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技術 複合膜、複合膜の製造方法、ストレッチャブル電子デバイス及びストレッチャブル電子デバイスの製造方法

出願人 国立大学法人群馬大学
発明者 上原宏樹山延健
出願日 2016年5月11日 (4年6ヶ月経過) 出願番号 2016-095638
公開日 2016年12月15日 (3年11ヶ月経過) 公開番号 2016-210188
状態 特許登録済
技術分野 積層体(2) 曲げ・直線化成形、管端部の成形、表面成形 プラスチック等の延伸成形、応力解放成形 高分子成形体の被覆
主要キーワード 伸縮膜 電子配線基板 残存度合い 電子配線 対数座標 ウェアラブルデバイス ポリラップ 実施順
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (20)

課題

規則的なしわ構造を有する表面層を有し、伸縮性高強度性とを有する複合膜、伸縮性と高強度性とを有する複合膜の簡易な製造方法、伸縮性と高強度性とを有し、繰り返し伸縮しても電気伝導性が維持されるストレッチャブル電子デバイス及びその製造方法を提供する。

解決手段

融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーを含有し、融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー組成物を含んで形成され、しわ構造を有する熱可塑性ポリマー層と、前記熱可塑性ポリマー層に隣接して形成され、前記熱可塑性ポリマー層の厚さよりも厚いエラストマー層と、を備え、室温にて伸縮性を有する複合膜及びその応用。

概要

背景

近年、架橋シリコーン膜を延伸した状態で表面を酸化し、シリコーン膜の表面に堅いシリカ層を形成させ、その後、延伸応力解放することで、表面シリカ層を座屈させて数μmオーダー規則的な「しわリンクル)」(以下、「しわ構造」と称することがある)を形成させる研究が数多くなされている(例えば、非特許文献1、特許文献1、特許文献2参照)。シリカ層からなる規則的なしわ構造は、撥水性表面として利用可能であることが想定されている。

また、シリカ層に代えて架橋シリコーン膜の表面に、金属薄膜(例えば、特許文献3〜特許文献5参照)、高分子薄膜(例えば、特許文献6、特許文献7、非特許文献2参照)を積層して、周期的しわ構造を有する薄膜層を架橋シリコーン膜上に形成させる技術も提案されている。これらの技術では、周期的しわ構造を有する薄膜を架橋シリコーン基材から引き剥がし、これをエレクトロニクス材料として用いることが主に想定されている。

これらの技術では、架橋シリコーンのような伸縮可能なエラストマー基板を用いて、表面に異種素材からなる層(以下、異素材層と称することがある)による規則的なしわ構造を形成する複合膜が得られるが、複合膜の機能としては、撥水性などの表面に形成された異素材層の表面特性に限定されており、基材層となる伸縮性エラストマー層の性能と異素材層の性能とを組み合わせることで、新たな機能や物性を発現させようという発想自体がなかった。

従来の技術では、規則的なしわ構造の形成方法として、エラストマー基材層に予め印加しておいた応力を解放することによって、エラストマー基材層の表面に形成された硬質な異素材層を座屈して、表面凸凹構造を発現させる。従って、エラストマー基板に再び、ひずみを印加すると、すでに座屈された表面の異素材層がさらに破壊されることになり、当初形成されたしわ構造の規則性が損なわれてしまう。従って、従来の方法で作製された複合膜では、しわ構造が一旦形成された後にエラストマー基板の伸縮性を発揮させることは困難である。また、従来の複合膜では、エラストマー基板と、異素材層が座屈して形成された表面層との間の関連性が乏しく、複合膜としての利点が発揮されているとは言い難い。

さらに、従来法における規則的なしわ構造の製造方法では、エラストマー基板を延伸又は圧縮した状態でエラストマー基板表面に異種素材を付与する必要がある。すなわち、形成しようとする規則的しわ構造のサイズに応じた延伸又は圧縮を行ない、固定した上で異素材層を形成する必要があり、煩雑な工程を必要とする。
また、形成された規則的しわ構造を有する異素材層を薄膜としてエラストマー基板から剥離することが困難であり、剥離する場合には、予め、しわ構造を有する異素材層を形成させておき、この表面に、さらに他の異素材層を形成させ、これを引き剥がす方法が取られる。
異素材層がシリカ層である場合には、架橋シリコーン基板表面をプラズマ処理することのみにより、架橋シリコーン層とシリカ層の複合膜が簡易に形成可能ではあるが、シリカ層を架橋シリコーン層から自立薄膜として分離することは困難である。シリカ膜金属膜などであって自立薄膜として分離困難な異素材層では、溶液状態から薄膜形成が可能である高分子材料を、異素材層表面にコートすることで自立膜として分離可能補強を行なっている。この場合、高分子溶液キャスト又はコートなど、ウェット状態での処理が必須となる。さらに、コートした高分子層と異素材層とが一体化する必要があり、この状態でエラストマー基板から両層をまとめて引き剥がし、その後、コートした高分子層のみを溶剤によって溶解除去する。従って、コートする高分子層は、引き剥がしたい異素材層との接着性が高く、かつ、溶剤による溶解除去ができるなど、複数の制約が加わる。このようなウェット処理で異素材層に補強膜を形成し、規則的なしわ構造を形成した後に剥離する方法では、工業的にしわ構造を有する薄膜を製造するという観点からは、生産性の点で問題がある。

現在、ウェアラブルデバイスフレキシブルディスプレー等のソフトエレクトロニクスの実現を目指して、折り曲げ可能なフレキシブル基板伸び縮み可能なストレッチャブル基板を創製しようという試みが行われている。
例えば、染谷らは、ポリエステルフィルム電子回路を描画し、これをウェアラブルデバイスとして利用する研究を行っている(例えば、非特許文献3参照)。しかしながら、非特許文献3にて基材として用いられるポリエステルフィルムは折り曲げることはできるものの、伸縮性の発現はほとんど期待できない。非特許文献3に記載のウェアラブルデバイスは、曲げひずみに対しては電気配線又は電気伝導層電気伝導性を維持しうるものの、伸びひずみに関しては、ひずみが5%を超えると電気配線又は電気伝導層が伸びに追従せず断裂するため、ひずみを印加しない状態と比べて電気抵抗値が上昇し、電気伝導度が著しく低下してしまう。従って、非特許文献3に記載の技術は、伸び縮み可能なストレッチャブル電子デバイスとして利用することはできなかった。
ウェアラブルデバイスの別の態様として、衣服電極を貼り付け、電極間の距離の相違による電位差から筋肉動き数値化するデバイスの開発が行われているが、伸縮性が不十分であると筋肉の動きに追従できず配線切れてしまうという問題がある。このため、伸縮性と強度を両立し、かつ、簡易な製造方法にて得られる複合膜が望まれている。

概要

規則的なしわ構造を有する表面層を有し、伸縮性と高強度性とを有する複合膜、伸縮性と高強度性とを有する複合膜の簡易な製造方法、伸縮性と高強度性とを有し、繰り返し伸縮しても電気伝導性が維持されるストレッチャブル電子デバイス及びその製造方法を提供する。融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーを含有し、融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー組成物を含んで形成され、しわ構造を有する熱可塑性ポリマー層と、前記熱可塑性ポリマー層に隣接して形成され、前記熱可塑性ポリマー層の厚さよりも厚いエラストマー層と、を備え、室温にて伸縮性を有する複合膜及びその応用。

目的

このため、伸縮性と強度を両立し、かつ、簡易な製造方法にて得られる複合膜が望まれている

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

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請求項1

融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーを含有し、融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー組成物を含んで形成され、しわ構造を有する熱可塑性ポリマー層と、前記熱可塑性ポリマー層に隣接して形成され、前記熱可塑性ポリマー層の厚さよりも厚いエラストマー層と、を備え、室温(25℃)にて伸縮性を有する複合膜

請求項2

JIS7161(1994年)に規定する引張り試験を室温(25℃)で行なった際に記録した応力−ひずみ曲線において、ひずみ上昇に伴って傾きが大きくなる変曲点を有する、請求項1に記載の複合膜。

請求項3

前記応力−ひずみ曲線の変曲点より小さいひずみでの曲線の傾きを1としたとき、変曲点より大きいひずみでの曲線の傾きが2.0以上である、請求項2に記載の複合膜。

請求項4

前記熱可塑性ポリマー層のしわ構造は、前記熱可塑性ポリマー層表面に平行方向の周期が、0.01μm〜5000μmであり、前記熱可塑性ポリマー層表面に垂直方向の最頂部と最低部との距離が、0.01μm〜5000μmである、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の複合膜。

請求項5

前記熱可塑性ポリマー層の厚みが0.01μm〜5000μmであり、前記熱可塑性ポリマー層の厚みを1としたとき、エラストマー層の厚みが1.1〜5000である、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の複合膜。

請求項6

前記熱可塑性ポリマー又は前記熱可塑性ポリマー組成物が、前記熱可塑性ポリマー又は前記熱可塑性ポリマー組成物のみで構成された厚さ300μmのフィルムを、前記フィルムの融点以上融点+30℃以下の温度範囲で、JIS7161(1994年)に準拠した引張り試験を行った場合に、破断することなく、ひずみ100%以上に延伸可能な熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマー組成物である、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の複合膜。

請求項7

前記熱可塑性ポリマーが、粘度平均分子量及び重量平均分子量の少なくともいずれかが100万以上の熱可塑性ポリマーである、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の複合膜。

請求項8

前記エラストマー層が、エラストマー層を構成するエラストマー層形成用組成物からなる厚さ500μmのフィルムを形成し、得られたフィルムに対してJIS7161(1994年)に準拠した引張り試験を室温(25℃)で行った場合に、破断することなく、ひずみ100%以上に延伸可能であり、かつ、ひずみ100%に伸長した状態から、引張り応力開放した際に、残存ひずみ90%以下まで収縮するエラストマー層である、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の複合膜。

請求項9

前記熱可塑性ポリマーが、エチレンα−オレフィンエチレンオキシドビニルアルコール及びテトラフルオロエチレンから選ばれる少なくとも1種を重合成分として有する単独重合体又は共重合体を含む、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の複合膜。

請求項10

前記エチレン及びα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種を重合成分として含む単独重合体又は共重合体が、超高分子量ポリエチレン高密度ポリエチレン低密度ポリエチレン直鎖状低密度ポリエチレンポリプロピレンポリ1−ブテン、及びポリ4−メチル−1−ペンテンから選ばれる少なくとも1種である、請求項9に記載の複合膜。

請求項11

前記エラストマー層が、ジメチルシロキサンジフェニルシロキサンジビニルシロキサンメチルフェニルシロキサンビニルメチルシロキサンビニルフェニルシロキサン、メチルハイドロゲンシロキサン、メチルトリフルオロプロピルシロキサンから選ばれる少なくとも1種を重合成分として有する単独重合体又は共重合体を含むシリコーンゴム又はシリコーン樹脂ブタジエンゴムスチレンブタジエンゴムエチレンプロピレンゴムアクリルゴムウレタンゴムフッ素ゴムクロロプレンゴムイソプレンゴムブチルゴム塩素化ブチルゴムニトリルゴム多硫化ゴム有機ポリスルフィド)、エビクロルヒドリンゴムクロスルホルン化ポリエチレンゴム及び天然ゴムから選ばれる少なくとも1種のゴム;α−オレフィンを2種以上含むランダム共重合体;α−オレフィンと酢酸ビニルとを含む共重合体;α−オレフィンとアクリル酸とを含む共重合体、ポリ酢酸ビニルポリ塩化ビニル、からなる群より選択される少なくとも1種のエラストマーを含む層である、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の複合膜。

請求項12

前記エラストマー層が、架橋構造を含む、請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の複合膜。

請求項13

融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーを含有し、融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー組成物を用いて熱可塑性ポリマーフィルム成形するフィルム形成工程、前記フィルム形成工程で得られた熱可塑性ポリマーフィルムに隣接して、前記熱可塑性ポリマーフィルムの厚みよりも厚いエラストマー層を形成して積層体を得る積層体形成工程、前記積層体を、前記熱可塑性ポリマーフィルムの融点以上の温度で延伸処理する延伸工程、延伸処理した前記積層体の温度を前記熱可塑性ポリマーフィルムの結晶化温度以下まで降温する降温工程、及び、前記降温工程後に、前記延伸工程において前記積層体に印加された延伸応力解放する応力解放工程を含む、しわ構造を有する熱可塑性ポリマー層とエラストマー層とを備え、室温(25℃)にて伸縮性を有する複合膜の製造方法。

請求項14

前記積層体形成工程が、前記熱可塑性ポリマーフィルムと前記エラストマー層のうち少なくとも1つを2以上有し、かつ、2以上存在する前記熱可塑性ポリマーフィルム及び前記エラストマー層の一方が、前記熱可塑性ポリマーフィルム及び前記エラストマー層の他方を挟んでいる積層体を形成する工程である、請求項13に記載の複合膜の製造方法。

請求項15

前記積層体形成工程で得られた熱可塑性ポリマーフィルムとエラストマー層との積層体を、前記延伸工程に付することで、エラストマー層に隣接する熱可塑性ポリマーフィルムが延伸され、その後、降温工程の後に、前記応力解放工程に付することで、エラストマー層に隣接して延伸された熱可塑性ポリマーフィルムが、エラストマー層の収縮に伴ってしわ構造を形成し、前記しわ構造を有する熱可塑性ポリマー層を形成する、請求項13又は請求項14に記載の複合膜の製造方法。

請求項16

前記積層体形成工程が、前記エラストマー層を形成するためのエラストマー層形成用組成物を前記熱可塑性ポリマーフィルムの少なくとも片面に付与してエラストマー層形成用組成物層を形成し、形成された前記エラストマー層形成用組成物層を硬化させてエラストマー層を形成する工程であるか、又は、前記エラストマー層を形成するためのエラストマー層形成用組成物を成形したエラストマー層形成用フィルムを前記熱可塑性ポリマーフィルムの少なくとも片面に転写してエラストマー層を形成する工程である、請求項13〜請求項15のいずれか1項に記載の複合膜の製造方法。

請求項17

前記フィルム形成工程が、形成された前記熱可塑性ポリマーフィルムを延伸することをさらに含む、請求項13〜請求項16のいずれか1項に記載の複合膜の製造方法。

請求項18

前記熱可塑性ポリマーが、粘度平均分子量及び重量平均分子量の少なくともいずれかが100万以上である熱可塑性ポリマーである、請求項13〜請求項17のいずれか1項に記載の複合膜の製造方法。

請求項19

前記熱可塑性ポリマーが、超高分子量ポリエチレンを含み、かつ、前記フィルム形成工程が、熱可塑性ポリマーフィルムを前記熱可塑性ポリマーフィルムの融点以上の温度で延伸することを含む、請求項13〜請求項18のいずれか1項に記載の複合膜の製造方法。

請求項20

前記熱可塑性ポリマーが、超高分子量ポリエチレンを含み、かつ、前記延伸工程が、136℃〜165℃の温度条件下で行われる、請求項13〜請求項19のいずれか1項に記載の複合膜の製造方法。

請求項21

融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーを含有し、融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー組成物を含んで形成され、しわ構造を有する熱可塑性ポリマー層と、前記熱可塑性ポリマー層の一方の面上に形成され、前記熱可塑性ポリマー層の厚さよりも厚いエラストマー層と、前記熱可塑性ポリマー層の前記エラストマー層を有しない側の面上に形成された導電部材と、を備え、室温(25℃)にて伸縮性及び導電性を有するストレッチャブル電子デバイス

請求項22

前記導電部材の厚みが前記エラストマー層の厚みより小さい、請求項21に記載のストレッチャブル電子デバイス。

請求項23

ひずみを印加しない状態で室温(25℃)において測定した導電部材の初期電気抵抗値をR0とし、前記しわ構造を引き伸ばす方向にひずみを20%印加した状態及びひずみを解放して0%とした状態で、室温(25℃)において測定した導電部材の電気抵抗値をRとし、RとR0との差(R−R0)を△Rとしたとき、R0に対する△Rの比(△R/R0)が、0.9以下であり、かつ、その後、ひずみを印加しない状態に戻し、再びひずみを20%印加するサイクルを10回繰り返した場合、△R/R0が常に0.9以下である、請求項21又は請求項22に記載のストレッチャブル電子デバイス。

請求項24

前記しわ構造を引き伸ばす方向が、ストレッチャブル電子デバイス面に対して一方向または二方向である、請求項23に記載のストレッチャブル電子デバイス。

請求項25

請求項13〜請求項20のいずれか1項に記載の複合膜の製造方法において、前記熱可塑性ポリマー層に隣接して導電部材を形成する導電部材形成工程をさらに含むストレッチャブル電子デバイスの製造方法。

請求項26

前記導電部材の厚みが前記エラストマー層の厚みより小さい、請求項25に記載のストレッチャブル電子デバイスの製造方法。

技術分野

0001

本発明は、複合膜、複合膜の製造方法、ストレッチャブル電子デバイス及びストレッチャブル電子デバイスの製造方法に関する。

背景技術

0002

近年、架橋シリコーン膜を延伸した状態で表面を酸化し、シリコーン膜の表面に堅いシリカ層を形成させ、その後、延伸応力解放することで、表面シリカ層を座屈させて数μmオーダー規則的な「しわリンクル)」(以下、「しわ構造」と称することがある)を形成させる研究が数多くなされている(例えば、非特許文献1、特許文献1、特許文献2参照)。シリカ層からなる規則的なしわ構造は、撥水性表面として利用可能であることが想定されている。

0003

また、シリカ層に代えて架橋シリコーン膜の表面に、金属薄膜(例えば、特許文献3〜特許文献5参照)、高分子薄膜(例えば、特許文献6、特許文献7、非特許文献2参照)を積層して、周期的しわ構造を有する薄膜層を架橋シリコーン膜上に形成させる技術も提案されている。これらの技術では、周期的しわ構造を有する薄膜を架橋シリコーン基材から引き剥がし、これをエレクトロニクス材料として用いることが主に想定されている。

0004

これらの技術では、架橋シリコーンのような伸縮可能なエラストマー基板を用いて、表面に異種素材からなる層(以下、異素材層と称することがある)による規則的なしわ構造を形成する複合膜が得られるが、複合膜の機能としては、撥水性などの表面に形成された異素材層の表面特性に限定されており、基材層となる伸縮性エラストマー層の性能と異素材層の性能とを組み合わせることで、新たな機能や物性を発現させようという発想自体がなかった。

0005

従来の技術では、規則的なしわ構造の形成方法として、エラストマー基材層に予め印加しておいた応力を解放することによって、エラストマー基材層の表面に形成された硬質な異素材層を座屈して、表面凸凹構造を発現させる。従って、エラストマー基板に再び、ひずみを印加すると、すでに座屈された表面の異素材層がさらに破壊されることになり、当初形成されたしわ構造の規則性が損なわれてしまう。従って、従来の方法で作製された複合膜では、しわ構造が一旦形成された後にエラストマー基板の伸縮性を発揮させることは困難である。また、従来の複合膜では、エラストマー基板と、異素材層が座屈して形成された表面層との間の関連性が乏しく、複合膜としての利点が発揮されているとは言い難い。

0006

さらに、従来法における規則的なしわ構造の製造方法では、エラストマー基板を延伸又は圧縮した状態でエラストマー基板表面に異種素材を付与する必要がある。すなわち、形成しようとする規則的しわ構造のサイズに応じた延伸又は圧縮を行ない、固定した上で異素材層を形成する必要があり、煩雑な工程を必要とする。
また、形成された規則的しわ構造を有する異素材層を薄膜としてエラストマー基板から剥離することが困難であり、剥離する場合には、予め、しわ構造を有する異素材層を形成させておき、この表面に、さらに他の異素材層を形成させ、これを引き剥がす方法が取られる。
異素材層がシリカ層である場合には、架橋シリコーン基板表面をプラズマ処理することのみにより、架橋シリコーン層とシリカ層の複合膜が簡易に形成可能ではあるが、シリカ層を架橋シリコーン層から自立薄膜として分離することは困難である。シリカ膜金属膜などであって自立薄膜として分離困難な異素材層では、溶液状態から薄膜形成が可能である高分子材料を、異素材層表面にコートすることで自立膜として分離可能補強を行なっている。この場合、高分子溶液キャスト又はコートなど、ウェット状態での処理が必須となる。さらに、コートした高分子層と異素材層とが一体化する必要があり、この状態でエラストマー基板から両層をまとめて引き剥がし、その後、コートした高分子層のみを溶剤によって溶解除去する。従って、コートする高分子層は、引き剥がしたい異素材層との接着性が高く、かつ、溶剤による溶解除去ができるなど、複数の制約が加わる。このようなウェット処理で異素材層に補強膜を形成し、規則的なしわ構造を形成した後に剥離する方法では、工業的にしわ構造を有する薄膜を製造するという観点からは、生産性の点で問題がある。

0007

現在、ウェアラブルデバイスフレキシブルディスプレー等のソフトエレクトロニクスの実現を目指して、折り曲げ可能なフレキシブル基板伸び縮み可能なストレッチャブル基板を創製しようという試みが行われている。
例えば、染谷らは、ポリエステルフィルム電子回路を描画し、これをウェアラブルデバイスとして利用する研究を行っている(例えば、非特許文献3参照)。しかしながら、非特許文献3にて基材として用いられるポリエステルフィルムは折り曲げることはできるものの、伸縮性の発現はほとんど期待できない。非特許文献3に記載のウェアラブルデバイスは、曲げひずみに対しては電気配線又は電気伝導層電気伝導性を維持しうるものの、伸びひずみに関しては、ひずみが5%を超えると電気配線又は電気伝導層が伸びに追従せず断裂するため、ひずみを印加しない状態と比べて電気抵抗値が上昇し、電気伝導度が著しく低下してしまう。従って、非特許文献3に記載の技術は、伸び縮み可能なストレッチャブル電子デバイスとして利用することはできなかった。
ウェアラブルデバイスの別の態様として、衣服電極を貼り付け、電極間の距離の相違による電位差から筋肉動き数値化するデバイスの開発が行われているが、伸縮性が不十分であると筋肉の動きに追従できず配線切れてしまうという問題がある。このため、伸縮性と強度を両立し、かつ、簡易な製造方法にて得られる複合膜が望まれている。

0008

特開2012−11478号公報
特開2014−64963号公報
特開2009−96081号公報
特開2014−102100号公報
特開2014−102101号公報
特開2010−201610号公報
特開2014−172255号公報

先行技術

0009

Khine et al., Adv. Mater., Vol.21, p.4472 (2009).
Cosby et al.,Adv. Mater., Vol.26, p.5626 (2014).
Someya et al., Nature, Vol.499, p.458 (2013).

発明が解決しようとする課題

0010

エラストマー基板の伸縮性を生かしつつ、高強度で変形に追従する複合膜は、しわ構造形成後にエラストマー基材層と異素材層とを分離することなく、複合膜としての機能や性能を発揮させることが望ましい。しかし、既述の特許文献、非特許文献に記載の如き、表層における異素材層のみの機能や性能に着目していた規則的なしわ構造を有する膜の形成方法では、エラストマー層の伸縮性を生かし、かつ、伸張時に破断されない規則的なしわ構造を有する異素材層を有する複合膜を形成することは困難であった。

0011

本発明の課題は、規則的なしわ構造を有する表面層を有し、伸縮性と高強度性とを有する複合膜を提供することにある。
また、本発明の別の課題は、伸縮性と高強度性とを有する複合膜の簡易な製造方法を提供することにある。
さらに、本発明の別の課題は、伸縮性と高強度性とを有し、繰り返し伸縮しても電気伝導性が維持されるストレッチャブル電子デバイス及びその製造方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0012

本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、熱可塑性ポリマーを含み、融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマー組成物を含んで形成されたしわ構造を有する熱可塑性ポリマー層と、前記熱可塑性ポリマー層の厚さよりも厚いエラストマー層とを隣接して備える積層体を適用することで、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。

0013

本発明は以下の実施形態を含む。
(1)融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーを含有し、融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー組成物を含んで形成され、しわ構造を有する熱可塑性ポリマー層と、前記熱可塑性ポリマー層に隣接して形成され、前記熱可塑性ポリマー層の厚さよりも厚いエラストマー層と、を備え、室温(25℃)にて伸縮性を有する複合膜。

0014

本実施形態では、エラストマー層に隣接する異素材層として、熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマー組成物であって、融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマー組成物を含んで形成され、しわ構造を有する熱可塑性ポリマー層を用いることで、複合膜に引張り応力を付加した際に、エラストマー層が伸張し、エラストマー層に隣接する熱可塑性ポリマー層のしわ構造が伸ばされ、引張り応力を解除すると複合膜全体が収縮する。このため、本実施形態の複合膜は伸縮性に優れる。一方、引張り応力によるひずみが熱可塑性ポリマー層のしわ構造が引き伸ばされる以上に達した場合においては、エラストマー層の破断が生じることなく、引き伸ばされた熱可塑性ポリマー層の物性に起因して優れた引張り強度が発現し、伸縮性と高強度が両立するものと考えられる。
本実施形態の複合膜は、しわ構造を有する熱可塑性ポリマー層とエラストマー層が隣接して設けられているため、エラストマー層の優れた伸縮性が有効利用されるとともに、熱可塑性ポリマー層の高強度性を併せ持つという優れた機械特性を示す。すなわち、本実施形態の室温にて伸縮性を有する複合膜の特徴は、低ひずみでは低い応力でよく伸びるとともに、高ひずみ領域では熱可塑性ポリマー層に由来して高い応力に耐えられる点にある。
このような特徴的な力学応答は、後述するように引張り試験を繰り返しても保持されており、伸縮性と耐久性とが要求される種々の用途に適用することができる。

0015

(2)JIS 7161(1994年)に規定する引張り試験を室温(25℃)で行なった際に記録した応力−ひずみ曲線において、ひずみ上昇に伴って傾きが大きくなる変曲点を有する、(1)に記載の複合膜。
(3)前記応力−ひずみ曲線の変曲点より小さいひずみでの曲線の傾きを1としたとき、変曲点より大きいひずみでの曲線の傾きが2.0以上である、(2)に記載の複合膜。
上記変曲点は、しわ構造を有する熱可塑性ポリマー層のしわ構造が、複合膜の伸張により解消された時点で生じ、応力に関与する対象が伸縮性に優れるが比較的破断強度が低いエラストマー層から熱可塑性ポリマー層に代わるため、ひずみ上昇に伴って応力−ひずみ曲線の傾きが大きくなるものと考えられる。

0016

(4)前記熱可塑性ポリマー層のしわ構造は、前記熱可塑性ポリマー層表面に平行方向の周期が、0.01μm〜5000μmであり、前記熱可塑性ポリマー層表面に垂直方向の最頂部と最低部との距離が、0.01μm〜5000μmである、(1)〜(3)のいずれか1つに記載の複合膜。
(5)前記熱可塑性ポリマー層の厚みが0.01μm〜5000μmであり、前記熱可塑性ポリマー層の厚みを1としたとき、エラストマー層の厚みが1.1〜5000である、(1)〜(4)のいずれか1つに記載の複合膜。
(6)前記融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーを含有し、融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー組成物が、前記融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーを含有し、融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー組成物のみで構成された厚さ300μmのフィルムを、前記フィルムの融点以上融点+30℃以下の温度範囲で、JIS 7161(1994年)に準拠した引張り試験を行った場合に、破断することなく、ひずみ100%以上に延伸可能な熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマー組成物である、(1)〜(5)のいずれか1つに記載の複合膜。

0017

(7)前記融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマーが、粘度平均分子量及び重量平均分子量の少なくともいずれかが100万以上の熱可塑性ポリマーである、(1)〜(6)のいずれか1つに記載の複合膜。
(8)前記エラストマー層が、エラストマー層を構成するエラストマー層形成用組成物からなる厚さ500μmのフィルムを形成し、得られたフィルムに対してJIS 7161(1994年)に準拠した引張り試験を室温(25℃)で行った場合に、破断することなく、ひずみ100%以上に延伸可能なであり、かつ、ひずみ100%に伸長した状態から、引張り応力を開放した際に、残存ひずみ90%以下まで収縮するエラストマー層である、(1)〜(7)のいずれか1つに記載の複合膜。

0018

(9)前記融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマーが、エチレンα−オレフィンエチレンオキシドビニルアルコール及びテトラフルオロエチレンから選ばれる少なくとも1種を重合成分として有する単独重合体又は共重合体を含む、(1)〜(8)のいずれか1つに記載の複合膜。
(10)前記エチレン及びα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種を重合成分として含む単独重合体又は共重合体が、超高分子量ポリエチレン(UHMW−PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレンLLDPE)、ポリプロピレンポリ1−ブテン、及びポリ4−メチル−1−ペンテンから選ばれる少なくとも1種である、(9)に記載の複合膜。
なお、以下、本明細書では、超高分子量ポリエチレンを「UHMW−PE」と称することがある。

0019

(11) 前記エラストマー層が、ジメチルシロキサンジフェニルシロキサンジビニルシロキサンメチルフェニルシロキサンビニルメチルシロキサンビニルフェニルシロキサン、メチルハイドロゲンシロキサン、メチルトリフルオロプロピルシロキサン、から選ばれる少なくとも1種を重合成分として有する単独重合体又は共重合体を含むシリコーンゴム又はシリコーン樹脂ブタジエンゴムポリブタジエン)、スチレンブタジエンゴムスチレンブタジエン共重合体)、エチレンプロピレンゴム(エチレン/プロピレン三元共重合体)、アクリルゴムアクリル酸エステル共重合体)、ウレタンゴムポリウレタン)、フッ素ゴムパーフルオロプロペン・フッ化ビニリデン共重合体)、クロロプレンゴムポリクロロプレン)、イソプレンゴムポリイソプレン)、ブチルゴムイソブチレンイソプレン共重合体)、塩素化ブチルゴム(ブチルゴムを塩素化処理したもの)、ニトリルゴムブタジエンアクリロニトリル共重体)、多硫化ゴム有機ポリスルフィド)、エビクロルヒドリンゴム(ポリエビクロルヒドリン又はエビクロルヒドリン/エチレンオキシド共重合体)、クロスルホルン化ポリエチレンゴム(クロロスルホルン化ポリエチレン)及び天然ゴムから選ばれる少なくとも1種のゴム;α−オレフィンを2種以上含むランダム共重合体;α−オレフィンと酢酸ビニルとを含む共重合体;α−オレフィンとアクリル酸とを含む共重合体、ポリ酢酸ビニルポリ塩化ビニル、からなる群より選択される少なくとも1種のエラストマーを含む層である、(1)〜(10)のいずれか1つに記載の複合膜。
(12)前記エラストマー層が、架橋構造を含む、(1)〜(11)のいずれか1つに記載の複合膜。

0020

(13)融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーを含有し、融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー組成物を用いて熱可塑性ポリマーフィルム成形するフィルム形成工程、前記フィルム形成工程で得られた熱可塑性ポリマーフィルムに隣接して、前記熱可塑性ポリマーフィルムの厚みよりも厚いエラストマー層を形成して積層体を得る積層体形成工程、前記積層体を、前記熱可塑性ポリマーフィルムの融点以上の温度で延伸処理する延伸工程、延伸処理した前記積層体の温度を前記熱可塑性ポリマーフィルムの結晶化温度以下まで降温する降温工程、及び、前記降温工程後に、前記延伸工程において前記積層体に印加された延伸応力を解放する応力解放工程を含む、しわ構造を有する熱可塑性ポリマー層とエラストマー層とを備え、室温にて伸縮性を有する複合膜の製造方法。
(14)前記積層体形成工程が、前記熱可塑性ポリマーフィルムと前記エラストマー層のうち少なくとも1つを2以上有し、かつ、2以上存在する前記熱可塑性ポリマーフィルム及び前記エラストマー層の一方が、前記熱可塑性ポリマーフィルム及び前記エラストマー層の他方を挟んでいる積層体を形成する工程である、(13)に記載の複合膜の製造方法。
(15)前記積層体形成工程で得られた熱可塑性ポリマーフィルムとエラストマー層との積層体を、前記延伸工程に付することで、エラストマー層に隣接する熱可塑性ポリマーフィルムが延伸され、その後、降温工程の後に、前記応力解放工程に付することで、エラストマー層に隣接して延伸された熱可塑性ポリマーフィルムが、エラストマー層の収縮に伴ってしわ構造を形成し、前記しわ構造を有する熱可塑性ポリマー層を形成する、(13)又は(14)に記載の複合膜の製造方法。

0021

(16)前記積層体形成工程が、前記エラストマー層を形成するためのエラストマー層形成用組成物を前記熱可塑性ポリマーフィルムの少なくとも片面に付与してエラストマー層用組成物層を形成し、形成された前記エラストマー層用組成物層を硬化させてエラストマー層を形成する工程であるか、又は、前記エラストマー層を形成するためのエラストマー層形成用組成物を成形したエラストマー層形成用フィルムを前記熱可塑性ポリマーフィルムの少なくとも片面に転写してエラストマー層を形成する工程である、(13)〜(15)のいずれか1つに記載の複合膜の製造方法。
(17)前記フィルム形成工程が、形成された前記熱可塑性ポリマーフィルムを延伸することをさらに含む、(13)〜(16)のいずれか1つに記載の複合膜の製造方法。
(18)前記熱可塑性ポリマーが、粘度平均分子量及び重量平均分子量の少なくともいずれかが100万以上である熱可塑性ポリマーである、(13)〜(17)のいずれか1つに記載の複合膜の製造方法。
(19)前記熱可塑性ポリマーが、超高分子量ポリエチレンを含み、かつ、前記フィルム形成工程が、熱可塑性ポリマーフィルムを前記熱可塑性ポリマーフィルムの融点以上の温度で延伸することを含む、(13)〜(18)のいずれか1つに記載の複合膜の製造方法。
(20)前記熱可塑性ポリマーが、超高分子量ポリエチレンを含み、かつ、前記延伸工程が、136℃〜165℃の温度条件下で行われる、(13)〜(19)のいずれか1つに記載の複合膜の製造方法。

0022

(21)融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーを含有し、融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー組成物を含んで形成され、しわ構造を有する熱可塑性ポリマー層と、前記熱可塑性ポリマー層の一方の面上に形成され、前記熱可塑性ポリマー層の厚さよりも厚いエラストマー層と、前記熱可塑性ポリマー層の前記エラストマー層を有しない側の面上に形成された導電部材と、を備え、室温(25℃)にて伸縮性及び導電性を有するストレッチャブル電子デバイス。
(22)前記導電部材の厚みが前記エラストマー層の厚みより小さい、(21)に記載のストレッチャブル電子デバイス。
(23)ひずみを印加しない状態で、室温(25℃)において測定した導電部材の初期の電気抵抗値をR0とし、前記しわ構造を引き伸ばす方向にひずみを20%印加した状態及びひずみを解放して0%とした状態で、室温(25℃)において測定した導電部材の電気抵抗値をRとし、RとR0との差(R−R0)を△Rとしたとき、R0に対する△Rの比(△R/R0)が、0.9以下であり、かつ、
その後、ひずみを印加しない状態に戻し、再びひずみを20%印加するサイクルを10回繰り返した場合、△R/R0が常に0.9以下である、(21)又は(22)に記載のストレッチャブル電子デバイス。
(24)前記しわ構造を引き伸ばす方向が、ストレッチャブル電子デバイス面に対して一方向または二方向である、(23)に記載のストレッチャブル電子デバイス。

0023

(25) (13)〜(20)のいずれか1つに記載の複合膜の製造方法において、前、記熱可塑性ポリマー層に隣接して導電部材を形成する導電部材形成工程をさらに含むストレッチャブル電子デバイスの製造方法。
(26)前記導電部材の厚みが前記エラストマー層の厚みより小さい、(25)に記載のストレッチャブル電子デバイスの製造方法。

0024

なお、前記複合膜の好ましい実施態様の例として、として以下の態様が挙げられる。
(A)前記延伸処理が、幅拘束一軸延伸処理二軸延伸処理ロール圧延処理又は圧縮延伸処理である複合膜の製造方法。
(B)前記熱可塑性ポリマー層のしわ構造は、前記熱可塑性ポリマー層表面に平行方向の周期が、0.01μm〜5000μmであり、前記熱可塑性ポリマー層表面に垂直方向の最頂部と最低部との距離が、0.01μm〜5000μmである複合膜の製造方法。
(C)前記熱可塑性ポリマー層の厚みが0.01〜5000μmであり、前記熱可塑性ポリマー層の厚みを1としたとき、エラストマー層の厚みが1.1〜5000である複合膜の製造方法。
(D)前記融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマーが、エチレン、α−オレフィン、エチレンオキシド、ビニルアルコール及びテトラフルオロエチレンから選ばれる少なくとも1種を重合成分として有する単独重合体又は共重合体を含む複合膜の製造方法。
(E)前記エチレン及びα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種を重合成分として含む単独重合体又は共重合体が、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、及びポリ4−メチル−1−ペンテンから選ばれる少なくとも1種である(D)に記載の複合膜の製造方法。

発明の効果

0025

本発明によれば、規則的なしわ構造を有する表面層を有し、伸縮性と高強度性と有する複合膜を提供することができる。
また、本発明によれば、伸縮性と高強度性と有する複合膜の簡易な製造方法を提供することができる。
さらに、本発明によれば、伸縮性と高強度性とを有し、繰り返し伸縮しても電気伝導性が維持されるストレッチャブル電子デバイス及びその製造方法を提供することができる。

図面の簡単な説明

0026

実施例で用いた粉末状UHMW−PE原料DSC融解プロファイルを示すグラフである。
実施例におけるプレス成形フィルム及びロールプレス成形フィルムの作製手順を表す概念図である。
図3のグラフAは、実施例1で作製したプレス成形フィルムのDSC融解プロファイルを示すグラフであり、図3のグラフBは、実施例1で作製した二軸延伸フィルム延伸倍率:4.0×4.0倍)のDSC融解プロファイルを示すグラフである。
実施例1で作製したUHMW−PEフィルム(プレス成形フィルム)の150℃で記録した応力—ひずみ曲線である。
実施例1で用いたシリコーン組成物のDTA測定プロファイルを示すグラフである。
実施例1の(d)降温工程後、積層膜から剥がし取ったUHMW−PE層のDSC融解プロファイルを示すグラフである。
図7(A)は、実施例1の複合膜のUHMW−PE層の微細構造を示すSEM写真であり、図7(B)は、実施例2の複合膜のUHMW−PE層の微細構造を示すSEM写真であり、図7(C)は、実施例3の複合膜のUHMW−PE層の微細構造を示すSEM写真であり、図7(D)は、実施例4の複合膜のUHMW−PE層の微細構造を示すSEM写真である。
実施例1の複合膜の架橋シリコーン層の微細構造を示すSEM写真である。
実施例1の複合膜のUHMW−PE層の「しわ」周期を計測する方法を表すSEM写真である。
図10のグラフAは、実施例1の室温(25℃)で記録した荷重—ひずみ曲線であり、図10のグラフBは、実施例2の室温(25℃)で記録した荷重—ひずみ曲線であり、図10のグラフCは、実施例3の室温(25℃)で記録した荷重—ひずみ曲線であり、図10のグラフDは、実施例4の室温(25℃)で記録した荷重—ひずみ曲線であり、図10のグラフEは、比較例1の室温(25℃)で記録した荷重—ひずみ曲線であり、図10のグラフFは、比較例2の室温(25℃)で記録した荷重—ひずみ曲線である。
図11のグラフAは、実施例1の室温(25℃)で記録した応力—ひずみ曲線であり、図11のグラフBは、実施例2の室温(25℃)で記録した応力—ひずみ曲線であり、図11のグラフCは、実施例3の室温(25℃)で記録した応力—ひずみ曲線であり、図11のグラフDは、実施例4の室温(25℃)で記録した応力—ひずみ曲線であり、図11のグラフEは、比較例1の室温(25℃)で記録した応力—ひずみ曲線であり、図11のグラフFは、比較例2の室温(25℃)で記録した応力—ひずみ曲線である。
実施例4の室温(25℃)での繰り返し引張り試験(10回)で得られた応力—ひずみ曲線の重ね書きを示すグラフである。
比較例3の室温(25℃)で記録した応力—ひずみ曲線である。
比較例4の室温(25℃)で記録した応力—ひずみ曲線である。
図15(A)は、実施例5の複合膜のUHMW−PE層の微細構造を示すSEM写真であり、図15(B)は、実施例6の複合膜のUHMW−PE層の微細構造を示すSEM写真であり、図15(C)は、実施例7の複合膜のUHMW−PE層の微細構造を示すSEM写真である。
図16のグラフAは、実施例5の室温(25℃)で記録した応力—ひずみ曲線であり、図16のグラフBは、実施例6の室温(25℃)で記録した応力—ひずみ曲線であり、図16のグラフCは、実施例7の室温(25℃)で記録した応力—ひずみ曲線である。
実施例7の複合膜の劈開断面の微細構造を示すSEM写真である。
実施例8の複合膜のUHMW−PE層の微細構造を示すSEM写真である。
実施例9の3層構造を有する複合膜の表側(上段A)と裏側(下段B)の微細構造を示すSEM写真である。
実施例9の複合膜の劈開断面の微細構造を示すSEM写真である。
実施例9の室温(25℃)で記録した応力—ひずみ曲線である。
実施例10の室温(25℃)で記録した応力—ひずみ曲線である。
実施例11で作製したロールプレス二軸延伸フィルム(延伸倍率:6.0×6.0倍)のDSC融解プロファイルを示すグラフである。
図24(A)は、実施例11の複合膜のUHMW−PE層の微細構造を示すSEM写真であり、図24(B)は、実施例12の複合膜のUHMW−PE層の微細構造を示すSEM写真であり、図24(C)は、実施例13の複合膜のUHMW−PE層の微細構造を示すSEM写真であり、図24(D)は、実施例14の複合膜のUHMW−PE層の微細構造を示すSEM写真である。
実施例11の複合膜の架橋シリコーン層の微細構造を示すSEM写真である。
図26のグラフAは、実施例11の室温(25℃)で記録した応力—ひずみ曲線であり、図26のグラフBは、実施例12の室温(25℃)で記録した応力—ひずみ曲線であり、図26のグラフCは、実施例13の室温(25℃)で記録した応力—ひずみ曲線であり、図26のグラフDは、実施例14の室温(25℃)で記録した応力—ひずみ曲線である。
実施例13の複合膜の劈開断面の微細構造を示すSEM写真であり、上段の写真の黒点線の矩形部分を拡大した写真を下段に示した。
実施例15の複合膜のUHMW−PE層の微細構造を示すSEM写真である。
実施例15の室温(25℃)で記録した応力—ひずみ曲線である。
図30のグラフAは、比較例6の室温(25℃)で記録した応力—ひずみ曲線であり、図30のグラフBは、比較例7の室温(25℃)で記録した応力—ひずみ曲線であり、図30のグラフCは、比較例8の室温(25℃)で記録した応力—ひずみ曲線である。
図31(A)は、導電部材の厚みが100nmである実施例17のストレッチャブル電子デバイスを、室温(25℃)にて、ひずみ20%でひずみ印加とひずみ解放(ひずみ0%)を繰り返した場合の導電部材の電気抵抗値の変化率を示すグラフであり、図31(B)は、導電部材の厚みが200nmである実施例18のストレッチャブル電子デバイスを、ひずみ20%でひずみ印加とひずみ解放(ひずみ0%)を繰り返した場合の導電部材の電気抵抗値の変化率を示すグラフである。

0027

以下、本発明について実施形態を挙げて詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はかかる代表的な実施態様に限定されない。
本明細書において「〜」を用いて記載した数値範囲は、「〜」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を表す。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書においては、特に断らない限り、「室温」とは、25℃を意味する。

0028

以下、本発明の室温にて伸縮性を有する複合膜について、その製造方法とともに詳細に説明する。

0029

<複合膜>
本発明の複合膜は、融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーを含有し、融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー組成物を含んで形成され、しわ構造を有する熱可塑性ポリマー層(以下、(A)熱可塑性ポリマー層、又は単に(A)ポリマー層と称することがある)と、前記熱可塑性ポリマー層に隣接して形成され、前記熱可塑性ポリマー層の厚さよりも厚いエラストマー層(以下、(B)エラストマー層と称することがある)と、を備え、室温(25℃)にて伸縮性を有する複合膜である。
(A)ポリマー層の形成に用いられる「融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー」とは、本明細書においては、当該熱可塑性ポリマーのみで形成した熱可塑性ポリマーフィルムが、形成された熱可塑性ポリマーフィルムの融点以上の温度条件で延伸可能なポリマーを指す。また、「融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー組成物」とは、少なくとも熱可塑性ポリマーを含む組成物であって、当該熱可塑性ポリマー組成物のみで形成した熱可塑性ポリマーフィルムが、形成された熱可塑性ポリマーフィルムの融点以上の温度条件で延伸可能なポリマーを指す。
以下、本明細書では、(A)ポリマー層の形成に用いられる「融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー」を「特定熱可塑性ポリマー」と、「融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー組成物」を「熱可塑性ポリマー組成物」又は「ポリマー組成物」と、それぞれ称することがある。なお、以下に詳述するように「ポリマー組成物」に含まれる熱可塑性ポリマーは特定熱可塑性ポリマーに限定されない。

0030

本発明の複合膜の伸縮性は、(A)熱可塑性ポリマー層に形成された微細なしわ構造と、(B)エラストマー層との組み合わせによって達成される。このため、本発明では、(A)ポリマー層と(B)エラストマー層とは隣接している。なお、「隣接している」とは、(A)ポリマー層と(B)エラストマー層とが隣り合って形成されることを指す。
本発明の複合膜は、(A)ポリマー層と(B)エラストマー層の少なくともいずれかを複数有していてもよいが、その場合には、2以上有する層が、他方の層を挟むように積層される。例えば、複合膜が(A)ポリマー層を2層有する場合には、(A)ポリマー層、(B)エラストマー層、(A)ポリマー層の順に備え、複合膜が(B)エラストマー層を2層有する場合には、(B)エラストマー層、(A)ポリマー層、(B)エラストマー層の順に備える。それぞれの層を2層以上有する場合には、(A)ポリマー層と(B)エラストマー層とは交互に積層される。

0031

なお、(B)エラストマー層の伸縮性を損なわない限りにおいて、(A)ポリマー層と(B)エラストマー層との間には、両者の密着性を向上させるための接着剤層プライマー層などを有することができる。

0032

本発明の複合膜の伸縮性は、引張り試験で記録された応力−ひずみ曲線から判断することができる。
後述する実施例で詳しく述べるように、本発明の複合膜に対し、JIS 7161(1994年)に規定する引張り試験を室温(25℃)で行なった際に記録した応力−ひずみ曲線が、ひずみ上昇に伴って傾きが大きくなる変曲点を有することで、本発明の複合膜の特異的な伸縮性が確認できる。即ち、本発明の伸縮膜では、応力(縦軸)−ひずみ(横×軸)曲線は傾きの異なる2段階の変形を示す。
傾きの小さい領域では、引張り試験による複合膜の伸張に伴って、(A)ポリマー層のしわが伸びる。このひずみ領域では、(B)エラストマー層が変形するため、(B)エラストマー層の応力応答が主となり、ひずみ上昇に伴う応力上昇は小さく、その結果、曲線の傾きは小さい。このひずみ領域では、ひずみを開放すると、再び(A)ポリマー層にしわが形成されることにより、複合膜は縮むので、本発明における複合膜は伸縮性を有することがわかる。

0033

一方、複合膜が更に伸張され、(A)ポリマー層のしわが伸びると、(A)ポリマー層の応力応答が主となるため、ひずみ上昇に伴い、応力が急上昇する。このため、応力−ひずみ曲線の傾きは大きくなる。従って、本発明の複合膜は、応力−ひずみ曲線において、曲線の傾きが小さい領域から大きい領域に変化する「変曲点」を有する。換言すれば、本発明の複合膜においては、このような変曲点を示すかどうかが、本発明の複合膜の特徴的な伸縮性の有無を判断する指標となる。

0034

応力−歪み曲線における「変曲点」の有無をより明確に確認するという観点からは、前記応力−ひずみ曲線の変曲点より小さいひずみでの曲線の傾きを1としたとき、変曲点より大きいひずみでの曲線の傾きが2.0以上であることが好ましい。変曲点における傾きの比が2.0より大きければ、変曲点の存在を明確に示すことができ、また、本発明の複合膜の特徴的な伸縮性がより明確となる。さらに、変曲点における傾きの比が5.0より大きければ、低ひずみでは低い応力でよく伸びるとともに、高ひずみ領域では熱可塑性ポリマー層に由来する高い破断応力がより効果的に発現することが示されるので、より好ましい。

0035

本発明の複合膜は、応力を付加して変形させた際に、エラストマー層の優れた伸縮性がまず発現し、その後、熱可塑性ポリマー層の高強度性が発揮されるという特異な機械的性質を示すため、優れた伸縮性、耐久性と高い引張り破断強度とを必要とする分野、例えば、電子配線用フレキシブル基板等に好適に用いることができる。

0036

本発明の複合膜は、その伸縮性の源泉として、(A)熱可塑性ポリマー層に微細なしわ構造を有する。このしわ構造は、伸縮性の観点からは、より微細かつ数が多いことが望ましい。
(A)熱可塑性ポリマー層の表面に平行方向のしわ周期が0.01μm以上であることで、しわの伸びる長さが良好となり、複合膜に十分な伸縮性が発現する。
一方、しわ構造の(A)熱可塑性ポリマー層表面に平行方向の周期が5000μm以下であることで、(A)熱可塑性ポリマー層に形成されるしわの数が適切となり、複合膜に十分な伸縮性が付与される。
なお、(A)熱可塑性ポリマー層表面に平行方向のしわ周期とは、複合膜を平面視したときに視認される(A)熱可塑性ポリマー層が有するしわの周期を指す。
しわ構造の(A)熱可塑性ポリマー層表面に平行方向の周期は、0.01μm〜5000μmであることが好ましく、0.01μm〜3000μmであることがより好ましく、0.01μm〜1000μmであることがさらに好ましい。

0037

また、しわ構造の(A)熱可塑性ポリマー層表面に垂直方向の最頂部と最低部との距離、即ち、しわ構造におけるしわの深さは、伸縮性の観点からは、より大きいことが望ましいが、しわ構造の(A)熱可塑性ポリマー層表面に平行方向の周期を微細にしようとすると、しわの深さは小さいほうが好ましい。
既述のような観点からは、しわ構造の(A)熱可塑性ポリマー層表面に垂直方向の深さは、0.01μm〜5000μmであることが好ましく、0.01μm〜3000μmであることがより好ましく、0.01μm〜1000μmであることがさらに好ましい。

0038

本発明の複合膜においては、しわ構造を有する(A)ポリマー層の厚みに対し、(B)エラストマー層の厚みがより厚いことで既述の伸縮性の特徴が発現されるが、しわ構造の形成がより容易に行えるという観点から、(A)熱可塑性ポリマー層の厚みは、0.01μm〜5000μmの範囲であることが好ましく、0.01μm〜3000μmがより好ましく、0.01μm〜1000μmがさらに好ましい。
(A)熱可塑性ポリマー層の厚みが既述の範囲において、(A)ポリマー層の自立膜としての形成がより容易となり、(A)熱可塑性ポリマー層に「しわ」を発生させるための(B)エラストマー層の厚みがより適切な範囲となる。
なお、本発明の複合膜において、(A)熱可塑性ポリマー層を複数有する複合膜の場合は、それらの合計の厚みを本発明における(A)熱可塑性ポリマー層の厚みとする。

0039

また、(A)ポリマー層に隣接して設けられる(B)エラストマー層の厚みは、前記(A)熱可塑性ポリマー層の厚みを1としたとき、1.1〜5000であることが好ましく、1.1〜1000であることがより好ましく、1.1〜500であることがさらに好ましい。
本発明の複合膜における(B)エラストマー層の厚みは、(A)熱可塑性ポリマー層よりも厚いことが必要であるが、複合膜に(B)エラストマー層が有する優れた伸縮性を、より効果的に発現させるという観点からは、(A)熱可塑性ポリマー層の厚みを1としたとき、(B)エラストマー層の厚みは、1.1以上であることが好ましい。また、(A)熱可塑性ポリマー層の厚みを1としたとき、(B)エラストマー層の厚みが5000以下であることで、(A)ポリマー層と(B)エラストマー層との積層体をより均一な厚みとすることができ、より容易に均一な積層体を形成することができる。
なお、本発明の複合膜において、(B)エラストマー層を複数有する場合には、複数の(B)エラストマー層の合計の厚みを本発明における(B)エラストマー層の厚みとし、(A)ポリマー層を複数有する場合には、複数の(A)ポリマー層の合計の厚みを本発明における(A)ポリマー層の厚みとして、(A)ポリマー層と(B)エラストマー層の厚み比を上記範囲とすることが好ましい。

0040

本発明の複合膜において(A)ポリマー層の形成に使用される特定熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマー組成物は、特定熱可塑性ポリマー又はポリマー組成物により形成された既述の熱可塑性ポリマーフィルムが、前記熱可塑性ポリマーフィルムの融点以上の温度条件において伸張したとき均一に変形することが好ましい。
本発明における(A)ポリマー層の形成に用いられる特定熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマー組成物は、以下に詳述する物性を達成するものを用いることが好ましい。

0041

本発明の複合膜を製造する際には、特定熱可塑性ポリマーからなるフィルム又はポリマー組成物からなるフィルムと(B)エラストマー層との積層体を形成し、その後、特定熱可塑性ポリマー又はポリマー組成物からなるフィルムの融点以上の温度で延伸する工程を有する。融点以上の温度で延伸応力を伝えるのはフィルムの原料となる特定熱可塑性ポリマー又はポリマー組成物の溶融粘度である。
従って、溶融粘度の高い特定熱可塑性ポリマー又はポリマー組成物を用いることで、溶融延伸が可能となる。例えば、分子量が100万以上の超高分子量を有するポリエチレン(UHMW−PE)では、融点以上の温度で延伸倍率50倍以上に延伸できることが知られている(H. Uehara et al., Macromolecules, Vol.32, No.8、p.2761−2769 (1999)参照)。

0042

AI)融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー(特定熱可塑性ポリマー)
本発明における(A)熱可塑性ポリマー層は、融点以上の温度条件で100%、即ち、延伸倍率2倍以上に破断せずに延伸可能な特定熱可塑性ポリマーを含んで形成されることが好ましい。
より具体的には、熱可塑性ポリマーのみで構成された厚さ300μmのフィルムを作製し、得られたフィルムを前記フィルムの融点以上融点+30℃以下の温度範囲で、JIS 7161(1994年)に準拠した引張り試験を行った場合に、破断することなく、ひずみ100%以上に延伸可能な熱可塑性ポリマーを用いることが好ましい。

0043

特定熱可塑性ポリマーのみで構成されるフィルムは、一般には、前記特定熱可塑性ポリマーを前記特定熱可塑性ポリマーの融点以上の温度でプレス成形して得ることができる。得られたフィルムの融点を決定するために、予め、前記特定熱可塑性ポリマーについて、示差走査熱量計(DSC)を用いた昇温測定を行う。この際、得られた融解プロファイルの吸熱ピーク温度(℃)を融点とする。融解プロファイルが複数の融解ピークを有する場合は、最もピーク強度吸熱方向を上方向としたときのピークの高さ)の大きい吸熱ピークピーク温度を、測定対象とする熱可塑性ポリマーの融点とする。DSCの昇温測定には、例えば、パーキンエルマー製、ダイヤモンドDSC等を用いることができる。
次に、融点を決定した特定熱可塑性ポリマーのみから形成された熱可塑性ポリマーフィルムの融点をDSC測定で決定する。融点の判断基準は上記熱可塑性ポリマーの融点測定と同様に行なう。得られた融点以上の温度にて、JIS 7161(1994年)に準拠した引張り試験を行い、ひずみ100%(延伸倍率2倍)以上に破断することなく延伸できた場合に、対象とする熱可塑性ポリマーを本発明における「融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー」として好適に用いることができる。融点以上の温度における引張り試験は、融点+(0℃〜30℃)、即ち融点以上であり、かつ融点+30℃以下の温度範囲で実施する。引張り試験における温度条件の上限を融点+30℃としたのは、融点+30℃を超えた温度条件では、特定熱可塑性ポリマーの種類によっては溶融粘度が低下し、適切な評価を行えない懸念があるためである。

0044

このように、対象とする熱可塑性ポリマーのみで構成されたフィルムが、「融点以上の温度で延伸可能な」フィルムとなる熱可塑性ポリマー、即ち、本発明における特定熱可塑性ポリマーとしては、例えば、分子量100万以上を有する超高分子量ポリマーが挙げられる。

0045

熱可塑性ポリマーの分子量は、一般にはGPC測定によって決定される。例えば、ポリエチレンの場合、下記のような条件でGPC測定を行うことで、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を決定することができる。
・装置 :HLC−8121GPC/HT検出器RI
カラム:TSLgelGMHHR−H(20)HT
(東ソー製7.8mmI.D.×30cm)×3本
溶離液HPLC級 1,2,4−トリクロロベンゼン和光純薬製)
ジブチルヒドロキシトルエン(BHT):酸化防止剤を0.05質量%含有する)
・流量 :1.0mL/min.
検出条件:polarity=(−)
注入量 :0.3mL
カラム温度:150℃
試料濃度:0.1〜1.0mg/mL

0046

重量平均分子量(Mw)が100万以上の熱可塑性ポリマーであれば、一般に融点以上の温度で延伸が可能であると言える。

0047

しかしながら、Mwが100万以上の超高分子量ポリマーでは、GPC測定では正確な分子量を決定できない場合がある。このような場合、有機溶剤に溶かしたポリマー溶液の粘度から、粘度平均分子量(Mv)を決定する。

0048

本発明における特定熱可塑性ポリマーとしては、粘度平均分子量(Mv)が100万以上である熱可塑性ポリマーが好ましく挙げられる。
粘度平均分子量について説明する。
例えば、超高分子量ポリエチレン(UHMW−PE)の場合、粘度平均分子量と極限粘度[η]は、特開2005−314544号公報及び特開2005−313391号公報に記載されるように、下記式で表される関係にあることが知られている。

Mv=5.37×104[η]1.49

ここで、[η]は、デカリン溶媒(135℃)中において測定した値であり、ポリエチレンに関しては、5dl以上であることが好ましい。

0049

一方、超高分子量アイソタクチックポリプロピレン(UHMW−PP)の場合、粘度平均分子量と極限粘度[η]は、特開2009−56155号公報に記載されるように、下記式で表される関係にあることが知られている。

Mv=8.88×104[η]1.25

ここで、[η]は、デカリン溶媒(135℃)中において測定した値であり、ポリプロピレンに関しては、7dl以上であることが好ましい。

0050

超高分子量ポリエチレンの粘度平均分子量の測定は既述の通りであるが、デカリン溶媒への溶解が困難な場合、本発明に好適な超高分子量ポリエチレンの分子量は以下の方法で測定される。この方法は、ASTMD 1430−65T法を応用したものであり、まず、超高分子量ポリエチレンを製膜したフィルムを準備し、その降伏値を測定して分子量を算出するものである。
分子量を測定しようとする超高分子ポリエチレン原料を溶融プレス成形によりフィルム状に製膜して、ASTM D 1430−65T法に規定するダンベル型試験片を作製する。得られたダンベル型試験片を複数用意し、それぞれに異なる荷重を負荷し、150℃に加熱したグリコール浴に浸漬する。負荷した荷重により試験片が伸びるので、600%の伸びをおこすために必要な時間を測定する。対数座標軸上に、前記で得られた伸びに要する時間を、試験片に負荷された引張応力(荷重を試験片の断面積で割った値)に対してプロットする。プロットした値には直線性が見られ、このグラフより、10分の伸び時間に必要な降伏値と称する応力(N/mm2)が求められる。本発明に使用される超高分子ポリエチレンでは、降伏値は0.05N/mm2〜1.5N/mm2の範囲であることが好ましい。例えば、超高分子量ポリエチレン(PE−UHMW)Hostalene GURカタログ(Hoechst Aktiengesellschaft, August 1993)等の文献によれば、降伏値と前記粘度法により測定された粘度平均分子量は相関するため、降伏値測定法により分子量を検知しうる。

0051

本発明における特定熱可塑性ポリマーとしては、具体的には、エチレン、α−オレフィン、エチレンオキシド、ビニルアルコール及びテトラフルオロエチレンから選ばれる少なくとも1種を重合成分として有する単独重合体又は共重合体が好ましく、なかでも、エチレン及びα−オレフィンの少なくとも1種を重合成分として有する単独重合体又は共重合体が好ましい。
エチレン及びα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種を重合成分として含む単独重合体又は共重合体としては、超高分子量ポリエチレン(UHMW−PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。

0052

融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマーとしては、ポリエチレンのほか、ポリプロピレン(山延健ら,高分子論文集, Vol.69, No.5,235−241 (2012年))、ポリ1−ブテン(D.Sawai et al.,Polymer,Vol.48,Iss.1,p.363−370(2007))等のポリオレフィンポリテトラフルオロエチレン(T.Morioka et al., Macromolecules, Vol.40, No.26、p.9413−9419(2007))などのフッ素含有ポリマーが挙げられ、併記した文献により、融点以上の温度で延伸可能であることが確認されている。

0053

本発明に用いられる特定熱可塑性ポリマーの一例である超高分子量ポリマーは、市販品としても入手可能である。市販品としては、高密度ポリエチレン(直鎖状ポリエチレン)、低密度ポリエチレン(長鎖分岐を有するポリエチレン)、ポリプロピレン(アイソタクチックポリプロピレン)、ポリ1−ブテン(アイソタクチックポリ1−ブテン)、ポリ4−メチル−1ペンテン(アイソタクチックポリ4−メチル−1ペンテン)等のポリα−オレフィン、直鎖状低密度ポリエチレン(エチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン1−オクテン、及び4−メチル−1−ペンテン等の他のα—オレフィンの共重合体)等のα-オレフィン同士の共重合体、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素含有ポリマー、ポリビニルアルコールポリエチレンオキシドなどが知られている。また、高分子量ポリマーであって重量平均分子量及び粘度平均分子量の少なくともいずれかが100万以上を有する熱可塑性ポリマーであれば、これらに限定されず本発明における熱可塑性ポリマーとして用いることができる。
特定熱可塑性ポリマーは、本発明の効果を損なわない限りにおいて、分子内に架橋構造を有するものであってもよい。

0054

本発明の熱可塑性ポリマーフィルムの形成に用いられる熱可塑性ポリマーは、1種であってもよく、2種以上であってもよい。

0055

(AII)熱可塑性ポリマーを含有し、融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー組成物
本発明におけるしわ構造を有する熱可塑性ポリマーフィルムの原料として、既述の「当該熱可塑性ポリマーを用いてフィルムを形成した場合、該フィルムの融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー」、即ち、特定熱可塑性ポリマーのみならず、熱可塑性ポリマーを含む組成物であって、当該組成物を用いてフィルムを形成した場合、融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー組成物(以下、単に、ポリマー組成物と称することがある)を用いることができる。
ポリマー組成物は、熱可塑性ポリマーとその他の成分を含有する。ポリマー組成物に含まれる熱可塑性ポリマーは、既述の特定熱可塑性ポリマーであってもよく、特定熱可塑性ポリマー以外の熱可塑性ポリマー、即ち、当該熱可塑性ポリマーを用いて形成したフィルムの融点以上の温度で延伸することができない熱可塑性ポリマーであってもよい。

0056

ポリマー組成物が、特定熱可塑性ポリマーを含有する場合には、その他の成分として、特定熱可塑性ポリマー以外の、より分子量の低い熱可塑性ポリマー、油性成分、溶剤、可塑剤結晶核剤滑剤、酸化剤、還元剤などを含むことができる。
ポリマー組成物としては、例えば、特定熱可塑性ポリマーである粘度平均分子量及び重量平均分子量の少なくともいずれかが100万以上である超高分子量ポリエチレンに対し、重量平均分子量が1万〜80万である、融点以上の温度で延伸することができないポリエチレンを、50:50〜99:1の質量比で含有するポリマー組成物などが挙げられる。

0057

ポリマー組成物が、特定熱可塑性ポリマー以外の熱可塑性ポリマーを含む場合、例えば、単独では、融点以上の温度で延伸することができない、分子量10万程度のHDPEを含有する場合、粘土鉱物(Clay)などの増粘剤を添加することで、ポリマー組成物としての溶融粘度が向上し、融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー組成物となり、本発明に使用することができる。

0058

本発明の熱可塑性ポリマー組成物に用いることができる、熱可塑性ポリマーと添加剤との好ましい組み合わせの、他の例を以下に挙げるが、熱可塑性ポリマー組成物が既述の条件を満たせばよく、以下に記載の態様には限定されない。
特定熱可塑性ポリマーよりも分子量の低い熱可塑性ポリマーと、有機フィラーあるいは無機フィラーとの組み合わせを好適に用いることができる。
有機フィラーとしては、アラミド繊維ポリイミド繊維などが挙げられる。無機フィラーとしては、カーボンブラックシリカゼオライトアルミナタルクグラスファイバーカーボンファイバーロックウールカオリン酸化チタン炭化ケイ素繊維カーボンナノチューブフラーレングラフェン、ゼオライト、粘土金属粉体金属錯体などが挙げられる。
特定熱可塑性ポリマーよりも分子量の低い熱可塑性ポリマーとして既述の分子量10万程度のHDPEを含有する場合、ジクミルペロキシドなどの有機過酸化物を添加することで、ポリマー組成物が架橋構造を形成して溶融粘度が向上し、融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー組成物となり、本発明において(A)熱可塑性ポリマー層の形成に使用することができる。

0059

特定熱可塑性ポリマーより分子量の低い熱可塑性ポリマーと、各種の有機過酸化物の組み合わせも本発明のポリマー組成物として好適に用いることができる。
有機過酸化物としては、ケトンパーオキサイドパーオキシケタールハイドロパーオキサイドジアルキルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイドパーオキシエステルパーオキシジカーボネート等、日油(株)化成事業部カタログ「有機過酸化物(第10版)」2004年11月作成に記載の有機過酸化物が挙げられ、これらのいずれも好適に用いることができる。

0060

また、特定熱可塑性ポリマーよりも分子量の低い熱可塑性ポリマーを改質することで、本発明における特定熱可塑性ポリマーと同等の物性を有する熱可塑性ポリマーとすることができる。
具体的には、特定熱可塑性ポリマーよりも分子量の低い熱可塑性ポリマーに、放射線照射電子線照射ガンマ線照射を行ない、当該熱可塑性ポリマーに架橋構造を導入して、溶融粘度を向上させ、本発明における融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー組成物とすることができる。
本発明では、熱可塑性ポリマー組成物は、当該ポリマー組成物のみにより形成された熱可塑性ポリマーフィルムを、その融点以上の温度で延伸処理する必要があるため、融点を持っている、即ち結晶性成分を含有している熱可塑性ポリマーを用いることが必須である。この条件を満たす目的で、放射線電子線、ガンマ線等の照射強度照射時間等を適宜選択することができる。その場合、フィルム成形前の熱可塑性ポリマーに放射線照射、電子線照射、ガンマ線照射を施して架橋体を調製後、架橋体が形成された熱可塑性ポリマーを成形して本発明における熱可塑性ポリマーフィルムとしてもよいし、熱可塑性ポリマーでフィルムを成形した後、形成されたフィルムに放射線照射、電子線照射、ガンマ線照射を施してフィルムに架橋体を形成させ、本発明における熱可塑性ポリマーフィルムとしてもよい。

0061

本発明の複合膜における「熱可塑性ポリマーフィルム」及び「熱可塑性ポリマー層」は、前記(AI)特定熱可塑性ポリマーにより形成されたフィルム及び層と、(AII)ポリマー組成物により形成されたフィルム及び層とを包含する意味で用いられる。

0062

次に、(B)エラストマー層について説明する。
(B)エラストマー層としては、室温(25℃)において伸縮性を有するものであれば、特に限定されず、本発明に用いることができる。
本発明の複合膜では、以下に製造方法において詳述するように、(B)エラストマー層を延伸した際に印加された応力が解放される際に、エラストマー層の収縮力により、延伸された状態で結晶化した(A)熱可塑性ポリマー層に規則的なしわ構造が発現する。
本発明の複合膜の使用時には、(A)熱可塑性ポリマー層に形成されたしわ構造が伸びるとともに、(B)エラストマー層が変形することで伸縮性を発現するため、本発明の複合膜の(B)エラストマー層は伸縮性を有していることが必要である。

0063

本発明に用いられる(B)エラストマー層の伸縮性の指標としては、(B)エラストマー層が、(B)エラストマー層を構成するエラストマー層形成用組成物からなる厚さ500μmのフィルムを形成し、得られたフィルムに対してJIS 7161(1994年)に準拠した引張り試験を室温(25℃)で行った場合に、破断することなく、ひずみ100%以上に延伸可能であり、かつ、ひずみ100%に伸長した状態から、引張り応力を開放した際に、残存ひずみ90%以下まで収縮する(B)エラストマー層であることが好ましい。

0064

(B)エラストマー層に含まれるエラストマー成分としては、ジメチルシロキサン、ジフェニルシロキサン、ジビニルシロキサン、メチルフェニルシロキサン、ビニルメチルシロキサン、ビニルフェニルシロキサン、メチルハイドロゲンシロキサン、メチルトリフルオロプロピルシロキサン、から選ばれる少なくとも1種を重合成分として有する単独重合体又は共重合体を含むシリコーンゴム又はシリコーン樹脂;ブタジエンゴム(ポリブタジエン)、スチレンブタジエンゴム(スチレン/ブタジエン共重合体)、エチレンプロピレンゴム(エチレン/プロピレン三元共重合体)、アクリルゴム(アクリル酸エステル共重合体)、ウレタンゴム(ポリウレタン)、フッ素ゴム(パーフルオロプロペン・フッ化ビニリデン共重合体)、クロロプレンゴム(ポリクロロプレン)、イソプレンゴム(ポリイソプレン)、ブチルゴム(イソブチレン・イソプレン共重合体)、塩素化ブチルゴム(ブチルゴムを塩素化処理したもの)、ニトリルゴム(ブタジエン・アクリロニトリル共重体)、多硫化ゴム(有機ポリスルフィド)、エビクロルヒドリンゴム(ポリエビクロルヒドリン又はエビクロルヒドリン/エチレンオキシド共重合体)、クロロスルホルン化ポリエチレンゴム(クロロスルホルン化ポリエチレン)及び天然ゴムから選ばれる少なくとも1種のゴム;α−オレフィンを2種以上含むランダム共重合体;α−オレフィンと酢酸ビニルとを含む共重合体;α−オレフィンとアクリル酸とを含む共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、からなる群より選択される少なくとも1種のエラストマーが好ましい。

0065

伸縮性を有する(B)エラストマー層としては、分子内に架橋構造を有していることが、繰り返し伸縮性に対する耐久性の観点から好ましい。(B)エラストマー層内に存在する架橋構造によって、分子鎖の自由体積が大きくなり、エラストマーの伸度が大きくなるとともに、変形させても元の状態に戻る収縮性を示す。従って、その分子鎖内に架橋構造を有するエラストマーがより望ましい。
(B)エラストマー層に架橋構造を形成する方法は任意である。

0066

なお、(B)エラストマー層が架橋構造を有しているか否かの確認は、公知の方法で行なうことができる。例えば、対象とするエラストマー組成物からなる未架橋エラストマーフィルムあるいは未架橋のエラストマー前駆体を溶解し得る溶剤に、(B)エラストマー層を浸漬した際に、溶解しないゲル状の残渣が残ることで、当該(B)エラストマー層が架橋構造を有することを確認できる。

0067

より具体的には、ジメチルシロキサン、ジフェニルシロキサン、ジビニルシロキサン、メチルフェニルシロキサン、ビニルメチルシロキサン、ビニルフェニルシロキサン、メチルハイドロゲンシロキサン、メチルトリフルオロプロピルシロキサン、から選ばれる少なくとも1種を重合成分として有する単独重合体又は共重合体を含むシリコーンゴム又はシリコーン樹脂及びその架橋体、ブタジエンゴム(ポリブタジエン)、スチレンブタジエンゴム(スチレン/ブタジエン共重合体)、エチレンプロピレンゴム(エチレン/プロピレン三元共重合体)、アクリルゴム(アクリル酸エステル共重合体)、ウレタンゴム(ポリウレタン)、フッ素ゴム(パーフルオロプロペン・フッ化ビニリデン共重合体)、等の合成ゴム及びこれらの架橋体、エチレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体等のα−オレフィンを2種以上含むランダム共重合体及びそれらの架橋体、エチレン−酢酸ビニル共重合体EVA)、EVAとα−オレフィンの共重合体等のα−オレフィンと酢酸ビニルとを含む共重合体及びそれらの架橋体、エチレン/アクリル酸共重合体等のα−オレフィンとアクリル酸とを含む共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニルなどが好適な例として挙げられる。

0068

本発明の複合膜におけるエラストマー層には、エラストマー層の機械特性、電気特性等の向上を目的として、アラミド繊維、ポリイミド繊維などの有機フィラー、カーボンブラック、シリカ、ゼオライト、アルミナ、タルク、グラスファイバー、カーボンファイバー、ロックウール、カオリン、酸化チタン、炭化ケイ素繊維、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラフェン、ゼオライト、粘土、金属粉体、金属錯体などの無機フィラーから選ばれる少なくとも1種を含有させることができる。
本発明の複合膜におけるエラストマー層と熱可塑性ポリマー層との接着性を向上させるために、エラストマー層に、界面活性剤などの改質剤を添加することも可能である。
エラストマー層には、上記の有機フィラー、無機フィラー、改質剤、可塑剤、溶剤の他、本発明の複合膜の用途に応じて、染料顔料等の着色剤蛍光剤発光剤徐放薬剤などを含有させることができる。
本発明の複合膜におけるエラストマー層は電解質膜として利用することができる。エラストマー層を電解質膜として利用する場合、エラストマー層には、リチウムイオン等の金属イオン金属塩電解質溶液イオン流体炭酸エチレン等の有機系電解質あるいは有機系電解質溶液を含むことができる。

0069

本発明に係るエラストマー層の形状は、熱可塑性ポリマーフィルムと接着できれば特に制限はなく、平面状のフィルムに限定されない。
エラストマー層の形状としては、フィルム状の他、エラストマー組成物で構成された不織布、エラストマー組成物からなる繊維を編みこんだ織布、編布であってもよい。エラストマー組成物からなる繊維を編みこんだ織布としては、スパンデックス糸を編み込んだ布などが想定される。また、前記不織布、織布、編布を含むエラストマー層であってもよく、例えば、前記不織布、織布、編布に、前記不織布、織布、編布と同じあるいは異なるエラストマー組成物を積層したエラストマー層であってもよい。

0070

本発明の複合膜として十分な伸縮性を発現させるためには、前記不織布、織布、編布で構成されたエラストマー層あるいは、前記不織布、織布、編布を含むエラストマー層についても、前記「エラストマー層の伸縮性の指標」を満たしていることが求められる。すなわち、エラストマー層を形成する不織布、織布、編布を含むエラストマー層形成用組成物からなる厚さ500μmを有するフィルムに対してJIS 7161(1994年)に準拠した引張り試験を室温(25℃)で行った場合に、破断することなく、ひずみ100%以上に延伸可能なであり、かつ、ひずみ100%に伸長した状態から、引張り応力を開放した際に、残存ひずみ90%以下まで収縮する(B)エラストマー層であることが好ましい。
このような伸縮性を保持している限りにおいて、前記不織布、織布、編布に熱可塑性ポリマーの繊維やガラス繊維等の無機材料の繊維が含まれているエラストマー層であってもよい。その場合、エラストマー繊維あるいはエラストマーの含有量は、前記不織布、織布、編布の重量の10%以上であることが好ましく、20%以上であることが特に好ましい。

0071

本発明の複合膜は、既述のように変形、即ち伸張させた際に、(B)エラストマー層の優れた伸縮性がまず発現し、その後、(A)熱可塑性ポリマー層の高強度性、耐破断特性が発揮されるという従来にない機械的性質を示すため、伸縮性、特に繰り返し伸縮耐性、高強度を必要とする用途に好適に用いることができる。

0072

〔複合膜の用途〕
複合膜の用途としては、例えば、電子配線用フレキシブル基板が挙げられる。電子配線用フレキシブル基板の如き、ソフトエレクトロニクス材料の新たな用途として、例えば、電位差変化を介して筋肉や関節の動きをモニターするウェアラブルデバイスとしての利用が期待される。使用方法としては、本発明の複合膜を衣服に貼り付けることで、筋肉・関節の動き(生体変化)をモニターする方法が挙げられる。ウェアラブルセンサー用途では、さらに、例えば、非常に微弱な動きをもインピーダンス変化としてセンシングすることが可能であるので、発声が難しい高齢者や障がい者が意思疎通するためのツールとして、QOL(Quality of Life)向上に資すると期待される(E.Roh et al., ACS Nano, Vol.9,p.6252(2015))。
その他、フレキシブルディスプレー等のソフトエレクトロニクス基材として、広い範囲での応用が期待される。

0073

さらに、本発明の複合膜の伸縮性を利用すれば、創傷被覆材関節サポーターなどの医療用材料に適用することが期待される。特に、高い耐久性を要求される人工筋肉人工臓器アクチュエーターのような、人体に埋め込める材料としての利用が期待される。また、しわ構造の空隙に薬物等の有孔成分を含ませることで、伸縮に伴って有効成分の放出速度を制御することができ、徐放材料としての利用が考えられる。
本発明の複合膜では、(A)熱可塑性ポリマー層が折りたたまれたしわ構造を有することから、複合膜の表面領域に空隙が形成されるため、伸縮しない状態では表面は撥水性を示すと考えられる。伸張と収縮とにより、しわ構造が変形して表面積が変化することから、表面物性を自在に切り替えられるスイッチング材料になることが期待される。

0074

<複合膜の製造方法>
本発明の複合膜の製造方法は、少なくとも下記(a)工程〜(e)工程を含み、しわ構造を有する熱可塑性ポリマー層とエラストマー層とを備え、室温(25℃)にて伸縮性を有する複合膜の製造方法である。
既述の本発明の複合膜は、以下に詳述する複合膜の製造方法により得られた複合膜であることが好ましい。
(a)融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーを含有し、融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー組成物を用いて熱可塑性ポリマーフィルムを成形するフィルム形成工程(以下、フィルム形成工程又は(a)工程と称することがある)、
(b)前記フィルム形成工程で得られた熱可塑性ポリマーフィルムに隣接して、前記熱可塑性ポリマーフィルムの厚みよりも厚いエラストマー層を形成して積層体を得る積層体形成工程(以下、積層体形成工程又は(b)工程と称することがある)、
(c)前記積層体を、前記熱可塑性ポリマーフィルムの融点以上の温度で延伸処理する延伸工程(以下、延伸工程又は(c)工程と称することがある)、
(d)延伸処理した前記積層体の温度を前記熱可塑性ポリマーフィルムの結晶化温度以下まで降温する降温工程(以下、降温工程又は(d)工程と称することがある)、及び、
(e)前記降温工程後に、前記延伸工程において前記積層体に印加された延伸応力を解放する応力解放工程を含む(以下、応力解放工程又は(e)工程と称することがある)。

0075

前記(b)積層体形成工程で得られた熱可塑性ポリマーフィルムと(B)エラストマー層との積層体を、前記(c)延伸工程に付することで、エラストマー層に隣接する熱可塑性ポリマーフィルムが延伸され、その後、(d)降温工程の後に、前記(e)応力解放工程に付することで、(B)エラストマー層に隣接して延伸された熱可塑性ポリマーフィルムが、(B)エラストマー層の収縮に伴ってしわ構造を形成し、しわ構造を有する(A)熱可塑性ポリマー層を形成する。
なお、本発明の複合膜では、微細なしわ構造を形成した層を(A)熱可塑性ポリマー層と称する。
複合体の製造方法において、(b)積層体形成工程にてエラストマー層とともに積層体を形成する熱可塑性ポリマーフィルムは、しわ構造を有する(A)熱可塑性ポリマー層の前駆体に相当する。当該熱可塑性ポリマーフィルムは、(c)延伸工程、(d)降温工程、及び(e)応力解法工程を経た後、(B)エラストマー層の収縮に伴い、しわ構造を有する(A)熱可塑性ポリマー層となる。

0076

本発明の複合膜の製造方法に係る作用は明確ではないが以下のように推定される。
本発明に製造方法においては、融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマー組成物を含む熱可塑性ポリマーフィルムを前記(a)フィルム形成工程によって成形し、得られた熱可塑性ポリマーフィルムに隣接して、(b)積層体形成工程によって、前記熱可塑性ポリマーフィルムの厚みよりも厚い(B)エラストマー層を積層して積層体を得る。前記熱可塑性ポリマーフィルムにより形成された(A)ポリマー層の前駆体は前記(c)延伸工程において、該熱可塑性ポリマーフィルムの融点以上の温度で延伸され、一部が配向結晶化し、その後、(d)降温工程を経てさらに結晶化するため、(e)応力解放工程において延伸応力が低下した後も、(c)延伸工程で導入された延伸倍率を維持しようとする。一方、(B)エラストマー層では、(c)延伸工程で印加された延伸による応力が(e)応力解放工程で解放されるため、(c)延伸工程前の元のサイズに縮もうとする。このとき、(B)エラストマー層の縮もうとする力が(A)熱可塑性ポリマー層前駆体の折りたたみに必要な力より大きいと、(e)応力解放工程で(A)熱可塑性ポリマー層前駆体が折りたたまれた結果、表面に微細なしわ構造を有する(A)熱可塑性ポリマー層を備えた複合膜が得られると考えられる。

0077

以下、本発明の複合膜の製造方法における各工程について説明する。
[(a)フィルム形成工程((a)工程)]
本発明の製造方法においては、まず、前述の特定熱可塑性ポリマー又はポリマー組成物を用いて熱可塑性ポリマーフィルムを成形する。
(a)工程にて用いられる特定熱可塑性ポリマーとしては、粘度平均分子量及び重量平均分子量の少なくともいずれかが100万以上である熱可塑性ポリマーが好ましい。
特定熱可塑性ポリマーとしては、エチレン、α−オレフィン、エチレンオキシド、ビニルアルコール及びテトラフルオロエチレンから選ばれる少なくとも1種を重合成分として有する単独重合体又は共重合体を含む熱可塑性ポリマーが好ましく、なかでも、エチレン及びα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種を重合成分として含む単独重合体又は共重合体である超高分子量ポリエチレン(UHMW−PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、及びポリ4−メチル−1−ペンテンから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
また、ポリマー組成物としては、当該ポリマー組成物からなる熱可塑性ポリマーフィルムを形成したとき、熱可塑性ポリマーフィルムが、その融点以上の温度で延伸可能なポリマー組成物が挙げられる。
熱可塑性ポリマーフィルムの成形の方法は特に制限されず、公知のフィルム形成方法、例えば、プレス成形、ロール成形混練押出成形インフレーション成形、ダイ押し出し成形、及びスカイブ法による成形等が例示される。
(a)工程では、既述のフィルム成形方法複数組み合わせて実施することも好ましい様態である。複数のフィルム成形方法を組み合わせる場合、その順番回数には特に制限はない。

0078

(a)フィルム形成工程においては、熱可塑性ポリマーフィルムの原料である特定熱可塑性ポリマー又はポリマー組成物に、必要に応じて熱可塑性ポリマー以外の化合物を添加してもよい。
添加しうる化合物としては、公知の添加剤、例えば、可塑剤、酸化防止剤、耐候剤、光安定剤紫外線吸収剤熱安定剤、滑剤、離型剤帯電防止剤難燃剤発泡剤、シリカ等の充填剤抗菌抗カビ剤核剤、顔料などの着色剤など、通常オレフィンフィルムを形成する際に添加することができる化合物が挙げられる。添加しうる化合物は、熱可塑性ポリマーに対し、1種又は2種以上を、本発明の目的を損なわない範囲で目的に応じて含有させることができる。

0079

本発明に用いることができる酸化防止剤としては、BASFジャパン(株):Irganox1076(商品名)、旭電化工業(株):アデカスタブMARK AO−50(商品名)等のフェノール系酸化防止剤、旭電化工業(株):アデカスタブPEP 24−G(商品名)等のリン系酸化防止剤、あるいは、硫黄系酸化防止剤等が好適なものとして挙げられる。

0080

また、(a)フィルム形成工程で得られた熱可塑性フィルムを2以上積層して積層体を形成する工程を(a)フィルム形成工程に含んでもよい。熱可塑性フィルムを複数層積層してフィルムを形成する場合、フィルム成形方法やその組み合わせ、順番には特に制限はなく、例えば、ロール成形したフィルムを2以上積層してプレス成形する工程をフィルム形成工程としてもよいし、プレス成形したフィルムを2以上積層してロール成形する工程をフィルム形成工程としてもよい。

0081

フィルムの成形に適用されるプレス成形は、0.01MPa〜100MPaの圧力で行うことが好ましく、0.01MPa〜50MPaの圧力で行うことがより好ましく、0.1MPa〜50MPaの圧力で行うことがさらに好ましい。
プレス成形は、成形に供する熱可塑性ポリマー又はポリマー組成物の融点を超える温度で行われるのが好ましい。なお、前述したように、本発明において、「融点」とは、示差走査熱量計(DSC)の昇温測定によって得られたプロファイルの吸熱ピーク温度(℃)を指す。なお、複数の融解ピークがある場合は、最も強度(吸熱量)の大きいピークの温度を指す。

0082

(a)フィルム形成工程においてフィルム成形する場合の成形方法としては、熱可塑性ポリマー又はポリマー組成物、或いは、予め成形された2以上のフィルム積層体を、ポリイミドフィルムなどの離型用フィルムで挟み、離型用フィルム間でプレス成形、ロール成形等を施すことが、得られるフィルムの均一性の観点から好ましい。離型用フィルムは、フィルム成形時の加熱温度において形状を維持しうるものであれば特に制限無く使用することができる。
プレス成形によって得られたフィルムは、再度プレス成形してもよく、2以上のフィルムを積層して再度プレス成形してもよい。
プレス成形は、通常のプレス装置を用いて常圧下で行ってもよいし、真空プレス装置を用いて減圧下(例えば、1×10−1Torr即ち、13.3322Pa以下)で行ってもよい。

0083

熱可塑性ポリマー又はポリマー組成物をロール成形する場合のロール成形方法の詳細は、特開2003−165155号公報に記載され、これを本発明にも適用しうる。
ロール成形としては、一対のロール同士間隙に前記熱可塑性ポリマー又はポリマー組成物等フィルムを通過させることにより行う方法、ロール成形方法で予め形成されたフィルムを重畳し、重畳した積層体をロール成形することを繰り返してフィルムを成形する方法などの、いずれの方法をとることもできる。
ロール成形の際のロール同士の間隙としては、得られる熱可塑性フィルムの均一性及び強度の観点から、0.005mm〜10mmが好ましく、0.005mm〜0.1mmがより好ましく、0.005mm〜0.05mmがさらに好ましい。
ロール成形の際のロールの回転速度としては、0.1m/min〜10m/minが好ましく、得られる熱可塑性ポリマーフィルムの均一性、及び、破断強度等の力学物性に優れる点で、1m/min〜10m/minがより好ましい。

0084

ロール成形に用いるロールの形状としては、回転可能な形状であれば特に制限はなく、例えば、円筒体円柱体のほか、回転可能な無限ベルト体等も挙げられる。また、ロールの材質としては、前記熱可塑性ポリマー原料を好適にフィルム成形できれば特に制限はなく、ステンレス鋼等の金属、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの中でも、より好適に、熱可塑性ポリマー原料をロール成形し得る点で、ステンレス鋼等が好ましい。

0085

(a)工程におけるフィルム成形は、成形に供する熱可塑性ポリマー又はポリマー組成物の融点を超える温度で行うのが好ましい。
加熱時間はフィルムの成形法により適宜選択され、たとえば、プレス成形では、材料により1分間から60分間の範囲で加熱されるが、ロール成形の場合には、加熱ロールとの接触時間が加熱時間となる。

0086

(a)フィルム形成工程では、好ましくは上記プレス成形あるいはロール成形によりフィルム形成することが好ましい。しかし、これらの方法には限定されず、異なる成形方法、例えば、ロール成形、プレス成形、押し出し成形などを複数種、組み合わせて実施してもよい。複数の方法で複数回の成形を行なう場合、成形方法の順番、組み合わせは任意であり、いずれかの成形方法を繰り返して用いてもよく、その回数も任意である。
また、一つの成形方法で得られたフィルムを積層してから、同じ成形方法或いは異なる成形方法を施してもよい。例えば、ロール成形してからプレス成形してもよいし、プレス成形してからロール成形してもよい。また、その際、予め形成されたフィルムを2以上積層してもよい。

0087

また、(a)フィルム形成工程は、得られた熱可塑性ポリマーフィルムを延伸する工程をさらに含んでいてもよい。熱可塑性ポリマーフィルムを延伸することにより、分子鎖が延伸方向に配向し、後の(c)延伸工程で熱可塑性ポリマー層の前駆体である熱可塑性ポリマーフィルムを構成する熱可塑性ポリマーがより効率的に配向結晶化する。
さらに、延伸によって熱可塑性ポリマーフィルム表面が粗面化される場合、後の(b)積層体形成工程でエラストマー層を付与した際に、接触面積が大きくなり、より強固に熱可塑性ポリマーフィルムとエラストマー層とが接着することがある。
このような熱可塑性ポリマーフィルムの延伸の方法については、均一な膜厚の熱可塑性ポリマーフィルムが成形できれば特に制限はなく、一軸延伸、幅拘束一軸延伸処理、二軸延伸処理、ロール圧延処理又は圧縮延伸処理などの公知の延伸法を用いることができる。なかでも、大面積かつ膜厚の薄い熱可塑性ポリマーフィルムが成形できる点で、二軸延伸処理が好ましい。二軸延伸処理における二軸延伸は、同時二軸延伸であってもよいし、逐次二軸延伸であってもよい。また、縦横方向の延伸倍率は同じであっても、異なっていてもよい。
また、延伸温度等の延伸条件についても、均一な膜厚の熱可塑性ポリマーフィルムが成形できれば特に制限はなく、融点以下での延伸(固相延伸)、融点以上の温度条件での延伸(溶融延伸)のどちらも行うことができる。特に、本発明における特定熱可塑性ポリマーについては、成形フィルムの融点以上の温度で延伸できるので、溶融延伸を採用することができる。
(a)フィルム形成工程の後、得られた熱可塑性ポリマーフィルムは、用いた熱可塑性ポリマー又はポリマー組成物の結晶化温度以下に冷却し、フィルムに含まれる熱可塑性ポリマーを結晶化させたのちに取り出して、次工程である(b)積層体形成工程に供することが望ましい。

0088

また、次工程である(b)積層体形成工程において、熱可塑性ポリマーフィルムとエラストマー層との接着性をより向上させるために、熱可塑性ポリマーフィルムの表面を粗面化する処理を(a)フィルム形成工程に含んでもよい。粗面化する処理としては、例えば、凹凸形状を有する金型に熱可塑性ポリマーフィルムを押し付け凸凹形状を付与するエンボス処理や、熱可塑性ポリマーフィルムの成形用金型自体に凹凸形状を付しておいて、凸凹形状の表面構造を有する熱可塑性ポリマーフィルムを成形する方法などが挙げられる。
さらに、次々工程である(c)延伸工程の妨げとならない限りは、熱可塑性ポリマーフィルムが多孔質構造を有するように、(a)フィルム形成工程に多孔化処理を含んでもよい。多孔化処理の方法としては、延伸による多孔化や、あらかじめ溶剤を含ませておいた熱可塑性ポリマーフィルムを成形し、溶剤を揮発させて空孔を形成する方法、また、酸処理で除去可能な無機フィラーを混合しておいて、フィルム成形後に酸処理によって無機フィラーを除去する方法などが挙げられる。

0089

[(b)積層体形成工程((b)工程)]
本発明では、上記(a)フィルム形成工程に続いて、前記(a)フィルム形成工程で得られた熱可塑性ポリマーフィルムの少なくとも一方の面に、前記熱可塑性ポリマーフィルムの厚みよりも厚いエラストマー層を形成して積層体を得る(b)積層体形成工程を実施する。
(b)積層体形成工程においては、(a)工程で得た熱可塑性ポリマーフィルムの片側あるいは両側に(B)エラストマー層を形成することができる。(B)エラストマー層の形成方法としては、(b−1)エラストマー層形成用組成物を前記熱可塑性ポリマーフィルム表面に塗布又は圧着する方法、(b−2)予め形成された(B)エラストマー層を前記熱可塑性ポリマーフィルム表面に圧着又は接着する方法、(b−3)架橋エラストマー原料を直接又はフィルム状に成形してから、前記熱可塑性ポリマーフィルム表面に付与する方法、(b−4)エラストマー組成物又はその架橋体の繊維、不織布、織布、編布を前記熱可塑性ポリマーフィルム表面に付与する方法、などが挙げられる。
(B)エラストマー層は、架橋構造を有することが好ましい。(B)エラストマー層における架橋構造の形成方法、形成のタイミングには特に制限はなく、例えば、(b)工程で行なってもよく、後述する(c)工程で行なってもよく、また、架橋済のエラストマー原料を用いてエラストマー層を形成してもよい。
なお、前記熱可塑性ポリマーフィルムの片面又は両面に(B)エラストマー層を形成させることができれば、既述の積層体形成方法には限定されない。

0090

(b−1)エラストマー組成物を前記熱可塑性ポリマーフィルム表面に塗布又は圧着させ、その後、エラストマー組成物を架橋処理する方法としては、例えば、未架橋のシリコーン組成物であって架橋剤、触媒等を含む組成物を前記熱可塑性ポリマーフィルム表面に塗布し、その後、積層した全体又はシリコーン組成物を塗布した面を加熱してシリコーン組成物に熱架橋により架橋構造を形成し、(B)エラストマー層を形成し、かつ、(B)エラストマー層に架橋構造を形成する方法が挙げられる。
その他、未架橋の光硬化性エラストマー組成物を前記熱可塑性ポリマーフィルム表面に塗布し、その後、エラストマー組成物を塗布した面に紫外線等の光硬化に必要な光線を照射して架橋させ、(B)エラストマー層の形成と架橋構造の形成とを一工程で行なう方法が挙げられる。
また、未架橋のポリブタジエン等の合成ゴム組成物硫黄を含む)をロール成形などによってフィルム状に成形し、これを前記熱可塑性ポリマーフィルム表面に圧着後、その後、これら全体あるいは合成ゴム組成物を圧着した面を加熱して熱架橋し、エラストマー層とする方法が挙げられる。

0091

(b−2)架橋処理済みのエラストマー層を前記熱可塑性ポリマーフィルム表面に圧着あるいは接着する方法としては、前記エラストマー組成物をフィルム状に成形した後に加熱してエラストマー組成物層を架橋し、架橋構造を有する(B)エラストマー層を形成してから、接着剤を介して前記熱可塑性ポリマーフィルム表面に接着する方法が挙げられる。
この場合、接着剤は、後述する(c)延伸工程において、エラストマー層及び熱可塑性ポリマーフィルムから剥がれず、一体的に変形する物性を有する接着剤を選択することが好ましい。

0092

(b−3)架橋エラストマー原料を直接、前記熱可塑性ポリマーフィルム表面に塗布又は圧着する方法としては、架橋構造を有するエラストマー層形成用組成物に溶剤を添加し、加熱してペースト状に軟化させ、直接熱可塑性ポリマーフィルムに付与するか、或いはフィルム状に成形してから、熱可塑性ポリマーフィルム表面に圧着し、溶剤を揮発させるか又は他の溶剤で置換して抽出する方法などが挙げられる。架橋構造を有するエラストマー層形成用組成物をペースト状に軟化しうる溶剤としては、エラストマー原料を溶解あるいは膨潤させることができる有機溶剤等を好適に用いることができる。

0093

(b−4)エラストマー組成物又はその架橋体の繊維を前記熱可塑性ポリマーフィルム表面に付与する方法としては、未架橋のエラストマー組成物をノズルから繊維状に押し出したものを熱可塑性ポリマーフィルム表面に吹きつけて、これら全体又はエラストマー組成物を吹き付けた面を加熱して熱架橋し、エラストマー層とする方法や、エラストマー組成物で構成された不織布やエラストマー組成物の繊維を編みこんだ織布、編布を前記熱可塑性ポリマーフィルム表面に圧着してから、これら全体又はエラストマー組成物を吹き付けた面を加熱して熱架橋する方法、架橋済のエラストマー組成物で構成された不織布、織布、編布等を、接着剤を介して前記熱可塑性ポリマーフィルム表面に接着する方法が挙げられる。
なお、これらエラストマー組成物で構成された不織布、織布、編布等は、本発明の複合膜に必要な伸縮性を有している限りは、エラストマー組成物以外のガラス繊維等の無機繊維ポリエステル糸等の熱可塑性ポリマーからなる繊維を含んでいてもよい。

0094

(b)積層体形成工程において、熱可塑性ポリマーフィルムとエラストマー層との接着性を向上させるために、積層に先立って、熱可塑性ポリマーフィルム及びエラストマー層の少なくともいずれかにおいて、隣接するポリマーフィルム又はエラストマー層と接する面に表面処理を施してもよい。
表面処理方法としては、プラズマ処理、コロナ処理重粒子線照射処理紫外線照射処理電子線照射処理等の表面処理を施すことができる。
また、(b)積層体形成工程においては、本発明の効果を損なわない限りにおいて、隣接する熱可塑性ポリマーフィルムとエラストマー層との間に接着剤を塗布したり、接着性向上のためのプライマー層を設けたりしてもよい。即ち、次工程である(c)延伸工程における延伸性、或いは、(B)エラストマー層の有する伸縮性を損なわない範囲において、接着剤を塗布したり、プライマー層を設けたりすることができる。
接着剤としては、ニトリルゴム系接着剤、クロロプレンゴム系接着剤、スチレンブタジエンゴム系接着剤、シリコーンゴム系接着剤、塩化ビニル系接着剤酢酸ビニル系接着剤ポリウレタン系接着剤等をはじめとするエラストマー系接着剤等が挙げられる。
接着剤の塗布量は、熱可塑性ポリマーフィルムあるいはエラストマー層の表面に均一に塗布できれば特に制限はないが、厚く塗ると、エラストマー層と熱可塑性ポリマー層の協同性が妨げられて本発明の効果が発揮できなくなることがあるため、厚み100μm以下で塗布することが望ましい。

0095

本発明の複合膜では、微細なしわ構造を有する(A)熱可塑性ポリマー層と(B)エラストマー層が隣接して積層されていることが必要である。
(b)工程で形成される積層体は、(A)熱可塑性ポリマー層の前駆体である熱可塑性ポリマーフィルムと(B)エラストマー層とをそれぞれ1層ずつ有する積層体であってもよく、既述の層の少なくとも1方を2層以上有する積層体であってもよい。
即ち、(b)積層体形成工程は、前記熱可塑性ポリマーフィルムと(B)エラストマー層のうち少なくとも1つを2以上有し、かつ、2以上存在する熱可塑性ポリマーフィルム及び(B)エラストマー層の一方が、熱可塑性ポリマーフィルム及び(B)エラストマー層の他方を挟んでいる積層体を形成する工程であってもよい。
例えば、熱可塑性ポリマーフィルムの両側に(B)エラストマー層を有する、即ち、(B)エラストマー層が、熱可塑性ポリマーフィルムを挟んでいる積層体であってもよく、熱可塑性ポリマーフィルムが(B)エラストマー層の両側に形成された、即ち、熱可塑性ポリマーフィルムが、(B)エラストマー層を挟んでいる積層体であってもよい。また、熱可塑性ポリマーフィルムと(B)エラストマー層とが交互に積層した4層以上の積層体であってもよい。

0096

(b)工程におけるエラストマー層の形成方法は任意であり、以下に詳述するように、塗布法であっても、転写法であってもよい。
(b)工程は、(B)エラストマー層を形成するためのエラストマー層形成用組成物を熱可塑性ポリマーフィルムの少なくとも片面に付与してエラストマー層用組成物層を形成し、形成された前記エラストマー層用組成物層を硬化させてエラストマー層を形成する工程であってもよく、(B)エラストマー層を形成するためのエラストマー層形成用組成物を成形したエラストマー層形成用フィルムを熱可塑性ポリマーフィルムの少なくとも片面に転写してエラストマー層を形成する工程であってもよい。

0097

(b)積層体形成工程では、熱可塑性ポリマーフィルムの片面あるいは両面に(B)エラストマー層を積層させた後、エラストマー層の上にさらに熱可塑性ポリマーフィルムを積層してもよい。また、これらの工程を繰り返して、熱可塑性ポリマーフィルムとエラストマー層が交互に積層した積層体を形成してもよい。
例えば、(b−1)エラストマー組成物を前記熱可塑性ポリマーフィルム表面に塗布あるいは圧着させた後、エラストマー組成物に接して、さらに前記熱可塑性ポリマーフィルムを圧着させ、その後、これら全体を加熱して熱架橋してエラストマー層とする方法が挙げられる。あるいは、(b−1)エラストマー組成物を前記熱可塑性ポリマーフィルムの片側表面に塗布又は圧着させた後、これら全体を加熱してエラストマー組成物を熱架橋してエラストマー層を形成させ、その後、熱可塑性ポリマーフィルムのもう片方の面にエラストマー組成物を塗布又は圧着後、これら全体を再び加熱して、もう片方のエラストマー層を形成させる方法が挙げられる。
また、これらの工程を繰り返すことにより、熱可塑性ポリマーフィルムとエラストマー層が交互に積層した積層体を形成することができる。このように、積層体形成工程の一部又は全部を繰り返す工程もまた、本発明における積層体形成工程として例示することができる。

0098

(b)積層体形成工程の次の工程である(c)延伸工程での延伸温度が(b)積層体形成工程おける熱架橋温度と同じあるいはそれ以上である場合、(b)積層体形成工程と(c)延伸工程を一度に行ってもよい。すなわち、(b)積層体形成工程にてエラストマー層形成用組成物を熱可塑性ポリマーフィルムの少なくとも片面に付与してエラストマー層用組成物層を形成した後、(c)延伸工程における延伸温度まで昇温することで、硬化あるいは熱架橋させてエラストマー層とし、この積層体に(c)延伸工程を施してもよい。

0099

本発明の複合膜は、次工程である(c)延伸工程で(B)エラストマー層に印加された応力が(e)応力解放工程で解放される際、(B)エラストマー層の収縮力が(c)延伸工程及び(d)降温工程で結晶化した熱可塑性ポリマーフィルムに対して掛かることによって、特徴的なしわ構造が発現してしわ構造を有する(A)熱可塑性ポリマー層が形成される。従って、積層体を形成する際には、(A)熱可塑性ポリマー層よりも(B)エラストマー層が厚くなるように、熱可塑性ポリマーフィルムと(B)エラストマー層との厚みを調製することが好ましい。
そのような観点からは、(A)熱可塑性ポリマー層の厚みが0.01μm〜5000μmとなる条件の熱可塑性ポリマーフィルムを選択し、形成された(A)熱可塑性ポリマー層の厚みを1としたとき、(B)エラストマー層の厚みが1.1〜5000とするような厚さで(B)エラストマー層を形成することが好ましい。

0100

また、(b)積層体形成工程においては、前記熱可塑性ポリマーフィルムに隣接して、熱可塑性フィルムの全面にエラストマー層を形成させることが好ましい。
しかし、かならずしも全面に形成させず、熱可塑性ポリマーフィルムの一部にエラストマー層を形成させないなどの態様をとることができる。例えば、熱可塑性ポリマーフィルムの外周部にエラストマー層を形成させない場合、次工程である(c)延伸工程において、熱可塑性ポリマーフィルムを確実に延伸治具で掴むことができ、効率的に(c)延伸工程を施すことができる場合がある。

0101

本発明においては、(b)積層体形成工程は(c)延伸工程の前になるため、流動性を示すエラストマー層形成用組成物であっても、(b)積層体形成工程において熱可塑性ポリマーフィルム表面に塗布した後に、硬化させることでエラストマー層を形成させることが可能である。従って、すでに硬化したエラストマー層に熱可塑性ポリマー層を形成させる従来技術と比較して、エラストマー層と熱可塑性ポリマー層との接着性が向上し、両層がはがれにくい複合膜が形成される利点がある。

0102

また、本発明においては、熱可塑性ポリマー層が基板となり、この上に表層としてエラストマー層を形成させる。このため、本発明では、基板自体がしわ構造を有する点に特長がある。これは、エラストマー層を基板とし、表層である金属薄膜や高分子薄膜がしわ構造を形成する従来の製造方法とは大きく異なっている。

0103

[(c)延伸工程((c)工程)]
本発明の複合膜の製造方法では、前記(b)積層体形成工程の後、(c)延伸工程を施して、熱可塑性ポリマーフィルムにおいて熱可塑性ポリマーを配向させるとともに、(B)エラストマー層を伸長状態とする。
(c)延伸工程と、続く(d)降温工程が相まって、(e)応力解放工程においても、(A)熱可塑性ポリマー層は(c)延伸工程で配向した状態を保持しようとする。一方、(B)エラストマー層は伸縮性を有するため、(c)延伸工程において伸長状態となるが、その後の(e)応力解放工程において(c)延伸工程前の状態に収縮しようとする。このため、(e)応力解放工程で、(B)エラストマー層に隣接する(A)熱可塑性ポリマー層に微細なしわ構造が形成される。
(c)延伸工程は、熱可塑性ポリマー層前駆体を溶融状態で延伸すること、即ち、熱可塑性ポリマーフィルムの融点以上の温度で延伸することが好ましい。延伸工程が熱可塑性ポリマーフィルムの融点以下で行われると、熱可塑性ポリマー層前駆体では結晶破壊に起因する破断やネッキング等の不均一変形が起こり、延伸された熱可塑性ポリマー層前駆体と(B)エラストマー層との界面で剥離が起こりやすくなり、最終的に得られる複合膜においても、延伸、収縮を繰り返した場合、(A)熱可塑性ポリマー層と(B)エラストマー層との界面で剥離が起こりやすくなる。
このため、(c)延伸工程は、熱可塑性ポリマー層前駆体が均一に変形するよう、熱可塑性ポリマー層前駆体の一部又は全部が融解した状態で行うことが好ましい。より具体的には、(c)延伸工程は、積層体における熱可塑性ポリマーフィルムの融点以上の温度で行うことが好ましく、融点以上かつ融点+30℃以下の温度範囲で行なうことがより好ましい。

0104

(c)延伸工程における延伸方法は、熱可塑性ポリマーフィルムが均一変形すれば、特に制限はない。なかでも、熱可塑性ポリマーフィルム中のポリマーが効率的に分子配向する観点から、幅拘束一軸延伸処理、二軸延伸処理、ロール圧延処理又は圧縮延伸処理のいずれかであることが好ましい。
このうち、二軸延伸では、まず、一方向(x軸)に延伸し、次いで該方向と垂直方向(y軸)に延伸する逐次二軸延伸でもよいし、x軸及びy軸方向(縦横)同時に延伸する同時二軸延伸でもよい。

0105

前述したように、(c)延伸工程における延伸温度は、前記(a)フィルム形成工程で成形された熱可塑ポリマーフィルムの融点以上の温度であることが好ましい。ただし、熱可塑性ポリマーフィルム及びエラストマー層の熱分解温度以下であることが好ましい。なお、この温度範囲内であれば、延伸処理中に温度を変動させてもよい。
例えば、熱可塑性ポリマー層が、UHMW−PEである場合、UHMW−PEフィルムの融点(約135℃)以上かつ熱分解温度(約250℃)以下の温度条件で延伸することが好ましく、136℃〜180℃程度がより好ましい。

0106

(c)延伸工程における延伸倍率は、熱可塑性ポリマーフィルム及びエラストマー層が破断しない限りは特に制限はないが、採用した延伸方法及び延伸条件における、熱可塑性ポリマーフィルム又はエラストマー層の最大延伸倍率のうち、低い方となる。一般に、エラストマー層の最大延伸倍率は、20倍以下であるので、(c)延伸工程における延伸倍率は、1.1倍〜20倍程度が好ましい。
なお、二軸延伸においては、x軸方向の延伸倍率とy軸方向の延伸倍率は同じでもよいし、異なってもよい。
幅拘束延伸の場合や二軸延伸倍率がx軸方向の延伸倍率とy軸方向で異なる場合、のちの応力解放工程における収縮が、縦横方向で異なるため、ストライプ状のしわ構造など、しわの配列に異方性を持たせることができる。一方、二軸延伸において、縦横方向の延伸倍率を同じにした場合は、しわ構造のランダム配列が得られる。このようなしわの配向性は、本発明の複合膜の用途に応じて、適宜、選ぶことができる。

0107

(c)延伸工程における延伸速度は、熱可塑性ポリマーフィルム及びエラストマー層が破断しない限りは特に制限はないが、通常の一軸延伸装置二軸延伸装置を用いる場合、1mm/min〜1000mm/minの範囲が装置の作動限界であることが多い。延伸速度が速すぎると、熱可塑性ポリマーフィルムの変形とエラストマー層の変形にタイムラグが生じ、熱可塑性ポリマー層とエラストマー層の間で剥離が起こりやすくなる。一方、延伸速度度が遅すぎると、本発明の伸縮性複合膜の製造に時間がかかり過ぎ、工業的に不利である。

0108

また、(c)延伸工程の前に、(b)積層体形成工程で得られた積層体の温度を(c)延伸工程で延伸処理する温度と同一にするために、(c)延伸工程の前に、延伸処理する温度で一定時間、保持する保持工程を含んでいてもよい。この際、温度保持する時間は好ましくは1分から180分、より好ましくは1分から10分である。保持温度が既述の範囲であると、積層体の温度が延伸温度と同一になるのに十分であり、保持温度が長すぎることによる生産性の低下も抑制され、工業的に有利な条件で製造できる。

0109

前記(c)延伸工程の後に、延伸処理した積層膜を、該延伸倍率を保持したまま、即ち、延伸工程において延伸した積層膜のサイズを維持したまま、室温以上、且つ、延伸温度以下の温度範囲で、1分間〜180分間保持する熱処理工程を行ってもよい。この熱処理工程において、積層膜が延伸倍率で維持され、そこで熱処理を行うことにより、熱可塑性ポリマー層前駆体の配向状態がより安定に固定化され、後に(e)応力解放工程で効率的に(A)熱可塑性ポリマー層にしわ構造を導入することができる場合がある。

0110

前記積層体に(c)延伸工程を施すことにより、(A)熱可塑性ポリマー層前駆体の分子鎖が配向し、その一部が配向結晶化する。このように配向結晶化した熱可塑性ポリマー層前駆体は、後述する(e)応力解放工程で折りたたまれ、熱可塑性ポリマー層に特徴的しわ構造が形成される。このしわ構造が、本発明の複合膜の伸縮性に大きく寄与する。

0111

また、前述したように、本発明における、伸縮性複合膜の製造方法では、(c)延伸工程は熱可塑性ポリマーフィルムとエラストマー層の積層体を形成させた後に行なわれるため、従来の周期的しわ構造の形成方法、例えば、エラストマー層を延伸してから、延伸した状態で異種材層をエラストマー層の表面にコートあるいはラミネートする方法よりも簡便であるという利点をも有する。
このため、従来の周期的しわ構造の形成方法では必須であった、高分子溶液のキャストあるいはコートなどの延伸したエラストマー層表面にポリマー層を形成するためのウェット処理を必要しない点も、本発明の製造方法の利点であるといえる。

0112

[(d)降温工程((d)工程)]
本発明の伸縮性複合膜の製造方法では、前記(c)延伸工程の後、該延伸倍率を保持したまま、即ち、延伸したサイズを維持したままで、(d)降温工程を施して、熱可塑性ポリマー層前駆体の配向状態を固定化する。従って、(d)降温工程における処理温度は、前記熱可塑性ポリマーフィルムの結晶化温度以下であることが好ましい。この際、当該温度において、1分間〜180分間保持してもよい。
例えば、熱可塑性ポリマー層が特定熱可塑性ポリマーであるUHMW−PEで形成された場合、延伸倍率にもよるが、融点以上の溶融状態から降温すると、120℃〜80℃で結晶化が起こるので、この結晶化温度以下の室温(25℃)まで冷却すれば、十分にUHMW−PE層が結晶化(固定化)していると言える。
また、降温速度は、1℃/min〜1000℃/minであることが好ましい。降温速度が上記範囲において、積層体が有する熱可塑性ポリマーフィルムの内部に至るまで十分に温度が下がって結晶化が進行し、かつ、生産性が低下する懸念がない。

0113

前記熱可塑性ポリマーフィルムの結晶化温度は、DSC降温測定によって知ることができる。具体的には、前記熱可塑性ポリマーフィルムをDSC試料パンに詰め、DSC炉内で(c)延伸工程と同じ温度に昇温後、降温工程と同じ降温速度で降温した際のプロファイルを記録し、発熱ピークの温度を結晶化温度とすることができる。ピークが複数ある場合は、融点同様、もっともピーク強度の高いピークの温度を結晶化温度とする。

0114

さらに、(d)降温工程の後に、降温処理した温度以上、かつ、延伸温度以下の温度範囲で、該延伸倍率を保持したまま、1分間〜180分間保持して積層体を熱処理してもよい。この熱処理工程により、熱可塑性ポリマー層前駆体の結晶化度が向上し、引き続き行われる(e)応力解放工程において、熱可塑性ポリマー層に、より効率的に規則的なしわ構造が発現することがある。
通常、このような(d)降温工程は、(c)延伸工程に引き続き、(c)延伸工程を実施した延伸装置内にて、装置内の温度を制御して行うことが好ましい。

0115

[(e)応力解放工程((e)工程)]
本発明の伸縮性複合膜の製造方法では、前記(d)降温工程の後、前記延伸工程でエラストマー層に印加された応力を解放する(e)応力解放工程を施して、熱可塑性ポリマー層に微細で規則的なしわ構造を発現させる。前記熱可塑性ポリマー層は(c)延伸工程において、その融点以上の温度で延伸され、一部が配向結晶化し、その後、(d)降温工程でさらに結晶化するため、(e)応力解放工程においても(c)延伸工程で導入された延伸倍率を維持しようとする。一方、(B)エラストマー層では、(c)延伸工程で印加された応力が、(e)応力解放工程で解放されるため、(c)延伸工程前の元の膜サイズに縮もうとする。(e)応力解放工程では、このエラストマー層の収縮によって熱可塑性ポリマー層が折りたたまれ、表面に微細なしわを有する複合膜が得られる。

0116

この(e)応力解放工程では、熱可塑性ポリマー層前駆体を構成する熱可塑性ポリマーは十分に結晶化していることが求められる。従って、(d)降温工程において降温された温度にて(e)応力解放工程を行うことが好ましい。(e)応力解放工程を、(A)熱可塑性ポリマー層の融点以上の温度で行った場合、(B)エラストマー層の収縮に伴って(A)熱可塑性ポリマー層前駆体も収縮してしまい、(e)応力解放工程を行っても、得られた複合膜における(A)熱可塑性ポリマー層にしわ構造が効率的に発現しないことがある。

0117

この(e)応力解放工程においては、(d)降温工程を行った後、延伸装置から積層体を取り外すことによって行ってもよい。
また、延伸装置内で、(c)延伸工程の前の膜サイズまで、一定速度で収縮させてもよい。一定速度で収縮させる際の収縮速度は、熱可塑性ポリマー層及びエラストマー層が破断しない限りは特に制限はないが、通常の一軸延伸装置や二軸延伸装置を用いる場合、1mm/min〜1000mm/minの範囲が装置の作動限界であることが多い。
収縮速度が上記範囲であることで、(A)熱可塑性ポリマー層の変形と(B)エラストマー層の変形にタイムラグが生じることによる(A)熱可塑性ポリマー層と(B)エラストマー層との界面における層間剥離の発生が抑制され、生産性が良好となる。

0118

(e)工程における応力解放とは、(c)工程において積層体に付与された変形応力を、(d)工程の後、緩和させることを意味し、(c)工程において積層体に付与された変形応力よりも、低い応力に緩和すればよい。例えば、(c)工程において付与された応力を100としたとき、80以下まで解放すればよい。また、50以下に解放することが好ましく、30以下に解放することがより好ましく、引張り応力を0とするまで解放すること、即ち、延伸装置から取り外すことにより行なってもよい。

0119

最終的な収縮倍率は、熱可塑性ポリマー層及びエラストマー層が破断しない限りは特に制限はないが、製造した複合膜が(d)降温工程の処理温度で自然に収縮する膜サイズまでとする。
本発明においては、このような各種処理工程を施した後、得られた伸縮性複合膜を最終的には室温で取り出して様々な用途に使用する。

0120

また、本発明の目的を損なわない範囲で、本発明の伸縮性複合膜の製造後、該複合膜に対して電子線照射や放射線照射を行って(A)熱可塑性ポリマー層及び(B)エラストマー層の少なくともいずれかに架橋構造を形成させる架橋処理を行なうことができる。架橋処理により、得られた複合膜の、耐薬品性、寸法安定性耐熱性等をより向上させることができる。
さらに、本発明の目的を損なわない範囲で、本発明の伸縮性複合膜の製造後、該伸縮性複合膜の熱可塑性ポリマー層又はエラストマー層の表面に、公知のコート剤塗布剤、界面活性剤、高分子エマルジョン、金属、カーボンセラミック層シリカ粒子、粘土等の表面改質剤を、そのまま、又は溶剤に分散させてから、スピンコートディップコートラビング、塗布、蒸着又はスパッタリングすることで、親水性、接着性、細胞吸着性等を付与させることができる。この際、前記の表面改質剤や溶剤を複数混ぜて用いてもよいし、これらの表面改質処理を複数回行ってよく、表面改質処理の組み合わせも任意である。
これらの表面改質処理に先立ち、本発明の伸縮性複合膜に対して、プラズマ処理、コロナ処理、重粒子線照射処理、紫外線照射処理、電子線照射処理等の表面処理を施すことができる。
また、本発明の複合膜の熱可塑性ポリマー層又はエラストマー層の表面に対して、金属蒸着などを施すことにより、電子配線や電子回路等を形成させ、伸縮可能な電子配線基板又は電子回路基板等としてもよい。
加えて、本発明の伸縮性複合膜の製造後、複合膜表面に、さらにエラストマー層や熱可塑性ポリマー層を積層することも可能である。その場合の表面処理に関しても上述の方法を用いることができる。
これらの各種処理は、本発明の伸縮性複合膜を延伸して(A)熱可塑性ポリマー層のしわ構造を伸ばして平滑状態としてから行ってもよいし、(A)熱可塑性ポリマー層が折りたたまれた状態で行ってもよい。

0121

本発明の製造方法により得られた複合膜は、融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー等を含んで形成され、微細なしわ構造を有する(A)熱可塑性ポリマー層と、前記(A)熱可塑性ポリマー層の厚さよりも厚い(B)エラストマー層とを隣接して有し、室温において伸縮性を有する。
本発明における複合膜の伸縮性の指標としては、(B)エラストマー層単独に対してJIS 7161(1994年)に準拠して室温(25℃)で引張り試験を行った場合に、ひずみ100%以上に伸長可能である伸長性を持ち、かつ、ひずみ100%に伸長した状態から、応力を開放すると、残存ひずみ90%以下まで収縮する収縮性を有していることを基準とする。
そのような観点からは、しわ構造の(A)熱可塑性ポリマー層表面に平行方向の周期は、0.01μm〜5000μmであることが好ましく、0.01μm〜3000μmであることがより好ましく、0.01μm〜1000μmであることがさらに好ましい。また、しわ構造の(A)熱可塑性ポリマー層表面に垂直方向の最頂部と最低部との距離、即ち、しわ構造におけるしわの深さは、0.01μm〜5000μmであることが好ましく、0.01μm〜3000μmであることがより好ましく、0.01μm〜1000μmであることがさらに好ましい。

0122

本発明の伸縮性複合膜の熱可塑性ポリマー層が形成する微細なしわ構造については、後述する実施例で明らかなように、走査型電子顕微鏡(SEM)像などで確認することができる。

0123

本発明の製造方法によれば、伸縮性と高強度性を兼ね備えた複合膜を、簡易に、かつ、効率よく製造することができる。

0124

<ストレッチャブル電子デバイス>
本実施形態のストレッチャブル電子デバイスは、融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーを含有し、融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー組成物を含んで形成され、しわ構造を有する熱可塑性ポリマー層と、前記熱可塑性ポリマー層の一方の面上に形成され、前記熱可塑性ポリマー層の厚さよりも厚いエラストマー層と、前記熱可塑性ポリマー層の前記エラストマー層を有しない側の面上に形成された導電部材と、を備え、室温にて伸縮性と導電性を有するストレッチャブル電子デバイスである。
なお、本実施形態における導電部材は、導電性を有する領域であり、電気配線及び電気伝導層の少なくとも1つを有する部材であり、各種の電子回路を形成していてもよい。
また、ストレッチャブル電子デバイスを、単に電子デバイスと略称することがある。以下、本明細書にて電子デバイスと称する場合、特に断らない限り、本実施形態のストレッチャブル電子デバイスを指す。

0125

本実施形態のストレッチャブル電子デバイスは、既述の本実施形態の複合膜の好ましい応用態様の一例である。
既述の本実施形態の複合膜において、しわ構造を形成する熱可塑性ポリマー層のエラストマー層を有しない側に、前記熱可塑性ポリマー層に隣接して導電部材を備えることで、本実施形態の複合膜はストレッチャブル電子デバイスの態様をとることができる。
既述の態様の場合、導電部材はしわ構造を有する。
本実施形態の電子デバイスでは、ひずみを印加すると前記熱可塑性ポリマー層のしわ構造が引き伸ばされるに伴い、これに隣接した導電部材もしわ構造の引き伸ばしに追従することで、その導電性が維持される。また、ひずみを解放すると、前記熱可塑性ポリマー層が元のしわ構造を形成するのに伴い、これに隣接した導電部材もしわ構造の再形成に追従する。従って、本実施形態の複合膜の特徴の一つである伸縮性を備え、かつ、導電性を維持した電子デバイス(ストレッチャブル電子デバイス)が提供される。

0126

本実施形態の電子デバイスでは、導電部材は伸縮性を有し、高強度な熱可塑性ポリマー層に密着することで、熱可塑性ポリマー層に保護され、繰り返し、伸長と解放を繰り返しても、熱可塑性ポリマー層と剥離することなく、熱可塑性ポリマー層の変形挙動に追従できる。

0127

本実施形態の電子デバイスにおいては、熱可塑性ポリマー層に隣接して形成された導電部材は、前記熱可塑性ポリマー層と同じしわ構造を有することが望ましい。前記導電部材がしわ構造を有することにより、ひずみ印加に伴う前記熱可塑性ポリマー層のしわ構造の引き伸ばし、及び、ひずみ解放に伴う前記熱可塑性ポリマー層のしわ構造の再形成に導電部材が追従することができる。
従って、本実施形態のストレッチャブル電子デバイスの製造方法は、以下に詳述するが、導電部材を形成する工程(導電部材形成工程)においては、前記熱可塑性ポリマー層のしわ構造が引き伸ばされた状態で、これに隣接して導電部材を形成することが望ましい。導電部材を形成した後、ひずみを解放することにより、前記熱可塑性ポリマー層に追随して導電部材も、しわ構造を形成する。この態様によれば、前記導電部材は前記熱可塑性ポリマー層と密着して変形するため、前記導電部材は強度の高い前記熱可塑性ポリマー層に保護され、かつ、伸縮の影響による前記導電部材の前記熱可塑性ポリマー層からの剥離が抑制される。

0128

一方、ひずみ印加方向と垂直方向に、導電部材として線状の電気配線を形成させた場合では、電気配線がしわ構造を形成せずとも、ひずみ印加と解放を繰り返しても、導電部材は導電性を維持できる。従って、本実施形態の電子デバイスが備える導電部材は、必ずしもしわ構造を形成しなくてもよい。
しかしながら、この場合も、上述のしわ構造を有する導電部材同様、伸縮の影響による前記導電部材の前記熱可塑性ポリマー層からの剥離をより確実に抑制する観点から、前記熱可塑性ポリマー層のしわ構造が引き伸ばされた状態で、これに隣接して導電部材を形成することが望ましい。

0129

(導電部材)
前記熱可塑性ポリマー層に隣接して、前記熱可塑性ポリマー層の、前記エラストマー層が形成されない面上に形成される導電部材は、既述の本実施形態の複合膜の一部に形成されてもよいし、熱可塑性ポリマー層の全面に亘って形成されてもよい。熱可塑性ポリマー層の少なくとも一部に所望の形状で形成された導電部材を電気配線と称し、全面に亘って形成された導電部材を電気伝導層と称することがある。ここで、導電部材における電気配線の形状、素材、形成領域は任意であり、電子デバイスの目的に応じて、選択され、形成される。本実施形態における導電部材は、電気配線と電気伝導層の双方を有する導電部材であってもよい。また、これら電気配線や電気伝導層が電子回路を形成していてもよい。
導電部材の厚みも適宜選択することができる。導電部材が厚いと、導電部材における電気伝導性がより良好となる。しかし、前記熱可塑性ポリマー層の厚みと同様の観点から、導電部材の厚みは、エラストマー層の厚さより小さいことが好ましい。
これは、本実施形態の電子デバイスおけるひずみ印加に伴い、前記熱可塑性ポリマー層のしわ構造が引き伸ばされるのに導電部材が追従し、また、ひずみを解放すると前記熱可塑性ポリマー層のしわ構造が再形成されるのに導電部材が追従することが好ましいためである。即ち、しわ構造の引き伸ばし、及び、再形成は、エラストマー層の伸縮性に由来するため、前記熱可塑性ポリマー層と同様に、前記導電部材においても、エラストマー層の伸縮挙動を可能な限り阻害しない厚さであることが好ましいことによる。
導電部材を形成する導電性材料としては、公知の電気伝導性を有する各種金属導電性ポリマー、導電部材を含む導電性ペーストなどが挙げられる。

0130

(ストレッチャブル電子デバイスの好ましい物性)
本実施形態の電子デバイスは、前記熱可塑性ポリマー層に形成された微細なしわ構造に由来して、伸び縮みを繰り返しても、一定の電気伝導性を維持することができる。伸び縮みを繰り返しても、一定の電気伝導性を維持する特性は、ウェアラブル電子デバイス、ロボット可動部等に用いられる部材として、好適な機能である。
好ましい電気伝導性の維持性能の指標の測定は以下のように行なうことができる。
まず、室温(25℃)において、前記しわ構造を引き伸ばす方向に一定ひずみを印加した状態での電子デバイスの電気抵抗値を測定する。
上記測定とは別に、室温(25℃)において、ひずみを印加しない状態の電子デバイスの電気抵抗値を測定し、両者の測定結果を比較することで、ひずみ印加に伴う電気伝導性の変動、言い換えれば、維持性能を検定することができる。
ここで、本実施形態の電子デバイスの伸縮性を担保する特徴的なしわ構造は、ひずみ印加に伴い、引き伸ばされて膜面が平滑になることでひずみを吸収し、ひずみを印加しない状態に戻すと、再びしわ構造を形成する。このため、本実施形態の電子デバイスでは、しわ構造の伸び縮みによりひずみ変化を吸収することになるため、熱可塑性ポリマー層に隣接して形成された導電部材、ひずみ印加及び解消を繰り返しても損傷を受け難く、一定の電気伝導性を保持することができる。

0131

このとき、前記しわ構造を引き伸ばす方向は、ストレッチャブル電子デバイス面に対して一方向または二方向である。
しわ構造を引き伸ばす方向、即ち、既述のひずみの印加方向としては、しわ構造を解消する方向であるので、しわ構造が折りたたまれた方向であり、この折りたたまれた状態を引き伸ばす方向であることが望ましい。従って、しわの形成方向に従えば、x軸方向(横方向)及びy軸方向(縦方向)のどちらも、ひずみ印加方向とすることができる。また、しわ構造が縦横二軸方向への延伸工程に起因して形成されている場合には、x軸方向とy軸方向の両方にひずみを印加してもよい。

0132

本実施形態の電子デバイスのひずみ印加に伴う電気伝導性の維持性能を評価するためのひずみ印加量としては、前記しわ構造がある程度、引き伸ばされればよく、完全にしわ構造が解消するひずみより小さいことが、導電性がより良好な範囲に維持されるという観点から望ましい。しわ構造が完全に引き伸ばされた後もひずみを印加し続けると、熱可塑性ポリマー層に隣接して形成された導電部材が伸長により破断する懼れがあり好ましくない。
ここで、電子デバイスの形成における延伸工程で一軸延伸及び幅拘束延伸を用いた場合、しわ構造の折りたたみは、延伸方向に進む。従って、既述の本実施形態の複合膜の説明で述べたように、応力−ひずみ曲線の変曲点で伸びきって複合膜又は電子デバイスは、見かけ上平滑になると考えられる。
本実施形態の電子デバイスにおいても、既述の本実施形態の複合膜と同様に、この変曲点のひずみが印加可能最大ひずみであると考えられる。この最大ひずみを超えてひずみを印加すると、熱可塑性ポリマー層に隣接して形成された導電部材の破壊、熱可塑性ポリマー層と導電部材との界面における剥離等の発生が懸念されるため、本実施形態の電子デバイスが利用可能なひずみ範囲は、既述の変曲点のひずみ以下であることが好ましい。

0133

(導電性の評価について)
本実施形態の電子デバイスが有する好ましい導電性の維持性能を評価するためには、電子デバイスの電気抵抗値を指標とすることができる。
既述のように、電子デバイスにおいて、伸長(ひずみの印加)及び解放を繰り返し、伸長時と解放時とにおける電気抵抗値の変化を測定することで、導電性の維持性能を確認することができる。
電子デバイスの評価において、印加するひずみが小さすぎる場合、ひずみを印加しない状態での電気伝導度との違いを検定しにくいので、測定に際しては、5%以上のひずみを印加することが望ましい。
前述したように、従来のフレキシブル電子デバイスでは、5%以上のひずみを印加すると導電部材に破壊が生じるので、5%を超えるひずみを印加した場合においても、必要な電気伝導性を維持することが発明のストレッチャブル電子デバイスに求められる。
同様に、延伸工程が二軸延伸である場合も、印加可能なひずみの範囲は5%以上、かつ、変曲点のひずみ以下であることが好ましい。この場合のひずみ印加量は、x軸とy軸とが同じであってもよいし、異なっていてもよい。

0134

本明細書においては、電気伝導性の維持性能の指標として、室温(25℃)において前記しわ構造を引き延ばす方向にひずみ20%を印加した状態での評価を行なっている。
室温(25℃)において、電子デバイスにひずみを20%印加したときの電気抵抗値、及び、その後、ひずみを解放して0%としたときに測定した電気抵抗値を、それぞれRとし、ひずみを印加しない状態で室温(25℃)にて測定した電気抵抗値の初期値(R0)と、比較することで、ひずみ印加に伴う電気伝導性の維持性能を検証することができる。
ここで、ひずみを印加しない状態で室温(25℃)にて測定した電気抵抗値の初期値(R0)とは、初回、即ち、1回目のひずみを印加する前に測定したひずみ0%での電気抵抗値の初期値である。
即ち、本実施形態の電子デバイスでは、室温(25℃)において測定したひずみを印加しない状態での初期の電気抵抗値をR0とし、ひずみを20%印加した状態、及び、その後、ひずみを解放し0%とした状態、において電気抵抗値を室温(25℃)にて測定した値を、いずれもひずみ印加後の電気抵抗値Rとし、さらに、RとR0との差(R−R0)を△Rとした。R0に対する△Rの比(△R/R0)を算出することで、電気抵抗値の初期値からの変動を評価することができる。
ここで、電気抵抗値の差△R(R−R0)を、初回にひずみを印加しない(0%)状態で測定した電気抵抗値R0で除した値(△R/R0)が0の場合、ひずみを印加しない状態での電気抵抗値の初期値R0と、ひずみを20%印加した状態、あるいは、その後、ひずみを解放して0%に戻した状態での電気抵抗値Rと、が一致していることを意味しており、最も理想的な数値である。しかし、現実には達成し難い。一方、△R/R0の値が1の場合、ひずみを20%印加した状態、あるいは、その後、ひずみを解放して0%に戻した状態での電気抵抗値Rが、初回にひずみを印加しない(0%)状態で測定した電気抵抗値R0の2倍に達することを意味しており、電子デバイスとしての機能を十分に果たせない。
また、測定した電気抵抗値が小さい程、電子デバイスは電気伝導性が良好であることを意味する。

0135

電気抵抗値の差△R(R−R0)を、初回にひずみを印加する前の状態で測定した電気抵抗値R0で除した値(△R/R0)を算出した後、印加したひずみを0%に戻し、再び、ひずみ20%を印加するサイクルを10回繰り返す試験を行い、その間の△R/R0の値を記録することで、繰り返しひずみを掛けた場合の値が、一定値以下であれば、繰り返しひずみを印加した場合でも電気伝導性を維持していると評価でき、ストレッチャブル電子デバイスとして利用することが可能であると判断される。
なお、電気抵抗値の差△Rは、R−R0で表される差分の絶対値を判断基準とすることができ、電気抵抗値の初期値であるR0からの変動値として評価される。

0136

また、印加するひずみとしては、10%以上が好ましく、20%以上がより好ましい。現状のフレキシブル電子デバイスは、ひずみ5%を印加すると導電性が失われてしまうことが多い。これらを考慮し、本明細書においては、ひずみ20%を繰り返し印加することで、本実施形態の電子デバイスの導電性維持の評価条件と定めた。
従って、本実施形態の電子デバイスについては、△R/R0の値が0.9以下であれば、ひずみ20%を印加した際でも、電子デバイスとしての機能を維持していると評価し、△R/R0の値が0.5以下であることが好ましいと評価する。
このため、ひずみを20%印加し、その後、ひずみを印加しない状態に戻すサイクルを10回繰り返した場合でも、△R/R0が常に0.9以下であることが好ましく、0.5以下であることがより好ましい。
また、上記評価方法において、しわ構造を引き伸ばす方向は、ストレッチャブル電子デバイス面に対して一方向または二方向とすることができる。しわ構造を引き伸ばす方向は、電子デバイスの構造に合わせて選択される。

0137

既述の電気抵抗値の測定では、ひずみを印加しない状態での電子デバイスにおける2点間の間隔を10.0mmとしてR0を測定し、ひずみを印加した状態でも、これと同じ位置間の電気抵抗値Rを測定する。
この際の電気抵抗値測定における10.0mm間隔の測定点2点は、ひずみ印加方向に沿って並んでいることが、ストレッチャブル電子デバイスの用途上、一般的であるが、測定位置はこれに限定されない。
例えば、電子配線がひずみ印加方向と垂直に形成される場合でも、ストレッチャブル電子デバイスとして、有効に利用できる。従って、このような電子デバイスの有効性を評価する場合、電気抵抗値測定における測定点2点は、ひずみ印加方向と垂直方向に並ぶことになる。
また、延伸工程が二軸延伸で導電部材が熱可塑性ポリマー層上に面状に形成されている場合、縦横二方向にひずみを印加できるので、どの方向に並んだ2点間の電気抵抗値も評価対象になり得る。従って、電気抵抗値の測定における測定点2点は、導電部材上であるならば、縦横方向に限定されず、対角方向や、さらに異なる方向に並んでいてもよい。このような様々な方向に対する導電性が確保され得る点も、本実施形態のストレッチャブル電子デバイスの特徴である。

0138

本実施形態の電子デバイスが、上記繰り返しひずみを印加する評価により、電気抵抗値を一定の範囲に維持しうることで、本実施形態の電子デバイスは、基本構造である本実施形態の複合膜が有する伸縮性及び強度に加え、繰り返し伸縮された場合においても、電気伝導性を維持しうることを確認することができる。
本実施形態の電子デバイスは、繰り返し伸び縮みさせても導電性を維持できることから、衣服のように人体の動きに追随可能なウェアラブルデバイスや、ロボット等の複雑な動きを必要とする装置に用いる電子デバイスとして有用であることが期待できる。

0139

<ストレッチャブル電子デバイスの製造方法>
次に、既述の本実施形態の電子デバイスの好ましい製造方法について説明する。
本実施形態のストレッチャブル電子デバイスの製造方法は、既述の複合膜の製造方法において、さらに、前記熱可塑性ポリマー層に隣接して導電部材を形成する導電部材形成工程をさらに含むストレッチャブル電子デバイスの製造方法である。
本実施形態の製造方法は、先に詳細に説明した複合膜の製造方法、即ち、融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーを含有し、融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマー組成物を用いて熱可塑性ポリマーフィルムを成形する(a)フィルム形成工程、前記フィルム形成工程で得られた熱可塑性ポリマーフィルムの一方の面上に、前記熱可塑性ポリマーフィルムに隣接して、前記熱可塑性ポリマーフィルムの厚みよりも厚いエラストマー層を形成して積層体を得る(b)積層体形成工程、前記積層体を、前記熱可塑性ポリマーフィルムの融点以上の温度で延伸処理する(c)延伸工程、延伸処理した前記積層体の温度を前記熱可塑性ポリマーフィルムの結晶化温度以下まで降温する(d)降温工程、及び前記降温工程後に、前記延伸工程において前記積層体に印加された延伸応力を解放する(e)応力解放工程を含む複合膜の製造方法において、さらに、前記(a)工程〜前記(e)工程の前後のいずれかにおいて、電子デバイスに必要な導電部材を前記熱可塑性ポリマー層に隣接して形成する(f)導電部材形成工程(以下、(f)工程と称することがある)をさらに含む、ストレッチャブル電子デバイスの製造方法である。
本実施形態の製造方法により、しわ構造を有し、室温(25℃)にて伸縮性と導電性を有するストレッチャブル電子デバイスを製造することができる。

0140

上記製造方法において、(a)フィルム形成工程、(b)積層体形成工程、(c)延伸工程、(d)降温工程、及び(e)応力解放工程は、既述の本実施形態の複合膜の製造方法における、(a)フィルム形成工程、(b)積層体形成工程、(c)延伸工程、(d)降温工程、及び(e)応力解放工程と同様にして行うことができる。
本実施形態の電子デバイスの製造方法では、既述のように前記(a)工程〜前記(e)工程の前後のいずれかにおいて、(f)導電部材形成工程をさらに含む。
例えば、前記(d)降温工程の後か、或いは、前記(e)応力解放工程の後に実施すること、即ち、前記積層体又は前記複合膜を延伸した状態あるいはひずみを印加した状態を維持し、前記積層体又は前記複合膜における前記熱可塑性ポリマー層のエラストマー層を有しない側の面上に導電部材を形成する(f)導電部材形成工程を実施することが好ましい。
(f)導電部材形成工程は、(d)降温工程の後、応力を解放せず延伸状態の積層体に対して実施する工程であるか、または、(e)前記応力解放工程の後に、得られた複合膜を所定のひずみとなるように再度延伸し、ひずみ印加状態を維持した状態で実施する工程であることが好ましい。
以下、前記延伸された、あるいは、ひずみ印加された積層体又は複合膜における前記熱可塑性ポリマー層のエラストマー層を有しない側の面上に、導電部材を形成する(f)導電部材形成工程について説明する。この態様によれば、前記熱可塑性ポリマー層の面上にしわ構造を有する導電部材を形成することができる。

0141

((f)導電部材形成工程)
本実施形態の電子デバイスがしわ構造を有する導電部材を有する態様である場合、電子デバイスの伸縮性を最大限生かすには、前記熱可塑性ポリマー層のしわ構造が完全に引き伸ばされ、平滑になった状態で、前記熱可塑性ポリマー層の平滑な面上に、導電部材を形成することが望ましい。即ち、既述の本実施形態の複合膜を形成した後、複合膜を引き伸ばし、複合膜が有する熱可塑性ポリマー層の引き延された面上に導電部材を形成することが好ましい。
しわ構造の引き伸ばしの程度については、既述の本実施形態の複合膜にひずみを印加した状態でSEM観察すれば確認することができる。また、対象とする複合膜の応力−ひずみ曲線における変曲点を基準として決定することができる。後者の場合、この変曲点まで複合膜にひずみを印加すれば、しわ構造が完全に解消される。
これにより、本実施形態の複合膜を利用すれば、得られた電子デバイスは、応力−ひずみ曲線における変曲点までひずみを印加しても、電気伝導性を維持したストレッチャブル電子デバイスとなる。

0142

(f)導電部材形成工程における、ひずみの印加方向としては、(d)応力解放工程の後に形成されたしわ構造を解消する方向であるので、しわ構造が折りたたまれた方向であることが望ましい。従って、延伸工程が一軸延伸又は幅拘束延伸である場合、ひずみの印加方向は延伸方向となる。
一方、しわ構造を形成する延伸工程が二軸延伸である場合、x軸方向(横方向)、y軸方向(縦方向)のどちらの方向にもしわ構造が折りたたまれて形成されているので、x軸方向及びy軸方向の少なくともいずれかを、ひずみ印加方向とすることができる。また、x軸方向とy軸方向の両方をひずみ印加方向とすることもできる。

0143

導電部材形成工程について詳細に説明する。導電部材形成工程は、例えば、以下の2つの態様に示す順にて行なうことができる。
導電部材形成工程の第1の態様としては、本工程に先立って行なわれる前記(e)応力解放工程の後に、得られた複合膜にひずみを印加し、しわ構造を引き伸ばした状態で、熱可塑性ポリマー層の、エラストマー層と接しない面上に導電部材を形成する方法が挙げられる。
導電部材形成工程の第2の態様としては、前記(c)延伸工程あるいは前記(d)降温工程の後に、印加した応力を解放しない状態で、前記積層体における前記熱可塑性ポリマー層の、エラストマー層と接しない面上に導電部材を形成する方法が挙げられる。
この他、(f)導電部材形成工程を、既述の本実施形態の複合膜の製造方法における各工程のうち、適切な工程にさらに加えればよい。
既述の本実施形態の複合膜の前記熱可塑性ポリマー層の、エラストマー層と接しない面上に導電部材を形成できれば、本実施形態の複合膜の製造方法における各工程のいずれの箇所に導電部材形成工程を加えてもよい。

0144

前記熱可塑性ポリマー層のしわ構造の引き伸ばしは、必ずしもしわ構造が完全に引き延され、熱可塑性ポリマー層が平滑にされた状態で行なわれなくてもよい。しわ構造の一部が引き延された状態で、熱可塑性ポリマー層の面上に導電部材を形成することができる。
例えば、前記第1の態様をとる場合、しわ構造が完全に引き伸ばされるひずみより小さいひずみを印加した状態で、(f)導電部材形成工程を施せばよい。また、前記第2の態様をとる場合には、(e)応力解放工程の途中で解放を止め、完全に応力を解放しない状態で導電部材を形成した後に、再び、応力解放工程を再開し、導電部材を形成した後の複合膜に印加した応力を完全に解放すればよい。

0145

導電部材形成工程における、x軸方向及びy軸方向へ印加するひずみの程度を変えることで、本実施形態のストレッチャブル電子デバイスの電気伝導性を維持する許容ひずみに異方性を持たせることができる。
例えば、前記延伸工程が二軸延伸であり、その際の延伸倍率がx軸とy軸で同じ場合、熱可塑性ポリマー層のしわ構造は膜面に対してランダムに形成される。この二軸方向にしわ構造化形成された複合膜に、既述の導電部材形成工程の第1の態様を実施する場合、しわ構造が完全に引き伸ばされるひずみより低いひずみであって、x軸よりもy軸に大きなひずみを印加した状態で、導電部材を形成し、ストレッチャブル電子デバイスを調製することができる。このようにして形成された電子デバイスは、x軸方向へ引き伸ばす場合は、y軸方向へ引き伸ばす場合に比べて、より大きなひずみまで電気伝導性を維持する。
同様に、前記第2の態様で導電部材形成工程を実施する場合、応力解放工程を途中で止める際のひずみを、x軸、y軸で変えておけば、得られる本実施形態のストレッチャブル電子デバイスの電気伝導性の維持性能に異方性を持たせることができる。

0146

既述の本実施形態の複合膜を形成する際の延伸工程において、一軸延伸や幅拘束延伸のように延伸倍率が確実にx軸、y軸で異なる延伸方法を選択した場合、応力解放工程後の熱可塑性ポリマー層のしわ構造には、異方性が発現する。
従って、このような態様の複合膜に導電部材を形成した場合についても、複合膜を用いて得られる本実施形態のストレッチャブル電子デバイスは、電気伝導性を維持する許容ひずみに異方性を持つ電子デバイスとなる。

0147

また、これら(f)導電部材形成工程の後、導電部材の上にさらにエラストマー層を付加的に形成させてから、応力又はひずみを解放してしわ構造を形成させてもよい。この場合、導電部材は熱可塑性ポリマー層とエラストマー層の界面に配置されることになる。このエラストマー層の付加工程についても、前期熱可塑性ポリマー層のしわ構造が完全に引き伸ばされ状態で行ってもよいし、しわ構造が残存した状態で行ってもよく、x軸及びy軸でのしわ構造の残存度合いも任意である。

0148

導電部材を形成する方法には、導電部材を形成する前記熱可塑性ポリマー層に適合する限りにおいて特に制限はない。
導電部材の形成方法としては、例えば、スパッタリング等の気相法により金属蒸着膜を形成する方法、銅線等の金属線又は銅箔等の金属膜を、接着剤を介して接着する方法、導電ペースト等の金属粒子などの導電部材を含む導電性材料を塗布する方法、金属粒子、カーボン粒子等の導電性粒子をそのまま、あるいは溶剤に分散させて、スピンコート、ディップコート、ラビング等により塗布する方法、などが挙げられる。
これらの方法には、公知の付加的な方法を併用することができる。例えば、導電ペーストにて導電部材を形成した場合、さらに加熱処理を行なって、より緻密な導電部材を形成するといった付加的な処理を併用してもよい。また、これら導電部材との密着性を向上させる目的で、各種の表面処理(プラズマ処理、コロナ処理、重粒子線照射処理、紫外線照射処理、電子線照射処理等)を熱可塑性ポリマー層あるいは電導部材に施してもよい。

0149

なお、ここでは、前記熱可塑性ポリマー層のエラストマー層を形成しない面上に導電部材を形成するストレッチャブル電子デバイスの製造方法について詳述したが、導電部材はエラストマー層上に形成させてもよい。
例えば、エラストマー層と熱可塑性ポリマー層とを有する複合体に、さらにエラストマー層を備える3層構造の複合体を、電子デバイスに応用する場合、さらに積層されるエラストマー層の熱可塑性ポリマー層と接する面に導電部材を形成し、その後、エラストマー層と熱可塑性ポリマー層との積層体を延伸した状態で、導電部材を形成したエラストマー層を当該積層体に接着して、エラストマー層、熱可塑性ポリマー層、導電部材及びエラストマー層をこの順に有する電子デバイスを形成することもできる。

0150

また、ここでは、(d)降温工程の後、あるいは、(e)前記応力解放工程の後に、(f)導電部材形成工程を施す場合について詳述したが、(f)導電部材形成工程の実施順はこれに限定されない。
例えば、(a)フィルム成形工程の後、あらかじめ(c)延伸工程でのひずみ印加に備えて波状の電気配線を形成させる方法、または、伸縮性の導電ペーストで配線形成する方法等を実施することができる。また、その後の(c)延伸工程においても、導電部材が延伸により切断(断線)しない工夫をすれば、(b)積層体形成工程を行う前に(f)導電部材成形工程を施すことも可能である。

0151

既述の本実施形態の電子デバイスの製造方法によれば、伸縮性と強度が良好であり繰り返し伸縮した後も、電気伝導性が維持される本実施形態のストレッチャブル電子デバイスを好適に製造することができる。

0152

以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明は、下記実施例に何ら限定されるものではない。

0153

[実施例1]
[特定熱可塑性ポリマー]
融点以上の温度で延伸可能な熱可塑性ポリマーとして、粉末状UHMW−PE(超高分子量ポリエチレン:三井化学(株):ハイゼックスミリオン340M(商品名)、Mv=3.5×106、平均粒径150μm)を用いた。

0154

<DSC昇温測定>
前記粉末状UHMW−PE原料について、50℃から180℃まで窒素ガス気流下にて昇温速度10℃/minにて昇温してDSC測定(パーキンエルマー製ダイヤモンドDSC)を行った。この際、試料約5mgをアルミパンに封入してDSC測定に供した。なお、温度及び熱量は標準物質インジウム及びスズ)で校正した。
その結果、図1に示す融解プロファイルが得られた。図1のプロファイルにおける吸熱ピーク温度は142.9℃であった。これをUHMW−PE原料の融点(Tm)とした。

0155

[(a)フィルム形成工程]
UHMW−PE原料をフィルムに成形する。
以下の実施例におけるフィルム形成工程の一部であるプレス成形の作製手順を、図2の概念図とともに以下に示す。
図2に示すように、直径110mmφ×厚さ2mmの円盤ステンレス板(1)の上に厚さ125μmの離型用ポリイミドフィルム(2)を置き、次に直径110mmφ×厚さ0.15mmの円盤状ステンレス板に70mm×70mmの矩形窓をくり抜いたもの(3)を置き、その矩形窓内に上記粉末状UHMW−PEを約1.5g置いた。その上に厚さ125μmの離型用ポリイミド膜(4)を置き、さらにその上に直径110mmφ×厚さ2mmの円盤状ステンレス板(5)を置いた。

0156

これら全体を室温(25℃)にて真空チャンバー内に設置されたプレス機((株)ボールドウィン製)中の上下板の間に置き、1×10−1Torrまでロータリーポンプで減圧後、上下のプレス板の間隔を応力がかからないようになるべく近付け、160℃に加熱し、160℃に温度を維持して5分間保持し、その後、4.5MPa(シリンダー圧力60MPa)の圧力でプレスした状態で、ヒーター電源を切って減圧状態にて室温(25℃)まで徐冷した。その後、真空チャンバーを開けて本発明における特定熱可塑性ポリマーフィルムであるUHMW−PEフィルム(以下、適宜、プレス成形フィルムと称する)を取り出した。得られたプレス成形フィルムの厚みは約0.20mmであった。
このUHMW−PEプレス成形フィルムのDSC昇温測定を行った。DSC昇温測定にて得た融解プロファイルを図3のグラフAに示す。図3のグラフAに示すように、吸熱ピーク温度は135.1℃であった。これをプレス成形フィルムの融点(Tm)とした。

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