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技術 高硬度熱間圧延鋼材製品及びその製造方法

出願人 ラウタルーキ・ユルキネン・オサケユキテュア
発明者 パシ・スイッカネンミッコ・ヘンミアヴィサ・ラングオッリ・オヤイルッカ・ミエットゥネン
出願日 2014年8月28日 (6年3ヶ月経過) 出願番号 2016-537297
公開日 2016年11月4日 (4年1ヶ月経過) 公開番号 2016-534230
状態 特許登録済
技術分野 薄鋼板の熱処理 鋼の加工熱処理
主要キーワード 鋼材ブロック 重量節減 鋼板群 超高硬度 高硬度金属 自己焼き 靱性特性 地上走行車
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2016年11月4日)のものです。
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課題・解決手段

熱間圧延鋼帯製品または熱間圧延鋼板製品のような熱間圧延鋼材製品を製造する方法が開示され、鋼材製品微小構造組織は、450HBW以上のブリネル硬度を有するマルテンサイト組織である。前記方法は所定の順序で以下の工程:重量パーセント表示で、C:0.25〜0.45%、Si:0.01〜1.5%、Mn:0.4〜3.0%、Ni:0.5〜4.0%、Al:0.01〜1.2%、Cr:2.0%未満、Mo:1.0%未満、Cu:1.5%未満、V:0.5%未満、Nb:0.2%未満、Ti:0.2%未満、B:0.01%未満、Ca:0.01%未満、平衡鉄、残留含有物、及び不可避不純物を含む鋼スラブ送り出す工程;前記鋼スラブを950〜1350℃の範囲の温度Theatに加熱する加熱工程;温度均一化工程;Ar3変態点〜1300℃の温度範囲熱間圧延して熱間圧延鋼材を形成する熱間圧延工程;及び前記熱間圧延鋼材を熱間圧延加熱温度からMs変態点未満の温度に直接焼き入れする工程を含む。製造鋼材製品の圧延オーステナイト粒組織は、圧延方向に延伸粒化して、アスペクト比が1.2以上になる。

概要

背景

概要

熱間圧延鋼帯製品または熱間圧延鋼板製品のような熱間圧延鋼材製品を製造する方法が開示され、鋼材製品微小構造組織は、450HBW以上のブリネル硬度を有するマルテンサイト組織である。前記方法は所定の順序で以下の工程:重量パーセント表示で、C:0.25〜0.45%、Si:0.01〜1.5%、Mn:0.4〜3.0%、Ni:0.5〜4.0%、Al:0.01〜1.2%、Cr:2.0%未満、Mo:1.0%未満、Cu:1.5%未満、V:0.5%未満、Nb:0.2%未満、Ti:0.2%未満、B:0.01%未満、Ca:0.01%未満、平衡鉄、残留含有物、及び不可避不純物を含む鋼スラブ送り出す工程;前記鋼スラブを950〜1350℃の範囲の温度Theatに加熱する加熱工程;温度均一化工程;Ar3変態点〜1300℃の温度範囲熱間圧延して熱間圧延鋼材を形成する熱間圧延工程;及び前記熱間圧延鋼材を熱間圧延加熱温度からMs変態点未満の温度に直接焼き入れする工程を含む。製造鋼材製品の圧延オーステナイト粒組織は、圧延方向に延伸粒化して、アスペクト比が1.2以上になる。

目的

本発明の目的は、焼き入れ時割れの危険を低減して、熱間圧延鋼帯製品または熱間圧延鋼板製品のような高硬度熱間圧延鋼材製品を提供し、更に高硬度熱間圧延鋼材製品を製造する方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

熱間圧延鋼帯製品または熱間圧延鋼板製品のような熱間圧延鋼材製品であって、前記鋼材製品微小構造組織は、450HBW以上のブリネル硬度を有し、かつ重量パーセント表示の以下の化学組成:C:0.25〜0.45%、Si:0.01〜1.5%、Mn:0.35%超かつ3.0%以下、Ni:0.5〜4.0%、Al:0.01〜1.2%、Cr:2.0%未満、Mo:1.0%未満、Cu:1.5%未満、V:0.5%未満、Nb:0.2%未満、Ti:0.2%未満、B:0.01%未満、Ca:0.01%未満、平衡鉄、残留含有物、及び不可避不純物からなるマルテンサイト組織であり、前記鋼材製品の前記圧延オーステナイト粒組織は圧延方向に延伸粒化してアスペクト比が1.2以上になる、熱間圧延鋼材製品。

請求項2

前記鋼材製品の前記圧延前オーステナイト粒組織は前記圧延方向に延伸粒化して前記アスペクト比が1.3超になるか、または2.0超になる、請求項1に記載の熱間圧延鋼材製品。

請求項3

C:0.28〜0.4%または0.28〜0.36%である、請求項1又は2に記載の熱間圧延鋼材製品。

請求項4

Ni:1.0〜3.0%または1.5〜2.5%である、いずれかの先行する請求項に記載の熱間圧延鋼材製品。

請求項5

Ti:0.02%未満であるか、またはより好ましくは0.01%未満である、いずれかの先行する請求項に記載の熱間圧延鋼材製品。

請求項6

B:<0.0005%である、いずれかの先行する請求項に記載の熱間圧延鋼材製品。

請求項7

Mo:0.1〜1.0%または0.1〜0.8%である、いずれかの先行する請求項に記載の熱間圧延鋼材製品。

請求項8

前記熱間圧延鋼材製品は、8〜80mmの範囲の厚さThを有する熱間圧延鋼板であるか、または2〜15mmの範囲の厚さThを有する熱間圧延鋼帯である、いずれかの先行する請求項に記載の熱間圧延鋼材製品。

請求項9

前記微小構造組織は、体積パーセント表示の90%以上のマルテンサイト組織を含む、または別の構成として、60〜95%のマルテンサイト組織、10〜30%のベイナイト組織、0〜10%の残留オーステナイト組織、及び0〜5%のフェライト組織を含む、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の熱間圧延鋼材製品。

請求項10

450HBW以上のブリネル硬度を有する熱間圧延鋼帯製品または熱間圧延鋼板製品のような熱間圧延鋼材製品を製造する方法であって、前記方法は所定の順序で以下の工程:a)重量パーセント表示の以下の化学組成:C:0.25〜0.45%、Si:0.01〜1.5%、Mn:0.35%超かつ3.0%以下、Ni:0.5〜4.0%、Al:0.01〜1.2%、Cr:2.0%未満、Mo:1.0%未満、Cu:1.5%未満、V:0.5%未満、Nb:0.2%未満、Ti:0.2%未満、B:0.01%未満、Ca:0.01%未満、平衡鉄、残留含有物、及び不可避の不純物からなる鋼スラブ送り出す工程、b)前記鋼スラブを950〜1350℃の範囲の温度Theatに加熱する加熱工程、c)温度均一化工程、d)Ar3変態点〜1300℃の温度範囲熱間圧延して熱間圧延鋼材を形成する熱間圧延工程、及びe)前記熱間圧延鋼材を熱間圧延加熱温度からMs変態点未満の温度に直接焼き入れする工程、を含む、熱間圧延鋼材製品を製造する方法。

請求項11

前記熱間圧延工程は、再結晶温度範囲で熱間圧延するタイプI熱間圧延段階を含む、請求項10に記載の熱間圧延鋼材製品を製造する方法。

請求項12

前記熱間圧延工程は更に、非再結晶温度範囲で、かつフェライト形成温度Ar3を上回る温度で熱間圧延するタイプII熱間圧延段階を含む、請求項11に記載の熱間圧延鋼材製品を製造する方法。

請求項13

前記直接焼き入れ工程では、前記熱間圧延鋼材をAr1変態点よりも高い温度から、好適にはAr3変態点よりも高い温度から、300℃と100℃との間の温度のようなMs変態点と100℃との間の温度TQFT2に、10〜200℃/秒のような10℃/秒以上の平均冷却速度を使用することにより焼き入れする、請求項10乃至12のいずれか一項に記載の熱間圧延鋼材製品を製造する方法。

請求項14

前記直接焼き入れ工程では、前記熱間圧延鋼材をAr1変態点よりも高い温度から、好適にはAr3変態点よりも高い温度から、100℃未満の温度TQFT1に、10〜200℃/秒のような10℃/秒以上の平均冷却速度を使用することにより焼き入れする、請求項10乃至12のいずれか一項に記載の熱間圧延鋼材製品を製造する方法。

請求項15

C:0.28〜0.4%または0.28〜0.36%である、請求項10乃至14のいずれか一項に記載の熱間圧延鋼材製品を製造する方法。

請求項16

Ni:1.0〜3.0%または1.5〜2.5%である、請求項10乃至15のいずれか一項に記載の熱間圧延鋼材製品を製造する方法。

請求項17

Ti:0.02%未満であるか、またはより好ましくは0.01%未満である、請求項10乃至16のいずれか一項に記載の熱間圧延鋼材製品を製造する方法。

請求項18

B:<0.0005%である、請求項10乃至17のいずれか一項に記載の熱間圧延鋼材製品を製造する方法。

請求項19

Mo:0.1〜1.0%または0.1〜0.8%である、請求項10乃至18のいずれか一項に記載の熱間圧延鋼材製品を製造する方法。

技術分野

0001

硬度は、衝撃に強い耐摩耗性鋼材の性能を大幅に向上させる材料特性である。耐摩耗性鋼材(abrasion resistant steels:耐食性鋼材とも表記される)は、例えば地上走行車両の掘削機またはローダバケットに使用され、この場合、超高硬度は、車両部品耐用期間がより長くなることを意味する。高硬度とは、ブリネル硬度(Brinnel hardness)が450HBW以上、特に500〜650HBWの範囲であることを意味している。

0002

鋼材製品のこのような硬度は通常、マルテンサイト微小構造組織を、オーステナイト化の後に高い炭素含有量(0.30〜0.50重量%)を有する鋼合金を炉で焼き入れ硬化させて形成することにより得られる。このプロセスでは、鋼板を、まず熱間圧延し、熱間圧延加熱温度から室温まで徐冷し、オーステナイト化温度再加熱し、温度を均一化させ、そして最後に、焼き入れ硬化させる(以後、RHQプロセスと表記する)。所望の硬度を実現するために炭素含有量を相対的に高くする必要があるので、結果的に生じるマルテンサイト反応により、非常に大きな内部残留応力鋼材に加わる。これは、炭素含有量が高くなればなるほど、格子歪みが大きくなるからである。これは、この種類の鋼材が非常に脆く、かつ焼き入れ硬化中に割れ焼き入れ時の割れ)が生じることさえあることを意味している。脆性に関連するこれらの不具合を解決するために、ニッケルを通常、このような焼き入れ硬化させた鋼材と合金化させる。また、焼き入れ硬化後の焼き戻し工程が普通、必要であるが、この焼き戻し工程によって、加工処理作業及びコストが増える。このようにして製造される鋼材の例が、特許文献1に開示されている耐摩耗性鋼材、または幾つかの市販の耐摩耗性鋼材である。

0003

特許文献2には、中程度の炭素含有量(0.20〜0.40重量%)を有する熱間圧延耐摩耗性鋼材を上記RHQプロセスにより製造する方法が開示されており、このRHQプロセスでは、スラブ加熱し、熱間圧延し、冷却し、Ac3変態点〜1250℃の範囲の温度まで再加熱し、そして1.5℃/秒以上の冷却速度で冷却することによりマルテンサイト微小構造組織を形成することができる。

0004

しかしながら、広く理解されているように、結果的に得られるマルテンサイトの硬度は、炭素含有量によってのみ決定される。これは、所望の硬度を実現するためには、特定量炭素鋼材中に必要とし、これによって今度は、焼き入れ時の割れ、及び脆性の危険が高くなる。他の不具合は、この場合、炭素当量:CE=C+(Si+Mn)/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15を表わす以下の方程式からも分かるように、炭素が鋼材の溶接性に最も悪い影響を与えることであり、CEがより小さくなるということは、溶接性がより向上するということを意味している。例えば、ローダバケットは、焼き入れ硬化させた複数枚の鋼板を溶接で接続することにより製造され、焼き入れ硬化させた鋼材の溶接性が非常に良くなることが分かる。従って、炭素含有量を、硬度を低下させることなく低減させる必要がある。

0005

また、例えばこれらの地上走行車両のうちの幾つかの走行車両は、低温使用状態走行し、そしてこれらの走行車両の部品群のうちの幾つかの部品衝撃負荷を受ける。このような理由から、これらの部品の靱性、特に低温靱性は、特定の用途において満足できる靱性レベルである必要がある。ニッケル合金化は比較的高く付くにも拘わらず、靱性、特に低温靱性は、特定の用途において、妥当合金製造コストと併せて、更に改善して、更に要求の強い用途における超高硬度熱間圧延鋼材の使用を促進する必要がある。この点に関して、ホウ素合金化は、マルテンサイト鋼材の焼入性を低い合金製造コストで実現するために広く使用されている実践形態である。しかしながら、ホウ素合金化は、低温靱性に有害となるチタンを使用する必要がある。

0006

更に、これらの車両部品は、曲げ加工、またはフランジ加工により形成される形状を含んでいる場合があるので、鋼材の曲げ性は、高硬度を考慮に入れて大幅に向上させることができることが好ましい。

0007

また、当然のことであるが、加工処理コスト及び合金製造コストは、出来る限り低く抑える必要がある。

0008

特許文献3、及び特許文献4には、耐食性を有する熱間圧延鋼板を製造する別の方法が開示されており、この耐食性は、高温で形成される炭化後の粗Ti(チタン)、または炭化後の粗Zr(ジルコニウム)を利用して得られる。しかしながら、炭化Ti(チタン)または炭化Zr(ジルコニウム)は、低温靱性に有害となる。鋼材の硬度を高くし、かつTi(チタン)を炭化して脆化させると、冷却速度を、温度がMs温度を下回る前に遅くして、焼き入れ時の割れの危険を無くす必要がある。

0009

更に、特許文献5には、射出成形によって製作される鋼材ブロックが開示されている。金型をこの鋼材で製作するために、鋼材を公知の方法で製造し、鋳造して熱間圧延し、または鍛造し、そして切断してブロック群を得る。これらのブロックは、任意であるが鍛造により、または圧延加熱により、オーステナイト化させ、次にこれらのブロックを焼き入れする。鋼材ブロックの化学組成は、低温用途ではなく高温用途のために最適化される。熱機械制御加工(TMCP)を直接焼き入れ(DQ)と組み合わせた手法、または投入電力遮断による直接焼き入れ(IDQ)と組み合わせた手法は、900MPaから最大1100MPaまでの範囲の降伏強度を有する低炭素、低合金超高強度構造用鋼材を製造する効果的なプロセスである。本発明は、TMCP−DQ/IDQプロセスの利用技術の適用拡大を図って、高性能を有する鋼帯及び鋼板(450−600HB)のような高硬度熱間圧延鋼材製品を製造する。

先行技術

0010

中国特許出願公開第CN102199737号明細書
日本国公開特許平成9年第118950A号明細書
米国特許第2006/0137780A1号明細書
米国特許第2006/0162826A1号明細書
国際公開第WO 03/083153A1号パンフレット

課題を解決するための手段

0011

本発明の目的は、焼き入れ時の割れの危険を低減して、熱間圧延鋼帯製品または熱間圧延鋼板製品のような高硬度熱間圧延鋼材製品を提供し、更に高硬度熱間圧延鋼材製品を製造する方法を提供することにあり、この高硬度熱間圧延鋼材製品は、同等の炭素含有量、またはより高い炭素含有量を有する通常の耐摩耗性鋼材よりも向上した溶接性を保持する(炭素含有量を減らすことにより)または別の構成として、通常の耐摩耗性鋼材よりも高い硬度を保持する。

0012

別の目的は、超低温靱性特性を、熱間圧延鋼材製品の高硬度を低下させることなく実現することにある。

0013

本目的は、請求項1に記載の製品、及び請求項10に記載の方法により達成される。従属請求項は、本発明の別の変化形態を規定する。

0014

高硬度熱間圧延鋼材製品を製造するために使用される合金鋼は主として、中程度の量の炭素C(0.25〜0.45%)、及び多量のニッケルNi(0.5〜4.0%)により特徴付けられる。これらの2種類の合金化元素は、以下に更に詳細に説明されるように、最も重要な合金化元素であるが、その理由は、第1の理由として、炭素は目標の高硬度を実現するための必須元素となるからであり、第2の理由として、ニッケルは、焼き入れ時の割れの危険を低減することができるからである。別の表現をすると、ニッケルにより、安全を確保することができるのみならず、この種類の高硬度熱間圧延鋼材製品を効率的に製造することができる。他の合金化元素群は、所定範囲の内部に収まる種々実施形態によって異なり得る。

0015

更に、本発明は、オーステナイト粒を、所定の合金鋼を有する熱間圧延鋼材を直接焼き入れする直前に熱間圧延することにより変態させる現象を利用している。オーステナイト粒を熱間圧延した後に、直接焼き入れすることにより、鋼材製品の圧延前オーステナイト粒組織を形成することができ、この圧延前オーステナイト粒組織は、圧延方向に延伸して、アスペクト比が1.2以上になる。これは、例えば中国特許出願公開第CN102199737号明細書及び日本国公開特許平成9年第118950A号明細書に使用されている上記RHQプロセスとは異なっており、このRHQプロセスでは、鋼材をオーステナイト化温度に再加熱することにより、約1.0のアスペクト比を有する等軸圧延前オーステナイト粒組織が得られる。

0016

要約すると、本発明による熱間圧延鋼材製品は、450HBW以上のブリネル硬度を有し、かつ重量パーセント表示の以下の化学組成:
C:0.25〜0.45%、
Si:0.01〜1.5%、
Mn:0.35%超かつ3.0%以下、
Ni:0.5〜4.0%、
Al:0.01〜1.2%、
Cr:2.0%未満、
Mo:1.0%未満、
Cu:1.5%未満、
V:0.5%未満、
Nb:0.2%未満、
Ti:0.2%未満、
B:0.01%未満、
Ca:0.01%未満、
平衡鉄、残留含有物、及びN,P,S,O及び希土類金属REM)のような不可避不純物からなり、
鋼材製品の圧延前オーステナイト粒組織は圧延方向に延伸してアスペクト比が1.2以上になる。

0017

本説明に含まれる幾つかの集中的な実験から、高硬度熱間圧延鋼材製品の硬度がより高くなる傾向があると、圧延前オーステナイト粒組織のアスペクト比がより大きくなることが判明している。従って、アスペクト比は、1.3超であることが好ましく、2.0超であることがより好ましい。1.3超または2.0超のアスペクト比は、以下に説明する2段階熱間圧延工程により実現することができる。

0018

本発明は、炭素含有量を、硬度を低下させることなく低減させることができる可能性を実現する、または別の構成として、より高い硬度を、炭素含有量が同等の状態で達成する、または炭素含有量を更に減らした状態でも達成する可能性を実現する。このようにして炭素を減らすことにより、格子歪みがより小さくなることによる焼き入れ時の割れの危険を低減することができる。また、本発明は、溶接性、及び低温靱性に関連する特性を向上させる、または別の構成として、ごく単純に、硬度をより高くする。更に、本発明は、硬度、低温靱性、及び曲げ性を極めて良好に組み合わせることができる。

0019

次に、化学組成について更に詳細に説明する:

0020

炭素C含有量は、化学組成の必須要素であり、目標とする硬度によって異なるが、0.25〜0.45%の範囲で使用される。炭素含有量が0.25%未満である場合、450HBW超のブリネル硬度を、どのような焼き戻し条件でも達成することは難しい、または500HBW超のブリネル硬度を焼き入れ条件で達成することは難しい。炭素含有量が0.45%超である場合、溶接性が極めて悪くなり、Ms変態点を下回る温度に直接焼き入れすると、焼き入れ時の割れが生じてしまう、かつ/または衝撃靱性が、ニッケル合金化しているのにも拘わらず低下する。炭素含有量は0.28%以上であることが好ましいが、その理由は、このようにすると、550HBWの硬度が、焼き入れ条件で得られるからである。また、炭素含有量は0.40%以下にするか、または0.36%以下にもすることにより、良好な溶接性及び衝撃靱性特性を確保することが好ましい。更に、炭素含有量をより低くすることにより、焼き入れ時の割れの危険を低減することができる。

0021

珪素Si含有量は、0.01%以上とする、好ましくは0.1%以上とするが、その理由は、Siを鋼材に、精錬時に含有させ、Siが強度及び硬度を、焼入性が高まることにより高めることができるからである。また、珪素は残留オーステナイトを安定させることができる。しかしながら、1.5%超の珪素含有量は、CE(炭素当量)を不要に増やして溶接性を低下させる。更に、Si含有量が多くなり過ぎると、表面品質に関連する問題が発生してしまう、またはタイプII熱間圧延の場合に問題が発生してしまう。従って、Siは、1.0%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましい、または0.5%よりも更に少ないことがより好ましい。

0022

マンガンMn含有量は、0.35%超であり、0.4%以上であることが好ましいが、その理由は、Mnが、焼入性を高める合金化元素であるので有利であり、かつMnが、焼入性を実現する他の合金化元素よりも溶接性に及ぼす影響が僅かに小さいからである。Mnが0.35%以下である場合、焼入性は、コストに効果的に見合うことができなくなる。これとは異なり、3.0%超の合金化Mnは、CEを不要に増やして溶接性を低下させる。同じ理由から、好適には、Mnは、2.0%以下であり、1.5%以下であることがより好ましい。Mnの含有量は、焼入性を実現する他の元素の含有量によって異なるので、相対的に更に高い含有量が許容できる。

0023

ニッケルNiは、本発明による鋼材にとって重要な合金化元素であり、主として焼き入れ時の割れを回避するために、更には低温靱性を高めるために0.5%以上で使用される。しかしながら、4%を上回るニッケル含有量は、合金製造コストを、大きな技術的改善を伴うことなく著しく増加させることになる。従って、ニッケル含有量は4%未満であり、好ましくは3.0%未満であり、より好ましくは2.5%未満である。好適には、ニッケルを1.0%以上で使用し、より好ましくは1.5%以上で使用して、低温靱性を高め、更には、焼き入れ時の割れの危険を回避する。

0024

アルミニウムAlは、少なくとも脱酸素(殺菌)剤として使用され、Alの含有量は、0.01〜1.2%の範囲である。更に、Alは、強度/硬度を幾つかの場合に高めることができるのみならず、焼き入れ前に、または焼き入れ中にフェライトを必要に応じて形成して微小構造組織とすることができる。また、Alは残留オーステナイトを安定させることができる。タイプII熱間圧延の場合、Alを1.0%未満に設定するように想到する必要がある。最も好ましくは、アルミニウムは0.01〜0.1%の範囲で使用される。

0025

クロムCr含有量は、2.0%未満であるが、その理由は、焼入性を実現する他の元素、例えばMnまたはSiの一部または全部をクロムで置き換えて、焼入性を実現できるからである。しかしながら、好適には、クロムは、0.1〜1.5%の範囲で、より好ましくは0.2〜1%の範囲で使用される(Mn及びSiを過剰に使用するのを回避するために)。Crの含有量が多くなり過ぎると、CEが不要に増えて、溶接性が低下する。

0026

モリブデンMo含有量は、1.0%未満であるが、その理由は、焼入性が、他の合金化元素群を用いる場合よりもコストに、より効果的に見合って得られるからである。しかしながら、好適には、Moは0.1%以上であるが、その理由は、Moは、必要に応じて、低温靱性及び焼戻し抵抗を高めることができるからである。モリブデンは靱性を高めることができるので、モリブデンは、この種類の鋼材に、非常に高い割合で合金化されることになる。更に、焼き戻し抵抗は、Mo合金化により必要に応じて高めることができる。最も好ましいMo含有量範囲は0.1〜0.8%である。

0027

チタンTi含有量は、最大0.2%または0.1%であるが、その理由は、Tiが、熱間圧延中の粒微化に影響を与えることができるからである。しかしながら、優れた衝撃靱性特性が更に要求される場合、チタンが0.02%未満となるか、または更に好適には、0.01%未満となるようにチタン含有量を抑制することが好ましい。これにより、これらの実施例に示すように、衝撃靱性特性を悪化させてしまう粗TiN粒子が、微小構造組織内に形成されるのを防止する。

0028

ホウ素B含有量は0.01%未満である。これは、Bを使用して、例えば0.0005〜0.005%の範囲の焼入性を高めることができることを意味している。しかしながら、焼入性が他の元素群を用いても元々良好であるので、ホウ素を合金化させる必要はない、すなわちB<0.0005%が好ましい。別の表現をすると、鋼材は基本的に、ホウ素を全く含まなくてもよい。これにより確実に、Ti含有量を好ましくは、0.02%未満に低減することができ、これは低温靱性には非常に有利である。効果的にホウ素を合金化させるためには、チタン含有量を3.4N(粒子濃度)以上にして、ホウ素が窒化ホウ素にならないようにホウ素を保護する必要がある。

0029

また、1.5%未満の銅Cu含有量、0.5%未満のバナジウムV含有量、及び0.2%未満のニオビウムNb含有量を含有させることができるが、これらの合金化元素は、必ずしも必要である訳ではない。従って、好適には、これらの元素の含有量の上限値は、以下の通り、Cu<0.5%、V<0.1%、及びNb<0.01%となる。

0030

カルシウムCa含有量は、精錬時の適用可能なCa処理またはCaSi処理に基づいて0.01%未満となる。好適には、カルシウム含有量は0.0001〜0.005%である。

0031

残留含有物は、不可避的に鋼材に混入する含有物を含んでいる、すなわち合金化元素には、意図しないのに残留含有物が混入してしまう。残留含有物の例が、表1の組成物A及びBに含まれる0.01%含有量の銅である。

0032

不可避の不純物として、リンP、硫黄S、窒素N、水素H、酸素O、及び希土類金属(REM)などを挙げることができる。これらの不純物の含有量は以下の通りに制限されて、優れた衝撃靱性特性が確実に得られるようにする:
リンP<0.015%
硫黄S<0.002%
窒素N<0.006%
水素H<0.0002%
酸素O<0.005%
REM<0.1%

0033

残留含有物と不可避の不純物との違いは、残留含有物が、不純物とは見なされない制御された量の合金化元素であることである。工業プロセスで正常に制御される残留含有物は、合金に大きな影響を与えることがない。

0034

熱間圧延鋼材製品の微小構造組織はマルテンサイト組織である。これは、微小構造組織が、体積パーセント表示の90%以上のマルテンサイトを含んでいる可能性がある、または別の構成として、60〜95%のマルテンサイト、10〜30%のベイナイト、0〜10%の残留オーステナイト、及び0〜5%のフェライトを含んでいる可能性があることを意味している。別の表現をすると、主相は、表3に示すように、マルテンサイト(M)相である。90%以上の高含有量のマルテンサイトが、このようにすると、より高い硬度が得られるので好ましい。

0035

本発明による製造方法は所定の順序で以下の工程a)〜e):
a)上記化学組成からなる鋼スラブ送り出す工程、
b)前記鋼スラブを950〜1350℃の範囲の温度Theatに加熱する加熱工程、
c)温度均一化工程、
d)Ar3変態点〜1300℃の温度範囲で熱間圧延して熱間圧延鋼材を形成する熱間圧延工程、及び
e)前記熱間圧延鋼材を熱間圧延加熱温度からMs変態点未満の温度に直接焼き入れして、450HBW以上のブリネル硬度を有する熱間圧延鋼材製品を製造する工程、を含む。

0036

この製造方法から、圧延方向に延伸してアスペクト比が1.2以上になるような圧延前オーステナイト粒組織を有する熱間圧延鋼材製品が得られる。別の表現をすると、熱間圧延鋼材製品は、本発明による方法により実現することができる。

0037

鋼スラブは、例えば連続鋳造法により形成することができる。本発明による方法では、このような鋼スラブに加熱工程を施し、この加熱工程では、鋼スラブを950〜1350℃の範囲の温度Theatに加熱し、その後、鋼スラブに温度均一化工程を施す。均一化工程は、例えば30〜150分かけて行なわれる。これらの加熱工程及び均一化工程では、オーステナイトからなる微小構造組織を、一時的に変態を完了させ、これらの合金化元素を溶解させるとともに析出させる。加熱温度が950℃未満である場合、溶解が不十分になり、そしてこれとは異なり、1350℃超の温度を使用すると、費用がかさむ。

0038

均一化した鋼スラブに、熱間圧延工程を、Ar3変態点〜1300℃の温度範囲で施して熱間圧延鋼材を形成する。これにより、熱間圧延鋼材製品は、圧延前オーステナイト粒組織を有することができるようになり、このオーステナイト粒組織が圧延方向に延伸粒化して、アスペクト比が1.2以上になる。温度がAr3変態点を下回る場合、高硬度が必ずしも得られなくなるが、その理由は、このように温度が下回ると、過剰な量のフェライトが微小構造組織内に、直接焼き入れ工程が始まる前に形成されてしまい、熱間圧延が2段階で更に行なわれることにより、微小構造組織が不所望に帯状になるからである。

0039

熱間圧延工程後、熱間圧延鋼材を、熱間圧延加熱温度からMs変態点未満の温度に直接焼き入れする。この直接焼き入れ工程では、略オーステナイト微小構造組織を微細化された圧延前オーステナイト粒組織から形成することができ、これにより硬度を、後で示すように、高めることができる。

0040

直接焼き入れが、従来のRHQプロセスよりも優れている点は、これらの合金化元素が、焼き入れ前に多量に溶解することであるが、その理由は、より高い加熱温度を使用することができるからである。これは、合金化元素のより高い焼入性及び利用率が得られることを意味している。従来のRHQプロセスでは、オーステナイト化温度が普通、950℃を下回ることにより、オーステナイト粒の粗粒化を回避している。本発明では、粗粒化したオーステナイト粒を微粒化し、そして任意であるが、直接焼き入れ前に更に延伸粒化しており、これは、より高いオーステナイト化温度を使用することができることを意味している。

0041

熱間圧延工程は、以下に説明するように、タイプI熱間圧延段階、またはタイプI熱間圧延段階及びタイプII熱間圧延段階を含むことができる。

0042

好適な実施形態によれば、本発明による熱間圧延鋼材製品を製造する方法は、熱間圧延を再結晶温度範囲で行なうタイプI熱間圧延段階を含む。これは、タイプI熱間圧延段階が、オーステナイト再結晶下限温度LTを上回る温度で実施されることを意味している。熱間圧延を再結晶温度範囲で行なう例では、熱間圧延を、950〜1250℃の範囲の温度で行なう。タイプIの熱間圧延では、圧延前オーステナイト粗粒組織を、静的再結晶を利用することにより微粒化する。更に、鋼スラブに連続鋳造中に形成される細孔及びボイド閉塞する。このような効果を実現するためには、熱間圧延タイプIの圧下率が60%以上、好適には70%以上であることが好ましい。例えば、200mm厚さの鋼スラブを、タイプIの熱間圧延中に熱間圧延して、80mm以下の厚さ、好ましくは60mm以下の厚さを有する熱間圧延鋼材とすることができる。

0043

図1に示す更に好適な実施形態によれば、本発明による熱間圧延鋼材製品を製造する方法は、タイプIの熱間圧延の他に、タイプII熱間圧延段階を更に含み、タイプII熱間圧延段階では、熱間圧延を、フェライト形成温度Ar3を上回る非再結晶温度範囲で行なう。これは、タイプII熱間圧延段階がオーステナイト再結晶停止温度RSTを下回り、かつフェライト形成温度Ar3を上回る温度で実施されることを意味している。熱間圧延を非再結晶温度範囲で行なう例では、化学組成によって異なるが、熱間圧延を、Ar3変態点〜950℃の範囲の温度で行なうか、または好ましくはAr3変態点〜900℃の範囲の温度で行なう。タイプIIの熱間圧延では、微粒化されたオーステナイト粒を、オーステナイトの非再結晶域で変形させて、微小延伸(“pancaked(パンケーキ状)”)オーステナイト粒を形成する。これにより、単位体積当たりの圧延前オーステナイト粒の粒界が増加し、かつ変形帯の数が増加する。これにより今度は、微小構造組織を更に微細化することができ、これは、良好な靱性を焼き入れ後に実現するために重要である。これにより更に、熱間圧延鋼材製品が圧延前オーステナイト粒組織を有することができるようになり、このオーステナイト粒組織が圧延方向に延伸粒化してアスペクト比が1.3超になる、またはより好ましくは、2.0超になる。このような効果を実現するためには、熱間圧延タイプIIの圧下率が50%以上、好適には70%以上であることが好ましい。この圧下率の例では、80mm厚さの熱間圧延鋼材を、タイプIIの熱間圧延中に更に熱間圧延して、40mm以下の厚さ、好ましくは24mm以下の厚さを有する熱間圧延鋼材とする。

0044

熱間圧延工程を実施した後、直接焼き入れを開始して、オーステナイト組織を、略マルテンサイトからなるマルテンサイト組織に変態させる。焼き入れ完了温度が高くなってしまった場合(しかしながら、Ms変態点を下回っていた場合)、マルテンサイト微小構造組織は、自己焼き戻しマルテンサイト組織を含むことができる。アルミニウム含有量が高くなってしまった場合、マルテンサイト微小構造組織は、5%未満のフェライトを含むことができる。微小構造組織は、10〜30%のベイナイト相を更に含むことができる。また、10%未満の残留オーステナイトが残ってしまい、これにより、歪みによる塑性変形量が大きくなってしまう。

0045

延伸加工を受けた微小マルテンサイト炭化物は、圧延前オーステナイト粒をマルテンサイト炭化物に変態させることにより形成される。大雑把に言えば、マルテンサイト炭化物をより微細化すると、圧延前オーステナイト粒がより微粒化されると言える。

0046

図2に示す第1の任意の実施形態によれば、直接焼き入れ工程では、熱間圧延鋼材をAr1変態点よりも高い温度から、好適にはAr3変態点よりも高い温度から、300℃と100℃との間の温度のようなMs変態点と100℃との間の温度TQFT2に、10〜200℃/秒のような10℃/秒以上の平均冷却速度を使用することにより焼き入れする。本実施形態により、焼き入れ時の割れを、特に結果的に得られる硬度が500HBWよりも高い場合に一層確実に回避することができる。冷却速度は、10〜200℃/秒のような10℃/秒以上とすることにより、焼き入れ中にオーステナイトが分解するのを回避することができる。最も好ましくは、冷却速度は、参考文献から入手することもできる方程式により定義することができる臨界冷却速度CCR)以上である。焼き入れが、Ar3変態点よりも高い温度から開始されると、それに伴って、マルテンサイト量が最大となり、これは、高硬度を実現するために有利である。焼き入れ完了温度がMs変態点または300℃よりも高い場合、高硬度は、自己焼き戻しマルテンサイト微小構造組織のような不所望な微小構造組織の割合が大きくなるので、必ずしも達成される訳ではない。

0047

図2に更に示す別の任意の実施形態によれば、直接焼き入れ工程では、熱間圧延鋼材をAr1変態点よりも高い温度から、好適にはAr3変態点よりも高い温度から、100℃未満の温度TQFT1に、10〜200℃/秒のような10℃/秒以上の平均冷却速度を使用することにより焼き入れする。最も好ましくは、冷却速度は、参考文献から入手することもできる方程式により定義することができる臨界冷却速度(CCR)以上である。本実施形態により更に、高強度熱間圧延鋼材を、目標とする450〜500HBWの範囲の硬度に製造することができる。冷却速度は、10〜200℃/秒のような10℃/秒以上とすることにより、焼き入れ中にオーステナイトが分解するのを回避することができる。焼き入れが、Ar3変態点よりも高い温度から開始されると、それに伴って、マルテンサイト量が最大となり、これは、高硬度を実現するために有利である。

0048

直接焼き入れが熱間圧延後に行なわれる過程に関係なく、本方法は、直接焼き入れ工程後に、熱間圧延鋼材製品を焼き戻す焼き戻し工程を含むことができる。しかしながら、このような工程は、本発明が、優れた衝撃靱性及び他の機械的特性(高硬度を考慮に入れた)を、焼き戻しを行なわなくても実現することができるので、必ずしも必要ではない。従って、これらの特性は、焼き入れしても元々良好であるので、好適には、本方法では、焼き戻しを行なわない。これは、加工処理を純粋に熱機械的に、熱処理を続いて行なうことなく施すことができることを意味している。

0049

上記方法は、板圧延機にて、またはより好ましくは、ストリップ圧延機にて行なうことができる。同様に、高硬度製品は、それぞれ熱間圧延鋼板または熱間圧延鋼帯とすることができる。

0050

熱間圧延鋼材製品は、2〜80mmの範囲の厚さThを有することができる。詳細には、熱間圧延鋼板が通常、8〜80mmの範囲、好ましくは8〜50mmの範囲の厚さThを有するのに対し、熱間圧延鋼帯は、2〜15mmの範囲の厚さThを有する。

0051

加工処理がストリップ圧延機にて行なわれる場合、本方法は更に、直接焼き入れ工程の後に行なわれる巻き取り工程を含む。

0052

鋼材製品は、ストリップ圧延機が、圧延前オーステナイト粒組織を非常に効果的に微細化して延伸粒化することができることにより、本発明の効果を大きく増すことができるので、鋼帯製品であることが好ましい。更に、高硬度から優れた耐摩耗性及び耐衝撃性が得られるので、ストリップ圧延により実現可能な2〜15mmの範囲(2〜6mmの範囲でもよい)の極めて薄い厚さを使用することもでき、これは、重量節減を意味し、更には、新たな種類の使用形態を、本発明による鋼材製品から生み出すことができることを意味している。更に、本発明により実現可能な良好なフランジ加工性は、新しい使用形態に一層有利となる。更に、厚さがより薄くなることにより、焼き入れ時の割れの危険を低減することができる。

0053

参照記号及び用語についての簡単な説明
RSTオーステナイト再結晶停止温度
RLTオーステナイト再結晶下限温度
TQFT焼き入れ完了温度
Ac1オーステナイトが加熱中に形成され始める温度
Ac3フェライトからオーステナイトへの変態が加熱中に完了する温度
Ar1 オーステナイトからフェライトへの変態が冷却中に完了する温度
Ar3 オーステナイトからフェライトへの変態が冷却中に始まる温度
CCR臨界冷却速度(完全に焼き入れされたマルテンサイト微小構造組織を形成することになる焼き入れ温度から冷却するときの最も遅い冷却速度)
Msマルテンサイト変態が始まってしまう温度

0054

ブリネル硬度(HBW)は本特許開示の状況では、ISO 6506−1に準拠して、鋼帯表面または鋼板表面の下方の0.3〜2mmの表層圧延組織について、高硬度金属(W)により形成され、かつ10mmの直径を有する球体を使用することにより、そして更に、3000kg(HBW10/3000)の質量体を使用することにより定義される。

0055

圧延前オーステナイト粒(PAG)組織の粒サイズ及びアスペクト比は、以下の手順に従って得られる。まず、圧延前オーステナイト粒界エッチングを行なうために、試料を350℃で45分かけて加熱処理する。次に、これらの試料を取り付け、そしてエッチング前研磨する。1.4gのピクリン酸、100mlの蒸留水、1mlの湿潤剤(Agepol)、及び0.75〜1.0mlのHClからなるエッチング液を使用して、圧延前オーステナイト粒界を露出させる。次に、光学顕微鏡を使用して、微小構造組織を分析する。平均圧延前オーステナイト粒サイズを、直線交差線分法(ASTME 112)を使用して計算する。また、PAGのアスペクト比は、直線交差線分法により、鋼板を圧延方向に切断した断面に基づいて導出される。直線交差線分法を用いて求めた粒界を、圧延方向(RD)及び法線方向(NR)に同じ長さを有する直線部分に基づいてカウントする。アスペクト比は、粒のRDの平均長さを、NRの平均高さで除算して得られる、すなわち法線方向の直線交差線分の合計を、圧延方向の直線交差線分の合計で除算して得られる。

0056

残留オーステナイト量は、X線回折法で測定される。

図面の簡単な説明

0057

1つの実施形態による製造方法を模式的に示している。図1寸法通りにはなっていないことに留意されたい。
直接焼き入れ工程の任意の実施形態を模式的に示している。図1は寸法通りにはなっていないことに留意されたい。
以下に更に詳細に説明される幾つかの実施例に基づく本発明の効果を示すグラフである。
以下に更に詳細に説明される幾つかの実施例に基づく本発明の効果を示すグラフである。

実施例

0058

実施例
これらの実施例では、表1に示す化学組成を使用した。組成値は、重量パーセント表示で表わされる。この表から分かるように、これらの化学組成物は全て、Fe、不可避の不純物、及び残留含有物の他にC,Si,Mn,Al,Cr,Ni,Moを含む。この表から更に分かるように、これらの化学組成物の全ては、ホウ素を殆ど含んでいなかった、すなわちこれらの化学組成物は、B:<0.0005%の関係を満たすホウ素しか含んでいなかった。

0059

組成物A,B,N,及びOは、真空脱ガス処理及びCa処理を含む精錬に伴って常に表面に存在するスケールであった。組成物AとBとの主要な違いは、組成物Bが、合金化Tiを更に含んでいることである。組成物N及びOは、組成物A及びBよりも若干多い含有量の炭素を含んでいた。

0060

組成物C,D,E,F,G,H,I,J,K,L,及びMを鋳造して、実験用鋼塊としているので、これらの組成物には、Ca処理を実施しなかった。組成物CとDとの主要な違いは、組成物C中の炭素含有量が、相対的に少ないことである。組成物DとEとの主要な違いは、組成物Eが、合金化Tiを微量にしか含んでいないことである。組成物Fは、合金化Niを高含有量(3.87%)で含む組成物の一例である。組成物G及びHは、合金化Cuを他よりも多量(0.99%及び1.47%)に含んでいる組成物の例である。組成物Iは更に多量の合金化Tiを含有している。組成物Jは、合金化Cu及び合金化Niの異なる組み合わせを更に示している。組成物K及びLは、合金化Siを他よりも多量(0.7%及び1.5%)に含有している。組成物Mは、合金化Alを他よりも多量(1.11%)に含有している。

0061

0062

表2は、実施例1〜37及び基準例REFに使用されるパラメータ群を示している。基準例REFは、実施例2で製造された鋼帯を更に再加熱して焼き入れする(RHQ)ことにより得られ、結果的に得られるブリネル硬度(HBW)を有する高硬度熱間圧延鋼板製品に対して焼き入れ処理を施す直前のオーステナイト微細化及び/又はオーステナイト変態による影響を示している。表2は、各実施例に使用された“Process”欄のプロセス、“Th”欄の最終製品厚さ、“HT”欄の加熱温度、及び“QFT”欄の焼き入れ完了温度を示している。また、熱間圧延条件が“Rolling types(圧延タイプ)”欄に示され、この場合、1は、オーステナイト再結晶温度におけるタイプI熱間圧延を指し、2は、フェライト形成温度Ar3を上回る非結晶温度範囲におけるタイプII熱間圧延を指している。“QFT”欄のRTは室温を指している。

0063

0064

表3は、引張強度及び硬度試験、Charpy−V試験シャルピーV衝撃試験)、フランジ加工性(すなわち、曲げ性)試験の結果、及びこれらの試験結果の微小構造組織特性を示している。

0065

表3は、“Rm”欄の引張強度、“Charpy−V testing(シャルピーV衝撃試験)”欄の異なる温度における衝撃靱性、“T20J”欄の20Jの遷移温度、Mがマルテンサイト相を意味する構成の“Main phase(主相)”欄の微小構造組織主相、“PAG”欄の前のオーステナイト粒サイズ、及び“PAG AR”欄のアスペクト比を示している。更に、硬度、最小曲げ半径、及び残留オーステナイト含有率測定値が表わされる。これらの値の単位は、括弧内に表わされる。

0066

実施例1〜8、及び実施例36〜37における硬度測定値は、上記試験条件ごとに、3つの異なる測定値の平均として与えられる。これらの実施例とは異なり、実施例9〜35、及びREFにおける硬度測定値は、SFS−EN ISO 6507−1:2006に準拠したビッカース硬度測定値により与えられ、ブリネル硬度に、ASTME 140−97に従って変換されている。実施例9〜35における硬度値は、種々の鋼板の厚さについて平均した平均硬度として与えられる。

0067

0068

この表から分かるように、実施例1〜37の全てが、HBWで表わす場合に、基準例REF(540HBW)よりも高い硬度を実現している。このことは、実施例3において、基準例REFの組成物Aよりも炭素含有量が少ない組成物Bを使用したにも拘らず、正しいことが確認される。これは実際には、炭素含有量とマルテンサイト硬度との関係を表わす共通の理論と相当違っている。従って、これらの実施例は、硬度が改善され、かつ高硬度Ni合金化鋼材の炭素含有量を本発明により低下させることができることを明確に示している。

0069

また、熱間圧延工程がタイプI熱間圧延段階及びタイプII熱間圧延段階を含む場合、全ての各実施例が、550HBW以上のブリネル硬度を実現していたことが分かる。

0070

また、これらの実施例は、1500MPa超の引張強度を実現することができる、または1800MPa超の引張強度さえも実現することができることが分かる。全延伸率(A)は、略8%以上であった。更に、Rm>1800MPa及びA>=8%を合わせた関係をほぼ満たすことができた。

0071

また、熱間圧延工程におけるタイプI熱間圧延の他に、タイプII熱間圧延段階を含んでいた実施例2は、シャルピーV衝撃試験で測定したときに衝撃靱性が−20℃以上の温度で100J/cm2超となる高硬度熱間圧延鋼材製品を実現することができることが分かる。

0072

また、これらの実施例は、曲げ半径に厳密にフランジ加工することができる高硬度熱間圧延鋼材製品を実現することができることが分かる。2〜15mmの厚さThを有する高硬度熱間圧延鋼材は、3.3*Th(mm)の最小曲げ半径にフランジ加工する、好ましくは3.0*Th(mm)の最小曲げ半径にフランジ加工することさえもでき、この場合、曲げ角度が90°以上であり、かつ下側に曲げ曲げ治具が、100mmの最大幅を持つV字ギャップを有している状態で曲げによる著しい割れ、または破断視覚的に認められない。曲げ半径に厳密に加工するとは、この鋼材により形成される使用形態のデザインを改良することを意味している。別の表現をすると、鋼材の曲げ性は、高硬度を考慮に入れると極めて優れている。

0073

次に、実施例1〜37について更に詳細に説明する。

0074

表2及び3に示す、常に表面に存在するスケール例1〜8及び36〜37では、化学組成物A,B,N,及びOを有する鋼スラブを使用した。鋼板(DQ−Plate)及び鋼帯(DQ−Strip)は共に、表2から分かるように、これらのスラブから製造された。これらのスケール例1〜8及び36〜37では、鋼帯及び鋼板を製造するためのこれらの鋼スラブは、1280℃及び1230℃の加熱温度(HT)にそれぞれ加熱することによりオーステナイト化させた。この加熱工程に続いて、均一化工程を約1時間かけて行なった。

0075

実施例1,2,及び37では、均一化工程に続いて、熱間圧延プロセスを、粗圧延工程の後にストリップ圧延工程が続いて行なわれるように開始し、この場合、5.0mm、5.9mm、及び3.9mmの異なる最終鋼帯厚さに圧延した。粗圧延工程とストリップ圧延工程との間には、巻き取りボックスを従来通り使用した。最後の圧延通板が行なわれた後、焼き入れ完了温度(QFT)に直接焼き入れする処理を行なった。鋼帯を熱間圧延加熱温度から室温(RT)に、50℃/秒の平均冷却速度を使用することにより直接焼き入れした。このことから分かるように、直接焼き入れした鋼帯の硬度値は、基準例REFの硬度値よりも明らかに大きい。

0076

実施例1,2,及び37は、熱間圧延工程のタイプI熱間圧延段階の他に、タイプII熱間圧延段階を含んでいた。タイプII熱間圧延により、実施例2の圧延前オーステナイト粒組織に基づく測定から得られる1.3超のアスペクト比(PAG AR)から分かるようにオーステナイト粒が延伸する。このことから分かるように、高硬度の他に、実施例2は、圧延前オーステナイト粒が延伸することに一部起因して、優れた特性をCharpy−V(シャルピーV衝撃)試験を受けても保持している。

0077

組成物Bを使用した実施例3は、0.024%Ti合金化がCharpy−V(シャルピーV衝撃)靱性に悪影響を及ぼすことを示している。このことから分かるように、衝撃靱性特性は、Tiが0.02%未満の場合に数倍になる。その理由は、粗TiN粒子がこの種類の鋼材の衝撃靱性特性に悪影響を与える可能性があるからである。従って、更に優れた衝撃靱性値が更に望ましい場合、Tiを0.02%未満にすることが好ましい、または0.01%未満にすることがより好ましい。

0078

実施例3〜8及び36では、均一化工程に続いて、熱間圧延プロセスを、幾つかの圧延通板を板圧延機にて行なうことにより適用して、所望の厚さを実現した。熱間圧延では、タイプI熱間圧延を行なった、すなわち熱間圧延では、タイプII熱間圧延を行なわなかった。最後の圧延通板が行なわれた後、焼き入れ完了温度(QFT)に直接焼き入れする処理を行なった。鋼板群を、熱間圧延加熱温度から、160℃または150℃の温度に、150℃/秒の平均冷却速度を使用することにより直接焼き入れした。このことから分かるように、直接焼き入れした鋼板群の硬度値は、基準例REFの硬度値よりも明らかに大きい。別の表現をすると、熱間圧延中に圧延前オーステナイト粒を大幅に延伸させる処理は、硬度を従来のRHQプロセスよりも改善するために必ずしも必要ではない。しかしながら、圧延前オーステナイト粒を延伸させることにより、以下に更に示すように、硬度を更に改善することができる。

0079

実施例1〜8及び36〜37では、引張強度試験、Charpy−V(シャルピーV衝撃)試験、及びフランジ加工性試験の値は、前後方向及び横方向(圧延方向を基準とした場合の)の特定値から計算される平均値で表わされる。

0080

実験例9〜35では、表1に示す化学組成物C,D,E,F,G,H,I,J,K,L,及びMを有する鋼片(鋼スラブを模擬した)を使用した。これらの実験では、50mm厚さの鋼片は、1200℃の温度に加熱することによりオーステナイト化させ、2時間かけて均一化させた。均一化工程に続いて、熱間圧延プロセスを、幾つかの圧延通板を実験室圧延機にて行なうことにより適用して、8mmの所望の厚さを実現した。熱間圧延工程の内容は、表2の通りに変えた。最後の圧延通板を行なった後、焼き入れ完了温度(QFT)に直接焼き入れする処理を行なった。鋼板群を、熱間圧延加熱温度から、略150℃または250℃の温度に、60〜100℃/秒の範囲の平均冷却速度を使用することにより直接焼き入れした。

0081

実験例9〜35では、引張強度試験、Charpy−V(シャルピーV衝撃)試験の値、及び遷移温度は、実験室環境の試料サイズに起因して、圧延方向を基準とした前後方向の特性値として表示される。

0082

このことから分かるように、直接焼き入れした鋼板群及び鋼帯群の硬度値は、基準例REFの硬度値よりも明らかに大きい。

0083

実施例9〜11(組成物C)、及び実施例12〜15(組成物D)を比較すると更に分かるように、衝撃靱性は、組成物Cの炭素含有量が少ない状態で大幅に向上している。従って、衝撃靱性特性を確保するために、炭素含有量を0.36%以下とすることが好ましい。しかしながら、常にスケールが表面に存在する状態では、全ての衝撃靱性特性は、圧下率が工業規模ではより増えるので、より向上することに注目されたい。

0084

また、20Jの遷移温度が表3に表わされる(試料サイズ7.5mm、ノッチサイズ2mmについてのCharpy−V(シャルピーV衝撃)試験で測定される)。これは、約34J/cm2の遷移温度に対応している。

0085

このことから更に分かるように、タイプI熱間圧延のみを行なった各実験例から結果的に、アスペクト比(PAG AR)に関連する測定値が、1.3以下の値で表わされていたことになる。これは、これらの実施例9,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32,及び34では、圧延前オーステナイト粒組織は、この説明が意味するところでは、殆ど延伸粒化しなかったことを意味している。

0086

しかしながら、タイプII熱間圧延を更に行なった各実験例は、これらの実施例10,11,13,15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,及び35から分かるように、1.3超のアスペクト比(PAG AR)を示した、または2.0超ものアスペクト比を示した。特に、全てのこれらの実施例がPAG AR>2.0の関係を満たしている。更に、このような2.0の限界値は、圧延前オーステナイト粒組織が延伸粒化した状態を非常に良好に表わしているが、その理由は、この限界値が、これらの粒の長さが、これらの粒の高さと比較して、2倍超の長さになるときの限界値を表わしているからである。このような特徴は、圧延前の略等軸のオーステナイト粒組織から明確に区別することができ、かつRHQプロセスからは得られない。

0087

実施例9〜35の圧延前オーステナイト粒組織から測定されたアスペクト比の増加は、アスペクト比が、1.3超になる場合に、それに伴って、ブリネル硬度で評価した硬度が更に高くなることを明確に示している。アスペクト比の値が更に高くなると、ブリネル硬度が更に高くなる。この様子は、図3及び図4に約150℃及び250℃の異なる焼き入れ完了温度についてグラフで更に示される。

0088

この技術分野の当業者であれば、技術が進むにつれて、本発明の考え方を種々の方法で実施することができることを理解できるであろう。本発明、及び本発明の種々実施形態は、上に説明したこれらの実施例に限定されず、かつこれらの請求項の範囲内で変更することができる。

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