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技術 内燃機関の圧縮比調整装置

出願人 日立オートモティブシステムズ株式会社
発明者 中村信庄司真敬
出願日 2015年4月17日 (5年7ヶ月経過) 出願番号 2015-084876
公開日 2016年12月8日 (3年11ヶ月経過) 公開番号 2016-205173
状態 特許登録済
技術分野 特殊用途機関の応用、補機、細部 機関出力の制御及び特殊形式機関の制御
主要キーワード 最小機械 取り付け位相 耐負荷能力 ギヤ歯車 干渉余裕 可変制御範囲 シフトミス 切り替え作動
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図面 (12)

課題

機械圧縮比にするため圧縮上死点ピストン位置を高めた場合に、排気行程ピストン冠面吸排気弁干渉しない、或いは内部EGR効果が充分得られる内燃機関可変機構装置を提供することにある。

解決手段

可変圧縮比機構によって圧縮上死点におけるピストン位置に対して、吸気(排気)上死点におけるピストン位置を低く設定する構成とした。これによれば、高機械圧縮比にするため圧縮上死点のピストン位置を高めた場合に、排気上死点におけるピストン位置を低く設定することで、ピストン冠面と吸排気弁が干渉しないようにできる、或いは排気行程で内部EGR効果が充分得られるようにできる。

概要

背景

従来の内燃機関圧縮比調整装置としては、内燃機関の幾何学的な圧縮比、つまり機械圧縮比可変制御する可変圧縮比機構と、実圧縮比を左右する吸排気弁開閉時期を可変制御する可変動弁機構との制御の組み合わせによって、機関の諸性能を改善することが提案されている。例えば、特開2002‐276446号公報(特許文献1)に記載の内燃機関の圧縮比調整装置には、吸気弁閉時期を可変制御するために可変動弁機構を備えると共に、圧縮比を可変制御する可変圧縮比機構を備えている。

そして、特許文献1では可変動弁機構と可変圧縮比機構を協調制御することによって、種々の運転領域で機関性能が向上するようにしている。例えば、アイドリング及び部分負荷域では、可変動弁機構によって吸気弁小作動角とすると共にリフト中心角進角させて、吸気弁閉時期を下死点より相当早い特性とする。これにより、大幅なポンプ損失の低減が図れる。ここで、機械圧縮比が通常のレベルであると、実圧縮比が低下して燃焼が悪化するため、可変圧縮比機構によって低負荷領域では圧縮比を高めている。

また、加速領域では吸気充填効率を高める必要から、吸気弁閉時期を下死点に近づくように可変動弁機構を制御する。そのため、ノック発生事前に防止する観点から可変圧縮比機構によって、圧縮比を低下させている。

このように、可変圧縮比機構と可変動弁機構とを組み合わせて協調制御することにより、内燃機関の諸性能を改善することができるようになる。

概要

高機械圧縮比にするため圧縮上死点ピストン位置を高めた場合に、排気行程ピストン冠面と吸排気弁が干渉しない、或いは内部EGR効果が充分得られる内燃機関の可変機構装置を提供することにある。可変圧縮比機構によって圧縮上死点におけるピストン位置に対して、吸気(排気)上死点におけるピストン位置を低く設定する構成とした。これによれば、高機械圧縮比にするため圧縮上死点のピストン位置を高めた場合に、排気上死点におけるピストン位置を低く設定することで、ピストン冠面と吸排気弁が干渉しないようにできる、或いは排気行程で内部EGR効果が充分得られるようにできる。

目的

本発明の目的は、圧縮上死点のピストン位置を高めた場合においても、排気行程末期から吸気行程初期にかけてピストン冠面と吸排気弁が干渉するのを確実に回避する、或いは内部EGR効果が充分得られる内燃機関の圧縮比調整装置を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

4サイクル式の内燃機関におけるピストンストロ−ク位置を変化させることで、機械圧縮比及び機械膨張比を変更可能な可変圧縮比機構を備えた内燃機関の圧縮比調整装置であって、前記可変圧縮比機構は、前記ピストンの圧縮上死点におけるピストン位置に対して、排気上死点におけるピストン位置を低く設定することを特徴とする内燃機関の圧縮比調整装置。

請求項2

請求項1に記載の内燃機関の圧縮比調整装置において、前記可変圧縮比機構は、前記可変圧縮比機構の全可変範囲に亘って、前記ピストンの前記圧縮上死点におけるピストン位置に対して、前記排気上死点におけるピストン位置を低く設定することを特徴とする内燃機関の圧縮比調整装置。

請求項3

請求項1に記載の内燃機関の圧縮比調整装置において、前記可変圧縮比機構は、前記ピストンの吸気下死点におけるピストン位置と膨張下死点のピストン位置を異なった位置に設定することを特徴とする内燃機関の圧縮比調整装置。

請求項4

請求項3に記載の内燃機関の圧縮比調整装置において、前記可変圧縮比機構は、機械圧縮比と機械膨張比を個別に変更することを特徴とする内燃機関の圧縮比調整装置。

請求項5

請求項3に記載の内燃機関の圧縮比調整装置において、前記可変圧縮比機構は、前記ピストンを吸気ストロ−クと排気ストロ−クが同じになる状態、或いは圧縮ストロ−クと膨張ストロ−クが同じになる状態に制御し、この状態で前記排気上死点におけるピストン位置を、前記圧縮上死点におけるピストン位置より低く設定することを特徴とする内燃機関の圧縮比調整装置。

請求項6

請求項1に記載の内燃機関の圧縮比調整装置において、前記可変圧縮比機構は、前記内燃機関の冷機始動時には、前記ピストンの吸気下死点におけるピストン位置を膨張下死点におけるピストン位置とほぼ同じ位置に設定するか、若しくは、前記吸気下死点におけるピストン位置より前記膨張下死点におけるピストン位置を高く設定することを特徴とする内燃機関の圧縮比調整装置。

請求項7

請求項1に記載の内燃機関の圧縮比調整装置において、前記可変圧縮比機構は、前記可変圧縮比機構に駆動力が作用していない場合には、前記ピストンの吸気下死点におけるピストン位置を膨張下死点におけるピストン位置とほぼ同じ位置に設定するか、若しくは、前記吸気下死点におけるピストン位置より前記膨張下死点におけるピストン位置が高くなる位置に設定することを特徴とする内燃機関の圧縮比調整装置。

請求項8

請求項7に記載の内燃機関の圧縮比調整装置において、前記可変圧縮比機構は、前記可変圧縮比機構に駆動力が作用していない場合には付勢部材によって、前記吸気下死点におけるピストン位置を前記膨張下死点におけるピストン位置とほぼ同じ位置に設定するか、若しくは前記吸気下死点におけるピストン位置より前記膨張下死点におけるピストン位置が高い位置に設定することを特徴とする内燃機関の圧縮比調整装置。

請求項9

4サイクル式の内燃機関におけるピストンのストロ−ク位置を変化させることで、機械圧縮比及び機械膨張比を変更可能な可変圧縮比機構を備えた内燃機関の圧縮比調整装置であって、前記可変圧縮比機構は、前記ピストンにピストンピンを介して一端が連結された第1リンクと、該第1リンクの他端に第1連結ピンを介して回転可能に連結されると共に、クランクシャフトクランクピンに回転可能に連結された第2リンクと、前記クランクシャフトに対し1/2の角速度で回転するコントロールシャフトと、前記コントロールシャフトに設けられ、前記コントロールシャフトの回転軸心に対し偏心した偏心軸部と、前記第2リンクに第2連結ピンを介して一端が連結されると共に、他端が前記偏心軸部に回転可能に連結された第3リンクと、前記コントロールシャフトの軸心に対する前記偏心軸部の偏心方向を変更可能な相対変位機構と、を備え、圧縮上死点における前記偏心軸部の軸心が前記コントロールシャフトの軸心より前記第2連結ピンと反対側になるように設定されると共に、排気上死点における前記偏心軸部の軸心が前記コントロールシャフトの軸心に対して前記第2連結ピン側となるように設定されていることを特徴とする内燃機関の圧縮比調整装置。

請求項10

請求項9に記載の内燃機関の圧縮比調整装置において、前記可変圧縮比機構は、前記可変圧縮比機構の全可変範囲に亘って、前記圧縮上死点における前記偏心軸部の軸心が前記コントロールシャフトの軸心より前記第2ピンと反対側であると共に、前記排気上死点における前記偏心軸部の軸心が前記コントロールシャフトの軸心に対して第2ピン側に設定されていることを特徴とする内燃機関の圧縮比調整装置。

技術分野

0001

本発明は4サイクル式の内燃機関圧縮比調整装置係り、特にピストン上死点位置を変更して機関の圧縮比を変更する可変圧縮比機構を備えた内燃機関の圧縮比調整装置に関するものである。

背景技術

0002

従来の内燃機関の圧縮比調整装置としては、内燃機関の幾何学的な圧縮比、つまり機械圧縮比可変制御する可変圧縮比機構と、実圧縮比を左右する吸排気弁開閉時期を可変制御する可変動弁機構との制御の組み合わせによって、機関の諸性能を改善することが提案されている。例えば、特開2002‐276446号公報(特許文献1)に記載の内燃機関の圧縮比調整装置には、吸気弁閉時期を可変制御するために可変動弁機構を備えると共に、圧縮比を可変制御する可変圧縮比機構を備えている。

0003

そして、特許文献1では可変動弁機構と可変圧縮比機構を協調制御することによって、種々の運転領域で機関性能が向上するようにしている。例えば、アイドリング及び部分負荷域では、可変動弁機構によって吸気弁小作動角とすると共にリフト中心角進角させて、吸気弁閉時期を下死点より相当早い特性とする。これにより、大幅なポンプ損失の低減が図れる。ここで、機械圧縮比が通常のレベルであると、実圧縮比が低下して燃焼が悪化するため、可変圧縮比機構によって低負荷領域では圧縮比を高めている。

0004

また、加速領域では吸気充填効率を高める必要から、吸気弁閉時期を下死点に近づくように可変動弁機構を制御する。そのため、ノック発生事前に防止する観点から可変圧縮比機構によって、圧縮比を低下させている。

0005

このように、可変圧縮比機構と可変動弁機構とを組み合わせて協調制御することにより、内燃機関の諸性能を改善することができるようになる。

先行技術

0006

特開2002‐276446号公報

発明が解決しようとする課題

0007

ところで、特許文献1の図8では圧縮上死点での機構姿勢を示している。図8の左図は、高機械圧縮比制御での圧縮上死点のピストン位置(ピストン位置はやや高い)を示し、右図は、低機械圧縮比制御での圧縮上死点のピストン位置(ピストン位置はやや低い)を示している。そして、排気上死点の位置について考察すると、高機械圧縮比制御、及び低機械圧縮比制御の両方とも、排気上死点のピストン位置は図8に示す各々の圧縮上死点のピストン位置と一致している。

0008

この理由は、特許文献1の可変圧縮比機構は、クランク角360°で1サイクルとなる機構なので、原理的に排気上死点のピストン位置と圧縮上死点のピストン位置とは一致するからである。また、同様の理由で、吸気下死点のピストン位置と膨張下死点のピストン位置も一致する。したがって、機械圧縮比と機械膨張比も原理的に一致するものである。

0009

ここで、機関性能を向上するために機械圧縮比、或いは機械膨張比を高めるべく圧縮上死点のピストン位置を高めようとすると、当然のことながら排気上死点のピストン位置も自ずと高くなる。そして、排気行程末期あるいは吸気行程初期の排気上死点付近では吸排気弁は一般的には開かれている。すなわち、排気弁は排気上死点を過ぎてから閉弁され、吸気弁は排気上死点の前から開弁を開始する。

0010

したがって、圧縮上死点のピストン位置を高めた場合においては、圧縮行程では吸排気弁は閉じられているので、ピストン冠面と吸排気弁とは機械的に干渉しないので問題がない。しかしながら、排気上死点のピストン位置が圧縮上死点のピストン位置を高めた場合と原理的に同じになるので、排気行程末期あるいは吸気行程初期では、吸排気弁が開かれている状態でピストンが高くまで上昇してピストン冠面と吸排気弁とが干渉する恐れが高くなる。

0011

特に、吸排気弁のジャンプバウンスといった異常運動が発生しやすい高回転領域や、吸排気弁の開閉位相リフトを変更した場合には、このピストン冠面と吸排気弁の干渉が発生しやすくなる。

0012

また、このピストン冠面と吸排気弁の機械的干渉とは別に、排気上死点のピストン位置を圧縮上死点のピストン位置まで高めると、排気行程末期から吸気行程初期にかけてピストンが高く上昇するので燃焼室容積が減少して、高温燃焼ガスが筒内に残留する量が少なくなる。このため、次の吸気行程において、燃焼室混合気の温度を高く維持できなくなり、所謂内部EGR効果が充分得られなくなって排気エミッションに悪影響を及ぼすことになる。特に、燃焼室の温度が低い運転状態では、排気エミッションに悪影響を及ぼすようになる。

0013

いずれにしても、従来の可変圧縮比機構では排気上死点のピストン位置と圧縮上死点のピストン位置とは原理的に一致する構成であるため、高機械圧縮比にするため圧縮上死点のピストン位置を高めた場合に、排気行程末期から吸気行程初期にかけてピストン冠面と吸排気弁が干渉しやすいという課題、或いは内部EGR効果が充分得られないという課題が発生する。

0014

本発明の目的は、圧縮上死点のピストン位置を高めた場合においても、排気行程末期から吸気行程初期にかけてピストン冠面と吸排気弁が干渉するのを確実に回避する、或いは内部EGR効果が充分得られる内燃機関の圧縮比調整装置を提供することにある。

課題を解決するための手段

0015

本発明の特徴は、可変圧縮比機構によって圧縮上死点におけるピストン位置に対して、排気上死点におけるピストン位置を低く設定する、ところにある。

発明の効果

0016

本発明よれば、圧縮上死点のピストン位置を高めた場合においても、排気上死点におけるピストン位置を低く設定することで、ピストン冠面と吸排気弁が干渉しないようにできる、或いは内部EGR効果が充分得られるようにできるといった効果を奏することができる。

図面の簡単な説明

0017

本発明に係る圧縮比調整装置の全体概略図である。
本発明に係る圧縮比調整装置の一部を断面して示す要部側面図である。
ピストン位置変更機構フロントカバーを外した正面図であって、(A)は最遅角制御状態、(B)は最進角状態を示している。
第1乃至第3の実施形態に使用される可変圧縮比機構におけるコントロールシャフト位相変換の動作を示し、圧縮上死点付近のクランクピンがほぼ真上を向いたクランクシャフト回転角度(X=360°)において、(A)はコントロルシャフトの偏心回転位相制御位相α1(例えば137°)、(B)は制御位相α2(例えば180°)、(C)は制御位相α3(例えば222°)、(D)は制御位相α4(例えば240°)に各々制御された状態を示している。
第1の実施形態におけるクランクシャフト回転角度との関係でのピストンの高さ位置変化を示す特性図である。
第1実施形態における可変圧縮比機構の作動説明図であって、(A)〜(D)はベーンロータが最遅角状態(制御位相α4)にある場合のピストン位置を示し、(A)は吸気(排気)上死点位置、(B)は吸気下死点位置、(C)は圧縮上死点位置、(D)は膨張下死点位置である。また、(E)〜(H)はベーンロータが最進角状態(制御位相α3)にある場合のピストン位置を示し、(E)は吸気(排気)上死点位置、(F)は吸気下死点位置、(G)は圧縮上死点位置、(H)は膨張下死点位置である状態を示している。
第2実施形態におけるクランクシャフトの回転角度との関係でのピストンの高さ位置変化を示す特性図である。
第2の実施形態における可変圧縮比機構の作動説明図であって、(A)〜(D)はベーンロータが最進角状態(制御位相α2)にある場合のピストン位置を示し、(A)は吸気(排気)上死点位置、(B)は吸気下死点位置、(C)は圧縮上死点位置、(D)は膨張下死点位置である。また、(E)〜(H)はベーンロータが最遅角状態(制御位相α3)にある場合のピストン位置を示し、(E)は吸気(排気)上死点位置、(F)は吸気下死点位置、(G)は圧縮上死点位置、(H)は膨張下死点位置である状態を示している。
第3の実施形態におけるクランクシャフトの回転角度との関係でのピストンの高さ位置変化を示す特性図である。
本実施形態における可変圧縮比機構の作動説明図であって、(A)〜(D)はベーンロータが最進角状態(制御位相α1)にある場合のピストン位置を示し、(A)は吸気(排気)上死点位置、(B)は吸気下死点位置、(C)圧縮上死点位置、(D)は膨張下死点位置である。
第4の実施形態の圧縮比可変機構リンク機構を示す全体概略図である。

0018

以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。

0019

先ず、本発明の第1の実施形態について説明する。図1及び図2は可変圧縮比機構の概略の構成を示している。内燃機関01は、シリンダブロック02内に形成されたシリンダボア03に沿って上下方向へ往復運動するピストン2と、ピストン2の上下運動によって、ピストンピン3や可変圧縮比機構1の後述するリンク機構5を介して回転駆動するクランクシャフト4と、を備えている。図1のピストン2の冠面上に一点鎖線で示す燃焼室境界線との間に隔成された空間は気筒内容積(燃焼室容積)である。

0020

また、燃焼室には吸気弁IVと排気弁EVが設けられており、図示しないカムシャフトによって開閉されている。これらの吸気弁IV、排気弁EVは、ピストン2側(下側)にリフトすると、図1から分かるように、ピストン冠面に接近する。ここで、吸気弁IVのリフト量を基準位置(yi= ye=0)からピストン摺動方向に対してyiの位置で示し、排気弁EVのリフト量を基準位置からピストン摺動方向にyeの位置で示している。この時のピストン2の位置をYとする。尚、基準位置は、吸気弁IV及び排気弁EVが共にリフトせずに閉じられている位置に対応している。なお、ここでピストン位置Yが、あるクランク角において、吸気弁IVのyiの位置あるいは排気弁EVのyeの位置まで上昇すると、ピストン冠面と吸排気弁の干渉が生じることになる。

0021

可変圧縮比機構1は、複数のリンクからなるリンク機構5や、リンク機構5の姿勢を変化させるピストン位置変更機構6などから構成されている。リンク機構5は、ピストン2にピストンピン3を介して連結された第1リンクであるアッパリンク7と、アッパリンク7に第1連結ピン8を介して揺動可能に連結されると共に、クランクシャフト4のクランクピン9に回転可能に連結された第2リンクであるロアリンク10と、ロアリンク10に第2連結ピン11を介して揺動可能に連結されると共にコントロ−ルシャフト12の偏心カム部13に回転可能に連結された第3リンクであるコントロ−ルリンク14と、から構成されている。

0022

また、クランクシャフト4の前端部には、図1及び図2に示すように、駆動回転体である小径な第1ギヤ歯車15が固定されている一方、コントロールシャフト12の前端部側に従動回転体である大径な第2ギヤ歯車16が設けられ、第1ギヤ歯車15と第2ギヤ歯車16が噛み合ってクランクシャフト4の回転力がピストン位置変更機構6を介してコントロールシャフト12に伝達されるようになっている。

0023

第1ギヤ歯車15は、外径が第2ギヤ歯車16の外径の約半分の大きさになっており、したがって、クランクシャフト4の回転速度は、第1ギヤ歯車15と第2ギヤ歯車16の外径差によってコントロールシャフト12に半分の角速度に減速して伝達されるようになっている。コントロールシャフト12は、ピストン位置変更機構6によって、第2ギヤ歯車16に対する位相が変化し、つまりクランクシャフト4に対して相対回転位相が変更されるようになっている。

0024

クランクシャフト4とコントロールシャフト12は、シリンダブロックに設けられた共通の前後2つの軸受17、18によって回転自在に支持されている。また、偏心カム部13は、コントロ−ルリンク14の下端部に形成された大径部にニードルベアリング19を介して回転自在に連結されている。

0025

ピストン位置変更機構6は、例えば先に本出願人が出願した特開2012−225287号公報に記載された油圧式(ベーンタイプ)の可変動弁機構と同じ構造であり、以下簡単に説明する。

0026

すなわち、このピストン位置変更機構6は、図2及び図3(A)、(B)に示すように、第2ギヤ歯車16が固定されたハウジング20と、ハウジング20内に相対回転自在に収容され、コントロールシャフト12の一端部に固定されたベーンロータ21と、ベーンロータ21を油圧によって正逆回転させる油圧回路22と、を備えている。

0027

ハウジング20は、円筒状のハウジング本体20aの前端開口円板状のフロントカバー23によって閉塞されていると共に、後端開口円盤状のリアカバー24によって閉塞されている。また、ハウジング本体20aの内周面周方向の約90°位置には、4つの隔壁であるシュー20bが内方に向かって突設されている。

0028

リアカバー24は、第2ギヤ歯車16の中央位置に両者一体に設けられ、外周部が4本のボルト25によってハウジング本体20aとフロントカバー23に共締め固定されている。また、リアカバー24のほぼ中央には、ベーンロータ21の円筒部に外周に軸受される大径な軸受孔24aが軸方向に貫通形成されている。

0029

ベーンロータ21は、中央にボルト挿通孔を有する円筒状のロータ26と、ロータ26の外周面の周方向のほぼ90°位置に一体に設けられた4枚のベーン27とを備えている。ロータ26は、前端側の小径筒部26aがフロントカバー23の中央支持孔に回転自在に支持されている一方、後端側の小径な円筒部26bがリアカバー24の軸受孔24aに回転自在に支持されている。

0030

また、ベーンロータ21は、ロータ26のボルト挿通孔に軸方向から挿通した固定ボルト28によってコントロールシャフト12の前端部に軸方向から固定されている。また、各ベーン27は、各シュー20b間に配置されていると共に、各外面の軸方向に形成された細長保持溝内にハウジング本体20aの内周面に摺接するシール部材及び該シール部材をハウジング本体内周面方向に押圧する板ばねが夫々嵌着保持されている。また、この各ベーン27の両側と各シュー20bの両側面との間に、それぞれ4つの進角室40と遅角室41がそれぞれ隔成されている。

0031

油圧回路22は、図2に示すように、各進角室40に対して作動油の油圧を給排する第1油圧通路28と、各遅角室41に対して作動油の油圧を給排する第2油圧通路29との2系統の油圧通路を有し、この両油圧通路28、29には、供給通路30とドレン通路31とが夫々通路切換用の電磁切換弁32を介して接続されている。供給通路30には、オイルパン33内の油を圧送する一方向のオイルポンプ34が設けられている一方、ドレン通路31の下流端がオイルパン33に連通している。

0032

第1、第2油圧通路28、29は、フロントカバー23側に設けられた通路構成部の内部に形成されており、各一端部が通路構成部のロータ26の小径筒部26aから内部の支持穴内に挿通配置された円柱部35を介してロータ26内に連通している一方、他端部が電磁切換弁32に接続されている。

0033

第1油圧通路28は、各進角室40と連通する図示しない4本の分岐路とを備えている一方、第2油圧通路29は、各遅角室41と連通する第2油路とを備えている。電磁切換弁32は、4ポート3位置型であって、内部の弁体が各油圧通路28、29と供給通路30及びドレン通路31とを相対的に切り替え制御するようになっていると共に、コントロールユニット36からの制御信号によって切り替え作動されるようになっている。

0034

そして、電磁切換弁32の切り換え作動によって、各進角室40と各遅角室41に作動油を選択的に供給することによってベーンロータ21(コントロールシャフト12)をクランクシャフト4に対して相対回転位相を変更させるようになっている。また、各遅角室41内には、ベーンロータ21を遅角方向へ常時付勢する4本のコイルスプリング42がそれぞれ装着されている。

0035

図4(A)〜(D)は第2ギヤ歯車16とコントロ−ルシャフト12との相対回転位相を変化させた場合を示している。尚、この図では第1、第2ギヤ歯車15、16などは省略してある。この相対回転位相は、本実施形態では、前述のピストン位置変更機構6による相対回転位相変換制御により変化できるようになっているが、第2ギヤ歯車16とコントロ−ルシャフト12(偏心カム部13)との取り付け関係を相対的に変えることによって行うこともできる。

0036

この図4では、図1に示す第2ギヤ歯車16とコントロ−ルシャフト12の相対位相を変えない状態でクランクシャフト4を時計方向に回転して行き、クランクピン9が真上を向いた位置(クランク角X=0°で吸気(排気)上死点付近)から更に1回転して再度クランクピン9が真上を向いた位置(X=360°で圧縮上死点付近)での姿勢を示している。
なお、吸気(排気)上死点とは、排気上死点(吸気上死点)のことであり、ピストン2が排気行程の末期と吸気行程初期の間において最も高くなる位置を指す。

0037

このとき、ピストン2の位置(高さ)は圧縮上死点付近なので高い位置になっており、例えば、図4(A)に示すように、偏心カム部13の偏心方向は、真上方向より制御位相α1(例えば137°)だけ時計方向に遅角した位置となっている。

0038

すなわち、図4における偏心カム部13の回転方向はクランクシャフトとは逆の反時計方向なので、図4(A)に示す場合は真上方向よりα1だけ遅角しているのである。このような場合、制御位相α1と表記する。

0039

図4(B)は、図4(A)に対してコントロ−ルシャフト12(偏心カム部13)の位相をさらに遅角側のα2(例えば180°)まで遅角させた位置、すなわち、偏心カム部13の偏心方向が真下付近になっており、制御位相α2と表記する。

0040

また、図4(C)に示す場合は制御位相α3(例えば222°)、図4(D)では制御位相α4(例えば240°)と、更にコントロ−ルシャフト12(偏心カム部13)の位相を時計方向に遅角させていった位置となっている。

0041

ここで、例えば、図4(C)に示す制御位相α3と図4(D)に示す制御位相α4の間を変換できる位相変更機構6(ピストン位置変更機構)の作動について図3(A)、(B)に基づいて説明する。

0042

この図3図2を左側から見た図であり、第2ギヤ歯車16の回転方向は図3中では時計方向となる。図3(A)がピストン位置変更機構6のベーンロータ21の最遅角位置(制御位相α4と対応)を示し、図3(B)が最進角位置(制御位相α3と対応)を示しており、この最遅角、最進角位置ともに最大拡のベーン27(27a)の両側部が隣接する各シュー20bの一側面と他側面に当接してストッパ(遅角側ストッパ、進角側ストッパ)により規制されるようになっている。

0043

ここで、ベーンロータ21は、各コイルスプリング42のばね力によって図3(A)に示すように、最遅角位置付近で機械的に安定するようになっている。つまり、デフォルト位置は最遅角位置となる。

0044

ピストン位置変更機構6の位相変換角αTを、αT=α4−α3、例えば18°(=240°−222°)とすれば、制御位相α3と制御位相α4の間の変換で所望の変換角αT(18°)を実現できる。更に、前述の最遅角位置(デフォルト位置)が、図4(D)に示す制御位相α4と一致するように、ベーンロータ21とコントロ−ルシャフト12との取り付け位置を設定すると、所望の図4(C)と図4(D)の間の位相変換(制御位相α3⇔制御位相α4)が実現できる。

0045

図5はピストン位置の変化特性を示している。ここで、クランク角Xが0°では、クランクピン9が真上に位置しており、この付近で、ピストン2の吸気(排気)上死点となっている。

0046

クランク角Xが0°から時計方向に回転し始めると、排気弁リフトカ−ブ(ye)に示すように排気弁EVは完全に閉じ、また0°前から開作動を開始していた吸気弁IVの吸気弁リフトカ−ブ(yi)は更にリフトを増加し、吸気ポ−トより新気(或いは混合気)の吸入を行う。次に、クランク角Xが180°となった付近で吸気下死点となり、この付近で吸気弁は閉じられる。ここで、吸気上死点から吸気下死点までを吸気行程という。

0047

更に、クランクシャフト4が回転すると、吸気弁IVは完全に閉じられると共に、筒内混合気が圧縮されて、クランク角Xが360°となった位置(クランクピン9が再度真上位置)の付近で、圧縮上死点になる。ここで、吸気下死点から圧縮上死点までを圧縮行程という。

0048

その後、火花点火(または圧縮着火)が行なわれて燃焼が開始され、その燃焼圧がピストン2を押し下げていき、クランク角Xが540°付近で膨張下死点となる。ここで、圧縮上死点から膨張下死点までを膨張行程という。

0049

この膨張下死点付近で、排気弁EVが開作動を開始し、ピストン2の再上昇とともに燃焼ガス(排気ガス)を排気ポ−トより排出し、再び吸気(排気)上死点付近であるクランク角Xが720°(=0°)の位置(クランクピン9が真上位置)に戻るのである。ここで、膨張下死点から吸気(排気)上死点までを排気行程という。

0050

以上のように、4サイクル機関としての作動が行われ、クランク角(X)720°を1周期とする周期的な作動になっている。

0051

図5において、実線図4(C)の制御位相α3でのピストン位置特性(α3特性)を示し、破線図4(D)の制御位相α4でのピストン位置特性(α4特性)を示している。両特性とも、圧縮上死点でのピストン位置は略同一(Y0)で、吸気下死点位置は両特性で異なる。すなわち、圧縮上死点での気筒内容積(燃焼室容積)Vは、両特性とも圧縮上死点でのピストン位置(Y0)により決まるので、ほぼ同一の気筒内容積V0となっている。

0052

この気筒内容積V0とは、圧縮上死点において、シリンダヘッド側の燃焼室内面形状と、ピストン2の冠面2aの形状と、シリンダブロック02の内径と、図示しないヘッドガスケット内径等に囲まれた容積、つまり、圧縮上死点における気体(混合気)の容積になる。

0053

図5に示す制御位相α3の特性では、吸気下死点のピストン位置はYC3であり、そこから圧縮上死点への長さ(圧縮ストロ−ク)はLC3であり、膨張下死点のピストン位置はYE3で、そこへの圧縮上死点からの長さ(膨張ストロ−ク)はLE3である。

0054

また、吸気下死点のピストン位置は前述のYC3であり、そこから吸気(排気)上死点への長さ(吸気ストロ−ク)はLI3であり、膨張下死点のピストン位置は前述のYE3で、そこから吸気(排気)上死点への長さ(排気ストロ−ク)はLO3である。

0055

同様に、図5に示す制御位相α4の特性では、吸気下死点のピストン位置はYC4であり、そこから圧縮上死点への長さ(圧縮ストロ−ク)はLC4であり、膨張下死点のピストン位置はYE4で、そこへの圧縮上死点からの長さ(膨張ストロ−ク)はLE4である。

0056

また、吸気下死点のピストン位置は前述のYC4であり、そこから吸気(排気)上死点への長さ(吸気ストロ−ク)はLI4であり、膨張下死点のピストン位置は前述のYE4で、そこから吸気(排気)上死点への長さ(排気ストロ−ク)はLO4である。

0057

尚、吸気(排気)上死点と排気(吸気)上死点は同じ点を意味しており、排気行程から吸気行程に移行する時のピストンの上死点を示している。したがって、単に吸気上死点或いは排気上死点という場合もある。

0058

以上の図5に関する説明は実施例2の図7、実施例3の図9においても同様であるので、図7図9においては詳細の説明を省略する。

0059

ここで、制御位相α3での機械圧縮比である機械圧縮比C3と、同機械膨張比である機械膨張比E3について考察する。ボアシリンダ内径)の面積をSとすると、吸気下死点での気筒内容積VC3は、VC3=V0+S×LC3となる。したがって、機械圧縮比C3=VC3÷V0=(V0+S×LC3)÷V0となる。

0060

一方、機械膨張比E3=VE3÷V0=(V0+S×LE3)÷V0となる。ここで、VE3とは膨張下死点での気筒内容積である。

0061

尚、制御位相α3の場合は、図5に示すように、LC3≒LE3であるため、機械圧縮比C3≒機械膨張比E3となっている。ここで、相対比D=機械膨張比E÷機械圧縮比Cと定義する。

0062

制御位相α3での相対比D3は、E3÷C3≒1となり、機械膨張比Eと機械圧縮比Cはほぼ同一のほぼ標準的な特性となっている。すなわち、制御位相α3では、一般的な機関の通常のピストン位置変化特性(E=C、D=1)に近くなっている。

0063

次に、制御位相α4での機械圧縮比である機械圧縮比C4と、同機械膨張比である機械膨張比E4について説明する。

0064

制御位相α3と同様に、機械圧縮比C4=VC4÷V0=(V0+S×LC4)÷V0となり、機械膨張比E4=VE4÷V0=(V0+S×LE4)÷V0となる。ここで、制御位相α4の場合は、図5に示すように、LC4>LE4であるため、機械圧縮比C4>機械膨張比E4となっている。すなわち、相対比D4=LE4÷LC4<1であり、これは、機械圧縮比が機械膨張比より、相対的に大きいことを意味する。また、制御位相α3特性との対比でみると、C4>C3と機械圧縮比は大きく、E4<E3と機械膨張比は小さくなっている。

0065

図6(A)〜(D)に制御位相α4(ベーンロータ21の最遅角デフォルト位置、例えば240°)でのクランク角を変化した場合の機構姿勢変化を示し、図6(E)〜(H)に制御位相α3(ベーンロータ21の最進角位置、例えば222°)でのクランク角を変化した場合の機構姿勢変化を示している。ここで、図6の(A)及び(E)は吸気(排気)上死点での姿勢、(B)及び(F)は吸気下死点での姿勢、(C)及び(G)は圧縮上死点での姿勢、(D)及び(H)は膨張下死点での姿勢をそれぞれ示している。

0066

図6(A)〜(D)の制御位相α4の場合は、前述のように、LC4>LE4であるため、機械圧縮比C4>機械膨張比E4(相対比D4<1)となっている。一方、図6(E)〜(H)の制御位相α3の場合は、前述のように、LC3≒LE3であるため、機械圧縮比C3≒機械膨張比E3(相対比D3≒1)となっている。そして、図6(A)〜(D)の制御位相α4の場合は、図6(E)〜(H)の制御位相α3と比較すると、前述のように、LC4>LC3、LE4<LE3となっている。

0067

なぜ、このようなピストン位置変化特性になるかを説明する。吸気下死点における偏心カム部13の偏心回転方向αCについてみてみると、図6(B)に示す制御位相α4でのαC4は、図6(F)に示す制御位相α3でのαC3に対して、時計方向(遅角方向)に位相変化している。つまり偏心カム部13の偏心円中心は、制御位相α3に対して相対的に、右上方に移動しており、これによりコントロールリンク14は第2連結ピン11を右上方に押し上げ、ロアリンク10を、クランクピン9を支点として時計方向に回転させる。これによって、第1連結ピン8の位置は下がり、もってアッパリンク7によりピストン2は下方に引き下げられる。これにより、LC4>LC3となる。

0068

一方、膨張下死点における偏心カム部13の偏心回転方向αEについてみてみると、図6(D)に示す制御位相α4でのαE4は、図6(H)に示す制御位相α3でのαE3に対して、同様に時計方向(遅角方向)に変化している。つまり偏心円中心は相対的に下方に移動しており、これによりコントロールリンク14は第2連結ピン11を左下方に引き下げ、ロアリンク10を、クランクピン9を支点として反時計方向に回転させる。これによって第1連結ピン8の位置は上がり、もってアッパリンク7によりピストン2は上方に押し上げられる。これにより、LE4<LE3となる。

0069

すなわち、図5に示す制御位相α3と制御位相α4のピストン位置変化特性の差は、図6に示す偏心カム部13の偏心位相の違いに基づくリンク姿勢の違いにより生み出される。

0070

一方、圧縮上死点のピストン位置についてみると、制御位相α3と制御位相α4のピストン2の位置はほぼ同じ位置であることは、前述の通りであるが、これは以下の理由による。すなわち、図6(C)、(G)に示す圧縮上死点姿勢に示すように、制御位相α3と制御位相α4とも、クランクピン9と第1連結ピン8とピストンピン3がほぼ一直線に配置されており、この配置によりロアリンク10の回動により第1連結ピン8が回動してもピストンピン2の位置変化は僅かに抑えられるためである。

0071

このため、制御位相α3の圧縮上死点のピストン位置(図5のY03)、制御位相α4の圧縮上死点ピストン位置(図5のY04)は実質ほぼ同じ位置となり、それを前述の圧縮上死点のピストン位置(Y0)としたのである。

0072

しかしながら、圧縮上死点のピストン位置(Y03)と圧縮上死点のピストン位置(Y04)で有意差がでた場合は、気筒内容積を各々V03、V04として前述のV0のかわりに用いて、各々の機械圧縮比C3、C4、各々の機械膨張比E3、E4、各々の相対比D3、D4を求めれば良い。

0073

次に、本実施例のエンジン性能に関係する効果について説明する。

0074

機関停止時には、ピストン位置変更機構6のベーンロータ21は、図3(A)に示す最遅角位置(反時計方向)に各コイルスプリング42のばね力によって押し付けられ安定しており(デフォルト位置)、その時、制御位相は前述の制御位相α4となっている。

0075

したがって、冷機始動時には、予めベーンロータ21の最遅角位置である制御位相α4の特性(図5の破線)になっており、この特性による排気エミッションの低減効果が、デフォルト設定によって始動燃焼のまさに初期から得られる。また、ピストン位置変更機構6の電磁切換弁32の電気系統断線などの故障があった場合にもこの位置を維持できるので、その場合でも前述の排気エミッション低減効果が得られるので所謂メカニカルフェールセーフ効果も持つことができる。

0076

すなわち、この特性による冷機始動時排気エミッション低減効果については、まず1つ目として、機械膨張比E4が小さくなっているので、膨張仕事が減った分、内燃機関から排出される排気ガス温度が高まるので、下流の触媒暖機が促進されて、エミッション転化率が向上する。

0077

一方、2つ目として、機械圧縮比C4は大きくなっているので、圧縮上死点での筒内ガス温度は上昇し、冷機運転時において問題となる燃焼不良を改善し、もって内燃機関そのものから排出されるエミッションを低減できる。

0078

以上の機械膨張比E4を小さくし、機械圧縮比C4を大きくし、つまり相対比D4(=E4÷C4)を小さくしたことにより、上述した夫々の効果の相乗効果として、触媒下流テールパイプから大気に放出される排気エミッション量を大幅に低減できるようになる。

0079

ここで、相対比D4は1未満の小さな値となっており、これが小さいほど、機械膨張比が相対的に小さく、機械圧縮比が相対的に大きいことを意味しており、冷機時における排気エミッション性能の良さを示す指標とみることができる。

0080

ところで、機関の暖機が完了すると、例えば機関運転状態部分負荷であれば、機械圧縮比C4、機械膨張比E4、及び相対比D4のままの状態では燃費が悪化する。なぜなら、機械膨張比E4が低いので、ピストン2による膨張仕事が低下し、また、機械圧縮比C4が高いので、暖機後では圧縮上死点での温度が過度に高くなり、いわゆる冷却損失が増加し、もって、これらの損失により燃費が悪化するようになる。

0081

また、機関運転状態が高負荷であれば、ノッキングプレイグニッションという異常燃焼も誘発してしまい、一層燃費が悪化すると共に、トルクも低下するのである。したがって、暖機後においては、ピストン位置変更機構6の電磁切換弁32からの制御油圧によりベーンロータ21が最進角位置に変換し、制御位相α3(図5の実線の特性)に切り替えるようにすれば良いものである。

0082

これにより、標準的な機械膨張比E3、標準的な機械圧縮比C3に復帰し、相対比D3はほぼ1となり通常のピストン位置変化特性と同等となるので、上述した損失により燃費が悪化したり、更には異常燃焼が誘発されるのを抑制できるようになる。

0083

尚、機関温度が冷機と暖機完了との中間にある場合は、その温度に応じて、低温になるほどベーンロータ21を遅角側へ変更して行き(制御位相α4に近づけて行き)、高温になるほどベーンロータ21を進角側へ変更させていく(制御位相α3に近づけていく)ことによって、温度の変化毎に、排気エミッション性能と燃費性能を適切にバランスさせることができる。例えば、エミッションを充分に低い所定値に抑えつつ、可及的に燃費悪化を抑制することができる。

0084

ここで、ピストン2の位置変化特性は、前述のように、クランク角720°を周期とする周期的な作動が行なわれ、上死点としては、クランク角が0°付近と360°付近の2度あらわれる。そして、クランク角360°付近の上死点(前述のY0)は、吸気弁IV、排気弁EVとも完全に閉止された前述の圧縮上死点となっており、クランク角0°付近の各上死点(Y´03、Y´04)は、この付近で排気弁EVが閉じ吸気弁IVの作動が開始される吸気(排気)上死点となっている。

0085

この吸気(排気)上死点の各ピストン位置(Y´03、Y´04)は、圧縮上死点のピストン位置(Y0)より低くなっている。これは、図6(A)、(E)の吸気(排気)上死点の姿勢で示すように、制御位相α3と制御位相α4とも、クランクピン9と第1連結ピン8とピストンピン3が一直線ではなく、逆「く」の字状に折れ曲がって配置されており、この配置によりピストン位置が前述のピストン位置(Y0)より低い位置となり、また制御位相α3と制御位相α4との間のコントロ−ルシャフト12の位相差により、吸気(排気)上死点のピストン位置が、前者の場合のピストン位置(Y´03で、Δ3だけ低下)、後者の場合のピストン位置(Y´04で、Δ4だけ低下)という有意差が生じている。

0086

ここで、ピストン位置の差分Δ3>Δ4というように、制御位相α3での吸気(排気)上死点のピストン位置(Y´03)の方が低い位置になっているのは、図6(A)及び(E)の吸気(排気)上死点のピストン位置に示すように、偏心カム部13の偏心方向とコントロ−ルリンク14(第3リンク)方向が、制御位相α3の方が一直線に近い(開き角が180°に近い)ので、ロア−リンク10を更に時計方向に回動させ、もってアッパ−リンク7を介してピストンピン(ピストン)を引き下げるからである。

0087

このように、吸気(排気)上死点の各ピストン位置(Y´03、Y´04)が、圧縮上死点のピストン位置(Y0)より低い位置になっていることは、ピストン2と吸気弁IV、排気弁EVの干渉に対して、極めて有利となる。図5に示す吸気(排気)上死点では、各ピストン位置(Y´03、Y´04)が低くなっており、この吸気(排気)上死点付近のクランク角で見てみると、吸気弁IVの吸気弁リフト位置(yi)や排気弁EVの排気弁リフト位置(ye)に対して、ピストン2の冠面位置(Y)は下方に充分離れており、干渉しにくくなっている。

0088

例えば、高回転になると、吸気弁IV、排気弁EVは、ジャンプやバウンスといった異常運動が発生しやすくなるが、この場合においてはyiやyeはやや下がるのであるが、吸気弁IV、排気弁EVとの干渉を充分に防止できるものである。また、近年広まってきた、吸気弁IV、排気弁EVの開閉位相制御やリフト量自体を増大変化できる可変動弁機構を装着した場合においては、吸気弁IV、排気弁EVとピストンの機械的な干渉が発生し易くなる。すなわち、開閉位相制御ではyi特性やye特性が横軸(クランク角)方向にずれるのでYとの距離が部分的に接近したり、リフト量自体の増大制御ではyi特性やye特性自体が下方にずれるのでYとの距離が接近するのである。
このような場合であっても、本実施例の可変圧縮比機構を用いれば吸気弁IV、排気弁EVとピストンの機械的な干渉を有効に防止することができるようになる。

0089

尚、ここで、吸気弁IV、排気弁EVの作動タイミングをクランク角で360°程度設定をずらした場合を仮に想定してみると、高いピストン位置(Y0)が吸気(排気)上死点のピストン位置となり、図5の破線で示す吸気弁リフトカーブ(yi)及び排気弁リフトカ−ブ(ye)との干渉余裕が小さくなり、ジャンプやバウンスといった吸気弁IVや排気弁EVの異常運動の際にピストンと干渉してしまう、という問題が発生する。図5から分かるように干渉が発生しやすいクランク角は、吸気(排気)上死点そもののではなく、吸気(排気)上死点直前で排気弁EVのyeとピストン冠面位置Yの距離が極めて短くなり、吸気(排気)上死点直後で吸気弁IVのyi とピストン冠面位置Yの距離が極めて短くなるのである。そこへもってきて、吸排気弁の異常運動が発生すると、これらの距離が一層短くなり、もって干渉が発生してしまうのである。

0090

また、これとは別に、吸気(排気)上死点の各ピストン位置(Y´03、Y´04)が、圧縮上死点のピストン位置(Y0)より低い位置になっていることは、残留排気ガスの量を増大する作用を生じる。従来通り、吸気(排気)上死点のピストン位置が圧縮上死点のピストン位置まで高められると、排気行程末期から吸気行程初期にかけてピストンが高く上昇するので燃焼室容積が減少して、高温の燃焼ガスが筒内に残留する量が少なくなる。

0091

これに対して、本実施例では吸気(排気)上死点のピストン位置が圧縮上死点より低い位置に設定されるため、排気行程末期から吸気行程初期にかけての燃焼室容積が増大して高温の残留排気ガスの量が増え、燃焼室内の温度を高く維持できて内部EGR効果が充分得られるようになる。特に燃焼室内の温度が低い冷機運転状態では、多くの残留排気ガスによって燃焼室や筒内ガスの温度を高くできるので排気エミッションを低減できる効果が高くなる。

0092

以上述べてきたように、圧縮上死点におけるピストン位置に対して、吸気(排気)上死点におけるピストン位置を低く設定することによって、以下の格別な効果が得られる。

0093

すなわち、圧縮上死点のピストン位置(Y0)という高いピストン位置となるため、機械圧縮比C、あるいは機械膨張比Eを大きく設定できることなどにより、種々のエンジン性能を充分高めることができる。しかも、このような高いピストン位置に設定しても、圧縮上死点では吸気弁IV、排気弁EVが作動(リフトの増加)せず閉止状態が継続するため、ピストンと吸気弁IV、排気弁EVとが干渉する問題は原理的に発生しない。

0094

一方、吸気(排気)上死点では、この付近で排気弁EVの閉作動及び吸気弁IVの開作動が行なわれるので、仮にピストン位置が圧縮上死点(Y0)のように高い位置にあると、これら吸気弁IV、排気弁EVとピストン2との機械的な干渉が生じる恐れがあるが、前述したように、吸気(排気)上死点の各ピストン位置(Y´03、Y´04)が、圧縮上死点のピストン位置(Y0)より低い位置にあるので、このような機械的な干渉を回避できる。

0095

特に、吸気弁IVのリフト量が最大となるリフト位置(yi max)及び排気弁EVのリフト量が最大となるリフト位置(ye max)より、吸気(排気)上死点での各ピストン位置(Y´03、Y´04)を低く設定しておけば、前述の吸排気弁の開閉位相制御に故障が生じた場合であっても、該位相に関わらず、吸排気弁とピストンの干渉を防止できる、という格別の効果を得ることができる。

0096

また、吸気(排気)上死点の各ピストン位置(Y´03、Y´04)が圧縮上死点のピストン位置(Y0)より低い位置に設定されるため、排気行程末期あるいは吸気行程初期での燃焼室容積が増大して、筒内において高温の残留排気ガスの量が増え、燃焼室や筒内ガスの温度を高くできて所謂内部EGR効果が充分得られるようになる。特に燃焼室や混合気の温度が低い冷機運転状態では、多くの残留排気ガスによって燃焼室や吸入混合気の温度を高くできるので排気エミッションを低減できる効果が高くなる。

0097

ここで、前述ように、制御位相α3では制御位相α4より吸気(排気)上死点でのピストン位置がやや低くなっているが、これによれば更に以下のような効果が得られる。すなわち、この制御位相α3では、圧縮ストロ−クLC3と膨張ストロ−クLE3が同一、つまり機械圧縮比C3=機械膨張比E3となっており、また吸気ストロ−クLI3と排気ストロ−クLO3が同一で、一般的な特性となっている。

0098

この一般的な特性では、前述の制御位相α4のような冷機時の排気エミッション低減の効果は得にくいものの、高回転を含む広い回転バンドで使われることが想定される。高回転では、前述のように、排気弁EVや吸気弁IVのジャンプやバウンスといった異常運動が発生しがちであるが、制御位相α3において、吸気(排気)上死点のピストン位置(Y´03)とやや低くなっているので、このような場合であっても、ピストンと吸気弁IV、排気弁EVの干渉を確実に回避することができるからである。
以上の説明してきたように、制御範囲である制御位相α3から制御位相α4の範囲にわたって、ピストンと吸気弁IV、排気弁EVの機械的な干渉を防止できるようになる。
しかも、広い回転バンドで使われる可能性のある制御位相α3においては、より効果的にかかる機械的な干渉を防止できるのである。

0099

また、本実施例では、図2に示すように、第1ギヤ歯車15に対して減速される側の体径の第2ギヤ歯車16の方にベーン式のピストン位置変更機構6が設置されている。このため、クランク側の小径の第1ギヤ歯車15にピストン位置変更機構6を設置した場合に対して、ベーン径などを大きく設定することが可能になり、ベーン変換動力を高めることができ、変換応答性を向上させたり、耐負荷能力を高めることも可能となる。

0100

以上述べた通り本実施例によれば、可変圧縮比機構によって圧縮上死点におけるピストン位置に対して、吸気(排気)上死点におけるピストン位置を低く設定するようにしているので、ピストン冠面と吸排気弁が干渉しないようにできる、或いは内部EGR効果が充分得られるようにできるようになる。

0101

次に本発明の第2の実施形態について説明するが、実施例1ではベーンとコントロ−ルシャフトとの相対位相を制御位相α3と制御位相α4の間で制御したが、実施例2ではベーンとコントロ−ルシャフトとの相対位相を制御位相α2と制御位相α3の間で制御する点で異なっている。

0102

図3における変換角αTは、α3−α2 (例えば、222°−180°=42°)とし、ベーンは遅角側に付勢する付勢スプリングによって付勢されている。ちなみに、ここで、実施例1に対して、ベーン変換角が拡大するが、ハウジングのストッパ部付近やベーン側面部の肉抜きによりベーン変換角を拡大することができる。また、ベーン枚数を4枚から3枚に減少させても、変換角を拡大することができる。そして、遅角側ストッパとベーンが当接する最遅角位置(デフォルト位置)が、図4のα3の位置と一致するように、ベーンとコントロ−ルシャフトの取り付け位相を設定すれば良い。

0103

尚、このように、ベーンの変換角の拡大に伴い、ベーン枚数を減らしたりすると、ベーン式のピストン位置変更機構6の油圧による変換動力が減少し、変換応答性の悪化が懸念される。しかしながら、前述したように、減速される側の第2ギヤ歯車16の方にベーン式のピストン位置変更機構6が設置されているため、ベーン径等を適切に大きく設定することも可能となる。これによって、ピストン位置変更機構6によるベーン変換動力を確保し、変換応答性の低下やベーン保持能力の低下を抑制できるのである。

0104

図7はピストン位置変化特性を示し、実線は実施例1の図4(C)の制御位相α3と同じ特性(α3特性)を示すが、本実施形態ではベーンロータ21の最遅角(デフォルト)位置での特性となる。また、図7の一点鎖線は図4(B)に示す制御位相α2の特性(α2特性)で、これが本実施形態のベーンロータ21の最進角位置での特性となる。

0105

図4(B)の制御位相α2も、圧縮上死点のピストンの位置(Y02)は、前述のY0とほぼ同一であるが、吸気下死点位置と膨張下死点位置は、制御位相α3とは異なっている。

0106

すなわち、図7に示すように、LC2<LE2であるため、機械圧縮比C2<機械膨張比E2となっており、相対比D2=LE2÷LC2>1であり、これは、機械膨張比が機械圧縮比よりも相対的に大きいことを意味する。

0107

また、制御位相α3との対比でみると、C2<C3と機械圧縮比は小さく、E2>E3と機械膨張比は大きくなっている。

0108

図8(A)〜(D)は、制御位相α2での機構姿勢の変化を示している。前述のように、LC2<LE2であるため、機械圧縮比C2<機械膨張比E2、すなわち、相対比D2>1となっている。そして、図8(E)〜(H)に記載した制御位相α3と比較すると、LC2<LC3、LE2>LE3となっている。

0109

なぜこのような特性になるかを以下で説明する。図8(B)、(F)に示す吸気下死点姿勢における偏心カム部13の偏心回転方向αCについて比較してみると、図8(B)に示す制御位相α2でのαC2は、図8(F)に示す制御位相α3でのαC3に対して、反時計方向(進角方向)に位相変化している。

0110

つまり偏心円中心は左下方に移動しており、これによりコントロールリンク14は第2連結ピン11を相対的に左下方に引き下げ、ロアリンク10を、クランクピン9を支点として反時計方向に回転させる。これにより第1連結ピン8の位置は上がり、もってアッパリンク7によりピストン2は上方に押し上げられる。この結果、LC2<LC3となる。

0111

一方、図8(D)、(H)に示す膨張下死点の姿勢における偏心カム部13の偏心回転方向αEについてみると、図8(D)に示す制御位相α2でのαE2は、図8(H)に示す制御位相α3でのαE3に対して、同様に反時計方向(進角方向)に変化している。

0112

つまり偏心円中心は相対的に上方に移動しており、これによりコントロールリンク14は第2連結ピン11を右上方に押し上げ、ロアリンク10を、クランクピン9を支点に時計方向に回転させる。これにより第1連結ピン8の位置は下がり、もってアッパリンク7によりピストンは下方に引き下げられる。この結果、LE2>LE3となる。

0113

すなわち、図7に示す制御位相α3と制御位相α2のピストン位置変化特性の違いは、図8に示す偏心カム部13の偏心回転方向の違いによるリンク姿勢の違いにより生み出されるのである。

0114

次に、本実施例のエンジン性能に関係する効果について説明する。

0115

機関の暖機後には、ピストン位置変更機構6のベーンロータ21は電磁切換弁32からの制御油圧により最進角位置に変換され、制御位相α2となるが、この位相では機械圧縮比C2は小さく、機械膨張比E2が大きい特性となる。ここで、機械膨張比E2が大きいことから、燃焼圧がピストンを押し下げることで行なう仕事(膨張仕事)を増やすことができ、これにより、例えば部分負荷運転領域において燃費を向上させることができる。

0116

一方、このような機関の暖機後の部分負荷運転領域においては、機械圧縮比が高いと圧縮上死点での筒内ガス温度が高くなって冷却損失が増えてしまう懸念があるが、本実施形態のように、機械圧縮比C2が比較的低下しているので、このような冷却損失の発生を抑制することで一層燃費(熱効率)を向上させることができる。

0117

また、機関高負荷ではこの高機械圧縮比によりノッキングなどの異常燃焼が生じ易いが、これも機械圧縮比低下によって回避することができるようになる。ここで、前述した特許文献1(特開2002−276446号公報)の技術でも機械圧縮比を低下制御することでノッキングを防止できるが、付随して機械膨張比も低下してしまい、膨張仕事低下により燃費悪化やトルク低下を伴う。更には、機械膨張比の低下による排温上昇に伴い、触媒が熱劣化してしまうという問題が生じる。これに対して、本実施例では高機械膨張比のため、これらの問題を回避できるものである。

0118

ところで、本実施例において、仮に冷機時においても、このようなピストン位置変化特性であったとすると、排気エミッション面から不都合が生じる。すなわち、機械膨張比E2が大きいので、膨張仕事が増える分、機関本体から排出される排気ガス温度が低下してしまい、下流の触媒の暖気が進まず、触媒による排気エミッション転化性能が低下する。

0119

更に、機械圧縮比が低いので、冷機時において圧縮上死点での筒内ガス温度も相対的に低く、冷機時での燃焼が悪いので機関本体そのものから排出されるエミッションも増加する。以上の2つの理由により、触媒下流のテ−ルパイプからの大気に排出エミッションが増加してしまう。

0120

そこで本実施例では、冷機時は制御位相α3のような通常のピストン位置変化特性にするのである。これにより、冷機時において大気に排出される排気エミッション増加を回避しつつ、暖機後には制御位相α2の変換することで前述の燃費低減などの効果を得ることができるのである。

0121

尚、冷機時と暖機後の間の中間の温度(暖機途中)においては、ピストン位置変更機構6のベーンロータ21の回転位相を制御し、低温になるほど制御位相α3に近づけていき、高温になるほど制御位相α2に近づけていくように制御する。これにより、温度毎に燃費性能と排気エミッション性能を適切にバランスすることができる。例えば、排気エミッションを抑えつつ可及的に燃費を向上することができる。

0122

ピストン位置変化特性は、前述したように、制御位相α2、制御位相α3ともクランク角720°を周期とする周期的な作動が行なわれ、上死点としてはクランク角が0°(720°)付近と360°付近の2度あらわれる。クランク角360°付近の各上死点(Y02、Y03)は、吸気弁と排気弁の両方とも完全に閉止された圧縮上死点となり、前述のY0と実質ほぼ同一位置となっている。一方、クランク角0°付近の上死点は、この付近で排気弁が閉じ吸気弁の作動が開始される吸気(排気)上死点であり、そこでの各ピストン位置は、各々Y´02、Y´03となっている。

0123

この吸気(排気)上死点の各ピストン位置(Y´02、Y´03)は、圧縮上死点でのピストン位置(Y0)より低い位置になっている。これは、図8の吸気(排気)上死点姿勢(A)、(E)で示すように、制御位相α2と制御位相α3とも、クランクピン9と第1連結ピン8とピストンピン3が一直線ではなく、逆「く」の字状に折れ曲がって配置されており、この配置によりピストン位置が前述の圧縮上死点のピストン位置(Y0)より低下するためである。

0124

ところで、この吸気(排気)上死点についてみてみると、本実施例の場合には、図8(A)と図8(E)との比較で分かるように、コントロ−ルリンク14に対する偏心カム部13の偏心方向が、制御位相α2と制御位相α3とでほぼ線対称の関係にある。従って、開き角自体は同等である。したがって、第2ピン11の位置は制御位相α2と制御位相α3で余り変わらない。このため、吸気(排気)上死点の各ピストン位置が、制御位相α2でのピストン位置(Y´02で、Δ2だけ低下)と、制御位相α3でのピストン位置(Y´03で、Δ3だけ低下)とになる訳だが、両者ほぼ同一位置となる。

0125

このように、吸気(排気)上死点の各ピストン位置(Y´02、Y´03)が、圧縮上死点(Y0)より低い位置で且つほぼ同一位置になっていることは、ピストン2と吸気弁IV、排気弁EVの機械的な干渉に対して、後述するようにコントローラが誤作動した場合などにおいても極めて有利となる。図7の吸気(排気)上死点付近のクランク角で見て、吸気弁IVの吸気弁リフト位置(yi)や排気弁EVの排気弁リフト位置(ye)のに対して、制御位相α2、制御位相α3ともピストン2の冠面位置は下方に充分離れており、干渉しにくくなっているのは実施例1と同様である。

0126

このため、例えば、高回転になると、吸気弁IV、排気弁EVは、ジャンプやバウンスといった異常運動が発生しやすくなるが、この場合においても干渉を充分に防止できるも実施例1と同様である。また、近年広まってきた、吸気弁IV、排気弁EVの開閉位相制御やリフト量自体を増大変化できる可変動弁機構を装着した場合においては、吸気弁IV、排気弁EVとピストンの機械的な干渉が発生し易くなる。このような場合であっても、本実施例の可変圧縮比機構を用いれば吸気弁IV、排気弁EVとピストンの機械的な干渉を有効に防止することができるようになるのも実施例1と同様である。

0127

尚、ここで、吸気弁IV、排気弁EVの作動タイミングをクランク角で360°程度設定をずらした場合を仮に想定してみると、高いピストン位置(Y0)が吸気(排気)上死点のピストン位置となり、図7の破線で示す各クランク角での吸気弁リフト位置(yi)及び排気弁リフト位置(ye)とピストン冠面位置Yとの干渉余裕が小さくなり、ジャンプやバウンスといった吸気弁IVや排気弁EVの異常運動の際にピストンと吸排気弁ちの干渉し易い、という問題が発生する。

0128

また、これとは別の問題として、排気行程末期から吸気行程初期にかけて、前述にようにピストンが高く上昇するので燃焼室容積が減少して、高温の燃焼ガスが残留する量が少なくなり、前述の内部EGR効果が得られなくなり、つまり前述の冷気時エミッション低減効果や暖機後の燃費向上効果などが得にくくなるのである。

0129

これに対して、本実施例では吸気(排気)上死点のピストン位置が圧縮上死点より低い位置に設定されるため、排気行程末期から吸気行程初期にかけて燃焼室容積が増大して、筒内における高温の残留排気ガスの量が増え、燃焼室や筒内ガスの温度を高く維持できて内部EGR効果が充分得られるようになる。例えば、燃焼室や吸入混合気の温度が低い運転状態では、多くの残留排気ガスによってこれらの温度を高くできるので排気エミッションを低減できる効果が高くなる。また、暖機後であっても、この内部EGR効果によって、部分負荷域で燃焼が改善され、またポンプ損失もこれにより低減するので、一層燃費効果を高めることも可能になる。

0130

また、本実施例のように、圧縮上死点におけるピストン位置を高め、吸気(排気)上死点におけるピストン位置を低く設定することによって、以下の格別な効果が得られる。

0131

すなわち、圧縮上死点のピストン位置がピストン位置(Y0)という高いピストン位置となるため、機械圧縮比C、あるいは機械膨張比Eを大きく設定できるので、種々のエンジン性能を充分高めることができる。例えば、部分負荷域では大きな機械膨張比Eにより、さらに一層燃費効果を高めることができるのである。
しかも、このような高いピストン位置に設定しても、圧縮上死点では吸気弁IV、排気弁EVが作動(リフトの増加)せず閉止状態が継続するため、ピストンと吸気弁IV、排気弁EVとが干渉する問題は原理的に発生しない。

0132

一方、吸気(排気)上死点では、この付近で排気弁EVの閉作動及び吸気弁IVの開作動が行なわれるので、仮にピストン位置が圧縮上死点のピストン位置(Y0)のように高い位置にあると、これら吸気弁IV、排気弁EVとピストンとの機械的な干渉が生じる恐れがあるが、前述のように、吸気(排気)上死点のピストン位置(Y´02、Y´03)が、圧縮上死点のピストン位置(Y0)より低い位置にあるので、このような機械的な干渉を回避できる。

0133

また、吸気(排気)上死点のピストン位置が圧縮上死点より低い位置に設定されるため、排気行程での燃焼室容積が増大して高温の残留排気ガスの量が増え、燃焼室の温度を高く維持できて内部EGR効果が充分得られるようになる。例えば、燃焼室の温度が低い運転状態では、多くの残留排気ガスによって燃焼室の温度を高く維持できるので排気エミッションを低減できる効果が高くなり、また、暖機後であっても、この内部EGR効果によって、部分負荷域で燃焼が改善され、またポンプ損失もこれにより低減するので、一層燃費効果を高めることも可能になる。

0134

ここで、前述したように、制御位相α2と制御位相α3で、吸気(排気)上死点でのピストン位置(Y´02、Y´03)がほぼ同一位置となっているので、更に以下のような効果が得られる。すなわち、制御位相α2と制御位相α3とでほぼ同じ干渉余裕を持っている。そして、制御位相α2と制御位相α3との範囲内にある制御角度範囲でもほぼ同じ干渉余裕を持っている。したがって、可変制御範囲にわたって、ほぼ同じ干渉余裕になっている。

0135

そのため、コントロ−ラが故障して、本実施例のようなピストンストロ−ク制御(α角度制御)に異常をきたした場合、どの制御位置になってもほぼ同じ干渉余裕となる。このため、コントロ−ラ故障などの異常時においても、ピストンと吸気弁、排気弁の機械的な干渉の恐れを回避できる。また、運転者シフトミスなどでオ−バレブ過回転)が発生した場合でも、同様にピストンと吸気弁、排気弁の機械的な干渉の発生を抑制できる。

0136

次に本発明の第3の実施形態について説明するが、実施例1ではベーンとコントロ−ルシャフトとの相対位相を制御位相α3と制御位相α4の間で制御し、実施例2では制御位相α2と制御位相α3の間で制御したが、実施例3ではベーンとコントロ−ルシャフトとの相対位相を制御位相α1と制御位相α4の間で制御する点で異なっている。

0137

図3における変換角αTは、α4−α1(例えば、240°−137°=103°)と一層大きくなる。ベーン27の枚数を4枚から2枚に減少させて変換角拡大をしても良いが、本実施形態では、ピストン位置変更機構として、特開2012−197755号公報(特許文献2)や特開2012−180816号公報(特許文献3)に記載されているような電動式のものを用いたものを使用している。

0138

上述した2つの特許文献2、3に記載のピストン位置変更機構によれば、電動モータの回転により減速機構を介して、カムシャフトとタイミングスプロケットとの位相を変換する機構となっているが、本実施形態では、このカムシャフトの代わりにコントロールシャフト12を、タイミングスプロケットの代わりに第2ギヤ歯車16を用いている。このように構成することによって、ベーンとハウジングの干渉などの機構レイアウトからの変換角の制約はなくなり、2つの特許文献2、3に記載されているように、ストッパ凸部とストッパ凹部の関係のみで最遅角と最進角の回動規制が可能になる。

0139

本実施形態では、これにより、電動式のピストン位置変更機構の出力軸最進角位相を制御位相α1、最遅角位相を制御位相α4に設定している。また、第1実施例、第2実施例と同様にコントロ−ルシャフト12を遅角方向に付勢する付勢手段も設けられている。

0140

図9にはピストン位置変化特性を示し、破線は制御位相α4での特性(最遅角)を示し、これは第1実施形態の図5の制御位相α4と同じ特性で、実線の方は制御位相α1での特性(最進角)で、図4の制御位相α1に対応している。

0141

この図9から分かるように、制御位相α1のピストン位置変化特性では、圧縮ストロ−クLC1は充分小さく、膨張ストロ−クLE1は充分大きくなっている。したがって、機械圧縮比C1は充分小さく、機械膨張比E1は充分大きくなっており、相対比D1(E1÷C1)が1を充分超えた大きな値になっている。

0142

図10(A)〜(D)は制御位相α1での機構姿勢変化図を示し、図6図8と同様に、(A)は吸気(排気)上死点、(B)は吸気下死点、(C)は圧縮上死点、(D)は膨張下死点での各姿勢を示している。

0143

図10(B)に示す吸気下死点姿勢での偏心カム部13の偏心回転方向αC1についてみると、コントロールリンク14の方向とほぼ逆方向になっている。このため、コントロールリンク14及び第2連結ピン11はほぼ最大限左下方向に引き下げられ、ロアリンク10はクランクピン9を中心に反時計方向にほぼ最大限位相に変化し、それに伴い、第1連結ピン8はほぼ最大限上方に移動し、もってアッパリンク7によりピストン2はほぼ最大限上方に押し上げられる。

0144

これにより、LC1は充分小さく、且つほぼ最大限小さく、LC1<LC2<LC3<LC4の関係となる。一方、図10(D)に示す膨張下死点姿勢で偏心カム部13の偏心回転方向αE1についてみると、コントロールリンク14の方向とほぼ同方向になっている。

0145

このため、コントロールリンク14及び第2連結ピン11はほぼ最大限右上方向に押し上げられ、ロアリンク10はクランクピン3を中心に時計方向にほぼ最大限界位相に変化する。これに伴い、第1連結ピン8はほぼ最大限下方に移動し、もってアッパリンク7によりピストン2はほぼ最大限下方に引き下げられる。これにより、LE1は充分に大きく、且つほぼ最大限に大きくなり、LE1>LE2>LE3>LE4の関係となる。

0146

すなわち、相対比D1(=LE1/LC1)も充分大きく、かつほぼ最大限大きくなり、D1>D2>D3>D4の関係となる。これらの特徴は、前述したように偏心カム部13の偏心回転方向によるリンク姿勢の違いにより生み出されるのである。

0147

次に、本実施例のエンジン性能に関係する効果について説明する。

0148

例えば、内燃機関の暖機完了後部分負荷運転時には、電動式のピストン位置変更機構により偏心カム部13は最進角位置に変換され、制御位相α1での機械圧縮比C1は充分に、かつほぼ最大限に小さく、機械膨張比E1は充分に、かつほぼ最大限に大きい特性に制御される。ここで、機械膨張比E1がほぼ最大限に大きいことから、燃焼圧がピストンを押し下げることで行なう仕事をほぼ最大限増やすことができる。

0149

一方、このような暖機完了後の部分負荷運転時においては、圧縮上死点での筒内ガス温度が過度に高くなって、冷却損失が増えてしまう懸念があるが、本実施例のように、機械圧縮比C1がほぼ最大限低下できるので、このような冷却損失の発生を充分に抑制することができる。

0150

また、機関高負荷でのノッキングなどの異常燃焼も、ほぼ最小の機械圧縮比C1により充分抑制しつつ、ほぼ最大の機械膨張比E1により、燃費を充分向上できる。更には、ほぼ最大の機械膨張比E1により排気ガス温度(高負荷時の高温の排気ガス)を充分低下させ、触媒の熱劣化を充分に抑制できる。

0151

以上のような、十分な膨張仕事と冷却損失低減により、暖機完了後の部分負荷運転においては燃費(熱効率)を十分向上させたり、高負荷においては、さらに十分に排気ガス温度を低下させ触媒熱劣化を防止したりできる。ここで、相対比D1(=E1÷C1)についてみると、前述のように、相対比D1が1を超えた充分大きな値になっており、これが大きいほど、機械膨張比が相対的に高く、機械圧縮比が相対的に低いことを意味しており、燃費性能などにおける前述の効果の高さを示す指標とみることができる。

0152

一方、冷機時においては、仮にこのようなピストン位置変化特性(ほぼ最小機械圧縮比、ほぼ最大機械膨張比、ほぼ最大相対比)であったとすると、排気エミッション面から大きな不都合が生じる。すなわち、機械膨張比E1がほぼ最大なので、膨張仕事が充分に増加する分、機関本体から排出される排気ガス温度が過度に低下してしまい、後流の触媒での暖気が進まずエミッション転化性能が著しく低下する。

0153

更に、機械圧縮比がほぼ最小なので、冷機時において圧縮上死点での筒内ガス温度が過度に低下して燃焼が著しく悪化し、機関本体から排出されるエミッションも著しく増加する。これらにより、触媒下流のテールパイプから大気に排気出される排気ガスの排出エミッションが著しく増加するようになる。

0154

そこで、冷機時は、制御位相α4のように逆に機械圧縮比Cが大きく、機械膨張比Eが小さなピストン位置変化特性に変換する。これによって、第1実施例と同様に、燃焼改善及び排気ガス温度の高温化の効果により、大気に排出される排気エミッションを大幅に低減し、且つ通常の一般的なピストン位置変化特性(例えば、制御位相α3のような機械圧縮比C=機械膨張比Eとなる特性)よりも、さらに排気エミッションを低減できる。すなわち、相対比D4は1より低い値であり、これが小さいほど、膨張比が相対的に小さく、圧縮比が相対的に大きいことを意味しており、排気エミッション性能の良さを示す指標とみることができるのは前述の通りである。

0155

以上により、暖機後の燃費をほぼ最大限向上できるとともに、冷機時の排気エミッションも第1実施例と同様に低減できる。この効果は言い換えると、暖機後には相対比を1より大きなD1まで高めて燃費効果を高め、冷機時には相対比を1より小さなD4まで下げて冷機時排気エミッションを向上させている。

0156

尚、冷機時と暖機完了後の間の中間の温度(暖機中)においては、電動式のピストン位置変更機構の出力軸位相(偏心カム部13の位相)を高変換角に制御し、低温になるほど制御位相α4に近づけていき、高温になるほど制御位相α1に近づけていくように制御するのである。

0157

これにより、温度毎に燃費性能とエミッション性能を適切にバランスさせることができる。この場合、温度の影響を受けにくい高応答変換が可能な電動式のピストン位置変更機構を用いているので、油圧式のピストン位置変更機構に対して変換遅れがなく、安定的な効果が得られるようになる。例えば、温度の変化毎に安定的に排気エミッションを低下させつつ、燃費を最大限向上することができる。

0158

更に、本実施例では、過渡運転状態においても、電動式のピストン位置変更機構による高応答、大変換角位置制御を行うことによって種々の機関性能を高めることができ、例えば急加速時における、過渡トルクを向上できる。

0159

また、機械圧縮比の低減により耐ノック性向上ができることは前述の通りだが、機械圧縮比の低減に伴って吸入ストロ−ク(≒圧縮ストロ−ク)が低下する傾向があり、充填効率が低下してしまう場合も考えられる。

0160

したがって、過渡トルクを向上させるためには、ノッキングを抑制しつつ可及的に最大限充填効率を高める必要があることから、加速過渡時において、迅速に過渡トルクが最大になるように機械圧縮比を適宜補正制御することが求められる場合もある。

0161

ここで、近年増加してきたタ−ボなどの過給器を用いる場合は過給圧も過渡変化するので、大きいノッキングが発生し易い傾向にある。したがって、これも考慮してノッキングを抑制しつつ、可及的に最大限充填効率高めることができる機械圧縮比に迅速に制御することが求められる場合がある。

0162

これらの要求に対し、本実施形態では、前述のように電動式のピストン位置変更機構を用いているので、機関油圧や機関温度によらず高応答の変換ができるため過渡トルク向上効果を充分に得ることができる。

0163

また、例えば、このように加速して高負荷域になった後、低負荷域に移行した場合でも、電動式のピストン位置変更機構により迅速に高機械膨張比に変更できるので、燃費効果も素早く得られるようになる。

0164

以上のように、大変換角のピストン位置変更機構を高応答で作動させることで、種々の機関性能を高めることができるようになる。

0165

また、実施例1、実施例2と同様に、ピストン位置変化特性は、前述したように制御位相α1、制御位相α4ともクランク角720°を周期とする周期的な作動が行なわれ、上死点としてはクランク角が0°(720°)付近と360°付近の2度あらわれる。クランク角360°付近の上死点は、吸気弁と排気弁の両方とも完全に閉止された圧縮上死点となり、圧縮上死点のピストン位置も前述のY0とほぼ同等となっている。一方、クランク角0°付近の上死点は、排気弁が閉じ吸気弁の作動が開始される吸気(排気)上死点のピストン位置(Y´01、Y´04)となっている。

0166

この吸気(排気)上死点の各ピストン位置(Y´01、Y´04)は、圧縮上死点のピストン位置(Y0)より低い位置になっている。これは、図10(A)、図6(A)の吸気(排気)上死点姿勢で示すように、制御位相α1と制御位相α4とも、クランクピン9と第1連結ピン8とピストンピン3が一直線ではなく、逆「く」の字状に折れ曲がって配置されており、この配置によりピストン位置が前述の圧縮上死点のピストン位置(Y0)より低下するためである。

0167

ところが、本実施例の場合には、コントロ−ルリンク14に対する偏心カム部13の偏心方向が、制御位相α1と制御位相α4とで異なっている。ここで、開き角自体は制御位相α1の方が大きく180°に近くなっている。したがって、制御位相α1での吸気(排気)上死点のピストン位置(Y´01で、Δ1だけ低下)は、制御位相α4でのピストン位置(Y´04で、Δ4だけ低下)よりやや高くなっているが、圧縮上死転のピストン位置(Y0)よりは充分低くなっている。

0168

制御位相α1から制御位相α4に至る間の吸気(排気)上死点におけるピストン位置の変化についてみると、ピストン位置(Y´01で、Δ1だけ低下)、ピストン位置(Y´02で、Δ2だけ低下)、ピストン位置(Y´03で、Δ3だけ低下)、ピストン位置(Y´04で、Δ4だけ低下)となっており、全制御範囲において、圧縮上死点のピストン位置(Y0)よりは低くなっている。

0169

このため、例えば、高回転になると、吸気弁IV、排気弁EVは、ジャンプやバウンスといった異常運動が発生しやすくなるが、この場合においても吸気弁IV、排気弁EVとピストンとが干渉するのを充分に防止できるものである。また、近年広まってきた、吸気弁IV、排気弁EVの開閉位相制御やリフト量自体を増大変化できる可変動弁機構を装着した場合においては、吸気弁IV、排気弁EVとピストンの機械的な干渉が発生し易くなる。このような場合であっても、本実施例の可変圧縮比機構を用いれば吸気弁IV、排気弁EVとピストンの機械的な干渉を有効に防止することができるようになる。しかも、全制御範囲において、これらの効果が得られるのである。

0170

また、本実施例では吸気(排気)上死点のピストン位置が圧縮上死点のピストン位置より低い位置に設定されるため、排気行程での燃焼室容積が増大して高温の残留排気ガスの量が増え、燃焼室の温度を高く維持できて内部EGR効果が充分得られるようになる。例えば、燃焼室の温度が低い運転状態では、多くの残留排気ガスによって燃焼室の温度を高く維持できるので排気エミッションを低減できる効果が高くなる。

0171

更に、細かく見ていくと、制御位相α1での、超低機械圧縮比且つ超高膨張比の吸気(排気)上死点のピストン位置(Y´01で、Δ1だけ低下)は前述のように圧縮上死点のピストン位置(Y0)よりは低いものの、全制御範囲の中では最も高い位置になっている。これにより、以下の効果が得られる。

0172

すなわち、制御位相α1では、超低機械圧縮比且つ超高膨張比であって、燃費効果が高いが、圧縮ストロ−クLC1の低減に付随して、吸入ストロ−クが低減してしまう傾向がある。このため、吸入空気量が制限されていまい、燃費の良い制御位相α1の制御領域を高負荷(高トルク)側に拡大しにくいという課題が考えられる。

0173

これに対して、本実施例では吸気(排気)上死点のピストン位置(Y´01)がやや高めに設定されるので、吸入ストロ−クがLI1とやや増加し、もって燃費の良い制御位相α1の制御領域を高負荷(高トルク)側に拡大できるようになる。

0174

一方で、制御位相α1による制御は、前述の吸入吸気量の制約から、もともと極端な高回転領域では使用されないため、吸気(排気)上死点のピストン位置(Y´01)を圧縮上死点のピストン位置(Y0)より極端に低下させずとも、吸気弁IV、排気弁EVとピストンの機械的な干渉を有効に防止できる。

0175

次に本発明の第4の実施形態について説明するが、本実施例では可変圧縮比機構におけるリンク機構を変更したものであって、コントロ−ルシャフト12の偏心カム部13と連結したコントロールリンク14に、2つの第1連結ピン8と第2連結ピン11が設けられている点等が実施例1乃至実施例3と異なっている。

0176

すなわち、このリンク機構5は、ピストン2にピストンピン3を介して連結されたアッパリンク7と、アッパリンク7に第1連結ピン8を介して揺動可能に連結されると共にコントロ−ルシャフト12の偏心カム部13に揺動可能に連結されたコントロールリンク14と、コントロールリンク14に第2連結ピン11を介して揺動可能に連結されると共にクランクシャフト4のクランクピン9に回転可能に連結されたロアリンク10と、から構成されている。

0177

そして、クランクシャフト4の回転は、実施例1乃至実施例3と同様に、第1ギヤ歯車15を介して第2ギヤ歯車16(コントロールシャフト12)に半分の角速度に減速されて伝達される。この第2ギヤ歯車16とコントロ−ルシャフト12は、実施例1乃至実施例3と同様のピストン位置変更機構6によって相対回転位相を変化できるようになっている。

0178

図11はピストン2の吸気(排気)下死点付近の姿勢、すなわちクランクピン9が真上を向いた位置を示している。ここで、偏心カム部13の偏心回転方向はほぼ真上であり、クランクピン9、第2連結ピン11、ピストンピン3はほぼ一直線上に真上を向いている。

0179

この偏心カム部13の偏心方向がほぼ真上であることにより、コントロールリンク14は、第2連結ピン11を支点に反時計方向に回動し、もって第1連結ピン8は下方に移動し、アッパリンク7はピストン2を引き下げる。これにより、吸気(排気)上死点付近では、ピストン2の位置は比較的低い位置(Y´0)となっている。

0180

この状態から、クランクシャフト4が時計方向に360°回転すると、クランクピン9は再び真上の位置となり、また、偏心カム部13は反時計方向に180°回転し、この付近で圧縮上死点のピストン位置(Y0)となるものである。すなわち、ピストン位置は図11の一点鎖線で示すように、最上位置(Y0)まで上昇するようになる。なぜなら、この偏心カム部13の偏心方向は真下となり、コントロールリンク14は、第2連結ピン11を支点に時計方向に回動し、もって第1連結ピン8は上方に移動してアッパリンク7はピストン2を押し上げるからである。

0181

このようにして、本実施例においても、実施例1乃至実施例3と同様に吸気(排気)上死点でのピストン位置(Y´0)を圧縮上死点のピストン位置(Y0)より低く設定でき、高い圧縮比あるいは膨張比を確保しつつ、排気行程末期から吸気行程初期にかけて吸気弁IV、排気弁EVとピストンの機械的な干渉を有効に防止できる。尚、ピストン位置変更機構による位相変換を行なえば、機械圧縮比と機械膨張比の両方を変化できるのも実施例1乃至実施例3と同様である。

0182

また、実施例1乃至実施例3と同様に吸気(排気)上死点でのピストン位置(Y´0)を圧縮上死点のピストン位置(Y0)より低く設定でき、同様に内部EGR効果を高めることができる。

0183

本発明は、上述した各実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば各実施形態では単一気筒の内燃機関を示したが、2気筒、3気筒、更には4気筒等の多気筒の内燃機関に適用しても構わないものである。その場合、全気筒のピストン作動特性を単一ないし複数のピストン位置変更機構により変化でき、もって全気筒を所望の機械圧縮比、機械膨張比に制御することが可能である。

0184

そして、可変圧縮比機構によって圧縮上死点におけるピストン位置に対して、吸気(排気)上死点におけるピストン位置を低く設定する構成としている。これによれば、高機械圧縮比にするため圧縮上死点のピストン位置を高めた場合に、排気行程で吸気(排気)上死点におけるピストン位置を低く設定することで、ピストン冠面と吸排気弁が干渉しないようにできる、或いは内部EGR効果が充分得られるようにできる。

0185

尚、実施例では、ピストンからクランク軸までの伝達機構として2つのピストン位置変更機構を示したが、この機構の構成は本発明の主旨から逸脱しない範囲で適宜選択すれば良く、特に限定される訳ではない。また、クランクシャフト4の回転を半分の角速度に減速して偏心カム部13(コントロ−ルシャフト12)に伝える減速機構として一対の第1、第2ギヤ歯車15、16の例を示したが、これに限定されるものではない。

0186

また、各実施形態では、クランクシャフト4の回転方向と偏心カム部13の回転方向が逆方向になるが、同方向としても良い。例えば、クランクシャフト4側の第1ギヤ歯車15の回転をタイミングベルト(タイミンチェ−ン)を介して、半分の角速度に減速して、偏心カム部13側の第2ギヤ歯車16に伝達するようにしても良い。この場合は、クランクシャフト4の回転方向と偏心カム部13の回転方向が同方向となり、クランクシャフト4の回転角(横軸)に対するピストン位置変化特性(縦軸)は左右に裏返るが、本発明の主旨を実現できる。

0187

以上説明してきたように、本発明の主旨から逸脱しない範囲であれば構成は特に限定されるものではない。

0188

以上述べた通り本発明によれば、可変圧縮比機構によって圧縮上死点におけるピストン位置に対して、吸気(排気)上死点におけるピストン位置を低く設定するようにしているので、ピストン冠面と吸排気弁が干渉しないようにできる、或いは内部EGR効果が充分得られるようにできるという効果を奏するようになる。

0189

尚、上述した実施形態から把握することができる請求項以外の技術的思想は種々あるが、代表的なものを以下に記載する。
(1)4サイクル式の内燃機関におけるピストンのストロ−ク位置を変化させることで、機械圧縮比及び機械膨張比を変更可能な可変圧縮比機構を備えた内燃機関の圧縮比調整装置であって、可変圧縮比機構は、可変圧縮比機構の全可変範囲に亘って、吸気(排気)上死点におけるピストン位置を略同一位置に設定することを特徴とする。

0190

(2)4サイクル式の内燃機関におけるピストンのストロ−ク位置を変化させることで、機械圧縮比及び機械膨張比を変更可能な可変圧縮比機構を備えた内燃機関の圧縮比調整装置であって、可変圧縮比機構は、ピストンにピストンピンを介して一端が連結された第1リンクと、第1リンクの他端に第1連結ピンを介して回転可能に連結されると共に、クランクシャフトのクランクピンに回転可能に連結された第2リンクと、クランクシャフトに対し1/2の角速度で回転するコントロールシャフトと、コントロールシャフトに設けられ、コントロールシャフトの回転軸心に対し偏心した偏心軸部と、第2リンクに第2連結ピンを介して一端が連結されると共に、他端が偏心軸部に回転可能に連結された第3リンクと、コントロールシャフトの軸心に対する偏心軸部の偏心方向を変更可能な相対変位機構と、を備え、圧縮上死点における偏心軸部の軸心がコントロールシャフトの軸心より第2連結ピンと反対側になるように設定されると共に、排気上死点における偏心軸部の軸心がコントロールシャフトの軸心に対して第2連結ピン側となるように設定されていると共に、可変圧縮比機構は、内燃機関の冷機始動時には、ピストンの吸気下死点におけるピストン位置を膨張下死点におけるピストン位置とほぼ同じ位置に設定するか、若しくは、膨張下死点におけるピストン位置より吸気下死点におけるピストン位置を低く設定することを特徴とする。

0191

(3)サイクル式の内燃機関におけるピストンのストロ−ク位置を変化させることで、機械圧縮比及び機械膨張比を変更可能な可変圧縮比機構を備えた内燃機関の圧縮比調整装置であって、可変圧縮比機構は、ピストンにピストンピンを介して一端が連結された第1リンクと、第1リンクの他端に第1連結ピンを介して回転可能に連結されると共に、クランクシャフトのクランクピンに回転可能に連結された第2リンクと、クランクシャフトに対し1/2の角速度で回転するコントロールシャフトと、コントロールシャフトに設けられ、コントロールシャフトの回転軸心に対し偏心した偏心軸部と、第2リンクに第2連結ピンを介して一端が連結されると共に、他端が偏心軸部に回転可能に連結された第3リンクと、コントロールシャフトの軸心に対する偏心軸部の偏心方向を変更可能な相対変位機構と、を備え、圧縮上死点における偏心軸部の軸心がコントロールシャフトの軸心より第2連結ピンと反対側になるように設定されると共に、排気上死点における偏心軸部の軸心がコントロールシャフトの軸心に対して第2連結ピン側となるように設定されていると共に、可変圧縮比機構は、吸気(排気)上死点でのピストンの冠面の位置を吸気弁の最大リフトよりも下側に設定することを特徴とする。

実施例

0192

尚、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。

0193

01…内燃機関、02…シリンダブロック、03…ボア、1…ピストン位置可変機構、2…ピストン、3…ピストンピン、4…クランクシャフト、5…リンク機構、6…位相変更機構、7…アッパリンク(第1リンク)、8…第1連結ピン、9…クランクピン、10…ロアリンク(第2リンク)、11…第2連結ピン、12…コントロールシャフト、13…偏心カム部、14…コントロールリンク(第3リンク)、15…第1ギヤ歯車(駆動回転体)、16…第2ギヤ歯車(従動回転体)。

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