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技術 液体吐出ヘッド及び該ヘッドのクリーニング方法、並びに記録装置

出願人 キヤノン株式会社
発明者 加藤麻紀斉藤一郎三隅義範松居孝浩石田譲吉成徳弘後藤明夫小池淳
出願日 2015年5月8日 (4年4ヶ月経過) 出願番号 2015-095647
公開日 2016年12月15日 (2年9ヶ月経過) 公開番号 2016-210085
状態 特許登録済
技術分野 インクジェット(粒子形成、飛翔制御) インクジェット(インク供給、その他)
主要キーワード キャビテーション衝撃 排出過程 エネルギー閾値 配線保護 置換動作 所定密度 シーケンス終了後 劣化部分
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2016年12月15日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (11)

課題

印字品位に影響を与えることなく配線材料水素脆化を抑制できる、液体吐出ヘッド及びそのクリーニング方法を提供する。

解決手段

対向電極132への配線136を加熱する手段140を設け、クリーニング中もしくはクリーニング後に第二の電気熱変換部152をパルス駆動することにより、配線内の水素を追いだし、配線の水素脆化を抑制する。

概要

背景

液体吐出方式インクジェット記録方式)は、液体吐出ヘッドに設けられた吐出口から液体(例えばインク)を吐出させ、これを紙などの被記録材に付着させて記録を行うものである。電気熱変換素子が発生する熱エネルギーにより生ずる液体の発泡を利用して液体を吐出する方式のインクジェット記録方式は、高画質及び高速記録が可能である。

この種の液体吐出ヘッドの一般的な構成は、複数の吐出口と、この吐出口に連通する流路と、インクを吐出するために利用される熱エネルギーを発生する複数の電気熱変換素子とを有する。そして、電気熱変換素子は発熱抵抗体及びこれに電力を供給するための電極によって構成され、この電気熱変換素子が、例えば窒化珪素などの絶縁性をもつ下部保護層により被覆されることで、インクと電気熱変換素子間での絶縁性が確保される。

液体吐出時における電気熱変換素子の発熱部は、高温に曝されるとともに、液体の発泡、収縮に伴うキャビテーション衝撃やインクによる化学的作用複合的に受けることになる。このため発熱部には、キャビテーションによる衝撃やインクによる化学的作用から発熱抵抗体を保護するため、上部保護層が設けられる。この上部保護層の表面は700℃付近まで昇温し、かつインクに接する為、耐熱性機械的特性化学的定性耐アルカリ性等に優れた膜特性が要求される。

また、インクに含まれる色材及び添加物などが高温加熱により分子レベルで分解され、「コゲ」と呼ばれる難溶解性物質に変化する現象が生じる。このコゲが上部保護層上に物理吸着すると、発熱抵抗体からインクへの熱伝導が不均一になり、吐出したインクの速度が低下する、発泡が不安定になる、吐出に必要なエネルギーが増加するといった問題が生じる。

そこで、特許文献1には、上部保護層の表面をイリジウムルテニウムなどの電気化学反応によって溶出可能な材料で構成することで、コゲを除去する技術が開示されている。

概要

印字品位に影響を与えることなく配線材料水素脆化を抑制できる、液体吐出ヘッド及びそのクリーニング方法を提供する。対向電極132への配線136を加熱する手段140を設け、クリーニング中もしくはクリーニング後に第二の電気熱変換部152をパルス駆動することにより、配線内の水素を追いだし、配線の水素脆化を抑制する。

目的

本発明は上記の事情に鑑み、印字品位に影響を与えることなく配線材料の水素脆化を抑制できる、液体吐出ヘッド及びそのクリーニング方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

液体吐出口と、前記液体吐出口に連通する液室と、前記液室に配置された第一の電気熱変換部と、前記第一の電気熱変換部と前記液室内液体との接触を遮断する絶縁性の保護層と、前記保護層の前記第一の電気熱変換部によって加熱される発熱部を少なくとも覆い、前記液体との電気化学反応によって溶出する金属を含む材料で構成された上部電極と、前記上部電極に前記液体を介して対向し、前記上部電極に対して前記電気化学反応を生起する電力を供給する対向電極と、前記対向電極に接続された対向電極配線と、を備えた液体吐出ヘッドであって、前記対向電極周辺の前記液室内に位置する前記対向電極配線を加熱する手段を有することを特徴とする液体吐出ヘッド。

請求項2

前記対向電極配線を加熱する手段は、前記保護層を介して前記対向電極の下方に配置された第二の電気熱変換部と、前記第二の電気熱変換部を駆動する回路と、を有する請求項1に記載の液体吐出ヘッド。

請求項3

前記対向電極配線は、TaまたはNbを含む材料で形成されている請求項1または2に記載の液体吐出ヘッド。

請求項4

液体吐出口と、前記液体吐出口に連通する液室と、前記液室に配置された第一の電気熱変換部と、前記第一の電気熱変換部と前記液室内の液体との接触を遮断する絶縁性の保護層と、前記保護層の前記第一の電気熱変換部によって加熱される発熱部を少なくとも覆い、前記液体との電気化学反応によって溶出する金属を含む材料で構成された上部電極と、前記上部電極に前記液体を介して対向し、前記上部電極に対して前記電気化学反応を生起する電力を供給する対向電極と、前記対向電極に接続された対向電極配線と、を備えた液体吐出ヘッドにおける、前記上部電極の上に堆積するコゲを前記上部電極の電気化学反応による溶出と同時に除去するクリーニング動作を含む液体吐出ヘッドのクリーニング方法であって、前記クリーニング動作中、または前記クリーニング動作後に前記対向電極周辺の前記液室内に位置する前記対向電極配線を加熱する工程を含むことを特徴とする液体吐出ヘッドのクリーニング方法。

請求項5

前記対向電極配線を加熱する工程は、前記液体吐出ヘッド内の前記保護層を介して前記対向電極の下方に配置された第二の電気熱変換部を、前記第二の電気熱変換部に接続された回路により駆動する工程を含む請求項4に記載の液体吐出ヘッドのクリーニング方法。

請求項6

前記第二の電気熱変換部に接続された回路は、前記第二の電気熱変換部に、パルス電圧印加するものである請求項5に記載の液体吐出ヘッドのクリーニング方法。

請求項7

前記第二の電気熱変換部に接続された回路は、前記液室内の液体が発泡する値未満の電力を与えるものである請求項5または6に記載の液体吐出ヘッドのクリーニング方法。

請求項8

前記第二の電気熱変換部に接続された回路は、前記液室内の液体が発泡する値以上の電力を与えるものである請求項5または6に記載の液体吐出ヘッドのクリーニング方法。

請求項9

前記対向電極配線を加熱する工程は、前記液室内の液体を排出した状態で行う請求項4または5に記載の液体吐出ヘッドのクリーニング方法。

請求項10

前記対向電極配線を加熱する工程は、前記液室内の液体を置換しながら行う請求項4乃至8のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドのクリーニング方法。

請求項11

前記対向電極配線は、TaまたはNbを含む材料で形成されている請求項4乃至10のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドのクリーニング方法。

請求項12

液体吐出口と、前記液体吐出口に連通する液室と、前記液室内に配置された第一の電気熱変換部と、前記第一の電気熱変換部と前記液室内の液体との接触を遮断する絶縁性の保護層と、前記保護層の前記第一の電気熱変換部によって加熱される発熱部を少なくとも覆い、前記液体との電気化学反応によって溶出する金属を含む材料で構成された上部電極と、前記上部電極に前記液体を介して対向し、前記上部電極に対して前記電気化学反応を生起する電力を供給する対向電極と、前記対向電極に接続された対向電極配線と、を備えた液体吐出ヘッドを用いて記録を行う記録装置であって、前記上部電極と対向電極との間に電圧を印加することにより、前記上部電極の上に堆積するコゲを、前記上部電極の溶出と共に除去する処理を行うクリーニング手段と、前記対向電極周辺の前記液室内に位置する前記対向電極配線を加熱する手段と、を有することを特徴とする記録装置。

請求項13

前記対向電極配線を加熱する手段は、前記液体吐出ヘッド内の前記保護層を介して前記対向電極の下方に配置された第二の電気熱変換部と、前記第二の電気熱変換部を駆動する回路と、を有することを特徴とする請求項12に記載の記録装置。

請求項14

前記第二の電気熱変換部を駆動する回路の一部が前記液体吐出ヘッドの内部に設けられており、前記回路の残部が前記液体吐出ヘッドの外部に設けられている請求項13に記載の記録装置。

請求項15

前記液室内の液体を、前記吐出口から吸引する手段を有する請求項12乃至14のいずれか1項に記載の記録装置。

技術分野

0001

本発明は、液体吐出方式によりインク吐出して記録媒体に記録を行うための液体吐出ヘッド及び該ヘッドクリーニング方法に関するものである。また、本発明は、該ヘッドを備える記録装置に関する。

背景技術

0002

液体吐出方式(インクジェット記録方式)は、液体吐出ヘッドに設けられた吐出口から液体(例えばインク)を吐出させ、これを紙などの被記録材に付着させて記録を行うものである。電気熱変換素子が発生する熱エネルギーにより生ずる液体の発泡を利用して液体を吐出する方式のインクジェット記録方式は、高画質及び高速記録が可能である。

0003

この種の液体吐出ヘッドの一般的な構成は、複数の吐出口と、この吐出口に連通する流路と、インクを吐出するために利用される熱エネルギーを発生する複数の電気熱変換素子とを有する。そして、電気熱変換素子は発熱抵抗体及びこれに電力を供給するための電極によって構成され、この電気熱変換素子が、例えば窒化珪素などの絶縁性をもつ下部保護層により被覆されることで、インクと電気熱変換素子間での絶縁性が確保される。

0004

液体吐出時における電気熱変換素子の発熱部は、高温に曝されるとともに、液体の発泡、収縮に伴うキャビテーション衝撃やインクによる化学的作用複合的に受けることになる。このため発熱部には、キャビテーションによる衝撃やインクによる化学的作用から発熱抵抗体を保護するため、上部保護層が設けられる。この上部保護層の表面は700℃付近まで昇温し、かつインクに接する為、耐熱性機械的特性化学的定性耐アルカリ性等に優れた膜特性が要求される。

0005

また、インクに含まれる色材及び添加物などが高温加熱により分子レベルで分解され、「コゲ」と呼ばれる難溶解性物質に変化する現象が生じる。このコゲが上部保護層上に物理吸着すると、発熱抵抗体からインクへの熱伝導が不均一になり、吐出したインクの速度が低下する、発泡が不安定になる、吐出に必要なエネルギーが増加するといった問題が生じる。

0006

そこで、特許文献1には、上部保護層の表面をイリジウムルテニウムなどの電気化学反応によって溶出可能な材料で構成することで、コゲを除去する技術が開示されている。

先行技術

0007

特開2008−105364号公報

発明が解決しようとする課題

0008

特許文献1に示されるコゲ除去のクリーニング方法は、電気化学反応を利用したものである。つまり、溶出可能な材料で形成された上部保護層をアノード電極とし、液体を介して導通可能な位置に配置された対向電極カソード電極として、両電極間電圧印加することにより、液体中へ該材料を溶出させると同時にコゲを除去している。

0009

このとき、対向電極においては、液体中の水素イオン還元され水素原子となり、二つの水素原子が再結合することにより、水素ガスが発生する。ここで、水素原子が、スムースに再結合し系外へ排出されれば問題はない。しかしながら、水素の発生スピードが速くなったり、発生時間が長くなったりしてこの排出過程律速する。このような場合、対向電極や、対向電極に電気的に接続された配線を形成する材料内へ水素原子が吸収され、これら材料の中で再結合し、水素脆化と呼ばれる材料劣化を引き起こし易くなる。水素脆化の問題は排出過程の律速に拘わらず、クリーニング回数の増加によっても起こり得る。コゲ除去を何回か繰り返すうちに材料の劣化部分割れるなどして断線し、クリーニング動作ができなくなり、アノード電極が残存しているにも拘わらず、ヘッド寿命となる。したがって、予定していたヘッド寿命よりも早期にヘッド寿命がきてしまうことになる。

0010

特に商業印刷の分野においては、印字品質を向上するためにクリーニング頻度が増加する傾向にある。このため、クリーニングによる装置の停止時間を極力抑えるために高い電圧でのクリーニングが行われていることがある。それに伴い水素の発生スピードが速くなったり、発生時間が長くなったりして、水素発生量が増加することから対向電極配線の断線が顕在化し易くなり、その対策が求められるようになった。

0011

上記の水素脆化の対策として、一般的には、数百℃、数時間にわたる熱処理が行われる。しかしながら、インクジェットヘッドにおいてこのような熱処理を行うと、インクの変質液室内におけるインクの固着を引き起こし、正常な印字阻害される懸念がある。

0012

そこで、本発明は上記の事情に鑑み、印字品位に影響を与えることなく配線材料の水素脆化を抑制できる、液体吐出ヘッド及びそのクリーニング方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0013

上記課題を解決するために、本発明の一形態に係る液体吐出ヘッドは、
液体吐出口と、前記液体吐出口に連通する液室と、前記液室に配置された第一の電気熱変換部と、前記第一の電気熱変換部と前記液室内の液体との接触を遮断する絶縁性の保護層と、前記保護層の前記第一の電気熱変換部によって加熱される発熱部を少なくとも覆い、前記液体との電気化学反応によって溶出する金属を含む材料で構成された上部電極と、前記上部電極に前記液体を介して対向し、前記上部電極に対して前記電気化学反応を生起する電力を供給する対向電極と、前記対向電極に接続された対向電極配線と、を備えた液体吐出ヘッドであって、
前記対向電極周辺の前記液室内に位置する前記対向電極配線を加熱する手段を有することを特徴とする。

0014

また、本発明の一形態に係る液体吐出ヘッドのクリーニング方法は、
液体吐出口と、前記液体吐出口に連通する液室と、前記液室に配置された第一の電気熱変換部と、前記第一の電気熱変換部と前記液室内の液体との接触を遮断する絶縁性の保護層と、前記保護層の前記第一の電気熱変換部によって加熱される発熱部を少なくとも覆い、前記液体との電気化学反応によって溶出する金属を含む材料で構成された上部電極と、前記上部電極に前記液体を介して対向し、前記上部電極に対して前記電気化学反応を生起する電力を供給する対向電極と、前記対向電極に接続された対向電極配線と、を備えた液体吐出ヘッドにおける、前記上部電極の上に堆積するコゲを前記上部電極の電気化学反応による溶出と同時に除去するクリーニング動作を含む液体吐出ヘッドのクリーニング方法であって、
前記クリーニング動作中、または前記クリーニング動作後に前記対向電極周辺の前記液室内に位置する前記対向電極配線を加熱する工程を含むことを特徴とする。

0015

さらに、本発明の一形態に係る記録装置は、
液体吐出口と、前記液体吐出口に連通する液室と、前記液室内に配置された第一の電気熱変換部と、前記第一の電気熱変換部と前記液室内の液体との接触を遮断する絶縁性の保護層と、前記保護層の前記第一の電気熱変換部によって加熱される発熱部を少なくとも覆い、前記液体との電気化学反応によって溶出する金属を含む材料で構成された上部電極と、前記上部電極に前記液体を介して対向し、前記上部電極に対して前記電気化学反応を生起する電力を供給する対向電極と、前記対向電極に接続された対向電極配線と、を備えた液体吐出ヘッドを用いて記録を行う記録装置であって、
前記上部電極と対向電極との間に電圧を印加することにより、前記上部電極の上に堆積するコゲを、前記上部電極の溶出と共に除去する処理を行うクリーニング手段と、
前記対向電極周辺の前記液室内に位置する前記対向電極配線を加熱する手段と、
を有することを特徴とする。

発明の効果

0016

本発明によれば、対向電極周辺でクリーニング動作中に水素発生の影響を受ける配線材料を加熱することで、断線の原因となる水素脆化を抑制することができる。

0017

この結果、予定ヘッド寿命までクリーニング動作を確実に行うことができ、液体吐出ヘッドの吐出特性を安定させ、信頼性のある高品位画像記録を行うことが可能となる。

図面の簡単な説明

0018

本発明に係る液体吐出ヘッドの特徴を説明する概念図である。
本発明の一実施形態に係る液体吐出ヘッドの配線レイアウトを例示する上面図である。
図2のA−A’線での断面図である。
本発明の一実施形態例に係る液体吐出ヘッドの模式的な斜視図である。
本発明の一実施形態に係る液体吐出ヘッドを構成要素に含む記録装置の構成例を示す斜視図である。
本発明の一実施形態に係る液体吐出ヘッドを構成要素に含むヘッドユニットの構成例を示す斜視図である。
図5に示す記録装置の制御系の構成例を示すブロック図である。
本発明の第一の実施形態で実施されるクリーニング動作手順の一例を示すフローチャートである。
本発明の第二の実施形態で実施されるクリーニング動作手順の一例を示すフローチャートである。
本発明の第三の実施形態で実施されるクリーニング動作手順の一例を示すフローチャートである。

0019

本発明の特徴は、対向電極周辺の液室内に位置する対向電極配線を加熱することで、クリーニング時に発生する水素による対向電極配線の劣化を抑制することである。対向電極配線の液室内に位置する部分は、対向電極周辺で液室内の液体と接触する部分である。また、対向電極周辺とは、対向電極で発生した水素に曝される領域を示す。

0020

以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
(1.本発明の液体吐出ヘッドの説明)
図1は、本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドにおけるクリーニング手段130及び加熱手段140を模式的に示す図である。

0021

本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドは、半導体素子(不図示)の形成された液体吐出ヘッド用基板100と、液体吐出口121と、液体吐出口121に連通する液室117を規定する流路形成部材120とを備えている。基板100には、液体吐出口121に対応する熱作用部108が設けられ、液室117内の液体(インク)に吐出エネルギーとなる熱を付加する。発熱部108は基板100に液室117内の液体との接触を遮断する絶縁性の保護層(不図示)で保護された第一の電気熱変換部151によって加熱される部分である。第一の電気熱変換部151の上方には密着配線層116とその上に上部電極131が設けられている。本実施形態に係るクリーニング手段130は、熱作用部108となる上部電極131表面に所定回数の液体吐出を行って形成されるコゲを除去するため、上部電極131と対になる電極として、対向電極132が設けられている。上部電極131は、インクの発泡に伴う化学的、物理的衝撃から第一の電気熱変換部151を守る保護層としての機能と、クリーニング処理に際してコゲを除去する役割を持つ。

0022

また、上部電極131と対向電極132とは電源133,スイッチ134を経由する配線経路135により電気的に接続されており、液室117内の液体を介して電気的な閉回路を形成し得る。この閉回路を構成する構成要素をまとめてクリーニング手段130と呼ぶ。記録(印刷)動作中は、熱作用部108において所定回数の熱エネルギーを付与するが、その間はこの閉回路はスイッチ134が開放されているか、電源133からの電力供給を停止している。熱作用部108となる上部電極131の表面にコゲがある程度溜まった後に、クリーニング動作(コゲ除去)を行う。コゲ除去は、この回路を閉じることで、上部電極131とインクとの界面で電気化学反応を生起する。この電気化学反応により、上部電極131の表面をインク中に溶出させることで、上部電極131の表面に付着したコゲを除去する。液体吐出ヘッド内には、上部電極131、対向電極132及び配線経路135の一部を構成する配線層が含まれ、液体吐出ヘッドの外部にスイッチ134、電源133が含まれる。スイッチ134は、場合よっては液体吐出ヘッドの内部に含まれることがある。液体吐出ヘッド内に含まれるクリーニング手段を内部クリーニング手段、液体吐出ヘッド外のクリーニング手段を外部クリーニング手段と呼ぶことがある。

0023

本実施形態では、液体吐出ヘッド用基板100には、対向電極132及び対向電極132直下の密着配線層136の下方に、第二の電気熱変換部152が設けられる。

0024

この第二の電気熱変換部152には、電圧を印加する電源143、スイッチ144を経由する配線経路145により電気的に接続されている。第二の電気熱変換部152及び第二の電気熱変換部152を駆動する回路を構成する構成要素をまとめて対向電極配線を加熱する手段(加熱手段140)と呼ぶ。液体吐出ヘッド内には、配線経路145の一部が含まれ、外部回路として、電源143、スイッチ144が含まれる。スイッチ144は、場合よっては液体吐出ヘッドの内部に含まれることがある。第二の電気熱変換部152を駆動する回路は、第一の電気熱変換部151を駆動する回路と同様の回路構成とすることができ、第一の電気熱変換部151を駆動する回路の一部が第二の電気熱変換部152を駆動する回路の一部を兼ねていてもよい。第一の電気熱変換部151を駆動する回路は、従来公知の回路構成であり、液体吐出ヘッド用基板100に設けられた不図示の半導体素子や、後述する記録装置内に設けた電源回路などを含んで構成される。したがって、第二の電気熱変換部を駆動する回路の一部が液体吐出ヘッドの内部に設けられており、該回路の残部が液体吐出ヘッドの外部に設けられていてもよい。

0025

本発明の一実施形態に係る液体吐出ヘッドの配線レイアウトを例示する上面図を図2に、図2におけるA−A’線での断面図を図3に、それぞれ示す。液体吐出ヘッド用基板100には、図3に示すように、シリコンなどの基板101上にSiO2,SiNなどの絶縁材料からなる蓄熱層102介して、発熱抵抗体層103が設けられている。発熱抵抗体層103は、TaSiN等の公知の材料で構成される。発熱抵抗体層103上にはAl,Al−Si,Al−Cu等の金属材料からなる配線としての配線層104が設けられる。配線層104の一部を除去したギャップ間露出した発熱抵抗体層103部分が第一の電気熱変換部151及び第二の電気熱変換部152となる。配線層104上にはSiO2,SiNなどの絶縁材料からなり、第一及び第二の電気熱変換部と液室内の液体の接触を遮断する絶縁性の保護層105が設けられ、保護層105上に密着配線層116が設けられる。保護層105を含む第一の電気熱変換部151の周辺を発熱部と称することがある。密着配線層116の一部は、保護層105に設けたスルーホール110を介して、第一及び第二の電気熱変換部151、152とは電気的に分離された配線層104に接続される(図示せず)。一方、保護層105上には、密着配線層136を介して、対向電極132が設けられている。密着配線層136は、保護層105に設けたスルーホール111を介して、第一及び第二の電気熱変換部151、152とは電気的に分離された配線層104に接続される(図示せず)。上部電極131及び対向電極132と電気的に接続された配線層104は、図1に示す配線経路135の一部となる。配線層104は、基板端部に設けた端子部(不図示)を介して、後述する記録装置内に設けた外部回路に接続される。本実施形態では、電気的に分離された配線が複数存在する。例えば、一方は保護層下に設けた発熱抵抗体層103と配線層104の積層からなる配線のうち、配線層104にギャップを設けて第一の電気熱変換部151となる配線である。また、他方は配線層104にギャップを設けて第二の電気熱変換部152となる配線であり且つ配線経路145の一部となる配線と、配線経路135の一部となる配線である。

0026

密着配線層116及び136は、上部電極131、対向電極132と保護層105との密着性を向上させる層であり、また、導電性材料を用いることで、配線経路135の一部ともなる。また、第一の電気熱変換部151で発生した熱を液体と接する熱作用部108に熱損失なく伝達する良好な熱伝導性を示す材料であることが好ましい。密着配線層116及び136は、これらの特性を満たす限りはいずれの材料も用いることができるが、部分的に液室内の液体と接触する場合には、耐液性を有する材料であることが好ましい。また密着配線層116は、クリーニング時に上部電極131の電気化学反応による溶出を行う電圧で、上部電極131よりも溶出しにくい材料であり、表面に不働態膜を形成するタンタル(Ta)やニオブ(Nb)などバルブメタルが好ましく使用できる。密着配線層136も同様のバルブメタルを好ましく使用できる。同じ材料を使用することで、密着配線層116及び136を同時に形成することができる。本発明においては、密着配線層136が対向電極配線となる。また、密着配線層116を上部電極配線ということがある。特に、対向電極配線となる密着配線層136がTaまたはNbを含む材料で形成されていると、不働態膜である酸化皮膜が水素により還元されて配線保護機能が低下し、水素脆化を受けやすくなる。このため、これら材料を使用する対向電極配線では、本発明に係る対向電極配線加熱手段140での加熱処理がより有効である。

0027

上部電極131は、電気化学反応によって液体中に溶出してコゲ除去するという本来的な機能のほかに、第一の電気熱変換部151を物理的・化学的衝撃からの保護する上部保護層としての機能を有する。また、第一の電気熱変換部151で発生した熱を液体に伝達する熱作用部108として良好な熱伝導性を示すことが要求される。電気化学反応による金属の溶出の有無は、一般に種々の金属の電位−pH図を見れば把握することが可能である。上部電極131の材料としては、好ましい溶出領域をもち、かつ700℃程度の加熱により強固な酸化膜を形成しない材料が好ましく使用できる。このような材料として、IrまたはRuの単体、あるいはIrと他の金属との合金もしくはRuと他の金属との合金を選定することが好ましい。特に、コゲ除去としての機能は、IrまたはRuの含有率が多いほど電気化学反応が効率良く進行するので、それぞれの金属単体の場合が最も好ましいものである。しかしながら、Ir合金もしくはRu合金の場合であっても、本発明の効果を得ることができるものである。このように、少なくとも、IrまたはRuを含む材料であれば本発明の効果を得られるものである。

0028

対向電極132は、上部電極131と同様に液室内の液体に接することから、液体に接しても電気的に安定な材料であれば、いずれの材料も使用できる。例えば、上部電極131と同じ金属材料を用いることができる。上部電極131と同じ金属材料を用いると、上部電極131と同時に、対向電極132を形成することができる。

0029

図4は、本発明の一実施形態例になる液体吐出ヘッド1の部分破断斜視図を示す。この液体吐出ヘッド1は、所定のピッチで熱作用部108(上部電極131)が形成された素子列を、基板100を貫通する液体供給路107を挟んで2列並列させてなる液体吐出ヘッド用基板100を有している。この液体吐出ヘッド1は、図2に示すような配線レイアウトを採用することができる。本発明の液体吐出ヘッドは、図4に示す例に限定されず、多色に対応したヘッド、例えば、各色に対応した吐出口列を並列に配置したものや、各色に対応した吐出口列を直列に配置したものであってもよい。

0030

(2.クリーニング動作(コゲ除去動作)の説明)
本発明のコゲ除去動作は、上部電極131をアノード電極、対向電極132をカソード電極とし、電解液である液体(インク)との電気化学反応を利用する。アノード電極である上部電極131を溶出させることで、堆積したコゲを上部電極131の溶出と共に除去することができる。なお、コゲ除去動作時に、特許文献1に開示されているように、上部電極131と対向電極132の極性反転させると、コゲ除去動作時に電極表面に吸着ないしは引き寄せられた液体中の成分を液体中に再放出することが可能となる。極性を反転させると上部電極131上で水素が発生し、その周辺の上部電極配線(密着配線層116)が水素に曝されるが、第一の電気熱変換部151を駆動する液体吐出の際に加熱されるため、上部電極配線の水素脆化の影響は殆どない。もちろん、クリーニング動作中に第一の電気熱変換部151を駆動して、上部電極配線から積極的に水素を追い出す様にしてもよい。

0031

(3.記録装置の説明)
図5は本実施形態に係る記録装置500の概略構成例を示すものである。
図示の記録装置500において、キャリッジ505は無端ベルト501に固定され、かつガイドシャフト502に沿って移動可能になっている。無端ベルト501はプーリ503A,503Bに巻回され、一方のプーリ503Aにはキャリッジ駆動モータ504の駆動軸が連結されている。従って、キャリッジ505は、モータ504の回転駆動に伴いガイドシャフト502に沿って往復方向(A方向)に主走査される。

0032

キャリッジ505上には、カートリッジ形態のヘッドユニット410が搭載されている。ここで、ヘッドユニット410は、液体吐出ヘッド1の吐出口121が記録媒体としての用紙Pと対向し、かつ吐出口121の配列方向が主走査方向(A方向)と異なる方向(例えば用紙Pの搬送方向である副走査方向(B方向))に一致するようにキャリッジ505に搭載される。なお、ヘッドユニット410は、例えば、図6に示す構成例を有することができる。図6中、402は液体吐出ヘッド1に電力を供給するための端子を有するTAB(Tape Automated Bonding)用のテープ部材である。このテープ部材402は、記録装置本体から接点403を介して電力や各種信号をやり取りすることができる。404は液体(インク)を液体吐出ヘッド1に供給するためのタンクである。すなわち、図6のヘッドユニット410は、図5の記録装置500に装着可能なカートリッジの形態を有するものである。また、ヘッドユニット410は、液体吐出ヘッド1とタンク404とが別体となったタンク分離型であってもよい。また、液体吐出ヘッド1が複数色に対応したものであってもよい。タンク404は、キャリッジ505以外に配置し、チューブ等によりキャリッジ505に搭載の液体吐出ヘッド1に供給してもよい。液体吐出ヘッド1及びタンク404の組は、使用するインク色に対応した個数を設けることができ、図5に図示の例では4色(例えばブラックイエローマゼンタシアン)に対応して4組設けられている。

0033

また、図5の記録装置500には、キャリッジ505の主走査方向上の移動位置を検出するなどの目的でリニアエンコーダ506が設けられている。リニアエンコーダ506の一方の構成要素としてはキャリッジ505の移動方向に沿って設けられたリニアスケール507があり、このリニアスケール507には所定密度で、等間隔にスリットが形成されている。一方、キャリッジ505には、リニアエンコーダ506の他方の構成要素として、例えば、発光部及び受光センサを有するスリットの検出系508及び信号処理回路が設けられている。従って、リニアエンコーダ506からは、キャリッジ505の移動に伴って、インク吐出タイミングを規定するための吐出タイミング信号及びキャリッジの位置情報が出力される。

0034

記録媒体としての記録紙Pは、キャリッジ505のスキャン方向と直交する矢印B方向に間欠的に搬送される。記録紙Pは搬送方向上流側の一対のローラユニット509及び510と、下流側一対のローラユニット511及び512とにより支持され、一定の張力を付与されて液体吐出ヘッド1に対する平坦性を確保した状態で搬送される。各ローラユニットに対する駆動力は、ここでは図示しない搬送モータから伝達される。

0035

以上のような構成によって、キャリッジ505の移動に伴い液体吐出ヘッド1の吐出口121の配列幅に対応した幅の記録と用紙Pの搬送とを交互に繰り返しながら、用紙P全体に対する記録が行われる。

0036

なお、キャリッジ505は、記録開始時または記録中に必要に応じてホームポジションで停止する。このホームポジションには、各液体吐出ヘッド1の吐出口121が設けられた面(吐出口面)をキャッピングするキャップ部材513が設けられている。このキャップ部材513には、キャップ内に負圧を発生させ、吐出口121からインクを吸引して強制的に液室内の液体を排出させる機構(不図示)が接続されている。このような液体を吸引、排出させる機構は、一般に、吸引回復機構と呼ばれ、これによって行われる液体排出動作吸引回復動作と呼ばれている。この吸引回復動作によって、吐出口121の目詰まり等が防止される。

0037

図7は上記構成の記録装置500における制御系の構成例を示すブロック図である。
図7において、1700はインタフェースであり、コンピュータデジタルカメラスキャナ等適宜の形態を有するホスト装置1000から送られてくるコマンドや画像データを含む記録信号を受信する。また、ホスト装置1000に対しては必要に応じ記録装置のステータス情報送出する。制御部90内には、MPU1701、ROM1702、DRAM1703、ゲートアレイ(G.A.)1704、エネルギーテーブル1725、EEPROM等の不揮発性メモリ1726が含まれる。MPU1701は、ROM1702に記憶された図8について後述するクリーニング処理及びエネルギー設定処理手順に対応した制御プログラム所要のデータに従って記録装置500内の各部を制御する。ROM1702に記憶されるデータとしては、例えば以下のものが挙げられる。
・第一の電気熱変換部151に印加する駆動パルスの形状や印加時間などの液体吐出ヘッド1の定常的な駆動条件
・上部電極131と対向電極132との間に印加する電圧
・加熱手段140において第二の電気熱変換部152に印加する電圧や駆動パルスの形状や印加時間など。
また、記録媒体搬送の条件、さらにはキャリッジ速度等も含めることができる。

0038

DRAM1703は各種データ(上記記録信号やヘッドに供給される記録データ等)を保存しておく。また、DRAM1703には後述する制御の過程で使用されるフラグ用の領域等を設けておくことができる。ゲートアレイ1704は、液体吐出ヘッド1に対する記録データの供給制御を行い、インタフェース1700、MPU1701及びDRAM1703間のデータ転送制御も行う。エネルギーテーブル1725は、インク吐出に必要なエネルギーを決定するデータ、例えば吐出信号パルス幅を格納する。不揮発性メモリ1726には所要のデータを記録装置の電源オフ時にも保存しておく。また、エネルギーテーブル1725には、第二の電気熱変換部152に印加するエネルギーを決定するデータを格納することができる。

0039

504は図5に示すキャリッジ駆動モータ504である。1709は搬送モータであり、記録紙Pを搬送するための駆動源として用いられる。1711は回復系モータであり、図5に示すキャップ部材513のキャッピング動作や、吸引回復を行うポンプ等の吸引回復手段の動作における駆動源として用いられる。1706、1707、1708は、それぞれ、キャリッジ駆動モータ504、搬送モータ1709及び回復系モータ1711を駆動するためのモータドライバである。1705は液体吐出ヘッド1の駆動や、クリーニング動作及び吐出エネルギー設定動作を行うためのヘッドドライバである。図7では加熱手段140を示しているが、加熱手段140はヘッドドライバ1705に組み込むことができる。

0040

(4.クリーニングシーケンスの説明)
図8は本発明の液体吐出ヘッド1を用いる記録装置500が実施可能なクリーニング処理手順の一例を示す。

0041

ホスト装置1000等から記録指示が行われると本手順が開始され、まずホスト装置1000から記録に係る画像データを受信し、これを記録装置に適合するデータとして展開する(ステップS1)。そして当該展開した記録データに基づき、記録用紙Pの搬送とキャリッジ505の主走査とを交互に行いながら、液体吐出ヘッド1による記録動作を実行する(ステップS2)。また、この際、記録ドット数(第一の電気熱変換部151の駆動パルス数)のカウントを実施する。

0042

そして1単位(例えば記録用紙1枚分)の記録動作が終了すると、不揮発性メモリ1726に格納されているドットカウント値累積データ読み出し(ステップS3)、これに今回カウントしたドット数加算する(ステップS4)。次に、当該加算値が所定の値Th(例えば1×107)以上となった(Yes)か否(No)かを判定する(ステップS5)。
ここで肯定判定(Yes)であれば、クリーニング動作を開始する。

0043

以下、本発明における第一の実施形態について、図8を用いて説明する。第一の実施形態はクリーニング動作中に対向電極周辺の液室内に位置する対向電極配線を加熱する工程を含む。
図1に示す加熱手段140において、第二の電気熱変換部152(対向電極配線用ヒータともいう)の駆動を開始する(ステップS11)。図1に示すクリーニング手段130において、上部電極131がアノード側、対向電極132がカソード側となるように電圧を印加し、クリーニング動作を実施する(ステップS12)。クリーニング完了後(ステップS13)、対向電極配線用ヒータの駆動を停止する(ステップS14)。

0044

対向電極配線用ヒータは、常時数百℃を維持するよりも、パルス電圧で駆動するほうがインクの変質を引き起こさないため好ましい。また、対向電極配線下のヒータにより、インクが発泡するエネルギーの閾値をEthとし、そのときの熱貫流率k値を1とする。本発明では、対向電極配線用ヒータの駆動条件は、k値が1以上(液体が発泡する値以上)であっても、1未満(液体が発泡する値未満)であっても、構わない。

0045

クリーニング動作では、熱作用部108上のコゲが上部電極131の表面の電気化学反応による溶出とともに除去される。係るクリーニング動作を行った後には、吐出口121付近には溶出した上部電極131の形成材料剥離したコゲとを含む液体(インク)が滞留している。記録品位に影響を及ぼすものでなければ、このインクをそのまま次回の記録動作に用いることで吐出口121から吐出させてしまうこともできる。しかし本実施形態では、吸引回復等を実施することで(ステップS15)、そのインクを積極的に排出するようにする。

0046

クリーニング動作では、熱作用部108上のコゲが上部電極131の表面の電気化学反応による溶出とともに除去される。クリーニング動作に伴って、上部電極131の表面が溶出するため、熱作用部108における上部電極131の膜厚が減少する。このため、高い記録品位を保つためには、発泡に必要なパルス幅の閾値であるPthを再度測定し、これを記憶更新する(ステップS41、S42)。その後、不揮発性メモリ1726に格納されているドットカウント値の累積データをクリアリセット)し(ステップS43)、一連記録処理を終了する。

0047

一方、ステップS5にて否定判定(No)された場合には、上記加算値をもって不揮発性メモリ1726に格納されているドットカウント値の累積データを更新し(ステップS44)、記録処理を終了する。

0048

なお、以上の手順では記録動作後にコゲ除去処理ないし回復処理を実施するものとしたが、記録動作に先立って行うようにしてもよい。この場合には、ステップS1で展開した記録データに基づいてドットカウントを行い、これをドットカウントの累積値に加算し、その加算値に基づいてコゲ除去処理の実施の有無を判定するようにすることができる。また、所定量の記録動作毎(例えば液体吐出ヘッドの1または数スキャン毎)にコゲ除去処理が実施されるようにすることも可能である。

0049

また、コゲ除去処理後に液体を排出させるための処理としては、上述したような吸引回復に限られない。吐出口に至るインク供給系加圧することで排出を行わせるものでもよい。また、記録動作とは別に第一の電気熱変換部151を駆動してインクを吐出させる処理(予備吐出処理)により排出を行うものでもよい。この場合には、予備吐出のための駆動パルスも上記カウントに反映させることができる。

0050

このように、本実施形態のクリーニング方法では、クリーニング動作を行っている間は、対向電極配線用ヒータが駆動されているため、対向電極にて発生した水素の対向電極配線内への吸蔵は抑制される。そのため、クリーニングを繰り返し行っても、対向電極配線の割れが発生することなく、長期間にわたり安定性に優れたクリーニング処理を実施することが可能となる。

0051

次に、本発明における第二の実施形態について、図9を用いて説明する。第二の実施形態はクリーニング動作後に対向電極周辺の液室内に位置する対向電極配線を加熱する工程を含む。
ドットカウントの加算値を判定するステップS5までは、第一の実施形態と同じであり、ここで肯定判定(Yes)であれば、クリーニング動作を開始する。(ステップS21)。その後、所定の時間経過後、クリーニング動作を停止し(ステップS22)、吸引回復を行う(ステップS23)。その後、液室内のインクを排出する(ステップS24)。液体を排出させるための処理としては、吸引回復であっても、吐出口に至るインク供給系を加圧することで排出を行わせるものでもよい。液室内のインクを十分排出した後、対向電極配線用ヒータを駆動して加熱を開始する(ステップS25)。このとき、液室内のインクは排出されているため、インクの変質を考慮することなく、駆動条件を設定して構わないので、直流であってもパルスであってもよい。

0052

その後、ヒータ駆動を停止して加熱を停止し(ステップS26)、インクを充填する(ステップS27)。以降の工程は、第一の実施形態と同様である。
このように、本実施形態のクリーニング方法では、クリーニング動作中に対向電極配線が吸蔵した水素を、インク排出後に対向電極配線用ヒータを駆動することにより追いだすことができる。液室内にインクがないため、より効果的な駆動条件を設定することができる。

0053

続いて、本発明における第三の実施形態について、図10を用いて説明する。第三の実施形態はクリーニング動作中に対向電極周辺の液室内に位置する対向電極配線を加熱する工程を含む。また、当該加熱工程は液室内の液体を置換しながら行う。
ドットカウントの加算値を判定するステップS5までは、第一の実施形態と同じであり、ここで肯定判定(Yes)であれば、吸引回復を開始する(ステップS31)。その後、対向電極配線用ヒータ駆動を開始し(ステップS32)、クリーニング動作を開始する(ステップS33)。所定の時間経過後、クリーニング動作を停止し(ステップS34)、対向電極配線用ヒータ駆動を停止(ステップS35)、吸引回復動作を停止する(ステップS36)。以降の工程は、第一の実施形態と同様である。

0054

このように、本実施形態のクリーニング方法では、対向電極配線ヒータ駆動を吸引回復中(液体を置換させる置換動作中)に行うため、変質したインクは廃棄される。そのため、印字への影響を気にすることなく、対向電極配線用ヒータを駆動することができ、より効果的に対向電極配線内の水素を追いだすことができる。

0055

以下、実施例を挙げて本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものでは無い。

0056

(実施例1)
<液体吐出ヘッドの製造>
本実施例の液体吐出ヘッドとして、特許文献1に開示の方法と同様にして図2(又は図3)となるように、Siで形成された基板101上にSiO2蓄熱層、TaSiN発熱抵抗体層103、Al配線層104、SiN保護層105を順次形成した。なお、第一及び第二の電気熱変換部151,152はAl配線層104の一部をエッチング除去して形成した。その後、保護層105上に、密着配線層116、136としてタンタルを100nm形成した後、イリジウム膜を50nm成膜した。イリジウム膜をパターニングし、上部電極131、対向電極132をそれぞれ形成した。その後は、特許文献1と同様に、インク供給路107の形成、流路形成部材120の形成、その他必要な端子部の形成等を経て液体吐出ヘッドを完成した。なお、本実施例では、図6に示したようなインクタンク一体型のヘッドユニットではなく、インクタンク分離型とした。

0057

<コゲ除去実験
第一の実施形態について、図8のクリーニング動作手順に従って、上記の液体吐出ヘッドを用いたコゲ除去実験を実施した。
インクは染料マゼンダインクを用いた。実験方法は、まず、新規のインクタンクを液体吐出ヘッドにセットし、熱作用部108上にコゲが堆積するように所定条件で第一の電気熱変換部151を駆動してコゲ付けをした。表面状態を観察すると、熱作用部108には、ほぼ均一にコゲKと呼ばれる不純物が堆積していた。この状態の液体吐出ヘッドを用いた記録を行うと、コゲKの堆積により記録品位が低下していることが確認された。対向電極用ヒータ(第二の電気熱変換部152)の駆動条件を、インクが発泡するエネルギー閾値をk値1.0とした場合、k値0.8となるように設定し、パルス電圧を印加し、クリーニングを行った。クリーニング終了後、パルス電圧を停止し、吸引回復後、印字品位を確認した。

0058

この一連の流れ、「新規インクタンクセット、コゲ付け駆動、対向電極配線ヒータ駆動、クリーニング動作、印字品位確認」、を1シーケンスとし、このシーケンスを5サイクル行った。なお、コゲ取り条件は、10V40秒とした。
それぞれのサイクルにおいてシーケンス終了後の熱作用部108の表面状態を観察すると、それまで堆積していたコゲKが除去されていることが確認され、対向電極配線割れも発生していなかった。インクタンク交換後に記録を行うと、記録品位は初期とほぼ同等に回復していた。

0059

(実施例2)
実施例1における、対向電極ヒータ駆動条件を、k値1.2となるように設定した以外は、実施例1と同じ実験を行った。5サイクルのシーケンス終了後、表面状態を観察すると、コゲKが除去できていること、対向電極配線割れも起きてないことを確認した。

0060

(比較例1)
対向電極配線用ヒータの駆動を行わなかった以外は、実施例1と同じ条件で、コゲ除去実験を行った。5サイクルのシーケンス終了後、コゲKの除去残りと、対向電極配線割れが観察された。

0061

(実施例3)
本発明の第二の実施形態ついて、図9のクリーニング動作手順に従って、実施例1で作製した液体吐出ヘッドを用いたコゲ除去実験を実施した。
インクは染料マゼンダインクを用いた。実験方法は、まず、新規のインクタンクを液体吐出ヘッドにセットし、熱作用部108上にコゲが堆積するように所定条件で電気熱変換部151を駆動してコゲ付けをした。表面状態を観察すると、熱作用部108には、ほぼ均一にコゲKと呼ばれる不純物が堆積していた。この状態の液体吐出ヘッドを用いた記録を行うと、コゲKの堆積により記録品位が低下していることが確認された。その後、10V40秒のクリーニングを行った。吐出口からの吸引により、液室内のインクを排出した(S24)。その後、対向電極用ヒータに、温度が200℃となるように直流電圧を印加した。

0062

この一連の流れ、「新規インクタンクセット、コゲ付け駆動、クリーニング動作、対向電極配線ヒータ駆動、印字品位確認」、を1シーケンスとし、このシーケンスを5サイクル行った。
それぞれのサイクルにおいてシーケンス終了後の熱作用部108の表面状態を観察すると、それまで堆積していたコゲKが除去されていることが確認され、対向電極配線割れも発生していなかった。インクタンク交換後に記録を行うと、記録品位は初期とほぼ同等に回復していた。

0063

(実施例4)
本発明の第三の実施形態ついて、図10のクリーニング動作手順に従って、実施例1で作製した液体吐出ヘッドを用いたコゲ除去実験を実施した。
インクは染料マゼンダインクを用いた。実験方法は、まず、新規のインクタンクを液体吐出ヘッドにセットし、熱作用部108上にコゲが堆積するように所定条件で電気熱変換部151を駆動してコゲ付けをした。表面状態を観察すると、熱作用部108には、ほぼ均一にコゲKと呼ばれる不純物が堆積していた。この状態の液体吐出ヘッドを用いた記録を行うと、コゲKの堆積により記録品位が低下していることが確認された。その後、インクタンクのセット、吸引回復、対向用ヒータ駆動、クリーニング動作を行った。
対向電極用ヒータ駆動条件は、k値1.3のパルス電圧とした。クリーニング終了後、パルス電圧を停止し、吸引回復停止後、印字品位を確認した。

実施例

0064

この一連の流れ、「新規インクタンクセット、コゲ付け駆動、吸引動作、対向電極配線ヒータ駆動、クリーニング動作、印字品位確認」、を1シーケンスとし、このシーケンスを5サイクル行った。なお、コゲ取り条件は、10V40秒とした。
それぞれのサイクルにおいてシーケンス終了後の熱作用部108の表面状態を観察すると、それまで堆積していたコゲKが除去されていることが確認され、対向電極配線割れも発生していなかった。インクタンク交換後に記録を行うと、記録品位は初期とほぼ同等に回復していた。

0065

以上の実施例では、通常、10Vで10〜30秒のコゲ取り条件を、40秒に時間を延ばした条件で実施した例を示した。本発明によると、電圧を高めて水素の発生スピードが速いクリーニング条件や、通常の電圧でクリーニング回数が増加する場合においても水素脆化が発生するが、このような場合であっても対向電極配線の割れを防ぐことが可能となる。これらの対策では、記録装置の停止時間を短縮することができる。本発明においては、このような水素脆化による対向電極配線の割れを防ぎ、クリーニング動作を所定の回数まで確実に行うことができる。また、十分なコゲ除去により液体吐出ヘッドの吐出特性を安定させ、信頼性のある高品位の画像記録を行うことが可能となる。したがって、本発明の産業上の利用可能性は極めて高い。

0066

以上の説明では、液体として吐出用の液体(インク)を用いる場合を説明したが、本発明はこれに限定されず、液体吐出ヘッドのリサイクル時の洗浄液などについても、対向電極付近でクリーニング(コゲ取り)時に水素発生を伴う場合に適用することができる。

0067

1液体吐出ヘッド
100液体吐出ヘッド用基板
101Si基板
102蓄熱層
103発熱抵抗体層
104配線層
105 保護層
107液体供給路
108熱作用部
116密着配線層
117液室
120流路形成部材
121液体吐出口
130クリーニング手段
131 上部電極
132対向電極
133電源
134 スイッチ
135配線経路
136 密着配線層(対向電極配線)
140 加熱手段
143 電源
144 スイッチ
145 配線経路
151 第一の電気熱変換部
152 第二の電気熱変換部

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