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技術 音源位置推定装置、方法、及びプログラム

出願人 防衛装備庁長官沖電気工業株式会社
発明者 大川圭一戸田康永平田晋也
出願日 2015年5月13日 (5年6ヶ月経過) 出願番号 2015-097988
公開日 2016年12月15日 (3年11ヶ月経過) 公開番号 2016-212034
状態 特許登録済
技術分野 音波、超音波を用いた位置、速度等の測定
主要キーワード 実測処理 順序反転 伝搬計算 送出波 尤度分布 ポイント間距離 パルス状音波 分布間距離
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2016年12月15日)のものです。
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図面 (16)

課題

音源の位置を精度よく推定する音源位置推定装置、方法及びプログラムを提供すること。

解決手段

音源位置推定装置30は、音源から受信した複数の到来波尤度を算出する尤度算出部62と、尤度算出部62により算出された各到来波の各位置の尤度分布シグマポイント算定するシグマポイント算定部70と、シグマポイント算定部70により算定された各シグマポイントを用いて、組み合わせ可能な2つの到来波の分布間距離をそれぞれ求めた上でこれらの総和を算出すると共に、該総和が最小となる時刻を特定する収束時刻特定部81と、収束時刻特定部81により特定された時刻に基づいて音源の位置を推定する音源位置推定部83と、を有する。

概要

背景

水中での音源受波器間における音波伝搬では、音源から直接到来する直接波及び海面や海底反射して到来する各マルチパス波の相互間において到来時刻にずれ(到来時間差)が生じる。従来から、音源の位置を推定する場合には、到来時間差を反転させた上で各マルチパス波の逆伝搬経路を推定し、推定した逆伝搬経路上の位置に各マルチパス波が存在する尤度を求めた上で、尤度の分布に基づいて音源位置を推定する、という手法が採られている。

例えば、特許文献1に開示された音源位置推定装置は、一連到来波の到来順序とは逆の順序のパルス波列を、各到来波の到来ふ仰角と同じ角度で受波器群から送出した場合の伝搬経路を推定し、送出後の各時刻に各パルス波が各位置に存在する尤度を推定し、すべてのパルス波についての尤度の合計を求め、複数のパルス波についての尤度分布の間の距離(分布間距離)が最小となる時刻(収束時刻)において、尤度の合計が最大となる位置を音源位置と推定するものである。特許文献1の技術において、分布間距離の算出に用いるマハラノビス距離は、2つのマルチパス波の尤度分布の中心間距離を、各々の尤度分布の共分散行列によって規格化した平面で測るものである。

概要

音源の位置を精度よく推定する音源位置推定装置、方法及びプログラムを提供すること。音源位置推定装置30は、音源から受信した複数の到来波の尤度を算出する尤度算出部62と、尤度算出部62により算出された各到来波の各位置の尤度分布のシグマポイント算定するシグマポイント算定部70と、シグマポイント算定部70により算定された各シグマポイントを用いて、組み合わせ可能な2つの到来波の分布間距離をそれぞれ求めた上でこれらの総和を算出すると共に、該総和が最小となる時刻を特定する収束時刻特定部81と、収束時刻特定部81により特定された時刻に基づいて音源の位置を推定する音源位置推定部83と、を有する。

目的

この課題に鑑みて、従来から、音源の位置を精度よく推定する音源位置推定装置、方法、及びプログラムの提供が望まれていた

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

音源から受信した複数のマルチパス波に基づいて、各マルチパス波の到来時間及び到来ふ仰角の情報を算出する受波情報算出部と、前記各マルチパス波の到来時間を反転する到来時間反転部と、前記到来時間反転部により反転された各到来時間と前記受波情報算出部により算出された到来ふ仰角の情報とに基づいて、各マルチパス波の各位置の尤度分布を算出する尤度算出部と、前記尤度算出部により算出された各マルチパス波の各位置の尤度分布のシグマポイント算定するシグマポイント算定部と、前記シグマポイント算定部により算定された各シグマポイントを用いて、前記各マルチパス波の内の2つのマルチパス波を複数組み合わせて該各組み合わせの尤度分布間の距離を計算する分布間距離計算部と、前記分布間距離計算部により計算された各尤度分布間の距離の総和を算出し、該総和が最小となる時刻を特定する収束時刻特定部と、前記収束時刻特定部により特定された時刻に基づいて前記音源の位置を推定する音源位置推定部と、を有することを特徴とする音源位置推定装置

請求項2

前記分布間距離計算部は、前記各シグマポイント間の距離の加重平均を前記尤度分布間の距離として求めるものであることを特徴とする請求項1に記載の音源位置推定装置。

請求項3

前記分布間距離計算部は、前記各シグマポイントの全組み合わせに相当する数の分布間距離計算器を有し、該各分布間距離計算器各々によって前記各尤度分布間の距離を求めるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の音源位置推定装置。

請求項4

前記シグマポイント算定部は、前記各位置の尤度分布と該各位置の尤度分布の共分散行列とに基づいて前記各シグマポイントを算定するものであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の音源位置推定装置。

請求項5

前記尤度算出部は、前記各マルチパス波の各位置の尤度分布をそれぞれ個別に計算する複数の尤度計算器を有し、前記シグマポイント算定部は、前記各尤度計算器に個別に対応する複数のシグマポイント計算器を有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の音源位置推定装置。

請求項6

前記音源位置推定部は、前記収束時刻特定部において特定された時刻における尤度の合計が最大となる位置を前記音源の位置と推定するものであることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の音源位置推定装置。

請求項7

音源から受信した複数のマルチパス波に基づいて、各マルチパス波の到来時間及び到来ふ仰角の情報を算出し、前記各マルチパス波の到来時間を反転し、前記反転された各到来時間と前記算出された到来ふ仰角の情報とに基づいて、各マルチパス波の各位置の尤度分布を算出し、前記算出された各マルチパス波の各位置の尤度分布のシグマポイントを算定し、前記各マルチパス波の内の2つのマルチパス波を複数組み合わせた上で、前記算定された各シグマポイントを用いて前記各組み合わせの尤度分布間の距離を計算し、前記計算された各尤度分布間の距離の総和を算出すると共に、該総和が最小となる時刻を特定し、前記特定された時刻に基づいて前記音源の位置を推定することを特徴とする音源位置推定方法。

請求項8

音源から受信した複数のマルチパス波に基づいて、各マルチパス波の到来時間及び到来ふ仰角の情報を算出する受波情報算出手段、前記各マルチパス波の到来時間を反転する到来時間反転手段、前記到来時間反転手段により反転された各到来時間と前記受波情報算出手段により算出された到来ふ仰角の情報とに基づいて、各マルチパス波の各位置の尤度分布を算出する尤度算出手段、前記尤度算出手段により算出された各マルチパス波の各位置の尤度分布のシグマポイントを算定するシグマポイント算定手段、前記各マルチパス波の内の2つのマルチパス波を複数組み合わせた上で、前記シグマポイント算定手段により算定された各シグマポイントを用いて前記各組み合わせの尤度分布間の距離を計算する分布間距離計算手段、前記分布間距離計算手段により計算された各尤度分布間の距離の総和を算出すると共に、該総和が最小となる時刻を特定する収束時刻特定手段、及び前記収束時刻特定手段により特定された時刻に基づいて前記音源の位置を推定する音源位置推定手段、としてコンピュータを機能させることを特徴とする音源位置推定プログラム

技術分野

0001

本発明は、音源から受信した音波をもとに音源位置推定する音源位置推定装置、方法、及びプログラムに関する。

背景技術

0002

水中での音源−受波器間における音波伝搬では、音源から直接到来する直接波及び海面や海底反射して到来する各マルチパス波の相互間において到来時刻にずれ(到来時間差)が生じる。従来から、音源の位置を推定する場合には、到来時間差を反転させた上で各マルチパス波の逆伝搬経路を推定し、推定した逆伝搬経路上の位置に各マルチパス波が存在する尤度を求めた上で、尤度の分布に基づいて音源位置を推定する、という手法が採られている。

0003

例えば、特許文献1に開示された音源位置推定装置は、一連到来波の到来順序とは逆の順序のパルス波列を、各到来波の到来ふ仰角と同じ角度で受波器群から送出した場合の伝搬経路を推定し、送出後の各時刻に各パルス波が各位置に存在する尤度を推定し、すべてのパルス波についての尤度の合計を求め、複数のパルス波についての尤度分布の間の距離(分布間距離)が最小となる時刻(収束時刻)において、尤度の合計が最大となる位置を音源位置と推定するものである。特許文献1の技術において、分布間距離の算出に用いるマハラノビス距離は、2つのマルチパス波の尤度分布の中心間距離を、各々の尤度分布の共分散行列によって規格化した平面で測るものである。

先行技術

0004

特開2013−170817号公報

発明が解決しようとする課題

0005

しかしながら、特許文献1の音源位置推定装置は、マハラノビス距離の考え方を用いて2つのマルチパス波の分布間距離を求めるという手法を採っているため、分布間距離の算出精度が各マルチパス波の尤度分布の広がりの状態に左右され、収束時刻及び音源位置を精度よく推定できないという課題がある。この課題に鑑みて、従来から、音源の位置を精度よく推定する音源位置推定装置、方法、及びプログラムの提供が望まれていた。

課題を解決するための手段

0006

本発明に係る音源位置推定装置は、音源から受信した複数のマルチパス波に基づいて、各マルチパス波の到来時間及び到来ふ仰角の情報を算出する受波情報算出部と、各マルチパス波の到来時間を反転する到来時間反転部と、到来時間反転部により反転された各到来時間と受波情報算出部により算出された到来ふ仰角の情報とに基づいて、各マルチパス波の各位置の尤度分布を算出する尤度算出部と、尤度算出部により算出された各マルチパス波の各位置の尤度分布のシグマポイント算定するシグマポイント算定部と、各マルチパス波の内の2つのマルチパス波を複数組み合わせた上で、シグマポイント算定部により算定された各シグマポイントを用いて各組み合わせの尤度分布間の距離を計算する分布間距離計算部と、分布間距離計算部により計算された各尤度分布間の距離の総和を算出すると共に、該総和が最小となる時刻を特定する収束時刻特定部と、収束時刻特定部により特定された時刻に基づいて音源の位置を推定する音源位置推定部と、を有するものである。

0007

また、本発明に係る音源位置推定方法は、音源から受信した複数のマルチパス波に基づいて、各マルチパス波の到来時間及び到来ふ仰角の情報を算出し、各マルチパス波の到来時間を反転し、反転された各到来時間と算出された到来ふ仰角の情報とに基づいて、各マルチパス波の各位置の尤度分布を算出し、算出された各マルチパス波の各位置の尤度分布のシグマポイントを算定し、各マルチパス波の内の2つのマルチパス波を複数組み合わせた上で、算定された各シグマポイントを用いて各組み合わせの尤度分布間の距離を計算し、計算された各尤度分布間の距離の総和を算出すると共に、該総和が最小となる時刻を特定し、特定された時刻に基づいて音源の位置を推定する。

0008

さらに、本発明に係る音源位置推定プログラムは、音源から受信した複数のマルチパス波に基づいて、各マルチパス波の到来時間及び到来ふ仰角の情報を算出する受波情報算出手段、各マルチパス波の到来時間を反転する到来時間反転手段、到来時間反転手段により反転された各到来時間と受波情報算出手段により算出された到来ふ仰角の情報とに基づいて、各マルチパス波の各位置の尤度分布を算出する尤度算出手段、尤度算出手段により算出された各マルチパス波の各位置の尤度分布のシグマポイントを算定するシグマポイント算定手段、各マルチパス波の内の2つのマルチパス波を複数組み合わせた上で、シグマポイント算定手段により算定された各シグマポイントを用いて各組み合わせの尤度分布間の距離を計算する分布間距離計算手段、分布間距離計算手段により計算された各尤度分布間の距離の総和を算出すると共に、該総和が最小となる時刻を特定する収束時刻特定手段、及び収束時刻特定手段により特定された時刻に基づいて音源の位置を推定する音源位置推定手段、としてコンピュータを機能させる。

発明の効果

0009

本発明では、尤度算出部の出力側にシグマポイント算定部を設け、シグマポイント算定部で算定した各シグマポイントに基づいて収束時刻を特定するという構成を採ったため、収束時刻に係る誤判定を低減させることができ、音源の位置を精度よく推定することができる。

図面の簡単な説明

0010

本発明の実施形態における音源位置推定装置の概略図である。
図1の受波器群の構成を例示する概略図である。
図1の音源位置推定装置の構成を示すブロック図である。
図3の到来時間反転部による各マルチパス波の到来時間差の順序反転を示す説明図である。
図3の尤度算出部の処理に係る音線経路方向とこれに垂直な方向を表す模式図である。
図3の収束時刻特定部の具体的構成を示すブロック図である。
図3の収束時刻特定部による判定に係る2つのシグマポイント間の距離の加重平均に基づく分布間距離のイメージ図である。
図3等の音源位置推定装置の動作を示すフローチャートである。
図3のシグマポイント算定部にて算定したシグマポイントの間の距離が海底反射時に連続性を保つ状況を示す模式図である。
図3の収束時刻特定部によって合算した分布間距離の総和が、逆伝搬時間の経過に伴って変化する様子を示すグラフである。
本発明の実施形態において、誤検出を含む場合のシグマポイント間距離による分布間距離の総和の変動を示すグラフである。
マハラノビス距離による分布間距離のイメージを示す説明図である。
関連技術において、音波が海底反射する時にマハラノビス距離が不連続となる状況を示す説明図である。
関連技術において、マハラノビス距離による分布間距離の総和が、逆伝搬時間の経過に伴って変化する様子を示すグラフである。
関連技術において、誤検出を含む場合のマハラノビス距離による分布間距離の総和の変動を示すグラフである。

実施例

0011

(実施形態の構成)
本発明における音源位置推定装置の一実施形態を図1図11に基づいて説明する。図1に示すように、音源位置推定システム10は、音源90から放射されたパルス状音波である直接波及びマルチパス波(到来波)を受信すると共に、到来波の到来時間差に基づいて音源の位置を推定するものであって、二以上の受波器から成り各々において到来波を受信する受波器群20と、これに接続された音源位置推定装置30と、を有している。

0012

図1では便宜上、海面から海底までの距離(水深)Zwが一定(海底がフラット)である場合を想定し、海面から受波器群20、音源90までの垂直距離深度)をそれぞれZr、Zsとする。音源90と音源位置推定装置30との間の水平距離はRwとする。

0013

また、図1では、音源90から到来する直接波及びマルチパス波(到来波)の伝搬経路(音線)の内の5つ(1〜5)を例示し、直接波1を実線、マルチパス波2〜5を破線でそれぞれ示す。実際には、水温塩分濃度等の不均一性により、音速が一定とはならないため、伝搬経路は直線的にはならないが、ここでは便宜的に直線で示している。

0014

一般に、音源と受波器群との間に他の音源等がない場合の音波伝搬は、自由空間の波動方程式で表され、自由空間の波動方程式の解は、相反性を有するGreen関数で表される。この相反性が成り立つことにより、音源から出て受波器群に到達した直接波及びマルチパス波の順序を逆にして(時間反転して)受波器群から逆方向に伝搬(逆伝搬)させると、受波器群から出た仮想音波は音源の位置に理論上収束する。

0015

この音波の逆伝搬による音源位置への収束は、波動方程式を近似した音線計算においても成立する。すなわち、受信時の到来時間・到来角観測し、到来波の順序を逆にして、到来角と同じ角度(同じふ仰角及び方角)で逆向きに受波器群からパルス波を送出したと仮定する。そして、送出された各パルス波の各時点における到達位置が音線計算により推定された場合、各パルス波の到達位置は時間とともに変化するが、すべてのパルス波は同時に音源位置に到達(収束)することになる。本実施形態における音源位置推定装置30も、相反性に基づく到来波の時間反転を利用した逆伝搬処理によって音源位置を推定するように構成されている。

0016

音源位置推定装置においては、マルチパス波の到来ふ仰角を判別するために、受波器群を二以上の受波器によって構成する。本実施形態における受波器群20は、図2に例示するように、一定の間隔Dhを隔てて配置された第1受波器20Aと第2受波器20Bとを有する。第1受波器20A及び第2受波器20Bは、到来波(直接波及びマルチパス波)のふ仰角を求めるために、同じ鉛直線上の異なる位置に設けられている。もっとも、受波器群20は、三以上の受波器を有していてもよい。

0017

図3に示すように、音源位置推定装置30は、受波器群20から入力される各マルチパス波の時間波形の情報等を解析して各マルチパス波の受波解析情報を算出する受波情報算出部41と、受波情報算出部41から入力されたマルチパス波の到来時間差を時間軸で反転する到来時間反転部(到来時間差反転部)42と、入力条件に従って音線計算等を実施する伝搬計算処理部61と、伝搬計算処理部61が読み出して使用する各種の情報が格納された情報格納部50と、を有している。

0018

また、音源位置推定装置30は、伝搬計算処理部61から入力された各種計算の結果を用いて、マルチパス波ごとの尤度を算出する尤度算出部62と、この尤度算出部62から入力された各尤度の分布のシグマポイントを算定するシグマポイント算定部70と、このシグマポイント算定部70において算定した各シグマポイントを用いて、組み合わせ可能な2つの到来波の分布間距離をそれぞれ求めた上でこれらの総和を算出すると共に、該総和が最小となる時刻(収束時刻)を特定(判定)する収束時刻特定部81と、を有している。

0019

さらに、音源位置推定装置30は、尤度算出部62から取得した各尤度を統合(合算)する統合尤度計算部82と、この統合尤度計算部82から上記統合の結果である統合尤度を取得すると共に、収束時刻特定部81において特定した時刻における全尤度の分布に基づいて音源90の位置を推定する音源位置推定部83と、を有している。

0020

なお、図3のような音源位置推定装置30の構成は、補助記憶装置に読み込まれた音源位置推定プログラムをマイコンもしくはコンピュータ(たとえばパーソナルコンピュータ等)上で実行することにより実現される。音源位置推定プログラムは、CD−ROM等の情報記憶媒体に記憶され、もしくはインターネット等のネットワークを介して配布され、コンピュータにインストールされることになる。

0021

受波情報算出部41は、第1受波器20A及び第2受波器20Bから取得した時間波形の情報に基づいて、マルチパス波の到来時間差時系列(到来時間差)、マルチパス波の到来ふ仰角(到来ふ仰角)、到来時間差誤差標準偏差、及び到来ふ仰角誤差標準偏差を、上記受波解析情報として算出するものである。

0022

受波情報算出部41は、各マルチパス波の入力を複数回繰り返して各回の到来時間差、到来ふ仰角の平均値をそれぞれ到来時間差、到来ふ仰角として到来時間反転部42に出力する。このようにすれば、到来波の検出漏れや到来波の誤検出による測定誤差が生じた場合にも、必要十分な回数分のデータをもとに、信頼性の高い到来時間差及び到来ふ仰角を算出することができる。

0023

到来時間差誤差標準偏差は、各マルチパス波について観測された到来時間差のばらつきの程度を表す指標であり、到来ふ仰角誤差標準偏差は、各マルチパス波について観測された到来ふ仰角のばらつきの程度を表す指標である。

0024

ところで、上記の通り、第1受波器20Aと第2受波器20Bとは、間隔Dhを隔てて配置されているため、同じ到来波の受信時刻が異なることとなる。受波情報算出部41は、この受信時刻の差異の他、第1受波器20Aと第2受波器20Bとの間隔Dh、及び受波器群20の位置における音速に基づいて到来ふ仰角を算出する。また、到来時間差の算出に際して受波情報算出部41は、2つの受波器20A、20Bにおける同じマルチパス波の受信時刻の中間値を受波器群20における受信時刻とする。

0025

到来時間差及び到来ふ仰角の算出には、例えば 、2つの受波器間に到来した時系列信号相関処理といった一般的な手法を用いることができる。また、到来時間差又は到来ふ仰角を観測する方法は種々存するが、所望の情報を観測できるものであれば、何れの方法も適用可能である。例えば、2つの受波器間の情報を用いる方法の他、受波器アレイを構成して整相処理を行い、整相処理の結果から所望の情報を得るという手法を適用するようにしてもよい。

0026

受波情報算出部41は、上記のように算出した一連の到来波についての到来時間差及び到来ふ仰角の情報(受波解析情報)を到来時間反転部42に出力する。到来時間反転部(到来時間差反転器)42は、受波情報算出部41から出力された到来ふ仰角、到来時間差誤差標準偏差、到来ふ仰角誤差標準偏差はそのままに、到来時間差を反転して伝搬計算処理部61に出力する。

0027

ここで、受波器群20にn個のマルチパス波が到来したことを想定し(nは2以上の自然数)、これら各々の到来時間差(第1番目の到来波の受信時刻と第i番目の到来波の受信時刻の差)をτi(i=1、2、…、n)とすると、各マルチパス波の到来時間差の順序を反転したτ’i(反転時間差)は、下記式(1)によって求めることができる(τi+1>τi)。

0028

0029

図4に例示するように、式(1)を用いた処理を経て、n番目のマルチパス波の到来時間差τnは基準の0(反転時間差τ’n)に、(n−1)番目のマルチパス波の到来時間差τn−1は反転時間差τ’n−1に、(n−2)番目のマルチパス波の到来時間差τn−2は反転時間差τ’n−2になる、というように変換される。

0030

すなわち、到来時間反転部42は、上記式(1)に係る演算により、各マルチパス波の到来時間差を、順序を反転した上で内部メモリ等(図示せず)に保存すると共に、各マルチパス波の反転時間差を、到来ふ仰角、到来時間差誤差標準偏差、及び到来ふ仰角誤差標準偏差と共に伝搬計算処理部61へ向けて出力する。

0031

伝搬計算処理部61は、第1〜第nの伝搬計算器61−1〜61−nを有し(nは2以上の自然数)、入力条件に従って音線計算を行うものである。すなわち、各マルチパス波に対応する伝搬計算器61−1〜61−nが、マルチパス波ごとに、到来ふ仰角の情報を用いて音線計算(伝搬経路の推定)を実行する。

0032

より具体的には、深度方向をz、受波器群20から音源90に向かう方向をrとした場合に、伝搬計算処理部61は、媒介変数sを用いた下記式(2a)〜(2d)により音線計算(伝搬経路の推定)を実行する。

0033

0034

各式(2a)〜(2d)において、関数ζと関数ξは、送出ふ仰角θに基づいてそれぞれζ=sinθ/C、ξ=cosθ/Cにより求められる。ここで、Cは、受波器群の位置における音速である。

0035

このように、伝搬計算処理部61は、各マルチパス波毎に、各τ'iについて、受波器群20から音源90に向かう音線計算(伝搬経路の推定)を式(2a)〜(2d)によって実現する。また、伝搬計算処理部61は、音線計算等を行うに際して、情報格納部50から音速C等の情報を取得する。

0036

情報格納部50には、音速プロファイル50Aと、海底地形を示す情報である海底地形情報50Bと、各受波器20A、20Bの位置に係る情報である受波器位置情報50Cとが予め格納されている。

0037

本実施形態では、実測処理部55が、温度分布及び塩分濃度を実測し、この実測値を用いて、経験式により音速プロファイル50Aを算出して格納するという好適な構成を採った。他に、音速を実測した上でこれを音速プロファイル50Aとして格納する機能構成を、実測処理部55として設けてもよい。また、本実施形態では、実測処理部55を音源位置推定装置30の内部に設けたが、これと同様に機能する機器等を該装置の外部に設けるようにしてもよい。

0038

上記のように、現場で実測した音速又は温度分布、塩分濃度から経験式により算出した音速プロファイルを音速プロファイル50Aとして格納することが望ましいが、かかる好適な構成を採らない場合(各実測値が得られない場合)でも、一般に市販されているデータベースの値や、通常よく用いられる1500m/s等の一定の値を音速プロファイル50Aとして用いることができる。

0039

海底地形情報50Bとしては、観測地もしくは一般に市販されているデータベースの値などを用い、受波器位置情報50Cとしては、設置した各受波器の深度を予め入力しておく。

0040

また、伝搬計算処理部61は、伝搬経路上の逆伝搬時間ti(s)を下記式(3)により計算するものである。

0041

0042

式(3)は、媒介変数sに対する積分であるため、式(3)を用いることにより、音線の経路に沿った形で音速の逆数を積分して逆伝搬時間を求めることができる。また、各式(2a)〜(2d)を用いることで、音波伝搬の開始点(受波器群20)からの経路長を求めることができる。

0043

すなわち、伝搬計算処理部61は、上記式(2)及び(3)を用いた計算により、予め設定された時間間隔の各マルチパス波の到来位置(伝搬経路)、受波器群20からの経路長を求め、求めた伝搬経路及び経路長を、各受波器20A、20Bで観測した各到来波の到来時間差誤差標準偏差、及び到来ふ仰角誤差標準偏差と共に尤度算出部62へと出力する。

0044

ところで、逆伝搬時間tにおいて、第i番目のマルチパス波が位置(ri(t)、zi(t))に存する場合の尤度は、下記式(4)で定義される。

0045

0046

ここで、p(Pathi)は、第i番目のマルチパス波が生じる(第i番目のマルチパス波が受波器群に到達する)事前確率である。通常は、受波器群側から音源の指向性などの情報は得られないと考えられるため、ラプラスの不十分理由の原理により各到来波についての事前確率は等しいとすべきである。また、条件付き確率は、具体的に確率密度関数が明確となる情報が得られれば、それに従って構成すべきである。確率密度関数が明確になる情報がない場合は、図5に示すように、音線の経路方向をs方向、音線経路に垂直な方向をη方向として、(ri(t)、zi(t))を原点とする局所座標の距離を(si(t)、ηi(t))とする。

0047

本実施形態において尤度算出部62は、第i番のマルチパス波の経路長をli(t)としたときに、下記式(5)を用いて、各マルチパス波の尤度Li(t)(i=1〜n)を算出する。ここで、σtは到来時間差誤差標準偏差、σθは到来ふ仰角誤差標準偏差である。

0048

0049

すなわち、式(5)を用いた処理が、第1〜第nの尤度計算器62−1〜62−nの各々において個別に行われ、各尤度計算器62−1〜62−nは、それぞれにおいて求めた尤度Li(t)(i=1〜n)をシグマポイント算定部70及び統合尤度計算部82に送信する。

0050

シグマポイント算定部70は、第1〜第nの尤度計算器62−1〜62−nの各々に個別に対応する(音源からの各到来波に個別に対応する)第1〜第nのシグマポイント計算器70−1〜70−nを有し、これら各シグマポイント計算器70−1〜70−nは、対応する第1〜第nの尤度計算器62−1〜62−nから取得した尤度L1(t)〜Ln(t)に基づいて各シグマポイントを計算する。

0051

より具体的に、シグマポイント算定部70は、第i番目のマルチパス波の尤度を表現する分布の各シグマポイント(xi(k))を下記式(6)によって算定する。

0052

0053

このように、シグマポイント算定部70は、各シグマポイント計算器70−1〜70−nによって、マルチパス波の尤度分布を表す平均と共分散行列から、各マルチパス波の尤度分布のシグマポイントを計算するように構成されている。本実施形態では、2次元平面での分布を想定しているため「L=2」とし、スケーリング定数λは、後述する重み係数「Wi(ki)×Wj(kj)」との兼ね合いから「λ=1」とする。

0054

収束時刻特定部81は、第1〜第nの尤度計算器62−1〜62−nにおいて算出された尤度Li(t)(i=1〜n)の分布間距離を求めると共に、該距離が最小となる時刻(収束時刻)を特定(判定)するものである。尤度Li(t)(i=1〜n)の分布間距離を求めるに際して収束時刻特定部81は、各マルチパス波の内の2つのマルチパス波を複数組み合わせた上で、シグマポイント算定部70により算定された各シグマポイントを用いて該各組み合わせの尤度分布間の距離を計算する。

0055

より具体的に、収束時刻特定部81は、図6に示すように、第1〜第nのシグマポイント計算器70−1〜70−nの内から2つを選ぶ全組み合わせ(各シグマポイント計算器の全組み合わせ)に相当する数の分布間距離計算器81−(1、2)〜81−(n−1、n)を有しており、これら各分布間距離計算器81−(1、2)〜81−(n−1、n)が、各々個別に分布間距離(尤度分布間の距離)を求めるものである。

0056

ここで、各シグマポイント計算器の全組み合わせに相当する数は、図6に示す通り、「1+2+…+n−1=(n−1)・n/2」であり、すなわち、本実施形態では、収束時刻特定部81内に、各分布間距離計算器81−(1、2)〜81−(n−1、n)が「(n−1)・n/2」個設けられている。各分布間距離計算器81−(1、2)〜81−(n−1、n)は、各々に応じた分布間距離 d(i、j)を、下記式(7)及び式(8)に基づいて計算する。この分布間距離d(i、j)は、i番目の送出波とj番目の送出波(i≠j)の尤度分布の間の距離である。

0057

0058

0059

この式(8)において、Wi(ki)×Wj(kj)は重み係数であり、t(xi(ki)−xj(kj))は(xi(ki)−xj(kj))の転置行列である。もっとも、上記式(8)では、Wi(ki)についてのみを示したが、Wj(kj)についてもこれと同様である。

0060

ここで、上記式(6)〜(8)によって求められる各シグマポイント間の距離(シグマポイント間距離)の加重平均に基づく分布間距離のイメージを図7に示す。ここでは、第i番目のマルチパス波における各シグマポイントxi(0)〜xi(4)と、第j番目のマルチパス波における各シグマポイントxj(0)〜xj(4)と、を簡単のため5つずつ示すと共に、これらを相互に組み合わせた場合における上記式(7)の重み係数の一部を例示する。例えば、重み係数W04は「(1/3)×(1/6)」、重み係数W00は「(1/3)×(1/3)」、重み係数W32は「(1/6)×(1/6)」となっている。

0061

このように、本実施形態では、尤度分布の中心に位置するシグマポイント(xi(0)、xj(0))に大きな重み(1/3)を付与し、中心以外のシグマポイントには相対的に小さな重み(1/6)を付与すると共に、収束時刻特定部81が、尤度分布における中心の重みと中心以外の重みとの積である重み係数を用いて、収束時刻の判定に影響する分布間距離を求めるように構成したため、音源位置の推定精度の向上を図ることができる。図7では、尤度分布の中心以外に位置する各シグマポイントに共通の重みを付与する構成を示したが、中心からの距離に応じて各シグマポイントの重みを変化させるようにしてもよい。

0062

各分布間距離計算器81−(1、2)〜81−(n−1、n)において個別に算出された分布間距離は、各々から収束時刻計算器81Aに出力される。収束時刻計算器81Aは、各分布間距離計算器81−(1、2)〜81−(n−1、n)の各々から入力した分布間距離の総和dtotal(t)を、下記式(9)によって求めるものである。この分布間距離の総和dtotal(t)は、逆伝搬時間の関数である。

0063

0064

さらに、収束時刻計算器81Aは、分布間距離の総和dtotal(t)を用いて、逆伝搬時間軸上の収束時刻tconvergenceを、下記式(10)によって求める。

0065

0066

そして、収束時刻特定部81は、収束時刻tconvergenceを出力端子81Bを介して音源位置推定部83に出力する。

0067

統合尤度計算部82は、第1〜第nの尤度計算器62−1〜62−nの各々で計算した各マルチパス波の各逆伝搬時間の尤度L1(t)〜Ln(t)を入力すると共に、各尤度L1(t)〜Ln(t)を同じ逆伝搬時間のもの同士で統合(合算)して時系列情報を作成する。すなわち、統合尤度計算部82は、上記統合の結果である統合尤度(尤度関数:Ls(t))を、各逆伝搬時刻について下記式(11)を用いて算出するものである。

0068

0069

音源位置推定部83は、収束時刻特定部81から収束時刻tconvergenceを入力すると共に、統合尤度計算部82から統合尤度Ls(t)を受け取り、収束時刻と統合尤度に基づいて、収束時刻の尤度関数の中で(r、z)に関して最も尤度が大きくなる場所を音源位置と推定し、その結果を出力端子84を介して外部に出力するものである。

0070

(動作説明)
続いて、本実施形態における音源位置推定装置30の動作を、図8に示すフローチャートに基づいて説明する。まず、受波器群20が第1受波器20A及び第2受波器20Bによって、音源90から放射された到来波を受信すると共に、該到来波の時間波形の情報等を受波情報算出部41に出力する(図8:ステップS101)。次いで、受波情報算出部41が、第1受波器20A及び第2受波器20Bの各々から入力された時間波形の情報等を解析して受波解析情報(到来時間差、到来ふ仰角、到来時間差誤差標準偏差、及び到来ふ仰角誤差標準偏差)を算出する(図8:ステップS102)。

0071

次に、到来時間反転部42が、受波情報算出部41から入力された到来時間差を上記式(1)により反転し、反転後の反転時間差を他の到来波に係る情報と共に伝搬計算処理部61へと出力する(図8:ステップS103)。伝搬計算処理部61が、到来時間反転部42から入力された各情報及び情報格納部50から取得した各情報に基づいて、上記式(2)及び式(3)を用いた音線計算等を実行し、予め設定された時間間隔における各マルチパス波の到来位置、受波器群20からの経路長等の情報を尤度算出部62に出力する(図8:ステップS104)。

0072

次いで、尤度算出部62が、上記式(5)の処理により各マルチパス波の尤度Li(t)(i=1〜n)を算出すると共に、尤度Li(t)をシグマポイント算定部70及び統合尤度計算部82に出力する(図8:ステップS105)。次に、シグマポイント算定部70が、上記式(6)の処理により第i番目のマルチパス波の各尤度分布における各シグマポイントを算定すると共に、算定した各シグマポイントを収束時刻特定部81に出力する(図8:ステップS106)。

0073

各シグマポイントが入力された収束時刻特定部81は、各分布間距離計算器81−(1、2)〜81−(n−1、n)によって上記式(7)及び(8)の処理を行うことで、組み合わせ可能な2つのマルチパス波の分布間距離を計算すると共に、収束時刻計算器81Aにおいて上記式(9)に係る処理を行うことで、分布間距離の総和を求める(図8:ステップS107)。

0074

そして、収束時刻特定部81は、上記式(10)を用いた処理により、分布間距離の総和が最小となる時刻(収束時刻)を特定する(図8:ステップS108)。一方、統合尤度計算部82は、上記式(11)を用いて、尤度算出部62から入力された尤度Li(t)(i=1〜n)を同じ逆伝搬時間のもの同士で統合(合算)した統合尤度を算出する(図8:ステップS109)。

0075

音源位置推定部83は、収束時刻特定部81と統合尤度計算部82とから入力された収束時刻と統合尤度とをもとに音源90の位置を推定し、推定した音源位置を出力端子84から外部に出力する。より具体的に音源位置推定部83は、収束時刻特定部81から入力された収束時刻における尤度の合計が最大となる位置を音源90の位置と推定し、推定結果を外部に出力する(図8:ステップS110)。

0076

(実施形態の効果)
本実施形態における音源位置推定装置30では、各マルチパス波の尤度分布を表す情報をもとに、それぞれの尤度分布のシグマポイントを算定し、算定した各シグマポイント間の距離に基づいて分布間距離を計算するという構成を採ったため、高精度な収束時刻の判定処理を実現することができる。そして、音源位置推定部83は、収束時刻での全ての尤度分布の中で、尤度が最大となる位置を音源位置と推定するように構成されているため、音源位置推定装置30によれば、音源の位置を極めて精度よく推定することが可能となる。

0077

ここで、本実施形態における上記構成によって、シグマポイント間距離が連続性を保つ状況を、図9を参照して説明する。図9では、海底反射が起こる直前の逆伝搬時間tk及び海底反射が起こった直後の逆伝搬時間tk+1を、それぞれ破線で囲んだ領域で示すと共に、逆伝搬時間tk、tk+1における2つの尤度分布であるdis1とdis2とをそれぞれ上下に示す。また、各尤度分布dis1、dis2は、黒丸で示した尤度の中心と、楕円状の一点鎖線で囲った誤差分布とから成る。さらに、各尤度分布dis1、dis2に対応する各マルチパス波の逆伝搬経路を示す音線SR1、音線SR2を例示する。

0078

図9のように、尤度分布dis2の海底反射は起こっているが、図10に示す通り、海底反射の前後において分布間距離の総和の連続性が担保されている。後述する従来技術では、海底反射の影響により、分布間距離の総和の不連続が存在していたが(図14参照)、本実施形態における状況を示す図10のグラフでは、不連続点がなくなっており、連続性が改善されていることがわかる。

0079

特に、収束時刻特定部81は、各シグマポイント間の距離をもとに算出する分布間距離を、すべてのシグマポイントの組み合わせに対してユークリッド距離を求めた上で加重平均をとって算出するため、尤度分布の形状を表現した状態で、分布間距離を連続的に変化させることができる。すなわち、図9では、尤度分布dis2が連続的に海底反射する様子が、各シグマポイントの位置によって表現されており、尤度分布dis1の各シグマポイントと尤度分布dis2の各シグマポイント間の距離の加重平均を計算することで、分布間距離も連続的に変化することとなる(後述する第2の問題点の解決)。

0080

加えて、伝搬計算処理部61による伝搬経路の推定をもとに尤度算出部62が算出した尤度分布に基づいて、シグマポイント算定部70が、各マルチパス波の尤度分布のシグマポイントを算定し、収束時刻特定部81が、各シグマポイントを用いて各尤度分布間の距離を計算するという構成を採ったことから、共分散行列によって規格化するという処理が不要となったため、誤差分布が広がることによって距離が近づいている旨を誤判定するといった問題は生じない。

0081

すなわち、図10に示す逆伝搬時間領域Taにおける変動の様子からも解るように、収束時刻特定部81は、尤度分布が近づけば距離が近い旨を、尤度分布が遠のけば距離が遠い旨を高精度で判定することができる(後述する第1の問題点の解決)。また、逆伝搬した全てのマルチパス波が音源位置に到達する理想的な時刻(理想的な収束時刻)は逆伝搬時間t0であるため、図10に示すグラフから、収束時刻特定部81が、収束時刻の判定を精度よく実行できることを確認できる。

0082

続いて、誤検出が含まれる場合における、シグマポイント間距離に基づく分布間距離の総和と逆伝搬時間との関係を図11に示す。図11の場合にも、誤検出による分布間距離の寄与が含まれているため、分布間距離の総和は一定以上の値を下回ることはないが、後述する従来技術の場合とは異なり(図15参照)、不連続な値の変動が全域で存在しないことが確認できる。

0083

また、後述する従来技術では、誤検出の影響による不連続な変動が存在し、理想的な収束時刻である逆伝搬時間t0において、分布間距離の総和が最小値にならないという不都合が生じる(図15参照)。しかし、本実施形態では、図11に示す通り、誤検出が発生したような場合にも不連続な変動がなくなるため、妥当な逆伝搬時間t0に分布間距離の総和が最小値となることから、収束時刻特定部81は、理想的な逆伝搬時間t0を収束時刻として求めることができる。

0084

ここで、音源位置推定装置30によって得られる効果を更に詳細に説明するための比較例を、図12図15を参照して説明する。2つの尤度分布の中心と誤差分布のイメージを例示する図12は、マハラノビス距離の考え方による分布間距離の判定処理に係る説明図である。図12には、到来時間差の平均値及び到来ふ仰角の平均値に基づいて求めた尤度(尤度分布)の中心C1〜C8と、中心C1〜C8に対して標準偏差の値だけずれた位置にある誤差分布E1〜E8(楕円状の一点鎖線)とを例示する。特許文献1における技術では、各分布間距離の遠近を予め決められた距離(判定基準距離)との比較により判定するに際して誤差分布E1〜E8が考慮される。

0085

図12(a)の場合は、2つの尤度分布の中心C1と中心C2とは近くにあり、誤差分布E1と誤差分布E2は広がっていない。このため、マハラノビス距離の考え方によれば、2つの尤度分布は近いと判定される。図12(b)の場合は、2つの尤度分布の中心C3と中心C4とは遠くにあり、誤差分布E3と誤差分布E4は広がっていないため、2つの尤度分布は遠いと判定される。

0086

図12(c)の場合は、2つの尤度分布の中心C5と中心C6とは遠くにあるが、誤差分布E5と誤差分布E6は各中心を結ぶ方向(互いの分布の中心方向)に沿って広がっている。このため、マハラノビス距離の考え方によれば、中心C5と中心C6との間の距離にかかわらず、2つの分布は近いと判定される。

0087

図12(d)の場合は、2つの尤度分布の中心C7と中心C8とは遠くにあり、その誤差分布が広がっている。しかし、この場合における誤差分布E7と誤差分布E8の広がりは、各中心を結ぶ方向とは異なる方向に沿っているため、マハラノビス距離の考え方によれば、2つの分布は遠いと判定される。

0088

図12(b)〜(d)では、中心間距離が相互に等しい状況を想定しているが、マハラノビス距離により分布間距離を算出すると、尤度分布の中心間距離と誤差分布間距離との差が大きくなり得るため、特に図12(c)の場合のように、分布間距離の遠近を正しく判定できないという不都合が起こる。

0089

なお、図12では、誤差分布が、尤度分布の中心を結ぶ直線にほぼ沿う方向又はこれに垂直な方向に広がっている状況を例示したが、実際には、誤差分布の広がりの方向はこれらに限定されないため、尤度分布の中心間距離と誤差分布間距離との間に一定の関係が成立しないことから、尤度分布の遠近の判定結果は、誤差分布の広がりに大きく左右される非常に不安定なものになる。

0090

したがって、分布間距離の算出にマハラノビス距離の考え方を採用した場合には、2つの尤度分布の中心がどこにあるのかという点の他に、共分散行列によって表現される誤差分布の広がりや向きの影響が非常に大きくなる。すなわち、マハラノビス距離の持つ特性には、マルチパス波の収束時刻の判定において、特に下記3つの問題がある。

0091

まず第1の問題点は、図12(c)に示すように、誤差分布が広がることによって、2つの尤度分布の中心が離れているにもかかわらず、各分布間の距離が近いと判定してしまうことである。すなわち、2つの尤度分布の中心は離れているが、該各中心を結ぶ方向において、その中心間の距離と同程度に誤差分布が広がっている。このため、2つの尤度分布を表す共分散行列で規格化してしまうと、2つの尤度分布は近いと判定されてしまうため、2つの確率変数間の距離の期待値を、誤差分布の形状を考慮した上で表現して収束判定に用いることができない。

0092

第2の問題点は、海面反射や海底反射によって、マハラノビス距離が不連続に変化するという不都合である。特許文献1に開示された手法によれば、逆伝搬しているマルチパス波が海面もしくは海底で反射した際に、マハラノビス距離に関数としての連続性が生じる。図13は、2つのマルチパス波が逆伝搬している様子を示す模式図である。

0093

図13では、海底反射が起こる直前の逆伝搬時間tk及び海底反射が起こった直後の逆伝搬時間tk+1を左右に破線で示すと共に、各逆伝搬時間tk、tk+1における2つの尤度分布であるdis01とdis02とをそれぞれ上下に示している。また、各尤度分布dis01、dis02は、黒丸で示した尤度の中心と、楕円状の一点鎖線で囲った誤差分布と、から成る。

0094

さらに、図13では、各尤度分布dis01、dis02に対応する各マルチパス波の逆伝搬経路を示す音線SR01、音線SR02を例示している。尤度分布dis02が海底反射した際に、マハラノビス距離の規格化に使用する2つの共分散行列のうち、尤度分布dis02の共分散行列が不連続に変化するため、図14に示すように、上記図10に示す本実施形態の場合とは異なり、マハラノビス距離も不連続となる。

0095

すなわち、尤度分布dis02が海底反射した際に、マハラノビス距離の規格化に使用する尤度分布dis02の共分散行列の項のうち、該分布の傾きを表す非対称項が、海底反射によって逆伝搬時間tkと逆伝搬時間tk+1とで不連続となる。このため、規格化に共分散行列を用いるマハラノビス距離も逆伝搬時間tkと逆伝搬時間tk+1で不連続となる。

0096

ここで、逆伝搬時間に対するマハラノビス距離による分布間距離を示す図14を参照して、上記2つの問題が起こっている状況を説明する。図14には、逆伝搬時間tk、tk+1で、図13における尤度分布dis02に該当するマルチパス波が海底反射しているグラフを示す。

0097

このグラフには、逆伝搬時間tk、tk+1(例えば0.018sec)の前後である逆伝搬時間tkから逆伝搬時間tk+1に亘って、分布間距離の総和が急激に増加していることが示されており、海底反射時にマハラノビス距離が不連続に変化している様子がわかる。この点、尤度分布dis2の海底反射が連続的である本実施形態とは異なる(図10参照)。なお、理想的な収束時刻は逆伝搬時間t0である。

0098

また、図14では、海底反射後における逆伝搬時間領域Tbのマハラノビス距離は、徐々に小さくなるという傾向を示している。このことから、図12(c)のように、互いの尤度分布の中心方向に沿って誤差分布が広がることによって、分布間距離が実際の距離よりも近いと判定してしまう事態が起こっていることを確認できる。すなわち、誤差分布が広がることによって、尤度分布の中心間距離の如何によらず、分布間距離が近づいているとの判定が行われていることがわかる。

0099

ところで、マルチパス波の検出に誤検出が含まれていない場合には、検出精度の問題を除けば、ある逆伝搬時間に分布の中心が重なることが期待されるため、妥当な収束時刻においては、基本的にすべての逆伝搬するマルチパス波の分布間距離の総和が0となるはずである。しかしながら、誤検出が含まれている場合には、正当な検出によるマルチパス波と誤検出によるマルチパス波との分布間距離が、適切な値との隔たりを持つことになる。

0100

すなわち、特許文献1に開示されたマハラノビス距離に係る手法によって分布間距離を求めた場合には、分布間の中心が離れている場合であっても、正当な検出によるマルチパス波と誤検出によるマルチパス波との分布間距離を近いと誤判定するといった問題や、海面や海底での反射によって分布間距離が不連続に変化するといった問題が起こる。こうした問題は、分布間距離の総和が最小となる逆伝搬時間(収束時刻)を求める際に大きな悪影響を及ぼす。

0101

第3の問題点は、マルチパス波の検出に誤検出が含まれていた場合に、上記第1及び第2の問題発生が影響して、分布間距離の妥当な最小値を推定できない頻度が増えることである。ここで、マルチパス波の検出に誤検出が含まれている状況を示す図15を参照して第3の問題点を説明する。

0102

図15では、全域に亘って誤検出が含まれている状況を想定しているため、各分布間距離の総和は、一定以上の0ではない分布間距離が不連続に変動しながら加算されたものである。図15に示すように、理想的な収束時刻である逆伝搬時間t0での分布間距離の総和は、局所的には小さな値となっているが、全域的には最小値とはなっていない。

0103

すなわち、誤検出の影響によって、逆伝搬時間0.015sec以降における分布間距離の総和の方が、理想的な収束時刻における分布間距離の総和よりも小さな値となっており、しかも伝搬時間0.03secを過ぎた逆伝搬時間tbの時点において分布間距離の総和が最小であると判定される不都合が生じる。収束時刻の誤判定は、音源位置の推定結果の誤り直結してしまうため、収束時刻の判定精度に影響する分布間距離を精度よく算出することは極めて重要である。

0104

本実施形態における音源位置推定装置30は、各マルチパス波の尤度分布から各シグマポイントを算定するシグマポイント算定部70と、シグマポイント算定部70において算定された各シグマポイント間の距離に基づいて各マルチパス波の分布間距離を計算する収束時刻特定部81を有するため、収束時刻の判定を精度よく行うことができる(上記第1の問題点の解決)。また、収束時刻特定部81内の各分布間距離計算器は、各シグマポイント間の距離の加重平均を尤度分布間の距離として求めるため、尤度分布間の距離が連続的に変化させることができる(上記第2の問題点の解決)。併せて、第1及び第2の問題点に関連する上記第3の問題点も改善することができる。

0105

すなわち、尤度算出部62の出力側にシグマポイント算定部70を設け、シグマポイント算定部70で算定した各シグマポイントに基づいて収束時刻特定部81が収束時刻を判定し特定する、という構成を採った音源位置推定装置30によれば、受波器群20から入力した音波の情報をより有意に解析することで、収束時刻に係る誤判定を低減させることが可能となり、かつ該分布間距離が海面や海底での反射によって不連続に変動するといった状況を回避することができる。

0106

なお、上述した実施形態は、音源位置推定装置、その方法における好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術的範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。

0107

例えば、収束時刻特定部81が、シグマポイント算定部70によって算定された各シグマポイント間の距離の平均を尤度分布間の距離として求めるようにしてもよい。また、収束時刻特定部81の構成内容は、図6に示すものに限らず、すなわち、収束時刻特定部81内に任意の数(1以上)の分布間距離計算器を設け、任意の数の分布間距離計算器が、第1〜第nのシグマポイント計算器から入力した各シグマポイントを相互に組み合わせて各尤度分布の間の距離を算出するようにしてもよい。

0108

さらに、本実施形態では、図7等を参照して、各シグマポイント計算器70−1〜70−nが各尤度分布におけるシグマポイントを5つ算出するという内容を例示した。しかし、上記式(6)にも示す通り、各尤度分布におけるシグマポイントの個数は任意に設定することができるため、シグマポイント算定部70が、それぞれの尤度分布において任意の個数(2以上)のシグマポイントを算出するようにしてもよい。

0109

1直接波、2〜5マルチパス波、SR1、SR2、SR01、SR02音線、10音源位置推定システム、20受波器群、20A 第1受波器、20B 第2受波器、30音源位置推定装置、41受波情報算出部、42到来時間反転部(到来時間差反転部)、50情報格納部、50A音速プロファイル、50B海底地形情報、50C 受波器位置情報、55実測処理部、61伝搬計算処理部、61−1〜61−n 第1〜第nの伝搬計算器、62尤度算出部、62−1〜62−n 第1〜第nの尤度計算器、70シグマポイント算定部、70−1〜70−n 第1〜第nのシグマポイント計算器、81収束時刻特定部、81−(1、2)〜81−(n−1、n)分布間距離計算器、81A 収束時刻計算器、81B出力端子、82統合尤度計算部、83音源位置推定部、84 出力端子、90音源、C1〜C8 中心、E1〜E8誤差分布、尤度L1(t)〜Ln(t):尤度Li(t)(i=1〜n) 尤度、Ls(t) 統合尤度、Ta、Tb 逆伝搬時間領域、Wi(ki)×Wj(kj)、W00、W04、W32重み係数、d(i、j) 分布間距離、dis1、dis2、dis01、dis02尤度分布、dtotal(t) 総和、z深度方向、r 受波器群から音源に向かう方向、s媒介変数、t、t0、tb、ti、tk、tk+1 逆伝搬時間、tconvergence 収束時間、xi(0)〜xi(4)、xj(0)〜xj(4) シグマポイント、θ送出ふ仰角、C 受波器群の位置における音速、ζsinθ/C、ξ cosθ/C、λスケーリング定数、τ'n、τ'n−1、τ'n−2反転時間差、τn、τn−1、τn−2 到来時間差、Zw水深、Zr 海面から受波器群までの垂直距離、Zs 海面から音源までの垂直距離、Rw 音源と音源位置推定装置との間の水平距離、Dh 間隔。

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    【課題】第一部材及び第二部材を接合し、第一部材及び第二部材の間に設けられる封止空間と外部空間とを連通する連通部を第二部材に設ける場合、第一部材や第二部材が破損するおそれがある。【解決手段】MEMSデバ... 詳細

  • 日本電気株式会社の「 ソーナー装置とこれを用いた目標探知方法」が 公開されました。( 2020/09/24)

    【課題】省スペース化を図り、遠距離及び近距離の両方の目標の探索に対応可能としたソーナー装置の提供。【解決手段】ソーナー装置は、複数段縦積みされ、且つ、縦積み段方向と直交する断面において音響面の反対側が... 詳細

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