成工程を経ることによってセメントクリンカーが製造され、その後の粉砕工程を経ることで地盤改良材が製造される。

0047

(原料調合工程)
原料調合工程は、諸率(水硬率、ケイ酸率及び鉄率)が上記範囲であり且つボーグ式によって算定される構成化合物量(C3A量及びC4AF量)が上記範囲であるセメントクリンカーが得られるように原料を調合する工程である。つまり、この工程では、所望の物性(諸率及び構成化合物量)のセメントクリンカーが得られるように原料を選択するとともにその使用量(原料原単位)を調整する。

0048

セメントクリンカーの原料として石灰石、珪石粘土系廃棄物等を主に使用する。粘土系廃棄物としては石炭灰、建設発生土スラグ等が挙げられる。ここで、通常のポルトランドセメントクリンカーで使用される銅カラミや鉄精鉱等の鉄原料は極力使用量を抑える。鉄原料の使用量をなるべく少なくすることで、鉄原料に含まれる重金属がセメントクリンカーに持ち込まれることを十分に抑制できる。

0049

セメントクリンカー1トン当たりの原料原単位は以下の範囲であることが好ましい。
・石灰石:800〜1300kg、より好ましくは900〜1200kg、更に好ましくは1000〜1150kg。
・珪石:0〜100kg、より好ましくは0〜50kg、更に好ましくは0〜20kg。
・粘土系廃棄物:250〜600kg、より好ましくは300〜500kg、更に好ましくは350〜450kg。
・鉄原料:0〜30kg、好ましくは0〜20kg、更に好ましくは0〜10kg、特に好ましくは0kg。

0050

粘土系廃棄物(粘土系産業副産物も含む。)のAl2O3量は、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは10〜70質量%であり、更に好ましくは20〜65質量%であり、特に好ましくは25〜60質量%である。粘土系廃棄物のSiO2/Al2O3質量比は、好ましくは5.0以下であり、より好ましくは1.0〜4.0であり、更に好ましくは2.0〜3.0である。かかる粘土系廃棄物の具体例としては、石炭灰(例えば、フライアッシュ、ボトムアッシュ)などが挙げられる。なお、粘土系廃棄物として、Fe2O3を3質量%以上(より好ましくは4〜6質量%)含む石炭灰等を選択して用いることが好ましく、これによって鉄原料を使用しなくても、セメントクリンカーの造粒を容易にし、セメントクリンカーの粉化を抑制することができる。これにより、クーラーでの熱交換効率ダスト集塵効率を高めることができるため、より省エネで且つ安定してセメントクリンカーを製造することができる。

0051

鉄原料のFe2O3量は、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは30〜90質量%であり、更に好ましくは40〜80質量%であり、特に好ましくは50〜70質量%である。かかる鉄原料の具体例としては、銅カラミ、鉄精鉱、転炉滓などが挙げられる。

0052

(焼成工程)
焼成工程は、原料調合工程を経て得られた原料を焼成することによってセメントクリンカー(環境負荷低減クリンカー)を得る工程である。この工程を実施するための設備としては、NSPキルンSPキルンなどが挙げられる。これらの設備は、焼成温度を測定する焼点温度測定機と、f.CaO量測定機(もしくはf.CaO量分析装置)とを有していることが好ましい。

0053

焼成温度は、好ましくは1200〜1450℃であり、より好ましくは1250〜1400℃であり、更に好ましい範囲としては1300〜1400℃であり、特に好ましくは1350〜1400℃である。焼成温度が1200℃未満であると地盤改良材の強度発現性が不十分となりやすく、他方、1450℃を超えると焼成工程におけるCO2排出量削減効果が不十分となりやすい。なお、焼成されたクリンカーを1〜12時間毎採取し、そのf.CaO量を測定することが好ましい。f.CaO量をモニタリングし、その値が所定の条件(例えば8.0質量%未満)を満たすように、焼成条件(温度、時間、ロータリーキルンであれば回転速度など)を調整してもよい。

0054

(粉砕工程)
粉砕工程は、セメントクリンカーと、少なくとも石膏とを含む混合物を粉砕することによって地盤改良材(セメント組成物)を得る工程である。この工程を実施するための設備としては、ボールミル竪型ローラーミルなどが挙げられる。セメントクリンカーに石膏を添加する際に、高炉スラグや石炭灰を添加してもよい。

0055

粉砕工程を経て得られる地盤改良材のブレーン比表面積は、地盤改良材の適度な反応性の観点から、好ましくは3000〜5000cm2/kgであり、より好ましくは3500〜5000cm2/kgであり、更に好ましくは4000〜5000cm2/kgである。

0056

地盤改良材を使用して調製されるスラリーの流動性を十分に確保する観点から、地盤改良材の反応性を抑制する処理を粉砕工程において実施してもよい。例えば、粉砕工程においてセメントクリンカーに対して所定の粉砕助剤(有機系粉砕助剤及び/又は水)を添加して粉砕することにより、地盤改良材を風化させればよい。有機系粉砕助剤として、ジエチレングリコールトリエタノールアミンなどが挙げられる。粉砕助剤として、有機系粉砕助剤及び水をそれぞれ単独で使用してもよいし、これらを併用してもよい。粉砕工程において、粉砕助剤を使用することで粉砕時の温度を所定の温度以下(例えば120℃以下)に抑えることができるという効果も奏される。なお、粉砕工程における風化処理の代わりに、あるいは、これとともにサイロ内において地盤改良材をエージングすることによって地盤改良材を風化させてもよい。

0057

粉砕処理すべき混合物において、セメントクリンカーと石膏と高炉スラグとの合計量100質量部に対する有機系粉砕助剤の含有量は好ましくは0〜1.0質量部であり、より好ましくは0.001〜0.1質量部であり、更に好ましくは0.01〜0.05質量部である。有機系粉砕助剤の含有量(添加量)が1.0質量部を超えるとセメント組成物の強度発現性が低下する恐れがある。

0058

粉砕処理すべき混合物において、セメントクリンカーと石膏と高炉スラグとの合計量100質量部に対する水の含有量は好ましくは0.5〜5.0質量部であり、より好ましくは0.3〜3.0質量部であり、更に好ましくは0.5〜2.0質量部である。水の含有量(添加量)が0.5質量部未満であるとセメント組成物のスラリー流動性及び強度発現性が改善されず、他方、5.0質量部を超えるとセメント組成物が固結し、スラリー流動性及び強度発現性が低下する恐れがある。

0059

地盤改良材の風化の程度は、地盤改良材の水蒸気吸着量を測定することによって把握することができる。より具体的には、本実施形態の地盤改良材は、吸着過程における相対圧0.9265での水蒸気吸着量が当該地盤改良材100gに対して4.9g以下(より好ましくは0.1〜4.9g)であり且つ相対圧0.1000における吸着等温線と脱着等温線との水蒸気吸着量の差異(ヒステリシス)が当該地盤改良材100gに対して1.9g以下(より好ましくは0.1〜1.9g)であることが好ましい。ここで、相対圧0.9265での水蒸気吸着量は地盤改良材における水との反応性が高い成分の含有量(C3A量及びf.CaO量)が反映される。一方、相対圧0.1000における吸着等温線と脱着等温線との水蒸気吸着量の差異(ヒステリシス)は水蒸気吸着前の地盤改良材の水和活性が反映される。つまり、これらの二つの値が上記条件を満たすように地盤改良材を意図的に風化させることで、地盤改良材を含むスラリーの流動性を十分に確保することができる。

0060

地盤改良材の風化の程度は、地盤改良材の熱重量減少量を測定することによっても把握することができる。より具体的には、本実施形態の地盤改良材は、20℃から115℃までの重量減少が例えば0.2〜1.0%であり、好ましくは0.2〜0.7%であり、更に好ましくは0.2〜0.5%であり、特に好ましくは0.2〜0.3%である。また、本実施形態の地盤改良材は、200℃から350℃までの重量減少が例えば1.0%以下であり、好ましくは0.2〜0.7%であり、更に好ましくは0.3〜0.5%であり、特に好ましくは0.35〜0.4%である。ここで、20℃から115℃までの重量減少には付着水セメント水和物エトリンガイト)の量が反映される。一方、200℃から350℃までの重量減少にはセメント水和物(C−S−H)の量が反映される。つまり、これらの二つの値が上記条件を満たすように地盤改良材を意図的に風化させることで、地盤改良材を含むスラリーの流動性を十分に確保することができ、且つ強度への影響を抑えることができる。

0061

地盤改良材の風化の程度は、地盤改良材の水和発熱量を測定することによっても把握することができる。より具体的には、本実施形態の地盤改良材は、接水から15分間での水和発熱量が例えば−1.0〜3.8J/gであり、好ましくは−0.7〜3.5J/gであり、より好ましくは−0.6〜3.4J/gであり、更に好ましくは−0.5〜3.3J/gであり、最も好ましくは0〜3.2J/gである。ここで、接水から15分間での水和発熱量は水和の程度を反映している。つまり、この値が上記条件を満たすように地盤改良材を意図的に風化させることで、地盤改良材を含むスラリーの流動性を十分に確保することができる。なお、意図的に風化した地盤改良材では、接水から15分間での水和発熱量がマイナスになる場合もある。これは、地盤改良材が水和する際の発熱よりも、含有する一部の化合物が水に溶解する際の吸熱が大きくなる為と考えられる。

0062

本実施形態の製造方法は、粉砕工程後、地盤改良材の水蒸気吸着量、熱重量減少及び水和発熱量のいずれかを測定する工程を更に含むことが好ましい。この工程を実施することで、製造されたセメント組成物の風化の程度が反応性の観点から適度な範囲であるか否かを把握することができ、製品管理上、有用な情報を得ることができる。水蒸気吸着量の測定は高精度全自動ガス吸着装置(日本ベル社製、BELSORP18)、熱重量減少量は示唆熱重量分析装置セイコーインスツルメンツ社製、TG−DTA5200)、水和発熱量はコンダクションカロリーメーター(東京理工社製、TCG−26)を用いて実施することができる。

0063

本実施形態の製造方法は、地盤改良材の製造に使用する石膏における半水石膏の割合(半水石膏化率)を測定する工程を更に含むことが好ましい。半水石膏化率が40質量%以下の石膏を使用することで、地盤改良材に水を加えてスラリーを調製する際、スラリーに強張りが生じることを抑制できる。

0064

<地盤改良方法>
上記地盤改良材を用いた地盤改良方法の実施形態について説明する。本実施形態の地盤改良方法は、上記の地盤改良材と、土壌とを混合する工程を備える。対象の土壌として、ローム、粘土砂質土有機質土などが挙げられる。土壌1m3にする地盤改良材の混合量は、土壌の固化強度を十分に高める観点から、好ましくは30〜500kgであり、より好ましくは50〜450kgであり、更に好ましくは200〜400kgである。半水石膏化率の測定は、粉末エックス線回折測定による二水石膏ならびに半水石膏の定量、あるいは熱重量測定・示差熱分析(TG−DTA)装置により脱水温度脱水量を測定することで実施することができる。

0065

土壌と地盤改良材の混合方法は、従来の地盤改良材と同様に、粉体として土壌に添加して混合する、あるいは水を混ぜてスラリーとして土壌に混合することが可能である。水/セメント組成物の質量比は例えば0.2〜10.0であり、好ましくは0.4〜5.0であり、更に好ましくは0.6〜1.5である。この範囲を満たすことで地盤改良材を含むスラリーの流動性を十分に確保することができる。

0066

以下に、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。

0067

[1.セメントクリンカーの製造]
表1に示す化学組成の原料と、以下の試薬とを準備した。

0068

0069

(試薬)
酸化アルミニウム和光純薬株式会社製、試薬特級

0070

表2に示す割合で各成分を調合して得られたクリンカー原料を以下のようにして電気炉で焼成することによってセメントクリンカーを得た。すなわち、1000℃の電気炉にクリンカー原料を投入し、最高焼成温度まで10℃/分で昇温した。最高焼成温度では30分間保持した後、電気炉から取り出した試料空冷した。なお、表2に記載の「焼成温度」はここでいう最高焼成温度を意味する。

0071

得られたセメントクリンカーについて、JIS R5202:2010「セメントの化学分析方法」に準じて化学成分を測定し、クリンカーの諸率及び鉱物組成を以下の式により算出した。また、Cukα線により測定したクリンカーの粉末エックス線回折パターンリートベルト解析することで鉱物組成(参考値)及びf.CaO量を算出し、f.CaO量から易焼成性を評価した。表3〜5にセメントクリンカーの化学成分、諸率及び鉱物組成を示す。
HM=CaO/(SiO2+Al2O3+Fe2O3)
SM=SiO2/(Al2O3+Fe2O3)
IM=Al2O3/Fe2O3
C3S=4.07×CaO−7.60×SiO2−6.72×Al2O3−1.43×
Fe2O3
C2S=2.87×SiO2−0.75×C3S
C3A=2.65×Al2O3−1.69×Fe2O3
C4AF=3.04×Fe2O3

0072

0073

0074

0075

0076

実施例1,2,4に係るセメントクリンカーは、同じ温度で焼成した比較例2,3に係るセメントクリンカーと比較してf.CaO量が低減されており、易焼成性が向上している。

0077

実施例1〜6に係るセメントクリンカーは、原料に鉄源を使用しなかったこと、または鉄源の使用量を少なくしたことで、クリンカー中のMo含有量は30mg/kg以下、全Cr含有量は100mg/kg以下、Pb含有量は100mg/kg以下となっており、比較例1〜3のセメントクリンカーよりも更に低減されている。

0078

実施例1〜6に係るセメントクリンカーは、水硬率(HM)を1.75〜2.20、ケイ酸率(SM)を1.30以上2.50未満、鉄率(IM)を2.5〜10.0に設定することで、比較例1〜3のセメントクリンカーよりも多量の石炭灰を原料の一部として使用することが可能となっている。

0079

[2.セメント組成物の製造]
セメントクリンカー(K1,K2,K3,K4,K7,K8,K9)に石膏及び/又は高炉スラグを加え、表6〜表8に示す配合の固化材(セメント組成物)を得た。石膏として、ふっ酸無水石膏(セントラル硝子製、SO3量:58.1%、ブレーン比表面積:3700cm2/g)を用いた。高炉スラグとして、高炉スラグ微粉末(千葉リバーメント株式会社製、SO3量:0.1質量%、硫化物硫黄含有量:0.861質量%、ブレーン比表面積:3460cm2/g)を用いた。粉砕処理にはボールミルを使用し、有機系粉砕助剤としてジエチレングリコール(DEG)及び/又は水を使用した。表6〜8に示すとおり、有機系粉砕助剤の添加量は、セメントクリンカーと石膏と高炉スラグの合計量を基準(外割質量)とした。セメント組成物の粉末度はいずれもブレーン比表面積で4500±50cm2/gとした。また、比較例5〜7はK1とK2を2:1で混合したものを使用した。

0080

0081

0082

0083

[3.セメント組成物を用いた固化処理土の作製]
対象土はローム(自然含水比:132.6%、湿潤密度:1.361g/cm3、礫分:0.1%、砂分:11.0%、細粒分:88.9%)とし、ローム1m3あたり固化材の配合量が300kgとなるようにロームと固化材を配合し、ホバートミキサーで3分間よく混合した後、円柱形型枠に詰めて固化処理土供試体を作製した。

0084

[4.セメント組成物のスラリー粘性測定]
固化材(セメント組成物)60質量部と水100質量部とを混合してスラリーを作製し、その見かけ粘度回転式粘度計(ThermoFisherScientific社製、HAKERheoStress 1、測定温度20℃又は35℃、パラレルプレート直径60mm、せん断速度200s−1)にて測定した。

0085

[5.固化処理土の強度試験
固化処理土について、20℃で7日間及び28日間の養生後、針貫入試験機(丸東製作所製、SH−70)にて針の貫入量が10mmとなるときの貫入力を測定し、貫入勾配を算出した。更に、貫入勾配から固化処理土の強度を算出した。
なお、固化処理土の強度算出には以下の式を用いた。
A=94.248X1.2567
A:固化強度(N/mm2)
X:針貫入勾配(N/mm)=貫入力(N)/貫入量(mm)

0086

[6.水蒸気吸着量の測定]
水蒸気吸着量は高精度全自動ガス吸着装置(日本ベル社製、BELSORP18)にてセメント組成物を40℃(真空下)で12時間脱気し、25℃で水蒸気吸着試験を行った。相対圧0.9265における水蒸気吸着量と、相対圧0.1000における吸着等温線と脱着等温線の水蒸気吸着量のヒステリシス(差異)を求めた。なお、セメント組成物に吸着した水蒸気量の体積から質量への換算には、以下の式を用いた。

0087

B=C/(22.7×1000)×18×100
B:セメント組成物100gあたりの水蒸気吸着量(g/100g)
C:セメント組成物1gあたりの水蒸気吸着量(cm3(STP)/g)

0088

[7.熱重量測定]
「TGの20〜115℃の減量(質量%)」及び「TGの200〜350℃の減量(質量%)」は、10℃/分で昇温した場合の20〜115℃及び200〜350℃の範囲での重量減少分(質量%)である。なお、測定方法は、示差熱熱重量分析測定装置としてTG−DTA5200(セイコーインスツルメンツ(株)製)を用い、直径20μmの孔を有する容量30μLのセルアルミ容器)に、試料約20mg入れ、昇温速度10℃/分で室温(20℃)から500℃まで昇温した。なお、リファレンスとしてアルミ板(20mg)を用いた。

0089

[8.水和発熱測定]
水和発熱量の測定方法は、コンダクションカロリーメーター(東京理工製、TCG−26)にてセメント組成物と水とを、水:セメント組成物=60:100の質量比で混合して35℃で接水から1時間後までの発熱量を測定した。

0090

[9.試験結果]
表9〜11にスラリー粘性測定結果と固化処理土の固化強度試験結果を示す。表9は表6に示す固化材(高炉スラグの配合なし)の結果を示し、表10は表7に示す固化材(高炉スラグの配合あり)の結果を示し、表11は表8に示す固化材(高炉スラグの配合あり)の結果を示している。

0091

実施例7〜14及び18,19に係るセメント組成物では、普通ポルトランドセメントクリンカーを使用した比較例4〜7と同等以上の固化強度が28日材齢で得られている。更に、粉砕助剤と水を併用して粉砕した実施例8,10,12,14,16,17,19に係るセメント組成物は、粉砕助剤のみで粉砕した実施例7,9,11,13,15,18に係るセメント組成物よりも見掛け粘度が小さくなることで流動性が向上し、更に7日材齢でも比較例4〜7を上回る固化強度が得られている。更に、実施例7〜19のセメント組成物は、通常のクリンカーよりも多量の廃棄物を使用し低温で焼成されたセメントクリンカーを使用していることから、廃棄物利用の拡大とCO2排出量の削減によって環境負荷を低減することができる。

0092

表12に実施例11(風化処理にDEG使用)と実施例12(風化処理にDEGと水を併用)のセメント組成物の水蒸気吸脱着測定の結果を示す。図1及び図2に実施例11及び実施例12において測定した吸着等温線をそれぞれに示す。図1及び図2に示すグラフの横軸は相対圧であり、縦軸は水蒸気の吸着量である。表12から読み取った相対圧0.9265及び0.1000における水蒸気吸着量を表10に示す。なお、表10中の水蒸気吸着量は、相対圧0.9265の実施例12を除き、表12に示すデータから二点の測定データの線形近似により内挿あるいは外挿することにより算出した。その際、相対圧0.1000よりも相対圧が低いデータと相対圧0.1000よりも相対圧の高いデータから、それぞれ相対圧0.1000に最も近い各1点のデータを使用した線形近似により相対圧0.1000における水蒸気吸着量を内挿した。一方、相対圧0.9265における水蒸気吸着量の算出には、相対圧0.9265に最も近い二点のデータを使用した線形近似により水蒸気吸着量を外挿した。

0093

その結果、粉砕時にDEGと水を併用した実施例12のセメント組成物は、相対圧0.9265での水蒸気吸着量がセメント組成物100gあたり4.9g以下、相対圧0.1000における吸着等温線と脱着等温線との水蒸気吸着量のヒステリシスがセメント組成物100gあたり1.9g以下であった。一方、粉砕時に水を使用せず、DEGのみを使用した実施例11のセメント組成物は、相対圧0.9265における水蒸気吸着量がセメント組成物100gあたり4.9g超、相対圧0.1000における吸着等温線と脱着等温線との水蒸気吸着量のヒステリシスはセメント組成物100gあたり1.9g超であった。

0094

0095

0096

0097

実施例

0098

セメント組成物の熱重量測定と水和発熱測定の結果を表11に示す。粉砕助剤と水を併用して粉砕した実施例16,17,19に係るセメント組成物は、20℃〜115℃の重量減少が0.2〜1.0%と、粉砕助剤のみで粉砕した実施例15,18に係るセメント組成物よりも大きくなり、200℃〜350℃の重量減少は1.0%以下となった。接水から15分間の発熱量についても、実施例16,17,19は実施例15,18よりも小さい3.8J/g以下となった。

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