図面 (/)

この項目の情報は公開日時点(2016年12月8日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (20)

課題・解決手段

本開示は、スラブ鋳造方法への適用を伴う金属合金及び処理の方法、並びにシート製造に向けた後処理工程を対象とする。この金属は特有の構造を実現し、高強度及び/又は高延性の改良された特性の組合せを示す。

概要

背景

鋼は人類によって少なくとも3,000年間使用されており、工業において広く使用され、工業用途におけるあらゆる金属合金の80重量%超を占める。既存の鋼技術は共析変態の操作に基づく。第1の工程は、合金単相領域オーステナイト)まで加熱し、次いで鋼を様々な冷却速度で冷却又は焼入れして、多くの場合はフェライト、オーステナイト、及びセメンタイト組合せである多相構造を形成させる。鋼がどのように冷却されるかによって、広範囲の特性を有する多様な特徴的微細構造(すなわちパーライトベイナイト、及びマルテンサイト)を得ることができる。この共析変態の操作は現在入手できる多様な鋼をもたらしてきた。

現在、51の各種鉄合金金属群において25,000を超える世界中の等価物が存在する。シートの形態で生産される鋼に関して、引張強度特性に基づいて大まかな分類を採用できる。低強度鋼(LSS)は、本明細書において、270MPa未満の引張強度を示すものとして理解することができ、IF鋼(interstitial free steel)及び軟鋼などのタイプを含む。高強度鋼(HSS)は、本明細書において、270〜700MPaの引張強度を示すものとして理解することができ、高強度低合金、高強度IF鋼及び焼付け硬化性鋼などのタイプを含む。アドバンスド高強度鋼(Advanced High−Strength Steel)(AHSS)は、本明細書において、700MPaを超える引張強度を有するものとして理解することができ、マルテンサイト鋼(MS)、二相DP)鋼、変態誘起塑性(TRIP)鋼、及び複相(CP)鋼などのタイプを含む。強度レベルが高くなると、鋼の延性は一般に低下する。例えば、LSS、HSS、及びAHSSは、それぞれ25%〜55%、10%〜45%、及び4%〜30%のレベル引張り伸びを示し得る。

米国における鋼材料の製造は現在年間約1億トンであり、約750億ドルに相当する。米国鉄鋼協会によれば、米国の鋼製品の24%が自動車産業で使用される。平均の2010年の自動車における鋼総量は約60%であった。新しいアドバンスド高強度鋼(AHSS)は自動車の17%を占め、これは2020年までに300%まで増加すると予測される。[American Iron and Steel Institute. (2013). Profile 2013. Washington, D.C.]

連続鋳造は、ストランド鋳造とも呼ばれ、溶融金属凝固させて、仕上げ圧延機においてその後圧延するための「半製品の」ビレットブルーム、又はスラブとするプロセスである。1950年代に連続鋳造が導入される前には、鋼を固定鋳型へ注ぎ込んでインゴットを形成した。それ以来、「連続鋳造」は改善された収率品質生産性、及び費用効率を実現するために発展してきた。これは、製品の連続的な標準化された製造が本質的により低コストであること、並びに自動化によってプロセス全体にわたって向上した制御性が実現されることに起因して、より良好な品質の金属セクションのより低コストな製造を可能にする。このプロセスは鋼の鋳造に(トン規模の鋳造に関して)最も頻繁に使用される。インライン熱間圧延機又はその後の独立した熱間圧延のいずれかを伴うスラブの連続鋳造は、シートのコイルを生産するのに重要な後処理工程である。厚スラブは典型的には150〜500mmの厚さで鋳造され、次いで室温まで冷却される。トンネル炉内予熱後、その後のスラブの熱間圧延は、典型的には厚さ2〜10mmの厚さまで薄くするように粗圧延機及び熱間圧延機の両方を通るいくつかの段階で行われる。薄スラブ鋳造は20〜150mmの鋳放し厚さから始まり、次いで通常はいくつかの工程のインライン熱間圧延が順にその後に続き、典型的には2〜10mmの厚さまで薄くなる。この技術には多くの変形形態があり、例えば100〜300mmの厚さで鋳造して中厚スラブを作製し、それをその後熱間圧延するものなどである。加えて、シングル及びダブルベルト鋳造プロセスを含む他の鋳造プロセスが知られており、これは厚さが5〜100mmの範囲の鋳放し厚さをもたらし、通常はコイル製造の目標レベルまでゲージ厚下げるようにインラインで熱間圧延される。自動車産業において、コイルのシート材料からの部品の形成は、曲げ加工、熱間及び冷間プレス成形絞り加工、又はさらなる形材圧延を含む多くのプロセスによって実現される。

概要

本開示は、スラブ鋳造方法への適用を伴う金属合金及び処理の方法、並びにシート製造に向けた後処理工程を対象とする。この金属は特有の構造を実現し、高強度及び/又は高延性の改良された特性の組合せを示す。

目的

場合により、工程(c)の合金に以下の追加工程のうち1つを施しても良い:(1)200MPa〜1000MPaの合金の降伏強度を超える応力を与え、その結果生じる200MPa〜1650MPaの降伏強度、400MPa〜1825MPaの引張強度、及び2.4%〜78.1%の伸びを示す合金を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

a.61.0〜88.0原子パーセントのレベルのFe、0.5〜9.0原子パーセントのレベルのSi、0.90〜19.0原子パーセントのレベルのMn、及び場合により8.0原子パーセントまでのレベルのBを含む金属合金を供給する工程と;b.前記合金溶融し、冷却し、凝固させ、以下:i.≦250K/秒の速度で冷却すること;又はii.≧2.0mmの厚さまで凝固させることのうちの1つに従う厚さを有する合金を形成する工程と、c.前記凝固した合金が融点(Tm)を有し、前記合金を700℃から前記合金のTm未満の温度に加熱し、前記合金の前記厚さを減少させる工程とを含む、方法。

請求項2

10−6〜104で加えられる歪み速度において、工程(c)における前記合金の厚さを減少させる、請求項1に記載の方法。

請求項3

工程(c)の後の前記合金を700℃〜1200℃の温度で熱処理して、200MPa〜1000MPaの降伏強度を有する合金を形成する、請求項1に記載の方法。

請求項4

200MPa〜1000MPaの降伏強度を有する前記合金がa.50nm〜50000nmの結晶粒とb.存在する場合、20nm〜10000nmのホウ化物結晶粒とc.1nm〜200nmの析出結晶粒とを有する、請求項1に記載の方法。

請求項5

工程(c)における前記合金を、700℃から前記合金のTm未満の前記温度まで繰り返し熱処理し、前記合金の厚さを前記熱処理の各々の間に減少させる、請求項1に記載の方法。

請求項6

工程(c)における前記凝固した合金が降伏強度を示し、前記合金に応力を与え、前記降伏強度を超え、200MPa〜1650MPaの降伏強度、400MPa〜1825MPaの引張強度、及び2.4%〜78.1%の伸びを示す、得られる合金を提供する、請求項1に記載の方法。

請求項7

前記得られる合金が、以下:a.25nm〜25000nmの結晶粒b.存在する場合、20nm〜10000nmのホウ化物結晶粒c.1nm〜200nmの析出結晶粒のうち1つ又は複数を有する、請求項6に記載の方法。

請求項8

工程(b)における前記凝固した合金が2.0mm以上500mmまでの厚さを有する、請求項1に記載の方法。

請求項9

前記得られる合金が0.1mm〜25.0mmの厚さを有する、請求項6に記載の方法。

請求項10

0.1〜9.0原子パーセントのレベルのNi;0.1〜19.0原子パーセントのレベルのCr;0.1〜4.0原子パーセントのレベルのCu;及び0.1〜4.0原子パーセントのレベルのCのうち、1つ又は複数をさらに含む、請求項1に記載の方法。

請求項11

前記得られる合金を車両に配置する、請求項6に記載の方法。

請求項12

前記得られる合金を車両に配置する、請求項7に記載の方法。

請求項13

前記合金が、ドリルカラードリルパイプパイプ鋳造物ツールジョイント坑口圧縮ガス貯蔵槽、又は液化天然ガスボンベのうちの1つに配置される、請求項6に記載の方法。

請求項14

前記合金が、ドリルカラー、ドリルパイプ、パイプ鋳造物、ツールジョイント、坑口、圧縮ガス貯蔵槽、又は液化天然ガスボンベのうちの1つに配置される、請求項7に記載の方法。

請求項15

a.61.0〜88.0原子パーセントのレベルのFe、0.5〜9.0原子パーセントのレベルのSi、0.90〜19.0原子パーセントのレベルのMn、及び場合により8.0原子パーセントまでのレベルのBを含む金属合金を供給する工程と;b.前記合金を溶融し、冷却し、凝固させ、以下:i.≦250K/秒の速度で冷却すること;又はii.≧2.0mmの厚さまで凝固させることのうちの1つに従う厚さを有する合金を形成する工程と、c.前記凝固した合金が融点(Tm)を有し、前記合金を700℃から前記合金のTm未満の温度に加熱し、前記合金の前記厚さを減少させ、前記合金が降伏強度を示し、前記合金に応力を与え、前記降伏強度を超え、200MPa〜1650MPaの降伏強度、400MPa〜1825MPaの引張強度、及び2.4%〜78.1%の伸びを示す、得られる合金を提供する工程とを含む、方法。

請求項16

工程(b)で形成される前記合金が2.0mmを超え500mmまでの厚さを有する、請求項15に記載の方法。

請求項17

前記得られる合金が0.1mm〜25.0mmの厚さを有する、請求項15に記載の方法。

請求項18

a.61.0〜88.0原子パーセントのレベルのFe、0.5〜9.0原子パーセントのレベルのSi、0.90〜19.0原子パーセントのレベルのMn、及び場合により8.0原子パーセントまでのレベルのBを含む金属合金を供給する工程と;b.前記合金を溶融し、冷却し、凝固させ、≧2.0mm、500mmまでの厚さを有する合金を形成する工程と;c.前記凝固した合金が融点(Tm)を有し、前記合金を700℃から前記合金のTm未満の温度に加熱し、前記合金の前記厚さを0.1mm〜25.0mmの厚さまで減少させ、前記合金が降伏強度を示し、前記合金に応力を与え、前記降伏強度を超え、200MPa〜1650MPaの降伏強度、400MPa〜1825MPaの引張強度、及び2.4%〜78.1%の伸びを示す、得られる合金を提供する工程とを含む、方法。

請求項19

前記得られる合金が車両に配置される、請求項18に記載の方法。

請求項20

前記得られる合金が、ドリルカラー、ドリルパイプ、パイプ鋳造物、ツールジョイント、坑口、圧縮ガス貯蔵槽、又は液化天然ガスボンベのうちの1つに配置される、請求項18に記載の方法。

技術分野

0001

関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に完全に組み込まれている、2013年10月28日出願の米国仮特許出願第61/896,594号の利益を主張する。

0002

本出願は、シート製造に向けた後処理工程を含むスラブ鋳造方法への適用を伴う、金属合金及び処理の方法を扱う。これらの金属は特有の構造を実現し、高強度及び/又は高延性の改良された特性の組合せを示す。

背景技術

0003

鋼は人類によって少なくとも3,000年間使用されており、工業において広く使用され、工業用途におけるあらゆる金属合金の80重量%超を占める。既存の鋼技術は共析変態の操作に基づく。第1の工程は、合金単相領域オーステナイト)まで加熱し、次いで鋼を様々な冷却速度で冷却又は焼入れして、多くの場合はフェライト、オーステナイト、及びセメンタイトの組合せである多相構造を形成させる。鋼がどのように冷却されるかによって、広範囲の特性を有する多様な特徴的微細構造(すなわちパーライトベイナイト、及びマルテンサイト)を得ることができる。この共析変態の操作は現在入手できる多様な鋼をもたらしてきた。

0004

現在、51の各種鉄合金金属群において25,000を超える世界中の等価物が存在する。シートの形態で生産される鋼に関して、引張強度特性に基づいて大まかな分類を採用できる。低強度鋼(LSS)は、本明細書において、270MPa未満の引張強度を示すものとして理解することができ、IF鋼(interstitial free steel)及び軟鋼などのタイプを含む。高強度鋼(HSS)は、本明細書において、270〜700MPaの引張強度を示すものとして理解することができ、高強度低合金、高強度IF鋼及び焼付け硬化性鋼などのタイプを含む。アドバンスド高強度鋼(Advanced High−Strength Steel)(AHSS)は、本明細書において、700MPaを超える引張強度を有するものとして理解することができ、マルテンサイト鋼(MS)、二相DP)鋼、変態誘起塑性(TRIP)鋼、及び複相(CP)鋼などのタイプを含む。強度レベルが高くなると、鋼の延性は一般に低下する。例えば、LSS、HSS、及びAHSSは、それぞれ25%〜55%、10%〜45%、及び4%〜30%のレベル引張り伸びを示し得る。

0005

米国における鋼材料の製造は現在年間約1億トンであり、約750億ドルに相当する。米国鉄鋼協会によれば、米国の鋼製品の24%が自動車産業で使用される。平均の2010年の自動車における鋼総量は約60%であった。新しいアドバンスド高強度鋼(AHSS)は自動車の17%を占め、これは2020年までに300%まで増加すると予測される。[American Iron and Steel Institute. (2013). Profile 2013. Washington, D.C.]

0006

連続鋳造は、ストランド鋳造とも呼ばれ、溶融金属凝固させて、仕上げ圧延機においてその後圧延するための「半製品の」ビレットブルーム、又はスラブとするプロセスである。1950年代に連続鋳造が導入される前には、鋼を固定鋳型へ注ぎ込んでインゴットを形成した。それ以来、「連続鋳造」は改善された収率品質生産性、及び費用効率を実現するために発展してきた。これは、製品の連続的な標準化された製造が本質的により低コストであること、並びに自動化によってプロセス全体にわたって向上した制御性が実現されることに起因して、より良好な品質の金属セクションのより低コストな製造を可能にする。このプロセスは鋼の鋳造に(トン規模の鋳造に関して)最も頻繁に使用される。インライン熱間圧延機又はその後の独立した熱間圧延のいずれかを伴うスラブの連続鋳造は、シートのコイルを生産するのに重要な後処理工程である。厚スラブは典型的には150〜500mmの厚さで鋳造され、次いで室温まで冷却される。トンネル炉内予熱後、その後のスラブの熱間圧延は、典型的には厚さ2〜10mmの厚さまで薄くするように粗圧延機及び熱間圧延機の両方を通るいくつかの段階で行われる。薄スラブ鋳造は20〜150mmの鋳放し厚さから始まり、次いで通常はいくつかの工程のインライン熱間圧延が順にその後に続き、典型的には2〜10mmの厚さまで薄くなる。この技術には多くの変形形態があり、例えば100〜300mmの厚さで鋳造して中厚スラブを作製し、それをその後熱間圧延するものなどである。加えて、シングル及びダブルベルト鋳造プロセスを含む他の鋳造プロセスが知られており、これは厚さが5〜100mmの範囲の鋳放し厚さをもたらし、通常はコイル製造の目標レベルまでゲージ厚下げるようにインラインで熱間圧延される。自動車産業において、コイルのシート材料からの部品の形成は、曲げ加工、熱間及び冷間プレス成形絞り加工、又はさらなる形材圧延を含む多くのプロセスによって実現される。

先行技術

0007

American Iron and Steel Institute. (2013). Profile 2013. Washington, D.C.

課題を解決するための手段

0008

本開示は、合金及びそれらの関連する製造の方法に向けられている。この方法は、
a. 61.0〜88.0原子パーセントのレベルのFe、0.5〜9.0原子パーセントのレベルのSi;0.9〜19.0原子パーセントのレベルのMn、及び場合により8.0原子パーセントまでのレベルのBを含む金属合金を供給する工程と;
b. 前記合金を溶融し、冷却し、凝固させ、以下:
i. ≦250K/秒の速度で冷却すること;又は
ii. ≧2.0mmの厚さまで凝固させること
のうちの1つに従う厚さを有する合金を形成させる工程と、
c. 前記合金が融点(Tm)を有し、前記合金を700℃から前記合金のTm未満の温度に加熱し、前記合金の前記厚さを減少させる工程と
を含む。

0009

場合により、工程(c)の合金に以下の追加工程のうち1つを施しても良い:(1)200MPa〜1000MPaの合金の降伏強度を超える応力を与え、その結果生じる200MPa〜1650MPaの降伏強度、400MPa〜1825MPaの引張強度、及び2.4%〜78.1%の伸びを示す合金を提供する工程;又は(2)合金を700℃〜1200℃の温度まで熱処理して、50nm〜50000nmのマトリクス結晶粒;20nm〜10000nmのホウ化物結晶粒(任意−必要ではない);若しくはサイズが1nm〜200nmである析出結晶粒のうちの1つを有する合金を形成させる工程。熱処理後のそのようなモルフォロジーを有するそのような合金は、次いでその降伏強度を超える応力を与えて、200MPa〜1650MPaの降伏強度、400MPa〜1825MPaの引張強度、及び2.4%〜78.1%の伸びを有する合金を形成することができる。

0010

したがって、本開示の合金は、ベルト鋳造、薄ストリップ双ロール鋳造、薄スラブ鋳造、及び厚スラブ鋳造を含む連続鋳造プロセスに適用される。合金は車両、例えば車両フレームなど、ドリルカラードリルパイプパイプ鋳造物ツールジョイント坑口圧縮ガス貯蔵槽、又は液化天然ガスボンベに特に応用される。

0011

以下の詳細な説明は添付の図面を参照してさらに理解することができ、添付の図面は例示的な目的のために提供され、本発明のいかなる態様も制限するものと見なされるべきではない。

図面の簡単な説明

0012

連続スラブ鋳造プロセスの流れを示す図である。
例となる薄スラブ鋳造プロセスの流れ図であり、鋼シート製造工程を示す。
熱間(冷間)圧延プロセスを示す図である。
クラス1鋼合金の形成を示す図である。
クラス1合金の挙動に対応する応力歪み曲線モデルを示す図である。
クラス2鋼合金の形成を示す図である。
クラス2合金の挙動に対応する応力歪み曲線のモデルを示す図である。
2.0mm以上の厚さで又は250K/秒以下の冷却速度で形成されるモーダル構造(構造番号1)に好ましくは適用可能なメカニズム番号0(動的ナノ微細化)の識別を伴う、本明細書においてシート製造に適用可能な合金における構造及びメカニズムを示す図である。
厚さがの50mm合金2の鋳放しプレートを示す図である。
鋳放し及び熱処理済みの状態における合金1、合金8、及び合金16のプレートの引張り特性を示す図である。
1150℃で120分間熱処理する前(a)及び熱処理後(b)の、50mm厚さで鋳造された合金1プレートにおける微細構造のSEM反射電子像を示す図である。
1100℃で120分間熱処理する前(a)及び熱処理後(b)の、50mm厚さで鋳造された合金8プレートにおける微細構造のSEM反射電子像を示す図である。
1150℃で120分間熱処理する前(a)及び熱処理後(b)の、50mm厚さで鋳造された合金16プレートにおける微細構造のSEM反射電子像を示す図である。
HIP済みのままの状態における(a)合金58及び(b)合金59の引張り特性を、鋳造プレートの厚さの関数として示す図である。
1.8mm厚さで鋳造された合金59プレートにおける、(a)鋳放し及び(b)HIP後の微細構造のSEM反射電子像を示す図である。
10mm厚さで鋳造された合金59プレートにおける、(a)鋳放し及び(b)HIP後の微細構造のSEM反射電子像を示す図である。
20mm厚さで鋳造された合金59プレートにおける、(a)鋳放し及び(b)HIP後の微細構造のSEM反射電子像を示す図である。
HIPサイクル及び熱処理後の(a)合金58及び(b)合金59の引張り特性を、鋳造厚さの関数として示す図である。
熱間圧延前(下)及び熱間圧延後(上)における合金1の20mm厚さのプレートを示す図である。
熱間圧延前及び後における(a)合金1及び(b)合金2の引張り特性を、鋳造厚さの関数として示す図である。
(a)外層領域及び(b)中心層領域における、75.7%の圧下を伴う熱間圧延後の鋳放し厚さが5mmである合金1プレートにおける微細構造の反射電子SEM像を示す図である。
(a)外層領域及び(b)中心層領域における、88.5%の圧下を伴う熱間圧延後の鋳放し厚さが10mmである合金1プレートにおける微細構造の反射電子SEM像を示す図である。
(a)外層領域及び(b)中心層領域における、83.3%の圧下を伴う熱間圧延後の鋳放し厚さが20mmである合金1プレートにおける微細構造の反射電子SEM像を示す図である。
熱間圧延後、冷間圧延後、及び各種パラメーターによる熱処理後の、(a)合金1及び(b)合金2のシートの引張り特性を示す図である。
(a)外層領域及び(b)中心層領域における、96%の圧下を伴う熱間圧延後の鋳放し厚さが50mmである合金1プレートにおける微細構造の反射電子SEM像を示す図である。
(a)外層領域及び(b)中心層領域における、96%の圧下を伴う熱間圧延後の鋳放し厚さが50mmである合金2プレートにおける微細構造の反射電子SEM像を示す図である。
後処理の各種工程における、(a)合金1及び(b)合金2の後処理済みシートの引張り特性を示す図である。
最初に各種厚さで鋳造された(a)合金1及び(b)合金2の後処理済みシートの引張り特性を示す図である。
88%の圧下を伴う熱間圧延後の鋳放し厚さが20mmである合金2の反射電子SEM像を示す図である:(a)外層領域;(b)中心層領域。
熱間圧延され950℃で6時間熱処理された合金2の20mm厚さのプレート試料の反射電子SEM像を示す図である:(a)外層領域;(b)中心層領域。
各種条件で熱処理された、熱間圧延により50mm厚さのプレートから生産された合金8シートの引張り特性を、代表的な応力歪み曲線と共に示す図である。
各種条件で熱処理された、熱間圧延により50mm厚さのプレートから生産された合金16シートの引張り特性を示す図である。
各種条件で熱処理された、熱間圧延により50mm厚さのプレートから生産された合金24シートの引張り特性を、代表的な応力歪み曲線と共に示す図である。
最初に50mm厚さで鋳造された、熱間圧延及び熱処理後の合金1プレートにおける微細構造の明視野TEM顕微鏡写真を示す図である。
引張り変形後の、熱間圧延及び熱処理済み合金1プレートにおける微細構造の明視野TEM顕微鏡写真を示す図である。
熱間圧延及び熱処理後の50mm厚さの合金8プレートにおける微細構造の明視野TEM顕微鏡写真を示す図である:(a)引張り変形前及び(b)後。
熱間圧延及び熱処理後の50mm厚さの合金8プレートにおける微細構造のより高倍率での明視野TEM顕微鏡写真を示す図である:(a)引張り変形前及び(b)後。
熱間圧延及び熱処理後の50mm厚さの合金8プレートにおける微細構造の高分解能TEM顕微鏡写真を示す図である:(a)引張り変形前及び(b)後。
熱間圧延及び熱処理後の50mm厚さの合金16プレートにおける微細構造の明視野及び暗視野TEM顕微鏡写真を示す図である。
引張り変形後の、熱間圧延及び熱処理済み合金16プレートにおける微細構造の明視野及び暗視野TEM顕微鏡写真を示す図である。
最初に50mm厚さのプレート状に鋳造された合金32及び合金42の後処理済みシートの引張り特性を示す図である。
合金24の50mm厚さの鋳放しプレートにおける微細構造の明視野TEM顕微鏡写真を示す図である。
50から2mm厚さへ熱間圧延後の合金24プレートにおける微細構造の明視野TEM顕微鏡写真を示す図である。
収縮ろうと状部(shrinkage funnel)及び化学分析のための試料採取する場所を示す、鋳造プレートの中心を通る断面の概略図である。
特定された4つの合金の鋳造プレートの上部(エリアA)及び底部(エリアB)における試験された場所の合金化元素含量を示す図である。
新しい鋼シートタイプと既存の二相(DP)鋼との応力歪み曲線の比較を示す図である。
新しい鋼シートタイプと既存の複相(CP)鋼との応力歪み曲線の比較を示す図である。
新しい鋼シートタイプと既存の変態誘起塑性(TRIP)鋼との応力歪み曲線の比較を示す図である。
新しい鋼シートタイプと既存のマルテンサイト(MS)鋼との応力歪み曲線の比較を示す図である。
3.3mm厚さで鋳造された同じ合金の引張り特性と比較した、50mm厚さで鋳造された選択された合金の引張り特性を示す図である。
熱間圧延された状態のホウ素を含まない合金63の例となる応力歪み曲線を示す図である。
50mm厚さで鋳造された合金65における微細構造の反射電子像の図である:(a)鋳放し;(b)1250℃での熱間圧延後;(c)1.2mm厚さまで冷間圧延した後。

実施例

0013

連続スラブ鋳造
スラブは、断面が長方形である、ある長さの金属である。スラブは連続鋳造により直接生産することができ、通常は各種プロセス(熱間/冷間圧延、スキン圧延、バッチ熱処理、連続熱処理など)によってさらに処理される。一般的な最終製品としては、シート金属、プレート、ストリップ金属、パイプ、及び管が挙げられる。

0014

厚スラブ鋳造の説明
厚スラブ鋳造は、溶融金属を凝固させて、仕上げ圧延機においてその後圧延するための「半製品の」スラブとするプロセスである。図1に図示される連続鋳造プロセスでは、溶融鋼取鍋からタンディッシュを通って鋳型へ流れる。鋳型に入ると、溶融鋼は水冷された銅鋳型の壁に接触して凍結し、固体シェルを形成する。装置下側の駆動ロールは、入ってくる金属の流れに適合した速度又は「鋳造スピード」でシェルを連続的に鋳型から引き出し、そのためプロセスは理想的に定常状態稼働する。鋳型出口の下で、凝固しつつある鋼シェルは残っている液体を支持する容器として働く。ロール溶鋼静圧(ferrostatic pressure)に起因する膨らみを最小限にするように鋼を支える。水及び空気ミスト噴霧器はロール間のストランドの表面を冷却して、溶融コア固体になるまでその表面温度を維持する。(「凝固完了長さ(metallurgical length)」において)中心が完全に固体になった後、ストランドを典型的な厚さが150〜500mmであるスラブ状トーチ切断することができる。薄シートをスラブから生産するために、それらは相当な圧下を伴う熱間圧延を施さなければならず、これは後処理の一部である。熱間圧延は、多くの場合両方向であり複数回通すことが可能である粗圧延機、及び典型的には5〜7本のスタンドが連なる仕上げ圧延機の両方で行ってもよい。熱間圧延後、得られるシート厚さは典型的には2〜5mmの範囲である。さらなるゲージ低下は通常はその後の冷間圧延によって行われることになる。

0015

薄スラブ鋳造の説明
薄スラブ鋳造プロセスの概略を図2に示す。薄スラブ鋳造プロセスは3段階に分けることができる。段階1において、液体鋼は鋳造及び圧延の両方がほぼ同時に行われる。凝固プロセスは液体溶融物を銅又は銅合金鋳型に押し通すことによって開始し、典型的には50〜110mmの初期厚さが得られるが、これは液体金属加工性及び製造スピードに基づいて変動し得る(すなわち20〜150mm)。鋳型を出たほとんど直後で鋼シートの内部コアがまだ液体である間、最終シート厚さ目標に応じて10mmまで厚さを大幅に減少させる多段階圧延スタンドを使用して、シートの圧下を行う。段階2において、鋼シートは1つ又は2つの誘導炉を通ることによって加熱され、この段階の間、温度プロファイル及び冶金構造が均一化される。段階3において、シートは最終ゲージ厚目標までさらに圧延され、これは0.5〜15mm厚さの範囲であってもよい。典型的には、熱間圧延プロセスの間、シートは5〜7の圧延機によって連続的に圧下されるので、ゲージ低下は5〜7工程で行われることになる。圧延直後ストリップランアウトテーブル上で冷却して、鋼ロールに巻く前にシートの最終微細構造の発達を制御する。

0016

薄スラブ鋳造においてシートを形成する3段階プロセスはプロセスの一部であるが、本明細書に記載のメカニズム及び構造タイプ並びに得られる特性の新規の組合せに基づき、これらの段階に対する本明細書における合金の応答は特有なものである。

0017

後処理方法
熱間圧延
熱間圧延鋼赤熱している間に成形され、次いで冷却される。平圧延は圧延の最も基本的な形態であり、始まり及び終わりの材料が長方形の断面を有する。金属シートの圧延プロセスの概略図を図3に示す。熱間圧延は、高温におけるシート金属の増大した延性を利用してシート厚さを目標値に向かって薄くするためのシート製造の一部であり、このとき高レベル圧延圧下が実現できる。1つの(薄ストリップ鋳造)又は複数の(薄スラブ鋳造)スタンドがインラインで組み込まれている場合、熱間圧延は鋳造プロセスの一部であってもよい。厚(従来の)スラブ鋳造の場合、スラブは最初にトンネル炉内で再加熱され、次いで一連圧延機スタンドを通って移動する(図3)。目標厚さを有するシートを生産するために、別の熱間圧延機製造ライン上の後処理の一部である熱間圧延も適用される。赤熱している鋼は冷えると収縮するため、金属の表面はわずかに粗く、厚さは千分の数インチ変動する場合がある。一般に、冷間圧延は最終シート製品の品質を改善するための以下の工程である。

0018

冷間圧延
冷間圧延鋼は、金属をその最終的な形状及び寸法まで圧縮する重いローラー低温の鋼材料を通すことによって作られる。材料特性、冷間圧延の目的、及び目標のパラメーターに応じて異なる冷間圧延機を利用できる場合、これはシート製造の間の後処理の共通する工程である。シート材料が冷間圧延を受ける際、その強度、硬度、並びに弾性限界は増大する。しかし、金属シートの延性は歪み硬化のために低下し、そのため金属をよりもろくする。そのため、冷間変形の望ましくない効果を除去し金属の成形性を高めるために、圧延操作におけるパスとパスの間で時々金属を焼鈍/加熱しなければならない。したがって大きな厚さ減少を得るには時間とコストがかかる場合がある。多くの場合、インラインの焼鈍を含む複数スタンド冷間圧延機が利用され、シートが圧延ラインに沿って移動する間、シートは誘導加熱により短時間(通常は2〜5分)高温の影響を受ける。冷間圧延は熱間圧延よりもはるかに正確な寸法精度を可能にし、最終シート製品はより滑らかな表面(より良好な表面仕上がり)を有する。

0019

熱処理
目標の機械的特性を得るために、シート材料の後処理焼鈍が通常実施される。典型的には、鋼シート製品の焼鈍は工業的規模において2つの方法:バッチ焼鈍又は連続焼鈍で行われる。バッチ焼鈍プロセスの間、シートの大型コイル制御雰囲気を有する炉内でゆっくりと加熱及び冷却される。焼鈍時間は数時間〜数日間であってもよい。典型的にはサイズが5〜25トンである場合がある、大きな塊のコイルであるため、コイルの内側部分及び外側部分はバッチ焼鈍炉内で異なる熱履歴を経ることになり、このことは得られる特性の違いにつながる場合がある。連続焼鈍プロセスの場合、非コイル状鋼シートが加熱及び冷却装置を数分間通過する。加熱装置は通常は2段階炉である。第1の段階は高温熱処理であり、これは微細構造の再結晶をもたらす。第2の段階は低温熱処理であり、これは微細構造の人工的なエージングを提供する。連続焼鈍における全体の熱処理の2つの段階の適切な組合せは、目標の機械的特性をもたらす。従来のバッチ焼鈍を超える連続焼鈍の利点は、製品の均一性の改善;表面の清浄度及び形状;幅広い範囲の鋼グレードを生産できることである。

0020

構造及びメカニズム
本明細書における鋼合金は、識別可能結晶粒サイズ及びモルフォロジーを有し、好ましくは結晶性非ガラス質)であるクラス1鋼又はクラス2鋼として本明細書に記載されるものを、初期に形成することが可能であるようなものである。本開示はクラス2鋼の改善に注目し、クラス1に関する以下の議論は初期的な背景を提供することを意図している。

0021

クラス1鋼
本明細書におけるクラス1鋼の形成は図4に示される。そこに示されるように、モーダル構造(modal structure)が最初に形成され、このモーダル構造は、合金の液体溶融物から出発し冷却により凝固させた結果であり、これは核形成及び特定の結晶粒サイズを有する特定の相の成長をもたらす。本明細書においてモーダルを指すものは、したがって少なくとも2つの結晶粒サイズ分布を有する構造と理解できる。本明細書における結晶粒サイズは、好ましくは走査電子顕微鏡法又は透過電子顕微鏡法などの方法により識別可能な、具体的な特定の相の単結晶のサイズと理解できる。したがって、クラス1鋼の構造番号1は好ましくは、示されるような実験室スケールの手順、及び/又は双ロール処理などの低温表面処理法、薄スラブ鋳造、又は厚スラブ鋳造を含む工業規模の方法のいずれかによる処理によって実現してもよい。

0022

したがって、クラス1鋼のモーダル構造は、溶融物から冷却されると、以下の結晶粒サイズ:(1)オーステナイト及び/又はフェライトを含有する500nm〜20,000nmのマトリクス結晶粒サイズ;(2)25nm〜5000nmのホウ化物結晶粒サイズ(すなわち、Mが金属でありBに共有結合しているM2Bなどの非金属性結晶粒)を初期に示すことになる。ホウ化物結晶粒は好ましくは、マトリクス結晶粒がピニング相によって効果的に安定化されることになるという特徴を指している「ピニング」タイプ相であってもよく、これは高温で結晶粒粗大化に耐える。金属ホウ化物の結晶粒はM2Bの化学量論を示すことが確認されているが、他の化学量論が可能であり、M3B、MB(M1B1)、M23B6、及びM7B3を含むピニングをもたらし得ることに注意する。

0023

クラス1鋼のモーダル構造は、熱機械的プロセスによって変形させ、様々な熱処理を施してもよく、それにより特性の何らかの変化が得られるが、モーダル構造は維持され得る。

0024

上記のクラス1鋼に引張り応力を与える場合、観測される応力対歪み図を図5に示す。したがって、モーダル構造は動的ナノ相析出(Dynamic Nanophase Precipitation)と特定されるものを経て、クラス1鋼の第2タイプの構造に至ることが観測される。したがってそのような動的ナノ相析出は、合金が応力下で降伏を経験すると引き起こされ、動的ナノ相析出を経たクラス1鋼の降伏強度は好ましくは300MPa〜840MPaで生じ得ることが分かっている。したがって、動的ナノ相析出はそのような示される降伏強度を超える機械的応力を加えることに起因して生じることが理解できる。動的ナノ相析出自体は、付随する結晶粒サイズを有する析出相と呼ばれる、クラス1鋼におけるさらなる識別可能な相の形成と理解できる。すなわち、そのような動的ナノ相析出の結果は、サイズが1.0nm〜200nmである六方相の析出結晶粒の形成と共に、500nm〜20,000nmの識別可能なマトリクス結晶粒サイズ、20nm〜10000nmのホウ化物ピニング結晶粒サイズを依然として示す合金が形成されることである。上記のように、したがって合金が応力を受けた場合に結晶粒サイズは粗大化しないが、述べたような析出結晶粒の生成をもたらす。

0025

六方相が指すものは、P63mc空間群(186番)を有する六方両錐体クラスの六方相、及び/又は六方P6bar2C空間群(190番)を有するジトリゴナル(ditrigonal)両錐体クラスと理解できる。加えて、クラス1鋼のそのような第2タイプの構造の機械的特性は、引張強度が630MPa〜1150MPaの範囲に入ることが観測され、伸びが10〜40%であるようなものである。さらに、クラス1鋼の第2タイプの構造は、示される降伏を受けた後にほぼ平坦である、0.1〜0.4の歪み硬化係数を示すようなものである。歪み硬化係数は、式σ=Kεnの式においてnの値を指すものであり、式中σは材料に加えられる応力を表し、εは歪みであり、Kは強度係数である。歪み硬化指数nの値は0〜1の間にある。0の値は合金が完全に塑性固体である(すなわち加えられる力に対して材料が不可逆変化をする)ことを意味するが、一方で1の値は100%弾性固体を示す(すなわち加えられる力に対して材料が可逆変化をする)。以下のTable1(表1)は、本明細書におけるクラス1鋼の比較及び性能のまとめを示す。

0026

0027

クラス2鋼
本明細書におけるクラス2鋼の形成を図6に示す。本明細書におけるクラス2鋼もまた、特定される合金から形成されてもよく、構造番号1、モーダル構造から出発した後、静的ナノ相微細化及び動的ナノ相強化として本明細書において特定される2つの新しいメカニズムが続く、2つの新しい構造タイプを含む。クラス2鋼の構造タイプはナノモーダル構造及び高強度ナノモーダル構造として本明細書に記載される。したがって、本明細書におけるクラス2鋼は、以下のように特徴づけることができる:構造番号1−モーダル構造(ステップ番号1)、メカニズム番号1−静的ナノ相微細化(ステップ番号2)、構造番号2−ナノモーダル構造(ステップ番号3)、メカニズム番号2−動的ナノ相強化(ステップ番号4)、及び構造番号3−高強度ナノモーダル構造(ステップ番号5)。

0028

そこで示されるように、構造番号1が最初に形成され、ここでモーダル構造は合金の液体溶融物から出発し冷却により凝固させた結果であり、これは核形成及び特定の結晶粒サイズを有する特定の相の成長をもたらす。本明細書における結晶粒サイズはやはり、好ましくは走査電子顕微鏡法又は透過電子顕微鏡法などの方法により識別可能な、具体的な特定の相の単結晶のサイズと理解できる。したがって、クラス2鋼の構造番号1は好ましくは、示されるような実験室スケールの手順、及び/又は双ロール処理などの低温表面処理法、又は薄スラブ鋳造を含む工業規模の方法のいずれかによる処理によって実現されてもよい。

0029

したがってクラス2鋼のモーダル構造は、溶融物から冷却されると、以下の結晶粒サイズを初期に示すことになる:(1)オーステナイト及び/又はフェライトを含有する200nm〜200,000nmのマトリクス結晶粒サイズ;(2)存在する場合、10nm〜5000nmのホウ化物結晶粒サイズ(すなわち、Mが金属でありBに共有結合しているM2Bなどの非金属性結晶粒)。ホウ化物結晶粒は好ましくは、マトリクス結晶粒がピニング相によって効果的に安定化されることになるという特徴を指している「ピニング」タイプ相であってもよく、これは高温で結晶粒粗大化に耐える。金属ホウ化物の結晶粒はM2Bの化学量論を示すことが確認されているが、他の化学量論が可能であり、M3B、MB(M1B1)、M23B6、及びM7B3を含むピニングをもたらすことができ、上記のメカニズム番号1又は番号2によって影響を受けないことに注意する。結晶粒サイズはやはり、好ましくは走査電子顕微鏡法又は透過電子顕微鏡法などの方法により識別可能な、具体的な特定の相の単結晶のサイズと理解されるべきである。さらに、本明細書におけるクラス2鋼の構造番号1は、そのようなホウ化物相と共にオーステナイト及び/又はフェライトを含む。

0030

図7において、応力歪み曲線が示され、クラス2鋼の変形挙動を経た本明細書における鋼合金を表す。モーダル構造が好ましくは最初に作られ(構造番号1)、次いで生成後に今度はモーダル構造が、静的ナノ相微細化メカニズムであり構造番号2を生じるメカニズム番号1によって独特に微細化され得る。静的ナノ相微細化は、初期には200nm〜200,000nmの範囲に入っている構造番号1のマトリクス結晶粒サイズが小さくなり、典型的には50nm〜5000nmの範囲に入るマトリクス結晶粒サイズを有する構造2をもたらすという特徴を指す。ホウ化物ピニング相は、存在する場合、いくつかの合金においてサイズを大幅に変化させることができるが、熱処理中のマトリクス結晶粒の粗大化に耐えるように設計されていることに注意する。これらのホウ化物ピニング部位の存在に起因して、粗大化につながる粒界動きはZenerピニング又はZenerドラッグと呼ばれるプロセスによって遅らされると予測されることになる。したがって、全界面面積の減少のため、マトリクスの結晶粒成長エネルギー的に好ましいことがあるが、ホウ化物ピニング相の存在は、これらの相の高い界面エネルギーに起因して、この粗大化の推進力対抗することになる。

0031

クラス2鋼における静的ナノ相微細化(メカニズム番号1)の特徴は、ホウ化物が存在する場合、200nm〜200,000nmの範囲に入ると述べたミクロンスケールオーステナイト相ガンマFe)が高温で部分的に又は完全に新しい相(例えばフェライト又はアルファ−Fe)へ変態しているというものである。クラス2鋼のモーダル構造(構造1)中に初期に存在するフェライト(アルファ鉄)の体積分率は0〜45%である。静的ナノ相微細化(メカニズム番号2)の結果としての構造番号2におけるフェライト(アルファ鉄)の体積分率は、典型的には高温で20〜80%であり、次いで冷却するとオーステナイト(ガンマ鉄)に戻って典型的には20〜80%のオーステナイトが室温で得られる。静的変態は高温熱処理の間に好ましくは生じ、そのため特有の微細化メカニズムを伴うが、なぜなら結晶粒微細化よりもむしろ結晶粒粗大化が高温での従来の材料応答であるからである。

0032

したがって、ホウ化物が存在する場合、静的ナノ相微細化メカニズムの間に本明細書におけるクラス2鋼の合金に関して結晶粒粗大化は生じない。構造番号2は動的ナノ相強化の間に特異的に構造番号3へ変態することが可能であり、その結果として構造番号3が形成され2.4〜78.1%の全伸びにおいて400〜1825MPaの範囲の引張強度値を示す。

0033

合金化学組成に応じて、非ステンレス高強度鋼の一部において静的ナノ相微細化及びその後の熱的プロセス間にナノスケール析出物が形成し得る。ナノ析出物は1nm〜200nmの範囲であり、これらの相の大部分(>50%)は10〜20nmのサイズであり、これはマトリクス結晶粒よりも、又は存在する場合はマトリクス結晶粒粗大化を遅らせるための構造番号1において形成されるホウ化物ピニング相よりも、はるかに小さい。また、静的ナノ相微細化の間、ホウ化物結晶粒は、存在する場合、サイズが20〜10000nmの範囲であることが分かっている。

0034

上記について詳しく述べると、クラス2鋼をもたらす本明細書における合金の場合、そのような合金がそれらの降伏点を超えると、一定の応力における塑性変形が生じ、構造番号3の生成につながる動的相変態が後に続く。より詳細には、十分な歪みが誘起された後、応力対歪み曲線の傾きが変化し増加する変曲点が生じ(図7)、歪みと共に強度が増加し、メカニズム番号2(動的ナノ相強化)の活性化を示している。

0035

動的ナノ相強化の間のさらなる歪み負荷によって、強度は増加し続けるが、歪み硬化係数値が破壊近くまで徐々に減少する。いくらかの歪み軟化が生じるが、破壊点付近においてのみであり、これはネッキングにおける局所的な断面積の減少に起因する場合がある。応力下の材料歪み負荷において生じる強化変態は一般に動的プロセスとしてメカニズム番号2を規定し、構造番号3に至るに注意する。動的とは、材料の降伏点を超える応力を加えることによってプロセスが起こり得ることを意味する。構造3を実現する合金について得ることができる引張り特性は、400〜1825MPaの範囲の引張強度値及び2.4%〜78.1%の全伸びを含む。得られる引張り特性のレベルも、クラス2鋼についての特徴的な応力歪み曲線に対応して歪みが増加すると生じる変態の量によって決まる。

0036

したがって、変態のレベルに応じて、今度は調節可能な降伏強度も変形のレベルに応じて本明細書におけるクラス2鋼において作り出すことができ、構造番号3において降伏強度は最終的に200MPaから1650MPaまで変動し得る。すなわち、ここでの合金の範囲外の従来の鋼は比較的低いレベルの歪み硬化しか示さず、そのためそれらの降伏強度は、それまでの変形履歴に応じて狭い範囲(例えば100〜200MPa)のみにわたって変動し得る。本明細書におけるクラス2鋼において、構造番号3への変態を構造番号2に加えると降伏強度は広い範囲(例えば200〜1650MPa)にわたって変動し得、調節可能な変動を可能にして、様々な用途において、設計者及び末端利用者の両方が自動車の車体構造における衝突管理などの様々な用途で構造番号3を利用することを可能にする。

0037

図6に示すこの動的メカニズムに関して、1nm〜200nmの識別可能な結晶粒サイズを示す新たな及び/又はさらなる析出相(1つ又は複数)が観察される。加えて、前記析出相において、P63mc空間群(186番)を有する六方両錐体クラスの六方相、六方P6bar2C空間群(190番)を有するジトリゴナル(ditrigonal)両錐体クラス、及び/又はFm3m空間群(225番)を有するM3S1立方相というさらなる識別がある。したがって、動的変態は部分的に又は完全に起こることがあり、新規のナノスケール/近ナノスケール相を有する微細構造の形成を生じ、材料の比較的高い強度をもたらす。構造番号3は、20nm〜10000nmの範囲であるホウ化物相によってピニングされた、一般に25nm〜2500nmのサイズのマトリクス結晶粒を有し、1nm〜200nmの範囲である析出物相を有する、微細構造として理解することができる。ホウ化物ピニング相の非存在下では、微細化がやや少なくなる場合がある、及び/又はいくらかのマトリクス粗大化が生じて25nm〜25000nmのサイズであるマトリクス結晶粒をもたらす場合があることに注意する。1nm〜200nmの結晶粒サイズを有する上記の析出相の初期の形成は、静的ナノ相微細化から始まり、動的ナノ相強化の間継続し、構造番号3の形成に至る。サイズが1nm〜200nmである析出結晶粒の体積分率は構造番号2と比較して構造番号3において増加し、特定された強化メカニズムを支援する。構造番号3において、ガンマ鉄のレベルは任意的であり、特有の合金化学組成及びオーステナイト安定性に応じて除外されてもよいことにも注意すべきである。以下のTable2(表2)は本明細書におけるクラス2鋼の構造及び性能の比較を示す。

0038

0039

モーダル構造の新しい経路
高強度ナノモーダル構造形成進展の経路は図6に記載される通りである。新しい経路は図8に示すように本明細書で開示される。この図は、ホウ化物ピニング相が存在してもよい又は存在しなくてもよい合金に関す。これは構造番号1、モーダル構造から出発するが、さらなるメカニズム番号0、すなわち構造番号1aである均質化モーダル構造の形成につながる動的ナノ相微細化を含む(図8)。より詳細には、動的ナノ相微細化は、金属の厚さ減少を引き起こすのに十分な応力(10−6〜10−4秒−1の歪み速度によりもたらされる)と共に高温(700℃から融点直下の温度まで)を施すことであり、これは熱間圧延、熱間鍛造ホットプレス熱間穿孔、及び熱間押出を含む様々なプロセスによって生じ得る。これは以下でさらに完全に論じるように、金属合金のモルフォロジーの微細化にもつながる。

0040

均質化モーダル構造につながる動的ナノ相微細化は、たった1回のサイクル(厚さ減少を伴う加熱)で又は複数回の厚さのサイクル後(例えば25回まで)に生じることが観察される。均質化モーダル構造(図8の構造1a)は、図8の構造1のように規定される関連した特性及び特徴を有する出発モーダル構造と、図8の構造2のように規定される完全に変態したナノモーダル構造との間の、中間構造を表す。特有の化学組成、出発厚さ、及び加熱のレベル、及び厚さ減少(加えられる力の総量に関連する)の量に応じて、変態はたった1回のサイクルで完了する場合があり、又は変態を完了するのに多数のサイクル(例えば25回まで)を必要とする場合がある。部分的に変態した中間構造は、構造1a又は均質化モーダル構造であり、モーダル構造からナノモーダル構造への完全な変態後、ナノモーダル構造(すなわち構造2)が形成される。進行するサイクルは構造番号2(ナノモーダル構造)の生成に至る。特定のモーダル構造における特定の合金化学組成において実現される微細化及び均質化のレベルに応じて、構造番号1a(均質化モーダル構造)はしたがって直接構造番号2(ナノモーダル構造)になり得るか、又はメカニズム番号1(静的ナノ相微細化)によって熱処理及びさらに微細化して同様に構造番号2(ナノモーダル構造)を生産させてもよい。示されるように、構造番号2、ナノモーダル構造は、次いで構造番号3(高強度ナノモーダル構造)の形成につながるメカニズム番号2(動的ナノ相強化)を経てもよい。

0041

注目に値するのは、動的ナノ相微細化(メカニズム番号0)が、好ましくは全体の体積/厚さにわたって鋳造合金における均質化モーダル構造(構造番号1a)をもたらすメカニズムであり、これは液体状態からの初期の凝固の間、合金を効果的に冷却速度非感受性(並びに厚さ非感受性)にし、このことはシート製造のための薄スラブ又は厚スラブ鋳造のような製造方法の利用を可能にするということである。言い換えれば、2.0mm以上の厚さでモーダル構造を形成する、又はモーダル構造の形成中に250K/秒以下である冷却速度を施す場合、後に続くステップである静的ナノ相微細化は容易に起こらない場合があることが観察された。したがってナノモーダル構造(構造番号2)を生産する能力、ひいては動的ナノ相強化(メカニズム番号2)を受け高強度ナノモーダル構造(構造番号3)を形成する能力が損なわれることになる。すなわち構造の微細化が起きずモーダル構造から得られる特性と同等である特性に至るか、又は構造の微細化が有効ではなくモーダル及びナノモーダル構造の特性の間にある特性に至る。

0042

しかし、今度はナノモーダル構造(構造番号2)を形成する能力及びその後の高強度ナノモーダル構造の発達を好ましくは確実にすることができる。より詳細には、2.0mm以上の厚さで溶融物から凝固させたモーダル構造又は250K/秒以下の速度で冷却したモーダル構造から出発する場合、今度は好ましくは動的ナノ相微細化(メカニズム番号0)を進行させて均質化モーダル構造とし、次いで図8に示した工程を進行させて高強度ナノモーダル構造を形成させることができる。加えて、2mm未満の厚さで又は250K/秒を超える冷却速度でモーダル構造を調製するべきであり、好ましくは図8に示すように静的ナノ相微細化(メカニズム番号1)を直接進行させてもよい。

0043

したがって述べたように、動的ナノ相微細化は合金が高温で変形を受けた後に起こり、好ましくは700℃から融点直下の温度までの範囲及び10−6〜10−4秒−1の歪み速度の範囲にわたって起こる。そのような変形の一例は厚スラブ又は薄スラブ鋳造後の熱間圧延によって生じる場合があり、これは1回若しくは複数回の熱間粗圧延ステップ又は1回若しくは複数回の仕上げ熱間圧延工程において生じ得る。あるいはこれは多様な熱間処理工程による後処理で生じる場合があり、限定はされないが、ホットスタンプ鍛造、ホットプレス、熱間押出などが挙げられる。

0044

シート製造の間のメカニズム
本明細書における鋼合金におけるモーダル構造(構造番号1)の形成は、厚スラブ(図1)又は薄スラブ鋳造(段階1、図2)における合金凝固の間に生じ得る。モーダル構造は好ましくは、本明細書における合金をそれらの融点を超える範囲及び1100℃〜2000℃の範囲の温度で加熱し、合金の融点未満で冷却することにより形成することができ、これは好ましくは1×103〜1×10−3K/秒の範囲の冷却に対応する。

0045

合金の厚スラブ(図1)又は薄スラブ鋳造(段階2、図2)の一体化された熱間圧延は、厚スラブ鋳造の場合は典型的には150〜500mmの厚さであり薄スラブ鋳造の場合は20〜150mmの厚さである鋳造スラブにおいて、動的ナノ相微細化(メカニズム番号0)による均質化モーダル構造(構造番号1a、図8)の形成に至ることになる。均質化モーダル構造(Table1)(表1)のタイプは合金化学組成及び熱間圧延パラメーターによって決まることになる。

0046

ナノモーダル構造形成(構造番号2)を伴う静的ナノ相微細化であるメカニズム番号1は、後処理の間、均質化モーダル構造(構造番号1a、図8)を有する生産されたスラブに高温(700℃から合金の融点まで)を施した場合に生じる。静的ナノ相微細化(メカニズム番号1)を実現するための可能な方法としては、限定はされないが、インライン焼鈍、バッチ焼鈍、目標厚さに向けた熱間圧延に続く焼鈍などが挙げられる。熱間圧延は、様々な用途におけるシート鋼を生産するためにスラブ厚さを数ミリメートルの範囲まで減少させるのに利用される典型的な方法である。典型的な厚さ減少は、初期シートの製造方法によって幅広く変動し得る。出発厚さは3から500mmまで様々であってもよく、最終厚さは1mmから20mmまで様々となる。

0047

冷間圧延は、特定の用途のために目標厚さを得るのに利用される、シート製造のための広く使用される方法である。例えば、自動車産業で使用される大部分のシート鋼は0.4〜4mmの範囲の厚さを有する。目標厚さを得るために、冷間圧延はパス間中間焼鈍を含む複数回のパスによって施される。典型的な1回パス当たりの減少は、材料特性に応じて5〜70%である。中間焼鈍前のパスの回数もまた、材料特性及び冷間変形におけるその歪み硬化のレベルによって決まる。冷間圧延は、スキンパスとして知られる表面品質のための最終工程としても使用される。本明細書における鋼合金において、及び図8に示すようなナノモーダル構造を形成する方法によって、冷間圧延は動的ナノ相強化及び高強度ナノモーダル構造の形成を引き起こすことになる。

0048

好ましい合金化学組成及び試料調製
調べた合金の化学組成をTable4(表3)に示し、これは利用される好ましい原子比率を示す。初期の研究は銅ダイにおけるプレート鋳造によって行われた。

0049

合金1から合金59を鋳造して3.3mmの厚さを有するプレートとした。商用純度原料を使用して、Table4(表3)に示す原子比率に従って目標の合金の合金原料を35g量り分けた。次いで原料材料アーク融解ステムの銅炉床へ置いた。高純度アルゴンシールドガスとして使用して、原料をアーク融解してインゴットとした。均質性を確実にするように、インゴットを数回ひっくり返し再溶融させた。およそ30mmの直径及び最も厚い場所でおよそ9.5mmの厚さで、個々にインゴットをディスク状に成形した。次いで得られるインゴットを圧力真空鋳造機(pressure vacuum caster)(PVC)チャンバー中に置き、RF誘導を使用して溶融させ、次いで3.3mmの厚さを有する3×4インチシートを鋳造するように設計された銅ダイ上に排出した。

0050

合金60から合金62を鋳造して50mmの厚さを有するプレートとした。これらの化学組成は、InduthermVTC800V真空傾斜鋳造機におけるスラブ鋳造による材料加工に使用された。各合金についてTable4(表3)に示す原子比率に従い、既知の組成及び不純物含量の指定の量の市販の鉄添加剤(ferroadditive)粉末及び必要に応じてさらなる合金化元素を使用して、指定された組成の合金を3キログラム装入量量り分けた。合金装入物ジルコニア被覆したシリカるつぼ中に置き、鋳造機中に投入した。真空下で14kHz RF誘導コイルを使用して溶融を行った。過熱を実現し溶融物の均質性を確実にするために、固体構成成分が観察された最後の時点の後45秒〜60秒の時間で、装入物を完全に溶融するまで加熱した。次いで溶融物を水冷した銅ダイへ注ぎ入れて、薄スラブ鋳造プロセス(図2)における厚さ範囲にあるおよそ50mm厚さ及び75mm×100mmのサイズである実験室鋳造スラブを形成させた。

0051

0052

0053

上記から、図8に示される変態が起こりやすい、本明細書における合金は、以下のグループ分けで分類されることが理解できる:(1)Fe/Cr/Ni/Mn/B/Si/Cu(合金1、2、15〜18、27〜28、35、40、50〜57、59、62);(2)Fe/Ni/Mn/B/Si/Cu(合金3〜6、19、29〜30);(3)Fe/Mn/B/Si(合金7〜10、20、25〜26);(4)Fe/Cr/Mn/B/Si(合金11〜14、21〜24、37〜39);Fe/Ni/Mn/B/Si/Cu/C(合金31、36、46〜47、61);(5)Fe/Cr/Ni/Mn/B/Si/Cu/C(合金32〜34、41〜45、49、60);(6)Fe/Cr/Mn/B/Si/C(合金48);(7)Fe/Cr/Ni/Mn/B/Si(合金58);(8)Fe/Cr/Ni/Mn/Si/Cu/C(合金63〜70);(9)Fe/Cr/Ni/Mn/Si/C(合金71〜74)。

0054

上記から、当業者であれば本明細書における合金組成物が以下の4つの元素を以下の示される原子パーセント:Fe(61.0〜88.0原子%);Si(0.5〜9.0原子%);Mn(0.9〜19.0原子%)、及び場合によりB(0.0原子%〜8.0原子%)で含むことを理解するであろう。加えて、以下の元素は任意であり、示される原子パーセント:Ni(0.1〜9.0原子%);Cr(0.1〜19.0原子%);Cu(0.1〜4.0原子%);C(0.1〜4.0原子%)で存在してもよいことが理解できる。存在してもよい不純物としては、Al、Mo、Nb、S、O、N、P、W、Co、Sn、Zr、Ti、Pd、及びVが挙げられ、これは10原子パーセントまで存在してもよい。

0055

したがって、合金はまた本明細書においてFe系合金(60.0原子パーセントを超える)としてより広く記載されてもよく、B、Si、及びMnをさらに含む。合金は2.0mm以上の厚さの場合に溶融物から凝固させてモーダル構造(構造番号1、図8)を形成させることが可能であるか、又はこのモーダル構造は250K/秒以下の冷却速度で形成される場合に好ましくは動的ナノ相微細化を経ることができ、次いでこれは均質化モーダル構造(構造番号1a、図8)をもたらす。図8に示すように、次いでそのような均質化モーダル構造から最終的に示されるモルフォロジー及び機械的特性を有する高強度ナノモーダル構造(構造番号3)を形成させることができる。

0056

合金特性
凝固したままの鋳造シート試料についてNETZSCHDSC404F3 PEGASUS V5システムにおいて熱分析を行った。室温から1425℃までの温度の範囲で10℃/分の加熱速度において示差熱分析(DTA)及び示差走査熱量測定法(DSC)を行い、超高純度アルゴン流の使用によって試料を酸化から保護した。Table5(表4)において、高温DTAの結果が示され、合金の溶融挙動を示している。低温側結晶化ピークがなく、そのため金属ガラスは初期鋳造物中に存在することが見いだされなかったことに注意する。Table5(表4)で表にされた結果から分かるように、溶融は1〜4段階で起こり、初期溶融物は合金化学組成に応じて約1100℃から観察される。最終的な融点は選択された合金では>1425℃である。これらの合金の液相線温度測定可能な範囲外であり該当なしである[Table5(表4)において「NA」とマークされる]。溶融挙動のばらつきは、それらの化学組成に応じた合金の低温表面処理中の複相の形成を反映している場合がある。

0057

0058

0059

合金の密度を、空気中及び蒸留水中の両方での量を可能にする特別に作られた秤で、アーク融解したインゴットについてアルキメデス法を使用して測定した。各合金の密度はTable6(表5)で表にされ、7.55g/cm3から7.89g/cm3まで変動することが分かった。この技術の精度は±0.01g/cm3である。

0060

0061

25℃の範囲内の固相線温度を一般に50℃下回った温度で、3.3mmの初期厚さを有するすべての鋳造プレート(合金1から合金59)を熱間圧延した。熱間圧延工程の間、動的ナノ相微細化(メカニズム番号0、図8)がTable4(表3)の目標の化学組成において生じることが予測される。ロールが最小の力で接するように、圧延機のロールは圧延されたすべての試料について一定間隔で維持された。プロセスの間、試料は32%から45%までの間で変動する熱間圧下率を経た。熱間圧延後、Table7(表6)に記載のパラメーターに従って試料を熱処理した。一部の合金は構造番号1a(均質化モーダル構造)から直接構造番号2(ナノモーダル構造)を形成しなかったため、熱処理が用いられ、これらの場合、さらなる熱処理がメカニズム番号1(静的ナノ相微細化)を活性化した。

0062

0063

引張り試験片を、熱間圧延済み及び熱処理済みのシートからワイヤ放電加工(EDM)を使用して切断した。Instron’s Bluehill制御及び分析ソフトウェアを利用して、引張り特性をInstron機械的試験フレーム(Model 3369)において測定した。すべての試験は室温で変位制御において行われ、下部の治具は固く保持され、上部の治具が動いた;ロードセルは上部の治具に取り付けられる。Table8(表7)において、降伏応力極限引張強度、及び全伸びを含む引張試験結果のまとめを熱処理後の熱間圧延済みシートについて示す。機械的特性値は、本明細書において論じることになるように、合金化学組成及び処理条件に依存する。見られるように、極限引張強度値は431から1612MPaまで変動する。引張り伸びは2.4から64.7%まで変動する。降伏応力は212MPa〜966MPaの範囲で測定される。引張試験の間、構造番号2(ナノモーダル構造)を示す試料はメカニズム番号2(動的ナノ相強化)を経て、構造番号3(高強度ナノモーダル構造)を形成する。

0064

0065

0066

0067

0068

0069

0070

0071

0072

0073

0074

0075

50mmの初期厚さを有するすべての鋳造プレート(合金60〜62)に、合金固相線温度に応じて1075〜1100℃の温度で熱間圧延を施した。インラインのLucifer EHS3GT−B18トンネル炉を採用しているFenn Model 061 1段階圧延機において圧延を行った。均質な温度を確実にするように、材料を熱間圧延温度において40分の初期滞留時間で維持した。圧延機における各パスの後、試料をトンネル炉に戻し、熱間圧延パスの間に低下した温度を補正するための4分の温度回復滞留を行った。2回のキャンペーンにおいて熱間圧延を行い、第1のキャンペーンは6mmの厚さまでおよそ85%の総圧下率を得た。熱間圧延の第1のキャンペーンに続いて、150mm〜200mm長さ1区間のシートを熱間圧延済み材料の中央から切り出した。次いでこの切断した区間を熱間圧延の第2のキャンペーンに使用して、両キャンペーンの間で96%〜97%の総圧下率となるようにした。すべての合金において使用される特定の熱間圧延パラメーターのリストはTable9(表8)で得られる。

0076

0077

次いで各合金の熱間圧延済みシートに、1.2mmの厚さまで多数回パスでのさらなる冷間圧延を施した。圧延はFenn Model 061 1段階圧延機において行った。合金に使用される特定の冷間圧延パラメーターの例をTable10(表9)に示す。

0078

0079

熱間及び冷間圧延後、引張り試験片をEDMにより切断した。各合金の試料の一部を引張りについて試験した。熱間圧延及びその後の冷間圧延の後の合金の引張り特性をTable11(表10)に記載する。極限引張強度値は1438から1787MPaまで変動し、引張り伸びは1.0〜20.8%である。降伏応力は809〜1642MPaの範囲である。これは図8の構造3に相当する。本明細書における鋼合金の機械的特性値は合金化学組成及び処理条件に依存することになる。冷間圧延圧下率はオーステナイト変態の量に影響し、合金における異なるレベルの強度をもたらす。

0080

0081

冷間圧延済み試料の一部をTable12(表11)に指定されるパラメーターで熱処理した。アルゴンガスパージ下でLucifer 7GT−K12密封ボックス炉において、又はThermCraft XSL−3−0−24−1C管状炉において、熱処理を行った。空冷の場合、試験片目標温度で目標の時間維持し、炉から取り出し、空気中で冷却する。制御冷却の場合、投入される試料について指定される速度で炉の温度を低下させる。

0082

0083

Instron’s Bluehill制御及び分析ソフトウェアを利用して、引張り特性をInstron機械的試験フレーム(Model 3369)において測定した。すべての試験は室温で変位制御において行われ、下部の治具は固く保持され、上部の治具が動いた;ロードセルは上部の治具に取り付けられる。

0084

熱間圧延とその後の冷間圧延及び各種パラメーター[Table12(表11)]における熱処理後の、選択された合金の引張り特性をTable13(表12)に記載する。極限引張強度値は813MPaから1316MPaまで変動し得、引張り伸びは6.6〜35.9である。降伏応力は274MPa〜815MPaの範囲である。これは図8の構造2に相当する。本明細書における鋼合金の機械的特性値は、合金化学組成及び処理条件に依存することになる。

0085

0086

事例
事例番号1:実験室スケールにおける3段階の薄スラブ鋳造のモデリング
InduthermVTC 800 V鋳造機を使用した5〜50mmの範囲の各種厚さでのプレート鋳造を、薄スラブプロセス(図2)の段階1を模倣するのに使用した。商用純度の原料を使用して、Table4(表3)に示す原子比率に従って特定の合金について各種質量の装入物を量り分けた。次いで装入物をIndutherm VTC 800 V傾斜真空鋳造機のるつぼ中に置いた。RF誘導を使用して原料を溶融させ、次いでTable14(表13)に記載の寸法を有するプレートを鋳造するために設計された銅ダイの中へ注ぎ入れた。50mmの厚さを有する合金2の鋳造プレートの例を図9に示す。

0087

0088

薄スラブプロセスの段階3(図2)を模倣する空気中での冷却を伴う、薄スラブプロセスの段階2を再現するFenn Model 061圧延機及びLucifer 7−R24雰囲気制御ボックス炉を使用して、すべての鋳造プレートに熱間圧延を施す。圧延の開始前に1140℃まで60分間余熱された炉の中にプレートを置いた。次いでプレートを1回のパスあたり10%〜25%の圧下率で繰り返し圧延した。圧延ステップ間でプレートを1〜2分間炉内に置いて、それらの温度が戻るようにした。プレートが長くなりすぎてそれらを冷却させる炉内に収まらない場合は、より短い長さに切断し、次いで目標ゲージ厚さに向けて再度圧延する前に炉内で60分再加熱した。薄スラブプロセスの段階2又は熱間圧延による厚スラブの最初の後処理ステップを模倣するために熱間圧延を適用した。熱間圧延後の空冷は、薄スラブプロセスの段階3又はインラインの熱間圧延後の厚スラブの冷却条件に相当する。

0089

種用途における特性及び性能の要件に応じて、鋳造プレートの多数回パスの熱間圧延によって生産されるシート試料に、薄スラブ製造後のシート後処理を模倣する本明細書における事例に記載されるようなさらなる処理(熱処理、冷間圧延、など)を施した。スラブ鋳造プロセス及び後処理方法の忠実なモデリングは、処理の各工程での本明細書における鋼合金の構造発達の予測を可能にし、改良された特性の組合せを有するシート鋼の製造につながるメカニズムを特定する。

0090

事例番号2:鋳造プレート特性に対する熱処理効果
商用純度の原料を使用して、Table4(表3)に示す原子比率に従って合金1、合金8、及び合金16について各種質量の装入物を量り分けた。次いで装入物をInduthermVTC 800 V傾斜真空鋳造機のるつぼ中に置いた。RF誘導を使用して原料を溶融させ、次いで薄スラブ鋳造プロセスの範囲内(典型的には20〜150mm)である50mmの厚さを有するプレートを鋳造するために設計された銅ダイの中へ注ぎ入れた。各合金の鋳造プレートを、Table15(表14)に記載される各種パラメーターにより熱処理した。

0091

鋳放し及び熱処理済みのプレートからBrotherHS−3100ワイヤ放電加工機(EDM)を使用して引張り試験片を切断した。Instron’s Bluehill制御及び分析ソフトウェアを利用して、引張り特性をInstron機械的試験フレーム(Model 3369)において試験した。すべての試験は室温で変位制御において行われ、下部の治具は固く保持され、上部の治具が動き、ロードセルは上部の治具に取り付けられた。ビデオ伸び計歪み測定に使用した。

0092

0093

鋳放し及び熱処理済み条件の合金の引張り特性を図10プロットする。すべての3種の合金について、鋳放し状態と比較して熱処理済み試料においてわずかな特性の改善が見られた。しかし、特性はTable8(表7)に各合金について表された潜在能力をはるかに下回る。これは、合金が50mmで鋳造された(すなわち厚さが2mmを超え、<250K/秒で冷却された)ためと予測され、熱処理のみでは図8のメカニズムによって構造が微細化されないことになる。

0094

熱処理によって生じた微細構造の変化を比較するため、鋳放し状態及び熱処理済み状態の試料をSEMにより調べた。SEM試験片を作るために、プレート試料の断面を切断し、SiC紙により研磨し、次いで1μmグリットまでのダイヤモンドメディアペーストで徐々に磨いた。仕上げ磨きは0.02μmグリットのSiO2溶液で行った。鋳放し状態及び熱処理済み状態の合金1、合金8、及び合金16からのプレート試料の微細構造を、Carl ZeissSMT Inc.社製のEVO−MA10走査電子顕微鏡を使用して走査電子顕微鏡法(SEM)により調べた。

0095

図12〜14は、熱処理前及び後のすべての3種の合金における微細構造のSEM像を示す。見られるように、すべての3種の合金からの鋳放しプレートにおいて、モーダル構造(構造番号1)が存在し、マトリクス結晶粒間に及びマトリクス粒界に沿ってホウ化物相が位置している。熱処理は、静的ナノ相微細化(メカニズム番号1、図8)によるマトリクス相内の結晶粒微細化を含むことがあるが、微細構造は粗いままであるように見え、加えて境界ホウ化物相の部分的な球状化のみが、熱処理後に以前の樹枝状境界に沿って局在して見られる。したがって、凝固直後のプレートの熱処理は、合金が大きい厚さで鋳造される場合に特性を実現するのに必要な微細化及び構造の均質化をもたらさず、比較的劣った特性を生じさせる。

0096

したがって、高温熱処理によって生じる静的ナノ相微細化は大きい厚さ/小さい冷却速度で鋳造される試料において比較的効果がないことがわかる。静的ナノ相微細化が効果的とならない範囲は、特定の合金化学組成及びモーダル構造中の樹枝状晶のサイズによって決まることになるが、一般に2.0mm以上の鋳造厚さ及び250K/秒以下の冷却速度で生じる。

0097

事例番号3:各種厚さを有するプレートの特性に対するHIPサイクルの効果
Table4(表3)に記載される合金58及び合金59について1.8mm〜20mmの範囲の各種厚さでプレート鋳造を行った。1.8mmの鋳放し厚さを有する薄いプレートを圧力真空鋳造機(PVC)で鋳造した。商用純度の原料を使用して、Table4(表3)に示す原子比率に従って35gの装入物を量り分けた。次いで原料材料をアーク融解システムの銅炉床へ置いた。高純度アルゴンをシールドガスとして使用して、原料をアーク融解してインゴットとした。均質性を確実にするように、インゴットを数回ひっくり返し再溶融させた。約30mmの直径及び最も厚い場所で約9.5mmの厚さで、個々にインゴットをディスク状に成形した。次いで得られるインゴットをPVCチャンバー中に置き、RF誘導を使用して溶融させ、次いで1.8mmの厚さを有する3×4インチのプレートを鋳造するように設計された銅ダイに排出した。

0098

InduthermVTC 800 V傾斜真空鋳造機を使用して、5〜20mmの厚さを有するプレートの鋳造を行った。商用純度の原料を使用して、Table4(表3)に示す原子比率に従って特定の合金について各種質量の装入物を量り分けた。次いで装入物を鋳造機のるつぼ中に置いた。RF誘導を使用して原料を溶融させ、次いでTable16(表15)に記載の寸法を有するプレートを鋳造するために設計された銅ダイの中へ注ぎ入れた。

0099

0100

モリブデン炉を有し炉のチャンバーサイズが直径4インチ×高さ5インチであるAmerican Isostatic Press Model 645装置を使用して、各合金からの各プレートに熱間静水圧プレス(Hot Isostatic Pressing)(HIP)を施した。プレートを目標温度に達するまで10℃/分で加熱し、これらの研究における1時間の指定時間でガス圧力にさらした。スラブ鋳造での熱間圧延工程を模倣するために、in−situの熱処理として及び鋳造の欠陥の一部を除去するための方法としてHIPサイクルを使用したことに注意する。HIPサイクルパラメーターをTable17(表16)に記載する。HIPサイクル後、両方の合金からのプレートをボックス炉内で900℃にて1時間熱処理した。

0101

0102

HIP済みのままの状態並びにHIPサイクル及び熱処理後のプレートからワイヤ放電加工機(EDM)を使用して引張り試験片を切断した。Instron’s Bluehill制御及び分析ソフトウェアを利用して、引張り特性をInstron機械的試験フレーム(Model 3369)において測定した。すべての試験は室温で変位制御において行われ、下部の治具は固く保持され、上部の治具が動き、ロードセルは上部の治具に取り付けられた。HIPサイクル及び熱処理による微細構造変化を比較するため、鋳放し、HIP済み、及び熱処理済みの状態の試料を、Carl ZeissSMT Inc.社製のEVO−MA10走査電子顕微鏡を使用してSEMにより調べた。SEM試験片を作るために、プレート試料の断面を切断し、SiC紙により研磨し、次いで1μmグリットまでのダイヤモンドメディアペーストで徐々に磨いた。仕上げ磨きは0.02μmグリットのSiO2溶液で行った。

0103

HIPサイクル後の両方の合金からのプレートの引張り特性をプレート厚さの関数として図14に示す。鋳放し厚さの増加と共に特性の著しい低下が両方の合金で見られた。両方の合金が1.8mmで鋳造された場合に最良の特性が得られた。

0104

合金59についての鋳放し状態及びHIPサイクル後のプレートにおける微細構造の例を、図15図17に示す。鋳放し条件のプレートにおいてモーダル構造(構造番号1)を観察することができ(図15a、図16a、図17a)、鋳造プレート厚さの関数として樹枝状晶サイズが増加する。HIPサイクル後、モーダル構造は静的ナノ相微細化(メカニズム番号1)によってナノモーダル構造(構造番号2)へ部分的に変態し得るが、構造は粗いように見える(個々の結晶粒サイズはSEM分解能を超えることに注意する)。しかし、すべての場合で見られるように(図15b、図16b、図17b)、ホウ化物相は好ましくは、凝固の際に形成される第1樹枝状晶に沿って並んでいる。著しく小さい樹枝状晶(1.8mm厚さでの鋳造の場合)が、ホウ化物のより均質な分布をもたらし、より大きい厚さを有する鋳造プレート(図15b)の特性と比較してより良好な特性につながる。HIPサイクル後のさらなる熱処理は、すべてのプレートにおいて特性の改善をもたらし、両方の合金からの1.8mm厚さのプレートでより顕著な効果がある(図18)。より大きい厚さ(すなわち5〜20mm)で鋳造された試料では、特性の改善は最小である。

0105

この事例は、高温でのHIPサイクル及びさらなる熱処理がマトリクス相内のある程度のレベルの結晶粒微細化を含む場合があるが、静的ナノ相微細化は一般に効果がないことを実証している。加えて境界ホウ化物相の部分的な球状化のみがHIPサイクル後に見られ、複雑なホウ化物相がマトリクス粒界に沿って局在化している。

0106

事例番号4:各種厚さを有するプレートの特性に対する熱間圧延の効果
InduthermVTC 800 V傾斜真空鋳造機を使用して、5mm〜20mmの範囲の各種厚さを有するプレートを合金1及び 合金2から鋳造した。商用純度の原料を使用して、Table4(表3)に示す原子比率に従って特定の合金について各種質量の装入物を量り分けた。次いで装入物を鋳造機のるつぼ中に置いた。RF誘導を使用して原料を溶融させ、次いでTable15(表14)に記載の寸法を有するプレートを鋳造するために設計された銅ダイの中へ注ぎ入れた。Fenn Model 061圧延機及びLucifer 7−R24雰囲気制御ボックス炉を使用して、各合金の各プレートに熱間圧延を施した。圧延の開始前に1140℃まで60分間余熱された炉の中にプレートを置いた。次いでプレートを10%〜25%の圧下率の多数回パスにより熱間圧延し、薄スラブプロセスの段階2における複数スタンドの熱間圧延(図2)又は厚スラブ鋳造における熱間圧延プロセス(図1)を模倣した。熱間圧延の総圧下率は、プレートの鋳造厚さに応じて75〜88%であった。合金1の熱間圧延プレートの例を図19に示す。両方の合金についての各プレートの熱間圧延の圧下率値をTable18(表17)に示す。

0107

0108

熱間圧延後のプレートからワイヤ放電加工機(EDM)を使用して引張り試験片を切断した。Instron’s Bluehill制御及び分析ソフトウェアを利用して、引張り特性をInstron機械的試験フレーム(Model 3369)において測定した。すべての試験は室温で変位制御において行われ、下部の治具は固く保持され、上部の治具が動き、ロードセルは上部の治具に取り付けられた。熱間圧延の前及び後における、初期の各種厚さを有するプレートの微細構造を比較するために、Carl ZeissSMT Inc.社製のEVO−MA10走査電子顕微鏡を使用して、選択された試料についてSEM分析を行った。SEM試験片を作るために、合金1のプレート試料の断面を切断し、SiC紙により研磨し、次いで1μmグリットまでのダイヤモンドメディアペーストで徐々に磨いた。仕上げ磨きは0.02μmグリットのSiO2溶液で行った。

0109

各種厚さで鋳造され熱間圧延された合金1及び合金2のプレートの引張り特性を図20に示す。見られるように、熱間圧延前では、鋳放し常態における両方の合金はより低い強度及び延性を示し、より高い度合いの試料間の特性のばらつきがあった。熱間圧延後、すべての厚さにおける両方の合金からの試料は、引張り特性及び試料どうしの特性のばらつきの減少において著しい改善を示した。5mm厚さで鋳造されたプレートはわずかに低い特性を有し、これは、いくつかの鋳造物内の欠陥がまだ存在し得る場合の、より低い熱間圧延圧下率によって説明できる。熱間圧延後の合金1のプレート試料のSEM分析は、初期の鋳造厚さとは関係なく、熱間圧延済みシートの体積全体にわたって同様の構造を示した(図21図23)。熱処理(図11図13)及びHIPサイクル(図15〜18)とは対照的に、熱間圧延は動的ナノ相微細化(メカニズム番号0、図8)による構造の均質化をもたらし、本明細書において調べたいかなる鋳造厚さにおいても均質化モーダル構造(構造番号1a、図8)が形成される。均質化モーダル構造の形成は、いくつかの熱間圧延サイクル後に鋳放し試料を超える著しい特性の改善をもたらす。

0110

この事例は、動的ナノ相微細化(メカニズム番号0、図8)による均質化モーダル構造(構造番号1a、図8)の形成が、完了時に目標のナノモーダル構造(構造番号2、図8)への変態をもたらすことを実証し、これは大きい厚さで鋳造された合金における比較的均一な構造及び特性を得るのに好ましいプロセス経路である。

0111

事例番号5:合金1及び合金2の熱間圧延済みシートに対する熱処理の効果
薄スラブプロセスの段階1(図2)を模倣するために、InduthermVTC 800 V傾斜真空鋳造機を使用して、合金1及び合金2から50mm厚さを有するプレート鋳造を行った。商用純度の原料を使用して、Table4(表3)に示す原子比率に従って合金1及び合金2について各種質量の装入物を量り分けた。次いで装入物を鋳造機のるつぼ中に置いた。RF誘導を使用して原料を溶融させ、次いで50mm厚さを有するプレートを鋳造するために設計された銅ダイの中へ注ぎ入れた。Fenn Model 061圧延機及びLucifer 7−R24雰囲気制御ボックス炉を使用して、各合金のプレートに熱間圧延を施した。圧延の開始前に1140℃まで60分間余熱された炉の中にプレートを置いた。次いでプレートを1回のパスあたり10%〜25%の圧下率で3.5mm厚さまで繰り返し圧延し、薄スラブプロセスの段階2における複数スタンドの熱間圧延(図2)又は厚スラブ鋳造における熱間圧延工程(図1)を模倣した。圧延ステップ間でプレートを1〜2分間炉内に置いて、次の圧延パスのための温度までそれらが部分的に戻るようにした。プレートが長くなりすぎてそれらを冷却させる炉内に収まらない場合は、より短い長さに切断し、次いで目標ゲージ厚さに向けて再度圧延する前に炉内で60分再加熱した。両方の合金について93%の総圧下率が得られた。熱間圧延シートをTable19(表18)に記載される各種パラメーターで熱処理した。

0112

0113

合金1及び合金2の熱間圧延済み及び熱処理済みのシートから、BrotherHS−3100ワイヤ放電加工機(EDM)を使用して引張り試験片を切断した。Instron’s Bluehill制御及び分析ソフトウェアを利用して、引張り特性をInstron機械的試験フレーム(Model 3369)において試験した。すべての試験は室温で変位制御において行われ、下部の治具は固く保持され、上部の治具が動き、ロードセルは上部の治具に取り付けられた。非接触ビデオ伸び計を歪み測定に使用した。

0114

各種パラメーターで熱間圧延及び熱処理した後の合金1及び合金2のシートの引張り特性を図24にプロットする。熱処理温度の増加と共に特性が改善する一般的な傾向がある。

0115

この事例は、50mm厚さで鋳造され熱間圧延において動的ナノ相微細化(メカニズム番号0、図8)を経て均質化モーダル構造(構造番号1a、図8)の形成をもたらす場合に、本明細書における合金において改良された特性の組合せを得ることができることを実証している。その後の熱処理は、合金化学組成、熱間圧延パラメーター、及び施される熱処理に応じて、静的ナノ相微細化(メカニズム番号1、図8)によるナノモーダル構造(構造番号2、図8)への部分的又は完全な変態をもたらす。

0116

事例番号6:各種条件における50mm厚さの鋳造プレートの引張り特性
薄スラブプロセスの段階1(図2)を模倣するために、InduthermVTC 800 V傾斜真空鋳造機を使用して、合金1及び合金2から50mm厚さを有するプレート鋳造を行った。商用純度の原料を使用して、Table4(表3)に示す原子比率に従って合金1及び合金2について各種質量の装入物を量り分けた。次いで装入物を鋳造機のるつぼ中に置いた。RF誘導を使用して原料を溶融させ、次いで50mm厚さを有するプレートを鋳造するために設計された銅ダイの中へ注ぎ入れた。Fenn Model 061圧延機及びLucifer 7−R24雰囲気制御ボックス炉を使用して、各合金のプレートに熱間圧延を施した。圧延の開始前に1140℃まで60分間余熱された炉の中にプレートを置いた。次いでプレートを1回のパスあたり10%〜25%の圧下率で3.5mm厚さまで繰り返し圧延し、薄スラブプロセスの段階2における複数スタンドの熱間圧延(図2)又は厚スラブ鋳造における熱間圧延工程(図1)を模倣した。圧延工程間でプレートを1〜2分間炉内に置いて、それらの温度が戻るようにした。プレートが長くなりすぎてそれらを冷却させる炉内に収まらない場合は、より短い長さに切断し、次いで目標ゲージ厚さに向けて再度圧延する前に炉内で60分再加熱した。両方の合金について96%の総圧下率が得られた。

0117

熱間圧後のプレートの微細構造を評価するために、Carl ZeissSMT Inc.社製のEVO−MA10走査電子顕微鏡を使用して、両方の合金からのプレート試料についてSEM分析を行った。SEM試験片を作るために、合金1のプレート試料の断面を切断し、SiC紙により研磨し、次いで1μmグリットまでのダイヤモンドメディアペーストで徐々に磨いた。仕上げ磨きは0.02μmグリットのSiO2溶液で行った。50mmの鋳放し厚さを有する合金1及び合金2のプレートの、圧下率96%の熱間圧延後における微細構造のSEM像を図25及び図26にそれぞれ示す。見られるように、両方の合金についてプレート厚さ全体にわたって均質な構造が見られ、熱間圧延の間に動的ナノ相微細化(メカニズム番号0、図8)の結果として均質化モーダル構造(構造番号1a、図8)が形成されることを裏付けた。

0118

厚スラブ又は薄スラブプロセスにより生産されるシートの可能な後処理を模倣するために、39%の圧下率でさらなる冷間圧延を、その後の熱処理と共に施した。合金1の圧延済みシートを950℃で6時間熱処理し、合金2の圧延済みシートを1150℃で2時間熱処理した。合金1及び合金2のシートからBrotherHS−3100ワイヤ放電加工機(EDM)を使用して引張り試験片を切断した。Instron’s Bluehill制御及び分析ソフトウェアを利用して、引張り特性をInstron機械的試験フレーム(Model 3369)において試験した。すべての試験は室温で変位制御において行われ、下部の治具は固く保持され、上部の治具が動き、ロードセルは上部の治具に取り付けられた。非接触のビデオ伸び計を歪み測定に使用した。

0119

熱間圧延済み、熱間圧延されその後冷間圧延される、並びに熱間圧延されその後冷間圧延及び熱処理される条件における、合金1及び合金2の引張り特性を図27にプロットする。熱間圧延済みのデータは、凝固、熱間圧延、及びコイリングを含む薄スラブ製造の場合の、製造されたままの状態に相当するシートの特性を表す。冷間圧延は、シート厚さを2mmまで減少させるために熱間圧延済みシートに施され、動的ナノ相強化メカニズムによるシート材料の著しい強化をもたらす。熱間圧延及び冷間圧延済みシートのその後の熱処理は、1000〜1200MPaの強度及び17〜24%の範囲の延性を含む特性をもたらす。最終的な特性は、合金化学組成並びに鋳造及び後処理パラメーターに応じて変動し得る。

0120

この事例は、50mm厚さで鋳造され熱間圧延における動的ナノ相微細化(メカニズム番号0、図8)を経て均質化モーダル構造(構造番号1a、図8)の形成に至る場合に、本明細書における合金において改良された特性の組合せを得ることができることを実証している。ナノモーダル構造(構造番号2、図8)への部分的又は完全な変態も、合金化学組成及び熱間圧延パラメーターに応じて熱間圧延時に生じ得る。主な違いは、構造番号1a(均質化モーダル構造)がメカニズム番号0(動的ナノ相微細化)の特定数のサイクルの後に構造番号2(ナノモーダル構造)へ直接変態するか、又はメカニズム番号1(静的ナノ相微細化)を活性化させて構造番号2(ナノモーダル構造)を形成するのにさらなる熱処理が必要であるかという点である。その後の冷間圧延による後処理は、動的ナノ相強化(メカニズム番号2、図8)による高強度ナノモーダル構造(構造番号3、図8)の形成につながる。

0121

事例番号7:合金1及び合金2のシート特性に対する鋳放し厚さの効果
InduthermVTC 800 V鋳造機を使用して、5〜50mmの範囲の各種厚さを有するプレートを鋳造した。商用純度の原料を使用して、Table4(表3)に示す原子比率に従って特定の合金について各種質量の装入物を量り分けた。次いでTable4(表3)に示す原子比率に従う合金1及び合金2についての装入物をIndutherm VTC 800 V傾斜真空鋳造機のるつぼ中に置いた。RF誘導を使用して原料を溶融させ、次いでTable13(表12)に記載の寸法を有するプレートを鋳造するために設計された銅ダイの中へ注ぎ入れた。Fenn Model 061圧延機及びLucifer 7−R24雰囲気制御ボックス炉を使用して、各合金のすべてのプレートに熱間圧延を施した。圧延の開始前に1140℃まで60分間余熱された炉の中にプレートを置いた。次いでプレートを1.2〜1.4mmの厚さまで繰り返し圧延した。薄スラブプロセスにより製造されるシートの可能な後処理を模倣するために、39%の圧下率でさらなる冷間圧延を、その後の1150℃で2時間の熱処理と共に熱間圧延済みプレートに施した。

0122

合金1及び合金2の熱間圧延済み及び熱処理済みのシートから、BrotherHS−3100ワイヤ放電加工機(EDM)を使用して引張り試験片を切断した。Instron’s Bluehill制御及び分析ソフトウェアを利用して、引張り特性をInstron機械的試験フレーム(Model 3369)において試験した。すべての試験は室温で変位制御において行われ、下部の治具は固く保持され、上部の治具が動き、ロードセルは上部の治具に取り付けられた。ビデオ伸び計を歪み測定に使用した。両方の合金の引張りデータを図28にプロットする。同様の強度、並びに合金1については20〜29%及び合金2については19〜26%の範囲の延性を含む一貫した特性が、鋳放し厚さに関係なく後処理済みシートにおいて測定された。

0123

この事例は、熱間圧延の間に動的ナノ相微細化(メカニズム番号0、図8)によって合金1及び合金2プレートに均質化モーダル構造(構造番号1a、図8)が形成され、初期の鋳造厚さとは関係なく一貫した特性が得られることを実証している。すなわち、モーダル構造から出発し、動的ナノ相微細化を経て均質化モーダル構造となるならば、構造1に存在する初期の鋳造厚さ(すなわちモーダル構造の厚さが2.0mm以上である場合、例えば2.0mm以上の厚さから500mmの厚さまでなど)に関係なく、図8に示す手順を続けて有用な機械的特性を得ることができる。

0124

事例番号8:熱間圧延後のシート微細構造に対する熱処理の効果
InduthermVTC 800 V傾斜真空鋳造機を使用して、合金2から20mmの厚さを有するプレートを鋳造した。商用純度の原料を使用して、Table4(表3)に示す原子比率に従って特定の合金について各種質量の装入物を量り分けた。次いで装入物を鋳造機のるつぼ中に置いた。RF誘導を使用して原料を溶融させ、次いで20mm厚さを有するプレートを鋳造するために設計された銅ダイの中へ注ぎ入れた。Fenn Model 061圧延機及びLucifer 7−R24雰囲気制御ボックス炉を使用して、鋳造プレートに熱間圧延を施した。圧延の開始前に1140℃まで60分間余熱された炉の中にプレートを置いた。次いでプレートを10%〜25%の圧下率の複数回パスで熱間圧延し、薄スラブプロセスの段階2における複数スタンドの熱間圧延(図2)又は厚スラブ鋳造における熱間圧延プロセス(図1)を模倣した。熱間圧延の総圧下率は88%であった。熱間圧延後、得られたシートを950℃で6時間熱処理した。

0125

熱処理による微細構造変化を比較するために、熱間圧延後の試料及びさらなる熱処理後の試料をSEMにより調べた。SEM試験片を作るために、シート試料の断面を切断し、SiC紙により研磨し、次いで1μmグリットまでのダイヤモンドメディアペーストで徐々に磨いた。仕上げ磨きは0.02μmグリットのSiO2溶液で行った。Carl ZeissSMT Inc.社製のEVO−MA10走査電子顕微鏡を使用して、熱間圧延及び熱処理後の合金2のシート試料の微細構造を走査電子顕微鏡法(SEM)により調べた。

0126

図29は88%の圧下率での熱間圧延後のシートの微細構造を示す。熱間圧延が構造の均質化をもたらし、動的ナノ相微細化(メカニズム番号0、図8)による均質化モーダル構造(構造番号1a、図8)の形成に至ったことが分かる。しかし、外層領域では、微細ホウ化物相はサイズが比較的均一でありマトリクス中に均質に分布しいているが、一方で中心層領域では、ホウ化物相が熱間圧延により効果的に破壊されているにもかかわらず、ホウ化物相の分布は外層ほど均質ではない。ホウ化物分布は均質ではないことが分かる。950℃で6時間のさらなる熱処理後、図30に示すように、ホウ化物相は外層及び中心層領域の両方で均質に分布している。加えて、ホウ化物はよりサイズが均一になる。図29図30との比較もまた、ホウ化物相のアスペクト比が熱処理後により小さく、そのモルフォロジーが球状形状に近く、熱処理後にホウ化物サイズがシート体積の全体にわたってより均一であることを示唆している。さらなる熱処理後の微細構造は、ナノモーダル構造(構造番号2、図8)の典型である。ナノモーダル構造の形成により、熱処理済みシート試料は引張試験の間に高強度ナノモーダル構造へ変態し、熱処理前の1193MPaの極限引張強度(UTS)、及び17.9%の伸びと比較して、1222MPaのUTS及び26.2%の引張り伸びが得られ、構造の最適化に対する熱処理の効果を明確に示している。

0127

この事例は、均質化モーダル構造(構造番号1a、図8)を有するシート材料において生じる、熱間圧延後、熱処理中の静的ナノ相微細化(メカニズム番号1、図8)による本明細書における合金のナノモーダル構造形成(構造番号2、図8)の重要性を実証しており、その後に続くシートの変形中の動的ナノ相強化(メカニズム番号2)の有効性に必要な構造の最適化につながる。

0128

事例番号9:熱処理後の合金8の特性に対する熱処理の効果
商用純度の原料を使用して、Table4(表3)に示す原子比率に従って合金8について各種質量の装入物を量り分けた。元素構成成分を秤量し、InduthermVTC 800 V傾斜真空鋳造機を使用して装入物を50mm厚さで鋳造した。RF誘導を使用して原料を溶融させ、水冷された銅ダイの中へ注ぎ入れた。Fenn Model 061圧延機及びLucifer 7−R24雰囲気制御ボックス炉を使用して、鋳造プレートに熱間圧延を施した。各合金の固相線温度を50℃下回る温度での40分のソークに続いて、数回の圧延パスによって、厚さがおよそ96%減少するまで試料を熱間圧延して、薄スラブ製造の段階2を模倣した。圧延パス間で、スラブ内の熱間圧延温度を維持するためにおよそ3分の滞留を用いた。熱間圧延済みシートを、不活性雰囲気中でTable20(表19)の熱処理スケジュールに従って熱処理した。

0129

0130

合金8の圧延及び熱処理済みのシートから、BrotherHS−3100ワイヤ放電加工機(EDM)を使用して引張り試験片を切断した。Instron’s Bluehill制御及び分析ソフトウェアを利用して、引張り特性をInstron機械的試験フレーム(Model 3369)において試験した。すべての試験は室温で変位制御において行われ、下部の治具は固く保持され、上部の治具が動き、ロードセルは上部の治具に取り付けられた。ビデオ伸び計を歪み測定に使用した。各種条件で熱処理した後の合金8の引張りデータを図31aにプロットする。合金8の引張り特性は、さらなる熱間圧延及び熱処理により改善することが示されている。熱間圧延による96%の厚さ減少の後、引張り伸びは>10%であり引張強度はおよそ1300MPaである。HT3条件[Table19(表18)]で熱処理された合金8は、およそ1300MPaの引張強度と共に>15%の引張り伸びを有する。図31bは、熱間圧延圧下率の増加とその後の熱処理により合金挙動の改善を示す、代表的な応力歪み曲線を示す。

0131

この事例は、ナノモーダル構造(構造番号2、図8)へのより完全な変態が起こる場合、さらなる熱間圧延サイクル及びより長時間[HT1、Table19(表18)]又はより高温[HT3、Table19(表18)]での熱処理の後で、合金8シートのより良好な特性が得られることを実証している。

0132

事例番号10: 50mm厚さで鋳造された合金16の特性に対する熱処理の効果
商用純度の原料を使用して、Table4(表3)に示す原子比率に従って合金16について各種質量の装入物を量り分けた。元素構成成分を秤量し、InduthermVTC 800 V傾斜真空鋳造機を使用して装入物を50mm厚さで鋳造した。RF誘導を使用して原料を溶融させ、水冷された銅ダイの中へ注ぎ入れた。スラブ鋳造は薄スラブ製造の段階1に相当する。Fenn Model 061圧延機及びLucifer 7−R24雰囲気制御ボックス炉を使用して、鋳造プレートに熱間圧延を施した。合金16の固相線温度を50℃下回る温度での40分のソークに続いて、数回の圧延パス(全10回)によって、厚さがおよそ96%減少するまで試料を熱間圧延して、薄スラブ製造の段階2を模倣した。圧延パス間で、スラブ内の熱間圧延温度を維持するためにおよそ3分の滞留を用いた。熱間圧延工程の間、動的ナノ相微細化(メカニズム番号0)が活性化された。熱間圧延済みシートを、不活性雰囲気中でTable21(表20)の熱処理スケジュールに従って熱処理した。

0133

0134

合金16の圧延及び熱処理済みのシートから、BrotherHS−3100ワイヤ放電加工機(EDM)を使用して引張り試験片を切断した。Instron’s Bluehill制御及び分析ソフトウェアを利用して、引張り特性をInstron機械的試験フレーム(Model 3369)において試験した。すべての試験は室温で変位制御において行われ、下部の治具は固く保持され、上部の治具が動き、ロードセルは上部の治具に取り付けられた。ビデオ伸び計を歪み測定に使用した。各種条件で熱処理した後の合金16の引張りデータを図32にプロットする。合金16の引張り特性は、さらなる熱間圧延及び熱処理により改善することが示されている。熱間圧延による96%の厚さ減少の後、引張り伸びは>25%であり引張強度はおよそ1100MPaである。HT6条件[Table20(表19)]で熱処理された合金16は、およそ1050MPaの引張強度と共に>35%の引張り伸びを有する。

0135

この事例は、最高温度[HT6、Table21(表20)]で熱処理した後の合金16熱間圧延済みシートにおいてより良好な特性を得ることができることを実証しており、これはこの合金における、静的ナノ相微細化(メカニズム番号1、図8)によるナノモーダル構造(構造番号2、図8)への完全な変態のための最適な条件に相当すると思われる。

0136

事例番号11: 50mm厚さで鋳造された合金24の特性に対する熱処理の効果
商用純度の原料を使用して、Table4(表3)に示す原子比率に従って合金24について各種質量の装入物を量り分けた。元素構成成分を秤量し、InduthermVTC 800 V傾斜真空鋳造機を使用して装入物を50mm厚さで鋳造した。RF誘導を使用して原料を溶融させ、次いで水冷された銅ダイの中へ注ぎ入れた。スラブ鋳造は薄スラブ製造の段階1に相当する。Fenn Model 061圧延機及びLucifer 7−R24雰囲気制御ボックス炉を使用して、鋳造プレートに熱間圧延を施した。合金の固相線温度を50℃下回る温度での40分のソークに続いて、数回の圧延パスによって、厚さがおよそ96%減少するまで試料を熱間圧延して、薄スラブ製造の段階2を模倣した。圧延パス間で、スラブ内の熱間圧延温度を維持するためにおよそ3分の炉の滞留を用いた。熱間圧延済みシートを、不活性雰囲気中でTable22(表21)の熱処理スケジュールに従って熱処理した。

0137

0138

合金24の圧延済み及び熱処理済みのシートから、BrotherHS−3100ワイヤ放電加工機(EDM)を使用して引張り試験片を切断した。Instron’s Bluehill制御及び分析ソフトウェアを利用して、引張り特性をInstron機械的試験フレーム(Model 3369)において試験した。すべての試験は室温で変位制御において行われ、下部の治具は固く保持され、上部の治具が動き、ロードセルは上部の治具に取り付けられた。ビデオ伸び計を歪み測定に使用した。各種条件で熱処理した後の合金24の引張りデータを図33aにプロットする。合金24の引張り特性は、さらなる熱間圧延及び熱処理により改善することが示されている。熱間圧延による96%の厚さ減少の後、引張り伸びは>20%であり引張強度はおよそ1300MPaである。HT3条件で熱処理された合金24は、およそ1200MPaの引張強度と共に>21%の引張り伸びを有する。図33bは、延性の減少を伴う熱間圧延後の熱処理の温度を増加させることにより合金延性の改善を示す、代表的な応力歪み曲線を示す。

0139

この事例は、すべての3つの条件での熱処理が延性の増加と共に強度の減少をもたらしたことを実証しており、動的ナノ相微細化(メカニズム番号0、図8)及び静的ナノ相微細化(メカニズム番号1、図8)の両方が活性化され得る熱間圧延の間に、この合金においてナノモーダル構造(構造番号2、図8)の形成が起こり得ることを示唆している。さらなる熱処理はある程度の構造の粗大化につながる場合があり、それにより強度が減少する。

0140

事例番号12:合金1シートの微細構造に対する塑性変形の効果
50mm厚さの合金1プレートを、それぞれ85.2%及び73.9%の2ステップの圧下により、1150℃で熱間圧延し、次いで950℃で6時間熱処理した。熱処理後の試料について引張試験を行った。単軸変形の前及び後の試料の微細構造を透過電子顕微鏡法(TEM)により調べた。引張り変形の前及び後の状態をそれぞれ表す、試験片のつかみ部及び引張りゲージから、TEM試験片を切断した。TEM試料調製手順は、切断、薄膜化加工電解研磨を含む。最初に、試料を放電加工機で切断し、次いで毎回グリットサイズを下げたパッド研削することにより薄膜化加工した。9μm、3μm、及び1μmのダイヤモンド懸濁液溶液でそれぞれ研磨することにより、60〜70μm厚さまでさらに薄膜化する。直径が3mmのディスクを箔から打ち抜き、ツインジェット研磨機を使用して電解研磨により仕上げ研磨を終えた。使用された化学溶液メタノール基剤中に混合された30%硝酸であった。薄い領域がTEM観察に不十分である場合、Gatan Precision Ion Polishing System(PIPS)を使用してTEM試験片をイオンミリングした。イオンミリングは通常4.5keVで行われ、傾き角を4°から2°へ下げて薄い領域を広げた。

0141

TEM調査は200kVで操作されるJEOL 2100高分解能顕微鏡を使用して行った。熱間圧延及び熱処理後で変形前の合金1プレートにおける微細構造のTEM像図34に示す。合金1スラブ試料は熱間圧延に起因するテクスチャーのある微細構造を示すことが分かる。微細構造の微細化も試料において見られる。試料は引張り変形前に熱処理されたので、微細構造の微細化は、熱処理の間に静的ナノ相微細化(メカニズム番号、図8)が起こりナノモーダル構造(構造番号2、図8)の形成につながることを示している。熱処理前の熱間圧延は、マトリクス中のホウ化物相の均質な分布をもたらし、このとき均質化モーダル構造(構造番号1a、図8)が形成された。この合金中の均質化モーダル構造はタイプ2(Table3)に相当する。図34に示すように、サイズが200〜500nmのマトリクス結晶粒を熱処理後の試料中に見つけることができる。マトリクス結晶粒内で、積層欠陥も見つけることができ、オーステナイト相の形成を示唆している。

0142

図35は、引張り試験片のゲージ断面から採取した試料の明視野TEM像を示す。見られるように、高強度ナノモーダル構造(構造番号3、図8)の形成を伴う動的ナノ相強化(メカニズム番号2、図8)によって、さらなる構造の微細化が変形の間に生じる。サイズが200〜300nmである結晶粒が一般にマトリクス中で観察され、六方相の非常に微細な析出物を見いだすことができる。加えて、変形前の試料中に示された積層欠陥は引張り変形後に消滅し、引張り変形の間にオーステナイトがフェライトへ変態しマトリクス結晶粒中で転位が生じることを示唆している。

0143

この事例は、最初に50mm厚さで鋳造されその後熱間圧延及び熱処理された合金1における、高強度ナノモーダル構造のの形成(構造番号3、図8)を示している。可能なメカニズムによる構造の発達は図8に示される経路をたどる。

0144

事例番号13:合金8シートの微細構造に対する塑性変形の効果
50mm厚さの合金8プレートの試料を、1150℃で熱間圧延し950℃で6時間熱処理した。熱処理後の試料について引張試験を行った。引張り変形の前及び後の試料の微細構造を透過電子顕微鏡法(TEM)により調べた。引張り変形の前及び後の状態をそれぞれ表す、試験片のつかみ部及び引張りゲージから、TEM試験片を切断した。TEM試料の調製手順は、切断、薄膜化加工、電解研磨を含む。最初に、試料を放電加工機(EDM)で切断し、次いで毎回グリットサイズを下げたパッドで研削することにより薄膜化加工した。9μm、3μm、及び1μmのダイヤモンド懸濁液溶液でそれぞれ研磨することにより、60〜70μm厚さまでさらに薄膜化した。直径が3mmのディスクを箔から打ち抜き、ツインジェット研磨機を使用して電解研磨により仕上げ研磨を終えた。使用された化学溶液はメタノール基剤中に混合された30%硝酸であった。薄い領域がTEM観察に不十分である場合、Gatan Precision Ion Polishing System(PIPS)を使用してTEM試験片をイオンミリングした。イオンミリングは通常4.5keVで行われ、傾き角を4°から2°へ下げて薄い領域を広げた。TEM調査は200kVで操作されるJEOL 2100高分解能顕微鏡を使用して行った。

0145

熱間圧延及び熱処理後で変形前の合金8プレートにおける微細構造のTEM像を図36aに示す。見られるように、変形前の合金8試料は微細化された微細構造を示し、これは数百ナノメートルの結晶粒が試料中で見いだされためであり、均質化モーダル構造(構造番号1a、図8)が形成され、熱処理の間にナノモーダル構造(構造番号2、図8)の形成を伴う静的ナノ相微細化(メカニズム番号1、図8)の活性化が後に続くことを裏付けている。さらに、層状タイプの構造と同様、マトリクス結晶粒において明暗コントラスト変調が示されている。層様の構造的特徴の存在は、この合金における均質化モーダル構造がタイプ3である(Table3)ことを示している。均質化モーダル構造(構造番号1a、図8)が形成される熱間圧延の間、ホウ化物相が効果的に破壊された。

0146

引張り変形後、さらなる微細構造の微細化が試料において見られ、ナノサイズ析出物の形成が合金8において見いだされた。図36bに示すように、初期のナノサイズ析出物を示すわずかに暗いコントラストは、変形前のマトリクス中ではほとんど見ることができない。変形後、ナノサイズ析出物は図36bに示すようにより強いコントラストを作り出すように見える。ナノサイズ析出物の変化は高倍率の像によってさらに明らかになる。図37は、より高倍率での変形前及び後のマトリクス構造を示す。変形前のナノサイズ析出物によって示される弱いコントラストとは対照的に、図37で見ることができるように、析出物は変形後により多く生成されている。析出物領域の詳細な図は、それらがいくつかのより小さい析出物で構成されていることを示唆している(図37b)。高分解能TEMによる研究は、ナノサイズ析出物の構造をさらに明らかにしている。図38に示すように、ナノサイズ析出物の格子はマトリクスとは区別されるが、それらの形状は明確に規定されず、それらは辛うじて形成されおそらくマトリクスと干渉していた可能性があることを示唆している。変形後、析出物は一般に5nm以下のサイズでよく識別できる。

0147

この事例は、最初に50mm厚さで鋳造されその後熱間圧延及び熱処理された合金8における高強度ナノモーダル構造の形成(構造番号3、図8)を示す。メカニズムによる構造の発達は図8に示される経路をたどる。

0148

事例番号14:合金16シートの微細構造に対する塑性変形の効果
50mm厚さの合金16プレートの試料を、1150℃で熱間圧延し1150℃で2時間熱処理した。熱処理後の試料について引張試験を行った。引張り変形の前及び後の試料の微細構造を透過電子顕微鏡法(TEM)により調べた。引張り変形の前及び後の状態をそれぞれ表す、試験片のつかみ部及び引張りゲージから、TEM試験片を切断した。TEM試料の調製手順は、切断、薄膜化加工、電解研磨を含む。最初に、試料を放電加工機で切断し、次いで毎回グリットサイズを下げたパッドで研削することにより薄膜化加工した。9μm、3μm、及び1μmのダイヤモンド懸濁液溶液でそれぞれ研磨することにより、60〜70μm厚さまでさらに薄膜化する。直径が3mmのディスクを箔から打ち抜き、ツインジェット研磨機を使用して電解研磨により仕上げ研磨を終えた。使用された化学溶液はメタノール基剤中に混合された30%硝酸であった。薄い領域がTEM観察に不十分である場合、Gatan Precision Ion Polishing System(PIPS)を使用してTEM試験片をイオンミリングした。イオンミリングは通常4.5keVで行われ、傾き角を4°から2°へ下げて薄い領域を広げた。TEM調査は200kVで操作されるJEOL 2100高分解能顕微鏡を使用して行った。

0149

変形前の合金16スラブ試料のTEM像を図39aに示す。合金16スラブ試料は熱間圧延に起因するテクスチャーのある微細構造を示すことが分かる。圧延のテクスチャーは図39bに示される暗視野TEM像によりさらに明らかにされる。しかし、微細構造の微細化が試料において見られる。明視野及び暗視野像の両方により示されるように、数百ナノメートルの微細化結晶粒を試料において見ることができ、静的ナノ相微細化(メカニズム番号1、図8)が熱処理の間に起こりナノモーダル構造(構造番号2、図8)の形成につながることを示している。図39bに示すように、サイズが200〜500nmのマトリクス結晶粒を熱処理後の試料中に見つけることができる。大きいホウ化物相の破壊及び最分布に起因して、熱間圧延中に小さいホウ化物相がマトリクス中に形成される。熱間圧延後、均質化モーダル構造(構造番号1a)が形成された際にホウ化物相がマトリクス中に均質に分布した。この合金中の均質化モーダル構造は合金1に類似し、タイプ2(Table3)に相当する。

0150

引張り変形後、試料中で相当な微細構造の微細化が観察される。図40は、引張り試料のゲージ部から作られる試料の明視野及び暗視野TEM像を示す。変形前の微細構造とは対照的に、図40で見られるように、サイズが200〜300nmである結晶粒が一般に観察され、新しい六方相の非常に微細な析出物を見いだすことができ、高強度ナノモーダル構造(構造番号3)の形成を伴う動的ナノ相強化(メカニズム番号2)が変形の間に起きたことを裏付けている。加えて、引張り変形の間にマトリクス結晶粒中で転位が生じる。

0151

この事例は、最初に50mm厚さで鋳造されその後熱間圧延及び熱処理された合金16における高強度ナノモーダル構造の形成(構造番号3、図8)を示す。メカニズムによる構造の生成は図8に示される経路をたどる。

0152

事例番号15:合金32及び合金42の特性
薄スラブプロセスの段階1(図2)を模倣するために、InduthermVTC 800 V傾斜真空鋳造機を使用して合金32及び合金42の50mm厚さを有するプレートを鋳造した。Fenn Model 061圧延機及びLucifer 7−R24雰囲気制御ボックス炉を使用して、各合金のプレートに熱間圧延を施す。圧延の開始前に1140℃まで60分予熱された炉内にプレートを置いた。次いでプレートを1回のパスあたり10%〜25%の圧下率で2mm厚さまで繰り返し圧延し、薄スラブプロセス中の段階2(図2)における複数スタンド熱間圧延を模倣した。圧延ステップ間でプレートを1〜2分間炉内に置いて、それらの温度が戻るようにした。プレートが長くなりすぎてそれらを冷却させる炉内に収まらない場合は、より短い長さに切断し、次いで目標ゲージ厚さに向けて再度圧延する前に炉内で60分再加熱した。熱間圧延における総圧下率は96%であった。両方の合金の熱間圧延済みシートを850℃で6時間熱処理し、炉で500℃までゆっくり(0.75℃/分)冷却しその後空冷した。

0153

合金32及び合金42の圧延及び熱処理済みのシートから、BrotherHS−3100ワイヤ放電加工(EDM)を使用して引張り試験片を切断した。Instron’s Bluehill制御及び分析ソフトウェアを利用して、引張り特性をInstron機械的試験フレーム(Model 3369)において試験した。すべての試験は室温で変位制御において行われ、下部の治具は固く保持され、上部の治具が動き、ロードセルは上部の治具に取り付けられた。ビデオ伸び計を歪み測定に使用した。

0154

両方の合金の引張り特性を図41にプロットする。熱間圧延済みのデータは、凝固、熱間圧延、及びコイリングを含む薄スラブ製造の場合の、生産されたままの状態に相当するシートの特性を表す(図41の白抜き記号)。両方の合金は、熱間圧延済みの状態で同様の特性を示し、45〜48%の範囲の高い延性を有する。合金42シートの熱処理は特性をわずかに変化させたが、一方合金32は熱処理済み状態(図41の黒塗り記号)で延性の顕著な増加(最大で66.56%)を示し、これは欠陥の除去及びさらなるマトリクス結晶粒粗大化に起因し得る。

0155

この事例は、50mm厚さで鋳造され熱間圧延された合金32及び合金42プレートの特性を実証した。これらの合金の高い延性は、タイプ1(Table3)の均質化モーダル構造が熱間圧延の間に形成されたことを示唆している。

0156

事例番号16:熱間圧延の間の合金24の構造進化
最初に50mm厚さで鋳造された合金24プレートの構造進化を、TEMにより調べた。InduthermVTC 800 V傾斜真空鋳造機を使用して鋳造を行い、次いでスラブを2mm厚さのシートまで1100℃で熱間圧延した。構造進化を調べるために、鋳放し及び熱間圧延済みの条件における合金24の試料をTEMにより調べた。

0157

TEM試料の調製手順は、切断、薄膜化加工、電解研磨を含む。最初に、試料を放電加工機で切断し、次いで毎回グリットサイズを下げたパッドで研削することにより薄膜化加工した。9μm、3μm、及び1μmのダイヤモンド懸濁液溶液でそれぞれ研磨することにより、60〜70μm厚さまでさらに薄膜化した。直径が3mmのディスクを箔から打ち抜き、ツインジェット研磨機を使用して電解研磨により仕上げ研磨を終えた。使用された化学溶液はメタノール基剤中に混合された30%硝酸であった。薄い領域がTEM観察に不十分である場合、Gatan Precision Ion Polishing System(PIPS)を使用してTEM試験片をイオンミリングした。イオンミリングは4.5keVで行われ、傾き角を4°から2°へ下げて薄い領域を広げた。TEM調査は200kVで操作されるJEOL 2100高分解能顕微鏡を使用して行った。

0158

鋳放しプレートの微細構造が図42に示され、これはモーダル構造である(構造番号1、図8)。図42aで見られるように、ホウ化物相は長細く、マトリクスの粒界に沿って並んでいる。ホウ化物相のサイズは1μmから10μmまでの範囲であってもよいが、その間にあるマトリクスのサイズは典型的には5〜10μmである。一般に、ホウ化物相はマトリクスの粒界に存在することがわかり、これはモーダル構造の基本的特性に一致する。マトリクス結晶粒が微細化を経た図42bに示されるように、一部の領域におけるナノモーダル構造(構造番号2、図8)への部分的変態がこの合金においても観察できる。部分的変態は、合金が高温で長時間につながる大きい厚さで鋳造されて一部の領域の限定された静的ナノ相微細化(メカニズム番号1、図8)を可能にする場合の、ゆっくりした冷却速度に関連する可能性がある。

0159

熱間圧延後、ホウ化物相は小さい粒子に破壊され、マトリクス中にうまく分散され、均質化モーダル構造形成(構造番号1a、図8)につながる動的ナノ相微細化(メカニズム番号0、図8)による構造の均質化を示している。図43に示すように、ホウ化物相のサイズおよそ1μm〜5μmであってもよいが、細い形状は大きく減少してより小さいアスペクト比となる。マトリクス結晶粒は、鋳放し状態と比較して大幅に微細化され、マトリクスの結晶粒サイズは200〜500nmまで小さくなる。マトリクス結晶粒は細長くなり、圧延後に圧延方向に沿って並ぶ。

0160

この事例は、50mm厚さで鋳造され熱間圧延を経た合金24プレートにおける構造発達を実証した。微細構造の進化は図8に示される所望の構造の形成に向かう経路をたどり、対応するメカニズムの活性化を伴う。

0161

事例番号17:選択された合金の弾性
Table22(表21)に記載される選択された合金について、弾性率を測定した。使用された各合金を鋳造して厚さ50mmの厚さを有するプレートとした。高温不活性ガス炉を使用して、熱間圧延前に合金の固相線温度に応じて材料を所望の温度にした。最初の熱間圧延は材料厚さをおよそ85%減少させた。研磨剤メディアを使用して熱間圧延された材料から酸化物層を除去した。得られるスラブから中央部を切り出し、さらにおよそ75%熱間圧延した。最終的な酸化物層を除去した後、ワイヤ放電加工機(EDM)を使用して、得られる材料の中央からASTME8サブサイズ引張り試料を切断した。Instron Bluehill制御及び分析ソフトウェアを使用して、引張試験をInstron Model 3369機械的試験フレームにおいて行った。室温で変位制御下において毎秒1x10−3の歪み速度で試料を試験した。試料を固定された下部の治具に取り付け、上部の治具を移動クロスヘッドに取り付けた。50kNのロードセルを上部の治具に取り付けて負荷を測定した。材料の引張試験であらかじめ観測された降伏点を下回る負荷まで引張り載荷を行い、この荷重曲線を使用して弾性率値を得た。測定に対するグリップ定着の影響を最小にするために、予測される降伏荷重を下回る引張り荷重下で試料にプレサイクルを行った。Table23(表22)の弾性率データは5回の別々の測定の平均値として報告される。弾性率値は市販の鋼において典型的な190〜210GPaの範囲で変動し、合金化学組成及び熱機械的処理によって決まる。

0162

0163

この事例は、本明細書における合金の弾性率値が190〜210GPaの範囲で変動することを実証し、これは市販の鋼に典型的であり合金化学組成及び熱機械的処理によって決まる。

0164

事例番号18: 50mm厚さを有する鋳造プレートの分離比分析
商用純度の原料を使用して、Table4(表3)に示す原子比率に従って選択された合金について各種質量の装入物を量り分けた。元素構成成分を化学天秤で量り分け、InduthermVTC 800 V傾斜真空鋳造機を使用して装入物を50mm厚さで鋳造した。RF誘導を使用して原料を溶融させ、水冷された銅ダイの中へ注ぎ入れ、鋳造プレートを得た。プレート鋳造は薄スラブ製造の段階1に相当する(図2)。

0165

鋳造プレートの中央には、液体金属の最後の量の凝固によって作り出された収縮ろうと状部があった。プレートの中央を通る断面の略図が図44に示され、これは図の上部にある収縮ろうと状部を示している。

0166

ワイヤ放電加工機(EDM)を使用して、1枚は鋳造プレートの上部から、他方は下部から、約4mm厚さである2枚の薄片を切断した。下部の薄片の中央(図44で「B」と示される)から及び収縮ろうと状部(図44で「A」と示される)の内側縁部からの小さい試料を、各々の選択された合金についての化学分析に使用した。個々の元素の濃度を正確に測定することが可能である誘導結合プラズマ(ICP)法によって化学分析を行った。

0167

化学分析の結果を図45に示す。特定される4種の合金における鋳造プレートの上部(A)及び下部(B)の試験される場所について、各々の個々の元素の含量(wt%)を示す。上部(A)と下部(B)との差は0.00wt%〜0.19wt%の範囲であり、マクロ偏析証拠はない。

0168

この事例は、50mmの鋳造プレート厚さにもかかわらず、本明細書における合金からの鋳造プレートにおいてマクロ偏析が検出されなかったことを実証している。

0169

事例番号19:既存の鋼グレードとの引張り特性の比較
Table4(表3)から選択された合金の引張り特性を、既存の鋼グレードの引張り特性と比較した。選択された合金及び対応するパラメーターをTable24(表23)に記載する。引張り応力−歪み曲線を、既存の二相(DP)鋼(図46);複相(CP)鋼(図47);変態誘起塑性(TRIP)鋼(図48);及びマルテンサイト(MS)鋼(図49)のものと比較する。二相鋼は、島状の硬質マルテンサイトの第2の相を含有する、フェライトマトリクスを含有する鋼タイプと理解することができ、複相鋼は、少量のマルテンサイト、残留オーステナイト、及びパーライトを含有する、フェライト及びベイナイトから成るマトリクスを含有する鋼タイプと理解することができ、変態誘起塑性鋼は、フェライトマトリクス中に埋め込まれたオーステナイトから成り、硬質ベンイト及びマルテンサイトの第2の相をさらに含有する鋼タイプと理解することができ、マルテンサイト鋼は、少量のフェライト及び/又はベイナイトを含有する場合があるマルテンサイトマトリクスから成る鋼タイプと理解することができる。

0170

0171

この事例は、ここで開示される合金が、既存のアドバンスド高強度(AHSS)鋼グレードと比較して、比較的優れた機械的特性を有することを実証している。選択された合金により実証される20%以上の延性は、シート材料の冷間成形性をもたらし、例えば比較的複雑な部品の冷間スタンピングなどの多くのプロセスに適用可能なものにする。

0172

事例番号20:薄スラブ鋳造に対応する鋳造厚さにおける選択された合金の引張り特性
薄スラブプロセスの段階1(図2)を模倣するために、InduthermVTC 800 V傾斜真空鋳造機を使用して、合金1、合金8、合金16、合金24、合金26、合金32、及び合金42から50mm厚さでプレート鋳造を行った。商用純度の原料を使用して、Table4(表3)に示す原子比率に従って各種質量の装入物を量り分けた。次いで装入物を鋳造機のるつぼ中に置いた。RF誘導を使用して原料を溶融させ、次いでを50mm厚さ有する鋳造プレートのために設計された銅ダイの中へ注ぎ入れた。Fenn Model 061圧延機及びLucifer 7−R24雰囲気制御ボックス炉を使用して、各合金のプレートに熱間圧延を施した。圧延の開始前に1140℃まで60分予熱された炉内にプレートを置いた。次いでプレートを1回のパスあたり10%〜25%の圧下率で3.5mm厚さまで繰り返し圧延し、薄スラブプロセスの段階2における複数スタンドの熱間圧延(図2)又は厚スラブ鋳造における熱間圧延プロセス(図1)を模倣した。圧延工程間でプレートを1〜2分間炉内に置いて、それらの温度が戻るようにした。プレートが長くなりすぎてそれらを冷却させる炉内に収まらない場合は、より短い長さに切断し、次いで目標ゲージ厚さに向けて再度圧延する前に炉内で60分再加熱した。すべての合金について96%の総圧下率が得られた。

0173

各合金の圧延済みシートを、Table7(表6)で指定される各種条件で熱処理した。BrotherHS−3100ワイヤ放電加工(EDM)を使用して引張り試験片を切断した。Instron’s Bluehill制御及び分析ソフトウェアを利用して、引張り特性をInstron機械的試験フレーム(Model 3369)において試験した。すべての試験は室温で変位制御において行われ、下部の治具は固く保持され、上部の治具が動き、ロードセルは上部の治具に取り付けられた。非接触ビデオ伸び計を歪み測定に使用した。

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

該当するデータがありません

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

技術視点だけで見ていませんか?

この技術の活用可能性がある分野

分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

  • 日本製鉄株式会社の「 縦シーム溶接鋼管」が 公開されました。( 2021/08/19)

    【課題】鋼板を溶接入熱15〜110kJ/cmで溶接して鋼管とした場合であっても、低温での溶接金属部の靭性に優れた鋼管を得る。【解決手段】長手方向に内面及び外面が溶接された溶接部を有する縦シーム溶接鋼管... 詳細

  • 日本製鉄株式会社の「 機械部品、及び、機械部品の製造方法」が 公開されました。( 2021/08/19)

    【課題】疲労強度及び被削性に優れた機械部品を提供する。【解決手段】本開示の機械部品は、化学組成が、質量%で、C:0.30〜0.40%、Si:0.30〜1.00%、Mn:1.00〜2.00%、P:0.0... 詳細

  • 鈴木住電ステンレス株式会社の「 鋼線、その製造方法、及びばねまたは医療用線製品の製造方法」が 公開されました。( 2021/08/12)

    【課題・解決手段】本発明は、従来のステンレス鋼線の性能を著しく改善するばねまたは医療用線製品を製造するのに適した鋼線に関する。前記鋼線は(wt.%で):C:0.02〜0.15、Si:0.1〜0.9、M... 詳細

この 技術と関連性が強い技術

関連性が強い 技術一覧

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

該当するデータがありません

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ