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技術 自閉スペクトラム症への治療効果予測のための検査方法

出願人 国立大学法人福井大学
発明者 小坂浩隆岡本悠子
出願日 2015年5月14日 (5年7ヶ月経過) 出願番号 2015-099500
公開日 2016年12月22日 (3年11ヶ月経過) 公開番号 2016-214092
状態 特許登録済
技術分野 酵素、微生物を含む測定、試験 突然変異または遺伝子工学
主要キーワード 検査用器具 印象評価 適応行動 側プローブ 意思伝達 低用量投与群 高用量投与群 リサイクリング
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図面 (4)

課題

自閉スペクトラム症に対する薬剤治療効果治療開始前予測する方法を提供する。

解決手段

被験者のrs2268490のアリルプロファイルを確認することによる。具体的には、1)被験者から取得した検体から核酸を抽出する工程;及び2)抽出した核酸について、rs2268490のアリルプロファイルを確認する工程による。rs2268490のアリルプロファイルにシトシン(C)を含まないことで、自閉スペクトラム症における薬剤投与、具体的にはオキシトシン(OXT)投与による治療効果を予測することができ、治療開始前に有効で安全な治療方針を提供することができる。

概要

背景

自閉スペクトラム症(Autistic Spectrum Disorder:ASD)とは、自閉性障害アスペルガー障害、特定不能の広汎性発達障害等の各疾患を連続体の要素として捉えたものである。自閉スペクトラム症の診断基準は、米国精神医学会による「精神障害診断と統計の手引き-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders-5:DSM-5)」に示され、世界保健機関(WHO)の作成した国際疾病分類第10版(ICD-10)では、自閉症小児自閉症、アスペルガー症候群、他の広汎性発達障害など分類されている。主な特徴は、対人相互反応の質的な障害、意思伝達の著しい異常又はその発達の障害、活動と興味の範囲の著しい限局性等が挙げられる。自閉スペクトラム症は1%以上の高い有病率といわれている。現在、自閉スペクトラム症の常同行動などの精神症状に対しては一部の抗精神病薬が用いられることがあるが、自閉スペクトラム症の中核症状である社会性の障害に対しての治療薬は存在していない。

オキシトシン(Oxytocin:OXT)は視床下部室傍核視索上核神経分泌細胞で合成され、下垂体後葉から分泌されるホルモンであり、9個のアミノ酸からなるペプチドホルモンで、脳の視床下部で合成され、下垂体後葉から血中に分泌されて子宮収縮や射乳などの末梢作用惹起する。また、オキシトシンは親和行動社会的行動感情状態認知機能の調節など中枢神経系への作用も有する。近年、自閉スペクトラム症に対し、オキシトシンを経鼻的に投与して治療する試みが臨床的に行われている。しかしながら、オキシトシンを投与した自閉スペクトラム症について、すべての患者に対して治療効果が認められるとは限らない。

そこで、自閉スペクトラム症に対するオキシトキシンの治療効果を治療開始前予測する方法の開発が望まれている。近年、病態解明し、新たな治療法を開発していく上で疾患や薬物反応性などの表現型に関連する遺伝子を網羅的に探すゲノムワイド関連解析(GWAS)という手法が試みられている。自閉スペクトラム症患者に統計学的に有意に高頻度で存在するSNPとしてrs35062132に着目した方法が開示されている(特許文献1)。ここでは、被験者から取得した検体中のrs35062132がメジャーマイナーであるかを決定することを特徴とする、自閉スペクトラム症へのオキシトシン投与の治療効果予測のための検査方法について述べられている。しかしながら、効果の確認はin vitroにおいてオキシトシンによる細胞内カルシウム濃度の上昇を確認しているのみであって、実際に自閉スペクトラム症にオキシトキシンを投与して効果を確認したものではない。別報告では、ヒトオキシトシン受容体のアミノ酸多型と自閉スペクトラム症の関係について報告がある(非特許文献1)。ここでは、自閉スペクトラム症に頻度が高いオキシトシン受容体遺伝子のSNP(rs35062132,c.1126C>G, p.Arg376Gly)を見出したことが開示されている。アミノ酸置換した受容体培養細胞発現させたところ、オキシトシン刺激後の受容体内在化とリサイクリングが通常型受容体に比して速くなり、同時に細胞内カルシウム濃度上昇の減弱も観察されたことが開示されている。これらの結果から、オキシトシン受容体のアミノ酸多型による細胞応答差異が自閉スペクトラム症発症関与する可能性が示されている。

SNP(rs2268490)が自閉スペクトラム症と関連することを記載した報告がある(非特許文献2:Israel, S., et al.:PLoS ONE 4(5): e5535.doi:10.1371/journal.pone.0005535)。非特許文献2の記載は、非特許文献3(Molecular Psychiatry, 13, 980-988, 2008)を引用したものであり、非特許文献3ではrs2268490がVineland Adaptive Behavior Scales(Vineland適応行動尺度;発達障害、知的障害、精神障害における適応行動を客観的数値化したもの)のコミュニケーション受容言語、表出言語、読み書き)とは有意に関連するが、自閉スペクトラム症とは有意に関連しないことが報告されている(Table 1)。即ち、rs2268490がオキシトキシンの治療効果に関連することは、非特許文献2及び3には示されていない。

概要

自閉スペクトラム症に対する薬剤の治療効果を治療開始前に予測する方法を提供する。被験者のrs2268490のアリルプロファイルを確認することによる。具体的には、1)被験者から取得した検体から核酸を抽出する工程;及び2)抽出した核酸について、rs2268490のアリルプロファイルを確認する工程による。rs2268490のアリルプロファイルにシトシン(C)を含まないことで、自閉スペクトラム症における薬剤投与、具体的にはオキシトシン(OXT)投与による治療効果を予測することができ、治療開始前に有効で安全な治療方針を提供することができる。

目的

そこで、自閉スペクトラム症に対するオキシトキシンの治療効果を治療開始前に予測する方法の開発が望まれている

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

被験者から取得した検体について、rs2268490のアリルプロファイルを決定することを特徴とする、薬剤投与による自閉スペクトラム症への治療効果予測のための検査方法

請求項2

薬剤が、オキシトキシンを有効成分とする薬剤である、請求項1に記載の検査方法。

請求項3

以下の1)及び2)の工程を含む、請求項1又は2に記載の検査方法:1)被験者から取得した検体から核酸を抽出する工程;2)抽出した核酸について、rs2268490のアリルプロファイルを決定する工程。

請求項4

rs2268490のアリルプロファイルの決定が、検体から抽出した核酸のうち、rs2268490を含む核酸断片ハイブリダイズするプローブを用いることによる、請求項1〜3のいずれかに記載の検査方法。

請求項5

rs2268490のアリルプロファイルが、C-アリル(C/C又はC/T)又はノンC(T/T)である、請求項1〜4のいずれかに記載の検査方法。

請求項6

自閉スペクトラム症への薬剤投与による治療効果の予測のためのプローブ及び/又はプライマーの組み合わせであって、rs2268490のアリルプロファイルを確認するためのプローブ及び/又はプライマーの組み合わせ。

技術分野

0001

本発明は、自閉スペクトラム症に対する薬剤投与治療効果治療開始前予測する方法に関する。

背景技術

0002

自閉スペクトラム症(Autistic Spectrum Disorder:ASD)とは、自閉性障害アスペルガー障害、特定不能の広汎性発達障害等の各疾患を連続体の要素として捉えたものである。自閉スペクトラム症の診断基準は、米国精神医学会による「精神障害診断と統計の手引き-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders-5:DSM-5)」に示され、世界保健機関(WHO)の作成した国際疾病分類第10版(ICD-10)では、自閉症小児自閉症、アスペルガー症候群、他の広汎性発達障害など分類されている。主な特徴は、対人相互反応の質的な障害、意思伝達の著しい異常又はその発達の障害、活動と興味の範囲の著しい限局性等が挙げられる。自閉スペクトラム症は1%以上の高い有病率といわれている。現在、自閉スペクトラム症の常同行動などの精神症状に対しては一部の抗精神病薬が用いられることがあるが、自閉スペクトラム症の中核症状である社会性の障害に対しての治療薬は存在していない。

0003

オキシトシン(Oxytocin:OXT)は視床下部室傍核視索上核神経分泌細胞で合成され、下垂体後葉から分泌されるホルモンであり、9個のアミノ酸からなるペプチドホルモンで、脳の視床下部で合成され、下垂体後葉から血中に分泌されて子宮収縮や射乳などの末梢作用惹起する。また、オキシトシンは親和行動社会的行動感情状態認知機能の調節など中枢神経系への作用も有する。近年、自閉スペクトラム症に対し、オキシトシンを経鼻的に投与して治療する試みが臨床的に行われている。しかしながら、オキシトシンを投与した自閉スペクトラム症について、すべての患者に対して治療効果が認められるとは限らない。

0004

そこで、自閉スペクトラム症に対するオキシトキシンの治療効果を治療開始前に予測する方法の開発が望まれている。近年、病態解明し、新たな治療法を開発していく上で疾患や薬物反応性などの表現型に関連する遺伝子を網羅的に探すゲノムワイド関連解析(GWAS)という手法が試みられている。自閉スペクトラム症患者に統計学的に有意に高頻度で存在するSNPとしてrs35062132に着目した方法が開示されている(特許文献1)。ここでは、被験者から取得した検体中のrs35062132がメジャーマイナーであるかを決定することを特徴とする、自閉スペクトラム症へのオキシトシン投与の治療効果予測のための検査方法について述べられている。しかしながら、効果の確認はin vitroにおいてオキシトシンによる細胞内カルシウム濃度の上昇を確認しているのみであって、実際に自閉スペクトラム症にオキシトキシンを投与して効果を確認したものではない。別報告では、ヒトオキシトシン受容体のアミノ酸多型と自閉スペクトラム症の関係について報告がある(非特許文献1)。ここでは、自閉スペクトラム症に頻度が高いオキシトシン受容体遺伝子のSNP(rs35062132,c.1126C>G, p.Arg376Gly)を見出したことが開示されている。アミノ酸置換した受容体培養細胞発現させたところ、オキシトシン刺激後の受容体内在化とリサイクリングが通常型受容体に比して速くなり、同時に細胞内カルシウム濃度上昇の減弱も観察されたことが開示されている。これらの結果から、オキシトシン受容体のアミノ酸多型による細胞応答差異が自閉スペクトラム症発症関与する可能性が示されている。

0005

SNP(rs2268490)が自閉スペクトラム症と関連することを記載した報告がある(非特許文献2:Israel, S., et al.:PLoS ONE 4(5): e5535.doi:10.1371/journal.pone.0005535)。非特許文献2の記載は、非特許文献3(Molecular Psychiatry, 13, 980-988, 2008)を引用したものであり、非特許文献3ではrs2268490がVineland Adaptive Behavior Scales(Vineland適応行動尺度;発達障害、知的障害、精神障害における適応行動を客観的数値化したもの)のコミュニケーション受容言語、表出言語、読み書き)とは有意に関連するが、自閉スペクトラム症とは有意に関連しないことが報告されている(Table 1)。即ち、rs2268490がオキシトキシンの治療効果に関連することは、非特許文献2及び3には示されていない。

0006

特開2014-171392号公報

先行技術

0007

Mol Autism. 2013 Jul 1;4(1):22. doi: 10.1186/2040-2392-4-22.
PLoS ONE 4(5): e5535.doi:10.1371/journal.pone.0005535
Molecular Psychiatry, 13, 980-988, 2008

発明が解決しようとする課題

0008

本発明は、自閉スペクトラム症に対する薬剤の治療効果を治療開始前に予測する方法を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0009

本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、被験者のrs2268490のアリルプロファイルを決定することで治療効果を治療開始前に予測できることを見出し、本発明を完成した。

0010

すなわち本発明は、以下よりなる。
1.被験者から取得した検体について、rs2268490のアリルプロファイルを決定することを特徴とする、薬剤投与による自閉スペクトラム症への治療効果予測のための検査方法。
2.薬剤が、オキシトキシンを有効成分とする薬剤である、前項1に記載の検査方法。
3.以下の1)及び2)の工程を含む、前項1又は2に記載の検査方法:
1)被験者から取得した検体から核酸を抽出する工程;
2)抽出した核酸について、rs2268490のアリルプロファイルを決定する工程。
4.rs2268490のアリルプロファイルの決定が、検体から抽出した核酸のうち、rs2268490を含む核酸断片ハイブリダイズするプローブを用いることによる、前項1〜3のいずれかに記載の検査方法。
5.rs2268490のアリルプロファイルが、C-アリル(C/C又はC/T)又はノンC(T/T)である、前項1〜4のいずれかに記載の検査方法。
6.自閉スペクトラム症への薬剤投与による治療効果の予測のためのプローブ及び/又はプライマーの組み合わせであって、rs2268490のアリルプロファイルを確認するためのプローブ及び/又はプライマーの組み合わせ。

発明の効果

0011

本発明の方法により自閉スペクトラム症における薬剤投与、具体的にはオキシトシン(OXT)投与による治療効果を予測することができる。自閉スペクトラム症における薬剤は、常同行動などの精神症状に対して一部の抗精神病薬が用いられることがあるが、中核症状である社会性の障害に対しての治療薬は存在していない。安全性の高い薬剤として、OXTが期待されているが、投与による治療効果に個人差があることから、より効果的な治療方針を提供することが望まれている。OXT投与前に本発明の方法で検査を行うことで、自閉スペクトラム症者各個人に対して有効で安全な治療方針を提供することができ、有用である。

図面の簡単な説明

0012

OXT投与による治療効果を確認するための投与スケジュールを示す図である。(参考例1)。
OXTの投与量による自閉スペクトラム症改善効果を、臨床全般印象評価尺度-改善度CGI-I)スコアにより確認した結果図である。(参考例1)
被験者のrs2268490のアリルプロファイルとOXTの投与量による自閉スペクトラム症改善効果との関係を、臨床全般印象評価尺度-改善度(CGI-I)スコアにより確認した結果図である。(実施例1)

0013

本発明は、自閉スペクトラム症への薬剤投与による治療効果予測のための検査方法に関する。

0014

本明細書において、「遺伝子」及び「核酸」とは、アデニン(A)、グアニン(G)等のプリン塩基や、チミン(T)、ウラシル(U)、シトシン(C)等のピリミジン塩基やそれらの修飾塩基を構成要素として含むものであり、一本鎖又は二本鎖のDNA、一本鎖又は二本鎖のRNA、一本鎖DNA一本鎖RNAからなるハイブリッド体、RNAとDNAが結合して一本鎖となったキメラ体のいずれか、又は複数を意味するものである。また、DNAには、cDNAも含まれる。

0015

本明細書において、自閉スペクトラム症への薬剤投与による治療効果予測のためのマーカーとは、自閉スペクトラム症の治療効果を予測するための指標となるものである。本発明におけるマーカーは、ヒトゲノム上に存在するDNA配列から選択される遺伝子多型(genetic polymorphisms)において示される特定の遺伝子型である。本明細書において、遺伝子多型とは、遺伝子を構成しているDNAの配列の個体差であり、その頻度が母集団の1%以上であるものを意味し、例えばSNP(single nucleotide polymorphism:一塩基多型)をいう。

0016

本発明における自閉スペクトラム症への薬剤投与による治療効果予測のためのマーカーはSNPであるrs2268490であり、具体的にはrs2268490において示される特定の遺伝子型である。rs2268490は、第3染色体のOXT受容体をコードする遺伝子領域に存在する(非特許文献2参照)。ここで、上記SNPを表す数値(rs番号)は、NCBIのデータベース(Chr.3: 8797085 - 8797085 on NCBI Build 37)に掲載されているヒトの遺伝子情報を参酌したものである。本明細書において、自閉スペクトラム症への薬剤投与による治療効果を予測するために、上記SNPの対立遺伝子(allele:以下「アリル」)の遺伝子型、つまりアリルプロファイルを確認し、決定することが必要である。

0017

本発明において、rs2268490のアリルプロファイルの違いにより、自閉スペクトラム症への薬剤投与による治療効果が異なることを本発明者らは初めて見出した。rs2268490のアリルプロファイルは、Cを1つでも含むC-アリル(C/C又はC/T)とCを含まないノンC(T/T)に分類される。rs2268490Cのアリルプロファイルを決定することで、自閉スペクトラム症への薬剤投与による治療効果を予測することができる。

0018

本明細書における薬剤投与による治療効果とは、オキシトキシン(以下、単に「OXT」ともいう。)投与による治療効果をいう。本明細書において、自閉スペクトラム症への薬剤投与に使用される薬剤は、OXTを有効成分として含む薬剤をいう。OXTは、脳から分泌されるホルモンで、女性乳汁分泌促進や子宮平滑筋収縮作用が広く知られている。これらの作用の他にOXTが脳内でも作用していることが指摘されており、自閉スペクトラム症の症例でOXTの投与が試みられている。OXTの作用は OXT受容体(OXTR)を介して発現する。

0019

本発明において、OXTを投与した自閉スペクトラム症について、OXT投与による治療効果と第3染色体のOXT受容体をコードする遺伝子領域に存在する各種SNPsとの関係を解析したところ、rs2268490のアリルプロファイルがノンC(T/T)の場合に、C-アリル(C/C又はC/T)の場合よりもOXTによる治療効果が顕著であることが見出された。これにより、rs2268490のアリルプロファイルがノンC(T/T)と決定された場合は、OXTによる治療効果が顕著であると判断することができる。

0020

本発明の自閉スペクトラム症への薬剤投与による治療効果予測のための検査方法は、被験者から取得した検体について、rs2268490のアリルプロファイルを決定することを特徴とする。上記において被験者とは、自閉スペクトラム症の疑われる対象をいう。上記において、被験者から取得した検体とは、被験者由来であって上述のマーカーが含まれている可能性を有するものであればよく、特に限定されないが、例えば血液、血清リンパ液精液、尿、唾液(含:口内粘膜細胞)、その他の体液及び生体組織等が挙げられ、特に血液(リンパ球)等が取り扱いが容易で、侵襲性が低いという点で最も好ましい。被験者から検体を取得する方法は、特に限定されず、自体公知の方法によることができる。

0021

上記被験者から取得した検体は、rs2268490のアリルプロファイルを決定するために、予め処理することができる。当該アリルプロファイルを決定するために検体からDNA又はmRNA等の核酸を抽出することが必要である。検体からのDNA又はmRNAの抽出方法は特に限定されず、自体公知の方法によることができる。例えばDNAを抽出する場合は、塩析PCIフェノールクロロホルム抽出)法、市販のDNA抽出キット等を用いる方法、その他公知の方法によることができる。例えばmRNAを抽出する場合はPCI法において溶液酸性にして水層から抽出する方法、オリゴdTカラム等を利用する方法、市販のRNA抽出キットを用いる方法、その他の公知の方法によることができる。

0022

検体から得られたDNA又はmRNA等の核酸量が少ない場合には、必要に応じて、公知の方法によって核酸を増幅処理することができる。核酸の増幅方法は、特に限定されず自体公知の方法を適用することができる。増幅の対象がDNAの場合は、例えばPCR法LAMP法を利用することができ、増幅の標的となる対象がmRNAの場合には、RT-PCR法やRT-LAMP法等を利用することができる。

0023

上記検体から得られたDNA又はmRNAから、本発明のマーカーに関連するrs2268490を含む核酸を増幅するためにプライマーを使用することができ、本発明のrs2268490のアリルプロファイルを決定するために、プローブを用いることができる。

0024

本発明の検査方法は、検体から得られたDNA又はmRNA等の核酸、あるいは上記増幅により得られた核酸について、rs2268490のアリルプロファイルを決定する工程を含む。アリルプロファイルの決定方法は、公知の配列決定法等を用いることができ、例えば、シークエンサー等を用いて直接塩基配列を検出するダイレクトシークエンス法ジデオキシ法)の他、RELP制限酵素断片長多型性)を利用するPCR-RELP法、TaqMan法、DigiTag2法、シングルヌクレオチドプライマー伸長法、SnaPshot法(ABI)、ASP-PCR法、PCR-SSO(sequence specific oligonucleotide)法、PCR-SSP(specific sequence primer)法、PCR-SSCP(single-stranded conformational polymorphism analysis)法、電気泳動等による核酸の長さの確認、及びDNAチップ等の遺伝子多型検査用器具等を用いる方法等が挙げられるが、これらに限られるものではない。また、市販のrs2268490測定用試薬を用いて測定しても良いし、受託解析機関依頼して解析しても良い。例えば、TaqMan(R) SNP GenotypingAssays(Applied Biosystems)のアッセイキットを用いても良い。

0025

検体中に含まれるrs2268490のアリルプロファイルは、例えばプローブに連結された標識と相補的な塩基配列を持つ核酸断片を固定したDNAチップを用いることで、決定することができる。検体に含まれるrs2268490のアリルプロファイルに応じて生成されたプローブと標識の結合産物は、DNAチップ上の標識を連結したプローブと相補的な塩基配列を持つ核酸断片に捕獲される。アリルプロファイルに対応する標識、例えば2種類の蛍光分子を各々連結した各プローブを使用することで、rs2268490のアリルプロファイルを決定することができる。

0026

本発明は、自閉スペクトラム症への薬剤投与による治療効果の予測のためのプローブ及び/又はプライマーの組み合わせであって、rs2268490のアリルプロファイルを決定するためのプローブ及び/又はプライマーの組み合わせにも及ぶ。

0027

プローブとしては、rs2268490のアリルプロファイルを決定するための、rs2268490をマーカーとして含む核酸断片(オリゴヌクレオチド)にハイブリダイズする核酸断片が挙げられる。本明細書において、ハイブリダイズする核酸断片とは、目的の核酸に対して、完全に、又は部分的に相補的に結合しうる核酸断片をいう。例えば、本発明のマーカーを含む核酸断片に対して、完全に、又は部分的に相補的に結合しうる核酸断片をいい、完全に相補的な配列、又は相補的な配列から1〜複数個塩基が、置換欠失、付加若しくは挿入された配列からなり、かつ結合可能な配列からなる核酸断片をいう。そのような核酸断片は、プライマーやプローブとして使用することができる。

0028

本明細書におけるプローブやプライマーとしては、上述の本発明のマーカーを含むいずれかの核酸断片に対してハイブリダイズする核酸断片(オリゴヌクレオチド)を利用することができ、それらは標識物質により標識されたものであっても良い。標識物質としては、蛍光分子、放射性物質ビオチンジゴキシゲニン酵素標識等が挙げられる。核酸断片の標識物の結合は、自体公知の方法に従って行うことができる。

0029

決定用プローブは、例えばSNP位置と隣接して下流に存在する3'側プローブ(プローブ1)とSNPを3'末端に含む上流に存在する5'側プローブ'(プローブ2)を用いることができる。プローブ2はSNPのアリルに対応した2種類を用意する。プローブ2の3'末端に対応するSNPのアリルプロファイルに応じて、それと相補的な塩基を持つプローブ2だけが、3'側に隣接して存在するプローブ1と結合することができる。アンチセンス鎖に設計したプローブ2は、NCBIデータベースのFasta sequenceと相同な塩基配列となり、センス鎖に設計した場合には相補的な塩基配列となる。

0030

自閉スペクトラム症のOXTによる治療は、OXT投与に関し自体公知の投与方法又は今後開発されるあらゆる投与方法を適用することができる。例えば医師の指示に基づき、OXTの適切量を朝夕2回両に点薬するのが好適である。

0031

本明細書において使用可能な検査用キットは、自閉スペクトラム症への薬剤投与による治療効果を予測するために用いられる検査用キットである。本発明の検査用キットには、少なくとも上記本発明のプローブ及び/又はプライマーを含み、さらに、PCR等の遺伝子増幅操作に必要な試薬、例えば耐熱性DNAポリメラーゼやアリルプロファイルの決定に一般に必要とされる試薬などを含んでいても良い。また、上述した試薬のみならず、装置・試薬・ソフト・コンピューター等のいずれかをキットに含んでいてもよく、適宜必要なものが選択される。

0032

本発明の理解を助けるために、以下に実施例を示して具体的に本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでないことはいうまでもない。以下の参考例及び実施例で示した試験は、福井大医学部附属病院医薬品等臨床研究審査委員会によって承認されたものである。

0033

(参考例1)
本参考例では、本発明を完成するに至った予備的検討について説明する。インフォームドコンセントを得た60名の患者について、オキシトシン(OXT)投与による治療効果を確認した。二重盲検のために、OXTを一日当たり32 IUを経鼻投与する高用量投与群、一日当たり16 IUを経鼻投与する低用量投与群及び偽薬プラセボ投与群に分類した(図1参照)。治療効果は、以下に示す臨床全般印象評価尺度-改善度(CGI-I)スコアにより確認した。

0034

CGI-Cスコアは全般評価に関するベースラインからの変化を示し、次の7段階で患者の状態を評価することができる。
1.著明改善(Very much improved)
2.中等度改善(Much improved)
3.軽度改善(Minimally improved)
4.不変(No change)
5.軽度悪化(Minimally worse)
6.中等度悪化(Much worse)
7.著明悪化(Very much worse)

0035

男性被験者について解析した結果、OXT投与の用量依存的に改善効果が得られる傾向が認められた(図2参照)。しかしながら、改善効果については個人差があることも観察された。そこで、自閉スペクトラム症へのOXT投与による治療効果予測のためのマーカーについて、検討することとした。

0036

(実施例1)
上記知見に基づき、第3染色体のOXT受容体をコードする遺伝子領域に存在する各種SNPs(非特許文献2参照)について、各被験者におけるアリルプロファイルと治療効果との関係を調べた。OXTを投与した自閉スペクトラム症について、OXT投与による治療効果と各種SNPとの関係を解析した。OXTRコードする遺伝子領域に位置するSNPのうちrs2268490におけるアリルプロファイルの違いにより、OXT投与による治療効果が異なることが観察された。OXTを一日当たり32 IUを12週間毎日経鼻投与した高用量投与群(合計19名、男性12名、女性7名)及び、一日当たり16 IUを12週間毎日経鼻投与した低用量投与群(合計18名、男性17名、女性1名)の合計37名について検討した。その結果を以下の表1に示した。表1においてA.はすべての被験者でのアリルプロファイルと治療効果の結果を示し、B.は高用量投与群の被験者での結果を示し、C.は低用量投与群の被験者での結果を示した。いずれの投与量群においても、アリルプロファイルがT/Tの場合に特に低いCGI-Iスコアが観察され、OXT投与による改善効果が認められた。表1のうち、B.の結果を図3に示した。

0037

本実施例ではrs2268490のアリルプロファイルの決定のために、各被験者の血球検体からDNAを精製させた。市販のrs2268490測定用TaqMan(R) SNP GenotypingAssays(Applied Biosystems)を用いて、StepOnePlus(Applied Biosystems)にて、リアルタイムPCR処理でDNAを増幅させ、rs2268490のアリルプロファイルを決定した。

0038

0039

上記試験について、被験者が男性の結果を表2に示した。表2においてA.はすべての男性被験者でのアリルプロファイルと治療効果の結果を示し、B.は高用量投与群の男性被験者での結果を示し、C.は低用量投与群の男性被験者での結果を示した。いずれの投与量群においても、アリルプロファイルがT/Tの場合に低いCGI-Iスコアであり、他のタイプ(C/C又はC/T)の場合よりもOXTによる治療効果が顕著であることが観察され、高用量又は低用量のOXT投与量に関係なく同様の傾向が認められた。

実施例

0040

以上の結果、 rs2268490のアリルプロファイルがT/Tの場合に OXT投与で顕著な治療効果が期待できることが確認された。

0041

以上詳述したように、本発明の方法により自閉スペクトラム症における薬剤投与、具体的にはオキシトシン(OXT)投与による治療効果を予測することができる。自閉スペクトラム症における薬剤は、常同行動などの精神症状に対して一部の抗精神病薬が用いられることがあるが、中核症状である社会性の障害に対しての治療薬は存在していないし、それらの薬剤は効果や副作用の点で問題が多い。社会性の障害の治療薬剤として、安全性の高い薬剤として、OXTが期待されているが、投与による治療効果に個人差があることから、より効果的な治療方針を提供することが望まれている。OXT投与前に本発明の方法で検査を行うことで、自閉スペクトラム症者各個人に対して有効で安全な治療方針を提供することができ、有用である。

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