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技術 転炉排滓方法

出願人 新日鐵住金株式会社
発明者 松澤玲洋内藤憲一郎
出願日 2015年6月11日 (4年9ヶ月経過) 出願番号 2015-118242
公開日 2017年1月5日 (3年2ヶ月経過) 公開番号 2017-002363
状態 特許登録済
技術分野 炭素鋼又は鋳鋼の製造
主要キーワード 追加投入量 閉塞防止用 静止面 設備投資コスト 最大断面積 精錬材 傾動角 用生石灰
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (3)

課題

転炉において溶銑脱燐吹錬を行った後、転炉を傾動させて炉口からスラグを排出する際に、高い排滓率が得られる排滓方法を提供することを目的とする。

解決手段

上吹きランスからの送酸により炉内のスラグをフォーミングさせ、送酸を止めた後に転炉を傾動して炉口から排出開始した後、排滓途中で転炉の傾動角を排滓時より小さくし、銑鉄酸化鉄を炉内のスラグへ投入して再びフォーミングさせ、転炉を再度傾動して追加の排滓を行う。スラグはCaO/SiO2=0.8〜1.5、Al2O3=4〜14質量%の組成を有し、且つ温度は1300〜1400℃である。

概要

背景

鉄鋼材料において不純物のPは加工性靭性を低下させる有害元素である。鉄鋼製造プロセスにおいて高炉などで製造された溶銑には精錬プロセスにおいて脱燐処理が行われ、鋼材品質を満たすのに必要なレベルまでP濃度を低減している。鋼材に要求される品質レベル厳格化に対応するため、脱燐効率向上の技術開発がこれまで盛んに行われてきた。

溶鉄中Pの脱燐反応は例えば下記の式(1)で表わされる。下線は溶鉄中の成分であることを示す。すなわち、FeOを含むスラグを形成し溶鉄中のPをスラグへ酸化除去する。P2O5は分解しやすいためスラグにはCaOを投入してP2O5を安定化し、溶鉄中へPが戻ること(復燐)を抑制している。
2P+5FeO+3CaO=3CaO・P2O5+5Fe (1)

精錬プロセスにおいては、脱燐反応効率を向上させるため脱炭前に溶銑を脱燐する予備脱燐が広く行われており、混銑車トーピードカー)や溶銑鍋などの溶銑輸送容器を使用する方式と、転炉を使用する方式に大別される。後者の転炉方式は前者の混銑車・溶銑鍋方式よりも高速酸素を供給できるため精錬用生石灰を少なくできること、容器内容積が大きいため溶銑およびスラグの強撹拌が可能であること、熱裕度が高くスクラップ比率の向上が可能であること、などの利点があり、近年は転炉方式が主流である。

転炉方式の溶銑脱燐方法としては、非特許文献1において2基の転炉をそれぞれ脱燐、脱炭の専用炉として用いる方法(以降、脱燐−脱炭分離方式表記)が開示されている。また、非特許文献2においては脱燐吹錬後に転炉を傾動させて脱燐スラグのみを炉口から排出し(以降、中間排滓と表記)、転炉を垂直に戻した後に引き続いて脱炭吹錬を行う方法(以降、脱燐−脱炭連続方式と表記)が開示されている。この方法は脱燐吹錬後に溶銑を排出および装入する工程がないため転炉の非稼動時間が短く且つ溶銑の移し替えに伴う放熱ロスがないこと、脱燐−脱炭分離方式よりも熱裕度が高いためスクラップ比率を向上してさらに高い生産性を実現できること、脱炭吹錬後のスラグを炉内に残して次の脱燐吹錬の造滓剤として再利用できること、などの利点がある。

脱燐−脱炭連続方式の中間排滓で排出されず炉内に残留した脱燐スラグは次の脱炭吹錬に持ち越され、脱炭反応に伴う温度上昇によりスラグから溶銑へ復燐が生じる。このため脱炭吹錬ではCaOを追加投入するが、残留脱燐スラグが多いほど復燐量も多くなるため、CaOも多量に投入しなければならなくなる。したがって中間排滓では効率的にスラグを排出して残留スラグを可能な限り低減することが望ましく、そのための排滓方法が開示されている。

例えば特許文献1ではトーピードカーや溶銑鍋の排滓方法として利用されているドラッガーによりスラグを掻き出す方法、特許文献2では炉腹に設けた複数個羽口からガスを吹き込んでスラグを波立たせて排出する方法、特許文献3では電磁力を利用してスラグを選択的に排出する方法が開示されている。また特許文献4では排滓前に鉄鉱石ミルスケールを添加してスラグの泡立ちフォーミング)を促進する方法、特許文献5ではスラグの塩基度(CaO/SiO2)およびAl2O3濃度を所定の範囲に調整し、フォーミングしやすいスラグ性状にして排滓する方法が開示されている。このように、脱燐‐脱炭連続方式の中間排滓方法としては、何らかの外力を加えてスラグを強制的に排出する方法と、排滓前に炉内でスラグをフォーミングさせて体積を増やす方法の2つに大別される。

概要

転炉において溶銑の脱燐吹錬を行った後、転炉を傾動させて炉口からスラグを排出する際に、高い排滓率が得られる排滓方法を提供することを目的とする。上吹きランスからの送酸により炉内のスラグをフォーミングさせ、送酸を止めた後に転炉を傾動して炉口から排出開始した後、排滓途中で転炉の傾動角を排滓時より小さくし、銑鉄酸化鉄を炉内のスラグへ投入して再びフォーミングさせ、転炉を再度傾動して追加の排滓を行う。スラグはCaO/SiO2=0.8〜1.5、Al2O3=4〜14質量%の組成を有し、且つ温度は1300〜1400℃である。

目的

本発明はかかる事情を鑑みてなされたもので、転炉において溶銑の脱燐吹錬を行った後、転炉を傾動させて炉口からスラグを排滓する際に、高い排滓率が得られる排滓方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

脱燐処理後溶鉄転炉内に残したまま、上吹きランスからの送酸により炉内のスラグフォーミングさせ、送酸を止めた後に転炉傾動して炉口から排出する転炉排滓方法において、スラグはCaO/SiO2=0.8〜1.5であり、CaO/SiO2が0.8以上1.2未満ではスラグ中Al2O3濃度:2〜14質量%の組成を有し、CaO/SiO2が1.2以上1.5以下のときは炉内にAl2O3源を投入してAl2O3濃度を4〜14質量%とし、且つ温度が1300〜1400℃であるスラグを炉口より排出し、排滓の途中で一旦転炉の傾動角を排滓時より小さくし、続いて、式(2)を満たす量の銑鉄と、式(3)を満たす量の酸化鉄を炉内のスラグへ投入し、スラグを再びフォーミングさせた後に転炉を傾動して排滓を行うことを特徴とする、転炉排滓方法。なお、換算FeO濃度は式(4)で表される。換算FeO濃度=FeO濃度+Fe2O3濃度×112/160(4)

技術分野

0001

本発明は転炉排滓方法に関する。

背景技術

0002

鉄鋼材料において不純物のPは加工性靭性を低下させる有害元素である。鉄鋼製造プロセスにおいて高炉などで製造された溶銑には精錬プロセスにおいて脱燐処理が行われ、鋼材品質を満たすのに必要なレベルまでP濃度を低減している。鋼材に要求される品質レベル厳格化に対応するため、脱燐効率向上の技術開発がこれまで盛んに行われてきた。

0003

溶鉄中Pの脱燐反応は例えば下記の式(1)で表わされる。下線は溶鉄中の成分であることを示す。すなわち、FeOを含むスラグを形成し溶鉄中のPをスラグへ酸化除去する。P2O5は分解しやすいためスラグにはCaOを投入してP2O5を安定化し、溶鉄中へPが戻ること(復燐)を抑制している。
2P+5FeO+3CaO=3CaO・P2O5+5Fe (1)

0004

精錬プロセスにおいては、脱燐反応効率を向上させるため脱炭前に溶銑を脱燐する予備脱燐が広く行われており、混銑車トーピードカー)や溶銑鍋などの溶銑輸送容器を使用する方式と、転炉を使用する方式に大別される。後者の転炉方式は前者の混銑車・溶銑鍋方式よりも高速酸素を供給できるため精錬用生石灰を少なくできること、容器内容積が大きいため溶銑およびスラグの強撹拌が可能であること、熱裕度が高くスクラップ比率の向上が可能であること、などの利点があり、近年は転炉方式が主流である。

0005

転炉方式の溶銑脱燐方法としては、非特許文献1において2基の転炉をそれぞれ脱燐、脱炭の専用炉として用いる方法(以降、脱燐−脱炭分離方式表記)が開示されている。また、非特許文献2においては脱燐吹錬後に転炉を傾動させて脱燐スラグのみを炉口から排出し(以降、中間排滓と表記)、転炉を垂直に戻した後に引き続いて脱炭吹錬を行う方法(以降、脱燐−脱炭連続方式と表記)が開示されている。この方法は脱燐吹錬後に溶銑を排出および装入する工程がないため転炉の非稼動時間が短く且つ溶銑の移し替えに伴う放熱ロスがないこと、脱燐−脱炭分離方式よりも熱裕度が高いためスクラップ比率を向上してさらに高い生産性を実現できること、脱炭吹錬後のスラグを炉内に残して次の脱燐吹錬の造滓剤として再利用できること、などの利点がある。

0006

脱燐−脱炭連続方式の中間排滓で排出されず炉内に残留した脱燐スラグは次の脱炭吹錬に持ち越され、脱炭反応に伴う温度上昇によりスラグから溶銑へ復燐が生じる。このため脱炭吹錬ではCaOを追加投入するが、残留脱燐スラグが多いほど復燐量も多くなるため、CaOも多量に投入しなければならなくなる。したがって中間排滓では効率的にスラグを排出して残留スラグを可能な限り低減することが望ましく、そのための排滓方法が開示されている。

0007

例えば特許文献1ではトーピードカーや溶銑鍋の排滓方法として利用されているドラッガーによりスラグを掻き出す方法、特許文献2では炉腹に設けた複数個羽口からガスを吹き込んでスラグを波立たせて排出する方法、特許文献3では電磁力を利用してスラグを選択的に排出する方法が開示されている。また特許文献4では排滓前に鉄鉱石ミルスケールを添加してスラグの泡立ちフォーミング)を促進する方法、特許文献5ではスラグの塩基度(CaO/SiO2)およびAl2O3濃度を所定の範囲に調整し、フォーミングしやすいスラグ性状にして排滓する方法が開示されている。このように、脱燐‐脱炭連続方式の中間排滓方法としては、何らかの外力を加えてスラグを強制的に排出する方法と、排滓前に炉内でスラグをフォーミングさせて体積を増やす方法の2つに大別される。

0008

特開昭59−13009公報
特開平4−72007号公報
特開平5−247514号公報
特開平4−350109号公報
特開2004−323959号公報

先行技術

0009

鉄と鋼、第76年(1990)第11号、第1817〜1822頁
鉄と鋼、第87年(2001)第1号、第21〜28頁

発明が解決しようとする課題

0010

しかしながら、特許文献1の方法では転炉の容量を考えると設備が大きくなりすぎるため現実的とは言えない。特許文献2の方法では炉腹に羽口を設置するため転炉の改造が必要であり、さらに吹錬中の羽口閉塞防止用にガスを常時吹き込むためコストが増大する等の問題がある。特許文献3の方法では設備投資コストがかかり、さらに高温かつ振動の激しい環境下であるため長期的な使用が難しい等の問題がある。

0011

また、特許文献4、5のようにスラグをフォーミングさせる方法においては、一旦フォーミングしたスラグが排滓中に鎮静して排滓効率が低下してしまうため、多量のスラグを安定的に排出することは容易ではなかった。

0012

本発明はかかる事情を鑑みてなされたもので、転炉において溶銑の脱燐吹錬を行った後、転炉を傾動させて炉口からスラグを排滓する際に、高い排滓率が得られる排滓方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0013

前記目的に沿う本発明に係る転炉の排滓方法は、脱燐処理後に溶銑を転炉内に残したまま、上吹きランスからの送酸により炉内のスラグをフォーミングさせ、送酸を止めた後に転炉を傾動して炉口から排出する転炉排滓方法において、CaO/SiO2が0.8〜1.5であり、CaO/SiO2が0.8以上1.2未満ではスラグ中Al2O3濃度:2〜14質量%の組成を有し、CaO/SiO2が1.2以上1.5以下のときは炉内にAl2O3源を投入してAl2O3濃度を4〜14質量%とし、且つ温度が1300〜1400℃であるスラグを炉口より排出し、排滓途中で一旦転炉の傾動角を排滓時より小さくし、続いて式(2)を満たす量の銑鉄と、式(3)を満たす量の酸化鉄を炉内のスラグへ投入し、スラグを再びフォーミングさせた後に転炉を傾動して排滓を行うことを特徴とする、転炉排滓方法である。






なお、換算FeO濃度は式(4)で表される。
換算FeO濃度=FeO濃度+Fe2O3濃度×112/160 (4)

発明の効果

0014

本発明によれば、転炉の排滓方法において、一旦鎮静したスラグを再びフォーミングさせることができ、排滓率を従来技術よりも増加させることができる。これにより脱炭吹錬へ持ち越すスラグ中のPを低減することができ、CaOの追加投入量を削減できる。

図面の簡単な説明

0015

フォーミング高さとスラグAl2O3濃度の関係を示す図
フォーミング高さと温度の関係を示す図

0016

以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。転炉における脱燐吹錬では、高速で酸素ジェットを溶銑表面に吹き付けることで溶銑中のPを酸化し、スラグへP2O5として除去している。溶銑にはFe以外にC、Si、Mnも含まれることから、これらの元素も酸化され、COは排ガスとなり、SiO2、MnO、FeOはスラグ相を形成する。また、P2O5を安定化させるためにCaOが投入される。さらに、転炉内壁には通常MgO系耐火物が張られている。したがってスラグ組成はCaO−SiO2−FeO−MgO−MnO−P2O5の多成分系となる。

0017

一般に、スラグは不純物を吸収する能力が高く、液相率が高い方が好ましい。CaO/SiO2が高い方がP吸収能は良好となるが、高すぎると2CaO・SiO2や未溶解CaOのような固相が増加し、反応速度が低下しやすくなる。この観点から、低P鋼を溶製する場合は溶銑脱燐スラグのCaO/SiO2を1.2〜1.5とするのが好ましい。一方、低P鋼ではない普通鋼を溶製する場合は、CaO/SiO2の下限値が0.8程度であっても、目標値までPを低減することが可能である。

0018

スラグのCaO/SiO2が高いと、FeO濃度は低くなりやすい。これは、CaO/SiO2が高い方が粘度は低く、流動性が良好となってFeOが溶銑のCにより還元される速度が向上するためである。この反応は式(5)で表され、溶銑とスラグの界面からはCOガス気泡)が発生する。
C+FeO=CO(g)+Fe (5)

0019

また、溶銑の一部は吹き付けられた酸素ジェットにより引きちぎられて粒鉄となるが、この粒鉄はCを含んでいるため、粒鉄とスラグの界面からもCO気泡が発生する。一方、スラグの表面では気泡の合体破裂が起こってガスが散逸する。スラグの粘度が低いほど気泡がスラグ内滞留する時間が短くなり、ガスの散逸速度が高くなる。CO気泡の発生速度が散逸速度よりも高いと気泡がスラグ内に滞留し、フォーミングが起こってスラグが膨張する。

0020

CO気泡の発生速度、散逸速度ともにスラグの粘度が大きく影響する。すなわち、スラグの粘度が低い場合はCO気泡の発生速度が高く、かつスラグ滞留時間も短くなる。粘度が高い場合はこの逆であり、両者のバランスでフォーミング性が決まる。

0021

スラグの組成、温度とフォーミング性の関係を明らかにするため、本発明者らは小型炉において実験を行った。すなわち、鉄坩堝内で溶解したスラグへ2〜3mmの粒状の銑鉄を投入し、フォーミングしたスラグへ鉄棒を浸漬させ、その付着高さからスラグ高さの経時変化を測定し、銑鉄投入前のスラグ高さと、銑鉄投入後の最大スラグ高さの差をフォーミング高さとした。その結果、スラグの塩基度(CaO/SiO2)は0.8〜1.2が最も良好であり、低P鋼の溶製に好適な1.2〜1.5のフォーミング性はそれより低いことが分かった。これは、スラグの粘度が低いためCO気泡の発生速度よりも気泡の滞留時間が短いことの影響が大きいことに起因すると推定される。

0022

転炉の脱燐吹錬では酸素が高速で供給されてCOガスが多量に発生するため、送酸中はスラグのCaO/SiO2が1.2〜1.5でもスラグのフォーミングが起こる。この状態で転炉を傾動すれば炉口よりスラグを排出することができる。しかし、転炉を傾動するには送酸を停止してランスを引き上げる必要があり、溶銑とスラグの界面へのFeOの供給や粒鉄の生成が停止することになる。このため、排滓初期にはCO気泡発生が継続していても、次第に溶銑−スラグ界面近傍のFeO濃度の低下、粒鉄中のC濃度の低下、粒鉄の沈降が起こり、CO気泡の発生は弱くなってフォーミングが次第に鎮静してしまう。スラグのCaO/SiO2が高いほど鎮静が速く、排滓中期以降の排滓速度を維持することが難しくなる。

0023

一旦排滓開始した後の排滓途中に転炉を垂直に戻し、再び吹錬を行えばスラグをフォーミングさせて排滓することはできるが、時間がかかるため生産性は大幅に低下し、脱燐−脱炭連続方式の利点が失われてしまう。

0024

そこで本発明者らはCaO/SiO2が1.2〜1.5の条件でもフォーミング性を良好とすることができ、かつ炉口から一旦排滓した後に生産性を大幅に低下させることなくスラグを再びフォーミングさせる手段を鋭意研究した。その結果、粘度を高める作用のあるAl2O3に着目し、前記した小型炉の実験から、図1に示すように、Al2O3濃度は4〜14質量%においてフォーミング高さが高く、フォーミングが好適であることを見出した。Al2O3濃度が4質量%以上において粘度が高くなるためガス発生速度は低下するものの、気泡の滞留時間が長くなる効果が上回り、フォーミング性が向上する。ただし、Al2O3濃度が14質量%超になるとスラグの流動性が大幅に低下してフォーミングが起こりにくくなる。

0025

Al2O3源は脱燐吹錬中に投入すれば良く、例えば二次精錬スラグを用いればよい。転炉に装入する溶銑のSi濃度と、脱燐吹錬中に投入する精錬材の量および組成から脱燐スラグの量と組成を推定し、予め分析しておいたAl2O3源のAl2O3濃度を用いれば、脱燐スラグのAl2O3濃度を4〜14質量%とするAl2O3源の投入量を決定することができる。

0026

同じく前記した小型炉の実験から、図2に示すように、温度は1300〜1400℃においてフォーミング高さが高く、フォーミングが好適である。1300℃以下ではスラグの粘度が高くなってガス発生速度が低くなる。一方、1400℃超ではスラグの粘度が過剰に低くなって気泡の滞留時間が短くなる。

0027

中間排滓でスラグ排出を開始した後、排滓の途中で転炉の傾動角を一旦小さくして排滓を中断し、炉内のスラグへ銑鉄と酸化鉄を投入する。これにより再びフォーミングが発生し、再度スラグを排出して排滓率を増加させることができる。

0028

ここで言う「銑鉄」とは、例えば高炉粒銑が挙げられる。溶銑温度(1250〜1450℃)で完全溶融するために、融点の観点から銑鉄のC濃度は3〜4.5質量%であることが好ましい。また、銑鉄の粒度は2〜20mmが好適である。2mm未満の銑鉄はスラグ内部に侵入しにくく、内部からCO気泡を発生させることが難しい。一方、20mm超の銑鉄はスラグ内部へ速く沈降し、溶融前に湯溜まりに到達してしまってCO気泡の発生に寄与しにくくなる。2〜20mmの比率は80質量%以上であれば、本発明の効果を十分に発揮することができる。

0029

次に「酸化鉄」とは、例えばミルスケールや転炉ダストが挙げられる。炉内のスラグへ速やかに溶解させるために、粒度は1mm未満であることが好ましい。このような細粒の酸化鉄をそのまま投入しても良いし、ブリケットのような固形物成形して投入しても良い。前記したように、スラグのCaO/SiO2が高いとFeO濃度は低くなりやすいが、酸化鉄を投入することでスラグのFeO濃度を高めることができ、再びフォーミングを発生させやすくなる。

0030

前記のC濃度および粒度を有する銑鉄を排滓中にスラグ上方より投入すれば、スラグ内部で速やかに溶融し、銑鉄に含まれるCがスラグ中のFeOと反応して式(5)の反応によりCO気泡を発生し、スラグをフォーミングさせることができる。

0031

投入方法としては、例えばスクラップシュートを使用すれば良いが、炉口からの排滓が終了した後に炉体を一旦垂直に戻し、炉上のホッパーから銑鉄を投入しても良い。この場合も銑鉄は速やかに溶融してCO気泡を発生してスラグは再びフォーミングするため、炉体を傾動すればスラグを排出することができる。この方法でも再吹錬を行う必要はなく、生産性の大幅な低下は回避できる。

0032

なお、排滓中にスラグ上方から銑鉄を投入する方法も考えられるが、投入した銑鉄が流されてしまい、CO気泡を発生する前に炉外へ排出される恐れが非常に高い。したがって投入した銑鉄が再フォーミングに寄与することは難しい。むしろ、排出されたスラグを受ける排滓鍋内において銑鉄がCO気泡を発生し、スラグをフォーミングさせて排滓鍋からスラグが溢出し、周辺機器を損傷する原因になる恐れがある。したがって、排滓中に銑鉄を投入する方法は好ましくない。

0033

次に、排滓に適したフォーミング高さの観点から、銑鉄の投入量を検討した。効率的に排滓するために、溶銑の静止浴面から炉口までの距離(フリーボード)の半分以上にスラグをフォーミングさせられる分の銑鉄量が必要である。ただし、銑鉄を過剰に投入すると必要以上にガスが急速に発生してスラグが周囲に激しく飛散し、非常に危険な状態となる。このような過剰フォーミングが発生した場合は、ガス発生落ち着くまで追加の排滓を開始できないため、排滓時間が長くなり生産性が低下してしまう。したがって銑鉄投入量には適正範囲が存在する。

0034

CO気泡の発生量が同じ場合、転炉の断面積が大きい方がフォーミング高さは小さくなる。したがって、銑鉄投入量は転炉のフリーボードや断面積に依存する。このような観点で銑鉄の投入量を検討し、式(2)の範囲を見出した。

0035

酸化鉄は、銑鉄中のC分に見合った量を投入する必要がある。式(5)の反応においてCとFeOは12:72の質量比で反応するため、必要な酸化鉄の量は式(6)で表わされる。

0036

なお、換算FeO濃度は酸化鉄に含まれるFeO濃度と、Fe2O3濃度を分子量によりFeOに換算した値の和であり、式(4)で表される。
換算FeO濃度=FeO濃度+Fe2O3濃度×112/160 (4)

0037

酸化鉄は式(6)で計算される量より多く投入しても良いが、あまり過剰に投入すると式(5)の反応に寄与しないFeO分がスラグ内に残留し、スラグの粘度を低下させてAl2O3により粘度を高めた効果を小さくしてしまう。このような観点から酸化鉄の投入量を検討し、式(3)の範囲を見出した。すなわち、酸化鉄の投入量は銑鉄中のC分に見合った量を下限値、その2倍を上限値とする。

0038

このように、炉内のスラグへ外部から適切な量の銑鉄と酸化鉄を投入することにより、一旦鎮静したスラグを再びフォーミングさせることができ、排滓量を増加させることができる。

0039

本発明では、スラグがフォーミングしにくいCaO/SiO2が1.2〜1.5であっても、スラグのAl2O3含有量の調整を行うとともに、スラグ排出の途中で銑鉄及び酸化鉄をスラグに添加することにより、良好なフォーミングを実現することができた。
そして、スラグ排出の途中で銑鉄及び酸化鉄をスラグに添加することにより、良好なフォーミングを実現する効果は、スラグがフォーミングしやすいCaO/SiO2が0.8〜1.2の範囲において、スラグのAl2O3含有量調整を行わない場合においても同じく享受することができることがわかった。

0040

そこで本発明は、スラグのCaO/SiO2の範囲を0.8〜1.5とすることとした。そして、スラグのCaO/SiO2が0.8以上1.2未満ではスラグ中Al2O3濃度:2〜14質量%の組成を有し、CaO/SiO2が1.2以上1.5以下のときは炉内にAl2O3源を投入してAl2O3濃度を4〜14質量%とすることとした。スラグのCaO/SiO2が0.8以上1.2未満であっても、炉内にAl2O3源を投入してAl2O3濃度を4〜14質量%とすれば、より優れた排滓能力を得ることができる。

0041

以上説明したように、本発明に係る転炉の排滓方法は、脱燐処理後に溶銑を転炉内に残したまま、上吹きランスからの送酸により炉内のスラグをフォーミングさせ、送酸を止めた後に転炉を傾動して炉口から排出する転炉排滓方法において、CaO/SiO2が0.8〜1.5であり、スラグのCaO/SiO2が0.8以上1.2未満ではスラグ中Al2O3濃度:2〜14質量%の組成を有し、CaO/SiO2が1.2以上1.5以下のときは炉内にAl2O3源を投入してAl2O3濃度を4〜14質量%とし、且つ温度が1300〜1400℃であるスラグを炉口より排出し、排滓途中で一旦転炉の傾動角を排滓時より小さくし、続いて式(2)を満たす量の銑鉄と、式(3)を満たす量の酸化鉄を炉内のスラグへ投入し、スラグを再びフォーミングさせた後に転炉を傾動して排滓を行うことを特徴とする。

0042

ここで、上記上吹きランスからの送酸による炉内のスラグのフォーミングについては、通常に行われる脱燐吹錬で用いられる送酸を行うことにより、実現することができる。また、脱燐吹錬終了時のスラグ組成としてCaO/SiO2=0.8〜1.5となるように精錬材を添加して精錬を行えばよい。溶製する鋼が低燐鋼であれば、脱燐吹錬の上からはCaO/SiO2=1.2〜1.5が最も好適なスラグ組成である。低燐鋼ではない普通鋼の溶製においては、CaO/SiO2=0.8〜1.2とすることができる。排滓時のスラグ温度を1300〜1400℃とする点についても、脱燐吹錬終了時の溶鉄温度を当該温度範囲とすることにより実現することができる。スラグ中Al2O3濃度調整方法は前述のとおりである。

0043

以下に表1を基にして本発明の実施例を具体的に説明する。精錬に用いた転炉の形状は、溶銑表面と炉口の距離は8m、転炉の炉底から溶銑の静止面までの高さは2.3m、転炉の水平方向の最大断面積は33.2m2であった。

0044

転炉へ溶銑を装入して脱燐吹錬を行い、スラグをフォーミングさせた。脱燐吹錬時に転炉に装入する生石灰などの精錬材添加量を調整して、脱燐吹錬終了時の転炉内スラグが表1に示す値となるように調整した。また脱燐吹錬中に二次精錬スラグを添加し、スラグ中Al2O3含有量を調整した。脱燐吹錬終了時の溶銑温度を表1に示す温度となるように調整した。

0045

脱燐吹錬終了後に、送酸を停止して転炉を傾動し、スラグを炉口から炉下の排滓鍋に排出開始した。その後排滓の途中で、転炉の傾動角を排滓時より小さくして排滓を中断し、スクラップシュートから銑鉄(C濃度:4.3質量%)と転炉ダスト(換算FeO濃度:75%)を炉内に投入した。銑鉄の粒度は2〜20mmの比率が100質量%であった。そして再び転炉を傾動して追加の排滓を行った。

0046

排出したスラグは冷却後に重量を測定し、式(8)により排滓率を評価した。



なお、炉内スラグの重量は、生石灰やAl2O3源として用いた二次精錬スラグの重量と、採取したスラグの成分値から物質収支を計算して求めた。

0047

本発明は、低燐鋼の溶製を主な対象としており、脱燐性能を優先し、排滓率の目標を65%以上とした。

0048

表1に処理の結果を示す。表中の下線は、本発明の範囲外となる部分を表す。

0049

実施例1〜11は発明例であり、いずれも処理条件が本発明の範囲内であったため、排滓率は65%以上となった。

0050

一方、実施例12〜22は比較例であり、実施例12では銑鉄投入による再フォーミングを行わなかった結果、排滓率は50%に止まった。実施例13〜14はスラグのCaO/SiO2、実施例15〜16はスラグのAl2O3濃度、実施例17〜18はスラグの温度が本発明の範囲外であったため排滓率は65%未満となった。実施例19では銑鉄量が本発明の下限を下回ったため再フォーミングが弱く、排滓率は65%未満となった。実施例20では銑鉄量が本発明の上限を超過したため再フォーミングが激しく、転炉を傾動するまで待ち時間が発生した。その結果、サイクルタイムは大幅に伸び、生産性が低下した。

0051

実施例21では本発明の範囲よりも酸化鉄の投入量が本発明の下限を下回ったため再フォーミングが弱く、排滓率は65%未満となった。実施例22では本発明の範囲よりも酸化鉄の投入量が多かったためスラグのFeO濃度が過剰となり、スラグの粘度が低下して再フォーミングが弱くなり排滓率は65%未満となった。

実施例

0052

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