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技術 信号処理装置

出願人 日本電信電話株式会社
発明者 上野雅浩豊田誠治坂本尊佐々木雄三小林潤也阪本匡
出願日 2015年4月22日 (5年7ヶ月経過) 出願番号 2015-087758
公開日 2016年12月8日 (3年11ヶ月経過) 公開番号 2016-205999
状態 特許登録済
技術分野 光学的手段による材料の調査、分析
主要キーワード 時間変化曲線 非線形変化 コヒーレンス関数 光学的ノイズ ノイズ除去ステップ リスケーリング タイミング取得 掃引周波数
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2016年12月8日)のものです。
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図面 (16)

課題

解決手段

波数が時間と共に非線形変化する波長掃引光源と、波長掃引光源の光を観測対象参照ミラー照射して干渉信号を得る干渉計と、干渉信号をSS−OCTに基いて観測対象の奥行き情報を得る信号処理装置とを備えたSS−OCT装置用信号処理装置10であって、干渉信号のリスケーリング手段134と、観測対象の測定前に干渉信号を取得してリスケーリング処理に用いるリサンプリングイミングを算出するリサンプリングタイミング算出手段133と、リサンプリングタイミングを算出する前に、リサンプリングタイミングを算出するために取得する干渉信号のノイズを除去するノイズ除去フィルタ11と、算出されたリサンプリングタイミングに基づいてリスケーリング処理をした干渉信号をSS−OCTに基づいて前記観測対象の奥行き方向の情報を得る手段と、を備える信号処理装置。

概要

背景

光干渉断層撮影法OCT:Optical Coherence Tomography)は、赤外線光干渉を用いて断層画像を取得する方法であり、眼底検査などの医療分野で用いられている。OCTの方式として、Swept−Source OCT(SS−OCT)がある。これは、光の波数が時間的に変化する波長掃引光源を用いて得た光の干渉強度時間変動を取得し、その干渉強度の時間変動信号(以下、干渉信号と呼ぶ)を周波数解析することにより、物体の奥行方向の情報を得る方式である。解析された周波数成分が奥行き方向の情報を示すこととなる。

図1にSS−OCT装置原理図を示す。SS−OCT装置は、波長掃引光源101、干渉計102、信号処理装置103からなる。干渉計102は、スプリッタ104、参照ミラー105、光検出器106からなる。

波長掃引光源101は、ある周期で繰り返し出力光波長が時間的に連続して変化(掃引)する光源である。図1では、λLからλHまで繰り返し掃引している様子を示しており、その掃引波長幅はΔkとなっている。

波長掃引光源101の出力光はスプリッタ104で分けられ、一方は参照ミラー105に入射し、もう一方は観測対象Oに入射する。以下、参照ミラー105側の光路参照アーム、観測対象O側の光路をサンプルアームと呼ぶこととする。サンプルアーム側では、観測対象中に反射面Rがあれば、サンプルアームへの入射光はその反射面Rにて反射される。参照アーム側では、参照ミラー105で、参照アームへの入射光が反射される。各アームから返ってきた反射光はスプリッタ104にて合波され、その合波されて干渉した光を光検出器106で受光する。

光検出器106からの出力信号干渉光の強度を表しており、SS−OCTでは干渉光強度は時間変動する。この光検出器106からの出力信号を、以下、干渉信号と呼ぶ。

信号処理装置103は、干渉信号を信号処理し、周波数解析することにより、奥行信号を得る。

図1のサンプルアーム側に基準面Cが表記されているが、これは、スプリッタ−参照ミラー間の距離lと同じ距離を、スプリッタ104からサンプリアーム側に設置した仮想的な面であり、実際に基準面Cという物体があるわけではない。図1では、観測対象O中の反射面Rの位置を、基準面Cからの距離zで表している。このように表した場合、光源光がスプリッタ104で別れた直後から再度スプリッタ104で合波されるまでの光路長は、参照アーム側は2l、サンプルアーム側は2(l+z)であるため、これらの光路長差は2zとなる。つまり、スプリッタ104で合波される光の干渉光は、2zだけ光路長差がある場合の干渉光となる。後述する通り、SS−OCT装置は、この干渉光から得られる干渉信号を解析することにより、奥行情報zを得る。

図2は観測対象への光の照射位置を変動させるSS−OCT装置を示す図である。図1に示す装置からは1次元の奥行情報を得られるが、図2のように、サンプルアーム側に光スキャナ等を付けて観察対象への光の照射位置を1次元的に時間変動させると、2次元の奥行情報を得ることができる。図1に示す原理で取得できる奥行方向をAスキャン方向という。また、図2に示すように、サンプルアームの光を光スキャナ107等で振って得た2次元奥行情報の、奥行方向とは垂直な方向(スキャナのスキャン方向)をBスキャン方向という。さらに、光スキャナによって、サンプルアームの観測対象への照射光をBスキャン方向とは垂直な方向(Aスキャン方向とも垂直な方向)に振ると、3次元奥行情報が得られる。このAスキャンおよびBスキャン方向とは垂直な方向をCスキャン方向という。この干渉信号s(t)は以下のような式で表されることが知られている(非特許文献1参照)。

ただし、tは時間、k(t)は光源光の波数、γ(・)はコヒーレンス関数であり、A(k)は光の波数に対する光源光の電界強度、zは基準面から観測対象中の反射面までの距離、cは光速、Psは合波されるサンプルアーム側の反射光パワー、Prは合波されるリファレンスアーム側の反射光パワーである。

波長掃引光源の出力光の波数が時間に対してリニアに変化する場合、つまり、以下の(式2)となる場合は、(式1)は以下の(式3)のように表される。
k(t)=k’t+k0 (式2)

上記(式3)に示すような波数変化をする光源を波数(線形名波数掃引光源)リニアな光源という。ここで、k’は、波長掃引光源の掃引波長幅をΔkとし、Δkだけ掃引する時間をΔtとしたとき、k’=Δk/Δtとなるkの時間に対する変化率である。上記(式3)をフーリエ変換すると、以下のようになる。ここで、簡単化のため、k0=0とした。

上記(式4)によると、s(t)のフーリエ変換はA2(t)をフーリエ変換した形状をしており、その中心周波数は以下の(式5)で表される。ただし、A(・)が時間によって変化することを明示するために、A(k(t))=A(k’t+k0)をA(t)と置き換えている。
f=±zk’/π (式5)
中心周波数が+と−の2つあるのは、正負の周波数成分をfが持つためである。

干渉信号s(t)をフーリエ変換した信号は、正負の両方あり、周波数ごとの値は複素数であるが、正負のどちらか一方だけを取り出し、さらに、角周波数の複素数成分をそのノルムに置き換えた(実数化した)信号をpoint spread function(PSF)という。もしA2(t)がガウシアンのような対称単峰性関数であれば、PSFのピーク位置の周波数が上記(式5)で表される周波数となる。

以上のように、波数が(式2)で表されるような波数リニアな光源を使用した場合、観測対象中の反射面の位置zは、干渉信号s(t)のフーリエ変換した信号であるPSFの位置を測定することによって得ることができる。特に、A2(t)がガウシアンのような対称な単峰性の関数であれば、PSFのピーク位置がzに対応する。zを算出する式は、以下の(式6)で表される。ここで、|・|は絶対値を示している。
z=|πf/k’| (式6)

このような原理となっているので、基準面からの距離zに比例して干渉信号の周波数が大きくなるが、観測対象内に複数の反射面があっても、それぞれの反射面までの距離に応じた周波数成分が干渉信号に含まれるので、周波数解析(フーリエ変換)することにより、複数の反射面を同時に測定できる。図3では、反射面1、2がある場合、干渉信号はそれら2つの周波数成分を含み、それを周波数解析することにより、反射面1、2を同時に検出している様子を示している。

この反射面の検出は、光源の波長掃引1回毎に行われるので、波長掃引時間が短い、つまり、波長掃引周波数が高いほど、観測対象の動きが早くても、ブレの少ない断層画像を得ることができる。

ところで、光源が波数リニアでない場合、あるいは、波数リニアに誤差が生じている場合は、zに対する干渉信号s(t)は(式3)のようにはならない。つまり、(式3)で示すcos(・)の引数は時間tに対して線形とならないので、(式3)のcos(・)で生じる周波数fは単一ではなく、ある分布を持つ。特にcos(・)が複数のピークを持つ場合は、s(t)のフーリエ変換結果から求めたPSFのピーク位置となる周波数から上記(式6)を用いて反射面位置zを求めることは困難である。また、このような場合は、干渉信号s(t)をフーリエ変換した結果は(式4)とはならず、その形状はA2(t)のフーリエ変換したものとはならない。このような場合PSFは、波数リニアな場合のA2(t)のフーリエ変換結果よりも広がった形状となる。このことは、OCT像の一点一点が広がることを意味する。つまり、波数リニアでない光源を使った場合、PSFは広がり、得られるOCT像はボケることを意味する。

この問題を解決する方法としては、リスケーリングという波形整形(変換)技術がある。この概念を図4に示す。図4左図はリスケーリング前の干渉信号であり、周波数が時間に対して一定ではない状態を表している。リスケーリング後は図4右図のように、周波数が時間に対して一定となる。

図5にリスケーリングの原理を示す。リスケーリングとは、変換曲線を使って波形整形し、時間的に周波数が一定になるようにする処理であることを示している。

この変換曲線は光源光の波数の時間変化曲線k(t)の逆関数曲線t(k)から求まる(非特許文献2参照)。そのためには、まずk(t)を求めてからその逆関数t(k)を求める。以下、t(k)を求める具体的な方法を述べる。

サンプルアームのz=z0の位置に鏡を設置したときの干渉信号を取得する。このときの干渉信号s0(t)は上記(式1)のzをz0に置き換えたものとなるが、その式のcos(.)を変形すると、以下の(式7)となる。

干渉信号s0(t)をフーリエ変換してマイナスの周波数を0にしたものを逆フーリエ変換すると、以下のような式となる。

φ(t)=ang(s’(t)) (式9)

ここで、ang(x)は、複素数xの複素平面上での実軸からの角度を表す関数である。一方、(式8)より、干渉信号s0(t)の位相φ(t)は以下の(式10)のように表される。
φ(t)=2z0k(t) (式10)

したがって、(式9)及び(式10)から、光源光の波数の時間変化曲線k(t)は以下の(式11)のように導出できる。
k(t)=ang(s0’(t))/(2z0)) (式11)

繰り返しの説明となるが、(式11)に示すs0’(t)は、サンプルアームのz=z0の位置に鏡などの反射面を置いて実測した干渉波形s0(t)から得られる信号である。サンプルアームのz=z0の位置に鏡を置いて干渉信号s0(t)を得て、その干渉信号からs0’(t)を信号処理によって求め、光源光の波数の時間変化曲線k(t)を得ることができる。

このようにして得たk(t)から、その逆関数となるt(k)を得る。非特許文献2には、t(k)をkの4次多項式近似する方法が記されている。t(k)曲線が得られた後のリスケーリング方法としては、たとえば、干渉信号をt(k)にしたがってサンプリングし直す方法がある。このようにサンプリングし直す処理をリサンプリングという。リサンプリングの方法としては、波数が一定の適当なδkを決め、サンプリングし直す干渉信号の時刻を、t(k)から得る。たとえば、整数nを用いて、以下の(式12)で示される時刻で干渉信号をサンプリングし直す。
tn=t(n・δk+k0) (式12)

ただし、n=0のときtn=0となるようにする。δkの値については、たとえば、サンプリングしたデータ数をNとする場合は、光源の波数掃引幅Δkを用いて、以下の(式13)とすることが考えられる。
δk=Δk/(N−1) (式13)

このようにして得られた干渉信号は、以下の(式14)で示され、波数リニアな光源を用いた場合と同じ干渉信号となる。

上記のt(k)をリスケーリング変換曲線、tnをリサンプリングタイミングデータと呼ぶこととする。実際にリスケーリングを行う場合は、観測対象を測定する前に、zが分かっている干渉信号を取得し、その干渉信号からリスケーリング変換曲線t(k)やリサンプリングタイミングデータtnを取得しておく。そして、観測対象から得た干渉信号に対してt(k)やtnを用いてリスケーリングすることにより、波数リニアな光源を使った場合と同等の干渉信号を得る。

上記のリスケーリングを含めた従来の信号処理装置の構成を図6に示す。信号処理装置はディジタル的に処理を行う場合は、A/D変換部131、リスケーリング部134、窓関数部135、フーリエ変換部136、リスケーリング変換曲線取得部132、リサンプリングタイミング取得部133を備えている。観測対象の断層撮像前に、リスケーリング変換曲線t(k)やリサンプリングタイミングデータtnを取得する。まず、z=z0と分かっているアナログ干渉信号を取得し、A/D変換部131でディジタル化した後、リスケーリング変換曲線取得部132に入力する。リスケーリング変換曲線取得部132では、干渉信号をフーリエ変換してマイナスの周波数を0にしたものを逆フーリエ変換し、(式8)の信号を得る。そして、(式11)を用いてk(t)を得て、その逆関数であるリスケーリング変換曲線t(k)を得てリサンプリングタイミングデータ取得部133へ出力する。リサンプリングタイミングデータ取得部133では、リスケーリング変換曲線取得部132から得たリスケーリング変換曲線t(k)から、(式12)及び(式13)を用いることによりリサンプリングタイミングデータtnを得て、リスケーリング部へ出力する。観測対象の断層撮像時は、干渉計から出力されたアナログの干渉信号は、A/D変換部131でディジタル信号に変換された後、リスケーリング部134でリスケーリングされ、窓関数部135で窓関数をかけられ、フーリエ変換部136でPSFに変えられる。このようにして、観測対象の奥行き方向の情報を得ることができる。

概要

SS−OCT装置用信号処理装置を提供する。波数が時間と共に非線形変化する波長掃引光源と、波長掃引光源の光を観測対象、参照ミラーに照射して干渉信号を得る干渉計と、干渉信号をSS−OCTに基いて観測対象の奥行き情報を得る信号処理装置とを備えたSS−OCT装置用信号処理装置10であって、干渉信号のリスケーリング手段134と、観測対象の測定前に干渉信号を取得してリスケーリング処理に用いるリサンプリングタイミングを算出するリサンプリングタイミング算出手段133と、リサンプリングタイミングを算出する前に、リサンプリングタイミングを算出するために取得する干渉信号のノイズを除去するノイズ除去フィルタ11と、算出されたリサンプリングタイミングに基づいてリスケーリング処理をした干渉信号をSS−OCTに基づいて前記観測対象の奥行き方向の情報を得る手段と、を備える信号処理装置。

目的

本発明は上記従来の問題に鑑みなされたものであって、本発明の課題は、SNRの低下を小さくするSS−OCT装置に用いる信号処理装置および信号処理方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

光の波数が時間に対して非線形的に変化する波長掃引光源と、該波長掃引光源からの光を観測対象および参照ミラー照射して干渉信号を得る干渉計と、該干渉計からの干渉信号を波長掃引型光干渉断層撮影法SSOCT)に基づいて処理して観測対象の奥行き方向の情報を得る信号処理装置とを備えたSS−OCT装置に用いられる前記信号処理装置であって、前記干渉信号のリスケーリング処理をするリスケーリング手段と、観測対象の測定前に前記干渉信号を取得して前記リスケーリング処理に用いるリサンプリングイミングを算出するリサンプリングタイミング算出手段と、前記リサンプリングタイミングを算出する前に、前記リサンプリングタイミングを算出するために取得する干渉信号のノイズを除去するノイズ除去フィルタと、前記算出されたリサンプリングタイミングに基づいてリスケーリング処理をした干渉信号をSS−OCTに基づいて処理して前記観測対象の奥行き方向の情報を得る手段と、を備えることを特徴とする信号処理装置。

請求項2

前記ノイズ除去フィルタは、低周波カットオフ周波数fLと低周波側カットオフ周波数fLとの間の範囲の周波数を透過する動的バンドパスフィルタであり、低周波側カットオフ周波数fLと高周波側カットオフ周波数fHとは、それぞれ前記干渉信号の周波数fに対して比例した周波数となり、かつ、fL≦f≦fHとなることを特徴とする、請求項1に記載の信号処理装置。

請求項3

前記干渉信号は、前記観測対象を1次元スキャンして得られた干渉信号であって、前記観測対象の奥行き方向の情報は2次元奥行き情報であることを特徴とする請求項1または2に記載の信号処理装置。

請求項4

前記干渉信号は、前記観測対象を2次元スキャンして得られた干渉信号であって、前記観測対象の奥行き方向の情報は3次元の奥行き情報であることを特徴とする請求項1または2に記載の信号処理装置。

請求項5

光の波数が時間に対して非線形的に変化する波長掃引光源と、該波長掃引光源からの光を観測対象および参照ミラーに照射して干渉信号を得る干渉計と、該干渉計からの干渉信号を波長掃引型光干渉断層撮影法(SS−OCT)に基づいて処理して観測対象の奥行き方向の情報を得る信号処理装置とを備えたSS−OCT装置における信号処理方法であって、前記干渉信号のノイズを除去するノイズ除去ステップと、前記ノイズを除去した前記干渉信号を取得して前記リスケーリング処理に用いるリサンプリングタイミングを算出するリサンプリングタイミング算出ステップと、前記算出されたリサンプリングタイミングに基づいてリスケーリング処理するステップと、前記リスケーリング処理をした干渉信号をSS−OCTに基づいて処理して前記観測対象の奥行き方向の情報を得るステップと、を含むことを特徴とする信号処理方法。

請求項6

前記ノイズ除去フィルタは、低周波側カットオフ周波数fLと低周波側カットオフ周波数fLとの間の範囲の周波数を透過する動的バンドパスフィルタであり、低周波側カットオフ周波数fLと高周波側カットオフ周波数fHとは、それぞれ前記干渉信号の周波数fに対して比例した周波数となり、かつ、fL≦f≦fHとなることを特徴とする、請求項5に記載の信号処理方法。

技術分野

0001

本発明は、光干渉断層撮影法データ処理装置において、非線形な光の波数掃引(光の波数が時間に対して非線形的に変化する掃引)を行う波長掃引光源を用いた場合に得た光の干渉波形信号を、線形な波数掃引を行う波長掃引光源を用いた場合と同等の干渉波形信号に変換して奥行情報を取得する信号処理装置および信号処理方法に関する。

背景技術

0002

光干渉断層撮影法(OCT:Optical Coherence Tomography)は、赤外線光干渉を用いて断層画像を取得する方法であり、眼底検査などの医療分野で用いられている。OCTの方式として、Swept−Source OCT(SS−OCT)がある。これは、光の波数が時間的に変化する波長掃引光源を用いて得た光の干渉強度時間変動を取得し、その干渉強度の時間変動信号(以下、干渉信号と呼ぶ)を周波数解析することにより、物体の奥行方向の情報を得る方式である。解析された周波数成分が奥行き方向の情報を示すこととなる。

0003

図1にSS−OCT装置原理図を示す。SS−OCT装置は、波長掃引光源101、干渉計102、信号処理装置103からなる。干渉計102は、スプリッタ104、参照ミラー105、光検出器106からなる。

0004

波長掃引光源101は、ある周期で繰り返し出力光波長が時間的に連続して変化(掃引)する光源である。図1では、λLからλHまで繰り返し掃引している様子を示しており、その掃引波長幅はΔkとなっている。

0005

波長掃引光源101の出力光はスプリッタ104で分けられ、一方は参照ミラー105に入射し、もう一方は観測対象Oに入射する。以下、参照ミラー105側の光路参照アーム、観測対象O側の光路をサンプルアームと呼ぶこととする。サンプルアーム側では、観測対象中に反射面Rがあれば、サンプルアームへの入射光はその反射面Rにて反射される。参照アーム側では、参照ミラー105で、参照アームへの入射光が反射される。各アームから返ってきた反射光はスプリッタ104にて合波され、その合波されて干渉した光を光検出器106で受光する。

0006

光検出器106からの出力信号干渉光の強度を表しており、SS−OCTでは干渉光強度は時間変動する。この光検出器106からの出力信号を、以下、干渉信号と呼ぶ。

0007

信号処理装置103は、干渉信号を信号処理し、周波数解析することにより、奥行信号を得る。

0008

図1のサンプルアーム側に基準面Cが表記されているが、これは、スプリッタ−参照ミラー間の距離lと同じ距離を、スプリッタ104からサンプリアーム側に設置した仮想的な面であり、実際に基準面Cという物体があるわけではない。図1では、観測対象O中の反射面Rの位置を、基準面Cからの距離zで表している。このように表した場合、光源光がスプリッタ104で別れた直後から再度スプリッタ104で合波されるまでの光路長は、参照アーム側は2l、サンプルアーム側は2(l+z)であるため、これらの光路長差は2zとなる。つまり、スプリッタ104で合波される光の干渉光は、2zだけ光路長差がある場合の干渉光となる。後述する通り、SS−OCT装置は、この干渉光から得られる干渉信号を解析することにより、奥行情報zを得る。

0009

図2は観測対象への光の照射位置を変動させるSS−OCT装置を示す図である。図1に示す装置からは1次元の奥行情報を得られるが、図2のように、サンプルアーム側に光スキャナ等を付けて観察対象への光の照射位置を1次元的に時間変動させると、2次元の奥行情報を得ることができる。図1に示す原理で取得できる奥行方向をAスキャン方向という。また、図2に示すように、サンプルアームの光を光スキャナ107等で振って得た2次元奥行情報の、奥行方向とは垂直な方向(スキャナのスキャン方向)をBスキャン方向という。さらに、光スキャナによって、サンプルアームの観測対象への照射光をBスキャン方向とは垂直な方向(Aスキャン方向とも垂直な方向)に振ると、3次元奥行情報が得られる。このAスキャンおよびBスキャン方向とは垂直な方向をCスキャン方向という。この干渉信号s(t)は以下のような式で表されることが知られている(非特許文献1参照)。

0010

0011

ただし、tは時間、k(t)は光源光の波数、γ(・)はコヒーレンス関数であり、A(k)は光の波数に対する光源光の電界強度、zは基準面から観測対象中の反射面までの距離、cは光速、Psは合波されるサンプルアーム側の反射光パワー、Prは合波されるリファレンスアーム側の反射光パワーである。

0012

波長掃引光源の出力光の波数が時間に対してリニアに変化する場合、つまり、以下の(式2)となる場合は、(式1)は以下の(式3)のように表される。
k(t)=k’t+k0 (式2)

0013

0014

上記(式3)に示すような波数変化をする光源を波数(線形名波数掃引光源)リニアな光源という。ここで、k’は、波長掃引光源の掃引波長幅をΔkとし、Δkだけ掃引する時間をΔtとしたとき、k’=Δk/Δtとなるkの時間に対する変化率である。上記(式3)をフーリエ変換すると、以下のようになる。ここで、簡単化のため、k0=0とした。

0015

0016

上記(式4)によると、s(t)のフーリエ変換はA2(t)をフーリエ変換した形状をしており、その中心周波数は以下の(式5)で表される。ただし、A(・)が時間によって変化することを明示するために、A(k(t))=A(k’t+k0)をA(t)と置き換えている。
f=±zk’/π (式5)
中心周波数が+と−の2つあるのは、正負の周波数成分をfが持つためである。

0017

干渉信号s(t)をフーリエ変換した信号は、正負の両方あり、周波数ごとの値は複素数であるが、正負のどちらか一方だけを取り出し、さらに、角周波数の複素数成分をそのノルムに置き換えた(実数化した)信号をpoint spread function(PSF)という。もしA2(t)がガウシアンのような対称単峰性関数であれば、PSFのピーク位置の周波数が上記(式5)で表される周波数となる。

0018

以上のように、波数が(式2)で表されるような波数リニアな光源を使用した場合、観測対象中の反射面の位置zは、干渉信号s(t)のフーリエ変換した信号であるPSFの位置を測定することによって得ることができる。特に、A2(t)がガウシアンのような対称な単峰性の関数であれば、PSFのピーク位置がzに対応する。zを算出する式は、以下の(式6)で表される。ここで、|・|は絶対値を示している。
z=|πf/k’| (式6)

0019

このような原理となっているので、基準面からの距離zに比例して干渉信号の周波数が大きくなるが、観測対象内に複数の反射面があっても、それぞれの反射面までの距離に応じた周波数成分が干渉信号に含まれるので、周波数解析(フーリエ変換)することにより、複数の反射面を同時に測定できる。図3では、反射面1、2がある場合、干渉信号はそれら2つの周波数成分を含み、それを周波数解析することにより、反射面1、2を同時に検出している様子を示している。

0020

この反射面の検出は、光源の波長掃引1回毎に行われるので、波長掃引時間が短い、つまり、波長掃引周波数が高いほど、観測対象の動きが早くても、ブレの少ない断層画像を得ることができる。

0021

ところで、光源が波数リニアでない場合、あるいは、波数リニアに誤差が生じている場合は、zに対する干渉信号s(t)は(式3)のようにはならない。つまり、(式3)で示すcos(・)の引数は時間tに対して線形とならないので、(式3)のcos(・)で生じる周波数fは単一ではなく、ある分布を持つ。特にcos(・)が複数のピークを持つ場合は、s(t)のフーリエ変換結果から求めたPSFのピーク位置となる周波数から上記(式6)を用いて反射面位置zを求めることは困難である。また、このような場合は、干渉信号s(t)をフーリエ変換した結果は(式4)とはならず、その形状はA2(t)のフーリエ変換したものとはならない。このような場合PSFは、波数リニアな場合のA2(t)のフーリエ変換結果よりも広がった形状となる。このことは、OCT像の一点一点が広がることを意味する。つまり、波数リニアでない光源を使った場合、PSFは広がり、得られるOCT像はボケることを意味する。

0022

この問題を解決する方法としては、リスケーリングという波形整形(変換)技術がある。この概念図4に示す。図4左図はリスケーリング前の干渉信号であり、周波数が時間に対して一定ではない状態を表している。リスケーリング後は図4右図のように、周波数が時間に対して一定となる。

0023

図5にリスケーリングの原理を示す。リスケーリングとは、変換曲線を使って波形整形し、時間的に周波数が一定になるようにする処理であることを示している。

0024

この変換曲線は光源光の波数の時間変化曲線k(t)の逆関数曲線t(k)から求まる(非特許文献2参照)。そのためには、まずk(t)を求めてからその逆関数t(k)を求める。以下、t(k)を求める具体的な方法を述べる。

0025

サンプルアームのz=z0の位置に鏡を設置したときの干渉信号を取得する。このときの干渉信号s0(t)は上記(式1)のzをz0に置き換えたものとなるが、その式のcos(.)を変形すると、以下の(式7)となる。

0026

0027

干渉信号s0(t)をフーリエ変換してマイナスの周波数を0にしたものを逆フーリエ変換すると、以下のような式となる。

0028

0029

φ(t)=ang(s’(t)) (式9)

0030

ここで、ang(x)は、複素数xの複素平面上での実軸からの角度を表す関数である。一方、(式8)より、干渉信号s0(t)の位相φ(t)は以下の(式10)のように表される。
φ(t)=2z0k(t) (式10)

0031

したがって、(式9)及び(式10)から、光源光の波数の時間変化曲線k(t)は以下の(式11)のように導出できる。
k(t)=ang(s0’(t))/(2z0)) (式11)

0032

繰り返しの説明となるが、(式11)に示すs0’(t)は、サンプルアームのz=z0の位置に鏡などの反射面を置いて実測した干渉波形s0(t)から得られる信号である。サンプルアームのz=z0の位置に鏡を置いて干渉信号s0(t)を得て、その干渉信号からs0’(t)を信号処理によって求め、光源光の波数の時間変化曲線k(t)を得ることができる。

0033

このようにして得たk(t)から、その逆関数となるt(k)を得る。非特許文献2には、t(k)をkの4次多項式近似する方法が記されている。t(k)曲線が得られた後のリスケーリング方法としては、たとえば、干渉信号をt(k)にしたがってサンプリングし直す方法がある。このようにサンプリングし直す処理をリサンプリングという。リサンプリングの方法としては、波数が一定の適当なδkを決め、サンプリングし直す干渉信号の時刻を、t(k)から得る。たとえば、整数nを用いて、以下の(式12)で示される時刻で干渉信号をサンプリングし直す。
tn=t(n・δk+k0) (式12)

0034

ただし、n=0のときtn=0となるようにする。δkの値については、たとえば、サンプリングしたデータ数をNとする場合は、光源の波数掃引幅Δkを用いて、以下の(式13)とすることが考えられる。
δk=Δk/(N−1) (式13)

0035

このようにして得られた干渉信号は、以下の(式14)で示され、波数リニアな光源を用いた場合と同じ干渉信号となる。

0036

0037

上記のt(k)をリスケーリング変換曲線、tnをリサンプリングタイミングデータと呼ぶこととする。実際にリスケーリングを行う場合は、観測対象を測定する前に、zが分かっている干渉信号を取得し、その干渉信号からリスケーリング変換曲線t(k)やリサンプリングタイミングデータtnを取得しておく。そして、観測対象から得た干渉信号に対してt(k)やtnを用いてリスケーリングすることにより、波数リニアな光源を使った場合と同等の干渉信号を得る。

0038

上記のリスケーリングを含めた従来の信号処理装置の構成を図6に示す。信号処理装置はディジタル的に処理を行う場合は、A/D変換部131、リスケーリング部134、窓関数部135、フーリエ変換部136、リスケーリング変換曲線取得部132、リサンプリングタイミング取得部133を備えている。観測対象の断層撮像前に、リスケーリング変換曲線t(k)やリサンプリングタイミングデータtnを取得する。まず、z=z0と分かっているアナログ干渉信号を取得し、A/D変換部131でディジタル化した後、リスケーリング変換曲線取得部132に入力する。リスケーリング変換曲線取得部132では、干渉信号をフーリエ変換してマイナスの周波数を0にしたものを逆フーリエ変換し、(式8)の信号を得る。そして、(式11)を用いてk(t)を得て、その逆関数であるリスケーリング変換曲線t(k)を得てリサンプリングタイミングデータ取得部133へ出力する。リサンプリングタイミングデータ取得部133では、リスケーリング変換曲線取得部132から得たリスケーリング変換曲線t(k)から、(式12)及び(式13)を用いることによりリサンプリングタイミングデータtnを得て、リスケーリング部へ出力する。観測対象の断層撮像時は、干渉計から出力されたアナログの干渉信号は、A/D変換部131でディジタル信号に変換された後、リスケーリング部134でリスケーリングされ、窓関数部135で窓関数をかけられ、フーリエ変換部136でPSFに変えられる。このようにして、観測対象の奥行き方向の情報を得ることができる。

先行技術

0039

上野雅浩 他、「KTN光偏向器広角化による200kHz KTN波長掃引光源の可干渉距離とSNRの改善」、信学技法CPM2014−44、pp.7−12、No.7、p.1027−1029、2014.
Y. Yasuno, V. D. Madjarova, S. Makita, M. Akiba, A. Morosawa, C. Chong, T. Sakai, K. Chan, M. Itoh, and T. Yatagai, “Three−dimensional and high−speed swpt−source optical coherence tomography for in vivo investigation of human anterior eye segments,” Optics Express, Vol. 13, No. 26, pp. 10652−10664, 2005.

発明が解決しようとする課題

0040

しかしながら、光源ノイズ電気ノイズ等、測定した干渉信号s(t)にノイズが入った場合、s(t)から求めたk(t)にもノイズが残り、その結果、リスケーリング後の干渉信号の変換精度落ちる問題がある。干渉信号の変換精度が落ちることにより、PSFのピークが低くなるため、断層画像の信号対ノイズ比(SNR)が低くなる問題がある。断層画像のSNRが低くなるため、観測対象への入射光強度に対する感度が低くなる問題がある。本発明は上記従来の問題に鑑みなされたものであって、本発明の課題は、SNRの低下を小さくするSS−OCT装置に用いる信号処理装置および信号処理方法を提供することである。

課題を解決するための手段

0041

上記課題を解決するために、一実施形態にかかる信号処理装置は、光の波数が時間に対して非線形的に変化する波長掃引光源と、該波長掃引光源からの光を観測対象および参照ミラーに照射して干渉信号を得る干渉計と、該干渉計からの干渉信号を波長掃引型光干渉断層撮影法(SS−OCT)に基づいて処理して観測対象の奥行き方向の情報を得る信号処理装置とを備えたSS−OCT装置に用いられる前記信号処理装置であって、前記干渉信号のリスケーリング処理をするリスケーリング手段と、観測対象の測定前に前記干渉信号を取得して前記リスケーリング処理に用いるリサンプリングタイミングを算出するリサンプリングタイミング算出手段と、前記リサンプリングタイミングを算出する前に、前記リサンプリングタイミングを算出するために取得する干渉信号のノイズを除去するノイズ除去フィルタと、前記算出されたリサンプリングタイミングに基づいてリスケーリング処理をした干渉信号をSS−OCTに基づいて処理して前記観測対象の奥行き方向の情報を得る手段と、を備えることを特徴とする。

0042

他の実施形態にかかる信号処理方法は、光の波数が時間に対して非線形的に変化する波長掃引光源と、該波長掃引光源からの光を観測対象および参照ミラーに照射して干渉信号を得る干渉計と、該干渉計からの干渉信号を波長掃引型光干渉断層撮影法(SS−OCT)に基づいて処理して観測対象の奥行き方向の情報を得る信号処理装置とを備えたSS−OCT装置における信号処理方法であって、前記干渉信号のノイズを除去するノイズ除去ステップと、前記ノイズを除去した前記干渉信号を取得して前記リスケーリング処理に用いるリサンプリングタイミングを算出するリサンプリングタイミング算出ステップと、前記算出されたリサンプリングタイミングに基づいてリスケーリング処理するステップと、前記リスケーリング処理をした干渉信号をSS−OCTに基づいて処理して前記観測対象の奥行き方向の情報を得るステップと、を含むことを特徴とする。

図面の簡単な説明

0043

SS−OCTの基本構成を示す図である。
スキャンを行うSS−OCTの基本構成を示す図である。
観測対象内反射点位置と干渉信号を示す図である。
リスケーリングの概念を示す図である。
リスケーリングの原理を示す図であう。
従来の信号処理装置の構成を示す図である。
本発明の信号処理装置の構成例を示す図である。
フィルタの構成例を示す図である。
バンドパスフィルタ周波数特性を示す図である。
光源の構成例を示す図である。
KTN光偏向器の構成例を示す図である。
光源光と波数と干渉信号の計算例を示す図である。
光源光の干渉信号の周波数とバンドパスフィルタのカットオフ周波数を示す図である。
干渉信号を示す図である。
z=0.5mmの時のPSFを示す図である。

実施例

0044

本発明は、波長掃引型光干渉断層撮影法(SS−OCT)を実行するSS−OCT装置において、波数が時間に対して非線形的に変化する波数掃引光源を用いた場合に得た干渉波形を、リスケーリングして、線形な波数掃引となる波数掃引光源を用いた場合と同等の干渉波形信号に変換して、波長掃引型光干渉断層撮影法(SS−OCT)に基づいて処理して観測対象の断層画像を得る信号処理装置および方法である。本発明の信号処理装置では、リスケーリングするために必要とされる、リサンプリングタイミングの算出処理を行う前に、干渉信号のノイズを除去するノイズ除去フィルタを備えている。これらの構成により、SS−OCT装置において、断層画像のSNRの低下が抑制される。

0045

図7に本発明の信号処理装置の構成例を示す。本発明の信号処理装置10は、図1に示すSS−OCTにおいて、信号処理装置103の代わりに用いることができる。本発明の信号処理装置10は、図6に示す従来の信号処理装置103と比較して、ノイズ除去フィルタであるノイズ除去部11をリスケーリング変換曲線取得部132の前処理として設けている点が異なる。従来の信号処理装置103の構成と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。干渉信号には光源由来光学的ノイズや、光検出器やA/D変換などの電気的ノイズが含まれ、これがリスケーリング変換曲線の精度に悪影響を与える。この信号処理装置10では、これらのノイズをノイズ除去部11で除去することができる。

0046

ところで、SS−OCTでは、波長掃引光源が波数リニアでない場合は、干渉信号の周波数が時間的に変動するので、固定のカットオフ周波数を持つハイパスフィルタバンドバスフィルタ、ローパスフィルタでは完全にノイズを除去できない。特に、光源由来のノイズであって、光源の中の多重反射由来する、出力光の時間的な強度変調の周波数は、本来の干渉信号の周波数に比例して時間的に変動するので、上記のような固定のカットオフ周波数を持つフィルタでは一部しかカットできない。

0047

そこで、本発明にかかる信号処理装置10のノイズ除去部11では、本来の干渉信号の周波数f(t)が時間的に変動するのに合わせて、pL・f(tn)〜pH・f(tn)の範囲の周波数を透過する動的バンドパスフィルタとして動作する構成となっている。ただし、f(tn)はリスケーリング変換曲線を取得する際に、z=z0とした時の干渉信号の時刻tnの周波数であり、pLとpHはそれぞれカットオフを干渉信号f(tn)の何倍にするのかを示す実数であり、pL≦1≦pHである。

0048

バンドパスフィルタとしては、たとえば、図8に示すようなトランスバーサルフィルタを使ったものが考えられる。フィルタには、A/D変換部により時間的に離散化された信号が入力されるが、入力は図示していないクロック回路に従ったタイミングで、順次フィルタに入力される。

0049

フィルタは、遅延部21とフィルタ係数算出部22と乗算部23と加算部24とを有している。遅延部21は、入力信号s(tn)をクロック回路で決まっている所定の時間(クロックの間隔)の整数倍で遅延させた複数の信号s(tn)、s(tn-1)、…、s(tn-(N-1))を出力する。フィルタ係数算出部22は、干渉信号の周波数に応じてフィルタ係数Wk(f(tn))を算出する。乗算部23は、そのフィルタ係数を遅延した入力信号と乗算し、その乗算結果Wk(f(tn))・s(tn)を出力する。加算部24は、乗算部23の出力Wk(f(tn))・s(tn)を全て加算して出力する。加算部24からの出力信号sf(tn)は入力信号をフィルタリングした信号となっている。このようにして求めた出力信号sf(tn)は以下のように表される。

0050

0051

ここで、Nはフィルタ係数の数である。次に、具体的なフィルタ係数Wk(f(tn))の例を以下の(式16)及び(式17)で示す。
Wk(f(tn))=Dk(f(tn),pH)−Dk(f(tn),pL) (式16)

0052

0053

ただし、mf(tn)=f(tn)/Δf、Δfは干渉信号の取得時間の逆数(後程PSFを算出するためにフーリエ変換する際の干渉信号の時間幅の逆数)であり、Mは(N−1)/2以下の最大の整数(数式ではfloor((N−1)/2)と書くこともある。ここで、floor(x)はx以下の最大の整数を返す関数である。)である。

0054

このようなバンドバスフィルタは、図9に示す帯域通過特性を示す。図9では、周波数の低周波側カットオフ周波数はfcL、高周波側カットオフ周波数はfcHで表されており、それぞれ以下の式で示される。

0055

fcL=pL・f(tn)=pL・mf(tn)・Δf (式18)
fcH=pH・f(tn)=pH・mf(tn)・Δf (式19)

0056

(式18)、(式19)より明らかなように、低周波側カットオフ周波数fcL、高周波側カットオフ周波数fcHは干渉信号の周波数fに対してある一定の割合で増減、すなわち比例し、常にfcL≦f≦fcHとなる。

0057

次に、時間変動する干渉信号について述べる。光源の構造により干渉信号の時間変動を表す関数が異なるが、ここでは、図10に示すような、リットマン外部共振器構造を持つ波長掃引光源を考える。

0058

図10に示す波長掃引光源101は、アイソレータ112と、カップリングレンズ113と、半導体光増幅器(SOA)115と、コリメータレンズ116と、光偏向器117と、回折格子118と、ミラー119とを有している。波長掃引光源101では、SOA115からの光は、コリメータレンズ116で平行光となった後、光偏向器117で光の進行方向を変えられ、回折格子118にあたって回折する。ミラー119に垂直入射した光のみが再度回折格子118を介して光偏向器117、コリメータ116を通り、SOA115に入射する。SOA115の端面には光を一部反射するハーフミラー114が形成されており、そのハーフミラー114により、先ほどSOA115に入射した光が反射される。ミラー119とハーフミラー114の間でこれらの動作が繰り返され、レーザ発振に至る。

0059

ハーフミラー114から反射されなかった光は、カップリングレンズ113とアイソレータ112を通して光ファイバ111を導波し、光源光として利用される。このレーザ共振する光の波数k(=2π/λ;λは光の波長)は、以下の(式20)で表される。

0060

0061

ただし、Ψは光の偏向角、αは偏向角Ψ=0の時の光偏向器から回折格子への光の入射角、λ0はΨ=0の時の波長、mは回折格子で回折される回折光回折次数、Nは回折格子の刻線数である。光の偏向角Ψが時間変動する場合、つまり、光の偏向角を時間関数Ψ(t)で表した場合、光の波数も時間関数となり、以下の(式21)のように表される。

0062

0063

ところで、干渉信号の周波数は以下の(式22)のように表される。

0064

0065

これは干渉信号が(式1)が示すように、cos(2zk(t))の時間関数であることに由来し、ある時刻t=t0では、2zk(t)≒2z{k(t0)+(dk/dt|t=t0)t}であることと、2zk(t)=2πftから求まる。ただし、(式1)のcos(.)以外の項がcos(.)に比べてゆっくりと変化し、干渉信号への影響が無視できる項であることを仮定している。

0066

(式21)からdk(t)/dtは、以下の(式23)で表される。

0067

0068

(式23)を(式22)へ代入すると、以下の(式24)で表される。

0069

0070

ここで、もし、光の偏向角が以下の(式25)で表されるような周期的に動作するとする。
Ψ(t)=Asin(2πνt) (式25)

0071

ただし、Aは光の偏向角の振幅、νは光の偏向角が変化する周波数を表す。したがって、光源光の波長も周波数νで周期的に変化する。この周波数νを掃引周波数という。この場合、干渉信号の周波数は、(式25)を(式24)へ代入することにより、以下の(式26)で表される。

0072

0073

ここで、光偏向器117として非特許文献1に示すようなタンタル酸ニオブ酸カリウム(KTN)結晶を用いた光偏向器を用いた場合を考える。KTN光偏向器の構成を図11に示す。KTN光偏向器は、直方体KTN結晶70の対向する2面に電極71、72を付け、電極71、72を付けた面とは別の対向する2面の一部に鏡73、74を付け、鏡73、74を付けた面の鏡が付いていない部分を入射窓75および出射窓76とした構成となっている。入射窓75から入った光は、対向する2枚の鏡73、74で何度も折り返されてジグザグに進行し、出射窓76から出射することにより、光の作用長を長くしている。入射窓75のある面から出射窓76のある面へ行く道筋パス名付けると、図11は5パスのKTN光偏向器ということになる。光の作用長Lは、図11に示すKTN結晶の奥行長hを使うと、L≒h×パス数となり、図11に示すような5パス構成ではL≒5hとなる。KTN光偏向器の偏向角は以下の(式27)で表される。

0074

0075

ただし、n0は電界0の時のKTN結晶の屈折率、g11は電気光学定数、εはKTN結晶の誘電率、V(t)はKTN結晶への印加電圧、dはKTN結晶の厚み、ρはKTN結晶内の電荷密度である。(式27)を(式24)へ代入すると、KTN光偏向器を用いた図10に示す光源を使った場合の干渉信号の周波数は以下の(式28)で表される。

0076

0077

V0は電圧の振幅として、KTN結晶への印加電圧V(t)がV(t)=V0sin(2πνt)で表されるとすると、干渉信号の周波数は以下の(式29)で表される。

0078

0079

図12に光源光の波数と干渉信号の時間変動の計算例を示す。この例では、m=1、N=600本/mm、λ0=1080nm、α=75°、ν=200kHz、aV0=0.0600radである。aV0=0.0600radは、m、N、αがm=1、N=600本/mm、α=75°である時に、光源の掃引される波長幅Δλが100nmとなる場合の値であり、以下の(式30)で表される。因みに、SS−OCTでは波長幅Δλが100nm程度で掃引されるのが標準的である。

0080

0081

図13は光源光の干渉信号の周波数fとバンドパスフィルタの2つのカットオフ周波数fcL、fcHを示した図である。(式18)及び(式19)に示す通り、fcL、fcHはfに対してある一定の割合で増減し、常にfcL≦f≦fcHとなる。

0082

図14はバンドパスフィルタでフィルタリングする前後の干渉信号を示している。図14において(a)は全体波形であり、(b)は中央付近の波形を拡大して示している。この図は(式18)及び(式19)で示すPL=0.5、PH=1.3、つまり、カットオフ周波数fcL=0.5f、fcH=1.3fでフィルタリングしたものである。ここでは、fcL=0.5f、fcH=1.3fのカットオフ周波数は、0.1fずつfcLとfcHを変えてみて、干渉信号の見た目がカットされないときのfcLとfcHの値とした。図14(b)の、干渉信号の拡大図を見るとはっきりわかる通り、ノイズ除去によって、高周波ノイズが除去されていることが分かる。

0083

図15はPSFを示している。これは同じ測定条件で10回測定を行って取得した10個の干渉信号からそれぞれPSFを計算し、それらのPSFを平均化した結果である。10個の干渉信号からそれぞれ10個のPSFを計算して平均化しているのは、ノイズを平均化してノイズフロア一定値となるノイズレベル)を出すためである。図15によれば、バンドバスフィルタを通さなかったものよりもバンドパスフィルタを通したものの方がPSFピークが6dB高くなり、良好な結果が得られていることが分かる。

0084

以上の実施形態では、図1に示す構成のSS−OCT装置の信号処理装置103として用いる信号処理装置を例に挙げて説明したが、観測対象に対して1次元または2次元スキャンを行う図2に示すSS−OCT装置の信号処理装置103として用いてもよい。この場合、観測対象の2次元の奥行き情報または3次元の奥行き情報が得られる。

0085

101波長掃引光源
102干渉計
103信号処理装置
104スプリッタ
105参照ミラー
106光検出器
112アイソレータ
113カップリングレンズ
114ハーフミラー
115半導体光増幅器(SOA)
116コリメータレンズ
117光偏向器
118回折格子
119ミラー
11ノイズ除去部
21遅延部
22フィルタ係数算出部
23乗算部
24加算部

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