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技術 抗腫瘍活性を有する新規な二重特異的結合分子

出願人 コバジェンアーゲー
発明者 ファビアンブラーウルリッヒビュルナークリスティーナクルプシュイレーネツビンデンロジャーサンティマリアイザベッラアッティンガー-トラースーザンケーニッヒ-フリードリヒジュリアンベルトシンガードラガングラウブロウスキサイモンブラックミケーラシラッチリチャードウッズヘレンヘシミパトリシアヘンネウルリーケフォンデアベイ
出願日 2014年3月6日 (6年8ヶ月経過) 出願番号 2016-508054
公開日 2016年6月9日 (4年5ヶ月経過) 公開番号 2016-516789
状態 特許登録済
技術分野 蛋白脂質酵素含有:その他の医薬 医薬品製剤 動物,微生物物質含有医薬 突然変異または遺伝子工学 ペプチド又は蛋白質 微生物、その培養処理 他の有機化合物及び無機化合物含有医薬 化合物または医薬の治療活性 抗原、抗体含有医薬:生体内診断剤
主要キーワード 灰色調 適合状況 線状分子鎖 エンゲージメント 溶解対 ほとんど等しい サミット 再方向付け
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (20)

課題・解決手段

本発明は、(i)CD3と、(ii)癌細胞上の表面標的抗原と、に特異的に結合する二重特異的結合分子に関する。ここで、結合分子は、(a)CD3に特異的に結合する抗体と、(b)癌細胞上の表面標的抗原に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドと、を含み、前記Fyn−SH3由来ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列からなる。ただし、(i)配列番号1のアミノ酸位置10〜19内の少なくとも1つのアミノ酸は、置換欠失、または付加されていること、かつ(ii)配列番号1のアミノ酸位置29〜36内の少なくとも1つのアミノ酸は、置換、欠失、または付加されていること、を条件とし、前記ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有し、同一性の決定では、配列番号1のアミノ酸位置12〜17および31〜34が除外されること、を条件とする。

概要

背景

本明細書には、特許出願および製造業者マニュアルを含めて、いくつかの文献が引用されている。これらの文献の開示は、本発明の特許性に関連するとみなされるものではないが、これをもってその全体が参照により組み込まれる。より特定的には、参照された文献はすべて、あたかもそれぞれ個々の文献が具体的かつ個別的に明示されて参照により組み込まれたのと同程度まで、参照により組み込まれる。

疾患の初期および後期の両方で腫瘍成長および癌患者生存をT細胞によりコントロール可能であるという証拠が増えている(Mlecnik B.et al.,(2011),Cancer Metastasis Rev,30,pp.5−12)。しかしながら、腫瘍特異的T細胞反応は、癌患者で開始および維持を行うのが困難であり、免疫編集時に選択される腫瘍細胞の多数の免疫逃避機序により制限される(Bauerle PA et al.(2009)Cancer Res,69(12),pp.4941−4944)。癌療法のためにT細胞をエンゲージする代替法は、癌細胞上の表面標的抗原とT細胞上のCD3とに対して二重特異的である抗体である(Bargou et al.(2008)Science,321(5891),pp.974−977)。これにより、典型的には、T細胞レセプター特異性共刺激、またはペプチド抗原提示に依存せずに、任意の種類の細胞傷害性T細胞を癌細胞に結合することが可能である。

ネズミ抗CD3抗体およびヒト化抗CD3抗体、たとえば、ムロモナブCD3(Norman DJ(1995)Ther Drug Monit 17(6),pp.615−620)、テプリズマブおよびオテリキシズマブ(Chatenoud L.(2010)6(3),pp.149−157)、ならびにCris−7(Alberola−Ila J.et al.(1991),J Immunol,146(4),pp.1085−1092)は、当技術分野で周知である。Conradらは、SP34を含めて、他の抗CD3抗体を概説している(Conrad et al.(2007)Cytometry,71(11),pp.925−933)。

記載のごとく、CD3と癌細胞上の表面標的抗原との両方を認識する二重特異的抗体は、当技術分野で周知である(May C.et al.(2012),Biochemical Pharmacology,84,pp.1105−1112も参照されたい)。歴史的には、有利な薬剤的性質を有するこれらの複雑な分子を設計して、薬剤開発を支援するのに十分な量および品質を提供することが困難であることが、療法剤として二重特異的抗体を開発するうえで主要な障害になっていたことに注目することが重要である(Chan A.and Carter P.(2010),Nat Rev Immunol,10(5),pp.301−316)。このことは、選択された特異性を有するモノクローナル抗体(mAb)を発現する2つのユニークなネズミハイブリドーマクローンの融合から生じるクアドローマの技術を利用したCD3分野の初期の二重特異的手法により例証される(Staerz et al.(1986)Proc Natl Acad Sci USA,83,pp.1453−1457)。この方法により調製される二重特異的抗体は、IgG重鎖および軽鎖ランダム対合に依拠する。抗原を発現する細胞でいくつかの生物学的効果観測されたにもかかわらず、この手法は、疾患の臨床経過では有意な影響をもたらさなかった(Kufer P.et al.(2004)TrendsBiotechnol,22,pp.238−244)。上述したように、これらの第1世代の二重特異的抗体は、大量の均一バッチ生産が困難であることおよびネズミ抗体フラグメントの有効性欠如していることを含む2つの主要な限界を呈した。それに加えて、ほとんどの治療患者でヒト抗マウス抗体反応が見られたため、ネズミ分子の有効性が大幅に減少し、複数回投与が制限された(May C.et al.(2012),Biochemical Pharmacology,84,pp.1105−1112)。

Lindhoferらは、ラットIgG2aとマウスIgG2bとの対合により不均一性ベルを減少させる方法を同定した(Lindhofer et al.(1995)J Immunol,155,pp.219−225)。これらのラットおよびマウスのアイソタイプ特異的ハイブリドーマの融合により、種限定の重鎖/軽鎖対合が優先するため、適正に対合した二重特異的抗体の出現率が増加することが、著者らにより見いだされた。そのほかに、著者らは、親抗体からの機能性二重特異的抗体の精製を容易にするシーケンシャルpH溶出法を同定した。この方法により生成されたハイブリッド抗体では、2つの異なる抗原、たとえば、CD3と腫瘍抗原、に対する結合部位が組み込まれ、通常の抗体と同様に、マクロファージNK細胞、および樹状細胞上に発現されるFcγRレセプターに結合可能なそのインタクトなFcが保持された。TriomAbs(登録商標)と称されるこの二重特異的抗体は、Fcレセプター発現細胞と共にT細胞を腫瘍に再方向付けする作用を兼備し、T細胞媒介溶解とADCCとの組合せにより腫瘍細胞を排除すると報告されてきた(Linke R.et al(2010)Mabs,2,pp.129−136)。この方式は、臨床試験で評価されてきたいくつかの二重特異的抗体の開発をもたらした。これらには、カツマキソマブ(抗EpCAM×抗CD3)、エルツマキソマブ(抗HER2×抗CD3)、およびFBTA05(抗CD20×抗CD3)が含まれる(Chames P.et al.,(2009),Mabs,1,pp.539−547にレビューされている)。カツマキソマブは、開発された最初のTriomAb(登録商標)であり、第2/3相生存率の有意な改善が実証されたことにより、カツマキソマブは、EpCAM陽性腫瘍を有する患者において悪性腹水を治療するために2009年にEUの認可を受けるに至り、臨床使用が認められた最初の二重特異的抗体であった(Jager M.et al.(2012),Cancer Res,69,4941−4944)。HER2を標的とするTriomAb(登録商標)エルツマキソマブは、現在、HER2を発現する進行固形腫瘍を有する患者において臨床試験で研究されている。B細胞悪性腫瘍上に発現されるCD20を標的とするように開発された第3のTriomAb(登録商標)であるFBTA05は、慢性リンパ球性白血病(CLL)患者に由来する低レベルのCD20発現を有するB細胞系の特異的溶解を媒介することが示された。さらに、FBTA05は、リツキシマブと比較して有意に高い根絶率をin vitroで呈した。同種異系移植後のCD20陽性非ホジキンリンパ腫(NHL)患者において再発疾患または難治性疾患の治療のためにドナーリンパ球注入との組合せでFBTA05の安全性および有効性を評価する第1/2相研究が、進行中である(Chames P.et al.,(2009),Mabs,1,pp.539−547)。このTriomAb(登録商標)方式の主要な限界は、非ヒト化マウス/ラットハイブリッド抗体方式の繰返し投与に反応して、患者がヒト抗マウスおよび抗ラット抗体を生成することによって存在する(Linke R.et al(2010)Mabs,2,pp.129−136)。

TriomAb(登録商標)抗体の限界のいくつかは、抗体工学によりおよび新規な方式に基づく組換え二重特異的分子の生成により対処された(May C.et al.(2012),Biochemical Pharmacology,84,pp.1105−1112の概説を参照されたい)。試験されてきた二重特異的抗体設計のうち、BiTE(登録商標)(二重特異的T細胞エンゲージャー)と称される方式は、これまでに診察で最大の成功を収めてきた。BiTE(登録商標)組換え方式は、ペプチドリンカーにより共有結合された2つの一本鎖抗体に基づく(二重特異的scFv抗体フラグメント方式をもたらす)。4つの個別の遺伝子によりコードされる合計4つの可変ドメインが、単一遺伝子によりコードされる単一ポリペプチド鎖上にアライメントされる。BiTE(登録商標)は、ピコモル(pM)濃度でそのin vitroおよびin vivoの選択的T細胞活性化に関して、さらにはその作用機序に関して、きわめて詳細に研究されてきた(Baeuerle PA et al.,(2009),Cancer Res,69,pp.4941−4944)。CD19(ほとんどのヒトB細胞悪性腫瘍により発現される(Dreier T.et al.,(2003),J Immunol,170,pp.4397−4402))およびいくつかの固形腫瘍上に発現されるEpCAM(Brischwein K.et al.(2006),Mol Immunol,43,pp.1129−1143)を標的とするBiTE(登録商標)は、最先端の分子であり、現在、臨床試験で試験されている。組換え抗CD3×抗CD19 BiTE(登録商標)分子であるブリツモマブ(MT103としても知られる)は、再発非ホジキンリンパ腫(NHL)および急性リンパ芽球性白血病(ALL)の患者の治療剤として研究されている。単一の作用剤としてブリナツモマブに対して最初に確認された反応は、NHL患者で行われた(Bargou R.et al.(2008),Science,321,pp.974−977)。より最近では、微小残存病変MRD)陽性B系列ALLでブリナツモマブの有効性を決定するために、相2臨床試験が行われた(Topp MS et al.(2011)J Clin Oncol,29,pp.2493−2498)。0.015mg/m2/日の用量レベルで21名の患者を治療したところ、16名の患者がMRD陰性になったで。無再発の生存の可能性は、405日間のメジアン追跡で78%と報告された。ブリナツモマブは、MRD陽性B系列ALLの患者において有効かつ耐容性良好であり、治療は、長期にわたる無白血病生存をもたらした。CD19およびEpCAMに加えて、BiTE(登録商標)抗体はまた、EGFRCEA、EPHA2、黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン、IGFR1、CD33、線維芽細胞活性化タンパク質α、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、c−MET、PSMA、およびHER2を発現する腫瘍細胞を特異的に標的としうることが、前臨床試験により示された(Baeuerle PA et al.,(2009),Cancer Res,69,pp.4941−4944、Friedrich M.(2012)Mol Cancer Ther,11(12),pp.2664−2673)。

BiTE(登録商標)抗体(約55kDa)は、サイズが小さいため、短い血清中半減期により特徴付けられる。たとえば、この薬剤を投与するためには、ポータブルポンプによるブリナツモマブの連続的静脈内注入が必要である。したがって、in vivo半減期が短いことが、BiTE(登録商標)抗体の主要な限界の1つである(Kontermann R.(2005)Acta Pharmacologica Sinica,26(1),pp.1−9)。

CD3と癌細胞上の表面標的抗原との両方を認識するscFv抗体フラグメントに基づく他の二重特異的方式は、当技術分野で公知であり、たとえば、DART(商標)プラットフォームは、2つの特異性のそれぞれに対して1つの結合部位を有する共有結合されたヘテロ二量体複合体を生成するように共発現される2つの個別のポリペプチドからなり(Moore et al,(2011),Blood,117,pp.4542−4551)、tandab(登録商標)と呼ばれる4価タンデムダイアボディー構造では、2つの異なる抗体からの4つの可変ドメインをそれぞれ有する2つのポリペプチドが、ホモ二量体分子に対して頭−尾に配置される(Mφlhφj M.et al,(2007),Mol Immunol,44(8),pp.1935−1943)。

scFvベースの二重特異的戦略の半減期がやや短いことに加えて、scFvベースの構築物は、他の分子からのパートナーとのV領域の「ドメイン交換」に起因して凝集体を形成する傾向を有するか(Moore et al,(2011),Blood,117,pp.4542−4551)、またはDART(商標)プラットフォームで示されるように、ヘテロ二量体複合体を形成するためにより複雑な発現系に依存する(Moore et al,(2011),Blood,117,pp.4542−4551)。

近年、いくつかの他の二重特異的方式が創出され(Chan A.and Carter P.(2010),Nat Rev Immunol,10(5)pp.301−316およびKontermann R.(2012),Mabs,4(2),pp.182−197にレビューされている)、そのいくつかは、CD3と腫瘍細胞表面抗原とを標的とするように設計されてきた。また、ヒトIgG様二重特異的技術、たとえば、単一軽鎖抗体を使用するBiclonics(商標)ENGAGEプラットフォームに基づくCD3二重特異的抗体(www.merus.nl)、単一重鎖抗体に依拠する「kappa−lambda−body(商標)」(www.novimmune.com)、および二重特異的IgG1/IgG2抗体(Strop et al.(2012)J Mol Biol,420,pp.204−219)が、この分野で発展してきた。リダイレクト細胞死滅のための二重特異的方式の工学技術のこれらの最近の進歩にもかかわらず、2本の重鎖のいずれかと単一の軽鎖とのもしくは1本の重鎖と2本の軽鎖との共発現およびそれに続くより複雑な下流の精製プロセスが必要であること、またはIgG1/IgG2二重特異的抗体の場合、ヘテロ二量体化に好適なレドックス条件が必要であることなど、これらのより新技術には依然として欠点が存在する。したがって、高レベルの発現、有利な物理化学的性質(たとえば、高い溶解性および安定性ならびに低い凝集傾向)、長い血清中半減期などの薬剤的性質を有する二重特異的抗体を創出する大きな医学的必要性が存在する。二重特異的化合物を検討する科学会議出現により、改善された二重特異的抗体の必要性もまた、具体的に示されている。たとえば、第2回世界二重特異的抗体サミット(World Bispecific Antibody Summit)では、産業上の二重特異的抗体の重要性増していることが述べられた。二重特異的抗体は、過去2年間で65億ドルを超える価値のあるいくつかの印象的な取引きの対象になっていたと想定されている。一方、利用すべき絶好の機会および膨大な成長の余地が存在するが、この新しいクラスの薬剤がその十分な潜在能力を達成できるようになる前に、依然として、対処する必要のある多くの課題が存在する(http://www.nature.com/natureevents/science/events/14667;2nd_World_Bispecific_Antibody_Summit)。

概要

本発明は、(i)CD3と、(ii)癌細胞上の表面標的抗原と、に特異的に結合する二重特異的結合分子に関する。ここで、結合分子は、(a)CD3に特異的に結合する抗体と、(b)癌細胞上の表面標的抗原に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドと、を含み、前記Fyn−SH3由来ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列からなる。ただし、(i)配列番号1のアミノ酸位置10〜19内の少なくとも1つのアミノ酸は、置換欠失、または付加されていること、かつ(ii)配列番号1のアミノ酸位置29〜36内の少なくとも1つのアミノ酸は、置換、欠失、または付加されていること、を条件とし、前記ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有し、同一性の決定では、配列番号1のアミノ酸位置12〜17および31〜34が除外されること、を条件とする。

目的

歴史的には、有利な薬剤的性質を有するこれらの複雑な分子を設計して、薬剤開発を支援するのに十分な量および品質を提供する

効果

実績

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請求項1

(i)CD3と、(ii)癌細胞上の表面標的抗原と、に特異的に結合する二重特異的結合分子であって、(a)CD3に特異的に結合する抗体と、(b)癌細胞上の表面標的抗原に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドと、を含み、前記Fyn−SH3由来ポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸配列からなり、ただし、(i)配列番号1のアミノ酸位置10〜19内の少なくとも1つのアミノ酸が、置換欠失、または付加されていること、かつ(ii)配列番号1のアミノ酸位置29〜36内の少なくとも1つのアミノ酸が、置換、欠失、または付加されていること、を条件とし、前記ポリペプチドが、配列番号1の前記アミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有し、同一性の決定では、配列番号1のアミノ酸位置12〜17および31〜34が除外されること、を条件とする、二重特異的結合分子。

請求項2

CD3に特異的に結合する前記抗体が、テプリズマブ、オテリキシズマブ、Cris−7、またはSP34である、請求項1に記載の結合分子

請求項3

GFRHER2、CD33、CD19、CEA、EPHA2、黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン、IGFR1、線維芽細胞活性化タンパク質α、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、c−MET、EpCAM、またはPSMAに特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含む、請求項1または2に記載の結合分子。

請求項4

前記結合分子が、HER2に特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含み、前記2つのポリペプチドの第1が、前記抗体の2つの重鎖の第1のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2が、前記抗体の前記2つの重鎖の第2のN末端に結合される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の結合分子。

請求項5

前記結合分子が、EGFRに特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含み、(i)前記2つのポリペプチドの第1が、前記抗体の2つの重鎖の第1のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2が、前記抗体の前記2つの重鎖の第2のN末端に結合されるか、(ii)前記2つのポリペプチドの前記第1が、前記抗体の前記2つの重鎖の第1のC末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの前記第2が、前記抗体の前記2つの重鎖の第2のC末端に結合されるか、(iii)前記2つのポリペプチドの前記第1が、前記抗体の2つの軽鎖の第1のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの前記第2が、前記抗体の前記2つの軽鎖の第2のN末端に結合されるか、または(iv)前記2つのポリペプチドの前記第1が、前記抗体の前記2つの軽鎖の第1のC末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの前記第2が、前記抗体の前記2つの軽鎖の第2のC末端に結合される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の結合分子。

請求項6

前記結合分子が、CD33に特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含み、前記2つのポリペプチドの第1が、前記抗体の2つの軽鎖の第1のC末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2が、前記抗体の前記2つの軽鎖の第2のC末端に結合される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の結合分子。

請求項7

CD3に特異的に結合する前記抗体と前記Fyn−SH3由来ポリペプチドとがリンカーにより結合される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の結合分子。

請求項8

前記リンカーがペプチドリンカーである、請求項7に記載の結合分子。

請求項9

前記リンカーが、配列番号162、160、および161からなる群から選択される配列を有する、請求項8に記載の結合分子。

請求項10

前記二重特異的結合分子が配列番号163および/または164を含む、請求項1〜4、8、または9のいずれか一項に記載の結合分子。

請求項11

前記二重特異的結合分子が配列番号171および/または198を含む、請求項1〜3、5、8、または9のいずれか一項に記載の結合分子。

請求項12

前記二重特異的結合分子が配列番号2および/または175を含む、請求項1〜3、6、8、または9のいずれか一項に記載の結合分子。

請求項13

請求項1〜12のいずれか一項に記載の結合分子をコードする核酸分子

請求項14

請求項13に記載の核酸分子を含むベクター

請求項15

請求項14に記載のベクターで形質転換された宿主細胞または非ヒト宿主

請求項16

請求項1〜12のいずれか一項に記載の結合分子、請求項13に記載の核酸分子、請求項14に記載のベクター、および/または請求項15に記載の宿主細胞もしくは非ヒト宿主、を含む医薬組成物

請求項17

癌を治療または予防する方法における使用のための、請求項16に記載の医薬組成物。

請求項18

前記癌が、乳癌血液学的悪性疾患、たとえば、NHL、B−ALL、AML、他の癌、たとえば、前立腺癌、黒色腫、肺癌胃癌卵巣癌頭頸部癌結腸直腸癌膵臓癌甲状腺癌神経膠腫膀胱癌腎臓癌肝臓癌、または悪性腹水からなる群から選択される、請求項17に記載の使用のための医薬組成物。

請求項19

前記癌が、請求項1〜12のいずれか一項に記載の結合分子により特異的に結合される、請求項13に記載の核酸分子によりコードされる結合分子により特異的に結合される、請求項14に記載のベクターにより発現される結合分子により特異的に結合される、および/または請求項15に記載の宿主細胞もしくは非ヒト宿主により発現される結合分子により特異的に結合される、表面標的抗原を、非腫瘍細胞上に発現される量の少なくとも2倍の量で発現する、請求項17または18に記載の使用のための医薬組成物。

技術分野

0001

本発明は、(i)CD3と、(ii)癌細胞上の表面標的抗原と、に特異的に結合する二重特異的結合分子に関する。ここで、結合分子は、(a)CD3に特異的に結合する抗体と、(b)癌細胞上の表面標的抗原に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドと、を含み、前記Fyn−SH3由来ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列からなる。ただし、(i)配列番号1のアミノ酸位置10〜19内の少なくとも1つのアミノ酸は、置換欠失、または付加されていること、かつ(ii)配列番号1のアミノ酸位置29〜36内の少なくとも1つのアミノ酸は、置換、欠失、または付加されていること、を条件とし、前記ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有し、同一性の決定では、配列番号1のアミノ酸位置12〜17および31〜34が除外されること、を条件とする。

背景技術

0002

本明細書には、特許出願および製造業者マニュアルを含めて、いくつかの文献が引用されている。これらの文献の開示は、本発明の特許性に関連するとみなされるものではないが、これをもってその全体が参照により組み込まれる。より特定的には、参照された文献はすべて、あたかもそれぞれ個々の文献が具体的かつ個別的に明示されて参照により組み込まれたのと同程度まで、参照により組み込まれる。

0003

疾患の初期および後期の両方で腫瘍成長および癌患者生存をT細胞によりコントロール可能であるという証拠が増えている(Mlecnik B.et al.,(2011),Cancer Metastasis Rev,30,pp.5−12)。しかしながら、腫瘍特異的T細胞反応は、癌患者で開始および維持を行うのが困難であり、免疫編集時に選択される腫瘍細胞の多数の免疫逃避機序により制限される(Bauerle PA et al.(2009)Cancer Res,69(12),pp.4941−4944)。癌療法のためにT細胞をエンゲージする代替法は、癌細胞上の表面標的抗原とT細胞上のCD3とに対して二重特異的である抗体である(Bargou et al.(2008)Science,321(5891),pp.974−977)。これにより、典型的には、T細胞レセプター特異性共刺激、またはペプチド抗原提示に依存せずに、任意の種類の細胞傷害性T細胞を癌細胞に結合することが可能である。

0004

ネズミ抗CD3抗体およびヒト化抗CD3抗体、たとえば、ムロモナブCD3(Norman DJ(1995)Ther Drug Monit 17(6),pp.615−620)、テプリズマブおよびオテリキシズマブ(Chatenoud L.(2010)6(3),pp.149−157)、ならびにCris−7(Alberola−Ila J.et al.(1991),J Immunol,146(4),pp.1085−1092)は、当技術分野で周知である。Conradらは、SP34を含めて、他の抗CD3抗体を概説している(Conrad et al.(2007)Cytometry,71(11),pp.925−933)。

0005

記載のごとく、CD3と癌細胞上の表面標的抗原との両方を認識する二重特異的抗体は、当技術分野で周知である(May C.et al.(2012),Biochemical Pharmacology,84,pp.1105−1112も参照されたい)。歴史的には、有利な薬剤的性質を有するこれらの複雑な分子を設計して、薬剤開発を支援するのに十分な量および品質を提供することが困難であることが、療法剤として二重特異的抗体を開発するうえで主要な障害になっていたことに注目することが重要である(Chan A.and Carter P.(2010),Nat Rev Immunol,10(5),pp.301−316)。このことは、選択された特異性を有するモノクローナル抗体(mAb)を発現する2つのユニークなネズミハイブリドーマクローンの融合から生じるクアドローマの技術を利用したCD3分野の初期の二重特異的手法により例証される(Staerz et al.(1986)Proc Natl Acad Sci USA,83,pp.1453−1457)。この方法により調製される二重特異的抗体は、IgG重鎖および軽鎖ランダム対合に依拠する。抗原を発現する細胞でいくつかの生物学的効果観測されたにもかかわらず、この手法は、疾患の臨床経過では有意な影響をもたらさなかった(Kufer P.et al.(2004)TrendsBiotechnol,22,pp.238−244)。上述したように、これらの第1世代の二重特異的抗体は、大量の均一バッチ生産が困難であることおよびネズミ抗体フラグメントの有効性欠如していることを含む2つの主要な限界を呈した。それに加えて、ほとんどの治療患者でヒト抗マウス抗体反応が見られたため、ネズミ分子の有効性が大幅に減少し、複数回投与が制限された(May C.et al.(2012),Biochemical Pharmacology,84,pp.1105−1112)。

0006

Lindhoferらは、ラットIgG2aとマウスIgG2bとの対合により不均一性ベルを減少させる方法を同定した(Lindhofer et al.(1995)J Immunol,155,pp.219−225)。これらのラットおよびマウスのアイソタイプ特異的ハイブリドーマの融合により、種限定の重鎖/軽鎖対合が優先するため、適正に対合した二重特異的抗体の出現率が増加することが、著者らにより見いだされた。そのほかに、著者らは、親抗体からの機能性二重特異的抗体の精製を容易にするシーケンシャルpH溶出法を同定した。この方法により生成されたハイブリッド抗体では、2つの異なる抗原、たとえば、CD3と腫瘍抗原、に対する結合部位が組み込まれ、通常の抗体と同様に、マクロファージNK細胞、および樹状細胞上に発現されるFcγRレセプターに結合可能なそのインタクトなFcが保持された。TriomAbs(登録商標)と称されるこの二重特異的抗体は、Fcレセプター発現細胞と共にT細胞を腫瘍に再方向付けする作用を兼備し、T細胞媒介溶解とADCCとの組合せにより腫瘍細胞を排除すると報告されてきた(Linke R.et al(2010)Mabs,2,pp.129−136)。この方式は、臨床試験で評価されてきたいくつかの二重特異的抗体の開発をもたらした。これらには、カツマキソマブ(抗EpCAM×抗CD3)、エルツマキソマブ(抗HER2×抗CD3)、およびFBTA05(抗CD20×抗CD3)が含まれる(Chames P.et al.,(2009),Mabs,1,pp.539−547にレビューされている)。カツマキソマブは、開発された最初のTriomAb(登録商標)であり、第2/3相生存率の有意な改善が実証されたことにより、カツマキソマブは、EpCAM陽性腫瘍を有する患者において悪性腹水を治療するために2009年にEUの認可を受けるに至り、臨床使用が認められた最初の二重特異的抗体であった(Jager M.et al.(2012),Cancer Res,69,4941−4944)。HER2を標的とするTriomAb(登録商標)エルツマキソマブは、現在、HER2を発現する進行固形腫瘍を有する患者において臨床試験で研究されている。B細胞悪性腫瘍上に発現されるCD20を標的とするように開発された第3のTriomAb(登録商標)であるFBTA05は、慢性リンパ球性白血病(CLL)患者に由来する低レベルのCD20発現を有するB細胞系の特異的溶解を媒介することが示された。さらに、FBTA05は、リツキシマブと比較して有意に高い根絶率をin vitroで呈した。同種異系移植後のCD20陽性非ホジキンリンパ腫(NHL)患者において再発疾患または難治性疾患の治療のためにドナーリンパ球注入との組合せでFBTA05の安全性および有効性を評価する第1/2相研究が、進行中である(Chames P.et al.,(2009),Mabs,1,pp.539−547)。このTriomAb(登録商標)方式の主要な限界は、非ヒト化マウス/ラットハイブリッド抗体方式の繰返し投与に反応して、患者がヒト抗マウスおよび抗ラット抗体を生成することによって存在する(Linke R.et al(2010)Mabs,2,pp.129−136)。

0007

TriomAb(登録商標)抗体の限界のいくつかは、抗体工学によりおよび新規な方式に基づく組換え二重特異的分子の生成により対処された(May C.et al.(2012),Biochemical Pharmacology,84,pp.1105−1112の概説を参照されたい)。試験されてきた二重特異的抗体設計のうち、BiTE(登録商標)(二重特異的T細胞エンゲージャー)と称される方式は、これまでに診察で最大の成功を収めてきた。BiTE(登録商標)組換え方式は、ペプチドリンカーにより共有結合された2つの一本鎖抗体に基づく(二重特異的scFv抗体フラグメント方式をもたらす)。4つの個別の遺伝子によりコードされる合計4つの可変ドメインが、単一遺伝子によりコードされる単一ポリペプチド鎖上にアライメントされる。BiTE(登録商標)は、ピコモル(pM)濃度でそのin vitroおよびin vivoの選択的T細胞活性化に関して、さらにはその作用機序に関して、きわめて詳細に研究されてきた(Baeuerle PA et al.,(2009),Cancer Res,69,pp.4941−4944)。CD19(ほとんどのヒトB細胞悪性腫瘍により発現される(Dreier T.et al.,(2003),J Immunol,170,pp.4397−4402))およびいくつかの固形腫瘍上に発現されるEpCAM(Brischwein K.et al.(2006),Mol Immunol,43,pp.1129−1143)を標的とするBiTE(登録商標)は、最先端の分子であり、現在、臨床試験で試験されている。組換え抗CD3×抗CD19 BiTE(登録商標)分子であるブリツモマブ(MT103としても知られる)は、再発非ホジキンリンパ腫(NHL)および急性リンパ芽球性白血病(ALL)の患者の治療剤として研究されている。単一の作用剤としてブリナツモマブに対して最初に確認された反応は、NHL患者で行われた(Bargou R.et al.(2008),Science,321,pp.974−977)。より最近では、微小残存病変MRD)陽性B系列ALLでブリナツモマブの有効性を決定するために、相2臨床試験が行われた(Topp MS et al.(2011)J Clin Oncol,29,pp.2493−2498)。0.015mg/m2/日の用量レベルで21名の患者を治療したところ、16名の患者がMRD陰性になったで。無再発の生存の可能性は、405日間のメジアン追跡で78%と報告された。ブリナツモマブは、MRD陽性B系列ALLの患者において有効かつ耐容性良好であり、治療は、長期にわたる無白血病生存をもたらした。CD19およびEpCAMに加えて、BiTE(登録商標)抗体はまた、EGFRCEA、EPHA2、黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン、IGFR1、CD33、線維芽細胞活性化タンパク質α、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、c−MET、PSMA、およびHER2を発現する腫瘍細胞を特異的に標的としうることが、前臨床試験により示された(Baeuerle PA et al.,(2009),Cancer Res,69,pp.4941−4944、Friedrich M.(2012)Mol Cancer Ther,11(12),pp.2664−2673)。

0008

BiTE(登録商標)抗体(約55kDa)は、サイズが小さいため、短い血清中半減期により特徴付けられる。たとえば、この薬剤を投与するためには、ポータブルポンプによるブリナツモマブの連続的静脈内注入が必要である。したがって、in vivo半減期が短いことが、BiTE(登録商標)抗体の主要な限界の1つである(Kontermann R.(2005)Acta Pharmacologica Sinica,26(1),pp.1−9)。

0009

CD3と癌細胞上の表面標的抗原との両方を認識するscFv抗体フラグメントに基づく他の二重特異的方式は、当技術分野で公知であり、たとえば、DART(商標)プラットフォームは、2つの特異性のそれぞれに対して1つの結合部位を有する共有結合されたヘテロ二量体複合体を生成するように共発現される2つの個別のポリペプチドからなり(Moore et al,(2011),Blood,117,pp.4542−4551)、tandab(登録商標)と呼ばれる4価タンデムダイアボディー構造では、2つの異なる抗体からの4つの可変ドメインをそれぞれ有する2つのポリペプチドが、ホモ二量体分子に対して頭−尾に配置される(Mφlhφj M.et al,(2007),Mol Immunol,44(8),pp.1935−1943)。

0010

scFvベースの二重特異的戦略の半減期がやや短いことに加えて、scFvベースの構築物は、他の分子からのパートナーとのV領域の「ドメイン交換」に起因して凝集体を形成する傾向を有するか(Moore et al,(2011),Blood,117,pp.4542−4551)、またはDART(商標)プラットフォームで示されるように、ヘテロ二量体複合体を形成するためにより複雑な発現系に依存する(Moore et al,(2011),Blood,117,pp.4542−4551)。

0011

近年、いくつかの他の二重特異的方式が創出され(Chan A.and Carter P.(2010),Nat Rev Immunol,10(5)pp.301−316およびKontermann R.(2012),Mabs,4(2),pp.182−197にレビューされている)、そのいくつかは、CD3と腫瘍細胞表面抗原とを標的とするように設計されてきた。また、ヒトIgG様二重特異的技術、たとえば、単一軽鎖抗体を使用するBiclonics(商標)ENGAGEプラットフォームに基づくCD3二重特異的抗体(www.merus.nl)、単一重鎖抗体に依拠する「kappa−lambda−body(商標)」(www.novimmune.com)、および二重特異的IgG1/IgG2抗体(Strop et al.(2012)J Mol Biol,420,pp.204−219)が、この分野で発展してきた。リダイレクト細胞死滅のための二重特異的方式の工学技術のこれらの最近の進歩にもかかわらず、2本の重鎖のいずれかと単一の軽鎖とのもしくは1本の重鎖と2本の軽鎖との共発現およびそれに続くより複雑な下流の精製プロセスが必要であること、またはIgG1/IgG2二重特異的抗体の場合、ヘテロ二量体化に好適なレドックス条件が必要であることなど、これらのより新技術には依然として欠点が存在する。したがって、高レベルの発現、有利な物理化学的性質(たとえば、高い溶解性および安定性ならびに低い凝集傾向)、長い血清中半減期などの薬剤的性質を有する二重特異的抗体を創出する大きな医学的必要性が存在する。二重特異的化合物を検討する科学会議出現により、改善された二重特異的抗体の必要性もまた、具体的に示されている。たとえば、第2回世界二重特異的抗体サミット(World Bispecific Antibody Summit)では、産業上の二重特異的抗体の重要性増していることが述べられた。二重特異的抗体は、過去2年間で65億ドルを超える価値のあるいくつかの印象的な取引きの対象になっていたと想定されている。一方、利用すべき絶好の機会および膨大な成長の余地が存在するが、この新しいクラスの薬剤がその十分な潜在能力を達成できるようになる前に、依然として、対処する必要のある多くの課題が存在する(http://www.nature.com/natureevents/science/events/14667;2nd_World_Bispecific_Antibody_Summit)。

発明が解決しようとする課題

0012

したがって、有利な薬剤的性質を有し、薬剤開発を支援するのに十分な量および品質で生成可能であり、かつ治療剤として好適である、腫瘍の治療に有用な新規な二重特異的方式の大きな医学的必要性が存在する。したがって、本発明の目的は、CD3と腫瘍細胞表面抗原とを標的とするそのような新規な二重特異的結合分子を提供することである。

課題を解決するための手段

0013

したがって、第1の実施形態では、本発明は、(i)CD3と、(ii)癌細胞上の表面標的抗原と、に特異的に結合する二重特異的結合分子に関する。ここで、結合分子は、(a)CD3に特異的に結合する抗体と、(b)癌細胞上の表面標的抗原に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドと、を含み、前記Fyn−SH3由来ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列からなる。ただし、(i)配列番号1のアミノ酸位置10〜19内の少なくとも1つのアミノ酸は、置換、欠失、または付加されていること、かつ(ii)配列番号1のアミノ酸位置29〜36内の少なくとも1つのアミノ酸は、置換、欠失、または付加されていること、を条件とし、前記ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有し、同一性の決定では、配列番号1のアミノ酸位置12〜17および31〜34が除外されること、を条件とする。

0014

「(i)CD3と、(ii)癌細胞上の表面標的抗原と、に特異的に結合する二重特異的結合分子」という用語は、本発明に係る結合分子が、CD3の抗原と、癌細胞上の表面標的抗原の抗原であって、CD3とは異なる、抗原と、に特異的に結合可能であることを意味する。さらに、本発明に係る二重特異的結合分子は、前記2つの標的に同時に結合可能である。したがって、本発明に係る「CD3二重特異的結合分子」という用語はまた、2つの結合特異性を含み、1つ目は、CD3に対するものであり(「抗CD3」)、2つ目は、癌細胞上の異なる表面標的抗原に対するものである(「癌細胞上の抗表面標的抗原」または「抗腫瘍抗原」)。

0015

本発明によれば、それぞれの分子が類似の構造のエピトープと本質的に交差反応しない場合、分子は、特異的に結合するとみなされる(本明細書では特異的に相互作用するとしても参照される)。研究対象の一群の分子の交差反応性は、たとえば、対象となるエピトープに対する、さらにはいくつかの多かれ少なかれ(構造上および/または機能上)関連性の強いエピトープに対する、通常の条件下での前記一群の分子の結合を評価することにより、試験されうる。その適合状況で、対象となるエピトープ(たとえば、タンパク質構造中の特異的モチーフ)には結合するが、他のエピトープのいずれにも本質的に結合しない分子のみが、対象となるエピトープに特異的であるとみなされる。対応する方法は、たとえば、Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988またはHarlow and Lane,Using Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999に記載されている。「類似の構造のエピトープと本質的に交差反応しない分子」という用語は、本明細書で用いられる場合、類似の構造のエピトープに対する親和性の少なくとも5倍の親和性で、より好ましくは少なくとも10倍の親和性で、たとえば、少なくとも50倍の親和性などで、より好ましくは少なくとも100倍の親和性で、たとえば、少なくとも500倍の親和性などで、標的抗原に結合する分子を意味する。さらにより好ましくは、それは、類似の構造のエピトープに対する親和性の少なくとも1.000倍の親和性で、たとえば、少なくとも10.000倍の親和性などで、最も好ましくは少なくとも100.000倍の親和性で、標的抗原と結合する。

0016

好ましくは、本発明に係る二重特異的結合分子は、5×10−7〜10−12M、より好ましくは10−8〜10−12M、最も好ましくは10−9〜10−12MのKDで、CD3に結合する。同様に、本発明に係る二重特異的結合分子は、10−7〜10−12M、より好ましくは10−8〜10−12M、最も好ましくは10−9〜10−12MのKDで、癌細胞上の選択された表面標的抗原に結合する。

0017

エピトープは、コンフォメーショナルエピトープまたは連続エピトープでありうる。ポリペプチド抗原では、コンフォメーショナル(または不連続)エピトープは、一次配列では離れているが、ポリペプチドが天然三次元構造フォールディングされてエピトープを構成した場合、分子の表面で互いに近接して位置する、2つ以上の個別のアミノ酸残基が存在することにより特徴付けられる(Sela,(1969)Science 166,1365 and Laver,(1990)Cell 61,553−6)。エピトープに寄与する2つ以上の個別のアミノ酸残基は、離れたセクション中に存在するか、さらには抗原の2つ以上の(ポリペプチド鎖中に存在する。これとは対照的に、線状または連続エピトープは、(ポリ)ペプチド鎖の単一の線状セグメント中に近接して位置する2つ以上の個別のアミノ酸残基からなる。

0018

「癌細胞上の表面標的抗原」という用語は、非腫瘍細胞上で発現されないかまたは非腫瘍細胞上よりも多量に腫瘍細胞上で発現される抗原を意味する。「癌細胞上の表面標的抗原」、「腫瘍抗原」、および「腫瘍関連抗原」という用語は、本明細書では同義的に用いられる。癌細胞上の表面標的抗原は、CD3抗原ではなく、より好ましくは、T細胞レセプターの成分内の抗原ではない。好ましくは、抗原は、非腫瘍細胞上の少なくとも2倍の量で、より好ましくは少なくとも5倍の量で、たとえば、少なくとも10倍の量などで、さらにより好ましくは少なくとも100倍の量で、たとえば、少なくとも1000倍の量などで、最も好ましくは少なくとも10.000倍の量で、腫瘍細胞上に発現される。好適な標的抗原としては、腫瘍細胞上により強力に発現される任意の抗原が挙げられる。好ましくは、抗原は、以下で本明細書に定義される抗原の1つである。

0019

ペプチド」という用語は、30アミノ酸までの線状分子鎖を意味する。一方、本明細書で「タンパク質」という用語と同義的に用いられる「ポリペプチド」という用語は、一本鎖タンパク質またはその断片を含めて、30アミノ酸超を含有するアミノ酸の線状分子鎖を記述する。本明細書で用いられる「(ポリ)ペプチド」という用語は、ペプチドおよびポリペプチドの両方を意味する。(ポリ)ペプチドは、少なくとも2つの同一または異なる分子からなるオリゴマーを形成しうる。そのような多量体の対応する高次構造は、それに対応して、ホモまたはヘテロ二量体、ホモまたはヘテロ三量体などと称される。融合タンパク質のホモ二量体、三量体などもまた、「ポリペプチド」という用語の定義に分類される。さらに、アミノ酸および/またはペプチド結合機能的アナログにより置き換えられた(ポリ)ペプチドのペプチド模倣体もまた、本発明に包含される。そのような機能的アナログは、20種の遺伝子コードアミノ酸以外のすべての既知のアミノ酸、たとえば、セレノシスチンを含む。「ポリペプチド」および「ペプチド」という用語はまた、たとえば、グリコシル化アセチル化リン酸化、および当技術分野で周知の類似の修飾により修飾が行われた天然修飾(ポリ)ペプチドを意味する。

0020

本発明によれば、結合分子は、(a)に定義された抗体と、(b)に定義されたFyn−SH3由来ポリペプチドと、を含むかまたはそれからなる。

0021

前記Fyn−SH3由来ポリペプチドの1つ以上のコピー、たとえば、Fyn−SH3由来ポリペプチドの2、3、または4つのコピーなどが、本発明に係る二重特異的結合分子中に存在しうることは、分かるであろう。Fyn−SH3由来ポリペプチドの2つのコピーが存在することが好ましい。Fyn−SH3由来ポリペプチドの2つのコピーが存在する場合、次の好ましい選択肢利用可能である。すなわち、(i)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの重鎖の第1のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの重鎖の第2のN末端に結合される(すなわち、別の言い方をすれば、前記2つのポリペプチドの第1のコピーは、前記抗体の第1の重鎖のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2のコピーは、前記抗体の第2の重鎖のN末端に結合される)か、(ii)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの重鎖の第1のC末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの重鎖の第2のC末端に結合されるか、(iii)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの軽鎖の第1のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの軽鎖の第2のN末端に結合されるか、または(iv)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの軽鎖の第1のC末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの軽鎖の第2のC末端に結合される。

0022

本明細書では「Fynomer(登録商標)」という用語と同義的に用いられる「FynSH3由来ポリペプチド」という用語は、ヒトFynSH3ドメインに由来する非免疫グロブリン由来結合ポリペプチド(たとえば、いわゆる足場)を意味する。FynSH3由来ポリペプチドは、当技術分野で周知であり、たとえば、Grabulovski et al.(2007)JBC,282,p.3196−3204、国際公開第2008/022759号パンフレット、Bertschinger et al(2007)Protein Eng Des Sel 20(2):57−68、Gebauer and Skerra(2009)Curr Opinion in Chemical Biology 13:245−255、またはSchlatter et al.(2012),MAbs 4:4,1−12に記載されている。

0023

FynキナーゼのSH3ドメイン(FynSH3)は、63残基、すなわち、Semba et al.(1986)(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83(15):5459−63)およびKawakami et al.(1986)(Mol Cell Biol.6(12):4195−201)により報告された配列のアミノ酸83〜145を含み、配列番号1に示されるように、配列



を有する。Fynは、チロシンキナーゼのSrcファミリーの59kDaメンバーである。選択的スプライシングの結果として、Fynタンパク質は、そのキナーゼドメインが異なる2つの異なるアイソフォームで存在し、一方のフォームは、胸腺細胞脾細胞、およびいくつかの血液リンパ細胞系に見いだされるが、第2フォームは、主に脳内で蓄積する(Cooke and Perlmutter(1989),New Biol.1(1):66−74)。細胞内タンパク質であるFynの生物学的機能は、多様であり、T細胞レセプターを介するシグナリング脳機能の調節、さらには接着媒介シグナリングを含む(Resh(1998)Int.J.Biochem.Cell Biol.30(11):1159−62)。他のSH3ドメインとまったく同様に、FynSH3は、2つの逆平行βシートで構成され、他のタンパク質と相互作用するために2つのフレキシブルループRT−Srcループおよびn−Srcループ)を含有する。2つのフレキシブルループ(RT−Srcループおよびn−Srcループと呼ばれる)の配列は、それぞれ、配列番号1に下線および二重下線が付されている。配列番号1のFynSH3のアミノ酸配列は、ヒト、マウス、ラット、およびサルギボン)の間で完全に保存される。

0024

当技術分野で示されているように(国際公開第2008/022759号パンフレット、Grabulovski et al.(2007)JBC,282,p.3196−3204)、FynSH3ドメインは、結合ポリペプチド、すなわち、Fynomer(登録商標)を生成するためのとくに魅力的な足場である。この理由は、Fynomer(登録商標)が、(i)多量に可溶形で細菌中で発現可能であり、(ii)溶液中に保存したときに凝集することがなく、(iii)非常に安定であり(Tm70.5℃)、(iv)システイン残基がなく、かつ(v)マウスからヒトまで完全に保存されたアミノ酸配列を特徴として、最初からヒトに由来するものであるため、望ましくない免疫原性反応が低減されていることにある。

0025

本発明に係るFynomer(登録商標)は、好ましくは、天然に存在するまたは天然から単離されたタンパク質を含有する天然SH3ドメインではない。言い換えれば、本発明の範囲は、好ましくは、野生型SH3ドメイン含有タンパク質を除外する。天然には豊富なSH3ドメイン含有タンパク質が存在する。これらの天然SH3タンパク質は、天然リガンドへの結合親和性を有する。これらの天然SH3リガンドのほとんどは、PxxPモチーフを有する。本発明に係るFynomer(登録商標)は、野生型SH3ドメインの標的とは異なる非天然標的への親和性を有するように設計された工学操作タンパク質である、SH3ドメインの非天然標的は、前記標的が天然に存在する野生型SH3ドメインの天然(すなわち野生型)細胞内リガンドでないかぎり、任意の標的でありうる。たとえば、SH3ドメインの非天然標的は、前記標的が天然に存在する野生型SH3ドメインの天然細胞内リガンドでないかぎり、天然に存在する、好ましくは哺乳動物に存在する、より好ましくはヒトに存在する、任意の標的でありうる。より好ましくは、本発明に係るFynomer(登録商標)は、任意の天然細胞内SH3結合リガンド、最も好ましくは、PxxPモチーフを有する任意の天然細胞内SH3結合リガンドへの結合親和性を本質的に有していない。

0026

特定の標的抗原に特異的に結合するFynSH3由来ポリペプチドの誘導については、当技術分野で記載されてきた。たとえば、以上の配列番号1に示される配列が改変された異なるFynSH3のライブラリーを作製することが可能である。好ましくは、改変は、(i)RTループ(以上の配列番号1に下線付きで示される)に相当する配列で、もしくは任意選択で前記配列(すなわち配列番号1中の配列DYEARTEDDL)に2アミノ酸まで近接した位置で、または(ii)Scrループ(以上の配列番号1に二重下線付きで示される)で、もしくは任意選択で前記配列(すなわち配列番号1中の配列ILSSGD)に2アミノ酸まで近接した位置で、または(iii)両方の配列で同時に、行われる。好ましくは、改変は、当技術分野で記載されるように、置換、欠失、または付加である(たとえば、国際公開第2008/022759号パンフレット、Grabulovski et al.(2007)JBC,282,p.3196−3204を参照されたい)。アミノ酸配列を改変する手段および方法は、当技術分野で周知であり、たとえば、当技術分野でGrabulovski et al.(2007)JBC,282,p.3196−3204に記載されている。

0027

続いて、このFynSH3ライブラリーは、ファージミドベクター、たとえば、pHEN1(Hoogenboom et al.“Multi−subunit proteins on the surface of filamentous phage:methodologies for displaying antibody(Fab)heavy and light chains”,Nucleic AcidsRes,19(15):4133−7,1991)中にクローニング可能であり、続いて、ライブラリーは、ファージ上に提示され、そしてパニング、好ましくは、パニングのラウンドの繰返し、たとえば、それぞれの抗原に対して少なくとも2ラウンド、より好ましくは少なくとも3ラウンドのパニングなどに付されうる。次いで、確立された技術、たとえば、モノクロナールファージELISAなどにより、結合(ポリ)ペプチドのスクリーニングを行うことが可能である。次いで、こうして同定されたクローン配列決定を利用して、富化配列を明らかにしうる。こうして同定された結合(ポリ)ペプチドは、たとえば、同定された配列の改変に基づいて追加のライブラリーを作製することにより、さらなる成熟工程、ならびにファージディスプレイ工程およびパニング工程の繰返しに付されうる。最後に、得られたFynSH3由来ポリペプチドの交差反応性および免疫原性分析し、標的抗原に特異的なFynSH3由来ポリペプチドを選択することが可能である。

0028

ファージディスプレイスクリーニングおよび結合(ポリ)ペプチド最適化の方法は、当技術分野で広く知られている。

0029

本発明との関連では、FynキナーゼSH3ドメイン(RT−Srcループと称されることもある)のRTループは、配列番号1の位置12〜17に位置するアミノ酸「EARTED」からなる。RTループでまたはそれに近接して置換、欠失、および/または付加、すなわち、突然変異される位置は、本発明によれば、アミノ酸10〜19、好ましくは11〜18、より好ましくは12〜17である。

0030

同様に、本発明との関連では、FYNキナーゼ(n−Srcループと称されることもある)のsrcループは、配列番号1の位置31〜34に位置するアミノ酸NSSEからなる。srcループでまたはそれに近接して置換、欠失、および/または付加、すなわち、突然変異される位置は、本発明によれば、アミノ酸29〜36、好ましくは30〜35、より好ましくは31〜34である。

0031

挙げられた少なくとも85%の配列同一性は、任意のより高値の配列同一性を包含する。配列同一性の想定される値は、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、および100%である。配列同一性を決定する場合、指定のアミノ酸位置(12〜17および31〜34)(それらの位置は配列番号1からなる配列との関連で定義される)は、無視されるべきである。別の言い方をすれば、主要な実施形態のアイテム(i)および(ii)は、配列番号1の野生型SH3ドメイン配列に対して異なることが必要であり、Fynomer(登録商標)配列の残りの部分は、野生型に対して85%〜100%の配列同一性を有する。そのような定義された配列同一性の決定は、たとえば、ペアワイズ配列アライメントを行い、アライメントプログラムにより報告された配列同一性を無視し、配列番号1の位置31〜34および12〜17が考慮されないように配列同一性の程度を再評価することにより、行われうる。配列同一性のそのような再評価は、当業者であれば、これらの決定指示を考慮してさらなる労力をかけることなく行うことが可能である。記載のごとく、12〜17および31〜34の範囲は、以上の配列番号1の配列の表示で下線が付されている。両側に2つのフランキングアミノ酸を含む場合、10〜19および29〜36の範囲(常に、配列番号1からなる配列のアミノ酸に基づく)が得られ、主要な実施形態のアイテム(i)および(ii)に係る領域は、いずれの場合も、1、2、3、4、5、または6つのアミノ酸の置換、欠失、または付加が行われるべきである。

0032

本明細書で用いられる場合、アミノ酸配列間の「アミノ酸配列同一性」という用語は、生化学分野の当業者の一般に広く使用されるアライメントおよび比較の技術に関することを意味する。2つのアミノ酸配列のアミノ酸配列同一性は、通常のアライメントの方法およびツールにより決定可能である。たとえば、配列番号1のアミノ酸配列に対する任意のポリペプチドのアミノ酸配列同一性の程度を決定するために、好ましくは、SIM局所類似性プログラムが利用される(Xiaoquin Huang and Webb Miller(1991),Advances in Applied Mathematics,vol.12:337−357)。これは、著者らおよびその研究所から自由に入手可能である(世界的なウェブ:http://www.expasy.org/tools/sim−prot.htmlも参照されたい)。多重アライメント分析については、好ましくは、ClustalWが使用される(Thompson et al.(1994)Nucleic AcidsRes.,22(22):4673−4680)。配列番号1のアミノ酸配列に対するポリペプチドのアミノ酸配列同一性の程度は、配列番号1の位置12〜17および31〜34を除いて、配列番号1の全配列に対して決定される。

0033

置換は、保存的置換または非保存的置換でありうるが、好ましくは保存的置換である。いくつかの実施形態では、置換はまた、天然に存在するアミノ酸と天然に存在しないアミノ酸との交換を含む。保存的置換は、置換されるアミノ酸に類似した化学的性質を有する他のアミノ酸によるアミノ酸の置換を含む。好ましくは、保存的置換は、(i)異なる塩基性アミノ酸による塩基性アミノ酸の置換、(ii)異なる酸性アミノ酸による酸性アミノ酸の置換、(iii)異なる芳香族アミノ酸による芳香族アミノ酸の置換、(iv)異なる非極性脂肪族アミノ酸による非極性脂肪族アミノ酸の置換、および(v)異なる極性荷電アミノ酸による極性非荷電アミノ酸の置換からなる群から選択される置換である。塩基性アミノ酸は、アルギニンヒスチジン、およびリシンからなる群から選択される。酸性アミノ酸は、アスパラギン酸またはグルタメートから選択される。芳香族アミノ酸は、フェニルアラニンチロシン、およびトリプトファンからなる群から選択される。非極性脂肪族アミノ酸は、グリシンアラニンバリンロイシンメチオニン、およびイソロイシンからなる群から選択される。極性非荷電アミノ酸は、セリントレオニンシステインプロリンアスパラギン、およびグルタミンからなる群から選択される。保存的アミノ酸置換とは対照的に、非保存的アミノ酸置換は、以上に概説された保存的置換(i)〜(v)に分類されない任意のアミノ酸による1つのアミノ酸の交換である。

0034

CD3(分化クラスター3)T細胞コレセプターまたは本明細書では単純に「CD3」として参照されるものは、タンパク質複合体であり、4つの個別の鎖で構成される。哺乳動物では、複合体は、CD3γ鎖、CD3δ鎖、および2つのCD3ε鎖を含有する。これらの鎖は、T細胞レセプター(TCR)として知られる分子およびζ鎖に会合して、Tリンパ球中に活性化シグナルを生成する。TCR、ζ鎖、およびCD3分子は、一緒になってTCR複合体を構成する。以上で考察したように、ネズミ抗CD3抗体およびヒト化抗CD3抗体、たとえば、ムロモナブCD3(Norman DJ(1995)Ther Drug Monit 17(6),pp.615−620)、テプリズマブおよびオテリキシズマブ(Chatenoud L.(2010)6(3),pp.149−157)、ならびにCris−7(Alberola−Ila J.et al.(1991),J Immunol,146(4),pp.1085−1092)、さらにはSP34などの他のもの(Conrad et al.(2007)Cytometry,71(11),pp.925−933)は、当技術分野で周知である。それに加えて、癌患者を治療するためのCD3と癌細胞上の表面標的抗原との両方を認識するいくつかの二重特異的抗体方式が、文献に記載されてきた。しかしながら、記載のごとく、多くの二重特異的CD3方式は、生成の容易性、生成収量、生成物の溶解性、および生成物の薬動学パラメーター満足すべきものではないなど、不十分な薬剤的性質を呈する。

0035

本発明に従って用いられる「抗体」という用語は、たとえば、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を含む。さらにまた、依然として結合特異性を保持するその誘導体または断片は、「抗体」という用語に含まれる。抗体のフラグメントまたは誘導体は、とくに、FabまたはFab’フラグメント、Fd、F(ab’)2、FvまたはscFvフラグメント単一ドメインVHまたはV様ドメイン、たとえば、VhHまたはV−NARドメイン、さらには多量体方式、たとえば、ミニボディー、ダイアボディー、トリボディー、テトラボディー、または化学的コンジュゲートFab’多量体を含む(たとえば、Altshuler et al.,2010.,Holliger and Hudson,2005を参照されたい)。「抗体」という用語はまた、キメラ抗体(ヒト定常ドメイン、非ヒト可変ドメイン)、一本鎖抗体、およびヒト化抗体(非ヒトCDRを除いてヒト抗体)などの実施形態を含む。2つの重鎖と2つの軽鎖とからなるヒト化全長IgG抗体が最も好ましい。したがって、「全長抗体」という用語は、2つの重鎖と2つの軽鎖とからなる抗体を意味する。

0036

「抗体のFc部分」は、当業者に周知の用語であり、抗体のパパイン切断に基づいて定義される。その重鎖の定常領域のアミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンは、次のクラス、すなわち、IgAIgDIgE、IgG、およびIgMに分類され、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、たとえば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4、IgA1およびIgA2)にさらに分類される。重鎖定常領域に従って、異なるクラスの免疫グロブリンは、それぞれ、[α]、[δ]、[ε]、[γ]、および[μ]と呼ばれる。抗体のFc部分は、補体活性化、C1q結合、およびFcレセプター結合に基づいて、ADCC(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害)およびCDC(補体依存性細胞傷害)を直接関与する。4つのヒトIgGアイソタイプは、異なるレセプター、たとえば、新生児Fcレセプター、活性化Fcγレセプター、FcgRI、FcgRIIa、およびFcgRIIIa、阻害レセプターFcgRIIb、ならびにC1qに結合して、非常に異なる活性を生成する。ヒト抗体のFc部分の活性化レセプターおよび阻害レセプターへの親和性は、工学操作して改変可能であることが知られている(Strohl W.(2009)Curr Opin Biotechnol,20,p.685−691を参照されたい)。

0037

本発明に係る二重特異的結合分子内のCD3特異的結合抗体は、好ましくは、本発明に係る二重特異的結合分子のin vivo半減期の延長を可能にするFc部分を含む。そのようなFc部分は、好ましくは、ヒト起源、より好ましくは、IgG1抗体のヒトFc部分、さらにより好ましくは、活性化またはサイレンシングエフェクター機能を有するIgG1の工学操作ヒトFc部分に由来するものであり、サイレンシングエフェクター機能は、活性化エフェクター機能よりも好ましい。最も好ましくは、そのようなFc部分は、カバットEUインデックス(Johnson G.and Wu T.T.(2000)Nucleic AcidsRes.28 p 214−218を参照されたい)に基づいて番号付けしてL234およびL235に突然変異を有するサイレンシングエフェクター機能を備えたIgG1の工学操作ヒトFc部分である。構築物COVA420、COVA422、およびCOVA467の調製のために以下の本明細書の実施例で使用されている配列番号2および3を有する抗体は、サイレンシングエフェクター機能ならびに位置L234およびL235に突然変異を有する抗CD3抗体である。また、構築物COVA493、COVA494、COVA497、およびCOVA499の調製のために以下の本明細書の実施例で使用されている配列番号171および172を有する抗体は、カバットEUインデックス(Shields RL.et al(2001)J.Biol.Chem.276 p.6591−6604を参照されたい)に基づいて番号付けして位置D265およびP329にサイレンシングエフェクター突然変異を有する抗CD3抗体である

0038

抗体およびそのフラグメントを生成するための種々の技術は、当技術分野で周知で記載であり、たとえば、Altshuler et al.,2010に記載されている。したがって、ポリクローナル抗体は、添加剤およびアジュバントとの混合物で抗原により免疫化した後、動物の血液から取得可能であり、モノクローナル抗体は、連続細胞系培養により生成された抗体を提供する任意の技術により生成可能である。そのような技術の例は、たとえば、Harlow and Lane(1988)および(1999)に記載されており、Koehler and Milstein,1975により最初に記載されたハイブリドーマ技術、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(たとえば、Kozbor,1983、Li et al.,2006を参照されたい)、およびヒトモノクローナル抗体を生成するEBVハイブリドーマ技術(Cole et al.,1985)を含む。さらに、組換え抗体は、モノクローナル抗体から取得されうるか、またはファージ、リボソームmRNA、細胞ディスプレイなどの種々のディスプレイ方法を用いて、de novoで調製可能である。組換え体(ヒト化)抗体またはそのフラグメントを発現するのに好適な系は、たとえば、細菌、酵母昆虫哺乳動物細胞系、またはトランスジェニック動物もしくは植物から選択されうる(たとえば、米国特許第6,080,560号明細書、Holliger and Hudson,2005を参照されたい)。さらに、一本鎖抗体の生成のために記載された技術(とくに、米国特許第4,946,778号明細書を参照されたい)は、本発明に係る標的に特異的な一本鎖抗体を生成するのに適合しうる。BIAcoreシステムで利用される表面プラズモン共鳴を用いて、ファージ抗体の効率を増加させることが可能である。

0039

本発明に係る二重特異的結合タンパク質は、明快有機合成戦略、固相支援合成技術などの多くの従来の周知の技術のいずれかによりまたは市販の自動合成装置により、調製されうる。一方、従来型の組換え技術単独でまたは従来の合成技術との組合せにより、調製することも可能である。本発明に係る二重特異的結合分子は、以下で本明細書の(a)および(b)に定義された化合物を組み合わせることにより取得されうる。

0040

上述したように、CD3と癌細胞上の表面標的抗原との両方を認識するいくつかの二重特異的抗体は、非常に強力な抗腫瘍死滅活性を呈する。したがって、BiTE(登録商標)抗体は、標的腫瘍抗原を発現する細胞のリダイレクト溶解の高い効力を呈する。BiTE(登録商標)抗体のEC50値は、0.1〜50pMの範囲である(Bauerle PA and Reinhardt C.(2009)Cancer Res.69(12),pp.4941−4944)。腫瘍細胞の強力な細胞死滅は、薬理学的に望ましい効果を発揮するために必要とされる。レビューでは、BiTE(登録商標)方式の強力な死滅能力は、(1)標的とエフェクター細胞とをごく近接させることにより細胞溶解シナプスの形成を可能にするその小サイズ、および(2)標的細胞不在下でエフェクター細胞の全身性活性化を予防するTCR複合体のその1価エンゲージメント、に帰属されると、Rader C.により報告されている(Rader C,(2011),Blood,117(17),pp.4403−4404)。それに加えて、BiTE(登録商標)クラスの二重特異的抗体は、典型的には、他のCD3二重特異的方式および完全モノクローナルIgG1抗体と対比して腫瘍細胞溶解に関して100〜10,000倍の有効性を有すると、先行技術により記載されている(Wolf et al(2005)Drug Discov Today 10(18),pp.1237−1244)。完全抗体はまた、本発明に係る二重特異的結合分子の一部を形成する。より小さい1価BiTE(登録商標)方式(55kDa)は、より大きい2価tandab(登録商標)方式(約115kDa)よりもかなり強力であることが、Mφlhφj M.らによりさらに示された(特定のアッセイでは2000倍超)(Mφlhφj M.et al,(2007),Mol Immunol,44(8),pp.1935−1943)。CD3へのBiTE(登録商標)の1価結合は、BiTE(登録商標)分子の強力な死滅活性に寄与することが、著者らにより指摘されている。

0041

要約すると、小さい1価抗CD3×抗腫瘍抗原の二重特異的抗体方式(たとえば、BiTE(登録商標)方式)は、大きい2価CD3二重特異的方式よりも強力なリダイレクトT細胞死滅活性を呈することが、先行技術により教示される。したがって、強力な抗腫瘍死滅は、典型的には、小さい1価CD3二重特異的方式で取得されるため、先行技術では、大きい2価CD3二重特異的方式を使用しないことが推奨される。

0042

驚くべきことに、完全抗CD3抗体とFynomerの2つのコピーとからなる二重特異的結合分子は、腫瘍関連抗原に結合して、強力なリダイレクトT細胞死滅活性を媒介しうることが、本発明との関連で見いだされた。注目すべきこととして、本発明に係る二重特異的結合分子は、約165kDaのサイズを有する。本発明に係る大きい二重特異的結合分子のT細胞媒介細胞傷害性は、予想外なことに、以上で考察された先行技術の教示とは対照的に、小さい1価CD3二重特異的分子、すなわち、BiTE(登録商標)方式で典型的に見られるのと同等の範囲内である。本発明に係るCD3二重特異的結合分子および先行技術の1価CD3二重特異的分子の両方の非常に強力な抗腫瘍死滅活性を実証する比較データが、本明細書の実施例に提供される。より特定的には、抗CD3抗体と、3つの異なる腫瘍関連抗原に結合するFynomerと、からなる融合タンパク質の例が、示されている。実施例1および図5に示されるように、本発明に係るCD3/HER2二重特異的分子COVA420(配列番号163および164)は、小さい1価二重特異的scFv対照(配列番号167)の細胞傷害有効性と同程度に良好な細胞傷害有効性を示し、両方とも、2桁のpM範囲内のEC50値を有する(それぞれ、87pMおよび60pMのEC50値)。本発明に係るEGFR/CD3二重特異的分子COVA493(配列番号170および172)、COVA494(配列番号171および198)、COVA497(配列番号199および172)、COVA499(配列番号171および200)が記載されている実施例2、さらには本発明に係るCD33/CD3二重特異的分子COVA467(配列番号2および175)が記載されている実施例3は、本発明に係る二重特異的分子の強力なリダイレクトT細胞死滅活性を追加的に示している。それに加えて、図6は、メディエーターとして富化T細胞を用いた死滅アッセイで、本発明に係る二重特異的分子COVA420(配列番号163および164)およびCOVA422(配列番号165および166)の両方から、ピコモルのEC50値が得られたことを示している(それぞれ、8pMおよび175pM)。さらに、本明細書の実施例より示されるように、本発明に係るFynomer−抗体融合体は、二重特異的scFv対照抗体方式(配列番号167、配列番号173、および配列番号176)にほぼ匹敵する非常に有利な発現収量(CHO細胞一過性トランスフェクション後、2桁のmg/l範囲内)を示す。それに加えて、本発明に係るFynomer−抗体融合体は、有利な生物物理学的性質を有し、かつ凝集することがなく(図3、図11、および図15.A)、しかもin vivoで長いIgG様半減期を呈する(図8)。半減期が増加すれば、持続注入の必要がなく、かつ/または逐次治療の間隔を長くすることができることから、健康管理システムのコスト負担の低減にも役立つため、その有意な便益が患者に直接もたらされる。毎週2回の注入後、COVA420(配列番号163および164)は、in vivo腫瘍モデルで有意な腫瘍成長遅延を呈し、これが、scFv対照分子(COVA446(配列番号167)、毎日1回注入)と比較して優れていたことから、COVA420の強力な抗腫瘍有効性がさらに実証される(図9)。

0043

さらに記載のごとく、サイズが小さいため、1価CD3二重特異的分子は、わずか数時間の短い血清中半減期により特徴付けられる。したがって、多くの場合、治療される患者には便利でないポータブルミニポンプを用いて連続静脈内注入により小サイズ1価CD3二重特異的分子を投与することが必要である。有利なことに、本発明に係る二重特異的分子は、全長抗体で典型的に得られるのとほぼ同一の血清中半減期を有し(実施例参照)、血清中半減期は、1価CD3二重特異的分子の血清中半減期よりも優れている。1価CD3二重特異的分子の他の主要な限界は、Fcレセプターへの結合などの機能性に関連付けられ抗体の定常領域が欠如していることである。本発明に係る二重特異的分子は、抗CD3抗体の定常領域を含む。

0044

したがって、本発明に係るCD3二重特異的結合分子は、1価CD3二重特異的分子および完全抗CD3抗体の利点を兼備している。

0045

1価CD3二重特異的分子、とくにBiTE(登録商標)抗体よりも優れた、本発明に係るCD3二重特異的結合分子の他の利点は、癌細胞で過剰発現される多くの表面標的抗原が、有意により低レベルであるが、非腫瘍細胞でも発現されるという周知の以上で考察された事実に基づく。強力なリダイレクトT細胞死滅活性を媒介する二重特異的分子は、理想的には、高レベルの表面抗原を有する癌細胞に対しては選択的にその活性を発揮するが、低レベルの表面抗原を有する正常細胞に対しては発揮しない。

0046

したがって、BiTE(登録商標)抗体は、腫瘍抗原を発現する細胞のリダイレクト溶解の高い効力を呈するが、BiTE(登録商標)抗体の主要な欠点の1つは、より低レベルで腫瘍抗原を発現する非腫瘍細胞をかなりの程度まで死滅させることである。たとえば、抗CD3/EGFRBiTE(登録商標)は、注入開始の56時間後以内に31および154μg/kg/dの用量でサルにおいて重度の毒性徴候を示すことが、Lutterbueseらにより報告された(Lutterbuese R.et al.(2010)PNAS,vol 107,no.28,pp.12605−12610)。31または154μg/kg/dでC−BiTEを摂取した動物の組織病理学的分析では、肝毒性および腎毒性徴候が示された。それは、これらの臓器で低レベルのEGFRを発現する細胞のリダイレクト溶解の結果であると思われる。さらに、著者らは、EGFRを発現することが知られているすべての組織、すなわち、唾液腺肝臓小腸結腸直腸腎臓副腎尿管膀胱前立腺、および精巣上体での細胞死に注目している。

0047

二重特異的scFv抗体フラグメントによるEGFR発現細胞の非選択的死滅もまた、以下の本明細書の実施例で確認される。乳癌MDA−MB−468細胞は、EGFRをかなり過剰発現するが、結腸癌HT29細胞は、非腫瘍細胞にほとんど等しいEGFRの発現レベルを有している(Yingjie et al(2005);Mol Cancer Ther,4(3):435−442)。実施例2.3に示されるように、二重特異的抗CD3/EGFR scFv抗体フラグメント(配列番号173)は、高EGFR発現レベル(MDA−MB−468細胞)さらには低EGFR発現レベル(HT29細胞)を有する細胞の強力なリダイレクト溶解を媒介した。EC50値は、MDA−MB−468細胞およびHT29細胞の死滅に対して、それぞれ、0.2pMおよび2.5pMであった(すなわち、12.5倍差にすぎない)。したがって、EGFRで例示されるように、二重特異的scFv抗体フラグメントは、表面腫瘍抗原を過剰発現する細胞に対して選択的に強力なリダイレクトT細胞死滅活性を媒介することができない。非腫瘍細胞のかなりの望ましくない細胞死滅副作用は、本発明者により、さらには以上で考察された文献Lutterbuese R.らにより、観測された。

0048

これとは対照的に、驚くべきことに、抗CD3抗体と、腫瘍関連抗原に結合するFynomerと、からなる二重特異的結合分子は、抗原を過剰発現する細胞に対して強力なリダイレクトT細胞死滅活性を選択的に媒介可能であるが、より低レベルの抗原を有する細胞は、高濃度であっても死滅されないことを見いだした。実施例2.3に示されるように、抗CD3抗体と、EGFRに結合するFynomerの2つのコピーと、からそれぞれなる4つの異なる二重特異的結合分子では、高および低EGFR発現細胞間の死滅活性差は、580倍〜>3’500倍の範囲内であった。

0049

それに加えて、CD3とHER2発現細胞とを標的とする二重特異的scFv抗体フラグメントはまた、高レベルでさらには低レベルでHER2を発現する細胞の両方を非選択的に死滅させることは、本発明の実施例1.7から明らかである。卵巣癌SKOV−3細胞は、HER2をかなり過剰発現するが、乳癌MCF−7細胞は、かなり低いHER2発現レベルを有する(Lattrich et al.(2008),Oncology Reports,19:811−817)。実施例1.7に示されるように、二重特異的抗CD3/HER2 scFv抗体フラグメント(配列番号167)は、高いHER2発現レベル(SKOV−3細胞)さらには低いHER2発現レベル(MCF−7細胞)を有する細胞の強力なリダイレクト溶解を媒介した。EC50値は、SKOV−3細胞およびMCF−7細胞の死滅に対して、それぞれ、2.3pMおよび53pMであった(すなわち、23倍差にすぎない)。したがって、CD3およびHER2に対する二重特異的scFv抗体フラグメントもまた、表面腫瘍抗原を過剰発現する細胞に対して選択的に強力なリダイレクトT細胞死滅活性を媒介することができない。この場合も、非腫瘍細胞のかなりの望ましくない細胞死滅副作用が、本発明者らにより観測されたことから、CD3およびEGFRに対する二重特異的scFv抗体フラグメントと関連で得られた結果が確認される。

0050

この場合もまた、驚くべきことに、抗CD3抗体と、腫瘍関連抗原すなわちHER2に結合するFynomerと、からなる二重特異的結合分子は、抗原を過剰発現する細胞に対して強力なリダイレクトT細胞死滅活性を選択的に媒介可能であるが、より低レベルの抗原を有する細胞は、高濃度であっても死滅されないことを見いだした。抗CD3抗体と、HER2に結合するFynomerの2つのコピーと、からなる二重特異的結合分子(配列番号163および164)に関して、実施例1.7および図10に示されるように、高および低HER2発現細胞間の死滅活性差は、>4310倍であった。

0051

抗原を過剰発現する腫瘍細胞は選択的死滅を受けるが、正常抗原レベルを有する細胞は損傷を受けないことから、CD3ベースの手法の治療ウィンドウが改善されるため、有意な便益が患者に直接もたらされる。したがって、非腫瘍細胞の望ましくない細胞死滅副作用は、本発明に係る二重特異的抗体構築物の使用により、最小限に抑えることが可能であるか、さらには回避可能である。

0052

本発明の好ましい実施形態によれば、CD3に特異的に結合する抗体は、テプリズマブ、オテリキシズマブ、Cris−7、またはSP34である。

0053

抗体のテプリズマブ、オテリキシズマブ(Chatenoud L.(2010)6(3),pp.149−157)、Cris−7(Alberola−Ila J.et al.(1991),J Immunol,146(4),pp.1085−1092)、およびSP34は、先行技術から公知である。MGA031およびhOKT3−γ1(Ala−Ala)とも呼ばれるテプリズマブ(CAS−Nr:876387−05−2)は、ヒト化抗CD3モノクローナル抗体である。テプリズマブは、成熟Tリンパ球上に発現されるCD3ε鎖のエピトープに結合し、そうすることにより、複数の自己免疫疾患の根底をなす病理学免疫反応モジュレートしうる。特定的には、テプリズマブは、望ましくないエフェクターT細胞を阻害し、有益な調節性T細胞機能を促進することにより、免疫寛容を促進しうる。TRX4としても知られるオテリキシズマブ(CAS Nr 881191−44−2)は、同様にCD3のε鎖を標的とする。モノクローナル抗体Cris−7は、成熟ヒトT細胞上のCD3抗原を認識する。CD3抗原は、T細胞レセプター(TCR)およびζ鎖と会合してTリンパ球中に活性化シグナルを生成する4つの個別の鎖(CD3γ、CD3δ、および2つのCD3ε)で構成されるタンパク質複合体である。この抗体は、BMA BIOMEDICALSから取得可能である。SP34は、BD Biosciencesから取得可能である。

0054

本発明によれば、CD3に特異的に結合する抗体としてCris−7またはSP34のヒト化型を使用することが好ましい。

0055

抗体をヒト化する手段および方法は、当技術分野で十分に確立されている。たとえば、Riechmann et al.(1988),Nature 332(6162):332−323またはKashmiri et al.,Methods36(1):25−34を参照されたい。

0056

抗体のテプリズマブおよびオテリキシズマブは、サイレンシングエフェクター機能を有する抗体である。CD3に特異的に結合する抗体としてサイレンシングエフェクター機能を有するCris−7またはSP34の改変型を使用されることもまた、好ましい。本明細書で以下にさらに詳述されるように、サイレンシングエフェクター機能を有する抗体は、カバットEUインデックスに従って番号付けしてL234とL235または位置D265とP329に突然変異を有することが最も好ましい。CD3に特異的に結合する抗体として、サイレンシングエフェクター機能を有するCris−7またはSP34のヒト化型を利用することが好ましいことをも、理解すべきである。

0057

本発明の好ましい実施形態によれば、抗CD3抗体は、配列番号2および/または配列番号3を含むか、または配列番号2および配列番号3を含むかもしくはそれらからなる。

0058

本明細書全体を通して、配列番号2および配列番号3は、それぞれ、抗CD3抗体のVH領域およびVL領域であることを理解すべきである。本発明に係る抗CD3抗体が配列番号2のVH領域を含むが、配列番号3のVL領域を同時に含まない場合、抗CD3抗体は、配列番号3以外の抗CD3抗体のVL領域を含むことを理解すべきである。同様に、本発明に係る抗CD3抗体が配列番号3のVL領域を含むが、配列番号2のVH領域を同時に含まない場合、抗CD3抗体は、配列番号2以外の抗CD3抗体のVH領域を含むことを理解すべきである。

0059

本発明の他の好ましい実施形態では、抗CD3抗体は、配列番号171および/または配列番号172を含むか、または配列番号171および配列番号172を含むかもしくはそれらからなる。

0060

本明細書全体を通して、配列番号171および配列番号172は、それぞれ、抗CD3抗体のVH領域およびVL領域であることを理解すべきである。本発明に係る抗CD3抗体が配列番号171のVH領域を含むが、配列番号172のVL領域を同時に含まない場合、抗CD3抗体は、配列番号172以外の抗CD3抗体のVL領域を含むことを理解すべきである。同様に、本発明に係る抗CD3抗体が配列番号172のVL領域を含むが、配列番号171のVH領域を同時に含まない場合、抗CD3抗体は、配列番号171以外の抗CD3抗体のVH領域を含むことを理解すべきである。

0061

以下の本明細書の実施例から明らかなように、配列番号2および配列番号3を含む抗CD3抗体ならびに配列番号171および配列番号172を含む抗CD3抗体は、本発明を例示するために使用されている。

0062

本発明のさらなる好ましい実施形態によれば、結合分子は、HER2、CD19、EGFR、CEA、EPHA2、黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン、IGFR1、CD33、線維芽細胞活性化タンパク質α、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、c−MET、EpCAM、またはPSMAに特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含む。このリスト内では、EGFR、HER2、およびCD33が最も好ましい。3つの標的のこのリスト中では、EGFRおよびHER2が好ましく、EGFRが最も好ましい。

0063

したがって、本発明に係る好ましい結合分子は、HER2に特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含み、かつ配列番号2および/または配列番号3を含むか、CD19に特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含み、かつ配列番号2および/または配列番号3を含むか、EGFRに特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含み、かつ配列番号2および/または配列番号3を含むか、CEAに特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含み、かつ配列番号2および/または配列番号3を含むか、EPHA2に特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含み、かつ配列番号2および/または配列番号3を含むか、黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカンに特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含み、かつ配列番号2および/または配列番号3を含むか、IGFR1に特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含み、かつ配列番号2および/または配列番号3を含むか、CD33に特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含み、かつ配列番号2および/または配列番号3を含むか、線維芽細胞活性化タンパク質αに特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含み、かつ配列番号2および/または配列番号3を含むか、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含み、かつ配列番号2および/または配列番号3を含むか、c−METに特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含み、かつ配列番号2および/または配列番号3を含むか、EpCAMに特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含み、かつ配列番号2および/または配列番号3を含むか、またはPSMAに特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含み、かつ配列番号2および/または配列番号3を含む。

0064

同様に、本発明に係る好ましい結合分子は、HER2に特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含み、かつ配列番号171および/または配列番号172を含むか、CD19に特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含み、かつ配列番号171および/または配列番号172を含むか、EGFRに特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含み、かつ配列番号171および/または配列番号172を含むか、CEAに特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含み、かつ配列番号171および/または配列番号172を含むか、EPHA2に特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含み、かつ配列番号171および/または配列番号172を含むか、黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカンに特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含み、かつ配列番号171および/または配列番号172を含むか、IGFR1に特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含み、かつ配列番号171および/または配列番号172を含むか、CD33に特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含み、かつ配列番号171および/または配列番号172を含むか、線維芽細胞活性化タンパク質αに特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含み、かつ配列番号171および/または配列番号172を含むか、前立腺幹細胞抗原(PSCA)に特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含み、かつ配列番号171および/または配列番号172を含むか、c−METに特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含み、かつ配列番号171および/または配列番号172を含むか、EpCAMに特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含み、かつ配列番号171および/または配列番号172を含むか、またはPSMAに特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含み、かつ配列番号171および/または配列番号172を含む。

0065

以上で考察されたタンパク質および抗原は、癌細胞上に発現される表面標的抗原であるかまたはそれを含むことが、当技術分野で十分に特徴付けられている。

0066

Neu、ErbB−2、CD340(分化クラスター340)、またはp185としても知られるHER2(ヒト表皮成長因子レセプター2)は、ヒトにおいてERBB2遺伝子によりコードされるタンパク質である。HER2は、1984年に初めて記載された185kDaレセプターである(Schlechter et al(1984)Nature 312:513−516)。HER2は、表皮成長因子レセプター(EGFR/ErbB)ファミリーのメンバーである。ヒトHER2は、NCBI参照:NP_004439により表される。この遺伝子の増幅または過剰発現は、特定の侵攻性タイプの乳癌の病理発生および進行で重要な役割を果たすことが示されてきており、近年、発展して疾患に対する重要なバイオマーカーおよび療法標的になってきた。他のHER2陽性腫瘍としては、卵巣癌および胃癌が挙げられる。

0067

Bリンパ球抗原CD19またはCD19(分化クラスター19)は、ヒトにおいてCD19遺伝子によりコードされるタンパク質である(NCBI参照:NP_001171569)。CD19は、B細胞の顕著な特徴であるため、このタンパク質は、B−ALLおよび非ホジキンリンパ腫(NHL)を含めて、このタイプの細胞から生じる癌、とくに、B細胞性リンパ腫診断するためにおよびその治療標的として使用されてきた。

0068

表皮成長因子レセプター(EGFR、ErbB−1、ヒトではHER1)は、細胞外タンパク質リガンドの表皮成長因子ファミリー(EGFファミリー)のメンバーに対する細胞表面レセプターである(NCBI参照:NP_005219)。EGFRは、肺癌頭頸部癌、および結腸直腸癌でのその役割が知られている。

0069

癌胎児性抗原(CEA)は、細胞接着に関与する糖タンパク質である(NCBI参照:AAA66186)。結腸直腸癌、胃癌、膵臓癌、肺癌、および乳癌の個体、さらには髄様甲状腺癌の個体からの血清は、健常者よりも高レベルのCEAを有する(2.5ng/ml超)ことが判明した。

0070

EPHレセプターA2(エフリンA型レセプター2)は、ヒトにおいてEPHA2遺伝子によりコードされるタンパク質である(NCBI参照:AAH37166)。癌におけるEPHA2の役割は、たとえば、Kinch MS,Carles−Kinch K(2003).Clin.Exp.Metastasis 20(1):59−68から公知である。EphA2は、皮膚黒色腫を含めて多くの癌タイプで過剰発現されることが、研究で報告されてきた。EphA2は、リガンド非依存的神経膠腫細胞および前立腺癌細胞の移動を促進することが報告された(Udayakumar et al(2011),Oncogene 30:4921−4929)。

0071

黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)またはニューロングリア抗原2(NG2)としても知られるコンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(NCBI参照:NP_001888)は、ヒトにおいてCSPG4遺伝子によりコードされるコンドロイチン硫酸プロテオグリカンである。CSPG4は、内皮基底膜上に広がる黒色腫細胞初期イベント時に細胞基質間相互作用を安定化させる役割を果たす。それは、ヒト悪性黒色腫細胞により発現される内在性膜コンドロイチン硫酸プロテオグリカンである。

0072

インスリン様成長因子1(IGF−1)レセプター(NCBI参照:P08069)は、ヒト細胞表面上に見いだされるタンパク質である。それは、インスリン様成長因子1(IGF−1)と呼ばれるホルモンおよびIGF−2と呼ばれる関連ホルモンにより活性化される膜貫通レセプターである。IGF−1Rは、乳癌、前立腺癌、および肺癌を含めて、いくつかの癌に関与する。

0073

CD33またはSiglec−3は、骨髄系列の細胞上に発現される膜貫通レセプターである。CD33は、急性骨髄性白血病の治療標的として使用可能である。ヒトCD33は、NCBI参照配列:NP_001763.3)により表され、当技術分野では、たとえば、Raponi et al.(2011)Leuk.Lymphoma 52(6):1098−1107に記載されている。

0074

セプラーゼまたは170kDa黒色腫膜結合ゼラチナーゼとしても知られる線維芽細胞活性化タンパク質(NCBI参照:AAB49652)α(FAP)は、ヒトにおいてFAP遺伝子によりコードされるタンパク質である。それは、上皮癌反応性間質線維芽細胞、創傷治癒肉芽組織、ならびに骨肉腫および軟部組織肉腫悪性細胞で選択的に発現される。

0075

前立腺幹細胞抗原(NCBI参照番号:AAC39607)は、ヒトにおいてPSCA遺伝子によりコードされるタンパク質である。この遺伝子は、大部分の前立腺癌でアップレギュレートされ、膀胱癌および膵臓癌でも検出される。

0076

c−Met(METまたはMNNG HOSトランスフォーミング遺伝子)は、肝細胞成長因子レセプター(HGFR)として知られるタンパク質をコードする癌原遺伝子である(NCBI参照:NP_000236)。癌での異常なMET活性化は、予後不良と相関し、異常に活性なMETは、腫瘍成長、栄養素を腫瘍に供給する新しい血管の形成、および他の器官への癌の広がりトリガーする。METは、肺癌、腎臓癌肝臓癌、胃癌、乳癌、および脳癌を含めて、多くのタイプのヒト悪性腫瘍でデレギュレートされる。

0077

上皮細胞接着分子(EpCAM)は、ヒトにおいてEPCAM遺伝子によりコードされるタンパク質である。EpCAMは、ほとんどすべての癌腫上に発現される汎上皮分化抗原である。ヒトEpCAMは、UniProtKB/Swiss−Prot受託番号:P16422.2(刊行日2012年2月22日)により表され、当技術分野では、たとえば、Strnad et al.(1989)Cancer Res.49(2):314−317に記載されている。

0078

前立腺特異的膜抗原(PSMA)(グルタメートカルボキシペプチダーゼIIとしても知られる)(NCBI参照:AAA60209)は、前立腺組織および少数の他の組織に見いだされる2型内在性膜糖タンパク質である。それは、前立腺癌の治療標的である。

0079

以上から明らかなように、HER2、CD19、EGFR、CEA、EPHA2、黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン、IGFR1、CD33、線維芽細胞活性化タンパク質α、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、c−MET、EpCAM、またはPSMAのそれぞれは、特定の癌タイプの病理発生および治療に関与する。本発明に係る結合分子が、HER2、CD19、EGFR、CEA、EPHA2、黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン、IGFR1、CD33、線維芽細胞活性化タンパク質α、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、c−MET、EpCAM、またはPSMAに特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含む場合、HER2、CD19、EGFR、CEA、EPHA2、黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン、IGFR1、CD33、線維芽細胞活性化タンパク質α、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、c−MET、EpCAM、またはPSMAの過剰発現に関連付けられる癌をそれぞれ治療するために、それぞれの結合分子を使用することが好ましい。

0080

本発明に係る結合分子は、HER2に特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含みうる。ただし、(i)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの重鎖の第1のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの重鎖の第2のN末端に結合される(すなわち、別の言い方をすれば、前記2つのポリペプチドの第1のコピーは、前記抗体の第1の重鎖のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2のコピーは、前記抗体の第2の重鎖のN末端に結合される)か、(ii)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの重鎖の第1のC末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの重鎖の第2のC末端に結合されるか、(iii)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの軽鎖の第1のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの軽鎖の第2のN末端に結合されるか、または(iv)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの軽鎖の第1のC末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの軽鎖の第2のC末端に結合される。

0081

以上の選択肢との関連では、結合分子は、HER2に特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含み、前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの重鎖の第1のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの重鎖の第2のN末端に結合されることが好ましい。

0082

HER2への特異的結合とは、本発明に係るポリペプチドがHER2には特異的に結合するが、EGFRなどの他の関連タンパク質には特異的に結合しないことを意味する。「HER2に特異的に結合するポリペプチド」は、好ましくは、「HER2の活性を阻害するポリペプチド」である。そのようなポリペプチドは、HER2の活性を低減するかまたは完全に消失する能力を有する。その活性については、本明細書の以上に詳細に記載されている。これに関連して、HER2活性を阻害するとは、レセプターのそのリガンドへの結合を阻害することを意味することが好ましい。好ましい順に、ポリペプチドは、HER2の活性を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%阻害することがさらに好ましい。また、好ましい順に、本発明に係るポリペプチドによるHER2の阻害に対するIC50値は、1000nM以下、500nM以下、400nM以下、300nM以下、200nM以下、100nM以下、または75nM以下であることが好ましい。好ましくは、本発明に係るポリペプチドは、FACSにより決定したときに10−7〜10−12M、より好ましくは10−8〜10−12M、最も好ましくは10−9〜10−12MのEC50値でHER2に結合する。

0083

HER2に特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドは、好ましくは、HER2の同一エピトープに結合する。以下の本明細書の実施例から明らかなように、抗HER2結合Fynomer(登録商標)C12(配列番号4)は、本発明を例示するために使用されている。したがって、結合分子は、配列番号4の2つのコピーを含むことが好ましい。

0084

したがって、HER2に特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドは、好ましい順に、配列番号4(Fynomer(登録商標)C12)のアミノ酸配列に対して、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、および少なくとも95%の配列同一性を有することが好ましい。

0085

より好ましくは、HER2に特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドは、以下の式Iを有する。ただし、ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有し、同一性の決定では、配列番号1のアミノ酸位置12〜17および31〜34が除外されること、を条件とする。

0086

VTLFVALYDYX1X2X3X4X5X6X7X8X9X10LSFHKGEKFQILX11X12X13X14X15X16GX17WWX18ARSLTTGEX19GX20IPSX21YVAPDSIQ(式I)
式中、X1〜X7、X11〜X13、およびX17〜X21は、それぞれ独立して、G、V、T、L、F、A、Y、D、S、H、K、E、Q、I、W、R、M、P、N、およびCから、より好ましくは、G、V、T、L、F、A、Y、D、S、H、K、E、Q、I、W、R、M、P、およびNから選択され、かつX8〜X10およびX14〜X16は、それぞれ独立して、G、V、T、L、F、A、Y、D、S、H、K、E、Q、I、W、R、M、P、N、およびCから、より好ましくは、G、V、T、L、F、A、Y、D、S、H、K、E、Q、I、W、R、M、P、およびNから選択され、またはX8〜X10およびX14〜X16の1つ以上は、不在である(それぞれ、配列番号5または好ましくは配列番号168)。また、本発明に係る結合分子は、配列番号5の2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含むかまたはそれからなり、前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの重鎖の第1のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの重鎖の第2のN末端ならびに配列番号2および配列番号3の抗CD3抗体に結合されることが好ましい。同様に、本発明に係る結合分子は、配列番号168の2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含むかまたはそれからなり、前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの重鎖の第1のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの重鎖の第2のN末端ならびに配列番号2および配列番号3の抗CD3抗体に結合されることが好ましい。

0087

さらにより好ましくは、
X1は、T、E、D、Q、Y、V、W、N、S、F、またはKから選択され、
X2は、S、A、R、またはTから選択され、
X3は、Y、R、H、T、N、V、W、またはSから選択され、
X4は、N、D、M、Y、R、P、E、L、H、T、G、またはFから選択され、
X5は、T、S、P、Q、R、K、G、A、D、M、N、L、F、Y、またはEから選択され、
X6は、R、M、K、D、F、T、G、H、S、P、N、Q、Y、L、A、またはPから選択され、
X7は、D、G、V、L、H、N、R、F、S、またはAから選択され、
X8は、G、S、E、D、P、もしくはYから選択されるかまたは不在であり、
X9は、Q、D、S、Hから選択されるかまたは不在であり、
X10は、D、Vから選択されるかまたは不在であり、
X11は、R、K、Q、N、S、G、W、M、H、L、F、E、T、P、A、D、またはVから選択され、
X12は、M、R、E、G、N、D、S、A、Q、F、P、K、Y、T、H、V、L、またはWから選択され、
X13は、E、W、P、R、K、S、V、N、D、H、G、T、Q、A、Y、L、またはMから選択され、
X14は、D、R、Q、S、A、N、P、I、H、T、Y、E、L、K、M、V、I、Wから選択されるかまたは不在であり、
X15は、G、S、I、L、A、V、T、E、D、Q、R、P、K、M、H、Yから選択されるかまたは不在であり、
X16は、K、G、R、A、T、V、S、I、E、Q、P、D、N、Hから選択されるかまたは不在であり、
X17は、V、D、T、I、またはYから選択され、
X18は、E、A、R、T、またはQから選択され、
X19は、T、I、またはVから選択され、
X20は、Y、L、またはFから選択され、かつ
X21は、NまたはSから選択される(配列番号6)。

0088

同様に、本発明に係る結合分子は、配列番号6の2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含むかまたはそれからなり、前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの重鎖の第1のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの重鎖の第2のN末端ならびに配列番号2および配列番号3の抗CD3抗体に結合されることがさらに好ましい。

0089

他のより好ましい実施形態では、式I中の残基Xは、独立して、次のものから選択される。すなわち、X1〜X10は、TSYNTRDであり(すなわち、X8〜X10は、不在である;配列番号7)、X11〜X16は、RMEDであり(すなわち、X14〜X16は、不在である;配列番号8)、X17は、Vであり、X18は、Eであり、X19は、Tであり、X20は、Yであり、かつ/またはX21は、Nである。したがって、本発明に係る結合分子は、式Iの2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含むかまたはそれからなり、式I中の残基Xは、独立して、次のものから選択されることがさらに好ましい。すなわち、X1〜X10は、TSYNTRDであり(すなわち、X8〜X10は、不在である;配列番号7)、X11〜X16は、RMEDであり(すなわち、X14〜X16は、不在である;配列番号8)、X17は、Vであり、X18は、Eであり、X19は、Tであり、X20は、Yであり、かつ/またはX21は、Nであり、前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの重鎖の第1のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの重鎖の第2のN末端ならびに配列番号2および配列番号3の抗CD3抗体に結合される。また、上述した特定の残基X11〜X21は、組み合わせて使用されることが好ましい。

0090

好ましくは、配列番号4のアミノ酸配列に対して、好ましい順に、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、および少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはそれらからなる、HER2に特異的に結合する以上に定義されたFyn−SH3由来ポリペプチドは、配列番号4からなる結合(ポリ)ペプチドの結合能を保持するかまたは本質的に保持する。すなわち、それぞれの標的エピトープに結合する強度(たとえば、解離定数により決定される)は、保持されるかまたは本質的に保持される。HER2に特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドの結合能は、その結合能の少なくとも60%が保持されるのであれば、本質的に保持される。好ましくは、その結合能の少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%は、保持される。より好ましくは、結合能の少なくとも90%、たとえば、少なくとも95%、さらにより好ましくは、少なくとも98%、たとえば、少なくとも99%が保持される。最も好ましくは、結合能は、完全に、すなわち、100%保持される。

0091

FynSH3由来ポリペプチドC12(配列番号4)は、表面プラズモン共鳴(SPR)により決定したとき、HER2上のその特異的エピトープに対して7×10−8Mの解離定数を有する。このために、たとえば、BIAcoreセンサーチップ上に固定されているHisタグ特異的抗体により、FynSH3由来ポリペプチドを捕獲する。特異的エピトープを含有する抗原を注入した後、複合体の形成をモニターし、BIAcore評価ソフトウェアを用いて曲線当てはめを行うことにより、会合速度定数(kon)または解離速度定数(koff)または解離定数(KD)を取得する。したがって、配列番号4のアミノ酸配列に対して、好ましい順に、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、および少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはそれらからなる結合(ポリ)ペプチドの結合能は、HER2結合に対して、好ましくは同一の条件下で、少なくとも1×10−6M、好ましくは少なくとも1×10−7Mの解離定数が保持されるのであれば、本質的に保持される。また、配列番号4からなる結合(ポリ)ペプチドと比較して増加した結合能、すなわち、100%超の活性を有する結合(ポリ)ペプチド)も、本発明に係るものである。たとえば、本明細書では、少なくとも1×10−8M、たとえば、少なくとも1×10−9Mなど、より好ましくは少なくとも1×10−10M、たとえば、少なくとも1×10−11Mなど、さらにより好ましくは少なくとも1×10−12M、最も好ましくは少なくとも1×10−13Mの解離定数を有する結合(ポリ)ペプチドが、想定される。結合能を評価する方法は、当技術分野で周知であり、限定されるものではないが、表面プラズモン共鳴(SPR)技術またはELISAを含む。

0092

本発明の他の好ましい実施形態では、FynSH3由来ポリペプチド(すなわち、抗CD3抗体を含まないポリペプチド)は、配列番号4および9〜159からなる群から選択される配列を有する。FynSH3由来ポリペプチドは、最も好ましくは、C12(配列番号4)である。したがって、本発明に係る結合分子はまた、配列番号4および9〜159(配列番号4が最も好ましい)からなる群から選択される2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含み、前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの重鎖の第1のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの重鎖の第2のN末端ならびに配列番号2および配列番号3の抗CD3抗体に結合されることが好ましい。

0093

したがって、Fyn−SH3由来ポリペプチドが、HER2に特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドである、以上の実施形態では、CD3に特異的に結合する抗体は、配列番号2および/または3を含むことがとくに好ましい。

0094

本発明の他の好ましい実施形態によれば、CD3に特異的に結合する抗体およびFyn−SH3由来ポリペプチドは、リンカーにより結合される。本発明に係る二重特異的結合分子が2つのFyn−SH3由来ポリペプチドとCD3特異的結合抗体とを含むかまたはそれからなる場合、第1のFyn−SH3由来ポリペプチドは、CD3特異的結合抗体にリンカーにより結合され、かつ第2のFyn−SH3由来ポリペプチドは、CD3特異的結合抗体にリンカーにより結合される。

0095

本発明に従って用いられる「リンカー」という用語は、CD3特異的結合抗体と本発明に係るFyn−SH3由来ポリペプチドとを分離する一連のアミノ酸(すなわち、ペプチドリンカー)さらには非ペプチドリンカーを意味する。本結合分子が単一ポリペプチド鎖を含む場合、リンカーがペプチドリンカーであることは、分かるであろう。

0096

リンカーの性質、すなわち、長さおよび/または組成(たとえば、アミノ酸配列など)は、二重特異的分子の安定性および/または溶解性の改変または向上を行いうる。それは、得られた結合分子の可撓性の向上および/または立体障害の低減による標的抗原への結合の改善を行いうる。リンカーの長さおよび組成は、本発明に係る結合分子のそれぞれの結合(ポリ)ペプチドの組成に依存する。当業者であれば、さまざまなリンカーの適合性試験方法を熟知している。たとえば、結合分子の性質は、さまざまなタイプのリンカーを使用したときのその結合親和性を分析することにより、容易に試験可能である。それに加えて、各結合(ポリ)ペプチドに対してそれぞれの測定を単独で行って、結合分子への結合親和性を比較しうる。得られた分子の安定性は、当技術分野で公知の方法により、たとえば、ヒト血清中37℃で種々の時間インキュベートした後、ELISA法を用いて分子の残留結合能を決定するなどにより、測定可能である。

0097

本発明に従って用いられる「非ペプチドリンカー」という用語は、ペプチドリンカーを除いて2つ以上の反応基を有する結合基を意味する。たとえば、非ペプチドリンカーは、本発明に係る分子の結合部分の反応基、たとえば、アミノ末端リシン残基ヒスチジン残基、またはシステイン残基に個別に結合する反応基を両末端に有するポリマー、たとえば、ポリエチレングリコールなどでありうる。非ペプチドリンカーの反応基としては、ヒドロキシル基アルデヒド基プロピオン酸のアルデヒド基、ブチルアルデヒド基、マレイミド基ケトン基ビニルスルホン基チオール基ヒドラジド基カルボニルジミダゾール(CDI)基、ニトロフェニルカーボネート(NPC)基、トリレート基、イソシアネート基、およびスクシンイミド誘導体が挙げられる。スクシンイミド誘導体の例としては、スクシンイミジルプロピオネート(SPA)、スクシンイミジルブタン酸(SBA)、スクシンイミジルカルボキシメチラートSCM)、スクシンイミジルスクシンアミド(SSA)、スクシンイミジルスクシネート(SS)、スクシンイミジルカーボネート、およびN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)が挙げられる。非ペプチドポリマーの両末端の反応基は、同一であっても異なっていてもよい。たとえば、非ペプチドポリマーは、一方の末端にマレイミド基および他方の末端にアルデヒド基を有しうる。好ましくは、ポリマーはポリエチレングリコールである。

0098

好ましい選択肢としては、ペプチド性(またはペプチド)リンカー、より特定的には、2〜30アミノ酸の長さを有するオリゴペプチドが挙げられる。単一のアミノ酸の使用もまた、意図的に想定される。ペプチドリンカーの好ましい長さ範囲は、5〜15アミノ酸である。他の好ましい長さは、3、4、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16、17、18、19、または20アミノ酸である。

0099

とくに好ましいのは、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%の小アミノ酸、たとえば、グリシン、セリン、およびアラニンに一致するペプチドのリンカーである。とくに好ましいのは、グリシンおよびセリンのみからなるリンカーである。最も好ましいのは、配列番号160〜162のリンカーであり、とくに好ましいリンカーは、配列番号162の配列からなるペプチドのリンカーである。

0100

本発明のより好ましい実施形態によれば、リンカーはペプチドリンカーである。本発明のさらにより好ましい実施形態によれば、リンカーは、配列番号162、160、および161からなる群から選択される配列を有する。配列番号162のリンカーが最も好ましい。

0101

Fyn−SH3由来ポリペプチドが、HER2に特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドである、以上の実施形態では、それに加えて、CD3に特異的に結合する抗体およびHER2に特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドは、配列番号162を含むリンカーにより結合されることが、とくに好ましい。

0102

以下の本明細書の実施例から明らかなように、配列番号162を有するリンカーを介して、配列番号2および配列番号3を含む抗体をFynomer(登録商標)C12(配列番号4)に融合させた。前記抗体の重鎖のC末端(COVA422)さらにはN末端(COVA420)への融合体を生成した。

0103

本発明のさらなる好ましい実施形態によれば、結合分子は、EGFRに特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含む。ただし、(i)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの重鎖の第1のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの重鎖の第2のN末端に結合されるか、(ii)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの重鎖の第1のC末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの重鎖の第2のC末端に結合されるか、(iii)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの軽鎖の第1のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの軽鎖の第2のN末端に結合されるか、または(iv)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの軽鎖の第1のC末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの軽鎖の第2のC末端に結合される。

0104

EGFRへの特異的結合とは、本発明に係るポリペプチドがEGFRには特異的に結合するが、HER2などの他の関連タンパク質には特異的に結合しないことを意味する。「EGFRに特異的に結合するポリペプチド」は、好ましくは、「EGFRの活性を阻害するポリペプチド」である。そのようなポリペプチドは、EGFRの活性を低減するかまたは完全に消失する能力を有する。その活性については、本明細書の以上に詳細に記載されている。これに関連して、EGFR活性を阻害するとは、レセプターのそのリガンドへの結合を阻害することを意味することが好ましい。好ましい順に、ポリペプチドは、EGFRの活性を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%阻害することがさらに好ましい。また、好ましい順に、本発明に係るポリペプチドによるEGFRの阻害に対するIC50値は、1000nM以下、500nM以下、400nM以下、300nM以下、200nM以下、100nM以下、または75nM以下であることが好ましい。好ましくは、本発明に係るポリペプチドは、FACSにより決定したときに10−7〜10−12M、より好ましくは10−8〜10−12M、最も好ましくは10−9〜10−12MのEC50値でEGFRに結合する。

0105

EGFRに特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドは、好ましくは、EGFRの同一エピトープに結合する。以下の本明細書の実施例から明らかなように、抗EGFR結合Fynomer(登録商標)ER7L2D6(配列番号169)およびER9L3D7(配列番号187)は、本発明を例示するために使用されている。したがって、結合分子は、配列番号169または配列番号187の2つのコピーを含むことが好ましい。

0106

EGFRに特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドは、好ましい順に、配列番号169(Fynomer(登録商標)ER7L2D6)またはER9L3D7(配列番号187)のアミノ酸配列に対して、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、および少なくとも95%の配列同一性を有することが好ましい。また、EGFRに特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドは、(a)GVTLFVAX1YDYEARGLX2RX3FDLSFHKGEKFQILX4X5X6X7X8GDWWEARSLTTGETGYIPSNYVAPVDSIQ(式II)(式中、アミノ酸位置X1〜X8は、任意のアミノ酸配列であり、かつアミノ位置X4〜X8の1つは、任意選択で不在である)、および(b)(a)のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の同一性であるアミノ酸配列であって、同一性の決定では、アミノ酸位置X3〜X7が除外され、ただし、式(II)のアミノ酸位置12〜20中、アミノ酸配列EARGLX2RX3F(配列番号209)、好ましくはNまたはHであるX2、および好ましくはMまたはLであるX3(配列番号204)は、保存されることを条件とする、アミノ酸配列、からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなることが好ましい。

0107

より好ましくは、EGFRに特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドは、次式IIを有する。ただし、ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有し、同一性の決定では、配列番号1のアミノ酸位置12〜17および31〜34が除外されること、を条件とする。これに関連して、以下の式II中、配列番号1のアミノ酸位置12〜17は、配列番号1のRTループ中への3つのアミノ酸の付加に起因してアミノ酸位置12〜20に対応することに留意されたい。

0108

GVTLFVAX1YDYEARGLX2RX3FDLSFHKGEKFQILX4X5X6X7X8GDWWEARSLTTGETGYIPSNYVAPVDSIQ(式II)、
式中、
X1〜X7は、それぞれ独立して、G、V、T、L、F、A、Y、D、S、H、K、E、Q、I、W、R、M、P、N、およびCから、より好ましくは、G、V、T、L、F、A、Y、D、S、H、K、E、Q、I、W、R、M、P、およびNから選択され、
かつX8は、それぞれ独立して、G、V、T、L、F、A、Y、D、S、H、K、E、Q、I、W、R、M、P、N、およびCから、より好ましくは、G、V、T、L、F、A、Y、D、S、H、K、E、Q、I、W、R、M、P、およびNから選択され、またはX8は、不在である(それぞれ、配列番号201または好ましくは配列番号202)。また、本発明に係る結合分子は、配列番号201の2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含むかまたはそれからなることが好ましい。ただし、(i)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの重鎖の第1のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの重鎖の第2のN末端に結合されるか、(ii)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの重鎖の第1のC末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの重鎖の第2のC末端に結合されるか、(iii)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの軽鎖の第1のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの軽鎖の第2のN末端に結合されるか、または(iv)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの軽鎖の第1のC末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの軽鎖の第2のC末端ならびに配列番号171および配列番号172の抗CD3抗体に結合される。同様に、本発明に係る結合分子は、配列番号202の2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含むかまたはそれからなることが好ましい。ただし、(i)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの重鎖の第1のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの重鎖の第2のN末端に結合されるか、(ii)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの重鎖の第1のC末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの重鎖の第2のC末端に結合されるか、(iii)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの軽鎖の第1のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの軽鎖の第2のN末端に結合されるか、または(iv)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの軽鎖の第1のC末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの軽鎖の第2のC末端ならびに配列番号171および配列番号172の抗CD3抗体に結合される。

0109

さらにより好ましくは、
X1は、LまたはVから選択され、
X2は、NまたはHから選択され、
X3は、MまたはLから選択され、
X4は、S、N、Q、A、D、T、またはLから選択され、
X5は、F、T、R、またはPから選択され、
X6は、S、E、T、またはQから選択され、
X7は、E、T、S、またはNから選択され、かつ
X8は、Sから選択されるか、または不在である(配列番号203)。

0110

したがって、本発明に係る結合分子は、配列番号203の2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含むかまたはそれからなることがさらに好ましい。ただし、(i)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの重鎖の第1のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの重鎖の第2のN末端に結合されるか、(ii)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの重鎖の第1のC末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの重鎖の第2のC末端に結合されるか、(iii)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの軽鎖の第1のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの軽鎖の第2のN末端に結合されるか、または(iv)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの軽鎖の第1のC末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの軽鎖の第2のC末端ならびに配列番号171および配列番号172の抗CD3抗体に結合される。

0111

好ましくは、配列番号169または配列番号187のアミノ酸配列に対して、好ましい順に、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、および少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはそれらからなる、EGFRに特異的に結合する以上に定義されたFyn−SH3由来ポリペプチドは、配列番号169または配列番号187からなる結合(ポリ)ペプチドの結合能を保持するかまたは本質的に保持する。すなわち、それぞれの標的エピトープに結合する強度(たとえば、EC50値により決定される)は、保持されるかまたは本質的に保持される。EGFRに特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドの結合能は、その結合能の少なくとも60%が保持されるのであれば、本質的に保持される。好ましくは、その結合能の少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%は、保持される。より好ましくは、結合能の少なくとも90%、たとえば、少なくとも95%、さらにより好ましくは、少なくとも98%、たとえば、少なくとも99%が保持される。最も好ましくは、結合能は、完全に、すなわち、100%保持される。

0112

FynSH3由来ポリペプチドER7L2D6(配列番号169)は、FACS実験でEGFR上のその特異的エピトープへの結合に対して3.3nMのEC50値を有し、ER9L3D7(配列番号187)は、15.0nMのEC50値を有する。これらのEC50値を決定するために、0.46nM〜333nMの濃度の精製FynomerをEGFR陽性MDA−MB−468細胞と共にインキュベートした。マウス抗mycタグ抗体9E10を利用して(3:2のFynomer:9E10のモル比でFynomerと共に共インキュベートした)、次いで、抗マウスIgGAlex488コンジュゲートにより、続いて、サイトメーター分析により、結合されたFynomerを検出した。平均蛍光強度値を決定し、Fynomer濃度のlog10値に対してプロットし、曲線当てはめソフトウェアGraphPad prismを用いてEC50値を決定した。したがって、配列番号169または187のアミノ酸配列に対して、好ましい順に、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、および少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはそれらからなる結合(ポリ)ペプチドの結合能は、EGFR結合に対して、好ましくは同一の条件下で、少なくとも1×10−6M、好ましくは少なくとも1×10−7Mの解離定数が保持されるのであれば、本質的に保持される。また、配列番号169または配列番号187からなる結合(ポリ)ペプチドと比較して増加した結合能、すなわち、100%超の活性を有する結合(ポリ)ペプチド)も、本発明に係るものである。たとえば、本明細書では、少なくとも1×10−8M、たとえば、少なくとも1×10−9Mなど、より好ましくは少なくとも1×10−10M、たとえば、少なくとも1×10−11Mなど、さらにより好ましくは少なくとも1×10−12M、最も好ましくは少なくとも1×10−13Mの解離定数を有する結合(ポリ)ペプチドが、想定される。結合能を評価する方法は、当技術分野で周知であり、限定されるものではないが、表面プラズモン共鳴(SPR)技術またはELISAを含む。

0113

また、本発明に係る結合分子は、配列番号169または配列番号187のアミノ酸配列に対して、好ましい順に、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、および少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはそれらからなる、EGFRに特異的に結合する2つの以上に定義されたFyn−SH3由来ポリペプチドを含むかまたはそれからなることが好ましい。ただし、(i)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの重鎖の第1のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの重鎖の第2のN末端に結合されるか、(ii)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの重鎖の第1のC末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの重鎖の第2のC末端に結合されるか、(iii)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの軽鎖の第1のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの軽鎖の第2のN末端に結合されるか、または(iv)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの軽鎖の第1のC末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの軽鎖の第2のC末端ならびに配列番号171および配列番号172の抗CD3抗体に結合される。

0114

本発明の他の好ましい実施形態では、FynSH3由来ポリペプチドは、配列番号169および197からなる群から選択される配列を有する。FynSH3由来ポリペプチドは、最も好ましくは、ER7L2D6(配列番号169)である。したがって、また、本発明に係る結合分子は、配列番号169および187〜197(配列番号169が最も好ましい)からなる群から選択される2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含むことが好ましい。ただし、(i)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの重鎖の第1のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの重鎖の第2のN末端に結合されるか、(ii)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの重鎖の第1のC末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの重鎖の第2のC末端に結合されるか、(iii)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの軽鎖の第1のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの軽鎖の第2のN末端に結合されるか、または(iv)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの軽鎖の第1のC末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの軽鎖の第2のC末端ならびに配列番号171および配列番号172の抗CD3抗体に結合される。

0115

したがって、Fyn−SH3由来ポリペプチドが、EGFRに特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドである、以上の実施形態では、CD3に特異的に結合する抗体は、配列番号171および/または172を含むことがとくに好ましい。

0116

記載のごとく、本発明の他の好ましい実施形態によれば、CD3に特異的に結合する抗体およびFyn−SH3由来ポリペプチドは、リンカーにより結合される。本発明のより好ましい実施形態によれば、リンカーはペプチドリンカーである。本発明のさらにより好ましい実施形態によれば、リンカーは、配列番号162、160、および161からなる群から選択される配列を有する。

0117

Fyn−SH3由来ポリペプチドが、EGFRに特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドである、以上の実施形態では、それに加えて、CD3に特異的に結合する抗体およびEGFRに特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドは、配列番号162を含むリンカーにより結合されることが、とくに好ましい。

0118

以下の本明細書の実施例から明らかなように、配列番号162を有するリンカーを介して、配列番号171および配列番号172を含む抗CD3抗体をFynomer(登録商標)ER7L2D6(配列番号169)に融合させた。前記抗体の軽鎖のN末端への融合体を生成させた(すなわち、配列番号171および198からなるCOVA494)。

0119

本発明は、EGFRに特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドを初めて提供するため、本発明はまた、一実施形態では、EGFRに特異的に結合するポリペプチドに関する。ただし、ポリペプチドは、(a)GVTLFVAX1YDYEARGLX2RX3FDLSFHKGEKFQILX4X5X6X7X8GDWWEARSLTTGETGYIPSNYVAPVDSIQ(式II)(式中、アミノ酸位置X1〜X8は、任意のアミノ酸配列であり、かつアミノ位置X4〜X8の1つは、任意選択で不在である)、および(b)(a)のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の同一性であるアミノ酸配列であって、同一性の決定では、アミノ酸位置X3〜X7が除外され、ただし、式(II)のアミノ酸位置12〜20中、アミノ酸配列EARGLX2RX3F(配列番号209)、好ましくはNまたはHであるX2、および好ましくはMまたはLであるX3(配列番号204)は、保存されることを条件とする、アミノ酸配列、からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。

0120

本明細書で用いられる「同一性の決定ではアミノ酸位置X4〜X7が除外されるという語句は、式(II)に対する配列同一性の計算では、アミノ酸位置X4〜X7は考慮されないが、配列番号1のアミノ酸位置の残りの部分は制約を受けることを明記している。本明細書で用いられる「ただし、式(II)のアミノ酸位置12〜20中、アミノ酸配列EARGLX2RX3F(配列番号209)、好ましくはNまたはHであるX2、および好ましくはMまたはLであるX3(配列番号204)は、保存されることを条件とする」という条件は、アミノ酸位置12〜20中にアミノ酸変化を導入してはならないことを明記している。別の言い方をすれば、本発明の以上の実施形態および以下のその好ましい実施例の範囲内に入るすべてのポリペプチド中、式(II)のアミノ酸位置12〜20に対応するアミノ酸位置は、配列EARGLX2RX3F(配列番号209)を有し、X2は、好ましくはNまたはHであり、かつX3は、好ましくはMまたはLである(配列番号204)。

0121

EGFRに特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドの好ましい実施形態では、
X1は、LまたはVから選択され、
X2は、NまたはHから選択され、
X3は、MまたはLから選択され、
X4は、S、N、Q、A、D、T、またはLから選択され、
X5は、F、T、R、またはPから選択され、
X6は、S、E、T、またはQから選択され、
X7は、E、T、S、またはNから選択され、かつ
X8は、Sから選択されるか、または不在である(配列番号203)。

0122

EGFRに特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドのより好ましい実施形態では、ポリペプチドは、配列番号169および187〜197のいずれか1つからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。

0123

以下の本明細書の実施例に示されるように、配列番号169および187〜197は、EGFRに特異的に結合することが見いだされた。

0124

本発明はさらに、一実施形態では、さらなる化合物に融合された本発明に係るEGFRに特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドを含む融合構築物に関し、前記さらなる化合物は、好ましくは、抗CD3抗体ではない。さらなる化合物は、好ましくは、医薬活性化合物プロドラッグ薬学的に許容可能な担体、診断活性化合物細胞透過性エンハンサー、および/または、血清中半減期モジュレート化合物である。より詳細には、さらなる化合物は、好ましくは、(a)蛍光色素、(b)光増感剤、(c)放射性核種、(d)メディカルイメージングコントラスト剤、(e)サイトカイン、(f)毒性化合物、(g)ケモカイン、(h)凝血促進因子、(i)プロドラッグ活性化酵素、(k)アルブミンバインダー、(l)アルブミン、(m)IgGバインダー、または(n)ポリエチレングリコールからなる群から選択される。最も好ましくは、さらなる化合物は、抗体軽鎖抗体重鎖、抗体Fcドメイン、抗体、またはそれらの組合せからなるかまたはそれらを含む。このリスト内では、抗体が最も好ましい。抗体は、好ましくは、本発明に係るEGFRに特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドの2つのコピーに融合される。

0125

本発明はさらに、一実施形態では、本発明に係るEGFRに特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドをコードする核酸分子、適用可能な場合、融合構築物に関する。

0126

本発明はまた、一実施形態では、本発明に係るEGFRに特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチド、および/または本発明に係るEGFRに特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドコードする核酸分子、および/またはさらなる化合物に融合された本発明に係るEGFRに特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドを含む融合構築物、を含む医薬組成物または診断組成物に関する。医薬組成物は、好ましくは、癌を治療または予防する方法で使用される。

0127

本発明は、(i)CD3と(ii)癌細胞上の表面標的抗原とに特異的に結合する結合分子のさらなる好ましい実施形態では、CD33に特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含む結合分子に関する。ただし、(i)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの重鎖の第1のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの重鎖の第2のN末端に結合されるか、(ii)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの重鎖の第1のC末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの重鎖の第2のC末端に結合されるか、(iii)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの軽鎖の第1のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの軽鎖の第2のN末端に結合されるか、または(iv)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの軽鎖の第1のC末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの軽鎖の第2のC末端に結合される。

0128

以上の選択肢との関連では、結合分子は、CD33に特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含み、前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの軽鎖の第1のC末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの軽鎖の第2のC末端に結合されることが好ましい。

0129

CD33への特異的結合とは、本発明に係るポリペプチドがCD33には特異的に結合するが、Siglecファミリーの他のメンバーなどの他の関連タンパク質には特異的に結合しないことを意味する。「CD33に特異的に結合するポリペプチド」は、好ましくは、「CD33の活性を阻害するポリペプチド」である。そのようなポリペプチドは、CD33の活性を低減するかまたは完全に消失する能力を有する。その活性については、本明細書の以上に詳細に記載されている。これに関連して、CD33活性を阻害するとは、レセプターのそのリガンドへの結合を阻害することを意味することが好ましい。好ましい順に、ポリペプチドは、CD33の活性を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%阻害することがさらに好ましい。また、好ましい順に、本発明に係るポリペプチドによるCD33の阻害に対するIC50値は、1000nM以下、500nM以下、400nM以下、300nM以下、200nM以下、100nM以下、または75nM以下であることが好ましい。好ましくは、本発明に係るポリペプチドは、FACSにより決定したときに10−7〜10−12M、より好ましくは10−8〜10−12M、最も好ましくは10−9〜10−12MのEC50値でCD33に結合する。

0130

CD33に特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドは、好ましくは、CD33の同一エピトープに結合する。以下の本明細書の実施例から明らかなように、抗CD33結合Fynomer(登録商標)EE1L1B3(配列番号174)は、本発明を例示するために使用されている。したがって、結合分子は、配列番号174の2つのコピーを含むことが好ましい。

0131

CD33に特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドは、好ましい順に、配列番号174(Fynomer(登録商標)EE1L1B3)のアミノ酸配列に対して、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、および少なくとも95%の配列同一性を有することが好ましい。また、CD33に特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドは、(a)GVTLFVALYDYEALGAHELSFHKGEKFQILX1X2X3X4X5X6GPFWEAHSLTTGETGWIPSNYVAPVDSIQ(式III)(式中、アミノ酸位置X1〜X6は、任意のアミノ酸配列であり、かつアミノ位置X1〜X6の1つまたは2つは、任意選択で不在である)、および(b)(a)のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の同一性であるアミノ酸配列であって、アミノ酸配列、からなる群から選択されアミノ酸配列を含むかまたはそれからなることが好ましい。同一性の決定では、アミノ酸位置X1〜X4が除外され、ただし、式(III)のアミノ酸位置12〜18中のアミノ酸配列EALGAHE(配列番号208)は、保存されることを条件とする。

0132

より好ましくは、CD33に特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドは、次式IIIを有する。ただし、ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有し、同一性の決定では、配列番号1のアミノ酸位置12〜17および31〜34が除外されること、を条件とする。

0133

GVTLFVALYDYEALGAHELSFHKGEKFQILX1X2X3X4X5X6GPFWEAHSLTTGETGWIPSNYVAPVDSIQ(式III)
式中、X1〜X4は、それぞれ独立して、G、V、T、L、F、A、Y、D、S、H、K、E、Q、I、W、R、M、P、N、およびCから、より好ましくは、G、V、T、L、F、A、Y、D、S、H、K、E、Q、I、W、R、M、P、およびNから選択され、
かつX5およびX6は、それぞれ独立して、G、V、T、L、F、A、Y、D、S、H、K、E、Q、I、W、R、M、P、N、およびCから、より好ましくは、G、V、T、L、F、A、Y、D、S、H、K、E、Q、I、W、R、M、P、およびNから選択され、
またはX5およびX6は、不在である(それぞれ、配列番号205または好ましくは配列番号206)。また、本発明に係る結合分子は、配列番号205の2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含むかまたはそれからなることが好ましい。ただし、(i)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの重鎖の第1のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの重鎖の第2のN末端に結合されるか、(ii)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの重鎖の第1のC末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの重鎖の第2のC末端に結合されるか、(iii)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの軽鎖の第1のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの軽鎖の第2のN末端に結合されるか、または(iv)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの軽鎖の第1のC末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの軽鎖の第2のC末端ならびに配列番号2および配列番号3の抗CD3抗体に結合される。同様に、本発明に係る結合分子は、配列番号206の2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含むかまたはそれからなることが好ましい。ただし、(i)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの重鎖の第1のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの重鎖の第2のN末端に結合されるか、(ii)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの重鎖の第1のC末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの重鎖の第2のC末端に結合されるか、(iii)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの軽鎖の第1のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの軽鎖の第2のN末端に結合されるか、または(iv)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの軽鎖の第1のC末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの軽鎖の第2のC末端ならびに配列番号2および配列番号3の抗CD3抗体に結合される。

0134

さらにより好ましくは、
X1は、N、R、S、L、M、D、またはYから選択され、
X2は、S、G、P、R、M、またはVから選択され、
X3は、L、T、G、S、V、R、またはAから選択され、
X4は、S、A、L、Q、D、V、K、またはEから選択され、
X5は、EおよびV、Q、L、A、Rから選択されるかまたは不在であり、かつ
X6は、L、Gから選択されるかまたは不在である(配列番号207)。

0135

本発明に係る結合分子は、配列番号207の2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含むかまたはそれからなることがさらに好ましい。ただし、(i)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの重鎖の第1のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの重鎖の第2のN末端に結合されるか、(ii)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの重鎖の第1のC末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの重鎖の第2のC末端に結合されるか、(iii)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの軽鎖の第1のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの軽鎖の第2のN末端に結合されるか、または(iv)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの軽鎖の第1のC末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの軽鎖の第2のC末端ならびに配列番号2および配列番号3の抗CD3抗体に結合される。

0136

好ましくは、配列番号174のアミノ酸配列に対して、好ましい順に、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、および少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはそれらからなる、CD33に特異的に結合する以上に定義されたFyn−SH3由来ポリペプチドは、配列番号174からなる結合(ポリ)ペプチドの結合能を保持するかまたは本質的に保持する。すなわち、それぞれの標的エピトープに結合する強度(たとえば、EC50値により決定される)は、保持されるかまたは本質的に保持される。CD33に特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドの結合能は、その結合能の少なくとも60%が保持されるのであれば、本質的に保持される。好ましくは、その結合能の少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%は、保持される。より好ましくは、結合能の少なくとも90%、たとえば、少なくとも95%、さらにより好ましくは、少なくとも98%、たとえば、少なくとも99%が保持される。最も好ましくは、結合能は、完全に、すなわち、100%保持される。

0137

FynSH3由来ポリペプチドEE1L1B3(配列番号174)は、FACS実験でCD33上のその特異的エピトープへの結合に対して5.7nMのEC50値を有する。EC50値を決定するために、Fcレセプターブロック剤で前処理されたCD33陽性U937細胞と共に、300nM〜0.41nMの濃度の精製Fynomerをインキュベートした。マウス抗mycタグ抗体9E10を利用して(4:1のFynomer:9E10のモル比でFynomerと共に共インキュベートした)、続いて、抗マウスIgGAlex488コンジュゲートにより、続いて、サイトメーター分析により、結合されたFynomerを検出した。平均蛍光強度値を決定し、Fynomer濃度のlog10値に対してプロットし、曲線当てはめソフトウェアGraphPad prismを用いてEC50値を決定した。したがって、配列番号174のアミノ酸配列に対して、好ましい順に、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、および少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはそれらからなる結合(ポリ)ペプチドの結合能は、CD33結合に対して、好ましくは同一の条件下で、少なくとも1×10−6M、好ましくは少なくとも1×10−7Mの解離定数が保持されるのであれば、本質的に保持される。また、配列番号174からなる結合(ポリ)ペプチドと比較して増加した結合能、すなわち、100%超の活性を有する結合(ポリ)ペプチド)も、本発明に係るものである。たとえば、本明細書では、少なくとも1×10−8M、たとえば、少なくとも1×10−9Mなど、より好ましくは少なくとも1×10−10M、たとえば、少なくとも1×10−11Mなど、さらにより好ましくは少なくとも1×10−12M、最も好ましくは少なくとも1×10−13Mの解離定数を有する結合(ポリ)ペプチドが、想定される。結合能を評価する方法は、当技術分野で周知であり、限定されるものではないが、表面プラズモン共鳴(SPR)技術またはELISAを含む。

0138

本発明の他の好ましい実施形態では、FynSH3由来ポリペプチドは、配列番号174および177〜186からなる群から選択される配列を有する。FynSH3由来ポリペプチドは、最も好ましくは、EE1L1B3(配列番号174)である。したがって、また、本発明に係る結合分子は、配列番号174および177〜186(配列番号174が最も好ましい)からなる群から選択される2つのFyn−SH3由来ポリペプチドを含むことが好ましい。ただし、(i)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの重鎖の第1のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの重鎖の第2のN末端に結合されるか、(ii)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの重鎖の第1のC末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの重鎖の第2のC末端に結合されるか、(iii)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの軽鎖の第1のN末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの軽鎖の第2のN末端に結合されるか、または(iv)前記2つのポリペプチドの第1は、前記抗体の2つの軽鎖の第1のC末端に結合され、かつ前記2つのポリペプチドの第2は、前記抗体の2つの軽鎖の第2のC末端ならびに配列番号2および配列番号3の抗CD3抗体に結合される。

0139

したがって、Fyn−SH3由来ポリペプチドが、CD33に特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドである、以上の実施形態では、CD3に特異的に結合する抗体は、配列番号2および/または3を含むことがとくに好ましい。

0140

本発明の他の好ましい実施形態によれば、CD3に特異的に結合する抗体およびFyn−SH3由来ポリペプチドは、リンカーにより結合される。記載のごとく、本発明のより好ましい実施形態によれば、リンカーはペプチドリンカーである。本発明のさらにより好ましい実施形態によれば、リンカーは、配列番号162、160、および161からなる群から選択される配列を有する。

0141

Fyn−SH3由来ポリペプチドが、CD33に特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドである、以上の実施形態では、それに加えて、CD3に特異的に結合する抗体およびCD33に特異的に結合する2つのFyn−SH3由来ポリペプチドは、配列番号162を含むリンカーにより結合されることが、とくに好ましい。

0142

以下の本明細書の実施例から明らかなように、配列番号162を有するリンカーを介して、配列番号2および配列番号3を含む抗体をEE1L1B3(配列番号174)に融合させた。前記抗体の軽鎖のC末端への融合体を生成させた(すなわち、配列番号2および175からなるCOVA467)。

0143

本発明は、CD33に特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドを初めて提供するため、本発明はさらに、一実施形態では、CD33に特異的に結合するポリペプチドに関する。ただし、ポリペプチドは、(a)GVTLFVALYDYEALGAHELSFHKGEKFQILX1X2X3X4X5X6GPFWEAHSLTTGETGWIPSNYVAPVDSIQ(式III)(式中、アミノ酸位置X1〜X6は、任意のアミノ酸配列であり、かつアミノ位置X1〜X6の1つまたは2つは、任意選択で不在である)、および(b)(a)のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の同一性であるアミノ酸配列であって、同一性の決定では、アミノ酸位置X1〜X4が除外され、ただし、式(III)のアミノ酸位置12〜18中のアミノ酸配列EALGAHE(配列番号208)は、保存されることを条件とする、アミノ酸配列、からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。

0144

本明細書で用いられる「同一性の決定ではアミノ酸位置X1〜X4が除外される」という語句は、式(III)に対する配列同一性の計算では、アミノ酸位置X1〜X4は考慮されないが、配列番号1のアミノ酸位置の残りの部分は制約を受けることを明記している。本明細書で用いられる「ただし、式(III)のアミノ酸位置12〜18中のアミノ酸配列EALGAHE(配列番号208)は、保存されることを条件とする」という条件は、アミノ酸位置12〜18中にアミノ酸変化を導入してはならないことを明記している。別の言い方をすれば、本発明の以上の実施形態および以下のその好ましい実施例の範囲内に入るすべてのポリペプチド中、式(III)のアミノ酸位置12〜18に対応するアミノ酸位置は、配列EALGAHE(配列番号208)を有する。

0145

CD33に特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドの好ましい実施形態では、
X1は、N、R、S、L、M、D、またはYから選択され、
X2は、S、G、P、R、M、またはVから選択され、
X3は、L、T、G、S、V、R、またはAから選択され、
X4は、S、A、L、Q、D、V、K、またはEから選択され、
X5は、EおよびV、Q、L、A、Rから選択されるかまたは不在であり、かつ
X6は、L、Gから選択されるかまたは不在である(配列番号207)。

0146

CD33に特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドのより好ましい実施形態では、ポリペプチドは、配列番号174および177〜186のいずれか1つからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。

0147

以下の本明細書の実施例に示されるように、配列番号174および177〜186は、CD33に特異的に結合することが見いだされた。

0148

本発明はさらに、一実施形態では、さらなる化合物に融合された本発明に係るCD33に特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドを含む融合構築物に関し、前記さらなる化合物は、好ましくは、抗CD3抗体ではない。さらなる化合物は、好ましくは、医薬活性化合物、プロドラッグ、薬学的に許容可能な担体、診断活性化合物、細胞透過性エンハンサー、および/または、血清中半減期モジュレート化合物である。より詳細には、さらなる化合物は、好ましくは、(a)蛍光色素、(b)光増感剤、(c)放射性核種、(d)メディカルイメージングコントラスト剤、(e)サイトカイン、(f)毒性化合物、(g)ケモカイン、(h)凝血促進因子、(i)プロドラッグ活性化酵素、(k)アルブミンバインダー、(l)アルブミン、(m)IgGバインダー、または(n)ポリエチレングリコールからなる群から選択される。最も好ましくは、さらなる化合物は、抗体軽鎖、抗体重鎖、抗体Fcドメイン、抗体、またはそれらの組合せからなるかまたはそれらを含む。このリスト内では、抗体が最も好ましい。抗体は、好ましくは、本発明に係るCD33に特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドの2つのコピーに融合される。

0149

本発明はさらに、一実施形態では、本発明に係るCD33に特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドをコードする核酸分子、適用可能な場合、融合構築物に関する。

0150

本発明はさらに、一実施形態では、本発明に係るCD33に特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチド、および/または本発明に係るCD33に特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドをコードする核酸分子、/またはさらなる化合物に融合された本発明に係るCD33に特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドを含む融合構築物、を含む医薬用または診断用組成物に関する。医薬組成物は、好ましくは、癌を治療または予防する方法で使用される。

0151

本発明の他の好ましい実施形態によれば、本発明に係る二重特異的結合分子は、配列番号163および/もしくは164を含むか、または配列番号163および164を含むかもしくはそれらからなる。

0152

以下の本明細書の実施例から明らかなように、配列番号163および164からなる二重特異的結合分子(COVA420)は、本発明を例示するために生成された。以下の本明細書の実施例に記載の化合物COVA420は、配列番号2および3の抗体からなり、配列番号4のHER2に特異的に結合するFyn−SH3由来ポリペプチドのコピーは、配列番号162を有するリンカーを介して前記抗体の2つの重鎖の第1および第2のN末端に結合される。実施例に提供されたHER2を標的とする化合物のうち、COVA420は、最高の発現収量、最低のEC50値、および最適な腫瘍細胞選択性、したがって、最良の腫瘍細胞死滅性を示した。

0153

本発明の好ましい実施形態によれば、二重特異的結合分子は、配列番号171および/または198を含む。

0154

以下の本明細書の実施例から明らかなように、配列番号162を有するリンカーを介して、配列番号171および配列番号172を含む抗CD−3抗体をFynomer(登録商標)ER7L2D6(配列番号169)に融合させた。より詳細には、融合は、前記抗体の軽鎖のN末端に対して行われ、それにより、化合物COVA494(配列番号171および198)が生成される。EGFRを標的とする化合物のうち、実施例に提供された、COVA494は、有利な生物物理学的性質を有し、最良の腫瘍選択性、したがって、最良の腫瘍細胞死滅性を示した。

0155

本発明のさらなる好ましい実施形態によれば、二重特異的結合分子は、配列番号2および/または175を含む。

0156

以下の本明細書の実施例から明らかなように、配列番号162を有するリンカーを介して、配列番号2および配列番号3を含む抗体をEE1L1B3(配列番号174)に融合させた。より詳細には、融合は、前記抗体の軽鎖のC末端に対して行われ、それにより、化合物COVA467(配列番号2および175)が生成される。前記化合物は、有利な生物物理学的性質および腫瘍細胞死滅性を示した。

0157

他の実施形態では、本発明は、本発明に係る結合分子をコードする核酸分子に関する。

0158

本発明に係る結合分子は、2つの個別の分子の1つ(またはそれ以上)のコピーの複合体でありうるため、本発明に係る結合分子の成分は、1つまたは2つのいずれか(またはそれ以上)の核酸分子によりコードされうる。好ましい実施形態では、1つの核酸分子が完全一本鎖分子をコードする。

0159

さらなる実施形態では、本発明は、本発明に係る核酸分子を含むベクターに関する。

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