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技術 脂肪酸の同位体標識化合物の製造方法およびその方法により得られた脂肪酸の同位体標識化合物、ならびに診断薬

出願人 国立大学法人東京海洋大学月島食品工業株式会社
発明者 後藤直宏和田俊市岡建司溝部帆洋
出願日 2015年5月29日 (5年0ヶ月経過) 出願番号 2015-110347
公開日 2016年12月28日 (3年5ヶ月経過) 公開番号 2016-222590
状態 未査定
技術分野 抗原、抗体含有医薬:生体内診断剤 化合物または医薬の治療活性 有機低分子化合物及びその製造
主要キーワード 標準設定値 ヒドリドイオン 極性移動 トレーサー法 貯蔵エネルギー スプリットモード 追跡子 trans体
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図面 (15)

課題

出発物質である脂肪酸中の二重結合立体配置と同一の二重結合の立体配置を有する同位体標識化合物を得ることができる製造方法を提供すること。

解決手段

脂肪酸を出発物質とし、前記脂肪酸の同位体標識化合物を製造する方法であって、前記脂肪酸の減炭工程と、それに続く増炭工程とを含んでなることを特徴とする、方法。

概要

背景

脂質は炭水化物タンパク質と並び食品の3大栄養素の1つである。特に、エネルギー源として炭水化物とタンパク質が4kcal/gの熱量を有しているのに対し、脂質は9kcal/gと大きな熱量を有し、体内では貯蔵エネルギーとして大量の脂質が蓄えられている。また、脂質はエネルギー源のみだけでなく、細胞膜の構成成分、エイコサノイドの前駆体など生体恒常性を維持する役割も担っている。しかし、脂質の代謝については未だに不明な点が多く、現在までに多くの研究が行われている。その代謝の研究方法の1つに、同位体ラベル化(標識)した化合物を用いたアイソトープトレーサー法がある。

アイソトープトレーサー法では、目的となる化合物を人為的に同位体でラベル化し、例えばマウスなどの生体に投与を行い、質量分析法放射性同位体の場合は放射線測定)を用い検出することにより、元々マウスの体内に存在していた内因性目的化合物と人為的に投与した目的化合物を別けて検出することができる。この様に同位体の導入された化合物をトレーサー追跡子)として使うことができるため、生物科学分野では、アイソトープトレーサー法が生体内における種々の物質代謝速度体内移行挙動追跡、代謝経路解明に用いられている。

脂肪酸同位体標識化合物合成方法は、アルキンカップリングさせ炭素骨格複数箇所三重結合を導入したのちに、Lindlar触媒により三重結合を重水素(2H)で還元する方法が知られている(非特許文献1、2および3)。天然に存在する脂肪酸はほとんどがcis体として存在しており、実際の実験でもtrans体よりcis体の脂肪酸の同位体標識化合物を用いる方がより正確な結果を得られることが予想されるが、上記方法では、一部がtrans体の形で得られてしまう。

概要

出発物質である脂肪酸中の二重結合立体配置と同一の二重結合の立体配置を有する同位体標識化合物を得ることができる製造方法を提供すること。脂肪酸を出発物質とし、前記脂肪酸の同位体標識化合物を製造する方法であって、前記脂肪酸の減炭工程と、それに続く増炭工程とを含んでなることを特徴とする、方法。

目的

本発明の目的は、出発物質である脂肪酸中の二重結合の立体配置と同一の二重結合の立体配置を有する同位体標識化合物を得ることができる製造方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

脂肪酸出発物質とし、前記脂肪酸の同位体標識化合物を製造する方法であって、前記脂肪酸の減炭工程と、それに続く増炭工程とを含んでなることを特徴とする、方法。

請求項2

前記減炭工程が、前記脂肪酸を転移反応させることを含んでなる、請求項1に記載の方法。

請求項3

前記転移反応が、ホフマン転移反応、シュミット転移反応またはクルチウス転移反応を含んでなる、請求項2に記載の方法。

請求項4

前記転移反応が、クルチウス転移反応である請求項2または3に記載の方法。

請求項5

前記同位体標識化合物は、前記脂肪酸のカルボキシル基中の炭素原子および/または前記カルボキシル基と結合するメチレン基中の水素が、13炭素(13C)または14炭素(14C)、および重水素(2H)または三重水素(3H)によりそれぞれ標識された化合物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。

請求項6

前記同位体標識化合物中の二重結合における立体配置と、前記脂肪酸中の二重結合における立体配置とが同一である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。

請求項7

前記同位体標識化合物の分子量が、前記脂肪酸の分子量より2以上大きい、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。

請求項8

前記減炭工程により、前記脂肪酸より炭素数が1少ない脂肪酸が得られる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。

請求項9

前記脂肪酸が、天然物由来の脂肪酸である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。

請求項10

前記減炭工程が、転移反応により得られた化合物をアミノ化させるアミノ化反応を含む、請求項2〜9のいずれか一項に記載の方法。

請求項11

前記減炭工程が、前記アミノ化反応により得られた化合物をアルデヒド化させるアルデヒド化反応を含む、請求項10に記載の方法。

請求項12

前記減炭工程が、前記アルデヒド化反応により得られた化合物を酸化させる酸化反応を含む、請求項11に記載の方法。

請求項13

前記増炭工程が、前記酸化反応により得られた化合物をエステル化させるエステル化反応を含む、請求項12に記載の方法。

請求項14

前記増炭工程が、前記エステル化反応により得られた化合物を還元剤により還元させる還元反応を含む、請求項13に記載の方法。

請求項15

前記還元剤が、重ヒドリドイオンが発生する還元剤である、請求項14に記載の方法。

請求項16

前記還元剤が、重水素化リチウムアルミニウム(LAD)または重水素化ホウ酸ナトリウムである、請求項14または15に記載の方法。

請求項17

前記増炭工程が、前記還元反応により得られた化合物をハロゲン化させる反応を含む、請求項14〜16のいずれか一項に記載の方法。

請求項18

前記増炭工程が、前記ハロゲン化反応により得られた化合物をマグネシウムと反応させることにより有機金属化合物を合成すること、および前記有機金属化合物を二酸化炭素と反応させることを含む、請求項17に記載の方法。

請求項19

前記二酸化炭素が、13CO2または14CO2である、請求項18に記載の方法。

請求項20

請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法により得られたことを特徴とする、脂肪酸の同位体標識化合物。

請求項21

請求項20に記載の同位体標識化合物を含んでなることを特徴とする、診断薬

技術分野

0001

本発明は、脂肪酸同位体標識化合物の製造方法およびその方法により得られた脂肪酸の同位体標識化合物、ならびに診断薬に関する。

背景技術

0002

脂質は炭水化物タンパク質と並び食品の3大栄養素の1つである。特に、エネルギー源として炭水化物とタンパク質が4kcal/gの熱量を有しているのに対し、脂質は9kcal/gと大きな熱量を有し、体内では貯蔵エネルギーとして大量の脂質が蓄えられている。また、脂質はエネルギー源のみだけでなく、細胞膜の構成成分、エイコサノイドの前駆体など生体恒常性を維持する役割も担っている。しかし、脂質の代謝については未だに不明な点が多く、現在までに多くの研究が行われている。その代謝の研究方法の1つに、同位体ラベル化(標識)した化合物を用いたアイソトープトレーサー法がある。

0003

アイソトープトレーサー法では、目的となる化合物を人為的に同位体でラベル化し、例えばマウスなどの生体に投与を行い、質量分析法放射性同位体の場合は放射線測定)を用い検出することにより、元々マウスの体内に存在していた内因性目的化合物と人為的に投与した目的化合物を別けて検出することができる。この様に同位体の導入された化合物をトレーサー追跡子)として使うことができるため、生物科学分野では、アイソトープトレーサー法が生体内における種々の物質代謝速度体内移行挙動追跡、代謝経路解明に用いられている。

0004

脂肪酸の同位体標識化合物の合成方法は、アルキンカップリングさせ炭素骨格複数箇所三重結合を導入したのちに、Lindlar触媒により三重結合を重水素(2H)で還元する方法が知られている(非特許文献1、2および3)。天然に存在する脂肪酸はほとんどがcis体として存在しており、実際の実験でもtrans体よりcis体の脂肪酸の同位体標識化合物を用いる方がより正確な結果を得られることが予想されるが、上記方法では、一部がtrans体の形で得られてしまう。

先行技術

0005

島原健三 著、概説生物化学、三共出版(1991)
和田俊・後直宏 共著、食品機能学—脂質、丸善(2004)
Howard S.、New Advances in Fatty−AcidsBiosynthesis、Supplement to Nutrition 12、5−7(1996)

発明が解決しようとする課題

0006

本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明者らは、今般、脂肪酸の減炭工程と、それに続く増炭工程とを含んでなる脂肪酸の同位体標識化合物の製造方法によれば、出発物質である脂肪酸中の二重結合立体配置と同一の二重結合の立体配置を有する同位体標識化合物を得ることができるとの知見を得た。

0007

したがって、本発明の目的は、出発物質である脂肪酸中の二重結合の立体配置と同一の二重結合の立体配置を有する同位体標識化合物を得ることができる製造方法を提供することである。

課題を解決するための手段

0008

本発明による脂肪酸の同位体標識化合物を製造する方法は、脂肪酸を出発物質とし、前記脂肪酸の減炭工程と、それに続く増炭工程とを含んでなることを特徴とする。

0009

本発明の態様においては、前記減炭工程が、前記脂肪酸を転移反応させることを含んでなることが好ましい。

0010

本発明の態様においては、前記転移反応が、ホフマン転移反応、シュミット転移反応またはクルチウス転移反応を含んでなることが好ましい。

0011

本発明の態様においては、前記転移反応が、クルチウス転移反応であることが好ましい。

0012

本発明の態様においては、前記同位体標識化合物は、前記脂肪酸のカルボキシル基中の炭素原子および/または前記カルボキシル基と結合するメチレン基中の水素が、13炭素(13C)または14炭素(14C)、および重水素(2H)または三重水素(3H)によりそれぞれ標識された化合物であることが好ましい。

0013

本発明の態様においては、前記同位体標識化合物中の二重結合における立体配置と、前記脂肪酸中の二重結合における立体配置とが同一であることが好ましい。

0014

本発明の態様においては、前記同位体標識化合物の分子量が、前記脂肪酸の分子量より2以上大きいことが好ましい。

0015

本発明の態様においては、前記減炭工程により、前記脂肪酸より炭素数が1少ない脂肪酸が得られることが好ましい。

0016

本発明の態様においては、前記脂肪酸が、天然物由来の脂肪酸であることが好ましい。

0017

本発明の態様においては、前記減炭工程が、転移反応により得られた化合物をアミノ化させる反応を含むことが好ましい。

0018

本発明の態様においては、前記減炭工程が、前記アミノ化反応により得られた化合物をアルデヒド化させる反応を含むことが好ましい。

0019

本発明の態様においては、前記減炭工程が、前記アルデヒド化反応により得られた化合物を酸化させる反応を含むことが好ましい。

0020

本発明の態様においては、前記増炭工程が、前記酸化反応により得られた化合物をエステル化させる反応を含むことが好ましい。

0021

本発明の態様においては、前記増炭工程が、前記エステル化反応により得られた化合物を還元剤により還元させる反応を含むことが好ましい。

0022

本発明の態様においては、前記還元剤が、重ヒドリドイオンが発生する還元剤であることが好ましい。

0023

本発明の態様においては、前記還元剤が、重水素化リチウムアルミニウム(LAD)または重水素化ホウ酸ナトリウムであることが好ましい。

0024

本発明の態様においては、前記増炭工程が、前記還元反応により得られた化合物をハロゲン化させる反応を含むことが好ましい。

0025

本発明の態様においては、前記増炭工程が、前記ハロゲン化反応により得られた化合物をマグネシウムおよび二酸化炭素と反応させることを含むことが好ましい。

0026

本発明の態様においては、前記二酸化炭素が、13CO2または14CO2であることが好ましい。

0027

本発明による脂肪酸の同位体標識化合物は、上記方法により得られたことを特徴とする。

0028

本発明による診断薬は、上記方法により得られた脂肪酸の同位体標識化合物を含んでなることを特徴とする。

発明の効果

0029

本発明によれば、出発物質である脂肪酸中の二重結合の立体配置と同一の二重結合の立体配置を有する同位体標識化合物を得ることができる。すなわち、出発物質として脂肪酸中の二重結合が全てcis結合であるものを用いた場合、二重結合が全てcis結合である脂肪酸の同位体標識化合物を得ることができ、二重結合の全部または一部がtrans結合へ変化してしまうことを防止することができる。よって。本発明によれば、天然物由来の脂肪酸そのものへの同位体によるラベル(標識)化が可能となり、脂質ないし脂肪酸
代謝研究を含む診断技術、生化学ないし生理学分野においてすこぶる有用である。

図面の簡単な説明

0030

図1は、脂肪酸の同位体標識化合物の合成フローチャートを表す。
図2は、転移反応の進行を確認したTLCプレートを表す。
図3は、アミノ化反応の進行を確認したTLCプレートを表す。
図4は、アルデヒド化反応の進行を確認したTLCプレートを表す。
図5は、酸化反応の進行を確認したTLCプレートを表す。
図6は、エステル化反応の進行を確認したTLCプレートを表す。
図7は、メチルエステル化反応により得られた化合物のマススペクトルを表す。
図8は、還元反応の進行を確認したTLCプレートを表す。
図9は、ハロゲン化反応の進行を確認したTLCプレートを表す。
図10は、酸化反応の進行を確認したTLCプレートを表す。
図11は、出発物質である脂肪酸と、その脂肪酸の同位体標識化合物のクロマトグラムを表す。
図12は、出発物質である脂肪酸と、その脂肪酸の同位体標識化合物のマススペクトルを表す。
図13は、脂肪酸の同位体標識化合物の13C−NMRスペクトルを表す。
図14は、出発物質である脂肪酸の13C−NMRスペクトルを表す。

0031

本明細書において、配合を示す「部」、「%」、「比」などは特に断らない限り重量基準である。

0032

本発明による脂肪酸の同位体標識化合物を製造する方法は、図1に示されるように脂肪酸を出発物質とし、脂肪酸の減炭工程と、それに続く増炭工程とを含んでなることを特徴とする。以下、本発明を構成する工程について説明する。

0033

<減炭工程>
減炭工程は、脂肪酸の転移反応を含んでなることが好ましい。より具体的には、ホフマン転移反応、シュミット転移反応またはクルチウス転移反応を含んでなることが好ましく、これらの中でも、短時間で反応が進行するという理由からクルチウス転移反応が好ましい。脂肪酸をクルチウス転移反応させることにより、下記化学式(1)に示されるように、出発物質である脂肪酸に比べ、炭素数が1少ないイソシアネート化合物を得ることができる。下記式(1)にも示される通り、クルチウス転移反応は、脂肪酸とジフェニルホスホリルアジドとを反応させ、加熱することにより、行うことができるが、このときの加熱温度としては、20〜80℃であることが好ましく、60〜80℃であることがより好ましい。加熱温度が上記数値範囲内であれば、不純物の生成が抑制される。なお、より高純度のイソシアネート化合物を得るため、クルチウス転移反応後、フラッシュカラムなどを用いて精製を行うことが好ましい。また、出発物質である脂肪酸は、天然物由来の脂肪酸であることが好ましい。

0034

減炭工程は、上記のようにして得られたイソシアネート化合物をアミノ化させる反応を含んでなることが好ましい。例えば、下記化学式(2)に示されるように、イソシアネート化合物を水と反応させ、加熱させることにより、イソシアネート化合物をアミノ化することができる。このときの加熱温度としては、20〜85℃であることが好ましく、60〜85℃であることがより好ましい。加熱温度が上記数値範囲内であれば、尿素化合物の生成を抑制し、アミン体収率を向上させることができる。なお、クルチウス転移反応において水を介在させることにより、アミノ化させる反応をクルチウス転移反応と同時に行うことができるが、フラッシュカラムなどを用いた精製を行うことができなくなる。高純度なアミン化合物を得るため、クルチウス転移反応とアミノ化反応を分けて行うことが好ましい。

0035

減炭工程は、上記のようにして得られたアミン化合物をアルデヒド化させる反応を含んでなることが好ましい。例えば、下記化学式(3)に示されるように、アミン化合物を4−ホルミル−1−メチルピリジニウムベンゼンスルホン酸塩FMPBS)と反応させ、シッフ塩基とした後、ジアザビシクロウンデセン(DBU)などの塩基を反応させ、シッフ塩基中の二重結合の位置を転移させた後、加水分解することにより、アミン化合物をアルデヒド化することができる。

0036

減炭工程は、上記のようにして得られたアルデヒド化合物を酸化させる反応を含んでなることが好ましい。アルデヒド化合物の酸化は、クロムなどの重金属を利用して行うこともできるが、官能基選択性が高く、反応速度も高いことから、下記化学式(4)に示されるように、Pinnick酸化により酸化反応を行うことが好ましい。アルデヒド化合物を酸化することにより、出発物質である脂肪酸に比べ、炭素数が1少ない脂肪酸が得られる。このときの反応温度としては、室温で行い、反応終了を確認後、直ちに後処理(有機層酸水洗や水洗)をすることが好ましい。反応終了後、直ちに後処理をすることにより副反応を抑制することができ、収率を向上することができる。

0037

<増炭工程>
増炭工程は、上記のようにして出発物質である脂肪酸に比べ、炭素数が1少ない脂肪酸をエステル化させる反応を含んでなることが好ましい。脂肪酸のエステル化は、酸性触媒下、過剰のアルコール中において、脂肪酸を酸化することにより行うことができる。アルコールとしては、メタノールエタノール等の短鎖アルコールを使用することができ、これらの中でも、次工程の還元反応の後処理時に除去しやすいという理由から、メタノールが好ましい。例えば、下記化学式(5)に示されるように、脂肪酸を酸性触媒下、過剰のメタノール中において加熱することにより、脂肪酸をメチルエステル化することができる。このときの加熱温度としては、20〜65℃であることが好ましく、50〜65℃であることがより好ましい。加熱温度が上記数値範囲内であれば、エステル化反応が速やかに進行し、副反応が抑制することができ、収率を向上させることができる。また、この平衡反応のため加えるアルコールの量は、脂肪酸1重量部に対して、10重量部であることが好ましい。

0038

増炭工程は、上記のようにして得られたエステル化合物を還元剤により還元させる反応を含んでなることが好ましい。還元剤としては、例えば、重水素化リチウムアルミニウム(LAD)、重水素化ホウ酸ナトリウムなどのような重ヒドリドイオンが発生する還元剤が挙げられる。下記化学式(6)に示されるように、還元剤としてLADを使用した場合、メチレン基および水酸基中の水素が、重水素(2H)により標識されたアルコール化合物を得ることができる。

0039

増炭工程は、上記のようにして得られたアルコール化合物をハロゲン化させる反応を含んでなることが好ましい。アルコール化合物のハロゲン化は、例えば、下記化学式(7)に示されるように、ジブロモトリフェニルホスフィン(PPh3Br2)を用いて行うことができ、この方法によれば、高収率で、臭化アルキル化合物を得ることができる。アルコール化合物のハロゲン化は、PPh3Br2以外にもPPh3/CBr4や1,4−ジオキサン-臭素錯体などを用いて行うことができる。

0040

増炭工程は、上記のようにして得られたハロゲン化アルキル化合物をマグネシウムと反応させることにより、有機金属化合物を合成すること、およびこの有機金属化合物を二酸化炭素と反応させることを含んでなることが好ましい(カルボキシル化反応)。ここで、二酸化炭素として、12CO2だけでなく、13CO2や14CO2も使用することができ、例えば、13CO2を使用した場合、下記化学式(8)に示されるように、脂肪酸のカルボキシル基中の炭素原子が、13炭素(13C)により標識された脂肪酸であって、出発物質の脂肪酸の同位体標識化合物である脂肪酸が得られる。

0041

<同位体標識化合物>
上記減炭工程および増炭工程を含む方法により得られる同位体標識化合物は、出発物質として用いた脂肪酸と、二重結合における立体配置が同一である。同位体標識化合物の分子量は、出発物質である脂肪酸の分子量より2以上大きいことが好ましく、3以上大きいことがより好ましい。同位体標識化合物の分子量が、出発物質である脂肪酸の分子量より2以上大きいことにより、アイソトープトレーサー法におけるトレーサーとして好適に使用することができる。

0042

また、同位体標識化合物中が有するカルボキシル基中の炭素原子は、13Cまたは14Cにより標識されたものであることが好ましい。カルボキシル基中の炭素原子が標識されていることにより、診断薬として投与した後、体内における脂質代謝β酸化)を容易に測定が可能となる。

0043

出発物質として用いた脂肪酸の二重結合の立体配置と、その脂肪酸より得られた同位体標識化合物の二重結合の立体配置とが同一であるか否かは、例えば、13C−NMRにより測定することができる。

0044

また、同位体標識化合物の分子量が、出発物質である脂肪酸の分子量よりどの程度大きいかということは、質量分析法と核磁気共鳴(13C−NMR)分光法により測定することができる。

0045

<診断薬>
本発明による方法により得られた脂肪酸の同位体標識化合物は、診断薬に使用することができる。診断薬としては、例えば、脂質代謝診断薬、糖尿病診断薬またはペルオキシソーム病診断薬などが挙げられる。

0046

以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明がこれら実施例に限定されるものではない。

0047

<減炭工程>
(転移反応)
まず、4つ口フラスコに、エイコサペンタエン酸(EPA)1molを量り入れ、還流管および温度計を取り付けた後に真空ポンプを利用し、フラスコ内をアルゴン置換した。アルゴンガス下で反応溶媒としてトルエンを加えた後、ジフェニルホスホリルアジド1.5molおよびトリエチルアミン2.5molを加え、80℃まで加熱し30分間の撹拌を行った。薄層クロマトグラフィーTLC)を用いて反応の進行を確認後、ロータリーエバポレーターにて反応溶媒の除去を行った。イソシアネート化合物の収率は64.0%であった。TLCによる合成確認の結果を図2に表す。なお、本実施例においては、いずれの反応においても、TLCプレートとして、膜厚0.25mmのSilica gel 60 TLC(5×10cm、Merck(株)製)、展開溶媒として、ヘキサン酢酸エチル(9/1(v/v))、検出試薬として、10%リンモリブデン酸エタノール溶液を用いた。

0048

次いで、反応中に生じた副生成物未反応物を除去し、目的物であるイソシアネート化合物のみを得るためにフラッシュカラムでの精製を行った。移動相となる有機溶媒シリカゲルを分散させた状態でクロマトカラム管に詰め、その上部から反応生成物充填した。移動相を流しながら、一定間隔流出液採取し、TLCを用いて目的物の有無を確認後、イソシアネート化合物のみが含まれる流出液を集め、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去することでイソシアネート化合物を得た。以下にフラッシュカラムの条件を示す。
(フラッシュカラム条件)
充填剤:ワコーシルC−300(40〜64μm)(和光純薬工業(株)製)
・充填量:溶媒除去後の反応生成物の重量の10〜20倍程度
・移動相:ヘキサン/酢酸エチル=30/1〜7/3(v/v)
(低極性移動相から高極性移動相へのグラジエント溶出

0049

(アミノ化反応)
4つ口フラスコに転移反応により合成したイソシアネート化合物0.02molを入れ、還流管および温度計を取り付けた後に真空ポンプを利用し、フラスコ内のアルゴン置換を行った。アルゴンガス下で加えたイソシアネート化合物の重量の約10倍程度の10%硫酸水溶液を加え、85℃で1時間の撹拌を行った。TLCを用いて反応の進行を確認後、室温まで冷却し、28%アンモニア水溶液を加え、反応液液性塩基性にした。その後、反応液を分液漏斗に移し、ヘキサンにて水層から3回抽出を行い、有機層をまとめた。飽和食塩水を用い、液性が中性になるまで有機層の洗浄を行い、無水硫酸ナトリウムを用いて、有機層の脱水を行った後、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去した。アミン化合物の収率は97.7%であった。TLCによる合成確認の結果を図3に表す。

0050

(アルデヒド化反応)
4つ口フラスコに、アミノ化反応により合成したアミン化合物1molを量り入れ、還流管および温度計を取り付けた後に真空ポンプを利用し、フラスコ内のアルゴン置換を行った。アルゴンガス下で反応溶媒としてジクロロメタン(DCM)とFMPBS1.2molを加えた後、50℃で2.5時間の還流を行った。その後、DBU1.05molを加え、40℃で30分の還流を行った後、p−トルエンスルホン酸水和物1.7molを加え、40℃で30分間の還流を行った。この還流中にTLCを用いて反応の進行の確認を行った。続いてロータリーエバポレーターを用いて溶媒を除去し、フラッシュカラムによる精製を行った。なお、精製条件は上記したものと同様とした。TLCによる合成確認の結果を図4に表す。

0051

(酸化反応)
4つ口フラスコに、アルデヒド化反応により合成したアルデヒド化合物1molを量り入れ、還流管を取り付けた後に真空ポンプを利用し、フラスコ内のアルゴン置換を行った。アルゴンガス下で反応溶媒として、tert−ブチルアルコール/水(4/3(v/v))を加えた後、2−メチル−2−ブテン30molを加えた。その後、若干量の水に溶解させたリン酸二水素ナトリウム2molおよび亜塩素酸ナトリウム4molを加え、室温で30分間撹拌した。TLCを用いて反応の進行を確認後、10%硫酸水溶液を加え、反応液の液性を酸性にした。次に、反応液を分液漏斗に移し、ヘキサンにて水層から3回抽出を行い、有機層をまとめた。飽和食塩水を用い、液性が中性になるまで有機層の洗浄を行い、無水硫酸ナトリウムを用いて、有機層の脱水を行った後、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去した。最後に上記した条件と同様の条件にてフラッシュカラムによる精製を行った。このようにして得られた脂肪酸はEPAと比べ、炭素数が1少ない脂肪酸であり、その収率は80.3%であった。TLCによる合成確認の結果を図5に表す。

0052

<増炭工程>
(エステル化反応)
4つ口フラスコに、酸化反応で合成した脂肪酸2.9mmolを量り入れ、温度計および還流管を取り付けた後に真空ポンプを利用し、フラスコ内のアルゴン置換を行った。アルゴンガス下でメタノール/硫酸(100/1)を脂肪酸の重量の10倍程度加え、65℃で1時間の加熱還流を行い、TLCを用いて反応の進行およびメチルエステル化合物の合成を確認した。

0053

その後、室温まで冷却を行い、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、反応液の液性を中性にした。次に、反応液を分液漏斗に移し、ヘキサンにて水層から3回抽出を行い、有機層をまとめた。飽和食塩水を用い、液性が中性になるまで有機層の洗浄を行い、無水硫酸ナトリウムを用いて、有機層の脱水を行った後、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去した。最後に上記した条件と同様の条件にてフラッシュカラムによる精製を行った。メチルエステル化合物の収率は91.1%であった。TLCによる合成確認の結果を図6に表す。

0054

また、ガスクロマトグラフ質量分析計GC−MS)によるメチルエステル化合物の合成確認を行った(図7参照)。図7からも明らかなように、脂肪酸から合成したメチルエステル化合物に相当する分子イオンピークが確認された。
(GC−MS分析条件)
分析機器:TRACE GC Ultra
サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製)
・質量分析計:ITQ 1100
(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製)
カラム:InertCap Pure−WAX(30m×0.25mmi.d.、膜厚0.25μm)(ジーエルサイエンス(株)製)
キャリアーガス:He(1.0ml/min)
試薬ガスメタン
カラム温度:150〜250℃
(80℃で3分間保持昇温10℃/minで150℃まで、昇温20/minで250℃まで、250℃で15分間保持)
注入口温度:250℃
注入方法スプリットモードスプリット比100:1)
・注入量:1μl
イオン化方法化学イオン化

0055

(還元反応)
4つ口フラスコにLAD1.05molを量り入れ、温度計および還流管を取り付けた後に真空ポンプを利用し、フラスコ内のアルゴン置換を行った。アルゴンガス下で反応溶媒としてテトラヒドラフラン(THF)を加えた後、滴下漏斗を用いて、エステル化反応で合成しメチルエステル化合物1molを加えた。室温で2時間の撹拌を行い、反応の進行をTLCにて確認した後、酢酸エチルを加え、反応を終息させた。次に10%硫酸水溶液を加え、反応液を分液漏斗に移した。ヘキサンにて水層から3回抽出を行い、有機層をまとめた。飽和食塩水を用い、液性が中性になるまで有機層の洗浄を行い、無水硫酸ナトリウムを用いて、有機層の脱水を行った後、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去した。最後にフラッシュカラムによる精製を行った。アルコール化合物の収率は96.8%であった。TLCによる合成確認の結果を図8に表す。

0056

(ハロゲン化反応)
4つ口フラスコにトリフェニルホスフィン1.5molを量り入れ、温度計および還流管を取り付けた後に真空ポンプを利用し、フラスコ内のアルゴン置換を行った。アルゴンガス下で反応溶媒としてDCMを加え後、臭素1.3molを加え、1時間室温で撹拌を行った。次に、ピリジン1.6molおよびアセトニトリル1.6molを加えた後、アルコール化反応で合成したアルコール化合物1molを滴下漏斗を用いて加えた。その後、2時間室温で撹拌した後、TLCにて反応の進行を確認し、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒の除去を行った。最後に上記した条件と同様の条件にてフラッシュカラムによる精製を行った。臭化アルキル化合物の収率は64.0%であった。TLCによる合成確認の結果を図9に表す。

0057

(カルボキシル化反応)
4つ口フラスコにマグネシウム1.3molを量り入れ、温度計および還流管を取り付けた。真空ポンプを利用し、フラスコ内を減圧状態にするとともに、ヒートガンを用いてフラスコを加熱し、マグネシウムおよびフラスコ内の乾燥を行った。マグネシウム片が乾燥し、フラスコの壁面に付着しないようになったら、フラスコ内のアルゴン置換を行い、アルゴンガス下で反応溶媒としてTHF、マグネシウムの活性剤としてヨウ素1片、1,2−ジブロモエタン0.15molを加えた。ヨウ素の色が消えるまで10分程度室温で撹拌した後、滴下漏斗を用いて、ハロゲン化反応で合成した臭化アルキル化合物1molを加え、室温で2時間撹拌した。

0058

その後、反応液を10℃程度まで冷却し、13CO2を反応液中に吹き込み、室温で2時間の撹拌を行った。次に10%硫酸水溶液を加え、反応液を分液漏斗に移した。次いで、ヘキサンにて水層から3回抽出を行い、有機層をまとめた。飽和食塩水を用い、液性が中性になるまで有機層の洗浄を行い、無水硫酸ナトリウムを用いて、有機層の脱水を行った後、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去した。最後に上記した条件と同様の条件にてフラッシュカラムによる精製を行った。脂肪酸の収率は41.7%であった。TLCによる合成確認の結果を図10に表す。

0059

得られた脂肪酸の構造を質量分析法と核磁気共鳴(13C−NMR)分光法により確認した。

0060

(質量分析法)
カルボキシル化反応により得られた脂肪酸約10mgをねじ口試験管に量り入れ、14% 3フッ化ホウ素/メタノール溶液2mLを加え、ボルテックスミキサー激しく混ぜた。100℃で30秒間加熱し、室温に戻るまで静置した。そして、ヘキサン1mL及び飽和食塩水5mLを加えてボルテックスミキサーで激しく混ぜ、有機層を分析用試料としてGC−MSに供した。また、比較用として、出発物質として用いたEPAの分析も行った。その結果を、クロマトグラムおよびマススペクトルにてそれぞれ図11および12に表す。図11から、脂肪酸と、出発物質であるEPAは同じ保持時間でピーク出現しており、これらは同様の構造を有していることが確認された。また、図12から、脂肪酸では、EPAより3大きい分子イオンピークが確認され、また、両者のフラグメンテーションパターンが同様であること確認された。これらの結果から、EPAより分子量が3大きい同位体標識化合物が製造されたことが確認できた。なお、GC−MS分析条件は上記したものと同様の条件とした。

実施例

0061

(13C−NMR分光法)
カルボキシル化反応により得られた脂肪酸20mL、出発物質であるEPA20mLを、それぞれ別の重クロロホルム溶液に溶解させ、NMR分析計に供し、吸収スペクトルを下記条件にて測定した。測定結果をそれぞれ図13および14に表す。図13図14を比較すると、ほぼ同様のNMRスペクトルとなっているものの、図13では、重水素(2H)の導入に起因すると考えられる、33ppm付近シグナルスピリット、および13炭素(13C)の導入に起因すると考えられる180ppm付近のシグナル強度の増加が確認された。このことから、脂肪酸のカルボキシル基中の炭素原子が、13炭素(13C)により、カルボキシル基と結合するメチレン基中の水素が重水素(2H)により標識されたEPAより分子量が3大きい同位体標識化合物が製造されたことが確認できた。また、CH=CH由来の9本のシグナル近傍にトランス由来のシグナルが観察されなかったために全ての二重結合がシス体であることが確認された。
(NMR分析条件)
機器名:ECA 500MHz FT−NMR(日本電子株式会社製)
NMRデータ処理ソフトウエアー:Delta NMR software
測定方法:13C−NMR(標準設定値
使用溶媒:重クロロホルム

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